説明

吊金具

【課題】 インサートの取付位置の誤差を吸収できる吊金具を提供する。
【解決手段】 天井スラブ下面20に固定手段11を介して取り付けられるとともに、固定手段11を中心として360°回動可能な金具本体2と、金具本体2に取り付けられるとともに、金具本体2の回動中心に接近及び離間する方向に移動可能なネジ締結体15とを備え、ネジ締結体15に前記機器を取り付ける。金具本体2を固定手段11を中心として回動させるとともに、ネジ締結体15を金具本体2の回動中心に接近及び離間する方向へ移動させることにより、ネジ締結体15を所望の位置に位置決めすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊金具に関し、特に、建物の天井スラブ下面に空調機等の機器を取り付けるのに有効な吊金具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建物の天井スラブ下面に空調機等の機器を取り付ける場合、予め、機器の重量に応じたインサートを天井スラブ下面に取り付けておき、このインサートを利用して天井スラブ下面に吊ボルトを取り付け、この吊ボルトに機器を吊り下げることにより、機器を天井スラブ下面に取り付けている。
【0003】
ところで、インサートの取付位置に誤差が生じた場合、その誤差に応じて吊ボルトの取付位置を調整する必要があるが、吊ボルトの取付位置を調整することは困難であるため、天井スラブ下面に新たにアンカーボルトを打設する必要があり、その作業に手間がかかる。
【0004】
また、天井スラブ下面に機器を取り付ける作業は、天井の仕上工事の前に行う必要があるが、機器の取付位置と天井下地取付位置とに施工誤差が生じた場合、その施工誤差を吸収する手段がないため、取付位置の精度が要求される機器には対応しきれないことがある。
【0005】
一方、特許文献1には、吊金具を受ける受け金物に関する発明が記載されている。この受け金物は、座金部に、吊金具を螺合させる高ナット部と、アンカーボルトを挿通させるアンカーボルト挿通用長孔とを設けたものであって、座金部を床パネルの土台底面に固定し、高ナット部を土台の高ナット埋め込み孔に挿入した際に、アンカーボルト挿通用長孔が土台のアンカーボルト挿通孔に重なることが可能なように、アンカーボルト挿通用長孔を十分に長く形成したものである。
【0006】
このような構成の受け金物は、座金部のアンカーボルト挿通用長孔を十分に長く形成してあるので、土台の高ナット埋め込み孔とアンカーボルト挿通孔との間の距離に加工上の誤差が生じても、その誤差を十分に長く形成した座金部のアンカーボルト挿通用長孔で吸収することができ、土台側のアンカーボルト挿通孔と座金部のアンカーボルト挿通用長孔とを確実に重ね合わせることができるものである。
【特許文献1】特開平6−88430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記のような構成の受金物の構成を前述したような空調機等の機器の建物の天井スラブ下面への取り付けに適用した場合、アンカーボルト挿通用長孔によりインサートの一方向への誤差しか吸収できないため、取付位置の精度が要求される機器の天井スラブ下面への取り付けには対応することができない。
【0008】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされてものであって、空調機等の機器を天井スラブ下面に吊設する場合に、予め天井スラブ下面に取り付けられるインサートの取付位置に誤差が生じても、その誤差が何れの方向へのものあっても吸収することができる吊金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、請求項1に係る発明は、建物の天井スラブ下面に機器を吊設するための吊金具であって、前記天井スラブ下面に固定手段を介して取り付けられるとともに、該固定手段を中心として360°回動可能な金具本体と、該金具本体に取り付けられるとともに、該金具本体の回動中心に接近及び離間する方向に移動可能なネジ締結体とを備え、該ネジ締結体に前記機器を取り付けることを特徴とする。
【0010】
本発明による吊金具によれば、金具本体を固定手段を中心として回動させるとともに、金具本体に取り付けられるネジ締結体を金具本体の回動中心に接近及び離間する方向に移動させることにより、ネジ締結体を所望の位置に位置決めすることができ、このネジ締結体に機器を取り付けることができる。
また、金具本体を固定手段を中心として360°回動させることができるので、金具本体に取り付けられるネジ締結体の調整可能な位置の範囲を広げることができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の吊金具であって、前記金具本体は、前記天井スラブ下面に前記固定手段を介して取り付けられる基部と、該基部に一体に設けられるとともに、前記天井スラブ下面から下方に間隔をおいて配置され、かつ、前記ネジ締結体を前記金具本体の回動中心に接近及び離間する方向に移動可能に支持する長孔が設けられる取付部とを備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明による吊金具によれば、金具本体の基部及び取付部を固定手段を中心として回動させるとともに、取付部の長孔に沿ってネジ締結体を金具本体の回動中心に接近及び離間する方向に移動させることにより、ネジ締結体が所望の位置に位置決めされ、ネジ締結体に機器が取り付けられることになる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の吊金具であって、前記ネジ締結体は、前記長孔を上下方向に挿通する吊ボルトと、該吊ボルトの前記取付部の上面側に突出する部分に螺着される吊ナットと、該吊ボルトの前記取付部の下面側に突出する部分に螺着される固定ナットとを備えていることを特徴とする。
【0014】
本発明による吊金具によれば、固定ナットを緩めた状態で吊ボルトを長孔に沿って金具本体の回動中心に接近及び離間する方向に移動させることにより、吊ボルトが所望の位置に位置決めされ、その位置において固定ナットを締め付けることにより、その位置に吊ボルトを固定することができる。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の吊金具であって、前記取付部の上面側には、前記吊ナットの前記取付部の上面側での回動を規制する、前記取付部の上面側に前記長孔を間に挟んで設けられる一対の係止部からなる規制手段が設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明による吊金具によれば、取付部の上面側の吊ナットに取付部の下面側から吊ボルトを螺着させる際に、吊ナットは、その周面の一部が取付部の上面側に設けられる規制手段の一対の係止部に係止されることによって取付部の上面側での回動が規制されるので、吊ナットに吊ボルトを容易に螺着させることができる。
【0017】
請求項5に係る発明は、請求項2から4の何れかに記載の吊金具であって、前記固定手段は、前記天井スラブ下面に埋設されるインサートと、前記基部を上下方向に貫通して前記インサートに螺着される固定ボルトと、該固定ボルトの前記基部の下面側に突出する部分に螺着される固定ナットとからなることを特徴とする。
【0018】
本発明による吊金具によれば、固定ボルトを金具本体の基部を上下方向に貫通させて天井スラブ下面のインサートに螺着させ、固定ボルトの基部の下面側に突出する部分に固定ナットを螺着させることにより、金具本体の基部が天井スラブ下面に取り付けられ、固定ナットを緩めることにより、固定ボルトを中心として金具本体の基部及び取付部が一体に回動可能となる。
【発明の効果】
【0019】
以上、説明したように、本発明によれば、金具本体を固定手段を中心として360°回動可能に構成するとともに、金具本体に取り付けられるネジ締結体を金具本体の回動中心に接近及び離間する方向に移動可能に構成したので、建物の天井スラブ下面に取り付けたインサートの取付位置に誤差が生じても、その誤差に応じて金具本体を固定手段を中心として回動させるとともに、ネジ締結体を金具本体の回動中心に接近及び離間する方向に移動させることにより、ネジ締結体を所望の位置に位置決めすることができる。従って、インサートの取付位置に誤差が生じても、その誤差を金具本体の回動、及びネジ締結体の移動によって吸収できるので、新たにアンカーボルトを打設することなく、機器を天井スラブ下面に取り付けることができる。
また、インサートの取付位置の誤差によって機器の取付位置と天井下地位置とに施工誤差が生じても、その施工誤差を金具本体の回動、及びネジ締結体の移動によって吸収できるので、取付位置の精度が要求される機器にも十分に対応することが可能となり、新たにアンカーボルトを打設することなく、機器を天井スラブ下面に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図5には、本発明による吊金具の一実施の形態が示されていて、図1は天井スラブ下面に取り付けた状態を示す斜視図、図2は図1のa方向から見た説明図、図3は図1のb方向から見た説明図、図4は図1のc方向から見た説明図、図5は図1のd方向から見た説明図である。
【0021】
すなわち、本実施の形態の吊金具1は、建物の天井スラブ下面20に空調機等の機器25を取り付けるのに有効なものであって、天井スラブ下面20に回動可能に取り付けられる金具本体2と、金具本体2に取り付けられるとともに、金具本体2の回動中心に接近及び離間する方向に移動可能なネジ締結体15とを備え、ネジ締結体15に機器25が取り付けられる。
【0022】
金具本体2は、帯状の金属板を材料として、この金属板の2箇所を曲げ加工により屈曲させることによって段差状に形成したものであって、間隔をおいて互いに平行に配置される平板状の基部3及び取付部5と、基部3と取付部5とを一体に連結する平板状の連結部7とを備え、基部3が後述する固定手段11を介して天井スラブ下面20に取り付けられ、取付部5に後述するネジ締結体15が取り付けられる。
【0023】
金具本体2の基部3と取付部5とを間隔をおいて互いに平行をなすように構成することにより、図1に示すように、基部3を建物の天井スラブ下面20に取り付けた際に、取付部5が天井スラブ下面20から下方に間隔をおいた位置に配置される。金具本体2の基部3と取付部5との間は、取付部5の上面側に後述するネジ締結体15の吊ナット17を装着した際に、図2及び図4に示すように、吊ナット17の上面と天井スラブ下面20との間に僅かな隙間が形成されるように、間隔が設定されている。
【0024】
なお、基部3と取付部5と連結部7とを別体に形成し、それらを一体に連結することにより、基部3と取付部5とが間隔をおいて互いに平行をなすように構成してもよい。また、基部3と連結部7とを一体に形成し、連結部7に取付部5を一体に連結することにより、基部3と取付部5とが間隔をおいて互いに平行をなすように構成してもよい。
【0025】
基部3の中心部には、図2に示すように、基部3を厚み方向に貫通する貫通孔4が設けられ、この貫通孔4を利用して、基部3が後述する固定手段11により建物の天井スラブ下面20に取り付けられるとともに、固定手段11を中心として360°回動可能に構成されている。
【0026】
固定手段11は、図1及び図2に示すように、機器の支持点に対応する建物の天井スラブ下面20の部分に埋設されるインサート12と、基部3の貫通孔4を挿通してインサート12に螺着される固定ボルト13と、基部3の下面側に突出する固定ボルト13の部分に螺着される固定ナット14とから構成されている。
【0027】
固定手段11の固定ナット14を締め付けることにより、金具本体2の基部3が建物の天井スラブ下面20に固定され、基部3に一体に設けられる取付部5が天井スラブ下面20の所定の位置に位置決めされる。また、固定ナット14を緩めることにより、金具本体2が建物の天井スラブ下面20において固定手段11を中心として360°回動可能となり、基部3に一体に設けられる取付部5の天井スラブ下面20における位置を調整することが可能となる。
【0028】
なお、固定ナット14は、地震等による振動が建物に入力した際に、その振動によって緩みが生じるのを防止するために所謂ダブルナットに構成され、固定ナット14の緩みによって金具本体2の基部3及び取付部5にガタが生じるのを防止している。
【0029】
なお、図12に示すように、基部3の下面側の幅方向の両端に一対の補強板8、8を一体に立設し、この補強板8、8によって基部3の強度を高めるように構成してもよい。この場合、一対の補強板8、8間の間隔は、固定ナット14の対角距離よりも大きい寸法に設定し、固定ナット14をレンチ等を用いて締め付け可能に構成する。
【0030】
取付部5の中心部には、図1及び図3に示すように、取付部5を厚み方向に貫通する所定の幅、長さの長孔6が基部3の回動中心を通る直線の方向に延びるように設けられ、この長孔6を利用して取付部5に後述するネジ締結体15が取付部5の長手方向(金具本体2の回動中心に接近及び離間する方向)に移動可能に取り付けられる。
【0031】
ネジ締結体15は、図1、図2及び図3に示すように、取付部5の長孔6を挿通する吊ボルト16と、取付部5の上面側に突出する吊ボルト16の部分に螺着される吊ナット17と、取付部5の下面側に突出する吊ボルト16の部分に螺着される固定ナット18とから構成されている。
【0032】
なお、固定ナット18は、基部3と同様に、地震等の振動が建物に入力した際に、その振動によって緩みが生じるのを防止するために所謂ダブルナットに構成され、固定ナット18の緩みによって吊ボルト16にガタが生じるのを防止している。
【0033】
ネジ締結体15の固定ナット18を締め付けることにより吊ボルト16が取付部5に固定され、固定ナット18を緩めることにより吊ボルト16が取付部5の長手方向(金具本体2の回動中心に接近及び離間する方向)に移動可能となる。吊ボルト16の固定ナット18の下側の部分には機器25が取り付けられ、この吊ボルト16を介して機器25が建物の天井スラブ下面20に吊設される。
【0034】
取付部5の上面側の幅方向の両端部には、図4及び図5に示すように、長孔6を幅方向の両側から挟むように一対の板状の係止部10、10が一体に立設され、この一対の係止部10、10によって吊ナット17の取付部5の上面側での回動を規制する規制手段9が構成されている。規制手段9の係止部10、10は、後述するように吊ナット17の回動を規制する機能を有するとともに、取付部5の強度を高める補強板としての機能も有している。
【0035】
規制手段9の一対の係止部10、10間の間隔は、吊ナット17を取付部5の上面側に配置した際に、吊ナット17の二面幅よりも1mm程度大きくなる寸法に設定されている。これにより、図1中の右方向(矢印c方向)から取付部5の上面側に吊ナット17を容易に挿入することができるとともに、吊ナット17に吊ボルト16を螺着させる際に、吊ナット17が取付部5の上面側で回動するのを規制でき、吊ナット17に吊ボルト16を容易に螺着させることができる。
【0036】
本実施の形態においては、取付部5の上面側に一対の板状の係止部10、10を一体に立設することにより規制手段9を構成しているが、取付部5を厚く形成し、その上面側に溝加工を施すことにより、取付部5の長孔6を挟む一対の係止部10、10を形成するように構成してもよい。
【0037】
次に、上記のように構成した本実施の形態の吊金具1の作用について、建物の天井スラブ下面20に4点で支持される機器を図1、図6〜図11を参照しながら説明する。
まず、予め、図6に示すように、機器の4つの支持点に対応して建物の天井スラブ下面20の4箇所に固定手段11のインサート(図示せず)を埋設しておき、図1に示すように、各インサートに固定ボルト13をそれぞれ螺着させ、各固定ボルト13を各金具本体2の基部3の貫通孔4内をそれぞれ挿通させ、各基部3の下面側に突出した各固定ボルト13の部分にそれぞれ固定ナット14を螺合させる。この場合、各金具本体2が各固定ボルト13を中心として回動可能となるように、各固定ナット14の締め付け状態を調整しておく。
【0038】
次に、各金具本体2の取付部5の上面側に図1中の右方向(矢印c方向)からネジ締結体15の吊ナット17をそれぞれ挿入し、各金具本体2の取付部5の下方から取付部5の上面側の各吊ナット17にそれぞれ吊ボルト16を螺合させる。この場合、各吊ナット17は、その周面の一部が一対の係止部10、10に係止されることにより取付部5の上面側での回動が規制されるので、各吊ナット17に吊ボルト16を容易に螺着させることができる。
【0039】
次に、各金具本体2の取付部5の下面側に突出している各吊ボルト16の部分に固定ナット18をそれぞれ螺合させる。この場合、各吊ボルト16が取付部5の長手方向(金具本体2の回動中心に接近及び離間する方向)に移動可能となるように、各固定ナット18の締め付け状態を調整しておく。
【0040】
そして、各金具本体2を回動させるとともに、各金具本体2の取付部5に取り付けられている各吊ボルト16を各金具本体2の回動中心に接近及び離間する方向に移動させ、各吊ボルト16を機器の各支持点の位置に合わせ、その位置において各金具本体2の基部3を固定ナット14を締め付けることにより天井スラブ下面20に固定し、各吊ボルト16を固定ナット18を締め付けることにより取付部5に固定する。
【0041】
そして、各吊金具2の各吊ボルト16に機器の支持点をそれぞれ固定することにより、機器が4本の吊ボルト16を介して天井スラブ下面20に吊設される。
【0042】
この場合、機器の各支持点において、各吊金具1の金具本体2を、基部3の固定ボルト13を中心として左回り又は右回りに回動させるとともに、各吊ボルト16を各金具本体2の回動中心に接近及び離間する方向に移動させることにより、各吊ボルト16を図6中のA〜Eの位置に位置させることができる。従って、インサートの取付位置の誤差に応じて、各吊金具1の各吊ボルト16の位置をA〜Eの位置に移動させることにより、各インサートの取付位置の誤差を吸収し、各吊金具1の各吊ボルト16を機器の各支持点に合わせることができる。
【0043】
ここで、図6中の左上の支持点について具体的に説明する。
インサートの取付位置の誤差に応じて、吊金具1の吊ボルト16を図6中のAの位置に移動させるには、図7に示すように、例えば、金具本体2を水平位置から左回りに約15°回動させ、その位置において吊ボルト16を金具本体2の取付部5の長孔6に沿って移動させて図6中のAの位置に位置決めする。
【0044】
また、吊金具1の吊ボルト16を図6のBの位置に移動させる場合には、図8に示すように、例えば、金具本体2を水平位置から右回りに約35°回動させ、その位置において吊ボルト16を金具本体2の取付部5の長孔6に沿って移動させて図6中のBの位置に位置決めする。
【0045】
さらに、吊金具1の吊ボルト16を図6のCの位置に移動させる場合には、図9に示すように、例えば、金具本体2を水平位置から右回りに約65°回動させ、その位置において吊ボルト16を金具本体2の取付部5の長孔6に沿って移動させて図6中のCの位置に位置決めする。
【0046】
さらに、吊金具1の吊ボルト16を図6のDの位置に移動させる場合には、図10に示すように、例えば、金具本体2を水平位置から左回りに約80°回動させ、その位置において吊ボルト16を金具本体2の取付部5の長孔6に沿って移動させて図6中のDの位置に位置決めする。
【0047】
さらに、吊金具1の吊ボルト16を図6のEの位置に移動させる場合には、図11に示すように、例えば、金具本体2を水平位置から右回りに約45°回動させ、その位置において吊ボルト16を金具本体2の取付部5の長孔6に沿って移動させて図6中のEの位置に位置決めする。
【0048】
上記のように各吊金具1の金具本体2を回動させるとともに、各吊ボルト16を各金具本体2の取付部5の長孔6に沿って移動させて機器25の各支持点の位置に合わせることにより、機器の4点を4本の吊ボルト16を介して天井スラブ下面20に吊設することができる。
【0049】
上記のように構成した本実施の形態による吊金具1にあっては、インサート12の天井スラブ下面20への取付位置に誤差が生じても、その誤差に応じて吊金具1の金具本体2を固定手段11の固定ボルト13を中心として回動させ、吊ボルト16を金具本体2の回動中心に接近及び離間する方向に移動させることにより、吊ボルト16を機器25の支持点に合わせることができる。
【0050】
従って、インサート12の取付位置に誤差が生じても、アンカーボルトを新たに天井スラブ下面20に打設する必要はなく、機器25の天井スラブ下面20への取り付け作業を容易に行うことができる。
【0051】
また、機器25の取付位置と天井下地取付位置とに施工誤差が生じても、機器25が取り付けられる各吊ボルト16の位置を移動させることにより、その施工誤差を吸収できるので、取付位置の精度が要求される機器25にも十分に対応することができる。
【0052】
なお、前記の説明においては、4点で支持する機器25を例にとって説明したが、3点以下、又は5点以上で支持する機器25に適用してもよいものであり、その場合にも同様の作用効果を奏する。
【0053】
また、前記の説明においては、取付部5の上面側に吊ナット17を装着し、吊ナット17に取付部5の下方から吊ボルト16を螺着させたが、予め、吊ボルト16に吊ナット17を固着させるか、吊ボルト16と吊ナット17とを一体に形成しておき、この状態の吊ボルト16を金具本体2を天井スラブ下面20に取り付ける前に取付部5の長孔6内に挿入し、その後に基部3を天井スラブ下面20に取り付けるように構成してもよい。このような構成とすることにより、取付部5の上面側に規制手段9を設ける必要がなくなる。
【0054】
さらに、前記の説明においては、金具本体2を360°回動可能としたが、360°よりも狭い角度を回動可能としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明による吊金具を天井スラブ下面に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図2】図1のa方向から見た説明図である。
【図3】図1のb方向から見た説明図である。
【図4】図1のc方向から見た説明図である。
【図5】図1のd方向から見た説明図である。
【図6】機器を4点で支持する場合の説明図である。
【図7】図6の左上の支持点において、吊ボルトをAの位置に調整する場合の説明図である。
【図8】図6の左上の支持点において、吊ボルトBの位置に調整する場合の説明図である。
【図9】図6の左上の支持点において、吊ボルトをCの位置に調整する場合の説明図である。
【図10】図6の左上の支持点において、吊ボルトをDの位置に調整する場合の説明図である。
【図11】図6の左上の支持点において、吊ボルトをEの位置に調整する場合の説明図である。
【図12】本発明による吊金具の変形例を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
1 吊金具
2 金具本体
3 基部
4 貫通孔
5 取付部
6 長孔
7 連結部
8 補強板
9 規制手段
10 係止部
11 固定手段
12 インサート
13 固定ボルト
14 固定ナット
15 ネジ締結体
16 吊ボルト
17 吊ナット
18 固定ナット
20 天井スラブ下面
25 機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の天井スラブ下面に機器を吊設するための吊金具であって、
前記天井スラブ下面に固定手段を介して取り付けられるとともに、該固定手段を中心として360°回動可能な金具本体と、該金具本体に取り付けられるとともに、該金具本体の回動中心に接近及び離間する方向に移動可能なネジ締結体とを備え、
該ネジ締結体に前記機器を取り付けることを特徴とする吊金具。
【請求項2】
前記金具本体は、前記天井スラブ下面に前記固定手段を介して取り付けられる基部と、該基部に一体に設けられるとともに、前記天井スラブ下面から下方に間隔をおいて配置され、かつ、前記ネジ締結体を前記金具本体の回動中心に接近及び離間する方向に移動可能に支持する長孔が設けられる取付部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の吊金具。
【請求項3】
前記ネジ締結体は、前記長孔を上下方向に挿通する吊ボルトと、該吊ボルトの前記取付部の上面側に突出する部分に螺着される吊ナットと、該吊ボルトの前記取付部の下面側に突出する部分に螺着される固定ナットとを備えていることを特徴とする請求項2に記載の吊金具。
【請求項4】
前記取付部の上面側には、前記吊ナットの前記取付部の上面側での回動を規制する、前記取付部の上面側に前記長孔を間に挟んで設けられる一対の係止部からなる規制手段が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の吊金具。
【請求項5】
前記固定手段は、前記天井スラブ下面に埋設されるインサートと、前記基部を上下方向に貫通して前記インサートに螺着される固定ボルトと、該固定ボルトの前記基部の下面側に突出する部分に螺着される固定ナットとからなることを特徴とする請求項2から4の何れかに記載の吊金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−156342(P2009−156342A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334914(P2007−334914)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】