説明

同時複数サンプルウェル適用におけるマイクロ波エネルギーの制御および緩和

【課題】制御された節度のある温度で比較的脆い組成物の複数の小サンプル(96ウェルマイクロタイタープレートなど)に適切にマイクロ波を付与するシステムを提供する。
【解決手段】マイクロ波を利用したハイスループット化学プロセスのためのシステムであって、該システムはマイクロ波放射の供給源、該供給源と連通するマイクロ波空洞、該空洞中のマイクロ波透過性材料から形成されそして複数のサンプルウェル67を含むマイクロタイタープレート66、少なくとも4つの壁の内側および該マイクロタイタープレート66のベースによって規定される流体チャンバー、およびマイクロ波が該供給源から該空洞に付与されるとき該マイクロタイタープレート66中の個々のウェルの間でより均一なマイクロ波場を生成するのを支援する該チャンバー中のマイクロ波節制流体を備えるシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小容量複数ウェルサンプルプレートを用いる複数サンプル技法と組み合わせたマイクロ波を利用した化学に関する。特に、本発明は、生物科学分野における同時複数プロセスまたは反応を開始、加速、または制御するためのマイクロ波の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波を利用した化学は、化学反応を開始、加速、またはそうでなければ好都合に影響もしくは制御するための化学組成物へのマイクロ波の適用をいう。当初開発されたように、マイクロ波を利用した化学は、代表的には、消化、乾燥減量(loss−on−drying)、および抽出のような粗野な適用のために用いられていた。これらの技法−これらは、継続して商業的に重要であり−マイクロ波は、適切なサンプル材料または溶媒と組み合わさって、目的のプロセスを加速する相対的に迅速な加熱を生成する。このような適用はまた、しばしば高い圧力を生成し、そして適切にシールされた容器中で実施される。マイクロ波は、多くの組成物(特に極性分子)と直接相互作用し、この加熱は非常に迅速に起こり、そして大部分の事例では、伝導および対流に依存する技法のようなその他の加熱技法よりかなりより迅速である。
【0003】
より最近では、マイクロ波を利用した化学は、ペプチド合成(例えば、特許文献1);有機合成(例えば、特許文献2);および水素添加(例えば、「マイクロ波を利用した水素添加機器および方法」について2006年3月7日に出願された出願番号第11/370,139号)を含むより小さな、そしてより精巧な反応に適用されている。
【0004】
多くのその他のタイプの反応は、しばしば、小スケールで実施され、そして特に生物科学の領域でマイクロ波加速の候補である。これらは(制限されないで)、酵素消化、診断試験、薬物候補アッセイ、抗体および抗原反応、細胞を基礎にするアッセイ、および血液化学診断を含む。このような反応は、代表的には(しかし、排他的ではなく)、ほぼ体温(すなわち、37℃;98.6゜F)と約50゜〜60℃(122゜〜140゜F)との間の温度で実施される。目的の組成物はまた、比較的こわれやすく、そしてしばしばこの範囲の外側の過度の温度で分解または変性し得る。
【0005】
しかし、マイクロ波を利用した化学は、非常に小さなサンプルの同時複数加熱のためにはむしろ迅速には採用されていない。マイクロ波は比較的大きな波長を有する(約1ミリメートルと1メートルとの間)。結果として、より小さな適用では(例えば、ベンチトップ)、空洞(cavity)中に伝搬されるマイクロ波は、複数の別個のモードを生成する傾向にあり、そしてそれ故、サンプルを不均一に加熱し得る。例えば、粗野な化学反応および食物調製では、これは、マイクロ波供給源に対するサンプルの配向を単に周期的に変えることにより取り扱われる。マイクロ波化学機器において、および家庭用マイクロ波オーブンにおいての両方で、そのようにするために最も一般的な技法は、マイクロ波空洞中でターンテーブル上で目的の品目を単に回転することである。
【0006】
コンビナトリアル化学および平行合成のようなハイスループット技法の最近の進歩は、複数のより大きな反応と同じ様式で複数の小さな反応を加速することに興味を駆り立てた(ここで、用語「大きな」は、サンプルの量および容器のサイズをいう)。
【0007】
多くの(しかしすべてではない)平行または同時プロセスの共通の−必ずしも排他的ではない−フォーマットは、96ウェルのマイクロタイタープレート(または「マイクロプレート」)である。市販され入手可能な多くのマイクロタイタープレートは、Society for Biomolecular Sciences(SBS)規格のフットプリントの要求に合致している。Society for Biomolecular Sciences、Published Standards、2004年1月9日、http://www.sbsonline.org/msdc/approved.php(2007年3月6日にアクセスされた)。
【0008】
これらの規格は、マイクロプレートの正確な寸法および許容誤差を提示している。より一般的に表わされる標準のマイクロタイタープレートは、約5インチ(128ミリメートル)長さ、約3.4インチ(85mm)幅、約0.6インチ(14.4mm)高さであり、そして各々8ウェルの12列で配列された96のウェルを含む(正確な寸法は、上記SBS規格で与えられている)。各ウェルは、代表的には、その形状に依存して、約0.2と2.5ミリリットル(ml)との間を保持する。これは、有用なサイズおよびフォーマットであるので、多くのロボットツール(これは、ハイスループット技法のスピードおよび正確さを増す)が、この標準の96ウェルプレートを取り扱うために設計されている(またはいくつかの事例では、96ウェルプレートを取り扱うことに制限されている)。
【0009】
さらなる背景として、いくつかのハイスループット技法は、384ウェルプレートで実施され、そしていくつかは1536ウェルプレートであり、これら両方はまた、広く市販され入手可能である。
【0010】
従って、96ウェル(またはその他の寸法)マイクロプレートで反応を開始または加速するためにマイクロ波エネルギーを用いることは、多くのコンビナトリアル、平行合成またはその他のハイスループットプロセスのスピードおよび効率を増し得る。
【0011】
しかし、上記で提示されたように、マイクロ波放射の特定の局面は、個々の小サンプルに均一にマイクロ波を付与することを困難にする。次に、この困難性は、マイクロ波を利用した化学のためよりもむしろその他の目的(例えば、ハイスループットのロボット取り扱い)のために設計されている特定の幾何学的形状のパターンで配列される複数の小サンプルで構成される。特に、不均一マイクロ波加熱は、所定のライブラリー中の個々のサンプルを、同一であるよりはむしろ異なる反応条件に曝すことによって、コンビナトリアル化学または平行合成の目的を阻止し得る。ハイスループット、平行、またはコンビナトリアルプロセスにマイクロ波化学を取り込むための努力は、今日まで、希望されるより首尾良くいっていない。非特許文献1。
【0012】
先の試みは、個々のサンプルウェルに個々のアンテナを取り込むこと(特許文献3);マイクロタイタープレートに緊密に近接する受容体(susceptor)としてのマイクロ波吸収性物質の使用(特許文献4および5)、周縁熱リザーバーを備えたマイクロタイタープレート(特許文献6)または組み合わせた加熱システムを備えたマイクロタイタープレート(特許文献7)を含む。幾人かの研究者は、標準的なマイクロ波オーブン中のマイクロタイタープレートにおける成功したタンパク質アッセイを報告している(特許文献8)が、この報告された成功は、商業的に再現性はない。マイクロタイタープレートを用いるマイクロ波技法はまた、DNA増幅のため(特許文献9;および非特許文献2)、およびELISAインキュベーションのために(非特許文献3)試みられている。
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0260059号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0039838号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0173604号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0209303号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0232820号明細書
【特許文献6】米国特許第6,676,905号明細書
【特許文献7】米国特許第6,940,055号明細書
【特許文献8】米国特許第5,478,748号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2005/0112581号明細書
【非特許文献1】E.g.、Barer、マイクロタイターシステムにおける高分子の染色に関する異なる固定手順の影響、Histochemical Journal 19、671〜675(1987)
【非特許文献2】Sandford、血清からの小ゲノムDNAフラグメントの直接PCR、Biotechniques 23:890〜892(1997年11月)
【非特許文献3】ELISAインキュベーション時間は、2.45GHzマイクロ波によって低減され得る、J.Clin.Lab.Immunol(1991)34、87〜96
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、マイクロ波を利用した化学のスピードは、そうでなければ、ハイスループット、または平行プロセスに対して興味をそそるが、制御された節度のある温度で比較的脆い組成物の複数の小サンプル(96ウェルマイクロタイタープレートなど)に適切にマイクロ波を付与するための実際的な必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための、本発明は、例えば以下の項目を提供する。
【0015】
(項目1)マイクロ波を利用したハイスループット化学プロセスのためのシステムであって;そのシステムは、
マイクロ波放射の供給源;
その供給源と連通するマイクロ波空洞;
その空洞中のマイクロ波透過性材料から形成され、そして複数のサンプルウェルを含むマイクロタイタープレート;
少なくとも4つの壁の内側およびそのマイクロタイタープレートのベースによって規定される流体チャンバー;および
マイクロ波がその供給源からその空洞に付与されるとき、そのマイクロタイタープレート中の個々のウェルの間でより均一なマイクロ波場を生成するのを支援するそのチャンバー中のマイクロ波節制流体、を備える、システム。
【0016】
(項目2)マイクロ波の付与の間に、上記マイクロタイタープレートを先に能動的に冷却するための手段をさらに備える、項目1に記載のマイクロ波システム。
【0017】
(項目3)上記冷却手段が、接触冷却デバイスである、項目2に記載のマイクロ波システム。
【0018】
(項目4)上記冷却手段が、上記空洞中の上記マイクロタイタープレートに対し、そしてそのマイクロタイタープレートを横切る冷却ガスの流れを向ける、項目2に記載のマイクロ波システム。
【0019】
(項目5)上記マイクロタイタープレート中の組成物の温度、および上記マイクロ波節制流体の温度からなる群から選択される温度を測定するために位置決めされる温度検出器をさらに備える、項目2に記載のマイクロ波システム。
【0020】
(項目6)測定された温度に応答して上記マイクロ波供給源を制御するために、そのマイクロ波供給源、上記温度検出器、および上記冷却手段と連通するプロセッサーをさらに備える、項目5に記載のマイクロ波システム。
【0021】
(項目7)上記マイクロ波節制流体が、水を含む、項目1に記載のマイクロ波システム。
【0022】
(項目8)上記マイクロ波節制流体が、イオン溶液を含む、項目1に記載のマイクロ波システム。
【0023】
(項目9)上記マイクロタイタープレートが、上記ウェルの周りで上記マイクロ波節制流体を循環する手段を含む、項目1に記載のマイクロ波システム。
【0024】
(項目10)上記循環する手段が、磁気攪拌器である、項目9に記載のマイクロ波システム。
【0025】
(項目11)上記チャンバーが上記流体で充填され、そしてその流体が上記ウェルの外面に接触する、項目1に記載のマイクロ波システム。
【0026】
(項目12)上記チャンバーが、上記ウェルの外面と接触することを避ける上記流体の量で部分的に充填される、項目1に記載のマイクロ波システム。
【0027】
(項目13)96ウェルマイクロタイタープレートを含む、項目1に記載のマイクロ波システム。
【0028】
(項目14)上記マイクロタイタープレートが、384ウェルマイクロタイタープレートおよび1536ウェルマイクロタイタープレートからなる群から選択される、項目1に記載のマイクロ波システム。
【0029】
(項目15)上記流体チャンバーが、上記ウェルの輪郭、上記4つの壁の内側、上記ベースおよび上記マイクロタイタープレートの上面によって規定される、項目1に記載のマイクロ波システム。
【0030】
(項目16)マイクロ波を利用したハイスループット化学の方法であって:
マイクロ波エネルギーを、複数ウェルプレートの複数のサンプルウェル中の複数の組成物に付与する工程;を包含し、
そのウェルの下にあり、そしてそのウェル中の組成物から分離され、そして付与されたマイクロ波振動数とカップルするそのウェル中の組成物とは異なってカップルするそのプレート中のある部分で液体を循環することによりそのマイクロ波を節制する、方法。
【0031】
(項目17)上記マイクロ波を付与する工程が、マイクロ波供給源からのエネルギーを、上記複数ウェルプレートを保持するマイクロ波空洞に向けることを包含する、項目16に記載の方法。
【0032】
(項目18)約300メガヘルツと3ギガヘルツとの間の振動数でマイクロ波エネルギーを付与する工程を包含する、項目16に記載の方法。
【0033】
(項目19)2450メガヘルツの振動数でマイクロ波エネルギーを付与する工程を包含する、項目16に記載の方法。
【0034】
(項目20)水を循環することにより上記マイクロ波を節制する工程を包含する、項目16に記載の方法。
【0035】
(項目21)イオン溶液を循環することにより上記マイクロ波を節制する工程を包含する、項目16に記載の方法。
【0036】
(項目22)上記循環する流体の温度をモニターする工程、およびそのモニターされた温度に応答してマイクロ波エネルギーの付与を節制する工程を包含する、項目16に記載の方法。
【0037】
(項目23)上記ウェル中の1つ以上の組成物の温度をモニターする工程、およびそのモニターされたウェル温度に応答してマイクロ波エネルギーの付与を節制する工程を包含する、項目16に記載の方法。
【0038】
(項目24)上記複数ウェルプレートに対し、かつ横切って冷却ガス流れを向けることにより上記循環する液体の温度を制御することを包含する、項目16に記載の方法。
【0039】
(項目25)上記複数ウェルプレートに対し、かつ横切って冷却ガス流れを向けることにより上記ウェル中の組成物の温度を制御することを包含する、項目16に記載の方法。
【0040】
(項目26)上記循環する流体の温度、および1つ以上の上記ウェル中の組成物の温度からなる群から選択されるモニターした温度に応答して、冷却ガス流れを向けることを包含する、項目24に記載の方法。
【0041】
(項目27)上記循環する流体の温度、および1つ以上の上記ウェル中の組成物の温度からなる群から選択されるモニターした温度に応答して、冷却ガス流れを向けることを包含する、項目25に記載の方法。
【0042】
(項目28)上記マクイロ波エネルギーを、マイクロタイタープレート中の少なくとも96のウェル中の複数の組成物に付与することを包含する、項目16に記載の方法。
【0043】
(項目29)上記マクイロ波エネルギーを、マイクロタイタープレート中の少なくとも384のウェル中の複数の組成物に付与することを包含する、項目16に記載の方法。
【0044】
(項目30)上記マクイロ波エネルギーを、マイクロタイタープレート中の少なくとも1536のウェル中の複数の組成物に付与することを包含する、項目16に記載の方法。
【0045】
(項目31)上記空洞中で液体を循環する工程が、上記複数のウェルに隣接する上記複数ウェルプレート中のチャンバーを、上記マイクロ波を節制する液体で充填することを含む、項目16に記載の方法。
【0046】
(項目32)ハイスループットマイクロ波を利用した化学のためのマイクロタイタープレートであって:そのマイクロタイタープレートが、
そのプレートの領域設置面積を規定するベース;
そのプレートの高さを規定する、そのベースにほぼ垂直である4つの連続する壁;
その4つの壁の頂部でそのベースの上でかつそのベースに平行に延びる上面;
その上面からそのベースに向かって延びる少なくとも96のサンプルウェル;
そのベース、そのウェル、その上面およびそのウェルが、マイクロ波放射に対し実質的に透明である材料から形成され;そして
少なくともその4つの壁の内側およびそのベースによって規定される流体チャンバーを備えている、マイクロタイタープレート。
【0047】
(項目33)上記チャンバー中に、マイクロ波振動数における電磁放射を節制する流体を含む、項目32に記載のマイクロタイタープレート。
【0048】
(項目34)上記流体が、約300メガヘルツと3ギガヘルツとの間の振動数を有するマイクロ波を節制する、項目33に記載のマイクロタイタープレート。
【0049】
(項目35)上記流体が、2450メガヘルツの振動数を有するマイクロ波を節制する、項目33に記載のマイクロタイタープレート。
【0050】
(項目36)上記プレートが:ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ガラス、およびガラス被覆ポリマーからなる群から選択される材料から形成される、項目32に記載のマイクロタイタープレート。
【0051】
(項目37)少なくとも384のウェルを備える、項目32に記載のマイクロタイタープレート。
【0052】
(項目38)少なくとも1536のウェルを備える、項目32に記載のマイクロタイタープレート。
【0053】
(項目39)上記ベースおよび上記ウェルが、96ウェルプレートのANSI/SBS規格に一致する、項目32に記載のマイクロタイタープレート。
【0054】
(項目40)各々が12ウェルの8つの列で配列される96のウェルを備える、項目32に記載のマイクロタイタープレート。
【0055】
(項目41)上記ベースが、矩形を規定する、項目32に記載のマイクロタイタープレート。
【0056】
(項目42)上記マイクロ波節制流体が、水である、項目32に記載のマイクロタイタープレート。
【0057】
(項目43)上記マイクロ波節制流体が、水性イオン溶液である、項目32に記載のマイクロタイタープレート。
【0058】
(項目44)上記流体チャンバーが、上記4つの壁の内側、上記ベース、上記ウェルの輪郭によって、および上記上面によって規定される、項目32に記載のマイクロタイタープレート。
【0059】
(要旨)
1つの局面では、本発明は、マイクロ波を利用したハイスループット化学プロセスのためのシステムである。このシステムは、マイクロ波放射の供給源、この供給源と連通するマイクロ波空洞、およびこの空洞中マイクロタイタープレートを含む。このマイクロタイタープレートは、マイクロ波透過性材料から形成され、そして複数のサンプルウェルを含む。流体チャンバーは、4つの壁の内側、ベース、上記ウェルの輪郭によって、そして上記マイクロタイタープレートの上面によって規定される。上記チャンバー中のマイクロ波節制流体が、マイクロ波が上記供給源から上記空洞中に付与されるとき、上記マイクロタイタープレート中の個々のウェルの間により均一なマイクロ波場を支援して生成する。
【0060】
別の局面では、本発明は、マイクロ波を利用したハイスループット化学の方法である。この方法は、マイクロ波エネルギーを、複数ウェルプレートの複数のサンプルウェル中の複数の組成物に付与する工程を含み、その一方、上記ウェルの下にあり、そして上記ウェル中の組成物から分離され、そして付与されたマイクロ波振動数とカップルする上記ウェル中の組成物とは異なってカップルする上記プレート中の部分中の液体を循環することにより上記マイクロ波を節制する。
【0061】
なお別の局面では、本発明は、ハイスループットマイクロ波を利用した化学のためのマイクロタイタープレートである。このマイクロタイタープレートは、このプレートの領域設置面積を規定するベース、このプレートの高さを規定する、上記ベースにほぼ垂直である4つの連続する壁、この4つの壁の頂部で上記ベースの上でかつ上記ベースに平行に延びる上面、およびこの上面から上記ベースに向かって延びる少なくとも96のサンプルウェルを含む。上記ベース、ウェル、上面およびウェルは、マイクロ波放射に対し実質的に透明である材料から形成されている。流体チャンバーは、上記4つの壁の内側により、上記ベースにより、上記ウェルの輪郭により、および上記上面によって規定される。流体が上記チャンバー内に存在し、これは、特定のマイクロ波振動数にある電磁放射を節制する。
【0062】
本発明の先行する目的およびその他の目的、ならびにそれらが達成される様式は、添付の図面を組み合わせて考慮し、以下の詳細な説明に基き、より明瞭になる。
【発明の効果】
【0063】
本発明によって、制御された節度のある温度で比較的脆い組成物の複数の小サンプル(96ウェルマイクロタイタープレートなど)に適切にマイクロ波を付与する、ハイスループット化学プロセスのシステムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
(詳細な説明)
本発明は、マイクロ波で支援されるハイスループット化学プロセスのシステムおよび付随する方法である。本発明は、複数ウェルのプレートに関して特に有用であり、そしそれ故、本明細書における記載の多くは、上記背景で言及される標準的な96ウェルプレートを含む、このようなプレートに関する。
【0065】
図1、2および3は、ANSI/SBS仕様に従う(それからとった)標準的なマイクロタイタープレートを示す。従って、1つの意味で、図1〜3は、先行技術の局面を提示する。それにもかかわらず、本発明もまた、これら標準物の特定物を取り込んでいるので、図1〜3はまた、本発明の局面を示す際に有用である。しかし、本発明は、このANSI/SBS仕様に合致するマイクロタイタープレートに制限されないことが理解される。
【0066】
従って、図1は、10で広く指定される標準的な96ウェルマイクロタイタープレートを示す。このマイクロタイタープレートは、プレート10の設置面積を規定するベース11を含む。上記背景で提示されたように、96ウェルプレートの正確な標準および許容誤差は、ANSI/SBS規格に記載され、そして本明細書ではその他に詳細には繰り返されない。4つの周壁12、13、14、および15は、代表的なプレートの高さを規定するが、本発明のプレートは、本明細書中で後に記載される理由のためより高くても良い。
【0067】
例示の実施形態では、壁12〜15とベース11の外周との間のベース11の部分は、フランジ16を規定する。このフランジおよび上記の壁は一緒に面取り部(隅のノッチ)17を規定し得るが、このような隅のノッチは、ANSI/SBS規格ではオプションである。
【0068】
マイクロタイタープレート10は96のウェルを含み、その1つは、図3において20に断面で示される。標準的なマイクロタイタープレートでは、これらウェル20は、プレートの外側エッジとウェル20の位置との間で規定される距離で8つの列および12のカラムで横たわる。ウェル間の距離(ピッチ)は、ANSI/SBS規格によって規定され、そして図1では寸法21によって示される。類似のANSI/SBS規格がまた、384ウェルのマイクロプレートおよび1536ウェルのマイクロプレートについて存在する。
【0069】
図3は、ほぼ円筒形であり、フロア23よりわずかに大きいウェル20の口を規定するわずかに角度をなす壁22を備えたウェル20を示す。このANSI/SBS規格の標準的なマイクロタイタープレートまたは本発明のいずれも、しかし、この特定の形状に制限されない。
【0070】
図4は、本発明による市販の機器の外部の斜視図であり、そして広く25で指定される。例示の実施形態では、本発明による機器は、Matthews North Carolina 米国のCEM Corporationから入手可能なMARSTM機器のようなよく理解されたマルチモード機器であり得る。これら機器の基礎的特徴および作動は、過度の実験を要することなく本発明を実施するために当業者によって用いられ得る。要約すれば、このような機器は、しばしば、マイクロ波供給源としてのマグネトロン、マイクロ波空洞(しばしば、立方矩形の形状である)を規定する金属壁およびフロア、およびマグネトロンと空洞との間の導波管を含む。
【0071】
図4は、器具25が、ハウジング26、および代表的に上記マイクロ波空洞(図4では見えない)に開くドア27を含むことを示す。本明細書中で後に記載されるように、器具25はプロセッサーを取り込み得、それはまた、代表的には、コントロールパネル30および出力ディスプレイ31を含む。このディスプレイ31は、関係する情報を提供し得えるが、この器具25はまた、代表的には、デジタル入力および出力と適合可能であり、その結果、測定、または制御は、コンピューターで取り扱われ得、代表的なパーソナルコンピューターの処理力およびメモリーが大部分の目的に適切である。
【0072】
ディスプレイ31は、発光ダイオードまたは液晶と同じように基礎的であり得るか、またはカラーを含み、しかも、携帯電話またはパーソナルデジタルアシスタントのような小電子デバイスにおけるものと同一または全体が類似であるより精巧なディスプレイを含み得る。
【0073】
図4は、ドア27が、窓32、オン−オフスイッチ33および(本明細書で後に記載される反応冷却に加え)電子装置を冷却するためのハウジングファン34を含み得ることを示す。
【0074】
図5、6および7は、マイクロタイタープレートに関する本発明の局面を示す。図5は、マイクロタイタープレートが広く35で指定される分解斜視図である。このプレートは、プレートの領域設置面積を規定するベース36を含み、そして例示の実施形態では、ANSI/SBS規格と一致している。このプレート35は、上記ベース36にほぼ垂直であり、しかも、プレート35の高さを規定する4つの連続する壁37、40、41および42を含む。この例示の実施形態では、その2つが43および44で示される、対応するセットの壁は、45で広く指定されている、プレートの上部分上にある。
【0075】
プレート35の上部分45は、個々の壁37〜44の頂部でベース36の上で、そしてベース36に平行に延びる上面46を含む。少なくとも96のサンプルウェル47は、この上面46からベース36に向かって延びる。
【0076】
ベース36、壁37〜44、上面46、およびウェル47は、マイクロ波放射を実質的に通す材料から形成される。代表的な材料は、制限されないで、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ガラス、およびガラスで被覆されたポリマー(例えば、これらポリマーの1つの上の二酸化ケイ素の200ナノメートル厚み被覆)を含む。
【0077】
例示の実施形態では、上記4つの壁37、40、41および42、ベース36ならびにウェル47の輪郭は、上面46と一緒に、流体チャンバー50を規定する。その他の実施形態では、別の壁が付加され得(例えば、ウェル47の下でかつベース36に平行)、流体チャンバーを立法矩形またはその他の形状として規定する。使用において、この流体チャンバー50は、所定のマイクロ波振動数にある電磁放射を節制する流体(示されていない)を含む。先に提示されるように、マイクロ波振動数は、一般に、1ミリメートル(1mm)と1メートル(1m)との間の波長、および約300メガヘルツ(MHz)と300ギガヘルツ(GHz)との間の振動数を有するとして記載される。多くの政府は、異なる使用のために電磁スペクトルの部分を異なる振動数群に規制および分割しているので、本発明に組み込まれるタイプの大部分のマイクロ波器具は、約3メガヘルツと3ギガヘルツとの間の振動数をもつマイクロ波を生成し、2450メガヘルツの振動数の周囲の領域が実験室および家庭用マイクロ波機器に特定して割り当てられている。従って、例示の実施形態では、チャンバー50中の流体は、これらの振動数にマイクロ波を節制するように選択される。
【0078】
例示の実施形態では、上記チャンバー50中のマイクロ波節制流体は、水またはイオン溶液のいずれかであるが、所望の様式で、そしてそうでなければ上記マイクロタイタープレートの組成物または操作、あるいは上記ウェル中で実施される反応を妨害することなく付与された振動数のマイクロ波を節制する任意のその他の流体(より極性の少ない流体を含む)が受容可能である。特定の組成物およびプロセスに依存して、流体チャンバー50は、このマイクロ波−節制流体で部分的または全部が充填され得、そしてウェル47は、このマイクロ波節制流体と物理的接触していても良いし、または接触していなくても良い。
【0079】
図5は、マイクロタイタープレート35が96ウェルプレートの規格と一致していることを示し、各々が規定された矩形形状のベース36にある12ウェルの8つの列の使用を含む。しかし、本発明は、材料とのマイクロ波の相互作用に関するので、規格化されたプレート中のウェルの数に必ずしも制限されず、それに代わって、384ウェルのプレート、および1536ウェルのプレートを含むような規格プレートと特に有用であると考えられるべきである。
【0080】
マイクロタイタープレート35のその他の詳細は、ANSI/SBS規格と一致しており、ベース36と壁との間で規定されるフランジ52、および隅のノッチ53を含む。
【0081】
図5はまた、マイクロタイタープレート35が、チャンバー50中の流体を循環させるのを支援し得る磁気攪拌器バー54を含み得ることを示す。このバー54は、ベース36から垂直に上方に延びる心棒55上で回転する。この攪拌バー54は、代表的には、フッ素化ポリマー;例えば、その最も親しい商品名がTEFLON(登録商標)である、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のような、一般に、不活性ポリマーの中空チューブから形成されている。小磁石56が、バー54の各端部に位置決めされ、そして個々のキャップ57によってその場に保持されている。
【0082】
図6および7は、図5と同じ特徴のいくつかを示す断面図である。これは、ベース36、壁37〜42および43および44、ならびに上面46を含む。
【0083】
図6は、8個のウェル47を示す断面に沿ってとられ、そして図7は、12個のウェル47を示す断面に沿ってとられている。磁気攪拌器バー54および心棒55は、図6および7に両方が示されている。
【0084】
図6は、図5の斜視図では見えなかった壁60を示し、そして図7は、同様に、図5の斜視図では見えなかった別の壁61を示す。流体チャンバー50は、図6および7では矢印とともに示され、そしてこれらの図は、流体チャンバー50の幾何学的形状が、ベース36および上面46とともに、壁43、44、60および61によって規定され、そして下方に垂れ下がる壁47によって確立される幾何学的形状を含むことを詳細に示す。例示の実施形態では、全体ベース36(または少なくともベース36の実質的部分)が、流体チャンバー50の長さ寸法および幅寸法を規定する。
【0085】
図8は、本発明の作動特徴のいくつかの概略図である。図8は、ダイオード63および導波管64として示されるマイクロ波放射の供給源を示す。導波管64は、供給源ダイオード63と、矩形65によって概略的に示されるマイクロ波空洞との間の連通を提供する。ダイオードとして概略的に示されているが、このマイクロ波供給源63は、所望または調節されたマイクロ波振動数を生成する任意の適切な供給源であり得る。マグネトロンが、それらのコスト、性能および効率の組み合わせにために一般に用いられ、そしてクライストロンもまた、いくつかの状況で用いられる。
【0086】
図8は、先に提示されたようにマイクロ波透過性材料から形成され、そして複数のサンプルウェル67を含むマイクロタイタープレートを66に示す。ウェル67は、マイクロ波が供給源63から空洞65に付与されるとき、マイクロタイタープレート66中の個々のウェル67の間で実質的に均一なマイクロ波場を生成するマイクロ波節制流体(示されず)中に浸漬されている。
【0087】
温度計またはその他の適切な温度検出器70が、ウェル中の組成物、またはプレート66中のマイクロ波節制流体、または両方の温度をモニターするために位置決めされる。このシステムは、マイクロ波の付与の間にマイクロタイタープレート66を予め能動的に冷却するための手段を含む。図8は、これを、冷却ガス72の流れを空洞65中のマイクロタイタープレート66に対し、かつ横切るように向けるファンシステム71;またはPeltierクーラー73のような接触冷却デバイスとしてのいずれかとして概略的に示している。Peltier(熱電気)デバイスは、伝導性接触によって冷却するので、それは、通常、空洞65中で、かつプレート66にすぐ隣接して位置決めされる。明瞭さの目的のために、しかし、図8は、点線によって示されるように離脱様式でPeltierクーラー73を示す。
【0088】
本明細書中で先に注記したように、生物科学の分野における多くの関連する反応は、好ましく(または必然的に)約37゜と60℃との間の温度で実施される。所望または必要であるとき、上記冷却システムは、上記範囲内または(もしくは別の所望のもしくは必要な)温度範囲を維持するための手段を提供する。
【0089】
このシステムは、ウェル67の周りでマイクロ波節制流体を循環するための攪拌器74として示されるような手段を含む。先に提示されたように、磁気攪拌器は、この目的に全体として適切である。
【0090】
図8はまた、このシステムが、代表的には、本発明のモニタリングおよび制御機能を増大し得るプロセッサー(CPU)を含むことを示す。一般的にいえば、本明細書中に記載される制御は、パーソナルコンピューター中に見い出され、そして当業者によってこの目的のために、そして過度の実験なくしてプログラムされ得るのと一般に等価なプロセッサーで実施され得る。
【0091】
選択される測定パラメーター(例えば、温度および圧力)に基づき機器を制御するためのプロセッサーおよび関連する電子回路の使用は、一般に、本技術分野および関連技術分野でよく理解される。例示の(制限的ではない)論議は、Dorf、THE ELECTRICAL ENGINEERING HANDBOOK、第2版(1997)CRC Press LLCを含む。
【0092】
プロセッサー75は、このシステムの多くのその他の要素と信号通信している。このプロセッサー75は、ワイヤ76および77を通じてマイクロ波供給源63を制御し得る。勿論、ワイヤまたはラインとして概略的に示されているけれども、このような制御および通信は集積回路の一部分であり得るか、いくつかの事例では、ワイヤレス技術を用いて実施され得る。
【0093】
このプロセッサー75はまた、温度モニター70(代表的には、赤外または光ファイバー温度モニター)とライン80を通じて通信している。このようにして、プロセッサー75は、検出器70からのモニターされた温度に応答して供給源63を節制し得、そして次に空洞65中のマイクロ波の付与を節制する。
【0094】
プロセッサー75はまた、供給源63からのマイクロ波の付与を節制することに代わり、またはそれに加え、冷却することで空洞65中の温度を節制するのを支援するために、ワイヤ81および82を通じて冷却機器71または73と接触する。いくつかの同じ目的のために、このプロセッサー75は、ライン83から磁気攪拌器74と通信し、その結果、この攪拌器は、プロセッサー75からの指令に応答して、または検出器70によって測定された温度に応答してプロセッサーにより所望または必要に応じて制御され得る。
【0095】
別の局面では、本発明は、マイクロ波で支援されるハイスループット化学の方法であり、これは、マイクロ波エネルギーを複数ウェルプレートの複数のサンプルウェル中の複数の組成物に付与する工程を包含し、その一方、上記ウェルの下にあるが、上記ウェル中の組成物から分離されているプレート中の液体を循環することにより上記マイクロ波を節制する。例示の実施形態では、この節制流体は、上記ウェル中の組成物が行うより効率的でなく上記付与されるマイクロ波振動数とカップルする。この方法はまた、上記循環する液体または上記ウェル中の組成物、または両方の温度を制御する工程を含み得る。代表的には、しかし排他的ではなく、この温度は、上記チャンバー中の液体または上記ウェル中の組成物のいずれかが過熱することを防ぐために制御される。先に提示されたように、上記機器および方法は、35℃〜60℃の範囲にある温度を含む制御された温度を提供し得る。
【0096】
本発明のシステムの局面に関して提示されたように、温度を制御する工程は、上記循環する流体または上記ウェル中の組成物の温度をモニターする工程、およびこのモニターされた温度に応答してマイクロ波エネルギーの付与を節制する工程を包含し得る。
【0097】
上記空洞中の液体を循環する工程はまた、複数ウェルプレート中のチャンバーを上記流体で充填する工程、およびマイクロ波エネルギーを複数ウェルプレート中のサンプルウェル中の組成物に付与する工程を包含し得る。上記節制流体は、関連する状況に依存して、上記組成物が上記ウェル中に添加される前後いずれかで上記プレートに添加され得る。
【実施例】
【0098】
(実験)
以下の実験は、本発明に従って、96ウェルのプロトタイププレートを用いて実施された。例外が注記される以外では、プレートおよびウェルは、ANSI/SBS規格と一致していた。各実験では、100マイクロリットル(100μl)の水道水または指定された溶液が、各ウェルに配置され、そしてマイクロ波放射が、2分−ランプ、および器具中の光ファイバープローブによって測定されるとき50℃の限界で、300ワットの電力で付与された。各実験設定は、1分で保持された。実施例2〜4では、ウェルは、150ミリリットルのマイクロ波節制液体中に位置決めされ、そしてこの液体は、小磁気攪拌バーで攪拌された。光ファイバープローブが、マイクロ波節制液体の温度を測定した。
【0099】
複数のウェルを横切る結果を測定するために、マイクロ波は、1つのウェル中の少なくとも1つのプローブが50℃に到達するまで付与された。その時点でマイクロ波の付与は停止され、プレートを機器から取り出し、そしてプレートを、観察された温度、および温度読み取り自体に基づき画像を生成した赤外検出器で写真撮影した。図9〜17は、以下の実施例1〜9の得られる熱画像を提示する。図9〜17の各々は、明暗が観察された温度に比例する、垂直軸に沿った明暗スケールを含む。
【0100】
(実施例1:)
図9は、本発明で用いられたタイプの96ウェルのマイクロタイタープレートの熱画像である。この実験では、ウェル内容物が、任意のマイクロ波節制液なくして加熱された。垂直軸に沿ったスケールによって示されるように、各ウェルにおける温度は、赤外検出器に異なる明暗を生成した。
【0101】
表1は、各ウェルについて記録された温度に関する図9と同じデータを提示する。提示される列および行は、図9に示されるプレートの列および行と同じ配向である。同じ配向が図10〜12に適用される。
【0102】
【表1】

図9および表1が示すように、ウェル中の平均温度は42.2℃であり、そして極値の温度差は19.2℃であった。統計学的に表わすと、これは、4.16℃の標準偏差を表し、これは、次に、平均温度のほぼ10%を表す。
【0103】
(実施例2:)
図10は、マイクロ波節制流体として150ミリリットルの脱イオン水を用いたことを除いて同じ条件下での赤外画像を表す。表2は、数的フォーマットでデータを提供し、そしてウェル中の平均温度は、任意の2つのウェル間の最大の温度差2.9℃を有する50.8℃であったことを示す。標準偏差はわずか0.51℃であったが、これは、平均温度の約1%である。
【0104】
【表2】

(実施例3:)
図11は、マイクロ波節制流体として150ミリリットルの水道水を用いたことを除いて同じ条件下での赤外画像である。表3は、数字の形態で同じデータを表し、そして平均温度が、極値間で2.0℃の摂氏の温度差を有する52.3℃であったことを示す。標準偏差は0.37℃であったが、これは、平均温度の約0.7%に過ぎないことを表す。
【0105】
【表3】

(実施例4:)
図12は、マイクロ波節制流体として150ミリリットルの10重量%の塩化ナトリウム(NaCl)を用いる、本発明によるマイクロタイタープレートの赤外画像である。表4は、数的フォーマットで同じデータを表し、そして平均温度が、極限値間で2.2℃の温度差を有する54.4℃であったことを示す。標準偏差は0.42℃であったが、これは、平均温度の約0.8%に過ぎないことを表す。
【0106】
【表4】

(実施例5:)
図13は、より少ない極性の液体であるトルエンが、チャンバー中の流体として用いられた実験を表す。図13では、70ミリリットルのトルエンが含められ、そして各ウェルは、100マイクロリットルの100mMの重炭酸アンモニウム溶液を含んだ。
【0107】
表5は、数字のフォーマットで同じデータを表し、そして流体温度が40℃であり、ウェル中の平均温度が41.6℃であり、最高と最低の温度のウェル間の差異が4.7℃であり、標準偏差が0.87℃であり、そして平均温度の2.1%を表したことを示す。
【0108】
【表5】

(実施例6:)
図14は、IR画像がマイクロ波の付与の終了に際し直ちにとられたことを除き、実施例5と同じ実験である。
【0109】
表6は、数的フォーマットで同じデータを表し、そして流体温度が40℃であり、ウェル中の平均温度が45.7℃であり、最高と最低の温度のウェル間の差異が13.1℃であり、そして標準偏差が2.03℃であり、これは平均温度の4.4%を表したことを示す。
【0110】
【表6】

(実施例7:)
図15は、25mLのトルエンが、チャンバー中のマイクロ波節制流体として用いられた実験を表す。各ウェルは、再び、各ウェル中、100マイクロリットルの100mMの重炭酸アンモニウム溶液を含んだ。
【0111】
表7は、数的フォーマットで同じデータを表し、そしてウェル中の平均温度が48.1℃であり、最高と最低の温度のウェル間の差異が31.6℃であり、そして標準偏差が5.6℃であり、これは、平均温度の11%を表したことを示す。
【0112】
【表7】

(実施例8:)
この実施例は、マイクロタイタープレート中のマイクロ波節制流体として、70ミリリットルの;すなわち、ウェルに接触するに十分である10重量%の塩化ナトリウム(NaCl)を用いた。各ウェルは、100マイクロリットルの100ミリモル濃度(mM)の重炭酸アンモニウム溶液(NHHCO)を含んだ。図16は、得られる熱画像を表す。
【0113】
表8はデータを要約し、そして流体温度が51℃であったことを示し、ウェル中の平均温度が49.4℃であり、そして96ウェルの間の標準偏差が0.72℃であり、そして平均温度の1.4%を表したことを示す。最大の温度差異は、任意の2つのウェル間で3.2℃であったことを示す。
【0114】
【表8】

(実施例9:)
図17は、25ミリリットルのみ;すなわち、伝導によりウェルに接触または加熱し得る量より少ない10%NaCl溶液をマイクロ波節制流体として用いたことを除いて実施例8と同じ実験を表す画像である。表9はデータを要約し、そして53.8℃のウェル中の平均温度、96ウェルに亘る1.5℃の摂氏の標準偏差(平均温度の2.8%を表す)および7.4℃の任意の2つのウェル間最大の温度差を示す。
【0115】
【表9】

図面および明細書において、本発明の好ましい実施形態が提示され、そして特定の用語が採用されているが、それらは、一般的、および説明的な意味でのみ用いられ、そして制限の目的ではない、本発明の範囲は特許請求の範囲で規定される。
【0116】
(要約)
マイクロ波を利用したハイスループット化学プロセスのためのシステムが開示される。このシステムは、マイクロ波放射の供給源、この供給源と連通するマイクロ波空洞、およびこの空洞中のマイクロタイタープレートを含む。このマイクロタイタープレートは、マイクロ波透過性材料から形成され、そして複数のサンプルウェルを含む。流体チャンバーは、4つの壁の内側、ベース、ウェルの輪郭により、およびマイクロタイタープレートの上面によって規定される。このチャンバー中のマイクロ波節制流体は、マイクロ波が上記供給源から上記空洞中に付与されるとき、上記マイクロタイタープレート中の個々のウェルの間でより均一なマイクロ波場を生成することを支援する。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】図1は、ANSI/SBS規格に従う、標準的なマイクロタイタープレートの平面図である。
【図2】図2は、図1のマイクロタイタープレートの側面図である。
【図3】図3は、図1のマイクロタイタープレートの一部分の断面図である。
【図4】図4は、本発明によるマイクロ波器具の外部の斜視図である。
【図5】図5は、本発明によるマイクロタイタープレートの分解斜視図である。
【図6】図6は、図5の線6−6に沿ってとった断面図である。
【図7】図7は、図5の線7−7に沿ってとった断面図である。
【図8】図8は、本発明の作動要素の概略図である。
【図9】図9は、マイクロ波節制流体なくしてマイクロ波放射に曝されたマイクロタイタープレートの熱画像である。
【図10】図10は、マイクロ波節制流体を含み、そしてマイクロ波放射に曝されたマイクロタイタープレートの熱画像である。
【図11】図11は、マイクロ波節制流体を含み、そしてマイクロ波放射に曝されたマイクロタイタープレートの熱画像である。
【図12】図12は、マイクロ波節制流体を含み、そしてマイクロ波放射に曝されたマイクロタイタープレートの熱画像である。
【図13】図13は、マイクロ波節制流体を含み、そしてマイクロ波放射に曝されたマイクロタイタープレートの熱画像である。
【図14】図14は、マイクロ波節制流体を含み、そしてマイクロ波放射に曝されたマイクロタイタープレートの熱画像である。
【図15】図15は、マイクロ波節制流体を含み、そしてマイクロ波放射に曝されたマイクロタイタープレートの熱画像である。
【図16】図16は、マイクロ波節制流体を含み、そしてマイクロ波放射に曝されたマイクロタイタープレートの熱画像である。
【図17】図17は、マイクロ波節制流体を含み、そしてマイクロ波放射に曝されたマイクロタイタープレートの熱画像である。
【符号の説明】
【0118】
10、66 プレート
11 ベース
20、47、67 ウェル
25 器具
50 チャンバー
63 供給源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波を利用したハイスループット化学プロセスのためのシステムであって;該システムは、
マイクロ波放射の供給源;
該供給源と連通するマイクロ波空洞;
該空洞中のマイクロ波透過性材料から形成され、そして複数のサンプルウェルを含むマイクロタイタープレート;
少なくとも4つの壁の内側および該マイクロタイタープレートのベースによって規定される流体チャンバー;および
マイクロ波が該供給源から該空洞に付与されるとき、該マイクロタイタープレート中の個々のウェルの間でより均一なマイクロ波場を生成するのを支援する該チャンバー中のマイクロ波節制流体、を備える、システム。
【請求項2】
マイクロ波の付与の間に、前記マイクロタイタープレートを先に能動的に冷却するための手段をさらに備える、請求項1に記載のマイクロ波システム。
【請求項3】
前記冷却手段が、接触冷却デバイスである、請求項2に記載のマイクロ波システム。
【請求項4】
前記冷却手段が、前記空洞中の前記マイクロタイタープレートに対し、そして該マイクロタイタープレートを横切る冷却ガスの流れを向ける、請求項2に記載のマイクロ波システム。
【請求項5】
前記マイクロタイタープレート中の組成物の温度、および前記マイクロ波節制流体の温度からなる群から選択される温度を測定するために位置決めされる温度検出器をさらに備える、請求項2に記載のマイクロ波システム。
【請求項6】
測定された温度に応答して前記マイクロ波供給源を制御するために、該マイクロ波供給源、前記温度検出器、および前記冷却手段と連通するプロセッサーをさらに備える、請求項5に記載のマイクロ波システム。
【請求項7】
前記マイクロ波節制流体が、水を含む、請求項1に記載のマイクロ波システム。
【請求項8】
前記マイクロ波節制流体が、イオン溶液を含む、請求項1に記載のマイクロ波システム。
【請求項9】
前記マイクロタイタープレートが、前記ウェルの周りで前記マイクロ波節制流体を循環する手段を含む、請求項1に記載のマイクロ波システム。
【請求項10】
前記循環する手段が、磁気攪拌器である、請求項9に記載のマイクロ波システム。
【請求項11】
前記チャンバーが前記流体で充填され、そして該流体が前記ウェルの外面に接触する、請求項1に記載のマイクロ波システム。
【請求項12】
前記チャンバーが、前記ウェルの外面と接触することを避ける前記流体の量で部分的に充填される、請求項1に記載のマイクロ波システム。
【請求項13】
96ウェルマイクロタイタープレートを含む、請求項1に記載のマイクロ波システム。
【請求項14】
前記マイクロタイタープレートが、384ウェルマイクロタイタープレートおよび1536ウェルマイクロタイタープレートからなる群から選択される、請求項1に記載のマイクロ波システム。
【請求項15】
前記流体チャンバーが、前記ウェルの輪郭、前記4つの壁の内側、前記ベースおよび前記マイクロタイタープレートの上面によって規定される、請求項1に記載のマイクロ波システム。
【請求項16】
マイクロ波を利用したハイスループット化学の方法であって:
マイクロ波エネルギーを、複数ウェルプレートの複数のサンプルウェル中の複数の組成物に付与する工程;を包含し、
該ウェルの下にあり、そして該ウェル中の組成物から分離され、そして付与されたマイクロ波振動数とカップルする該ウェル中の組成物とは異なってカップルする該プレート中のある部分で液体を循環することにより該マイクロ波を節制する、方法。
【請求項17】
前記マイクロ波を付与する工程が、マイクロ波供給源からのエネルギーを、前記複数ウェルプレートを保持するマイクロ波空洞に向けることを包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
約300メガヘルツと3ギガヘルツとの間の振動数でマイクロ波エネルギーを付与する工程を包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
2450メガヘルツの振動数でマイクロ波エネルギーを付与する工程を包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
水を循環することにより前記マイクロ波を節制する工程を包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
イオン溶液を循環することにより前記マイクロ波を節制する工程を包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記循環する流体の温度をモニターする工程、および該モニターされた温度に応答してマイクロ波エネルギーの付与を節制する工程を包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記ウェル中の1つ以上の組成物の温度をモニターする工程、および該モニターされたウェル温度に応答してマイクロ波エネルギーの付与を節制する工程を包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記複数ウェルプレートに対し、かつ横切って冷却ガス流れを向けることにより前記循環する液体の温度を制御することを包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記複数ウェルプレートに対し、かつ横切って冷却ガス流れを向けることにより前記ウェル中の組成物の温度を制御することを包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記循環する流体の温度、および1つ以上の前記ウェル中の組成物の温度からなる群から選択されるモニターした温度に応答して、冷却ガス流れを向けることを包含する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記循環する流体の温度、および1つ以上の前記ウェル中の組成物の温度からなる群から選択されるモニターした温度に応答して、冷却ガス流れを向けることを包含する、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記マクイロ波エネルギーを、マイクロタイタープレート中の少なくとも96のウェル中の複数の組成物に付与することを包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項29】
前記マクイロ波エネルギーを、マイクロタイタープレート中の少なくとも384のウェル中の複数の組成物に付与することを包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項30】
前記マクイロ波エネルギーを、マイクロタイタープレート中の少なくとも1536のウェル中の複数の組成物に付与することを包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項31】
前記空洞中で液体を循環する工程が、前記複数のウェルに隣接する前記複数ウェルプレート中のチャンバーを、前記マイクロ波を節制する液体で充填することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項32】
ハイスループットマイクロ波を利用した化学のためのマイクロタイタープレートであって:該マイクロタイタープレートが、
該プレートの領域設置面積を規定するベース;
該プレートの高さを規定する、該ベースにほぼ垂直である4つの連続する壁;
該4つの壁の頂部で該ベースの上でかつ該ベースに平行に延びる上面;
該上面から該ベースに向かって延びる少なくとも96のサンプルウェル;
該ベース、該ウェル、該上面および該ウェルが、マイクロ波放射に対し実質的に透明である材料から形成され;そして
少なくとも該4つの壁の内側および該ベースによって規定される流体チャンバーを備えている、マイクロタイタープレート。
【請求項33】
前記チャンバー中に、マイクロ波振動数における電磁放射を節制する流体を含む、請求項32に記載のマイクロタイタープレート。
【請求項34】
前記流体が、約300メガヘルツと3ギガヘルツとの間の振動数を有するマイクロ波を節制する、請求項33に記載のマイクロタイタープレート。
【請求項35】
前記流体が、2450メガヘルツの振動数を有するマイクロ波を節制する、請求項33に記載のマイクロタイタープレート。
【請求項36】
前記プレートが:ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ガラス、およびガラス被覆ポリマーからなる群から選択される材料から形成される、請求項32に記載のマイクロタイタープレート。
【請求項37】
少なくとも384のウェルを備える、請求項32に記載のマイクロタイタープレート。
【請求項38】
少なくとも1536のウェルを備える、請求項32に記載のマイクロタイタープレート。
【請求項39】
前記ベースおよび前記ウェルが、96ウェルプレートのANSI/SBS規格に一致する、請求項32に記載のマイクロタイタープレート。
【請求項40】
各々が12ウェルの8つの列で配列される96のウェルを備える、請求項32に記載のマイクロタイタープレート。
【請求項41】
前記ベースが、矩形を規定する、請求項32に記載のマイクロタイタープレート。
【請求項42】
前記マイクロ波節制流体が、水である、請求項32に記載のマイクロタイタープレート。
【請求項43】
前記マイクロ波節制流体が、水性イオン溶液である、請求項32に記載のマイクロタイタープレート。
【請求項44】
前記流体チャンバーが、前記4つの壁の内側、前記ベース、前記ウェルの輪郭によって、および前記上面によって規定される、請求項32に記載のマイクロタイタープレート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−253990(P2008−253990A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84946(P2008−84946)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(508047875)シーイーエム コーポレイション (7)
【Fターム(参考)】