吊りロッド着脱システム
【課題】吊りロッドを容易に着脱可能な吊りロッド着脱システムを提供することを目的としている。
【解決手段】本発明の吊りロッド着脱システム12は、重量物を揚重する複数の吊りロッドを構成するロッド単体90を着脱する吊りロッド着脱システムであって、前記ロッド単体90を収容して前記ロッド単体90の着脱位置の水平方向で取り付け可能なロッドラック20と、前記ロッドラック20と前記着脱位置の間で前記ロッド単体90を支持して水平方向に移動させる移動部40と、前記着脱位置で前記ロッド単体90のヘッド部92の側面に接して回転し前記ロッド単体90同士を着脱させるローラ60と、からなる吊りロッド着脱手段10と、前記吊りロッド着脱手段10と接続して前記ロッド単体90の着脱を制御する制御手段14と、を備え、前記吊りロッド着脱手段10は、同一平面上となる複数の前記着脱位置に取り付け可能としたことを特徴としている。
【解決手段】本発明の吊りロッド着脱システム12は、重量物を揚重する複数の吊りロッドを構成するロッド単体90を着脱する吊りロッド着脱システムであって、前記ロッド単体90を収容して前記ロッド単体90の着脱位置の水平方向で取り付け可能なロッドラック20と、前記ロッドラック20と前記着脱位置の間で前記ロッド単体90を支持して水平方向に移動させる移動部40と、前記着脱位置で前記ロッド単体90のヘッド部92の側面に接して回転し前記ロッド単体90同士を着脱させるローラ60と、からなる吊りロッド着脱手段10と、前記吊りロッド着脱手段10と接続して前記ロッド単体90の着脱を制御する制御手段14と、を備え、前記吊りロッド着脱手段10は、同一平面上となる複数の前記着脱位置に取り付け可能としたことを特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に大型構造物の昇降作業に用いられる複数の吊りロッドをジャッキの昇降に合わせて着脱させる吊りロッド着脱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大型構造物の据付には吊下げ施工方式が採用されている。吊下げ施工方式は、例えば、大型吊下げ式ボイラを有する火力発電所で、吊下げ架構となる鉄骨フレームの天端部にボイラ支持用の大梁を設け、この大梁にボイラ構成部品を吊下げた状態で支持しながら施工する方式である。
【0003】
図21は吊りロッドによる大型構造物の揚重状態の説明図である。大型構造物120の周囲に鉄骨柱130を設置して鉄骨柱130の上部に仮設梁140を設けている。仮設梁140上に複数の油圧ジャッキ150を配設し、大型構造物120を下端に取り付けた吊りロッド160を支持している。
【0004】
具体的な施工方式は、仮設梁や大梁などの支持梁に設置した複数の揚重ジャッキを用い、ボイラ構成部品のモジュールを地上から揚重ジャッキを利用して吊り上げながら付帯部品を組み付けていき、最終的に地上から数十メートル上方の大梁に対しスリングロッドなどを用いて吊下げ支持するものである。
【0005】
特許文献1には、従来の揚重ジャッキシステムが開示されている。図22は従来の揚重ジャッキシステムの構成概略を示す説明図である。従来、ボイラモジュール200の取り付けの際には、ボイラサイド鉄骨201の上部に設けたボイラジャッキ202で、吊りロッド204を介して昇降させている。ボイラジャッキ202の上方には、ロッド自動着脱装置206を横行及び昇降可能に設けている。ロッド自動着脱装置206は、ボイラジャッキ202によって押し上げられた吊りロッド204の先端のロッド単体204Sを把持して、回転させて、取り外してロッド搬送装置208に移送できるようにしてある。ロッド搬送装置208は、ロッド自動着脱装置206からロッド単体204Sを受け取ると、作業床209に設けてあるロッド収容箱210側に搬送している。
【0006】
特許文献2には、従来の吊りロッドの着脱装置が開示されている。図23は従来の吊りロッド着脱装置の構成概略を示す説明図である。図示のようにロッド単体300Sは、回転モータ302によって回転する着脱チャック304により、ねじ結合が解除される方向に回転させられ、次第に上昇する。制御装置は、回転検出板306に設けた検出孔を検出する回転センサーの出力信号から着脱チャック304を駆動して着脱チャック304の上昇速度に合わせて回転検出板306を上昇させている。また制御装置は、スプリングホルダ308に設けたばね伸縮センサーが距離検出板310の位置を検出して出力する信号に基づいて昇降モータ(不図示)を制御し、回転検出板306の上昇速度が着脱チャック304の上昇速度から大きくずれないように制御させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−278385号公報
【特許文献2】特開平9−278383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のロッド自動着脱装置は、回転モータでロッド単体を連結又は取り外す際に、ロッド単体のヘッド部を把持して回転させる方式のため、ねじ込みに相当する長さ分だけ上下方向に移動させなければならない。具体的には昇降モータを用いて回転モータをねじ込み量に応じて移動させなければならない。昇降モータを用いて回転モータを上下移動させる制御は、装置構成が複雑化して同期制御が難しいという問題があった。
【0009】
ロッド自動着脱装置は、吊りロッドのヘッド部分を把持爪で把持して上方に引き抜いて移動させているため、落下の虞があり、位置合わせの精度が要求されるなどの操作性が悪いという問題があった。
【0010】
ロッド自動着脱装置はセンサーを多用し精密化しているため、各種センサーの調整が難しくなる。故障が生じた場合には、僅か1箇所のセンサーが故障しただけでも動作しなくなる可能性がある。また故障箇所を特定するのに時間がかかるという問題があった。
【0011】
また、従来の揚重ジャッキシステムは、ボイラジャッキとロッド搬送装置の間で、取り外し又は取り付けるロッド単体を横行及び昇降移動させている。このため、特に高さ方向のスペースを広く確保しなければならず、装置自体が大型化してしまうという問題があった。
【0012】
そこで、上記従来技術の問題点を解決するため、本発明は、複数の吊りロッドを容易に着脱可能な吊りロッド着脱システムを提供することを目的としている。また本発明は、小型化を図った吊りロッド着脱システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため本発明の吊りロッド着脱システムは、重量物を揚重する複数の吊りロッドを構成するロッド単体を着脱する吊りロッド着脱システムであって、前記ロッド単体を収容するとともに、前記ロッド単体の着脱位置の水平方向で取り付け可能なロッドラックと、前記ロッドラックと前記着脱位置の間で前記ロッド単体を支持して水平方向に移動させる移動部と、前記着脱位置で前記ロッド単体のヘッド部の側面に接して回転し前記ロッド単体同士を着脱させるローラと、からなる着脱手段と、前記着脱手段と接続して前記ロッド単体の着脱を制御する制御手段と、を備え、前記着脱手段は、同一平面上となる複数の前記着脱位置に取り付け可能としたことを特徴としている。
【0014】
上記構成によれば、複数の吊りロッドごとに形成した同一平面上のロッドラックと着脱位置の間で、ロッド単体を水平方向で移動させるだけであり、着脱システムの構成を小型化することができる。そのため、ロッドの着脱及び移動、収納を監視する作業員も同一平面上の移動だけで済み、大幅な労力低減が図れる。また、同一平面のため、少人数で監視することができ、作業者間で互いに確認し合いながら作業を進めることもできる。またヘッド部の側面にローラを接触させて回転させることにより、容易にロッド単体を着脱させることができる。
【0015】
前記ローラは、前記ロッド単体の軸方向の移動を検知する検知手段を備え、前記検知手段は、前記制御手段と接続し検出値を送信可能としているとよい。
上記構成によれば、着脱位置のロッド単体の結合又は分離を容易に検出することができる。
【発明の効果】
【0016】
上記構成によれば、複数の吊りロッドごとに形成した同一平面上のロッドラックと着脱位置の間で、ロッド単体を水平方向で移動させるだけであり、着脱システムの構成を小型化し、着脱作業の効率化が図れる。またヘッド部の側面にローラを接触させて回転させることにより、ロッド単体のねじ込みに応じて、ローラを上下方向に移動させる必要がなく、容易にロッド単体を着脱させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態の吊りロッド着脱手段の構成概略を示す説明図である。
【図2】吊りロッド着脱手段の平面図である。
【図3】図2のA−A矢視図である。
【図4】ロッドラックの説明図である。
【図5】レール昇降部の説明図である。
【図6】検知手段の説明図である。
【図7】ロッド単体をロッドラックから着脱位置まで移動する着脱位置の側面図及び平面図である。
【図8】ロッド単体をロッド支え部で支持して、ロッド受台を下降させる着脱位置の側面図及び平面図である。
【図9】ロッド受台の退避と従動ローラを前進させる着脱位置の側面図及び平面図である。
【図10】駆動ローラを前進させて、ロッド支え部を後退させる着脱位置の側面図及び平面図である。
【図11】ロッド単体のねじ込みと駆動ローラを後退させる着脱位置の側面図及び平面図である。
【図12】従動ローラを後退させた着脱位置の側面図及び平面図である。
【図13】着脱位置に吊りロッドの先端の単体ロッドを配置した側面図及び平面図である。
【図14】従動ローラと駆動ローラを前進させる着脱位置の側面図及び平面図である。
【図15】ロッド単体の取り外しとロッド支え部で支持する着脱位置の側面図及び平面図である。
【図16】駆動ローラと従動ローラを後退させる着脱位置の側面図及び平面図である。
【図17】ロッド受台の着脱位置までの前進とロッド受台を上昇させる着脱位置の側面図及び平面図である。
【図18】ロッド支え部を後退させてロッド単体を着脱位置から移載部まで移動させる着脱位置の側面図及び平面図である。
【図19】吊りロッドとロッド単体の説明図である。
【図20】本発明の吊りロッド着脱システムの構成概略を示す説明図である。
【図21】吊りロッドによる大型構造物の揚重状態の説明図である。
【図22】従来の揚重ジャッキシステムの構成概略を示す説明図である。
【図23】従来の吊りロッド着脱装置の構成概略を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の吊りロッド着脱システムの実施形態を添付の図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
図19は吊りロッドとロッド単体の説明図である。本発明の吊りロッド着脱手段10で取り扱う吊りロッド100は、ロッド単体90を軸方向に複数連結させて長尺となるように構成している。各ロッド単体90は、大径のヘッド部92と、小径のロッド部94から構成されている。ヘッド部92とロッド部94は、異径のため接続部分に段差が生じている。ヘッド部92は、上端面から下方の軸方向に沿って内部を凹状に形成して雌ねじ部96を設けている。ロッド部94は下端部分に前記雌ねじ部96に螺合する雄ねじ部98を設けている。そして、第1のロッド単体90bの雌ねじ部96に第2のロッド単体90aの雄ねじ部98を結合(螺合)させて、複数のロッド単体90を軸方向に螺着結合して1本の吊りロッド100を形成することができる。またヘッド部92を利用してジャッキアップできるようにしている。
【0019】
図1は本実施形態の吊りロッド着脱手段の構成概略を示す説明図である。図2は吊りロッド着脱手段の平面図である。なお、図1及び図2はロッド支え部を省略している。図3は図2のA−A矢視図である。
【0020】
図示のように、本実施形態の吊りロッド着脱手段(以下単に着脱手段という)10は、ロッドラック20と、着脱部30と、を主な基本構成としている。ロッドラック20と着脱部30は、図示のように、吊りロッド100の軸心Sに対して、油圧ジャッキ110上のロッド単体90同士を螺合(結合)又は分離する位置(以下、単に着脱位置という(矢印B))から交差する水平方向(Y軸方向)に並べて配置されている。
【0021】
図4はロッドラックの説明図であり、(1)は側面図、(2)は正面図、(3)は移載部側の斜視図である。収容手段となるロッドラック20は、複数のロッド単体90を直線上に並べて収容することができる。ロッドラック20には、上面にロッド単体90のヘッド部92の外径よりも小さく、ロッド部94の外径よりも大きい幅のスリット22を設けた支持部24が形成されている。ロッドラック20の長手方向の一方の端面には、上側をヘッド部92とし、下側をロッド部94とするロッド単体90を側面(横方向)から挿入可能な出入口26が形成されている。ロッドラック20の側面の出入口26と上面のスリット22は連続して形成している。またロッド単体90のヘッド部92の下短面と接する支持部24の上面には、摺動部28が形成されている。これにより、ロッドラック20の支持部24上でロッド単体90を支持部24の長手方向に沿って摺動可能として、手作業によるロッド単体90の移動を容易に行なうことができる。またロッドラックにベルトコンベアを配設して後述するロッド受台との間を自動でロッド単体の受け渡しができるように構成してもよい。
【0022】
このような構成のロッドラック20は、ロッド単体90をロッドラック20の出入口26から挿入すると、ヘッド部92が支持部24上から露出して、ロッド部94が内部に収容され、ロッド単体90同士を同一平面であって直線上に配置された状態で収容することができる。
【0023】
着脱部30は、移動部40と、ローラ60と、ロッド支え部80と、を主な基本構成とし、ロッド単体90の移動及び着脱を行っている。
移動部40は、レール42と、ロッド受台44と、シャフト47と、モータ48と、レール昇降部50と、を主な基本構成としている。
【0024】
レール42は、図2に示すように着脱位置(矢印B)を跨ぐX軸方向に所定間隔を空けて配置され、かつ、レール42の長手方向(Y軸方向)の略中央に着脱位置が位置するように配置している。また、レール42は、長手方向をロッドラック20の長手方向と同じ方向(Y軸方向)、即ち同軸となる直線上に配置している。
【0025】
ロッド受台44は前記レール42上を走行可能に形成している。ロッド受台44にはロッド単体90の側方から差し込んでヘッド部92の下端面を支持する凹部45が形成されている。凹部45はヘッド部92の外周に沿って略U字型に形成している。凹部45の内周面にはヘッド部92の下端面を支持する段差46が形成されている。ロッド受台44は、レール42の長手方向に沿って配置されたシャフト47が貫通している。シャフト47の端部はモータ48と接続している。シャフト47の表面には、ねじ切り加工が施されており、ロッド受台44の貫通孔43の内側にも、これと同ピッチのねじ切り加工が施されている。このような構成のロッド受台44は、モータ48を駆動させるとシャフト47が回転してレール42上を移動することができる。またモータ48の回転方向を変えることにより、ロッド受台44を進退移動させることができる。
【0026】
レール昇降部50は、平面視したレール42の上下方向、すなわち吊りロッド100の軸方向(Z軸方向)へ、レール42全体を一体的に昇降できるように形成している。本実施形態のレール昇降部50は、一例として、一対のレール42の両端にそれぞれ4つのシリンダ機構52を配置した構成としている。4つのシリンダ機構52は、夫々シリンダの移動量を同期させて、レール42全体を一体的に上下方向に昇降させるように構成している。
【0027】
実施形態に係るレール昇降部50は、一例として、上段位置及び下段位置の2段階で昇降可能な構成としている。図5はレール昇降部50の説明図であり、(1)は上段位置、(2)は下段位置をそれぞれ示している。レール昇降部50によるレール42の上段位置は、ロッドラック20の支持部24の上面と、ロッド受台44の凹部45の段差46上面が略一致して略同一平面上となる位置に設定している。一方、レール昇降部50によるレール42の下段位置は、図5(2)に示すように、着脱位置において、ロッド単体90がロッド支え部80で支持された後、ロッド受台44によるロッド単体90の支持が解除できる位置、即ちヘッド部92の下面から離間する位置であって、かつ、ローラ60とロッド支え部80と干渉しない位置に設定している。なお、ロッド受台44がレール42上を進退移動可能であれば、シャフト47の構成の他にも、例えば、リニアモーターなどを適用しても良い。
【0028】
ローラ60は、駆動ローラ62と、駆動モータ64と、従動ローラ66と、シリンダ機構と、検知手段70と、を主な基本構成としている。
駆動ローラ62と従動ローラ66は、着脱位置を中心として対向するように配置し、かつ、移動部40の進退方向(Y軸方向)と交差する方向(X軸方向)の同一平面上に配置している。
【0029】
駆動ローラ62は、回転軸と直結させてローラ60を正逆方向に回転可能な駆動モータ64を取り付けている。駆動ローラ62と駆動モータ64は、ホルダ63に取り付けている。このホルダ63には、着脱位置に対して進退移動するシリンダ機構68aが取り付けられている。
【0030】
駆動ローラ62の表面には回転軸の軸芯に沿って複数の溝61が形成されている。これにより、駆動ローラ62がヘッド部92の側面に接触してロッド単体90を回転させる際、駆動ローラ62とヘッド部92との間の摩擦係数を大きくして、空回りを防止することができる。
【0031】
従動ローラ66は、第1及び第2従動ローラ66a,66bを備え、第1及び第2従動ローラ66a,66bの隙間をヘッド部92の直径よりも小さく設定している。第1及び第2ローラ66a,66bは、回転軸を支持するホルダ65を取り付けている。さらに、このホルダ65は、着脱位置に対して進退移動するシリンダ機構68bを取り付けている。なお、シリンダ機構68bとシリンダ機構68aは、長手方向の軸心を一致させて、進退方向が同一直線上となるように配置している。駆動ローラ62および従動ローラ66のヘッド部92の側面の接触位置は、ロッド単体90が結合又は分離したいずれの状態でも、ヘッド部92の側面と接触することができる位置に設定している。
【0032】
従動ローラ66上には検知手段70を取り付けている。図6は検知手段の説明図である。検知手段70はロッド単体90の結合又は分離を検出するセンサーである。
図6(1)に示すように、検知手段70は、発光部72と受光部74で構成している。発光部72はロッド単体90の軸方向に沿って、上段の第1発光部72aと下段の第2発光部72bで構成している。受光部74はロッド単体90の軸方向に沿って、上段の第1受光部74aと下段の第2受光部74bで構成している。上段の第1発光部72aと第1受光部74aはそれぞれ対をなしており、第1発光部72aから第2受光部74aへ向けてレーザ光を照射して、第1受光部74aでレーザ光を検出している。第2発光部72bと第2受光部74bも、第1発光部72aと第1受光部74aと同様に構成している。検知手段70は、発光部72と受光部74を従動ローラ66の2つのローラ上にそれぞれ配置している。
【0033】
そして、着脱位置でロッド単体90の側面に従動ローラ66が接触したとき、発光部72と受光部74を結ぶ直線上に、平面視したロッド単体90のヘッド部92の側面の一部が重なるように配置している。検知手段70は、ロッド単体90が結合されている状態で、ロッド単体90の側面によってレーザ光が遮断されない位置に、第2発光部72b及び第2受光部74bを取り付けている。検知手段70は、ロッド単体90が分離している状態で、ロッド単体90の側面によってレーザ光が遮断される位置に、第1発光部72a及び第1受光部74aと第2発光部72b及び第2受光部74bを取り付けている。
【0034】
上記構成の検知手段70は、具体的にロッド単体90を次のように感知している。まず、図6(2)に示すように、ロッド単体90を結合させた状態では、ロッド単体90の螺合によって着脱位置から雄ねじ部に相当する分だけロッド単体90が下方に移動する。第1及び第2発光部72a,72bと第1及び第2受光部74a,74bを結ぶ直線上に、平面視したロッド単体90のヘッド部92の側面の一部が重ならなくなる。このため、第1及び第2受光部74a,74bのいずれも第1及び第2発光部72a,72bからのレーザ光を受光することができ、ロッド単体90の結合を感知することができる。
【0035】
一方、図6(3)に示すように、ロッド単体90を分離させた状態では、着脱位置にロッド単体90が存在する。第1及び第2発光部72a,72bと第1及び第2受光部74a,74bを結ぶ直線上に、平面視したロッド単体90のヘッド部92の側面の一部が重なっている。このため、ロッド単体90によって第1及び第2発光部72a,72bから第1及び第2受光部74a,74bへレーザ光が遮断されて、第1及び第2受光部74a,74bのいずれもレーザ光を受光することができず、ロッド単体90の分離を感知することができる。
【0036】
ロッド支え部80は、一対の支持部82及びシリンダ機構84から構成されている。ロッド支え部80は、前記ローラ60の下方に配置している。ロッド支え部80は、ローラ60と同様に、着脱位置を中心として対向するように配置し、かつ、移動部40の進退方向(Y軸方向)と交差する方向(X軸方向)の同一平面上に配置している。一対の支持部82a,82bは、ロッド単体90のロッド部94を把持して、着脱位置上のロッド単体90を支持することができる。支持部82a,82bには、夫々シリンダ機構84a,84bが取り付けられ、中心の着脱位置に向けて進退移動させることができる。シリンダ機構84bとシリンダ機構84aは、進退方向が同一直線上となるように配置している。
【0037】
ロッドラック20と着脱部30の間には移載部32が設置されている。移載部32はロッド単体90を、ロッドラック20から着脱部30へ、又は着脱部30からロッドラック20へ、移動させる際に水平状態を維持しながら引き渡すように支持する支持部材である。移載部32は、移動するロッド単体90のロッド部94の通路を確保するように、移動方向を中心として対称に配置された一対の支持片33a,33bで構成している。支持片33a,33bは平面視すると、ロッドラック20側から着脱部30側に向かって先細となる形状に形成している。支持片33a,33bの上面は、ロッドラック20の上端面の支持部24と略一致するように配置させている。また、支持片33a,33bの上面には摺動部36が形成されている。これにより、移載部32上でロッド単体90を摺動させて、手作業によるロッド単体90の移動を容易に行なうことができる。支持片33a,33bの側面同士は、ロッド単体90のロッド部94の直径に相当する隙間を空けている。ロッドラック20の出入口26の端面と、移載部32のロッドラック20側の端面は、ボルトナットなどの締結手段を用いて接続している。
【0038】
図20は本発明の吊りロッド着脱システムの構成概略を示す説明図である。図示のように、吊りロッド着脱システム12は、大型構造物を支持する複数の吊りロッドの着脱位置に取付け可能な吊りロッド着脱手段10と、制御手段14とを主な基本構成としている。
【0039】
図20には、仮設梁140の2本の吊りロッドに第1着脱手段10a、第2着脱手段10bをそれぞれ取り付けている。このような吊りロッド着脱手段10は、複数の吊りロッドの着脱位置を含む同一平面上に形成されている。
【0040】
制御手段14は、第1着脱手段10a及び第2着脱手段10bと電気的に接続し、吊りロッドを構成するロッド単体90の着脱を制御可能に構成している。
また制御手段14は複数の油圧ジャッキと電気的に接続し、油圧ジャッキによるロッド単体の着脱信号を入手できるように構成されている。なお制御手段14は、油圧ジャッキによるロッド単体の着脱を制御可能に構成してもよい。
【0041】
具体的に制御手段14は、油圧ジャッキによる吊りロッドの吊り下ろし又は吊り上げ作業が行われた後、吊りロッド着脱手段10にロッド単体90の連結又は取り外しの制御信号を送信している。また制御手段14は、検知手段70と電気的に接続させて、駆動ローラの回転を制御するように構成している。制御手段14は、複数の着脱手段のロッド単体の着脱を同期させることにより、作業時間を大幅に短縮することができる。また制御手段14は、複数の着脱手段のロッド単体の着脱を個別に行うように制御してもよい。これに対して、複数の油圧ジャッキは、ロッドの吊り上げ又は吊り下ろし作業を同期させる必要がある。これは、特定の吊りロッドに揚体(大型構造物)の荷重が集中的に作用して不安定となることを防止するためである。
【0042】
上記構成による本発明の吊りロッド着脱システム12の作用について以下説明する。
まず、吊りロッド着脱手段によるロッド単体の連結、吊りロッドの吊り下ろしについて説明する。
複数の油圧ジャッキにより吊りロッドの吊り下ろし作業が行われると、制御手段14に各吊りロッドの吊り下ろし信号が入力される。制御手段14から吊りロッド着脱手段10へロッド単体90の連結信号が送信される。各着脱手段では以下のようなロッド単体の連結を行っている。
【0043】
図7は、ロッド単体をロッドラックから着脱位置まで移動させる着脱位置の側面図及び平面図である。図7(1)に示すように、ロッドラック20のロッド単体90を移載部32へ移動させる。次いで移載部32からロッド受台44へロッド単体90を移動させる。ロッド単体90のヘッド部92の下端面は、ロッド受台44の凹部45の段差46上に支持される。ロッドラック20の支持部24及び移載部32の上面には摺動部28,36が形成されており、重量物のロッド単体90を摺動させることができる。支持部24及び移載部32の上面と、凹部45の段差46の上端面は、略同一平面上に形成されている。ロッドラック20と移載部32とロッド受台44は軸心を直線上に配置している。このため、ロッド単体90をロッドラック20からロッド受台44まで、水平方向で容易に移動させることができる。なお、ロッド単体90を摺動部28,36上で回転させながら移動させると、取り扱いがさらに容易となる。次に図7(2)に示すように、ロッド単体90を移載したロッド受台44を着脱位置まで水平方向に移動させる。ロッド受台44は、ロッド単体90のヘッド部92の下端面を支持した状態であり、横方向に移動させることができる。
【0044】
図8は、ロッド単体をロッド支え部で支持して、ロッド受台を下降させる着脱位置の側面図及び平面図である。図8(1)に示すように、ロッド支え部80の支持部82をシリンダ機構84により着脱位置のロッド単体90に向けて、ロッド単体90の移動方向と交差する方向から前進させて、ロッド単体90のロッド部94を両側から把持する。次に図8(2)に示すように、ロッド受台44をレール昇降部50によって下段位置まで下降させる。ロッド単体90は、着脱位置でロッド受台44から離間してロッド支え部80のみで支持される。
【0045】
図9はロッド受台の退避と従動ローラを前進させる着脱位置の側面図及び平面図である。図9(1)に示すように、下降させたロッド受台44を着脱位置から退避位置まで退避させる。次に図9(2)に示すように、従動ローラ66をシリンダ機構68aにより着脱位置のロッド単体90に向けて、ロッド単体90の移動方向と交差する方向から前進させて、ロッド単体90のヘッド部92の側面に接触させる。前進した従動ローラ66の停止位置は、ロッド単体90aの軸心を着脱位置の下方のロッド単体90bの軸心と略一致する位置に設定している。
【0046】
図10は駆動ローラを前進させて、ロッド支え部を後退させる着脱位置の側面図及び平面図である。図10(1)に示すように、駆動ローラ62をシリンダ機構68bにより着脱位置のロッド単体90に向けて、ロッド単体90の移動方向と交差する方向から前進させて、ロッド単体90のヘッド部92の側面に接触させる。駆動ローラ62の停止位置は、ロッド単体90aの軸心を着脱位置の下方のロッド単体90bの軸心と略一致する位置に設定している。これにより駆動ローラ62及び従動ローラ66(66a,66b)で指示されたロッド単体90aの軸心は、着脱位置の下方のロッド単体90bの軸心と略一致させることができる。次に図10(2)に示すように、ロッド単体90のヘッド部92を駆動ローラ62及び従動ローラ66で支持した後、ロッド支え部80を後退させる。
【0047】
図11はロッド単体のねじ込みと駆動ローラを後退させる着脱位置の側面図及び平面図である。図11(1)に示すように、駆動モータ64を駆動して、駆動ローラ62を回転させると、ロッド単体90aの雄ねじ部98がロッド単体90bの雌ねじ部96にねじ込まれる。従動ローラ66は、ホルダ65により所定の付加が与えられて、正逆方向へ回転自在に支持されているため、ロッド単体90aの回転に従って回転する。従動ローラ66上の検知手段70は次のようにロッド単体90aの結合を感知している。即ち、ロッド単体90aを結合させた状態では、ロッド単体90aの螺合によって着脱位置から雄ねじ部98に相当する分だけロッド単体90が下方に移動する。第1及び第2発光部と第1及び第2受光部を結ぶ直線上に、当初、重なっていたロッド単体90のヘッド部92の側面の一部が重ならなくなる。このため、第1及び第2受光部のいずれも第1及び第2発光部からのレーザ光を受光することができ、ロッド単体90の結合を感知することができる。検知手段70でロッド単体90aの結合を感知した後、駆動ローラ62の回転を停止させる。次に図11(2)に示すように、駆動ローラ62を後退させる。
【0048】
図12は従動ローラを後退させた着脱位置の側面図及び平面図である。図示のように従動ローラ66を後退させる。ロッド単体90b上には新たなロッド単体90aが結合されている。制御手段14に吊りロッド着脱手段10から各吊りロッドのロッド単体の連結信号が入力される。各吊りロッドのロッド単体の連結信号が入力された後、油圧ジャッキ110を可動させて吊りロッド100の吊下げを行うことができる。このような吊りロッド着脱手段10によるロッド単体90の連結と、油圧ジャッキによる吊りロッドの吊り下ろし作業を繰り返し交互に行うことにより、大型構造物を高所から低所へ吊り下ろすことができる。
【0049】
次に吊りロッド着脱手段によるロッド単体の取り外し、吊りロッドの吊り上げについて説明する。
複数の油圧ジャッキにより吊りロッドの吊り上げ作業が行われると、制御手段14に各吊りロッドの吊り上げ信号が送信される。各着脱手段では以下のようなロッド単体の取り外しを行っている。
【0050】
図13は着脱位置に吊りロッドの先端の単体ロッドを配置した側面図及び平面図である。図示のように油圧ジャッキ110を可動させて吊りロッド100の吊り上げを行い、着脱位置に取り外そうとするロッド単体90aを配置させる。
【0051】
図14は従動ローラと駆動ローラを前進させる着脱位置の側面図及び平面図である。図14(1)に示すように、従動ローラ66をシリンダ機構68aにより着脱位置のロッド単体90に向けて、ロッド単体90の移動方向と交差する方向から前進させて、ロッド単体90のヘッド部92の側面に接触させる。前進した従動ローラ66の停止位置は、ロッド単体90aの軸心を着脱位置の下方のロッド単体90bの軸心と略一致する位置に設定している。次に図14(2)に示すように、駆動ローラ62をシリンダ機構68bにより着脱位置のロッド単体90に向けて、ロッド単体90の移動方向と交差する方向から前進させて、ロッド単体90のヘッド部92の側面に接触させる。前進し駆動ローラ62の停止位置は、ロッド単体90aの軸心を着脱位置の下方のロッド単体90bの軸心と略一致する位置に設定している。これにより駆動ローラ62及び従動ローラ66で指示されたロッド単体90aの軸心は、着脱位置の下方のロッド単体90bの軸心と略一致させることができる。
【0052】
図15はロッド単体の取り外しとロッド支え部で支持する着脱位置の側面図及び平面図である。図15(1)に示すように、駆動モータ64を駆動して、駆動ローラ62を回転させると、ロッド単体90aの雄ねじ部98がロッド単体90bの雌ねじ部96から取り外される。従動ローラ66は、ホルダ65により所定の付加が与えられて、正逆方向へ回転自在に支持されているため、ロッド単体90aの回転に従って回転する。従動ローラ66上の検知手段70は次のようにロッド単体90aの分離を感知している。即ち、ロッド単体90aを分離させた状態では、ロッド単体90aの取り外しによって着脱位置から雄ねじ部98に相当する分だけロッド単体90が上方に移動する。第1及び第2発光部と第1及び第2受光部を結ぶ直線上に、当初、重なっていないロッド単体90のヘッド部92の側面の一部が重なるようになる。このため、第1及び第2受光部のいずれも第1及び第2発光部からのレーザ光が遮断されて受光することができず、ロッド単体90の分離を感知することができる。検知手段70でロッド単体90aの結合を感知した後、駆動ローラ62の回転を停止させる。次に図15(2)に示すように、ロッド支え部80の支持部82をシリンダ機構84により着脱位置のロッド単体90に向けて、ロッド単体90の移動方向と交差する方向から前進させて、ロッド単体90のロッド部94を両側から把持する。
【0053】
図16は駆動ローラと従動ローラを後退させる着脱位置の側面図及び平面図である。図16(1)に示すように、駆動ローラ62を後退させる。次に図16(2)に示すように、従動ローラ66を後退させる。ロッド単体90aは、着脱位置でロッド支え部80のみで支持される。
【0054】
図17はロッド受台の着脱位置までの前進とロッド受台を上昇させる着脱位置の側面図及び平面図である。図17(1)に示すように、下段位置で退避させたロッド受台44を着脱位置まで前進させる。次に図17(2)に示すように、ロッド受台44をレール昇降部50によって上段位置まで上昇させる。
【0055】
図18はロッド支え部を後退させてロッド単体を着脱位置から移載部まで移動させる着脱位置の側面図及び平面図である。図18(1)に示すように、ロッド単体90のヘッド部92の下端面をロッド受台44の凹部45で支持した後、ロッド支え部80を後退させる。次に図18(2)に示すように、ロッド単体90を移載したロッド受台44を着脱位置から移載部32まで水平方向に移動させる。ロッド受台44から移載部32へロッド単体90を移動させる。次いで移載部32のロッド単体90をロッドラック20へ移動させる。ロッド単体90のヘッド部92の下端面は、ロッド受台44の凹部45の段差46上に支持される。支持部24及び移載部32の上面と、凹部45の段差46の上端面は、略同一平面上に形成されている。ロッドラック20と移載部32とロッド受台44は軸心を直線上に配置している。またロッドラック20の支持部24及び移載部32の上面には摺動部28,36が形成されており、重量物のロッド単体90を摺動させることができる。このため、ロッド単体90をロッド受台44からロッドラック20まで、水平方向に容易に移動することができる。
【0056】
制御手段14に吊りロッド着脱手段10から各吊りロッドのロッド単体の取り外し信号が入力される。各吊りロッドのロッド単体の取り外し信号が入力された後、油圧ジャッキ110を可動させて吊りロッド100の吊り上げを行うことができる。このような吊りロッド着脱手段によるロッド単体の取り外しと、油圧ジャッキによる吊りロッドの吊り上げ作業を繰り返し交互に行うことにより、大型構造物を高所位置に吊り上げることができる。
【0057】
このような本発明の吊りロッド着脱システムによれば、複数の吊りロッドごとに形成した同一平面上のロッドラックと着脱位置の間で、ロッド単体を水平方向で移動させるだけであり、着脱システムの構成を小型化することができる。またヘッド部の側面にローラを接触させて回転することにより、容易にロッド単体を着脱させることができる。
【符号の説明】
【0058】
10………吊りロッド着脱手段、10a………第1着脱手段、10b………第2着脱手段、12………吊りロッド着脱システム、14………制御手段、20………ロッドラック、22………スリット、24………支持部、26………出入口、28………摺動部、30………着脱部、32………移載部、33a,33b………支持片、34………スリット、36………摺動部、40………移動部、42………レール、43………貫通孔、44………ロッド受台、45………凹部、46………段差、47………シャフト、48………モータ、50………レール昇降部、52………シリンダ機構、60………ローラ、61………溝、62………駆動ローラ、63………ホルダ、64………駆動モータ、65………ホルダ、66………従動ローラ、68a,68b………シリンダ機構、70………検知手段、72………発光部、74………受光部、80………ロッド支え部、82………支持部、84………シリンダ機構、90………ロッド単体、92………ヘッド部、94………ロッド部、96………雌ねじ部、98………雄ねじ部、100………吊りロッド、110………油圧ジャッキ、120………大型構造物、130………鉄骨柱、140………仮設梁、150………油圧ジャッキ、160………吊りロッド、200………ボイラモジュール、201………ボイラサイド鉄骨、202………ボイラジャッキ、204………吊りロッド、204S………ロッド単体、206………ロッド自動着脱装置、208………ロッド搬送装置、209………作業床、210………収容箱、300S………ロッド単体、302………回転モータ、304………着脱チャック、306………回転検出板、308………スプリングホルダ、310………距離検出板。
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に大型構造物の昇降作業に用いられる複数の吊りロッドをジャッキの昇降に合わせて着脱させる吊りロッド着脱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大型構造物の据付には吊下げ施工方式が採用されている。吊下げ施工方式は、例えば、大型吊下げ式ボイラを有する火力発電所で、吊下げ架構となる鉄骨フレームの天端部にボイラ支持用の大梁を設け、この大梁にボイラ構成部品を吊下げた状態で支持しながら施工する方式である。
【0003】
図21は吊りロッドによる大型構造物の揚重状態の説明図である。大型構造物120の周囲に鉄骨柱130を設置して鉄骨柱130の上部に仮設梁140を設けている。仮設梁140上に複数の油圧ジャッキ150を配設し、大型構造物120を下端に取り付けた吊りロッド160を支持している。
【0004】
具体的な施工方式は、仮設梁や大梁などの支持梁に設置した複数の揚重ジャッキを用い、ボイラ構成部品のモジュールを地上から揚重ジャッキを利用して吊り上げながら付帯部品を組み付けていき、最終的に地上から数十メートル上方の大梁に対しスリングロッドなどを用いて吊下げ支持するものである。
【0005】
特許文献1には、従来の揚重ジャッキシステムが開示されている。図22は従来の揚重ジャッキシステムの構成概略を示す説明図である。従来、ボイラモジュール200の取り付けの際には、ボイラサイド鉄骨201の上部に設けたボイラジャッキ202で、吊りロッド204を介して昇降させている。ボイラジャッキ202の上方には、ロッド自動着脱装置206を横行及び昇降可能に設けている。ロッド自動着脱装置206は、ボイラジャッキ202によって押し上げられた吊りロッド204の先端のロッド単体204Sを把持して、回転させて、取り外してロッド搬送装置208に移送できるようにしてある。ロッド搬送装置208は、ロッド自動着脱装置206からロッド単体204Sを受け取ると、作業床209に設けてあるロッド収容箱210側に搬送している。
【0006】
特許文献2には、従来の吊りロッドの着脱装置が開示されている。図23は従来の吊りロッド着脱装置の構成概略を示す説明図である。図示のようにロッド単体300Sは、回転モータ302によって回転する着脱チャック304により、ねじ結合が解除される方向に回転させられ、次第に上昇する。制御装置は、回転検出板306に設けた検出孔を検出する回転センサーの出力信号から着脱チャック304を駆動して着脱チャック304の上昇速度に合わせて回転検出板306を上昇させている。また制御装置は、スプリングホルダ308に設けたばね伸縮センサーが距離検出板310の位置を検出して出力する信号に基づいて昇降モータ(不図示)を制御し、回転検出板306の上昇速度が着脱チャック304の上昇速度から大きくずれないように制御させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−278385号公報
【特許文献2】特開平9−278383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のロッド自動着脱装置は、回転モータでロッド単体を連結又は取り外す際に、ロッド単体のヘッド部を把持して回転させる方式のため、ねじ込みに相当する長さ分だけ上下方向に移動させなければならない。具体的には昇降モータを用いて回転モータをねじ込み量に応じて移動させなければならない。昇降モータを用いて回転モータを上下移動させる制御は、装置構成が複雑化して同期制御が難しいという問題があった。
【0009】
ロッド自動着脱装置は、吊りロッドのヘッド部分を把持爪で把持して上方に引き抜いて移動させているため、落下の虞があり、位置合わせの精度が要求されるなどの操作性が悪いという問題があった。
【0010】
ロッド自動着脱装置はセンサーを多用し精密化しているため、各種センサーの調整が難しくなる。故障が生じた場合には、僅か1箇所のセンサーが故障しただけでも動作しなくなる可能性がある。また故障箇所を特定するのに時間がかかるという問題があった。
【0011】
また、従来の揚重ジャッキシステムは、ボイラジャッキとロッド搬送装置の間で、取り外し又は取り付けるロッド単体を横行及び昇降移動させている。このため、特に高さ方向のスペースを広く確保しなければならず、装置自体が大型化してしまうという問題があった。
【0012】
そこで、上記従来技術の問題点を解決するため、本発明は、複数の吊りロッドを容易に着脱可能な吊りロッド着脱システムを提供することを目的としている。また本発明は、小型化を図った吊りロッド着脱システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため本発明の吊りロッド着脱システムは、重量物を揚重する複数の吊りロッドを構成するロッド単体を着脱する吊りロッド着脱システムであって、前記ロッド単体を収容するとともに、前記ロッド単体の着脱位置の水平方向で取り付け可能なロッドラックと、前記ロッドラックと前記着脱位置の間で前記ロッド単体を支持して水平方向に移動させる移動部と、前記着脱位置で前記ロッド単体のヘッド部の側面に接して回転し前記ロッド単体同士を着脱させるローラと、からなる着脱手段と、前記着脱手段と接続して前記ロッド単体の着脱を制御する制御手段と、を備え、前記着脱手段は、同一平面上となる複数の前記着脱位置に取り付け可能としたことを特徴としている。
【0014】
上記構成によれば、複数の吊りロッドごとに形成した同一平面上のロッドラックと着脱位置の間で、ロッド単体を水平方向で移動させるだけであり、着脱システムの構成を小型化することができる。そのため、ロッドの着脱及び移動、収納を監視する作業員も同一平面上の移動だけで済み、大幅な労力低減が図れる。また、同一平面のため、少人数で監視することができ、作業者間で互いに確認し合いながら作業を進めることもできる。またヘッド部の側面にローラを接触させて回転させることにより、容易にロッド単体を着脱させることができる。
【0015】
前記ローラは、前記ロッド単体の軸方向の移動を検知する検知手段を備え、前記検知手段は、前記制御手段と接続し検出値を送信可能としているとよい。
上記構成によれば、着脱位置のロッド単体の結合又は分離を容易に検出することができる。
【発明の効果】
【0016】
上記構成によれば、複数の吊りロッドごとに形成した同一平面上のロッドラックと着脱位置の間で、ロッド単体を水平方向で移動させるだけであり、着脱システムの構成を小型化し、着脱作業の効率化が図れる。またヘッド部の側面にローラを接触させて回転させることにより、ロッド単体のねじ込みに応じて、ローラを上下方向に移動させる必要がなく、容易にロッド単体を着脱させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態の吊りロッド着脱手段の構成概略を示す説明図である。
【図2】吊りロッド着脱手段の平面図である。
【図3】図2のA−A矢視図である。
【図4】ロッドラックの説明図である。
【図5】レール昇降部の説明図である。
【図6】検知手段の説明図である。
【図7】ロッド単体をロッドラックから着脱位置まで移動する着脱位置の側面図及び平面図である。
【図8】ロッド単体をロッド支え部で支持して、ロッド受台を下降させる着脱位置の側面図及び平面図である。
【図9】ロッド受台の退避と従動ローラを前進させる着脱位置の側面図及び平面図である。
【図10】駆動ローラを前進させて、ロッド支え部を後退させる着脱位置の側面図及び平面図である。
【図11】ロッド単体のねじ込みと駆動ローラを後退させる着脱位置の側面図及び平面図である。
【図12】従動ローラを後退させた着脱位置の側面図及び平面図である。
【図13】着脱位置に吊りロッドの先端の単体ロッドを配置した側面図及び平面図である。
【図14】従動ローラと駆動ローラを前進させる着脱位置の側面図及び平面図である。
【図15】ロッド単体の取り外しとロッド支え部で支持する着脱位置の側面図及び平面図である。
【図16】駆動ローラと従動ローラを後退させる着脱位置の側面図及び平面図である。
【図17】ロッド受台の着脱位置までの前進とロッド受台を上昇させる着脱位置の側面図及び平面図である。
【図18】ロッド支え部を後退させてロッド単体を着脱位置から移載部まで移動させる着脱位置の側面図及び平面図である。
【図19】吊りロッドとロッド単体の説明図である。
【図20】本発明の吊りロッド着脱システムの構成概略を示す説明図である。
【図21】吊りロッドによる大型構造物の揚重状態の説明図である。
【図22】従来の揚重ジャッキシステムの構成概略を示す説明図である。
【図23】従来の吊りロッド着脱装置の構成概略を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の吊りロッド着脱システムの実施形態を添付の図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
図19は吊りロッドとロッド単体の説明図である。本発明の吊りロッド着脱手段10で取り扱う吊りロッド100は、ロッド単体90を軸方向に複数連結させて長尺となるように構成している。各ロッド単体90は、大径のヘッド部92と、小径のロッド部94から構成されている。ヘッド部92とロッド部94は、異径のため接続部分に段差が生じている。ヘッド部92は、上端面から下方の軸方向に沿って内部を凹状に形成して雌ねじ部96を設けている。ロッド部94は下端部分に前記雌ねじ部96に螺合する雄ねじ部98を設けている。そして、第1のロッド単体90bの雌ねじ部96に第2のロッド単体90aの雄ねじ部98を結合(螺合)させて、複数のロッド単体90を軸方向に螺着結合して1本の吊りロッド100を形成することができる。またヘッド部92を利用してジャッキアップできるようにしている。
【0019】
図1は本実施形態の吊りロッド着脱手段の構成概略を示す説明図である。図2は吊りロッド着脱手段の平面図である。なお、図1及び図2はロッド支え部を省略している。図3は図2のA−A矢視図である。
【0020】
図示のように、本実施形態の吊りロッド着脱手段(以下単に着脱手段という)10は、ロッドラック20と、着脱部30と、を主な基本構成としている。ロッドラック20と着脱部30は、図示のように、吊りロッド100の軸心Sに対して、油圧ジャッキ110上のロッド単体90同士を螺合(結合)又は分離する位置(以下、単に着脱位置という(矢印B))から交差する水平方向(Y軸方向)に並べて配置されている。
【0021】
図4はロッドラックの説明図であり、(1)は側面図、(2)は正面図、(3)は移載部側の斜視図である。収容手段となるロッドラック20は、複数のロッド単体90を直線上に並べて収容することができる。ロッドラック20には、上面にロッド単体90のヘッド部92の外径よりも小さく、ロッド部94の外径よりも大きい幅のスリット22を設けた支持部24が形成されている。ロッドラック20の長手方向の一方の端面には、上側をヘッド部92とし、下側をロッド部94とするロッド単体90を側面(横方向)から挿入可能な出入口26が形成されている。ロッドラック20の側面の出入口26と上面のスリット22は連続して形成している。またロッド単体90のヘッド部92の下短面と接する支持部24の上面には、摺動部28が形成されている。これにより、ロッドラック20の支持部24上でロッド単体90を支持部24の長手方向に沿って摺動可能として、手作業によるロッド単体90の移動を容易に行なうことができる。またロッドラックにベルトコンベアを配設して後述するロッド受台との間を自動でロッド単体の受け渡しができるように構成してもよい。
【0022】
このような構成のロッドラック20は、ロッド単体90をロッドラック20の出入口26から挿入すると、ヘッド部92が支持部24上から露出して、ロッド部94が内部に収容され、ロッド単体90同士を同一平面であって直線上に配置された状態で収容することができる。
【0023】
着脱部30は、移動部40と、ローラ60と、ロッド支え部80と、を主な基本構成とし、ロッド単体90の移動及び着脱を行っている。
移動部40は、レール42と、ロッド受台44と、シャフト47と、モータ48と、レール昇降部50と、を主な基本構成としている。
【0024】
レール42は、図2に示すように着脱位置(矢印B)を跨ぐX軸方向に所定間隔を空けて配置され、かつ、レール42の長手方向(Y軸方向)の略中央に着脱位置が位置するように配置している。また、レール42は、長手方向をロッドラック20の長手方向と同じ方向(Y軸方向)、即ち同軸となる直線上に配置している。
【0025】
ロッド受台44は前記レール42上を走行可能に形成している。ロッド受台44にはロッド単体90の側方から差し込んでヘッド部92の下端面を支持する凹部45が形成されている。凹部45はヘッド部92の外周に沿って略U字型に形成している。凹部45の内周面にはヘッド部92の下端面を支持する段差46が形成されている。ロッド受台44は、レール42の長手方向に沿って配置されたシャフト47が貫通している。シャフト47の端部はモータ48と接続している。シャフト47の表面には、ねじ切り加工が施されており、ロッド受台44の貫通孔43の内側にも、これと同ピッチのねじ切り加工が施されている。このような構成のロッド受台44は、モータ48を駆動させるとシャフト47が回転してレール42上を移動することができる。またモータ48の回転方向を変えることにより、ロッド受台44を進退移動させることができる。
【0026】
レール昇降部50は、平面視したレール42の上下方向、すなわち吊りロッド100の軸方向(Z軸方向)へ、レール42全体を一体的に昇降できるように形成している。本実施形態のレール昇降部50は、一例として、一対のレール42の両端にそれぞれ4つのシリンダ機構52を配置した構成としている。4つのシリンダ機構52は、夫々シリンダの移動量を同期させて、レール42全体を一体的に上下方向に昇降させるように構成している。
【0027】
実施形態に係るレール昇降部50は、一例として、上段位置及び下段位置の2段階で昇降可能な構成としている。図5はレール昇降部50の説明図であり、(1)は上段位置、(2)は下段位置をそれぞれ示している。レール昇降部50によるレール42の上段位置は、ロッドラック20の支持部24の上面と、ロッド受台44の凹部45の段差46上面が略一致して略同一平面上となる位置に設定している。一方、レール昇降部50によるレール42の下段位置は、図5(2)に示すように、着脱位置において、ロッド単体90がロッド支え部80で支持された後、ロッド受台44によるロッド単体90の支持が解除できる位置、即ちヘッド部92の下面から離間する位置であって、かつ、ローラ60とロッド支え部80と干渉しない位置に設定している。なお、ロッド受台44がレール42上を進退移動可能であれば、シャフト47の構成の他にも、例えば、リニアモーターなどを適用しても良い。
【0028】
ローラ60は、駆動ローラ62と、駆動モータ64と、従動ローラ66と、シリンダ機構と、検知手段70と、を主な基本構成としている。
駆動ローラ62と従動ローラ66は、着脱位置を中心として対向するように配置し、かつ、移動部40の進退方向(Y軸方向)と交差する方向(X軸方向)の同一平面上に配置している。
【0029】
駆動ローラ62は、回転軸と直結させてローラ60を正逆方向に回転可能な駆動モータ64を取り付けている。駆動ローラ62と駆動モータ64は、ホルダ63に取り付けている。このホルダ63には、着脱位置に対して進退移動するシリンダ機構68aが取り付けられている。
【0030】
駆動ローラ62の表面には回転軸の軸芯に沿って複数の溝61が形成されている。これにより、駆動ローラ62がヘッド部92の側面に接触してロッド単体90を回転させる際、駆動ローラ62とヘッド部92との間の摩擦係数を大きくして、空回りを防止することができる。
【0031】
従動ローラ66は、第1及び第2従動ローラ66a,66bを備え、第1及び第2従動ローラ66a,66bの隙間をヘッド部92の直径よりも小さく設定している。第1及び第2ローラ66a,66bは、回転軸を支持するホルダ65を取り付けている。さらに、このホルダ65は、着脱位置に対して進退移動するシリンダ機構68bを取り付けている。なお、シリンダ機構68bとシリンダ機構68aは、長手方向の軸心を一致させて、進退方向が同一直線上となるように配置している。駆動ローラ62および従動ローラ66のヘッド部92の側面の接触位置は、ロッド単体90が結合又は分離したいずれの状態でも、ヘッド部92の側面と接触することができる位置に設定している。
【0032】
従動ローラ66上には検知手段70を取り付けている。図6は検知手段の説明図である。検知手段70はロッド単体90の結合又は分離を検出するセンサーである。
図6(1)に示すように、検知手段70は、発光部72と受光部74で構成している。発光部72はロッド単体90の軸方向に沿って、上段の第1発光部72aと下段の第2発光部72bで構成している。受光部74はロッド単体90の軸方向に沿って、上段の第1受光部74aと下段の第2受光部74bで構成している。上段の第1発光部72aと第1受光部74aはそれぞれ対をなしており、第1発光部72aから第2受光部74aへ向けてレーザ光を照射して、第1受光部74aでレーザ光を検出している。第2発光部72bと第2受光部74bも、第1発光部72aと第1受光部74aと同様に構成している。検知手段70は、発光部72と受光部74を従動ローラ66の2つのローラ上にそれぞれ配置している。
【0033】
そして、着脱位置でロッド単体90の側面に従動ローラ66が接触したとき、発光部72と受光部74を結ぶ直線上に、平面視したロッド単体90のヘッド部92の側面の一部が重なるように配置している。検知手段70は、ロッド単体90が結合されている状態で、ロッド単体90の側面によってレーザ光が遮断されない位置に、第2発光部72b及び第2受光部74bを取り付けている。検知手段70は、ロッド単体90が分離している状態で、ロッド単体90の側面によってレーザ光が遮断される位置に、第1発光部72a及び第1受光部74aと第2発光部72b及び第2受光部74bを取り付けている。
【0034】
上記構成の検知手段70は、具体的にロッド単体90を次のように感知している。まず、図6(2)に示すように、ロッド単体90を結合させた状態では、ロッド単体90の螺合によって着脱位置から雄ねじ部に相当する分だけロッド単体90が下方に移動する。第1及び第2発光部72a,72bと第1及び第2受光部74a,74bを結ぶ直線上に、平面視したロッド単体90のヘッド部92の側面の一部が重ならなくなる。このため、第1及び第2受光部74a,74bのいずれも第1及び第2発光部72a,72bからのレーザ光を受光することができ、ロッド単体90の結合を感知することができる。
【0035】
一方、図6(3)に示すように、ロッド単体90を分離させた状態では、着脱位置にロッド単体90が存在する。第1及び第2発光部72a,72bと第1及び第2受光部74a,74bを結ぶ直線上に、平面視したロッド単体90のヘッド部92の側面の一部が重なっている。このため、ロッド単体90によって第1及び第2発光部72a,72bから第1及び第2受光部74a,74bへレーザ光が遮断されて、第1及び第2受光部74a,74bのいずれもレーザ光を受光することができず、ロッド単体90の分離を感知することができる。
【0036】
ロッド支え部80は、一対の支持部82及びシリンダ機構84から構成されている。ロッド支え部80は、前記ローラ60の下方に配置している。ロッド支え部80は、ローラ60と同様に、着脱位置を中心として対向するように配置し、かつ、移動部40の進退方向(Y軸方向)と交差する方向(X軸方向)の同一平面上に配置している。一対の支持部82a,82bは、ロッド単体90のロッド部94を把持して、着脱位置上のロッド単体90を支持することができる。支持部82a,82bには、夫々シリンダ機構84a,84bが取り付けられ、中心の着脱位置に向けて進退移動させることができる。シリンダ機構84bとシリンダ機構84aは、進退方向が同一直線上となるように配置している。
【0037】
ロッドラック20と着脱部30の間には移載部32が設置されている。移載部32はロッド単体90を、ロッドラック20から着脱部30へ、又は着脱部30からロッドラック20へ、移動させる際に水平状態を維持しながら引き渡すように支持する支持部材である。移載部32は、移動するロッド単体90のロッド部94の通路を確保するように、移動方向を中心として対称に配置された一対の支持片33a,33bで構成している。支持片33a,33bは平面視すると、ロッドラック20側から着脱部30側に向かって先細となる形状に形成している。支持片33a,33bの上面は、ロッドラック20の上端面の支持部24と略一致するように配置させている。また、支持片33a,33bの上面には摺動部36が形成されている。これにより、移載部32上でロッド単体90を摺動させて、手作業によるロッド単体90の移動を容易に行なうことができる。支持片33a,33bの側面同士は、ロッド単体90のロッド部94の直径に相当する隙間を空けている。ロッドラック20の出入口26の端面と、移載部32のロッドラック20側の端面は、ボルトナットなどの締結手段を用いて接続している。
【0038】
図20は本発明の吊りロッド着脱システムの構成概略を示す説明図である。図示のように、吊りロッド着脱システム12は、大型構造物を支持する複数の吊りロッドの着脱位置に取付け可能な吊りロッド着脱手段10と、制御手段14とを主な基本構成としている。
【0039】
図20には、仮設梁140の2本の吊りロッドに第1着脱手段10a、第2着脱手段10bをそれぞれ取り付けている。このような吊りロッド着脱手段10は、複数の吊りロッドの着脱位置を含む同一平面上に形成されている。
【0040】
制御手段14は、第1着脱手段10a及び第2着脱手段10bと電気的に接続し、吊りロッドを構成するロッド単体90の着脱を制御可能に構成している。
また制御手段14は複数の油圧ジャッキと電気的に接続し、油圧ジャッキによるロッド単体の着脱信号を入手できるように構成されている。なお制御手段14は、油圧ジャッキによるロッド単体の着脱を制御可能に構成してもよい。
【0041】
具体的に制御手段14は、油圧ジャッキによる吊りロッドの吊り下ろし又は吊り上げ作業が行われた後、吊りロッド着脱手段10にロッド単体90の連結又は取り外しの制御信号を送信している。また制御手段14は、検知手段70と電気的に接続させて、駆動ローラの回転を制御するように構成している。制御手段14は、複数の着脱手段のロッド単体の着脱を同期させることにより、作業時間を大幅に短縮することができる。また制御手段14は、複数の着脱手段のロッド単体の着脱を個別に行うように制御してもよい。これに対して、複数の油圧ジャッキは、ロッドの吊り上げ又は吊り下ろし作業を同期させる必要がある。これは、特定の吊りロッドに揚体(大型構造物)の荷重が集中的に作用して不安定となることを防止するためである。
【0042】
上記構成による本発明の吊りロッド着脱システム12の作用について以下説明する。
まず、吊りロッド着脱手段によるロッド単体の連結、吊りロッドの吊り下ろしについて説明する。
複数の油圧ジャッキにより吊りロッドの吊り下ろし作業が行われると、制御手段14に各吊りロッドの吊り下ろし信号が入力される。制御手段14から吊りロッド着脱手段10へロッド単体90の連結信号が送信される。各着脱手段では以下のようなロッド単体の連結を行っている。
【0043】
図7は、ロッド単体をロッドラックから着脱位置まで移動させる着脱位置の側面図及び平面図である。図7(1)に示すように、ロッドラック20のロッド単体90を移載部32へ移動させる。次いで移載部32からロッド受台44へロッド単体90を移動させる。ロッド単体90のヘッド部92の下端面は、ロッド受台44の凹部45の段差46上に支持される。ロッドラック20の支持部24及び移載部32の上面には摺動部28,36が形成されており、重量物のロッド単体90を摺動させることができる。支持部24及び移載部32の上面と、凹部45の段差46の上端面は、略同一平面上に形成されている。ロッドラック20と移載部32とロッド受台44は軸心を直線上に配置している。このため、ロッド単体90をロッドラック20からロッド受台44まで、水平方向で容易に移動させることができる。なお、ロッド単体90を摺動部28,36上で回転させながら移動させると、取り扱いがさらに容易となる。次に図7(2)に示すように、ロッド単体90を移載したロッド受台44を着脱位置まで水平方向に移動させる。ロッド受台44は、ロッド単体90のヘッド部92の下端面を支持した状態であり、横方向に移動させることができる。
【0044】
図8は、ロッド単体をロッド支え部で支持して、ロッド受台を下降させる着脱位置の側面図及び平面図である。図8(1)に示すように、ロッド支え部80の支持部82をシリンダ機構84により着脱位置のロッド単体90に向けて、ロッド単体90の移動方向と交差する方向から前進させて、ロッド単体90のロッド部94を両側から把持する。次に図8(2)に示すように、ロッド受台44をレール昇降部50によって下段位置まで下降させる。ロッド単体90は、着脱位置でロッド受台44から離間してロッド支え部80のみで支持される。
【0045】
図9はロッド受台の退避と従動ローラを前進させる着脱位置の側面図及び平面図である。図9(1)に示すように、下降させたロッド受台44を着脱位置から退避位置まで退避させる。次に図9(2)に示すように、従動ローラ66をシリンダ機構68aにより着脱位置のロッド単体90に向けて、ロッド単体90の移動方向と交差する方向から前進させて、ロッド単体90のヘッド部92の側面に接触させる。前進した従動ローラ66の停止位置は、ロッド単体90aの軸心を着脱位置の下方のロッド単体90bの軸心と略一致する位置に設定している。
【0046】
図10は駆動ローラを前進させて、ロッド支え部を後退させる着脱位置の側面図及び平面図である。図10(1)に示すように、駆動ローラ62をシリンダ機構68bにより着脱位置のロッド単体90に向けて、ロッド単体90の移動方向と交差する方向から前進させて、ロッド単体90のヘッド部92の側面に接触させる。駆動ローラ62の停止位置は、ロッド単体90aの軸心を着脱位置の下方のロッド単体90bの軸心と略一致する位置に設定している。これにより駆動ローラ62及び従動ローラ66(66a,66b)で指示されたロッド単体90aの軸心は、着脱位置の下方のロッド単体90bの軸心と略一致させることができる。次に図10(2)に示すように、ロッド単体90のヘッド部92を駆動ローラ62及び従動ローラ66で支持した後、ロッド支え部80を後退させる。
【0047】
図11はロッド単体のねじ込みと駆動ローラを後退させる着脱位置の側面図及び平面図である。図11(1)に示すように、駆動モータ64を駆動して、駆動ローラ62を回転させると、ロッド単体90aの雄ねじ部98がロッド単体90bの雌ねじ部96にねじ込まれる。従動ローラ66は、ホルダ65により所定の付加が与えられて、正逆方向へ回転自在に支持されているため、ロッド単体90aの回転に従って回転する。従動ローラ66上の検知手段70は次のようにロッド単体90aの結合を感知している。即ち、ロッド単体90aを結合させた状態では、ロッド単体90aの螺合によって着脱位置から雄ねじ部98に相当する分だけロッド単体90が下方に移動する。第1及び第2発光部と第1及び第2受光部を結ぶ直線上に、当初、重なっていたロッド単体90のヘッド部92の側面の一部が重ならなくなる。このため、第1及び第2受光部のいずれも第1及び第2発光部からのレーザ光を受光することができ、ロッド単体90の結合を感知することができる。検知手段70でロッド単体90aの結合を感知した後、駆動ローラ62の回転を停止させる。次に図11(2)に示すように、駆動ローラ62を後退させる。
【0048】
図12は従動ローラを後退させた着脱位置の側面図及び平面図である。図示のように従動ローラ66を後退させる。ロッド単体90b上には新たなロッド単体90aが結合されている。制御手段14に吊りロッド着脱手段10から各吊りロッドのロッド単体の連結信号が入力される。各吊りロッドのロッド単体の連結信号が入力された後、油圧ジャッキ110を可動させて吊りロッド100の吊下げを行うことができる。このような吊りロッド着脱手段10によるロッド単体90の連結と、油圧ジャッキによる吊りロッドの吊り下ろし作業を繰り返し交互に行うことにより、大型構造物を高所から低所へ吊り下ろすことができる。
【0049】
次に吊りロッド着脱手段によるロッド単体の取り外し、吊りロッドの吊り上げについて説明する。
複数の油圧ジャッキにより吊りロッドの吊り上げ作業が行われると、制御手段14に各吊りロッドの吊り上げ信号が送信される。各着脱手段では以下のようなロッド単体の取り外しを行っている。
【0050】
図13は着脱位置に吊りロッドの先端の単体ロッドを配置した側面図及び平面図である。図示のように油圧ジャッキ110を可動させて吊りロッド100の吊り上げを行い、着脱位置に取り外そうとするロッド単体90aを配置させる。
【0051】
図14は従動ローラと駆動ローラを前進させる着脱位置の側面図及び平面図である。図14(1)に示すように、従動ローラ66をシリンダ機構68aにより着脱位置のロッド単体90に向けて、ロッド単体90の移動方向と交差する方向から前進させて、ロッド単体90のヘッド部92の側面に接触させる。前進した従動ローラ66の停止位置は、ロッド単体90aの軸心を着脱位置の下方のロッド単体90bの軸心と略一致する位置に設定している。次に図14(2)に示すように、駆動ローラ62をシリンダ機構68bにより着脱位置のロッド単体90に向けて、ロッド単体90の移動方向と交差する方向から前進させて、ロッド単体90のヘッド部92の側面に接触させる。前進し駆動ローラ62の停止位置は、ロッド単体90aの軸心を着脱位置の下方のロッド単体90bの軸心と略一致する位置に設定している。これにより駆動ローラ62及び従動ローラ66で指示されたロッド単体90aの軸心は、着脱位置の下方のロッド単体90bの軸心と略一致させることができる。
【0052】
図15はロッド単体の取り外しとロッド支え部で支持する着脱位置の側面図及び平面図である。図15(1)に示すように、駆動モータ64を駆動して、駆動ローラ62を回転させると、ロッド単体90aの雄ねじ部98がロッド単体90bの雌ねじ部96から取り外される。従動ローラ66は、ホルダ65により所定の付加が与えられて、正逆方向へ回転自在に支持されているため、ロッド単体90aの回転に従って回転する。従動ローラ66上の検知手段70は次のようにロッド単体90aの分離を感知している。即ち、ロッド単体90aを分離させた状態では、ロッド単体90aの取り外しによって着脱位置から雄ねじ部98に相当する分だけロッド単体90が上方に移動する。第1及び第2発光部と第1及び第2受光部を結ぶ直線上に、当初、重なっていないロッド単体90のヘッド部92の側面の一部が重なるようになる。このため、第1及び第2受光部のいずれも第1及び第2発光部からのレーザ光が遮断されて受光することができず、ロッド単体90の分離を感知することができる。検知手段70でロッド単体90aの結合を感知した後、駆動ローラ62の回転を停止させる。次に図15(2)に示すように、ロッド支え部80の支持部82をシリンダ機構84により着脱位置のロッド単体90に向けて、ロッド単体90の移動方向と交差する方向から前進させて、ロッド単体90のロッド部94を両側から把持する。
【0053】
図16は駆動ローラと従動ローラを後退させる着脱位置の側面図及び平面図である。図16(1)に示すように、駆動ローラ62を後退させる。次に図16(2)に示すように、従動ローラ66を後退させる。ロッド単体90aは、着脱位置でロッド支え部80のみで支持される。
【0054】
図17はロッド受台の着脱位置までの前進とロッド受台を上昇させる着脱位置の側面図及び平面図である。図17(1)に示すように、下段位置で退避させたロッド受台44を着脱位置まで前進させる。次に図17(2)に示すように、ロッド受台44をレール昇降部50によって上段位置まで上昇させる。
【0055】
図18はロッド支え部を後退させてロッド単体を着脱位置から移載部まで移動させる着脱位置の側面図及び平面図である。図18(1)に示すように、ロッド単体90のヘッド部92の下端面をロッド受台44の凹部45で支持した後、ロッド支え部80を後退させる。次に図18(2)に示すように、ロッド単体90を移載したロッド受台44を着脱位置から移載部32まで水平方向に移動させる。ロッド受台44から移載部32へロッド単体90を移動させる。次いで移載部32のロッド単体90をロッドラック20へ移動させる。ロッド単体90のヘッド部92の下端面は、ロッド受台44の凹部45の段差46上に支持される。支持部24及び移載部32の上面と、凹部45の段差46の上端面は、略同一平面上に形成されている。ロッドラック20と移載部32とロッド受台44は軸心を直線上に配置している。またロッドラック20の支持部24及び移載部32の上面には摺動部28,36が形成されており、重量物のロッド単体90を摺動させることができる。このため、ロッド単体90をロッド受台44からロッドラック20まで、水平方向に容易に移動することができる。
【0056】
制御手段14に吊りロッド着脱手段10から各吊りロッドのロッド単体の取り外し信号が入力される。各吊りロッドのロッド単体の取り外し信号が入力された後、油圧ジャッキ110を可動させて吊りロッド100の吊り上げを行うことができる。このような吊りロッド着脱手段によるロッド単体の取り外しと、油圧ジャッキによる吊りロッドの吊り上げ作業を繰り返し交互に行うことにより、大型構造物を高所位置に吊り上げることができる。
【0057】
このような本発明の吊りロッド着脱システムによれば、複数の吊りロッドごとに形成した同一平面上のロッドラックと着脱位置の間で、ロッド単体を水平方向で移動させるだけであり、着脱システムの構成を小型化することができる。またヘッド部の側面にローラを接触させて回転することにより、容易にロッド単体を着脱させることができる。
【符号の説明】
【0058】
10………吊りロッド着脱手段、10a………第1着脱手段、10b………第2着脱手段、12………吊りロッド着脱システム、14………制御手段、20………ロッドラック、22………スリット、24………支持部、26………出入口、28………摺動部、30………着脱部、32………移載部、33a,33b………支持片、34………スリット、36………摺動部、40………移動部、42………レール、43………貫通孔、44………ロッド受台、45………凹部、46………段差、47………シャフト、48………モータ、50………レール昇降部、52………シリンダ機構、60………ローラ、61………溝、62………駆動ローラ、63………ホルダ、64………駆動モータ、65………ホルダ、66………従動ローラ、68a,68b………シリンダ機構、70………検知手段、72………発光部、74………受光部、80………ロッド支え部、82………支持部、84………シリンダ機構、90………ロッド単体、92………ヘッド部、94………ロッド部、96………雌ねじ部、98………雄ねじ部、100………吊りロッド、110………油圧ジャッキ、120………大型構造物、130………鉄骨柱、140………仮設梁、150………油圧ジャッキ、160………吊りロッド、200………ボイラモジュール、201………ボイラサイド鉄骨、202………ボイラジャッキ、204………吊りロッド、204S………ロッド単体、206………ロッド自動着脱装置、208………ロッド搬送装置、209………作業床、210………収容箱、300S………ロッド単体、302………回転モータ、304………着脱チャック、306………回転検出板、308………スプリングホルダ、310………距離検出板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量物を揚重する複数の吊りロッドを構成するロッド単体を着脱する吊りロッド着脱システムであって、
前記ロッド単体を収容するとともに、前記ロッド単体の着脱位置の水平方向で取り付け可能なロッドラックと、前記ロッドラックと前記着脱位置の間で前記ロッド単体を支持して水平方向に移動させる移動部と、前記着脱位置で前記ロッド単体のヘッド部の側面に接して回転し前記ロッド単体同士を着脱させるローラと、からなる着脱手段と、
前記着脱手段と接続して前記ロッド単体の着脱を制御する制御手段と、
を備え、
前記着脱手段は、同一平面上となる複数の前記着脱位置に取り付け可能としたことを特徴とする吊りロッド着脱システム。
【請求項2】
前記ローラは、前記ロッド単体の軸方向の移動を検知する検知手段を備え、前記検知手段は前記制御手段と接続し検出値を送信可能としたことを特徴とする請求項1に記載の吊りロッド着脱システム。
【請求項1】
重量物を揚重する複数の吊りロッドを構成するロッド単体を着脱する吊りロッド着脱システムであって、
前記ロッド単体を収容するとともに、前記ロッド単体の着脱位置の水平方向で取り付け可能なロッドラックと、前記ロッドラックと前記着脱位置の間で前記ロッド単体を支持して水平方向に移動させる移動部と、前記着脱位置で前記ロッド単体のヘッド部の側面に接して回転し前記ロッド単体同士を着脱させるローラと、からなる着脱手段と、
前記着脱手段と接続して前記ロッド単体の着脱を制御する制御手段と、
を備え、
前記着脱手段は、同一平面上となる複数の前記着脱位置に取り付け可能としたことを特徴とする吊りロッド着脱システム。
【請求項2】
前記ローラは、前記ロッド単体の軸方向の移動を検知する検知手段を備え、前記検知手段は前記制御手段と接続し検出値を送信可能としたことを特徴とする請求項1に記載の吊りロッド着脱システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2013−1524(P2013−1524A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135474(P2011−135474)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
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