説明

吊ケーブルの一次押込み方法及び装置、吊ケーブルの押込み方法及び装置

【課題】吊ケーブルを張設装置にセットする作業性と作業効率を向上することを課題とし、この課題を解決する吊ケーブルの一次押込み方法及びその一次押込み方法に用いられる一次押込み装置、このような一次押込み方法または装置を含む吊ケーブルの押込み方法及び装置を得る。
【解決手段】吊ケーブル2を張設する張設装置1に吊ケーブル2をセットする一次押込み方法であって、張設装置1に装着された引張り手段5の張設方向への引っ張り力を吊ケーブル2に伝達して、当該吊ケーブル2を張設方向へ押込みながら張設装置1へセットすることを特徴とする吊ケーブルの一次押込み方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設物、例えば斜張橋等の橋梁のような固定構造物に対して建築構造物を吊持する吊ケーブルを張設する張設装置に吊ケーブルをセットする一次押込み方法及びその押込み方法に用いられる一次押込み装置、このような一次押込み方法または装置を含む吊ケーブルの押込み方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
吊ケーブルを張設する張設方法及び張設装置に関連する先行文献情報として、例えば下記の特許文献1がある。
この特許文献1は、吊ケーブルの外側に、軸方向に沿って係合手段を一定間隔毎に形成した押込みシリンダを被着固定し、この押込みシリンダの係合手段を利用して、ケーブルの引き込み方向に沿って一定距離引込み、その引込み終端位置で該押込みシリンダの係合手段に固定のチャック手段を係合させて押込みシリンダの戻りを止め、他方、引き込み時のチャック手段を開放して盛り替え、この引込みとチャック手段による係脱の盛り替え動作を繰り返して前記押込みシリンダをケーブル引込み方向に引込むことにより、吊ケーブルを張設するものである。
【特許文献1】特許第3520029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1の吊ケーブルの張設方法が開示される以前において吊ケーブルの張設は、桁下に張設装置(引込み装置)を設置し、その桁下から吊ケーブルを引込むことによって行われていた。このため、桁内部に引込み装置を収容する収容空間の確保を要するとともに、この収容空間に張設装置を収容する作業を要し、しかも、当該張設装置の他の収容空間への移動及び収容空間からの撤去を要していた。
この点、前記特許文献1における吊ケーブルの張設方法及び張設装置によれば、その吊ケーブルの張設作業及び張設装置の設置が構築構造物の桁上で行われるため、前記の収容空間の確保、桁下での張設装置の収容作業、移動及び撤去作業の必要が無く、吊ケーブルの張設作業の容易性の向上及び安全性の確保について極めて効果的なものである。
【0004】
ところで、前記特許文献1に開示された張設装置によって吊ケーブルの張設をするためには前工程として当該張設装置に吊ケーブルをセットする必要がある。そして、吊ケーブルを張設装置にセットする作業に関しては、吊ケーブルの先端にワイヤーを連結し、このワイヤーを桁下に設置したウインチによって巻き上げることによって、吊ケーブルを張設装置にセット可能な位置まで引込んでいるのが現状である。
【0005】
しかしながら、ウインチによって吊ケーブルを張設装置にセットする方法では以下のような問題がある。
まず、桁下において、ウインチでの作業が必要であり、前記張設装置に比べて軽量・小型であり、収容空間等の桁下への収容作業、移動及び撤去作業が容易であるものの、やはり狭い空間での作業となり、作業性が悪い。
また、吊ケーブルの先端に連結した1本のワイヤーをウインチで巻き上げることになるが、張設装置にセットするまでには、例えば50ton程度の荷重が必要となるところ、汎用されているウインチは定格荷重が通常15ton程度であることから、複数の滑車を繰り込んだ引き込み用の装置を構築する必要があり、煩雑な作業が必要となる。定格荷重の大きなウインチを用いることも考えられるが、その場合には装置が高額になる。
【0006】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、吊ケーブルを張設装置にセットする作業性と作業効率を向上することを課題とし、この課題を解決する吊ケーブルの一次押込み方法及びその一次押込み方法に用いられる一次押込み装置、このような一次押込み方法または装置を含む吊ケーブルの押込み方法及び装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明が採用した第1発明は、吊ケーブルを張設する張設装置に吊ケーブルをセットする一次押込み方法であって、張設装置に装着された引張り手段の張設方向への引っ張り力を吊ケーブルに伝達して、当該吊ケーブルを張設方向へ押込みながら張設装置へセットすることを特徴とする吊ケーブルの一次押込み方法にした。
【0008】
本発明で云う押込みとは、吊ケーブルを桁上から桁下側の吊ケーブル支持部または桁上に設置した定着部に向かって張設方向へ移動させる一連の動作を意味する。
また、本発明で云う一次押込みとは、前記押込みの一連の動作の内、吊ケーブルを張設装置によって押込みが可能な状態にセットする動作を意味し、張設装置が吊ケーブルを押込む動作を二次押込みと云う。
また、本発明で云う張設装置とは、桁上に設置されて吊ケーブルの二次押込みをする装置を意味する。
【0009】
前記方法を具体的に達成できる一次押込み装置として、第2発明は、吊ケーブルを張設する張設装置に吊ケーブルをセットする一次押込み装置であって、吊ケーブルに対して張設方向へ引っ張る引張り手段と、吊ケーブルを保持する保持部材と、前記引張り手段と保持部材とに亘って連結された引張り部材とでなり、前記引張り手段を張設装置に装着するとともに、吊ケーブルを張設方向へ押込みながら張設装置へセットすることを特徴とする吊ケーブルの一次押込み装置にした。
【0010】
前記引張り手段は、吊ケーブルに対して張設方向へ引っ張ることができる構造であれば良く、例えば、ウインチ構造やジャッキ構造等が挙げられる。
また、前記保持部材の吊ケーブルに対する保持の確実性の向上という観点から、第3発明のように、吊ケーブルの外側に、保持部材と係合する係合手段を固定状に設けることが好ましい。
前記係合手段の具体的構成として、例えば、前記特許文献1で例示したケーブル引込み装置に用いられる押込みシリンダに設けられた係合手段が挙げられる。
すなわち、第4発明では、吊ケーブルの外側に被着固定された押込みシリンダに一定間隔毎に形成した係合手段を係脱するチャック手段を備えたストローク手段で、吊ケーブルを張設方向に押込む張設装置に用いられる一次押込み装置であって、前記保持部材が前記係合手段に係脱するチャック機能を有するものであることを特徴とする吊ケーブルの一次押込み装置にした。
【0011】
第5発明に係る吊ケーブルの一次押込み方法は、吊ケーブルの二次押込みを行う張設装置に吊ケーブルをセットする方法であって、ケーブルソケットよりも後方の位置において前記吊ケーブルを保持する保持部材を設け、該保持部材に取り付けた複数本の引張り部材に対して張設方向への引っ張り力を付与することによって前記吊ケーブルを前記張設装置による二次押込みが可能な位置まで押し込むことを特徴とするものである。
本明細書において、吊ケーブルとの関係で方向を言う場合において、「前」とはケーブルソケットが設けられている側およびその延長線方向をいい、「後」とはその逆方向をいうものとする。
【0012】
引張り部材の数は、例えば、2本、3本、4本、あるいはそれ以上でもよい。
本発明においては、引張り部材を複数本設け、各引張り部材に対して引っ張り力を付与するようにしたので、従来のようにケーブルソケットに連結した1本のワイヤーロープに引っ張り力を付与するのに比べて、簡単に強い引っ張り力を付与できる。そのため、作業スピードを速くできる一次押込み量を多くすることができ、その結果、作業スピードの遅い二次押込み量を少なくすることができるので、作業効率を向上させることができる。
【0013】
また、ケーブルソケットよりも後方の位置において前記吊ケーブルを保持する保持部材を設け、該保持部材に対して引っ張り力を付与するようにしたので、引っ張り力を付与する装置をケーブルソケットの後方に配置することができる。そのため、例えば斜張橋の場合などでは桁上にて一次押込みを行うことが可能となり、作業性と作業効率を向上させることができる。
【0014】
第6発明に係る吊ケーブルの一次押込み装置は、吊ケーブルを張設する張設装置に吊ケーブルをセットする一次押込み装置であって、ケーブルソケットよりも後方の位置において前記吊ケーブルを保持する保持部材と、該保持部材に取り付けられた複数本の引張り部材と、該引張り部材に対して張設方向への引っ張り力を付与する引張り手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0015】
第7発明に係る吊ケーブルの一次押込み装置は、上記第6発明における引張り手段が張設装置に設けられていることを特徴とするものである。
【0016】
第8発明に係る吊ケーブルの一次押込み装置は、上記第6または第7発明における引張り手段が、引張り部材を保持し及び保持を解除すると共に引張り方向に対して前後進できる前進保持部と、該前進保持部を前後進させるジャッキと、引張り部材を保持し及び保持を解除する固定保持部と、を備えてなることを特徴とするものである。
引張り手段として、ジャッキを用いることにより、大きな引張り力を容易にかつ安価に付与することができる。
なお、引張り部材を保持するとは、引張り部材を引張力に抵抗して強固に保持することであり、その具体的態様としては、例えばチャックすること、クランプすることを含む。
【0017】
第9発明に係る吊ケーブルの一次押込み装置は、吊ケーブルの外周面に被着固定された押込みシリンダに一定間隔毎に形成した係合手段を係脱するチャック手段を備え、該チャック手段で前記係合手段をチャックして前記吊ケーブルを張設方向に押込む張設装置に用いられる一次押込み装置であって、上記第6〜第8発明のいずれかのものにおける保持部材が前記係合手段に係合することによって前記吊ケーブルを保持するように構成されているものであることを特徴とするものである。
【0018】
第10発明に係る吊ケーブルの押込み方法は、吊ケーブルを張設装置にセットする一次押し込みと、張設装置によって吊ケーブルを張設方向に押し込む二次押し込みからなる吊ケーブルの押込み方法であって、前記一次押込みが、ケーブルソケットよりも後方の位置において前記吊ケーブルを保持する保持部材を設け、該保持部材に取り付けた複数本の引張り部材に対して張設方向への引っ張り力を付与することによって前記吊ケーブルを前記張設装置による二次押込みが可能な位置まで押し込むことを特徴とするものである。
【0019】
第11発明に係る吊ケーブルの押込み装置は、前記第6〜第9発明の何れかの吊ケーブルの一次押込み装置と、該一次押込み装置によってセットされた吊ケーブルを二次押込みする張設装置と、を備えたことを特徴とするものである。
【0020】
第12発明に係る吊ケーブルの押込み装置は、前記第11発明における張設装置が、吊ケーブルの外周面に被着固定された押込みシリンダに一定間隔毎に形成した係合手段を係脱するチャック手段を備え、該チャック手段で前記係合手段をチャックして前記吊ケーブルを張設方向に押し込むものであることを特徴とするものである。
【0021】
第13発明に係る吊ケーブルの押込み装置は、前記第11発明における張設装置が、吊ケーブルの端部に設けたケーブルソケットを、スライド体を介してジャッキで押出し、押出し位置で前記スライド体の戻り止めをする盛替えナットを備えたものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、下記の優れた効果が期待できる。
第1発明によれば、吊ケーブルを張設装置にセットする一次押込み作業においても桁上で行えるので、この一次押込みから張設装置による二次押込み作業まで全て桁上で行うことができる。
【0023】
また、第2発明によれば、第1発明における吊ケーブルの一次押込み方法を具体的に達成する一次押込み装置を提供できる。
また、第3発明によれば、保持部材の吊ケーブルに対する保持の確実性が向上し、第4発明によれば、第3発明を具体化することができるとともに、張設装置による二次押込みに使用される係合手段を一次押込みにそのまま使用できるので、一次及び二次押込みにおける部品の共有化によるコストの低減や、一次押込みから二次押込みの作業切り換え時間の短縮による作業時間の迅速化が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の吊ケーブルの一次押込み方法及びその一次押込み方法に用いられる吊ケーブルの一次押込み装置の最良の実施形態を図面に基づいて説明する。
尚、本形態の吊ケーブルの一次押込み方法及びその一次押込み方法に用いられる吊ケーブルの一次押込み装置は、吊ケーブルで橋桁を固定構造物に吊持した斜張橋を構築するのに用いるものとして説明する。
【0025】
一次押込みは、二次押込みの前段階として行うものであることから、まず、二次押込み装置および方法について説明する。
図4、図5は二次押込みを行う張設装置(以下、「二次押込み装置」という)の説明図であり、吊ケーブルを二次押込み装置にセットして二次押込み開始時点の状態を示しており、図4が平面図、図5が側面図である。
【0026】
前記二次押込み装置1は、斜張橋における保工桁A上に載置され、一次押込み装置によりセットされた吊ケーブル2を保工桁Aの桁下に設けられた支持部(図示せず)に向かって押込む構造のものであり、具体的には、前記特許文献1で例示した「特許第3520029号」における引込み装置と略同様の構成を有するものである。
二次押込み装置1の基本的な構成を説明する前に、まず、二次押込み装置1にセットされる吊ケーブル2について説明すると、吊ケーブル2の先端にはケーブルソケットが設けられ、その後方には竹節状の係合手段41が着脱可能に被着固定されている。
【0027】
次に、二次押込み装置1の基本的な構成を説明する。二次押込み装置1は、図5に示されるように、保工桁A上に設置された支持台D上に設置される。支持台Dは、保工桁Aに取り付けされる枠体A1に支持された角度調整用ジャッキA2により、二次押込み装置1を角度調整可能に支持するものである。
二次押込み装置1は、吊ケーブルの係合手段41をチャックしたりチャックの解除をしたりするチャック手段Cを備えている。チャック手段Cは、張設方向に沿って前後2箇所に設けられた移動側のチャック部C1と固定側のチャック部C2とからなる。そして、この両チャック部C1、C2間にストローク手段Bが位置し、このストローク手段Bの張設方向に沿うストロークにより、移動側のチャック部C1が押込み方向に沿って前後往復動するようにされている。
【0028】
上記のように構成された二次押込み装置1によって吊ケーブル2を押込む動作について説明する。吊ケーブルを押込む際には、チャック部C1によって吊ケーブル2の係合手段41をチャックすると共にチャック部C2の係合手段41に対するチャックを解除し、この状態でストローク手段Bのロッドを伸長させる。これによって、チャック部C1が反力ロッドを兼ねた案内杆11に沿って前進し、チャック部C1にチャックされた吊ケーブル2が押込まれる。
ストローク手段Bのロッドが1ストローク分伸長されると、チャック部C2によって前記係合手段41をチャックして吊ケーブル2を保持する一方、チャック部C1の係合手段41に対するチャックを解除する。この状態で、ストローク手段Bのロッドを縮退させることによって、チャック部C1を元の位置に戻す。
このようなチャック手段Cによるチャック動作およびストローク手段Bの前後動を繰り返すことによって、吊ケーブル2の押込み作業が行われる。
【0029】
以上が、二次押込み装置による二次押込み方法であるが、図4に示すように二次押込みが可能な状態に吊ケーブルをセットするまでの動作が一次押込みである。二次押込みが可能な状態とは、図4に示すように、吊ケーブル2の係合手段41を移動側のチャック部C1でチャック可能な状態にセットした状態をいう。
【0030】
図1、図2は一次押込み装置の説明図であり、図1が平面図、図2が側面図である。図1、図2は、図4に示した二次押込み装置1に一次押込み装置3を取り付け、吊ケーブル2を一次押込み可能な状態にセットした状態を示している。以下、図1、図2に基づいて一次押込み装置について説明する。
【0031】
一次押込み装置3は、吊ケーブル2に係合して吊ケーブル2を保持する保持部材6と、保持部材6に取り付けられて保持部材6を引っ張るためのワイヤーロープからなる引張り部材7と、前述した二次押込み装置1のチャック部C2の左右外側に着脱可能に取り付けられて引張り部材7を引っ張る引張り手段5と、から構成されている。
【0032】
保持部材6は、吊ケーブル2に被着固定した押込みシリンダ4の係合手段41に係合する係合部61と、この係合部61に連結されると共に押込みシリンダ4の後端部に吊ケーブル2の両側に張り出すように設けられて引張り部材7が連結される引張り部材連結部62と、を備えてなる。そして、引張り部材連結部62に連結された引張り部材7が引張り手段5によって引張り可能にセットされている。
なお、係合部61は、筒体を半割にして分割された筒体部材を上下から押込みシリンダ4に被着固定することにより係合手段4に対して係合するようにしている。
引張り部材7は、ワイヤーロープの例を示したが、引張り手段5の引張り力に耐え得るものであれば他の材質のものでもよい。
【0033】
引張り手段5は、引張り部材7をチャック及びチャック解除する前後の前進チャック部51と、固定チャック部52と、これら前進チャック部51と固定チャック部52の間に設置されて前進チャック部51を前後動させるジャッキ53とから構成されている。
【0034】
次に、上述した一次押込み装置3を用いた吊ケーブル2の一次押込み方法を説明する。
先ず、吊ケーブル2を一次押込み装置3に一次押込み可能状態で保持させる。この保持させる方法については、種々の方法があるが、例えば以下のようにする。
先ず、吊ケーブル2の先端部に保持部材6を取り付け、保持部材6に引張り部材7を取り付ける。この状態で、吊ケーブル2の先端をウインチ等で引っ張って、吊ケーブル2の先端部分を二次押込み装置1におけるチャック手段Cに対して挿入状態にすると共に一次押込み装置3の構成部材である引張り手段5を二次押込み装置1に装着する。
あるいは、吊ケーブル2を二次押込み装置1の前方に配置したウインチ等で引っ張って、吊ケーブル2の先端部分を二次押込み装置のチャック手段Cに対して挿入状にし、この状態で一次押込み装置3の引張り手段5を二次押込み装置1に装着すると共に、吊ケーブル2に保持部材6を取り付ける。
【0035】
このように、吊ケーブル2を一次押込み装置3に一次押込み可能状態で保持させる方法は、作業場所や設備に応じて任意に選択できる。
また、吊ケーブル2をチャック手段Cに対して挿入状態にする場合、チャック手段Cにおけるチャック部C1、C2を分解し、組み立てる際に吊ケーブル2を挿入する方法、又は、前記チャック部C1、C2を係合解除状態(開いた状態)にして挿入する方法等いずれでも任意である。
又、吊ケーブル2の挿入作業及び一次押込み作業においては、二次押込み装置1を保工桁Aに対して水平状にして行っても良いし、吊ケーブル2の押込み方法に沿う角度に傾斜させて行ってもよい。
【0036】
吊ケーブル2を一次押込み装置3に一次押込み可能状態で保持させた後は、一次押込み装置3を動作させて吊ケーブル2を二次押込み装置1に押し込んでいく。以下、一次押込み動作を説明する。
吊ケーブル2を押込む際には、前進チャック部51によって引張り部材7をチャックすると共に固定チャック部52の引張り部材7に対するチャックを解除し、この状態でジャッキ53のロッドを伸長することにより、前進チャック部51を前進させる。これによって、引張り部材7が保持部材6を引っ張るので、保持部材6に係合部材61を介して係合している吊ケーブル2が二次押込み装置側に押し込まれる。図3は、図1の状態からジャッキ53の1ストローク分押し込んだ状態を示している。
【0037】
ジャッキ53の1ストローク分の伸長が終了すると、固定チャック部52で引張り部材7をチャックすると共に前進チャック部51による引張り部材7のチャックを解除し、この状態でジャッキ53のロッドを縮退させることによって前進チャック部51を元の位置に戻す。
このように、前進チャック部51及び固定チャック部52の引張り部材7に対するチャック・チャック解除を繰り返すとともに、ジャッキ53で前進チャック部51の前後動を繰り返すことによって、吊ケーブル2の一次押込み作業を行う。
【0038】
そして、吊ケーブル2における押込みシリンダ4の係合手段41が二次押込み装置1のチャック部C1、C2に係合される位置まで押込んだ後、当該チャック部C1、C2を係合手段41に対して係合させる。
そして、一次押込み装置3を二次押込み装置1及び吊ケーブル2から取り外して吊ケーブル2の一次押込みが完了する。この状態が図4に示す状態である。
【0039】
前記一次押込みの完了後、二次押込み装置1におけるチャック部C1、C2を前記のように動作させて吊ケーブル2を押込み、所定のテンションに張設するとともに、吊ケーブル2を桁下の支持部(図示せず)に固着することによって、吊ケーブル2の張設作業が完了する。
作業終了後には、二次押込み装置1を保工桁Aから取り外して次の張設作業場所へ移動し、次の吊ケーブル2の張設作業を前記と同様の方法で行う。
すなわち、本形態の一次押込み方法及び一次押込み装置によれば、張設作業を全て保工桁A上で行うことができる。
【0040】
なお、本発明は、例示した実施の形態に限定するものでは無く、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
例えば、本形態では、二次押込み装置を特許第3520029号の引込み装置と略同構成のものを例示したが、一次押込み装置が取り付けられる構成を有するとともに、押込みシリンダにおける係合手段に係合して吊ケーブルを押込める構成のものであれば良い。
【0041】
また、他の二次押込み装置の態様としては、以下のようなものであってもよい。
吊ケーブルの後端部に設けられたケーブルソケットをジャッキ装置で押し出し、前記ジャッキ装置とケーブルをその押出し位置で戻り止めする盛替えナットを盛り替えとガイドを兼ねたガイドロッドに有する装置であって、ジャッキ装置を支持部に対して前方位置に配設し、ケーブルソケットとジャッキ装置との間に、ケーブルに沿うスペーサを介在してなる二次押込み装置。
【0042】
また、本実施の形態では、吊ケーブルを当該吊ケーブルに被着固定された押込みシリンダの係合手段を利用して一次押込み装置における保持部材で保持するものを例示したが、この保持部材で保持するための係合手段は、押込みシリンダの係合手段以外の一次押込み装置専用の係合手段を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】吊ケーブルを保持した一次押込み装置を二次押込み装置に装着した状態の平面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】一次押込み装置が吊ケーブルを押込んだ状態の平面図である。
【図4】二次押込み装置が吊ケーブルを二次押込み可能状態で保持している状態の平面図である。
【図5】図4の側面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 張設装置(二次押込み装置)
2 吊ケーブル
3 一次押込み装置
4 押込みシリンダ
5 引張り手段
6 保持部材
7 引張り部材
41 係合手段
51 前進チャック部
52 固定チャック部
53 ジャッキ
61 係合部
62 引張り部材連結部
A 保工桁
B ストローク手段
C チャック手段
C1 チャック部
C2 チャック部
D 支持台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊ケーブルを張設する張設装置に吊ケーブルをセットする一次押込み方法であって、張設装置に装着された引張り手段の張設方向への引っ張り力を吊ケーブルに伝達して、当該吊ケーブルを張設方向へ押込みながら張設装置へセットすることを特徴とする吊ケーブルの一次押込み方法。
【請求項2】
吊ケーブルを張設する張設装置に吊ケーブルをセットする一次押込み装置であって、吊ケーブルに対して張設方向へ引っ張る引張り手段と、吊ケーブルを保持する保持部材と、前記引張り手段と保持部材とに亘って連結された引張り部材とでなり、前記引張り手段を張設装置に装着するとともに、吊ケーブルを張設方向へ押込みながら張設装置へセットことを特徴とする吊ケーブルの一次押込み装置。
【請求項3】
吊ケーブルの外側に、保持部材と係合する係合手段を固定状に設けていることを特徴とする請求項2に記載の吊ケーブルの一次押込み装置。
【請求項4】
吊ケーブルの外側に被着固定された押込みシリンダに一定間隔毎に形成した係合手段を係脱するチャック手段を備えたストローク手段で、吊ケーブルを張設方向に押込む張設装置に用いられる一次押込み装置であって、前記保持部材が前記係合手段に係脱するチャック機能を有するものであることを特徴とする請求項2に記載の吊ケーブルの一次押込み装置。
【請求項5】
吊ケーブルの二次押込みを行う張設装置に吊ケーブルをセットする一次押込み方法であって、ケーブルソケットよりも後方の位置において前記吊ケーブルを保持する保持部材を設け、該保持部材に取り付けた複数本の引張り部材に対して張設方向への引っ張り力を付与することによって前記吊ケーブルを前記張設装置による二次押込みが可能な位置まで押し込むことを特徴とする吊ケーブルの一次押込み方法。
【請求項6】
吊ケーブルを張設する張設装置に吊ケーブルをセットする一次押込み装置であって、ケーブルソケットよりも後方の位置において前記吊ケーブルを保持する保持部材と、該保持部材に取り付けられた複数本の引張り部材と、該引張り部材に対して張設方向への引っ張り力を付与する引張り手段と、を備えたことを特徴とする吊ケーブルの一次押込み装置。
【請求項7】
引張り手段は張設装置に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の吊ケーブルの一次押込み装置。
【請求項8】
引張り手段は、引張り部材を保持し及び保持を解除すると共に引張り方向に対して前後進できる前進保持部と、該前進保持部を前後進させるジャッキと、引張り部材を保持し及び保持を解除する固定保持部と、を備えてなることを特徴とする請求項6又は7に記載の吊ケーブルの一次押込み装置。
【請求項9】
吊ケーブルの外周面に被着固定された押込みシリンダに一定間隔毎に形成した係合手段を係脱するチャック手段を備え、該チャック手段で前記係合手段をチャックして前記吊ケーブルを張設方向に押込む張設装置に用いられる一次押込み装置であって、前記保持部材が前記係合手段に係合することによって前記吊ケーブルを保持するように構成されていることを特徴とする請求項6〜8の何れか一項に記載の吊ケーブルの一次押込み装置。
【請求項10】
吊ケーブルを張設装置にセットする一次押し込みと、張設装置によって吊ケーブルを張設方向に押し込む二次押し込みからなる吊ケーブルの押込み方法であって、前記一次押込みが、ケーブルソケットよりも後方の位置において前記吊ケーブルを保持する保持部材を設け、該保持部材に取り付けた複数本の引張り部材に対して張設方向への引っ張り力を付与することによって前記吊ケーブルを前記張設装置による二次押込みが可能な位置まで押し込むことを特徴とする吊ケーブルの押込み方法。
【請求項11】
請求項6〜9の何れか一項に記載の吊ケーブルの一次押込み装置と、該一次押込み装置によってセットされた吊ケーブルを二次押込みする張設装置と、を備えたことを特徴とする吊ケーブルの押込み装置。
【請求項12】
張設装置は、吊ケーブルの外周面に被着固定された押込みシリンダに一定間隔毎に形成した係合手段を係脱するチャック手段を備え、該チャック手段で前記係合手段をチャックして前記吊ケーブルを張設方向に押込むものであることを特徴とする請求項11に記載の吊ケーブルの押込み装置。
【請求項13】
張設装置は、吊ケーブルの端部に設けたケーブルソケットを、スライド体を介してジャッキで押出し、押出し位置で前記スライド体の戻り止めをする盛替えナットを備えたものであることを特徴とする請求項11に記載の吊ケーブルの押込み装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−198116(P2007−198116A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321103(P2006−321103)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000231132)JFE工建株式会社 (54)
【出願人】(390027513)大瀧ジャッキ株式会社 (26)
【Fターム(参考)】