説明

吐出ポンプ

【課題】コイルスプリングを形成するコイル線の端面によってピストンが削られることを防止することを目的とする。
【解決手段】筒状のシリンダと、シリンダの内側に配置されてシリンダの内周面に液密に摺接されたピストン4と、シリンダの内側に収納されてピストン4を上方に付勢するコイルスプリング5と、ピストン4に連係されていると共にシリンダの上方に上方付勢状態で押下可能に突出されたステムと、ステムの上端部に装着されていると共にステムに連通するノズルを有する押下ヘッドと、を備えた吐出ポンプにおいて、コイルスプリング5の上端部と、シリンダ内に配置されてコイルスプリング5の上端部を係止する上側スプリング係止部42と、の間に、上側スプリング係止部42に対して相対的に滑動可能な介在部材51が介在されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の吐出ポンプとして、従来、例えば下記特許文献1に示されているような、筒状のシリンダと、シリンダの内側に配置されてシリンダの内周面に液密に摺接されたピストンと、シリンダの内側に収納されてピストンを上方に付勢するコイルスプリングと、ピストンに連結されていると共にシリンダの上方に上方付勢状態で押込み可能に突出されたステムと、ステムの上端部に装着されていると共にそのステムに連通するノズルを有する押下ヘッドと、を備えた構成が知られている。上記したコイルスプリングは、シリンダの内周面に配設された係止板部(下側スプリング係止部)とピストンの内周部(上側スプリング係止部)との間に介装されている。また、上記したシリンダの上端部には、内側にステムが挿通された雌ねじ体(補助キャップ)が装着されており、また、前記した押下ヘッドには、ステムの上端部に嵌合されていると共に前記した雌ねじ体に螺着可能な雄ねじ部(縦筒)が垂下されている。
【0003】
上記した構成の吐出ポンプでは、搬送時や陳列時において、上記した雄ねじ部が上記した雌ねじ体に螺着されており、押下ヘッドが押し下げられた状態で保持されている。これにより、吐出ポンプが操作不能な状態となり、押下ヘッドが誤って押し下げられて内容物が吐出することを防止することができる。そして、使用する際には、押下ヘッドをシリンダに対して相対的に軸線回りに回転させ、雄ねじ部を雌ねじ体から取り外す。これにより、押下ヘッドの保持が解除され、コイルスプリングによる付勢力によって押下ヘッドが押し上げられて上昇する。その結果、吐出ポンプが操作可能となり、押下ヘッドを押し下げることによってノズルから内容物を吐出させることができる。
また、上述したように押下ヘッドが上昇した状態では、押下ヘッドが軸線回りに回転自在である。したがって、使用時に押下ヘッドをシリンダに対して相対的に軸線回りに回転させることで、ノズルの向きを調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−12050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の吐出ポンプでは、コイルスプリングを形成する金属製のコイル線の端面の縁部(エッジ)がピストンの内周部の下面に当接している。このため、上述したように押下ヘッドの回転時においてステム及びピストンが共回りしたとき、コイル線の端面で樹脂製のピストンの内周部の下面が削られるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、押下ヘッドの回転操作に伴い上側スプリング係止部がコイルスプリングのコイル線の端面により削られることを防止することができる吐出ポンプを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る吐出ポンプは、筒状のシリンダと、該シリンダの内側に配置されて該シリンダの内周面に液密に摺接されたピストンと、前記シリンダの内側に収納されて前記ピストンを上方に付勢するコイルスプリングと、前記ピストンに連係されていると共に、前記シリンダの上方に上方付勢状態で押下可能に突出されたステムと、該ステムの上端部に装着されていると共に該ステムに連通するノズルを有する押下ヘッドと、を備えた吐出ポンプにおいて、前記コイルスプリングの上端部と、前記シリンダ内に配置されて前記コイルスプリングの上端部を係止する上側スプリング係止部と、の間に、該上側スプリング係止部に対して相対的に滑動可能な介在部材が介在されていることを特徴としている。
【0008】
このような特徴により、コイルスプリングの上端部と上側スプリング係止部との間に介在部材が介在されており、コイルスプリングを形成するコイル線の端面のエッジが上側スプリング係止部に当接していないので、押下ヘッドの回転により上側スプリング係止部が共回りしても、コイル線の端面のエッジによって上側スプリング係止部が削られることがない。しかも、介在部材が上側スプリング係止部に対して相対的に滑動可能であるので、押下ヘッドの回転により上側スプリング係止部が共回りするとき、上側スプリング係止部が介在部材の表面を滑動しながら軸回転する。これにより、介在部材によって上側スプリング係止部が削られることもなく、また、コイル線の端面のエッジによって介在部材が削られることもない。
【0009】
また、本発明に係る吐出ポンプは、前記コイルスプリングが、前記ピストンに設けられた上側スプリング係止部と前記シリンダの内周面に設けられた下側スプリング係止部との間に介装されていることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る吐出ポンプは、前記ピストンに、軸方向に貫通した弁座が設けられ、前記シリンダの内側に、前記弁座に対して離間可能に着座した弁体部を有するバルブが配置されており、前記コイルスプリングが、前記ピストンに設けられた上側スプリング係止部と前記バルブに設けられた下側スプリング係止部との間に介装されている構成であってもよい。
【0011】
また、本発明に係る吐出ポンプは、前記ステムの下端部に、前記ピストンの内側に摺動可能に挿通されたピストンガイドが連結されており、前記コイルスプリングが、前記ピストンガイドに設けられた上側スプリング係止部と前記シリンダの内周面に設けられた下側スプリング係止部との間に介装されている構成であってもよい。
【0012】
また、本発明に係る吐出ポンプは、前記介在部材が、環状に形成されていると共に前記上側スプリング係止部から垂下された筒状部に嵌め込まれていることが好ましい。
これにより、介在部材が筒状部によって保持され、コイルスプリングの上端部と上側スプリング係止部との間から介在部材が外れることが防止される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る吐出ポンプによれば、押下ヘッドの回転操作に伴い、上側スプリング係止部がコイルスプリングのコイル線の端面により削られることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態を説明するための吐出ポンプの縦断面図である。
【図2】本発明の実施の形態を説明するためのコイルスプリングの上端部を示す側面図である。
【図3】本発明の実施の形態を説明するためのヘッド保持状態の吐出ポンプの縦断面図である。
【図4】本発明の実施の形態を説明するためのヘッド押下状態の吐出ポンプの縦断面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態を説明するための吐出ポンプの部分縦断面図である。
【図6】本発明の他の実施の形態を説明するための吐出ポンプの部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る吐出ポンプの実施の形態について、図面に基いて説明する。
なお、本実施の形態では、吐出ポンプ1における押下ヘッド7側(図1における上側)を上方とし、その反対側(図1における下側)を下方とする。また、図1に示す符号Oは、吐出ポンプ1の中心軸線を示しており、以下、単に軸線Oと記す。また、この軸線O方向を、以下、単に「軸方向」と記し、軸線Oに直交する方向を、以下、単に「径方向」と記し、軸線O回りの方向を、以下、単に「周方向」と記す。
【0016】
図1に示すように、吐出ポンプ1は、内容物を収容した図示せぬ容器の口部に装着される吐出器であり、特に、容器内の液体状の内容物を液体の状態で吐出する液体吐出ポンプである。この吐出ポンプ1の概略構成としては、装着キャップ2と、シリンダ3と、ピストン4と、コイルスプリング5と、ステム6と、押下ヘッド7と、バルブ8(弁部材)と、ディップチューブ9と、補助キャップ10(雌ねじ体)と、を備えている。
【0017】
装着キャップ2は、図示せぬ容器の口部に装着されるキャップ体であり、その概略構成としては、円環状の天壁部20と、天壁部20の外縁から垂下された周壁部21と、を備えている。天壁部20は、軸線Oを中心にして軸線Oに対して垂直に配設されている。周壁部21は、軸線Oを中心軸線にして軸方向に沿って延設された円筒形状の筒部であり、その内周面には、図示せぬ容器の口部に螺着される雌ねじ22が形成されている。
【0018】
シリンダ3は、図示せぬ容器内の内容物が内部に供給される筒体であり、このシリンダ3内のうち、後述するピストン4と下側弁座36との間に、内容物が収容される収容室16が形成されている。このシリンダ3は、図示せぬ容器の内側に配設されており、その概略構成としては、直筒部30と、直筒部30の下端に連設された下筒部31と、ディップチューブ9が連結される連結筒部32と、直筒部30の上端から径方向外側に突出したフランジ部33と、フランジ部33の上面に立設された立上り筒部34と、を備えている。
【0019】
直筒部30は、軸線Oを中心軸線にして軸方向に沿って延設された円筒形状の筒部であり、その上部には、空気孔30aが形成されている。また、この直筒部30の上端部の外側には、上記したフランジ部33と図示せぬ容器の口部の上端面との間に介在される円環状のパッキン35が嵌装されている。
【0020】
下筒部31は、直筒部30よりも小径の略円筒形状の筒部であり、軸線Oを中心軸線にして軸方向に沿って延設されている。この下筒部31の下部は、軸方向下側に向かうに従い漸次縮径されたテーパー形状に形成されており、その下端には、円環状の下側弁座36が配設されている。この下側弁座36の内周面(着座面)は、軸方向下側に向かうに従い漸次縮径されたテーパー形状に形成されている。また、下筒部31の内周面には、軸方向に延在する複数の凸リブ37(下側スプリング係止部)が周方向に間欠的に配設されている。この凸リブ37の上面には、コイルスプリング5の下端部が係止されている。
【0021】
連結筒部32は、下筒部31の下端から垂下された円筒形状の筒部であり、軸線Oを中心軸線にして軸方向に沿って延設されている。
フランジ部33は、直筒部30の外周面に沿って全周に亘って形成された円環状の壁部であり、装着キャップ2(周壁部21の上端部)の内側に嵌合され、装着キャップ2の天壁部20の下面に当接されている。
立上り筒部34は、フランジ部33の上面から軸方向に沿って上方に延設された略円筒形状の筒部であり、装着キャップ2の円環状の天壁部20の内側に挿通され、天壁部20の上方に突出されている。
【0022】
また、シリンダ3の下部(連結筒部32)の内側には、オリフィス38が形成されたオリフィス壁部39がシリンダ3と一体に形成されている。オリフィス壁部39は、中央部分に平面視円形のオリフィス38が形成された円環状の板部であり、軸線Oに対して垂直に配設されている。オリフィス壁部39は、下側弁座36の下方に配設されていると共に、その外周部が下側弁座36に一体に連結されている。また、オリフィス38は、内容物が流通可能な流通孔であり、図示せぬ容器内と上記した収容室16内とを連通する内容物の流路の途中に配設されて当該流路を絞って内容物の流量を制御する孔である。具体的に説明すると、オリフィス38は、シリンダ3の下側弁座36やディップチューブ9の開口面積よりも小さい孔であり、下側弁座36と後述するディップチューブ9の上端との間に配設されている。
【0023】
ピストン4は、シリンダ3の直筒部30の内側に配設されて直筒部30の内周面に沿って軸方向に摺動可能な環状部材であり、その概略構成としては、外筒部40(筒状部)と、内筒部41(筒状部)と、連結部42(上側スプリング係止部)と、上側弁座43と、を備えている。
【0024】
外筒部40は、軸線Oを共通軸にして直筒部30と同軸上に配設された略円筒形状の筒部である。この外筒部40の下部は連結部42の外縁から垂下され、外筒部40の上部は連結部42の外縁から立設されている。外筒部。外筒部40の上端部は、軸方向上側に向かうに従い漸次拡径されている。また、外筒部40の下端部は、軸方向下側に向かうに従い漸次拡径されている。そして、外筒部40の上下端部は、それぞれ直筒部30の内周面に全周に亘って液密に摺接されている。
内筒部41は、外筒部40の内側に配設された円筒形状の筒部であり、軸線Oを共通軸にして外筒部40と同軸上に配設されている。この内筒部41の下部は連結部42の内縁から垂下され、内筒部40の上部は連結部42の内縁から立設されている。
【0025】
連結部42は、外筒部40の軸方向中央部分と内筒部41の軸方向中央部分とを連結する連結部であり、外筒部40の内周面及び内筒部41の外周面に沿って全周に亘って形成された平面視円環状の壁部である。この連結部42の下面には、コイルスプリング5の上端部が係止されている。
上側弁座43は、内筒部41の上端に連設された略円筒形状の筒部であり、軸線Oを中心軸線にして軸方向に沿って延設されている。この上側弁座43の上部は、軸方向上側に向かうに従い漸次縮径されたテーパー形状を成している。
【0026】
コイルスプリング5は、上記したピストン4を上方に付勢する付勢部材であり、螺旋状に巻かれた金属製のコイル線50からなる。このコイルスプリング5は、シリンダ3の内側に配設されて上記したシリンダ3の凸リブ37の上端と上記したピストン4の連結部42との間に介装されており、軸線Oを共通軸にして直筒部30と同軸上に配設されている。なお、このコイルスプリング5を形成するコイル線50は、後述する雄ねじ筒76の雄ねじ74や補助キャップ10の雌ねじ15の巻き方向と逆方向に巻かれている。
【0027】
また、図1、図2に示すように、コイルスプリング5の上端部とピストン4の連結部42との間には介在部材51が介在されている。この介在部材51は、平面視円環状のリング体であり、ピストン4の外筒部40の下部と内筒部41の下部との間に嵌め込まれている。また、介在部材51は、ピストン4に対して相対的に軸線O回りに滑動可能な部材であり、介在部材51の上面は、平滑な滑り面であり、ピストン4の連結部42の下面に摺接されている。また、この介在部材51の下面に上記したコイルスプリング5の上端部が係止されている。
【0028】
図1に示すように、ステム6は、軸線Oを中心軸線にして軸方向に沿って延在する略円筒形状の筒体であり、ピストン4に連結されていると共に、シリンダ3の上方に上方付勢状態で押込み可能に突出されている。詳しく説明すると、ステム6は、シリンダ3の上端部の内側から上方に向けて起立されている。そして、ステム6の下端部にはピストン4の内筒部41の上部の外周が嵌合されており、ステム6の内側に上記した上側弁座43が配置されている。また、ステム6の上端部の内側には、軸方向下側に向かうに従い漸次縮径されたテーパー状の弁座部60が設けられており、この弁座部60上に球状の弁体61が離間可能に着座されている。
【0029】
押下ヘッド7は、指等で押し下げ操作するための操作部であり、上記したステム6の上端部に装着されている。押下ヘッド7の概略構成としては、平面視円形の天壁部70と、天壁部70の外縁から垂下された周壁部71と、周壁部71の内側に配設されていると共に天壁部70の下面から垂下された連通筒部72と、連通筒部72に連通されたノズル73と、連通筒部72の下端から垂下された雄ねじ筒76(雄ねじ部)と、を備えている。
【0030】
上記した連通筒部72は、軸線Oを中心軸線にして軸方向に沿って延在された略円筒形状の筒部であり、連通筒部72の上部の外周面には、軸方向に延在する複数の凸リブ75が周方向に間欠的に配設されている。
雄ねじ筒76は、軸線Oを中心軸線にして軸方向に沿って延在された略円筒形状の筒部であり、連通筒部72に連通されている。この雄ねじ筒76の外周面には、雄ねじ74が形成されており、また、雄ねじ筒76の内側には、ステム6の上端部が嵌合されており、これにより、ステム6と連通筒部72とが連通されている。また、この雄ねじ筒76の外径はステム6の軸方向中間部の外径と略同径であり、雄ねじ筒76の外周面はステム6の外周面に対して面一になっている。
【0031】
バルブ8は、シリンダ3の内側に配設されていると共に軸線Oを共通軸にしてシリンダ3と同軸上に配設された棒状の弁部材であり、上下端にそれぞれ弁体部(上側弁体部83、下側弁体部82)が設けられたポペットバルブである。バルブ8の概略構成としては、円筒形状のパイプ部80と、パイプ部80の上端に連結されたロッド部81と、パイプ部80の下端に設けられた下側弁体部82と、ロッド部81の上端に設けられた上側弁体部83と、を備えている。上記したパイプ部80及びロッド部81は、コイルスプリング5の内側に挿通されており、また、ロッド部81の上部は、ピストン4の内筒部41及び上側弁座43の内側に挿通されている。パイプ部80の外周面には、軸方向に延在する複数の凸リブ84が周方向に間欠的に配設されている。
【0032】
下側弁体部82は、上記した下側弁座36に対して着座可能な弁体部であり、下側弁座36の上方に離間して配設されている。詳しく説明すると、下側弁体部82は、パイプ部80に連通された円筒形状の筒部であり、軸線Oを中心軸線にして軸方向に沿って延在されている。下側弁体部82の下端部の外周面は、軸方向下側に向かうに従い漸次縮径されており、その外周面が、上記した下側弁座36の着座面に当接可能となっている。また、下側弁体部82の上端部の外周面には、径方向外側に向けて突出した複数の凸部85が周方向に間欠的に配設されている。これら複数の凸部85は、周方向に隣り合う上記した凸リブ37の間にそれぞれ配設されている。
【0033】
上側弁体部83は、上記した上側弁座43に対して離間可能に着座した弁体部であり、上側弁座43の上端部の内側に嵌め込まれている。詳しく説明すると、上側弁体部83は、ロッド部81よりも大径の筒部であり、上側弁体部83の下部の外周面は、軸方向上側に向かうに従い漸次拡径されている。この上側弁体部83の下部の外周面は、上側弁座43の上端部の内周面に全周に亘って当接されており、これにより、上側弁座43の上端が閉塞されている。
【0034】
ディップチューブ9は、図示せぬ容器の内側に配置されたパイプであり、ディップチューブ9の下端は、図示せぬ容器内に開放され、ディップチューブ9の上端は、上記した連結筒部32の内側に嵌合されてシリンダ3の下端に連結されている。
【0035】
補助キャップ10は、シリンダ3の上端部に被着される環状のキャップ体であり、内周面に雌ねじ15が形成された雌ねじ体である。この補助キャップ10の概略構成としては、円環状の天壁部11と、天壁部11の外縁から垂下された外筒部12と、天壁部11の内縁から垂下されて外筒部12の内側に配設された内筒部13と、内筒部13の下端に連設されたガイド筒部14と、を備えている。
【0036】
天壁部11は、軸線Oに対して垂直に配設された板部であり、シリンダ3の立上り筒部34の上方に配置されている。外筒部12は、立上り筒部34の外周に配設されていると共に軸線Oを共通軸にして立上り筒部34と同軸上に配設された円筒形状の筒部であり、立上り筒部34に対してアンダーカット嵌合されている。内筒部13は、立上り筒部34の内側に配設されていると共に軸線Oを共通軸にして外筒部12及び立上り筒部34と同軸上に配設された円筒形状の筒部であり、内筒部13の内側には、上記したステム6が挿通されている。また、内筒部13の内周面には、上記した押下ヘッド7の雄ねじ74に螺合可能な雌ねじ15が形成されている。ガイド筒部14は、ステム6が内側に挿通されてステム6の押込み動作を軸方向に案内する筒部である。このガイド筒部14は、内筒部13よりも小径の円筒形状の筒部であり、内筒部13の下端から軸方向に沿って下方に延設されている。
【0037】
次に、上記した構成からなる吐出ポンプ1の作用について説明する。
【0038】
吐出ポンプ1を備えた容器の搬送時や陳列時などの使用開始前の状態においては、図3に示すように、押下ヘッド7の雄ねじ筒76の雄ねじ74が補助キャップ10の内筒部13の雌ねじ15に螺着されており、押下ヘッド7が押し下げられた状態で保持されている。これにより、押下ヘッド7が不用意に操作されて内容物が吐出されることが防止される。また、このとき、連通筒部72の凸リブ75の下端が補助キャップ10の天壁部11の上面に係止する位置まで雄ねじ筒76が補助キャップ10の内筒部13内に捩じ込まれている。これにより、押下ヘッド7が所定の高さ位置に配置されるので、複数の吐出ポンプ1の高さ寸法を揃えることができる。
【0039】
一方、吐出ポンプ1を使用する際には、まず、上述した押下ヘッド7の保持を解除する。具体的に説明すると、押下ヘッド7をシリンダ3に対して相対的に軸線O回りに軸回転させ、上記した雄ねじ74と雌ねじ15との螺合を取り外し、押下ヘッド7の雄ねじ筒76を補助キャップ10の内筒部13から離脱させる。これにより、コイルスプリング5による付勢力によって、ピストン4がシリンダ3の直筒部30の内周面に沿って押し上げられ、ピストン4に連結されたステム6とそのステム6に装着された押下ヘッド7とがそれぞれ軸方向に沿って上昇し、図1に示す上死点の状態となる。
【0040】
次に、図4に示すように、押下ヘッド7を押し下げてノズル73の先端から図示せぬ容器の内容物を吐出させる。詳しく説明すると、押下ヘッド7の天壁部70の上面を押圧して押下ヘッド7を軸方向に沿って押し下げる。これにより、ステム6を介してピストン4がコイルスプリング5の付勢力に抵抗しながら押し下げられる。このとき、バルブ8の上側弁体部83がピストン4の上側弁座43の内側に嵌め込まれているので、ピストン4と共にバルブ8が軸方向に沿って下降する。そして、バルブ8の下側弁体部82がシリンダ3の下側弁座36に着座することで、シリンダ3の下側弁座36が閉塞されると共に、バルブ8の下方への移動が規制される。これにより、押下ヘッド7の押し下げ動作に伴い、バルブ8は下降せずにピストン4だけが下降する。その結果、ピストン4の上側弁座43がバルブ8の上側弁体部83から離間し、ピストン4の上側弁座43が開放される。その後、押下ヘッド7が引き続き押し下げられることで、ピストン4がシリンダ3の直筒部30の内周面に沿って下方に向かって摺動する。これにより、シリンダ3内の収容室16の内圧が上昇し、収容室16内の内容物がピストン4の内筒部41内及び上側弁座43内を通ってステム6内に流入する。そして、ステム6の内圧によってステム6内の弁体61が上方に押し上げられてステム6内の弁座部60が開放され、ステム6内の内容物が弁座部60の内側を通って押下ヘッド7の連通筒部72内に流入し、その連通筒部72内からノズル73内を通ってノズル73の先端から外部に吐出される。
【0041】
次に、押下ヘッド7の押圧を解除すると、コイルスプリング5の付勢力によってピストン4及びステム6が押し上げられると共にバルブ8が上昇する。これにより、バルブ8の下側弁体部82がシリンダ3の下側弁座36から離間して当該下側弁座36が開放される。
その後、引き続きコイルスプリング5によってピストン4が押し上げられ、ピストン4がシリンダ3の直筒部30の内周面に沿って上方に向かって摺動すると、シリンダ3内の収容室16の内圧が低下する。これにより、図示せぬ容器内の内容物が、ディップチューブ9の下端からディップチューブ9内に流入してディップチューブ9内を流通し、ディップチューブ9の上端からオリフィス38及び下側弁座36内を通って収容室16内に流入する。
そして、図1に示すように、ピストン4が上死点の位置まで上昇することでピストン4の上側弁座43にバルブ8の上側弁体部83が着座して上側弁座43が閉塞され、内容物の吐出が終了する。
【0042】
また、上述したように押下ヘッド7が上昇した状態では、押下ヘッド7が軸線O回りに回転自在であるため、使用する際に、上記した押下ヘッド7をシリンダ3に対して相対的に軸線O回りに回転させることでノズル73の向きを適宜調整することが可能である。
【0043】
上記した吐出ポンプ1によれば、コイルスプリング5の上端部とピストン4の連結部42との間に介在部材51が介在されており、コイルスプリング5を形成するコイル線50の端面50aのエッジがピストン4の連結部42に当接していないので、ピストン4が軸回転しても、コイル線50の端面50aのエッジによってピストン4の連結部42が削られることがない。しかも、介在部材51がピストン4に対して相対的に滑動可能であり、ピストン4が介在部材51の表面を滑動しながら軸回転するので、介在部材51によってピストン4の連結部42が削られたり、コイル線50の端面50aのエッジによって介在部材51が削られたりすることが生じにくい。したがって、押下ヘッド7の保持を解除したりノズル73の向きを調整したりする際、押下ヘッド7の回転動作に連動してステム6が軸線O回りに共回りし、さらに、このステム6の軸回転に連動してピストン4が軸線O回りに共回りしても、ピストン4が削られることを防止することができる。
【0044】
また、上記した吐出ポンプ1では、環状の介在部材51がピストン4の外筒部40と内筒部41の間に嵌め込まれており、介在部材51がそれら外筒部40や内筒部41によって保持されている。これにより、コイルスプリング5の上端部とピストン4の連結部42との間から介在部材51が外れることを防止することができるので、押下ヘッド7の回転操作によってピストン4が削れることを確実に防止することができる。
【0045】
以上、本発明に係る吐出ポンプの実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記した実施の形態では、コイルスプリング5が、ピストン4の連結部42(上側スプリング係止部)とシリンダ5の凸リブ37(下側スプリング係止部)との間に介装されているが、本発明は、図5に示すように、コイルスプリング5が、ピストン4の連結部42(上側スプリング係止部)と、バルブ108の下端部に設けられたフランジ部185(下側スプリング係止部)と、の間に介装された吐出ポンプ101であってもよい。上記したバルブ108は、シリンダ103の内側に配設されていると共に軸線Oを共通軸にしてシリンダ103と同軸上に配設された棒状の弁部材である。このバルブ108の軸部181の上端部には、ピストン4の上側弁座43に対して離間可能に着座した弁体部183が設けられており、バルブ108の軸部181の下端部には、連通孔186が形成された筒部187が設けられている。この筒部187の下端部には、径方向外側に突出したフランジ部185が設けられている。このフランジ部185は、シリンダ103の下端部に形成された段差部137(底壁部)の上面に係止されており、また、このフランジ部185の上面にコイルスプリング5の下端部が係止されている。また、シリンダ103の下部の内側に設けられた下側弁座136には、球状の弁体161が離脱可能に着座されている。
【0046】
また、本発明は、図6に示すように、コイルスプリング5が、ステム6の下端部に連結されたピストンガイド280の天壁部281(上側スプリング係止部)と、シリンダ203の内周面に全周に亘って形成された段差面237(下側スプリング係止部)と、の間に介装され、上記したピストンガイド280の天壁部281とコイルスプリング5の上端部との間に介在部材251が介在された吐出ポンプ201であってもよい。上記したピストンガイド280は、ピストン204の内側に摺動可能に挿通された部材であり、軸線Oに対して垂直に配設された天壁部281と、天壁部281の外縁から垂下された周壁部282と、天壁部281の上面に立設された立上げ筒部283と、周壁部282の外周面に突設されてシリンダ203の内周面に摺接された複数の支持突起284と、天壁部281の下面の中央部から垂下されていると共に周壁部282の内側に配置された軸部285と、を備えている。上記した周壁部282の内側にコイルスプリング5の上端部が挿入され、天壁部281の下面にコイルスプリング5の上端部が係止されており、また、このコイルスプリング5の上端部の内側に上記した軸部285が配置されている。また、複数の支持突起284は、周方向に間欠的に配設されている。また、立上げ筒部283の外周面には、ピストン204の内周面が摺接されており、立上げ筒部283の下端部には、ピストン204の内側に向けて開口した連通開口283aが形成されている。また、天壁部281の外縁部の上面には、ピストン204の下端部が離間可能に当接されている。また、シリンダ203の下部の内側に設けられた下側弁座236には、球状の弁体261が離脱可能に着座されており、また、シリンダ203の上端部には、外殻部217を有する補助キャップ210が被着されている。また、上記した介在部材251は、円環状に形成されていると共に軸部285の上端部と周壁部282の上端部との間に嵌め込まれている。
【0047】
また、上記した実施の形態では、コイルスプリング5を形成するコイル線50が、雄ねじ筒76の雄ねじ74や補助キャップ10の雌ねじ15の巻き方向と逆方向に巻かれているが、本発明は、コイルスプリング5を形成するコイル線50が、雄ねじ筒76の雄ねじ74や補助キャップ10の雌ねじ15の巻き方向と同方向に巻かれていてもよい。
【0048】
また、上記した実施の形態では、コイルスプリング5の上端部とピストン4の連結部42との間に円環状の介在部材51が介在されているが、本発明は、他の形状の介在部材を用いることも可能である。例えば、平面視C字形状の介在部材であってもよく、或いは、複数に分割された介在部材であってもよい。
【0049】
また、上記した実施の形態では、ステム6とピストン4とが別体に形成されているが、本発明は、ステムとピストンが一体に形成された作動部材を備えた構成にすることも可能である。
また、上記した実施の形態では、シリンダ3の上端部に補助キャップ10(雌ねじ体)が装着されているが、本発明は、シリンダと雌ねじ体とが一体に形成された構成であってもよく、例えばシリンダの上端部の内周面に雌ねじが形成された構成であってもよい。
さらに、本発明は、装着キャップ2やバルブ8、ディップチューブ9等を適宜省略することも可能である。
【0050】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1、101、201 吐出ポンプ
3、103、203 シリンダ
4、204 ピストン
5 コイルスプリング
6 ステム
7 押下ヘッド
37 凸リブ(スプリング係止部、下側スプリング係止部)
40 外筒部(筒状部)
41 内筒部(筒状部)
42 連結部(上側スプリング係止部)
50 コイル線
51、251 介在部材
73 ノズル
185 フランジ部(スプリング係止部、下側スプリング係止部)
281 天壁部(スプリング係止部、上側スプリング係止部)
237 段差面(スプリング係止部、下側スプリング係止部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のシリンダと、
該シリンダの内側に配置されて該シリンダの内周面に液密に摺接されたピストンと、
前記シリンダの内側に収納されて前記ピストンを上方に付勢するコイルスプリングと、
前記ピストンに連係されていると共に、前記シリンダの上方に上方付勢状態で押下可能に突出されたステムと、
該ステムの上端部に装着されていると共に該ステムに連通するノズルを有する押下ヘッドと、
を備えた吐出ポンプにおいて、
前記コイルスプリングの上端部と、前記シリンダ内に配置されて前記コイルスプリングの上端部を係止する上側スプリング係止部と、の間に、該上側スプリング係止部に対して相対的に滑動可能な介在部材が介在されていることを特徴とする吐出ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の吐出ポンプにおいて、
前記コイルスプリングが、前記ピストンに設けられた上側スプリング係止部と前記シリンダの内周面に設けられた下側スプリング係止部との間に介装されていることを特徴とする吐出ポンプ。
【請求項3】
請求項1に記載の吐出ポンプにおいて、
前記ピストンに、軸方向に貫通した弁座が設けられ、
前記シリンダの内側に、前記弁座に対して離間可能に着座した弁体部を有するバルブが配置されており、
前記コイルスプリングが、前記ピストンに設けられた上側スプリング係止部と前記バルブに設けられた下側スプリング係止部との間に介装されていることを特徴とする吐出ポンプ。
【請求項4】
請求項1に記載の吐出ポンプにおいて、
前記ステムの下端部に、前記ピストンの内側に摺動可能に挿通されたピストンガイドが連結されており、
前記コイルスプリングが、前記ピストンガイドに設けられた上側スプリング係止部と前記シリンダの内周面に設けられた下側スプリング係止部との間に介装されていることを特徴とする吐出ポンプ。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の突出ポンプにおいて、
前記介在部材が、環状に形成されていると共に前記上側スプリング係止部から垂下された筒状部に嵌め込まれていることを特徴とする吐出ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−213390(P2011−213390A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83933(P2010−83933)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】