説明

吊下式カメラ装置

【課題】カメラのパン・チルト機構を有効に活用した簡素な構成で、節をもつ鉄塔内部の観察を円滑に行うことができる自走可能な吊下式カメラ装置を提供する。
【解決手段】ローテーション可動部13の先端側に設けられた少なくとも1つの自走用突起部(ゴム足)16がフランジ2の面上に接している懸吊状態で、ローテーション可動部13を回転させると、フランジ面に接しているゴム足16の摩擦により、ローテーション可動部13がフランジ面上でゴム足16を代えながらフランジ面上を移動し(走行し)、これに伴いカメラ10がフランジ面上で自走する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄塔内部の観察、各種配管内の検査等に適用して好適な吊下式カメラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周囲が塞がれた鉄塔の内部(鋼管内)をカメラで観察する場合、撮像カメラの後端にケーブルを取り付けた吊下式カメラが用いられる。この吊下式カメラを鉄塔頂部からケーブルで吊り下げ、鉄塔の内部をカメラで撮影し観察する。
【0003】
この際、鉄塔の内部には立設方向に数メートル間隔で節となるジョイント部のフランジが存在し、フランジの中央部に開口された孔を通して吊下式カメラを降下させてゆく。しかしながら作業員によるケーブルの操作で吊下式カメラが揺動し、フランジの孔を通す作業に多くの時間と労力を要する。
【0004】
この種の装置技術として、従来では、原子炉の作業架台から圧力容器内に水中TVカメラをに吊り下げた点検装置が存在した(特許文献1参照)。また、管内に吊り下げて作業する装置として、鋼管の頂部から鋼管内部に吊り下げられて除錆処理を行う除錆処理装置が存在した(特許文献2参照)。しかしながら、これらの装置技術においては上記したフランジの孔を通す作業を容易に行うことのできる機構を備えていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−155402号公報
【特許文献2】特開2010−046737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来では、鉄塔内部のカメラ観察において、節をもつ鉄塔内部の観察を円滑に行うことができないという問題があった。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みなされたもので、カメラのパン・チルト機構を有効に活用した簡素な構成で、節をもつ鉄塔内部の観察を円滑に行うことができる自走可能な吊下式カメラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ケーブル接続部を有し、該ケーブル接続部に接続されたケーブルにより懸吊されるカメラ支持構体と、前記カメラ支持構体の垂下方向端部に、前記垂下方向に平行する軸に対してその軸回り方向に回転可能に支承されたローテーション可動部と、前記ローテーション可動部に、先端が突出しない状態で、前記ローテーション可動部の回転軸と直交する軸回り方向に回動可能に支承されたチルト可動部と、前記チルト可動部に、撮像窓を露出して設けられた撮像部と、前記ローテーション可動部の外周面に所定の間隔を存して設けられた複数の自走用突起部とを具備した自走可能な吊下式カメラ装置を特徴とする。
【0009】
また、前記吊下式カメラ装置において、前記自走用突起部は、前記ローテーション可動部を回転させたとき、前記垂下方向と直交する平面上において少なくとも1つが接する間隔で複数設けられた、截頭円錐状若しくは円錐状若しくは半球状のゴム足であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の自走可能な吊下式カメラ装置によれば、カメラのパン・チルト機構を有効に活用した簡素な構成で、節をもつ鉄塔内部の観察を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る吊下式カメラ装置の適用例を示す図。
【図2】上記実施形態に係る吊下式カメラ装置の構成を示す斜視図。
【図3】上記実施形態に係る吊下式カメラ装置の構成を示す正面図。
【図4】上記実施形態に係る吊下式カメラ装置の構成を示す平面図。
【図5】上記実施形態に係る吊下式カメラ装置の構成を示す側面図。
【図6】上記実施形態に係る吊下式カメラ装置の自走動作を説明するための図。
【図7】上記実施形態に係る吊下式カメラ装置の自走動作を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0013】
本発明の実施形態に係る自走可能な吊下式カメラ装置は、例えば図1に示すような節をもつ鉄塔内部の観察に適用される。鉄塔1には立設方向に数メートル間隔で節となるジョイント部のフランジ2が設けられ、各フランジ2の中央部には塔内を貫通する開口を形成する所定径の孔3が設けられている。一例を挙げると300φ程度の鉄塔(鋼管)内に3m程度の間隔でフランジが設けられ、各フランジに80φ程度の孔が設けられている。この鉄塔1の頂部において、作業員4が表示装置5のモニタ画面を観察しながら操作器6を操作しケーブル7を操って、ケーブル7の先端に装着したカメラ(吊下式カメラ装置)10を鉄塔1の内部に降下させ、カメラ10で撮影した画像による鉄塔内部の観察を行う。カメラ10を鉄塔1の内部に降下させたとき、カメラ10が揺動し、フランジ2の孔3内に入らず(孔3を通過せず)、カメラ10の先端に設けられたローテーション可動部がフランジ2に接する。このとき、従来ではカメラ10を一端引き上げ、再度、孔3を狙ってカメラ10を降下させる。カメラ10が孔3を通過するまで、この操作を繰り返し行う。
【0014】
この発明の実施形態に係るカメラ(自走可能な吊下式カメラ装置)10は、ケーブルに懸吊されるカメラの垂下端部(降下方向先端部)に設けられたローテーション可動部を一定方向に回転駆動することによりカメラ10がフランジ2のフランジ面上で自走する機能を有しており、モニタ画面を観察しながらローテーション可動部を回転駆動させカメラ10を自走させて孔3内に導くことで、カメラ10のフランジ通過を容易にしている。
【0015】
この実施形態に係る自走可能な吊下式カメラ装置10の構成を図2乃至図5に示している。図2は斜視図、図3は正面図、図4は平面図、図5は側面図である。
【0016】
この実施形態に係る自走可能な吊下式カメラ装置(以下単にカメラと称す)10は、図2乃至図5に示すように、ケーブル接続部12を有し、該ケーブル接続部12に接続されたケーブル7により懸吊されるカメラ支持構体11と、このカメラ支持構体11の垂下方向端部に、前記垂下方向に平行する軸に対してその軸回り方向(図示矢印a,b方向)に回転可能に支承されたローテーション可動部13と、このローテーション可動部13に、先端が突出しない状態で、ローテーション可動部13の回転軸と直交する軸回り方向(図示矢印c,d方向)に回動可能に支承されたチルト可動部14と、このチルト可動部14に、撮像窓を露出して設けられた撮像部15と、ローテーション可動部13の外周面に所定の間隔を存して設けられた複数の自走用突起部16とを具備して構成されている。
【0017】
カメラ支持構体11は、円筒状の筐体内にローテーション可動部13およびチルト可動部14の駆動用モーターを収容し、自走式の全方位撮像カメラを実現している。さらにこのカメラ支持構体11は、ローテーション可動部13とチルト可動部14と撮像カメラ部15を遠隔制御するためのケーブル7の接続用コネクタを内蔵した円錐形筐体構造のケーブル接続部12を具備する。このケーブル接続部12にコネクタ接続されるケーブル7は、ローテーション可動部13およびチルト可動部14を駆動制御する信号および電源を伝送する信号線と撮像部15で撮影した画像の映像信号を伝送する信号線を含む多芯ケーブルで構成されている。
【0018】
ローテーション可動部13は、カメラ支持構体11に内蔵されたモーターにより矢印a,b方向に回転駆動され、チルト可動部14を矢印c,d方向に回動可能に支承している。すなわち、図5に示す撮像部15の光軸(O)がカメラ10の垂下(懸吊)方向に向いているとき、ローテーション可動部13は、カメラ支持構体11に対して光軸(O)の軸回りに回動可能に支承されている。このローテーション可動部13の外周面には先端部分を中心に複数の自走用突起部(ゴム足)16が所定の間隔を存して設けられている。チルト可動部14は、撮像部15を撮像窓を露出した状態で保持し、カメラ支持構体11に内蔵されたモーターにより矢印c,d方向に回動駆動される。撮像部15はチルト可動部14に支持されて垂下(降下)方向並びにパン(ローテーション)・チルトによる全方位の撮影を可能にしている。この撮像部15で撮影した画像の映像信号がケーブル7を介して表示装置5に伝送され、表示装置5のモニタ画面に観察画像として表示される。
【0019】
自走用突起部16は、ローテーション可動部13を回転させたとき、垂下方向(懸吊方向)と直交する平面上(フランジ2の面上)において少なくとも1つが接する間隔で複数設けられている。この自走用突起部16は、この実施形態では截頭円錐状のゴム足で構成しているが、例えば円錐状若しくは半球状等、接地面(フランジ面)に対する摩擦係数を考慮した、例えばフランジ面上において少なくとも1つまたは2つが接する程度の間隔で設けた円錐状若しくは他の形状のゴム足であってもよい。ここでは、カメラ10がフランジ2の面上(フランジ面上)に降下され、カメラ10がフランジ面上で所定角度(例えば30°程度)傾斜した状態にあるとき、フランジ面上に2つの自走用突起部(ゴム足)16が接する程度の間隔でローテーション可動部13に自走用突起部(ゴム足)16を設けている。
【0020】
ローテーション可動部13の先端側に設けられた少なくとも1つの自走用突起部(ゴム足)16がフランジ2の面上に接している懸吊状態で、ローテーション可動部13を回転させると、フランジ面に接しているゴム足16の摩擦により、ローテーション可動部13がフランジ面上でゴム足16を代えながらフランジ面上を移動し(走行し)、これに伴いカメラ10がフランジ面上で自走する。このローテーション可動部13の駆動制御は、作業員4がケーブル7を操り、表示装置5のモニタ画面を観察しながら、操作器6を操作することで実施される。
【0021】
ここで、上記した構成の吊下式カメラ装置10により鉄塔1の内部を観察する場合の自走手段を用いた作業について、図6および図7を参照して説明する。
【0022】
作業員4は表示装置5のモニタ画面を観察しながら操作器6を操作しケーブル7を操って、ケーブル7の先端に装着したカメラ10を鉄塔1の内部1Aに降下させたとき、ケーブル7に懸吊されたカメラ10が揺動し、フランジ2の孔3内に入らず、図6に示すように、ローテーション可動部13の先端部に設けた自走用突起部(ゴム足)16がフランジ2の面に接した状態となる。
【0023】
この状態において、作業員4は表示装置5のモニタ画面を観察しながら、操作器6を操作し、ローテーション可動部13を一定の方向(例えば図示矢印a方向)に回転駆動する。このローテーション可動部13の回転に伴い、フランジ面に接するゴム足16が図7に黒点で示すように交代し、ローテーション可動部13がフランジ面上を移動(走行)する。これに伴いカメラ10が図7に示すような軌跡を描いてフランジ面上で自走する。作業員4はこの自走状態を観察しながらカメラ10を孔3に導く。
【0024】
このカメラ自走手段を用いることで、ケーブル7に懸吊されたカメラ10の孔3内への導入並びに通過を容易に行うことができ、カメラ10の降下時において障害となる節(フランジ)をもつ鉄塔内部の観察を円滑に行うことができる。
【0025】
なお、上記した実施形態は、節をもつ鉄塔内部の観察を例に吊下式カメラ装置10の自走動作を説明したが、鉄塔の内部に限らず、例えば縦配管や傾斜配管などの内部観察においてもカメラを送り込む際に障害となる部分を容易に通過させることができる。また自走用突起部(ゴム足)16の形状、取付位置等についても上記した実施形態に限るものでなく、使用用途に応じて変形、変更可能である。また、本発明の自走機構を実現するカメラについても上記した実施形態の構造に限らず、本発明が適用可能な他のカメラ構造であってもよい。
【符号の説明】
【0026】
1…鉄塔、2…フランジ、3…孔、4…作業員、5…表示装置、6…操作器、7…ケーブル、10…吊下式カメラ装置、11…カメラ支持構体、12…ケーブル接続部、13…ローテーション可動部、14…チルト可動部、15…撮像部、16…自走用突起部(ゴム足)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル接続部を有し、該ケーブル接続部に接続されたケーブルにより懸吊されるカメラ支持構体と、
前記カメラ支持構体の垂下方向端部に、前記垂下方向に平行する軸に対してその軸回り方向に回転可能に支承されたローテーション可動部と、
前記ローテーション可動部に、先端が突出しない状態で、前記ローテーション可動部の回転軸と直交する軸回り方向に回動可能に支承されたチルト可動部と、
前記チルト可動部に、撮像窓を露出して設けられた撮像部と、
前記ローテーション可動部の外周面に所定の間隔を存して設けられた複数の自走用突起部と
を具備したことを特徴とする吊下式カメラ装置。
【請求項2】
前記自走用突起部は、前記ローテーション可動部を回転させたとき、前記垂下方向と直交する平面上において少なくとも1つが接する間隔で複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の吊下式カメラ装置。
【請求項3】
前記自走用突起部は、截頭円錐状若しくは円錐状若しくは半球状のゴム足であることを特徴とする請求項2に記載の吊下式カメラ装置。
【請求項4】
前記ケーブルは、前記ローテーション可動部および前記チルト可動部を駆動制御する信号線と前記撮像カメラで撮影した画像の映像信号を伝送する信号線を含む多芯ケーブルである請求項1に記載の吊下式カメラ装置。
【請求項5】
前記ケーブル接続部は、前記ケーブルを着脱可能に結合し、前記ローテーション可動部と前記チルト可動部と前記撮像カメラを前記ケーブルに回路接続するコネクタを具備する請求項1に記載の吊下式カメラ装置。
【請求項6】
前記撮像部は、前記ローテーション可動部の駆動に同期して動作し、撮影した画像を前記ケーブルを介して伝送出力することを特徴とする請求項1に記載の吊下式カメラ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−209209(P2011−209209A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79003(P2010−79003)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000220620)東芝テリー株式会社 (116)
【Fターム(参考)】