説明

同種の分析物検出

【課題】生物学的サンプル中および臨床サンプル中に存在する、感度の高い、大型かつ/もしくは複合体の分析物の検出のための、同種の方法の提供。
【解決手段】同種の、感度の高い分析物の検出のために有用な核酸検出マーカーを含む、所定のかつ限定的な安定性である、新規な結合対組成物を提供する。分析物(特に、臨床関連の分析物)の感度の高い同種の検出のための方法もまた、提供される。第1核酸に結合した第1特異性分子を含む第1結合メンバー、および第2核酸に結合した第2特異性分子を含む第2結合メンバーを有する結合対を提供し、ここで、該第1核酸および該第2核酸は、所定のかつ限定された安定性の二本鎖を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、サンプル中の分析物の存在もしくは濃度を決定するための方法、組成物およびキットに関連する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
臨床科学の分野において、疾患の診断およびモニタリングの目的のために、生物学的流体中のタンパク質、薬物、生物および他の分析物の濃度を決定することへの要求が存在する。例えば、心筋梗塞の間、タンパク質は、心臓から放出される。このようなタンパク質の存在、濃度および放出の時間経過を検出することは、心臓発作の診断を補助し得る。
【0003】
生物学的流体中で現在検出されている、臨床的に関連しているタンパク質のほとんどは、1pg/mlより高い濃度で存在している。例えば、前立腺特異的抗原(PSA)は、前立腺疾患の検出において有用な血清タンパク質であり、これは、男性において通常約0〜4ng/mlの濃度で存在している。4ng/mlを超えるPSAレベルは、前立腺疾患(特に前立腺癌)の疑いがある。この濃度範囲は、従来のイムノアッセイ技術によって容易に検出される。しかし、前立腺除去の後、PSAの濃度は、従来技術によって検出不可能なレベルまで低下する。前立腺除去を受けた癌患者におけるPSAレベルの上昇は、再発を表す。これらの患者をモニタリングするために、fg/mlの感度を有するアッセイが必要である。
【0004】
約35,000の遺伝子および500,000もの多くのタンパク質が、ヒト種に存在すると推定される。このタンパク質 対 遺伝子の大きな相違は、転写後改変(例えば、スプライシング)および翻訳後改変(例えば、リン酸化、グリコシル化)に起因し得る。このような改変は、タンパク質の機能を有意に変更し得る。したがって、僅かな相違でさえ、臨床的に関連し得る。290のタンパク質のみが、ヒト血漿中で同定されているが、2Dゲルにおいて何千もの点が存在する。ヒト血漿プロテオームは、何十万のタンパク質を含み得、これらは、現在の技術によって検出するには低すぎる濃度で存在する。これらのタンパク質の大部分を検出する方法は、現在利用可能ではない。
【0005】
低濃度の特定の分析物を検出する困難性は、臨床的アッセイにおいて使用され得る比較的少量のサンプルと抱き合わせである。したがって、タンパク質分析物のための多くのイムノアッセイは、ELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)のような異種方法論に依存している。ここでは、抗体が結合した分析物は、未結合の分析物から物理的に分離される。異種検出方法は、複雑であり、結合分析物を未結合分析物から分離するために多数の工程(例えば、固相への結合工程および反復的な洗浄工程)を必要とする。これらの工程は、非特異的結合をもたらし、そして感度を低下させる;これらは、費用がかかり得、かつ時間がかかり得る。従って、非特異的結合を避ける、高感度の同種アッセイについての需要が存在する。
【0006】
同種イムノアッセイ(結合した種および遊離の種の物理的分離を必要としないイムノアッセイ)は、低分子(例えば、薬物)について記載されている。これらのアッセイとしては、とりわけ、以下が挙げられる:SYVA’s FRAT(登録商標)アッセイ、EMIT(登録商標)アッセイ、酵素チャネリングイムノアッセイおよび蛍光エネルギー移動イムノアッセイ(FETI)(Dade Behring,Deerfield,Illinois);酵素インヒビターイムノアッセイ(Hoffman LaRoche and Abbott Laboratories):蛍光偏光イムノアッセイ(Dandlicker)。これらの方法の全ては、限定的な感度を有し、そしてFETIおよび酵素チャネリングを含むいくつかのみしか、大型の多重エピトープ性分析物に適さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、生物学的サンプル中および臨床サンプル中に存在する、感度の高い、大型かつ/もしくは複合体の分析物の検出のための、同種の方法の需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、第1核酸に結合した第1特異性分子を含む第1結合メンバー、および第2核酸に結合した第2特異性分子を含む第2結合メンバーを有する結合対を提供し、ここで、該第1核酸および該第2核酸は、所定のかつ限定された安定性の二本鎖を形成する。
【0009】
特定の実施形態において、この第1特異性分子および第2特異性分子は、レセプターであっても、リガンドであっても、または抗体であってもよい。特異性分子は、互いに同一であっても異なっていてもよい。1つの実施形態において、本発明の特異性分子は、1つの細胞上の2つのレセプターと相互作用する。別の実施形態において、第1特異性分子および第2特異性分子の両方は、モノクローナル抗体であり、これらは、同じ抗原上の異なるエピトープと相互作用し得、従ってサンドイッチ対を含み得る。
【0010】
この結合対の第1核酸および第2核酸は、代表的に、一本鎖核酸であり、DNA、RNAまたはPNAであり得るが、部分的二本鎖核酸であってもよく、またはそのアナログであってもよい。本発明の特定の実施形態において、少なくとも1つの核酸は、キメラDNA/RNA分子である。本発明の核酸は、その5’末端もしくはその3’末端を介して結合され得る。本発明の1つの局面において、結合対の1つの核酸は、その5’末端を介して結合し、そして他方の核酸は、その3’末端を介して結合する。核酸間の二本鎖は、核酸の末端の間で形成され得るか、または内部核酸配列を含み得る。好ましい実施形態において、この核酸は、PCR、LCR、SDA、もしくはTMAによる増幅に適する。
【0011】
本発明はまた、結合メンバーを用いて分析物を検出するための方法を提供する。1つの実施形態に従い、上述の結合対は、分析物と接触させられて、複合体を形成する。この結合対核酸は、次いで、解離させられ、次いで、再会合させられる。再形成された二本鎖(主に分析物が結合した結合対において見出される)の3’末端の発現の後、この再形成された二本鎖が、代表的にはPCRによる核酸増幅(二本鎖を含む)によって、検出され得る。PCRプライマーが再形成された二本鎖の3’末端を伸長することによって生成された部位のみに結合し、結合メンバー自体の核酸には結合しない場合、バックグラウンドは有意に低下し得る。
【0012】
この増幅産物は、種々の方法のいずれかによって検出され得る。これらの方法としては、臭化エチジウムに始まって、銀染色、オートラジオグラフィー、ドットブロッティング、スロットブロッティング、サザンブロッティング、ならびに蛍光分子、蛍光消光分子、化学発光化合物、化学発光消光分子、生物発光化合物もしくは蛍光ヌクレオチドの取り込みが挙げられる。
【0013】
本発明の1つの実施形態において、結合対核酸の1つはキメラDNA/RNA分子であり、そして他方の核酸はDNA分子であり、ここで、この2つの核酸の間で形成される二本鎖は、短いDNA/DNAハイブリッド領域および長いDNA/RNAハイブリッド領域を有する。この実施形態のインタクトな二本鎖は、安定的であるが、RNAseによる消化によって不安定化させられ得、これは、分析物に結合していない結合メンバーに起因するバックグラウンドをさらに低下する。
【0014】
本発明の種々の実施形態は、臨床的に関連するタンパク質、ウイルスおよび細胞の検出のための同種アッセイを作製するために合わせられ得、このアッセイは、特異的でありかつ高感度である。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
以下:
第1核酸に結合する第1特異性分子を含む第1結合メンバー;および
第2核酸に結合する第2特異性分子を含む第2結合メンバー
を含む結合対であって、ここで、該第1核酸および該第2核酸は、所定のかつ限定的な安定性の二本鎖を形成する、結合対。
(項目2)
前記第1特異性分子および前記第2特異性分子が、レセプター、リガンドおよび抗体からなる群から各々独立して選択される、項目1に記載の結合対。
(項目3)
前記第1特異性分子は第1抗体であり、前記第2特異性分子は第2抗体である、項目2に記載の結合対。
(項目4)
前記第1抗体および前記第2抗体が、モノクローナル抗体である、項目3に記載の結合対。
(項目5)
前記第1抗体および前記第2抗体は、独立して、同じ抗原上のエピトープと相互作用する、項目4に記載の結合対。
(項目6)
前記第1抗体および前記第2抗体は、サンドイッチ対を含む、項目4に記載の結合対。
(項目7)
前記第1特異性分子および前記第2特異性分子が、異なる分子と相互作用する、項目2に記載の結合対。
(項目8)
前記異なる分子が、1つの細胞上の2つのレセプターである、項目7に記載の結合対。
(項目9)
前記第1核酸および前記第2核酸が、一本鎖核酸である、項目1に記載の結合対。
(項目10)
前記第1核酸が配列番号1を含み、そして前記第2核酸が配列番号2もしくは配列番号3を含む、項目1に記載の結合対。
(項目11)
前記第1核酸および前記第2核酸が、DNA、RNAおよびPNAからなる群から各々独立して選択される、項目1に記載の結合対。
(項目12)
前記第1核酸および前記第2核酸のうちの少なくとも1つが、キメラDNA/RNA分子である、項目1に記載の結合対。
(項目13)
前記第1特異性分子が前記第1核酸の5’末端に結合し、そして前記第2特異性分子が前記第2核酸の5’末端に結合する、項目9に記載の結合対。
(項目14)
前記二本鎖は、前記第1核酸の末端の3’末端と前記第2核酸の3’末端との間に形成される、項目13に記載の結合対。
(項目15)
前記第1特異性分子が前記第1核酸の5’末端に結合し、そして前記第2特異性分子が前記第2核酸の3’末端に結合する、項目9に記載の結合対。
(項目16)
前記二本鎖は、前記第1核酸の末端の3’末端と前記第2核酸の内部配列との間に形成される、項目15に記載の結合対。
(項目17)
前記核酸ハイブリッドは、PCR、LCR、SDA、もしくはTMAによる増幅に適する、項目1に記載の結合対。
(項目18)
分析物を検出するための方法であって、該方法は、以下:
(a)分析物を提供する工程;
(b)結合対を提供する工程であって、該結合対は、以下:
(i)第1核酸に結合した第1特異性分子を含む第1結合メンバー;および
(ii)第2核酸に結合した第2特異性分子を含む第2結合メンバーを含み、ここで、該第1核酸および該第2核酸は、所定のかつ限定的な安定性の二本鎖を形成する工程;
(c)該結合対を該分析物と接触させ、それによって複合体を形成させる工程;
(d)該二本鎖を解離させる工程;
(e)該第1核酸と該第2核酸とを再会合させ、それによって二本鎖を再形成する工程;(f)該再形成した二本鎖の3’末端を伸長する工程;ならびに
(g)該再形成した二本鎖を検出し、それによって該分析物を検出する工程
を包含する方法。
(項目19)
前記工程(d)は、前記二本鎖の溶解温度よりも高い温度まで前記複合体を加熱する工程を包含する、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記複合体は、塩を含有する水溶液中で形成され、そして前記工程(d)は、該水溶液の塩濃度を低下させる工程を包含する、項目18に記載の方法。
(項目21)
前記工程(d)は、該複合体を希釈する工程をさらに包含する、項目18に記載の方法。
(項目22)
前記工程(g)は、前記再形成した二本鎖を含む核酸分子の増幅および該増幅の産物の検出を包含する、項目18に記載の方法。
(項目23)
前記増幅は、PCR、LCR、SDA、もしくはTMAによって達成される、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記増幅は、前記工程(f)における前記再形成した二本鎖の3’末端を伸長することによって産生される部位にのみ結合するプライマーを用いるPCRによって達成される、項目22に記載の方法。
(項目25)
前記増幅の前記産物は、臭化エチジウムによる染色、銀染色、オートラジオグラフィー、ドットブロッティング、スロットブロッティングおよびサザンブロッティングからなる群から選択される方法によって検出される、項目22に記載の方法。
(項目26)
前記再形成された二本鎖を検出する工程は、第1の一本鎖核酸、第2の一本鎖核酸、前記結合対の二本鎖領域、および前記増幅産物のうちの少なくとも1つに、検出分子を組み込むことによって達成される、項目20に記載の方法。
(項目27)
前記検出分子は、蛍光分子、蛍光消光分子、化学発光化合物、化学発光消光分子、生物発光分子、放射性分子および蛍光ヌクレオチドからなる群から選択される、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記第1核酸および前記第2核酸のうちの少なくとも1つは、キメラDNA/RNA分子であり、前記工程(c)の複合体は、前記工程(d)において前記二本鎖を解離させる前にRNAseによって消化される、項目18に記載の方法。
(項目29)
PSAの検出のための方法であって、該方法は、以下:
(a)第1一本鎖核酸に結合した、前立腺特異的抗原上の第1エピトープを指向するモノクローナル抗体を含む第1結合メンバー、および第2一本鎖核酸に結合 した、前立腺特異的抗原上の第2エピトープを指向するモノクローナル抗体を含む第2結合メンバーを提供する工程であって、該第1一本鎖核酸は、該第2一本 鎖核酸にハイブリダイズし、それによって核酸二本鎖を介して結合する結合対を形成する工程;
(b)該結合対をサンプルに接触させる工程であって、該サンプルは、溶液中にPSAを含み、それによって結合対−PSA複合体を形成する工程;
(c)該結合対−PSA複合体を加熱して、核酸二本鎖を解離させる工程;
(d)該結合対−PSA複合体を、PSAに結合した結合メンバーの再会合を可能にするが、該溶液中の過剰な遊離の結合メンバーの実質的な再会合を可能にしない条件下でインキュベートする工程;
(e)結合対二本鎖を検出し、それによってPSAを検出する工程
を包含する方法。
(項目30)
前記第1モノクローナル抗体および前記第2モノクローナル抗体が、共に、PSAに対するモノクローナル抗体のサンドイッチ対を形成する、項目29に記載の方法。
(項目31)
血液サンプル、血清サンプル、血漿サンプルもしくは組織サンプルからなる群より選択される、項目29に記載の方法。
(項目32)
前記第1一本鎖核酸は、配列番号1を含み、そして前記第2一本鎖核酸は、配列番号2もしくは配列番号3を含む、項目29に記載の方法。
(項目33)
前記工程(c)は、45℃で実施され、そして前記工程(d)は、室温で実施される、項目29に記載の方法。
(項目34)
前記検出工程は、前記二本鎖領域の増幅を包含する、項目29に記載の方法。
(項目35)
前記増幅は、以下:
(a)DNAポリメラーゼによって前記二本鎖の3’末端を伸長する工程であって、該伸長は、少なくとも1つのプライマー結合部位を生成する工程;および
(b)工程(a)の少なくとも1つのプライマー結合部位に相補的である少なくとも1つのプライマーを用いて、該伸長した二本鎖においてポリメラーゼ連鎖反応を実施する工程を包含する、項目34に記載の方法。
(項目36)
細胞の検出のための方法であって、該方法は、以下:
(a)少なくとも1つの細胞を含むサンプルを提供する工程;
(b)第1一本鎖核酸に結合した、該細胞上のエピトープを指向する抗体を含む第1結合メンバー、および第2一本鎖核酸に結合した、該細胞上のエピトープを 指向する抗体を含む第2結合メンバーを提供する工程であって、該第1一本鎖核酸は、該第2一本鎖核酸にハイブリダイズして、それにより核酸二本鎖を介して 結合する結合対を形成する工程;
(c)該結合対をサンプルと接触させ、それによって結合対−細胞複合体を形成する工程;
(d)該核酸二本鎖を解離させる工程;
(e)該二本鎖を、該細胞に結合した結合メンバーの再会合は可能にするが、過剰な遊離の結合メンバーの実質的な再会合を可能にしない条件下でインキュベートし、それによって再形成した二本鎖を生成する工程;
(f)該再形成した二本鎖を含む核酸を検出し、それによって該細胞を検出する工程を包含する方法。
(項目37)
前記細胞は、細菌細胞、動物細胞、植物細胞および真菌細胞からなる群から選択される、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記動物細胞は、ヒト細胞である、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記ヒト細胞は、疾患を有する、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記第1一本鎖核酸は、配列番号1を含み、そして前記第2一本鎖核酸は、配列番号2もしくは配列番号3を含む、項目36に記載の方法。
(項目41)
前記第1一本鎖核酸および前記第2一本鎖核酸は、ポリクローナル抗体である、項目36に記載の方法。
(項目42)
前記第1抗体および前記第2抗体は、同じポリクローナル抗体のアリコートである、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記工程(d)は、前記溶液を加熱する工程を包含する、項目36に記載の方法。
(項目44)
前記加熱する工程は、約45℃で実施される、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記加熱工程は、前記二本鎖の溶解温度よりも高い温度で実施される、項目43に記載の方法。
(項目46)
前記工程(e)は、前記複合体を希釈する工程、および該希釈した複合体を室温でインキュベートする工程を包含する、項目36に記載の方法。
(項目47)
前記複合体は、少なくとも10倍希釈される、項目46に記載の方法。
(項目48)
前記複合体は、少なくとも100倍希釈される、項目46に記載の方法。
(項目49)
前記工程(f)は、前記再形成した二本鎖を含む核酸を増幅する工程を包含する、項目36に記載の方法。
(項目50)
増幅は、以下の工程:
(a)前記二本鎖の3'末端をポリメラーゼで伸長する工程であって、ここで、伸長は、
少なくとも1つのプライマーのための結合部位を生成する工程;および
(b)工程(a)において生成した該結合部位に相補的である少なくとも1つのプライマーを用いて、該伸長した二本鎖におけるポリメラーゼ連鎖反応を実施する工程
を包含する、項目49に記載の方法。
(項目51)
前記少なくとも1つのプライマーは、配列番号4もしくは配列番号5を含む、項目50に記載の方法。
(項目52)
前記第1核酸は、その3’末端を介して前記第1抗体に結合し、そして前記第2核酸は、その5’末端を介して前記第2抗体に結合する、項目36に記載の方法。
(項目53)
前記第1核酸および前記第2核酸のうちの少なくとも1つは、スペーサーを介してそれぞれの抗体に結合する、項目52に記載の方法。
(項目54)
分析物の検出のための方法であって、該方法は、以下:
(a)分析物を含むサンプルを提供する工程;
(b)第1一本鎖核酸に結合した、該分析物と相互作用する抗体を含む第1結合メンバーであって、該第1一本鎖核酸は、5’DNA配列および3’RNA配列を含み、該第1一本鎖核酸は、その5’末端を介して該結合メンバーに結合する工程;
(c)第2一本鎖核酸に結合した、該分析物と相互作用する抗体を含む抗体を含む第2結合メンバーを提供する工程であって、該第2一本鎖核酸は、その3’末 端を介して該結合メンバーに結合するDNAを含み、ここで該第2一本鎖核酸は、該第1一本鎖核酸にハイブリダイズして、それにより、DNA−DNAハイブ リッドおよびDNA−RNAハイブリッドの両方の領域からなる核酸二本鎖を介して結合する結合対を形成する工程;
(d)該結合対を該サンプルと接触させ、それによって結合対−分析物複合体を形成する工程;
(e)該複合体をRNaseで消化する工程;
(f)該核酸二本鎖を解離させる工程;
(g)溶液を、該分析物に結合した結合メンバーの再会合は可能にするが、過剰な遊離の結合メンバーの実質的な再会合を可能にしない条件下でインキュベートし、それによって再形成した二本鎖を生成する工程;
(h)該再形成した二本鎖の3’末端を伸長する工程であって、ここで、該伸長は、少なくとも1つのPCRプライマー結合部位を生成する工程;
(i)該再形成した二本鎖を含む核酸を、工程(h)において生成された少なくとも1つのPCRプライマー結合部位に結合する少なくとも1つのプライマーを用いるPCRによって増幅する工程;ならびに
(j)工程(i)の該増幅された核酸を検出することによって、細胞を検出する工程
を包含する方法。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、結合対についての内容、構成および一般的結合スキームを図示する。
【図2】図2は、配列番号1および配列番号2を含む核酸対の二本鎖形成、3’伸長およびPCR増幅についての一般的スキームを提供する。
【図3】図3は、配列番号1および配列番号3を含む核酸対の二本鎖形成、3’伸長およびPCR増幅についての一般的スキームを提供する。
【図4】図4は、9塩基対重複オリゴヌクレオチド鎖および15塩基対重複オリゴヌクレオチド鎖の両方の実時間PCR増幅(ホットスタート)を示す。
【図5】図5は、同種のNADIATMの概略図を示す。
【図6】図6は、核酸対の方向および二本鎖形成を示し、ここでオリゴヌクレオチドの1つ(配列番号1)は、その3’末端に結合したスペーサーを介して結合しており、そして他方のオリゴヌクレオチド(配列番号3)は、その5’末端を介して直接結合している。
【図7】図7は、分析物検出におけるキメラRNA/DNAオリゴヌクレオチドの使用のためのプロセスを図示する。「R」は、リボヌクレオチド塩基の位置を示し、「D」は、デオキシリボヌクレオチド塩基の位置を示し、そして「S」は、スペーサー分子の位置を示す。
【図8】図8は、同種のNADIATMによるPSAの検出のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
上記の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は、例示および説明でしかなく、特許請求されている本発明を制限するものではないことが理解される。本明細書中で使用される場合、特にそうでないことが言及されない限り、単数形の使用は複数を含む。本明細書中で使用される場合、そうでないことが言及されない限り、「または(or)」は、「および/または(and/or)」を意味する。さらに、用語「含んでいる(including)」および他の語形(「含む(includes)」および「含んだ(included)」)の使用は、限定ではない。
【0017】
本明細書中で使用される章の表題は、構成目的のみのためのものであり、記載される内容を限定すると解釈されるべきではない。本出願に引用される全ての文献もしくは文献の部分(特許、特許出願、記事、書籍、手引書および論文が挙げられるが、これらに限定されない)は、本明細書によってその全体があらゆる目的のために明白に参考として援用される。
【0018】
(定義)
本発明の特定の実施形態の説明をさらに進める前に、多くの用語が定義され詳細に記載される。
【0019】
特別な定義が提供されない限り、本明細書に関連して使用される用語、ならびに本明細書に記載の実験室手順、技術および方法は、それらが属する分野の当業者に公知である。標準的な化学記号および略語は、このような記号により表される正式名と交換可能に使用される。したがって、例えば、用語「水素」および「H」は、同一の意味を有することが理解される。標準的な技術が、化学合成、化学分析、薬学的調製、処方、送達、および患者の処置のために使用され得る。標準的な技術が、組換えDNA方法論、オリゴヌクレオチド合成、および組織培養などのために使用され得る。当該分野において一般的に達成されるか、または本明細書に記載されるように、反応および精製技術が、例えば、製造者の明細書にしたがってキットを使用して、実行され得る。上記の技術および手順は、当該分野において周知の従来の方法にしたがって、ならびに本明細書の全体に亘って引用および議論される種々の一般的な参考文献およびより特別な参考文献に記載されるように、一般的に実行され得る。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989))、Harlow&Lane,Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1988))(これらは、あらゆる目的のために参考としてこれらの全体において本明細書に援用される)を参照のこと。
【0020】
「結合メンバー」は、本明細書中で使用される場合、特異性分子と核酸との間に形成される結合体を意味する。結合メンバーと核酸との間に形成された、所定かつ限定的な安定性の二本鎖によって結合した2つの結合メンバーを含む組成物は、「結合対」と呼ばれる。結合対は、分析物と結合して、結合対−分析物複合体を形成し、この複合体は、本明細書中で単に「複合体」と呼ばれる。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「分析物」とは、アッセイにおいて検出することが望ましく、かつサンプル中に存在し得るあらゆる物質をいう。分析物は、限定せずに任意の物質であってもよい。本発明の好ましい実施形態において、分析物は、天然に存在する抗体のための物質または抗体を調製し得るための物質を含む。この分析物は、例えば、タンパク質、ポリペプチド、ハプテン、炭水化物、脂質、薬物、細胞、細胞小成分(subcomponent)もしくは小器官(例えば、リソソーム(lysozome)、ミトコンドリア)または任意の他の種々の生物学的分子もしくは非生物学的分子、それらの複合体もしくは組み合わせであり得る。別の実施形態において、この分析物は抗体である。なお別の実施形態において、この分析物は核酸(DNA、RNA、PNA、およびこれらの混合物である核酸またはヌクレオチド誘導体もしくはアナログを含む核酸)である。
【0022】
本発明の組成物、方法およびキットを使用して検出され得る多価リガンド分析物は、通常、ポリ(アミノ酸)(すなわち、ポリペプチドおよびタンパク質)、多糖類、核酸、およびそれらの組み合わせである。このような組み合わせとしては、細胞成分、組織、細菌、ウイルス、細胞壁、細胞膜、細胞小器官、染色体、遺伝子、ミトコンドリア、および核などが挙げられる。本発明の一局面にしたがって、特定の分析物は、核酸を含まない。
【0023】
広範な種類のタンパク質分析物は、本発明の方法を使用して有利に検出され得る。このようなタンパク質分析物は、ファミリー(family)(各々のファミリーは、類似の構造的特徴、生物学的機能、および特定の微生物(特に、疾患原因微生物)への関連性などを有する)にしたがって分類され得る。本発明に関して特に関心のあるタンパク質ファミリーとしては、例えば、免疫グロブリン、サイトカイン、酵素、ホルモン、癌抗原、栄養マーカー、組織特異的抗原、および生物兵器(biowarfare agent)が挙げられる。これらのタンパク質分析物は、血液、血清、血漿、脊髄液、関節液、唾液、尿、精液、人工関節の流体(prosthetic fluid)、細胞または組織中に存在し得る。
【0024】
以下は、構造で関連するタンパク質分析物のクラスの例であり、これらは、本発明の組成物、方法およびキットを使用して検出され得る:
プロタミン
ヒストン
アルブミン
グロブリン
硬タンパク質
リン酸化タンパク質
ムコタンパク質。
【0025】
以下の例は、ヒト血漿で見出される、臨床的に重要なタンパク質であり、これらは、本発明の組成物、方法およびキットを使用して検出され得る:
α−リポタンパク質
α1−アンチトリプシン
トランスコルチン(transcortin)
4.6S−ポストアルブミン(postalbumin)
貧トリプトファン(tryptophan−poor)
α−糖タンパク質
α1χ−糖タンパク質
チロキシン結合グロブリンインターαトリプシンインヒビター(Inter−α−trypsin−inhibitor)
Gc−グロブリン
(Gc1−1)
(Gc2−1)
(Gc2−2)
ハプトグロビン
(Hp1−1)
(Hp2−1)
(Hp2−2)
セルロプラスミン
コリンエステラーゼ
α−リポタンパク質
ミオグロビン
C反応性タンパク質
α−マクログロブリン
α−HS−糖タンパク質
Zn−α−糖タンパク質
α−ニューラミノ(Neuramino)−糖タンパク質
エリスロポエチン
β−リポタンパク質
トランスフェリン
ヘモペキシン
フィブリノーゲン
プラスミノーゲン
β−糖タンパク質I
β−糖タンパク質II
免疫グロブリンG
(IgG)またはγG−グロブリン
分子式:γ2k2またはγ2λ2
免疫グロブリンA(IgA)またはγA−グロブリン
分子式:(α κまたは(α κ
免疫グロブリンM(IgM)またはγM−グロブリン
分子式:(μκまたは(μ λ
免疫グロブリンD(IgD)またはγD−グロブリン(γD)
分子式:(.delta.κ)または,delta.λ
免疫グロブリンE(IgE)またはγE−グロブリン(γE)
分子式:(εκ)または(ε λ
遊離のκ軽鎖およびλ軽鎖
補体因子:
C’1
C’1q
C’1r
C’1s
C’2
C’3
β
α
C’4
C’5
C’6
C’7
C’8
C’9。
【0026】
本発明の組成物、方法およびキットを使用して検出され得る重要な血液凝固因子としては、以下の表に列挙される例が挙げられる。
【0027】
【表1】

本発明の組成物、方法およびキットを使用して検出され得る重要なタンパク質ホルモンとしては、以下が挙げられる:
ペプチドホルモンおよびタンパク質ホルモン
副甲状腺ホルモン(parathromone)
チロカルシトニン(thyrocalcitonin)
インスリン
グルカゴン
リラキシン
エリスロポエチン
メラノトロピン(melanotropin)(メラニン細胞刺激ホルモン;インターメジン)
ソマトトロピン(成長ホルモン)
コルチコトロピン(副腎皮質刺激ホルモン)
チロトロピン
濾胞刺激ホルモン
黄体形成ホルモン(間質細胞刺激ホルモン)
黄体乳腺栄養ホルモン(luteomammotropic hormone)(ルテオトロピン(luteotropin)、プロラクチン)
ゴナドトロピン(絨毛性ゴナドトロピン)
組織ホルモン
セクレチン
ガストリン
アンギオテンシンIおよびII
ブラジキニン
ヒト胎盤ラクトゲン
サイトカイン
IL 1
IL 2
IL 4
IL 6
IL 8
IL10
EGF
TNF
NGF
癌抗原
PSA
CEA
αフェトプロテイン
酸性ホスファターゼ
CA19.9
CA125
組織特異的抗原
アルカリホスファターゼ
ミオグロビン
CPK−MB
トロポニン
BNP
Pro−BNP
カルシトニン
ミエリン塩基性タンパク質
神経下垂体由来のペプチドホルモン
オキシトニン
バソプレッシン
放出因子(RF)CRF、LRF、TRF、ソマトトロピン−RF、GRF、FSH−RF、PIF、MIF
リシン
ジフテリア毒素
ボツリヌス毒素(botulism toxin)
ブドウ球菌エンテロトキシンB。
【0028】
細菌およびウイルスもまた、本発明の組成物、方法およびキットを使用して検出され得る分析物である。これらの生物学的分析物に含まれるものは、特に以下のものである:
コリネバクテリウム
Corynebacterium diphtheria
肺炎球菌
Diplococcus pneumoniae
レンサ球菌
Streptococcus pyrogenes
Streptococcus salivarus
ブドウ球菌
Staphylococcus aureus
Staphylococcus albus
ナイセリア
Neisseria meningitides
Neisseria gonorrhea
腸内細菌科
大腸菌型
Escherichia coli
Aerobacter aerogenes
Klebsiella pneumoniae
サルモネラ
Salmonella typhosa
Salmonella choleraesuis
Salmonella typhimurium
赤痢菌
Shigella dysenteria
Shigella schmitzii
Shigella arabinotard
Shigella flexneri
Shigella boydii
Shigella sonnei
他の腸内桿菌
Proteus vulgaris
Proteus mirabilis
Proteus species
Proteus morgani
Pseudomonas aeruginosa
Alcaligenes faecalis
Vibrio cholerae
Hemophilus−Bordetella)群
Hemophilus influenza
Hemophilus ducryi
Hemophilus hemophilus
Hemophilus aegypticus
Hemophilus parainfluenza
Bordetalla pertussis
Pasteurellae
Pasteurella pestis
Pasteurella tulareusis
Brucellae
Brucella melitensis
Brucella abortus
Brucella suis
好気性胞子形成桿菌
Bacillus anthracis
Bacillus subtilis
Bacillus megaterium
Bacillus cereus
嫌気性胞子形成桿菌
Clostridium botulinum
Clostridium tetani
Clostridium perfringens
Clostridium novyi
Clostridium septicum
Clostridium histolyticum
Clostridium tertium
Clostridium bifermentans
Clostridium sporogenes
マイコバクテリア
Mycobacterium tuberculosis hominis
Mycobacterium bovis
Mycobacterium avium
Mycobacterium leprae
Mycobacterium paratuberculosis
放線菌類(真菌様細菌)
Actinomyces Isaeli
Actinomyces bovis
Actinomyces naeslundii
Nocardia asteroides
Nocardia brasiliensis
スピロヘータ
Treponema pallidum
Treponema pertenue
Treponema carateum
Borrelia recurrentis
Leptospira icterohemorrhagiae
Leptospira canicola
Trypanasomes
マイコプラズマ
Mycoplasma pneumoniae
他の病原体
リケッチア(細菌様寄生生物)
Rickettsia prowazekii
Rickettsia mooseri
Rickettsia rickettsii
Rickettsia conori
Rickettsia australis
Rickettsia sibiricus
Rickettsia akari
Rickettsia tsutsugamushi
クラミジア(分類不能寄生細菌/ウイルス)
クラミジア因子(命名未定)
真菌
Cryptococcus neoformans
Blastomyces dermatidis
Hisoplasma capsulatum
Coccidioides immitis
Paracoccidioides brasiliensis
Candida albicans
Aspergillus fumigatus
Mucor corymbifer (Absidia corymbifera

Rhizopus oryzae
Rhizopus arrhizua
Phycomycetes
Rhizopus nigricans
Sporotrichum schenkii
Flonsecaea pedrosoi
Fonsecacea compact
Fonsecacea dermatidis
Cladosporium carrionii
Phialophora verrucosa
Aspergillus nidulans
Madurella mycetomi
Madurella grisea
Allescheria boydii
Phialophora jeanselmei
Microsporum gypseum
Trichophyton mentagrophytes
Keratinomyces ajelloi
Microsporum canis
Microsporum adouini
Trichophyton rubrum
ウイルス
アデノウイルス
ヘルペスウイルス
Herpes simplex
Varicella(水疱)
Herpes Zoster(帯状疱疹)
Virus B
サイトメガロウイルス
ポックスウイルス
Variola(天然痘)
ワクシニア
ウシポックスウイルス(Poxvirus bovis)
パラワクシニア
伝染性軟属腫
ピコルナウイルス
ポリオウイルス
コクサッキーウイルス
ECHOウイルス(Echovirus)
ライノウイルス
ミクソウイルス
パラインフルエンザ(1−4)
流行性耳下腺炎ウイルス
ニューカッスル病ウイルス
麻疹ウイルス
リンダーペストウイルス(Rinderpest Virus)
イヌジステンパーウイルス
RSウイルス
風疹ウイルス
アルボウイルス
東部ウマ脳炎ウイルス(Eastern Equine Encephalitis Virus)
西部ウマ脳炎ウイルス(Western Equine Encephalitis Virus)
シンドビスウイルス
チクングニヤウイルス
セムリキ森林ウイルス(Semliki Forest Virus)
マヨラウイルス(Mayora Virus)
セントルイス脳炎ウイルス
発疹チフスリケッチア
カリフォルニア脳炎ウイルス
コロラドダニ熱ウイルス
黄熱病ウイルス
デング熱ウイルス
レオウイルス
レオウイルス1〜3型
レトロウイルス
ヒト免疫不全ウイルスIおよびII(HIV)
ヒトTリンパ球向性ウイルスIおよびII(HTLV)
肝炎
A型肝炎ウイルス
B型肝炎ウイルス
C型肝炎ウイルス
腫瘍ウイルス
ラッシャー白血病ウイルス
グロスウイルス
マロネー白血病ウイルス(Maloney Leukemia Virus)
ヒトパピローマウイルス。
【0029】
さらに、患者の正常な組織もしくは細胞または罹患した組織もしくは細胞を検出することが望ましくあり得る。特定の循環する癌または他の細胞の存在または不在は、例えば、疾患のための診断になり得る。したがって、ヒト患者の内因性細胞は、本発明の組成物、方法およびキットを使用して有利に検出され得る分析物である。
【0030】
用語「サンプル」は、本明細書中で使用される場合、物質(多くの場合、生物学的材料に由来する水溶液もしくは水性懸濁液)のアリコートを意味する。本発明の方法によって分析物の存在についてアッセイされるサンプルとしては、例えば、細胞、組織、ホモジネート、溶解物、抽出物、精製されたタンパク質もしくは部分的に精製されたタンパク質および他の生物学的分子ならびにその混合物が挙げられる。代表的に本発明の方法において使用されるサンプルの非限定の例としては、以下が挙げられる:ヒトおよび動物の体液(例えば、全血、血清、血漿、脳脊髄液、痰、気管支洗浄液、気管支吸引物、尿、リンパ液ならびに気管、腸管および生殖管の種々の外部分泌物、涙、唾液、乳、白血球、骨髄腫など);細胞培養物上清のような生物学的流体;組織標本(固定されていても固定されていなくてもよい);ならびに細胞標本(固定されていても固定されていなくてもよい)。
【0031】
本発明の方法において使用されるサンプルは、アッセイ形式、およびアッセイされる組織、細胞、抽出物、または他の材料(特に生物学的材料)の性質に基づいて変動する。細胞もしくは他のサンプルから、例えば、ホモジネートおよび抽出物(例えば、タンパク質抽出物)を調製するための方法は、当該分野で周知であり、そして、本発明に適合性であるサンプルを得るために容易に適合され得る。
【0032】
用語「接触」は、本明細書中で使用される場合、一般に、成分、試薬、分析物もしくはサンプルの、他への接近を提供することをいう。例えば、接触は、結合対を含む溶液と分析物を含むサンプルとを混合することを包含し得る。1つの成分、試薬、分析物もしくはサンプルを含む溶液はまた、他の成分もしくは試薬(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)もしくは界面活性剤)を含み得、これらは、混合、相互作用、組み込み、または成分、試薬、分析物および/もしくはサンプルの間の接触に有利である他の物理現象もしくは化学現象を促進し得る。本発明の1つの実施形態において、接触は、送達装置(例えば、ピペットベースのデバイスもしくはシリンジベースのデバイス)を用いて、結合対を含む溶液を、分析物を含むサンプルに添加することを包含する。
【0033】
本明細書中で使用される用語「検出」は、所定の分子の存在を評価する任意の方法をいう。これを達成するために使用される技術としては、以下が挙げられ得るが、これらに限定されない:PCR、ヌクレオチド配列決定、PCR配列決定、分子ビーコン技術、ハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーションおよびその後のPCR、蛍光、放射性標識、リン光および吸光度。検出のために使用され得る試薬の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:放射性標識、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ)、蛍光、リン光、生物発光、化学発光、親和性標識(例えば、ビオチン、アビジンもしくはストレプトアビジン)および当業者に周知である他の試薬。
【0034】
本明細書中で使用される場合、用語「識別可能」は、異なるマーカー、種もしくは分析物の間を実験的に識別する能力を意味する。本発明の特定の実施形態において、本発明の結合対もしくはアッセイは、多数の分析物を検出するために使用され得る。特定のこれらの実施形態において、長さおよび配列の両方において同一である配列を構成する核酸マーカーは存在しない。2種のマーカーは、同一のコア配列を有し得るが、これらのマーカーは、大きさおよび/または異なる配列に基づいて識別可能である。好ましい実施形態において、検出産物は、長さにおいて異なる。他の実施形態において、マーカーは、異なる配列特異的プローブに結合する配列を有する。これらの実施形態は限定ではなく、そして他の実施形態が、本発明によって使用されることが想定され得る。
【0035】
用語「ポリヌクレオチド」および「核酸(分子)」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態をいうために、交換可能に使用される。ポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドおよび/またはそのアナログを含み得る。ヌクレオチドは、任意の三次元構造を有し得、そして既知もしくは未知の任意の機能を果たし得る。用語「ポリヌクレオチド」は、一本鎖分子、二本鎖分子および三重螺旋状分子を含む。「オリゴヌクレオチド」は、一般に、一本鎖核酸もしくは二本鎖核酸(代表的にはDNA)の、5と約100との間のヌクレオチドのポリヌクレオチドをいう。オリゴヌクレオチドはまた、オリゴマーもしくはオリゴとしても知られ、そして遺伝子から単離され得るか、または当該分野で公知の方法によって、(例えば、化学的にもしくは酵素学的に)合成され得る。「プライマー」は、通常は一本鎖の、酵素媒介型核酸合成の開始のための3’−ヒドロキシル末端を提供する、オリゴヌクレオチドを意味する。以下は、ポリヌクレオチドの非限定の実施形態である:遺伝子、遺伝子フラグメント、エキソン、イントロン、mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝状ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブおよびプライマー。核酸分子はまた、改変核酸分子(例えばメチル化核酸分子および核酸分子アナログ)を含み得る。プリンおよびピリミジンのアナログは、当該分野で公知であり、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アジリジニルシトシン(aziridinycytosine)、4−アセチルシトシン、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−マルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチル−アミノメチルウラシル、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルプソイドウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、プソイドウラシル、5−ペンチルニルウラシルおよび2,6−ジアミノプリン。デオキシリボ核酸におけるチミンの代替としてのウラシルの使用もまた、ピリミジンの類似形態とみなされる。
【0036】
糖改変(例えば、2’−o−メチル、2−フルオロなど)およびリン酸骨格改変(例えば、モルホリノ、PNA’、チオアート、ジチオアートなど)は、単独で、もしくは組み合わせて、本発明の核酸分子に組み込まれ得る。1つの実施形態において、例えば、本発明の核酸は、改変された糖および改変されたリン酸骨格を含み得る。別の実施形態において、本発明の核酸は、糖、塩基およびリン酸骨格への改変を含み得る。
【0037】
用語「核酸マーカー」とは、核酸増幅反応(例えばPCR反応)において適切に設計されたオリゴヌクレオチドプライマーと共に使用される場合に予測されたサイズもしくは他の選択された特性の検出産物を産生する核酸分子を意味する。当業者は、PCRのための適切なオリゴヌクレオチドプライマーの設計をよく知っており、そして本発明の局面を容易にするプログラムは、購入可能であり、そしてインターネットを通じて利用可能である(例えば、以下のhttpサイトを参照のこと:bibiserv.techfak.unibielefeld.de/genefisher)。核酸マーカーは、直鎖状であっても、環状であってもよい。好ましい実施形態において、核酸マーカーは、選択されたプライマーについての結合部位(各末端もしくはその近くに位置する)を有する、所定の直鎖状核酸配列を含む。環状DNA分子において、プライマーは、末端に存在するよりむしろ内部に存在し、そして(例えば、ローリングサークル増幅のために)1つのプライマーが使用される。増幅されたDNAは、任意の利用可能な方法を用いて検出され得る。これらの方法としては、実時間PCR、SYBR(登録商標)Green染色もしくは臭化エチジウム染色のような技術が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の他の実施形態において、増幅プライマーのための結合部位は、所定の長さの規定されないDNA配列、もしくは規定されない配列に加えて別の同定可能な特性(例えば検出可能な配列)を含むDNA配列の、両側に位置する。いくつかの実施形態において、核酸マーカーは、増幅された配列の大きさもしくは質量によって識別可能である;従って、プライマーの間のDNA配列は、正確な配列として規定される必要はなく、塩基の数として規定されるだけでよい。あるいは、分子ビーコン(後出)への結合部位の長さが供給される限り、核酸マーカー全体の大きさおよび/または配列は、規定される必要はない。さらなる実施形態において、プライマー結合部位の間に位置するDNA配列は、PCR反応の間に検出され得る「特性同定配列」を含む。蛍光シグナル生成は、例えば、配列特異的(分子ビーコン、TaqMan(登録商標)、蛍光発生プライマー(例えば、LUXTMプライマー(Invitrogen(Carlsbad,CA.))または質量依存的(例えば、SYBR(登録商標)Green、臭化エチジウム)であり得る。提供された例は、当業者が本発明の方法における使用のための適切な代替マーカーであることを認識するような、可能性のある核酸検出スキームの徹底的な列挙であることを意味しない。
【0038】
用語「特異性分子」は、本明細書中で使用される場合、別の分子に特異的に結合可能である任意の分子をいう。1つの実施形態において、特異性分子は、抗体である。本発明の他の実施形態において、特異性分子としては、限定されないが、以下が挙げられる:生物学的レセプター分子(例えば、インスリンレセプター);レセプターに対するリガンド(例えば、インスリンレセプターについてのインスリン);抗原(例えば、抗体に結合するための抗原)、ならびに、別の分子(例えば、ビオチンおよびアビジン)に対して親和性を有する、生物学的分子、化学分子または他の分子。本発明の特異性分子は、天然に存在する分子の全体を含む必要はなく、天然に存在する分子の一部分、フラグメントもしくはサブユニットのみから構成され得る(例えば、抗体のFabフラグメント)。特異性分子は、当該分野で公知の任意の方法によって生成され得る。例えば、抗体は、ハイブリドーマ組織培養物上清もしくは腹水から調製される抗血清において見出され得るか、または、当該分野で周知であるように、組換え発現系に由来し得る。例えば、抗体、レセプターもしくは他の種のフラグメント、部分もしくはサブユニットは、化学的手段、酵素的手段もしくは他の手段によって生成され得、例えば、周知の分子(例えば、Fab、Fab’)もしくは新規な分子を生じ得る。本発明はまた、特異性分子が、組換え分子、キメラ分子およびハイブリッド分子(例えば、ヒト化抗体および霊長類化抗体、ならびに他の天然に存在しない抗体形態)を含み得ることを企図する。当業者は、抗体の種々の形態を記載する上記の非限定の例はまた、他の特異性分子にも拡張され、従って、非抗体分子の例えば組換え形態、キメラ形態、ハイブリッド形態および短縮(truncated)形態が、本発明の方法において使用され得ることを、理解する。
【0039】
本明細書で使用される用語「特異的に結合する」および「特異的な結合」により、抗体または他の分子(特に、本発明の親和性分子)が、本発明の特定の条件下で、他の分子に結合する親和性よりも大きな親和性で、標的(例えば、抗原、リガンドまたは他の分析物)に結合することが意味される。当該分野で公知であるように、抗体または抗体フラグメントは、他の分子(例えば、抗原)に結合することができる領域を含むポリペプチド分子である。本発明の種々の実施形態において、「特異的に結合する」とは、抗体または他の親和性分子が、標的分子に無関係な分子に結合する親和性よりも、少なくとも約10倍大きな親和性、好ましくは少なくとも約10倍大きな親和性、より好ましくは少なくとも約10倍大きな親和性、および最も好ましくは少なくとも約10倍大きな親和性で、標的分析物分子に結合することを意味し得る。代表的に、特異的な結合とは、非特異的結合よりも、約10倍〜約10倍高い範囲の親和性をいう。いくつかの実施形態において、特異的な結合は、非特異的結合よりも10倍高い親和性により特徴付けられ得る。「1〜10」のように、本明細書に範囲が現れる場合にはいつでも、この範囲は、限定することなく、所定の範囲での各々の整数または尺度の単位をいう。したがって、1〜10により、各々の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10およびこの間の任意の下位単位(subunit)が意味される。
【0040】
「ポリクローナル抗体」または「PAb」は、抗原またはその抗原性の機能性誘導体で免疫化した動物の血清に由来する抗体分子の不均一な集団である。ポリクローナル抗体の生成のために、宿主動物(例えば、ウサギ、マウスおよびヤギ)は、必要に応じてアジュバントを補充した、抗原またはハプテン−キャリア結合体での注射により、免疫化され得る。ポリクローナル抗体は、抗血清中の他の種から精製されていなくても、精製されても、部分的に精製されてもよい。ポリクローナル抗体 の調製および精製のための技術は、当該分野において周知であり、種々の一般的な参考文献およびより特別な参考文献(Kabat&Mayer、Experimental Immunochemistry,第2版(Thomas,Springfield,IL(1961));Harlow&Lane,Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1988));およびWeir,Handbook of Experimental Immunology,第5版(Blackwell Science,Cambridge,MA(1996))が挙げられるが、これらに限定されない)に記載される。
【0041】
「モノクローナル抗体」または「Mab」(これらは、特定の抗原に対する抗体の均質な集団である)は、抗体分子の生成を提供する任意の技術(例えば、細胞株の連続培養)により取得され得る。これらの技術としては、KoehlerおよびMilstein,Nature,256:495−7(1975)ならびに米国特許第4,376,110号のハイブリドーマ技術;ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kosborら、Immunology Today,4:72(1983);Coteら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,80:2026−30(1983));EBVハイブリドーマ技術(Coleら、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,New York,pp.77−96(1985))が挙げられるが、これらに限定されない。このような抗体は、任意の免疫グロブリンクラス(IgG、IgM、IgE、IgA、IgDおよびこれらの任意のサブクラスを含む)であり得る。本発明のMAbを産生するハイブリドーマは、インビトロまたはインビボで培養され得る。インビボでの高力価のMAbの生成は、現在好ましい生成方法である。
【0042】
さらに、適切な生物学的活性のヒト抗体分子由来の遺伝子とともに適切な抗原特異性のマウス抗体分子由来の遺伝子をスプラシングすることによる「キメラ抗体」の生成のために開発された技術(Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.,81:6851−6855(1984);Takedaら、Nature,314:452−54(1985))が使用され得る。キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種に由来する分子(例えば、マウスMAbに由来する可変領域とヒト免疫グロブリン定常領域とを有するもの)であり得る。
【0043】
あるいは、一本鎖抗体の生成に関して記載された技術(米国特許第4,946,778号;Bird、Science 242:423−26(1988);Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85:5879−83(1988);および、Wardら、Nature、334:544−46(1989))は、本発明での使用に適する遺伝子−一本鎖抗体を生成するために適合され得る。一本鎖抗体は、代表的に、アミノ酸架橋を介してFv領域の重鎖フラグメントおよび軽鎖フラグメントを連結し、一本鎖ポリペプチドを生じることによって形成される。
【0044】
特異的なエピトープを認識する抗体は、公知の技術により生成され得る。例えば、このようなフラグメントとしては、抗体分子のペプシン消化によって生成され得るF(ab’)フラグメント、およびF(ab’)フラグメントのジスルフィド架橋を還元することによって生成され得るFabフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、
Fab発現ライブラリが構築され得(Huseら、Science、246:1275−81(1989))、所望の特異性を有するモノクローナルFabフラグメントの迅速かつ容易な同定が可能になる。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「ハプテン」とは、抗体により認識され得る、小さなタンパク質様抗原決定基または非タンパク質性抗原決定基をいう。代表的に、ハプテンは、より大きな種の一部を除いて、動物において抗体形成を誘発しない。例えば、小さなペプチドハプテンは、抗ハプテン抗体応答を生成するために、しばしばキャリアタンパク質(例えば、キーホールリンペット(keyhole limpet)ヘモシアニン)に連結される。「抗原」は、動物において抗体応答を生成し得、生じる抗体によって認識され得る高分子である。抗原およびハプテンの両方が、少なくとも1つの抗原決定基または「エピトープ」を含み、これは、抗体に結合する抗原またはハプテンの領域である。代表的に、ハプテン上のエピトープは、その分子全体である。
【0046】
「サンドイッチ対抗体」または「サンドイッチ抗体対」との用語は、本明細書において使用される場合、サンドイッチ型イムノアッセイにおいて使用されるのに適切な、代表的には、単一特異的な抗体(例えば、モノクローナル抗体)のペア(対)をいう。このペアの抗体の各々は、同一分子上の異なるエピトープに結合し、この対の抗体の両方ともが、同時にその抗原に結合し得る。サンドイッチアッセイにおいて適切な抗体の対を同定する方法は、当業者にとって周知である。当業者はまた、多様な他の分子がサンドイッチ対として使用され得ることを認識している。例えば、レセプター被検体は、そのレセプターに対するリガンドとそのリガンドの結合には関係ないレセプター上のエピトープに結合する抗体との間に挟まれる。したがって、抗体とリガンドは、レセプター被検体のためのサンドイッチ対として使用され得る。
【0047】
「レセプター」または「生物学的レセプター」とは、代表的に、細胞内または細胞表面上の分子構造をいい、これは、特異的な物質(例えば、「リガンド」)に選択的に結合し、その結合に付随する特異的な生理的効果を生じることにより特徴付けられる。レセプターの例としては、ペプチドホルモン、神経伝達物質、抗原、補体フラグメントおよび免疫グロブリンに対する細胞表面レセプター、ならびにステロイドホルモンに対する細胞質レセプターが挙げられる。しかしながら、本明細書で使用される場合、レセプターは、代表的に単離および精製され得、そして生理的効果も他の生物学的効果も必ずしも生じないか、または生じ得ない。本発明の方法は、特異的な物質へのレセプターの選択的な結合を利用する。
【0048】
用語「リガンド」とは、一般的にレセプターに結合する分子をいう。代表的に、リガンドは、ホルモンまたは神経伝達物質のような小さな可溶性分子である。
【0049】
用語「固体支持体」とは、例えば、分析物、抗体または複合体を固定化するために使用され得る任意の固相をいう。適切な固体支持体は当該分野において周知であり、これらとしては以下が挙げられる:反応トレイ(例えば、マイクロタイタープレート)のウェルの壁、試験管の壁、ポリスチレンビーズ、常磁性ビーズもしくは非磁性ビーズ、ニトロセルロースメンブレン、ナイロンメンブレン、ラテックス粒子のような微粒子、およびヒツジ(または他の動物)赤血球。固体支持体のための代表的な材料としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン、セルロース、ナイロン、ラテックスおよびそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、固体支持体は、所望の分子(例えば、分析物)の付着を促進するか、および/または、非特異的結合もしくは他の望ましくない相互作用を阻止するために、コーティング、誘導体化またはその他の方法で改変され得る。特定の「固相」を選択することは常に重要であるとは限らず、これは、使用されるアッセイに依存して、当業者により選択され得る。したがって、ラテックス粒子、微粒子、常磁性ビーズもしくは非磁性ビーズ、メンブレン、プラスチックチューブ、マイクロタイターウェルの壁、ガラスチップまたはシリコンチップ、および赤血球は全て適切な固体支持体である。便利なように、固体支持体は、種々の検出方法に適合するように選択され得る。例えば、96ウェルプレートまたは384ウェルプレートが、例えば、ロボットワークステーション(robotic workstation)により自動化されるか、および/または、例えば、プレートレーダーを使用して検出されるアッセイに使用され得る。フィルムベースの可視化を利用するオートラジオグラフィー検出工程または化学発光検出工程を含み得る本発明の方法に関して、この固体支持体は、ニトロセルロースメンブレンまたはナイロンメンブレンのような薄いメンブレンであり得る。サンドウィッチ免疫アッセイ(sandwich immunoassay)が実行される本発明の一実施形態にしたがって、代表的に、反応トレイのウェルの壁が使用される。本発明の代替の実施形態において、常磁性ビーズが固体支持体として使用され得る。固相上に分子を固定化するために適切な方法としては、イオン性相互作用、疎水性相互作用および共有結合性相互作用など、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。しかしながら、固定化法は、概して重要ではなく、特徴付けられていない吸着機構を含み得る。したがって、本明細書で使用される「固体支持体」とは、不溶性であるか、続く反応により不溶性にされ得る任意の材料を言及し得る。固体支持体は、捕捉試薬を誘引および固定化するその固有の能力に関して、選択され得る。あるいは、この固相は、捕捉試薬を誘引および固定化する能力を有するさらなるレセプターを保持し得る。このさらなるレセプターは、捕捉試薬それ自体またはこの捕捉試薬に結合体化された荷電物質のいずれかに対して、反対に荷電されている物質を含み得る。本発明のなお別の実施形態において、さらなるレセプター分子は、固相に固定化(結合)され、特異的な結合反応を介して捕捉試薬を固定化する能力を有する、任意の特異的な結合メンバーであり得る。このさらなるレセプター分子は、このアッセイの実行前または実行中に、固相への捕捉試薬の間接的な固定化を可能にする。したがって、この固相は、プラスチック、誘導体化プラスチック(derivatized plastic)、常磁性金属もしくは非磁性金属、試験管のガラス表面もしくはシリコン表面、マイクロタイターウェル、シート、ビーズ、微粒子、チップ、または当業者に公知な他の形態であり得る。
【0050】
「ペプチド」とは、一般的に、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸の短い鎖をいう。代表的に、ペプチドは、約2〜100アミノ酸、より代表的には約4〜50アミノ酸、最も一般的には約6〜20アミノ酸のアミノ酸鎖を含む。一般的に、「ポリペプチド」とは、代表的にペプチドよりも長い個々の直鎖配列または分枝鎖配列のアミノ酸をいう。「ポリペプチド」は、通常、少なくとも約100〜1000アミノ酸長、より代表的には少なくとも約150〜600アミノ酸、そしてしばしば少なくとも約200〜約500アミノ酸を含む。「タンパク質」としては、単一のポリペプチド、および複数のポリペプチド鎖の複合体が挙げられ、これらのポリペプチド鎖は同一であり得るか、または異なり得る。タンパク質内の複数の鎖は、二次構造、三次構造および四次構造ならびに一次アミノ酸配列構造によって特徴付けられ得、例えば、ジスルフィド結合によってともに保持され得、そして合成後改変(例えば、限定せずに、グリコシル化、リン酸化、切断または他のプロセシング)を含み得る。IgGタンパク質のような抗体は、例えば、ジスルフィド結合によってともに保持される4本のポリペプチド鎖(すなわち、2本の重鎖および2本の軽鎖)から構成される。さらに、タンパク質は、さらなる成分(例えば、付随する金属(例えば、鉄、銅、および硫黄)、または他の部分)を含み得る。ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質の定義としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:生物学的に活性な形態および不活な形態;変性形態およびネイティブな形態;ならびに、これらの変異体形態、改変された形態、切断形態、ハイブリッド形態およびキメラ形態。本発明のペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質は、任意の供給源に由来し得るか、または任意の方法(天然に存在する組織または他の材料からの抽出;宿主生物(例えば、細菌細胞、真菌細胞、植物細胞、昆虫細胞または動物細胞)での組換え生成;および、当業者に周知の方法を使用する化学合成が挙げられるが、これらに限定されない)によって取得され得る。
【0051】
本明細書で使用される用語「結合体」とは、ともに共有結合されているか、またはその他の方法でともに連結されている2つの分子をいう。一実施形態において、核酸結合体は、核酸をタンパク質、ポリペプチドまたは他の親和性分子に共有結合させることにより生成される。本発明の好ましい実施形態において、タンパク質、ポリペプチドまたは他の親和性分子は、連結基(linking group)を介して核酸に共有結合され、結合体を形成する。
【0052】
本発明の方法によって、サンプル中の分析物の存在を検出するための「キット」は、例として、その中に配置される、選択された分析物に特異的な結合対(binding pair)を有する少なくとも1つの収容手段を含み得る。キットは、少なくとも1つの以下のものを含む他の容器をさらに含み得る:分析物の検出を実行するために必要な緩衝液、溶液または他の試薬および材料;結合対の核酸プローブ成分を増幅させることができる試薬;ならびに、増幅後に核酸の存在を検出することができる試薬。好ましくは、このキットは、使用説明書をさらに含む。診断上の使用が意図される場合、キットはまた、FDAに認可された使用の通知およびそのための説明書も含み得る。
【0053】
詳細には、区分化されたキットは、試薬が別個の容器に含まれる任意のキットを含む。このような容器としては、小さなガラス容器、プラスチック容器またはプラスチック細片もしくは紙の細片が挙げられる。このような容器は、一方の区画から他方の区画への試薬の効率的な移行を可能にし、サンプルと試薬とが相互に混入せず、そして各々の容器の因子または溶液を、定量的な様式で一方の区画から他方の区画に添加することができる。このような容器は、以下を含み得る:試験サンプルを受容する容器、アッセイで使用されるプローブまたはプライマ−を含む容器、緩衝液および試薬(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水、およびTris緩衝液など)を含む容器、ならびに、マーカー核酸、および増幅された産物などを検出するために使用される試薬を含む容器。当業者は、事前に形成された結合対および/または材料、結合対を調製するために必要とされる供給品および試薬が、当該分野で周知の確立されたキット様式に容易に取り込まれ得ることを容易に認識する。
【0054】
本発明の方法によって抗体または他の親和性分子へDNAをカップリングさせるためのキットは、その中に配置される、凍結乾燥され活性化されたDNAを有する少なくとも1つの収容手段を含み得る。このキットは、1つ以上の以下のものを含む他の容器をさらに含み得る:反応後に核酸の存在を検出することができる試薬、緩衝液および因子。好ましくは、このキットは使用説明書をさらに含む。本明細書に記載の分析物を単離およびアッセイするための新規な組成物および方法を作製または使用するためのキットは、既成の微粒気泡または微粒気泡を生成するために使用される薄膜を含み得る。同様に、キットの微粒気泡は、既に付着した親和性分子を含んでも含まなくてもよい。キットは、1つ以上の以下のものを含む他の容器をさらに含み得る:微粒気泡を作製することができるか、または、親和性単離、精製、濃縮などの方法に微粒気泡を活用するのに有用な試薬、緩衝液および因子。好ましくは、このキットは、使用説明書をさらに含む。当業者は、本発明に記載される組成物および方法が、当該分野で周知の確立されたキット様式に容易に取り込まれ得ることを容易に認識する。
【0055】
(同種分析物検出アッセイ)
本発明は、一般に、分析物の検出(特に同種の感度の高い分析物検出)のための所定の条件下で所定のかつ限定的な安定性である、新規な核酸標識された結合対の使用のための、組成物、方法およびキットを提供する。
【0056】
(結合対)
1つの実施形態において、本発明は、分析物の検出のために有用である結合対を提供する。本発明の結合対は、2つの結合メンバーの間に形成され、各々のメンバーは、核酸に結合した特異性分子を有する(図1に示す)。結合メンバーの核酸成分は、その長さの少なくとも一部分にわたって相補的であり、そして二本鎖を形成し得、この二本鎖を介して結合対の2つのメンバーが結合する(図1参照)。
【0057】
(結合対の特異性分子成分)
各結合対の特異性分子は、この対の所望の分析物に対する相互作用を指向する。本発明の特異性分子は、上で記載されたように、別の分子(例えば分析物)と相互作用可能な任意の分子であり得る。好ましい実施形態において、特異性分子は、高い特異性および親和性で分析物と相互作用する。
【0058】
本発明の1つの局面において、特異性分子は、レセプターである。別の局面において、特異性分子は、リガンドである。本発明のなお別の局面において、特異性分子は、抗体である。
【0059】
結合対の個々の特異性分子は、同じ型の分子であってもよく、または異なる型の分子であってもどちらでもよい。1つの実施形態において、対における特異性分子の両方は、レセプターである。別の実施形態において、対における特異性分子の両方は、リガンドである。別の実施形態においては、どちらも抗体である。なお別の実施形態においては、どちらも抗原である。なお別の実施形態において、1つの特異性分子は、リガンドであり、そして他の特異性分子は、レセプターである。なお別の実施形態において、結合対における特異性分子の1つもしくは両方は、核酸である。この実施形態の1つの局面において、標的分析物は、相補的核酸である。この実施形態に別の局面において、標的分析物は、DNA、RNAもしくはタンパク質であるか、またはこれらの複合体の成分である。この実施形態のなお別の局面において、標的分析物は、核酸とタンパク質とを含む複合体であり、そして結合対の特異性分子の1つは、標的分析物の核酸成分に相補的である核酸であり、そして結合対の他の特異性分子は、標的分析物のタンパク質成分に特異的に結合するタンパク質(すなわち、抗体、抗原、リガンド、レセプターなど)である。好ましい実施形態において、結合対の少なくとも1つの特異性分子は、抗体である。
【0060】
抗体は、特異性分子として特に有用である。上で記載された全ての型の抗体は、結合対に対する特異性を付与するために有用であり、これらとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ハイブリッド抗体、組換え抗体、ヒト化抗体、霊長類化抗体、短縮型抗体、単鎖抗体など。
【0061】
結合対を形成するために2つの抗体が使用される場合、この2つの抗体は、同じかもしくは異なる特異性を有し得る。本発明の1つの実施形態において、この2つの抗体は同じエピトープを認識し、そしてこのエピトープは、1つの分析物中に多数回存在する。例えば、結合対における抗体の両方が、細胞の表面上に多くのコピー数で存在する。別の実施形態において、この抗体は、1つの分析物分子において異なるエピトープを認識する。本発明の特定の局面において、両抗体は、1つの分析物分子に同時に結合し得る。本発明のこの局面のいわゆる「サンドイッチ対」抗体は、当該分野で周知である。
【0062】
(結合対の核酸成分)
結合対における各特異性分子は、核酸分子と結合され、すなわち、核酸分子で「標識される」(すなわち、核酸マーカー)。本発明の1つの局面に従って、この核酸は、一本鎖である。別の局面において、この核酸は、部分的に一本鎖である。なお別の実施形態において、この核酸は、全てDNAであるか、全てRNAであるか、またはDNAとRNAとの混合である。他の実施形態において、ヌクレオチドアナログもしくはヌクレオチド誘導体が、使用され得る。別の実施形態において、核酸の一部もしくは全てとして、PNAが使用される。特異性分子は、核酸の3’末端もしくは5’末端のいずれかと結合され得る。本発明の1つの実施形態において、結合対における2つの核酸の末端の自由な端は、相補的であり、それにより、これらは、ハイブリダイズして、限定的かつ所定の安定性の二本鎖核酸領域を形成し得る。この実施形態の1つの局面において、二本鎖を形成する末端の自由な端は、核酸の3’末端である。別の局面において、結合対の1つの核酸の末端の自由な端は、この1つの核酸の末端以外の点で、この結合対の他の核酸の配列と相補的である。本発明の1つの局面において、第1核酸の3’末端は、第2核酸の内部配列と二本鎖を形成する。特定の実施形態において、この核酸は、1つ以上のリンカーもしくはスペーサーを介して、特異性分子と結合する。
【0063】
本発明の核酸のヌクレオチド配列は、これらが果たすことを必要とされる機能的役割よりも重要ではない。従って、結合対の核酸成分が、これらが果たすことを必要とされる機能的役割をなお果たし得る限り、核酸の配列および結合対の核酸成分の長さは、かなり変動し得る。重要なことには、結合対の核酸の配列および長さは、本明細書中に開示される例示的な結合対の正確な配列および長さに限定されない。結合対の核酸は、従って、異なる長さの核酸または異なる配列の核酸であり得る。本発明の結合対の核酸成分の重要な機能は、分析物検出のための非常に感度の高い標識を提供することである。1つの実施形態において、この核酸は、分析物濃度の指標として、増幅され、そして検出される。この核酸は、非常に確立された方法を用いて増幅され得る。例示的な増幅方法としては、種々の米国特許に記載されている方法が挙げられ、これらの内容は、本明細書中でその全体が参考として援用される:PCR(例えば、米国特許第4,683,202号参照)、TMA(例えば、米国特許第5,399,491号参照);SDA(例えば、米国特許第5,270,184号参照)、およびLCR(例えば、米国特許第5,427,930号参照)。
【0064】
広範な種々のヌクレオチド配列が、増幅のために使用され得る。同様に、核酸の長さは、かなり変動し得る。1つの実施形態において、本発明の核酸は、増幅され得る効率を上昇させるために、分子内ヘアピン形成を避けることが望ましい。本発明の特定の局面において、核酸は、非特異的な介入性(intercalating)蛍光色素(例えば、SYBR(登録商標)Green)を用いて検出される。この実施形態に従って、検出シグナルの強度は、検出される核酸の長さの関数である。
【0065】
核酸二本鎖の安定性は、この二本鎖中の核酸鎖の間の相補的な領域の長さに部分的に依存することが、周知である。核酸の間のより長い相補的領域、すなわち「重複」は、形成される二本鎖の安定性を増大する。逆にいえば、より短い重複は、より安定性の低い二本鎖をもたらす。本発明の核酸は、長さ、温度、溶媒および他の条件を変えることによって操作し得るような、所定の安定性を有するように設計される。ハイブリッドの安定性に影響する因子としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:核酸標識化結合対の濃度、塩濃度、温度、有機溶媒(例えば、エタノール)、DMSO、テトラメチルアンモニウムイオン(TMA)、塩基対ミスマッチなど。
【0066】
本発明の1つの局面において、核酸は、内部結合対二本鎖を形成するように設計される。本発明の別の局面において、結合対の核酸二本鎖は、所定の条件下で解離され得、従って、特定の条件下で限定的な安定性を有する。
【0067】
本発明の実施形態において、反応条件は、その各々の標的分析物に結合した結合対のメンバーの間の二本鎖形成を最大にし、一方、標的分析物に結合していない結合対のメンバーの間の二本鎖形成を最小にするように設計される。別の実施形態において、この二本鎖は、分析物に結合している間は安定性を維持するが、アッセイの実施者によって選択的に解離され得るか、溶解され得る。
【0068】
これらの条件下において、熱力学的条件は、未結合対がハイブリダイズしないようにする。本発明の特定の実施形態において、分析物に結合しない結合対は、約1%未満である。他の実施形態において、分析物に結合しない結合対は、約0.1%、0.01%、もしくは0.001%未満である。他の実施形態において、競合核酸(例えば、結合対核酸の間に形成される二本鎖の領域に相補的な核酸)が、遊離の結合メンバーが再会合することを防ぐために使用され得る。同様の効果は、結合対における1つの核酸を、その結合パートナーである核酸にハイブリダイズしない場合に小さなヘアピンを形成するように設計することによって得られ得る。
【0069】
一旦形成されると、結合対と標的分析物との間の複合体の安定性は、ポリメラーゼ酵素を用い、核酸二本鎖の3’末端を伸長することによって増強され得る(米国特許第5,635,602号に記載され、この特許は、本明細書中でその全体が参考として援用される)。
【0070】
本発明の核酸マーカーは、結合対核酸の1つもしくは両方に多くの標識のうちのいずれか1種を組み込むことによって検出され得る。本発明における使用のために適するマーカーの例としては、以下が挙げられる:介入性蛍光分子(例えば、SYBR(登録商標)Greenおよび臭化エチジウム);FRET蛍光共鳴エネルギー移動対(例えば、フルオレセインおよびローダミン);放射性化合物、生物発光化合物、化学発光化合物(例えばアクリジニウムエステル);化学発光消光対;および配列−配列特異的様式で核酸にハイブリダイズする試薬(例えば、分子ビーコン(Kramer)、TaqMan(登録商標)、および蛍光発生プライマー(例えば、LUXTMプライマー;Invitrogen,Carlsbad,CA))。さらに、蛍光核酸三リン酸(NTPおよびdNTP)が、二本鎖核酸対の3’末端の伸長の間に組み込まれ得る。さらに、ニックトランスレーションおよび他の手段によって、標識を組み込むことが可能である。
【0071】
(核酸結合対分析物アッセイ)
本発明はまた、結合対を使用して分析物を検出するための方法を提供する。1つの実施形態において、上述のような分析物特異的結合対が、その分析物と接触させられて、複合体を形成する。結合対のメンバーは、2つの核酸の間に形成される、所定のかつ限定的な安定性の分子内二本鎖によって結合する。さらに、結合メンバーは、結合メンバーと分析物との会合ゆえに、近接した位置で固定され、従って、局所的に高い濃度で存在する。この核酸二本鎖は、次いで、解離され得、そして再会合させられる。
【0072】
当該分野で公知の任意の方法が、二本鎖を解離させるために使用され得る。本発明の1つの実施形態において、解離は、この核酸二本鎖の溶解温度より高くこの複合体を加熱することによって、達成され得る。本発明の別の局面において、塩濃度もしくはイオン強度が、低下させられ得る。本発明のなお別の局面において、この二本鎖を解離させるために、化学的薬剤もしくは生物学的薬剤が、この複合体に添加され得る。
【0073】
本発明の別の局面において、分析物と複合体化していない結合対メンバーの核酸の再会合は、希釈によって防止され得るか、または除去され得る。別の局面において、希釈もしくは他の反応条件が、過剰な有利の結合メンバーの実質的な再会合をさせない。一般的に、実質的な再会合をさせない条件としては、過剰な遊離の結合メンバーの再会合の、5%未満、代表的には1%未満、多くの場合0.1%未満、そして最も多くの場合0.01%未満を含む。この実施形態に従い、結合対は、分析物と接触させられ、それによって、結合対と分析物との間の複合体が形成される。次いで、この複合体は希釈され、それによって、近接に結合した核酸マーカーのハイブリダイゼーションは支持されるが、大量の溶液中のハイブリダイゼーションは支持されない。これらの条件下で、マーカー核酸の3’末端の伸長は、複合体化しそしてハイブリダイズしたマーカー核酸において主に起こるか、またはこれらのマーカー核酸においてのみ起こり、一方、未複合体化核酸は、ハイブリダイズせず、従って、3’末端からの伸長は起こらない。
【0074】
本発明のこの方法に従い、次いで、伸長された二本鎖が、分析物検出のための手段として検出される。本発明の実施形態において、二本鎖を含む核酸は、検出を促進するために増幅される。増幅は、当該分野で公知の任意の方法によって達成され得る。適切な方法としては、PCR、LCR、SDA、およびTMAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
代表的に、核酸増幅方法は、DNAのプライムされた(primed)酵素的合成に依存する。このような方法に従って、遊離の3’OHを有するプライマーは、一本鎖DNAもしくは一本鎖RNAのテンプレートにハイブリダイズされる。次いで、この3’OHは、ポリメラーゼを用いる伸長の開始点を形成し得る。これらのポリメラーゼの例としては、限定されないが、Taq DNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼI、DNAポリメラーゼのKlenowフラグメント、T4 DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、逆転写酵素、Φ29 DNAポリメラーゼ、Bst DNAポリメラーゼ、AccuPrimeTM(Invitrogen)、Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen)、FideliTaqTM DNAポリメラーゼ(Amersham Biosciences)、SequenaseTM、Thermo SequenaseTM DNA、Hot TubTM DNAポリメラーゼ(Amersham Biosciences)、Vent(登録商標)ポリメラーゼ(New England Biolabs)、および9°N DNAポリメラーゼ。
【0076】
本発明の1つの局面において、PCRのためのテンプレートは、その各々の特異性分子を介して分析物に複合体化された2本の鎖の核酸の二本鎖領域を含む核酸分子である。当業者によって理解されるように、PCRのためのテンプレートは、所望のPCR産物よりも長くてもよい。2つの独立したPCRプライマーが、核酸テンプレートの1本の鎖における特定の各部位において、内部的にハイブリダイズし得、そしてDNA合成を開始し得る。残りのRNA産物は、代表的には、1つのプライマーによって規定される5’末端および他のプライマーによって規定される3’末端を有する。
【0077】
次いで、この増幅産物は、例えば、臭化エチジウム、銀染色、オートラジオグラフィー、ドットブロッティング、スロットブロッティングもしくはサザンブロッティングによって染色することにより、検出され得る。あるいは、検出は、核酸の1つもしくは両方、増幅産物もしくは複合体の二本鎖領域への検出分子の組み込みによって達成され得る。本発明の方法における使用のために適する検出分子としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:蛍光分子、蛍光消光分子、化学発光化合物、化学発光消光分子、蛍光ヌクレオチド、酵素標識および放射性標識。
【0078】
本発明の特定の実施形態において、二本鎖検出は、複合体の二本鎖領域へのアクリジニウムエステルの組み込み、ならびに核酸二本鎖を形成していない第1結合対メンバーおよび第2結合対メンバーにおいて標識を選択的に加水分解することによって促進され得る。
【0079】
(二本鎖からの3’伸長およびプライマー結合部位の産生)
本発明は、プライマー結合部位の1つもしくは両方が核酸マーカー配列に存在しない、結合対核酸二本鎖の増幅を介した分析物の検出のための方法を提供する。この実施形態に従い、1つ以上のプライマー結合部位が、結合対が分析物に結合した後に生成される。例えば、核酸マーカー配列の1つもしくは両方が、所望のプライマー配列に同一な配列を、二本鎖領域の外側に組み込み得る。言い換えると、増幅のためのプライマー結合部位は、結合対核酸において存在しないが、核酸二本鎖の3’末端が伸長した後にのみ形成される。
【0080】
この実施形態において、マーカー核酸内に、プライマーに相補的な領域は存在しない(すなわち、プライマー部位は存在しない)。しかし、ハイブリダイゼーション後、マーカーの1つもしくは両方の3’末端は、適切なポリメラーゼを用いて伸長され得る。この伸長は、所望のプライマー配列に同一な配列を包含し、それによって、プライマーに結合するためにその後の増幅工程において使用され得る相補的プライマー結合部位を生成する(図2および図3)。この実施形態の1つの局面において、二本鎖領域が第1核酸マーカーと第2核酸マーカーとの間に形成されそしてその後伸長されない限り、増幅プライマーはハイブリダイズせず、核酸合成/増幅を開始もしない。本発明の別の局面において、検出される分子のみがハイブリダイズするので、バックグラウンド非特異的検出は低下する。
【0081】
以下のヌクレオチド配列を有する、5’アミノC12スペーサーアーム(スペーサーC12 CEホスホルアミダイト;12−(4,4’−ジメトキシトリチロキシ)ドデシル−1−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホルアミダイト)を有する60塩基長のオリゴヌクレオチドが、本発明のこの局面における使用のために適することが見出されている:
(1)5’NH−C12−GCTACGGCTAGATCGTGTCCATGCGCTTACGACTTCGATGCTCGGCTCGCTAGCTAGATG3’[配列番号1]
(2)5’NH−C12−TCTCCAACTCTTCAACGCCATGTTCTTATGATACGAGAGATTCAGCGGAGGCATCTAGCT3’[配列番号2]
(3)5’NH−C12−TCTCCAACTCTTCAACGCCATGTTCTTATGATAC
オリゴヌクレオチド(1)[配列番号1]は、オリゴヌクレオチド(2)[配列番号2]およびオリゴヌクレオチド(3)[配列番号3]の両方と、それぞれ3’末端における最後の9塩基および15塩基について、相補的である。オリゴの間に形成された二本鎖の長さは、特異的なギブスの自由エネルギー(ΔG)を有し、これは、最も近い隣接塩基配列によって制御される。例えば、Breslauer,ら,Proc.Nat’l.Acad.Sci.U.S.A.83:3746−3750(1986)を参照。9塩基対重複および15塩基対重複は、以下の式に従うと、50mMのNaCl中で、それぞれ26℃および42℃の溶解温度(T’)を有する:
=64.9+41*(yG+zC−16.4)/(wA+xT+yG+zC)
式中、w、x、y、zは、それぞれ、配列中の塩基A、T、G、Cの数である。例えば、http://www.basic.nwu.edu/biotools/oligocalc.htmlを参照。重複している鎖は、25℃、50mM NaClにおいて、50nMを超える濃度で存在している場合、ハイブリダイズする(>50%二本鎖)。鎖は、100pM未満の濃度において、平衡で主にモノマーとして存在する(<50%ハイブリッド)。熱力学の原則に従うと、これらのような相補的DNA鎖は、温度、DNA濃度および塩効果の関数として、一本鎖形態と二本鎖形態との間で移行し得る。ハイブリダイズする際、各鎖の3’鎖は、他の鎖に相補的な核酸の合成のための開始点として機能し得る。各鎖は、適切なDNAポリメラーゼおよびヌクレオチド三リン酸の存在下で伸長し得、111塩基対(図2)もしくは105塩基対(図3)のDNA二本鎖を生じる。新しく形成された二本鎖は、上記の部分的に重複している構造に最初には存在していなかった配列を含む。これらの新しい配列は、以下の下流プライマーの存在下で、PCRによって指数的に複製され得る:
5’GCTACGGCTAGATCGTGTCCA3’[配列番号4]、および
5’TCTCCAACTCTTCAACGCCATGTTC3’[配列番号5]
個々の鎖は、第1鎖伸長産物の形成なしには、これらのプライマーの存在下で複製し得ない。
【0082】
図4は、9塩基対および15塩基対の重複するオリゴヌクレオチド鎖の両方の、実時間PCR増幅(ホットスタート)を示す。この図から、十分な濃度の鎖が存在し、1つの鎖がハイブリダイゼーションおよび第1鎖伸長のために相補鎖に十分に近接している可能性が確実にならない限り、増幅は起こらないことが理解され得る。重複する鎖の濃度の上昇は、テンプレート生成において指数的な増大をもたらす(実時間PCR閾値サイクルで測定される)。逆に言えば、例えば支持体を洗浄することによってこの濃度を希釈することは、シグナルを指数的に減少させる。正常な60マーのテンプレートの増幅が、比較として示される。
【0083】
(結合対−分析物複合体の近接効果)
重複するオリゴヌクレオチド標識を使用するサンドイッチイムノアッセイは、NADIAa(核酸検出イムノアッセイ)と呼ばれている。同種形式NADIAと異種形式のNA
DIAとの両方を、実施している。同種NADIAの概略図を、図5に示す。
【0084】
重複するオリゴヌクレオチドで標識された抗体結合メンバーはまた、図4で示されるPCR増幅効果を示す。DNA−Ab結合体の同じ抗原または抗原被膜表面への結合は、重複するオリゴヌクレオチド鎖を互いに近接して固定する。このことは、両鎖の相対濃度をおよびテンプレート形成の可能性を増大する。テンプレートは、一旦形成されると、濃度と実時間PCR閾値シグナルとの間で直線の関係を示す。
【0085】
この近接効果は、捕捉支持体が使用される場合に(すなわち、異種アッセイにおいて)、テンプレートDNA−AB結合体の非特異的結合から生じるバックグラウンドシグナルの非常な低下に関係を有する。個々の重複するオリゴヌクレオチド配列は、増幅のためのテンプレート分子ではなく、そして上述したDNA−Ab結合体と異なり、選択されたプライマーセットによってそれ自体が増幅し得ない。重複する結合体は非特異的になお結合しているが、この結合は、ランダムである。比較的少コピー数の結合体のランダムな非特異的結合は、近接な相互作用および第1鎖伸長の機会を大いに減少させる。
【0086】
近接効果はまた、本発明の同種サンドイッチアッセイ形式の基礎にもなり得る。この同種サンドイッチアッセイ形式において、捕捉固体支持体は、不必要である。本発明の方法に従って、近接して結合した重複する結合体のハイブリダイゼーションおよび第1鎖伸長を支持し、そしてバルク溶液中のハイブリダイゼーションを支持しない条件が、使用されなければならない。溶液中の結合体対の任意の非特異的ハイブリダイゼーションは、シグナルを誘発する(図4に示される)。本発明の1つの実施形態は、従って、受容可能な免疫複合体形成率を維持可能な最低の結合体濃度を使用することを伴う。重複の長さ、塩濃度および温度効果の調整もまた、バルク溶液中の重複配列のランダムなハイブリダイゼーションを最小化するために利用可能である。
【0087】
(細胞分析の免疫検出)
アフィニティ精製したE.coli 0157に対するポリクローナル抗体が、インタクトな微生物の検出のための異種NADIA形式を実施するために、重複するオリゴヌクレオチド鎖に結合体化されている。磁気粒子に結合した抗体(Dynal,Lake Success,NY)が、E.coli 0157細胞を水サンプルおよび肉ホモジネートから単離するために使用されている。細胞表面は、検出された数千コピーの特異的抗原を示すことが推測される。計算は、ランダムに分布する部位の間の距離が、重複するオリゴヌクレオチド結合体から抗E.coli 0157までに広がる距離の中に含まれることを示す。この場合、近接結合は、1つのタンパク質抗原上の別個のエピトープとは対照的に、個々の抗原の間隔に起因する。
【0088】
本発明の方法に従い(以下の実施例で記載される)、ポリクローナル抗E.coli 0157(KPL,Gaithersburg,MD)を、配列(1)、(2)および(3)による3つの別個の反応において標識し、そして個々の結合体を維持した。E.coli 0157:H7を、ATCC(700728)から得、そして37℃で増殖した。液体培養物からの細胞を、新鮮な培地中に希釈し、そして10nMの重複するオリゴヌクレオチド−Ab結合体と共に1時間室温でインキュベートした。得られた細胞−抗体複合体から、遠心分離によって過剰な未結合結合体を洗い落とし、そして冷tris緩衝化生理食塩水中に再懸濁し、重複する抗体試薬を、1.0pM未満まで効果的に希釈した。洗浄した細胞を、同時にプレート上に画線し、そしてPCR試薬混合物中で10分間33℃でインキュベーションした後に下流プライマーの存在下での40サイクルの実時間PCRを行うことによって、アッセイした。30℃で一晩のコロニー形成によって決定された10〜50個の細胞の存在は、培養なしでの2〜3時間のアッセイにおいて、バックグラウンドよりも高いシグナルを誘発するために十分であった。
【0089】
(細胞分析のための同種アッセイ)
本発明は、インタクトな細胞もしくはウイルスを、細胞表面上で結合対試薬と複合体を形成させることによって検出するための方法を提供する。インタクトな細胞(例えば、細菌細胞)を検出するために使用される結合対試薬は、2つ以上のMAbについての2つの結合部位を有するタンパク物分析物を検出するための方法と類似する。この場合、結合部位は、細胞表面上に埋め込まれた同じタンパク質を含み得る。結合対試薬は、個々のタンパク質単位の間の距離に広がる。
【0090】
本発明に従って検出され得る細胞としては、細菌細胞、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞および真菌細胞が挙げられる。1つの実施形態において、動物細胞は、ヒト細胞であり、この細胞は、疾患を有しても、健康であってもよい。例えば、この方法は、細胞表面腫瘍抗原に対する抗体を含む結合対を使用することによって、循環する癌細胞を検出するために使用され得る。
【0091】
(重複DNAマーカーの3’−5’結合体を有する結合対を使用する分析物検出)
アッセイ感度の非常な増大が、5’末端において第1特異性分子(例えば、サンドイッチ対の第1 MAb)に結合体化した重複する対の第1の核酸を含む1つの結合対メンバー、および他の末端において第2特異性分子(例えば、第2 MAb)に3’末端を介して結合体化した重複する対の第2の核酸鎖を含む結合対メンバー(3’結合体)を含む、結合対試薬の使用によって達成され得る(図6に示す)。この方法に従い、5’結合体の3’末端は、3’結合体の内部配列にハイブリダイズし、結合対を産生する。ここで、3’末端の伸長が、形成した複合体の塊の中央から、自由に回転する末端(3’複合体の5’末端)へと導かれる。この方向付けは、3’−3’重複結合対と比較して、鎖伸長の効率を改善し、それによって、より多くのポリメラーゼの立体接触を可能にし、そして最初の重合体化の間のねじれ応力の散逸を可能にする。
【0092】
(酵素的消化を使用する同種アッセイ)
分析物の同種検出についての改善された感度は、5’末端にデオキシリボース塩基を有し3’末端にリボース塩基を有する一本鎖核酸と結合体化した特異性分子を含む結合メンバー(例えば抗体)を用いることによって達成され得る。この方法に従い、DNA/RNA標識は、RNA配列の完全なストレッチおよびDNA配列の短いストレッチに対して相補的である。特定の実施形態において、RNA配列は、少なくとも約20塩基長である。他の実施形態において、このRNA配列は、少なくとも約30塩基長、40塩基長、50塩基長もしくは60塩基長である。本発明の1つの局面に従い、このRNA配列は、26塩基長である。DNA−DNA二本鎖領域は短く、代表的には、15未満塩基対未満の長さを含み、多くの場合、約12塩基対未満の長さを含み、好ましくは、約10塩基対未満の長さを含む。本発明の種々の局面において、このDNA−DNA二本鎖は、12塩基対の長さ、11塩基対の長さ、10塩基対の長さ、9塩基対の長さ、8塩基対の長さもしくは7塩基対の長さである。
【0093】
本発明の方法に従い、分析物結合対複合体の核酸二本鎖領域、特にDNA/RNAヘテロ二本鎖領域は、より高い温度において安定であり、それによって、特定の方向および結合対複合体における互いからの距離に固定される結合メンバーを含む複合体の形成を確実にする。複合体形成の後、複合体化した結合対と過剰な結合対との両方のRNA成分は、RNaseの添加によって消化され得、短い、残りのDNA/DNA二本鎖によって結合する比較的不安定な結合対を生じる。1つの実施形態において、RNaseは、RNase Hである。RNase処理の後、不安定な結合対は、温度が上昇する際にその対応する結合メンバーに解離する。複合体上の位置に固定される結合メンバーのみが、温度の低下の際に迅速に再会合する。分析物によって非常に近接して維持されない解離した結合メンバーは、低い濃度および短いDNA/DNA二本鎖の限られた安定性に起因して、結合対に再形成し得ない。本発明の1つの局面において、短縮された3’DNA重複の核酸成分を有する結合メンバーは、複合体形成反応物の希釈の必要性を減少させ、それによって、さらに感度を改善する。
【0094】
デオキシリボースヌクレオチドモノマーおよびリボースヌクレオチドモノマーの両方を含み、そして5’アミノ官能基を有する核酸鎖は、標準的ホスホルアミダイト化学によって合成され得る。あるいは、短い3’DNA/DNA重複は、RNAポリメラーゼによって酵素的に埋め合わされ得る。
【0095】
(分析物についての感度の高い同種アッセイ)
上述の特徴を合わせることによって、タンパク質抗原および微生物のような分析物についての、核酸検出について達成される感度に近づく同種アッセイが、発明されている。本発明に従い、第1特異性分子(例えば、サンドイッチ対の第1 MAbもしくはポリクローナル抗体の第1部分)は、キメラDNA/RNAオリゴヌクレオチドの5’末端に結合体化される。この方法の1つの実施形態において、このDNA/RNAオリゴのRNA部分は、3’末端における30塩基対を含む。代表的には、独特のプライマー部位が、このDNA/RNAオリゴの5’DNA末端に配置される。第2の特異性分子(例えば、第2のMAbもしくはポリクローナル抗体の第2部分)は、必要に応じて1つ以上の3’ホスホルアミダイトスペーサーと共に合成されたDNAオリゴヌクレオチドの3’末端に結合体化して、全体の長さを延長する。この方法の1つの局面において、このDNAオリゴは、少なくとも60塩基長である。代表的には、独特のプライマー結合部位が、DNAオリゴの5’末端に配置される。この方法に従い、オリゴヌクレオチドは、比較的長い(代表的には20〜40塩基対の)RNA−RNAハイブリッドの二本鎖を形成し、その後に、約7〜15塩基対のDNA−DNAハイブリッドの短いストレッチが続く(図7)。
【0096】
分析物複合体形成、RNA消化、溶解および再アニーリングの後、上記実施形態の結合対は、曝露された3’DNA末端からの1つの方向のみに、ポリメラーゼによって伸長され得る(図7)。3’重複によって課せられた立体的制約およびねじれの制約は、上述のように除去される。結合対の酵素的消化は、短いDNA−DNA二本鎖を生じ、これは、比較的不安定であり、それによって、バルクの溶液中の遊離の結合メンバーからの結合対の再形成を最小化する。
【0097】
特定の問題もしくは状況に対する本発明の教示の適用は、本明細書中に包含される教示を踏まえて当業者の能力の範囲内である。本発明は、以下の非限定の実施例を参照することによって、さらに説明される。以下の実施例(実験および達成された結果を含む)は、例示目的でのみ提供され、本発明を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0098】
(実施例1:5’アミノDNAテンプレートの活性化)
2つの60塩基の一本鎖DNA配列[配列番号1および3]を、12個の炭素のスペーサーアームを介して5’末端に結合した1つの第1アミンを含むように合成した(Glen Research,Sterling,VA)。この配列は、3’末端上の最後の15塩基について互いに相補的であった。両方を、同じように処理した。この5’アミノ−DNA(350μg)を、25μlの0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)中に溶解した。ジスクシンイミジルスベラートを、10mg/mlの濃度で乾DMSO中に溶解し、そして50μlアリコートをDNA溶液に直ちに添加し、そして穏やかに再度ピペッティングすることによって混合した。室温での1分間後、この反応混合物を、Pharmacia FPLCシステム中に下げた0.5×20cm G−25(微細)カラム上に注入した。このカラムを、5mMクエン酸(0.1M水酸化ナトリウムでpH5.4に調整した)中で平衡化させ、そして室温で0.5ml/分の流速で展開した。第1の溶出ピークを、氷中に埋めたMicrocon(登録商標)YM−10遠心限外濾過(Millipore,Billerica,Mass.)ユニット中に直接収集した。スベラート活性化テンプレートDNAを、4℃で濃縮し、そして5000×gで30分間、200〜300μlまで濃縮した。260nmにおける吸光度によって、DNA濃度を迅速に評価した。1.0 A260単位(約30μl)を含有するアリコートを、5μlの10%マンにトールを含有する微小遠心分離管中に分配し、そしてドライアイス/アセトン浴中で直ちに凍結した。凍結したアリコートを、乾燥するまで凍結乾燥し、乾アルゴン下で封入し、そして−20℃で保存した。
【0099】
凍結乾燥化活性化DNAの活性を、アミン含有低分子への結合体化によって評価した。0.1Mリン酸ナトリウム(pH8.0)中50mg/mlのグルタチオンを、化学量論量のN−エチルマレイミド(MEM)で反応させた。このpHを、水酸化ナトリウムによって8.0まで再度調整した。1A260単位のスベラート活性化DNAを、10μlのNEM処理グルタチオン中に溶解し、次いで、水で25倍希釈して、4.0A260単位/mlにした。アルキル化グルタチオンとの結合体化は、15%ポリアクリルアミドTBE−尿素ゲル上で電気泳動した場合に5’アミノDNAと比較してよりゆっくりと移動するバンドを生じた。上述の条件下で精製しそして凍結乾燥したスベラート活性化DNAは、代表的に、NEM処理したグルタチオンへのほぼ100%の結合体化を示し、このことは、完全なスベラート活性化およびアミン反応性の維持を示す。
【0100】
(実施例2:サンドイッチ対形成した抗PSA MAbの、スベラート活性化DNAに対する結合体化)
サンドイッチ対形成した抗PSAモノクローナル抗体(cMAbおよびrMAb)の標識を、以前に報告されているように行った。米国特許出願第10/701,347号を参照。特定の実施形態において、cMAbを、一本鎖配列番号1を含むDNAオリゴヌクレオチドで標識し、そしてrMAbを、米国特許出願第10/701,347号(この内容は、本明細書中でその全体が参考として援用される)に記載される方法を使用して、結合体化した。
【0101】
本発明の実験のために、PSA上の異なるエピトープに対して指向されるサンドイッチ対形成したMAbをBiosPacific,Inc.(Emeryville,CA)から得、そして各々を、活性化重複DNA配列の1つと結合体化させた。100μlのMAb(1mg/ml)を、緩衝液交換し、そして室温での10,000×gの微小遠心分離においてMicrocon(登録商標)50遠心限外濾過ユニット(Millipore,Billerica,Mass.)を2回通すことによって、0.1Mリン酸ナトリウム、0.15M塩化ナトリウム、pH8.25に濃縮した。25〜50μlの最終容量を、微小遠心分離管への遠心分離によって収集し、そして活性化DNAの凍結乾燥したペレット(上記の実施例1に記載するように調製した)に添加した。この結合体化反応を、室温で数時間進行させた。
【0102】
DNAによる抗体標識の程度を、SDSおよび/または天然のタンパク質ゲル電気泳動によって評価した。DNAの1本以上の鎖の抗体構造物への取り込みは、分子量および電気陰性度の両方を増大させる。DNAで標識した抗体は、4%ポリアクリルアミド−SDSゲル上で電気泳動した場合、DNA取り込みの程度に対応して、はっきりした、よりゆっくりと移動するバンドとして現れた。同じ結合体化分子は、4〜12%天然タンパク質ゲル電気泳動において、対応する非誘導体化抗体よりも早く移動した。より高い桁の結合体について、分離は、天然ゲル上でより劇的であったが、よりはっきりしなかった。
【0103】
DNA結合体化の程度を、相対反応性および各抗体構造中のリジンアミン基の暴露に基づいて50〜100%で評価した。この結合体は、2.5の平均標識密度を有することを見出した。いくつかの実験において、抗体−DNA結合体を含有する反応混合物を、第2の活性化DNAの凍結乾燥したペレットに添加し、DNAによる抗体標識の程度を増大した。
【0104】
未反応DNAを、この結合体から、TBSで平衡化したSephacrylTMS−200カラム(AmershamBiosciences)を0.4mL/分の流速で用い、FPLCゲル濾過クロマトグラフィーによって除去した。第1溶出ピークは、結合体化MAbと未結合体化MAbとから構成される。純粋な結合体を、MonoQTMカラムを用いる(Amersham Biosciences)FPLCアニオン交換クロマトグラフィー(20mM Tris緩衝液(pH7.4)中で平衡化し、そしてNaCl塩勾配(0.0〜1.0M)により0.5ml/分の流速で溶出した)によって得た。MAb−DNA結合体を、60〜70%塩で溶出した。
【0105】
このMAb−DNA結合体を、遠心限外濾過によって個々に濃縮し、そしてタンパク質について、BCAタンパク質アッセイ(Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL)を用いてアッセイした。等容量の両結合体を合わせて、結合対を形成し、これは、ハイブリダイズして、1つの分子を形成した。アジ化ナトリウムを、0.1%の最終濃度まで添加し、そして結合対試薬を、4℃で保存した。
【0106】
(実施例3:前立腺特異的抗原についての同種アッセイ)
実施例2の結合対を、20pMまで希釈し、そして等容量の抗原の希釈系列(0〜1ng/mlのPSAを含む)と合わせた。抗原結合対混合物を、2時間37℃でインキュベートした。このインキュベーションは、PSA抗原上の別個のエピトープに結合した結合対の各メンバーの抗体領域を有する、1つの抗原分子および1つの結合対分子を含む結合複合体の形成を可能にした。全ての塩を、故意に省き、反応溶液中の重複オリゴヌクレオチド標識のハイブリダイゼーションを減少させた。インキュベーションの後、インキュベーション混合物のアリコートを除去し、10mMTris、0.1%BSA(pH8.0)中に1:100で希釈して、1pM未満まで結合体濃度を低下させ、そして45℃で3分間加熱した。この加熱工程は、溶液中の遊離の未複合体化結合メンバーと抗原複合体化結合対との両方の重複二本鎖領域を解離させることによって、結合対のメンバーを、互いに効果的に分離させた。400μMの各プライマー(配列番号4および5)を含有する等容量の2×PCR混合物(20mM tris−HCl、pH8.3;100mM KCl;7mM MgCl;400μM各dNTP;50U/ml AmpliTaq(登録商標)(Applied Biosystems,Foster City,CA))を、添加した。温度を23℃まで下げて分析物−結合対複合体と結合しているDNA鎖を優先的に再アニーリングさせ、そして第1鎖伸長を開始し、そして反応混合物を、室温で3分間インキュベートした。これらの条件下で、複合体化結合対メンバーの相補的DNA領域は、その非常な近接および方向に起因して、迅速に再アニーリングして、結合対試薬の重複ハイブリッドを再形成する。従って、複合体化結合対のDNA領域を、Taqポリメラーゼによって伸長し得、それによって、PCRのためのテンプレートを形成し得る。しかし、未複合体化の遊離の結合対メンバーは、非常に希釈されているので、増幅反応の前もしくは間に有意な程度まで再アニーリングしない。この反応溶液(50μl)を、マイクロタイタープレートのウェルに移し、封入し、そして実時間PCRサーモサイクリングに供した。この温度は、50℃から85℃まで3分間にわたって傾斜し、次いで、95℃で2分間維持された。次いで、45サイクルの、95℃を15秒間および62℃を1分間を、実施した。代表的な実験の結果を、図8に示す。この図に示されるように、100fg/ml PSAを含有するサンプルは、バックグラウンドを上回って(すなわち、PSAを含まないコントロールサンプルと比較した場合に)検出可能であった。
【0107】
(実施例4:E.coli 0157についての同種アッセイ)
E.coli細胞を、ATCC(Manassas,VA)から得、そして液体培養で増殖させた。細胞濃度を、一晩37℃で増殖させた寒天培地上のコロニーの出現によって決定した。
【0108】
E.coli 0157に対するポリクローナル抗体を、KPL,Inc.(Gaithersburg,Maryland)から得、そして実施例1および2に記載の手順に従って、相補的な重複している配列を有する核酸マーカーオリゴに結合体化させた。同じポリクローナル抗体調整物のアリコートを、2つの重複オリゴヌクレオチドのうちの1つで各々個々に標識し、精製しそして結合化学量論的に結合対試薬を産生した。
【0109】
細菌細胞を、中性緩衝液(10mM Tris、pH7.5)中に浮遊させて、活性な増殖を停止させ、そして等容量の20〜200pMの結合対試薬で2時間室温で処理した。結合対の1つの抗体メンバーの、細胞表面タンパク質に対する結合は、第2メンバーの結合を増強し、細胞上の2つの隣接する結合部位を結合する分子架橋を形成する。次いで、細胞浮遊液を、10mM Tris(pH7.5)中に1:100で希釈し、そして45〜50℃まで加熱して、過剰な結合対試薬を個々の結合対メンバーに解離させた。等容量の400μMプライマー含有2×PCR混合物を添加し、そしてこの混合物を、室温で3分間インキュベートした。この反応物(50μl)を、マイクロタイタープレートのウェルに移し、封入し、そして上記の実施例3に記載の条件下での実時間PCRに供した。また、PCRの前に、サンプルを、固体培地上にプレート培養することによる細菌細胞数の決定のために、取り出した。45回の増殖サイクルの後、下限10〜50個のインタクトな細胞を、この方法を用いて検出した。
【0110】
(実施例5:結合体化DNA標識の3’−3’重複および3’−5’重複を用いるPSAトロポニンTについての同種アッセイ)
アッセイ感度の増強は、1つの結合対メンバーを含む結合対試薬の使用によって得られ得る。この結合対メンバーは、実施例1に記載のように5’末端においてサンドイッチ対の1つのMAbに結合体化した重複する対の1つのDNA鎖と3’末端を介して他のMAbに結合体化した第2DNA鎖とからなる。5’結合体の3’末端は、3’結合体の内部配列にハイブリダイズして結合対を生成し、結合対を産生する。ここで、遊離の3’末端の伸長が、形成した複合体の塊の中央から、自由に回転する末端に向かって起こる。この方向付けは、より多くのポリメラーゼの立体接触を可能にし、そして最初の重合体化の間のねじれ応力の散逸を可能にすることによって、上記の3’−3’重複結合対よりも鎖伸長の効率を改善し得る。
【0111】
この実施例の結合メンバーを、Roche Diagnostics,Indianapolis,INから得たモノクローナル抗体サンドイッチ対を用いて、実施例1および2に記載のように形成しそして精製する。5’DNA標識[配列番号6および7]は、9塩基について相補的な3’末端を有する60塩基から構成されていた。さらに、配列番号6は、75塩基の3’DNA標識[配列番号8]の内部の9塩基配列と相補的であった。また、3’DNA標識を、1つもしくはいくつかのスペーサーホスホルアミダイト(Glenn Research)を3’末端上に含み、内部化されたハイブリダイゼーションによって作製した結合対の長さの欠損を埋め合わせるように合成し得る。配列番号6は、消化したモノクローナル抗体MAK<TNT>M−7に自由に結合体化した。配列番号7および8は、消化したモノクローナル抗体MAK<TN−T>M−11−7に結合体化した。結合体化化学および精製は、同じままであった。
【0112】
この安定した内部重複ハイブリッドセグメントを含む結合対を、希釈し、トロポニン−Tと反応させ、そして実施例3について記載したように下流プライマー(配列番号9および10)の存在下で増幅させる。遊離の結合対および複合体化した結合対は、同じ配列の3’−3’重複結合対と類似の溶解特性および再会合特性を有する。3’−5−重複の最初の重合体化の外側への方向付けは、サンドイッチ複合体の塊が、Taqポリメラーゼの進行を妨げる場合に、テンプレート配列の生成の効率を改善する。より多数の最初のテンプレート分子の増幅は、実時間PCRにおけるより早いシグナル閾値およびよりアッセイ感度を可能にする。3’−3’重複結合対試薬を用いるトロポニン−Tについての同種アッセイは、PSAの検出感度(実施例3)と同様の検出感度を示した。3’−5’重複方向付けを用いたトロポニン−Tについての対応する同種アッセイは、2〜4倍の改善をもたらした。
【0113】
(実施例6.3’−3’ビオチン標識化重複DNAおよび3’−5’ビオチン標識化重複DNAを用いるストレプトアビジンについての同種アッセイ)
同種イムノ−PCR形式において達成し得る非常に高い感度の例は、ストレプトアビジンの検出によって実証され得る。ストレプトアビジンは、このモデル系において「抗原」として働き、約60オングストロームの分子直径を有する。配列番号6、7および8の末端アミノ官能基を、スルホスクシンイミジル2−(ビオチンアミド)エチル−1、3’ジチオプロピオナート(Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL)で標識し、FPLCゲル濾過クロマトグラフィーによって精製した。各DNA標識は、完全に伸ばした場合、200オングストロームの長さを超え、そして重複ハイブリダイゼーションを達成するために必要な距離を広がる能力を保証する。
【0114】
ストレプトアビジン(Prozyme,San Leandro,CA)を、0.05%tween−20および0.05%アジ化ナトリウムを含有する10mM Tris(pH8.0)中に溶解し、そして10〜100pMの最終濃度で存在するビオチンで標識化した3’−3’重複DNA3’−5’重複DNAの両方と複合体を形成させた。この複合体を、2×PCR混合物の添加によって15分間処理し、そして下流プライマー(配列番号9および10)の存在下での実時間PCRに供することによって検出した。ストレプトアビジンは、3’−5’重複構成においてアッセイされる場合約500個の分子の投入(50アットグラム)において検出され得、そして3’−3’方向で2000個の分子で検出され得る。
【0115】
配列番号6
5’(C6)NH2 ATATACCCCC GCTGCCATGA TATCACTCTG TATAAATTTG TATGCTATTC ACGATTGGGA 3’
配列番号7
5’(C6)NH2 ACTCTTCGCA ACAGATCCAC ACGTACACAT CCAAACTAGC TTCCACCACC ATCCCAATCG 3’
配列番号8
5’ ACTCTTCGCA ACAGATCCAC ACGTACGTCC CAATCGAAAG TAAACAGTTT AAACATATGT AGCGCGTCTC CTCAT NH2(C6)3’
配列番号9
5’ ATATACCCCC GCTGCCATGA TATC 3’
配列番号10
5’ ACTCTTCGCA ACAGATCCAC ACGT 3’
(実施例7:重複DNA標識の3’−5’結合体を用いる、PSAについての同種アッセイ)
この方法の結合メンバーは、核酸のうちの1つがその3’末端を介して結合されることを除き、実施例1および2に記載されるように形成され得そして精製され得る。5’DNA標識は、3’DNA標識の内部配列の15塩基に相補的な3’末端を有する、60塩基のオリゴヌクレオチドである。3’DNA標識を、3’末端にスペーサーホスホルアミダイト(Glenn Research,Sterling,VA)を含み、内部化されたハイブリダイゼーションによって作製した結合対の長さの欠損を埋め合わせるように合成し得る。結合体化化学および精製は、上述のように行う。
【0116】
安定な内部重複ハイブリッドセグメントを含む結合対を、希釈し、PSAと反応させて、そして実施例3に記載したように増幅させる。遊離の結合対および複合体化結合対は、3’−3’重複結合対と類似の溶解特性および再会合特定を有する(これは、DNAベー角対形成の熱力学的特性によって検出される)。最初の重合体化の外側への方向付けは、テンプレート配列生成の効率を改善する。より多数の最初のテンプレート分子の増幅は、実時間PCRにおけるより早いシグナル閾値およびより高いアッセイ感度を可能にする。
【0117】
(実施例8:酵素的消化を使用するPSAの同種アッセイ)
タンパク質抗原および微生物の同種検出についての感度の改善を、5’末端にデオキシリボース塩基を有し3’末端にリボース塩基を有する一本鎖核酸に結合体化した抗体を含む結合対の使用によって、達成し得る。5’アミノ官能基を含むデオキシリボースモノマーおよびリボースモノマーの両方からなる核酸鎖を、標準的ホスホルアミダイト科学によって合成する。あるいは、短い3’DNA/DNA重複を、RNAポリメラーゼを用いて酵素的に埋め合わせ得る。DNAおよびRNAの両方で構成される重複する核酸標識を、最初の26塩基についてRNAホスホルアミダイトで開始して合成する。残りの59塩基を、DNAホスホルアミダイトで合成し、(C12)アミノ官能基で終結させる。5’末端からの最初の25塩基は、独特のプライマー配列を表す。次の26DNA塩基は、重複する鎖の26RNA塩基に相補的である。
【0118】
次の9DNA塩基は、重複する鎖の次の9DNA塩基と相補的であり、従って、DNA/RNA標識は、3’末端において、RNA配列のストレッチ全体およびDNA配列の9塩基について相補的である。結合対は、DNA/RNA二本鎖の比較的長いストレッチ、およびDNA/DNA二本鎖の比較的短いストレッチを介して結合する2つの結合メンバーからなる。サンドイッチMAbと結合体化する場合、実施例2および3で記載したように、そして結合化学量論的に、得られる結合対は、60の内部塩基が対形成した100塩基のヌクレオチドを含む。
【0119】
実施例3に記載のようにこの試薬を用いて、PSAを検出する。結合対は、この対の2つの抗体メンバーによる2つのPSAエピトープの認識によって、分析物と複合体を形成する。抗原結合対複合体の核酸二本鎖領域(特にDNA/RNAヘテロ二本鎖領域)は、高い温度で安定であり、結合対複合体中で互いに特定の方向および距離に固定される結合対を含む複合体の形成を確実にする。抗原結合対複合体の形成の際、この反応物を、10倍だけ希釈し、そしてRNAse H(Promega Corp.,Madison,WI)で室温で30分間処理して、複合体化結合対および過剰な結合対の両方のRNA鎖を消化し、短い、残りのDNA/DNA二本鎖によって結合した、比較的不安定な対を残す。得られた結合対を、45℃まで3分間加熱することによって熱的に解離させ、次いで、室温まで冷ます。残った短いDNA/DNA重複は、一時的のみであるが、免疫複合体に迅速に再会合する。この複合体上の位置に固定された結合メンバーのみが、温度の低下の際に迅速に再会合する。解離した結合メンバーは、その低濃度および短いDNA/DNA重複の限られた安定性に起因して、結合対を再形成し得ない。短い3’重複のDNA標識を有する結合対を有することは、複合体形成反応の希釈の必要性を低下させ、従って、上記の実施例3のアッセイと比較して、アッセイの感度を改善する。PCR混合物およびプライマーを添加し、そして実時間PCR増幅を、上記のように実施する。
【0120】
(実施例9:酵素的消化および3’−5’結合体化を用いる、PSAについての同種アッセイ)
上記の特徴を合わせることにより、核酸検出について達成された感度に近づく、タンパク質抗原および微生物についての同種アッセイを発明し得る。サンドイッチ対の第1Mabは、キメラDNA/RNAオリゴヌクレオチドの5’末端に結合体化する。ポリクローナル抗体の第1部分を、Mabの代わりに使用し得ることが、理解される。このDNA/RNAオリゴのRNA部分は、3’末端に30塩基を含む。独特のプライマー部位は、このDNA/RNAオリゴの5’DNA末端に位置する。第2 Mab(これは、ポリクローナル抗体の第2部分によって置き換えられ得る)を、64マーのDNAオリゴヌクレオチド(これは、全体の長さを延長するためにいくつかの3’ホスホルアミダイトスペーサーを用いて合成される)の3’末端に結合体化し得る。この64マーの5’末端からの5’末端25塩基は、独特のプライマー部位を表す。次の30塩基は、上記DNA/RNAオリゴの30RNA塩基に相補的である。最後の9塩基は、RNAセグメントに隣接するDNAセグメントに相補的である(図7)。
【0121】
両結合メンバーを合わせることは、30塩基対DNA/DNAハイブリッドに隣接する内部の9塩基対DNA/DNAハイブリッドを有する結合対を産生する(図7に示す)。免疫複合体形成、RNA消化、溶解および再アニーリングの後、結合対を、ポリメラーゼにより、曝露された3’DNA末端からの1つの方向のみに伸長し得る(図7)。3’重複によって課せられる立体的制約およびねじれの制約を(図5におけるように)除去する。結合対の酵素的消化は、短い9塩基対重複を生じ、これは、比較的不安定であり、この結合対のバルクの溶液中での再形成を最小化する。PCR増幅を、上記のように実施する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−120534(P2012−120534A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−12830(P2012−12830)
【出願日】平成24年1月25日(2012.1.25)
【分割の表示】特願2007−539365(P2007−539365)の分割
【原出願日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(507245663)アイリス モレキュラー ダイアグノスティクス, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】