説明

吐出モードを切替え可能な吐出ヘッド及び吐出器

【課題】押下げ式の吐出ヘッドのヘッド本体に吐出モードの異なる複数の吐出口を設け、ヘッド本体に対してカバー部材を回転させることで、吐出口を選択することが可能な吐出ヘッドを提案する。
【解決手段】吐出ポンプのピストン付きの作動部材に適用可能な押下げ用の吐出ヘッドであって、垂直な中心軸と同心状でありかつ上記作動部材に嵌合可能な支持筒34を下面側から垂下するヘッド本体32と、このヘッド本体の周面に回動自在に嵌合させたカバー部材60とで構成され、上記ヘッド部材は、上記支持筒34の内部の垂直な主流路46と、この主流路46の上部からヘッド部材の周壁62へ開通する複数の分岐路48A、48B…とで構成した吐出路44を有し、各各分岐路の先部で形成する吐出口50A、50B…を、相互に内容物を異なる吐出モードで吐出可能に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出モードを切替え可能な吐出ヘッド及び吐出器に関する。
【背景技術】
【0002】
泡及び霧を切り替え可能な吐出器として、押下げヘッド式ではないが、霧放出用のノズル孔の外側に発泡筒を筒軸を水平にして設け、この発泡筒を内外方向に進退させ、或いは発泡筒を回転させることで、霧が発泡筒の内面に衝突して発泡しかつ霧が発泡筒内をそのまま通過するように設けたものが知られている(特許文献1〜2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−278052号
【特許文献2】特開2000−246154
【発明の概要】
【0004】
特許文献1〜2の吐出モード変更機構は、トリガー式の吐出器を前提としており、押下げ式の吐出ヘッドの吐出モード切替に関しては何も提案していない。仮に水平な軸周りを回転し、または軸方向に進退する発泡筒を、押下げ式の吐出ヘッドに設けるとすると、このヘッド部分が嵩張り、必ずしも好適ではない。
【0005】
また吐出モード変更機構は、一つの吐出口を霧及び泡放出用に兼用しているが、例えば設計仕様や用途によっては、極め細かい泡を放出できるメッシュ付きの発泡筒を用いたい場合がある。
【0006】
本願発明の第1の目的は、押下げ式の吐出ヘッドのヘッド本体に吐出モードの異なる複数の吐出口を設け、ヘッド本体に対してカバー部材を回転させることで、吐出口を選択することが可能な吐出ヘッド及び吐出器を提供することである。
【0007】
本発明の第2の目的は、複数の吐出口の一つを選択したときに残りの吐出口に至る吐出用の通路を確実に閉鎖することが可能な吐出ヘッド及び吐出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の手段は、
吐出ポンプのピストン付きの作動部材に適用可能な押下げ用の吐出ヘッドであって、
垂直な中心軸Oと同心状でありかつ上記作動部材に嵌合可能な支持筒34を下面側から垂下するヘッド本体32と、
このヘッド本体の周面に回動自在に嵌合させたカバー部材60とで構成され、
上記ヘッド部材は、上記支持筒34の内部の垂直な主流路46と、この主流路46の上部からヘッド部材の周壁62へ開通する複数の分岐路48A、48B…とで構成した吐出路44を有し、
各各分岐路の先部で形成する吐出口50A、50B…を、相互に内容物を異なる吐出モードで吐出可能に設けるとともに、
上記カバー部材60の周壁の一側に窓孔64を開口し、ヘッド本体32に対してカバー部材60を回転させることで、上記複数の吐出口の任意の一つを選択して窓孔64に合わせることが可能に設け、かつこの状態での残りの吐出口の吐出路が遮断されるように構成している。
【0009】
本手段は、図1に示す如く吐出ヘッドのヘッド本体32内の吐出路44を途中から分岐させて、複数の分岐路48A、48B…の先部である吐出口から、それぞれ異なる吐出モードで内容物を噴出可能としている。吐出モードとしては、泡・霧・液の直流(ジェット)などが考えられる。各モード用の吐出口を、相互に独立して設計することができる。カバー部材の窓孔を各吐出口に合わせて各モードの流体を噴出可能とする。
【0010】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ
上記ヘッド本体32の頂部に上記主流路46へ至る貫通孔54を開口するとともに、
上記カバー部材60の頂壁中央部から軸筒70を、上記貫通孔54及び主流路46の各内面に液密に嵌合させるとともに、この軸筒70のうち窓孔64と同じ側の部分に切欠き74を設けることで、一つの分岐路が窓孔64に開通しているときに、残りの分岐路48A、48B…が主流路46との分岐箇所で軸筒70によって遮断されるように構成している。
【0011】
本手段は、ヘッド本体の頂部に図1に示す貫通孔54を穿設し、この貫通孔を介してカバー部材の頂壁から垂下する切欠き74付きの軸筒70を主流路46内に嵌合することで、各分岐路48A、48B…の開閉を可能としている。開閉箇所がヘッド本体の内部にあるから、液漏れなどを生じにくい。
【0012】
第3の手段は、第2の手段を有し、かつ
上記吐出路44は、少なくとも一つの泡放出用の吐出口及び一つの霧放出用の吐出口を有する。
【0013】
本手段は、上記吐出口を、泡放出用の吐出口及び霧放出用の吐出口とすることを提案している。
【0014】
第4の手段は、第2の手段または第3の手段を有し、かつ
上記各吐出口50A、50B…を上記窓孔64に合わせるための位置合わせ手段80,82を、上記ヘッド本体32及びカバー部材60に形成している。
【0015】
本手段では、図2及び図7に示すようにヘッド本体32及びカバー部材60に位置合わせ用手段80,82を設けたから、カバー部材60を所定箇所に確実に合わせることができる。
【0016】
第5の手段は、
鍔6付きのシリンダ4及び作動部材12を含む吐出ポンプ2と、このポンプを容器体の口頸部Nに固定するための装着筒部材20と、第1の手段から第4の手段の何れかに記載の吐出ヘッド30とで構成された吐出器であって、
上記装着筒部材20とヘッド本体32との間に回り止め機構40を設けている。
【0017】
本手段は、図1の如く装着筒部材20とヘッド本体32との間に回り止め機構40を設けたから、ヘッド本体32に対してカバー部材60を確実に回転させることができる。
【発明の効果】
【0018】
第1の手段に係る発明によれば、吐出ヘッドのヘッド本体32に吐出モードの異なる複数の吐出口50A、50B…をそれぞれ設けたから、各吐出モードに適した吐出口の形態を実現し易い。
【0019】
第2の手段に係る発明によれば、各分岐路をその分岐箇所で遮断するようにしたから、確実に内容物を遮断できる。
【0020】
第3の手段に係る発明によれば、泡放出用の吐出口及び霧放出用の吐出口をそれぞれ設けたから、状態の良好な泡及び霧を放出することができる。
【0021】
第4の手段に係る発明によれば、ヘッド本体32及びカバー部材60に位置合わせ用手段を設けたから、カバー部材60を所定箇所に確実に合わせることができる。
【0022】
第5の手段に係る発明によれば、装着筒部材20とヘッド本体32との間に回り止め機構40を設けたから、ヘッド本体32に対してカバー部材60を確実に回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る吐出器の一の状態での縦断面図である。
【図2】図1の吐出器の平面図である。
【図3】図1の吐出器の要部拡大図である。
【図4】図1の吐出器のカバー部材の縦断面図である。
【図5】図4のカバー部材の底面図である。
【図6】図1の吐出器の他の状態での縦断面図である。
【図7】図1の吐出器の他の状態での平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1から図7は、本発明の第1の実施形態に係る吐出器を示している。この吐出器は、図1に示す如く吐出ポンプ2と、装着筒部材20と、吐出ヘッド30とで構成している。これら各部材は特に断らない限り合成樹脂で形成することができる。
【0025】
吐出ポンプ2は、容器体口頸部Nへの載置用の鍔6を上端部に付設するとともに吸込み弁8を下端部に有するシリンダ4と、シリンダ内に昇降可能に縦設した弁棒10と、シリンダ内に下部を挿入した作動部材12とで構成されている。この作動部材12は、第1筒状ピストン14aを下端に有する第1パーツ14と、第2筒状ピストン16aを上端に有する第2パーツ16と、ピストンガイド18とを具備する。第1筒状ピストン14aはシリンダ4内に、また第2筒状ピストン16aは、ピストンガイド下半の大径筒部内にそれぞれ摺動可能に嵌合されている。第1パーツ14の上部とピストンガイド18との間に吐出弁19を形成している。第1筒状ピストン14aとシリンダ4の下部との間にはスプリングを介装する。もっともこれらの構成は適宜変更することができる。
【0026】
装着筒部材20は、容器体の口頸部Nの外面への装着筒22の上端に付設した内向きフランジ24の内周から取付筒26を、内向きフランジ24の外周から案内筒28をそれぞれ起立している。
【0027】
吐出ポンプ30は、ヘッド本体32と、カバー部材60とで形成している。
【0028】
上記ヘッド本体32は、下面の中央部から小径周壁である支持筒34を、また下面の外周部から中径周壁36及び大径周壁38をそれぞれ垂下している。上記支持筒34は、上記ピストンガイド18の小径上部の外面に液密に嵌合している。また中径周壁36は取付筒26の外面に、さらに大径周壁38は案内筒28の外面にそれぞれ嵌合している。これら大径周壁38と案内筒28とには、相互に係合する凹条及び凸条で形成する回り止め機構40を設ける。さらに図示例では、中径周壁36と取付筒26との間にも相互に係合する凹凸状の係合条42を縦設している。
【0029】
上記ヘッド本体32には吐出路44を設ける。この吐出路44は、図3に示すように、支持筒34の内部に形成される垂直な主流路46と、この主流路の上部から前後方向反対側へ延びる分岐路48A、48Bとで形成している。各分岐路の先部には、吐出モードが異なる吐出口50A、50Bを形成する。これら吐出口は同じ程度の高さに設けることが望ましい。図示例では、吐出口50Aは霧の放出口とし、吐出口50Bは泡の放出口としている。この吐出口50Bは、口部を外方へ延長して、この延長部分内にメッシュ52aを有する発泡筒52を嵌合している。“吐出モードの異なる吐出口”とは、同種の噴霧形態でも粒子の細かいものと荒いものとを組み合わせるようなものを含む。
【0030】
上記ヘッド本体32の頂壁中心部には、主流路46に連続する貫通孔54を穿設する。この貫通孔の孔縁からはリム55を起立している。また主流路46の内面から内向きフランジ状部56を介して補助筒58を起立している。
【0031】
上記カバー部材60は、有頂筒形であって、図1に示す如く筒壁62をヘッド本体32の大径周壁38の外面に回動自在に嵌合している。カバー部材の筒壁62には、吐出口50A、50Bより大径の窓孔64を開口している。
【0032】
上記カバー部材60の頂壁の中央部からは、通路形成用の凹没部68を下端面に有する円棒状の棒状体66を、その周囲から軸筒70及び軸筒よりも大径の押下げ筒72をそれぞれ垂下している。
【0033】
上記棒状体66は、補助筒の上端面と同一の高さまで垂下している。この棒状体66と軸筒70との間には、十分な流体圧力を得られるように狭い隙間を介在させる。
【0034】
上記軸筒70は、窓孔64と同じ側の筒壁部分に切欠き74を形成し、この切欠き74を介して主流路と分岐路の一つを連通させるとともに、残りの筒壁部分で他の分岐路との連通を遮断するように形成する。
【0035】
上記押下げ筒72は、上記リム55の外面に係合させて、上記ヘッド本体の頂壁上面に当接している。
【0036】
さらに図3に示すヘッド本体32の周壁62内面とカバー部材60の大径周壁38との間には、図7の如く窓孔64と一方の吐出孔50Aが合ったときに相互に係合する一対の縦リブ80a、80bからなる第1位置決め手段80と、図2の如く窓孔64と他方の吐出孔50Bが合ったときに相互に係合する一対の縦リブ82a、82bからなる第2位置決め手段82とを設ける。
【0037】
上記構成において、本願の吐出器を内容液が入った容器体の口頸部に取り付け、図1の状態で吐出ヘッドを押し下げると、主流路46から分岐路48Bを通って吐出口50Bに到達し、吐出口50Bから泡として放出される。次にカバー部材60を吐出ヘッドに対して回転させ、図6の状態にして吐出ヘッドを押し下げると、内容液が主流路46から分岐路48Aを通って吐出口50Aに到達し、吐出口50Aから霧として放出される。
【符号の説明】
【0038】
2…吐出ポンプ 4…シリンダ 6…鍔 8…吸込み弁 10…弁棒
12…作動部材 14…第1パーツ 14a…第1筒状ピストン
16…第2パーツ 16a…第2筒状ピストン 18…ピストンガイド
19…吐出弁 20…装着筒部材 22…装着筒 24…内向きフランジ
26…取付筒 28…案内筒
30…吐出ヘッド 32…ヘッド本体 34…支持筒 36…中径周壁
38…大径周壁 40…回り止め機構 42…係合条
44…吐出路 46…主流路 48A、48B…分岐路
50A、50B…吐出口 51…延長筒部 52…発泡筒 52a…メッシュ
54…貫通孔 55…リム
56…内向きフランジ状部 58…補助筒
60…カバー部材 62…周壁 64…窓孔 66…棒状体
68…凹没部 70…軸筒 72…押下げ筒 74…切欠き
80…第1位置決め手段 82…第2位置決め手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出ポンプのピストン付きの作動部材に適用可能な押下げ用の吐出ヘッドであって、
垂直な中心軸(O)と同心状でありかつ上記作動部材に嵌合可能な支持筒(34)を下面側から垂下するヘッド本体(32)と、
このヘッド本体の周面に回動自在に嵌合させたカバー部材(60)とで構成され、
上記ヘッド部材は、上記支持筒(34)の内部の垂直な主流路(46)と、この主流路(46)の上部からヘッド部材の周壁(62)へ開通する複数の分岐路(48A、48B…)とで構成した吐出路(44)を有し、
各各分岐路の先部で形成する吐出口(50A、50B…)を、相互に内容物を異なる吐出モードで吐出可能に設けるとともに、
上記カバー部材(60)の周壁の一側に窓孔(64)を開口し、ヘッド本体(32)に対してカバー部材(60)を回転させることで、上記複数の吐出口の任意の一つを選択して窓孔(64)に合わせることが可能に設け、かつこの状態での残りの吐出口の吐出路が遮断されるように構成したことを特徴とする、吐出モードの切替え可能な吐出ヘッド。
【請求項2】
上記ヘッド本体(32)の頂部に上記主流路(46)へ至る貫通孔(54)を開口するとともに、
上記カバー部材(60)の頂壁中央部から軸筒(70)を、上記貫通孔(54)及び主流路(46)の各内面に液密に嵌合させるとともに、この軸筒(70)のうち窓孔(64)と同じ側の部分に切欠き(74)を設けることで、一つの分岐路が窓孔(64)に開通しているときに、残りの分岐路(48A、48B…)が主流路(46)との分岐箇所で軸筒(70)によって遮断されるように構成したことを特徴とする、請求項1記載の吐出モードの切替え可能な吐出ヘッド。
【請求項3】
上記吐出路(44)は、少なくとも一つの泡放出用の吐出口及び一つの霧放出用の吐出口を有することを特徴とする、請求項2の吐出モードの切替え可能な吐出ヘッド。
【請求項4】
上記各吐出口(50A、50B…)を上記窓孔(64)に合わせるための位置合わせ手段(80,82)を、上記ヘッド本体(32)及びカバー部材(60)に形成したことを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の吐出モードの切替え可能な吐出ヘッド。
【請求項5】
鍔(6)付きのシリンダ(4)及び作動部材(12)を含む吐出ポンプ(2)と、このポンプを容器体の口頸部(N)に固定するための装着筒部材(20)と、上記請求項1から請求項4の何れかに記載の吐出ヘッド(30)とで構成された吐出器であって、
上記装着筒部材(20)とヘッド本体(32)との間に回り止め機構(40)を設けたことを特徴とする、吐出モードの切替え可能な吐出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−11318(P2012−11318A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150524(P2010−150524)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】