説明

吊具

【課題】幼児用の物品等が予め収容された被吊物を簡易に装着/取外しすることができる吊具を提供する。
【解決手段】横方向に離隔して配され、嵌合凹部12及び取付部11を有する二つの受体1,1と、各受体1,1の嵌合凹部12,12に両端部が離脱を可能に嵌合される杆体2とを備え、倒立した略U字形をなすハンドルを備える手押車におけるハンドルの両側縦杆部に受体1の取付部11を取付けることにより、杆体2の両端部を受体1,1の嵌合凹部12,12に嵌合支持させることができ、また、杆体2を持上げることにより、該杆体2を受体1,1から離脱させることができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベビーカー等の手押車に装着される吊具に関する。
【背景技術】
【0002】
ベビーカー等の手押車は、複数の車輪及び載台を有する車体と、該車体から斜め後上方へ延出され、倒立した略U字形をなすハンドルとを備え、該ハンドルの両側縦杆部及び車体に小物入れ袋が複数本の紐にて取付けられ、ハンドルの上端横杆部を把持して手押しすることができるように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−105714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1のような手押車にあっては、複数本の紐を結んで小物入れ袋が取付けられ、また、幼児用の物品等が必要でない状況でハンドルの上端横杆部を把持して手押しする際に、複数本の紐を解いて小物入れ袋が取外しされるため、小物入れ袋の装着/取外しに手間がかかり、改善策が要望されていた。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、主たる目的は嵌合凹部を有する二つの受体を手押車におけるハンドルの両側縦杆部に取付けた状態で、各受体の嵌合凹部に両端部が離脱を可能に嵌合される杆体だけを着脱することができる構成とすることにより、幼児用の物品等が予め収容された被吊物を簡易に装着/取外しすることができる吊具を提供することにある。
【0006】
また、他の目的は杆体を、一端部同士が長手方向への相対移動を可能に結合される二つの杆部材からなる構成とすることにより、ハンドルの両側縦杆部間の寸法が異なる手押車であっても取付けることができる吊具を提供することにある。
【0007】
また、他の目的は二つの杆部材の他端部及び嵌合凹部の一方に係合凸部を設け、他方に、該係合凸部が係合することにより前記各杆部材の長手方向への移動を止める係合凹部を設けることにより、ハンドルの両側縦杆部間の寸法が異なる手押車であっても杆体の長さ調整を簡易にできる吊具を提供することにある。
【0008】
また、他の目的は杆体の長手方向への移動を自在に該杆体に嵌合されるフックを設けることにより、被吊物の着脱を簡易にできる吊具を提供することにある。
【0009】
また、他の目的は二つの杆部材の一方を小径パイプとし、他方を、小径パイプが相対回転を可能に一端部から嵌入される大径パイプとし、前記小径パイプの前記一端部に、前記大径パイプの内周面に接触して相対回転量を規制する規制部を設けることにより、ハンドルの両側縦杆部間の寸法が異なる手押車であっても杆体の着脱を簡易にできる吊具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る吊具は、横方向に離隔して配され、嵌合凹部を有する二つの受体及び各受体の間に横方向ヘ長くなるように配されて各受体の前記嵌合凹部に両端部が離脱を可能に嵌合され、中間に被吊物が吊下げられる杆体を備えることを特徴とする。
【0011】
この発明にあっては、手押車におけるハンドルの両側縦杆部に受体を取付けることにより、杆体の両端部を受体の嵌合凹部に嵌合支持させることができるため、幼児用の物品等が予め収容された被吊物を杆体に簡易に吊下げることができ、また、被吊物を吊下げない場合、二つの受体が手押車のハンドルに装着されている状態で杆体を持上げることにより、該杆体を受体から離脱させることができるため、幼児用の物品等が必要でない場合、被吊物を簡易に取外すことができる。
【0012】
また、本発明に係る吊具は、前記杆体は、一端部同士が長手方向への相対移動を可能に結合される二つの杆部材からなることを特徴とする。
この発明にあっては、二つの杆部材を相対移動させて杆体の全長を変えることができるため、ハンドルの両側縦杆部間の寸法が異なる手押車であっても吊具を取付けることができる。
【0013】
また、本発明に係る吊具は、前記二つの杆部材の他端部及び嵌合凹部の一方は係合凸部を有し、他方は該係合凸部が係合することにより前記各杆部材の長手方向への移動を止める係合凹部を有することを特徴とする。
この発明にあっては、ハンドルの両側縦杆部に受体が取付けられ、各受体の嵌合凹部に杆体の両端部が嵌合支持されるとき、係合凸部及び係合凹部が係合し、各杆部材の各受体に対する長手方向への移動が規制されるため、ハンドルの両側縦杆部間の寸法が異なる手押車であっても杆体の長さ調整を簡易にできる。
【0014】
また、本発明に係る吊具は、前記杆体の長手方向への移動を自在に該杆体に嵌合されるフックを備えることを特徴とする。
この発明にあっては、提手付き被吊物の提手をフックに掛止することができるため、被吊物の着脱を簡易にできる。
【0015】
また、本発明に係る吊具は、前記二つの杆部材の一方は小径パイプからなり、他方は、前記小径パイプが相対回転を可能に一端部から嵌入される大径パイプからなり、前記小径パイプの前記一端部に、前記大径パイプの内周面に接触して相対回転量を規制する規制部が設けられていることを特徴とする。
この発明にあっては、二つの杆部材を長手方向へ相対移動させ、杆体の長さを調整した後、二つの杆部材を相対回転させることにより、調整された長さを保つことができるため、ハンドルの両側縦杆部間の寸法が異なる手押車であっても杆体の着脱を簡易にできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、手押車におけるハンドルの両側縦杆部に受体を取付けることにより、杆体の両端部を受体の嵌合凹部に嵌合支持させることができ、また、杆体を持上げることにより、該杆体を受体から離脱させることができるため、幼児用の物品等が予め収容された被吊物を簡易に装着/取外しすることができる。
【0017】
また、本発明によれば、二つの杆部材を相対移動させて杆体の全長を変えることができるため、ハンドルの両側縦杆部間の寸法が異なる手押車であっても吊具を取付けることができる。
【0018】
また、本発明によれば、各受体の嵌合凹部に杆体の両端部が嵌合支持されるとき、係合凸部及び係合凹部が係合し、各杆部材の各受体に対する長手方向への移動が止められるため、ハンドルの両側縦杆部間の寸法が異なる手押車であっても杆体の長さ調整を簡易にできる。
【0019】
また、本発明によれば、提手付き被吊物の提手をフックに掛止することができるため、被吊物の着脱を簡易にできる。
【0020】
また、本発明によれば、二つの杆部材を長手方向へ相対移動させ、杆体の長さを調整した後、二つの杆部材を相対回転させることにより、調整された長さを保つことができるため、ハンドルの両側縦杆部間の寸法が異なる手押車であっても杆体の着脱を簡易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る手押車に装着された吊具の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る吊具の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る吊具の構成を示す平面図である。
【図4】本発明に係る吊具の構成を示す縦断正面図である。
【図5】本発明に係る吊具の受体側部分の構成を示す拡大平面図である。
【図6】本発明に係る吊具の受体側部分の構成を示す拡大縦断正面図である。
【図7】図6のVII −VII 線の拡大断面図である。
【図8】図4のVIII−VIII線の拡大断面図である。
【図9】本発明に係る受体の構成を示す斜視図である。
【図10】本発明に係るロック部の構成を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は手押車に装着された吊具の構成を示す斜視図、図2は吊具の構成を示す斜視図、図3は吊具の構成を示す平面図、図4は吊具の構成を示す縦断正面図、図5は受体側部分の構成を示す拡大平面図、図6は受体側部分の構成を示す拡大縦断正面図、図7は図6のVII −VII 線の拡大断面図、図8は図4のVIII−VIII線の拡大断面図、図9は受体の構成を示す斜視図、図10はロック部の構成を示す分解斜視図である。
【0023】
本発明に係る吊具は、前後左右に離隔した四つの車輪81及び載台82を有する車体8と、該車体8から斜め後上方へ延出され、倒立した略U字形をなすハンドル9とを備える手押車Aにおける前記ハンドル9の両側縦杆部91,91に取付けられる吊具である。
【0024】
この吊具は、両側縦杆部91,91に取付けられる取付部11及び嵌合凹部12を有する二つの受体1,1と、各受体1,1の嵌合凹部12に両端部が上方への離脱を可能に嵌合される杆体2と、該杆体2の長手方向への移動及び回転を自在に杆体2に嵌合されているフック3とを備える。
【0025】
嵌合凹部12は半円筒形をなし、該嵌合凹部12の長手方向一端に結合板部13が一体に成形されている。嵌合凹部12の一端部には周方向に長い係合凹部14が設けられている。結合板部13には、嵌合凹部12の両側に配された二つの貫通孔15,15と、嵌合凹部12の内側に臨む位置に配された嵌合溝16とが設けられている。
【0026】
取付部11は、その周面に割部を有し、滑止め性の高いゴム製の可撓筒11aと、結合板部13の一方の貫通孔15に一端部が取付けられた帯体11bとを有し、該帯体11bの他端側が他方の貫通孔15に挿通されるようになっている。可撓筒11aには外周面から外方へ突出する嵌合凸部11cが設けられ、該嵌合凸部11cの嵌合溝16への嵌合により可撓筒11aが嵌合凹部12に結合されている。可撓筒11a及び嵌合凹部12は、直交する2方向へ開放され、杆体2の長手方向となるように並置されている。
【0027】
帯体11bは、一面に複数のループ及び複数の針状フックを有する面ファスナーからなり、結合板部13の他方の貫通孔15に挿通される他端側の折返しにより一面の針状フックがループに係合し、可撓筒11aの開放部を覆うようになしてある。
【0028】
杆体2は、アルミニウム製の小径パイプからなる第1の杆部材21と、該杆部材21が相対移動及び相対回転を可能に一端部から嵌入されたアルミニウム製の大径パイプからなる第2の杆部材22とを有し、第1の杆部材21の一端部に、第2の杆部材22内に嵌入され、杆部材22の内周面に接触して相対回転量を規制する規制部4が設けられている。各杆部材21,22の他端部には、環状の係合凸部23aを有する合成樹脂製の筒体23,23が嵌合固定されており、また、第1の杆部材21の一端部外側に、第2の杆部材22の外径よりも若干大径の孔を有する合成樹脂製のカバー筒24が嵌合固定されている。
【0029】
規制部4は、第1の杆部材21の外径とほぼ同径の軸部の中途に偏心軸部41a及び該偏心軸部41aの周面一箇所から外方へ突出する回止突起41bが設けられている軸体41と、該軸体41の偏心軸部41aに遊嵌され、軸体41とほぼ同径の割環42とを有し、軸体41の一端部が第1の杆部材21内に嵌入固定され、第1の杆部材21の回転により、偏心軸部41aが割環42を径方向外方へ移動させ、該割環42を第2の杆部材22の内周面に押付けるように構成されている。割環42の内周面は割部42a側へ偏心しており、割部42aと対向する位置に薄肉部42bが設けられている。また、割環42の割部42a側には、回止突起41bに当接して軸体41との相対回転を規制する当接部42c,42cが設けられている。
【0030】
フック3は、割溝3aを有する筒部から略J字形をなし、筒部が杆体2に嵌合されている。
【0031】
以上のように構成された吊具は、前後左右に離隔した四つの車輪81及び載台82を有する車体8と、該車体8から斜め後上方へ延出され、倒立した略U字形をなすハンドル9とを備える手押車Aにおける前記ハンドル9の両側縦杆部91,91に受体1が取付部11にて取付けられる。
【0032】
各受体1,1は、取付部11の可撓筒11aが縦杆部91に嵌合された後、帯体11bが結合板部13の他方の貫通孔15に挿通され、該帯体11bの折返しにより可撓筒11aとの間で縦杆部91を締付ける。
【0033】
各受体1,1の縦杆部91,91への取付けにより、二つの嵌合凹部12,12は縦杆部91,91の間に配され、上向に開放される。この状態で杆体2の両端部を嵌合凹部12,12に載せることにより、該杆体2を受体1,1に支持することができ、ハンドル9の上端横杆部92より下側に、該上端横杆部92と平行的に杆体2を配することができる。この際、杆体2の両端側の係合凸部23a,23aが、二つの嵌合凹部12,12の係合凹部14,14に係合し、杆体2の長手方向への移動を規制することができる。
【0034】
このように、ハンドル9の上端横杆部92より下側に杆体2を配することができるため、幼児用の物品等が予め収容された提手付き被吊物を杆体2のフック3に吊下げることができ、この吊下げ状態で物品を出し入れすることができる。
【0035】
収容袋等の被吊物を携行しない場合、杆体2を持ち上げることにより、該杆体2を二つの受体1,1から離脱させることができ、杆体2だけを格納することができるため、杆体2に邪魔されることなくハンドル9の上端横杆部92を把持して手押車Aを手押しすることができる。杆体2を格納する際、二つの受体1,1は手押車Aのハンドル9に装着されているため、被吊物を吊下げるとき、杆体2の両端部を嵌合凹部12,12に載せるだけで、杆体2を装着することができ、該杆体2に被吊物を吊下げることができる。
【0036】
手押車の機種の違いによって、前記ハンドル9の両側縦杆部91,91間の寸法が異なる場合、杆体2における二つの杆部材21,22を相対回転させることにより、規制部4における偏心軸部41aの割環42内周面との係合位置を変え、規制部4による杆部材21,22の相対回転規制を解除することができるため、二つの杆部材21,22を長手方向へ相対移動させ、杆体2の長さを調整することができる。長さが調整された状態で二つの杆部材21,22を相対回転させることにより、規制部4における偏心軸部41aが割環42を径方向外方へ移動させ、杆部材21,22の相対回転を阻止することができるため、調整された長さを維持することができ、二つの受体1,1に杆体2を支持することができる。
【0037】
尚、以上説明した実施の形態では、二つの杆部材21,22により杆体2を構成したが、その他、杆体2は一つの杆部材からなる構成としてもよい。
【0038】
また、以上説明した実施の形態では、受体1の取付部11は可撓筒11a及び帯体11bを有する構成としたが、その他、帯体11bだけを有する構成としてもよく、取付部11の構成は特に制限されない。
【0039】
また、以上説明した実施の形態では、杆体2に嵌合されるフック3を有する構成としたが、その他、フックがなく、杆体2が挿通される挿通孔を有する収納袋が吊下げられ、該収納袋に幼児用の物品等が収納されるようになしてもよく、杆体2に吊下げられる被吊物は特に制限されない。
【符号の説明】
【0040】
1 受体
11 取付部
12 嵌合凹部
14 係合凹部
2 杆体
21 第1の杆部材
22 第2の杆部材
23a 係合凸部
3 フック
4 規制部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向に離隔して配され、嵌合凹部を有する二つの受体及び各受体の間に横方向ヘ長くなるように配されて各受体の前記嵌合凹部に両端部が離脱を可能に嵌合され、中間に被吊物が吊下げられる杆体を備えることを特徴とする吊具。
【請求項2】
前記杆体は、一端部同士が長手方向への相対移動を可能に結合される二つの杆部材からなる請求項1記載の吊具。
【請求項3】
前記二つの杆部材の他端部及び嵌合凹部の一方は係合凸部を有し、他方は該係合凸部が係合することにより前記各杆部材の長手方向への移動を止める係合凹部を有する請求項2記載の吊具。
【請求項4】
前記杆体の長手方向への移動を自在に該杆体に嵌合されるフックを備える請求項1から3のいずれか一つに記載の吊具。
【請求項5】
前記二つの杆部材の一方は小径パイプからなり、他方は、前記小径パイプが相対回転を可能に一端部から嵌入される大径パイプからなり、前記小径パイプの前記一端部に、前記大径パイプの内周面に接触して相対回転量を規制する規制部が設けられている請求項2から4のいずれか一つに記載の吊具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−168256(P2011−168256A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36542(P2010−36542)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(596060594)株式会社サンコー (65)
【Fターム(参考)】