説明

吐出用液体、吐出方法、吐出用カートリッジ、吐出装置及び吐出用液体の液滴化方法

【課題】本発明の目的は、呼吸器系疾患の治療を目的とする有効成分を含有する液を、吐出装置の有する吐出口から安定に吐出するための吐出用液体(液体組成物)を提供することにある。
【解決手段】呼吸器系疾患治療用の有効成分を含む吐出用液体に、特定の界面活性能を有する化合物を添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸器系疾患治療に用いる有効成分の少なくとも1種を含む液体の液滴化に適した吐出用液体(液体組成物)、その液滴化方法及び吐出方法、並びにこの液滴化方法を用いたカートリッジ及び吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸器に薬剤を吸入して投与する方法が従来から幾つかあり、これらの概要とその課題を以下に述べる。
【0003】
懸濁物エアロゾル形態の定量噴霧吸入器では、噴射剤として、不燃性、あるいは難燃性ガスを液化したものを利用し、単回噴射に供される、液化ガスの単位容量を規定することで、定量噴霧を可能としている。しかし、上記の範囲での液滴径の制御には課題が残る上に、噴射剤が健康に対して良いとは言い難い。
【0004】
また、媒体として水やエタノールを用いる液剤の噴霧に利用される、スプレー方式の噴霧では、キャピラリーを介して、液剤を搬送用加圧気体とともに放出することで、細かな液滴に変換している。従って、原理的には、かかるキャピラリー流路に供給される液剤の液量を規定することで、噴霧量を制御することは可能であるが、液滴径の制御は難しい。特に、スプレー方式の噴霧では、液剤を細かな液滴に変換する過程で利用される加圧気体を、その後、噴霧された微細な液滴を搬送する気体の流れとしても使用する。そのため、この搬送用の気流中に浮遊される微細な液滴の量(密度)を目的に応じて変化させることが構造上困難である。
【0005】
一方、粒度分布が狭い液滴を作製する方法として、インクジェット印刷に使用される液体吐出の原理に基づいた液滴生成器を使用して、すなわちインクジェット方式を利用して極めて微細な液滴を生成し、利用することが報告されている(例えば特許文献1、2)。ここで、当該種のインクジェット方式は、吐出する液体を小さな室に導き、液体に押出す力を与えて、オリフィスから液滴を吐出する液体吐出方式をいう。液体を押出す方法としては、例えば、以下の2つの方法が知られている。
(1)薄膜抵抗器等の熱変換機を用いて、室上にあるオリフィス(吐出口)を通じて液滴を噴出する気泡を生成する「サーマルインクジェット方式」。
(2)ピエゾ振動子(ピエゾ圧電体素子)などを用いて液体を直接室上にあるオリフィスから液体を押出す「ピエゾインクジェット方式」。
【0006】
室及びオリフィスはプリントヘッド素子に組み込まれ、このプリントヘッド素子は、液体の供給源に接続されると共に、液滴の吐出を制御するコントローラに接続されている。
【0007】
薬剤を肺に沈着させるにあたっては、肺の各部位に対して所望の沈着粒子径があり、各々の大きさに制御する必要がある。この大きさを制御できるインクジェット方式の原理に基づく液滴化は非常に好ましい形態である。
【0008】
上記、所望の粒子径について具体的には、肺吸入に適した大きさである1〜5μmの液滴は、現在市販されているプリンターの液滴径約16μmと比較して非常に小さく、吐出の過程で薬液に大きな表面エネルギーや剪断力が加わる。そのため、肺吸入に適した微小な液滴として吐出することは非常に困難となる場合がある。
【0009】
この点がインクジェット方式の原理に基づいた液滴化に伴う問題点であり、従来の印刷用のインクジェット機構と比較して、薬剤噴霧に好ましい液滴を生成するための吐出口の口径が著しく小さくなる。液滴吐出口径が著しく小さくなることで周辺の経路等も物理形状、大きさが小さくなる。従って、インクジェット方式の原理に基づく液滴化の際に加わる物理的な力は、局所的に印刷用としての正常値に対して著しく高くなり、通常の攪拌などにより加わる剪断力や熱エネルギーより極端に大きく、液滴の吐出が困難となる場合が生じやすい。前記の物理的な力としては、例えば圧力、剪断力であり、インクジェット方式の場合、90気圧の負荷がかかると考えられている。
【0010】
上記のようなインクジェット方式を薬剤噴霧に適用する場合における課題がなお残されている。製造コストや吐出口の高密度化、噴霧した液量の制御の容易性などを考慮すると、薬剤噴霧にインクジェット方式を用いることが好ましい。インクジェット方式の中では、特にサーマルインクジェット方式を用いることが好ましい。
【0011】
更に、インクジェット方式は、吐出口からの吐出液量に関して、極微量でも高い制御性を示すという特長を有している。そこで、単位面積当たりの吐出口数を多くし、吐出口の駆動数を制御することで、単位時間当たりの薬剤液滴の個数(噴霧量の総量)を幅広く変化させることが可能となる。このような観点からも、サーマルインクジェット方式を用いることが好ましい。すなわち、ピエゾ圧電体素子を利用する振動方式では、利用される圧電体素子の微小化に限界があり、単位面積当たりに設けられる噴出口の数が制限される。また、単位面積当たりに設けられる吐出口の数が多くなるに伴い、その作製に要するコストが急激に高くなる。一方、サーマルインクジェット方式では利用するマイクロ・ヒーター素子の微小化は比較的に容易であり、ピエゾ圧電体素子などを利用する振動方式と比較して、単位面積当たりに設ける吐出口の数も多くでき、また、その作製に要するコストも遥かに低くできる。
【0012】
サーマルインクジェット方式を適用する際には、各吐出口から吐出される微細液滴の適切な噴霧状態と液量を制御するために、吐出される液の物性を調整する必要がある。すなわち、吐出される液状試料を構成する、溶媒の種類・組成、溶質濃度などの液組成に工夫を施すことで、目的とする微細液滴の液量を得られるように調製されている。
【0013】
サーマルインクジェット方式を用いて作成した液滴の肺吸入に関する液組成物については、表面張力を調節する化合物や保湿剤を添加する方法(特許文献3)が開示されている。ここでは、溶液の表面張力や粘度、保湿作用によって液滴化した溶液中の蛋白質の安定性が上昇するとして、界面活性剤やポリエチレングリコールなどの水溶性高分子を加えているが、吐出の安定性についての記載はない。
【0014】
さらには、サーマルインクジェット方式の原理に基づく液滴の吐出機構に関しても、様々な技術開発が進められている。通常のインクジェット・プリンターヘッドでは、吐出される個々の液滴の液量は数ピコリットル程度であるのに対し、その液量が、サブピコリットル、あるいはフェムトリットルオーダーの極めて微細な液滴が得られる吐出機構・方法の技術も開発されている(例えば特許文献4を参照)。例えば、数μmサイズの体細胞を、薬剤の塗布を施す対象物とする際に、吐出される個々の液滴として、前記の極めて微細な液滴を利用する必要が生じる場合も想定される。
【特許文献1】米国特許第5894841号明細書
【特許文献2】特開2002−248171号公報
【特許文献3】国際公開第WO02/094342号パンフレット
【特許文献4】特開2003−154655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、呼吸器系疾患の治療を目的とする有効成分を含有する液を、吐出装置の有する吐出口から安定に吐出するための吐出用液体(液体組成物)を提供することにある。本発明の他の目的は、この吐出用液体の吐出方法及び液滴化方法、ならびにこの吐出用液体を用いた呼吸器系疾患治療用のカートリッジ及び吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の吐出用液体は、呼吸器系疾患治療に用いる薬剤吐出装置の吐出口から吐出させるための吐出用液体において、
呼吸器系疾患治療用の有効成分と、
下記式1:
【0017】
【化1】

【0018】
(上記式(1)中、Rは、炭素数が6以上30以下の置換または無置換の、飽和または不飽和の脂肪族鎖、または炭素数が6以上30以下の、飽和または不飽和の脂肪族誘導体鎖であり、Aは、アミノ酸、四級アンモニウム塩、ベタインおよびアミンオキシドから選ばれる骨格を少なくとも1つ有し、置換または無置換のカルボン酸基、置換または無置換のスルホン酸基、置換または無置換のアニオンとそのカウンターイオン、置換または無置換の四級アンモニウム基、あるいは置換または無置換のカチオンとそのカウンターイオンとして持ち合わせても良い)
で表される界面活性能を有する化合物、あるいは炭素数が6以上30以下の置換または無置換の、飽和または不飽和の脂肪族鎖を有するノニオン性の水溶性化合物と、
水を主とする液媒体と、
を含有することを特徴とする呼吸器系疾患治療用の吐出用液体である。
【0019】
本発明の液体吐出方法は、呼吸器系疾患治療用の薬剤吐出装置から上記の吐出用液体をインクジェット方式により吐出させることを特徴とする液体吐出方法である。
【0020】
本発明の液体吐出用カートリッジは、上記の吐出用液体が収納されるタンクと、吐出用ヘッドと、を有することを特徴とする液体吐出用カートリッジである。
【0021】
本発明の吐出装置は、上記のカートリッジと、該カートリッジの有するヘッドの液体吐出部から吐出する液体を利用者の吸入部位へ誘導するための流路及び開口部と、を有することを特徴とする呼吸器系疾患治療用の吐出装置である。
【0022】
本発明の液体の液滴化方法は、呼吸器系疾患治療用の有効成分を含む液体に吐出用エネルギーを付与して該液体を液滴化する方法であって、
流路中に充填された液体に吐出用エネルギーを付与して該流路に連通する吐出口から液滴として吐出する工程を有し、
前記液体が、上記の吐出用液体であることを特徴とする液滴化方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、呼吸器系疾患治療用の有効成分の少なくとも1種を含む液体に、界面活性能を有する特定の化合物を添加することで、数μm径程度の極微細な吐出口から安定した吐出が可能である吐出用液体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の吐出用液体は、呼吸器系疾患治療用の有効成分の少なくとも1種と、界面活性剤と、水を主体とする液媒体と、を含有することを特徴とする液体組成物としての吐出用液体である。この吐出用液体は、鼻、のど、気管、気管支、肺などの呼吸器への薬剤噴霧器や薬剤吸入用装置に好適に利用できる特性を有する。特に、インクジェット方式による吐出に好適な物性を有する。本発明の吐出溶液体を用いることで、例えばサーマルインクジェット方式による吐出装置における数μm径程度の極微細な吐出口から安定した吐出が可能となる。
【0025】
この吐出用液体が収納されるタンクと、インクジェット方式を用いた吐出用ヘッドと、を少なくとも用いて液体吐出用カートリッジを構成することができる。更に、この液体吐出用カートリッジの有する吐出用ヘッドの液体吐出部に、そこから吐出される液体を利用者(患者)の吸入部位へ誘導するための流路部と開口部と形成することで、治療用薬剤の吸入用として用いられる液体吐出装置を構成することができる。
【0026】
以下に、本発明を更に詳細に説明する。
【0027】
本発明における呼吸器系治療用の有効成分(化合物)とは、鎮咳剤、呼吸促進剤、気管支拡張剤、含嗽剤、去痰剤に代表される喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器系の各種器官の治療に用いる化合物を指す。この有効成分の具体例としては、クロモグリク酸、サルブタモール、イプラトロピウム、フェノテロール、イソプロテレノール、トリメトキノール、プロカテロール、サルメテロール、オキシトロピウム、プロピオン酸ベクロメタゾン、ブロムヘキシン、アセチルシステイン、ブデソニド、及びプロピオン酸フルチカゾンなどを例示できる。これらの化合物に関する部分的に置換される誘導体などについても同様に扱うことが出来る。
【0028】
また、呼吸器系疾患治療用の化合物の吐出用液体中での含有量は、その目的や用途に応じて選択されるが、好ましくは、1ng/ml〜200mg/mlの範囲から選択される。さらに上記の呼吸器系疾患治療用の化合物は単一液中に1種類でもよく、複数種が共存する様態でも良い。
【0029】
本発明者らは、鋭意研究を進めた結果、数μm径の吐出口からサーマルインクジェットの原理に基づいて液滴として吐出する際に、界面活性能を有する特定の化合物を添加することで安定した液滴吐出が得られることを見出した。上記の特定の物質とは式(1)に示す化合物、または炭素数が6から30の間にある置換または無置換の、飽和または不飽和の脂肪族鎖を有するノニオン性の水溶性化合物である。
【0030】
【化2】

【0031】
(上記式(1)中、Rは、炭素数が6以上30以下の置換または無置換の、飽和または不飽和の脂肪族鎖、または炭素数が6以上30以下の、飽和または不飽和の脂肪族誘導体鎖であり、Aは、アミノ酸、四級アンモニウム塩、ベタインおよびアミンオキシドから選ばれる骨格を少なくとも1つ有し、置換または無置換のカルボン酸基、置換または無置換のスルホン酸基、置換または無置換のアニオンとそのカウンターイオン、置換または無置換の四級アンモニウム基、あるいは置換または無置換のカチオンとそのカウンターイオンとして持ち合わせても良い)
式(1)の好ましい化合物には、以下の式(2)および式(3)に分類される化合物が含まれる。
【0032】
【化3】

【0033】
(上記式(2)中、R1は炭素数が6以上30以下の置換または無置換の、飽和または不飽和の脂肪族鎖、および炭素数が6以上30以下の、飽和または不飽和の脂肪族誘導体鎖を表し、Aは、アミノ酸、四級アンモニウム塩、ベタインおよびアミンオキシドから選ばれる骨格を少なくとも1つ有し、置換または無置換のカルボン酸基、置換または無置換のスルホン酸基、置換または無置換のアニオンとそのカウンターイオン、置換または無置換の四級アンモニウム基、あるいは置換または無置換のカチオンとそのカウンターイオンとして持ち合わせても良い)
式(2)中のAのアニオンとしてはアニオン種であればよく、無機及び/又は有機のアニオンから選ばれる少なくとも1種を有してよい。具体的にはスルホン酸、カルボン酸、燐酸を例示できる。前記アニオンのカウンターイオンとしてはカチオン種であれば良く、1価の金属イオン、金属酸化物イオン及び有機カチオンから選ばれる少なくとも1種を表し、該カウンターイオンは同一でも異なってもよい。好ましい1価の金属イオンとしては、アルカリ金属イオンを例示できる。好ましい金属酸化物イオンとしてVO2+、RuO4-、SnO32-、TcO4-等を例示できる。好ましい有機カチオンはN+、P+及びS+から選ばれるカチオンである。より好ましい様態は1価の金属イオン又は四級アンモニウムイオンである。
【0034】
式(2)中のAのカチオンとしては、カチオン種であれば良く、無機及び/又は有機のカチオンから選ばれる少なくとも1種を有してよい。具体的にはオニウム塩を例示でき、より具体的にはアンモニウム塩を例示できる。前記カチオンのカウンターイオンとしてはアニオン種であれば良く、ハロゲンイオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化物イオン、水酸化物イオン、カルボン酸類イオン、硝酸類イオン、燐酸類イオン及び硫酸類イオンを好ましく例示でき、該カウンターイオンは同一でも異なってもよい。
【0035】
式(2)中のR1は炭素数が6以上30以下の置換または無置換の、飽和または不飽和の脂肪族鎖および炭素数が6以上30以下の飽和または不飽和の脂肪族誘導体鎖である。炭素数が5以下では界面活性能を有さず、また炭素数が30を超えるとではワックス状になり、同様に界面活性能がなくなる。R1の炭素数に関しては6から30が好ましく、8以上25以下であることがより好ましい。
【0036】
【化4】

【0037】
(式(3)中、R1は炭素数が6以上30以下の置換または無置換の、飽和または不飽和の脂肪族鎖、および炭素数が6以上30以下の飽和または不飽和の脂肪族誘導体鎖を表し、R0はR1とAの間を結合する官能基を表し、Aは、アミノ酸、四級アンモニウム塩、ベタインおよびアミンオキシドから選ばれる骨格を少なくとも1つ有し、置換または無置換のカルボン酸基、置換または無置換のスルホン酸基、置換または無置換のアニオンとそのカウンターイオン、置換または無置換の四級アンモニウム基、あるいは置換または無置換のカチオンとそのカウンターイオンとして持ち合わせても良い。)
式(3)の示す化合物として、脂肪酸アシルベタイン、脂肪酸アシルアルキルベタイン、脂肪酸アシルアミノ酸、ベンザルコニウム塩、ベンゼトニウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸を好ましい化合物として例示できる。より好ましい具体的な化合物として、式(4)から式(14)に示す構造の化合物を挙げることができる。
【0038】
【化5】

【0039】
【化6】

【0040】
【化7】

【0041】
R2およびR5はそれぞれ独立して、炭素数が1以上6以下の置換または無置換の、飽和または不飽和のアルキレン鎖を表す。
【0042】
上記の脂肪族誘導体に関しては、誘導体ではない脂肪族の形態での化合物に比して物理性質や特性が大きく変わらない範囲内であればよい。また、処方される薬液の吐出性も、誘導体化合物としたことで本来化合物に比して50%を超える程度であれば良い。
【0043】
界面活性能を有するノニオン性の水溶性化合物としての脂肪酸を有するポリオキシエチレンソルビタンアルキレートはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである。特に好ましいのはポリオキシエチレン20ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン20ソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(5)ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレン20ソルビタントリオレートである。最も好ましいのはポリオキシエチレン20ソルビタンモノラウレート及びポリオキシエチレン20ソルビタンモノオレートである。また、肺吸収用として特に好適なものは、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノオレートである。
【0044】
上記の界面活性能を有する化合物が吐出の安定性に大きく寄与する原因は以下のように考えられる。
【0045】
数μm径の穴から液滴として吐出させるにあたり、分子内に疎水性の長鎖アルキル基を有し、かつ親水性官能基を有することで、液体の界面エネルギーが適切に調整され、安定した吐出性能が得られる。
【0046】
本発明で使用される界面活性能を有する化合物としては、前記の中から選ばれるものであれば良い。一方、前記化合物の中には界面活性能に加えて抗菌作用を有するものがある。薬剤の保存安定性の観点からも非常に有用な付加価値であり、該両機能を持ち合わせる化合物として塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムをより好ましく例示できる。
【0047】
本発明で使用される界面活性能を有する化合物の添加濃度は、吐出用液体中で共存する薬剤等の種類にもよるが、例えば薬剤が臭化イプラトロピウムの場合には該化合物を0.01〜20重量%添加しても良い。この範囲よりも小さい場合は界面活性能が不足し、高い場合には薬剤効能の低下や生体への悪影響が懸念される。
【0048】
本発明の実施形態において、微生物の影響を除去または低減するために抗菌剤、殺菌剤及び防腐剤から選択した1種以上を必要に応じて添加しても良い。このような成分としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンザトニウムのような4級アンモニウム塩類、フェノール、クレゾール、アニソール等のフェノール誘導体、安息香酸、パラオキシ安息香酸エステルのような安息香酸類、ソルビン酸などが挙げられる。
【0049】
本発明の実施形態において、保存時の物理的安定性を増加させるためにオイル、グリセリン、エタノール、尿素、セルロース、ポリエチレングリコール、アルギン酸塩から選択した1種以上を必要に応じて添加してもよい。また、化学的安定性を増加させるために、アスコルビン酸、クエン酸、シクロデキストリン、トコフェロールまたは他の抗酸化剤から選択した1種以上を必要に応じて添加しても良い。
【0050】
吐出用液体のpHを調整するために、緩衝剤を添加しても良い。例えば、アスコルビン酸、クエン酸、希塩酸、希水酸化ナトリウムなどの他、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、PBS、HEPES、Trisなどの緩衝液を用いても良い。
【0051】
液体の等張化剤として、アミノエチルスルホン酸、塩化カリウム、塩化ナトリウム、グリセリン、炭酸水素ナトリウムから選択した1種以上を必要に応じて添加しても良い。
【0052】
矯味・矯臭剤としてグルコースやソルビトールといった糖類やアステルパームのような甘味剤、メントールや各種香料を添加しても良い。また、親水性のものだけでなく、疎水性の化合物やオイル様で用いても良い。
【0053】
本発明においては、必要に応じて、適用対象の噴霧液の使用目的に適合する種々の添加剤、例えば、表面調整剤、粘度調整剤、溶剤、保湿剤から選択した1種以上を必要に応じてその適正量添加することができる。
【0054】
具体的には、配合可能な添加剤として、親水性バインダー、疎水性バインダー、親水性増粘剤、疎水性増粘剤、グリコール誘導体類、アルコール類、嬌味成分、矯臭成分および電解質を例示でき、これらより選ばれて単一でもよく、また混合物でもよい。
【0055】
なお、上記に例示した各種の添加剤は、添加可能な副次成分として、各国の薬局方などに記載されている、医薬用途のもの、あるいは、食品、化粧品において利用が許容されているものを用いることがより好ましい。
【0056】
上記の添加剤として、配合される各種の物質の添加比率は、対象となる薬剤の種類に依って異なるが、一般に、各々重量基準で0.01%〜40%の範囲に選択することが好ましく、0.1%〜20%の範囲内とすることがより好ましい。また、上記の添加剤の添加量は種類や量および組合せによって異なるが、吐出性の観点から、前記の薬剤1重量部に対して、0.5重量部から200重量部であることが好ましい。
【0057】
本発明にかかる吐出用液体の液媒体は、水を主体として構成することができる。すなわち、水、あるいは水と水溶性有機溶媒との混合媒体から液媒体を構成することができる。すなわち、上記の各成分を水に所定の濃度となるように含有させることで吐出用液体を得ることができる。水の濃度は25%以上であることが好ましい。
【0058】
本発明にかかる液体吐出装置は呼吸器系での薬剤吸入用の噴霧装置として好適な構成を有する。この液体吐出装置は、吐出口から液体を吐出する方式によるものである。この液体吐出方式としてはインクジェット方式がこのましい。インクジェット方式には、吐出エネルギーの種類に応じて種々の方式があり、圧電体素子を用いる方式や発熱素子を利用する方式(サーマルインクジェット方式)が代表的である。先に述べたとおり、これらの中では、サーマルインクジェット方式が好ましい。例えば、液体吐出装置は、サーマルインクジェット方式によって医薬成分を含む液剤の微小液滴を吐出させることが可能な吐出用ヘッド部を有し、このヘッド部を構成する多数の液剤吐出ユニットを独立駆動可能な構成とすることが好ましい。その際、各液剤吐出ユニットの独立駆動に要する、複数の制御信号等の接続に供する電気接続部と、各液剤吐出ユニットとの間を繋ぐ配線とを一体化する。加えて、前記液剤を収納するタンクと、このタンクからサーマルインクジェット原理に基づいた吐出用ヘッドへ液剤を供給する手段として、液流路とを含めて、一体的に構成された液体噴霧用カートリッジの形態とすることが好ましい。
【0059】
図1に、かかる液体噴霧用カートリッジの全体構成の一例を模式的に示す。この図1に例示するカートリッジは、同一の基板上に、液剤を噴霧するヘッド部3と、液剤を充填するタンク1と、このタンク1からヘッド部3へと液剤を導く液流路2とが一体的に配置、作製されている。ヘッド部3の各液剤吐出ユニットの駆動を制御するコントローラと、ヘッド部3とは、内部の配線4が連結されている電気的接続部5を介して、駆動信号、制御信号などのやり取りを行う。
【0060】
その際、ヘッド部3は、吐出される微細な液滴個々の液量を、サブピコリットル、あるいは、フェムトリットルオーダーとし、その制御性にも優れている、特開2003−154655号公報に開示される、極微小の液滴吐出用ヘッドを利用することが好ましい。
【0061】
この図1に示す例では、噴霧される液剤は一種類であり、液剤を充填するタンクは、一つとする構造となっている。なお、噴霧される液剤が二種類以上の場合、適宜、それに対応する、液剤を充填するタンク複数を設け、サーマルインクジェット・ヘッドも、液剤吐出ユニット複数種の集積化する構成とすることで、対応可能である。
【0062】
本発明にかかる液体吐出装置は、かかる噴霧方法の有する特徴である、液剤を細かな液滴に変換する過程と、噴霧された微細な液滴をその搬送用の気流中に混入する過程とを分離する形態に特に好適に適用できる。吐出装置がこの形態を採ることで、液滴変換のプロセスと液滴を気流に混合するプロセスを分離することによる利点を効果的に生かすことができる。すなわち、治療目的に応じた薬剤化合物を所定濃度で含有する液剤を吐出用液体として噴霧し、この液剤の噴霧を投与対象者に吸入させる際、この吸入される気体中に含まれる、薬剤化合物の量(単回投与当たりの用量)を随意に設定できる。その際、液剤の噴霧を行う噴霧機構として、単位面積当たり、微細な液滴の吐出口を高密度に配置するインクジェット原理に基づいた吐出用ヘッドを利用することで、使用者が携帯所持できるような小型化を行うことができる。この液体吐出装置によれば、吐出量を変化させるだけで気流中の薬剤化合物の濃度変化をつけることも可能である。
【0063】
肺吸入用とする場合、液体吐出装置は、平均粒子径が0.5μm以上8μm以下、より好ましくは1μm以上5μm以下、さらに好ましくは2μm以上5μm以下の範囲にあり、且つ粒度分布が狭い液滴を吐出可能であることが好ましい。
【0064】
本発明の液体吐出装置をカートリッジタイプとし、吐出量のコントローラとして機能させることで、呼吸器系疾患治療用いる医薬成分(薬剤)の吸入装置(吸入器)として好適に利用可能となる。この吸入器は、利用者が携帯して所持できるように構成されており、薬剤を粒子サイズが均一な液滴として定量吐出することを可能とし、定量吐出された薬剤を利用者に吸入させるものである。
【0065】
図2及び図3を参照にして本発明にかかる吸入器の概略について説明する。
【0066】
図2は、吸入器の外観を示す斜視図である。9は吸入器本体、6はアクセスカバーでこれらによりハウジングを形成している。図3は、アクセスカバー6が開いた状態を図示したもので、アクセスカバー6が開くとヘッドカートリッジユニット10とマウスピース7が見えてくる。利用者の吸入動作によって、空気取り入れ口から空気が、マウスピース7内に入り込み、ヘッドカートリッジユニット10のヘッド部(不図示)に設けた吐出口から吐出された薬剤と混合流体となり、人が咥える形状をなしているマウスピース出口へと向かう。マウスピースの先端を利用者が口内に挿入して歯で保持し咥え、息を吸込むことで、ヘッドカートリッジユニットの液体吐出部から液滴として吐出してくる薬液を効果的に吸引することができる。なお、ハウジング内には、ヘッドカートリッジユニットのコントローラ(不図示)、電源(電池)(不図示)なども収納されている。ヘッドカートリッジユニットは、図1に例示するような、液体吐出部と液剤タンクと一体化されたものであり、アクセスカバー6を開き、交換可能な構成とされている。
【0067】
図3に示すように、空気取り入れ口から流入する空気をマウスピース7内へ導く、管状の空気流路の途中に、ヘッドカートリッジ・ユニット10が取り付けられている。このヘッドカートリッジ・ユニット10のヘッド部において、サーマルインクジェット方式の原理に基づいて微細に液滴化して、噴霧される液剤は、この管状の空気流路内で空気の気流中に混合される。この吸入器では、マウスピース7を使用者が咥え、吸入することで、空気取り入れ口から空気が流入する方式は利用されている。すなわち、この吸気部の構成が、噴霧機構で発生される、液剤の微小液滴が霧状に浮遊する気体を、投与対象者に吸入させる吸入機構に相当している。
【0068】
図3に示す構成を採用することで、噴霧される液剤の微小液滴は、吸入とともに、投与対象者の咽喉、気管内部へと自然と到達可能な形態となっている。従って、噴霧される液剤の量(投与量)は、吸気される空気の容量の大小には依存せず、独立にコントロールされている。具体的には、ヘッドカートリッジ・ユニット10のヘッド部には、特開2003−154655号公報に開示される、極微小の液滴吐出用ヘッドを利用し、平均液滴径が3μm程度となる構成としている。なお、ヘッド部に設ける吐出口の口径としは、0.5μm以上8μm以下、好ましくは1μm以上5μm以下、更に好ましくは2μm以上5μm以下とすることができる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例は、より一層の深い理解のために示される具体例であって、本発明は、これらの具体例に何ら限定されるものではない。なお、「%」は重量%を示す。
【0070】
(実施例1〜234及び比較例1〜12)
(サーマルインクジェット方式の原理に基づいた薬剤溶液の液滴化)
吐出用液体の作製手順は、予め適切な濃度の呼吸器系治療用薬剤化合物を精製水中に溶解させ、さらに攪拌しながら界面活性能を有する化合物を加えた後、各物質の濃度を所望の濃度になるように精製水を用いて定容した。
【0071】
レーザー回折式粒度分布測定装置(スプレーテック、マルバーン社製)を用いて粒径及び粒度分布を測定により確認したところ、シャープな粒度分布を持つ液滴として検出された。また、粒径も測定した。
【0072】
調製した吐出用液体を前記のヘッドカートリッジに充填し、吐出コントローラに接続した後、周波数20kHz、電圧12Vにて1秒間吐出を行い、3秒間インターバルを置いてから次の吐出を行った。これを200回繰り返し、吐出するかを目視にて確認した。100回以上吐出されたものを○、15回以上100回未満のものを△、15回未満のものを×として評価した。また、吐出用液体を吐出前後でHPLC分析を行い吐出用液体の組成の変化を確認した。(測定条件:装置;日本分光、カラム;YMC−Pack Diol−200、500×8.0mmID、溶離液;0.1MKH2PO4−K2HPO4(pH7.0)containing 0.2M NaCl、流量;0.7mL/min、温度;25℃、検出;UV at 215nm)
比較例として、純水、エタノール、各種薬剤溶液、及び本発明にかかる以外の物質を加えた吐出用液体を調製し、実施例と同様に吐出する実験を行った。なお、実施例、比較例で検討した処方、及び結果を以下の表1に列挙した。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
【表3】

【0076】
【表4】

【0077】
【表5】

【0078】
なお、医薬成分として、実施例1から26では臭化イプラトロピウム(0.03%)を、実施例27から52では臭化水素酸フェノテロール(0.15%)を、実施例53から78では硫酸サルブタモールナトリウム(1.00%)を用いている。また、実施例79から104ではクロモグリク酸ナトリウム(1.00%)を、実施例105から130ではアセチルシステイン(0.50%)を、実施例131から156ではプロピオン酸フルチカゾン(0.05%)を用いている。実施例157から182ではプロピオン酸ベクロメタゾン(0.05%)を、実施例183から208では塩酸イソプロテレノール(0.50%)を、実施例209から234では塩酸プロカテロール(0.01%)を用いている。
【0079】
また、界面活性能化合物として、各実施例群において以下の26種の化合物を個々に用いている。
塩化ベンザルコニウム;ラウロイルサルコシン;塩化ベンゼトニウム;ラウラミドプロピルベタイン;ココイルグルタミン酸;CHAPS;ドデシルベンセンスルホン酸;SDS;コカミドプロピルベタイン;アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン;ココイルグリシン;ココイルカルボキシメチルヒドロキシエチルエチレンジアミン;ラウリルアミノプロピオン酸;ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン;ラウリルベタイン;ココイルアラニン;ヤシ油脂肪酸アルギニン塩;コカミドプロピルヒドロキシスルホベタイン;コカミドプロピルジメチルアミンオキサイド;ラウリルヒドロキシスルホベタイン;ラウリルジメチルアミンオキサイド;ココイルアルギニンエチルピロリドンカルボン酸;アルキルオキシヒドロキシプロピルアルギニン塩酸塩;ピロリドンカルボン酸;tween20;tween80
なお、ピロリドンカルボン酸、tween20及びtween80のそれぞれの濃度は、実施例182までの該当実施例では5%であり、実施例206以降の該当実施例では1%である。その他の化合物は1%である。
【0080】
比較例では界面活性能を有する化合物を含有していないために、薬剤の種類、添加物の有無に関わらず全く又はほとんど吐出しなかった。比較例11および比較例12に挙げたグリシンベタインを添加した場合にはある程度は吐出されたが、十分な安定性はなかった。それに対し、実施例においては、吐出が正常に行われ、吐出が安定化していることがわかる。またHPLC分析の結果、実施例おいて吐出前後でピーク位置の変化やピーク面積の変化はなく、液組成の変化も認められなかった。
【0081】
(実施例235〜244)
(複数薬剤化合物の吐出)
薬剤化合物を複数混合して吐出用液体を調製した。これら吐出用液体を実施例1と同様の吐出実験により評価を行った。なお本実施例で検討した処方、及び結果を下記表2に列挙した。実施例についてHPLC分析を行った結果、吐出前後でピークチャートに変化はなく、液組成に変化は認められなかった。
【0082】
【表6】

【0083】
複数の薬剤化合物が混合される溶液についても吐出することが可能であった。
【0084】
(実施例245〜250、比較例13〜20)
(界面活性能を有する化合物とアルコールおよび緩衝液による相乗効果)
薬剤化合物と界面活性能を有する化合物を含有する溶液に、さらにエタノールを加えて吐出用液体を調製した。前記と同様に調製する液を緩衝液で調製し、これら吐出用液体を実施例1と同様の吐出実験により評価を行った。なお本実施例で検討した処方、及び結果を下記表3に列挙した。
【0085】
【表7】

【0086】
界面活性能を有する化合物にアルコールの共添加さらには緩衝液で調製することで少量の界面活性能を有する化合物濃度にて薬剤溶液を吐出することが可能であった。また、界面活性能を有する化合物単独では吐出しなかった濃度においても吐出できた。比較例にあげたように単純にアルコールのみを添加、あるいは緩衝液で調製しても吐出できない。実施例についてHPLC分析を行った結果、吐出前後でピークチャートに変化はなく、液組成に変化は認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】吸入器用ヘッドカートリッジユニットの概略説明図である。
【図2】吸入器斜視図である。
【図3】図2でアクセスカバーが開いた状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0088】
1 タンク
2 液流路
3 ヘッド部
4 配線
5 電気接続部
6 アクセスカバー
7 マウスピース
8 電源ボタン
9 吸入器本体
10 ヘッドカートリッジユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸器系疾患治療に用いるインクジェット原理に基づく薬剤吐出装置の吐出口から吐出させるための吐出用液体において、
呼吸器系疾患治療用の有効成分と、
下記式1:
【化1】

(上記式(1)中、Rは、炭素数が6以上30以下の置換または無置換の、飽和または不飽和の脂肪族鎖、または炭素数が6以上30以下の、飽和または不飽和の脂肪族誘導体鎖であり、Aは、アミノ酸、四級アンモニウム塩、ベタインおよびアミンオキシドから選ばれる骨格を少なくとも1つ有し、置換または無置換のカルボン酸基、置換または無置換のスルホン酸基、置換または無置換のアニオンとそのカウンターイオン、置換または無置換の四級アンモニウム基、あるいは置換または無置換のカチオンとそのカウンターイオンとして持ち合わせても良い)
で表される界面活性能を有する化合物、あるいは炭素数が6以上30以下の置換または無置換の、飽和または不飽和の脂肪族鎖を有するノニオン性の水溶性化合物と、
水を主とする液媒体と、
を含有することを特徴とする呼吸器系疾患治療用の吐出用液体。
【請求項2】
前記式(1)で表される界面活性能を有する化合物が、炭素数が6以上30以下の脂肪酸アシルベタイン、炭素数が6以上30以下の脂肪酸アシルアルキルベタイン、炭素数が6以上30以下の脂肪酸アシルアミノ酸、ベンザルコニウム塩、ベンゼトニウム塩、炭素数が6以上30以下の脂肪酸を有するポリオキシエチレンソルビタンアルキレート、炭素数が6以上30以下のアルキルのベンゼンスルホン酸、及び、炭素数が6以上30以下のアルキルスルホン酸からなる群から選択された少なくとも1種である請求項1に記載の吐出用液体。
【請求項3】
前記呼吸器系疾患治療用の有効成分が、クロモグリク酸、サルブタモール、イプラトロピウム、フェノテロール、イソプロテレノール、トリメトキノール、プロカテロール、サルメテロール、オキシトロピウム、プロピオン酸ベクロメタゾン、ブロムヘキシン、アセチルシステイン、ブデソニド、プロピオン酸フルチカゾン、これら化合物の誘導体、これらの化合物及び誘導体の塩、これらの化合物及び誘導体の2種以上の複合物からなる群から選択された少なくとも1種である請求項1または2に記載の吐出用液体。
【請求項4】
前記吐出装置の吐出口から熱エネルギーにより吐出される請求項1乃至3のいずれかに記載の吐出用液体。
【請求項5】
呼吸器系疾患治療用の薬剤吐出装置から請求項1乃至4のいずれかに記載の吐出用液体をインクジェット方式により吐出させることを特徴とする液体吐出方法。
【請求項6】
前記インクジェット方式が、熱エネルギーを利用したサーマルインクジェット方式である請求項5に記載の液体吐出方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の吐出用液体が収納されるタンクと、吐出用ヘッドと、を有することを特徴とする液体吐出用カートリッジ。
【請求項8】
前記吐出用ヘッドが、サーマルインクジェット方式により液体を吐出する請求項7に記載の液体吐出用カートリッジ。
【請求項9】
請求項7または8に記載のカートリッジと、該カートリッジの有するヘッドの液体吐出部から吐出する液体を利用者の吸入部位へ誘導するための流路及び開口部と、を有することを特徴とする呼吸器系疾患治療用の吐出装置。
【請求項10】
利用者の口からの吸入用である請求項9に記載の吐出装置。
【請求項11】
呼吸器系疾患治療用の有効成分を含む液体に吐出用エネルギーを付与して該液体を液滴化する方法であって、
流路中に充填された液体に吐出用エネルギーを付与して該流路に連通する吐出口から液滴として吐出する工程を有し、
前記液体が、請求項1〜4のいずれかに記載の吐出用液体であることを特徴とする液滴化方法。
【請求項12】
サーマルインクジェット方式の原理に基づいて液滴を吐出する請求項12に記載の液滴化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−254421(P2007−254421A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−83399(P2006−83399)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】