説明

吐出器

【課題】吐出態様(泡と霧)の切換操作の操作性を向上させることができる吐出器を提供することを目的としている。
【解決手段】内容物が流通するステム7に連結されたヘッド4を有する吐出器1であって、ヘッド4には、ステム7に連通する流路54を有するヘッド本体5と、ヘッド本体5の周壁部52の外側にヘッド軸O回りに回転可能に装着された回転装着体6と、が備えられ、ヘッド本体5には、流路54を通って供給された内容物をヘッド本体5の周壁部52の外側に向けて噴霧する噴霧部8が設けられ、回転装着体6には、噴霧部8から噴霧された内容物と外気導入口を通って外部から供給された空気とを混合すると共に内容物と空気とからなる気液混合体を発泡させて泡状の内容物を吐出する発泡ノズル9と、噴霧部8から噴霧された内容物を霧状のまま吐出する噴霧ノズル10と、が周方向に離間して配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を吐出する吐出器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の吐出器として、従来、例えば下記特許文献1に示されているような、内容物の吐出時の態様を霧と泡とに切り換えることが可能な吐出器が提案されている。詳しく説明すると、この吐出器のヘッド本体には、ポンプによって供給された内容物を吐出するノズルが設けられている。このノズルには、内容物を霧状にして吐出する噴霧部と、噴霧部から噴霧された霧状の内容物と外部から供給された空気とを混合すると共にその気液混合体を発泡させて吐出する造泡部と、が備えられている。上記した噴霧部は、ヘッド本体の先端部の内側に内蔵されており、上記した造泡部は、上記した噴霧部の先方に配設された起伏回動可能な起伏板に設けられている。
【0003】
上記した従来の吐出器では、起伏板が下がって噴霧部の先方に配設された状態では、造泡部と噴霧部とが連通される。これにより、噴霧部から造泡部に向けて内容物が噴霧され、その霧状の内容物が造泡部において泡状になって吐出される。一方、上記した起伏板を回動させて起立させると、起伏板と共に造泡部が噴霧部の先方から離間する。これにより、噴霧部から噴霧された内容物が霧状のまま外部に吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−285746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の吐出器では、泡状の内容物を吐出するフォーマーモードから霧状の内容物を吐出するスプレーモードに切り換える際、起伏板の下端に設けられた小さな摘みに指等を掛けて起伏板を引き上げる必要があるため、吐出態様の切換操作が行いにくいという問題がある。また、スプレーモードにおいては、回動された起伏板が作業の邪魔になるおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、吐出態様(泡と霧)の切換操作の操作性を向上させることができる吐出器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る吐出器は、内容物が流通するステムに連結されたヘッドを有する吐出器であって、前記ヘッドに、前記ステムに連通する流路を有するヘッド本体と、該ヘッド本体の周壁部の外側にヘッド軸回りに回転可能に装着された回転装着体と、が備えられ、前記ヘッド本体に、前記流路を通って供給された内容物を当該ヘッド本体の周壁部の外側に向けて噴霧する噴霧部が設けられ、前記回転装着体に、前記噴霧部から噴霧された内容物と外気導入口を通って外部から供給された空気とを混合すると共に前記内容物と前記空気とからなる気液混合体を発泡させて泡状の内容物を吐出する発泡ノズルと、前記噴霧部から噴霧された内容物を霧状のまま吐出する噴霧ノズルと、が周方向に離間して配設されていることを特徴としている。
【0008】
このような特徴により、回転装着体をヘッド本体に対して相対的にヘッド軸回りに回転させることにより、噴霧部に連通させるノズル(発泡ノズルと噴霧ノズル)が切り換えられ、内容物の吐出時の態様が切り換えられる。
すなわち、噴霧部に連通(対向)する位置に発泡ノズルを配置させると、ステムを通って噴霧部に供給された内容物は、噴霧部から発泡ノズル内に噴霧される。発泡ノズル内に噴霧された霧状の内容物は、発泡ノズル内において、外気導入口から供給された空気と混合されて気液混合体となった後、発泡ノズルによって発泡して外部に吐出される。つまり、発泡ノズルから泡状の内容物が吐出される。
また、噴霧部に連通(対向)する位置に噴霧ノズルを配置させると、ステムを通って噴霧部に供給された内容物は、噴霧部から噴霧ノズル内に噴霧される。噴霧ノズル内に噴霧された霧状の内容物は、噴霧ノズル内をそのままの態様で通過して外部に吐出される。つまり、噴霧ノズルから霧状の内容物が吐出される。
【0009】
また、本発明に係る吐出器は、前記回転装着体の前記ヘッド本体に対する相対的な周方向位置を、前記発泡ノズルが前記噴霧部に連通する位置、及び前記噴霧ノズルが前記噴霧部に連通する位置にそれぞれ位置決めする回転位置決め手段が設けられていることが好ましい。
【0010】
これにより、回転装着体をヘッド本体に対して相対的にヘッド軸回りに回転させて内容物の吐出態様を切り換える際、回転装着体は、回転位置決め手段によって、発泡ノズルが噴霧部に連通する位置、または、噴霧ノズルが噴霧部に連通する位置に位置決めされる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る吐出器によれば、回転装着体をヘッド本体に対して相対的にヘッド軸回りに回転させることにより、内容物の吐出時の態様(泡と霧)が切り換えられるので、吐出態様の切換操作の操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態を説明するための吐出器の部分破断図であり、泡状の内容物を吐出する状態(フォーマーモード)の図である。
【図2】図1に示すA−A間の断面図である。
【図3】本発明の実施の形態を説明するための吐出器の部分破断図であり、霧状の内容物を吐出する状態(スプレーモード)の図である。
【図4】本発明の実施の形態を説明するための吐出器の平面図であり、泡状の内容物を吐出する状態(フォーマーモード)の図である。
【図5】本発明の実施の形態を説明するための吐出器の平面図であり、霧状の内容物を吐出する状態(スプレーモード)の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る吐出器の実施の形態について、図面に基いて説明する。
なお、本実施の形態では、吐出器1における押下ヘッド4(本発明のヘッドに相当する。)側を上方(図1における上側)とし、その反対側を下方(図1における下側)とする。また、図1に示す符号Oは、押下ヘッド4の中心軸線(本発明のヘッド軸に相当する。)を示しており、以下、単に軸線Oと記す。また、この軸線O方向を、以下、単に「軸方向」と記し、軸線Oに直交する方向を、以下、単に「径方向」と記し、軸線O回りの方向を、以下、単に「周方向」と記す。また、軸線Oに直交する鎖線Lは、後述する発泡ノズル9及び噴霧ノズル10の中心軸線を示しており、以下、単にノズル軸線Lと記す。また、このノズル軸線L方向を、以下、単に「ノズル軸方向」と記し、ノズル軸線Lに直交する方向を、以下、単に「ノズル径方向」と記し、ノズル軸線L回りの方向を、以下、単に「ノズル周方向」と記す。
【0014】
図1に示すように、吐出器1は、内容物を収容した図示せぬ容器の口部に装着され、その容器内の内容物を吐出する吐出器であり、押下ヘッド4を押し下げることで内容物が吐出される押し下げ式の吐出ポンプである。また、この吐出器1は、内容物の吐出時の態様を切り換えることが可能な吐出器であり、この吐出器の使用モードには、泡状の内容物を吐出するフォーマーモードと霧状の内容物を吐出するスプレーモードとがある。
【0015】
上記した吐出器1の概略構成としては、図示せぬ容器の口部に装着された装着キャップ2と、その装着キャップ2に取り付けられた図示せぬポンプと、そのポンプのシリンダ上端から上方付勢状態で押込み可能に起立したステム7と、そのステム7の上端部に継手部材3を介して連結された押下ヘッド4と、が備えられている。
【0016】
装着キャップ2には、軸線Oに対して略垂直に配設された円環板状の天壁部20と、天壁部20の外縁から垂下された円筒状の周壁部21と、天壁部20の内縁から立設された円筒状のガイド部22と、が備えられている。周壁部21は、軸線Oを中心軸線にして軸方向に沿って延設されており、周壁部21の内周面には、図示せぬ容器の口部に螺着される図示せぬ雌ねじが形成されている。ガイド部22は、押下ヘッド4の押し下げ方向を案内する筒状の壁部であり、軸線Oを中心軸線にして軸方向に沿って延設されている。このガイド部22の外周面には、軸方向に沿って延在する凹溝23が形成されている。この凹溝23は、ガイド部22の上端から下端まで延在されており、また、周方向に間隔をあけて複数配設されている。
【0017】
ステム7は、押下ヘッド4を支持する支柱部材であり、軸線Oを中心軸線にして軸方向に沿って延設されていると共に、図示せぬポンプのシリンダの上端から突出されたステム7の上部が、上記した装着キャップ2の天壁部20の内側及びガイド部22の内側にそれぞれ挿通されている。また、このステム7の上端部には、径方向外側に突出されて継手部材3の内側に摺接する摺接部70が設けられている。また、ステム7は、図示せぬポンプと押下ヘッド4内の流路54とを連通する連通部材であり、ステム7の内側には、内容物が流通可能な流路71が形成されている。
【0018】
継手部材3は、軸線Oに対して略垂直に配設された円環板状の天壁部30と、天壁部30の外縁から垂下された下筒部31と、天壁部30の外縁から立設された外筒部32と、天壁部30の上面から立設されて外筒部32の内側に配設された内筒部33と、を備えている。下筒部31の下部は、上記したガイド部22の内側に軸方向に沿って摺動可能に嵌め込まれており、また、下筒部31の内側には、上記したステム7上端の摺接部70が軸方向に摺動可能に嵌入されている。
【0019】
押下ヘッド4は、指等で押し下げ操作することで上記したステム7内の流路71を通って供給された内容物をノズル(発泡ノズル9及び噴霧ノズル10)から吐出する吐出ヘッドである。この押下ヘッド4の概略構成としては、継手部材3を介してステム7に連結された有頂筒状のヘッド本体5と、ヘッド本体5の周壁部52の外側に軸線O回りに回転可能に装着された有頂筒状の回転装着体6と、が備えられている。
【0020】
ヘッド本体5は、二重筒構造の有頂筒体であり、軸線Oに対して略垂直に配設された天壁部51と、天壁部51の外縁から垂下された周壁部52と、天壁部51の下面から垂下されて周壁部52の内側に配設された連通筒部53と、を備えている。
【0021】
周壁部52は、軸線Oを中心軸線にして軸方向に沿って延設された円筒形状の筒部であり、その下端には段差状に拡径された拡径部55が設けられている。また、周壁部52(上記した拡径部55よりも上方部分)の外周面には、径方向外側に突出した係合凸部56が全周に亘って設けられている。また、周壁部52の内径は、上記した装着キャップ2のガイド部22の外径よりも大きく、上記した拡径部55の内側にはガイド部22の上端部が挿入されており、押下ヘッド4が押し下げられることで周壁部52がガイド部22の外側に被せられる。また、周壁部52の内周面には、軸方向に沿って延在する凸リブ57が周方向に間隔をあけて複数形成されている。この凸リブ57は、周壁部52の軸方向中間部から下端まで延在されており、凸リブ57の下端部は、上記したガイド部22の凹溝23の上端部の内側に嵌め込まれている。これら軸方向に延在する凸リブ57及び凹溝23は、ヘッド本体5の回り止め部であり、これら軸方向に延在する凸リブ57及び凹溝23によって、ヘッド本体5と装着キャップ2との相対的な軸方向移動が許容されると共に相対的な軸線O回りの回転が規制されている。
【0022】
連通筒部53は、軸線Oを共通軸にして周壁部52と同軸上に配設された円筒形状の筒部である。この連通筒部53は、上記した継手部材3の外筒部32の内側に配設されており、連通筒部53の内側には、上記した継手部材3の内筒部33が嵌合されている。この連通筒部53の内部は、継手部材3の内部を介してステム7内の流路71に連通されており、図示せぬ容器内から供給された内容物が流通する流路54となっている。
【0023】
上記したヘッド本体5には、上記した流路54を通って供給された内容物を周壁部52の外側に向けて噴霧する噴霧部8が設けられている。噴霧部8は、液状の内容物をスピン流路80で渦状に流通させて当該内容物を噴霧孔81から噴霧する部分である。具体的に説明すると、噴霧部8には、ヘッド本体5の連通筒部53の外周面と周壁部52の内周面との間に介在された円筒状の外壁部87と、外壁部87の内側に配設されてノズル軸線Lを共通軸にして外壁部87と同軸上に延設された円柱状の芯部82と、該芯部82に先端側(ヘッド本体5の周壁部52の径方向外側)から被着された噴霧キャップ83と、が備えられている。
【0024】
上記した外壁部87は、ノズル軸線Lを中心軸線にしてノズル軸方向に沿って延設された略円筒形状の筒部である。この外壁部87は、上部がヘッド本体5の天壁部51によって構成されており、ヘッド本体5と一体に形成されている。また、外壁部87の一端(連通筒部53側の端部)は、連通筒部53の内部(流路54)に向けて開口され、他端(周壁部52側の端部)は、ヘッド本体5の周壁部52の外側に向けて開口されている。
【0025】
芯部82の一端(連通筒部53側の端部)は外壁部87の一端に連結されており、芯部82は、外壁部87及びヘッド本体5と一体に形成されている。芯部82の外周面には、ノズル軸方向に沿って延在する凹溝84が形成されている。
【0026】
噴霧キャップ83は、芯部82の外周に周設された円筒形状の筒部85と、この筒部85の端部に設けられた端壁部86と、を備えている。筒部85は、ノズル軸線Lを共通軸にして芯部82と同軸上に配設されており、外壁部87の内周面にアンダーカット嵌合されている。端壁部86は、ノズル軸線Lに対して垂直に配設された壁部であり、外壁部87の他端部(周壁部52側の端部)内であって芯部82の先方に配設されている。この端壁部86の芯部82側の表面は、芯部82の先端面に当接されており、その表面には、上記した凹溝84に連通するスピン流路80が形成されている。また、端壁部86の中央部分には、スピン流路80に連通する貫通孔状の噴霧孔81が形成されている。
【0027】
回転装着体6は、ヘッド本体5に被せられたキャップ状の部材であり、軸線Oに対して略垂直に配設された天壁部60と、天壁部60の外縁から垂下された周壁部61と、を備えている。
天壁部60は、上面に押圧面62が形成された板部であり、ヘッド本体5の天壁部51の上に摺動可能に配設されている。
【0028】
周壁部61は、軸線Oを中心軸線にして軸方向に沿って延設された円筒形状の筒部であり、ヘッド本体5の周壁部52(拡径部55の上方の部分)の外側に周設されている。この周壁部61の下端部の内周面には、ヘッド本体5の係合凸部56に係合する係合凹部62が全周に亘って形成されており、回転装着体6の周壁部61とヘッド本体5の周壁部52とは軸線O回りに回転可能にアンダーカット嵌合されている。
【0029】
上記した回転装着体6の周壁部61には、上記した噴霧部8から噴霧された内容物と外気導入口95(図2に示す。)を通って外部から供給された空気とを混合すると共にその気液混合体を発泡させて泡状の内容物を吐出する発泡ノズル9と、上記した噴霧部8から噴霧された内容物を霧状のまま吐出する噴霧ノズル10と、が設けられている。
【0030】
発泡ノズル9は、回転装着体6の周壁部61から径方向外側に向けて突設されたノズル筒部94と、ノズル筒部94の内側に嵌合されたメッシュリング90と、メッシュリング90の内側に収納された内筒体91と、を備えている。
【0031】
ノズル筒部94は、噴霧部8の外壁部87よりも大径の略円筒形状の筒部であり、ノズル軸線Lを中心軸線にしてノズル軸方向に沿って延設されている。このノズル筒部94の一端(基端)は、回転装着体6の周壁部61の内周面に開口されており、他端(先端)は、外部に向けて開放されている。
【0032】
また、図2に示すように、ノズル筒部94には、発泡ノズル9内の気液混合室96と外部とを連通する外気導入口95が形成されている。外気導入口95は、ノズル筒部94の側部に対向配置された長孔状の開口であり、図2に示すようにノズル断面視において左右対称に一対配設されている。
【0033】
図1に示すように、上記したメッシュリング90は、ノズル軸線Lを共通軸にしてノズル筒部94と同軸上に配設された円筒形状の部材であり、メッシュリング90のノズル先端側の端部には、ノズル軸線Lに対して垂直に配設されたメッシュシート92が張設されている。
【0034】
内筒体91は、ノズル軸線Lを共通軸にしてメッシュリング90と同軸上に配設された円筒形状の部材であり、この内筒体91の内部空間が、噴霧部8から噴霧された内容物と外気とを混合する気液混合室96となっている。また、内筒体91のノズル基端側の端部には、メッシュリング90の基端面に掛止される爪部93が複数配設されている。複数の爪部93は、ノズル周方向に間隔をあけて配設されており、上記した外気導入口95は、周方向に隣り合う爪部93の間から気液混合室96に向けて開放されている。
【0035】
上記した噴霧ノズル10は、回転装着体6の周壁部61に形成された開口であり、周壁部61の内周面側から外周面側に向かうに従い漸次拡径されている。この噴霧ノズル10は、図3に示すように、回転装着体6をヘッド本体5に対して相対的に軸線O回りに回転させて噴霧ノズル10の周方向位置を噴霧部8の周方向位置に合わせることで、噴霧部8の外壁部87の内側に連通され、噴霧ノズル10に対向する。また、噴霧ノズル10は、上記した発泡ノズル9に対して周方向に離間して配設されている。具体的に説明すると、噴霧ノズル10の中心軸線(ノズル軸線L)は、発泡ノズル9の中心軸線(ノズル軸線L)の延長線上に延在しており、噴霧ノズル10と発泡ノズル9とは、軸線Oを対称軸にして互いに対称に配設されている。
【0036】
また、図4、図5に示すように、吐出器1には、回転装着体6のヘッド本体5に対する相対的な周方向位置を位置決めする回転位置決め手段11が設けられている。この回転位置決め手段11は、図4に示すように発泡ノズル9が噴霧部8に連通する第一位置、及び、図5に示すように噴霧ノズル10が噴霧部8に連通する第二位置で、回転装着体6の位置決めを行う手段である。具体的に説明すると、回転装着体6の周壁部61の内周面に形成された第一、第二位置決め凹部63、64と、ヘッド本体5の周壁部52の外周面に突設された第一、第二位置決め凸部58、59と、からなる。上記した第一位置決め凹部63と第二位置決め凹部64、及び、第一位置決め凸部58と第二位置決め凸部59は、軸線Oを対称軸にして互いに対称を成す位置にそれぞれ配設されている。
【0037】
そして、図4に示すように、回転装着体6が上記した第一位置に配置されて発泡ノズル9が噴霧部8に連通した状態では、上記した第一位置決め凹部63の内側に第一位置決め凸部58が嵌め込まれて第一位置決め凹部63と第一位置決め凸部58とが係合されると共に、上記した第二位置決め凹部64の内側に第二位置決め凸部59が嵌め込まれて第二位置決め凹部64と第二位置決め凸部59とが係合される。
【0038】
また、図5に示すように、回転装着体6が上記した第二位置に配置されて噴霧ノズル10が噴霧部8に連通した状態では、上記した第一位置決め凹部63の内側に第二位置決め凸部59が嵌め込まれて第一位置決め凹部63と第二位置決め凸部59とが係合されると共に、上記した第二位置決め凹部64の内側に第一位置決め凸部58が嵌め込まれて第二位置決め凹部64と第一位置決め凸部58とが係合される。
【0039】
次に、上記した構成からなる吐出器1の作用について説明する。
【0040】
上記した構成からなる吐出器1では、回転装着体6をヘッド本体5に対して相対的に軸線O回りに回転させることにより、噴霧部8に連通させるノズル(発泡ノズル9と噴霧ノズル10)が切り換えられ、内容物の吐出時の態様が切り換えられる。
【0041】
詳しく説明すると、上記した吐出器1をフォーマーモード(泡吐出)で使用する際には、まず、回転装着体6をヘッド本体5に対して相対的に軸線O回りに回転させ、図1及び図4に示すように、発泡ノズル9が噴霧部8に連通する第一位置に回転装着体6を配置する。このとき、第一位置決め凹部63と第一位置決め凸部58とが係合されると共に第二位置決め凹部64と第二位置決め凸部59とが係合されて、回転装着体6が第一位置で位置決めされる。これにより、発泡ノズル9と噴霧部8との周方向位置が容易に一致し、発泡ノズル9と噴霧部8とが連通する。また、このとき、図1に示す装着キャップ2の凹溝23の内側にヘッド本体5の凸リブ57が嵌め込まれてヘッド本体5の軸線O回りの回転が規制されているので、回転装着体6の回転時におけるヘッド本体5の共回りが防止される。
【0042】
次に、押下ヘッド4の押圧面62を指等で押圧して押下ヘッド4を押し下げる。これにより、図示せぬ容器内の内容物が図1に示すステム7の流路71及び継手部材3内を通ってヘッド本体5の流路54内に流入する。そして、流路54内の内容物は、図1に示す噴霧部8の凹溝84内を通ってスピン流路80内に流入し、スピン流路80で渦状に流通した後、噴霧孔81から発泡ノズル9内の気液混合室96に向けて噴霧される。この霧状の内容物は、発泡ノズル9内の気液混合室96において内筒体91の内周面に衝突しながら攪拌される。また、吐出器1の外部の空気が外気導入口95を通って発泡ノズル9内の気液混合室96に流入する。これにより、気液混合室96において内容物と空気とが攪拌混合され、これら空気と内容物とからなる気液混合体が発泡する。そして、この気液混合体は、発泡ノズル9の先端から吐出される。このとき、気液混合体は、メッシュリング90のメッシュシート92を通過して吐出されるので、メッシュシート92によって更に発泡あるいは整泡される。
【0043】
また、第一位置決め凹部63と第一位置決め凸部58とが係合されていると共に第二位置決め凹部64と第二位置決め凸部59とが係合されているので、押下ヘッド4の押し下げ操作時における発泡ノズル9と噴霧部8との位置ずれが防止される。
【0044】
また、上記した吐出器1をスプレーモード(霧吐出)で使用する際には、まず、上記した第一位置の回転装着体6をヘッド本体5に対して相対的に軸線O回りに回転させ、図3及び図5に示すように、噴霧ノズル10が噴霧部8に連通する第二位置に回転装着体6を配置する。このとき、第一位置決め凹部63が第一位置決め凸部58から外れると共に第二位置決め凹部64が第二位置決め凸部59から外れる。そして、第一位置決め凹部63が第二位置決め凸部59に係合されると共に第二位置決め凹部64が第一位置決め凸部58に係合されて、回転装着体6が第二位置で位置決めされる。これにより、噴霧ノズル10と噴霧部8との周方向位置が容易に一致し、噴霧ノズル10と噴霧部8とが連通する。また、このとき、上述したように、図3に示す装着キャップ2の凹溝23及びヘッド本体5の凸リブ57により、回転装着体6の回転時におけるヘッド本体5の共回りが防止されている。
【0045】
次に、押下ヘッド4の押圧面62を指等で押圧して押下ヘッド4を押し下げる。これにより、図示せぬ容器内の内容物が図3に示すステム7の流路71及び継手部材3内を通ってヘッド本体5の流路54内に流入する。そして、流路54内の内容物は、図3に示す噴霧部8の凹溝84内を通ってスピン流路80内に流入し、スピン流路80で渦状に流通した後、噴霧孔81から噴霧ノズル10内に噴霧される。噴霧ノズル10内に噴霧された霧状の内容物は、噴霧ノズル10内を霧状のまま通過して外部に吐出される。なお、第一位置決め凹部63と第二位置決め凸部59とが係合されていると共に第二位置決め凹部64と第一位置決め凸部58とが係合されているので、押下ヘッド4の押し下げ操作時における噴霧ノズル10と噴霧部8との位置ずれが防止される。
【0046】
上記した吐出器1によれば、噴霧部8に連通されるノズル(発泡ノズル9と噴霧ノズル10)を切り換えることで、内容物の吐出時の態様(泡と霧)を変化させることができ、二通りの使い方を行うことができる。
また、ヘッド本体5の外周に装着された回転装着体6をヘッド本体5に対して相対的に軸線O回りに回転させることにより、内容物の吐出時の態様(泡と霧)が切り換えられるので、吐出態様の切換操作の操作性を向上させることができる。
【0047】
また、回転装着体6の周方向の位置決めを行う回転位置決め手段11が備えられており、この回転位置決め手段11によって、回転装着体6をヘッド本体5に対して相対的に軸線O回りに回転させる際に位置決めされるので、容易に発泡ノズル9を噴霧部8に連通させたり噴霧ノズル10を噴霧部8に連通させたりすることができ、操作性を向上させることができる。また、この回転位置決め手段11によって、押下ヘッド4の押し下げ操作時における発泡ノズル9と噴霧部8、或いは噴霧ノズル10と噴霧部8の位置ずれが防止されるので、位置ずれによる吐出不良を防止することができる。
【0048】
以上、本発明に係る吐出器の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記した実施の形態では、押下ヘッド4を有する押し下げ式の吐出器1について説明しているが、本発明は、容器の胴部をスクイズ変形させて内容物を吐出させるスクイズ式の吐出容器であってもよい。
【0049】
また、上記した実施の形態では、発泡ノズル9と噴霧ノズル10とが軸線Oを対称軸にして対称を成す位置に配設されており、回転装着体6を180度回転させることで切り換えられる構成になっているが、本発明は、発泡ノズル9と噴霧ノズル10とが周方向に離間した位置に配設されていればよく、例えば発泡ノズル9の中心軸線に直交する軸線上に噴霧ノズル10が配設され、回転装着体6を90度回転させることで切り換えられる構成にしてもよい。
【0050】
また、上記した実施の形態では、有頂筒状の回転装着体6がヘッド本体5に装着されているが、本発明における回転装着体は、天壁部が無い円筒状(環状)の回転装着体であってもよく、或いは、平面視C字状の回転装着体であってもよい。
【0051】
また、上記した実施の形態における回転位置決め手段11では、回転装着体6の第一、第二位置決め凹部63、64とヘッド本体5の第一、第二位置決め凸部58、59によって、回転装着体6が発泡ノズル9と噴霧部8とが連通する第一位置に位置決めされると共に噴霧ノズル10と噴霧部8とが連通する第二位置に位置決めされるが、本発明は、発泡ノズル9と噴霧部8とが連通する第一位置に位置決めする凹凸部と、噴霧ノズル10と噴霧部8とが連通する第二位置に位置決めする凹凸部と、が別々に形成されていてもよい。さらに、本発明は、回転位置決め手段11を省略することも可能である。
【0052】
また、上記した実施の形態では、ノズル軸線Lが吐出器1の軸線Oに直交する方向に延在されており、発泡ノズル9や噴霧ノズル10が水平に向けられているが、本発明は、発泡ノズル9や噴霧ノズル10が斜め上方若しくは斜め下方に延在されていてもよい。なお、この場合、発泡ノズル9や噴霧ノズル10の傾きに合わせて噴霧部8を傾斜させることが好ましい。
【0053】
また、上記した実施の形態では、発泡ノズル9が、メッシュリング90の内側に内筒体91が嵌合された構成からなるが、本発明は、他の構成の発泡ノズルであってもよい。例えば、内筒体91及びメッシュリング90の何れか一方を省略して他方のみで気液混合体を発泡させることも可能であり、また、上記したメッシュリング90と内筒体91とを一体に形成することも可能である。
【0054】
また、上記した実施の形態では、噴霧ノズル10が、回転装着体6の周壁部61に形成されたテーパー穴状のノズルであるが、本発明は、筒状の噴霧ノズルを回転装着体6の周壁部61に突設した構成にすることも可能である。
【0055】
また、上記した実施の形態では、ステム7の上端部に継手部材3を介して押下ヘッド4が連結されているが、本発明は、ステム7上端の摺接部70を形成しないで、継手部材3を省略してステム7と押下ヘッド4とを直接嵌合させることも可能である。なお、上記したステム7は、1本の管からなるものであってもよく、或いは、複数の部材を直列に連結して構成されるものであってもよい。
【0056】
また、上記した実施の形態では、ノズル筒部94の根元部分(基端部)に、ノズル周方向に沿って延在する長孔状の外気導入口95が形成されているが、本発明において、外気導入口の位置や形状は適宜変更可能である。例えば、本発明の外気導入口の形状は、長孔状以外であってもよく、丸孔状或いは矩形孔状の外気導入口を形成することも可能である。さらに、本発明は、例えば特開平11−207218号公報に記載された構造のように、発泡ノズル9の先端面側に外気導入口を形成することも可能である。すなわち、ノズル筒部94の内周面とメッシュリング90の外周面との間に、発泡ノズル9の先端側に向けて開口した隙間があけられ、この隙間(外気導入口)を通って外気が気液混合室96に導入される構成にしてもよい。
【0057】
また、上記した実施の形態では、装着キャップ2のガイド部22の外周面に凹溝23が周方向に間隔をあけて複数形成されていると共に、ヘッド本体5の周壁部52の内周面に凸リブ57が周方向に間隔をあけて複数形成されているが、本発明は、上記した凹溝23や凸リブ57が1つであってもよい。
【0058】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 吐出器
4 押下ヘッド(ヘッド)
5 ヘッド本体
6 回転装着体
7 ステム
8 噴霧部
9 発泡ノズル
10 噴霧ノズル
11 回転位置決め手段
52 周壁部(ヘッド本体の周壁部)
54 流路
94 ノズル筒部(発泡ノズルの周壁部)
95 外気導入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が流通するステムに連結されたヘッドを有する吐出器であって、
前記ヘッドには、前記ステムに連通する流路を有するヘッド本体と、該ヘッド本体の周壁部の外側にヘッド軸回りに回転可能に装着された回転装着体と、が備えられ、
前記ヘッド本体には、前記流路を通って供給された内容物を当該ヘッド本体の周壁部の外側に向けて噴霧する噴霧部が設けられ、
前記回転装着体には、前記噴霧部から噴霧された内容物と外気導入口を通って外部から供給された空気とを混合すると共に前記内容物と前記空気とからなる気液混合体を発泡させて泡状の内容物を吐出する発泡ノズルと、前記噴霧部から噴霧された内容物を霧状のまま吐出する噴霧ノズルと、が周方向に離間して配設されていることを特徴とする吐出器。
【請求項2】
請求項1に記載の吐出器において、
前記回転装着体の前記ヘッド本体に対する相対的な周方向位置を、前記発泡ノズルが前記噴霧部に連通する位置、及び前記噴霧ノズルが前記噴霧部に連通する位置にそれぞれ位置決めする回転位置決め手段が設けられていることを特徴とする吐出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−92894(P2011−92894A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250481(P2009−250481)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】