説明

吊下ノズル装置

【課題】簡素な構造でノズルの位置及び方向を安定化させることができる吊下ノズル装置を提供する。
【解決手段】ブームスプレーヤのブームに取り付けられるブラケットと、ブラケットから下方に延在するロッド14と、ロッド14に沿って下方に吊り下げられる吊下ホース15と、吊下ホース15の下端部分15aに接続されたノズル22と、を備えた吊下ノズル装置12において、ナット18cが螺着される雄ネジ部18aと、当該雄ネジ部18aに連設され、雄ネジ部18aの軸線方向に沿うナット18cの移動を規制する規制部18bとを、吊下ホース15の下端部分15aとノズル22との間の継手部16の外周面に設け、継手部16の外周面に沿って曲がったロッド14の下側曲部14gをナット18cと規制部18bとで挟持させる簡素な構造でノズル22の位置及び方向を安定化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に液剤を散布するブームスプレーヤのブームに取り付けられ、下方に吊り下げられて液剤を散布する吊下ノズル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような吊下ノズル装置として、水平方向に延びるブームに取り付けられるブラケットと、ブラケットから下方に延在する懸垂アーム(ロッド)と、ブームに沿って設けられた配管ホースに取り付けられ、懸垂アームに沿って下方に吊り下げられるホースと、ホースの下端部分に接続され、懸垂アームの下端部分に連結される懸垂ノズルと、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−7552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された吊下ノズル装置では、ブラケットから下方に延在する一本の懸垂アームのみによって、ホースのふらつきが抑制され、ノズルの位置及び方向が安定化する。
【0005】
しかしながら、例えば、懸垂アームの上端部分とブラケットとの連結部、及び懸垂アームの下端部分と懸垂ノズルとの連結部の部品点数が多く、構造をより簡素化する余地がある。
【0006】
そこで、本発明は、簡素な構造でノズルの位置及び方向を安定化させることができる吊下ノズル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る吊下ノズル装置(12)は、ブームスプレーヤ(100)のブーム(2,3,4)に取り付けられ、下方に吊り下げられて液剤を散布する吊下ノズル装置(12)であって、ブーム(2,3,4)に取り付けられるブラケット(13)と、ブラケット(13)から下方に延在するロッド(14)と、ブーム(2,3,4)に沿って設けられた配管(5,6,7)に接続され、ロッド(14)に沿って下方に吊り下げられるホース(15)と、ホース(15)の下端部分(15a)に接続されたノズル(22)と、を備え、ホース(15)の下端部分(15a)とノズル(22)との間の継手部(16)の外周面には、ナット(18c)が螺着される雄ネジ部(18a)と、当該雄ネジ部(18a)に連設され、当該雄ネジ部(18a)の軸線方向に沿うナット(18c)の移動を規制する規制部(18b)と、が設けられ、ロッド(14)の下端部分には、ナット(18c)と規制部(18b)との間で継手部(16)の外周面に沿うように曲がった下側曲部(14g)が形成され、下側曲部(14g)は、雄ネジ部(18a)に螺着されたナット(18c)と規制部(18b)とによって挟持されることを特徴とする。
【0008】
このような吊下ノズル装置(12)によれば、ブラケット(13)から下方に延在する一本のロッド(14)のみによってホース(15)のふらつきが抑制される。また、ロッド(14)の下側曲部(14g)を、継手部(16)の雄ネジ部(18a)に螺着されたナット(18c)と、雄ネジ部(18a)に連設された規制部(18b)とに挟持させるのみで、ロッド(14)の下端部分とノズル(22)の接続された継手部(16)とが連結される。従って、簡素な構造でノズル(22)の位置及び方向を安定化させることができる。
【0009】
ここで、ブラケット(13)は、上下方向に延在してブーム(2,3,4)に対向する側板部(13a)と、当該側板部(13a)の上端及び下端に連設されてブーム(2,3,4)を上下から挟持する上板部(13b)及び下板部(13c)と、を有し、下板部(13c)には、ブーム(2,3,4)と側板部(13a)との隙間に向かってロッド(14)の上端部分が通される下板貫通孔(13g)が形成され、側板部(13a)には、ブーム(2,3,4)側からロッド(14)の上端が挿入される側板貫通孔(13h)が形成され、ロッド(14)の上端部分には、下板貫通孔(13g)を通ったロッド(14)の上端が更に側板貫通孔(13h)に入るように曲がった上側曲部(14c)が形成されていることが好ましい。
【0010】
この場合、ブラケット(13)は、上板部(13b)及び下板部(13c)とでブーム(2,3,4)を挟持する簡素な構造でブーム(2,3,4)に取り付けられる。ブラケット(13)とロッド(14)の上端部分とは、ロッド(14)の上端を下板部(13c)の下板貫通孔(13g)に下側から通し、更にロッド(14)の上端を側板部(13a)の側板貫通孔(13h)にブーム(2,3,4)側から挿入するのみで連結される。ブラケット(13)に連結されたロッド(14)の上端部分は、ブラケット(13)がブーム(2,3,4)に取り付けられた状態において、側板部(13a)とブーム(2,3,4)との隙間に位置し、ブーム(2,3,4)によって側板部(13a)に近接した状態に保たれる。このため、ロッド(14)の上端が側板貫通孔(13h)から抜けることが防止され、ブラケット(13)とロッド(14)の上端部分とが簡素な構造でしっかりと連結される。従って、より簡素な構造で、ノズル(22)の位置及び方向を安定化させることができる。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明に係る吊下ノズル装置によれば、簡素な構造でノズルの位置及び方向を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る吊下ノズル装置が適用されるブームスプレーヤの一実施形態を示す後方斜視図である。
【図2】図1のブームスプレーヤの背面図である。
【図3】ブームに取り付けられた吊下ノズル装置の斜視図である。
【図4】吊下ノズル装置の斜視図である。
【図5】吊下ノズル装置の上端部分の斜視図である。
【図6】吊下ノズル装置がブームに取り付けられた状態を示す断面図である。
【図7】吊下ノズル装置の下端部分の斜視図である。
【図8】吊下ノズル装置の下端部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る吊下ノズル装置の好適な実施形態について添付図面を参照しながら説明する。本実施形態に係る吊下ノズル装置が適用されるブームスプレーヤは、トラクターの後部に搭載されるマウント式ブームスプレーヤであり、以下の説明における上下、前後、左右の各方向は、トラクターに搭載された状態での方向を表すものとする。
【0014】
図1は、本発明に係る吊下ノズル装置が適用されるブームスプレーヤの一実施形態を示す後方斜視図、図2は、図1のブームスプレーヤの背面図、図3は、ブームに取り付けられた吊下ノズル装置の斜視図、図4は、吊下ノズル装置の斜視図、図5は、吊下ノズル装置の上端部分の斜視図、図6は、吊下ノズル装置がブームに取り付けられた状態を示す断面図、図7は、吊下ノズル装置の下端部分の斜視図、図8は、吊下ノズル装置の下端部分の断面図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、マウント式ブームスプレーヤ100は、トラクターの後部に搭載される本体部1と、本体部1の後方に設けられ左右方向に延在する中間ブーム2と、中間ブーム2の左端に連設され左方向に延在する左ブーム3(図2参照)と、中間ブーム2の右端に連設され右方向に延在する右ブーム4(図2参照)とを備えている。左ブーム3及び右ブーム4は、それぞれ中間ブーム2の左右端に回動自在に連結され、未使用時には前方且つ上方に折りたたむことが可能となっている(図1参照)。
【0016】
中間ブーム2の後側には、長手方向に沿って配管5が設けられ、左ブーム3の後側には、長手方向に沿って配管6が設けられ、右ブーム4の後側には、長手方向に沿って配管7が設けられている。各配管5,6,7には、所定間隔でノズル8が設けられ、各ノズル8には後述の吊下ノズル装置12の吊下ホース15を取り付けることができる。ノズル8の間隔は、例えば圃場の畝の間隔に合わせて設定されている。
【0017】
本体部1は、液剤のタンク9と、タンク9内の液剤を送り出すポンプ10と、タンク9及びポンプ10を載置する架台11とを有している。ポンプ10は、タンク9の下方に配置され、例えばトラクターのPTO(Power Take Off)軸に連結されて駆動される。タンク9内の液剤は、ポンプ10により、供給ホースを介して上記各配管5,6,7に送られ、各配管5,6,7のノズル8若しくはこのノズル8に取り付けられた吊下ノズル装置12から圃場に散布される。なお、図1及び図2においては、図が煩雑となるのを避けるために、中間ブーム2に一つの吊下ノズル装置12のみが取り付けられた状態を示している。
【0018】
図3及び図4に示すように、吊下ノズル装置12は、各ブーム2,3,4に取り付けられるブラケット13と、ブラケット13から下方に延在するロッド14と、ロッド14に沿って下方に吊り下げられる吊下ホース15と、吊下ホース15の下端部分15aに接続されたノズル22とを備えている。吊下ホース15の上部は下方を向くように曲げられ、その端部には、例えばねじ込み式の継手部17が連設されている。この継手部17は、上記ノズル8に接続される。
【0019】
ロッド14は、例えば鋼棒等、適度な弾性を有する素材から形成されている。吊下ホース15は、樹脂製のバンド21によってロッド14に沿うように固定されている。なお、バンド21は、ロッド14の長手方向に沿って複数設けられていてもよい。
【0020】
図5及び図6に示すように、ブラケット13はコの字状に形成されており、上下方向に延在し各ブーム2,3,4に対向する側板部13aと、側板部13aの上端及び下端に連設されて各ブーム2,3,4を上下から挟持する上板部13b及び下板部13cとを有している。このようなブラケット13は、例えば鋼板等を曲げて形成されている。
【0021】
上板部13b及び下板部13cの開放側端部には、上板部13bの上方からボルト13eが挿通され、ボルト13eの下端部分には下板部13cの下方からナット13fが螺着されている。このボルト13eとナット13fとを互いに締め込むことにより、上板部13bと下板部13cとで各ブーム2,3,4が締め付けられ、ブラケット13が各ブーム2,3,4にしっかりと固定される。また、ボルト13eとナット13fとを互いに緩め、上板部13bと下板部13cとによる各ブーム2,3,4の締め付けを弱めることで、ブラケット13を各ブーム2,3,4に沿ってスライドさせ、吊下ノズル装置12の位置を調整することが可能となっている。
【0022】
下板部13cの側板部13a側には、ロッド14の上端14aが通される下板貫通孔13gが形成されている。側板部13aの上部には、各ブーム2,3,4側からロッド14の上端14aが挿入される側板貫通孔13hが形成されている。ロッド14の上端14a近傍の上端部分14bには、下板貫通孔13gに通された上端14aを側板貫通孔13hに向けるために略直角に曲がった上側曲部14cが形成されている。ロッド14の上端部分14bは、ロッド14の上端14aを下側から下板貫通孔13gに通し、更にブーム2,3,4側から側板貫通孔13hに挿入することでブラケット13に連結されている。
【0023】
図6に示すように、ロッド14の上端部分14bは、ブラケット13が各ブーム2,3,4に取り付けられた状態において、側板部13aと各ブーム2,3,4との隙間S1に位置し、各ブーム2,3,4によって側板部13aに近接した状態に保たれる。このため、ロッド14の上端14aが側板貫通孔13hから抜けることが防止され、ブラケット13とロッド14の上端部分14bとがしっかりと連結される。
【0024】
図7及び図8に示すように、上記ノズル22は、吊下ホース15の下端部分15aに継手部16を介して接続されている。継手部16は、ノズル22が下方から連結される継手本体部18と、継手本体部18の上端に連設された外面竹の子形状のホース接続部19とを有している。
【0025】
継手本体部18の下側外周面には、雄ネジ部18dが形成され、雄ネジ部18dにノズル22が螺着されている。継手本体部18の上側外周面には雄ネジ部18aが形成され、雄ネジ部18aと雄ネジ部18dとの間には、雄ネジ部18aの外径よりも大きい外径の円環状の規制部18bが形成されている。雄ネジ部18aには、上方からナット18cが螺着され、ナット18cの下方への移動が規制部18bによって規制されている。
【0026】
吊下ホース15の下端部分15aは、継手部16のホース接続部19に接続され、外側からカシメ部材20でかしめられている。カシメ部材20でかしめられた吊下ホース15の下端部分15aの外径は、雄ネジ部18aの外径よりも大きくなっている。このため、カシメ部材20でかしめられた吊下ホース15の下端部分15aにより、ナット18cが雄ネジ部18aから離脱しないようになっている。
【0027】
ロッド14の下端部分14dには、略直角に曲がった第1の下側曲部14fが形成され、下側曲部14fより先の部分が吊下ホース15の継手部16側に延びている。第1の下側曲部14fから継手部16側に延びた部分には、ナット18cと規制部18bとの間で継手本体部18の外周面に沿うようにU字状に曲がった第2の下側曲部14gが形成されている。ナット18cは、規制部18bに向って締め込まれ、ナット18cと規制部18bとで第2の下側曲部14gが挟持されている。このようにして、ノズル22の接続された継手部16とロッド14の下端部分14dとが連結され、ロッド14によってノズル22が下向きに保持されている。
【0028】
以上の吊下ノズル装置12によれば、ブラケット13から下方に延在する一本のロッド14のみによって吊下ホース15のふらつきが抑制されると共に、上述のようにロッド14の下端部分14dが簡素な構造でノズル22の接続された継手部16に連結される。従って、簡素な構造でノズル22の位置及び方向を安定化させることができる。
【0029】
更に、上述のように、ブラケット13が簡素な構造で各ブーム2,3,4に取り付けられ、ロッド14の上端部分14bが簡素な構造でブラケット13にしっかりと連結される。従って、より簡素な構造で、ノズル22の位置及び方向を安定化させることができる。
【0030】
また、上述のように、ロッド14が適度な弾性を有する素材から形成されているため、吊下ノズル装置12は、ノズル22や吊下ホース15が圃場の作物等に当たった際にしなり、圃場の状態に柔軟に適応することができる。
【0031】
なお、吊下ノズル装置12では、ロッド14によってノズル22の向きを下向きに保持しているが、これに限られない。例えば、第1の下側曲部14fの曲がり角を変更することで、斜め下方や側方等、任意の方向にノズル22の向きを調整することができる。
【符号の説明】
【0032】
2,3,4…ブーム、5,6,7…配管、12…吊下ノズル装置、13…ブラケット、13a…側板部、13b…上板部、13c…下板部、13g…下板貫通孔、13h…側板貫通孔、14…ロッド、14a…上端、14b…上端部分、14c…上側曲部、14d…下端部分、14g…第2の下側曲部、15…吊下ホース、15a…下端部分、18a…雄ネジ部、18b…規制部、18c…ナット、22…ノズル、100…マウント式ブームスプレーヤ、S1…隙間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームスプレーヤ(100)のブーム(2,3,4)に取り付けられ、下方に吊り下げられて液剤を散布する吊下ノズル装置(12)であって、
前記ブーム(2,3,4)に取り付けられるブラケット(13)と、
前記ブラケット(13)から下方に延在するロッド(14)と、
前記ブーム(2,3,4)に沿って設けられた配管(5,6,7)に接続され、前記ロッド(14)に沿って下方に吊り下げられるホース(15)と、
前記ホース(15)の下端部分(15a)に接続されたノズル(22)と、を備え、
前記ホース(15)の下端部分(15a)と前記ノズル(22)との間の継手部(16)の外周面には、ナット(18c)が螺着される雄ネジ部(18a)と、当該雄ネジ部(18a)に連設され、当該雄ネジ部(18a)の軸線方向に沿う前記ナット(18c)の移動を規制する規制部(18b)と、が設けられ、
前記ロッド(14)の下端部分には、前記ナット(18c)と前記規制部(18b)との間で前記継手部(16)の外周面に沿うように曲がった下側曲部(14g)が形成され、
前記下側曲部(14g)は、前記雄ネジ部(18a)に螺着された前記ナット(18c)と前記規制部(18b)とによって挟持されることを特徴とする吊下ノズル装置(12)。
【請求項2】
前記ブラケット(13)は、上下方向に延在して前記ブーム(2,3,4)に対向する側板部(13a)と、当該側板部(13a)の上端及び下端に連設されて前記ブーム(2,3,4)を上下から挟持する上板部(13b)及び下板部(13c)と、を有し、
前記下板部(13c)には、前記ブーム(2,3,4)と前記側板部(13a)との隙間に向かって前記ロッド(14)の上端部分が通される下板貫通孔(13g)が形成され、
前記側板部(13a)には、前記ブーム(2,3,4)側から前記ロッド(14)の上端が挿入される側板貫通孔(13h)が形成され、
前記ロッド(14)の上端部分には、前記下板貫通孔(13g)を通った前記ロッド(14)の上端が更に前記側板貫通孔(13h)に入るように曲がった上側曲部(14c)が形成されていることを特徴とする請求項1記載の吊下ノズル装置(12)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−213370(P2012−213370A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81985(P2011−81985)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000141174)株式会社丸山製作所 (134)
【Fターム(参考)】