説明

吊り足場支持金具

【課題】軽量で橋桁の下部に容易に取りつけることができるとともに、吊り足場を高い信頼性をもって支持することができる吊り足場支持金具を提供する。
【解決手段】 断面の形状がほぼT型又はほぼI型となったコンクリートの橋桁3の下側でほぼ水平に配置される水平部材21と、この水平部材に接合され、橋桁の両側面に沿って上方に立ち上げられて橋桁の断面が下縁付近で幅方向に拡大された断面拡大部3aに係止される二つの係止部材22,23とを備える。係止部材22,23は、断面拡大部の上側の傾斜した側面3bに上部を載せ掛けるように係止され、係止部材22,23の双方が、水平部材21との接合角度の変化が拘束されるように接合される。そして、係止部材22,23の少なくとも一方は、水平部材21の軸線方向に移動可能となっており、橋桁断面の幅方向の寸法に対応した位置を選択して固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、コンクリート橋の点検又は補修等のために橋桁の下側に設けられる吊り足場を橋桁に支持させるための吊り足場支持金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート又はプレストレストコンクリートで主要部が構成される橋梁には、断面形状がほぼT型又はI型となった複数の橋桁を配列したものがある。このような橋梁では、橋脚又は橋台の上に設けられる支承上にコンクリートの橋桁を支持し、この橋桁の上部にコンクリートの床版を形成して、この上に道路橋では舗装を、鉄道橋では軌道が設けられる。
【0003】
このような橋梁で、点検、補修、補強等が必要となったときには、橋桁の下側に作業用の足場を形成する必要が生じる。足場は、地表面から鋼製の枠部材(例えばビティ枠)、鋼管材、形鋼等を組み立て、作業者が橋桁の下側に接近できるように構築される。しかし、橋桁が地表面から高い位置にあるときや、高速道路の高架橋のように橋桁の下側が道路となっていて地表面から足場を組み立てられないことも多い。このようなときには橋桁から吊り下げた部材上に足場板を敷き並べた吊り足場が用いられる。
【0004】
吊り足場を支持する方法としては、コンクリートからなる橋桁にアンカーを打ち込み、このアンカーに吊り材を支持させて足場となる床部材を吊り支持するものがある。また、特許文献1に記載されているように、橋桁の下部に設けられた断面拡大部に載せ掛けて、隣り合う橋桁間に梁を架け渡し、この梁から垂下した吊り材によって足場を支持するものがある。上記断面拡大部は、橋桁の断面における水平方向の寸法を下縁付近で拡大したものであり、断面拡大部の上部では橋桁の側面が傾斜している。上記梁は、傾斜した側面上に支持され、床版に到達するように立設された支柱によって固定されるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−360302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の吊り足場の支持方法では次のような解決が望まれる課題がある。
アンカーをコンクリートの桁に打ち込んで吊り材を支持する構造では、橋桁のコンクリートを損傷することになり、耐久性への影響が懸念される。また、吊り足場は高所作業車等を用いて作業者が高所で設置作業を行うことになり、部材は軽量で簡単に取りつけられるものが望ましい。特許文献1に記載されているような構造では、橋桁間に架け渡す梁の重量が大きくなるとともに、固定するための支柱を床版の下側に設置するために多くの作業量が必要となる。
【0007】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、軽量で簡単にコンクリートの橋桁に取り付けることができる吊り足場支持金具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 断面の形状がほぼT型又はほぼI型となったコンクリートの橋桁の下側で、該橋桁の軸線方向とほぼ直角でほぼ水平に配置される水平部材と、 該水平部材に接合され、前記橋桁の両側面に沿って上方に立ち上げられて、該橋桁の断面が下縁付近で幅方向に拡大された断面拡大部に係止される二つの係止部材と、を有し、 前記係止部材は、前記断面拡大部の上側の傾斜した側面に上部を載せ掛けるように係止されるものであり、 該係止部材の双方が、前記水平部材との接合角度の変化が拘束されるように接合されるとともに、少なくとも一方は、前記水平部材の軸線方向に移動可能となっており、前記橋桁断面の幅方向の寸法に対応した位置を選択して固定されるものである吊り足場支持金具を提供する。
【0009】
この吊り足場支持金具では、二つの係止部材の一方又は双方を水平部材の軸線方向に移動して互いの間隔を広くした状態で、橋桁の下側から上方に押し上げ、二つの係止部材が橋桁の両側面に沿って対向する位置に支持することができる。そして、二つの係止部材の間隔が狭くなるように係止部材を移動し、橋桁の側面と近接又は接触する位置で係止部材が水平部材の軸線方向へ移動するのを拘束する。これにより、橋桁の断面拡大部に係止部材の上部を載せ掛けるように係止することができ、鉛直方向に作用する吊り足場の荷重を支持することができる。
また、この吊り足場支持金具は橋桁の下部の側面と下面とを取り囲む係止部材と水平部材とによって主要部が構成され、橋桁間に架け渡して鉛直荷重が作用する梁よりも重量を低減することができ、作業者による高所作業車のゴンドラ上の作業で容易に取りつけることが可能となる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の吊り足場支持金具において、 前記水平部材と前記係止部材とが接合されて前記橋桁に取り付けられた状態で装着することができ、前記水平部材の前記係止部材が接合された位置より離れた位置と前記係止部材とを連結する斜支持部材を有し、 該斜支持部材は、前記水平部材と前記係止部材との間に装着した後に伸縮して前記水平部材と前記係止部材との相対的な変形を拘束するものとする。
【0011】
この吊り足場支持金具では、水平部材に対して軸線方向に移動可能となった係止部材が、移動可能とする接続構造によってがたつくように多少の変形が生じるものであっても、斜支持部材によって相互間の変形が生じないように拘束することができる。また、二つの係止部材の上部間の間隔が開くように変形するのを拘束することができ、鉛直方向の荷重に対する安全性を向上させることができる。
一方、この斜支持部材は係止部材と水平部材とを組み合わせて橋桁に取りつけた後に装着することができ、係止部材と水平部材とを橋桁に取りつけるときの重量が増加するのを回避することができる。したがって、この吊り足場支持金具を橋桁に容易に取り付けることを可能とするとともに、係止部材と水平部材との接合部を有効に補強することができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の吊り足場支持金具において、 前記係止部材の上部に一端が支持され、該係止部材が取りつけられた第1の橋桁と隣り合う第2の橋桁に他端が支持されて二つの橋桁間に架け渡され、前記係止部材の上部が前記第1の橋桁から離れる方向に変位するのを拘束する架け渡し部材を有し、 該架け渡し部材は、前記水平部材と前記係止部材とが接合されて前記第1の橋桁に取り付けられた状態で装着することができるものとする。
【0013】
この吊り足場支持金具では、架け渡し部材の軸力によって係止部材の上部の変位が拘束され、係止部材と水平部材との接合部で相互間にがたつくような小さな変形が生じるのを防止することができる。また、架け渡し部材は、係止部材の上部が橋桁の傾斜する側面に載せ架けられた状態で該係止部材の位置を拘束し、鉛直方向の荷重に対する耐力が向上するものとなる。
また、架け渡し部材は、鉛直方向の荷重を受けるものではなく、軸力に対して抵抗できるものであればよく、軽量の部材を用いることができる。したがって、係止部材と水平部材とを橋桁に取りつけた後に簡単に装着することができる。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の吊り足場支持金具において、 前記係止部材の上部には、上方から落とし込まれる前記架け渡し部材の端部を支持する部材受け部と、前記架け渡し部材の端面と対向し、該架け渡し部材に作用する圧縮方向の軸力が伝達される軸力受け部と、が設けられ、 前記架け渡し部材の端面と前記軸力受け部との間に、該架け渡し部材に作用する圧縮方向の軸力を該軸力受け部に伝達する軸力伝達部材が介挿されているものとする。
【0015】
この吊り足場支持金具では、係止部材と水平部材とを橋桁に取りつけた後に、架け渡し部材を簡単に取りつけることができる。また、架け渡し部材の軸力によって係止部材の変位を拘束できる構造とすることが、簡単な作業で可能となる。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4までのいずれかに記載の吊り足場支持金具において、 前記水平部材又は該水平部材に固着された部材に螺合され、先端を前記橋桁の底面に突き当てて前記水平部材と前記橋桁の底面との間隔を保持する鉛直拘束ボルトを備えるものとする。
【0017】
この吊り足場支持金具では、水平部材が係止部材とともに上方へ浮き上がるように橋桁に対して変位するのが拘束される。したがって、複数の吊り足場支持金具と複数の吊り材を用いて吊り足場を支持したときに、負荷の不均衡によって下方への負荷が少ない状態となったり、風の影響で上方への力が作用することがあったりしても、水平部材と係止部材とは橋桁に対して固定された状態が維持される。したがって、橋桁に取りつけられた吊り足場支持金具の設置状態が安定し、信頼性が高いものとなる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、この吊り足場支持金具では、軽量で橋桁の下部に容易に取りつけることができるとともに、吊り足場を高い信頼性をもって支持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る吊り足場支持金具の正面図、左側面図及び右側面図である。
【図2】本発明の吊り足場支持金具がコンクリートの橋桁に取りつけられ、吊り足場を吊り支持した状態を示す概略図である。
【図3】本発明の第2の実施形態である吊り足場支持金具を示す概略正面図である。
【図4】図3に示す吊り足場支持金具の第1の係止部材も水平部材の軸線方向に移動可能とした例を示す概略正面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態である吊り足場支持金具が橋桁に取りつけられた状態を示す概略正面図である。
【図6】図5に示す吊り足場支持金具を拡大した概略正面図である。
【図7】図6に示す吊り足場支持金具に、図3に示す吊り足場支持金具で用いられる斜支持部材を適用した例を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る吊り足場支持金具の正面図、左側面図及び右側面図である。また、図2は、橋梁の点検又は補修等のために吊り足場支持金具がコンクリートの橋桁に取りつけられ、吊り足場を支持した状態を示す概略図である。
図2に示す橋梁1は、本発明に係る吊り足場支持金具2を用いて吊り足場を設けることができるものの一例として示すものであり、コンクリートからなる複数の橋桁3を備えている。橋桁3はプレストレストコンクリートで構築されたものであり、断面形状がほぼI型となっており、上部は複数の橋桁上で連続するコンクリート床版4と結合されている。橋桁3の下部は、断面の幅方向すなわち水平方向の寸法が拡大された断面拡大部3aとなっており、この断面拡大部3aの上部は両側面間の寸法が下側で拡大するように傾斜した側面3bが形成されている。
【0021】
吊り足場支持金具2は、上記橋桁3の下部に設けられた断面拡大部3aの側面と下面とに対向するように取り付けられ、この吊り足場支持金具2に一端が連結された吊り材5によって足場6を吊り支持するものとなっている。足場6は、例えば次のような構造とすることができる。吊り材5によって梁として機能する部材、例えば鋼管7を吊り支持し、この鋼管上に交差した方向に他の鋼管8を架け渡して筏状に結合する。そして、この上に足場板9を配列して足場とすることができる。上記吊り材5は、ワイヤ、チェーン、棒鋼等を用いることができ、梁として機能する部材は、鋼管の他に形鋼等を用いることができる。
【0022】
上記吊り足場支持金具2は、橋桁3の下面と対向するように水平に配置される水平部材21と、この水平部材21の一端付近に結合され、上方に立ち上げられる第1の係止部材22と、水平部材21に対して該水平部材21の軸線方向に移動が可能に接合され、選択した位置で軸線方向の移動が拘束される第2の係止部材23と、水平部材21に対して上下方向に進退が可能に螺合された鉛直拘束ボルト24と、吊り材5を連結するための連結部材25と、を備えている。
【0023】
上記水平部材21は角形の鋼管からなるものであり、両側面には軸線に沿って複数の貫通孔21aが設けられている。この貫通孔21aはボルト又はピンを挿通することができるものであり、第2の係止部材23の位置を固定するために用いられるものである。また、橋桁の下面と対向する2箇所の位置に鉛直方向の貫通孔が設けられており、この貫通孔と中心がほぼ一致するように雌ねじ部材26が固定されている。この雌ねじ部材26は、ナット又は長ナット等を用いることができ、鉛直拘束ボルト24を螺合することができるものである。この雌ねじ部材26に螺合された鉛直拘束ボルト24は軸線回りに回転することにより、水平部材21を貫通して上方へ突出する長さを調整することができるものとなっている。
【0024】
また、水平部材21には足場を吊り支持するため連結部材25が取りつけられている。連結部材25は内側に水平部材21が挿通される角形の鋼管25aと、この角形の鋼管の下面に溶接で接合されたプレート25bとを備え、プレート25bに設けられた孔にワイヤ等の吊り材5を挿通して連結することができるものとなっている。上記角形の鋼管25aは、水平部材21の軸線方向に位置を変更することができるものであってよいし、位置が固定されたものでもよい。また、連結部材25は、このような形態のものに限定されるものではなく、フックやリング状の部材を有するもの等、吊り材5を連結することができる様々な形態のものを用いることができる。また、フックやリング状の部材が水平部材21に直接に取りつけられるものであってもよい。さらに、連結部材25を用いることなく、水平部材21に貫通孔を設けて吊り材5を挿通して連結しても良いし、吊り材5を水平部材21の周囲に掛け回して連結するものであっても良い。
【0025】
上記第1の係止部材22は、角形の鋼管からなる水平部材21の両側面に接合される第1の主プレート22a及び第2の主プレート22bと、2つの主プレートを連結する第1の連結プレート22c及び第2の連結プレート22dとを備えている。第1の主プレート22a及び第2の主プレート22bは、水平部材21の側面に溶接で接合され、水平部材21との相対的な変位及び相互間の角度変化が生じないように固定されている。第1の主プレート22a及び第2の主プレート22bの橋桁3と対向する縁辺22eは、橋桁3の下部のほぼ鉛直な側面3cと対向してほぼ鉛直となっており、このほぼ鉛直な縁辺22eの上に橋桁3の傾斜した側面3bに沿って橋桁側に突き出した係止部22fを備えている。そして、橋桁3の傾斜した側面3bと対向する係止部22fの縁には2つの主プレート22a,22bを連結するように第1の連結プレート22cが溶接で接合されている。これにより、主プレート22a,22bの傾斜した縁と上記第1の連結プレート22cとが橋桁3の傾斜した側面3bに当接されるものとなっている。また、第2の連結プレート22dは、第1の主プレート22a及び第2の主プレート22bの橋桁3との対向する縁辺22eと反対側の縁辺に沿って溶接で接合され、第1の主プレート22a及び第2の主プレート22bの変形を低減するものとなっている。
【0026】
上記第2の係止部材23は、水平部材21を内側に挿通することができる角形の鋼管を所定の長さに切断した外挿部材23gと、角形の鋼管からなる上記外挿部材の両側面に接合される第1の主プレート23a及び第2の主プレート23bと、2つの主プレート23a,23bを連結する第1の連結プレート23c及び第2の連結プレート23dとを備えている。第1の主プレート23a及び第2の主プレート23bは、第1の係止部材22を構成するものとほぼ同じ形状となっており、外挿部材23gの両側面に溶接で接合され、上部には橋桁側に突き出して傾斜した側面3bに係止される係止部23fを備えている。また、2つの主プレート23a,23bを連結する第1の連結プレート23c及び第2の連結プレート23dも、第1の係止部材22と同様の位置で主プレート23a,23bに溶接接合されており、第1の連結プレート23cは橋桁3の傾斜した側面3bに当接され、第2の連結プレート23dは主プレート23a,2b3を補強するものとなっている。
【0027】
上記外挿部材23gの内側に水平部材21が挿通された状態で、該外挿部材23gの内周面と水平部材21の外周面との間にはわずかの隙間があり、外挿部材23gは水平部材21の軸線方向に移動が可能となっている。そして、側面には貫通孔が設けられ、この貫通孔にボルト23h又はピンを挿通し、水平部材21に設けられた貫通孔21aにも挿通する。これにより、水平部材21の軸線方向において外挿部材23gつまり第2の係止部材23の位置を固定することができるものとなっている。また、水平部材21に設けられた複数の貫通孔21aからボルト23h又はピンを挿通する孔を選択することにより、第2の係止部材23の位置を調整することができるものである。
【0028】
上記外挿部材23gの内側に水平部材21が挿通された状態で、外挿部材21の内周面と水平部材21の外周面との間に僅かの隙間があることにより、第2の係止部材23の上部は橋桁3に対して進退する方向にがたつくように変位する。しかし、第2の係止部材23の上部が橋桁3の側面から後退する方向の変形に対して、外挿部材23gは一端の上側の縁と他端の下側の縁とがそれぞれ水平部材21の上面及び下面に当接されて、大きな変形は拘束される。したがって、第2の係止部材23と水平部材21との間の大きな相対的な変形は拘束され、2つの係止部材22,23の係止部22f、23fは橋桁の断面拡大部3aの上部に形成されている傾斜した側面3bに係止された状態が維持される。そして、水平部材21に下方への負荷つまり足場6の重量及び足場上の荷重が作用したときに、2つの係止部材22,23を介して断面拡大部3aの上側に形成されている傾斜した側面3bに鉛直力が伝達され、足場6が橋桁3によって支持されるものとなる。
【0029】
このような吊り足場支持金具2は、高所作業車等に乗った作業者によって橋桁の下部に取りつけることができる。
吊り足場支持金具2は、水平部材21上における第2の係止部材23の位置を調整して、第1の係止部材22と第2の係止部材23との間隔を橋桁3の幅より大きくしておく。そして、この吊り足場支持金具2を高所作業車上の作業者が橋桁3の下方から押し上げ、第1の係止部材22及び第2の係止部材23が橋桁3の側面と対向する高さに保持する。この位置で第2の係止部材23を橋桁3に接近する方向に移動する。そして、第2の係止部材23及び第1の係止部材22の橋桁側面と対向する縁辺22e,23eが橋桁3と接触又は近接する位置で第2の係止部材23の位置を水平部材21に対して固定する。つまり、第2の係止部材23が有する外挿部材23gの貫通孔及び水平部材21に設けられた貫通孔にボルト23h又はピンを挿通して抜け落ちないように止め付ける。これにより、第1の係止部材22と第2の係止部材23との上部に設けられた係止部22f,23fが橋桁3の断面拡大部3aに係止され、吊り足場を支持することが可能となる。
【0030】
なお、上記第1の係止部材22及び第2の係止部材23の橋桁3と接触する部分、つまり第1の連結プレート22c,23c又は係止部22f,23fの橋桁3と対向する縁には、橋桁の傾斜した側面3bとの間の摩擦を増大する部材(図示しない)を取り付けることができる。摩擦を増大する部材としては、例えばゴムのパッドを用いることができ、第1の係止部材22及び第2の係止部材23の係止部22f,23fに貼り付ける。このようなゴムのパッドを介して係止部22f,23fが橋桁の傾斜した側面に当接されることにより、均等に近い分布で接触圧が作用し、第1の係止部材22又は第2の係止部材23が橋桁3に傾斜した側面3bに対して係止位置が移動しにくくなる。これにより、この吊り足場支持金具の信頼性が向上する。
【0031】
また、第1の連結プレート22c,23c又は係止部22f,23fの橋桁3と接触する部分に、橋桁の傾斜した側面3bとの摩擦を増大する処理を施すこともできる。摩擦を増大する処理としては、例えば係止部22f,23fの橋桁との接触部分に凹凸を設け、凸部の先端を鋭く尖ったものにする。このような手段によって第1の係止部材22又は第2の係止部材23と橋桁の傾斜した側面3bとの間の摩擦を大きくし、橋桁の傾斜した側面3bに載せ掛けるように係止される係止部材22,23が下方へ移動するのを抑制し、信頼性を増大することができる。
【0032】
図3は、本発明の第2の実施形態である吊り足場支持金具30を示す概略正面図である。
この吊り足場支持金具30は、図1に示す吊り足場支持金具2と同様に水平部材21と、第1及び第2の係止部材22,23と、鉛直拘束ボルト24と、連結部材25とを備えている。そして、これらの構成に加えて、第2の係止部材23と水平部材21とを斜め方向に連結する斜支持部材31を備えるものである。また、この斜支持部材31を接合するために水平部材21は第2の係止部材23側に長さが延長されている。
上記水平部材21、第1及び第2の係止部材22,23、鉛直拘束ボルト24、連結部材25については、図1に示す吊り足場支持金具2と同様の構成を備えるものであり、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0033】
上記斜支持部材31は、ターンバックル32と、これに両側から螺合して接続される2つの棒状部材33,34とを備えるものである。ターバックル32で接合された2つの棒状部材の他端はリング状になっており、ボルト35,36又はピンを挿通してそれぞれ水平部材21と第2の係止部材23に連結することができるものとなっている。そして、ターンバックル32の一方の端部に設けられた螺条とこれにねじ込まれる棒状部材の螺条は逆ねじとなっており、ターンバックル32を回転させることにより連結された2つの棒状部材33,34の両端間の長さを変えることができるものとなっている。
【0034】
このような斜支持部材31は、図1に示す吊り足場支持金具2と同様にして水平部材21と2つの係止部材22,23とを橋桁3に取りつけた後に装着することができる。つまり、2つの棒状部材33,34のリング状となった端部を、それぞれ第2の係止部材23の2つの主プレート23a,23b間及び水平部材21の内側に挿入し、側面からボルト35,36又はピンを挿入することによって両端をそれぞれ水平部材21及び第2の係止部材23に連結することができる。なお、第2の係止部材23の第2の連結プレート23d’は、斜支持部材31の端部を2つの主プレート23a,23b間に挿入することができるように2つに分割して設けられている。また、水平部材21も斜支持部材31の端部が接合される部分では角形の管状となった部材の上面が切除され、斜支持部材31の端部を対向する2つの側面部21bの間に挿入することができるものとしている。
【0035】
上記斜支持部材31は、上記のようにして第2の係止部材23と水平部材21とを連結するように取りつけられた後、ターンバックル32を回転して長さを調整することができ、第2の係止部材23を橋桁側3に押し付けて変位を拘束することができる
【0036】
上記斜支持部材31は、リング状となった端部を第2の係止部材23の2つの主プレート間と、水平部材21の内側に挿入して連結するものであるが、第2の係止部材23及び水平部材21に貫通するボルト又はピンとしてそれぞれが両側に突出するように長いものを用い、第2の係止部材23と水平部材21との両側に2つの斜支持部材を平行に取り付けるものであってもよい。また、斜支持部材31を第2の係止部材23および水平部材21に取り付ける構造は、水平部材21と第2の係止部材23とが橋桁3に支持された状態で簡単に装着することができるものであれば他の構造とすることもできる。また、斜支持部材31は、上記のようにターンバックル32を用いるものに限定されるものではなく、両端間の長さが伸縮する他の構造を採用することもできる。
【0037】
また、図3に示す実施の形態では、斜支持部材31を第2の係止部材23と水平部材21とを連結するように設けているが、図4に示すように第1の係止部材22’も水平部材21の軸線方向に移動可能な構造とし、第1の係止部材22’と水平部材21との間にも斜支持部材37を装着することもできる。第1の係止部材22’と水平部材21を連結するように装着される斜支持部材37も、図3に示す斜支持部材31と同様の構造とすることができる。
【0038】
次に本発明の第3の実施形態である吊り足場支持金具について説明する。
図5は、この吊り足場支持金具40を橋桁に取りつけた状態を示す概略図であり、図6はこの吊り足場支持金具40の正面図である。
この吊り足場支持金具40は、図1に示す吊り足場支持金具と同じ水平部材21と、第1及び第2の係止部材22,23と、鉛直拘束ボルト24と、連結部材25と、を備えている。これらの構成の詳細については図1に示す吊り足場支持金具2と同様であるので省略する。
本実施形態の吊り足場支持金具40では、上記構成に加えて、隣り合う橋桁3,3間に架け渡される棒状又は管状の架け渡し部材41を備えており、第1の係止部材22及び第2の係止部材23の上部には上記架け渡し部材41の端部を支持する受け部42が設けられている。
【0039】
上記架け渡し部材41は、軸線方向に作用する力で係止部材22,23が橋桁から離れる方向に変位するのを拘束する部材である。したがって、鉛直方向に大きな荷重が作用するものではなく、大きな曲げ剛性を有するものである必要はない。したがって、簡易な足場の形成に用いられるような鋼管(いわゆる単管)や軽量の型鋼を用いることができる。
【0040】
係止部材22,23の上部に設けられる受け部42には、図6に示すように、2つの主プレート23a,23b間に溶接等で固定され、部材受け部として機能する水平板42aと、この水平板42aの橋桁3側の端縁よりほぼ鉛直方向に立ち上げられ、軸力受け部として機能する鉛直板42bとが設けられている。そして、水平板42aの反対側つまり橋桁3と離れた側は上方が開放され、架け渡し部材41の端部を上方から2つの主プレート23a,23b間に落とし込み、水平板42a上に載置して、架け渡し部材41の端面を鉛直板42bに対向させることができるものとなっている。
【0041】
このような吊り足場支持金具40では、図1に示す吊り足場支持金具2と同様に水平部材21と係止部材22,23とを橋桁に取りつけた後、図5に示すように、隣り合う橋桁3,3に取りつけた吊り足場支持金具40,40の間に架け渡し部材41を架け渡して装着する。そして、図6に示すように架け渡し部材41の端面と鉛直板42bとの間には、木材等で形成したくさび状の軸力伝達部材43を押し込む。これにより、架け渡し部材41の軸力で係止部材22,23の上部の変位が拘束される。
【0042】
なお、このような受け部42は、図5及び図6に示すように、第1の係止部材22と第2の係止部材23との双方に設けるのが望ましいが、水平部材21の軸線方向に移動可能となった第2の係止部材23のみに設けられるものであってもよい。隣り合う橋桁に取りつけられる吊り足場支持金具に、架け渡し部材の受け部が設けられていないとき、又は隣り合う橋桁に同様の構造を備えた吊り足場支持金具が取りつけられていないときには、隣り合う橋桁に受け部材(図示しない)を設け、架け渡し部材41の他端を支持することができる。この受け部材は、架け渡し部材41の重量を支持することができるとともに、架け渡し部材41の端面から橋桁3に軸力が伝達されるように装着できるものであればよい。また、軸力の伝達は、係止部材23の上部に設けられた受け部42と同様に架け渡し部材41の端面と橋桁との間に挿入した木片等を介するものでよい。このような受け部材は、ホールインアンカーで橋桁に支持させてもよいし、接着剤等を用いて固定するものであってもよい。
【0043】
また、この実施形態の吊り足場支持金具40は、図7に示すように、図4に示す実施形態で用いられる斜支持部材31を備えるものとすることもできる。
【0044】
以上に説明した実施の形態では、2つの係止部材22,23は、2つの主プレートと、これらを連結する連結プレートとを有するものであるが、形状及び構造等はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、同様の機能を備えて橋桁の断面拡大部に係止することができるものであれば、他の様々な形態とすることができる。また、鉛直拘束ボルト22は、吊り材から吊り足場支持金具に作用する鉛直方向の力が安定して変動が少ない場合や、風の影響が少ない場合には、省略することもできる。さらに、本発明の吊り足場支持金具のその他の部分についても、本発明の範囲で様々な態様とすることができる。
一方、この吊り足場支持金具を使用することができる橋桁は、プレストレストコンクリートに限定されるものではなく鉄筋コンクリートで形成されたものであってもよい。また、断面形状は、床版となる両側方への張り出し部を一体に備え、ほぼT型となったものでもよく、下部に断面拡大部を備えるものであれば適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1:橋梁、 2:吊り足場支持金具、 3:橋桁、 3a:橋桁の断面拡大部、3b:橋桁の傾斜した側面、 4:コンクリート床版、 5:吊り材、 6:足場、 7,8:鋼管、 9:足場板、
21:水平部材、 22:第1の係止部材、 22a:第1の主プレート、 22b:第2の主プレート、 22c:第1の連結プレート、 22d:第2の連結プレート、 22e:第1及び第2の主プレートの橋桁と対向する側縁、 22f:係止部、 23:第2の係止部材、 23a:第1の主プレート、 23b:第2の主プレート、 23c:第1の連結プレート、 23d:第2の連結プレート、 23e:第1及び第2の主プレートの橋桁と対向する側縁、 23f:係止部、 23g:外挿部材、 23h:ボルト、 24:鉛直拘束ボルト、 25:連結部材、 26:雌ねじ部材、
30:吊り足場支持金具、 31斜支持部材、 32:ターンバックル、 33,34:棒状部材、 35,36:ボルト、 37:斜支持部材、
40:吊り足場支持金具、 41:架け渡し部材、 42:受け部、 43:軸力伝達部材











【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面の形状がほぼT型又はほぼI型となったコンクリートの橋桁の下側で、該橋桁の軸線方向とほぼ直角でほぼ水平に配置される水平部材と、
該水平部材に接合され、前記橋桁の両側面に沿って上方に立ち上げられて、該橋桁の断面が下縁付近で幅方向に拡大された断面拡大部に係止される二つの係止部材と、を有し、
前記係止部材は、前記断面拡大部の上側の傾斜した側面に上部を載せ掛けるように係止されるものであり、
該係止部材の双方が、前記水平部材との接合角度の変化が拘束されるように接合されるとともに、少なくとも一方は、前記水平部材の軸線方向に移動可能となっており、前記橋桁断面の幅方向の寸法に対応した位置を選択して固定されるものであることを特徴とする吊り足場支持金具
【請求項2】
前記水平部材と前記係止部材とが接合されて前記橋桁に取り付けられた状態で装着することができ、前記水平部材の前記係止部材が接合された位置より離れた位置と前記係止部材とを連結する斜支持部材を有し、
該斜支持部材は、前記水平部材と前記係止部材との間に装着した後に伸縮して前記水平部材と前記係止部材との相対的な変形を拘束するものであることを特徴とする請求項1に記載の吊り足場支持金具。
【請求項3】
前記係止部材の上部に一端が支持され、該係止部材が取りつけられた第1の橋桁と隣り合う第2の橋桁に他端が支持されて二つの橋桁間に架け渡され、前記係止部材の上部が前記第1の橋桁から離れる方向に変位するのを拘束する架け渡し部材を有し、
該架け渡し部材は、前記水平部材と前記係止部材とが接合されて前記第1の橋桁に取り付けられた状態で装着することができるものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の吊り足場支持金具。
【請求項4】
前記係止部材の上部には、上方から落とし込まれる前記架け渡し部材の端部を支持する部材受け部と、前記架け渡し部材の端面と対向し、該架け渡し部材に作用する圧縮方向の軸力が伝達される軸力受け部と、が設けられ、
前記架け渡し部材の端面と前記軸力受け部との間に、該架け渡し部材に作用する圧縮方向の軸力を該軸力受け部に伝達する軸力伝達部材が介挿されていることを特徴とする請求項3に記載の吊り足場支持金具。
【請求項5】
前記水平部材又は該水平部材に固着された部材に螺合され、先端を前記橋桁の底面に突き当てて前記水平部材と前記橋桁の底面との間隔を保持する鉛直拘束ボルトを備えることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の吊り足場支持金具。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−122266(P2012−122266A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274379(P2010−274379)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】