説明

吊り革用情報表示装置

【課題】吊り革に取り付けられた表示機器に内蔵されるバッテリの交換間隔を長くし、メンテナンス費用を削減し、情報量の増大にも対応し、消費電力の大きなバックライトを使用しなくても表示品位の高い吊り革用情報表示装置を提供する。
【解決手段】吊り革のベルト2の取り付け部を挟み2つの平面を有するケース3と、ケース3に外部端末からの情報を受信する受信部21と、ケース3の一方の平面に情報を表示する電子ペーパーで構成される表示部6と、ケース3に表示部6の情報を切り替え制御する電子回路部5と、ケース3の他方の平面に情報の表示に必要な電力の少なくとも一部を供給する太陽電池9とを備える吊り革用情報表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公共車両の乗客に情報を提供する装置に関し、特に、吊り革用情報表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、電車やバスなどの公共車両で、乗客に提供する広告の一部に吊り革を利用することがある。
【0003】
一例として、吊り革に嵌挿する合成樹脂製広告ケースを取り付け、印刷された広告ラベルを挿入する方法が用いられる(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
他の例として、吊革支柱内のケーブルを通じて車輌内の電源供給及びデータ供給用サーバから電源とデータ供給を受けると共に自動表示切替一時停止ボタン、前後画面呼び出しボタンなどを配した液晶広告表示パネルを吊革ケース部に組み込んだ、車内吊革液晶広告システムが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
さらに、つり革に、広告情報を電気的に表示する複数の吊革表示器が設けられている。そして、地上サーバ、車上サーバ及びトランシーバにより、これら複数の吊革表示器のそれぞれには広告情報が無線通信を利用して送信され、広告情報が表示される例が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−325725号公報
【特許文献2】実用新案登録第3080063号公報
【特許文献3】特開2008−139616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の吊り革用広告ケースによれば、広告期間の経過によって広告の入れ替え作業に、多大な労力及び時間が必要である。このため、広告費としてコスト高になり広告媒体として魅力の無いシステムになっていた。
【0008】
特許文献2に記載の液晶表示パネルを取り付けた液晶吊革表示機構情報表示装置によれば、吊革支柱内のケーブルを通じて車輌内の電源供給及びデータ供給用サーバから電源とデータ供給を受けるため、初期設備並びに工事に掛かるコストが高額となり、結果、広告費としてコスト高になり実用的な広告媒体とならなかった。
【0009】
特許文献3に記載の情報表示システムによれば、複数の吊革表示器のそれぞれには広告情報が無線通信を利用して送信される。よって、情報の更新コストと初期工事コストは削減される。しかし、吊り革表示器は、吊り革のベルト部に固定して設けられている。吊り革表示器は、バッテリを備えており、バッテリの電力で単独で駆動するようになっている。
【0010】
バッテリの電力容量を増大させると吊り革表示器の外形が大きくなる。そして、吊り革表示器があまり大きくなると、乗客の視界を妨げ閉塞感を与えるので好ましくない。従って、バッテリの電力容量は抑える必要がある。しかし、限れて電力容量では、広告情報の量を増大させた場合や、内容更新を頻繁に行なうと、電池交換する間隔が短くなる課題を有する。
【0011】
バッテリの交換は車両内での手作業となる。作業者は手を上に上げた状態の作業姿勢を強いられ、またその設置数の多さから多大な労力と時間を必要とする。結果、広告費としてコスト高になり実用的な広告媒体となりえない。
【0012】
さらに、容量に限定のあるバッテリを利用すると、表示にバックライトを使用した液晶表示パネルは消費電力が大きく、バッテリの消耗が激しいため実用性に欠ける。通常は電卓などに使用される外光を利用する反射型の液晶表示装置を使用する。しかし、電車内の照明は天井蛍光灯であり、吊り革に取り付けられた反射型液晶パネルは光をパネル面に平行に近い角度で照明する。結果、電車内で立って吊り革を掴んでいる観察者が反射液晶パネル表面を良好に視認することが困難であるという課題があった。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。主たる目的は電車やバスなどの車両で、吊り革に取り付けられた表示機器に内蔵されるバッテリの交換間隔を長くし、メンテナンス費用を削減し、情報量の増大にも対応し、消費電力の大きなバックライトを使用しなくても表示品位の高い吊り革用情報表示装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記の課題を解決するために、電車、バス等の公共交通機関の車内において、旅客に向けた情報を無線で受信し、吊り革に取り付けられた表示装置で表示し提供するために必要な電源の電力容量のすべて、または一部を吊り革に取り付けられた太陽電池で発電した電力を利用できる構成にした。
【0015】
第1の形態として、吊り革のベルトの取り付け部を挟み2つの平面を有するケースと、ケースに外部端末からの情報を受信する受信部と、ケースの一方の平面に情報を表示する表示部と、ケースに表示部の情報を切り替え制御する電子回路部と、ケースの他方の平面に情報の表示に必要な電力の少なくとも一部を供給する太陽電池とを備える吊り革用情報表示装置とする。
【0016】
第2の形態として、少なくとも2面の平面を有する吊り輪に内蔵された吊り革用表示装置において、吊り輪に外部端末からの情報を受信する受信部と、吊り輪の一方の平面に情報を表示する表示部と、吊り輪に表示部の情報を切り替え制御する電子回路部と、吊り輪の他方の平面に情報を表示するのに必要な電力の少なくとも一部を供給する太陽電池とを備える吊り革用情報表示装置とする。
【0017】
第3の形態として、上記第1または第2の形態において、表示部は電子ペーパーとすること。
【0018】
第4の形態として、上記第3の形態において、電子ペーパーはメモリー性液晶の電気光学効果によって表示する。
【0019】
第5の形態として、上記第3の形態において、メモリー性液晶は、一対の基板と、一対の基板間に液晶を封入し、一対の基板の両面に一対の偏光板を配置した液晶セルと、空気層を介して450〜750nmの波長における分光反射率が90%以上でかつ、内部に微細な気泡を有する熱可塑性樹脂から成る白色フイルムとを、配置する。
【0020】
第6の形態として、上記第1〜5のいずれかに記載の形態において、表示部は、背面に集光板を配置し、集光板の表示部側の反対側の端面に空気層を介さず拡散反射板を設ける。
【0021】
第7の形態として、上記第6の形態において、集光板は蛍光色を含んだ蛍光集光板とする。
【0022】
第8の形態として、上記第1または第2の形態において、表示部は、駆動周波数が略1Hzの低周波駆動方式を用いたアクティブマトリックス液晶とする。
【0023】
第9の形態として、上記第1〜8のいずれかに記載の形態において、吊り革用情報表示装置は太陽電池のほかに2次電池を備える。
【0024】
第10の形態として、上記第1〜8のいずれかに記載の形態において、吊り革用情報表示装置は太陽電池のほかに1次電池を備える。
【0025】
第11の形態として、上記第1〜8のいずれかに記載の形態において、吊り革用情報表示装置は太陽電池のほかにキャパシタを備える。
【発明の効果】
【0026】
本発明の吊り革用情報表示装置では、太陽電池の発電電力を表示装置の特性に合わせて電源は太陽電池と一次電池または、太陽電池と二次電池または、太陽電池とキャパシタを電源とする自立電源から供給される構成にしたので、従来のバッテリのみの電源と比較するとメンテナンス間隔を長くすることが可能なのでメンテナンス費用の削減が可能となり、安い広告費用での広告情報を提供可能となった。
【0027】
特に電車内の天井にある蛍光灯による照明環境に対応して、表示部と太陽電池部をベルトで挟んで配置したので、表示部の面積は大きく見やすくなった。さらに、太陽電池の面積も広くできたため、表示の見易さと発電量の増大を両立させた。
【0028】
吊り革のベルトに挟んでケースに取り付ける方式では、既存の吊り輪とベルトに取り付けられるので、初期導入コストを低減できる。一方、吊り輪に内蔵する方式では、吊り輪を交換する必要があるが、乗客の閉塞性は緩和され機能的となるとともに、表示の位置が下がり見やすくなる。
【0029】
さらに、表示装置として電子ペーパー用いることで、無線による受信と表示更新を同時に実行する必要がなくなる。これは電子ペーパーが表示内容を更新時のみに電力消費しそれ以外は殆ど電力消費しないという特性があるためである。結果、最大電力容量を低減することが可能となり一次電池、二次電池、キャパシタの寿命を延命できる。
【0030】
また、広告内容の変更を利用乗客にあわせて、時間別に更新する場合や、到着駅周辺の関連広告を列車の運行に合わせて更新することも、電力消費が少ないので可能となった。
【0031】
また、電子ペーパーとして、メモリー性液晶の電気光学効果によって表示する液晶表示装置で偏光板背面の反射板を指向性の無い拡散の強い白色フイルムを、空気層を介して配置した構成にすることで、視認性の確保が出来た。つまり、電車内の天井蛍光灯照明の下に光の入射方向と平行に近い角度に入射する光を使用しても拡散が強いので、電車内で立っている人の視認位置でも拡散光が届くので視認性が確保できる。また、電車の座席に座っている人の視線位置でも視認性が確保でき、視認位置に依存しないので広告効果が高まる。
【0032】
同様に、蛍光集光板を使用して外光を取込みバックライト方式のような視認性を実現し、カラフルな広告媒体を実現した。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の吊り革用情報表示装置の一実施例を示す断面図である。
【図2】本発明の吊り革用情報表示装置の一実施例を示す正面図である。
【図3】本発明の吊り革用情報表示装置の一実施例における二次電池の回路構成である。
【図4】本発明の吊り革用情報表示装置の一実施例における一次電池の回路構成である。
【図5】本発明の吊り革用情報表示装置の他の実施例を示す断面図である。
【図6】本発明の吊り革用情報表示装置の他の実施例を示す正面図である。
【図7】外光取り込みの機能を追加した吊り革用情報表示装置の一実施例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0035】
図1は、本発明に係る吊り革用情報表示装置を表す模式断面図である。本発明を電車車両内に設置した場合のものである。図中、パイプ1は、吊り革を車体に固定するための吊り下げ用パイプである。この吊り下げ用パイプ1に巻き付けられたベルト2の下端には吊り輪8通して、ベルト2が3重に重なっている部位にあるねじ17によりベルト2は締め付け固定され吊り革として機能する。
【0036】
この吊り革のベルト2にコの字型のケース3をコの字の溝にベルト2が収まるように配置して図示はしないがコの字の溝に蓋をして固定する。吊り革のベルト2を嵌挿するケース3はねじ止めしたベルト2の位置と吊り輪8の間に固定され、溝の反対側の側面に表示するための表示部6を配設し、吊り革のベルト2を介した反対側の側面に太陽電池9を装備して効率よく発電できるようにした。
【0037】
透明カバー4は表示部6と太陽電池9を覆うように取り付けられ、表示部6と太陽電池9を保護する働きをする。表示部6の背面には電子回路部5を配置する。太陽電池9の背面には電源7を配置した。また、所定の電波を受信する受信部21も配置した。電子回路5は、受信部21の受信内容に基づいて表示内容を切替え制御する制御手段と太陽電池9で発電した電力をコントロールする電源回路部から構成されている。電源7は一次電池または、二次電池、またはキャパシタなどで構成されている。レイアウトについては機構設計上最適な場所に配置されれば良くこの例に限るものではない。例えば、吊り革のベルト取り付け部を挟み表示装置のケースを支持できれば良い。
【0038】
図2は、本発明に係る吊り革用情報表示装置の正面図である。吊り下げ用パイプ1にベルト2が固定されている。吊り下げ用パイプ1に巻きつけられたベルト2の下端には吊り輪8を通して、ねじ17によりベルト2は締め付け固定され、吊り革として機能する。
【0039】
図2の紙面手前側は窓の反対側にあたり、座席手前に立った乗客がケース3の側面の広いエリアを使用して表示部6は視認出来るように取り付けられている。その結果、表示される広告内容を少しでも大きく表示でき、視認性も良くなっている。
【0040】
一方、図1に記載の太陽電池9は表示部6反対側にあり車内座席手前に立った乗客には視認されない。太陽電池9は車内天井からの蛍光燈からの光を受け発電するのを前提に、蛍光燈での発電効率の良いアモルファスシリコン太陽電池を使用した。ケース3の側面を広いエリアを使用して発電量を確保している。さらに、日中は窓からの太陽光が間接的に照射されるので、発電量が更に増やすことが可能となる。
【0041】
表示部6は表示内容を更新時のみに電力消費しそれ以外は殆ど電力消費しない電子ペーパー、または、TFT素子を使用したアクティブマトリックス液晶駆動方式で消費電力を低減する方法として駆動周波数を1Hz程度に低減した低周波駆動方式を採用することが望ましい。電子ペーパーの例としては、電気泳動方式、電子粉流体方式、ツイストボール方式、液晶方式、エレクトロウェッティング方式、干渉方式等の表示方式を利用できる。低周波駆動方式しては、メモリー素子内蔵型TFTを使用できる。
【0042】
表示部6に電子ペーパーを用いた場合、表示部6以外で消費する電力で、電波を受信する受信部21と、受信部21の受信内容に基づいて表示内容を切替え制御する制御手段でも休止期間が長い間欠動作するので、休止期間内の電力消費は殆どゼロに近くなる。このため、太陽電池9で発電した電力は余剰となる恐れがある。
【0043】
図3について説明する。太陽電池9の正極に太陽電池用逆流防止ダイオード18のアノード側の端子を接続し、太陽電池用逆流防止ダイオード18のカソード側の端子及び負極の端子に電源7と制御手段、電源回路部とを並列して接続している。太陽電池逆流防止ダイオード18、制御手段、電源回路部をまとめて電子回路部5と呼ぶ。また、受信部の図示は省略した。
【0044】
図3に示すように電源7に二次電池を使用して、太陽電池用逆流防止ダイオード18を通して充電できる構成にした。
【0045】
この構成により、二次電池に充電された電力を表示部6や電子回路部5が必要な期間供給でき、それ以外は充電する。二次電池以外にキャパシタを用いることも可能である。さらに、一次電池を併用してもよい。
【0046】
太陽電池9での発電できない期間が長くなり、二次電池の電圧低下をきたした場合、過放電監視回路を用いて電源供給を停止する回路を使用して二次電池保護してもよい。同様に、太陽光などが強く長く照射されて太陽電池9の発電量が増えた場合に備えて、過充電防止回路を追加してもよい。
【0047】
一方、表示部6に駆動周波数を1Hz程度に低減した低周波駆動方式を採用する場合は、図4に示す回路構成にする。
【0048】
図4について説明する。太陽電池9の正極に太陽電池用逆流防止ダイオード18のアノード側の端子を接続し、太陽電池用逆流防止ダイオード18のカソード側の端子及び負極の端子に直列に接続された平滑コンデンサー20と電源7および、制御手段、電源回路部とを並列して接続している。太陽電池逆流防止ダイオード18、平滑コンデンサー20、制御手段、電源回路部をまとめて電子回路部5と呼ぶ。また、平滑コンデンサー20は、太陽電池用逆流防止ダイオード18のカソード側の端子に平滑コンデンサー20のカソード側の端子が接続するように構成されている。また、受信部の図示については省略した。
【0049】
電源7は一次電池を使用して、太陽電池用逆流防止ダイオード18を通して電子回路部5に直接電力を供給する。蛍光燈が交流で点灯していると太陽電池9の電圧にリップルが含まれるので平滑コンデンサー20を使用する。また、電源7に一次電池を使用して、電源用逆流防止ダイオード19を通して太陽電池用逆流防止ダイオード18のカソード側に接続される。
【0050】
この構成により、表示部6が定常的に消費する数μW程度の電力は、常時太陽電池9の発電した電力で供給され、表示の書き換えやデータの受信時等間欠動作で短い時間のみ電力を多く必要な時に一次電池から電力を供給するようにした。
【0051】
これにより一次電池の消耗を抑制する効果が顕著になる上、太陽電池9に照射する光の強さにより発電電流が変化するため機器の動作が不安定になることを防ぐことが可能となる。特にトンネル内で停電など、緊急事態でも表示の継続、更新を一次電池により可能とした。
【0052】
以上の構成で太陽電池9の発電電力を表示装置の特性に合わせて、電源7を二次電池、キャパシタあるいは一次電池、個々に最適な電源マネージメントを行なうことで長期間の電源の自立性を確保し、メンテナンス費用の削減を実現している。
【0053】
次に低消費電力の表示装置を採用しても、表示視認性が悪いと広告効果が薄れてしまう。電車内の限られた照明環境でも低消費電力な表示装置を利用して視認性を改善する構成を説明する。
【0054】
電子ペーパーの中でも液晶方式は他の方式に比較して書き換え時の消費電力を低減できるので、本発明の様に太陽電池9を電源7として利用する場合最適である。本例では、液晶セルの配向膜が上下非対称のアンカリング強度となるような配向膜で0度ツイストとなるようにラビング処理され、液晶層の厚みが1.5μmとなるようにネマテック液晶を用いたメモリー性を有する反射型の液晶表示装置とした。
【0055】
反射型の液晶表示装置においては、一般的に反射板に正反射方向に指向性を持たせたAl蒸着反射板を使用する。しかし、本実施例のように、吊り革に取り付けられた反射型液晶表示装置は光をパネル面に平行に近い角度で照明されるので、電車内で立って吊り革をつかんでいる人から観察すると視認性が悪くなる。
【0056】
そこで、偏光板を配置した液晶セルと、空気層を介して波長450〜750nmにおける分光反射率が90%以上で且内部に微細な気泡を多数形成させた熱可塑性樹脂から成る白色フイルムを配置した構成にすると、吊り革に吊るして表示しても、視認性が劣化することはなくなり、広告効果を高めることが出来る。
【0057】
白色フイルムは市場でも容易に入手することができ、例えば、東レ株式会社製・ルミラーE60Lタイプ、E60Vタイプ、E6Lタイプ、6SVタイプの反射性フイルムを挙げることができる。また、白色の無機質微粒子を添加したルミラーE20タイプの様なものでも性能に劣るところを有るが使用可能である。
【0058】
図7は別の方式で外光取り込みにより視認性を改善することを説明する模式的断面図である。表示部6に透過型液晶表示パネルを使用し、その背面に蛍光集光板15を配置し、蛍光集光板15の透過型液晶表示パネル側の反対側の面に空気層を介さず拡散反射板16を配置した。また、所定の電波を受信する受信部21も配置した。
【0059】
蛍光集光板15としては、蛍光体を分散させたポリメチルメタアクリレート(以下PMMAと記す)で形成された板で、蛍光体の種類を変えることにより発色を選択できる。実施例においては、レッド蛍光体としてローダミンを用いると、入射する光から波長400〜600nmを吸収し、レッド光(波長600〜700nm)を蛍光として放出する。また、グリーン蛍光体としてクマリンを用いると、入射する光から波長400〜500nmを吸収し、グリーン光(波長500〜600nm)を蛍光として放出する。同様にオレンジ色、黄色の発色も可能で、有機蛍光体以外にも半導体ナノ粒子蛍光体などを使用できる。
【0060】
拡散反射板16は、フイルム状の物を透明接着剤で蛍光集光板15を貼り付ける。フイルムに限らず、紙、白色顔料でもよく、波長450〜750nmにおける分光反射率が90%以上のものであれば特に制限されない。
【0061】
次に透過型液晶パネルと蛍光集光板15と拡散反射板16の機能を説明する。電車内では蛍光灯10などの照明からの外光11が蛍光集光板15に入射すると、蛍光体で内部取り込み光の入射光12の一部の波長帯域が吸収され蛍光として発光する。発光による光は、蛍光集光板15内部全体で分散して発光する。PMMAは屈折率が空気よりも高いので、蛍光集光板15内部全体で発光した光の多くは全反射の条件を満足する。そのため、光は蛍光集光板15内部に閉じ込められる。
【0062】
この光は拡散反射板16の拡散作用により拡散反射光13は反対側の端面より出射して透過型液晶表示パネルの背面から照明する。乗客の視点14からはバックライトを使用した液晶表示の様に視認できる。更に、蛍光色の表示が可能となりカラフルとなり、広告効果を高めることが可能となる。
【実施例2】
【0063】
図5は本発明に係る吊り革用情報表示装置の別の例の模式的断面図である。図6は正面図である。実施例1で使用したケースの換わりに吊り輪8を使用して吊り革用情報表示装置を構成したものである。
【0064】
図5において、全体は省略したがベルト2の下端には吊り輪8通して、図6の正面図に記載のねじ17によりベルト2は締め付け固定され吊り革として機能する。この吊り革のベルト2に取り付けられた吊り輪8のベルト2の取り付け部を挟んだ一方の側面に表示部6を配設し、反対側の側面に太陽電池9を装備して効率よく発電できるようにした。
【0065】
透明カバー4はそれぞれ表示部6と太陽電池9を覆うように取り付けられ、表示部6と太陽電池9を保護する働きをする。表示部6の背面には電子回路部5を配置する。太陽電池9の背面には電源7を配置した。また、所定の電波を受信する受信部21も配置した。電子回路5は、受信部21の受信内容に基づいて表示内容を切替え制御する制御手段と太陽電池9で発電した電力をコントロールする電源回路部から構成されている。電源7は一次電池または、二次電池、またはキャパシタなどで構成され、レイアウトについては機構設計上最適な場所に配置されれば良くこの例に限るものではない。
【0066】
図6の正面図の手前側は窓の反対側にあたり、座席手前に立った乗客が吊り輪8の側面を広いエリアを使用して表示部6を視認出来るように取り付けられ、表示される広告内容を少しでも大きく表示でき、視認性を確保している。
【0067】
一方、太陽電池9は反対側に有り座席手前に立った乗客には視認されない。太陽電池9は車内天井からの蛍光燈からの光を受け発電するのを前提に、蛍光燈での発電効率の良いアモルファスシリコン太陽電池を使用し吊り輪8の側面を広いエリアを使用して、天井の蛍光燈側に対して、傾きをもつので、取込み光量を増大させ発電量を増大させている。さらに、日中は窓からの太陽光が間接的に照射されるので、発電量が更に増やすことが可能となる。
【0068】
本例の場合は、実施例1よりも表示装置を下げて、座席手前に立った乗客の目の位置に近くなるのと、乗客が手に持っているので、高精細な文字情報を表示しても、電車の走行による揺れの影響を低減出来、より多くの広告情報を発信可能としている。
【符号の説明】
【0069】
1 吊り下げ用パイプ
2 ベルト
3 ケース
4 透明カバー
5 電子回路部
6 表示部
7 電源
8 吊り輪
9 太陽電池
10 蛍光灯
11 外光
12 内部取り込み光の入射光
13 拡散反射光
14 乗客の視点
15 蛍光集光板
16 拡散反射板
17 ねじ
18 太陽電池用逆流防止ダイオード
19 電源用逆流防止ダイオード
20 平滑コンデンサー
21 受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り革のベルトの取り付け部を挟みケースを支持する吊り革用表示装置おいて、
前記ケース内に配置され、外部端末からの情報を受信する受信部と、
前記ケースの一方の平面に配置され前記受信部が受診した情報を表示する表示部と、
前記ケース内に配置され前記表示部に表示する情報を切り替える制御を行う電子回路部と、
前記ケースの前記表示部を有する面と反対側の平面に、前記表示部の表示に必要な電力の一部を供給するための太陽電池とを、備える吊り革用情報表示装置。
【請求項2】
吊り革に接続される吊り輪に内蔵された吊り革用表示装置において、
前記吊り輪内に配置され、外部端末からの情報を受信する受信部と、
前記吊り輪の一方の平面に前記情報を表示する表示部と、
前記吊り輪内に配置され前記表示部の情報を切り替え制御する電子回路部と、
前記吊り輪の他方の平面に配置され、前記情報を表示するために必要な電力の一部を供給するための太陽電池とを、備える吊り革用情報表示装置。
【請求項3】
前記表示部が、電子ペーパーである請求項1または2に記載の吊り革用情報表示装置。
【請求項4】
前記電子ペーパーは、メモリー性液晶の電気光学効果によって表示する請求項3に記載の吊り革用情報表示装置。
【請求項5】
前記メモリー性液晶は、
一対の基板と、
前記一対の基板間に液晶を封入し、前記一対の基板の前記液晶を有する面と反対の面にそれぞれ偏光板を配置した液晶セルと、
空気層を介して450〜750nmの波長における分光反射率が90%以上でかつ、内部に微細な気泡を有する熱可塑性樹脂から成る白色フイルムとを、配置したことを特徴とする請求項3に記載の吊り革用情報表示装置。
【請求項6】
前記表示部は、背面に集光板を配置し、前記集光板の前記表示部側の反対側の端面に空気層を介さず拡散反射板を設けた請求項1〜5のいずれか1項に記載の吊り革用情報表示装置。
【請求項7】
前記集光板は、蛍光色を含んだ蛍光集光板である請求項6に記載の吊り革用情報表示装置。
【請求項8】
前記表示部は、駆動周波数が略1Hzの低周波駆動方式を用いたアクティブマトリックス液晶である請求項1または2に記載の吊り革用情報表示装置。
【請求項9】
前記吊り革用情報表示装置は、前記太陽電池のほかに2次電池を備える請求項1〜8のいずれか1項に記載の吊り革用情報表示装置。
【請求項10】
前記吊り革用情報表示装置は、前記太陽電池のほかに1次電池を備える請求項1〜8のいずれか1項に記載の吊り革用情報表示装置。
【請求項11】
前記吊り革用情報表示装置は、前記太陽電池のほかにキャパシタを備える請求項1〜8のいずれか1項に記載の吊り革用情報表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−75715(P2011−75715A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225462(P2009−225462)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】