説明

吐出器

【課題】操作性を向上させること。
【解決手段】吐出器10は、内容物が収容される容器本体の口部に、上方付勢状態で下方移動可能に立設されるステムを有する吐出機構13と、ステムに装着されるとともに吐出口14が形成された押下ヘッド15と、該押下ヘッド15に装着されるとともにブラシ19が配設された塗布部材20と、を備え、塗布部材20は、吐出口14に連通可能な連通口78を備えるとともに押下ヘッド15に移動可能に装着され、該移動に伴い、吐出口14と連通口78とが連通する第1吐出状態と、これらの吐出口14と連通口78とが非連通でかつ吐出口14が開放される第2吐出状態と、が切り替えられるように構成され、ブラシ19は、第1吐出状態において、内容物が吐出口14から連通口78を通して当該ブラシ19に吐出されるように、塗布部材20から外部に向けて延設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるような、内容物が収容される容器本体の口部に、上方付勢状態で下方移動可能に立設されるステムを有する吐出機構と、ステムに装着されるとともに吐出口が形成された押下ヘッドと、押下ヘッドに装着されるとともにブラシを有する塗布部材と、を備える吐出器が知られている。該吐出器は、押下ヘッドを押し下げてステムを下方に移動させ、吐出機構を作動させることにより、容器本体内の内容物を泡状にして吐出口からブラシに吐出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−296157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の吐出器では、ブラシが吐出口に向けて突出させられた状態で、塗布部材が押下ヘッドに着脱可能に装着されており、ブラシに吐出された泡状の内容物(以下、泡体という)を被塗布部に塗布するときに、塗布部材を押下ヘッドから離脱させて泡体を塗布した後、塗布部材を再び押下ヘッドに装着させる必要があり、操作性を向上させることについて改善の余地があった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、操作性を向上させることができる吐出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る吐出器は、内容物が収容される容器本体の口部に、上方付勢状態で下方移動可能に立設されるステムを有する吐出機構と、前記ステムに装着されるとともに吐出口が形成された押下ヘッドと、該押下ヘッドに装着されるとともにブラシが配設された塗布部材と、を備え、前記押下ヘッドを押し下げて前記ステムを下方に移動させ、前記吐出機構を作動させることにより、前記容器本体内の内容物を前記吐出口から前記ブラシに吐出する吐出器であって、前記塗布部材は、前記吐出口に連通可能な連通口を備えるとともに前記押下ヘッドに移動可能に装着され、該移動に伴い、前記吐出口と前記連通口とが連通する第1吐出状態と、これらの吐出口と連通口とが非連通でかつ吐出口が開放される第2吐出状態と、が切り替えられるように構成され、前記ブラシは、前記第1吐出状態において、内容物が前記吐出口から前記連通口を通して当該ブラシに吐出されるように、前記塗布部材から外部に向けて延設されていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、前記第1吐出状態において、内容物が吐出口から連通口を通してブラシに吐出されるように、ブラシが、塗布部材から外部に向けて延設されているので、ブラシに内容物を吐出した後、塗布部材を押下ヘッドに装着させたまま、内容物を被塗布部に塗布することが可能になり、操作性を向上させることができる。
また、塗布部材の移動に伴い、前記第1吐出状態と前記第2吐出状態とが切り替えられるので、前記第1吐出状態において前述のように内容物をブラシに吐出させるだけでなく、前記第2吐出状態において内容物を吐出口から直接、例えば被塗布部や手などに吐出することが可能になり、塗布方法の多様化を図ることもできる。
【0008】
また、前記塗布部材は、前記押下ヘッドに着脱可能に装着されていてもよい。
【0009】
この場合、塗布部材が、押下ヘッドに着脱可能に装着されているので、塗布部材を押下ヘッドから離脱させてブラシを洗浄することが可能になり、ブラシの清潔性を確保し易くすることができる。
また塗布部材が、押下ヘッドに着脱可能に装着されているので、ブラシに内容物を吐出した後、塗布部材を押下ヘッドから離脱させて内容物を被塗布部に塗布することも可能になり、塗布方法の更なる多様化を図ることができる。
さらに塗布部材が、押下ヘッドに着脱可能に装着されているので、塗布部材を押下ヘッドから離脱させて当該吐出器を使用することで、前述のように前記第1吐出状態と前記第2吐出状態とを切り替えることなく、吐出口から内容物を直接、吐出させることも可能になり、操作性を向上させ易くすることができる。
【0010】
また、前記塗布部材は、前記押下ヘッドに、前記吐出口の孔軸に沿って延在する仮想孔軸に交差する回転軸回りに回転可能に装着されていてもよい。
【0011】
この場合、塗布部材が、押下ヘッドに、前記回転軸回りに回転可能に装着されているので、塗布部材を、単に前記回転軸回りに回転させることにより、前記第1吐出状態と前記第2吐出状態とを切り替えることが可能になり、操作性を更に向上させるとともに、切り替え操作時に塗布部材を位置決めし易くすることができる。
【0012】
また、前記押下ヘッドには、外面が、前記吐出口が開口する凸球面状に形成された球状部が備えられ、前記塗布部材内には、前記球状部が嵌合されるとともに、該塗布部材の内面は、前記球状部の外面に沿って摺動可能な凹球面状に形成されていてもよい。
【0013】
この場合、塗布部材の内面が、前記凹球面状に形成されているので、塗布部材の内面を球状部の外面に沿って摺動させて塗布部材を移動させることにより、前記第1吐出状態と前記第2吐出状態とを切り替えることが可能になり、操作性を更に向上させることができる。
【0014】
また、前記吐出機構は、前記ステムに連係して上下動する空気用ピストンおよび液用ピストンと、内部に前記空気用ピストンが上下摺動可能に配設された空気用シリンダと、内部に前記液用ピストンが上下摺動可能に配設された液用シリンダと、前記空気用シリンダから移送される空気と前記液用シリンダから移送される内容物とを混合する気液混合室と、前記気液混合室で混合された気液混合体を発泡させて内容物を泡状にする発泡部材と、を備えていてもよい。
【0015】
この場合、吐出機構が、前記空気用ピストンと、前記液用ピストンと、前記空気用シリンダと、前記液用シリンダと、前記気液混合室と、前記発泡部材と、を備えたいわゆる泡吐出用のポンプ機構を採用しており、前述の作用効果が顕著に奏功されることとなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る吐出器によれば、操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る吐出器を備える吐出容器を示す縦断面図である。
【図2】図1に示す吐出器の要部を示す軸線および回転軸の両方に沿った縦断面図である。
【図3】図1に示す吐出器の要部を示す縦断面図であって、第1吐出状態を示す縦断面図である。
【図4】図1に示す吐出器の要部を示す縦断面図であって、塗布部材を離脱させた状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る吐出器を備える吐出容器を説明する。
図1に示すように、吐出容器1は、液状の内容物が収容される容器本体2と、容器本体2に装着される吐出器10と、を備えている。
【0019】
吐出器10は、容器本体2の口部3に装着される装着キャップ11と、該装着キャップ11内に上方付勢状態で下方移動可能に挿通されたステム12を有するポンプ(吐出機構)13と、ステム12に装着されるとともに吐出口14が形成された押下ヘッド15と、押下ヘッド15に装着されるとともにブラシ19が配設された塗布部材20と、押下ヘッド15および塗布部材20を覆うオーバーキャップ21と、を備えている。
そして吐出器10は、押下ヘッド15を押し下げてステム12を下方に移動させ、ポンプ13を作動させることにより、容器本体2内の内容物を泡状にして吐出口14からブラシ19に吐出するように構成されている。
【0020】
ここで容器本体2、装着キャップ11、ステム12およびオーバーキャップ21の各中心軸線は、共通軸上に位置している。以下、この共通軸を軸線O1といい、軸線O1に沿う方向を上下方向といい、上下方向に沿った容器本体2の底部側を下側といい、下側の反対側を上側といい、軸線O1に直交する方向を径方向といい、軸線O1回りに周回する方向を周方向という。
【0021】
装着キャップ11は、容器本体2の口部3に螺着される下筒部16と、該下筒部16よりも小径な上筒部17と、が、連結段部18を介して連結された2段筒状をなしている。
ポンプ13は、ステム12が下方に移動させられて作動すると、内容物を移送するとともに空気と混合させ、これらの気液混合体が発泡されてなる泡状の内容物(以下、泡体という)を吐出口14から吐出する。
【0022】
ポンプ13は、前記ステム12と、ステム12に連係して上下動する空気用ピストン22および液用ピストン23と、内部に空気用ピストン22が上下摺動可能に配設された空気用シリンダ24と、内部に液用ピストン23が上下摺動可能に配設された液用シリンダ25と、空気用シリンダ24から移送される空気と液用シリンダ25から移送される内容物とを混合する気液混合室26と、気液混合室26で混合された気液混合体を発泡させて内容物を泡状にする発泡部材54と、を備えている。
なお空気用ピストン22、液用ピストン23、空気用シリンダ24および液用シリンダ25は、いずれも前記軸線O1と同軸の筒状に形成されている。
【0023】
空気用シリンダ24は、装着キャップ11の前記連結段部18の外周縁部と容器本体2の口部3の開口端部との間に上下方向に挟持される環状の取付け部27と、取付け部27の内周縁から下方に向けて延設された周壁部28と、周壁部28から径方向の内側に向けて突設された環状の底壁部29と、を備えている。底壁部29は、径方向の外側から内側に向かうに従い漸次、上方に向けて延在している。
【0024】
液用シリンダ25は、空気用シリンダ24と一体に形成されている。液用シリンダ25は、空気用シリンダ24の底壁部29の内周縁から下方に向けて延設された基筒部30と、基筒部30の下端から下方に向けて連設され、下方に向かうに従い漸次縮径するテーパ部31と、を備えている。また、液用シリンダ25における基筒部30とテーパ部31との連結部分の内周面には、上下方向に延在する縦リブ32が、周方向に間隔をあけて複数突設されている。さらにテーパ部31の下端には、前記軸線O1と同軸に配置された垂下筒33が、下方に向けて連設されている。
【0025】
液用ピストン23は、液用シリンダ25内に液密状態で上下摺動可能に嵌合する大径部34と、下端が大径部34に連結された小径部35と、を備えている。また液用ピストン23は、当該液用ピストン23における大径部34と小径部35との連結部分と、液用シリンダ25の前記縦リブ32と、の間に介装された付勢部材36により、上方に付勢されている。なお付勢部材36としては、例えばコイルスプリングや樹脂バネ等を採用することができる。
【0026】
ここで液用ピストン23、液用シリンダ25および付勢部材36内には、棒状の弁部材37が挿通されている。弁部材37の上端部には、液用ピストン23の上端部に形成された弁座部38に、該弁座部38の上方から着座する中空逆円錐状の上部弁体39が、該弁座部38に離反可能に形成されている。弁部材37の下端部には、液用シリンダ25のテーパ部31から上方に離反する下部弁体40が、該テーパ部31に着座可能に形成されている。また、下部弁体40の外周面には、液用シリンダ25の前記縦リブ32の間に配置されるガイド凸部41が突設されている。
【0027】
ステム12は、空気用シリンダ24内に挿通されており、ステム12の下端部は、液用ピストン23の小径部35に外嵌されている。またステム12には、径方向の外側に向けて突出する環状のフランジ部42と、径方向の内側に向けて突出する環状の台座部43が、下方からこの順に上下方向に間隔をあけて配置されている。そして、ステム12のうち、台座部43よりも上側に位置する上端部は、装着キャップ11の上筒部17内に配置されている。
気液混合室26は、ステム12内に配設されており、本実施形態では、ステム12の前記上端部内とされている。気液混合室26内には、台座部43に着座する球状の液吐出弁44が設けられており、該液吐出弁44は、台座部43に離反可能に形成されている。
【0028】
空気用ピストン22は、ステム12に外装された内筒部45と、空気用シリンダ24内に嵌合された外筒部46と、これらの内筒部45と外筒部46とを連結する連結部47と、を備えている。
連結部47は、内筒部45および外筒部46それぞれにおける上下方向の中央部同士を全周にわたって連結する環状に形成され、連結部47には、空気用シリンダ24の内部のうち、当該連結部47よりも上方に画成される上室48内と、当該連結部47よりも下方に画成される下室49内と、を連通する貫通孔50が形成されている。なお貫通孔50は1つ以上形成されていればよく、その形状、数は適宜選択することができる。
【0029】
内筒部45は、ステム12において前記フランジ部42よりも上側に位置し、かつ前記台座部43よりも下側に位置する摺動部分51に、上下摺動可能に外嵌されており、内筒部45の下端縁は、フランジ部42に離反可能に着座している。なお前記摺動部分51の外周面には、上方に向けて開口するとともに下室49に連通可能な第1連通溝66が上下方向に延設されている。第1連通溝66は、フランジ部42に空気用ピストン22の内筒部45が着座することで、下室49との連通が遮断されている。
【0030】
また、内筒部45において連結部47との連結部分よりも下側に位置する部分には、弁筒部52が嵌合されている。弁筒部52の外周面には、前記貫通孔50を開閉する弾性変形可能な環状の外気導入弁53が突設されており、外気導入弁53の外周縁部は連結部47の下面に離反可能に密接している。
【0031】
発泡部材54は、ステム12の上端部に装着された筒状のケーシング55と、ケーシング55内に装着された2つの発泡エレメント56と、を備えている。
ケーシング55は、拡径部57と縮径部58とが段部を介して連結されてなり、ケーシング55の縮径部58は、ステム12の上端部内に嵌合されている。そして、縮径部58の外周面および前記段部には、気液混合室26に連通するとともに径方向の外側に向けて開口する第2連通溝67が形成されている。発泡エレメント56は、拡径部57内に装着されており、これらの発泡エレメント56のうち、下側の発泡エレメント56は、筒体の下側開口面にメッシュ体が張設されてなり、上側の発泡エレメント56は、筒体の上側開口面にメッシュ体が張設されてなる。
【0032】
押下ヘッド15は、外面60aが、前記吐出口14が開口する凸球面状に形成された球状部60と、該球状部60から下方に向けて延設され、ステム12に外装された装着筒部61と、球状部60から下方に向けて延設され、装着筒部61を径方向の外側から囲繞する囲繞筒部62と、を備えている。球状部60の中心は、前記軸線O1上に位置するとともに、装着筒部61および囲繞筒部62は、前記軸線O1と同軸に配置されている。
【0033】
装着筒部61は、装着キャップ11の上筒部17内に挿通されるとともに、発泡部材54のケーシング55の前記拡径部57、およびステム12の上端部に外嵌されている。また装着筒部61の下端部は、装着筒部61において、該下端部よりも上側に位置しかつステム12の上端部に外嵌された外嵌部分64よりも内径が大きくなっている。そして、該下端部は、空気用ピストン22の内筒部45のうち、連結部47との連結部分よりも上側に位置する上端部に、上下摺動可能に外嵌している。さらに装着筒部61の下端縁と、連結部47と、の間には、上下方向の隙間があいている。
【0034】
前記外嵌部分64の内周面には、第1連通溝66および第2連通溝67に各別に開口する第3連通溝68が上下方向に延設されている。これらの第1連通溝66、第2連通溝67および第3連通溝68は、前記下室49と前記気液混合室26とを連通可能な空気導入路65を構成している。
囲繞筒部62の内径は、装着キャップ11の上筒部17の外径よりも大きくなっており、囲繞筒部62と装着筒部61との間には、上筒部17が進入可能な環状隙間69が設けられている。環状隙間69の下端には、上筒部17の上端が配置されている。
【0035】
球状部60には、装着筒部61の上端開口部から上方に向けて延在し、装着筒部61内に連通する連通空間70と、該連通空間70から前方に向けて延在し、前端部が当該球状部60の外面60aに開口する吐出路71と、前記連通空間70を径方向の外側から囲繞するように前記軸線O1と同軸に配置され、前記環状隙間69に連通する環状空間72と、が配設されている。
【0036】
連通空間70は、球状部60の外面60aに非開口となっている。
環状空間72は、環状隙間69の上端から上方に向けて延在するとともに環状隙間69と内径および外径が同等とされ、環状空間72内には、装着キャップ11の上筒部17が進入可能となっている。また環状空間72は、吐出路71を回避するように配設されており、環状空間72と吐出路71とは非連通となっている。
【0037】
吐出路71は、前方斜め上方に向けて延在するとともに、吐出路71の前端部は、前記吐出口14となっている。以下では、前記軸線O1に対して吐出口14が位置する方向を前側といい、前側の反対側を後側という。
吐出路71の後端部の内径は、前記吐出口14よりも小さくなっており、吐出路71において吐出口14と後端部との間に位置する中間部は、前方に向かうに従い漸次、拡径している。
【0038】
吐出口14の前端開口面は、当該吐出口14の孔軸に沿って延在する仮想孔軸O2に直交している。なお前記仮想孔軸O2は、前記軸線O1に交差し、図示の例では、球状部60の中心を通過している。
【0039】
塗布部材20は、押下ヘッド15に移動可能に装着されており、本実施形態では、図2に示すように、塗布部材20の内面20aは、球状部60が嵌合されるとともに、球状部60の外面60aに沿って摺動可能な凹球面状に形成されている。
塗布部材20は、球状部60の外面60a上に配置された天板部74と、該天板部74のうち、前記軸線O1および前記仮想孔軸O2の両軸に直交する左右方向の両端部から、球状部60を左右方向に挟み込むように突設された一対の側板部75と、を備えている。これらの天板部74および側板部75はそれぞれ、球状部60の外面60aに沿って湾曲されており、天板部74および側板部75の各内面により、塗布部材20の内面20aが構成されている。塗布部材20の内面20aがなす凹球面の中心の位置は、球状部60の中心の位置と同等となっている。
【0040】
また図1および図2に示すように、塗布部材20は、押下ヘッド15に、前記仮想孔軸O2に交差する回転軸O3回りに回転可能に装着されている。本実施形態では、前記回転軸O3は、一対の側板部75を通過するように左右方向に沿って延在しており、前記仮想孔軸O2に直交している。また前記回転軸O3は、前記軸線O1にも交差し、さらに図示の例では、該軸線O1に直交しており、球状部60の中心を通過している。
なお図2に示すように、本実施形態では、球状部60の外面60aには、前記回転軸O3と同軸に配置された一対の支持凸部76が、左右方向の外側に向けて各別に突設されるとともに、塗布部材20の内面20aには、内部に一対の支持凸部76が各別に嵌合される一対の支持凹部77が、前記回転軸O3と同軸に配置されている。
【0041】
また塗布部材20は、押下ヘッド15に着脱可能に装着されている。本実施形態では、例えば、一対の側板部75を左右方向に離間させるように塗布部材20を弾性変形させつつ、塗布部材20と球状部60とを離間移動させることで、塗布部材20が押下ヘッド15から離脱される。
さらに図1に示すように、塗布部材20には、吐出口14に連通可能な連通口78が備えられている。連通口78は、天板部74の中央部に配置されており、連通口78の内径は、吐出口14の内径よりも小径となっている。
【0042】
ブラシ19は、塗布部材20から外部に向けて延設されており、図示の例では、塗布部材20の天板部74に、連通口78をその径方向の外側から囲繞するように多数配置されている。なおブラシ19は、塗布部材20と一体に成形されていてもよく、別体に成形されていてもよい。
オーバーキャップ21は、有頂筒状に形成されるとともに装着キャップ11に着脱可能に装着され、図示の例では、オーバーキャップ21の下端部が、装着キャップ11の下筒部16の上端部に着脱可能に外嵌されている。
【0043】
以上のように構成された吐出容器1では、オーバーキャップ21の離脱前において、塗布部材20が、例えば球状部60に対して上側に位置しており、塗布部材20の天板部74の中央部が、前記軸線O1上に位置し、連通口78が、前記軸線O1と同軸に配置されている。そして、吐出口14と連通口78とは非対向で非連通であるとともに、吐出口14は前方に向けて開放されており、後述する第2吐出状態となっている。
【0044】
なおこのとき、塗布部材20の内面20aと球状部60の外面60aとの間に生じる摩擦抵抗(摺動抵抗)によって、塗布部材20は、球状部60に対して上側の位置に保持されて位置決めされている。また仮に塗布部材20が、前記回転軸O3回りの下方に向けて一定量移動しても、ブラシ19がオーバーキャップ21に当接することで、塗布部材20の更なる移動が規制される。
【0045】
該吐出容器1を使用して泡体をブラシ19により被塗布部に塗布するときには、まず、オーバーキャップ21を離脱させる。
ここで本実施形態では、塗布部材20は、その移動に伴い、吐出口14と連通口78とが連通する第1吐出状態と、これらの吐出口14と連通口78とが非連通でかつ吐出口14が開放される第2吐出状態と、が切り替えられるように構成されている。前述のように、オーバーキャップ21の離脱前において塗布部材20が球状部60に対して上側に位置している場合には、オーバーキャップ21を離脱させた後、前記第2吐出状態から前記第1吐出状態に切り替えるため、塗布部材20を、図3に示すように、前記回転軸O3回りに前方斜め下方に向けて回転させる。
【0046】
すると、押下ヘッド15の囲繞筒部62の前端部80aが、塗布部材20の天板部74の外周縁部80bに、該外周縁部80bの下方から係合することで、塗布部材20の位置が、球状部60に対して前側で保持される。このとき連通口78が、前記仮想孔軸O2と同軸に位置し、連通口78と吐出口14とが連通することとなり、前記第1吐出状態に切り替えられる。なお、押下ヘッド15の囲繞筒部62の前端部80a、および塗布部材20の天板部74の外周縁部80bは、押下ヘッド15および塗布部材20に配設され前記第1吐出状態における塗布部材20の位置を保持する第1保持手段80を構成している。
【0047】
そして前記第1吐出状態において、押下ヘッド15を押し下げると、図1に示されるようなステム12および液用ピストン23が一体的に押し下げられる。このとき、空気用ピストン22の内筒部45がステム12の前記摺動部分51の外周面上を摺動するとともに、該内筒部45の上端部が押下ヘッド15の装着筒部61の内周面上を摺動することにより、空気用ピストン22の上下方向の位置が保持されることから、ステム12のフランジ部42と、空気用ピストン22の内筒部45の下端縁と、の間に、前記第1連通溝66と前記下室49とを連通する図示しない連通隙間が設けられる。これにより、下室49と気液混合室26とが、該連通隙間および前記空気導入路65を通して連通される。
またこのとき、弁部材37も下方に移動させられ、弁部材37の下部弁体40が液用シリンダ25のテーパ部31に着座して、液用シリンダ25の下端開口部が閉塞される。
【0048】
そして、押下ヘッド15の装着筒部61の下端縁が、空気用シリンダ24の連結部47に当接するまで、押下ヘッド15を押し下げると、押下ヘッド15とともに空気用ピストン22が下方に移動し、空気用ピストン22の外筒部46が、空気用シリンダ24の周壁部28の内周面上を、下方に向けて摺動する。このとき、空気用ピストン22の弁筒部52の外気導入弁53は、連結部47の下面に密接されたままの状態であり、前記貫通孔50は閉塞されている。これにより、下室49内の空気が圧縮され、この空気が、前記連通隙間および空気導入路65を通して気液混合室26に移送される。
またこのとき、液用シリンダ25の下端開口部が閉塞された状態で、付勢部材36を圧縮変形させつつ、液用ピストン23を下方に移動させて、弁部材37の上部弁体39を液用ピストン23の弁座部38から離反させることにより、液用シリンダ25の内部とステム12の内部とが連通される。これにより、液用シリンダ25内の内容物が、弁座部38の内側および上部弁体39の内側を通過してステム12内の気液混合室26に移送される。
【0049】
以上のように、押下ヘッド15を押し下げることにより、気液混合室26に空気および内容物がそれぞれ移送され、これらは気液混合室26で合流して混合される。この気液混合体は、発泡部材54のケーシング55内に移送され、下側の発泡エレメント56のメッシュ体および上側の発泡エレメント56のメッシュ体を順次通過することで発泡させられて泡体になり、図3に示されるような連通空間70および吐出路71を流通し、吐出口14から連通口78を通してブラシ19に吐出される。
【0050】
その後、塗布部材20および押下ヘッド15の押し下げを解除すると、図1に示されるような付勢部材36の弾性復元力により液用ピストン23が上方に押し上げられる。これにより、液用ピストン23の弁座部38が弁部材37の上部弁体39に当接して弁座部38が閉じられ、気液混合室26への内容物の移送が停止される。
また、このように上昇する液用ピストン23とともに、ステム12、押下ヘッド15および塗布部材20が一体的に上昇し、ステム12のフランジ部42が空気用ピストン22の内筒部45の下端縁に当接することで、空気導入路65を通した下室49と気液混合室26との連通が遮断され、気液混合室26への空気の移送が停止される。なおその後、付勢部材36の弾性復元力により、空気用ピストン22が押し上げられることで、前記下室49内が負圧状態となり、空気用ピストン22の弁筒部52の外気導入弁53が下方に弾性変形させられて、前記貫通孔50が開放され、該貫通孔50および前記上室48を通して下室49内に外気が供給される。
【0051】
ここで、ブラシ19に吐出された泡体は、塗布部材20を押下ヘッド15に装着させたまま被塗布部に塗布してもよく、塗布部材20を押下ヘッド15から離脱させた後に被塗布部に塗布してもよい。なお、ブラシ19を離脱させて塗布した場合には、塗布後に、塗布部材20を押下ヘッド15から離脱させた状態で、ブラシ19を例えば水洗いなどにより洗浄してもよい。
【0052】
また前記吐出容器1を使用して、泡体を吐出口14から直接、例えば被塗布部や手などに吐出するときには、オーバーキャップ21を離脱させた後、前記第2吐出状態において、押下ヘッド15を押し下げてポンプ13を作動させてもよく、図4に示すように、オーバーキャップ21および塗布部材20を離脱させた後、押下ヘッド15を押し下げてもよい。
なお前記第2吐出状態としては、前述のように、塗布部材20が、球状部60に対して上側に位置している場合だけでなく、例えば塗布部材20を、前記回転軸O3回りに後方斜め下方に向けて回転させて、塗布部材20の天板部74の外周縁部を押下ヘッド15の囲繞筒部62の後端部に当接させ、塗布部材20が、球状部60に対して後側に位置している場合なども挙げられる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態に係る吐出器によれば、前記第1吐出状態において、泡体が、吐出口14から連通口78を通してブラシ19に吐出されるように、ブラシ19が、塗布部材20から外部に向けて延設されているので、ブラシ19に泡体を吐出した後、塗布部材20を押下ヘッド15に装着させたまま、泡体を被塗布部に塗布することが可能になり、操作性を向上させることができる。
また、塗布部材20の移動に伴い、前記第1吐出状態と前記第2吐出状態とが切り替えられるので、前記第1吐出状態において前述のように泡体をブラシ19に吐出させるだけでなく、前記第2吐出状態において泡体を吐出口14から直接、例えば被塗布部や手などに吐出することが可能になり、塗布方法の多様化を図ることもできる。
なお本実施形態のように、吐出機構として前記ポンプ13を採用する場合には、前述の作用効果が顕著に奏功されることとなる。
【0054】
また塗布部材20が、押下ヘッド15に着脱可能に装着されているので、塗布部材20を押下ヘッド15から離脱させてブラシ19を洗浄することが可能になり、ブラシ19の清潔性を確保し易くすることができる。
また塗布部材20が、押下ヘッド15に着脱可能に装着されているので、ブラシ19に泡体を吐出した後、塗布部材20を押下ヘッド15から離脱させて泡体を被塗布部に塗布することも可能になり、塗布方法の更なる多様化を図ることができる。
さらに塗布部材20が、押下ヘッド15に着脱可能に装着されているので、塗布部材20を押下ヘッド15から離脱させて当該吐出器10を使用することで、前述のように前記第1吐出状態と前記第2吐出状態とを切り替えることなく、吐出口14から泡体を直接、吐出させることも可能になり、操作性を向上させ易くすることができる。
【0055】
また塗布部材20が、押下ヘッド15に、前記回転軸O3回りに回転可能に装着されているので、塗布部材20を、単に前記回転軸O3回りに回転させることにより、前記第1吐出状態と前記第2吐出状態とを切り替えることが可能になり、操作性を更に向上させるとともに、切り替え操作時に塗布部材20を位置決めし易くすることができる。
【0056】
また、塗布部材20の内面20aが、前記凹球面状に形成されているので、塗布部材20の内面20aを球状部60の外面60aに沿って摺動させて塗布部材20を移動させることにより、前記第1吐出状態と前記第2吐出状態とを切り替えることが可能になり、操作性を更に向上させることができる。
さらに、押下ヘッド15および塗布部材20に、前記第1保持手段80が配設されているので、前記第1吐出状態を維持し易くすることが可能になり、操作性を更に向上させることができる。
【0057】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、装着キャップ11の上筒部17に、押下ヘッド15の下方への移動を規制する図示しないストッパ部材が、着脱可能に装着されていてもよい。なおストッパ部材としては、例えば、当該ストッパ部材を上方から見た上面視においてC字状をなすように径方向の外側に向けて開口し、上筒部に着脱可能に外嵌するリング状体などを採用することができる。
【0058】
また前記実施形態では、第1保持手段80は、押下ヘッド15の囲繞筒部62の前端部80a、および塗布部材20の天板部74の外周縁部80bにより構成されているものとしたが、これに限られるものではなく、例えば、球状部の外面に設けられた係合突起と、塗布部材の内面に設けられ、前記係合突起に係合する係合凹部と、により構成されてもよい。さらに第1保持手段80はなくてもよい。
【0059】
また前記実施形態では、塗布部材20が、球状部60に対して上側に位置するときに、塗布部材20の内面20aと球状部60の外面60aとの間に生じる摩擦抵抗によって、塗布部材20の位置が保持されており、これらの塗布部材20の内面20aと球状部60の外面60aとは、押下ヘッド15および塗布部材20に配設され前記第2吐出状態における塗布部材20の位置を保持する第2保持手段81を構成しているものとしたが、これに限られるものではない。例えば、球状部の外面に設けられた係合突起と、塗布部材の内面に設けられ、前記係合突起に係合する係合凹部と、により第2保持手段81を構成してもよい。また、第2保持手段81はなくてもよい。
【0060】
また前記実施形態では、前記回転軸O3が、前記軸線O1に直交するものとしたが、直交していなくてもよく、交差していなくてもよい。さらに前記回転軸O3が、前記仮想孔軸O2に直交するものとしたが、直交しておらずに単に交差しているだけでもよい。さらにまた、塗布部材20が、押下ヘッド15に、前記回転軸O3回りに回転可能に装着されていなくてもよく、例えば、塗布部材20が押下ヘッド15に上下方向にスライド移動可能に装着されていたり、いわゆるボールジョイントのように、塗布部材20の内面20aが、球状部60の外面60aに沿って多方向に摺動可能とされていたりしてもよい。
【0061】
また塗布部材20は、前記実施形態に示したものに限られず、該塗布部材20の内面20aが、押下ヘッド15の球状部60の外面60aに沿って摺動可能な凹球面状に形成された他の構成に適宜変更することが可能であり、例えば、塗布部材20を、中空球体状に形成する等してもよい。
さらに、塗布部材20の内面20aは、押下ヘッド15の球状部60の外面60aに沿って摺動可能な凹球面状に形成されていなくてもよい。例えば、塗布部材の天板部および側板部がそれぞれ、平板状に形成され、塗布部材が全体として正面視コ字状をなすように形成されていても良い。
さらにまた、押下ヘッド15に、前記球状部60が備えられていなくてもよい。
【0062】
また前記実施形態では、塗布部材20が、押下ヘッド15に着脱可能に装着されているものとしたが、これに限られず、例えば離脱不能に装着されていてもよい。
また、オーバーキャップ21、上筒部17はなくてもよい。
【0063】
また前記実施形態では、吐出機構として、泡吐出用のポンプ機構を採用したが、これに限られるものではなく、押下ヘッドを押し下げてステムを下方に移動させ、吐出機構を作動させることにより、容器本体内の内容物を泡状にして吐出口から吐出する他の構成に適宜変更することができる。また、内容物を泡状にして吐出しなくてもよい。
すなわち、吐出機構として、エアゾール機構や、空気用シリンダを備えない液吐出用のポンプ機構などを採用することも可能である。また内容物として、例えば液体、粘性体(ゲル状体)などを採用し、それぞれを泡状にせずに吐出する構成を採用することも可能である。
【0064】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 吐出容器
2 容器本体
3 口部
10 吐出器
12 ステム
13 ポンプ(吐出機構)
14 吐出口
15 押下ヘッド
19 ブラシ
20 塗布部材
20a 内面
22 空気用ピストン
23 液用ピストン
24 空気用シリンダ
25 液用シリンダ
26 気液混合室
54 発泡部材
60 球状部
60a 外面
78 連通口
O2 仮想孔軸
O3 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容される容器本体の口部に、上方付勢状態で下方移動可能に立設されるステムを有する吐出機構と、
前記ステムに装着されるとともに吐出口が形成された押下ヘッドと、
該押下ヘッドに装着されるとともにブラシが配設された塗布部材と、を備え、
前記押下ヘッドを押し下げて前記ステムを下方に移動させ、前記吐出機構を作動させることにより、前記容器本体内の内容物を前記吐出口から前記ブラシに吐出する吐出器であって、
前記塗布部材は、前記吐出口に連通可能な連通口を備えるとともに前記押下ヘッドに移動可能に装着され、該移動に伴い、前記吐出口と前記連通口とが連通する第1吐出状態と、これらの吐出口と連通口とが非連通でかつ吐出口が開放される第2吐出状態と、が切り替えられるように構成され、
前記ブラシは、前記第1吐出状態において、内容物が前記吐出口から前記連通口を通して当該ブラシに吐出されるように、前記塗布部材から外部に向けて延設されていることを特徴とする吐出器。
【請求項2】
請求項1記載の吐出器であって、
前記塗布部材は、前記押下ヘッドに着脱可能に装着されていることを特徴とする吐出器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の吐出器であって、
前記塗布部材は、前記押下ヘッドに、前記吐出口の孔軸に沿って延在する仮想孔軸に交差する回転軸回りに回転可能に装着されていることを特徴とする吐出器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の吐出器であって、
前記押下ヘッドには、外面が、前記吐出口が開口する凸球面状に形成された球状部が備えられ、
前記塗布部材内には、前記球状部が嵌合されるとともに、該塗布部材の内面は、前記球状部の外面に沿って摺動可能な凹球面状に形成されていることを特徴とする吐出器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の吐出器であって、
前記吐出機構は、
前記ステムに連係して上下動する空気用ピストンおよび液用ピストンと、
内部に前記空気用ピストンが上下摺動可能に配設された空気用シリンダと、
内部に前記液用ピストンが上下摺動可能に配設された液用シリンダと、
前記空気用シリンダから移送される空気と前記液用シリンダから移送される内容物とを混合する気液混合室と、
前記気液混合室で混合された気液混合体を発泡させて内容物を泡状にする発泡部材と、を備えていることを特徴とする吐出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−95461(P2013−95461A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238751(P2011−238751)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】