説明

同位体濃縮方法

【課題】 同位体交換反応法に於いてより簡便で安定した系を採用することにより、シリコンの同位体濃縮を低コストで大量に行うことが可能な同位体濃縮方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係る同位体濃縮方法は、HO−HSiF・nSiF(式中、n≧0である。)の2成分を少なくとも含む水溶液と、前記SiFを含む気体との間での同位体交換により、前記Siの安定同位体を濃縮することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体分野、光学分野等で使用されるシリコン同位体の濃縮方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天然のシリコンは質量数が28、29、30である3種の安定同位体(以下それぞれ28Si、29Si、30Si)から構成されており、それぞれ92.23%、4.67%、3.10%の割合(原子%)で存在している。
【0003】
シリコン同位体を高濃度に濃縮した単結晶は、天然比のものに比べ熱伝導度が向上することが報告されている。よって、LSIの更なる高速化、小型化、消費電力低下、安定性の向上に寄与する材料として大きな期待が寄せられている。また、核スピンを持つ29Siを完全に取り除いたシリコンは、超高速計算が可能であると提案されている量子コンピューターの実現に最も近い材料である。
【0004】
この様な分野での研究開発を促進するため、又は新たな用途開発を行うため、更には同位体濃縮シリコンを用いたデバイス等の拡販のためには、低コストで大量に同位体分離シリコンを製造する技術の確立が必要である。
【0005】
シリコンの同位体濃縮方法に関する従来技術としては、例えば蒸留法、遠心分離法、レーザー分解法、同位体交換反応法等が挙げられる。しかし、蒸留法では分離係数が非常に小さく分離に要する塔長が非常に長くなるため、商業プロセスとしては成立し難い。遠心分離法では大型の遠心分離機が必要でありコスト高となる。また、レーザー分解法では収量が少なく大量生産に不向きである。
【0006】
同位体交換反応法としては、例えば、下記特許文献1に、ハロゲン化シリコン等とC−Cのアルキルアルコール等との錯体を用いた方法が開示されている。当該方法によると、ハロゲン化シリコンの一種である四フッ化ケイ素は、一般に、水と反応して加水分解することが知られているので(下記化学反応式、参照)、ドナー化合物として所定の有機溶媒を使用してこれを防止している。
【0007】
【化1】

【0008】
しかし、四フッ化ケイ素は、運転条件によっては、水と同様の機構によりアルコール類と反応して、アルキルオルソシリケートとアルコキシルフルオロシリケートを生成して分解することが知られている。この為、前記の化学交換法では、安定した同位体分離操作ができない場合がある。更に、C−Cのアルキルアルコール等の有機溶媒の使用は防爆設備を必要とし、製造コストの増大も招来する。
【0009】
【特許文献1】米国特許第6146601号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、同位体交換反応法に於いてより簡便で安定した系を採用することにより、シリコン同位体濃縮を低コストで大量に行うことが可能な同位体濃縮方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者等は、前記従来の問題点を解決すべく、シリコン同位体濃縮方法について検討した。その結果、下記構成を採用することにより、前記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち、本発明に係る同位体濃縮方法は、前記の課題を解決する為に、HO−HSiF・nSiF(式中、n≧0である。)の2成分を少なくとも含む水溶液と、前記SiFを含む気体との間での同位体交換により、前記Siの安定同位体を濃縮することを特徴とする。
【0013】
前記方法は、水溶液系での同位体交換反応を基本原理とする。一般的に、X元素と、質量の異なる化学的に同じX元素を2種類の化合物AXとBXにして両者を接触させると、化合物間で同位体の交換反応が起こる(AX+BX→AX+BX)。元素の質量差に起因した結合エネルギーの相違により、反応速度や平衡定数に僅かな差が生じるが、この差を多段に組み合わせる分離法を同位体交換反応法と言う。
【0014】
本発明は、四フッ化ケイ素を用いた同位体交換反応法に於いて、ドナーとしてフッ化水素酸を含む水溶液を用いるものであり、下記のような平衡反応によると考えられる。同位体交換反応の結果として、水溶液側にSiの軽質同位体が濃縮され、ガス側にSiの重質同位体が濃縮される。具体的には、例えば天然比のシリコンから28Siを高濃度に濃縮したフルオロケイ酸水溶液と、29Si及び30Siを高濃度に濃縮した四フッ化ケイ素とに分離できる。或いは、29Siと30Siを高濃度に濃縮した四フッ化ケイ素を29Siが更に高濃度に濃縮されたフルオロケイ酸水溶液と、30Siを更に高濃度に濃縮した四フッ化ケイ素とに分離することができる。
【0015】
【化2】

尚、n≧0である。また、x、yは同位体質量数を表し、x<yの関係を満たす。
【0016】
前記方法に於いては、前記水溶液に、前記SiFが飽和状態で溶解していることが好ましい。
【0017】
前記SiFが飽和となっている前記2成分を少なくとも含む水溶液を用いることにより、同位体交換反応に於いて気―液組成を一定に保持することができる。これにより安定した同位体濃縮操作が可能である。
【0018】
また、前記方法に於いては、前記水溶液が共沸組成であってもよい。
【0019】
共沸組成では気−液の組成は同一である為、同位体交換反応に於いて組成を一定に保持することができ、安定した同位体濃縮操作が可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、前記に説明した手段により、以下に述べるような効果を奏する。
即ち、本発明の同位体濃縮方法によれば、HO−HSiF・nSiF(式中、n≧0)の2成分を少なくとも含む水溶液と、SiFを含むガスとの間での同位体交換反応により、シリコン同位体を濃縮・分離することが可能な、新規の同位体濃縮方法を提供することができる。この方法により、シリコンの同位体濃縮を低コストで大量に行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施の一形態について説明する。本実施の形態に係る同位体濃縮方法は、水溶液系での気液接触による同位体交換法にて、Siの同位体を分離・濃縮するものである。本発明の同位体交換は、具体的には、例えば気液接触法により行うことが好ましく、気液向流接触により行うのがより好ましい。
【0022】
本発明の水溶液系での同位体交換反応によるシリコン同位体濃縮は、一例として図1に示すような装置を用いて行うことができる。同図に示す装置は、交換反応塔1、ガス発生装置4、及びガス吸収装置8を主に含み構成される。前記交換反応塔1では、HO−HSiF・nSiF(式中、n≧0)の2成分を少なくとも含む水溶液と四フッ化ケイ素を含むガスに於いて同位体交換反応が行われる。この交換反応塔1としては、棚段塔又は充填塔を用いることができる。前記ガス発生装置4では、交換反応塔1の底部から抜き出される前記水溶液から四フッ化ケイ素を含むガスを取り出し、該ガスを交換反応塔1に戻す。前記ガス吸収装置8では、交換反応塔1の塔頂から抜き出される四フッ化ケイ素を含むガスを、フッ化水素酸を含む水溶液に吸収させ、前記HO−HSiF・nSiF(式中、n≧0)の2成分を少なくとも含む水溶液を調製し、交換反応塔1の塔頂に戻す。
【0023】
尚、ケイフッ化水素酸はHSiFと表記されるフルオロケイ酸の水溶液であり、水溶液としてのみ存在するものである。また、ケイフッ化水素酸はその酸濃度が高くなるに伴い、四フッ化ケイ素を多く吸収し、一般式HSiF・nSiFで表されるものとなる。研究の歴史上、理論量よりも多くのシリカを溶解していると考えられてきたことから、本化合物は高シリカフルオロケイ酸と呼ばれる。ここで、nはn≧0であり、酸濃度の上昇に伴い、nの値は0から1へと増加することが知られている。但し、水溶液中にフルオロケイ酸と四フッ化ケイ素が共存している場合に、どのような平衡状態にあるかの詳細は不明であり、HSiF・nSiFに於いて、前項のフルオロケイ酸の一部がSiFとHFに分解していると解釈した場合には、n>1ともなり得る。
【0024】
同位体交換反応に用いる原料としては、例えば、四フッ化ケイ素を含むガスや、四フッ化ケイ素を飽和濃度まで吸収させたHO−HSiF・nSiF(n≧0)の2成分を少なくとも含む水溶液(以下、飽和フルオロケイ酸水溶液)等が使用できる。原料として四フッ化ケイ素を含むガスを用いる場合は、このガスから前記ガス吸収装置8により飽和フルオロケイ酸水溶液を調製し、四フッ化ケイ素を含むガスとこの飽和フルオロケイ酸水溶液との同位体交換反応をさせる。一方、原料として飽和フルオロケイ酸水溶液を用いる場合は、この飽和フルオロケイ酸水溶液から前記ガス発生装置4により四フッ化ケイ素を含むガスを発生させ、飽和フルオロケイ酸水溶液とこの四フッ化ケイ素を含むガスとの同位体交換反応をさせる。同位体交換反応の原料として用いる四フッ化ケイ素は、高純度に精製したものが好ましい。但し、同位体交換反応に用いるガス及び液体と反応、吸収、分解等を起こさない不活性ガス等、同位体濃縮に係る気液成分の組成変化を引き起こさないものであれば、不純物が含まれていても問題ない。尚、前記ガスに含まれる四フッ化ケイ素の含有量は特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。
【0025】
また、同位体交換反応の原料に用いる前記飽和フルオロケイ酸水溶液には、四フッ化ケイ素が飽和濃度に達するまで吸収されていることが好ましい。前記水溶液に四フッ化ケイ素を更に吸収する余地があれば、所望する濃縮度の達成の為に設定された段数を持つ交換反応装置の全域に於いて、十分な同位体交換反応を行わせることができず、所定の濃縮が完了しない場合がある。また、四フッ化ケイ素が吸収される際に生じる熱により、更に液組成が変化し、安定した濃縮操作ができない可能性もある。同位体交換反応に用いる前記飽和フルオロケイ酸水溶液は高純度であることが好ましい。但し、交換反応操作の妨げにならない成分であれば、不純物が含まれていても問題ない。
【0026】
前記飽和フルオロケイ酸水溶液は、水、又はフッ化水素酸を含む水溶液に四フッ化ケイ素を吸収・溶解させることにより調製できる。また、二酸化ケイ素と、フッ化水素酸を含む水溶液との反応により調製することもできる。更に、二酸化ケイ素とフッ化水素酸との反応により生成したフルオロケイ酸水溶液を単蒸留して、留出液として飽和フルオロケイ酸水溶液を得ることもできる。ここで、飽和フルオロケイ酸水溶液の調製時には、四フッ化ケイ素の加水分解により二酸化ケイ素が析出する場合がある。この様な場合には、析出した二酸化ケイ素をろ別除去すれば問題なく使用できる。
【0027】
飽和フルオロケイ酸水溶液中のSi濃度は高い方が好ましい。但し、フルオロケイ酸濃度が高くなり過ぎると、温度によっては、HSiF・2HOやHSiF・4HO等の結晶性水和フッ化ケイ酸がゲル状、又は固体として析出し同位体交換反応の原料として使用できない場合がある。より具体的には、Si濃度は、Siの同位体が天然比で、その平均モル重量を28.086g/molとした場合に於いて0.2重量%〜13.1重量%であることが好ましく、12.0重量%〜13.1重量%であることがより好ましい。但し、HF、SiF、HO及びこれらの成分からなる化合物以外で、同位体濃縮操作を阻害しない他の成分が混在している場合には、好ましいSi濃度はその分だけ減少する。
【0028】
飽和フルオロケイ酸水溶液には遊離フッ化水素酸が含まれていることが多いが、遊離フッ化水素酸なしに飽和フルオロケイ酸水溶液が安定して存在できるのであれば遊離フッ化水素酸の存在は必須ではない。
【0029】
ガス吸収装置から交換反応塔1に供給される飽和フルオロケイ酸水溶液と、ガス発生装置から交換反応塔1に供給される四フッ化ケイ素を含むガスの温度は同一であることが好ましい。これにより、交換反応塔内部に生じる温度勾配を低減又は解消することができ、気―液組成を安定的に一定に保つことができる。その結果、安定した同位体交換反応操作が可能となる。
【0030】
飽和フルオロケイ酸水溶液を用いた同位体交換反応に於ける操作温度としては、特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。但し、飽和フルオロケイ酸の結晶析出温度以上であって、かつできるだけ低温度であれば飽和フルオロケイ酸濃度を高く保持することができるので好ましい。操作温度としては、通常0℃〜50℃程度が好ましい。また、濃縮装置の保温及び保冷上の観点からは、10℃〜30℃であることがより好ましい。操作圧力に関しては、高い方が飽和フルオロケイ酸濃度を高くし得るので好ましいが、通常、大気圧から0.2MPaG程度であればよい。但し、フルオロケイ酸水溶液は金属やガラス等の一般工業材料に対し腐食性であるため、同位体交換反応装置を含む一連の装置には、耐食性樹脂等のライニングやコーティング等が必要となる。この為、装置材質により操作温度及び操作圧力が制限を受ける場合がある。
【0031】
四フッ化ケイ素及び飽和フルオロケイ酸水溶液が交換反応塔1に供給されると、交換反応塔1では、その内部を上昇する四フッ化ケイ素と、下降する飽和フルオロケイ酸水溶液との間で同位体交換反応が起こる。これにより、Siの軽質同位体はガス側から液側に、Siの重質同位体は液側からガス側に交換され、同位体濃縮が進行する。その結果、交換反応塔1の塔頂から、Siの重質同位体が濃縮された四フッ化ケイ素が取り出される。また、交換反応塔1の塔底から、Siの軽質同位体が濃縮された飽和フルオロケイ酸水溶液が取り出される。
【0032】
交換反応塔1の塔底からはSiの軽質同位体が濃縮された飽和フルオロケイ酸水溶液が抜き出され、第2液路3を介してガス発生装置4に送られる。ガス発生装置4では、例えば濃硫酸等の脱水剤によりフルオロケイ酸水溶液が脱水分解され、Siの軽質同位体が濃縮された四フッ化ケイ素が発生する。発生した濃縮四フッ化ケイ素の一部は、製品として第2ガス路6を介して抜き出される。残りは、第1ガス路5を介して、再び交換反応塔1の塔底に戻される。交換反応塔底部から供給された四フッ化ケイ素は交換反応塔1の内部を上昇する。尚、ガス発生装置4からは脱水剤廃液も排出される。前記脱水剤は、その使用後、水分やフッ化水素等脱水剤へ移行した成分を脱離再生する処理を行ない、循環再使用してもよい。脱離再生の方法としては、例えば蒸留等が挙げられる。
【0033】
ガス発生のために使用される脱水剤は、水に比べ十分沸点が高く脱水作用を有するものであり、四フッ化ケイ素と反応せず、また同位体濃縮操作の妨げになる副生物を生成しないという条件を満足するものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば硫酸、リン酸、過塩素酸、トリフルオロメタンスルホン酸、発煙硫酸、無水リン酸等が挙げられる。脱水剤として硫酸を用いる場合、その濃度としては80〜98重量%であることが好ましく、95〜98重量%であることがより好ましい。一方、交換反応塔1の塔頂からは、Siの重質成分が濃縮された四フッ化ケイ素が抜き出される。濃縮四フッ化ケイ素の一部は、第4ガス路9を介して製品として抜き出される。残りは、第3ガス路7を介して、ガス吸収装置8に送られる。
【0034】
ガス吸収装置8としては、例えば吸収塔が例示できる。ガス吸収装置8には、フッ化水素酸を含む液が供給される。フッ化水素酸を含む液の組成及び量は、ガス吸収装置8に供給される四フッ化ケイ素を吸収し、交換反応塔1に供給する飽和フルオロケイ酸水溶液を形成するのに相当するものとする。飽和フルオロケイ酸水溶液には、ガス吸収装置8内で調製されたSiの重質同位体が濃縮されており、この飽和フルオロケイ酸水溶液は第1液路2を介して交換反応塔1に供給される。
【0035】
また、前記2成分を少なくとも含む水溶液が共沸組成(以下、共沸フルオロケイ酸水溶液)である場合の同位体濃縮操作は、例えば図2に示すような濃縮装置を用いて行うことができる。当該濃縮装置に於いては、交換反応塔として蒸留塔10が使用できる。この蒸留塔10の塔底には再熱器12が設けられ、塔頂には凝縮器11が設けられている。
【0036】
共沸フルオロケイ酸水溶液を用いて同位体濃縮を行う場合には、同位体交換反応塔に供給する原料は共沸組成であることが好ましい。原料として四フッ化ケイ素、又は共沸組成にないフルオロケイ酸水溶液を供給した場合、同位体交換反応塔内に於いて共沸組成が崩れる可能性がある。その結果、安定した同位体濃縮操作を行うことができない場合がある。尚、例えば13.3重量%ケイフッ化水素酸、41重量%のケイフッ化水素酸、又は10重量%のフッ化水素酸を含む36重量%のケイフッ化水素酸等は、共沸混合物であることが知られている。
【0037】
共沸フルオロケイ酸水溶液を用いた同位体交換反応に於ける操作圧力は、特に限定されるものでなく、適宜必要に応じて設定され得る。通常、大気圧から0.2MPaG程度であればよい。但し、操作圧力は、耐食樹脂等の装置材料により制限を受ける場合がある。操作温度は、操作圧力に於ける共沸フルオロケイ酸水溶液の沸点であることが好ましい。例えば、10重量%のフッ化水素酸を含む36重量%のケイフッ化水素酸に於ける沸点は、759.7mmHgに於いて116.1℃であることが知られている。
【0038】
共沸フルオロケイ酸水溶液の一部は、再熱器12に於いて共沸組成を保持したまま気化し、その蒸気は蒸留塔10内を上昇する。更に、蒸留塔10内を下降する共沸フルオロケイ酸水溶液と蒸気との間で同位体交換反応が行われる。これにより、Siの軽質同位体はガス側から液側に、Siの重質同位体は液側からガス側に交換されて同位体濃縮が進行する。よって、蒸留塔10の底部からは、Siの軽質同位体濃縮された共沸フルオロケイ酸水溶液が抜き出される。蒸留塔10の塔頂からは、Siの重質同位体が濃縮された共沸フルオロケイ酸水溶液の蒸気が抜き出される。蒸留塔10の塔頂から抜き出される蒸気は凝縮器で液化され、再び蒸留塔10の塔頂部へ戻される。Siの軽質同位体が濃縮された共沸フルオロケイ酸水溶液は、第2液路3’を介して系外へ抜き出される。また、Siの重質同位体が濃縮された共沸フルオロケイ酸水溶液は、第3液路14を介して系外へ抜き出される。
【0039】
尚、前記いずれの同位体濃縮方法に於いても、運転開始から所定の濃縮度になるまでには相当の時間を要する。この為、交換反応を開始して後、原料の供給を止め全還流で運転を続け、交換反応塔の塔頂及び塔底での同位体比が所定の濃縮度になっていることを確認し、原料量の供給と製品の抜き出しを行う必要がある。
【0040】
以上の様に、本発明に係る同位体の濃縮方法であると、Siの同位体濃縮を大量に得ることができる。また、本発明の同位体濃縮方法は水溶液系で行う為、有機溶媒使用の場合に必要となる防爆設備が不要となる。その結果、設備コストの低減が図れると共に、より安全な運転が可能となる。本発明の同位体濃縮方法で得られるSiの形態は、四フッ化ケイ素やフルオロケイ酸水溶液である。このうち、四フッ化ケイ素は、フルオロケイ酸水溶液を脱水分解することにより、あるいは無機塩とした後に熱分解すること等により得られる。更に、得られた同位体濃縮四フッ化ケイ素は、水素による還元や、HClと反応させトリクロロシランに変換した後にシーメンス法により、Siとして取り出すことができる。同位体が高濃度に濃縮されたSiを用いて単結晶を製造すれば、天然比のSiを用いて得られる単結晶に比べ、熱伝導度に優れたものが得られる。これにより、シリコン半導体の高集積化等に寄与することができる。
【実施例】
【0041】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている装置や材料、配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定するものではない。
【0042】
(実施例1)
本実施例に於いては、図3に示す同位体濃縮装置を用いてSi同位体の分離濃縮を行った。交換反応塔としては、内径16mm、高さ3000mmのフッ素樹脂製交換反応塔を2本直列(第1交換反応塔22及び第2交換反応塔22’)に配置したものを用いた。各交換反応塔の内部には外径6mmのフッ素樹脂製ラシヒリングを充填高が2500mmになるように設けた。また、ガス吸収塔34、ガス発生塔27及びガス洗浄塔31は内径25mmのフッ素樹脂製カラムを用い、交換反応塔に用いたものと同じラシヒリングを充填高がそれぞれ、600mm、400mm、800mmになるように設けた。
【0043】
まず、ガス吸収塔34に18.9重量%のフッ化水素酸998.8gを仕込み、冷却器36を通して循環冷却しながら、原料となる天然比のSiで構成される高純度四フッ化ケイ素21を供給し、ガス吸収塔34にて該フッ化水素酸に四フッ化ケイ素を飽和濃度になるまで吸収させた。ガス吸収塔34の塔頂ライン下流に純水約100gを仕込んだ容器を一時的に接続し、該容器中での四フッ化ケイ素の加水分解による二酸化ケイ素の析出をもって、飽和濃度に達したことを確認した。尚、ガス吸収塔34の内部に於いて二酸化ケイ素の析出は見られなかった。また、ガス吸収塔34の塔底温度はおよそ25℃であった。調整された高シリカフルオロケイ酸水溶液の約50mlをガス吸収塔34の塔底部より採取した。本サンプルの一部を用いアルカリ滴定による組成分析を行った結果、得られた水溶液は、濃度52.47重量%の高シリカフルオロケイ酸(HSi・SiF)と、濃度2.15重量%の遊離フッ化水素酸とを含む高シリカフルオロケイ酸水溶液であった。本組成より、該フッ化ケイ素酸に吸収された四フッ化ケイ素量は785.2gであり、得られた高シリカフルオロケイ酸水溶液の総量は1784.0gであると算出される。また、得られた高シリカフルオロケイ酸水溶液の密度は1.70g/mlであった。尚、採取したサンプルの一部は同位体比測定時の天然比サンプルとして用いた。
【0044】
次に、ガス洗浄塔31に98重量%の濃硫酸540.9gを仕込み、ポンプにて循環運転を開始した。前記操作で得られた高シリカフルオロケイ酸水溶液を、第1液路23及び第2液路26を介してポンプにて第1交換反応塔22及び第2交換反応塔22’にそれぞれ約300mlを仕込み、同位体濃縮操作準備の完了とした。高シリカフルオロケイ酸水溶液を、ガス吸収塔34から第1液路23を介して第1交換反応塔22へ、第2液路26を介して第1交換反応塔22から第2交換反応塔22’へ、及び第3液路26’を介して第2交換反応塔22’からガス発生塔27へ、ポンプにてそれぞれ8.4ml/min(14.3g/min)の流量で供給を開始した。これと同時に、外部供給源からガス洗浄塔31に、及びガス洗浄塔31からガス発生塔27に、98重量%の濃硫酸を15.7ml/min(28.8g/min)の流量で供給を開始し、ガス発生塔27にて高シリカフルオロケイ酸の脱水分解による四フッ化ケイ素の発生を開始した。ガス発生塔27に於ける四フッ化ケイ素の発生速度は6.3g/minになる。発生させた四フッ化ケイ素は、第4ガス路29を介してガス洗浄塔31に供給される。ガス洗浄塔31に於いては、濃硫酸により四フッ化ケイ素に随伴するフッ化水素及び水分の除去を行った。ガス洗浄塔31で洗浄された四フッ化ケイ素の全量を、第3ガス路24’を介して第2交換反応塔22’の底部に戻した。このとき、第1交換反応塔22及び第2交換反応塔22’内でのガス流速は0.12m/sであった。尚、ガス発生塔27からは廃硫酸30も排出された。
【0045】
一方、ガス発生と同時に、ガス吸収塔34に18.9重量%のフッ化水素酸35を7.5ml/min(8.0g/min)の流量で供給を開始した。第1交換反応塔22の塔頂から抜き出した四フッ化ケイ素は、第1ガス路24を介してガス吸収塔34に送った。この四フッ化ケイ素は18.9重量%フッ化水素酸に吸収され、これにより前記組成の高シリカフルオロケイ酸水溶液を調製した。調製した高シリカフルオロケイ酸水溶液は、第1液路23を介して第1交換反応塔22の塔頂へ供給した。
【0046】
尚、本同位体交換反応は大気圧で行い、交換反応塔内部温度は26〜28℃であった。全還流による12時間の同位体交換反応の後、ガス吸収塔34の塔底から第1交換反応塔22に供給される高シリカフルオロケイ酸水溶液と、第2交換反応塔22’の底部からガス発生塔27に供給される高シリカフルオロケイ酸水溶液とをそれぞれ約20mlをサンプルとして採取した。次いで、ポリビーカー中で純水約200mlに水酸化カリウム7.2gとフッ化カリウム7.4gを溶解し、氷水浴にて十分に冷却した。これに高シリカフルオロケイ酸水溶液サンプル30gを加え、高シリカフルオロケイ酸中のSiを全てケイフッ化カリウム(KSiF)とした。得られたケイフッ化カリウムの結晶をポアサイズ0.45μmのフッ素樹脂製メンブレンフィルターでろ過脱液した後乾燥し、同位体比測定用サンプルとした。二重収束ICP質量分析計で各測定用サンプルのシリコン同位体存在比を分析した。結果を表1に示す。
【0047】
前記表1から分かるように、高シリカフルオロケイ酸水溶液と四フッ化ケイ素との同位体交換反応により第2交換反応塔22’の底部から得られたサンプルではSiの軽質同位体が、第1交換反応塔22の塔頂部より得られたサンプルではSiの重質同位体がそれぞれ濃縮されていることが確認できた。
【0048】
(実施例2)
本実施例に於いては、図3に示す同位体濃縮装置の第1交換反応塔22及び第2交換反応塔22’に代えて、フッ素樹脂製の第1交換反応塔41〜第8交換反応塔48を8本直列に配置したものを用いて、実施例1と同様の実験を行った(図4参照)。各交換反応塔の内径はそれぞれ25mmであり、高さは3000mmとした。また、各交換反応塔の内部には、外径6mmのフッ素樹脂製ラシヒリングを充填高が2500mmになるように設けた。即ち、総充填高を20mとした。
【0049】
原料として、濃度2.75重量%の遊離フッ酸と、濃度54.65重量%の高シリカフルオロケイ酸(HSiF・SiF)とを含む高シリカフルオロケイ酸水溶液を用いた。この高シリカフルオロケイ酸水溶液を、第1交換反応塔41〜第7交換反応塔47の底部に液面がほぼ一定となるように仕込んだ。
【0050】
次に、第1交換反応塔41〜第7交換反応塔47のそれぞれに設けられている塔底ポンプ(図示せず)を用いて、高シリカフルオロケイ酸水溶液を、順次後段の第2交換反応塔42〜第8交換反応塔48のそれぞれに4.3ml/min(7.0g/min)の流量で供給開始した。第8交換反応塔48の底部から抜き出される高シリカフルオロケイ酸水溶液は、ガス発生塔27に供給した。ガス発生塔27には別途98重量%硫酸を7.2ml/min(13.2g/min)の流量で供給した。これにより、高シリカフルオロケイ酸水溶液の脱水分解を行い、四フッ化ケイ素を3.2g/minで発生させた。発生させた四フッ化ケイ素は濃硫酸を循環させたガス洗浄塔31を通し、随伴するフッ酸を除去した後、第8交換反応塔48へ供給した。このとき、第8交換反応塔48内でのガス流速は25mm/sであった。
【0051】
第8交換反応塔48に供給された四フッ化ケイ素は、第7交換反応塔47から順次前段の交換反応塔に供給された後、最終的に第1交換反応塔41の塔頂からガス吸収塔34へ供給した。ガス吸収塔34には、21.3重量%のフッ化水素酸を3.5ml/min(3.8g/min)で供給し、四フッ化ケイ素を吸収し飽和高シリカフルオロケイ酸水溶液とし、塔底からポンプにて第1交換反応塔41に供給される。ガス吸収塔34では、飽和高シリカフルオロケイ酸水溶液は20℃に冷却されて第1交換反応塔41に供給した。尚、運転圧力は大気圧で行った。
【0052】
全還流による12時間の同位体交換反応の後、ガス吸収塔34の塔底から第1交換反応塔41に供給される高シリカフルオロケイ酸水溶液と、第8交換反応塔48の底部からガス発生塔27に供給される高シリカフルオロケイ酸水溶液とをそれぞれサンプリングし、フッ化カリウム及び水酸化カリウムと反応させ、ケイフッ化カリウムとして回収し、同位体比測定用サンプルとした。本サンプルのSi同位体存在比を表面電離型質量分析計(TIMS)にて分析した。結果を表1に示す。
【0053】
[天然比からの同位対比のずれ]
下記表1より交換反応塔の塔長を実質的に延長すること、即ち分離段数を上げることにより、同位体分離能が向上していることが分かる。但し、実施例2では、実施例1に比べ四フッ化ケイ素ガスの流量を減らしている。即ち、運転時間が同一であるが気−液循環量が少ない為、塔長比と同位体濃縮度比は比例していない。
【0054】
【表1】

【0055】
(実施例3)
飽和高シリカフルオロケイ酸水溶液の気液接触によるSi同位体濃縮操作に於ける運転可能組成範囲を調べた。所定の濃度を有するフッ化水素酸に四フッ化ケイ素ガスを飽和になるまで吸収させ、飽和高シリカフルオロケイ酸水溶液の組成分析を行った。フッ化水素酸の濃度は、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、及び40重量%とした。各濃度のフッ化水素酸15.0gを仕込んだフッ素樹脂容器を氷水により外部より冷却しながら、閉鎖系に於いて0.05MPaGで四フッ化ケイ素を吸収させた。一般に、吸収を開始すると吸収熱により発熱し吸収液の温度が上昇するが、飽和濃度に達すると外部からの冷却により吸収液の温度は低下する。本実施例に於いては、高シリカフルオロケイ酸水溶液の温度が1.5℃になった時点で、十分飽和に達したとして操作を終了した。従って、例えば30重量%のフッ化水素酸に四フッ化ケイ素を飽和濃度まで吸収させた場合の1.5℃に於ける高シリカフルオロケイ酸水溶液の組成は、高シリカフルオロケイ酸濃度が56.91重量%、遊離フッ酸濃度が6.59重量%であった。
【0056】
前記操作に於いて、吸収初期液として用いたフッ化水素酸の濃度が20重量%、25重量%又は30重量%の場合には、結晶の析出が無く、液状の高シリカフルオロケイ酸水溶液が得られた。一方、フッ化水素酸濃度が10重量%又は15重量%の場合には、四フッ化ケイ素が加水分解され、白色の二酸化ケイ素が固体として析出した。また、フッ化水素酸濃度が35重量%又は40重量%の場合には、HSiF・4HOと推定される透明の結晶が析出し、吸収液はスラリーとなった。
【0057】
本実施例に係る飽和高シリカフルオロケイ酸水溶液に於いて、その高シリカフルオロケイ酸及び遊離フッ酸の濃度、当該飽和高シリカフルオロケイ酸中のSiを元に、HSiF・mHOとして計算した場合の水和水価数mの関係を図5に示す。
【0058】
(実施例4)
本実施例に於いては、実施例3で用いた高シリカフルオロケイ酸水溶液の温度を1.5℃から10℃に変更したこと以外は、実施例3と同様にして、飽和高シリカフルオロケイ酸水溶液の組成を調べた。その結果、例えば、30重量%のフッ化水素酸に四フッ化ケイ素を飽和濃度まで吸収させた場合の高シリカフルオロケイ酸水溶液の組成は、高シリカフルオロケイ酸濃度が55.40重量%、遊離フッ酸濃度が6.98重量%であった。結果を図5に示す。
【0059】
(実施例5)
本実施例に於いては、実施例3で用いた高シリカフルオロケイ酸水溶液の温度を1.5℃から20℃に変更したこと以外は、実施例3と同様にして、飽和高シリカフルオロケイ酸水溶液の組成を調べた。その結果、例えば、30重量%のフッ化水素酸に四フッ化ケイ素を飽和濃度まで吸収させた場合の高シリカフルオロケイ酸水溶液の組成は、高シリカフルオロケイ酸濃度が54.17重量%、遊離フッ酸濃度が7.32重量%であった。結果を図5に示す。
【0060】
[飽和高シリカフルオロケイ酸水溶液の組成]
前記図5の斜線で示した範囲、即ちフッ化ケイ酸水和物の水和水価数が4以下になると、HSiF・4HOなる結晶が析出した。従って、充填塔等に於いて、高シリカフルオロケイ酸水溶液と四フッ化ケイ素ガスとが気液接触した際に析出した結晶に起因して、塔内又は配管内が閉塞され、運転の継続が困難になる場合がある。
【0061】
一方、遊離フッ酸濃度が0重量%以下になるような場合には四フッ化ケイ素が加水分解され、二酸化ケイ素の固体が析出する。この為、遊離フッ酸濃度が0重量%以下になる領域も、本発明の同位体交換反応には適さない。また、運転温度が高くなれば、フッ化水素酸が吸収可能な四フッ化ケイ素量が減少する。この為、飽和高シリカフルオロケイ酸水溶液中の高シリカフルオロケイ酸濃度が低くなり、それに伴い遊離フッ酸濃度が高くなる。よって、本発明でのSi同位体濃縮操作に於ける高シリカフルオロケイ酸水溶液の組成範囲は、遊離フッ酸濃度が0重量%を越え、かつ、フッ化ケイ酸水和水として計算した場合に水和水価数が4を越える範囲が好ましいことが分かった。
【0062】
(実施例6)
フッ酸濃度20重量%のフッ化水素酸を吸収初期液として、1.5℃に於いて飽和濃度になるまで四フッ化ケイ素を吸収させ、飽和高シリカフルオロケイ酸水溶液を作製した。続いて、この飽和高シリカフルオロケイ酸水溶液を密閉系に於いて、外部から温水を用いて温め、20℃とした。この状態で、飽和高シリカフルオロケイ酸水溶液に於ける蒸気と液とを別々にサンプリングした。得られたサンプルをフッ化カリウム水溶液に添加し、サンプル中の四フッ化ケイ素及びケイフッ化水素をケイフッ化カリウムにした。
【0063】
得られたケイフッ化カリウムをろ別し、純水で余剰のフッ化カリウムを十分に水洗し除去した。その後、ケイフッ化カリウムを120℃で一晩乾燥させた。乾燥後のケイフッ化カリウムを、20℃に於ける分離係数測定用のサンプルとした。本サンプルのSi同位体存在比を、表面電離型質量分析計(TIMS)にて分析した。この分析結果より、各システムでの分離係数αを算出した。それらの値を対応する1.5℃の飽和高シリカフルオロケイ酸水溶液の組成と共に下記表2に示す。
【0064】
(実施例7)
本実施例に於いては、フッ酸濃度を25重量%に変更したこと以外は、前記実施例6と同様にして、ケイフッ化カリウムを得た。更に、このケイフッ化カリウムをサンプルとして、実施例6と同様に、28Siの分離係数αを算出した。結果を下記表2に示す。
【0065】
(実施例8)
本実施例に於いては、フッ酸濃度を30重量%に変更したこと以外は、前記実施例6と同様にして、ケイフッ化カリウムを得た。更に、このケイフッ化カリウムをサンプルとして、実施例6と同様に、28Siの分離係数αを算出した。結果を下記表2に示す。
【0066】
【表2】

【0067】
(実施例9)
二酸化ケイ素15.0gと47.1重量%のフッ化水素酸85.0gとを反応させ、10重量%の遊離フッ酸を含む36重量%のケイフッ化水素酸(共沸組成)を合成した。次に、該共沸組成のケイフッ化水素酸60.0gを仕込んだフッ素樹脂容器を、熱媒オイル(130℃)を用いて外部から加熱し、ケイフッ化水素酸を単蒸留した。発生した蒸気は冷却水を通したフッ素樹脂製凝縮器を通し、凝縮させて回収した。蒸留中、ケイフッ化水素酸の沸点は116.3℃付近でほぼ一定であった。蒸留後の凝縮液と釜残液との組成をアルカリ滴定で分析し、蒸留前の原料と比較して組成変化が無いことを確認した。
【0068】
続いて、凝縮液及び釜残液からそれぞれ一部をサンプリングし、フッ化カリウム水溶液に添加して、ケイフッ化カリウムとした。更に、ケイフッ化カリウムをろ別し、純水で余剰のフッ化カリウムを十分に水洗し除去した。その後、ケイフッ化カリウムを120℃で一晩乾燥させた。乾燥後のケイフッ化カリウムを、20℃に於ける分離係数測定用のサンプルとした。本サンプルのSi同位体存在比を、TIMSにて分析した。この分析結果より、各システムでの28Siの分離係数αを算出した。結果を実験に用いたケイフッ化水素酸の組成と共に下記表3に示す。
【0069】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施の一形態に係るシリコン同位体分離濃縮装置の一例を示すフローシートである。
【図2】本発明の他の実施の形態に係るシリコン同位体分離濃縮装置の一例を示すフローシートである。
【図3】本発明の実施例に係るシリコン同位体分離濃縮実験装置の説明のためのフローシートである。
【図4】本発明の実施例に係る他のシリコン同位体分離濃縮実験装置の説明のためのフローシートである。
【図5】本発明の実施例に係るシリコン同位体濃縮操作での飽和高シリカフルオロケイ酸水溶液組成範囲を説明するためのグラフである。
【符号の説明】
【0071】
1 交換反応塔
2、2’ 第1液路
3、3’ 第2液路
4 ガス発生装置
5、5’ 第1ガス路
6 第2ガス路
7、7’ 第3ガス路
8 ガス吸収装置
9 第4ガス路
10 蒸留塔
11 凝縮器
12 再熱器
13 凝縮液受槽
14 第3液路
21 四フッ化ケイ素
22 第1交換反応塔
22’ 第2交換反応塔
23 第1液路
24 第1ガス路
25 第2ガス路
25’ 第3ガス路
26 第2液路
26’ 第3液路
27 ガス発生塔
28 濃硫酸路
29 第4ガス路
30 廃硫酸
31 ガス洗浄塔
32 濃硫酸
33 軽質同位体濃縮四フッ化ケイ素
34 ガス吸収塔
35 フッ化水素酸
36 冷却器
37 重質同位体濃縮四フッ化ケイ素
41〜48 第1〜第8交換反応塔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
O−HSiF・nSiF(式中、n≧0である。)の2成分を少なくとも含む水溶液と、
前記SiFを含む気体との間での同位体交換により、前記Siの安定同位体を濃縮することを特徴とする同位体濃縮方法。
【請求項2】
前記水溶液に、前記SiFが飽和状態で溶解していることを特徴とする請求項1に記載の同位体濃縮方法。
【請求項3】
前記水溶液が共沸組成であることを特徴とする請求項1に記載の同位体濃縮方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−98388(P2007−98388A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242792(P2006−242792)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000162847)ステラケミファ株式会社 (81)
【Fターム(参考)】