同時硬化されたゴム−熱可塑性エラストマー組成物
【課題】 単一の低温脆化点を有する熱可塑性エラストマー組成物を得る。
【解決手段】 熱可塑性エラストマー組成物は、ポリアミドのようなエンジニアリングサーモプラスチック可塑性相又はマトリックス及び、硬化されたアクリルゴムの架橋された相を有する。そのゴムは、カルボキシル、エポキシ、又はヒドロキシのような官能基が同じであるか又は異なる、少なくとも2つの官能化アクリルゴムを含有する。硬化剤は一般的に、ゴムの反応性の官能基との共有結合により反応する。その組成物は、動的に加硫され得て、そのゴムの1つがエチレン-アルキルアクリレート-不飽和カルボン酸のターポリマーである場合に、その組成物は単一の低温脆化点を有する。
【解決手段】 熱可塑性エラストマー組成物は、ポリアミドのようなエンジニアリングサーモプラスチック可塑性相又はマトリックス及び、硬化されたアクリルゴムの架橋された相を有する。そのゴムは、カルボキシル、エポキシ、又はヒドロキシのような官能基が同じであるか又は異なる、少なくとも2つの官能化アクリルゴムを含有する。硬化剤は一般的に、ゴムの反応性の官能基との共有結合により反応する。その組成物は、動的に加硫され得て、そのゴムの1つがエチレン-アルキルアクリレート-不飽和カルボン酸のターポリマーである場合に、その組成物は単一の低温脆化点を有する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する分野】本願発明は、熱可塑性エラストマー組成物及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】熱可塑性エラストマーは、熱可塑性とゴム状弾性の両方を示す物質であり、すなわち、その物質は、熱可塑性物質として加工され得るが、エラストマーと共通の物理的性質を有する。従来の加硫ゴムでは必要であった、時間を費やす硬化工程を用いることなく、押出、射出成形又は圧縮成形により熱可塑性エラストマーから造型品が形成され得る。さらに熱可塑性エラストマーは、再生する必要なく再加工でき、そして多くの熱可塑性エラストマーは熱溶接できる。
【0003】Patelに付与された欧州特許出願337,977号は、ポリアミド樹脂と共有結合で架橋された1つのアクリレートゴムとのブレンドを含む熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、単一の低温脆化点を有する熱可塑性エラストマー組成物を得ることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本願発明は、硬化剤の使用により架橋された少なくとも2つの官能化されたアクリルゴムを用いて製造される熱可塑性エラストマー組成物に関する。熱可塑性物質は、一般的にポリアミドであり、2つ以上の官能化されたアクリルゴムは、熱可塑性物質の存在下で動的に加硫され得る。その組成物は、単一の低温脆化点及び低い油膨潤指数(low oil swell value)を有する。
【0006】
【発明の実施の形態】少なくとも2つの官能化されたアクリルゴムのブレンドは典型的には、硬化剤及びポリアミド熱可塑性物質の存在下で共有結合で硬化される。官能化されたアクリルゴムの1つは、エチレンモノマー、アルキルアクリレートモノマー及び不飽和カルボン酸モノマーから誘導されるターポリマーである。その2つ以上の官能化されたアクリルゴムの官能基は同じであるか又は異なり、硬化すると、得られた熱可塑性エラストマー組成物は、予期に反して、−20℃以下のような単一の低温脆化点のみしか有しない。その熱可塑性エラストマー組成物は、一般的に商業的用途によく適合する。本明細書で用いられているように、「エラストマー物質」という用語は、ゴム状弾性を示す熱可塑性組成物をいう。
【0007】本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、一般的に、2つ以上の官能化アクリルゴム成分と相溶性であるポリアミドの可塑性の相又はマトリックスを含有する。
【0008】適する熱可塑性ポリアミド樹脂は、ポリマー鎖内に反復アミド単位を有するホモポリマー、コポリマー及びターポリマーを包含する熱可塑性の結晶質又は非晶質の高分子量固体ポリマーを含む。繊維形成のナイロン及び成形級のナイロンは共に適するポリアミド樹脂である。100℃より高い軟化点又は融点を有する市販のナイロンは、本発明の実施において有利に用いられ、160℃乃至280℃の軟化点又は融点を有するナイロンが好ましい。適するポリアミドの例は、ナイロン6、ポリプロピオラクタム(ナイロン3)、ポリエナントラクタム(ナイロン7)、ポリカプリルラクタム(ナイロン8)、ポリラウリルラクタム(ナイロン12)等のようなポリラクタム;ポリアミノウンデカン酸(ナイロン11)のようなアミノ酸のホモポリマー;ポリピロリジノン(ナイロン4);ナイロン6,6、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン4,6)、ポリテトラメチレンオキザルアミド(ナイロン4,2)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ナイロン6,9)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6,10)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6,1)、ポリヘキサメチレンドデカン酸(ナイロン6,12)等のような、ジカルボン酸とジアミンのコポリアミド;芳香族及び部分的芳香族ポリアミド;カプロラクタム及びヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6/6,6)のようなコポリアミドもしくはターポリアミド、例えばナイロン6/6,6/6,10;ポリエーテルポリアミドのようなブロックコポリマー;又はそれらの混合物である。適するポリアミドの他の例はEncyclopedia of Polymer Science and Technology、2版、11巻、315-476頁に記載されており、その記載を本明細書に援用する。本発明において用いられる好ましいポリアミドは、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6,6、ナイロン6,9、ナイロン6,10及びナイロン6/6,6である。ポリアミドは、一般的に約10,000乃至約50,000、望ましくは約30,000乃至約40,000の数平均分子量を有する。ポリアミドの量は、すべてのアクリルゴムの100重量部に基づいて、一般的に約25乃至約100重量部、望ましくは約30乃至約90重量部、そして好ましく約35乃至約75重量部である。
【0009】少なくとも2つの官能化されたアクリルゴム成分は、一般的に互いに相溶性であり、又、ポリアミドとも相溶性である。ニトリル基、例えばニトリルゴムのようなアクリロニトリル含有ゴムは本発明の組成物から除かれるか、又は実質的に本発明の組成物にはない(すなわち、総アクリルゴムの100重量部に基づいて5重量%未満、3重量%未満、1重量%未満そして好ましくは0重量%)。2つ以上の官能化されたアクリルゴム成分は、アルキル部分が1乃至10の炭素原子、望ましくは1乃至3の炭素原子、を有するアルキルアクリレートから誘導され得る。特定の例には、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチル-ヘキシルアクリレート等のポリマーが含まれる。他の適するアクリルゴムには、エチレンと上記のアルキルアクリレートのコポリマーが含まれ、極性と非極性の部分を有するゴムを製造するように、エチレンの量は、望ましくは、多く、コポリマーにおけるエチレン反復基及びアクリレート反復基の総モル数に基づいて、約10乃至約90モル%、望ましく約30乃至約70モル%そして好ましくは約40乃至約60モル%である。
【0010】2つ以上の官能化されたアクリルゴムの官能基は、酸、すなわち、カルボキシル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、エステル基等である。その2つ以上のアクリルゴムは、異なる官能基を有することができるか又は、同じ官能基を有することができる。そのような官能化されたアクリルゴム成分は、上記のアクリルポリマーの重合中に、種々のコモノマーを用いることにより、生成される。エステル基は、無水マレイン酸の半エステルのようなエステルモノマーを用いることにより付加されることができる。ヒドロキシル基を付加するために適するコモノマーには、約2乃至約20、望ましくは、2乃至約10の炭素原子を有する不飽和アルコールが含まれる。ヒドロキシ官能化アクリルゴムの特定の例は、日本ゼオンから入手されるハイテンプ(Hytemp)4404である。ペンダントのエポキシ基を付加するための適するコモノマーには、オキシラン基が約3乃至約10の炭素原子を有し、アクリレートのエステル基が1乃至10の炭素原子を有するアルキルであるオキシランアクリレートのような不飽和オキシラン類が含まれ、その特定の例はグリシジルアクリレートである。不飽和オキシラン類の他の群は、オキシラン基が約3乃至約10の炭素原子を有することができ、そしてアルケニル基が約3乃至約10の炭素原子を有することができる種々のオキシランアルケニルエーテルであり、特定の例はアリルグリシジルエーテルである。エポキシ官能化アクリルゴムの例には、日本ゼオンから入手されるアクリレートAR-53及びアクリレートAR-31等が含まれる。ペンダントのカルボン酸基を付加するための適するコモノマーには、2乃至約15の炭素原子、そして望ましくは2乃至10の炭素原子を有する不飽和酸が含まれる。酸官能化アクリルゴムの例には、デュポンから入手されるバマック(Vamac)Gのようなエチレン-アルキルアクリレート-不飽和カルボン酸ターポリマー及び、日本ゼオンにより入手される種々のカルボキシル官能化アクリルゴム等が含まれる。各アクリルゴム中の官能基の量は、そのアクリルゴムの、すなわちそのアクリルゴム中の総反復基の量の、約10モル%以下、望ましくは約0.25乃至約6モル%、好ましくは約0.5乃至約4モル%であることができる。
【0011】予期に反して、エチレン-アルキルアクリレート-不飽和カルボン酸ターポリマーが用いられるときに、2つ以上のアクリルゴムブレンドは1つの、すなわち単一の低温脆化点(LTB)しか生ぜず、そして熱可塑性エラストマーに良好な低温特性を付与することが見出だされた。単一のLTBは、ASTM試験番号D-746により、一般的に−20℃以下であり、望ましくは−30℃以下であり、好ましくは−40℃以下である。さらにそのようなターポリマーブレンドは良好な耐油性、すなわち低油膨潤指数を有する。油膨潤指数は、ASTM D-471(125℃/70時間、ASTM基準油#3を用いたときの%)により、一般的に約5乃至約30又は40であり、望ましくは、約5乃至約15、20又は25である。その油膨潤指数は、アクリルターポリマーのみの油膨潤指数よりも、少なくとも10%低く、望ましくは少なくとも20又は30%低く、好ましくは少なくとも40又は50%低い。低油膨潤指数と単一の低温脆化点の組み合わせは、その熱可塑性エラストマー組成物を、商業的に望ましい最終製品において用いることができるので非常に望ましい。例えば、種々のシール類、ガスケット類等では、低温の気候の中で用いられ得るので、単一の低温脆化点、すなわち、−20℃以下の低温脆化点とともに低温膨潤指数、例えば40以下の低油膨潤指数を有することが望ましい。
【0012】従って、官能化されたアクリルゴム成分の1つとしてのエチレン-アルキルアクリレート-不飽和カルボン酸ターポリマーの使用は非常に好ましい。そのようなターポリマーは、ターポリマーにおける反復基の総数に基づいて、一般的に約35乃至約80モル%、そして望ましくは約45乃至約55モル%のエチレン反復基、一般的に約0.5乃至約10モル%、望ましくは約2乃至約8モル%の不飽和カルボン酸反復基、そして一般的に約10乃至約60モル%、望ましくは約37乃至約50モル%のアルキルアクリレート反復基を含む。酸反復基は、一般的にアクリル酸又はメタクリル酸から誘導される。デュポンにより製造されているバマック(Vamac)G、バマックLS等のような特定の市販の化合物は、一般的に約50モル%のエチレン、約45モル%のメチルアクリレート及び約5モル%のアクリル酸を有する。単一の低温脆化点及び良好な油膨潤指数の非常に望ましい性質を得るためにはターポリマーの量は、一般的に重要である。従って、用いられる前記ターポリマーの量は、すべてのアクリルゴムの合計100重量部に基づいて約25乃至約75重量部、望ましくは約40乃至約60重量部、そして好ましくは約45乃至約55重量部の量である。
【0013】本発明の重要な点は、適する熱可塑性エラストマー特性を得るために、1つ以上の硬化剤を有効量使用(すなわち、官能化されたアクリルゴムの同時硬化)することである。そのような有効な量により、少なくとも約60又は80%、望ましくは少なくとも約85%そして好ましくは少なくとも約90%、95%そして100%、すなわち完全硬化、の硬化度がもたらされる。硬化度は、20℃におけるトルエン中で不溶なアクリルゴムの量により容易に決定される。適する架橋剤は、一般的に反応性官能基との共有結合により、2つ以上の官能化されたアクリルゴムを硬化する。本発明の概念によれば、アミン類のような窒素含有架橋剤、好ましくは、ジアミン類のような2つの窒素を含有する架橋剤を用いることは一般的に重要である。適する架橋剤の例には、種々のマレイミド、トルエンジイソシアネートのような種々のジイソシアネート、種々のイソシアネート末端ポリエステルプレポリマー及び、メチレンジアニリンのような種々のポリアミンが含まれる。その他に、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルのような種々のエポキシド等が用いられ得る。
【0014】非常に好ましい硬化剤は、アミン末端ポリエーテル類である。そのようなアミンの特定の種類は、式、
【化1】
(式中、nは約2乃至約100の整数、望ましくは約2乃至約70の整数、好ましくは約2乃至約5の整数であり、各「アルキレン」は個々に、2乃至約10の炭素原子を有し、2つの炭素原子の場合、すなわちエチレン、又は3つの炭素原子の場合、すなわちプロピレンが好ましい)により表わされる化合物である。「アルキレン」基は分枝鎖であっても直鎖であってもよい。そのようなアミン末端ポリエーテルの特定例には、テキサコ(Texaco)により生産されているジファミン(Jeffamine)D-シリーズが含まれ、それらは、式、
【化2】
を有する。
【0015】種々のタイプの市販のジェファミン D-シリーズ製品には下記の製品が含まれる。
【0016】
【表1】
【0017】本発明における使用に適する他のタイプのアミン末端ポリエーテルは、式、
【化3】
(式中、各「アルキレン」は個々に先に定義された通りであり、i+kは約2乃至25の整数、望ましく約2乃至約10の整数、好ましくは約2乃至約5の整数であり、jで表わされる反復単位の数は、約1乃至約200の整数、望ましくは約2乃至約150の整数、好ましくは約2乃至約10の整数である)により表わされる化合物である。そのような適するポリエーテルの例には、テキサコにより生産されているジファミン(Jeffamine) ED-シリーズが含まれ、それらは、式、
【化4】
を有する。
【0018】そのような特定のジファミン EDシリーズポリマーには、下記の製品が含まれる。
【0019】
【表2】
【0020】本発明において用いられることができる適するアミン末端ポリエーテルの他のタイプは、一般的に式、
【化5】
(式中、各「アルキレン」は個々に先に定義した通りであり、すなわち、2乃至約10の炭素原子を有し、2又は3の炭素原子を有するのが好ましく、x+y+zの整数の総数は約2乃至約100、望ましくは約2乃至約10、そして好ましくは約5乃至約10の整数であり、Rは水素又は脂肪族基であり、望ましい脂肪族基はアルキルである)により表わされる化合物である。Rがアルキルである場合、約1乃至約5の炭素原子を有し、1又は2の炭素原子を有するのが好ましい。
【0021】そのような適するポリエーテルには、テキサコにより生産されているジェファミン(Jeffamine) Tシリーズが含まれ、それらは、式、
【化6】
を有する。
【0022】そのような特定のジファミン T-シリーズの例には、下記の製品が含まれる。
【0023】
【表3】
【0024】他の好ましい種類の硬化剤は、種々のジアミン、例えば種々のジアミンカルバメートである。そのような硬化剤の例には、デュポンにより生産されているジアク(Diak) NBR 1のようなヘキサメチレンジアミンカルバメートが含まれる。
【0025】硬化剤の量は、2つ以上の官能化されたアクリルゴムすべての100重量部に基づいて、一般的に約0.5乃至約12重量部、望ましくは約1乃至約10重量部であり、しばしば約3乃至約5重量部である。官能化されたゴムが異なる官能基を有している場合、ゴムの自己硬化がいくらか起こり、従って、約1乃至約4重量部のような、より少ない量の硬化剤しか必要でない。
【0026】硬化剤とともに、2つ以上の官能化されたアクリルゴムの硬化時間を低減させるために、任意に、促進剤が用いられ得る。適する促進剤には、官能化されたゴム化合物を架橋しない、脂肪酸の種々の塩が含まれる。しばしば、そのような化合物は又、潤滑剤としての役目もする。それらの脂肪酸塩は、一般的に、12又は14から20又は25までの炭素原子を有する。適するカチオンには、種々の遷移金属、例えば周期表の11族及び12族と同様に、アルカリ土類金属と同様に、アルカリ金属、すなわち、周期表の1族及び2族が含まれる。促進剤の特定の例には、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等のような脂肪酸のナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等の塩及びそれらの混合物が含まれ、ステアリン酸カリウム及びステアリン酸マグネシウムが好ましい。促進剤の量は、少なく、すべての官能化されたアクリルゴムの100重量部に基づいて、10重量部まで変わり得て、望ましくは約0.1乃至約4又は5重量部、しばしば、約0.5乃至約1.5重量部である。
【0027】本発明の組成物には、又、種々の添加剤を従来の量又は適する量で含むことができる。そのような添加剤には、種々の酸化防止剤、種々のヒンダードアミンのような種々の紫外線安定剤、種々の加工助剤、二酸化チタンのような種々の着色剤又は顔料、クレー、シリカ、カーボンブラック、タルク、酸化亜鉛等のような種々の補強剤又は充填剤、種々の難燃剤及び、種々のフタレート、例えばジオクチルフタレートと同様に非反応性のスルホンアミド及びトリメリテートのような種々の可塑剤が含まれる。
【0028】本発明の同時硬化熱可塑性ゴム組成物は、動的加硫により硬化される。動的加硫は、硬化温度で、高剪断下で本発明の組成物のアクリルゴムを加硫することを意味する。結果として、アクリルゴムは、熱可塑性ナイロンポリマーとブレンドしたときに一般的に架橋される。従って、アクリルゴムは同時に架橋され、熱可塑性物質、例えばポリアミドのマトリックス内に「ミクロゲル」の微細粒子として分散されるか又は可塑性相とともに、架橋された共連続性相を形成されるか又はそれらの組み合わせである。高剪断にする装置には、ブラベンダーミキサー、バンバリーミキサー、2軸スクリュー押出機を含む押出機等が含まれる。本発明の組成物の特有な性質は、エラストマーゴム部分が架橋されているがその組成物はそれにもかかわらず、押出、射出成形、圧縮成形等のような従来の熱可塑性物質加工技術及び装置により加工及び再加工され得ることである。本発明の熱可塑性エラストマーの利点は、フラッシング、スクラップ等を回収し再加工することができる。しかし、2つ以上のアクリルポリマーは相分離されておらず、例えば、内相と、グラフト結合モノマーを含有するか又は含有しない外相を含まない。すなわち、本発明は、そのような幾何学的(例えば、外殻-内コア)なアクリル化合物を実質的に含まない(すなわち、すべてのアクリルゴムの100重量部当り、そのような化合物が5重量%未満、3重量%未満、1重量%未満であり、そして好ましくはそのような化合物を含まない)。
【0029】動的加硫の正確な方法は変わり得るが、一般的には、少なくとも2つの官能化されたアクリルゴム成分、硬化剤、種々の添加剤及び熱可塑性物質を、ブラベンダーミキサーのような高剪断混合装置に入れ、その組成物を熱可塑性物質の融点よりも高い温度に加熱し、そして混合する。その混合温度は、一般的に、180℃乃至約260℃であり、望ましくは、約220℃乃至約250℃である。トルクカーブが横ばい状態(実質的な硬化)になるまでその組成物を混合し、さらに短時間、例えば約2分間混合する。混合し、硬化した後に、熱可塑性エラストマー組成物をブラベンダーミキサーから取り出し、パンケーキ状に冷圧、続いて、試験のためのプラックに圧縮成形した。
【0030】本発明の熱可塑性エラストマーの適する用途には、シール、タービン、ホース、ガスケット、ダイヤフラム、ベロー等のような乗り物(例えば自動車)部品として有用な成形され、押出され又は造型された物品が含まれる。
【0031】本発明は、本発明を例示するための、しかし、本発明の範囲を限定するためではない下記の実施例により、より理解されるであろう。
【0032】
【実施例】実施例種々のナイロンと、そのうちの1つはエチレン-アルキルアクリレート-不飽和カルボン酸モノマーのターポリマーである2つの、酸官能化アクリルゴムとのブレンドをつくり、そして硬化した。それらの生成物の物理的特性とともに配合を表4に示す。この表において、比較例1、2、3及び4は対照例である。
【0033】
【表4】
【0034】表4から明らかなように、エチレン-アルキルアクリレート-不飽和カルボン酸ターポリマーを他のアクリルゴムとともに用いたとき、すなわち、実施例1、2及び3では、−40℃以下の単一の低温脆化点が達成された。比較例4のように、エチレン-アルキルアクリレート-不飽和カルボン酸ターポリマーが単独で用いられた場合、低温脆化点は達成されたが、油膨潤指数、すなわち27、は適する実際的な用途には高すぎた。一方、実施例1、2及び3では、適する油膨潤指数を有した。エチレン-アルキルアクリレート-不飽和カルボン酸ターポリマーではない1つの官能化されたアクリルゴムのみが用いられたとき、すなわち、比較例1、2及び3の場合、適する低温脆化点は得られなかった。従って、このデーターは、良好な工業用の低温脆化点特性を達成するためには、エチレン-アルキルアクリレート-不飽和カルボン酸ターポリマーと組み合わせて第二の官能化されたアクリルゴムが必要であることを示している。
【0035】上記の組成物は、ブラベンダーミキサーを用いて製造された。前記ターポリマーとともに前記の官能化されたアクリルゴム及び添加剤を混練し、そして次に添加されたナイロン6と溶融混合した。熱可塑性ナイロンが溶融したら、硬化剤を添加し、トルクカーブが横ばい状態になるまで混合した。次に混合をさらに1分間又は2分間続けた。
【0036】動的加硫ゴム組成物をパンケーキ状にプレスし、プラックに圧縮成形した。種々の物理的試験を行い、それらの性質を表4の下段に示した。100%モジュラスは、100%の伸び率における引張応力である。その伸び率は、最初の長さの%として示されている。油膨潤指数は、ASTM D471により測定され、そして、最初の質量の%として表わされた、熱油中に浸漬した後の試験片の質量における測定された増加である。−40℃における低温脆化点はASTM試験 D746によった。
【0037】
【表5】
【0038】表4に示された化合物について記載された方法で上記の組成物を製造した、動的加硫ゴム組成物をプレスし、そしてプラックに成形し、物理的試験を行った。試験物質の性質も、表5に示す。表5から明らかなように、実施例4乃至6は良好な油膨潤指数を与えた。さらに実施例4乃至6は、2つの異なるタイプのアクリルゴムを用いたが、単一の低温脆化点を有した。
【0001】
【発明の属する分野】本願発明は、熱可塑性エラストマー組成物及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】熱可塑性エラストマーは、熱可塑性とゴム状弾性の両方を示す物質であり、すなわち、その物質は、熱可塑性物質として加工され得るが、エラストマーと共通の物理的性質を有する。従来の加硫ゴムでは必要であった、時間を費やす硬化工程を用いることなく、押出、射出成形又は圧縮成形により熱可塑性エラストマーから造型品が形成され得る。さらに熱可塑性エラストマーは、再生する必要なく再加工でき、そして多くの熱可塑性エラストマーは熱溶接できる。
【0003】Patelに付与された欧州特許出願337,977号は、ポリアミド樹脂と共有結合で架橋された1つのアクリレートゴムとのブレンドを含む熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、単一の低温脆化点を有する熱可塑性エラストマー組成物を得ることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本願発明は、硬化剤の使用により架橋された少なくとも2つの官能化されたアクリルゴムを用いて製造される熱可塑性エラストマー組成物に関する。熱可塑性物質は、一般的にポリアミドであり、2つ以上の官能化されたアクリルゴムは、熱可塑性物質の存在下で動的に加硫され得る。その組成物は、単一の低温脆化点及び低い油膨潤指数(low oil swell value)を有する。
【0006】
【発明の実施の形態】少なくとも2つの官能化されたアクリルゴムのブレンドは典型的には、硬化剤及びポリアミド熱可塑性物質の存在下で共有結合で硬化される。官能化されたアクリルゴムの1つは、エチレンモノマー、アルキルアクリレートモノマー及び不飽和カルボン酸モノマーから誘導されるターポリマーである。その2つ以上の官能化されたアクリルゴムの官能基は同じであるか又は異なり、硬化すると、得られた熱可塑性エラストマー組成物は、予期に反して、−20℃以下のような単一の低温脆化点のみしか有しない。その熱可塑性エラストマー組成物は、一般的に商業的用途によく適合する。本明細書で用いられているように、「エラストマー物質」という用語は、ゴム状弾性を示す熱可塑性組成物をいう。
【0007】本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、一般的に、2つ以上の官能化アクリルゴム成分と相溶性であるポリアミドの可塑性の相又はマトリックスを含有する。
【0008】適する熱可塑性ポリアミド樹脂は、ポリマー鎖内に反復アミド単位を有するホモポリマー、コポリマー及びターポリマーを包含する熱可塑性の結晶質又は非晶質の高分子量固体ポリマーを含む。繊維形成のナイロン及び成形級のナイロンは共に適するポリアミド樹脂である。100℃より高い軟化点又は融点を有する市販のナイロンは、本発明の実施において有利に用いられ、160℃乃至280℃の軟化点又は融点を有するナイロンが好ましい。適するポリアミドの例は、ナイロン6、ポリプロピオラクタム(ナイロン3)、ポリエナントラクタム(ナイロン7)、ポリカプリルラクタム(ナイロン8)、ポリラウリルラクタム(ナイロン12)等のようなポリラクタム;ポリアミノウンデカン酸(ナイロン11)のようなアミノ酸のホモポリマー;ポリピロリジノン(ナイロン4);ナイロン6,6、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン4,6)、ポリテトラメチレンオキザルアミド(ナイロン4,2)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ナイロン6,9)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6,10)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6,1)、ポリヘキサメチレンドデカン酸(ナイロン6,12)等のような、ジカルボン酸とジアミンのコポリアミド;芳香族及び部分的芳香族ポリアミド;カプロラクタム及びヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6/6,6)のようなコポリアミドもしくはターポリアミド、例えばナイロン6/6,6/6,10;ポリエーテルポリアミドのようなブロックコポリマー;又はそれらの混合物である。適するポリアミドの他の例はEncyclopedia of Polymer Science and Technology、2版、11巻、315-476頁に記載されており、その記載を本明細書に援用する。本発明において用いられる好ましいポリアミドは、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6,6、ナイロン6,9、ナイロン6,10及びナイロン6/6,6である。ポリアミドは、一般的に約10,000乃至約50,000、望ましくは約30,000乃至約40,000の数平均分子量を有する。ポリアミドの量は、すべてのアクリルゴムの100重量部に基づいて、一般的に約25乃至約100重量部、望ましくは約30乃至約90重量部、そして好ましく約35乃至約75重量部である。
【0009】少なくとも2つの官能化されたアクリルゴム成分は、一般的に互いに相溶性であり、又、ポリアミドとも相溶性である。ニトリル基、例えばニトリルゴムのようなアクリロニトリル含有ゴムは本発明の組成物から除かれるか、又は実質的に本発明の組成物にはない(すなわち、総アクリルゴムの100重量部に基づいて5重量%未満、3重量%未満、1重量%未満そして好ましくは0重量%)。2つ以上の官能化されたアクリルゴム成分は、アルキル部分が1乃至10の炭素原子、望ましくは1乃至3の炭素原子、を有するアルキルアクリレートから誘導され得る。特定の例には、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチル-ヘキシルアクリレート等のポリマーが含まれる。他の適するアクリルゴムには、エチレンと上記のアルキルアクリレートのコポリマーが含まれ、極性と非極性の部分を有するゴムを製造するように、エチレンの量は、望ましくは、多く、コポリマーにおけるエチレン反復基及びアクリレート反復基の総モル数に基づいて、約10乃至約90モル%、望ましく約30乃至約70モル%そして好ましくは約40乃至約60モル%である。
【0010】2つ以上の官能化されたアクリルゴムの官能基は、酸、すなわち、カルボキシル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、エステル基等である。その2つ以上のアクリルゴムは、異なる官能基を有することができるか又は、同じ官能基を有することができる。そのような官能化されたアクリルゴム成分は、上記のアクリルポリマーの重合中に、種々のコモノマーを用いることにより、生成される。エステル基は、無水マレイン酸の半エステルのようなエステルモノマーを用いることにより付加されることができる。ヒドロキシル基を付加するために適するコモノマーには、約2乃至約20、望ましくは、2乃至約10の炭素原子を有する不飽和アルコールが含まれる。ヒドロキシ官能化アクリルゴムの特定の例は、日本ゼオンから入手されるハイテンプ(Hytemp)4404である。ペンダントのエポキシ基を付加するための適するコモノマーには、オキシラン基が約3乃至約10の炭素原子を有し、アクリレートのエステル基が1乃至10の炭素原子を有するアルキルであるオキシランアクリレートのような不飽和オキシラン類が含まれ、その特定の例はグリシジルアクリレートである。不飽和オキシラン類の他の群は、オキシラン基が約3乃至約10の炭素原子を有することができ、そしてアルケニル基が約3乃至約10の炭素原子を有することができる種々のオキシランアルケニルエーテルであり、特定の例はアリルグリシジルエーテルである。エポキシ官能化アクリルゴムの例には、日本ゼオンから入手されるアクリレートAR-53及びアクリレートAR-31等が含まれる。ペンダントのカルボン酸基を付加するための適するコモノマーには、2乃至約15の炭素原子、そして望ましくは2乃至10の炭素原子を有する不飽和酸が含まれる。酸官能化アクリルゴムの例には、デュポンから入手されるバマック(Vamac)Gのようなエチレン-アルキルアクリレート-不飽和カルボン酸ターポリマー及び、日本ゼオンにより入手される種々のカルボキシル官能化アクリルゴム等が含まれる。各アクリルゴム中の官能基の量は、そのアクリルゴムの、すなわちそのアクリルゴム中の総反復基の量の、約10モル%以下、望ましくは約0.25乃至約6モル%、好ましくは約0.5乃至約4モル%であることができる。
【0011】予期に反して、エチレン-アルキルアクリレート-不飽和カルボン酸ターポリマーが用いられるときに、2つ以上のアクリルゴムブレンドは1つの、すなわち単一の低温脆化点(LTB)しか生ぜず、そして熱可塑性エラストマーに良好な低温特性を付与することが見出だされた。単一のLTBは、ASTM試験番号D-746により、一般的に−20℃以下であり、望ましくは−30℃以下であり、好ましくは−40℃以下である。さらにそのようなターポリマーブレンドは良好な耐油性、すなわち低油膨潤指数を有する。油膨潤指数は、ASTM D-471(125℃/70時間、ASTM基準油#3を用いたときの%)により、一般的に約5乃至約30又は40であり、望ましくは、約5乃至約15、20又は25である。その油膨潤指数は、アクリルターポリマーのみの油膨潤指数よりも、少なくとも10%低く、望ましくは少なくとも20又は30%低く、好ましくは少なくとも40又は50%低い。低油膨潤指数と単一の低温脆化点の組み合わせは、その熱可塑性エラストマー組成物を、商業的に望ましい最終製品において用いることができるので非常に望ましい。例えば、種々のシール類、ガスケット類等では、低温の気候の中で用いられ得るので、単一の低温脆化点、すなわち、−20℃以下の低温脆化点とともに低温膨潤指数、例えば40以下の低油膨潤指数を有することが望ましい。
【0012】従って、官能化されたアクリルゴム成分の1つとしてのエチレン-アルキルアクリレート-不飽和カルボン酸ターポリマーの使用は非常に好ましい。そのようなターポリマーは、ターポリマーにおける反復基の総数に基づいて、一般的に約35乃至約80モル%、そして望ましくは約45乃至約55モル%のエチレン反復基、一般的に約0.5乃至約10モル%、望ましくは約2乃至約8モル%の不飽和カルボン酸反復基、そして一般的に約10乃至約60モル%、望ましくは約37乃至約50モル%のアルキルアクリレート反復基を含む。酸反復基は、一般的にアクリル酸又はメタクリル酸から誘導される。デュポンにより製造されているバマック(Vamac)G、バマックLS等のような特定の市販の化合物は、一般的に約50モル%のエチレン、約45モル%のメチルアクリレート及び約5モル%のアクリル酸を有する。単一の低温脆化点及び良好な油膨潤指数の非常に望ましい性質を得るためにはターポリマーの量は、一般的に重要である。従って、用いられる前記ターポリマーの量は、すべてのアクリルゴムの合計100重量部に基づいて約25乃至約75重量部、望ましくは約40乃至約60重量部、そして好ましくは約45乃至約55重量部の量である。
【0013】本発明の重要な点は、適する熱可塑性エラストマー特性を得るために、1つ以上の硬化剤を有効量使用(すなわち、官能化されたアクリルゴムの同時硬化)することである。そのような有効な量により、少なくとも約60又は80%、望ましくは少なくとも約85%そして好ましくは少なくとも約90%、95%そして100%、すなわち完全硬化、の硬化度がもたらされる。硬化度は、20℃におけるトルエン中で不溶なアクリルゴムの量により容易に決定される。適する架橋剤は、一般的に反応性官能基との共有結合により、2つ以上の官能化されたアクリルゴムを硬化する。本発明の概念によれば、アミン類のような窒素含有架橋剤、好ましくは、ジアミン類のような2つの窒素を含有する架橋剤を用いることは一般的に重要である。適する架橋剤の例には、種々のマレイミド、トルエンジイソシアネートのような種々のジイソシアネート、種々のイソシアネート末端ポリエステルプレポリマー及び、メチレンジアニリンのような種々のポリアミンが含まれる。その他に、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルのような種々のエポキシド等が用いられ得る。
【0014】非常に好ましい硬化剤は、アミン末端ポリエーテル類である。そのようなアミンの特定の種類は、式、
【化1】
(式中、nは約2乃至約100の整数、望ましくは約2乃至約70の整数、好ましくは約2乃至約5の整数であり、各「アルキレン」は個々に、2乃至約10の炭素原子を有し、2つの炭素原子の場合、すなわちエチレン、又は3つの炭素原子の場合、すなわちプロピレンが好ましい)により表わされる化合物である。「アルキレン」基は分枝鎖であっても直鎖であってもよい。そのようなアミン末端ポリエーテルの特定例には、テキサコ(Texaco)により生産されているジファミン(Jeffamine)D-シリーズが含まれ、それらは、式、
【化2】
を有する。
【0015】種々のタイプの市販のジェファミン D-シリーズ製品には下記の製品が含まれる。
【0016】
【表1】
【0017】本発明における使用に適する他のタイプのアミン末端ポリエーテルは、式、
【化3】
(式中、各「アルキレン」は個々に先に定義された通りであり、i+kは約2乃至25の整数、望ましく約2乃至約10の整数、好ましくは約2乃至約5の整数であり、jで表わされる反復単位の数は、約1乃至約200の整数、望ましくは約2乃至約150の整数、好ましくは約2乃至約10の整数である)により表わされる化合物である。そのような適するポリエーテルの例には、テキサコにより生産されているジファミン(Jeffamine) ED-シリーズが含まれ、それらは、式、
【化4】
を有する。
【0018】そのような特定のジファミン EDシリーズポリマーには、下記の製品が含まれる。
【0019】
【表2】
【0020】本発明において用いられることができる適するアミン末端ポリエーテルの他のタイプは、一般的に式、
【化5】
(式中、各「アルキレン」は個々に先に定義した通りであり、すなわち、2乃至約10の炭素原子を有し、2又は3の炭素原子を有するのが好ましく、x+y+zの整数の総数は約2乃至約100、望ましくは約2乃至約10、そして好ましくは約5乃至約10の整数であり、Rは水素又は脂肪族基であり、望ましい脂肪族基はアルキルである)により表わされる化合物である。Rがアルキルである場合、約1乃至約5の炭素原子を有し、1又は2の炭素原子を有するのが好ましい。
【0021】そのような適するポリエーテルには、テキサコにより生産されているジェファミン(Jeffamine) Tシリーズが含まれ、それらは、式、
【化6】
を有する。
【0022】そのような特定のジファミン T-シリーズの例には、下記の製品が含まれる。
【0023】
【表3】
【0024】他の好ましい種類の硬化剤は、種々のジアミン、例えば種々のジアミンカルバメートである。そのような硬化剤の例には、デュポンにより生産されているジアク(Diak) NBR 1のようなヘキサメチレンジアミンカルバメートが含まれる。
【0025】硬化剤の量は、2つ以上の官能化されたアクリルゴムすべての100重量部に基づいて、一般的に約0.5乃至約12重量部、望ましくは約1乃至約10重量部であり、しばしば約3乃至約5重量部である。官能化されたゴムが異なる官能基を有している場合、ゴムの自己硬化がいくらか起こり、従って、約1乃至約4重量部のような、より少ない量の硬化剤しか必要でない。
【0026】硬化剤とともに、2つ以上の官能化されたアクリルゴムの硬化時間を低減させるために、任意に、促進剤が用いられ得る。適する促進剤には、官能化されたゴム化合物を架橋しない、脂肪酸の種々の塩が含まれる。しばしば、そのような化合物は又、潤滑剤としての役目もする。それらの脂肪酸塩は、一般的に、12又は14から20又は25までの炭素原子を有する。適するカチオンには、種々の遷移金属、例えば周期表の11族及び12族と同様に、アルカリ土類金属と同様に、アルカリ金属、すなわち、周期表の1族及び2族が含まれる。促進剤の特定の例には、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等のような脂肪酸のナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等の塩及びそれらの混合物が含まれ、ステアリン酸カリウム及びステアリン酸マグネシウムが好ましい。促進剤の量は、少なく、すべての官能化されたアクリルゴムの100重量部に基づいて、10重量部まで変わり得て、望ましくは約0.1乃至約4又は5重量部、しばしば、約0.5乃至約1.5重量部である。
【0027】本発明の組成物には、又、種々の添加剤を従来の量又は適する量で含むことができる。そのような添加剤には、種々の酸化防止剤、種々のヒンダードアミンのような種々の紫外線安定剤、種々の加工助剤、二酸化チタンのような種々の着色剤又は顔料、クレー、シリカ、カーボンブラック、タルク、酸化亜鉛等のような種々の補強剤又は充填剤、種々の難燃剤及び、種々のフタレート、例えばジオクチルフタレートと同様に非反応性のスルホンアミド及びトリメリテートのような種々の可塑剤が含まれる。
【0028】本発明の同時硬化熱可塑性ゴム組成物は、動的加硫により硬化される。動的加硫は、硬化温度で、高剪断下で本発明の組成物のアクリルゴムを加硫することを意味する。結果として、アクリルゴムは、熱可塑性ナイロンポリマーとブレンドしたときに一般的に架橋される。従って、アクリルゴムは同時に架橋され、熱可塑性物質、例えばポリアミドのマトリックス内に「ミクロゲル」の微細粒子として分散されるか又は可塑性相とともに、架橋された共連続性相を形成されるか又はそれらの組み合わせである。高剪断にする装置には、ブラベンダーミキサー、バンバリーミキサー、2軸スクリュー押出機を含む押出機等が含まれる。本発明の組成物の特有な性質は、エラストマーゴム部分が架橋されているがその組成物はそれにもかかわらず、押出、射出成形、圧縮成形等のような従来の熱可塑性物質加工技術及び装置により加工及び再加工され得ることである。本発明の熱可塑性エラストマーの利点は、フラッシング、スクラップ等を回収し再加工することができる。しかし、2つ以上のアクリルポリマーは相分離されておらず、例えば、内相と、グラフト結合モノマーを含有するか又は含有しない外相を含まない。すなわち、本発明は、そのような幾何学的(例えば、外殻-内コア)なアクリル化合物を実質的に含まない(すなわち、すべてのアクリルゴムの100重量部当り、そのような化合物が5重量%未満、3重量%未満、1重量%未満であり、そして好ましくはそのような化合物を含まない)。
【0029】動的加硫の正確な方法は変わり得るが、一般的には、少なくとも2つの官能化されたアクリルゴム成分、硬化剤、種々の添加剤及び熱可塑性物質を、ブラベンダーミキサーのような高剪断混合装置に入れ、その組成物を熱可塑性物質の融点よりも高い温度に加熱し、そして混合する。その混合温度は、一般的に、180℃乃至約260℃であり、望ましくは、約220℃乃至約250℃である。トルクカーブが横ばい状態(実質的な硬化)になるまでその組成物を混合し、さらに短時間、例えば約2分間混合する。混合し、硬化した後に、熱可塑性エラストマー組成物をブラベンダーミキサーから取り出し、パンケーキ状に冷圧、続いて、試験のためのプラックに圧縮成形した。
【0030】本発明の熱可塑性エラストマーの適する用途には、シール、タービン、ホース、ガスケット、ダイヤフラム、ベロー等のような乗り物(例えば自動車)部品として有用な成形され、押出され又は造型された物品が含まれる。
【0031】本発明は、本発明を例示するための、しかし、本発明の範囲を限定するためではない下記の実施例により、より理解されるであろう。
【0032】
【実施例】実施例種々のナイロンと、そのうちの1つはエチレン-アルキルアクリレート-不飽和カルボン酸モノマーのターポリマーである2つの、酸官能化アクリルゴムとのブレンドをつくり、そして硬化した。それらの生成物の物理的特性とともに配合を表4に示す。この表において、比較例1、2、3及び4は対照例である。
【0033】
【表4】
【0034】表4から明らかなように、エチレン-アルキルアクリレート-不飽和カルボン酸ターポリマーを他のアクリルゴムとともに用いたとき、すなわち、実施例1、2及び3では、−40℃以下の単一の低温脆化点が達成された。比較例4のように、エチレン-アルキルアクリレート-不飽和カルボン酸ターポリマーが単独で用いられた場合、低温脆化点は達成されたが、油膨潤指数、すなわち27、は適する実際的な用途には高すぎた。一方、実施例1、2及び3では、適する油膨潤指数を有した。エチレン-アルキルアクリレート-不飽和カルボン酸ターポリマーではない1つの官能化されたアクリルゴムのみが用いられたとき、すなわち、比較例1、2及び3の場合、適する低温脆化点は得られなかった。従って、このデーターは、良好な工業用の低温脆化点特性を達成するためには、エチレン-アルキルアクリレート-不飽和カルボン酸ターポリマーと組み合わせて第二の官能化されたアクリルゴムが必要であることを示している。
【0035】上記の組成物は、ブラベンダーミキサーを用いて製造された。前記ターポリマーとともに前記の官能化されたアクリルゴム及び添加剤を混練し、そして次に添加されたナイロン6と溶融混合した。熱可塑性ナイロンが溶融したら、硬化剤を添加し、トルクカーブが横ばい状態になるまで混合した。次に混合をさらに1分間又は2分間続けた。
【0036】動的加硫ゴム組成物をパンケーキ状にプレスし、プラックに圧縮成形した。種々の物理的試験を行い、それらの性質を表4の下段に示した。100%モジュラスは、100%の伸び率における引張応力である。その伸び率は、最初の長さの%として示されている。油膨潤指数は、ASTM D471により測定され、そして、最初の質量の%として表わされた、熱油中に浸漬した後の試験片の質量における測定された増加である。−40℃における低温脆化点はASTM試験 D746によった。
【0037】
【表5】
【0038】表4に示された化合物について記載された方法で上記の組成物を製造した、動的加硫ゴム組成物をプレスし、そしてプラックに成形し、物理的試験を行った。試験物質の性質も、表5に示す。表5から明らかなように、実施例4乃至6は良好な油膨潤指数を与えた。さらに実施例4乃至6は、2つの異なるタイプのアクリルゴムを用いたが、単一の低温脆化点を有した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリアミド熱可塑性相及び、1つが、エチレン-アルキルアクリレート-不飽和カルボン酸ターポリマーであるターポリマーである、硬化剤を用いて動的に加硫された少なくとも2つの官能化されたアクリルゴムを含む架橋されたゴム相を含み、単一の低温脆化点を有する熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】 前記ポリアミドの量が、前記の少なくとも2つの官能化されたアクリルゴム100重量部当り約25乃至約100重量部であり、前記ターポリマーが約35乃至約80モル%のエチレン、約10乃至約60モル%のアルキルアクリレート及び約0.5乃至約10モル%の不飽和カルボン酸を有し、前記の官能化されたアクリルゴムの少なくとも1つが、アルキル基が1乃至10の炭素原子を有するアルキルアクリレートから誘導される、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】 前記の官能化されたアクリルゴムの官能基がカルボキシル、エポキシ、ヒドロキシル又はエステル又はそれらの組み合わせであり、前記硬化剤の量が、前記の少なくとも2つの官能化されたアクリルゴム100重量部当り約0.5乃至約12重量部であり、前記硬化剤は窒素含有硬化剤を含む、請求項2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】 前記ポリアミドの量が、前記の少なくとも2つのアクリルゴム100部当り約35乃至約75重量部であり、前記アルキルアクリレートのアルキル基が1乃至3の炭素原子を有し、前記ターポリマーが約45乃至約55モル%のエチレン、約37乃至約50モル%のアルキルアクリレート及び約2乃至約8モル%の不飽和カルボン酸を有し、前記ターポリマーの量が、前記の少なくとも2つの官能化されたアクリルゴム100重量部当り約40乃至約60重量部である、請求項3に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】 前記熱可塑性エラストマー組成物が、前記ターポリマーの油膨潤指数よりも低い油膨潤指数を有する、請求項4に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項6】 前記の単一の低温脆化点が−20℃以下である、請求項2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項7】 前記の単一の低温脆化点が−40℃以下であり、前記ポリアミドが、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6,6、ナイロン6,9、ナイロン6,10、ナイロン6/6,6又はそれらの組み合わせであり、前記硬化剤がアミン末端ポリエーテル又はジアミンカルバメートである、請求項4に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項8】 少なくとも1つがエチレン-アルキルアクリレート-不飽和カルボン酸ターポリマーである、少なくとも2つの、官能基含有アクリルゴムをポリアミド及び硬化剤とブレンドする工程、前記アクリルゴムを動的に加硫し、単一の低温脆化点を有する熱可塑性エラストマー組成物を生成する工程を含む、熱可塑性エラストマー組成物を製造する方法。
【請求項9】 熱可塑性相及びゴム相を有する前記熱可塑性エラストマー組成物を生成することを含み、前記ポリアミドの量が、前記の少なくとも2つの、官能基含有アクリルゴム100重量部当り約25乃至約100重量部であり、前記ターポリマーの量が、前記の少なくとも2つの、官能基含有アクリルゴム100重量部当り約25乃至約75重量部であり、前記アクリルゴムの1つが、アルキル部分が1乃至10の炭素原子を有する官能化されたアルキルアクリレートであり、前記ターポリマーが、約35乃至約80モル%のエチレン、約10乃至約60モル%のアルキルアクリレート及び約0.5乃至約10モル%の不飽和カルボン酸を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】 前記の単一の低温脆化点が−20℃以下であり、前記硬化剤の量が、前記の少なくとも2つの、官能基含有アクリルゴム100重量部当り約0.5乃至約12重量部である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】 前記熱可塑性エラストマー組成物が、前記ターポリマーの油膨潤指数よりも少なくとも30%低い油膨潤指数を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】 前記の単一の低温脆化点が−40℃以下であり、前記アルキルアクリレートのアルキル部分が1乃至3の炭素原子を有しており、前記の官能基含有アクリルゴムの官能基がカルボキシル、エポキシ、ヒドロキシル、エステル又はそれらの組み合わせである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】 前記ポリアミドの量が、前記の少なくとも2つの、官能基含有アクリルゴム100重量部当り約35乃至約75重量部であり、前記ターポリマーの量が、前記の少なくとも2つのアクリルゴム100重量部当り約45乃至約55重量部である、請求項12に記載の方法。
【請求項1】 ポリアミド熱可塑性相及び、1つが、エチレン-アルキルアクリレート-不飽和カルボン酸ターポリマーであるターポリマーである、硬化剤を用いて動的に加硫された少なくとも2つの官能化されたアクリルゴムを含む架橋されたゴム相を含み、単一の低温脆化点を有する熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】 前記ポリアミドの量が、前記の少なくとも2つの官能化されたアクリルゴム100重量部当り約25乃至約100重量部であり、前記ターポリマーが約35乃至約80モル%のエチレン、約10乃至約60モル%のアルキルアクリレート及び約0.5乃至約10モル%の不飽和カルボン酸を有し、前記の官能化されたアクリルゴムの少なくとも1つが、アルキル基が1乃至10の炭素原子を有するアルキルアクリレートから誘導される、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】 前記の官能化されたアクリルゴムの官能基がカルボキシル、エポキシ、ヒドロキシル又はエステル又はそれらの組み合わせであり、前記硬化剤の量が、前記の少なくとも2つの官能化されたアクリルゴム100重量部当り約0.5乃至約12重量部であり、前記硬化剤は窒素含有硬化剤を含む、請求項2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】 前記ポリアミドの量が、前記の少なくとも2つのアクリルゴム100部当り約35乃至約75重量部であり、前記アルキルアクリレートのアルキル基が1乃至3の炭素原子を有し、前記ターポリマーが約45乃至約55モル%のエチレン、約37乃至約50モル%のアルキルアクリレート及び約2乃至約8モル%の不飽和カルボン酸を有し、前記ターポリマーの量が、前記の少なくとも2つの官能化されたアクリルゴム100重量部当り約40乃至約60重量部である、請求項3に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】 前記熱可塑性エラストマー組成物が、前記ターポリマーの油膨潤指数よりも低い油膨潤指数を有する、請求項4に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項6】 前記の単一の低温脆化点が−20℃以下である、請求項2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項7】 前記の単一の低温脆化点が−40℃以下であり、前記ポリアミドが、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6,6、ナイロン6,9、ナイロン6,10、ナイロン6/6,6又はそれらの組み合わせであり、前記硬化剤がアミン末端ポリエーテル又はジアミンカルバメートである、請求項4に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項8】 少なくとも1つがエチレン-アルキルアクリレート-不飽和カルボン酸ターポリマーである、少なくとも2つの、官能基含有アクリルゴムをポリアミド及び硬化剤とブレンドする工程、前記アクリルゴムを動的に加硫し、単一の低温脆化点を有する熱可塑性エラストマー組成物を生成する工程を含む、熱可塑性エラストマー組成物を製造する方法。
【請求項9】 熱可塑性相及びゴム相を有する前記熱可塑性エラストマー組成物を生成することを含み、前記ポリアミドの量が、前記の少なくとも2つの、官能基含有アクリルゴム100重量部当り約25乃至約100重量部であり、前記ターポリマーの量が、前記の少なくとも2つの、官能基含有アクリルゴム100重量部当り約25乃至約75重量部であり、前記アクリルゴムの1つが、アルキル部分が1乃至10の炭素原子を有する官能化されたアルキルアクリレートであり、前記ターポリマーが、約35乃至約80モル%のエチレン、約10乃至約60モル%のアルキルアクリレート及び約0.5乃至約10モル%の不飽和カルボン酸を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】 前記の単一の低温脆化点が−20℃以下であり、前記硬化剤の量が、前記の少なくとも2つの、官能基含有アクリルゴム100重量部当り約0.5乃至約12重量部である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】 前記熱可塑性エラストマー組成物が、前記ターポリマーの油膨潤指数よりも少なくとも30%低い油膨潤指数を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】 前記の単一の低温脆化点が−40℃以下であり、前記アルキルアクリレートのアルキル部分が1乃至3の炭素原子を有しており、前記の官能基含有アクリルゴムの官能基がカルボキシル、エポキシ、ヒドロキシル、エステル又はそれらの組み合わせである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】 前記ポリアミドの量が、前記の少なくとも2つの、官能基含有アクリルゴム100重量部当り約35乃至約75重量部であり、前記ターポリマーの量が、前記の少なくとも2つのアクリルゴム100重量部当り約45乃至約55重量部である、請求項12に記載の方法。
【公開番号】特開2000−34403(P2000−34403A)
【公開日】平成12年2月2日(2000.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−202705
【出願日】平成10年7月2日(1998.7.2)
【出願人】(591162239)アドバンスド エラストマー システムズ,エル.ピー. (14)
【住所又は居所原語表記】388 South Main Street,Akron,Ohio 44311−1059,United Stetes of America
【Fターム(参考)】
【公開日】平成12年2月2日(2000.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成10年7月2日(1998.7.2)
【出願人】(591162239)アドバンスド エラストマー システムズ,エル.ピー. (14)
【住所又は居所原語表記】388 South Main Street,Akron,Ohio 44311−1059,United Stetes of America
【Fターム(参考)】
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