説明

吊下げ紐付き容器

【課題】吊下げ紐に対する容体の傾倒可能角度を規制することにより、肩掛けした状態で蓋を開けて中身を取り出したりする際に、容体を必要以上に傾倒させて中身をこぼしてしまうおそれのない吊下げ紐付き容器を提供する。
【解決手段】容体と、両端部が容体の側部に取り付けられる吊下げ紐3とから成り、容体の吊下げ紐取り付け部に、軸部5と、軸部5の先端に形成される軸部5よりも大径の拡径部6と、軸部5の上面に形成される軸部5の直径よりも幅狭で両側に垂直面を有するストッパー7とから成る支持軸4が突設され、吊下げ紐3の端部に、中心部に支持軸4を係止する係止部材9を配設した基板8が取り付けられ、係止部材9は、円孔11と円孔11から上方に向けて拡開して上方に抜ける導入溝12とが形成されていて、基板面との間に拡径部6の厚さに対応する間隙を保持して配設される係止板10を有して成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吊下げ紐付き容器に関するものであり、より詳細には、容体に肩掛け用等の吊下げ紐が取り付けられている容器であって、吊下げ時に容体が不用意に翻転するおそれのない吊下げ紐付き容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、テーマパーク、公園、映画館等において販売されるポップコーンの容器としては、蓋付きの容体に吊下げ紐を取り付けて、肩掛けできるようにしたプラスチック容器が広く用いられている。この種容器は、ポップコーンに限らず、種々の食品や飲料、あるいは、他の様々な物品の収納用に用いられており、その場合、吊下げ紐の端部は容体の側面に枢着されていることが多い。
【0003】
この種容器の場合、吊下げ紐を肩掛けした状態で蓋を開け、中身を取り出すことが少なくないが、吊下げ紐の端部は容体の側面に枢着状態に取り付けられているため、蓋を開ける際や急激な動作時等に容体が翻転し、中身がこぼれ出てしまうことがある。特に、子供の場合は注意が散漫となり、また、活発に動き回るために、そのような事態が発生することが少なくないが、従来、かかる点に着目した吊下げ紐付き容器は提唱されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第2535239号公報
【特許文献2】実開平5−35034号公報
【特許文献3】特許第4534259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来の吊下げ紐付き容器の場合は、吊下げ紐の端部が容体の側面に枢着状態に取り付けられているため、吊下げ紐を肩掛けした状態で蓋を開けて中身を取り出したり、動き回ったりする際に、容体を不用意に翻転させて中身をこぼしてしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は、かかる従来の吊下げ紐付き容器における問題を解消するためになされたもので、吊下げ紐に対する容体の傾倒可能角度を規制することにより、肩掛けした状態で蓋を開けて中身を取り出したりする際等に、容体を必要以上に傾倒させて中身をこぼしてしまうおそれのない吊下げ紐付き容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、容体と、両端部が前記容体の側部に取り付けられる吊下げ紐とから成り、前記容体の前記吊下げ紐取り付け部の一方又は双方に、軸部と、前記軸部の先端に形成される前記軸部よりも大径の拡径部と、前記軸部の上面に形成される、前記軸部の直径よりも幅狭で両側に垂直面を有するストッパーとから成る支持軸が突設され、前記吊下げ紐の端部には、一面に前記支持軸を係止する係止部材を配設した基板が取り付けられ、前記係止部材は、円孔と前記円孔から上方に向けて拡開して上方に抜ける導入溝とが形成されていて、前記基板面との間に前記拡径部の厚さに対応する間隙を保持して配設される係止板を有して成ることを特徴とする吊下げ紐付き容器である。
【0008】
一実施形態においては、前記係止板の前記導入溝の最下部の幅は、前記軸部の径及び前記円孔の内径よりも少し小となるように設定され、また、前記軸部の径は、前記円孔の内径とほぼ同じか、若干小となるように設定される。また、一実施形態においては、前記支持軸は、前記容体の一側面にのみ設置される。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上述したとおりであって、本発明に係る吊下げ紐付き容器の場合、吊下げ紐の容体への連結部において、係止部材によって係止される支持軸の回動が、支持軸のストッパーが導入溝の傾斜面に当たる範囲、即ち、導入溝の開角度の範囲に限定されて、容体の傾倒可能角度が規制されるため、例えば、肩掛けした状態で蓋を開けて中身を取り出す際等において、容体が必要以上に傾倒して中身をこぼしてしまうといった事態の発生が確実に防止される効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る吊下げ紐付き容器の一実施形態の斜視図である。
【図2】本発明に係る吊下げ紐付き容器の一実施形態の要部正面図(吊下げ紐取り付け前の状態)である。
【図3】本発明に係る吊下げ紐付き容器の一実施形態の要部正面図(吊下げ紐取り付け後の状態)である。
【図4】本発明に係る吊下げ紐付き容器の一実施形態の要部正面図(容体の最大傾倒時の状態)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態について、添付図面に依拠して説明する。本発明に係る吊下げ紐付き容器は、通例、開閉自在の蓋体2を有する容体1と、両端部が容体1の側部に取り付けられる吊下げ紐3とから成る。多くの場合容体1は、硬質プラスチック、金属等の硬質材製であるが、軟質プラスチックや布帛等の軟質材製の場合もある。
【0012】
容体1側部の吊下げ紐連結部に、吊下げ紐3の端部を支持する支持軸4が突設される。支持軸4は、軸部5と、軸部5の先端に形成される軸部5よりも大径の拡径部6と、軸部5の上面に形成される、軸部5の直径よりも幅狭で両側に垂直面を有するストッパー7とから成る。通例、支持軸4は容体1の両側部に設けられるが、一側部のみとされる場合もあり得る。その場合の他方の側部における吊下げ紐3の連結は、従来の傾倒規制のない連結方法による。
【0013】
支持軸4に取り付けられる吊下げ紐3の端部には、一面に支持軸4に係止される係止部材9を配設した基板8が取り付けられる。係止部材9は、基板8との間に拡径部6の厚さに対応する間隙を保持して配置される係止板10により構成され、係止板10には、円孔11と、円孔11から上方に向けて拡開して上方に抜ける導入溝12とが形成される。導入溝12の最下部の幅d1は、軸部5の径d2及び円孔11の内径d3よりも少し小となるように設定され、また、軸部5の径d2は、円孔11の内径d3とほぼ同じか、若干小となるように設定される(図2参照)。
【0014】
かかる構成の基板8を備える吊下げ紐3の端部を支持軸4に取り付けるには、先ず、軸部5を導入溝12内に配してその最下部に移動させる(図2参照)。軸部5の導入溝12内最下部への移動は、導入溝12が上方に向けて拡開しているため、容易に行うことができる。その際拡径部6は、係止板10と基板8との間に形成される拡径部6の厚さに対応する間隙内に収まるために、軸部5の導入溝12内最下部への移動の妨げとなることはない。
【0015】
次いで、その状態のまま基板8を上方にずらし動かすと(あるいは、支持軸4を下方にずらし動かすと)、軸部5は、その径よりも少し小となるように設定されている導入溝12の最下部を押し広げて通過し、円孔11内に回動可能状態にて収まる(図3参照)。軸部5を円孔11内へ導入しようとする際、多少抵抗があるが、軸部5と係止板10のうちの少なくとも一方が樹脂製であれば、ある程度の力を加えることにより、導入溝12の最下部を押し広げて軸部5を通過させることは容易である。
【0016】
導入溝12の最下部の幅d1は、軸部5が通過すると直ちに復元し、元の軸部5の径d2よりも狭い間隔に戻るため、軸部5は、円孔11から導入溝12方向へ容易には抜けなくなる。また、円孔11よりもかなり大径の拡径部6が、基板8と係止板10との間の間隙内に収まっているため、支持軸4に軸方向の力が加わっても、拡径部6の一部が円孔11及び導入溝12の縁に引っ掛かることにより、支持軸4の軸方向への抜けが防止される。かくして吊下げ紐3の端部は、容体1の側部に、所定角度範囲内において回動可能に支持されることになる。
【0017】
このようにして軸部5が円孔11内に回動可能に収まった状態において、容体1にこれを傾倒させようとする力が加わると、容体1は傾倒して支持軸4が円孔11内において回動するが、その回動が進み、ストッパー7の垂直面が導入溝12の傾斜面に当たると強制停止させられ、それ以上の回動は不可となる。即ち、支持軸4の円孔11内における回動範囲は、導入溝12の開角度の範囲内に規制されることになるので、容体1を不用意に翻転させて中身をこぼしてしまうようなことが確実に防止される。なお、容体1の回動可能範囲は、導入溝12の開角度を変えることにより変更可能であることは言うまでもない。
【0018】
本発明に係る吊下げ紐付き容器は、主に、ポップコーン等の菓子や食品又は飲料用として開発されたものであるが、その用途はそれらに限られる訳ではなく、他の種々の物品用収納容器、例えば、作業者用工具・部品収納袋等に適用し得るものである。
【0019】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発
明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは
明白なので、この発明は添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制
約されるものではない。
【符号の説明】
【0020】
1 容体
2 蓋体
3 吊下げ紐
4 支持軸
5 軸部
6 拡径部
7 ストッパー
8 基板
9 係止部材
10 係止板
11 円孔
12 導入溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容体と、両端部が前記容体の側部に取り付けられる吊下げ紐とから成り、
前記容体の前記吊下げ紐取り付け部の一方又は双方に、軸部と、前記軸部の先端に形成される前記軸部よりも大径の拡径部と、前記軸部の上面に形成される、前記軸部の直径よりも幅狭で両側に垂直面を有するストッパーとから成る支持軸が突設され、
前記吊下げ紐の端部には、一面に前記支持軸を係止する係止部材を配設した基板が取り付けられ、
前記係止部材は、円孔と前記円孔から上方に向けて拡開して上方に抜ける導入溝とが形成されていて、前記基板面との間に前記拡径部の厚さに対応する間隙を保持して配設される係止板を有して成ることを特徴とする吊下げ紐付き容器。
【請求項2】
前記係止板の前記導入溝の最下部の幅は、前記軸部の径及び前記円孔の内径よりも少し小となるように設定され、また、前記軸部の径は、前記円孔の内径とほぼ同じか、若干小となるように設定される、請求項1に記載の吊下げ紐付き容器。
【請求項3】
前記支持軸は、前記容体の一側面にのみ設置される、請求項1又は2に記載の吊下げ紐付き容器。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate