説明

吐出容器

【課題】積層剥離構造の吐出容器において内容物のすべてを吐出させやすくして残留量を少なくすることができるようにする。
【解決手段】内容器11内に気体が収容されて気体スペースSが形成されており、気体の容量は内容器11の容量の4%以上である。気体は、吐出口14から内容物Mを吐出させるために当該吐出容器を傾けて吐出姿勢にした際、内容器11内を速やかに移動するものであることが好ましい。気体が気体袋に封入されていてもよいし、内容器11内に形成された気体室に気体が封入されていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出容器に関する。さらに詳述すると、本発明は、積層剥離構造の吐出容器における構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
容器を主に押圧することにより内容液を注出するようにした吐出容器として、従来、内容液が収容された内容器(内層)と、該内容器が積層された外容器(外層)とを有する積層剥離容器(デラミ容器等とも呼ばれる)が利用されている。一般的な積層剥離容器において、内容器は、内容液の減少に伴いしぼみ変形する可撓性材料で形成されており、また、外容器は、弾性変形する材料で形成され、吐出された内容液に応じた量の外気を外気導入孔から吸気し、内容器との間に導入するようになっている(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4024396号公報
【特許文献2】特許第3688373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の積層剥離容器(デラミ容器)においては、例えば使用者が該容器を強く握って内容物をすべて吐出させたと思えた場合にも、当該内容物がある程度(一例として5〜6%ほど)内容器内に残留してしまうことがあった。
【0005】
そこで、本発明は、内容物のすべてを吐出させやすくして残留量を少なくすることができるようにした積層剥離構造の吐出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するべく本発明者は種々の検討を行った。上述のごとき従来の積層剥離構造の吐出容器(デラミ容器)は、例えば液状食品を吐出させた際に空気が内容器に入り込まないようにして当該液状食品等の内容物の酸化を抑えるなど、外気との接触を抑制しうる構造に大きな特徴がある。ところが、このような構造故に、使用者が容器をいくら強く握って内容物を使い切ろうとしてもある程度が容器内に残留してしまうことがあり、優れた容器でありながらも、使用を終えようとする段階でときには使用者に対して不満感を抱かせてしまうことが起こりえる。このような現象に着目し、内容物をできるだけ簡単に使い切ることについて検討を重ねた本発明者は、かかる課題の解決に結び付く知見を得るに至った。
【0007】
本発明はかかる知見に基づくもので、内容物が収容されるとともに内容物の減少に伴いしぼみ変形する可撓性の内容器、および該内容器が内装されており、弾性変形して該内容器との間に外気を吸入するための吸気孔が形成された外容器を有する容器本体と、内容物を吐出する吐出口が天面部に形成されており、該容器本体の口部に装着される吐出キャップと、外部と吸気孔とを連通する外気導入孔と、該外気導入孔と吸気孔との連通およびその遮断を切り替える空気弁部と、を備える吐出容器であって、内容器内に気体が収容されて気体スペースが形成されており、気体の容量が内容器の容量の4%以上であるというものである。
【0008】
積層剥離容器は、内容器に外気が入り込まないようにして内容物と外気との接触を断つようにした構造に特徴の一つがある。本発明では、このような特徴を逆手にとり、敢えて当初から内容器内に気体を収容して気体スペースを形成することとしている。一般に、内容物よりも気体のほうが圧縮されやすいので、使用者が内容物を使い切ろうとして容器を握った際、当該気体は、内容物を押し出すように作用する。また、最終的には、当該気体スペースの気体が内容物の代替として内容器内に残る。したがって、内容物のすべてを吐出させやすく、残留量が従来よりも少なくなる。
【0009】
しかも、本発明においては、積層剥離容器の内容器内に自然と空気が入り込んでしまった場合とは異なり、内容器内に所定容量以上の気体スペースを意図的に形成している。したがって、当該気体スペースの気体を内容物の代替として内容器内に残留させ、内容物のすべてを吐出させやすくするという所期の作用効果を奏させることができる。
【0010】
気体は、吐出口から内容物を吐出させるために当該吐出容器を傾けて吐出姿勢にした際、内容器内を速やかに移動するものであることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る吐出容器においては、気体が気体袋に封入されていることも好ましい。
【0012】
あるいは、本発明に係る吐出容器において、内容器内に形成された気体室に気体が封入されていることも好ましい。この場合、気体室が内容器の底部に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、内容物のすべてを吐出させやすくして残留量を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】吐出容器の全体を示す部分断面図である。
【図2】吐出容器における内容物の吐出時の作用を説明する縦断面図である。
【図3】内容物の吐出後、吐出容器が復元する時の作用を説明する縦断面図である。
【図4】オーバーキャップで被蓋した状態の吐出キャップの斜視図である。
【図5】オーバーキャップを開蓋した状態の吐出キャップの斜視図である。
【図6】オーバーキャップを開蓋した状態の吐出キャップの側面図である。
【図7】オーバーキャップを開蓋した状態の吐出キャップの平面図である。
【図8】オーバーキャップで被蓋した状態の吐出キャップの一部を示す縦断面図である。
【図9】図8の一部を拡大して示す図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る吐出容器の全体を示す部分断面図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る吐出容器の要部を示す縦断面図である。
【図12】本発明の他の実施形態に係る吐出容器の要部を示す縦断面図である。
【図13】本発明のさらに他の実施形態に係る吐出容器の底部を示す縦断面図である。
【図14】本発明の実施例1における試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る吐出容器について説明する。
【0016】
図1に示すように、吐出容器10は、内容物Mが収容されるとともに内容物Mの減少に伴いしぼみ変形する可撓性に富む内容器11と、内容器11が内装されるとともに弾性変形可能な外容器12とを備える容器本体13、容器本体13の口部13aに装着され、内容物Mを吐出する吐出口14が形成された吐出キャップ15、吐出キャップ15に着脱自在に配設されたオーバーキャップ16等を備えている。
【0017】
ここで、容器本体13は有底筒状に形成され、オーバーキャップ16は有頂筒状に形成され、オーバーキャップ16を吐出キャップ15に装着した被蓋状態において、これら容器本体13およびオーバーキャップ16の各中心軸が共通軸上に位置するように配置されている(図8等参照)。以下、この共通軸を容器軸Oといい、容器軸O方向に沿ってオーバーキャップ16側を上側、容器本体13の図示しない底部側を下側といい、また容器軸Oに直交する方向を径方向といい、容器軸Oを中心に周回する方向を周方向という。
【0018】
なお、オーバーキャップ16は、ヒンジ部16aによって吐出キャップ15に接続されていてもよい(図2等参照)。内容物Mを吐出口14から吐出させる際にオーバーキャップ16が邪魔にならないよう、このヒンジ部16aは、吐出口14が下方を向くように吐出容器10を傾けて吐出姿勢にした状態で吐出口14よりも高い位置になるように配置されている。
【0019】
容器本体13は、内容器11が外容器12の内面に剥離可能に積層されたいわゆるデラミボトルとなっている。該容器本体13は、例えば、共押出し成形した二層構造のパリソンをブロー成形することにより成形される。外容器12は、例えばポリエチレン樹脂製やポリプロピレン樹脂製等とされるとともに、内容器11は、例えば外容器12を形成する樹脂に対して相溶性のないポリアミド系の合成樹脂製やエチレンビニルアルコール共重合樹脂製等とされている。
【0020】
容器本体13の口部13aは、上側に位置する上筒部17と、下側に位置し上筒部17よりも大径に形成された下筒部18と、を備える二段筒状に形成されている(図2等参照)。上筒部17のうち、外容器12で構成された部分(以下、外上筒部という)17aの外周面には雄ねじ部29が形成されている。また、外上筒部17aにおいて、雄ねじ部29より下側に位置する部分には、内容器11との間に外気が吸入される吸気孔19が形成されている(図3等参照)。雄ねじ部29において吸気孔19の上側に位置する部分には、容器軸O方向に延在する連通溝20が形成されている。
【0021】
外上筒部17aの内周面は円筒面とされ、この内周面に、上筒部17のうち、内容器11で構成された部分(以下、内上筒部という)17bが積層されている(図2等参照)。内上筒部17bの上端部は、径方向の外側に折り返されて外上筒部17aの開口端上に配置されていてもよい。
【0022】
吐出キャップ15は、容器本体13の口部13aを閉塞する中栓部材21と、該中栓部材21を覆うとともに吐出口14が形成された有頂筒状の本体筒部材23と、を備えている(図2等参照)。中栓部材21は、外周縁部が容器本体13の口部13aの開口端上に配置された栓本体47と、該栓本体47から立設された連通筒部22と、を備えている。
【0023】
栓本体47は、容器本体13の口部13a内に、該口部13aとの間に隙間をあけて配置された有底筒状の内筒部24と、内筒部24の上端から径方向の外側に向けて突設され、容器本体13の口部13aの開口端上に配置されたフランジ部25と、フランジ部25の外周縁から上方に向けて延設された外筒部26と、内筒部24を径方向の外側から囲繞するようにフランジ部25から下方に向けて延設され、容器本体13の口部13a内に液密に嵌合された中間筒部27と、を備えている(図2等参照)。これら内筒部24、フランジ部25、外筒部26および中間筒部27は、容器軸Oと同軸に配設されている。また外筒部26の下端部には、径方向に貫通し、かつ下方に向けて開口する外気流通孔28が形成されている。
【0024】
内筒部24の底壁部には、上記の連通筒部22が配設されている。またこの底壁部には、内容器11内および連通筒部22内の双方に開口する貫通孔42が貫設されている。該貫通孔42は、例えば容器軸Oを中心として均等に配置された複数の小孔によって構成されている(図2等参照)。
【0025】
本体筒部材23は、容器軸Oと同軸に配置された有頂筒状に形成されている。この本体筒部材23の周壁部23aの内周面には、容器本体13の口部13aの雄ねじ部29に螺着された雌ねじ部30が形成されている。また周壁部23aのうち、雌ねじ部30が形成されたねじ部分よりも下側に位置する下端部内には、容器本体13の口部13aにおける下筒部18が気密状態で嵌合され、上記ねじ部分よりも上側に位置する上端部内には、中栓部材21の外筒部26が嵌合されている。
【0026】
吐出キャップ15の天面部31には、内容物Mを吐出する吐出口14が形成されている(図5等参照)。本実施形態の吐出容器10において、この吐出口14は容器軸Oと同軸となるように形成されているが(図2等参照)、該容器軸Oからずれた位置に形成されていてもよい。
【0027】
さらに、吐出キャップ15の天面部31には、上方に突出する外気導入用突起33が形成され、該外気導入用突起33に外気導入孔34が形成されている(図2等参照)。内容物Mが外気導入孔34から吸い込まれるのを回避するため、この外気導入用突起33は、吐出口14から内容物Mを吐出させるために当該吐出容器10を傾けて吐出姿勢にした状態で、当該吐出口14よりも高くなる位置に形成されている(図2等参照)。
【0028】
例えば本実施形態において、外気導入用突起33は吐出口14とヒンジ部16aとの間に立設するように形成されて、外気導入孔34は、天面部31よりも高くなる位置に該天面部31から空間的距離をおいて配置されている。このため、仮に吐出口14から液だれした内容物Mが吐出キャップ15の外面に付着したとしても、当該液だれした内容物Mが外気導入孔34から吸い込まれにくい。また、外気導入孔34は、吐出口14から内容物を吐出させるために当該吐出容器10を傾けて吐出姿勢にした際、上方に開口した状態、より好ましくは外気導入用突起33の鉛直上方向きに開口した状態となるように形成されている(図2等参照)。
【0029】
上述した外気導入用突起33の具体的形状は特に限定されないが、例えば本実施形態では、吐出キャップ15の径方向(容器軸Oに垂直な方向)の厚みよりも周方向への長さが長い、吐出口14を中心とした円弧に沿って湾曲した形状に形成されている(図5参照)。このような形状の外気導入用突起33によれば、液だれ等して吐出キャップ15の外面に付着した内容物Mが外気導入孔34に近付くのを阻止して当該外気導入孔34から吸い込まれるのを回避することができる。このような外気導入用突起33は、吐出口14を中心とした円弧に沿って湾曲していることも好ましい。
【0030】
吐出キャップ15には、被蓋状態時のオーバーキャップ16が係合する係合部32が形成されている。例えば本実施形態では、吐出キャップ15の天面部31の周囲に、径方向に僅かに張り出した段部が形成されており、該段部によって、被蓋状態時のオーバーキャップ16が係合する係合部32が形成されている(図2、図5等参照)。
【0031】
また、天面部31は、平滑に形成されていることが好ましい。例えば本実施形態の吐出容器10においては、天面部31のうち、吐出口14が形成されている部位と外気導入用突起33が形成されている部位とを除く部分が平滑面とされている。この場合、液だれ等した内容物Mが吐出キャップ15の天面部31に付着したとしても一拭きで拭き取ることができるなど、拭き取りが容易である。
【0032】
天面部31には、下方に向けて延設され、外径が後述する外嵌筒部40の内径と同等とされた受け筒部35が形成されている。さらに上板部32には、内部が上記吐出口14とされた吐出筒36が貫設されている。
【0033】
なお、吐出筒36内には、オーバーキャップ16から下方に向けて延設された内シール筒部(シール部)37が嵌合される(図1、図5、図8等参照)。また、内シール筒部37の周囲には、オーバーキャップ16の裏面から下方へ向けて突設された環状突部38が形成されている(図5等参照)。
【0034】
さらに、オーバーキャップ16には、当該オーバーキャップ16が吐出キャップ15に装着された状態のとき外気導入孔34を塞ぐ外気導入孔シール部39が形成されている(図8、図9参照)。吐出容器10の不使用時や搬送時などにおいてオーバーキャップ16を吐出キャップ15に装着した状態としておけば、この外気導入孔シール部39が、外気導入孔34から内容物Mが不意に吸い込まれることを回避する(図4、図8参照)。
【0035】
ここで中栓部材21と本体筒部材23との間には、中栓部材21の連通筒部22に外嵌された外嵌筒部40が配設されている。該外嵌筒部40は、容器軸Oと同軸に配置されており、外嵌筒部40の下端部は、連通筒部22に外嵌されるとともに中栓部材21の内筒部24内に嵌合し、外嵌筒部40の上端部は、本体筒部材23の受け筒部35に外嵌している。
【0036】
外嵌筒部40の容器軸O方向における中間部分には、径方向の外側に向けて突設された環状の空気弁部41が形成されている(図2、図3参照)。空気弁部41は、弾性変形可能とされ、吸気孔19と外気導入孔34との連通およびその遮断を切り替える。
【0037】
また中栓部材21には、吐出筒36と内容器11内とを連通する連通凹部43が形成されている。連通凹部43は、連通筒部22の内部により構成され、容器軸Oと同軸に配置されている。これにより、容器軸O方向と、連通凹部43の軸線方向とは一致している。また図示の例では、連通凹部43は、吐出筒36よりも下側、つまり容器軸O方向に沿った内容器11の内側に位置している。さらに連通凹部43の内容積は、吐出筒36の内容積よりも大きくなっている。
【0038】
中栓部材21の連通筒部22内には、容器軸O方向に沿って摺動可能に嵌合され、容器軸O方向に沿って摺動して当該連通凹部43を開閉する弁体部44が配設されている。弁体部44は、容器軸Oと同軸に配置された有底筒状に形成され、さらに容器軸O方向の上側端部(上端部)から径方向外方に突設された環状のフランジ部を有する形状に規制されている。この弁体部44に対し、連通筒部22の環状の上端面が、当該フランジ部と当接して該弁体部44を受ける弁座(弁押さえ)として機能する。このとき、弁体部44の外周面と連通凹部43の内周面とが接触しにくい構造としてもよいし、弁体部44の底面が、栓本体47において連通筒部22よりも径方向の内側に位置する部分に当接しないような構造としてもよい。
【0039】
また弁体部44の上端は、連通筒部22の上端面に当接するかあるいは該上端面よりも上側に位置しており、図2および図3に示すように、弁体部44の上端には、弁体部44と外嵌筒部40とを連結する連結片45の一端が連結されている。連結片45は、周方向に間隔をあけて複数、図示の例では3つ設けられており、各連結片45は、周方向に沿って湾曲して延在している。また連結片45の両端部の容器軸O方向の位置は同等となっている。なお弁体部44、外嵌筒部40、連結片45および空気弁部41は一体に成形され、連結体48を構成している。
【0040】
次に、以上のように構成された吐出容器10の作用について説明する。
【0041】
図2に示すように、当該吐出容器10から内容物Mを吐出するときには、まず、吐出キャップ15からオーバーキャップ16を外す。その後、吐出口14が水平面よりも下方を向くように吐出容器10を傾けて吐出姿勢にした状態で、吐出容器10を径方向の内側に押し込むように加圧してスクイズ変形(弾性変形)させ、内容器11を外容器12とともに変形させ減容させる。
【0042】
すると、内容器11内の圧力が上昇し、内容器11内の内容物Mが貫通孔42を通して弁体部44を押圧することとなり、連結片45が弾性変形させられて弁体部44が容器軸O方向に沿って内容器11の外側に向けて摺動させられて、連通凹部43が開放される。これにより、内容器11内の内容物Mが、貫通孔42、連通凹部43、外嵌筒部40内および吐出口14を通して外部に吐出される(図2参照)。
【0043】
その後、吐出容器10の押し込みを停止したり解除したりすることで、内容器11内の内容物Mによる弁体部44への押圧力を弱めると、吐出容器10の弾性復元力により生じる圧力差により、弁体部44が、容器軸O方向に沿って内容器11の内側に摺動する(図3参照)。
【0044】
このとき図3に示すように、弁体部44が、連通凹部43内に進入すると、弁体部44の外周面が連通凹部43の内周面に摺接して連通凹部43と該弁体部44との間の隙間が閉塞される。これにより、本体筒部材23と中栓部材21との間に、内容器11に戻されなかった内容物Mが残存する内空間46が形成される。この内空間46は、吐出口14に連通するとともに弁体部44を画壁の一部とし、該弁体部44により連通凹部43との連通が遮断されている。
【0045】
そして、このように内空間46が形成された後、該弁体部44が継続して連通凹部43内を容器軸O方向に沿って摺動すると、該摺動に伴って内空間46の内容積が増大することとなる。これにより、吐出口14内の内容物Mを内空間46内に引き込むことが可能になり、吐出口14内に外部から空気Aを吸引することができる。
【0046】
ここで、弁体部44により連通凹部43が閉塞された状態で容器本体13の押圧を解除すると、内容器11が減容変形したまま外容器12が復元変形しようとする。このとき、内容器11と外容器12との間に負圧が発生し、この負圧が、吸気孔19を通して空気弁部41に作用することにより、空気弁部41が開状態となる。すると、外気導入孔34、外気流通孔28、連通溝20および吸気孔19を通して外容器12と内容器11との間に外気が吸入される(図3参照)。そして、外容器12と内容器11との間の内圧が大気圧まで上昇すると、空気弁部41が復元変形して吸気孔19と外部とを遮断する。これにより、内容物Mの吐出後に内容器11の減容形状が保持される。
【0047】
この状態から、再び容器本体13の外容器12をスクイズ変形させると、空気弁部41は遮断状態とされていることから外容器12と内容器11との間の内圧が正圧となり、この正圧によって内容器11が減容変形され、前述の作用により内容物Mが吐出される。
【0048】
なお、内容物Mを吐出した後、弁体部44により連通凹部43が閉塞される前に、吐出容器10の押し込みを停止するだけでなく解除もした場合、内容器11が外容器12に追従して復元変形しようとする。すると、内容器11内の圧力が低下し負圧が生じることとなり、この負圧が弁体部44に作用することで、弁体部44が、容器軸O方向に沿って内容器11の内側に向けて円滑に摺動させられることとなる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係る吐出容器10によれば、内容物Mの吐出後、吐出口14内の内容物Mを内空間46内に引き込んで、吐出口14内に外部から空気Aを吸引することができるので、内容器11に戻されなかった内容物Mが吐出口14内に残存するのを抑えることが可能になる。これにより、内容物Mの吐出後、内容物Mが吐出口14から漏出するのを抑制することができる。
【0050】
また、貫通孔42が、連通凹部43よりも小径なので、弁体部44が、意図せずに上記の軸線方向に沿った内容器11の内側に変位しようとしても、弁体部44のフランジ部が、栓本体47において連通筒部22の環状の上端面に当接することとなり、弁体部44の前述の変位を規制することができる。
【0051】
また本実施形態のように、当該吐出容器10の未操作時に、弁体部44が栓本体47に当接している場合には、弁体部44により連通凹部43と貫通孔42との連通を遮断することができる。さらにこの場合、前述のように内容物Mを吐出して上記の内空間46が形成された後、弁体部44が復元変位するときに、該弁体部44が、連通凹部43内を容器軸O方向の全長にわたって摺動することができる。これにより、内空間46の内容積を確実に増大させることが可能になり、前述の作用効果を顕著に奏功させることができる。
【0052】
また、オーバーキャップ16に内シール筒部37が設けられているので、オーバーキャップ16を閉じた状態で吐出口14から内容物Mが不意に漏出するのを抑制することができる。また前述のように、内容物Mの吐出後、内容器11に戻されなかった内容物Mが吐出口14内に残存し難くなっているので、内容物Mの吐出後にオーバーキャップ16を吐出キャップ15に装着させ、内シール筒部37を吐出口14内に嵌合させたときに、内シール筒部37により内容物Mが吐出口14から外部に押し出されたり、内シール筒部37に内容物Mが付着したりするのを抑制することができる。
【0053】
なお、本発明の技術的範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0054】
本発明の別の実施形態を図10等に示す。この実施形態では、内容器11内に予め気体を収容して気体スペースSを形成している(図10、図11参照)。この気体スペースSにおける気体は内容物Mよりも圧縮されやすいので、特に内容物Mが少なくなった段階において、使用者が内容物Mを使い切ろうとして吐出容器10を加圧した際(スクイズ変形させた際)、内容物Mをより効果的に吐出させるよう作用する。
【0055】
気体スペースSの作用について説明する。気体は内容物Mよりも比重が軽いことから、吐出キャップ15が上を向くように吐出容器10が置かれた通常状態において、気体スペースSは内容物Mよりも鉛直方向上方のヘッドスペースとして存在している(図11等参照)。ここで、吐出口14が水平面よりも下方を向くように吐出容器10を傾けて吐出姿勢にすると、気体スペースSは当該吐出容器10の底部へ向け内容器11内を移動する。このような吐出姿勢にて使用者が吐出容器10を加圧すると、吐出口14から内容物Mのみが吐出され、気体スペースSを形成する気体は内容器11内に残る。
【0056】
この吐出容器10においては、内容物Mが少なくなるにつれ、内容物Mの残量に対する気体スペースSの割合が大きくなるため、加圧時に圧縮された気体スペースSによる内容物Mの押し出し作用(吐出させる作用)が大きくなる。したがって、特に内容物Mが少なくなった段階において、加圧されて圧縮された気体スペースSは内容物Mをより効果的に押し出し吐出させるように作用する。また、最終的には、当該気体スペースSの気体が内容物Mの代替として内容器11内に残る。したがって、本願発明の吐出容器10によれば内容物Mのすべてを吐出させやすく、残留量を従来よりも少なくすることが可能である。
【0057】
気体は、吐出口14から内容物Mを吐出させるために当該吐出容器10を傾けて吐出姿勢にした際、内容器11内を速やかに移動するものであることが好ましい。この場合の気体の移動速度は、当該気体の容量、内容器11の形状等によって変わりうるが、大きくは内容物Mの粘度に影響される。内容物Mのすべてを吐出させやすくして残留量を少なくするという観点からすれば、内容物Mの粘度は、当該気体がある速やかに移動しうる範囲内のものであることが好ましい(実施例2参照)。
【0058】
なお、内容物Mの具体例は特に限定されず、乳化状液、加工澱粉混合物、液状食品、醤油含有調味料(清澄な調味料の一例であり、醤油自体を含む)など種々のものを採用しうる。また、気体の具体例も特に限定されないが、窒素ガスなど、内容物Mを酸化させる等の反応性が低いものであることが好ましい。
【0059】
ここまでは内容器11内に内容物Mとともに気体を収容する形態を例示したが、気体スペースSを上述とは別の態様で形成することもできる。例えば、気体が封入された気体袋50を内容器11内に収容することによって気体スペースSを形成することができる(図12参照)。このような吐出容器10においては、内容物Mのすべてを吐出させるまで内容器11内に気体スペースSが保たれる。気体袋50の材質や形状は、吐出容器10を傾ける等した際に当該気体袋50が内容器11内を速やかに移動することができるものであることが好ましい。
【0060】
あるいは、内容器11内の例えば底部に気体室51を形成し、当該気体室51に気体を封入することによって気体スペースSを形成することもできる(図12参照)。気体室51は、内容器11の内部を例えば可撓性のフィルムで仕切る等して形成することができる。このような吐出容器10においても、内容物Mのすべてを吐出させるまで内容器11内に気体スペースSが保たれる。
【実施例1】
【0061】
本発明者は、吐出容器(デラミ容器)10の内容器11の容量に対して何%以上の気体スペースSを設けると好適であるかの試験を行った。
【0062】
<試験方法>
200ml、250mlの2種類の吐出容器10の質量を測定し、気体スペースSの容量を変えて内容物(液)を充填し、全て排出した。大さじ(15ml)ずつ、14〜17回に分けて排出を行った。内容物Mを排出できなくなった時点で質量測定し、残液量を算出した。したがって、吐出容器10内の残液と、吐出キャップ15内の残液も合わせて結果に出てくることとなった。
【0063】
<結果>
試験結果を図14に示す。この試験結果からは、気体スペースSを形成する気体の容量が内容器11の容量の4%以上(S/(M+S)が4%以上)である場合に、内容物Mの残液量を極めて少なくすることが可能であることが分かった。
【実施例2】
【0064】
本発明者は、内容物Mの粘度の違いにより、内容物Mのすべてを吐出させやすくして残留量を少なくするという効果がどのくらい違うか確かめるため検証した。ここでは、高粘度液体状食品として、ポン酢ジュレを使用した。
【0065】
<試験方法>
ポン酢ジュレを吐出容器に充填し、実施例1の試験方法と同様に排出を行った。
【0066】
<結果>
気体スペースSが4%以上で同様に内容物Mの残液量を少なくすることができた。
【0067】
<粘度測定結果>
ポン酢ジュレ
・B型粘度計 25℃ローターNo.3―12回転 で測定
3500cp
・B型粘度計 25℃ローターNo.3―30回転 で測定
1840cp
【0068】
しょうゆ
25℃、No.1spindle使用、回転数60rpm
使用機器:ブルックデジタル粘度計LVDVー1
粘度 Brix
・しょうゆA: 0.91cP 37.42%
・しょうゆB: 0.73cP 32.21%
・しょうゆC: 1.05cP 39.37%
【0069】
内容物Mのすべてを吐出させやすくして残留量を少なくするという観点からすると、すべて吐出可能な液状食品はポン酢ジュレより粘度の低い物すべてであると言える。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、乳化状液、加工澱粉混合物、液状食品などを内容物とする積層剥離構造の吐出容器に適用して好適なものである。
【符号の説明】
【0071】
10…吐出容器
11…内容器
12…外容器
13…容器本体
13a…口部
14…吐出口
15…吐出キャップ
19…吸気孔
31…天面部
34…外気導入孔
41…空気弁部
50…気体袋
51…気体室
M…内容物
S…気体スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容されるとともに内容物の減少に伴いしぼみ変形する可撓性の内容器、および該内容器が内装されており、弾性変形して該内容器との間に外気を吸入するための吸気孔が形成された外容器を有する容器本体と、
内容物を吐出する吐出口が天面部に形成されており、該容器本体の口部に装着される吐出キャップと、
外部と前記吸気孔とを連通する外気導入孔と、
該外気導入孔と前記吸気孔との連通およびその遮断を切り替える空気弁部と、を備える吐出容器であって、
前記内容器内に気体が収容されて気体スペースが形成されており、
前記気体の容量が前記内容器の容量の4%以上である、吐出容器。
【請求項2】
前記気体は、前記吐出口から内容物を吐出させるために当該吐出容器を傾けて吐出姿勢にした際、前記内容器内を速やかに移動するものである、請求項1に記載の吐出容器。
【請求項3】
前記気体が気体袋に封入されている、請求項1または2に記載の吐出容器。
【請求項4】
前記内容器内に形成された気体室に前記気体が封入されている、請求項1に記載の吐出容器。
【請求項5】
前記気体室が前記内容器の底部に形成されている、請求項4に記載の吐出容器。
【請求項6】
前記内容物が液状食品である、請求項1から5のいずれか一項に記載の吐出容器。
【請求項7】
前記内容物が醤油含有調味料である、請求項1から6のいずれか一項に記載の吐出容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−35557(P2013−35557A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171850(P2011−171850)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000004477)キッコーマン株式会社 (212)
【Fターム(参考)】