説明

同軸に被覆される燃料管用のスペーサ

本発明はスペーサ及び輸送管に関する。スペーサ4、10は二つの管1、8、すなわち内側の管と外側の管との間に取り付けられ、それらを所定の間隔で保持する。閉鎖具6はスペーサを管に据え付けるのに必要とされる。好ましくは、閉鎖具をスペーサと一体化することによって、空間、重量、及び取り付け時間を節減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペーサ、特に、航空機において同軸に被覆される燃料管用のスペーサに関する。該スペーサによって得られた中間領域は、特に、航空機の燃料管の場合に、通気ならびに漏洩液及び凝縮水の排出に使用される。航空機では、そうした同軸の被覆された燃料管が、胴体領域で必要とされ及び/又は規定されている。
【背景技術】
【0002】
同軸に被覆された燃料管は、内側の管及び外側の管を備え、外側の管が内側の管をとり囲んでいる。あらゆる状況下で内側の管と外側の管との間の距離を均一に保つためには、内側の管路と外側の管路との間にスペーサが必要である。内側の管と外側の管については、同じ材料で製造してもよいし、また異なる材料で製造してもよい。これらはパイプ方式、ホース方式、又はケーブル方式とすることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在のところ、不都合なことにプラスチックのスペーサが使用されており、該スペーサは、複雑なねじ留め具を使用して、内側の管上で滑らないように固定される。この種の取り付けは、ただ煩わしいやり方で行うしかない。ねじのプレテンション(pre−tension)が大きいために、内側の管に対する損傷の危険性がある。また、内側の管は強い力によってへこむことがある。すなわち、取り付け時には、ねじ留め具が外側管に接触しないように特に注意して作業しなければならない。ねじに接触すると、外側の管が損傷を受ける場合がある。また、取り付け時に複数の構成要素(本体、ねじ、ワッシャ、ナット)を組み立てなければならず、それは不利益である。従って、取り付け時には最大限の注意を要し、そのために、取り付けに手間がかかることになる。
【0004】
特別な管直径、そして内側の管と外側の管との間に、特に小さな空間を導入するという新たな要求は、ねじ留め具を用いて満たすことができないが、これは、ねじ留め具に必要な空間のためである。
【0005】
本発明の目的は、改良されたスペーサを明確に示すことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的な実施形態によれば、管用のスペーサが規定される。該スペーサは、閉鎖具、パイプクランプ構造体、そして1つ以上の離間要素を有する。この1つ以上の離間要素はパイプクランプ構造体に取り付けられる。1つ以上の閉鎖具は、パイプクランプ構造体及び1つ以上の離間要素のうちの少なくとも1つに一体化される。
【0007】
有利には、本発明のこの例示的な実施形態では閉鎖具をスペーサに一体化することができる。このようにして、取り付け時における閉鎖要素の紛失を減らすことができる。また、組立時の間違いを回避することができる。必要ならば、訓練を受けていない人が取り付けを行うことさえ可能である。
【0008】
上述した既知のプラスチックスペーサとは対照的に、取り付け時の間違いを回避でき、組立時に時間を節減できる。取り付けに必要な構成要素は部品自体に付いており、所定の位置にある。従って、部品を壊さずに取り付けるために重要な要素をなくすことはもはやあり得ない。
【0009】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、1つ以上の離間要素及び管がユニットを形成する。1つ以上の離間要素は、受け側に対して所定の距離をもって管を保持する。この構成によって、管と受け側との間の距離が恒久的に確定されるので、管と受け側が接触することはない。
【0010】
本発明の別の有益で例示的な実施形態によれば、1つ以上の離間要素及び第1の管の配置については、これを第2の管内の中心で保持するように設計を行うことができる。第2の管で第1の管を覆うことにより、第1の管の通気が可能になる。漏洩した液体や凝縮水を、離れた場所まで容易に輸送することができる。中心出し(センタリング)の据え付け作業によって、第1の管が第2の管内に固定され、これにより、すべての側面に空間が生まれる。第1の管によって第2の管が打撃を受けないように、中心出しの据え付け作業によって防止することができる。
【0011】
本発明の好ましい別の例示的な実施形態によれば、閉鎖具は1つ以上のピン及び1つ以上の穴を有する。この1つ以上の穴は、1つ以上のピンを受け入れる。こうして取り付けが容易になり、輸送管の製造では、複数のスペーサが内側の管に付設されて、これが外側の管に挿入されることにより製造が迅速化される。
【0012】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、前記ピンが1つ以上の第1のフックを有し、前記穴が1つ以上の第2のフックを有する。ピンが穴に挿入される部分によってスペーサの構成部品同士の間のギャップが決まる。このギャップについては、最初は定まらないが、フック同士がロックした後では、特別な工具がない限り、狭くすることができるだけである。これらのフックは自動ロック効果をもたらす。ギャップ幅によりパイプクランプ構造体の直径が決まる。この設定した直径は、スペーサによって第1の管にかかる圧力に影響を及ぼし、ロックされたフックの位置によって調整可能である。
【0013】
本発明の好ましい別の例示的な実施形態によれば、ピン及び穴はケーブルタイと同様に実現される。その取り付けには、通常のケーブルタイ用の工具を使用することができる。これらの工具により、規定された張力及び/又は規定されたギャップ寸法を設定することが可能となる。こうして、取り付け速度の迅速化と併せて品質を高めることができる。上述した公知のプラスチックスペーサは通常、ねじを用いて実装され、該スペーサによる打撃が起きた場合に、第1の管をへこませ、これを損傷させる危険があり、このような危険性については、この例示的な実施形態を用いて対処することができる。
【0014】
本発明の好ましい別の例示的な実施形態によれば、別の閉鎖具をスナップ式の閉鎖具として設計することができる。この閉鎖具は、一方が他方の内部に嵌合する、2つの構造体から作られている。第1の構造体は第1の寸法部を有し、この第1の寸法部は、少なくとも1つの顎部によって形成された、より小さな第2の寸法部にとり囲まれるが、これは不用意に滑り抜けることが起きないようにするためである。第1の寸法部が第2の小さい方の寸法部に滑り込めるようにするには、少なくとも1つの顎部が可撓性をもつように設計されるが、その目的は十分に大きな開口を一時的に可能にすることである。
【0015】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、パイプクランプ構造体にはジョイントを設けることができる。この例示的な実施形態では、スペーサの取り付けを、さらに容易にすることができる。必要な安定性が得られるようにするため、パイプクランプ構造体が高い剛性をもつように実施しなければならない場合に、スペーサが内側の第1の管上を横方向に動くことはできなくなる。スペーサにジョイントを設けることで、所望の位置への取り付けが容易になる。特に、恒久的に取り付けた複数のスペーサとともに使用する場合に、これは、例えば、他のスペーサを取り外さないで個々のスペーサを交換できるという利点がある。
【0016】
本発明の好ましい別の例示的な実施形態によれば、一部品からなるスペーサを製造することができる。スペーサ製造時の利点、つまり、この場合に最終組み立てなしでスペーサを実現できるといった利点に加えて、単一部品として用意することで、スペーサの構成要素(部品)の紛失が起こり得ないという利点が得られる。取り付けに必要な要素はすべて1つの部品上に設けられる。また、追加的な構成要素、つまり、据付用の空間を制限する虞のある構成要素については、据付時にこれを必要としない(留め具要素を追加すると、余分なスペースが必要になってしまう)。従って、内側の管と外側の管との間に、より小さな間隙を形成することが可能である。
【0017】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、スペーサをプラスチック(例えば、ポリアミド)で製造することが好ましい。このプラスチックは、耐圧性と耐酸性に関して特定の条件を満たすことを要する。この例示的な実施形態では、プラスチックによって、高い安定性を軽量にて実現できるという利点が得られる。スペーサにプラスチックを用いると、取り付け用にねじを用いる公知のスペーサに比べて重量が減少する。
【0018】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、スペーサが射出成型法で製造される。
【0019】
また、本発明の別の例示的な実施形態によれば、スペーサが、同軸に被覆される燃料管に適合される。
【0020】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、スペーサは、剛性の高い管もしくは可撓性をもつ管、ホース、及びケーブルのうちの1つに導入される。好ましくは、管(パイプ)内のホース、ホース内の管、又はホース内のホースなどの任意の導管の組み合わせを含む導管システムにおいてスペーサを使用することができる。
【0021】
本発明の別の例示的な実施形態は、上記実施形態のうちの1つとして説明したスペーサを備えた航空機に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明の例示的な実施形態を、以下の図を参照して詳説する。
【0023】
図1乃至図6に関する以下の記載において、同じ参照番号は同じ要素あるいは対応する要素に対して使用される。
【0024】
図1は、輸送管システムにおいて内側の管と外側の管との間で使用する、本発明によるスペーサの例示的な実施形態を示す。この場合に、輸送管システムは剛性の高い導管又は可撓性をもった導管、特にホース又はケーブルを任意に組み合わせたものとして理解される。従って、管内の管、管内のホース、ホース内の管、ホース内のホースなどの導管システムが実施可能である。
【0025】
フランジ3は複数の導管システムを互いに連結できるようにするために設けられている。スプリング5は、例えば、ゴムバンド9によってともに保持されており、これは、管構造体が滑って留め具構造体から抜けないように防止する。内側の輸送管1は、離間要素4を有するパイプクランプ構造体10によってとり囲まれているが、これは、内側の管1にかかる圧力が高まり、従って、滑り止めの連結が生じるようにするためである。本発明による閉鎖具を使用すると、ギャップ6、つまり、1つ以上の離間要素4又はパイプクランプ構造体10のうちの1つに設けられたギャップの幅が影響を受ける。この幅調整を行うと、パイプクランプ構造体10の直径に影響を及ぼし、延いては内側の管1にかかる圧力に影響を与える。
【0026】
離間要素4は外側の管8の内壁に当接し、それによって、外側の管まで指定の距離をもって内側の管を保持する。これにより生じる中間領域11は、通気や、漏洩した液体及び凝縮水の排出に使用され、そして、該中間領域については、航空機の胴体領域内の燃料システムに対するFAA(連邦航空局)及びJAA(日本航空協会)のガイドラインに従って必要とされ、及び/又は規定される。有益なことには、本発明の例示的な実施形態により、ねじ留め具を使用して達成可能な中間領域よりも、小さな中間領域11を内側の管と外側の管との間に実現することができる。
【0027】
図2は本発明の好ましい例示的な実施形態によるスペーサを示している。ギャップ6の幅は、内側の管にかかる圧力を規定するが、ねじ留め具を使用するのではなく、ピン12を使用して調整され、当該ピン12は必要な圧力に対応する深さまで穴14に入り込む。
【0028】
パイプクランプ構造体10、離間要素4、ピン12、及び穴14は、スペーサと一体に製造することができる。これにより、前記の連結を生じさせる取り付けの際に、多数の要素が必要とならないように回避できる。ピン12と穴14を有する閉鎖具を離間要素4と一体化することによって、例えば、外側の管において取り付けに必要なスペースが小さくなる。従って、管の間隔11については、ねじを有する既知のプラスチックスペーサを使用して達成可能な間隔に比べて、より短くすることもできる。
【0029】
ジョイント16の例示的な実施形態も図2に示されている。このジョイントは、スペーサが1つの部品で作られる場合に必要となる場合があり、管上に置かれることになる。尚、ジョイントは、ギャップ6を変えるためにも使用される。
【0030】
離間要素の数量は任意でよい。離間要素の幅及び深さも任意に設計することができる。図2に示す配置では、離間要素が内側の管を中心に位置している。しかし、中心に置かない配置もあり得る。
【0031】
図3は、図2のA−A断面に沿って、本発明の例示的な実施形態を切断して示した断面図である。穴14(これにピン12が挿入される)、離間要素4の切断面、そしてパイプクランプ構造体10の一部が示されている。スペーサの幅については、特定の要求に従って選定されることになる。
【0032】
本発明の好ましい例示的な実施形態の閉鎖具を図4に示す。離間要素4の2つのハーフ(半体)部同士が互いに押される力を通じて、内側の管にかかるパイプクランプ構造体10の圧力が上述のように設定される。1つ以上のピンと、1つ以上の穴が、その一方から他方へと挿入される。また、1つ以上のフック(係止部)が、1つ以上のピン及び1つ以上の穴に付設されており、それらのフックは十分な可撓性を有しているが、それは、互いに一方向において摺動できるようにするためである。摺動による後退は阻止されるが、これは係り部(barb)の機能によるものである。穴14とピン12に相互に付設されたフックは、互いを互に阻止し合うという点で恒久的な接続部を形成する。閉鎖具が既知のケーブルタイの形態をもつ場合に、張力及び/又はギャップ幅は、ケーブルタイ用の既知の補助工具を使用して予め規定することができ、従って、内側の管にかかる圧力を調整することができる。その結果として、内側の管にかかる圧力が高すぎることによる損傷の危険性が最小限になる。スペーサ全体、特に閉鎖具がプラスチックで作られていると、接触によって外側の管が損傷する危険性は最小限となる。その場合に、ねじなどの金属が外側の管に接触することはなくなる。
【0033】
図5は、本発明による、スペーサ用の閉鎖具について、さらに好ましい例示的な実施形態を示している。2つの構造体は、その一方が他方の内部に嵌合し、スナップ式の閉鎖具を形成している。両方の構造体は異なる寸法を有する。つまり、第1の構造体20は、第1の寸法部26を有し、それは少なくとも1つの顎部22で形成された、相対的に小さい方の第2の寸法部24にとり囲まれており、よって、不用意に引き出されることはなくなる。第1の寸法部26が第2の小さい方の寸法部へと滑り込めるようにするためには、少なくとも1つの顎部22が可撓性をもつように設計されるが、これは、十分に大きなギャップが一時的に開口した状態にするためである。
【0034】
図6は、航空機、特に本発明によるスペーサを具備した旅客機を示している。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】内側の管と外側の管との間に取り付けられた、本発明によるスペーサの例示的な実施形態を示す図である。
【図2】本発明によるスペーサの例示的な実施形態を示す正面図である。
【図3】図2のA−A断面に沿った、本発明によるスペーサの例示的な実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明によるスペーサ用の閉鎖具の例示的な実施形態を示す詳細図である。
【図5】「スナップ式」の原理に基づく閉鎖具の例示的な実施形態を示す概略図である。
【図6】本発明による例示的な実施形態のスペーサを有する航空機を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管用のスペーサであって、
1つ以上の閉鎖具と、
パイプクランプ構造体と、
1つ以上の離間要素と、を具備し、
前記1つ以上の離間要素が前記パイプクランプ構造体に付設され、
前記1つ以上の閉鎖具は、前記パイプクランプ構造体と、前記1つ以上の離間要素のうちの少なくとも1つに一体化され、
スペーサの直径を調整し得るように、前記1つ以上の閉鎖具が調整可能とされている、スペーサ。
【請求項2】
前記1つ以上の離間要素は、管が受け側に対して一定の距離をもって保持されるように位置されている、請求項1に記載のスペーサ。
【請求項3】
第1の管が、第2の管内に中心をもつように保持された、請求項2に記載のスペーサ。
【請求項4】
前記閉鎖具がピン及び穴を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のスペーサ。
【請求項5】
ピンには1つ以上の第1のフックが設けられ、
穴には1つ以上の第2のフックが設けられており、
前記第1のフック及び第2のフックが互いに係合して前記閉鎖具を閉めるようにした、請求項1から4のいずれか一項に記載のスペーサ。
【請求項6】
前記ピン及び前記穴のうち、少なくとも1つはケーブルタイのように設計された、請求項5に記載のスペーサ。
【請求項7】
別の閉鎖具がスナップ式の閉鎖具とされており、
第1の閉鎖要素が第2の閉鎖要素と係合するように構成され、
前記第2の閉鎖要素は、第1及び第2の閉鎖要素が係合される場合に、第1の閉鎖要素が第1の方向において第1の動作を供するものとされ、
第2の閉鎖要素は、第1の閉鎖要素と係合される場合に、第1の方向と反対の第2の動作を阻止するようにされた、請求項1から6のいずれか一項に記載のスペーサ。
【請求項8】
前記パイプクランプ構造体には、これを容易に開くようにするためにジョイントが設けられている、請求項1から7のいずれか一項に記載のスペーサ。
【請求項9】
スペーサが一体の部品として製造された、請求項1から8のいずれか一項に記載のスペーサ。
【請求項10】
スペーサがプラスチックで作られた、請求項1から9のいずれか一項に記載のスペーサ。
【請求項11】
スペーサが射出成型法で製造された、請求項1から10のいずれか一項に記載のスペーサ。
【請求項12】
スペーサが、航空機において同軸に被覆される燃料管に適合された、請求項1から11のいずれか一項に記載のスペーサ。
【請求項13】
管が、剛性の高い管、可撓性をもつ管、ホース、及びケーブルのうちの一つとされる、請求項1から11のいずれか一項に記載のスペーサ。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項のスペーサを備えた航空機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−535647(P2007−535647A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509969(P2007−509969)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【国際出願番号】PCT/EP2005/004579
【国際公開番号】WO2005/106306
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(504467484)エアバス・ドイチュラント・ゲーエムベーハー (268)