説明

吊ケーブルの押込み方法及び押込み装置

【課題】吊ケーブルの押込み部として構築構造物に斜め交差状に固定される定着用パイプを構築構造物上に設けた反力手段で固定構造物上から定着用パイプに吊ケーブルの押込みが行なえるようにする。
【解決手段】構築構造物B桁エッジから斜め上方に露出する定着用パイプb部分に取付た取付座b1と、反力付与部13とをテンションロッド23で連結して構成されている反力手段3の反力を利用して押込みチャック5を押込みシリンダ2の係合部12に係合した状態で、ストローク手段4を作動させてその押込みシリンダ2所定距離定着用パイプbに押し込んだ後、反力付与部13で移動不能とされる盛り替えチャック6を係合部12に係合させ、押込みチャック5を開放して盛り替え、この押込みと両チャック5、6による係脱の盛り替え動作を吊ケーブルCの先端に設けたソケットc1が定着用パイプb先端から突出するまで繰り返し、押し込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定構造物に吊ケーブルで構築構造物を吊持する際にその吊ケーブルを押込み固定する吊ケーブルの押込み方法及び押込み装置、更に詳しくは、固定構造物である塔に対して構築構造物である吊橋を吊ケーブルで吊持したり、固定構造物である塔に対して構築構造物である屋根材を吊ケーブルで吊持したりする時等に汎用的に利用される構築構造物に対する吊ケーブルの押込み方法及び押込み装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、吊ケーブルの押込み方法は、固定構造物に対して構築構造物を吊ケーブルで吊持するに際して、構築構造物に固定された支持架台と、先端にソケットを設けた吊ケーブルに被着され軸方向に係合部が所定間隔をおいて形成された押込みシリンダと、前記支持架台を反力部として前記吊ケーブルを所定距離押込むジャッキ手段と、押込みシリンダの係合部に係合してそのジャッキ装置での押込み時に押動される係脱可能な押込みチャックと、前記支持架台に移動不能に支持され前記押込みチャックを解放している時に係合部に係合する係脱可能な盛り替えチャックとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1)。
この特許文献1は、押込みチャックを押込みシリンダの係合部に係合させた状態でジャッキ手段を作動させて吊ケーブルを所定距離押込んだ後、盛り替えチャックを前記係合部に係合させ押込みチャックを開放して盛り替え、この押込みと両チャックによる係脱の盛り替え動作を前記吊ケーブルの先端に設けたソケットが構築構造物内のブラケットから突出するまで繰り返すようになっている。
そして、そのブラケットからソケットが突出した時点で吊ケーブルの戻りをソケットとブラケットとの間に掛け止めされた戻り防止座で防止するようになっている。
【0003】
ところで、この特許文献1は、ジャッキ手段を、構築構造物内のブラケットに後端を連結するテンションロッドの先端に連結して反力手段とし、その反力手段の反力を利用して押込みシリンダを押し込み、構築構造物内の作業空間で吊ケーブル先端のソケットとブラケットとの間に戻り防止座を差し込み掛止するようになっている。
しかしながら、構築構造物には、前記するようなブラケットの代わりに、構築構造物に斜め交差状に固定された定着用パイプが存在するだけの場合も往々にしてある。
構築構造物に使用される二面ケーブルもその一例として挙げることができる。
この定着用パイプは前記押込みシリンダを押込むものであるため、テンションロッドを挿入固定することはできず、反力手段を工夫する必要がある。
これに対処するためには、構築構造物の下方に足場を構築しラムチェアー、ジャッキ装置を設置して前記押込みシリンダを引き込むことになるが、大掛かりになるばかりでなく、高所であるため、非常に危険でもあった。
そして、吊ケーブル押込みが完了すると、押込み装置は撤去されるが、その作業が面倒且つ危険なものになってしまう。
【特許文献1】特開2001−342610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来事情に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、吊ケーブルの押込み部(引込み部)として構築構造物に斜め交差状に固定される定着用パイプに構築構造物上に設けた反力手段で定着用パイプに吊ケーブルの押込みが行なえる安全な吊ケーブルの押込み方法及びその押込み方法の実施に直接使用する押込み装置を提供することにある。
他の目的とする処は、定着用パイプの中心線上から吊ケーブルが優れた直進性をもって押込みされ、押込み作業の安全性を向上させ、押込み時間の短縮にも寄与できる同押込み装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために講じた技術的手段は、方法は、構築構造物に斜め交差状に固定される定着用パイプ内に、固定構造物に対して緊張架設される吊ケーブルを押込み掛け止めして、固定構造物に吊ケーブルを介して構築構造物を吊持する吊ケーブルの押込み方法であって、
前記構築構造物上方の定着用パイプ部分と、同構築構造物上方における定着用パイプの延長上の位置に配置した反力付与部とをテンションロッドで連結して反力手段を構成し、軸方向所定間隔をおいて係合部を形成して吊ケーブルに被着される押込みシリンダのその係合部に押込みチャックを係合させて吊ケーブルを前記定着用パイプ内に前記反力手段の反力を利用してストローク手段で所定距離押し込んだ後、反力付与部で移動不能とされる盛り替えチャックを前記係合部に係合させ押込みチャックを開放して盛り替え、この押込みと両チャックによる係脱の盛り替え動作を前記吊ケーブルの先端に設けたソケットが前記定着用パイプ先端から突出するまで繰り返し、しかる後、吊ケーブルの戻りを防止する戻り防止座をソケットと定着用パイプとの間に介在すると共に張力調整用プレートを介在することを特徴とする吊ケーブルの押込み方法である(請求項1)。
【0006】
以上の手段によれば、押込みシリンダの定着用パイプ内への押込みは、構築構造物上方の定着用パイプ部分と、同構築構造物上方における定着用パイプの延長上の位置に配置した反力付与部とをテンションロッドで連結して構成された反力手段の反力で行なわせ、またその盛り替えは、反力付与部で移動不能とされる盛り替えチャックで行なわせる。
【0007】
そして、押込みシリンダはその上端に解除可能な吊ケーブル固定手段を有し、その吊ケーブル固定手段での吊ケーブルの固定時に前記戻り防止座、張力調整用プレートを介在した押込み掛け止め後の吊ケーブルを所定の引き力で振動させて、その振幅で吊ケーブルの張力を測定し、その測定値が所定よりも低い時に介在する張力調整用プレートを増やし、所定よりも高い時にその張力調整用プレートを抜取って張力調整用プレートの介在枚数を調整するようにすると好適なものである(請求項2)。
吊ケーブルの押込み掛止時のその吊ケーブルの所定の張力の設定は振動法を用いて行なわれる。
この振動法は、戻り防止座、張力調整用プレートを介在した吊ケーブルに、固定建築物との距離に見合った引き力を掛けて、その振幅で吊ケーブルの張力を測定し、その測定量が所定となるように介在する張力調整用プレートを増やしたり、減らしたりして張力を修正する。
その際、その吊ケーブルに不安定な振動が生じると、正確な振幅が発生せず、信頼性のある張力を測定できない。
押込みシリンダ内の吊ケーブルは押込みシリンダで包皮されてはいるものの、被着されただけであるし、定着用パイプ内面に干渉するので、押込み掛け止め後にケーブルに引き力を掛けると、不安定な振動が生じ、精度のある張力を測定できない問題があった。
その故、押込みシリンダの上端に解除可能な吊ケーブル固定手段を設けて、その吊ケーブル固定手段下位の吊ケーブルに張力測定時の引き力が作用しないように吊ケーブルを固定した状態で、吊ケーブル固定手段と固定建築物との間の距離から算出される所定の引き力でケーブルを振動させて、その振幅で吊ケーブルの張力を測定し、その張力が所定以下の場合に張力調整用プレートを増やし、逆にその張力が所定以上の場合に張力調整用プレートを抜き取り減らして、吊ケーブルを所定の張力に修正する。
【0008】
その方法に直接使用する装置は、構築構造物に斜め交差状に固定される定着用パイプ内に、固定構造物に対して緊張架設される吊ケーブルを押込む吊ケーブルの押込み装置であって、構築構造物上方の定着用パイプに取り付けた取付座と前記定着用パイプの延長上の位置に配置された反力付与部とをテンションロッドで連結した反力手段と、先端にソケットを設けた吊ケーブルに被着され軸方向に係合部を所定間隔をおいて形成した押込みシリンダと、該押込みシリンダの前記係合部に係合する係脱可能な押込みチャックと、前記押込みチャックが係合部に係合している時にその押込みチャックを前記反力手段の反力を利用して所定距離押込む押込みチャック用のストローク手段と、前記反力付与部で移動不能とされ押込みチャックが係合部と係合を解除している時に係合部に係合する係脱可能な盛り替えチャックとを備えていることである(請求項3)。
好ましくは、構築構造物に斜め交差状に固定される定着用パイプ内に、固定構造物に対して緊張架設される吊ケーブルを押込む吊ケーブルの押込み装置であって、構築構造物に前記定着用パイプに対して接近・離間可能に走行する支持架台と、構築構造物上方の定着用パイプに取り付けた取付座と前記定着用パイプの延長上の位置に配置された反力付与部とをテンションロッドでその反力付与部を位置調整可能に連結した反力手段と、先端にソケットを設けた吊ケーブルに被着され軸方向に係合部を所定間隔をおいて形成した押込みシリンダと、前記押込みシリンダの前記係合部に係合する係脱可能な押込みチャックと、該押込みチャックが係合部との係合を解除している時に係合部に係合する係脱可能な盛り替えチャックと、前記押込みチャックが係合部に係合している時にその押込みチャックを前記反力手段の反力を利用して所定距離押込む押込みチャック用のストローク手段とを備え、前記支持架台は、脚座と、その脚座に前記定着用パイプの延長線上に沿うように上下回動角度調整可能に設けられた台本体と、その台本体に沿ってスイング量調整可能、左右移動量調整可能、上下移動量調整可能に設けられた支持体とを有し、前記盛り替えチャック支持手段を、前記反力付与部で移動不能される態様で支持体に取着すると共に、ストローク手段のストロークで往復動する押し込みチャック支持手段を、前記支持体にスライド可能に係合していると、最適なものである(請求項4)。
【0009】
以上の手段によれば、支持架台において、定着用パイプの延長線上に沿うように上下回動角度調整可能に設けられた台本体に沿ってスイング量調整可能、左右移動量調整可能、上下移動量調整可能に設けられた支持体に盛り替えチャック支持手段を反力付与部で移動不能とされる態様で支持し、ストローク手段のストロークで往復動する押し込みチャック支持手段を、その支持体にスライド可能に係合して、現場毎に異なる定着用パイプの交差角度(仰角)、その定着用パイプの左右方向の振れ角誤差(鉛直方向に対する左右方向の傾斜誤差)や支持架台自体の移動走行位置誤差、押込みシリンダの係合部に対する押込みチャック、盛り替えチャックを位置誤差等に対応して、吊ケーブルを定着用パイプの中心線上から直進性をもって定着用パイプに押込ませる。
【発明の効果】
【0010】
(請求項1、3)構築構造物に斜め交差状に固定されている定着用パイプに吊ケーブルを押込み掛け止めするに際して、固定構造物上方から吊ケーブルの押し込みが行なえる。
従って、従来のように構築構造物の下方に足場を設けてラムチェアー、ジャッキ装置を設置して反力を取りつつ、吊ケーブルの押込みに対処するように大掛かりにならないし、戻り防止座をソケットに掛け止めするだけで良く、安全であるし、撤去に際しても構築構造物上で行なえる。
(請求項2)その上、押込み掛止時の吊ケーブルの張力を振動法(ケーブルを所定の引き力で振動させて、その振幅でケーブルの張力を測定する方法)で測定して、所定の張力に正確に修正して吊ケーブルを押込み係止できる。
(請求項4)しかも、定着用パイプの構築構造物に対する交差角度や定着用パイプが鉛直方向に対して左右方向に傾斜している時にも対応して、定着用パイプに喰い込んだりすることなく押込みシリンダを押込みでき、押込み作業の向上と共に、押込み時間も短縮できる。
その上、その支持体は、上下移動量調整可能にしてあるので、微調整して押込みシリンダの係合部に対して押込みチャック、盛り替えチャックを係合可能に調整することができる。しかも高い位置や低い位置から吊ケーブルの押込みを開始することが可能であり、定着用パイプから上方に突出する押込みシリンダの突出長さに対応できる自在性をも兼備できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、吊ケーブルで吊橋、屋根、道路、鉄橋等の一般構造物、建築構造物を含む構築構造物を固定構造物に吊持する吊ケーブルの押込み方法及び押込み装置である。本実施の形態では、固定構造物である塔に対して構築構造物である吊橋を吊ケーブルで吊持する吊ケーブルの押込み方法及び押込み装置を図1〜図11に示す押込み装置の実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
各図において、符号Aは、その押込み装置である。
この押込み装置Aは、塔(固定構造物)に対して吊橋(構築構造物)Bが二面吊ケーブルで吊持される時のその吊ケーブルの押込み装置を示している。
押込み装置Aは、図1〜図4等に示すように支持架台1、押込みシリンダ2、反力手段3、ストローク手段4、押込みチャック5、盛り替えチャック6、押込みチャック支持手段5a、盛り替えチャック支持手段13a等を備えている。
【0013】
前記支持架台1は、図1、図2、図4等に示すように、吊橋Bの桁エッジに斜め交差状に固定されている定着用パイプbの前方位置まで吊橋Bに敷設されたレールLを走行可能になっており、脚座11に対して台本体21を前記定着用パイプbの延長線に沿うように上下回動角度調整可能とし、その台本体21に沿って下向きに直線状の支持体31が設けられている。
そして、支持体31の上位側に、ストローク手段4を取付けた盛り替えチャック支持手段(盛り替え梁)13aが取着され、下位側に押込みチャックの支持手段(押込み梁)5aがスライド可能に係合されている。
【0014】
前記反力手段3は図2、図4等に示すように、定着用パイプbにおける吊橋B上方の上端(後端)部分に取付けられた取付座b1と、定着用パイプbの延長線上に配置した反力付与部13(反力梁)とに亘ってテンションロッド23を連結して構成されており、その反力付与部13は、テンションロッド23の長さ方向に対して位置調整可能になっている。
【0015】
前記反力付与部13における定着用パイプbの上端(後端)と正対する側の面とは逆側の面には図4等に示すように盛り替えチャック支持手段13aが配置され、図4に示すようにその盛り替えチャック支持手段13aには、定着用パイプbの上端(後端)と正対する側の下面に盛り替えチャック6が設けられ、盛り替えチャック支持手段13aの左右端部部分には図1に示すように盛り替えチャック6に干渉しないようにしてストローク手段(油圧ジャッキ)4の本体4aが2機装設され、更に定着用パイプbと盛り替えチャック支持手段13aとの間には、押込みチャック支持手段5aが配置されると共に押込みチャック支持手段5aの定着用パイプbと正対側の面には押込みチャック5が設けられ、押込みチャック支持手段5aに前記ストローク手段(油圧ジャッキ)4のロッド14が連結されている。
【0016】
これにより、ストローク手段4が取付けられている盛り替えチャック支持手段13aは、支持体31に取着された状態で反力付与部13で移動不能とされる態様となり、またストローク手段4でストロークされる押込みチャック支持手段5aは支持体31の長さ方向にスライド可能となる。
【0017】
前記盛り替えチャック支持手段13a、押込みチャック支持手段5aには、同図4に示すようにその中央に押込みシリンダ2の挿通孔22が各々開孔されている。
【0018】
前記吊ケーブルCは、その先端にソケットc1を固着しており、そのソケットc1を除く所要長さが前記押込みシリンダ2で包皮されている。
【0019】
前記押込みシリンダ2は、吊ケーブルCを包皮する金属製のパイプ状に形成されており、そのシリンダ2の長さは、吊ケーブルCの押込み動作するに必要な長さとして、その全長を一本で構成しても、ある長さのものを複数本繋ぎ合わせて構成しても良いが、この実施の形態では、二分割化された半割部材をボルト・ナットで締結して吊ケーブルCを覆っている。
この押込みシリンダ2には、係合部(係合凹部)12が軸方向に所定間隔をおいて形成されている。
【0020】
また、前記押込みシリンダ2のその上端には、図11に示すように解除可能な吊ケーブル固定手段7が設けられている。
この吊ケーブル固定手段7は、前記押込みシリンダ2の上端に油圧シリンダ17を装設し、そのロッド17aが吊ケーブルCを押圧して、そのロッド17aと押込みシリンダ2を構成する一半部の半割部材の内面とで吊ケーブルCを挟持固定できるようになっている。
【0021】
前記盛り替えチャック6、押込みチャック5は、詳述しないが共に図5〜図8に示すように、上下の平行するガイドで半円状の抱持部を有する半割体16、15が接近離間するようにガイド可能になっており、その半割体16、15を油圧ジャッキJ1、J2で接近離間させて、前記押込みシリンダ2の係合部12を係脱できるようになっている。
【0022】
そして、2機のストローク手段4が反力手段3の反力を受けつつそのロッド14が伸張して支持架台1の支持体31をガイドにして押込みチャック支持手段5aを押動する時には、図5、図6に示すように押込みチャック5を前記係合部12に係合する一方、前記反力付与部13で移動不能される盛り替えチャック6の前記係合部12に対する係合を解除して行い、ロッド14が収縮する時には、図7、図8に示すように盛り替えチャック6を前記係合部12に係合させ、押込みチャック5の前記係合部12に対する係合を解除して、盛り替え可能とし、前記押込みと両チャック5、6による係脱の盛り替え動作の繰り返しで、所定距離宛、定着用パイプb内に押込みシリンダ2を押込むようになっている。
【0023】
前記支持架台1の前記支持体31は、台本体21に沿ってスイング量調整可能、左右移動量調整可能、上下移動量調整可能に構成され、またその支持体31に対して前記押込みシリンダ2を抱持するように盛り替えチャック支持手段13a、押込みチャック支持手段5aは共に後付け可能になっており、その盛り替えチャック支持手段13a、押込みチャック支持手段5aに対して盛り替えチャック6、押込みチャック5が後付け可能になっている。
その具体的説明を詳述する。
【0024】
支持架台1の台本体21は、図1〜図4に示すように任意な断面形状の型鋼で形成された左右の横部材21a、21aと上下部材21b、21bとで矩形状に枠組し、その両横部材21a、21aの下位に平行横部材21c、21cを連結し、その平行横部材21c、21c下端を脚座11から立設する支持脚11aに軸着する共に、平行横部材21c、21cの中途部を各々油圧ジャッキJ3、J3で上下回動角度調整可能に支持して、前記定着用パイプbの中心線の延長上に沿うように傾斜角度に調整できるようになっている。
【0025】
前記上下部材21b、21bは、図1、図3に示すように左右の横部材21a、21a間に架設する任意断面形状の形鋼の中央部所要長さ範囲にステンレスを貼設した箱形鋼21b−1を被着して形成されており、該箱形鋼21b−1にスライド枠21b−2を左右方向にスライド量調整可能に嵌合し、そのスライド枠21b−2の下面に対向する方向に引っ掛け部21b−4、21b−4を折曲形成した連絡部21b−3を、回転ピン21b−5でスライド枠21b−2から突設する支持部21b−6に回転可能に連結している。
【0026】
前記支持体31は、図3に示すようにI形鋼からなり、前記する上下2対の引っ掛け部21b−4、21b−4にその上片31aを定着用パイプbの延長線に沿って上下方向にスライド可能に係合させてある。
【0027】
そして、図1、図3に示すように前記左右の横部材21a、21aに尻端を軸着した上下2対の油圧ジャッキJ4、J4のロッド各々をスライド枠21b−2に、また図1、図3に示すように支持体31に尻端を軸着した油圧ジャッキJ5のロッドを下位の前記スライド枠21b−2またはその支持部21b−6に各々連結することによって、支持架台1を構成している。
【0028】
前記盛り替えチャック支持手段13a、押込みチャック支持手段5aは、詳細には上下に分割可能になっている。
そして、吊ケーブルCの押込みに先立って定着用パイプbの前方に離れて待機する支持架台1の支持体31に、図10に示すように盛り替えチャック支持手段13aのその上半部13a−1を取着すると共に、押込みチャック支持手段5aのその上半部5a−1を、前記支持体31の下片31bに前記ストローク手段4を介してスライド可能に係合させる。
【0029】
これにより、左右の横部材21a、21aに尻端を軸着した上下2対の油圧ジャッキJ4、J4のロッドの伸張、収縮具合で台本体21に沿って盛り替えチャック支持手段13aの前記上半部13a−1と、押込みチャック支持手段の上半部5a−1とが支持体31と前記台本体21に沿って左右移動量調整可能及びスイング量調整可能になる(図9(a)(b)(c)(d)参照)。
また、支持体31に尻端を軸着した油圧ジャッキJ5のロッドの伸張、収縮でその支持体31は台本体21に沿って上下移動量調整可能になる(図9(e)参照)。
【0030】
その支持架台1は、図10に示すように押込みシリンダ2が挿入されている定着用パイプbの傾斜角度に台本体21を合わせ、レールLを走行しながら、前記押込みシリンダ2が前記盛り替えチャック支持手段13aの上半部13a−1及び押込みチャック支持手段5aの上半部5a−1に形成されている挿通孔22の一半部に収容されるように支持体31をスイング及び/または左右移動するようになる。
【0031】
そして、盛り替えチャック支持手段13a、押込みチャック支持手段5aの各々の下半部13a−2、5a−2を取付けて前記挿通孔22を構成し、盛り替えチャック6、押込みチャック5を各々その支持手段13a、5aに後付けし、支持手段13a上面に反力付与部13を位置決めするように定着用パイプbの上端(後端)部分に取付座b1とその反力付与部13とに亘ってテンションロッド23を連結して盛り替えチャック支持手段13aにその反力付与部13に当接させ、吊ケーブル押込みの前準備が完了する。
【0032】
従って、前記盛り替えチャック支持手段13a、ストローク手段4、押込みチャック支持手段5a、盛り替えチャック6、押込みチャック5を有する支持体31が、定着用パイプbの吊橋(構築構造物)Bに対する交差角度(仰角)、定着用パイプbの左右方向の振れ角誤差(鉛直方向に対する左右方向の傾斜誤差)、定着用パイプbに対する支持架台1自体の移動走行位置誤差等を吸収するように、スイング調整、左右移動調整されるようになる。
【0033】
尚、図示しないが、前記支持架台1を、レールLを走行させて定着用パイプbの傾斜角度に台本体21を合わせ、支持体31を、定着用パイプbの吊橋(構築構造物)Bに対する交差角度(仰角)、定着用パイプbの左右方向の振れ角誤差(鉛直方向に対する左右方向の傾斜誤差)、定着用パイプbに対する支持架台1自体の移動走行位置誤差等を吸収するように、スイング調整、左右移動調整した後、盛り替えチャック支持手段13a、盛り替えチャック6、ストローク手段4、押込みチャック支持手段5a、押込みチャック5等を各々後付けし、最後に押込みシリンダ2を上方から挿通孔22に挿通させて定着用パイプbに挿入し、最後にテンションロッド23を連結して反力付与部13を位置決めするようにしても良いものである。
【0034】
以上のように構成されている吊ケーブルの押込み方法及び押込み装置では、構築構造物(吊橋)B桁エッジから斜め上方に露出する定着用パイプb部分に取付た取付座b1と、反力付与部13とに亘ってテンションロッド23を連結して構成されている反力手段3の反力を利用して押込みチャック5を押込みシリンダ2に係合した状態で、ストローク手段4を作動させて押込みシリンダ2を所定距離定着用パイプbに押し込んだ後、盛り替えチャック6を前記係合部12に係合させ、押込みチャック5を開放して盛り替え、この押込みと両チャック5、6による係脱の盛り替え動作を前記吊ケーブルCの先端に設けたソケットc1が前記定着用パイプb先端から突出するまで繰り返し、ソケットc1と定着用パイプb下端との間に戻り防止座Dを介在すると共に、戻り防止座Dとソケットc1との間に張力調整用プレート(シム)d必要枚数を介在する。
この張力調整用プレート(シム)dは設計上の枚数を介在する。
【0035】
そして、前記油圧ジャッキ17を作動させて、図4に示すように吊ケーブル固定手段7で吊ケーブルCを固定し、固定建築物(塔)とその吊ケーブル固定手段7との距離に基づく所定の引き力で吊ケーブル固定手段7上方の吊ケーブルCを振動させて、その振幅で吊ケーブルCの張力を測定し、その張力が固定建築物(塔)とその吊ケーブル固定手段7との距離及び構築構造物(吊橋)Bの重量から算出された所定の振幅を生成するように前記ソケットc1と戻り防止座Dとの間に介在される張力調整用プレート(シム)dの枚数を調整して、所定の張力に正確に修正し、吊ケーブルCの緊張架設作業が終了する。
【0036】
そして、構築構造物(吊橋)に斜め交差状に固定される定着用パイプbの交差角度、同定着用パイプbの鉛直方向に対する振れ角、レールLで走行される支持架台1に対する定着用パイプbの左右方向への相対的な位置誤差等に対応して、支持架台1を除く押込み装置の本体を配設して、吊ケーブルCの押込みを実行することができる。
【0037】
また、この押込み装置Aは、構築構造物(吊橋)B上で盛り替えチャック支持手段13a、押込みチャック支持手段5a各々の下半部13a−2、5a−2、ストローク手段4、盛り替えチャック6、押込みチャック5を外し、テンションロッド23を抜き取って反力付与部13、取付座b1を外し、支持架台1を後退させて、完全に撤去される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施の形態吊ケーブルの押込み方法を実施する押込み装置の正面図。
【図2】同側面図。
【図3】図2の(3)−(3)線拡大断面図。
【図4】図2の側面断面図。
【図5】押込みチャックを係合部に係合している状態を示す要部の斜視図で一部切欠して示す。
【図6】所定距離押込んだ状態を示す要部の斜視図で一部切欠して示す。
【図7】盛り替えチャックを係合部に係合している状態を示す同要部の斜視図で一部切欠して示す。
【図8】ストローク手段を縮めた状態を示す同要部の斜視図で一部切欠して示す。
【図9】支持架台の台本体、支持体の調整状態を示す正面図で概略的に示し、(a)は、支持体を左側の横部材と平行に移動させた状態を、(b)は、同支持体を右側の横部材と平行に移動させた状態を、(c)は、同支持体を右側の横部材方向にスイングさせた状態を、(d)は、同支持体を左側の横部材方向にスイングさせた状態を(e)は、支持体を下方に移動させた状態を各々示す。
【図10】支持架台を定着用パイプにセットする前の状態を示す側面図で一部切欠して示す。
【図11】吊ケーブル固定手段を示し、(a)は正面図で一部切欠して示す。(b)は、その(b)−(b)線断面図である。
【符号の説明】
【0039】
B:構築構造物 C:吊ケーブル
b:定着用パイプ 13:反力付与部
3:反力手段 2:押込みシリンダ
12:係合部 4:ストローク手段(油圧ジャッキ)
6:盛り替えチャック c1:ソケット
D:戻り防止座 1:支持架台
5:押込みチャック b1:取付座
23:テンションロッド 11:脚座
21:台本体 31:支持体
A:押込み装置 7:吊ケーブル固定手段
17:張力調整用プレート 13a:盛り替えチャック支持手段
5a:押込みチャック支持手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構築構造物に斜め交差状に固定される定着用パイプ内に、固定構造物に対して緊張架設される吊ケーブルを押込み掛け止めして、固定構造物に吊ケーブルを介して構築構造物を吊持する吊ケーブルの押込み方法であって、
前記構築構造物上方の定着用パイプ部分と、同構築構造物上方における定着用パイプの延長上の位置に配置した反力付与部とをテンションロッドで連結して反力手段を構成し、軸方向所定間隔をおいて係合部を形成して吊ケーブルに被着される押込みシリンダのその係合部に押込みチャックを係合させて吊ケーブルを前記定着用パイプ内に前記反力手段の反力を利用してストローク手段で所定距離押し込んだ後、反力付与部で移動不能とされる盛り替えチャックを前記係合部に係合させ押込みチャックを開放して盛り替え、この押込みと両チャックによる係脱の盛り替え動作を前記吊ケーブルの先端に設けたソケットが前記定着用パイプ先端から突出するまで繰り返し、しかる後、吊ケーブルの戻りを防止する戻り防止座をソケットと定着用パイプとの間に介在すると共に張力調整用プレートを介在することを特徴とする吊ケーブルの押込み方法。
【請求項2】
前記押込みシリンダはその上端に解除可能な吊ケーブル固定手段を有し、その吊ケーブル固定手段での吊ケーブルの固定時に前記戻り防止座、張力調整用プレートを介在した押込み掛け止め後の吊ケーブルを所定の引き力で振動させて、その振幅で吊ケーブルの張力を測定し、その測定値が所定よりも低い時に介在する張力調整用プレートを増やし、所定よりも高い時にその張力調整用プレートを抜取って張力調整用プレートの介在枚数を調整することを特徴とする請求項1記載の吊ケーブルの押込み方法。
【請求項3】
構築構造物に斜め交差状に固定される定着用パイプ内に、固定構造物に対して緊張架設される吊ケーブルを押込む吊ケーブルの押込み装置であって、構築構造物上方の定着用パイプに取り付けた取付座と前記定着用パイプの延長上の位置に配置された反力付与部とをテンションロッドで連結した反力手段と、先端にソケットを設けた吊ケーブルに被着され軸方向に係合部を所定間隔をおいて形成した押込みシリンダと、該押込みシリンダの前記係合部に係合する係脱可能な押込みチャックと、前記押込みチャックが係合部に係合している時にその押込みチャックを前記反力手段の反力を利用して所定距離押込む押込みチャック用のストローク手段と、前記反力付与部で移動不能され押込みチャックが係合部と係合を解除している時に係合部に係合する係脱可能な盛り替えチャックとを備えていることを特徴とする吊ケーブルの押込み装置。
【請求項4】
構築構造物に斜め交差状に固定される定着用パイプ内に、固定構造物に対して緊張架設される吊ケーブルを押込む吊ケーブルの押込み装置であって、構築構造物に前記定着用パイプに対して接近・離間可能に走行する支持架台と、構築構造物上方の定着用パイプに取り付けた取付座と前記定着用パイプの延長上の位置に配置された反力付与部とをテンションロッドでその反力付与部を位置調整可能に連結した反力手段と、先端にソケットを設けた吊ケーブルに被着され軸方向に係合部を所定間隔をおいて形成した押込みシリンダと、前記押込みシリンダの前記係合部に係合する係脱可能な押込みチャックと、該押込みチャックが係合部との係合を解除している時に係合部に係合する係脱可能な盛り替えチャックと、前記押込みチャックが係合部に係合している時にその押込みチャックを前記反力手段の反力を利用して所定距離押込む押込みチャック用のストローク手段とを備え、前記支持架台は、脚座と、その脚座に前記定着用パイプの延長線上に沿うように上下回動角度調整可能に設けられた台本体と、その台本体に沿ってスイング量調整可能、左右移動量調整可能、上下移動量調整可能に設けられた支持体とを有し、前記盛り替えチャック支持手段を、前記反力付与部で移動不能とされる態様で支持体に取付けると共に、ストローク手段のストロークで往復動する押し込みチャック支持手段を、前記支持体にスライド可能に係合していることを特徴とする吊ケーブルの押込み装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−125094(P2006−125094A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−316366(P2004−316366)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(390027513)大瀧ジャッキ株式会社 (26)
【Fターム(参考)】