説明

同軸ケーブル用コネクタおよびその組立方法

【課題】作業工程数を少なくでき、しかもグランドラインにおける接続信頼性を高めることができる同軸ケーブル用コネクタおよびその組立方法の提供。
【解決手段】同軸ケーブル21の中心導体22が接続される接続部5と、接続部5を保持する絶縁性の保持部3と、受け側コネクタに直接的にグランド接続される金属製のコネクタシェル4とを備えたコネクタ10を同軸ケーブル21の先端部に組み立てるにあたって、同軸ケーブル21の外部導体24に当接させた金属製のグランドバー8をコネクタシェル4に当接させた状態で、グランドバー8を外部導体24およびコネクタシェル4に半田付けする工程と、中心導体22を接続部5に半田付けする工程を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話などの電子機器に用いられる同軸ケーブル用コネクタおよびその組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話などの電子機器には、同軸ケーブルが広く用いられている(特許文献1〜3を参照)。
図6は、同軸ケーブルおよびその先端部に組み立てられたコネクタの一例を示すものである。
コネクタ30は、同軸ケーブル21の先端部に組み立てられるものであって、コネクタ本体31と、これに対向配置される金属製のカバーシェル32とを備えている。
コネクタ本体31は、同軸ケーブル21の中心導体22が接続される接続部35と、金属製のコネクタシェル34とを備えている。コネクタシェル34は図示せぬ接続位置においてカバーシェル32に接続されている。
【0003】
同軸ケーブル21は、中心導体22の外周に絶縁層23が設けられ、その外周に外部導体24(シールド線)が設けられ、その外周に外被25が設けられている。
同軸ケーブル21の先端部は、外被25が除去されて外部導体24が露出しており、その先端に中心導体22が口出しされている。
同軸ケーブル21は複数並列され、これら複数の同軸ケーブル21の外部導体24が一括して金属板からなるグランドバー8、8に挟み込まれて、半田付けまたは圧接により接続されている。符号P3は外部導体24とグランドバー8の接続箇所である。
中心導体22はコネクタ30の接続部35に半田付けまたは圧接により接続されている。符号P4は中心導体22と接続部35の接続箇所である。
【0004】
グランドバー8は、コネクタ本体31とカバーシェル32の間に配置され、半田付けまたは圧接によりカバーシェル32に接続されている。このため、外部導体24は、グランドバー8、カバーシェル32を介してコネクタシェル34に接続されている。符号P5はグランドバー8とカバーシェル32の接続箇所である。
コネクタシェル34は、コネクタ30を受け側コネクタ(例えばレセプタクル)(図示略)に接続したときに、この受け側コネクタの接続部に直接、接触し、これによってグランドに接続される。以下、外部導体24からコネクタシェル34を経て受け側コネクタの接続部に至る接続経路をグランドラインということがある。
【0005】
次に、同軸ケーブル21の先端部にコネクタ30を組み立てる方法の一例について説明する。
複数並列させた同軸ケーブル21の先端部の外被25を除去し、外部導体24を露出させるとともに、中心導体22を口出しする。
2枚のグランドバー8、8の間に外部導体24を挟み込んだ状態で、グランドバー8、8と外部導体24を半田付けする(図6における接続箇所P3)。このグランドバー8と外部導体24との半田付けは、コネクタ30の組み立てに先だって行われる。
【0006】
図7に示すように、グランドバー8を固定した同軸ケーブル21を、コネクタ本体31の上に置き、中心導体22を接続部35に半田付けにより接続する(図6における接続箇所P4)。
さらに、同軸ケーブル21の上にカバーシェル32を配置し、カバーシェル32をグランドバー8に半田付けにより接続する(図6における接続箇所P5)。
【0007】
特許文献2に記載のコネクタでは、グランドラインに、外部導体が嵌合する凹溝を有するグランド板が使用される。外部導体を凹溝に嵌合させ、圧接させることによって、外部導体とグランド板を接続している。この構造では、半田付けでなく圧接を採用するため作業が容易である。
【特許文献1】特開2001−307822号公報
【特許文献2】特開2004−179150号公報
【特許文献3】特開2006−147473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、コネクタ30では、作業工程の数が多く、製造に手間がかかるという問題があった。
また、グランドラインにおける外部導体の接続方式に圧接を採用した場合には、作業が容易になるという利点はあるが、接続の信頼性が不十分となるおそれがあった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、作業工程数を少なくでき、しかもグランドラインにおける接続信頼性を高めることができる同軸ケーブル用コネクタおよびその組立方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1にかかる同軸ケーブル用コネクタの組立方法は、中心導体の外周に絶縁層が設けられ、その外周に外部導体が設けられ、その外周に外被が設けられた同軸ケーブルの先端部に、コネクタを組み立てる方法であって、前記コネクタは、前記中心導体が接続される接続部と、前記接続部を保持する絶縁性の保持部と、受け側コネクタに直接的にグランド接続される金属製のコネクタシェルとを備え、前記同軸ケーブルの外部導体に当接させて配置した金属製のグランドバーを前記コネクタシェルに当接させた状態で、前記グランドバーを前記外部導体および前記コネクタシェルに半田付けする工程と、前記中心導体を前記接続部に半田付けする工程とを含むことを特徴とする。
本発明の請求項2にかかる同軸ケーブル用コネクタの組立方法は、請求項1において、前記グランドバーを前記コネクタシェルの一方の面に重ねた状態として前記半田付けを行うことを特徴とする。
本発明の請求項3にかかる同軸ケーブル用コネクタの組立方法は、請求項1または2において、前記外部導体を2枚のグランドバーで挟み、これらのうち一方を前記コネクタシェルに当接させた状態で前記半田付けを行うことを特徴とする。
本発明の請求項4にかかる同軸ケーブル用コネクタの組立方法は、請求項1〜3のうちいずれか1項において、前記同軸ケーブルを挟んで前記コネクタシェルに対向するように、金属製のカバーシェルを設けることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項5にかかる同軸ケーブル用コネクタは、中心導体の外周に絶縁層が設けられ、その外周に外部導体が設けられ、その外周に外被が設けられた同軸ケーブルの先端部に組み立てられるコネクタであって、前記中心導体が接続される接続部と、前記接続部を保持する絶縁性の保持部と、受け側コネクタに直接的にグランド接続される金属製のコネクタシェルとを備え、前記同軸ケーブルの外部導体に当接する金属製のグランドバーが、前記コネクタシェルに当接した状態で、前記外部導体および前記コネクタシェルに一体的に半田付けされ、前記中心導体が前記接続部に半田付けされていることを特徴とする。
本発明の請求項6にかかる同軸ケーブル用コネクタは、請求項5において、前記同軸ケーブルを挟んで前記コネクタシェルに対向するように、金属製のカバーシェルが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、同軸ケーブルの外部導体に当接させたグランドバーをコネクタシェルに当接させた状態で、グランドバーを外部導体およびコネクタシェルに半田付けするとともに、中心導体を接続部に半田付けするため、これらの半田付け作業を一連の動作で行うことができる。
従って、コネクタへの組み込みに先だってグランドバーを同軸ケーブルに固定する従来方法に比べ、作業工程数を削減し、組立作業の効率化を図ることができる。
【0012】
外部導体、グランドバーおよびコネクタシェルが半田付けにより接続されるので、外部導体とコネクタシェルとの間の電気抵抗を低くすることができる。このため、外部導体がカバーシェルを介してコネクタシェルに接続される方式に比べ、グランドラインの接続信頼性の点で優れている。
また、外部導体、グランドバーおよびコネクタシェルが半田付けにより直接的に接続されるので、カバーシェルとグランドバーとの接続が不要となる。このため、作業工程数を削減し、組立作業の効率化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1〜図4は、本発明の同軸ケーブル用コネクタの一例を示すものである。図1は、同軸ケーブル用コネクタ10(以下、単にコネクタ10という)を示す断面図である。図2は、コネクタ10をカバーシェル2側から見た平面図である。図3は、コネクタ10を示す前面図である。図4は、コネクタ10をコネクタシェル4側から見た平面図である。
以下の説明において、同軸ケーブル21の先端方向を前方といい、その逆方向を後方ということがある。
【0014】
図1に示すように、コネクタ10は、同軸ケーブル21の先端部に組み立てられるものであって、コネクタ本体1と、これに対向配置されるカバーシェル2とを備えている。
コネクタ本体1は、同軸ケーブル21の中心導体22が接続される接続部5と、接続部5を保持する保持部3と、保持部3の外面側(図1における下面)に設けられたコネクタシェル4とを備えている。
保持部3は、樹脂などの絶縁材料からなり、本体部6と、本体部6から前方に突出する突出部7とを有する。突出部7は、コネクタ10を受け側コネクタ(例えばレセプタクル)(図示略)に接続する際に、受け側コネクタの嵌合穴(図示略)に挿入される。
【0015】
コネクタシェル4は、金属板からなり、本体部6の外面6a(図1における下面)に取り付けられ、本体部6の後端より後方に延出して形成されている。この後方延出部分を延出部4aという。
コネクタシェル4は、コネクタ10を受け側コネクタ(図示略)に接続したときに、この受け側コネクタの接続部に直接的にグランド接続される。すなわち、受け側コネクタの接続部に直接、接触し、これによってグランドに接続される。以下、外部導体24からコネクタシェル4を経て受け側コネクタの接続部に至る接続経路をグランドラインということがある。
【0016】
接続部5は、金属板からなり、本体部6の内面側(図1における上面)から突出部7にかけて形成されている。
カバーシェル2は、金属板からなり、同軸ケーブル21を挟んでコネクタシェル4に対向するように設けられている。カバーシェル2によって、半田付け部分を保護することができる。カバーシェル2は、図示せぬ接続位置においてコネクタシェル4に接続されていてもよい。
【0017】
次に、同軸ケーブル21の構成について説明する。
同軸ケーブル21は、銅線などからなる中心導体22の外周に絶縁層23が設けられ、その外周に、複数の導線(銅線など)からなる外部導体24(シールド線)が設けられ、その外周に外被25が設けられている。
同軸ケーブル21の先端部は、外被25が除去されて外部導体24が露出しており、その先端に中心導体22が口出しされている。
中心導体22は、コネクタ本体1の接続部5に半田付けにより接続されている。図1における符号P1は中心導体22と接続部5の接続箇所である。
【0018】
同軸ケーブル21は複数並列され、これら複数の同軸ケーブル21の外部導体24が一括してグランドバー8、8に固定され、電気的に接続している。
グランドバー8、8は、銅合金、ステンレス鋼などの金属からなる板状とされ、同軸ケーブル21を挟んで対向配置され、内面で外部導体24に当接した状態で半田付けにより外部導体24に固定されている。
以下、2枚のグランドバー8のうち、カバーシェル2側(図1における上側)のグランドバー8をグランドバー8Aといい、コネクタシェル4側(図1における下側)のグランドバー8をグランドバー8Bということがある。
グランドバー8Bは、コネクタシェル4の延出部4aの内面4b(図1における上面)に重ねた状態で半田付けするのが好ましい。これによって、グランドバー8Bとコネクタシェル4との間の接続信頼性および接合強度が高められる。
【0019】
このように、外部導体24、グランドバー8、およびコネクタシェル4は、半田付けにより一体的に接続されている。図1における符号P2は、外部導体24、グランドバー8、およびコネクタシェル4の接続箇所である。
同軸ケーブル21は、並列させた状態で、テープ状の連結部材27で外被25を互いに連結させた構成としてもよい(図5を参照)。
【0020】
次に、同軸ケーブル21の先端に、同軸ケーブル用コネクタ10を組み立てる方法について説明する。
複数並列させた同軸ケーブル21の先端部の外被25を除去し、外部導体24を露出させるとともに、中心導体22を口出しする。
【0021】
図5に示すように、グランドバー8Bをコネクタシェル4上に置く。グランドバー8Bは延出部4aの内面4bに重ねた状態で載置するのが好ましい。
グランドバー8Bの上に同軸ケーブル21を配置する。この際、外部導体24をグランドバー8Bに当接させる。
中心導体22を接続部5に当接させて配置し、中心導体22を接続部5に半田付けする(図1における接続箇所P1)。
【0022】
さらに、同軸ケーブル21の上にグランドバー8Aを配置し、グランドバー8A、8Bで外部導体24を挟み込んだ状態として、グランドバー8A、8Bと外部導体24を半田付けするとともに、グランドバー8Bをコネクタシェル4に半田付けする。
これによって、グランドバー8、外部導体24、およびコネクタシェル4が半田付けにより一体的に接続される(図1における接続箇所P2)。
なお、接続箇所P1、P2における半田付け作業の順番は、いずれが先であってもよい。また、外部導体24に対するグランドバー8の半田付けと、コネクタシェル4に対するグランドバー8の半田付けは、同時でもよいし、別々に行ってもよい。
【0023】
この組立方法は、同軸ケーブル21の外部導体24に当接させたグランドバー8をコネクタシェル4に当接させた状態で、グランドバー8を外部導体24およびコネクタシェル4に半田付けする工程と、中心導体22を接続部5に半田付け工程を有する。これらの半田付け作業は一連の動作で行うことができる。
従って、コネクタ10への組み込みに先だってグランドバー8を同軸ケーブル21に固定する従来方法に比べ、作業工程数を削減し、組立作業の効率化を図ることができる。
【0024】
外部導体24、グランドバー8、およびコネクタシェル4が半田付けにより接続されるので、外部導体24とコネクタシェル4との間の電気抵抗を低くすることができる。このため、外部導体24がカバーシェル2を介してコネクタシェル4に接続される方式に比べ、グランドラインの接続信頼性の点で優れている。
また、外部導体24、グランドバー8、およびコネクタシェル4が半田付けにより直接的に接続されるので、カバーシェル2とグランドバー8との接続が不要となる。このため、作業工程数を削減し、組立作業の効率化を図ることができる。
さらには、グランドラインにおける接続方式として半田付けを採用するので、圧接による接続を採用する場合に比べ、接続信頼性を高めることができる。
また、半田付けの採用により、グランドバー8に対する同軸ケーブル21の接続強度を高めることができるため、コネクタ10に対する同軸ケーブル21の接続強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る同軸ケーブル用コネクタの一例を示す断面図である。
【図2】図1に示す同軸ケーブル用コネクタをカバーシェル側から見た平面図である。
【図3】図1に示す同軸ケーブル用コネクタの前面図である。
【図4】図1に示す同軸ケーブル用コネクタをコネクタシェル側から見た平面図である。
【図5】図1に示す同軸ケーブル用コネクタの組立工程を説明するための説明図である。
【図6】従来の同軸ケーブル用コネクタの一例への同軸ケーブルの接続状態を示す断面図である。
【図7】図6に示す同軸ケーブル用コネクタの組立工程を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1・・・コネクタ本体、2・・・カバーシェル、3・・・保持部、4・・・コネクタシェル、4a・・・延出部、4b・・・内面、5・・・接続部、8・・・グランドバー、10・・・同軸ケーブル用コネクタ、21・・・同軸ケーブル、22・・・中心導体、23・・・絶縁層、24・・・外部導体、25・・・外被。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心導体(22)の外周に絶縁層(23)が設けられ、その外周に外部導体(24)が設けられ、その外周に外被(25)が設けられた同軸ケーブル(21)の先端部に、コネクタを組み立てる方法であって、
前記コネクタは、前記中心導体が接続される接続部(5)と、前記接続部を保持する絶縁性の保持部(3)と、受け側コネクタに直接的にグランド接続される金属製のコネクタシェル(4)とを備え、
前記同軸ケーブルの外部導体に当接させて配置した金属製のグランドバー(8)を前記コネクタシェルに当接させた状態で、前記グランドバーを前記外部導体および前記コネクタシェルに半田付けする工程と、前記中心導体を前記接続部に半田付けする工程とを含むことを特徴とする同軸ケーブル用コネクタの組立方法。
【請求項2】
前記グランドバーを前記コネクタシェルの一方の面に重ねた状態として前記半田付けを行うことを特徴とする請求項1に記載の同軸ケーブル用コネクタの組立方法。
【請求項3】
前記外部導体を2枚のグランドバーで挟み、これらのうち一方を前記コネクタシェルに当接させた状態で前記半田付けを行うことを特徴とする請求項1または2に記載の同軸ケーブル用コネクタの組立方法。
【請求項4】
前記同軸ケーブルを挟んで前記コネクタシェルに対向するように、金属製のカバーシェルを設けることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の同軸ケーブル用コネクタの組立方法。
【請求項5】
中心導体(22)の外周に絶縁層(23)が設けられ、その外周に外部導体(24)が設けられ、その外周に外被(25)が設けられた同軸ケーブル(21)の先端部に組み立てられるコネクタであって、
前記中心導体が接続される接続部(5)と、前記接続部を保持する絶縁性の保持部(3)と、受け側コネクタに直接的にグランド接続される金属製のコネクタシェル(4)とを備え、
前記同軸ケーブルの外部導体に当接する金属製のグランドバー(8)が、前記コネクタシェルに当接した状態で、前記外部導体および前記コネクタシェルに一体的に半田付けされ、
前記中心導体が前記接続部に半田付けされていることを特徴とする同軸ケーブル用コネクタ。
【請求項6】
前記同軸ケーブルを挟んで前記コネクタシェルに対向するように、金属製のカバーシェルが設けられていることを特徴とする請求項5に記載の同軸ケーブル用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−9789(P2009−9789A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169041(P2007−169041)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】