説明

同期放射線耐性強化光ファイバジャイロスコープ

【課題】同期放射線耐性強化光ファイバジャイロスコープを提供する。
【解決手段】同期光ファイバジャイロスコープ100は、光源102と、光源と光通信する光カプラ104と、光カプラと光通信する光学変調器106と、光学変調器と光通信する光ファイバコイル116とを含む。検出器118は、光カプラからの光信号を受け取り、光信号を電気信号に変換する。ループクロージャ信号プロセッサ124は、検出器からの電気信号を受け取る第1の入力部を有する。位相ロックループ130は、プロセッサの第2の入力部に動作可能に接続される出力部を有する。直接デジタル合成器は位相ロックループの入力部に動作可能に結合され、合成器は位相ロックループに送出される低周波信号を生成する。位相ロックループは、低周波信号を、プロセッサの第2の入力部に送出される高周波信号に変換し、位相ロックループは信号復調と同期する信号変調を行う。

【発明の詳細な説明】
【連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載】
【0001】
本発明は、空軍研究所(AFRL)によって与えられた契約番号FA9453−08−C−0263の下で政府の支援により行われた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバコイル中を反対方向に伝搬する電磁波による光ファイバジャイロスコープはコイルを中心とする回転を感知する。そのような光ファイバジャイロスコープはバイアス変調を使用して、回転速度を測定し伝達するためにジャイロスコープのインターフェログラムおよび復調の速度感知部分にバイアスをかける。復調回路と同期するバイアス変調は、最も高いサンプリング効率および最も良好なジャイロスコープ性能を可能にする。同期光ファイバジャイロスコープは、30MHzを超える調整可能システムクロックを必要とする。そのようなクロックは、一般に、商用の既製直接デジタル合成器を使用して生成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
放射線耐性強化高性能光ファイバジャイロスコープは宇宙空間などの厳しい環境における戦略的用途で必要とされる。残念ながら、放射線耐性強化電気構成要素は商用部品ほど速く動作することができず、したがって、放射線耐性強化光ファイバジャイロスコープは非同期で作動する変調/復調回路を必要とし、それにより性能低下がもたらされる。
【0004】
さらに、放射線耐性強化直接デジタル合成器は、現在、使用可能でなく、デジタルドメインで個別の直接デジタル合成器を生成するのに必要とされる高速放射線耐性強化デジタル/アナログ変換器も使用可能でない。そのため、従来の放射線耐性強化光ファイバジャイロスコープは一般に非同期であり、アナログ/デジタル変換器で信号をサンプリングするのに使用されるシステムクロックと非同期である低周波変調信号を生成するのに低速の個別の直接デジタル合成器が使用される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
同期光ファイバジャイロスコープは、光源と、光源と光通信し、光源からの光信号を受け取るように構成された光カプラと、光カプラと光通信する光学変調器と、光学変調器と光通信する光ファイバコイルと、光カプラからの光信号を受け取り、光信号を電気信号に変換するように構成された検出器とを含む。ループクロージャ信号プロセッサは第1の入力部、第2の入力部、および出力部を有し、ループクロージャ信号プロセッサの第1の入力部は検出器からの電気信号を受け取るように構成される。位相ロックループは入力部および出力部を有し、位相ロックループの出力部はループクロージャ信号プロセッサの第2の入力部に動作可能に接続される。直接デジタル合成器は位相ロックループの入力部に動作可能に結合され、直接デジタル合成器は位相ロックループに送出される低周波信号を生成するように構成される。位相ロックループは、低周波信号を、ループクロージャ信号プロセッサの第2の入力部に送出される高周波信号に変換し、位相ロックループは信号復調と同期する信号変調を行う。光ファイバジャイロスコープの1つまたは複数の構成要素は放射線耐性強化することができる。
【0006】
図面は本発明の代表的実施形態だけを示し、範囲を限定すると見なされるべきでない。これらの実施形態は参照図面を使用して以下の説明で付加的特定性および詳細と共に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】一実施形態による位相ロックループを用いて実施される光ファイバジャイロスコープのブロック図である。
【図2】図1の光ファイバジャイロスコープのシステムクロック動作の例示的タイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の詳細な説明において、実施形態は、当業者が本発明を実施できるように十分に詳細に説明される。本発明の範囲から逸脱することなく他の実施形態を利用できることが理解されるべきである。したがって、以下の詳細な説明は限定の意味に取られるべきでない。
【0009】
本発明は、位相ロックループを用いて実施された同期光ファイバジャイロスコープに関する。位相ロックループは同期変調および復調を可能にし、光ファイバジャイロスコープの高性能をもたらす。これにより、厳しい放射線環境での動作用の放射線耐性強化構成要素を用いて光ファイバジャイロスコープを構築することができる。
【0010】
本光ファイバジャイロスコープは復調サンプリング効率の向上を可能にし、それにより、より低い角度ランダムウォーク(ARW)およびより低い速度/角度白色ノイズがもたらされ、一方、バイアス安定性が向上する。ARWは、光ファイバジャイロスコープ出力のノイズ成分(例えばドリフト)を意味する。高性能光ファイバジャイロスコープでは、ARWは、主に、回転を感知するのに使用される光の不規則な強度変動に起因する相対強度ノイズ(RIN)によって影響を受ける。
【0011】
動作中、本光ファイバジャイロスコープは、例えば放射線耐性強化された個別の直接デジタル合成器などによって調整可能な低周波信号(正弦波)を生成し、次に、位相ロックループを使用して低周波信号を高周波信号にアップサンプリングし、それにより、さらに、放射線耐性強化することができる。位相ロックループは約30MHzを超える信号を出力し、その信号はシステムクロックとして使用され、さらに、システムクロックを使用してサンプリングされる同期低周波変調信号を生成するのに使用される。位相ロックループは、さらに、信号変調と同期する信号復調を行う。
【0012】
本手法は、デジタルおよびアナログドメイン、または完全デジタルドメインで統合することができる。
図1は、一実施形態による位相ロックループを用いて実施される光ファイバジャイロスコープ(FOG)100を示す。FOG100は、一般に、光源102、光カプラ104、光学変調器106、光ファイバコイル116、検出器118、ループクロージャ信号プロセッサ124、位相ロックループ130、および直接デジタル合成器144を含む。これらの構成要素の各々はさらに詳細に以下で説明される。
【0013】
光源102は、FOG100を通して電磁波を伝搬させるのに好適な任意の光源とすることができる。例えば、光源102はポンプレーザとすることができる。光源102は、光ファイバなどの好適な光路を使用して光カプラ104と光通信する。光源102は光を光カプラ104に送出し、光カプラ104は送出された光を分割し、さらに、光ファイバまたは他の好適な機構を介して光の一部を光学変調器106に送出する。
【0014】
集積化光学チップとすることができる光学変調器106はY接合部108および1対の導波路110、112を含む。さらに、光学変調器106は導波路110、112と集積化された複数の光学位相変調器電極114を含む。光が光学変調器106の内部にあるとき、光はY接合部108でさらに分割され、導波路110、112に供給される。導波路110中の光は光ファイバコイル116に送出され、光ファイバコイル116の長さのまわりを右回りに伝搬し、導波路112に戻る。同様に、導波路112中の光は光ファイバコイル116に送出され、光ファイバコイル116の長さのまわりを左回りに伝搬し、光カプラ106の導波路110に戻る。
【0015】
光ファイバコイル116は、一般に、コアのまわりに、および回転が感知される軸を中心として巻かれる。光ファイバコイル116は閉じた光路を与え、その中を光は反対方向に伝搬し、最終的に検出器118に当たる。感知軸を中心としたある方向の回転により、ある方向に対する光路長の実効的増加が引き起こされ、他方向に対する光路長の減少が引き起こされる。光路長差は、光波間の位相シフト、すなわちサニャック効果として知られる結果を導入する。
【0016】
光波は、光ファイバコイル116から送出され、それぞれの導波路を通過した後、Y接合部108で組み合わされ、光カプラ104に伝搬する。次に、組み合わされた光波は分割され、検出器118に出力される。検出器118は、適切なフォトダイオードおよび好適な増幅器などの光検出器、または光波の光信号を電気信号に変換する他の好適な検出器とすることができる。検出器118は、検出器118に当たる2つの光波の強度に比例する電気信号を出力する。
【0017】
検出器118からの電気信号出力は、増幅器120によって増強することができ、アナログ/デジタル変換器(ADC)122によってデジタル信号に変換される。デジタル信号は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または特定用途向け集積回路(ASIC)とすることができるループクロージャ信号プロセッサ124の第1の入力部に送出される。デジタル/アナログ変換器(DAC)126はループクロージャ信号プロセッサ124の出力部に結合され、アナログ信号を光学変調器106に送り戻す。一般に、信号プロセッサ124は、2つの測定値の放出強度差をゼロに維持するのに必要とされるフィードバック位相シフトの方に光学変調器106を駆動する。したがって、回転速度測定はフィードバック位相から計算し、出力として伝えることができる。
【0018】
位相ロックループ130は、混合器132、アキュムレータ134、および電圧制御水晶発振器(VCXO)などの発振器136を含む。周波数分周器139を含むフィードバックループ138は、発振器136の第1の出力部を混合器132の第1の入力部に動作可能に結合する。発振器136の高周波出力は周波数分周器139を使用して低周波信号に分周される。この低周波信号は、直接デジタル合成器144によって生成された低周波信号に位相ロックおよび周波数ロックされる。発振器136の第2の出力部は、位相ロックループ130からの正弦波を矩形波に変換するオプションのコンパレータ140を通してループクロージャ信号プロセッサ124の第2の入力部に動作可能に結合される。ループクロージャ信号プロセッサ124が正弦波を受け入れる入力部を備えている場合、コンパレータ140は必要とされない。位相ロックループは、容易に使用可能な放射線耐性強化構成要素で構築することができる。
【0019】
調整可能な低周波信号(正弦波)は個別の直接デジタル合成器144によってFOG100に供給される。直接デジタル合成器144は、温度補償水晶発振器(TCXO)などの安定化されたクロック出力部150、クロック出力部150に動作可能に結合されたコーデック(コーダ−デコーダ)152、およびコーデック152の出力部に動作可能に結合されたデジタル/アナログ変換器(DAC)154を含むことができる。コーデック152は一実施形態ではFPGAに組み込むことができる。楕円型5極低域フィルタなどの低域フィルタ156はDAC154の出力部に動作可能に結合される。
【0020】
動作中、直接デジタル合成器144は調整可能な低周波信号を生成し、それは低域フィルタ156を通して位相ロックループ130の混合器132の第2の入力部に通される。低周波信号は、位相ロックループ130内で発振器136によって生成され、周波数分周器139を使用して分周された周波数と混合され、それにより、ループクロージャ信号プロセッサ124の第2の入力部に供給される約30MHzを超える出力信号が生成される。この出力信号はFOG100のシステムクロックとして使用され、さらに、システムクロックを使用してアナログ/デジタル変換器122によってサンプリングされる同期低周波変調信号を生成するために使用される。
【0021】
図2は、本明細書で開示される光ファイバジャイロスコープのシステムクロック動作の例示的タイミング図200である。タイミング図200は、デジタル/アナログ変換器154の出力(DAC OUT)、低域フィルタ156の出力(LPF OUT)、周波数分周器139の出力(/n OUT)、電圧制御水晶発振器136の出力(VCXO OUT)、およびコンパレータ140の出力(COMP OUT)の信号を示す。タイミング図200は、さらに、アナログ/デジタル変換器122のクロック(A2D CLOCK)の信号および変調周期(MOD PER)を示す。図2に示されるように、変調周期はアナログ/デジタル変換器のクロックに同期される。
【0022】
本発明はその本質的特徴から逸脱することなく他の特定の形態で具現することができる。説明した実施形態は、あらゆる点で、単に例示であって限定ではないと見なされるべきである。したがって、本発明の範囲は、前述の説明によってではなく添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の均等物の趣意および範囲内にある変更はすべてその範囲に包含されるべきである。
【符号の説明】
【0023】
100 光ファイバジャイロスコープ
102 光源
104 光カプラ
106 光学変調器
106 光カプラ
108 Y接合部
110、112 導波路
114 光学位相変調器電極
116 光ファイバコイル
118 検出器
120 増幅器
122 アナログ/デジタル変換器
124 ループクロージャ信号プロセッサ
126 デジタル/アナログ変換器
130 位相ロックループ
132 混合器
134 アキュムレータ
136 電圧制御水晶発振器
138 フィードバックループ
139 周波数分周器
140 コンパレータ
144 直接デジタル合成器
150 クロック出力部
152 コーデック
154 デジタル/アナログ変換器
156 低域フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源と光通信し、前記光源からの光信号を受け取るように構成された光カプラと、
前記光カプラと光通信する光学変調器と、
前記光学変調器と光通信する光ファイバコイルと、
前記光カプラからの光信号を受け取り、前記光信号を電気信号に変換するように構成された検出器と
第1の入力部、第2の入力部、および出力部を有し、前記第1の入力部は前記検出器からの前記電気信号を受け取るように構成される、ループクロージャ信号プロセッサと、
入力部および出力部を有し、前記出力部は前記ループクロージャ信号プロセッサの前記第2の入力部に動作可能に接続される、位相ロックループと、
前記位相ロックループの前記入力部に動作可能に結合され、前記位相ロックループに送出される低周波信号を生成するように構成される、直接デジタル合成器と、
を含み、
前記位相ロックループは、前記低周波信号を、前記ループクロージャ信号プロセッサの前記第2の入力部に送出される高周波信号に変換し、信号復調と同期する信号変調を行う、光ファイバジャイロスコープ。
【請求項2】
前記光ファイバジャイロスコープの1つまたは複数の構成要素が放射線耐性強化される、請求項1に記載の光ファイバジャイロスコープ。
【請求項3】
前記ループクロージャ信号プロセッサは特定用途向け集積回路またはフィールドプログラマブルゲートアレイを含む、請求項1に記載の光ファイバジャイロスコープ。
【請求項4】
前記位相ロックループは、
第1の入力部、第2の入力部、および出力部を有する混合器と、
入力部および出力部を有し、前記入力部は前記混合器の前記出力部に動作可能に結合される、アキュムレータと、
入力部、第1の出力部、および第2の出力部を有し、前記発振器の前記入力部は前記アキュムレータの前記出力部に動作可能に結合される、発振器と、
前記発振器の前記第1の出力部を前記混合器の前記第1の入力部に動作可能に接続する、周波数分周器を含むフィードバックループと、
を含む、請求項1に記載の光ファイバジャイロスコープ。
【請求項5】
前記発振器の前記第2の出力部に結合されたコンパレータをさらに含む、請求項4に記載の光ファイバジャイロスコープ。
【請求項6】
前記検出器からの前記電気信号をデジタル信号に変換するように構成されたアナログ/デジタル変換器をさらに含む、請求項1に記載の光ファイバジャイロスコープ。
【請求項7】
前記検出器からの前記電気信号は前記デジタル信号に変換される前に増幅器によって増強される、請求項7に記載の光ファイバジャイロスコープ。
【請求項8】
前記ループクロージャ信号プロセッサの前記出力部と前記光学変調器の入力部との間に結合されたデジタル/アナログ変換器をさらに含む、請求項1に記載の光ファイバジャイロスコープ。
【請求項9】
前記直接デジタル合成器は、
クロック出力部と、
前記クロック出力部に動作可能に結合されたコーデックと、
前記コーデックの出力部に動作可能に結合されたデジタル/アナログ変換器と
を含む、請求項1に記載の光ファイバジャイロスコープ。
【請求項10】
前記直接デジタル合成器の出力部および前記混合器の前記第2の入力部に動作可能に結合された低域フィルタをさらに含む、請求項1に記載の光ファイバジャイロスコープ。

【図1】
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【図2】
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