説明

吐水装置、及びその吐水装置を用いたシャワー装置

【課題】
吐水される流体力を効率よく利用して広い範囲に往復回動しながら吐水する吐水装置を提供する。
【解決手段】
入水部と、吐水部と、前記吐水部に前記入水部から流入された水を導く導水流路の途上に配置され、前記吐水部を往復回転運動させるための駆動部と、を備えた吐水装置であって、前記駆動部は、前記導水流路内を流れる水の力を受けて回転する羽根車と、前記羽根車の回転が伝達可能であり、前記羽根車と同方向に回転する第一歯車と、前記羽根車の回転が伝達可能であり、前記羽根車と逆方向に回転する第二歯車と、前記第一歯車および前記第二歯車と係合可能であり、前記第一歯車および前記第二歯車の回転力を前記吐水部に伝達するための第三歯車とを備え、前記第三歯車は、前記第一歯車と前記第二歯車からの回転力が同時に伝達されることなく交互に伝達力を受けて、往復回転運動することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐水しながら、吐水される流体力を利用して吐水部を往復回動させることで、広い範囲に吐水させる事ができる吐水装置、及び当該吐水装置を用いたシャワー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吐水される流体力を利用して吐水部を往復回動させる吐水装置の中で、特許文献1に記載の吐水装置においては、流体力を回転運動に変換する水車への入水方向を切替えることによって水車を正転、逆転させ、往復回動力と吐水とを提供する事ができる。
【0003】
【特許文献1】実開昭62−83560
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の吐水装置では以下の問題がある。すなわち、流体力を回転運動に変換する水車形状は、入水方向切替えによる正転、逆転に対応する必要があり、正転、逆転ともに効率よく流体力を回転運動に変換できない。
【0005】
本発明はかかる課題の認識に基づいてなされたものであり、その目的は吐水される流体力を効率よく利用して広い範囲に往復回動しながら吐水する吐水装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
水を入水するための入水部と、
水を吐水するための吐水部と、
前記吐水部に前記入水部から流入された水を導く導水流路の途上に配置され、前記吐水部を往復回転運動させるための駆動部と、を備えた吐水装置であって、
前記駆動部は、前記導水流路内を流れる水の力を受けて回転する羽根車と、
前記羽根車の回転が伝達可能であり、前記羽根車と同方向に回転する第一歯車と、
前記羽根車の回転が伝達可能であり、前記羽根車と逆方向に回転する第二歯車と、
前記第一歯車および前記第二歯車と係合可能であり、前記第一歯車および前記第二歯車の回転力を前記吐水部に伝達するための第三歯車と、を備え、
前記第三歯車は、前記第一歯車と前記第二歯車からの回転力が同時に伝達されることなく交互に伝達力を受けることにより、往復回転運動することを特徴とする
吐水装置が提供される。
【0007】
本発明の他の一態様によれば、前記吐水装置の前記吐水部先端にシャワーヘッドを装着したこと
を特徴とするシャワー装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吐水される流体力を効率よく利用して広い範囲に往復回動しながら吐水する吐水装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
先ず、本発明の第一の実施形態について説明する。
図1は本実施形態に掛かるシャワー装置100を例示する模式的斜視図である。図1は本実施形態に掛かるシャワー装置100が一般住宅の浴室空間に設置された例を示している。
【0010】
図1に示すように、本実施形態においては、浴室空間の壁面101に上水道(図示せず)と連通接続される入水部102を介して給水接続されるシャワー装置100が設置されている。このシャワー装置100における上水道との連通部が入水部102となる。
【0011】
シャワー装置100には上水道から水が供給される駆動部200と、この駆動部200から水が供給され、この水を吐水する吐水部103が設けられている。
吐水部103においては、駆動部200に連結され、駆動部200が吐水した水が流入される連結管104と、この連結管104の下流側に連結され、連結管104を介して供給された水を吐水するシャワーヘッド105とが設けられている。シャワーヘッド105は内部に流路を持ち、その一端が連結管104に連結され、その他端が封止されており、その側面には複数個の吐水孔106が形成されている。
駆動部200は供給された水の勢いを利用して、吐水部103を連結管104及びシャワーヘッド105の中心軸を回動軸として往復回動させる。
【0012】
なお、シャワー装置100に連通された上水道の上流側には、流調弁や、温調弁、給湯器(図示せず)が設けられており、シャワー装置100へ所望の温度の水が供給される。すなわち、本明細書において、「水」の温度には制約がなく、所謂「冷水」及び「湯」の双方を含むものとする。
【0013】
駆動部200の構成を具体的に説明するため図2、図3、図4を示す。図2は本実施形態に係る駆動部200の羽根車室を例示する平面図であり、図3は本実施形態に係る駆動部200の歯車室を例示する平面図であり、図4は本実施形態に係る駆動部200の羽根車、及び歯車を例示する模式的斜視図である。なお、便宜上、図2及び図3においては、歯車は図示を省略されており、図4においては、羽根車、歯車及び軸以外の構成要素は図示を省略しているが、それらの構成については本実施形態と同じである。
【0014】
本実施形態に係る駆動部200においては、円筒形の水密容器であるハウジング201が設けられている。ハウジング201は、底板201a、側板201b及び天板(図示せず)からなり、底板201aには羽根車室202が掘り込まれており、底板201aの上方が歯車室203となっている。羽根車室202と歯車室203とは、底板201aの上面に連結された中蓋204により仕切られており、中蓋204には、水を通すための開口部205が形成されている。また、側板201bには入水部102が取り付けられている。入水部102の内部は入水流路206となっており、羽根車室202に連通されている。
【0015】
羽根車室202内には、羽根車211が底板201aに軸支されて、回転自在に設けられている。羽根車211の回転軸が伸びる方向は、底板201aから天板に向かう方向である。以下、本実施例においては、この方向を「軸方向V」という。羽根車211の中心部からは、軸方向Vに沿って軸212が延出しており、軸212の先端部は歯車213となっている。なお、軸212は中蓋204を貫通しており、歯車213は歯車室203内に位置している。
【0016】
歯車室203には、後述するように複数個の歯車が収納されている。いずれの歯車も、中蓋204に回転自在に軸支されており、その回転軸は軸方向Vに延びている。これらの歯車は、歯車室203内で3層に分かれて配置されている。最下層である第1層には、前述の歯車213の他に、その直径が歯車213よりも大きく、相互に同形な1対の歯車214及び215が設けられている。歯車213は歯車215には接しておらず、歯車214のみに係合している。また、歯車214は歯車215に係合している。従って、歯車214と歯車215とは、相互に逆回転することになる。
【0017】
歯車214の中心からは軸方向Vに沿って軸216が延出しており、その先端部は歯車217となっている。歯車217の直径は歯車214の直径よりも小さい。同様に歯車215の中心からは、軸方向Vに沿って軸218が延出しており、その先端部は歯車219となっている。軸216と軸218とは相互に同形であり、歯車217と歯車219とは相互に同形であり、従って、歯車214、軸216及び歯車217が同軸に連結された部品と、歯車215、軸218及び歯車219が同軸に連結された部品とは、相互に同形である。
【0018】
歯車217及び219は、中間層である第2層に位置している。第2層には、これらの歯車217、及び219の他に、その直径がほぼ歯車214及び215の直径と等しく、相互に同形の1対の歯車220及び221が設けられている。そして、歯車217は歯車220に係合しており、歯車219は歯車221に係合している。従って、歯車220と歯車221とは、相互に逆回転する。
【0019】
歯車220の中心からは、軸方向Vに沿って軸222が延出しており、その先端部には、扇形の第一歯車223が取り付けられている。第一歯車223の半径は歯車220の半径よりもやや小さい。同様に、歯車221の中心からは、軸方向Vに沿って軸224が延出しており、その先端部には、扇形の第二歯車225が取り付けられている。軸222と軸224とは相互に同形であり、第二歯車225と第一歯車223とは相互に同形である。従って、歯車220、軸222及び扇形の第一歯車223が同軸に連結された部品と、歯車221、軸224及び扇形の第二歯車225が同軸に連結された部品とは、相互に同形である。
【0020】
ここで、第一歯車223と第二歯車225の中心角の合計は360度未満であり、例えば第一歯車223及び第二歯車225のそれぞれの中心角は約135度である。なお、扇形の第一歯車223及び第二歯車225の中心角は、駆動に求められる所望の回動角度に合わせて適宜設定すればよい。
【0021】
2つの扇形の第一歯車223及び第二歯車225は、最上層である第3層に位置している。第3層には、これら扇形の第一歯車223及び第二歯車225の他に、1個の円形の第三歯車226が設けられている。第三歯車226の半径は、扇形の第一歯車223及び第二歯車225の半径と等しい。ここで、扇形の第一歯車223及び第二歯車225の周縁には、第三歯車226と係合するための歯部227及び歯部228がそれぞれ設けられ、且つ、第三歯車226と係合しないための切欠き部229及び切欠き部230がそれぞれ設けられており、扇形の第一歯車223及び第二歯車225は、第三歯車226に交互に係合するように配置されている。ここで第一歯車223及び第二歯車225と第三歯車226の減速比は駆動に求められる所望の回動角度と合わせて設定すれば良い。
【0022】
第三歯車226の軸231は内部が中空となっており、その中心軸に沿って吐水流路232が形成されている。軸231における第1層に位置する部分には、吐水流路232を軸231の外部に連通する2つの導入口233が形成されている。一方、軸231の上端部は、ハウジング201の天板を貫通して、ハウジング201の外部に突出している。これにより、歯車室203は、吐水流路232を介して、駆動部200の外部に連通されている。
【0023】
次に本実施形態に係るシャワー装置100の概略動作について説明する。
まず、図示しない流調弁が開放されることにより入水部102から駆動部200へ水が供給される。駆動部200では供給された水の勢いを利用して吐水部103の連結管104及びシャワーヘッド105をその中心軸を回動軸として矢印Mで示すように回動させると共に、連結管104に対して水を吐出する。連結管104に吐出された水は、連結管104内を流通してシャワーヘッド105内に流入し、吐水孔106からシャワー吐水Wとして吐水する。このとき、シャワーヘッド105は往復回動運動しているため、吐水孔106からの吐水方向は一定の角度範囲内で反復的に変化する。この結果、浴室空間の広い範囲に対して水を吐水することができる。
【0024】
次に本実施形態に係る駆動部200の動作について、詳細説明する。
矢印W1に示すように、入水部102の入水流路206に水が供給されると、この水は羽根車室202内に羽根車211の接線方向に流入し、羽根車211を回転させる。図2〜4に示す例では、この回転方向は軸方向Vから見て反時計方向である。これにより、羽根車211に連結された歯車213が反時計方向に回転し、歯車213に係合された歯車214が時計方向に回転する。このとき、歯車214の回転速度は歯車213の回転速度よりも低くなり、トルクは大きくなる。また、歯車214に係合された歯車215が、歯車214と同じ回転速度で反時計方向に回転する。これにより、歯車214に連結された歯車217が時計方向に回転し、歯車215に連結された歯車219が反時計方向に回転する。
【0025】
そして、歯車217に係合された歯車220が反時計方向に回転し、歯車219に係合された歯車221が時計方向に回転する。このとき、歯車220及び222の回転速度は歯車217及び219の回転速度よりも低くなり、トルクは大きくなる。これにより、歯車220に連結された扇形の第一歯車223が反時計方向に回転し、歯車221に連結された扇形の第二歯車225が時計方向に回転する。
【0026】
そして、前述の如く、2つの扇形の第一歯車223及び第二歯車225は交互に第三歯車226に係合する。このため、第三歯車226は、第一歯車223が係合しているときは時計方向に回転し、第二歯車225が係合しているときには反時計方向に回転する。この結果、第三歯車226は往復回動運動を行う。これにより、第三歯車226に連結された軸231も、往復回動運動を行う。尚、羽根車211から第一歯車223までの回転速度の減速比と、羽根車211から第二歯車225までの回転速度の減速比は同じである。つまり、第三歯車226には交互に第一歯車223と第二歯車225の回動力が伝達されるが、第三歯車226の回転速度とトルクはそれぞれ略同じである。
【0027】
また、このとき、羽根車211を回転させた水は、中蓋204の開口部205を介して歯車室203内に流入し、さらに矢印W2に示すように導入口233を介して軸231内の吐水流路232内に流入し、矢印W3に示すように、軸231の上端部から吐水される。従って、軸231の吐水流路を図1に示す連結管104に連通することで、シャワー装置100は構成される。
【0028】
次に本実施形態に係るシャワー装置100の効果について説明する。
上述の如く、本実施形態によれば駆動部200が吐水部103を往復回動運動させつつ、吐水部103に対して水を供給することにより、吐水部103は、その吐水方向を変化させつつ、水を吐水することができる。これにより浴室空間内の広い範囲に対して吐水することができる。また、吐水方向の変化によって、入浴者は身体の広範囲に対してシャワー吐水刺激感の変化を楽しむことができる。
【0029】
更に本実施形態に係るシャワー装置100によれば入浴者の身体の広範囲に対して満遍なくシャワー吐水を浴びせることで、入浴者の身体を満遍なく温めることができる。
【0030】
また本実施形態に係るシャワー装置100によれば従来のハンドシャワーのように入浴者がシャワーヘッドを支えなくとも、入浴者の身体の広範囲に対して吐水することができ、入浴時の身体的負荷を軽減させつつ、温熱効果を得る事が可能となる。
【0031】
本実施形態によれば扇形の第一歯車223と扇形の第二歯車225の中心角の合計を360度未満とすることにより、第一歯車223及び226は第三歯車226に対して交互に係合が切替わる際に、十分な時間間隔を設ける事が出来、第一歯車223及び226が同時に係合することなく、安定した往復回動運動を提供する事ができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、電気などの機械動力を必要とせず、水などの勢いのみで円滑な往復反転運動が可能となり、電源の設置や感電あるいは漏電などの対策が不要となる。また、電磁ノイズなどの外乱にも影響されず円滑な動作が可能である。
【0033】
また、本実施形態によれば、流体力を受ける羽根車への入水方向を切替える必要がなく、羽根車の一方向の回転から駆動力を取り出すため、入水方向に最適化された羽根車形状によって、水などの勢いを往復反転運動力に効率よく変換することが可能である。
【0034】
また、本実施形態によれば、第一歯車223と第二歯車225の中心角を同角にし、且つ羽根車211から第一歯車223までの回転速度の減速比と、羽根車211から第二歯車225までの回転速度の減速比を同じにすることで、シャワーヘッド105は左右に等しく回動することが可能である。
【0035】
また、本実施形態において、第一歯車223と第二歯車225の中心角を同角にし、且つ羽根車211から第一歯車223までの回転速度の減速比と、羽根車211から第二歯車225までの回転速度の減速比を同じにし、且つ第一歯車223と第二歯車225に対して第三歯車226の減速比を2倍に設定することで、略90度の回動運動を往復させる事ができる。従って、浴室空間における2つの側壁面で構成されるコーナー部に本実施形態におけるシャワー装置を設置した場合でも浴室空間の広域に渡って往復回動運動するシャワー吐水を提供する事が可能となる。
【0036】
次に、駆動部の別実施形態について説明する。本実施形態を説明するために図5、図6図7を利用して説明する。図5は本実施形態に係る駆動部200内に形成される歯車室300の羽根車、及び歯車を例示する模式的斜視図である。図6は本実施形態に係る駆動部200の歯車室300を例示する平面図である。図7は本実施形態に係る駆動部200の歯車室300を例示する平面図である。尚、便宜上、図6及び図7においては、歯車は図示を省略されており、図5においては、羽根車、歯車及び軸以外の構成要素は図示を省略しているが、それらの構成については上述した実施形態と同じである。
【0037】
本実施形態にかかる歯車室300には、後述するように複数個の歯車が収納されている。いずれの歯車も、中蓋204に回転自在に軸支されており、その回転方向は軸方向Vに延びている。これらの歯車は歯車室300内で3層に分かれて配置されている。
【0038】
最下層である第1層には、羽根車211に軸方向Vに沿って延出している軸301によって連結された歯車302が突出している。歯車302の他にその直径が歯車302よりも大きな歯車303が設けられている。尚、この歯車302と歯車303は係合している。
【0039】
歯車303の中心からは、軸方向Vに沿って軸304が延出しており、その先端部は扇型の第四歯車305が取り付けられている。第四歯車305の半径は歯車303よりもやや小さく、その中心角は180度未満であり、例えば約135度である。なお、扇形の第四歯車305の中心角は、駆動に求められる所望の回動角度にあわせて適宜設定すればよい。
【0040】
扇形の第四歯車305は中間層である第2層に位置している。第2層には扇形の第四歯車305の他に、その半径が扇形の第四歯車305の半径とほぼ等しい歯車306が配置されており、相互に同形の歯車307及び歯車308が配置されている。ここで、扇形の第四歯車305の周縁には、歯車307及び、歯車306と係合するための歯部309が設けられ、且つ歯車307及び、歯車306と係合しないための切欠き部310が設けられており、歯車307と歯車306は扇形歯車5と交互に係合されるように配置されている。また、歯車306に歯車308は係合している。従って、歯車307と歯車308は相互に逆回転する。
【0041】
歯車307の中心からは、軸方向Vに沿って軸311が延出しており、その先端部には第一歯車312が取り付けられている。第一歯車312の直径は歯車307よりもやや小さい。また、同様に歯車308の中心からは、軸方向Vに沿って軸313が延出しており、その先端部には第二歯車314が取り付けられている。第二歯車314の直径は歯車308よりもやや小さい。
【0042】
2つの第一歯車312及び第二歯車314は、最上層である第3層に位置している。第3層には、これらの第一歯車312及び第二歯車314の他に、1個の円形の第三歯車315が設けられている。歯車315の直径は第一歯車312及び第二歯車314の直径よりも大きい。そして第三歯車315は第一歯車312及び第二歯車314のそれぞれに係合している。ここで第三歯車315と第四歯車305の減速比は駆動に求められる所望の回動角度に合わせて設定すれば良い。
【0043】
歯車315の軸316は内部が中空となっており、その中心軸に沿って吐水流路317が形成されている。軸316における第1層に位置する部分には、吐水流路317を軸316の外部に連通する2つの導入口318が形成されている。一方、軸316の上端部はハウジング201の天板を貫通してハウジング201の外部に突出している。これにより、歯車室300は、吐水流路317を介して、駆動部200の外部に連通されている。
【0044】
次に本実施形態に係る駆動部200の動作について説明する。
矢印W4に示すように、入水が供給されると、この水は羽根車室202内に羽根車211の接線方向に流入し、羽根車211を回転させる。図5に示す例では、この回転方向は軸方向Vからみて反時計方向である。これにより、羽根車211に連結された歯車302が反時計方向に回転し、歯車302に係合された歯車303が時計方向に回転する。このとき、歯車303の回転速度は歯車302の回転速度よりも低くなり、トルクは大きくなる。
【0045】
そして、歯車303に連結された扇形の第四歯車305は時計方向に回転する。前述の如く扇形の第四歯車305は交互に歯車307及び306に係合する。
【0046】
このため、扇形の第四歯車305が歯車307に係合しているときは、羽根車211で得た回転力を歯車307に伝達し、歯車307は反時計方向に回転する。この間、扇形の第四歯車305と歯車306は係合していない。歯車307に連結された第一歯車312は反時計方向に回転し、第一歯車312に係合された第三歯車315は時計方向に回転する。このとき、第三歯車315は第一歯車312の回転速度よりも遅くなり、トルクは大きくなる。第三歯車315の回転力は、第三歯車315に係合されている第二歯車314から、歯車306まで伝達されるものの、駆動部としての出力に対して何も影響しない(歯車306が空回りする)。
【0047】
また、扇形の第四歯車305が歯車306に係合しているときは、羽根車211で得た回転力を歯車306に伝達し、歯車306は反時計方向に回転する。この間、扇形の第四歯車305と歯車307は係合していない。歯車306の回転力は係合される歯車308に伝達され、歯車308は時計方向に回転する。歯車308の回転力は連結される第二歯車314を介して第三歯車315に伝達され、第三歯車315は反時計方向に回転する。
【0048】
この結果、第三歯車315は往復回動運動を行う。これにより、歯車315に連結された軸316も往復回動運動を行う。尚、羽根車211から第一歯車312までの回転速度の減速比と、羽根車211から第二歯車314までの回転速度の減速比は同じである。つまり、第三歯車315には交互に第一歯車312と第二歯車314の動力が伝達されるが、第三歯車315の回転速度とトルクはそれぞれ略同じである。
【0049】
また、このとき、羽根車211を回転させた水は、中蓋204の開口部205を介して歯車室300内に流入し、更に、矢印W5に示すように導入口318を介して軸316内の吐水流路317内に流入し、矢印W6に示すように軸316の上端部から吐水される。従って、軸316の吐水流路を図1に示す連結管104に連通することで、シャワー装置100は実現される。
【0050】
本実施形態においても、前述の第1の実施形態と同様に、駆動部200が吐水部103を往復回動運動させつつ、吐水部103に対して水を供給することにより、吐水部103は、その吐水方向を変化させつつ、水を吐水することができる。これにより浴室空間内の広い範囲に対して吐水することができる。また、吐水方向の変化によって、入浴者は身体の広範囲に対してシャワー吐水刺激感の変化を楽しむことができる。
【0051】
更に本実施形態に係るシャワー装置100によれば入浴者の身体の広範囲に対して満遍なくシャワー吐水を浴びせることで、入浴者の身体を満遍なく温めることができる。
【0052】
また本実施形態に係るシャワー装置100によれば従来のハンドシャワーのように入浴者がシャワーヘッドを支えなくとも、入浴者の身体の広範囲に対して吐水することができ、入浴時の身体的負荷を軽減させつつ、温熱効果を得る事が可能となる。
【0053】
本実施形態によれば扇形の第四歯車305の中心角を180度未満とすることにより、第四歯車305は歯車307及び306に対して交互に係合が切替わる際に、十分な時間間隔を設ける事が出来、歯車307及び306が同時に係合することなく、安定した往復回動運動を提供することができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、流体力を受ける羽根車への入水方向を切替える必要がなく、羽根車の一方向の回転から駆動力を取り出すため、入水方向に最適化された羽根車形状によって、水などの勢いを往復反転運動力に効率よく変換することが可能である。
【0055】
また、本実施形態によれば、羽根車211から第一歯車312までの回転速度の減速比と、羽根車211から第二歯車314までの回転速度の減速比は同じにすることで、シャワーヘッド105は左右に等しく回動することが可能である。
【0056】
尚、本実施形態において、図6に示すように扇形の第四歯車305と歯車307及び306のそれぞれの軸心331、332、333を、軸方向Vに垂直な面において仮想直線334上に並ぶように配置し、且つ第四歯車305の中心角を180度未満とすることで、第四歯車305の設計による最大往復回動量のシャワー装置100を提供する事が可能となる。
【0057】
尚、本実施形態において、図7に示すように扇形の第四歯車305に2つの歯部305a及び305bを設け、歯部305a及び305bの中心角をそれぞれ90度未満とし、歯部305aと歯部305bを第四歯車305の軸心341に対して対称な位置に配し、且つ軸方向Vに垂直な面において、第四歯車305の軸心341と歯車307の軸心342を結ぶ仮想直線343と、第四歯車305の軸心341と歯車308の軸心344を結ぶ仮想直線345が垂直に交わるように配置させることで、第四歯車305の一回転分の回動運動より駆動部200出力として2往復分の回動運動を取り出しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】第1の実施形態に掛かるシャワー装置100を例示する模式的斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係る駆動部200の羽根車室202を例示する平面図である。
【図3】第1の実施形態に係る駆動部200の歯車室203を例示する平面図である。
【図4】第1の実施形態に係る駆動部200の羽根車211、及び歯車列を例示する模式的斜視図である。
【図5】第2の実施形態に係る歯車室300の羽根車211、及び歯車列を例示する模式的斜視図である。
【図6】第2の実施形態に係る駆動部200の歯車室300を例示する平面図である。
【図7】第2の実施形態に係る駆動部200の歯車室300を例示する平面図である。
【符号の説明】
【0059】
100…シャワー装置
101…壁面
102…入水部
103…吐水部
104…連結管
105…シャワーヘッド
106…吐水孔

200…駆動部
201…ハウジング
202…羽根車室
203、300…歯車室
204…中蓋
205…開口部
206…入水流路
211…羽根車
212、216、218、222、224、231、301、304、311、313、316…軸
213、214、215、217、219、220、221、302、303、306、307、308、315…歯車
223、312…第一歯車
225、314…第二歯車
226…第三歯車
227、228、309、305a、305b…歯部
229、230、310、305c、305d…切欠き部
232、317…吐水流路
233、318…導入口
305…第四歯車
331、332、333、341、342、344…軸心
334、343、345…仮想直線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を入水するための入水部と、
水を吐水するための吐水部と、
前記吐水部に前記入水部から流入された水を導く導水流路の途上に配置され、前記吐水部を往復回転運動させるための駆動部と、を備えた吐水装置であって、
前記駆動部は、前記導水流路内を流れる水の力を受けて回転する羽根車と、
前記羽根車の回転が伝達可能であり、前記羽根車と同方向に回転する第一歯車と、
前記羽根車の回転が伝達可能であり、前記羽根車と逆方向に回転する第二歯車と、
前記第一歯車および前記第二歯車と係合可能であり、前記第一歯車および前記第二歯車の回転力を前記吐水部に伝達するための第三歯車と、を備え、
前記第三歯車は、前記第一歯車と前記第二歯車からの回転力が同時に伝達されることなく交互に伝達力を受けることにより、往復回転運動することを特徴とする
吐水装置。
【請求項2】
前記第三歯車に回転力を伝達するための前記第一歯車および前記第二歯車の周縁は、前記第三歯車に形成された歯と噛み合うことが可能な歯部と、前記第三歯車に形成された歯と噛み合わない切り欠き部と、を有していること
を特徴とする請求項1記載の吐水装置。
【請求項3】
前記第一歯車および前記第二歯車の歯部の角度合計が360度未満であることを特徴とする請求項2記載の吐水装置。
【請求項4】
前記羽根車の回転が伝達されると共に、前記第一歯車および前記第二歯車に回転力を伝達することが可能な第四歯車を備え、
前記第四歯車の周縁には前記第1歯車及び前記第2歯車に羽根車の回転を伝達するための歯部と、羽根車の回転を伝達しないための切欠き部を有し、
前記第四歯車から前記第三歯車へ伝達される動力が交互に前記第1歯車と前記第2歯車から伝達されることを特徴とする請求項1記載の吐水装置。
【請求項5】
前記第4歯車の歯部における角度合計が180度未満であることを特徴とする請求項4記載の吐水装置。
【請求項6】
前記導水流路内の水は、前記第三歯車の回転軸となり内部に通水流路が形成された軸筒体内を通って前記吐水部に導かれることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の吐水装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の吐水装置の前記吐水部先端にシャワーヘッドを装着したことを特徴とするシャワー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−246296(P2008−246296A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−87907(P2007−87907)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】