説明

同心円状の中空陰極マグネトロンスパッタ源

これまで得られていたものよりも1または2桁低い圧力で高速の堆積を可能にする新規のスパッタ源が開示される。これにより、基板のイオンおよび電子損傷が低減されたより高密度の膜がもたらされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にスパッタ源、より詳細には、マグネトロンスパッタ源に関するとともに、物質の堆積、より詳細には、物質の堆積のためのスパッタ源の利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マグネトロン増強スパッタ源を使用する物質の堆積は、30年間以上使用されている。図1には、一般的な円形マグネトロンスパッタ源の断面図が示されている。スパッタ源100は真空チャンバ101内に配置されている。真空チャンバ101は、ポート109を介して真空ポンプ(図示省略)に取り付けられている。磁石106は2つの同心円状のリングに配列されて、鉄ヨーク107に取り付けられ、その結果、ターゲット108を貫通してターゲット表面109と大部分が平行110である強力な磁場104がもたらされる。ターゲット表面109と平行な強力な磁場110は、一般的に300ガウスを越えるが、ターゲット表面109近傍の気体イオンを捕捉し、それがスパッタリングに利用可能なイオンの桁違いの増加をもたらし、それに対応するスパッタ率の増加をもたらす。電源(図示省略)DCまたはRFは、チャンバ101からターゲット108に電気的に取り付けられている。気体、典型的にはアルゴンは、一般的に3×10E−3乃至1×10E−2トールの圧力に、MFC111を介して真空チャンバ101内に計量されながら供給される。電源が作動されて、電圧が、DC電源用に300−400ボルトに、RF電源用に1−10kWに上昇されて、それによりターゲット表面109のスパッタリングがもたらされる。ターゲット物質108は、基板105上に堆積され、その基板は、一般的に温度制御されているチャック03により定位置で保持される。そのような配置構成は、ターゲット108から基板表面105への物質の堆積速度を、磁石106無しのスパッタリングと比較して、10乃至100倍増加させる。
【0003】
その他の様々な磁石の配置構成がスパッタリングに使用されているが、すべて、ターゲットの表面を貫通する磁場と、ターゲット表面に平行な磁場とに基づくものである。図2には、中空陰極200として知られる一例が示されている。中空陰極200は、真空チャンバ101内に配置され、この真空チャンバは真空ポンプ(図示省略)に取り付けられ、図1と同じ気体注入ポート110を備える。中空陰極200は、真空チャンバ101内に配置され、この真空チャンバは真空ポンプ(図示省略)に取り付けられ、図1と同じ気体注入ポート110を備える。中空陰極200は筒状ハウジング202により構成される。磁石206の2つのリングが、鉄ヨーク207に取り付けられ、それによりターゲット208を通り抜ける強力な磁場204がもたらされている。DCまたはRF電源(図示省略)は、図1と同様に、真空チャンバ101からターゲット208に取り付けられている。アルゴンが、ポート110を介して真空チャンバ内101に導入され、3−10×10E−3トールの圧力に、MFC111により一般的に計量されながら供給される。電源が作動されて、DC電源用に300−400ボルト、RF電源用に一般に1−10kWとされる。磁界210がターゲット表面209と大部分が平行な位置で、スパッタリングが生じる。基板への堆積速度は、磁石無しの堆積速度の何倍も大きい。中空陰極200は、方向性スパッタリングをもたらし、アスペクト比、すなわちアスペクト比>5:1を有する特性で基板へのスパッタリングに使用される。
【0004】
よって、必要とされるのは、低圧力で高速の堆積を可能にするシステムおよび方法である。本発明は、このような必要性に対処するものである。
【発明の概要】
【0005】
これまで得られていたものよりも1または2桁低い圧力で高速の堆積を可能にする新規のスパッタ源が開示される。これにより、基板へのイオンおよび電子損傷が低減されたより高密度の膜がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、一般的な円形マグネトロンスパッタ源の断面の一例を示している。
【図2】図2は、中空陰極として知られる先行技術の一例を示している。
【図3】図3は、本発明を示すもので、円形ハウジングにより構成されるスパッタ源の断面図を示している。
【図4】図4は、本発明の平面図であり、六角形に配列された内側リングの磁石および外側リングの磁石を示している。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、一般にスパッタ源、より詳細には、マグネトロンスパッタ源に関するとともに、物質の堆積、より詳細には、物質の堆積のためのスパッタ源の利用に関するものである。以下の説明は、本発明を当業者が作成および使用することを可能にするために提示されるとともに、特許出願およびその要件との関連で提供されるものである。本明細書に記載の好ましい実施形態および基本原理および特徴に対する様々な変更が当業者にとって直ちに明らかなものとなるであろう。すなわち、本発明は、ここに示す実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に記載の原理および特徴と一致する最も広い範囲が与えられるべきである。
【0008】
本発明は、“同心円状の中空陰極スパッタ源”であり、図3に示されている。図3は、円形ハウジング302により構成されるスパッタ源300の断面図である。二列の磁石306,319の外側六角形リングが、鉄ヨーク302に取り付けられ、二列の磁石306,319の内側六角形リングが、鉄ヨーク302に取り付けられ、二列の磁石313,318の内側六角形リングも、鉄ヨーク302に取り付けられている。鉄ヨーク302は、すべての磁石からの磁束のための帰還路である。
【0009】
図4は、本発明の平面図であり、六角形に配列された磁石313の内側リングおよび磁石306の外側リングを示している。3の側部(サイド)、4の側部など、その他の構成も可能であるが、6の側部が好ましい構成である。磁石はすべて鉄ヨーク307に取り付けられている。
【0010】
図3を参照すると、磁場は3成分を有している。第1成分は、上列の外側磁石319から下列の外側磁石306に向かう、外側列のターゲット312を通り抜ける磁場314であり、その大部分が外側ターゲット表面309と平行で、表面309近傍においてイオンを捕捉し、外側ターゲット表面312から高速スパッタリングをもたらす。第2磁場316は、内側列の上側磁石318から内側列の下側磁石313に生成されて、内側ターゲット308を通り抜けるものであり、内側ターゲット表面322と大部分が平行で、この内側ターゲット表面322でイオンを捕捉し、内側ターゲット表面322から高速スパッタリングをもたらす。第3磁場304は、外側リングの上側磁石319から内側リングの磁石318に生成される。同様の磁場321が、外側リングの下側磁石306と内側リングの下側磁石313との間のキャビティ315の底部で生成される。磁場304および321はキャビティ315内でイオンおよび電子を捕捉し、その結果、キャビティ315内のイオン密度が増加するとともに、2×10E−5乃至1×10E−2トールの圧力、好ましくは5×10E−5乃至5×10E−4トールの圧力で、スパッタリングすることが可能になる。面線源100および中空陰極200のようなその他のマグネトロンスパッタ源は、3×10E−3乃至1×10E−2トールの圧力を必要とする。この同心円状の中空源300の低圧力は、スパッタリングプロセスで使用されて堆積膜内に捕捉されるアルゴンまたはその他の気体の少ない、より高密度のスパッタ膜をもたらす。また、低圧力は、気体分子とスパッタ物質との間の衝突を減少させる真空における平均自由行程を増加させ、それにより、基板表面における到達スパッタ物質の平均エネルギーが増加し、それが、堆積物質密度をも増加させる。キャビティ315内のイオンおよび電子を捕捉することの第2の利点は、基板表面105に到達するイオンおよび電子の数が、面線源100または中空陰極200と比較して大幅に減少することである。基板表面105に到達するイオンおよび電子の減少によって、基板表面105上に組み立てられた半導体デバイスに与えられるイオンおよび電子損傷が大幅に低減される。
【0011】
本明細書に示す実施形態に従って本発明を説明してきたが、当業者であれば、実施形態の変形例が存在し得るものであり、それら変形例が本発明の趣旨および範囲内にあることを容易に認識するであろう。例えば、スプライスはアルミニウムのような導電性材料から形成することが望ましいが、その表面に導電性能が加えられた非導電性材料を利用して形成することも可能であり、その使用も、本発明の趣旨および範囲内であろう。よって、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者によって多くの変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバ内の同心円状のスパッタ源であって、
外側リングにある2列の磁石と、内側リングにある2列の磁石とを備えることを特徴とする同心円状のスパッタ源。
【請求項2】
請求項1に記載の同心円状のスパッタ源において、
前記外側リングの2列の磁石および前記内側リングの2列の磁石は、上側のリングの磁極が内側リングの上側の磁石を引き寄せるとともに外側リングの磁石も引き寄せ、かつ内側リングの下側の磁石が外側リングの下側の磁石を引き寄せるように、配列されていることを特徴とする同心円状のスパッタ源。
【請求項3】
請求項1に記載の同心円状のスパッタ源において、
前記外側リングの磁石が、磁場の帰還路である第1鉄ヨークに取り付けられ、前記内側リングの磁石が、磁場の帰還路である第2鉄ヨークに取り付けられていることを特徴とする同心円状のスパッタ源。
【請求項4】
請求項1に記載の同心円状のスパッタ源において、
内側および外側の磁石のリングが、3またはそれ以上の側部からなることを特徴とする同心円状のスパッタ源。
【請求項5】
請求項1に記載の同心円状のスパッタ源において、
内側および外側の磁石のリングが、望ましくは6の側部からなることを特徴とする同心円状のスパッタ源。
【請求項6】
請求項1に記載の同心円状のスパッタ源において、
ターゲット表面における磁場が、200−1000ガウスであることを特徴とする同心円状のスパッタ源。
【請求項7】
請求項1に記載の同心円状のスパッタ源において、
ターゲット表面における磁場が、望ましくは300−400ガウスであることを特徴とする同心円状のスパッタ源。
【請求項8】
請求項1に記載の同心円状のスパッタ源において、
外側の磁石のリングから内側の磁石のリングに至る磁場が、300−1000ガウスであることを特徴とする同心円状のスパッタ源。
【請求項9】
請求項1に記載の同心円状のスパッタ源において、
外側の磁石のリングから内側の磁石のリングに至る磁場が、望ましくは300−400ガウスであることを特徴とする同心円状のスパッタ源。
【請求項10】
請求項1に記載の同心円状のスパッタ源において、
前記真空チャンバが、2×10E−5トールの低い圧力で動作することを特徴とする同心円状のスパッタ源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−515259(P2012−515259A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545340(P2011−545340)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/031550
【国際公開番号】WO2009/092097
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(511169748)4ディー−エス ピーティワイ リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】4D−S Pty Ltd.
【Fターム(参考)】