説明

合金鉄や造滓材の台車型の搬送装置

【課題】 ゲートの噛み合わせをなくして確実に閉止でき、こぼれ落ち量を減少できるクラムシェルタイプの払出機構の収納容器を有する台車型の搬送装置を提供する。
【解決手段】 軌道1を走行する台車2に収納容器3を載置し、収納容器3の底部に両開きのゲート7からなる払出口5を有し、収納容器3の底部中央部11に前後を区分する山形状の分離部12を設け、分離部12の前後端とゲート7の先端8との当接部である凹入部14を有する固定部13を設け、ゲートを閉める際に当接部とゲート7の先端8との間に合金鉄などの合金あるいは造滓材を異物として噛み込み難くするために、ゲート7の先端8と固定部13の間を払出口5に開口するとともに、ゲート7の先端8を固定部13の凹入部14に当接して閉止する合金鉄や造滓材の台車型の搬送装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鋼所や製鉄所などにおいて軌道を走行する台車を利用して、台車に載置の収納容器に合金鉄などの合金あるいは造滓材を収納して台車型の搬送装置により搬送し、これらの合金鉄などの合金あるいは造滓材を収納容器の底部の払出機構から電気炉や精錬炉などに供給する台車型の搬送装置、特にクラムシェルタイプのゲートを有する払出機構を収納容器の底部に有する台車型の搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の製鉄所などにおける合金鉄などの合金あるいは造滓材の搬送装置は、図6および図7に示すように、積み荷の合金鉄などの合金あるいは造滓材を払出しする時に、積み荷を収納した収納容器3の払出機構4の払出口5の両側の2ヶ所から中央に合わせたクラムシェルタイプのゲート7、7をそれぞれシリンダー6、6により引上げて底部の払出口5を開口し、搬送積み荷の合金鉄などの合金あるいは造滓材を下方に払出している。
【0003】
これらの搬送される合金鉄などの合金あるいは造滓材としては、例えば、フェロマンガンやフェロシリコン、シリコン、アルミニウム、石灰、カーボンなどで、それらの大きさは、合金鉄にもよるが粒度1mm位から50mm程度の塊までのさまざまの大きさのものが一般的である。
【0004】
ところで、従来の台車のクラムシェルタイプの払出機構4は、払出口5の対向するゲート7、7の先端同士が噛み合わせになっており、両ゲート7、7の各先端8が時には噛み合わせた時にうまく密着せず、図8に示すように、両ゲート7、7に1mm前後の空隙9がたびたび生じていた。また、図9に示すように、異物10が両ゲート7、7の先端の噛み合わせ部分に噛み込んだりすることにより、さらに大きい空隙9ができ、積載した合金鉄などの微小なものがその空隙9からこぼれ落ちた。そのこぼれ落ち量は積載の合金鉄などの量の約0.5%にもなっていた。
【0005】
従来の装置として、材料入れ容器のクラムシェル排出装置用作動機構が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この公報で、合金搬送装置の下部を開いて合金を落下させる構図自体は知られているが、排出ゲートの隙間に異物が噛み合わされて隙間が生じ、搬送材がこぼれ落ちる上記した問題については全く考慮されていなかった。
【0006】
【特許文献1】特開昭48−64666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、従来の台車に載置の合金鉄や造滓材の搬送装置のクラムシェルタイプのゲートからなる払出機構を有する収納容器において、ゲートの先端同士の噛み合わせがうまく密着せず、1mm前後の空隙がたびたび生じ、その噛み合わせ部分に異物が噛み込み、さらに大きい空隙ができていた。そのために、搬送材のこぼれ落ち量が台車に積載の合金鉄などの量の約0.5%にもなっていた。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、ゲートの噛み合わせの不良を改善して異物の噛み合わせをなくし、確実に噛み合わせして閉止でき、こぼれ落ち量を減少できる構造のクラムシェルタイプの払出機構の収納容器を有する台車型の搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための本発明の手段は、請求項1の発明では、軌道を走行する台車に合金鉄などの合金あるいは造滓材を収納する収納容器を載置し、収納容器の底部に、これらの収納物を払出すためのクラムシェルタイプの両開きのゲートからなる払出口を払出機構として有する搬送装置におけるものである。すなわち、収納容器の底部中央部に前後を区分する山形状の分離部を設ける。この分離部の前後端にクラムシェルタイプの対向するゲートからなる払出機構をそれぞれを設ける。これらの各ゲートの先端と分離部の前後端に当接部を設け、これらの当接部と各ゲートの先端との間を払出口に開口するとともにゲートの先端を当接部に当接して閉止することを特徴とする合金鉄や造滓材の台車型の搬送装置である。
【0010】
上記のように本願の請求項1に係る発明は、クラムシェルタイプの両開きのゲートを有するものであるが、従来の装置のように前後の両開きのゲートの先端どうしが当接して閉止するものと異なり、両開きのゲートの先端の間に山形状の分離部とその先端の当接部を設け、その山形状の分離部の先端の当接部に各ゲートの先端を当接してゲートを閉じるようにしたので、従来のゲートどうしの当接に比して、本願の請求項1に係る発明の手段では分離部の当接部に確実にゲートが当接でき、しかもゲートの閉止の際に当接部との間に異物を噛み込みにくくなった。
【0011】
請求項2の発明では、上記の分離部の前後端に設けた当接部は、ゲートを閉める際に合金鉄などの合金あるいは造滓材を異物として当接部とゲートの先端との間に噛み込み難くするために、ゲートの先端が当接する当接部の当接面をくの字型の凹入部に形成したことを特徴とする請求項1の手段における合金鉄や造滓材の台車型の搬送装置である。
【0012】
ゲートの先端が当接部と確実に密着するように、当接部の前後の先端の部分に「くの字型」の凹入部を設けて「くの字」上部の字画の下にゲートの先端が入り込むように改良したことで、当接部との噛み合わせ部分の空隙がさらに解消されてなくなった。さらに、ゲートの先端が当接部の「くの字型」の凹入部に入り込む形状になっているので、「くの字型」の一画目の部分がゲートの先端を覆う状態となるので、間に異物を噛み込むことがなくなった。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上記の手段としたことで、収納容器の容器底部の閉じたゲートの先端に空隙が生じ難くなり、ゲートの開閉がよりスムーズになり、特に収納容器の底部中央部に設けた山形の分離部の先端の当接部にくの字の凹入部を設けたことで、合金鉄などの合金あるいは造滓材のこぼれ量が従来のこぼれ量の約10%にも減少することができるなど、本願の発明は従来にない優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図2は、本発明の合金鉄や造滓材などの搬送装置のゲート7、7を閉じた状態の模式的な側面図である。この搬送装置は軌道1を走行する台車2に上部開放で前後壁の下部が尻すぼみに傾斜した収納容器3を載置しており、この収納容器3はその底部中央部11に容器内部を前後に分離する山形状の分離部12を容器内部に固定して設けている。この底部中央部11の分離部12に、容器底部を払出口5に開口するためのゲート7の先端8を、前後から当接している。これらのゲート7の上端部は収納容器3の側部に取付け支軸7aで前後方向に回転自在に軸支され、一方、そのゲート7を駆動するシリンダー6が収納容器3の外部前後壁に取りつけられ、図4に示すように、そのピストロッド6aの先端にゲート7の下部後端が取付け軸7bで回転自在に軸支されて、これらにより収納容器3に収納の合金鉄などの合金あるいは造滓材を下部の払出口5から払いだすための払出機構4が形成されている。
【0015】
図2は、ピストンロッド6aを延ばしてゲート7の先端8を分離部1の固定部13に当接して底部を閉じている状態を示す。図3は、ピストンロッド6aを縮めてゲート7の先端8を分離部1の固定部13から離して底部を開いて収納物の合金鉄などの合金あるいは造滓材を払いだすための払出口5としている状態を示す。
【0016】
さらに、ゲート7の先端8が底部中央部11分離部12の底部先端の固定部13に、図4に示すように、断面がくの字状の凹入部14を設け、図5に示すように、このくの字状の第一画の下部の凹入部14にゲート7の先端8が入り込んで当接するようにしている。そこで、払出口5から合金鉄や造滓材などの払い出し材が落下した際に、くの字状の第一画の下にゲート7の先端8が入り込むと、まだ密閉されてなく空隙9が凹入部14の奥との間に空いている状態であっても、その空隙9はくの字の第一画で覆われているので異物が詰まるようなことが防止され、こぼれ量が減少される。この状態を、本発明の装置では改善後とし、従来の装置では改善前とし、改善前の従来のこぼれ量を100とした場合の本発明の凹入部14を設けた場合のこぼれ量を改善後として図1に示す。
【0017】
本発明の搬送装置では、図5に示す収納容器3の底部中央部11の山形城の分離部12の前後にそれぞれ当接部13を設け、これらの当接部13とそれぞれの前後のゲート7の先端8とを当接する噛み合わせ部にしたことで、噛み合わせ部に生じていた空隙9がなくなった。さらに、本発明の請求項2の手段の装置では、ゲート7の先端8が当接部12に設けた「くの字型」の凹入部14に入り込むように形成した結果、ゲート7の先端8と凹入部14の間の部分に異物10が噛み込まれなくなり、さらに、この装置により搬送中の収納容器3の内容物を落下するこぼれ量は図1に示すように従来の装置の10分の1に減少した。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】合金鉄や造滓材などのゲートからのこぼれ量を示すグラフである。
【図2】本発明の合金鉄や造滓材などの搬送装置のゲートを閉じた状態の模式的側面図である。
【図3】本発明の合金鉄や造滓材などの搬送装置のゲートを開いた状態の模式的側面図である。
【図4】本発明の払出機構の当接部とゲートの拡大側面図である。
【図5】本発明の払出機構の当接部に対するゲートの動きを示す模式図である。
【図6】従来の合金鉄や造滓材などの搬送装置でゲートを閉じた模式的側面図である。
【図7】従来の合金鉄や造滓材などの搬送装置でゲートを開いた模式的側面図である。
【図8】従来の合金鉄や造滓材などの搬送装置のゲートを閉じた模式的側面図である。
【図9】従来の合金鉄や造滓材などの搬送装置のゲートを下方から見た図である。
【符号の説明】
【0019】
1 軌道
2 台車
3 収納容器
4 払出機構
5 払出口
6 シリンダー
6a ピストンロッド
7 ゲート
7a 取付け支軸(収納容器への)
7b 取付け軸(ピストンロッドへの)
8 先端(ゲートの)
9 空隙
10 異物
11 底部中央部
12 分離部
13 当接部
14 凹入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道を走行する台車に合金鉄などの合金あるいは造滓材を収納する収納容器を載置し、収納容器の底部にこれらの収納物を払出すクラムシェルタイプのゲートを払出口とした払出機構を有する搬送装置において、収納容器の底部中央部に前後を区分する山形状の分離部を設け、この分離部の前後端にクラムシェルタイプの対向するゲートをそれぞれ設け、これらの各ゲートの先端と分離部の前後端に当接部を設け、これらの当接部と各ゲートの先端との間を払出口に開口するとともにゲートの先端を当接部に当接して閉止することを特徴とする合金鉄や造滓材の台車型の搬送装置。
【請求項2】
上記の分離部の前後端に設けた当接部は、ゲートを閉める際に合金鉄などの合金あるいは造滓材を異物として当接部とゲートの先端との間に噛み込み難くするために、ゲートの先端が当接する当接部の当接面をくの字型の凹入部に形成したことを特徴とする請求項1に記載の合金鉄や造滓材の台車型の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−296914(P2008−296914A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141261(P2007−141261)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000180070)山陽特殊製鋼株式会社 (601)
【Fターム(参考)】