説明

吐水装置への洗浄水供給機構

【目的】 洗浄水を充分に泡沫化して吐水でき、用途に応じた最適な泡沫水が簡単に得られるようにすること。
【構成】 吐水端への洗浄水の配管系に設けた熱交換器5の上流側に、外気を吸引できる多孔質の吸引ヘッド8を設け、この吸引ヘッド8からの空気の流れ込みによって洗浄水を気液二相流とし、泡沫水として吐水端から吐出させる。
【効果】多孔質の吸引ヘッドから十分な量の空気が吸引されるので、洗浄水の泡沫化が良好に行われ、熱交換器内では気泡を含む乱流となるので熱伝達が促進され、熱効率も向上する。噴射洗浄水を充分に泡沫化したソフトな洗浄ができ、洗浄水の乱流化によって熱効率が向上し且つ沸騰音の低減も可能となる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、たとえば局部洗浄機能を備えた衛生洗浄装置等の吐水装置において、洗浄水を泡沫化し且つ静寂な洗浄水の吐水ができるようにした洗浄水の供給機構に関する。
【0002】
【従来の技術】局部洗浄機能を備えた衛生洗浄装置は、温水化した洗浄水をノズル装置によって局部に向けて噴射する構造が一般的であり、その例を図6に示す。
【0003】図において、便器本体50に衛生洗浄装置のケーシング1が固定され、このケーシング1に便座60及び便蓋61を開閉自在に取り付けている。ケーシング1の内部には、洗浄水を加熱するタンクや乾燥のための温風ファン及び制御部が内蔵され、各機能の操作はケーシング1の上面に設けた操作部1aによって行われる。そして、局部洗浄用のノズル本体51がケーシング1の中から出没自在に設けられ、これを洗浄位置に進出させた後に先端のノズルヘッドの噴出孔から洗浄水を噴射する。
【0004】図7はノズル本体51への洗浄水の供給系を示す概略図であり、開閉弁及び流量調整弁機能を持つバルブユニット52,給水を直接加熱して送り出すセラミックヒータやシーズヒータを利用した熱交換器53及び制御部54を備え、熱交換器53とノズル本体51との間には流量調整切替ユニット55を組み込んでいる。そして、ノズル本体51の駆動や洗浄位置の設定,熱交換器53による温水温度の設定等及びバルブユニット52や流量調整切替ユニット55の操作は、操作部1aによって行う。なお、流量調整切替ユニット55はバルブユニット52に一体に含むものとしたものもある。
【0005】ノズル本体51の先端のノズルヘッドは中空体であって、その上面に複数の噴出孔を開けたものである。この噴出孔は洗浄水の供給量が少ないときでも噴射水の勢いが弱くなり過ぎないようにするため、開口径が比較的小さい。このため、洗浄水の量を多くしたときには、局部に当たる噴射水の勢いもかなり強くなり、痛みを感じることも多い。
【0006】このような痛みを与えることを防ぐために、たとえば特開昭57−180727号公報に記載されているように、ノズルヘッドからの噴射水を泡沫化することが提案されている。これは、洗浄水の中に空気の泡を混入させることによって、洗浄水の勢いが強くても泡によるソフトタッチの洗浄を実現できるようにしたものである。そして、洗浄水の泡沫化のための構造は、従来の泡沫水栓等で広く利用されているように、流路内に小さな孔を開けた減圧板を組込み、この減圧板の下流側に外部から空気を吸い込む空気孔を開けるというものである。このような構造であれば、水が減圧板の孔を通過した後の流れの増速によって内圧が低下し、空気孔から外部の空気が吸引されて水の中に混入され、その結果流れが泡沫化される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところが、ノズルヘッドに開ける空気吸引用の空気孔の数は洗浄水の漏れの発生等の点から、むやみに多くできない。また、泡沫用の空気の吸引に際しては、ノズルヘッドの中を流れる洗浄水の流線に対して適正な位置に空気孔を設ける必要がある。
【0008】このように、ノズルヘッドに開けた空気孔を利用して洗浄水を泡沫化する構成では、空気孔の数や位置を適正にしていないと、充分な空気の吸引ができない。このため、空気の吸引量が不足することもあり、特に洗浄水の流量が小さい場合では内部流路の内圧の低下量も小さく、洗浄水の泡沫化が実現できなくなる。
【0009】また、衛生洗浄装置の分野だけでなく、洗浄水を泡沫化して使う水栓やその他の吐水装置でも同様であり、いずれも泡沫不良の問題が無視できなかった。
【0010】本発明において解決すべき課題は、洗浄水を充分に泡沫化して吐水でき、用途に応じた最適な泡沫水が簡単に得られるようにすることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、洗浄水を吐水する吐水部と、該吐水部に洗浄水を供給する配管系とを備えた吐水装置であって、前記配管系の内部流路または吐出部に外気を吸引可能な多孔質の吸引ヘッドを設けたことを特徴とする。
【0012】
【作用】配管系に備えた吸引ヘッドによって内部流路に空気を吸引するためには、たとえばその内部を通過する洗浄水の流速を上げて内圧を低下させ、これによって多孔質の吸引ヘッドから空気を流路中に引き込むことができる。また、吸引ヘッドに対してコンプレッサ等を付属し、これによって強制的に空気を内部流路に吹き込むようにすることもできる。このように吸引ヘッドを配管中に設ければ、その多孔質の表面積を適切にして空気の吸引量を増やすことが可能となる。
【0013】
【実施例】図1は本発明の衛生洗浄装置の内部構造の概略を示す斜視図である。
【0014】図において、従来例と同様に便器本体50に固定した衛生洗浄装置のケーシング1には、ノズル装置2への洗浄水の供給系が設けられる。この供給系には、ケーシング1の外部の建屋配管に直結される給水配管3,給水をノズル装置2側へ送り出すポンプ4及び給水を加熱する熱交換器5がそれぞれ組み込まれる。
【0015】ノズル装置2はケーシング1の内部に固定され熱交換器5からの供給管5aに接続したシリンダ2aと、このシリンダ2aに軸線方向へ移動可能に組み込んだノズル本体2bとを備え、ノズル本体2bの先端にノズルヘッド2cを設けたものである。そして、従来の衛生洗浄装置でも採用されているように、ノズル本体2bはシリンダ2aの中に流れ込む洗浄水の水圧によって進出し、洗浄位置に到達した時点でノズルヘッド2cから洗浄水を噴射可能な構造を持つ。また、洗浄水の供給が停止されてその水圧が減衰するにつれて、ノズル本体2bを収納位置に付勢するスプリング(図示せず)によって、ノズル本体2bはシリンダ2aの中の元の位置に戻り、洗浄水の噴射も停止される。
【0016】なお、ノズル本体2bの駆動は、洗浄水の水圧を利用するのにかえて、従来から知られているようなモータ等のアクチュエータを使用するようにしてもよい。そして、ノズルヘッド2cやノズル本体2bには、洗浄水を泡沫化するための空気孔や内部流れを増速させるための流路の絞り等は一切設ける必要はない。
【0017】ポンプ4は、建屋等の排水本管に接続した給水配管3からの水を適正圧力にして熱交換器5に水を送り込む。また、熱交換器5はその内部にセラミックまたはシーズ型のヒータ6を内蔵し、給水を直接加熱してノズル装置2に供給する。そして、ポンプ4の作動のオン,オフによって熱交換器5から加熱した洗浄水をノズル装置2へ供給及び停止させ、同時にノズル本体2bの洗浄位置までの進出及び止水後に元の収納位置に戻る動作を行わせる。
【0018】ポンプ4と熱交換器5との間には接続管7を組み込み、この接続管7の流路中に外部からの空気を吸引して給水を泡沫化する。そして、この泡沫化のために、接続管7の中途には吸引ヘッド8が組み込まれる。この吸引ヘッド8は、内部を通過する水の圧力程度では外に水が漏れ出ず、且つ内部流路の圧力が大気圧よりも低いときには外部からの空気を通過させることができる多孔質体を素材としてパイプ状に形成したものである。この多孔質体としては、たとえばセラミック等が利用できる。
【0019】図2はノズル装置2までの洗浄水の流れの系を示す概略図であり、ポンプ4と熱交換器5との間の接続管7に吸引ヘッド8を組み込んでいる。この吸引ヘッド8による内部流路への空気の吸い込みは、接続管7の中を通過する水の流れの増速に基づく内圧低下を利用するか、又は強制的に外部から空気を送り込むものとする。
【0020】図3は内圧低下によるエジェクタ効果を利用する場合の吸引ヘッド8及びその近傍を示す要部の断面図である。
【0021】吸引ヘッド8はセラミックを素材とした円筒状であり、その外部にはハウジング9を一体化して環状縦断面のチャンバ9aを吸引ヘッド8の周りに形成している。また、ハウジング9には水の流れ方向に空気を吸引する姿勢に傾けたスリーブ9bを外側に突き出している。そして、図示の例では、吸引ヘッド8の中を通過する水の流速を上げて内圧を下げるため、左右の接続管7に比べて吸引ヘッド8の流路面積が小さくなるようにスロートを持たせている。
【0022】なお、図示の例では、洗浄水の経路をポンプ4,吸引ヘッド8及び熱交換器5の順としているが、ポンプ4による吐水圧を利用するのに代えて、建屋の給水配管の給水圧によって直接洗浄水を送り込む方式としてもよい。この場合には、ポンプ4に代えて、操作部1aによって操作可能な電磁弁式のバルブユニットを設け、このバルブユニットに開閉弁及び流量調整弁等を組み込む。このような水道直結式のものであっても、バルブユニットからノズル装置2までの経路は図示の例のものと変わらず、後述するように吐水する前の段階で洗浄水を吸引ヘッド8によって泡沫化することができる。
【0023】以上の構成において、操作部1aの洗浄スイッチ(図示せず)を操作すると、ポンプ4(水道直結式の場合ではポンプ4に代えて設けたバルブユニット)が作動して水が接続管7から熱交換器5を経てノズル装置2のシリンダ2aの中に供給される。そして、シリンダ2aの中に入り込む洗浄水の水圧によってノズル本体2bがその洗浄位置まで進出し、その後ノズルヘッド2cから洗浄水が噴射される。
【0024】この洗浄水の流れに対して、接続管7に組み込んだ吸引ヘッド8はスロートとなっているので、この部分を流れる洗浄水の流速は大きくなり、流路内の内圧は低下する。このため、多孔質体の吸引ヘッド8から空気が吸い込まれ、この空気が内部を通過して行く洗浄水に混合される。したがって、熱交換器5に入る前に洗浄水は気泡を含んだ気液二相流となり、このままの状態で熱交換器5で加熱され、泡沫のままノズルヘッド2cから噴射される。
【0025】このように、洗浄水が熱交換器5に入る前で気液二相流化されると、沸騰伝熱による熱交換器5のヒータ6がたとえばセラミック製の場合では、流れが泡沫を含むものとして乱流化される。このため、気泡を含まない通常の洗浄水をそのまま流し込む場合に比べると、熱伝達が促進され洗浄水の沸騰までの時間が短縮される。したがって、熱交換効率の向上だけでなく、洗浄水を所定温度まで加熱する時間が短くなり、加熱時の沸騰音が発生する時間幅も小さくなる。
【0026】また、熱交換器5を出た加熱された洗浄水は気液二相流のままノズル装置2に供給され、そのまま泡沫を含んだ洗浄水としてノズルヘッド2cから噴射される。このため、泡沫を含まない洗浄水に比べると、ソフトタッチの洗浄が快適に行える。そして、泡沫化のための空気は、吸引ヘッド8から吸い込まれるので、吸引ヘッド8を適当な大きさにさえしておけば、空気の量を充分に確保できる。このため、単にノズルヘッド2cに泡沫化機構を備える場合に比べると格段に空気量を増やすことができ、泡沫度を大きくした柔らかい洗浄が可能となる。すなわち、吸引ヘッド8は洗浄水の流路そのものなので、流路とは別に空気を吸引する構造を必要としない。そして、吸引ヘッド8の大きさは自由に変更でき、洗浄水の流量に対して充分な空気量が得られるようにすることも容易である。
【0027】図4及び図5は別の例を示すものであり、これは吸引ヘッド8へ強制的に空気を吹き込むようにしたものである。
【0028】図5に示すように、セラミックを素材とした円筒状の吸引ヘッド8がその内径を接続管7と等しくして組み込まれている。吸引ヘッド8の肉厚は前記の例のものよりも大きく、その外部をハウジング10によって覆い、内部に空気流路10aを形成している。そして、ハウジング10にはコンプレッサ11を接続し、これを作動させることによって外部の空気を空気流路10aに吹き込む。なお、前述のように水道直結式とする場合では、ポンプ4に代えてバルブユニットを組み込めばよい。
【0029】この構成では、コンプレッサ11によって空気を吸引ヘッド8から内部流路に強制的に送り込むので、洗浄水の流速が低くて内部流路の内圧が低下しない場合でも、空気を確実に送り込める。そして、洗浄水の流量に比例するようにコンプレッサ11からの空気の流量を調整すれば、ボイド率をほぼ一様に設定できる。このため、洗浄水の流量に関係なく泡沫度がほぼ等しい気液二相流の洗浄水として供給できる。したがって、エジェクタ効果のみを利用するものでは、流量が小さく内部流速が上がらないと吸引空気の量も小さくなって泡沫度が高くならないが、コンプレッサ11を組み込むことにより、このような障害が解消される。
【0030】また、吸引ヘッド8を通過する洗浄水の流速を上げないでも、コンプレッサ11による空気の供給が可能なので、吸引ヘッド8を図示のような単純な円筒形とするだけで済む。このため、スロート等を持たせる必要がなく、吸引ヘッド8の加工や接続管7への組込みも簡単になる。また、肉厚も大きくできるので、セラミック素材の吸引ヘッド8の強度も充分に保たれ、耐久性の面でも好ましい。
【0031】更に、前記の実施例と同様に、沸騰伝熱式の熱交換器5に入る前に洗浄水を気液二相流化するので、熱交換器5内では含まれた気泡によって流れが乱流化され、熱伝達が促進される。このため、熱効率も向上するほか、沸騰までの時間も短縮されるので沸騰音の低減も図られる。
【0032】なお、実施例では局部洗浄用の衛生洗浄装置について説明したが、これ以外に洗面化粧台,洗面装置及びその他の洗浄水を使う設備についても、本発明の洗浄水供給機構を適用できることは無論である。
【0033】
【発明の効果】本発明では、洗浄水の配管系に組み込んだ多孔質の吸引ヘッドによって空気を洗浄水の中に混合させて泡沫化させるので、従来のようにノズルヘッドの中に泡沫化機構を備える場合に比べて充分な空気量が得られ、泡沫度の高い洗浄水が得られると同時に快適な洗浄が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の洗浄水供給機構を衛生洗浄装置に適用した場合の要部を示す概略斜視図である。
【図2】吐水装置としてのノズル装置までの洗浄水の供給系の概略図である。
【図3】エジェクタ効果によって洗浄水流路に空気を吸引する構造例を示す要部の断面図である。
【図4】コンプレッサによって強制的に空気を洗浄水流路に送り込む洗浄水の供給系を示す概略図である。
【図5】図4の場合のコンプレッサを用いた空気供給の場合の吸引ヘッド部分の概略断面図である。
【図6】衛生洗浄装置を便器に据え付けた従来例の斜視図である。
【図7】従来例における洗浄水のノズル装置までの供給系を示す概略図である。
【符号の説明】
1 ケーシング
2 ノズル装置(吐水装置)
3 給水配管
4 ポンプ
5 熱交換器
6 ヒータ
7 接続管
8 吸引ヘッド
9 ハウジング
10 ハウジング
11 コンプレッサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 洗浄水を吐水する吐水部と、該吐水部に洗浄水を供給する配管系とを備えた吐水装置であって、前記配管系の内部流路または吐出部に外気を吸引可能な多孔質の吸引ヘッドを設けたことを特徴とする吐水装置への洗浄水供給機構。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図4】
image rotate


【図7】
image rotate


【公開番号】特開平5−33377
【公開日】平成5年(1993)2月9日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−192084
【出願日】平成3年(1991)7月31日
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)