説明

吊り枠装置

【課題】 海洋構造物の基礎の表面等の傾斜の異なる2つの面に、長いマットを1度の作業で敷設可能とするために、自動的に折り曲げ可能な吊り枠体を用いる。
【解決手段】 アスファルトマットのように、面積の広いマットを支持する吊り枠体10は、縦横の枠材を組み合わせて構成し、広い面積のマットを、吊りワイヤを係止して保持する。前記吊り枠体10の長手方向の縦部材12は、その途中でヒンジ部17を設けて、折り曲げ可能に構成し、マットを敷設する地盤に合わせて、マットを自然に曲げながら敷設できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底地盤を洗掘から保護するため、または、防波堤等の海洋構造物の支持基礎の表面を覆って、波浪の力により石が動いたりすることを防止するために、もしくは海洋埋め立て処分場の仕切護岸を構築した後で、基礎地盤から土砂の吸い出しを防止するために、アスファルトマットを敷設する際に使用する吊り枠装置に関する。特に、マットを敷設する地盤が斜面と水平面との2つの面を有するところで、その2種の地盤を1度の作業でマットを敷いて、カバーできるようにする吊り枠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
防波堤や突堤等の海洋構造物を構築するに際しては、まず最初の工程では、その構築区域の海底地盤が、その上に構築する上部構造物の重量に耐え得るように、地盤改良工事を最初に施工する。そして、その地盤改良工事を行った部分の上に、石等を積み上げて所定の高さと巾とを有する捨石基礎を構築し、その上面を平らに均してから、摩擦増大手段としての、アスファルトマット等を敷き込んだ支持層の上に、1列状にケーソンを立設して防波堤として構築する。また、前記列状に並べて構築したケーソンの間には、アスファルトマスチック等を、隙間をなくするように詰め込んで、防波堤等に区画された内海側に、外海の海水が入り込まないように保護する等の処理が行われる。
【0003】
前記ケーソンの下部に構築される捨石基礎は、石を積み重ねただけの構造物であり、その基礎を構成する石は、強い波の力が作用すると、石が容易に動いたりするという欠点がある。また、前記基礎の上に構築するケーソン等の構造物は、そのケーソンの間には遮水処理が行われるが、基礎の石の間では水が自由に流通する状態のままである。そこで、一般には、石積基礎に対しても、その表面全体または法面に、アスファルトマスチックを打設して、石の間に隙間がないようにする工事を行っている。また、アスファルトマットを石の表面を覆うように敷設して、海底地盤の保護層と接続し、不透水層を一体化させて構築することで、構造物で囲まれた内側部分に、外海の海水が入り込まないようにする等の処理が行われることもある。
【0004】
前記アスファルトマットを、海底での保護を対象とする地盤を覆うように敷設するためには、従来より吊り枠を用いており、例えば、特開昭61−178393号公報等に示されるように、大面積のマットを、吊り枠の下面に吊り下げて保持し、敷設する手法が用いられている。
前記アスファルトマットの荷役等を行うために、従来より一般に用いられている吊り枠は、パイプ等を組み合わせてマットのサイズに対応させて構成し、その枠体の周囲の部分には、マットの内部補強部材に接続した荷役用のワイヤを、係止する機構を多数設けたものが用いられる。そして、前記吊り枠にマットの周囲の吊り用ワイヤを係止させて、作業船のクレーンで吊り下げて敷設位置に搬送し、海底で待機している潜水作業員が、マットを吊り枠から外して敷設するような工法が用いられている。
【特許文献1】特開昭61−178393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記アスファルトマットを敷設する場所は、ほぼ平らな海底地盤のみではなく、前記海底に構築する捨石基礎等のように、上面の平らな面と海底地盤の平らな面とを接続するように、傾斜した法面が位置されていることもある。そこで、それ等の傾斜状態が異なる面を、1枚のマットでカバーしようとすれば、大面積の板状の吊り枠では、容易に対処できないという問題が残る。つまり、吊り枠にほぼ水平状態で支持されているマットを、水平面と傾斜部とに一度に敷き込むことができないことから、アスファルトマットを小サイズのものとして構成しておき、その敷設位置に応じて多数のマットを組み合わせて敷き込む等の面倒な工事が強いられるという欠点が残る。
【0006】
本発明は、地盤の傾斜等の状態が異なる場所で、大サイズのマットを容易に敷設可能にする吊り枠装置を提供することを目的とし、従来の平らな場所での工事にも容易に適用可能な吊り枠装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、厚さ方向の中間部に内部補強部材を配置して、その上下にアスファルト層を設け、
前記内部補強部材と一体に設けた荷役用のワイヤの端部をマットの周囲に突出させて設けたアスファルトマットを、取り扱いするために用いる吊り枠装置に関する。
請求項1の発明は、前記吊り枠装置は、取り扱い作業の対象とする前記マットのサイズに合わせて、枠体の巾と広さを有するものとして構成し、
前記吊り枠装置の四周部には、前記マット部材の周囲に突出させて設けているワイヤの端部を係止する手段を設け、
前記吊り枠装置の枠体は、その長さ方向の所定の位置にヒンジ部を設けて、クレーンに
より吊り下げて使用するもので、
前記マット部材を吊り下げて支持し、クレーンにより持ち上げた状態では、前記枠体は
1つの平面状の枠形状を維持し、枠体の一方の下面を海底の構造物の上に載置・固定した状態で、枠体の他方の部分が前記ヒンジ部を介して、その端部を下方に折れ曲げさせるように構成したことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、前記枠体は、パイプまたは形鋼を組み合わせて四周部の枠を構成して、前記枠体の上部にはクレーンの吊りワイヤに対応させた被吊具を設け、
前記枠体の下部には、マットに設けている被吊具を係止する保持部材を、所定の間隔で多数設けて、
前記保持部材には、前記マットの被吊具を保持・開放する動作を容易に行い得る手段を設けて、アスファルトマットのようなマット部材の荷役を容易に行い得るように構成したことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、前記枠体に設けるヒンジ部は、枠体の中心よりも一方の側に偏った位置に設け、
1枚のマットを枠体に吊り下げて支持しながら、海底の水平面と斜面との2つの連続する面に対して、1度の動作で敷設可能とすることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、前記枠体の一方の端部には、追加の枠体を着脱可能に構成し、前記追加の枠体にはマットに設けている被吊具を係止する保持部材を設けておき、
前記追加の枠体を取付けて、長いマットの荷役を可能にしたことを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、前記枠体に設けた多数個の保持部材は、必要に応じて連動させて作動させる機構を設けておき、
マットを敷設する際に、前記被吊具の保持状態を1度の操作で、開放可能とすることを特徴とする。
【0012】
前述したように、大サイズのマットを吊り下げて支持した状態で、枠体を折り曲げ可能としたことで、水平面と斜面とに亘って、大サイズのマットを1度で敷設することが可能となり、マットを敷き込む作業を容易に行うことができる。また、マットを支持する枠体は、従来の吊り枠の長さ方向の中間部分にヒンジ部を設けて、マットを敷設する地盤の水平部または斜面部に枠体の一方を載せた状態で、他方の端部を折り曲げるように揺動させて、マット全体が予定した部分をカバーするように位置決めできる。
したがって、海洋構造物を載置する捨石基礎の斜面分と水平部とに対して、長いマットを1度に敷設することができるので、そのマット敷設作業を容易に行うことができる。そして、長いマットでカバーする部分では、途中に遮水処理を行う必要がなくて、マットの信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(アスファルトマットの施工現場の例)
まず、最初に、吊り枠体を用いて、アスファルトマットを施工する工事現場の例を、図1を用いて説明する。
図1に示す例では、廃棄物埋め立て処分場の護岸3を、1つの海洋構造物の例として説明しているもので、ケーソンを列設して構築する護岸の基礎2の斜面部2Bと、上部の水平部2Aとに亘って、アスファルトマット30を敷設して、表面を保護する手段を構成している。
【0014】
前記護岸3を構築するためには、上部に構築する構造物の重量に合わせて、地盤1を強化する工事を施工する。また、砂地や割れ目の多い堆積層等で、地盤1が透水性の場合には、遮水材を注入して不透水性を持たせるように処理する。そして、前記必要な処理を施した地盤1の上に、大小の岩や石を積み重ねて捨石基礎2を構築し、その上を平らに均してから、ケーソン4を列状に立設して、ケーソン4による護岸3を構築する。前記護岸のケーソン4の上には、所定の高さの上部コンクリート構造物5を構築する。また、前記基礎2の海側で、ケーソン4の基部には根固めブロック5aを構築して、ケーソンを安定した状態で立設可能にする。
【0015】
前記護岸の内陸側では、捨石基礎2の上面の水平部2Aと、それに続く斜面部(法面)2Bとに亘って、アスファルトマット30を敷設して覆ってからその上に裏込石の層6を構築し、表面の法面に割栗石の層7を所定の厚さで構築する。そして、その割栗石の層7の表面を覆うように、防砂シート8を敷き込んで、埋め立て土の層9とを区画して、廃棄物埋め立て処分場としての利用に供している。前記埋め立て処分場の構造物の1つの例では、捨石基礎2の陸側の法面を覆うように、アスファルトマットを敷設するときには、当然このマット敷設工事は海中で潜水作業員が担当して行うことになる。
【0016】
ところが、前記従来例に開示されているような吊り枠体を用い、マットを吊り枠体に吊り下げて施工しようとすると、基礎の上面部にマットの端部が接した時には、法面に位置決め敷設される予定の他端部のマットは、遥かに上に離れた部分にある。そこで、さらに吊り枠体を下降させて、マットの他端部を法面に敷き込むようにしようとしても、基礎上に乗ってしまった吊り枠体の一端部が、吊り枠体の他端部が降下することを阻止するように作用し、アスファルトマット全体を、良好な状態で敷設できないという不都合が発生する。
前記基礎の平面部と斜面部とに亘って、1枚のアスファルトマットを無理なく敷設する作業に対応できるように、吊り枠体を構成することと、前記吊り枠体を用いたマット敷設作業の概要を以下に説明する。
【0017】
(発明の実施例)
次に、図2に示す例にしたがって、本発明の吊り枠体の構成を説明する。図2には吊り枠体の平面図(a)を、また、同図(b)には横方向のから見た側面図を、および他方から見た正面図(c)として説明している。なお、以下に説明する例では、アスファルトマットのサイズに合わせて、吊り枠体の巾Wと、長さLとを設定しているものであるが、アスファルトマットのサイズが異なる場合には、当然、吊り枠体のサイズが異なることにもなり、マットの重量が大きい場合には、吊り枠体を構成する縦横のパイプの枠材のサイズや、他の構造体での枠材の数等の条件も変化させることになる。
【0018】
前記図2に示されているように、吊り枠体10は、両側の長い縦部材12と、その間を所定の間隔で接続する横部材15との、パイプ状の構造材を組み合わせて、巾がWで長さがLの、ほぼ平らな板状の枠体として構成している。クレーンの吊具に係止させて、または、クレーンワイヤ26に前記吊り枠体10を吊り下げて荷役するために、縦部材12の上に所定の間隔で被係止部材11を突出させて設けている。前記被係止部材11は、吊り下げて保持する荷重に対応させて、厚い板部材に所定の大きさの孔、もしくはフックに対応する被係止部材を設けたものを、前記縦部材12の上に溶接する等の手段で、突出させて固定して設けており、クレーンのフックに取付けたワイヤ端部等を係止して、荷役に対処させるようにしている。
【0019】
前記吊り枠体10を構成する縦横の枠部材12、14は、パイプや形鋼の所定の長さのものを組み合わせて、所定の幅を有する枠体として構成しているもので、例えば、巾が3mで長さが10mのアスファルトマットを取り扱うためには、その大サイズのマットの大きさに形成する。また、この吊り枠体10のサイズは、工事現場の実情に合わせて、変更可能なものとして構成できるもので、縦横の構造材を接続部16で各々接続し、任意の大きさの枠体に構成できる。つまり、縦部材12の長さを変化させ得る接続部を設けておくとともに、両側に配置する縦部材12、12の間を接続する横部材15……を、マットのサイズに合わせた長さのものを用いて、接続部16、16……の各々で、それ等の各構造材をボルト締め等の手段を用いて、組み合わせて構成している。
【0020】
前記吊り枠体10においては、縦部材12の下部には、マットの内部補強部材と一体に設けて、マットの側端部から突出させている吊りワイヤを支持させるために、係止保持部材21を所定の間隔で取付けている。この係止保持部材21は、後で詳細に説明するが、2〜3枚の板を平行に枠体の下部に取付けて、孔を軸芯に合わせて設けておき、ハンドル24を揺動させることで串刺し軸23を移動させ、マットの吊りワイヤを着脱できるように設けている。前記係止保持部材としては、特にその構造が限定されるものではなく、従来公知の係止保持部材を組み合わせて設けることが可能である。また、この枠体の下部には、所定の位置に脚部材20を取付けており、この脚部材20は吊り枠体を地面上に置く時や、マットを支持する際にその脚部材をマットとの間隔を規定する補助材として利用する。
【0021】
前記アスファルトマットを、吊り下げる状態で保持する吊り枠体10は、マットを施工する現場の状態に合わせて支持枠を折り曲げて、支持するマットをその途中の部分で曲げ得るように、施工場所の状態に対応させ得るように構成している。そのために、吊り枠体10の長さ方向の中央部よりも、一方の側に偏った位置に設けたヒンジ部17を介して、主枠材13と副枠材14とに分けて枠体を構成しており、主枠材13に対して、副枠材14を揺動させ得るように構成している。
前記副枠材14は、アスファルトマットを吊り枠体10に支持させて、クレーンで吊り下げて荷役している時には、1枚の水平な板状の部材として機能するが、その枠体の一方を固定した状態で、他方の枠体部材が、ヒンジ部17を介して端部が下げられ、揺動を許容するように構成される。
【0022】
図3には、前記吊り枠体10にアスファルトマット30を吊り下げて、基礎2の上面と斜面部とに亘って、1枚のマットでカバーできるように施工する例を示している。まず、作業船のクレーンにより支持する吊り枠体10に対しては、吊り枠体に所定の間隔で設けたガイド部材22を用いて吊り下げて支持し、施工区域にまで降下させる。なお、この作業の例においては、マット30を吊り下げ保持する吊り枠体10は、予め基礎の法面の傾斜に合わせて、傾斜させた状態で下降させる場合で説明している。
【0023】
前述したようにして、吊り枠体10にマット30を保持させて施工場所にまで搬送し、基礎2の法面2Aにマット30の下部が接した状態となり、枠体に設けた補助脚20がマットを押圧する状態で、斜面に接して停止する。その後に、尚も吊り枠体10を下降させようとすると、主枠材13は斜面に乗った状態で斜めに停止するので、上部の副枠材14のみがヒンジ部17の支軸18を中心にして、反時計方向に揺動されて、マット30の副枠材14に支持される部分が、基礎の平面部2Aの上に乗るように位置決めされる。そして、その状態で、吊り枠体10に設けている係止保持部材21を操作して、各々の吊りワイヤ31の係止を解除し、マット30を所定の場所に位置決めした状態で枠体から開放してから、吊り枠体10を上昇させて次のマット敷設の作業に対処させる。
【0024】
なお、前記図3に説明した例において、アスファルトマット30を吊り下げた状態で、吊り枠体10を水平にして海中を降下させると、最初に、吊り枠体10の副枠材14側が基礎の水平部2Aに接する。そして、なおも吊り枠体10を下降させると、吊り枠体の主枠材13側を時計方向に揺動させて、基礎の法面2Bに沿ってマットを位置決めして、マット30の吊りワイヤ31を、係止保持部材21から開放することで、1回の作業を終了する。
【0025】
上述した実施例において、吊り枠体に多数設けている係止保持部材21を操作して、マットの吊りワイヤを開放するためには、潜水作業員が個々の係止保持部材のハンドル24を、手で操作することで対処可能である。その他に、前記係止保持部材のハンドルを遠隔操作して、係止保持部材による係止を解除することもできるが、これらの操作は、従来の吊り枠体の場合と同様な機構を用いることが可能である。
【0026】
また、前述したような作業を行うための吊り枠体10では、アスファルトマットの端部に突出させて設けている吊りワイヤ31を係止保持するために、係止保持部材21を設けていることは前述した通りである。前記係止保持部材21は、図4に示すように構成できるもので、縦部材12の下面にガイド部材22を平行に下げるように設け、前記ガイド部材22……に設けている孔に通すように軸23を配置して、この軸23の端部をハンドル24に接続する。前記ハンドルは縦部材12の所定の位置に軸支されて、揺動可能に設けられており、軸を図の左側に移動させて吊りワイヤを係止・開放させ得るようにする。なお、このハンドルの操作は、海中で潜水作業員が手で操作することができるが、全部の係止保持部材を連動させるように構成して、クレーンのオペレータが遠隔操作して、作業に対応させても良いことは勿論である。
【0027】
図5に示す例は、吊り枠体10の縦部材12で、2つの枠体13、14をヒンジ部17を介して、接続する場合の1つの構成例を示している。この例において、枠体13、14を接続するヒンジ部17の軸18に対して、一方の枠部材の上からストッパ19を、他方の枠体の上に突出させて設けている。前記ストッパ19は、任意の構成の部材を突出させて設けておき、他方の枠体の上部分に当接させる状態で、縦部材12が直線状となるように構成すれば良い。
【0028】
そして、前記2つの棒状の枠体の一方が地面等に接して停止された状態で、他方の枠体を軸を介して揺動させることで、吊り枠体に支持するマットが、傾斜が異なる表面をカバーするように、位置決めされることになる。なお、前記2つの枠体をヒンジ部を介して互いに揺動させ得るようにするための構造は、図示する例に限定されるものではなく、その他に、従来公知の任意の機構を用いて構成することが可能である。
【0029】
図6に示す例は、マットの長さが若干異なるものを組み合わせて用いる際に、吊り枠体の長さを調整する手段の1つの例を説明している。例えば、前記図3のようにマット30を敷設する基礎で、水平部の巾が異なる時等に、副枠材14の先端部に追加の枠体35を取付けて、ボルト37で固定し、その追加の枠体に設けている係止保持部材21Aを用いて、長いマットを保持できるようにしている。この例では、副枠材14側の長さを調節して、現場の状況に容易に対処できるようにするが、前記追加の枠体35を取付け固定するための手段としては、図示する以外の任意の公知の伸縮機構を用いても良い。
【0030】
前述したように、海洋構造物の特定の支持地盤の表面に、マットを敷設する工事を行う場合には、前記吊り枠体10に対して、その現場に適応させた補助手段を追加して用いることで、容易に対応することが可能である。また、吊り枠体10に対してその現場の状況に対応させ、追加の補助手段を組み合わせることは、従来の海洋工事の場合と同様に行い得ることでもある。
【0031】
なお、前記アスファルトマットを敷設する実施例は、海洋構造物を構築する際の1つの例であり、本発明の吊り枠体を用いたマットの施工は、任意の場所でのマット施工の作業に対処させることが可能である。また、吊り枠体を用いる施工例において、アスファルトマットの巾が広いものであって、図示するような一対の縦部材を組み合わせて構成した吊り枠体で、マットの重量に対処できない時には、多数本の縦部材を組み合わせて吊り枠体を構成し、横部材を適宜組み合わせて強固な枠体として構成すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】海洋構造物の施工例の説明図である。
【図2】吊り枠体の構成を示す説明図で、(a)は平面図を、(b)は側面図、同図(c)は他方の側面図である。
【図3】吊り枠体を用いてアスファルトマットを敷設する工事の例である。
【図4】吊り枠体に設ける係止保持部材の構成の説明図である。
【図5】縦部材のヒンジ部の構成の説明図である。
【図6】縦部材に追加の枠体を接続する例の説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 海底地盤、 2 基礎、 3 護岸、 4 ケーソン、
5 上部コンクリート、 6 裏込石層、 7 割栗石、 8 防砂シート、 9 埋立土、 10 吊り枠体、 12 縦部材、 13 主枠材、
14 副枠材、 15 横部材、 16 接続部、 17 ヒンジ部、
18 支軸、 19 ストッパ、 20 補助枠、 22 ガイド部材、
23 軸、 24 ハンドル、 26 クレーンワイヤ、
30 アスファルトマット、 31 吊りワイヤ、 35 追加の枠体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向の中間部に内部補強部材を配置して、その上下にアスファルト層を設け、
前記内部補強部材と一体に設けた荷役用のワイヤの端部をマットの周囲に突出させて設けたアスファルトマットを、取り扱いするために用いる吊り枠装置であって、
前記吊り枠装置は、取り扱い作業の対象とする前記マットのサイズに合わせて、枠体の巾と広さを有するものとして構成し、
前記吊り枠装置の四周部には、前記マット部材の周囲に突出させて設けているワイヤの端部を係止する手段を設け、
前記吊り枠装置の枠体は、その長さ方向の所定の位置にヒンジ部を設けて、クレーンに
より吊り下げて使用するもので、
前記マット部材を吊り下げて支持し、クレーンにより持ち上げた状態では、前記枠体は
1つの平面状の枠形状を維持し、
枠体の一方の下面を海底の構造物の上に載置・固定した状態で、枠体の他方の部分が前記ヒンジ部を介して、その端部を下方に折れ曲げさせるように構成したことを特徴とする吊り枠装置。
【請求項2】
前記枠体は、パイプまたは形鋼を組み合わせて四周部の枠を構成して、前記枠体の上部にはクレーンの吊り具に対応させた被吊具を設け、
前記枠体の下部には、マットに設けている被吊具を係止する保持部材を、所定の間隔で多数設けて、
前記保持部材には、前記マットの被吊具を保持・開放する動作を容易に行い得る手段を設けて、アスファルトマットのようなマット部材の荷役を容易に行い得るように構成したことを特徴とする請求項1に記載の吊り枠装置。
【請求項3】
前記枠体に設けるヒンジ部は、枠体の中心よりも一方の側に偏った位置に設け、
1枚のマットを枠体に吊り下げて支持しながら、海底の水平面と斜面との2つの連続する面に対して、1度の動作で敷設可能とすることを特徴とする請求項1または2に記載の吊り枠装置。
【請求項4】
前記枠体の一方の端部には、追加の枠体を着脱可能に構成し、前記追加の枠体にはマットに設けている被吊具を係止する保持部材を設けておき、
前記追加の枠体を取付けて、長いマットの荷役を可能にしたことを特徴とする請求項3に記載の吊り枠装置。
【請求項5】
前記枠体に設けた多数個の保持部材は、必要に応じて連動させて作動させる機構を設けておき、
マットを敷設する際に、前記被吊具の保持状態を1度の操作で、開放可能とすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の吊り枠装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−137682(P2009−137682A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314120(P2007−314120)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(000230711)日本海上工事株式会社 (25)
【Fターム(参考)】