説明

吐出ヘッド

【課題】小型化が可能なシャットオフノズルタイプの吐出ヘッドを提案する。
【解決手段】吐出ヘッド本体2に、ポンプステムSにつながる筒体1cの連係部位を残して該ヘッド本体2の内側領域を、内容物供給側Mとべース側M1とに区分する隔壁8を設け、該隔壁8のべース側M1の壁面に、該べース1の天面において弾性接触する舌片状の第1のばね部材8c、8dと、第2のばね部材8hとを配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧媒体を利用したエアゾール容器やプライミングポンプを備えた容器等のステムに装着してその押圧操作により容器内の内容物を適量排出するのに好適な吐出ヘッドに関するものであり、とくに該吐出ヘッドの内部構造の簡素化、サイズのコンパクト化を図ろうとするものである。
【背景技術】
【0002】
乳液等の化粧料を入れる容器やシャンプー、リンスあるいは整髪料等を入れる容器にあっては使勝手の改善や衛生面の観点から、ハンディータイプ、据え置きタイプの容器にかかわりなく容器内の内容物を押圧操作により適量排出することを可能とした吐出ヘッドが装着されている。
【0003】
ところで、この種の吐出ヘッドは、ノズルの噴出口は常に開放されたままになっているのが普通であり、液だれが発生するおそれがあり、しかも噴出ヘッド内に残存する内容物が固化してしまった場合においては噴出ヘッドをスムーズに作動させることができなくなったり、内容物が予期せぬ方向へ噴出してしまうなどの不都合があった。
【0004】
上述のような従来の問題の解決を図るべく、近年に至っては、噴出ヘッドのヘッド本体内にノズルの噴出口に適合する先端部を有するノズルピンを組み込み、噴出ノズルの押圧操作に伴いノズルピンをスライドさせてノズルの噴出口を開放するようにした構造の吐出ヘッド(シャットオフノズルタイプの吐出ヘッド)が提案(例えば、特許文献1参照)されており、これにより噴出ヘッド内に残存した内容物の固化を回避する試みがなされているところ、上記従来の噴出ヘッドは、ノズルピン(摺動杵)の後端部に係合板を連係させてスライドさせる構造になっているため内部構造が比較的複雑であり、径方向のみならず、高さ方向の寸法が大きくなるのが避けられない状況にあり、外観形状をすっきりしたデザインに仕上げるにも限界があった。
【0005】
また、シャットオフノズルタイプの吐出ヘッドは、その構成部材を合成樹脂で成形するのが基本になっているけれども、ノズルピンを弾性保持する手段は金属製のスプリングが適用されており、分別回収により資源の有効活用を図る観点から同一素材によって構成された商品の開発も強く望まれている。
【特許文献1】特開2008−6410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上記のような従来の問題を回避し得る新規なシャットオフノズルタイプの吐出ヘッドを提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、容器のポンプステムにつながる筒体を有し、該ステムの動きに合わせて移動可能とするべースと、このべースを摺動可能に内挿するヘッド本体と、このヘッド本体の横向き開口に嵌合保持され、該横向き開口から突出する先端を有するノズル部と、このノズル部の内側でその軸芯に沿って前後にスライド可能に弾性支持され、該ヘッド本体の押し込みによる後方へのスライドにてノズル部の噴出開孔を開放して容器内の内容物を外界へ噴出させるノズルピンを備えた吐出ヘッドであって、
前記ヘッド本体に、その内側にて固定保持され、ポンプステムにつながる筒体の連係部位を残して該ヘッド本体の内側領域を、内容物供給側とべース側とに区分する隔壁を設け、
該隔壁のべース側の壁面に、該べースの天面において弾性接触する舌片状の第1のばね部材を配置し、
該隔壁の内容物供給側の壁面に、ノズル部の軸芯に対して斜め下向きの傾斜面を有するガイド部材と、このガイド部材に一体連結しノズルピンの後端部に連係する支持部材と、この支持部材を弾性保持する第2のばね部材とを配置し、
前記べースに、ガイド部材の傾斜面に当接する傾斜面を有し、ヘッド本体の押し込みによってガイド部材を支持部材とともに第2のばね部材の付勢力に抗してヘッド本体の後方へ押しやる起立部材を設けたことを特徴とする吐出ヘッドである。
【0008】
上記の構成になる吐出ヘッドにあっては、前記第1のばね部材、第2のばね部材、ガイド部材及び隔壁は、それらが全て一体的に成形されて単一部材を構成する合成樹脂が適用される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吐出ヘッドは、ヘッド本体を押し込むと、起立部材の傾斜面においてガイド部材の傾斜面が滑動し該ガイド部材が第2のばね部材の付勢力に抗してヘッド本体の後方へ向けて押しやられ、この時、ノズルピンに連係する支持部材もガイド部材と同様にヘッド本体の後方へ押しやられることとなり、この後方移動によりノズル部の噴出開孔が開放されることから、通常の吐出ヘッドで使用されているL型のレバーやそれに付随する構成部材が不要となり内部構造が簡素化され、サイズのコンパクト化、デザインの自由度の拡大を図ることができる。
【0010】
また、吐出ヘッドの内部にはスペースに余裕があるため、径の大きなノズルピンを適用することが可能であり、ノズルピンの強度の改善を図ることができるとともに、効率的な組み込みも可能となる。
【0011】
さらに、第1のばね部材、第2のばね部材、ガイド部材及び隔壁は、合成樹脂にて一体成形することができるので、構成部材の部品点数を減らすことが可能であり、しかも金属製部材を使用する必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明をより具体的に説明する。
図1は本発明に吐出ヘッドの実施の形態を模式的に示した側面を断面で示した図であり、図2は図1のA−A断面を示した図であり、図3は図1のB−B断面を示した図である。また、図4(a)〜(c)は隔壁の側面、正面及び平面を示した図であり、さらに図5(a)(b)はべースの側面、正面を示した図である。
【0013】
図における1はべースである。このべース1は水平配置になるディスク状の基体1aと、この基体1aの縁部に一体連結してそれを取り囲む周壁1bと、基体1aを上下において貫通し内容物の排出経路rを形成する筒体1cとから構成されている。筒体1cにおいて基体1aの下面で垂下される下側筒体1cはポンプステムSに嵌合しており、該ポンプステムSの動きに合わせて上下に移動することができるようになっている。
【0014】
2は吐出ヘッドの外観を形成しベース1を摺動可能に内挿するヘッド本体である。このヘッド本体2はディスク形状をなす天面壁2aと、この天面壁2aの縁部に一体連結して下向きに開放された開口を形成する周壁2bとからなる。周壁2bの内側面には抜け止め保持用の環状突起(複数の突起でもよい)2cが形成され、周壁2bの内側面でべース1が摺動する(ノズルピンのスライド代を確保するための摺動)ようになっている。
【0015】
また、3は円筒状をなすノズル部である。このノズル部3の本体部分は、ヘッド本体2の周壁2bに形成された横向き開口2bの凹所空間に嵌合、固定され、その先端には、該横向き開口2bを通り抜けて外界へ突出する先細り形状の先端部分3aを有している。
【0016】
4はヘッド本体2内側において内壁に一体的に設けられた筒体である。この筒体4は横向き開口2bの凹所空間につながっており、その内側には、べース1の筒体1cの上側筒体1cが摺動可能に配置されている。
【0017】
5はノズル部3の外周壁の周りに個設けられた貫通孔である。この貫通孔5は1つ以上形成されていればよく、べース1に設けられた筒体1cに溝部5aを介してつながることにより内容物の排出経路を形成する。
【0018】
6はノズル部3の内側空間に配置されたノズルピンである。このノズルピン6はノズル部3の軸芯Lに沿う軸芯Lを有しノズル部3の内側に設けられたガイド3b(ガイド3bとしてはリブ状のものが適用され、ガイド3bの相互間には内容物が通過する空間部が形成されている)にスライド可能に挿入されるピン本体6aから構成されている。ピン本体6aの先端には、ノズル部3の先端部分3aに形成された開孔に適合して該開孔を閉塞するテーパ部6b(湾曲面を含む)が形成されている。
【0019】
7はノズルピン6のピン本体6aの胴体周りに一体的に形成された環状のシール部材であり、このシール部材7はノズル部3の内周壁に弾性接触することにより内容物の漏れを防止する。
【0020】
8はヘッド本体2の内側に固定保持された隔壁である。この隔壁8は、図4、図6に示したように、ディスク状の本体部分8aの中央部に筒体4を通過せしめる開口8bが形成され、ヘッド本体2の内側領域を、内容物供給側Mとべース側Mとに区分する(図1参照)ようになっており、べース側Mの壁面にはべース1の基体1aの天面において弾性接触する舌片状の第1のばね部材8c、8dが開口8bを挟む対向位置において2つ設けられている(図4(a)〜(c)、図6参照)。
【0021】
また、隔壁8の内容物供給側Mの壁面には、片端のみが支持(支持部材に一体連結している)され、ノズル部3の軸芯に対して斜め下向きの傾斜面n、nを有する一対のガイド部材8e、8fと、このガイド部材8e、8fの片端において一体連結しノズルピン6の後端部に設けられた環状凹部6c(図1参照)に連係するU字形状になる座部をもった板状の支持部材8gと、この支持部材8gを弾性保持する第2のばね部材8hが設けられている。
【0022】
ばね部材8hは本体部分8aから立ち上がり支持部材8gの上端部に連結する逆U字状に湾曲させた湾曲アーム(付勢力を有する)8h、8hと、この支持部材8gの下端に一体連結してヘッド本体2の後方の内側面に当接する端面を有しU字状に湾曲させた湾曲脚片(付勢力を有する)8hから構成されている。
【0023】
9a、9bは、べース1の基体1aに設けられた起立部材である(図5(a)(b)参照)。この起立部材9a、9bはガイド部材8e、8fの傾斜面n、nに当接する傾斜面9a、9bを有しており、ヘッド本体2の押し込みによって傾斜面9a、9bが傾斜面n、nに強く押し当たるようになっておりその相互間で滑動せしめてガイド部材8e、8fをヘッド本体2の後方へ向けて押しやることができるようになっている。
【0024】
上記の構成になる吐出ヘッドは、ヘッド本体2に押圧力を付加していない図1に示すような状態にあっては、ノズル部3の先端部分3aにおける開孔にノズルピン6のテーパ部6bが合致している(図1参照)。
【0025】
容器内の内容物を排出すべく、ヘッド本体2に押圧力を付加して押し下げると、まず、べース1が第1のばね部材8c、8dの付勢力に抗してヘッド本体2の内側で摺動(べース1が隔壁8に近づくように摺動する)し、べース1の基体1aに設けた起立片9a、9bが傾斜面9a、9bにおいてガイド部材8e、8fの傾斜面n、nに強く接触する。この接触によりガイド部材8e、8fはアーム8h、8h及び脚片8hの付勢力に抗してヘッド本体2の後方に向けて押しやられ、図7に示すように、該ガイド部材8e、8fにつながる支持部材8gがヘッド本体2の後方へ向けて移動してそれに連係するノズルピン6もヘッド本体2の後方へ移動することとなり、その結果としてノズル部3の先端部分3aにおける開孔が開放される。
【0026】
この押し込みに続いてさらにヘッド本体2を押し込むと、べース1はヘッド本体2とともに押し込まれることになり(べース1の摺動は停止する)、その下部に配置されるポンプが駆動され、ポンプステム、このポンプステムにつながる筒体1c、筒体4、貫通孔5を通してノズル部3の先端部分3aの開孔から内容物が排出され、押し込み動作を複数回繰り返すことにより内容物は連続的に排出される。
【0027】
ヘッド本体2に付与する押し込み力を取り除くと、第1のばね部材8c、8dの付勢力によりべース1と隔壁8は初期の間隔に復帰し、アーム8h、8h、脚片(付勢力を有する)8hも初期形状に復帰するとともにガイド部材8e、8fは元の位置へと戻り、これによりノズルピン6が前方へと付勢されることになりノズルピン6のテーパ部6bが先端ノズル部3の開孔に適合して該開孔が閉塞する。
【0028】
本発明にしたがう吐出ヘッドは、起立片9a、9bに傾斜面9a、9bをそれぞれ設ける一方、隔壁8に、該傾斜面9a、9bに適合する傾斜面n、nを形成したガイド部材8e、8fを設け、ヘッド本体2の押し込みにより傾斜面9a、9bと傾斜面n、nとの相互間において滑動を惹起せしめ、ガイド部材8e、8fをヘッド本体2の後方へ向けて押しやることによりノズルピン6を確実に作動させることができるものであって、かかる構造によれば内部構造の簡素化が可能であり、径方向の寸法のみならず高さ方向寸法の短縮を図ることができ、外観形状も比較的に容易に変更しやすくなりデザインの自由度も広がる。
【0029】
また、第1のばね部材8c、8d、ガイド部材8e、8f、支持部材8g、第2のばね部材8hについては、隔壁8において一体成形する単一部材として構成することができるので、部品点数が少なくてすみ、効率的に組み立てが可能であり、しかも、金属部材を用いる必要もないので分別回収のための手間が省ける。
【産業上の利用可能性】
【0030】
内部構造が簡素化されたコンパクトなシャットオフノズルタイプの吐出ヘッドが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明にしたがう吐出ヘッドの実施の形態を示した図である。
【図2】図1のA−A断面を示した図である。
【図3】図1のB−B断面を示した図である。
【図4】(a)〜(c)は隔壁の平面、正面及び側面(断面)を示した図である。
【図5】(a)はべースの正面を示した図であり、(b)はべースの側面を示した図である。
【図6】隔壁の外観斜視図である。
【図7】ヘッド本体を押し込んだ状態を示した図である。
【符号の説明】
【0032】
1 べース
1a 基体
1b 周壁
1c 筒体
1c 下側筒体
1c 上側筒体
2 ヘッド本体
2a 天面壁
2b 周壁
2b 横向き開口
2c 環状突起
3 ノズル部
3a 先端部分
3b ガイド
4 筒体
5 貫通孔
5a 溝部
6 ノズルピン
6a ピン本体
6b テーパ部
7 シール部材
8 隔壁
8a 本体部分
8b 開口
8c 第1のばね部材
8d 第1のばね部材
8e ガイド部材
8f ガイド部材
8g 支持部材
8h 第2のばね部材
9a 起立部材
9b 起立部材
9a 傾斜面
9b 傾斜面
S ポンプステム
L 軸芯
軸芯
M 内容物供給側
べース側
傾斜面
傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器のポンプステムにつながる筒体を有し、該ステムの動きに合わせて移動可能とするべースと、このべースを摺動可能に内挿するヘッド本体と、このヘッド本体の横向き開口に嵌合保持され、該横向き開口から突出する先端を有するノズル部と、このノズル部の内側でその軸芯に沿って前後にスライド可能に弾性支持され、該ヘッド本体の押し込みによる後方へのスライドにてノズル部の噴出開孔を開放して容器内の内容物を外界へ噴出させるノズルピンを備えた吐出ヘッドであって、
前記ヘッド本体に、その内側にて固定保持され、ポンプステムにつながる筒体の連係部位を残して該ヘッド本体の内側領域を、内容物供給側とべース側とに区分する隔壁を設け、
該隔壁のべース側の壁面に、該べースの天面において弾性接触する舌片状の第1のばね部材を配置し、
該隔壁の内容物供給側の壁面に、ノズル部の軸芯に対して斜め下向きの傾斜面を有するガイド部材と、このガイド部材に一体連結しノズルピンの後端部に連係する支持部材と、この支持部材を弾性保持する第2のばね部材とを配置し、
前記べースに、ガイド部材の傾斜面に当接する傾斜面を有し、ヘッド本体の押し込みによってガイド部材を支持部材とともに第2のばね部材の付勢力に抗してヘッド本体の後方へ押しやる起立部材を設けたことを特徴とする吐出ヘッド。
【請求項2】
前記第1のばね部材、第2のばね部材、ガイド部材及び隔壁は、それらが全て一体的に成形されて単一部材を構成する合成樹脂からなる、請求項1記載の吐出ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−104917(P2010−104917A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279998(P2008−279998)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】