説明

吐水装置

【課題】使用者の好みなどに応じて回動動作の角度範囲を変えることができる吐水装置を提供する。
【解決手段】吐水装置100において、ハウジング102の内部に扇形の空間を形成し、この扇形の空間内に、中子を設ける。中子は、吐水筒体180を中心として回動可能に設ける。そして、2つの入水口112、114に水を供給することにより、中子に往復回動運動させ、これにより、吐水筒体180を回動させて、吐水角度を所定の角度範囲内で反復的に変化させる。このとき、吐水装置100に終端調節手段200を設けることにより、中子の回動域を規制する。これにより、吐水角度範囲を任意に調節することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐水装置に関し、特に、シャワーノズルや散水ノズルなどの吐水方向を反復的に変化させる自動往復動作を可能とした吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リラクゼーションや美容健康増進などを目的としたシャワーシステムや吐水・噴霧システムのニーズが高まっている。これらの用途においては、例えば、旋回流などを利用して数10ヘルツ以上の比較的高速で水流を変調させることにより、マッサージ効果などを促進するアプローチがある。また一方、例えば数ヘルツ以下の比較的ゆっくりとした速度でシャワーノズルなどの吐水位置や吐水方向を反復的に変化させると、例えば人体の所定範囲に均一に吐水を噴射してリラクゼーション効果などを促進することが可能である。
【0003】
同様のニーズは、民生用機器、産業用途あるいは農林用途などにおいても広く存在し、洗浄、リンス、冷却、加湿、前処理、育成などの多種多様な目的のために、ゆっくりとした往復動作が必要とされている。
【0004】
往復動作のために、モータやソレノイドなどの電動手段を用いることも可能であるが、浴室などで吐水させるシステムに搭載するためには、電源の確保や、感電や漏電などに対する対策が必要とされ、コストや信頼性の点でも解決すべき課題が多い。
【0005】
これに対して、往復動作を水力により実現できれば、電気や潤滑オイルなどが不要となり、初期コスト、ランニングコスト、信頼性、メンテナンス性などの多くの観点で、改善が期待できる。
【0006】
上下往復動作を可能としたシャワー装置として、ピストンと4方弁とを組み合わせたものが開示されている(特許文献1)。このシャワー装置は、シリンダー内に設けられたピストンを水圧により上下動作させ、ワイヤーを介してシャワーヘッドを上下に移動させる。ピストンの上下動作の切替は、シリンダーに対する給水流路を4方弁により切り替えることにより実施される。
【0007】
しかし、このシャワー装置の場合、シリンダーと4方弁とが別体として設けられ、システムが大型且つ複雑である。また、流路が長くなるために、圧力損失が大きく、吐水力が低下するという点でも改善の余地がある。
【0008】
【特許文献1】特開平2−134119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、この問題に対して、新規な発想に基づき、コンパクト且つシンプルな構造で、水力を利用した反復的な回動動作を可能にした吐水装置を発明した。
一方、このように反復的な回動運動を可能にした吐水装置の実際の使用態様を考えると、例えば、シャワーや水流マッサージなどを実施する時、使用者の体格や好みになど応じて回動動作の角度範囲を変えることができると、使用者の満足感が向上する。
また、このような吐水装置を工場などの洗浄装置として使用する場合には、被洗浄物である製品の大きさに応じて、吐水角度範囲を調整できると、無駄な吐水が減り、効率のよい洗浄及び高い節水効果を得ることができる。
【0010】
本発明はかかる課題の認識に基づいてなされたものであり、その目的は、使用者の好みなどに応じて回動動作の角度範囲を変えることができる吐水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によれば、
内部に扇状の空間を有するハウジングと、
前記扇状の空間を第1及び第2の圧力室に分割しつつ前記空間内を回動可能とされ、内部に中子内流路を有する中子と、
前記中子内流路に連通し前記ハウジングの外側に至る吐水流路を有する吐水筒体と、
前記第1の圧力室に流体を導入する第1の入水口と、
前記第2の圧力室に流体を導入する第2の入水口と、
前記第1の圧力室から前記中子内流路に流体を導入する第1の導入口と、
前記第2の圧力室から前記中子内流路に流体を導入する第2の導入口と、
前記第1及び第2の導入口の開度を変化させる弁体と、
前記中子がその回動域における前記第1の圧力室側の端部に到達したときに、前記第1の圧力室内の圧力を前記第2の圧力室内の圧力よりも高くし、前記中子がその回動域における前記第2の圧力室側の端部に到達したときに、前記第2の圧力室内の圧力を前記第1の圧力室内の圧力よりも高くするように、前記弁体を作動させて前記第1及び第2の導入口の開度を変更する制御手段と、
前記中子の回動域を規制し、規制された回動域の端部において前記制御手段を作動させて前記第1及び第2の導入口の開度を変更させる終端調節手段と、
を備えたことを特徴とする吐水装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コンパクト且つシンプルな構造で、水力を利用した反復的な回動動作を可能とし、さらに使用者の好みに応じて回動動作の角度範囲を変えることができる吐水装置を提供することができ、産業上のメリットは多大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る吐水装置を例示する模式図である。
【0014】
本実施形態にかかる吐水装置100は、ハウジング102と、ハウジング102から突出した吐水筒体180と、を有する。そして、ハウジング102における吐水筒体180が突出している面に対して直交する面には、終端調節手段200が設けられている。そして、吐水筒体180の中には吐水流路182が設けられ、吐水筒体180の先端から吐水が得られる。ハウジング102内には扇状のハウジング空間が形成されており、このハウジング空間内に、中子(なかご)が回動運動可能に設けられている。吐水筒体180は、この中子の回動中心から中子の回動軸に沿って引き出されている。
【0015】
ハウジング102には、吐水筒体180が突出している面に対して直交する一面に、2つの入水口112、114が設けられている。これら入水口112、114には、給水管700から入水経路が並列に接続されている。即ち、給水管700は、太さ及び長さが等しい2本の支管に二叉に分岐しており、これらの支管はそれぞれ入水口112及び114に接続されている。また、給水管700における分岐位置よりも上流側には、給水バルブ600が設けられている。給水バルブ600は、給水管700内を流通する流体の流量を調整するものである。給水管700に設けられた給水バルブ600を開くと、給水配管700から水などの流体Wがこれら入水口112、114にほぼ同圧に供給される。これにより、矢印Mで表したように、吐水筒体180をその中心軸を回動軸として往復回動運動をさせながら、吐水流路182から吐水を吐出させることができる。従って、ハウジング102を固定し、吐水筒体180の先端にノズルやシャワーヘッドなどを設ければ、吐水方向が反復的に変化する吐水装置として利用できる。
【0016】
そして、本実施形態においては、終端調節手段200を設けることにより、吐水筒体180の往復運動のストロークを調整することができる。なお、図1に示す例では、終端調節手段200は、扇状のハウジング空間の片側、すなわち、ハウジング102における入水口114側の領域にしか設けられていないが、後で具体例を挙げて説明するように、終端調節手段200は、扇状のハウジング空間の両側、すなわち、入水口114側の領域及び入水口112側の領域の双方に設けられていてもよい。
【0017】
次に、本実施形態に係る吐水装置を実現するための具体例について説明する。
先ず、第1の具体例について説明する。
本具体例は、終端調節手段200として、ハウジングの側壁からハウジング空間内に突出可能に設けられた可変終端201が設けられた例である。また、この可変終端は、ハウジング102の一方の入水口側、すなわち、扇状のハウジング空間の片側のみに設けられている。
【0018】
図2は、第1の具体例の吐水装置を例示する斜視図であり、
図3は、第1の具体例の吐水装置の斜視断面図であり、
図4(a)は、第1の具体例の吐水装置を底面側から見た斜視図であり、(b)はその斜視断面図であり、
図5は、第1の具体例の吐水装置を側方から見た断面図であり、
図6は、図5に示すA−A’線による断面図である。
図7は、第1の具体例の吐水装置における主弁及びスライドバーを例示する斜視図である。
また、図8(a)及び(b)は、第1の具体例の吐水装置における終端調節手段の動作を示す断面図であり、(a)は終端調節手段としての可変終端がハウジング空間内に突出していない状態を示し、(b)は、可変終端がハウジング空間内に突出している状態を示す。
なお、図2乃至図7においては、説明の便宜上、可変終端の図示を省略している。
【0019】
本具体例に係る吐水装置100においては、ハウジング102が設けられている。ハウジング102は、枠状のハウジング本体103の両側に、ハウジング蓋104及び105がそれぞれ連結されて、内部が中空になるように形成されている。また、ハウジング102の一方の側、すなわち、ハウジング蓋104が配置されている側からは、ハウジング蓋104を貫通して吐水筒体180が突出している。吐水筒体180は、内部に吐水流路182を有する中空構造となっており、その先端は開口しており、吐水口となっている。後述するように、ハウジング102に設けられた入水口112、114に水を導入すると、吐水筒体180がその中心軸を回動軸として、矢印Mの方向に往復回動運動する。
【0020】
次に、吐水装置100の内部構造について説明する。
図3乃至図6に示すように、ハウジング本体103及びハウジング蓋104、105により形成される扇状のハウジング空間に、中子本体121と中子蓋122とからなる中子120が吐水筒体180を中心軸として回動可能に収容されている。すなわち、中子120は、ハウジング102内を貫通する吐水筒体180に連結され、扇状のハウジング空間内を第1の圧力室116と第2の圧力室118とに分割して回動する。なお、図6においては、中子120から見て第1の圧力室116が図示の向かって右側に配置され、第2の圧力室118が図示の向かって左側に配置されている。これに基づき、以下、説明の便宜上、中子120から見て圧力室116側を単に「右側」ともいい、圧力室118側を単に「左側」ともいう。
【0021】
これら圧力室116、118のそれぞれには、入水口112、114からそれぞれ水が導入される。中子120とハウジング102の内壁との摺動部には、液密を維持しつつ摺動を円滑にするためのシール127が設けられている。また、吐水筒体180とハウジング102との摺動部にも、同様の目的でシール126が設けられている。これらシール127、126の材料も、液密を維持しつつ摺動を円滑にするものであり、例えば、テフロン(登録商標)、NBR(ニトリルゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)やPOM(ポリアセタール)などを用いることができる。なお、ここでいう「液密」とは、第1の圧力室116及び第2の圧力室118(以下、「左右の圧力室」ともいう)間に圧力差を生じさせるに足る状態を確保できればよい。
【0022】
次に、中子120の構造について説明する。
中子120の内部には、中子内流路124が形成されており、この中子内流路124は、吐水筒体180に設けられた吐水流路182に連通している。また、中子120には、中子内流路124と圧力室116、118とを連通させる導入口132、134が設けられている。そして、この中子内流路124を横断するように、弁体としての主弁142、144が設けられている。主弁144が中子120から離れる方向に移動すると、導入口134が開かれ、主弁142が中子120から離れる方向に移動すると、導入口132が開かれる。
【0023】
図7に示すように、左右の主弁142、144は連結棒149により連結され、中子本体121及び中子蓋122に設けられた導入口132、134を貫通して左右に移動可能に設置されている。つまり、主弁142、144は、中子120に対して、所定のストロークで左右に移動可能に設置されている。主弁142、144にはリブ143が形成されており、主弁142、144が導入口132、134に対して同軸に移動するように構成されている。主弁142、144がそれぞれ中子120から離れる方向に移動すると、これらリブ143の間に設けられている溝部145が導入口132、134の開口部となり、水路を形成する。
【0024】
また、吐水装置100には、主弁142、144の動作を制御する制御手段が設けられている。後述するように、制御手段は、スライドバー146、148及び板ばね160により構成されている。制御手段は、中子120がその回動域における圧力室116側の端部に到達したときに、圧力室116内の圧力を圧力室118内の圧力よりも高くし、中子120がその回動域における圧力室118側の端部に到達したときに、圧力室118内の圧力を圧力室116内の圧力よりも高くするように、主弁142及び144を作動させて導入口132及び134の開度を変更するものである。すなわち、圧力室116内の圧力と圧力室118内の圧力とが等しくなる状態を挟んで、圧力室116及び118内の圧力の大小関係が逆転するように、導入口132及び134の開度を変更させるものである。
【0025】
より具体的には、制御手段は、中子120がその回動域における圧力室116側の端部に到達したときに、圧力室116から中子内流路124までの流路抵抗が、圧力室118から中子内流路124までの流路抵抗よりも大きくなるように、主弁142及び144を作動させて導入口132及び134の開度を変更し、中子120がその回動域における圧力室118側の端部に到達したときに、圧力室118から中子内流路124までの流路抵抗が、圧力室116から中子内流路124までの流路抵抗よりも大きくなるように、主弁142及び144を作動させて導入口132及び134の開度を変更する。
【0026】
なお、本明細書において、導入口の「開度」とは、導入口と弁体との間を流れる水の流路抵抗を決定するパラメータであるものとする。例えば、図6に表した状態においては、導入口132と主弁142との間に形成される流路の流路抵抗は、導入口134と主弁144との間に形成される流路の流路抵抗よりも大きい。この場合、導入口132の開度は、導入口134の開度よりも小さいものとする。また、中子120の回動域とは、吐水装置100を作動させたときに中子120が実際に回動する空間をいう。また、回動域の端部とは、中子120の回動方向における端部をいう。
【0027】
次に、制御手段の具体的な構成について説明する。上述の如く、制御手段は、スライドバー146、148及び板ばね160により構成されている。板ばね160は、その両端が相互に近づく方向に押圧された状態で中子本体121に支持されており、その中央部が圧力室116側(右側)に凸になるように湾曲した状態及び圧力室118側(左側)に凸になるように湾曲した状態の2つの状態が安定状態となる。また、スライドバー146、148は、主弁142、144を同軸状に貫通し、板ばね160を挟んで相互に連結されている。スライドバー146、148の長さは主弁142、144の長さよりも長く、このため、スライドバー146、148は、主弁142、144の動作ストロークよりも長いストロークで左右に移動可能に設置されている。
【0028】
導入口132、134の開度を変化させる主弁142、144の動作は、スライドバー146、148により決定される。すなわち、図3及び図5に示すように、左右のスライドバー146、148は圧縮された板ばね160をはさんで連結され、板ばね160の湾曲方向に応じて右端あるいは左端に向けた付勢力を受ける。これにより、スライドバー146、148は、板ばね160に付勢されて中子に対して相対的に移動し、このスライドバー146、148の移動により、主弁142、144も中子に対して相対的に移動し、導入口132、134を全開状態あるいは全閉状態のいずれかに択一的に制御する。
【0029】
そして、図8(a)及び(b)に示すように、吐水装置100には、可変終端201が設けられている。可変終端201は、仮想的な円203の一部に沿って延びる湾曲した柱状の形状を有しており、ハウジング102の側壁に挿通されており、この側壁に対してスライドすることにより、円203に沿って移動可能とされている。これにより、図8(a)に示すように、可変終端201がハウジング102から外側に延出し、ハウジング空間内に突出していない「外位置」と、図8(b)に示すように、可変終端201がハウジング空間内に押し込まれ、ハウジング空間内に突出した「内位置」との間で、可変終端201の位置を任意に選択することができる。
【0030】
また、円203の中心は、中子120の回動中心、すなわち、吐水筒体180の中心と一致しており、円203は、スライドバー146、148の先端部を通過する。これにより、中子120がその回動域における可変終端201側の端部に到達したときに、スライドバー146の先端が可変終端201の先端に当接する。
【0031】
更に、可変終端201におけるスライドバーと当接する端面は、図8(a)に示すように、可変終端201が「外位置」にあるときに、ハウジング102の内壁面と同一平面をなすように傾斜している。これにより、スライドバー146の先端が可変終端201の先端に当接するときに、可変終端201の端面がスライドバーが延びる方向に対してほぼ垂直となる。すなわち、当接角度がほぼ垂直になる。また、このような構造とすることで、可変終端201が「内位置」にあるときにも、可変終端201とスライドバー146とをほぼ垂直に当接させることができる。
【0032】
更にまた、ハウジング102の側壁における可変終端201に接する部分には、可変終端201の摺動性を確保しつつ、液密性を担保するために、シール機構204が設けられている。シール機構204としては、例えば、ゴムや樹脂などからなるO(オー)リングなどを設けることができる。ただし、シール機構204は必要に応じて設ければよく、例えば、ハウジング102と可変終端201との間に設ける摺動手段などによりハウジング102内の液密が確保されるのであれば、特に設ける必要はない。
【0033】
更にまた、可変終端201には、可変終端201がハウジング102の内側又は外側に脱落しないようなロック機構(図示せず)が設けられている。また、可変終端201には、使用者による可変終端201の位置の調節を容易にするための把持機構(図示せず)が設けられている。ロック機構及び把持機構は、1つの突起部により兼用されていてもよい。
【0034】
以下、本具体例の吐水装置の動作について説明する。
先ず、本具体例の吐水装置における可変終端以外の部分の動作について説明する。
図9(a)乃至(c)は、本具体例の吐水装置の動作を説明するための模式図である。なお、図9(a)乃至(c)においては、便宜上、可変終端は図示を省略している。
【0035】
まず、図9(a)は、スライドバー146、148が板ばね160の作用により向かって左側に向けて付勢された状態を表す。この時、主弁142、144もスライドバー146により左側に向けて付勢されるので、導入口132は閉じ、導入口134が開いた状態が形成される。
【0036】
この状態で入水口112、114にほぼ同圧に水を供給すると、矢印Aで表したように入水口114から圧力室118に導入された水は、矢印Cで表したように導入口134から中子内流路124に流入し、矢印Dで表したように吐水流路182を介して流出する。これに対して、矢印Bで表したように入水口112から圧力室116に導入された水は、導入口132が閉じているために流出経路がない。このため、圧力室116の圧力は圧力室118の圧力よりも高くなる。つまり、導入口132、134の開度に差を設けることにより流路抵抗に差が生じ圧力差が生ずる。その結果として、中子120は矢印Mの方向に押されて回動する。
【0037】
なお、中子120が矢印Mの方向に回動すると、圧力室116の容積が増大し、その分だけ圧力室118の容積が縮小する。このため、矢印Bの経路による圧力室116への水の流入量の分、圧力室118内の水も押し出され、流路182から流出する水の吐水量に含まれることとなる。
【0038】
そしてさらに中子120が回動を続け、スライドバー148がハウジング102の内壁に当接し、中子120に対して押されると、板ばね160の湾曲方向が反転し、図9(b)に表したように、スライドバー146、148は、反対側に向けて付勢される。すると、スライドバー148が主弁144を押すことにより、主弁142、144も右側(向かって時計回り方向)に移動する。すなわち、導入口132が開き、導入口134が閉じる。
【0039】
図9(b)に表した状態においては、矢印Bで表したように入水口112から圧力室116に導入された水は、矢印Cで表したように、導入口132から中子内流路124に流入し、矢印Dで表したように吐水流路182を介して流出する。これに対して、矢印Aで表したように、入水口114から圧力室118に導入された水は、導入口134が閉じているために流出経路がない。その結果として、圧力室116、118に圧力差が生じ、中子120は矢印Mで表したように右側に向けて回動を開始する。
【0040】
中子120がさらに回動すると、図9(c)に表したように、スライドバー146がハウジング102の内壁に当接する位置まで移動する。この状態からさらに中子120が回動し、スライドバー146が中子120に対して押されることにより、板ばね160の湾曲方向が反転して、反対側に付勢される。すると、図9(a)に表した状態と同様に、導入口132が閉じて導入口134が開いた状態となり、中子120は左側に向けて回動を開始する。
【0041】
次に、本具体例における制御手段の作用についてさらに詳しく説明する。
図10(a)乃至(d)は、本具体例における制御手段の動作を説明するための模式図である。
すなわち、図10(a)は、板ばね160が向かって右側が凸になるように湾曲してスライドバー146、148をこの方向に付勢している状態を表す。この時、主弁142により導入口132は閉じ、主弁144により導入口134は開いた状態とされる。
【0042】
この状態で中子120が向かって右側に回動していくと、同図(a)に表したようにハウジング102の内壁にスライドバー148が当接する。中子120には圧力差が働いているため、スライドバー148をハウジング内壁に当接した状態で、中子120はさらに右に回動し、図10(b)に表した状態になる。すなわち、板ばね160の付勢力に打ち勝って中子120とスライドバー148との相対位置を変化させ、中子120に対してスライドバー148が押される。この結果、板ばね160も左側に押されて変形し、同図に例示したような略S字状の状態となる。このとき、主弁142、144には中子120と同様に圧力差が働いており、導入口132、134の開閉状態を変化させない。
【0043】
この後、中子120がさらに回動することにより、中子120に対してスライドバー148がさらに押されると、図10(c)に表したように、板ばね160の湾曲方向が左側に反転を開始し、スライドバー146、148を左側に付勢する。
すると、図10(d)に表したように、板ばね160の付勢力によって主弁142、144が左側に移動し、導入口132が全開となり導入口134が全閉の状態となる。
【0044】
以上説明したように、本具体例においては、圧縮した板ばね160の湾曲方向をスライドバー146、148により適宜反転させ、その付勢力を利用して主弁142、144を動作させることにより導入口132、134を全開及び全閉のいずれかの状態に択一的に制御する。つまり、板ばね160の付勢力を利用することで、中子120の反転のために左右の導入口132、134の開度差を確実に形成している。
【0045】
スライドバー146、148を介して主弁142、144を制御する本具体例の機構は、吐水装置100の円滑な動作に対して極めて重要な役割を果たす。すなわち、圧縮された板ばね160は、右側あるいは左側に湾曲した状態が安定状態であるが、図10(b)に表したようにこれら安定状態の中間付近において、準安定な中立状態となる場合がある。この状態においては、板ばね160には、左あるいは右への付勢力があまり発生しない。従って、この状態において、仮に導入口132、134の開度がほぼ同一の状態となると、中子の両側の導入口132、134から水が流入するために圧力差が無くなり、中子120の回動が停止してしまう。つまり、主弁142、144の移動開始のタイミングが板ばね160の反転のタイミングよりも早いと、中子120の動作が停止してしまうことがある。
【0046】
これに対して、本具体例によれば、スライドバー146、148を設け、そのストロークを適宜調整することにより、図10(b)のような準安定な中立状態においては、主弁142、144がまだ移動せず、中子120に圧力がかかって動き続ける状態を維持できる。そして、この中立状態を越えて板ばね160が反転を開始した時に主弁142、144が移動を始めるようにすることができる。つまり、主弁142、142の移動開始のタイミングを、板ばね160の反転のタイミングに同期させることができる。
【0047】
言い換えれば、中子120を回動させるに足る開度差がなくなる前に板ばね160を反転させ、その反転力(付勢力)によりスライドバー146、148を介して主弁142、144を移動させ、導入口132、134の開度差を、中子120を逆方向に回動させるに足る開度差に逆転させることができる。
【0048】
このようにすれば、板ばね160が中立状態の時に導入口132、134の開度がほぼ等しい状態となり中子120が停止してしまう、という問題を解消して、円滑な反復運動を実現できる。
【0049】
また、このようにすると、中子120がその回動ストロークの中間付近などに停止している状態から出水を開始させるような場合においても、出水開始時に板ばね160により主弁142、144を制御して導入口132、134のいずれかが択一的に開かれた状態にあり、中子120の両側に圧力差を形成させて安定した初期動作を開始させることができる。つまり、導入口132の開度よりも導入口134の開度が大なる状態と、導入口134の開度よりも導入口132の開度が大なる状態と、を択一的に保持可能とすることができる。
【0050】
次に、本具体例に係る吐水装置100における可変終端201の動作について説明する。前述の如く、ハウジング102の一方の側壁に可変終端201を設けることにより、中子120がその回動域における圧力室116側の端部に到達したときは、スライドバー146は可変終端201に当接して主弁142及び144を移動させる。すなわち、このスライドバー146が可変終端201に当接した位置が、中子120の往復運動の終端位置となる。従って、可変終端201の位置を調節することにより中子120の往復回動運動のストロークを変えることができ、また、ストロークをさらに狭めることにより、停止させることも可能となる。このようにして、可変終端201は中子120の回動域を規制することができる。
【0051】
より具体的には、図8(a)に示すように、可変終端201を外位置に位置させれば、可変終端201の端面はハウジング102の内壁面と一致するため、中子120の回動域は最も広くなる。このとき、吐水筒体180の回動角度範囲は最も大きくなる。一方、図8(b)に示すように、可変終端201を内位置に位置させれば、中子120の回動域は最も狭くなる。このとき、吐水筒体180の回動角度範囲は最も小さくなる。そして、可変終端201を外位置と内位置との間の任意の位置に配置することにより、吐水筒体180の回動角度範囲を任意に調節することができる。
【0052】
以上説明したように、本具体例においては、可変終端201の位置を調節することにより、吐水筒体180の回動角度範囲を任意に制御することができる。また、中子120の回動方向と、主弁142、144の可動方向、スライドバー146、148の可動方向、板ばね160の付勢方向を略同一とすることにより、力の働き方に無駄がなく、受圧面積の大きな中子の移動力を有効に活用でき、円滑かつ安定した動作が可能となる。つまり、中子120の移動動作と開度制御動作とを連動させることにより、中子120の反転のための導入口132、134の開度の大小関係を逆転させる制御動作を確実且つ容易なものとし、シンプルでコンパクトな弁体と制御手段を実現している。これにより、中子120の回動に応じて導入口の開度差の大小関係を適宜逆転させ、中子120を左右に反復的に動作させることができる。
【0053】
すなわち、中子120を動かすためには、導入口132、134の開度に差を設けて回動に必要な圧力差を生じさせればよい。また同様に、中子120の回動方向を反転させる際にも、制御手段によって、導入口132、134の開度の大小関係を逆転させればよい。例えば、導入口132及び134の開度の比率を制御手段によって、70:30から30:70に変化させることにより、反転動作が可能である。またさらに、制御手段によって、開度を100:0から0:100に変化させれば、最も確実且つ安定的反転動作が可能となる。
【0054】
また、本具体例によれば、電気などの機械動力を必要とせず、水等の供給圧力のみで円滑な往復反転運動が可能となり、電源の設置や感電あるいは漏電など対する対策が不要となる。また、電磁ノイズなどの外乱にも影響されず円滑な動作が可能である。
【0055】
更に、本具体例によれば、主弁142、144や制御手段が中子120に付属して設けられているので、例えば外付けの4方弁などが不要となり、シンプルな構成で円滑な往復反転運動を実現できる。その結果として、小型化が容易となり、また流路がシンプルになるため、圧力損失を抑えることができ、吐水量や吐水圧を確保できる点でも有利である。また、主弁142、144や制御手段がハウジング102の中に内蔵されている構造であるため、外乱に強く円滑な動作を実現できる。更にまた、給水に関しても、同一の給水源から分岐して2つの入水口に接続するだけでよく、施工性に優れる。更にまた、回動する中子と吐水筒体の内部に水路が形成されているため、吐水筒体の先端に様々なノズル又はスパウトなどを接続するだけで出水角度を変化させることが可能であり、特別な接続部材が不要である点でも、施工性が優れる。特に、屋内や屋外において、既存の設備の上に「後付け」で取り付ける場合においても、本具体例の吐水装置は施工性に優れる点で有利である。
【0056】
なお、回動動作により得られる推力は、中子120に付加される水圧と中子の受圧面積との積により決定される。従って、中子120の受圧面積を増加させれば、それに応じた大きな推力を得ることが可能となる。
【0057】
なお、本具体例の場合、中子120の反転に際して、スライドバー146、148をハウジングの内壁又は可変終端に当接させているが、本発明はこれに限定されない。例えば、スライドバー146、148に磁石を設け、一方、ハウジングの内壁及び可変終端の先端部にも磁石を設け、これらの間に作用する反発力を利用してスライドバー146、148をハウジングに対して相対的に停止させることも可能である。この場合には、図10(a)乃至(c)に対応する状態において、スライドバー146、148がハウジング102の内壁及び可変終端の先端部に当接せず、磁石(図示せず)の反発力によりハウジング102の内壁及び可変終端の先端部から所定の距離だけ離れた状態にあることとなる。このようにすれば、非接触で中子120の反転が可能となる。これにより、例えば、中子の往復運動を滑らかにしたり、スライドバーがハウジングに接触して音が発生することを防止できる。なお、この場合、中子の回動域とは、仮に磁石がなければ中子が回動したはずの空間ではなく、中子が実際に回動する空間をいう。
【0058】
次に、本具体例の変形例について説明する。本変形例においては、導入口132、134の開度の大小関係を逆転させる制御手段として、前述の第1の具体例のような板バネ及びスライドバーではなく、磁石を利用する。
図11(a)乃至(d)は、本変形例における制御手段の動作を示す模式図である。
【0059】
図11(a)は、中子120が向かって左側から右側に向けて回動し、ハウジング102の内壁に主弁144が当接した状態を表す。本変形例の場合、中子120には磁石170が設けられ、ハウジング102には磁石174が設けられている。なお、本変形例においては、磁石170と磁石174との間の引力を利用するため、磁石170及び174のうちの一方は、強磁性体に置き換えてもよい。
【0060】
図11(a)に示す状態においては、中子120に対して圧力差による力が働くので、中子120はさらに右側に回動する。すなわち、主弁144をハウジング102に当接させ移動方向に対して固定した状態で、中子120はさらに右側に回動する。
【0061】
すると遂には図11(b)に表した状態になる。この状態においては、導入口132、134の開度はほぼ同一であるので、流路抵抗の差による圧力差は生じない。しかしこの時、磁石170と磁石174との間に作用する引力によって中子120をさらに右側に引き寄せることが可能である。
【0062】
なおこの場合、中子120の摺動抵抗の値によっては、図11(b)に表した状態になる前に中子120が停止することもあり得る。このような場合には、図11(a)と図11(b)の間の状態において磁石170と磁石174との間に作用する引力により中子120を引き寄せることが望ましい。
【0063】
図11(b)に表した状態から中子120が磁石の引力によって右側に引き寄せられると、中子120がその回動域の端部に到達し、図11(c)に表したように導入口132の開度が導入口134の開度よりも大きい状態が形成される。すると、これら導入口132、134の流路抵抗に差が生じ、圧力差が生ずる。すなわち、中子120の右側の圧力のほうが高くなり、中子120は向かって左側に動き始める。つまり、導入口132、134の開度差の大小関係を逆転させることにより、中子120を反転させることが可能となる。
【0064】
またこの時、圧力差は主弁144にも作用し、主弁144を閉じる方向の力が働く。その結果として、図11(d)に表したように、主弁144が完全に閉じられ、中子120の右側の圧力は最大値に上昇する。つまり、中子120を反転させた後、左側への最大の駆動力が得られる。
【0065】
以上説明したように、磁石170と磁石174との間に作用する引力によって、中子120を図11(c)に表した状態まで引き寄せることができれば、導入口132、134の開度差の大小関係を逆転させることができ、中子120を反転させることができる。つまり、中子120をハウジング102の中で往復回動運動させることができる。
【0066】
なお、この場合、中子120は、反転後に磁石の引力に打ち勝って回動する必要がある。つまり、圧力差により中子120に作用する力と、磁石により得られる引力とのバランスを適宜設定することが望ましい。
【0067】
また、本変形例においては、主弁142、144の表面(ハウジング102との当接面)は曲面状に突出し、ハウジング102に当接した状態でも隙間が生ずるようにしている。このように、ハウジング102への当接面積を小さくすることによって、弁体が受ける圧力差を有効に活用でき、開度の大小を逆転させるという弁体の反転動作を円滑に行うことができる。
【0068】
なお、本変形例においては、中子120の反転に際して、主弁142、144をハウジング102の内壁に当接させているが、本発明はこれに限定されない。例えば、主弁142、144に磁石を設け、一方、ハウジング102の内壁にも磁石を設け、これらの間に作用する反発力を利用して主弁142、144をハウジング102に対して相対的に停止させることも可能である。つまりこの場合には、図11(a)乃至(c)に対応する状態において、主弁142、144がハウジング102の内壁に当接せず、磁石(図示せず)の反発力によりハウジング102の内壁から所定の距離だけ離れた状態にあることとなる。このようにすれば、非接触で中子を反転させることができる。
【0069】
次に、本実施形態の第2の具体例について説明する。
図12は、本具体例に係る吐水装置を示す断面図である。
図12に示すように、本具体例に係る吐水装置100aにおいては、可変終端201がハウジング102内の扇状のハウジング空間の両側、すなわち、ハウジング102における入水口114側の領域及び入水口112側の領域の双方に設けられている。そして、2つの可変終端201は、相互に独立して移動可能とされている。本具体例における上記以外の構成は、上述の第1の具体例と同様である。
【0070】
本具体例においては、2つの可変終端201間でハウジング空間内への突出量を等しくすれば、吐水筒体180の回動中心を変えることなく、回動角度範囲を調節することができる。一方、ハウジング空間内への突出量を左右で異ならせれば、吐水筒体180の回動中心を任意の位置に調整しつつ、回動角度範囲を調節することができる。また、可変終端201をハウジング空間の両端に設けることにより、ハウジング空間の片側のみに設ける場合と比較して、回動角度範囲の調整幅を同じとすれば、各可変終端201を短くすることができる。これにより、吐水装置全体をコンパクトに構成できる。本具体例における上記以外の動作及び効果は、前述の第1の具体例と同様である。
【0071】
次に、本実施形態の第3の具体例について説明する。
図13及び図14は、本具体例に係る吐水装置を示す断面図である。
本具体例は、終端調節手段200として、制御磁石が設けられた例である。
本具体例の場合、吐水装置100bにおいて、スライドバー146に対向したハウジング102の側壁部に制御磁石206が設けられている。そして、スライドバー146には、磁石208が内蔵されている。同図に表した具体例の場合、スライドバー146に内蔵された磁石208は、向かって右側、すなわち、制御磁石206側がN極で、左側がS極とされている。一方、制御磁石206は、例えば回転機構207などにより、スライドバー146に対応する部分の磁極を切り替えることができる。つまり、図13に表した状態においては、スライドバー146に対応する部分の制御磁石206の磁極はN極とされている。また、この状態から回転機構207により制御磁石206を半回転させることにより、図14に表したように、スライドバー146に対応する部分の制御磁石の磁極はS極となる。このように、制御磁石206の磁極を切り替えることにより、吐水筒体180のストロークを変えることができる。
【0072】
すなわち、図13に表した状態においては、制御磁石206のN極と、スライドバー148に内蔵された磁石208のN極と、の間に反発力が作用する。従って、中子120が向かって右側に(時計回りに)回動する時、スライドバー148の先端がハウジング102の内壁に当接するよりも前に、これら磁石の反発力によりスライドバー148が押されて主弁が移動し、導入口134が閉じ、導入口132が開く。図13は、このように導入口の開度が切り替わった後の状態を表す。この後、中子120は向かって左側に(反時計回りに)回動する。つまり、図13に表した状態においては、中子120の往復運動のストロークは相対的に短くなる。
【0073】
一方、図14に表した状態においては、制御磁石206のS極と、スライドバー148に内蔵された磁石208のN極と、の間に引力が作用する。従って、中子120が向かって右側に(時計回りに)回動する時、スライドバー148の先端がハウジング102の内壁に当接するまで、主弁144は移動せず導入口134は開いたままである。つまり、図14に表した状態においては、中子120の往復運動のストロークは相対的に長くなる。
【0074】
またさらに、回転機構207の回転動作により、制御磁石206を、図13に表した状態と図24に表した状態との間の状態にしてストロークを調整することも可能である。つまり、制御磁石206からの磁力を調整し、スライドバー148に内蔵された磁石208に対して、図13に表した状態よりも弱い反発力、あるいは、図14に表した状態よりも弱い引力を作用させることができる。このようにすれば、図13に表した状態におけるストロークよりも長く、図14に表した状態におけるストロークよりも短いストロークを得ることが可能となる。なお、図13に表したように、非接触でスライドバー148が押される場合には、スライドバー148の先端面にかかる水圧も反転力の一部として有効利用できる。
【0075】
本具体例の場合も、図12に関して前述したように、終端調節手段200をハウジング空間に両側に設けることができる。つまり、スライドバー148にも磁石を内蔵させ、また、これに対向するハウジング102の側壁部に制御磁石を設けることができる。そして、この場合にも、左右の終端調節手段200をそれぞれ独立に制御してもよく、あるいは、リンクして制御してもよい。
【0076】
次に、本実施形態に係る吐水装置の適用例について説明する。
先ず、第1の適用例について説明する。
図15は、本実施形態の第1の適用例を表す模式図である。
【0077】
本適用例においては、本実施形態に係る吐水装置100が設けられている。吐水装置100としては、例えば、本実施形態のいずれかの具体例に係る吐水装置を使用することができる。吐水装置100は、壁面900に設置され、吐水筒体にシャワーノズル820が装着されている。なお、本具体例において、シャワーノズル820の両側に吐水装置の駆動部を設けてもよく、あるいは一方のみに駆動部を設け、他方は単なる軸受け部としてもよい。
【0078】
本適用例においては、シャワーノズル820が矢印Mで表したように往復回動運動することにより、コンパクトな形状にてシャワー状の吐水を広範囲に噴射できる。例えば、浴室においてこの吐水装置を用いることにより、使用者は手放しでシャワーを効率的に浴びることができ便利である。また、反復的に変動するシャワーの刺激によるマッサージ効果やリラクゼーション効果も期待できる。
【0079】
また一方、シャワーノズル820を固定した場合には、吐水装置100のハウジングが回動することとなり、この動作をマッサージなどに利用することも可能である。つまり、往復回動するハウジングに身体を押し当てることにより、「もみほぐし」などのマッサージ効果が得られる。
【0080】
この吐水装置100には、終端調節手段(図示せず)が組み込まれており、吐水装置100のハウジングの外面には、この終端調節手段の操作部300が取り付けられている。そして、使用者がこの操作部300を操作することにより、シャワーノズル820の回動角度範囲を調整することができる。これにより、使用者の体格や好みに応じて、吐水する領域を選択することができる。この結果、使用者の満足感を向上させると共に、無駄な吐水を減らし、洗浄効率及びマッサージ効率を高めることができる。
【0081】
例えば、このような吐水装置を浴室などの壁面900に設置して、ボディシャワーとして使用する場合、吐水方向を周期的に変化させることができるため、使用者が自ら身体を揺すって作用部位を変化させる必要がなく、使用感が向上する。また、噴霧状の吐水を広範囲にあてることにより、リラクゼーション効果を得ることも可能であり、使用感が向上する。
【0082】
これらの場合、例えば、使用者の体格によって吐水を当てたい範囲も異なる。これに対して、本適用例によれば、終端調節手段の操作部300を操作することにより使用者の体格や好みに応じて角度範囲を調節でき、使い勝手がよくなるとともに、効率良く対象部位に作用させることにより節水効果も得られる。
【0083】
また、終端調節手段を制御することにより、回動角度範囲を縮小させて停止させることも可能である。従って、使用者の好みの位置に固定して吐水させることができる。例えば、髪を洗いたい場合などにその部分に集中的に吐水させ、より一層高い洗浄効果を得ることが可能となる。
【0084】
なお、図15には、シャワー装置を壁面900に設置した例を表したが、これ以外にも、例えば浴槽の縁に設置してもよい。また、図15には壁面900に対して横置きに設置した例を表したが、縦置きに設置しても同様の作用効果が得られる。
【0085】
次に、本実施形態の第2の適用例について説明する。
図16は、本適用例を表す模式図である。
本適用例においては、本発明の実施形態に係る吐水装置100が、水平面920の上に設置され、上方に突出する吐水筒体の先端に吐水ノズル830が装着されている。給水配管700から水などの流体を供給すると、吐水ノズル830が矢印Mの方向に往復回動運動をしながら吐水を広範囲に散布する。この吐水装置は、例えば、庭や畑などにおいて植物に給水散布したり、グラウンドの散水などの用途に用いて好適である。
【0086】
そして、本適用例においても、終端調節手段200の作用により、吐水角度範囲を調整することができる。これにより、グラウンドの広さなどに応じて散水領域を任意に選択することができる。
すなわち、小型コンパクトで持ち運び性に優れ、電力も必要とせず、外乱に強く、グラウンドなどの大きさにあわせて散水範囲を調整でき、節水効果も高い吐水装置を実現できる。また、この吐水装置は、給水配管としてのホースなどに接続するだけで駆動させることができるという点で、「後付け性」が優れている。
【0087】
以上、図15及び図16を参照して、本実施形態に係る吐水装置の適用例を示したが、本実施形態の適用例はこれらには限定されない。
例えば、本実施形態に係る吐水装置を流し場などに設置することにより、使用者が手洗いや、食器などを洗浄する際に、吐水範囲を広げて洗浄効率を上げることが可能である。また、高齢者や障害者に対しても使い勝手のよい手洗い器を提供できる。このとき、終端調節手段を操作することにより、使用者の好みや対象物に応じた角度範囲で動作させることができる。例えば、食器などを洗浄する場合、その対象物としては大型の鍋から小型の皿まで様々の大きさのものがあるが、それぞれの大きさに応じた角度範囲に調整することにより、効率よく吐水を対象物にあてることができ、洗浄効率を上げて水を節約することが可能となる。またさらに、角度範囲を大幅に狭めて、使用者の好みの位置に固定して吐水させることができる。例えば、特定の部位を集中的に洗いたい場合や、水くみなどをしたい場合などに、効率よく利用することができ、使い勝手のよい吐水装置を提供できる。
【0088】
また、本実施形態の吐水装置を撹拌や混合に用いることもできる。例えば、液体槽の中に本実施形態の吐水装置を沈めた状態で、ノズルを回動させながら吐水させると、液体槽内の液体の撹拌や混合ができる。また、液体槽の中でノズルを固定しハウジングを回動させても撹拌や混合を実施できる。この場合にも、終端調節手段を操作して吐水の回動角度範囲を調節することにより、撹拌や混合の状態を選択することができる。
【0089】
更に、本実施形態に係る吐水装置の適用分野は浴室や手洗いあるいはキッチンなどには限定されない。例えば、自動車の洗浄装置に本発明の吐水装置を組み込むと、自動車の大きさにあわせて吐水範囲を調整することができ、必要以上に散水せずに節水効果が得られ、また周囲を濡らさずに済むという効果も得られる。またさらに、半導体、食品、医療、製紙パルプ、自動車などをはじめとする各種の産業の現場において、このような吐水装置を洗浄装置に組み込むことにより、例えば、半導体ウェーハや、液晶パネルの基板や、各種の原料、材料、部品などの洗浄を効率良く実施できる。この場合にも、対象物の大きさにあわせて吐水範囲を調整することができるため、節水効果が得られ、また、電源や潤滑油などを供給する必要がなく、電磁ノイズも発生せず、またノイズの影響も受けず、衛生的であり、メンテナンス性にも優れるなどの各種の効果が得られる。また、回動角度すなわち吐水範囲を調節できるため、各種のシステムに対して後付けした場合に、対象物の大きさに適合できる点で、特に有利である。
【0090】
以上具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
すなわち、本発明の吐水装置を構成するいずれかの要素について当業者が設計変更を加えたものであっても、本発明の要旨を備えたものであれば、本発明の範囲に包含される。
【0091】
例えば、吐水装置の吐水装置及び吐水ノズルの外形や、終端調節手段や、その他構成部品の形状あるいは配置、などについて当業者が適宜変更を加えたものであっても、本発明の要旨を含む限り、本発明の範囲に包含される。
また、入水口に関して左右の圧力室に対応した入水口がそれぞれ形成されていればよく、例えばハウジング内で分岐した流路を形成しそれぞれの入水口に接続されるようにし、ハウジングへの入水接続口は一つとしてもよく、こうすることで配管を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施形態に係る吐水装置を例示する模式図である。
【図2】本実施形態の第1の具体例の吐水装置を例示する斜視図である。
【図3】本実施形態の第1の具体例の吐水装置を例示する斜視断面図である。
【図4】(a)は、第1の具体例の吐水装置を底面側から見た斜視図であり、(b)はその斜視断面図である。
【図5】第1の具体例の吐水装置を側方から見た断面図である。
【図6】図5に示すA−A’線による断面図である。
【図7】第1の具体例の吐水装置における主弁及びスライドバーを例示する斜視図である。
【図8】(a)及び(b)は、第1の具体例の吐水装置における終端調節手段の動作を示す断面図であり、(a)は終端調節手段としての可変終端がハウジング空間内に突出していない状態を示し、(b)は、可変終端がハウジング空間内に突出している状態を示す。
【図9】(a)乃至(c)は、第1の具体例の吐水装置の動作を説明するための模式図である。
【図10】(a)乃至(d)は、第1の具体例における制御手段の動作を説明するための模式図である。
【図11】(a)乃至(d)は、第1の具体例の変形例における制御手段の動作を示す模式図である。
【図12】本実施形態の第2の具体例に係る吐水装置を示す断面図である。
【図13】本実施形態の第3の具体例に係る吐水装置を示す断面図である。
【図14】本実施形態の第3の具体例に係る吐水装置を示す断面図である。
【図15】本実施形態の第1の適用例を表す模式図である。
【図16】本実施形態の第2の適用例を表す模式図である。
【符号の説明】
【0093】
100 吐水装置
102 ハウジング
103 ハウジング本体
104、105 ハウジング蓋
112、114 入水口
116、118 圧力室
120 中子
121 中子本体
122 中子蓋
124 中子内流路
126、127 シール
132、134 導入口
142、144 主弁
146、148 スライドバー
149 連結棒
160 板ばね
180 吐水筒体
182 吐水流路
184 シール
200 終端調節手段
202 可変終端
203 円
204 シール機構
206 制御磁石
207 回転機構
208 磁石
300 操作部
820 シャワーノズル
830 吐水ノズル
900 壁面
920 水平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に扇状の空間を有するハウジングと、
前記扇状の空間を第1及び第2の圧力室に分割しつつ前記空間内を回動可能とされ、内部に中子内流路を有する中子と、
前記中子内流路に連通し前記ハウジングの外側に至る吐水流路を有する吐水筒体と、
前記第1の圧力室に流体を導入する第1の入水口と、
前記第2の圧力室に流体を導入する第2の入水口と、
前記第1の圧力室から前記中子内流路に流体を導入する第1の導入口と、
前記第2の圧力室から前記中子内流路に流体を導入する第2の導入口と、
前記第1及び第2の導入口の開度を変化させる弁体と、
前記中子がその回動域における前記第1の圧力室側の端部に到達したときに、前記第1の圧力室内の圧力を前記第2の圧力室内の圧力よりも高くし、前記中子がその回動域における前記第2の圧力室側の端部に到達したときに、前記第2の圧力室内の圧力を前記第1の圧力室内の圧力よりも高くするように、前記弁体を作動させて前記第1及び第2の導入口の開度を変更する制御手段と、
前記中子の回動域を規制し、規制された回動域の端部において前記制御手段を作動させて前記第1及び第2の導入口の開度を変更させる終端調節手段と、
を備えたことを特徴とする吐水装置。
【請求項2】
前記終端調節手段は、前記扇状の空間の両端に設けられたことを特徴とする請求項1記載の吐水装置。
【請求項3】
前記終端調節手段は、前記ハウジングの側壁から前記扇状の空間内に突出可能に設けられ、前記制御手段の少なくとも一部に当接することにより前記制御手段を作動させて前記第1及び第2の導入口の開度の大小関係を逆転させ、且つ前記空間内における突出量が可変とされた可変終端を有することを特徴とする請求項1または2に記載の吐水装置。
【請求項4】
前記制御手段は磁石を有し、
前記終端調節手段は、前記磁石に対して引力及び反発力のいずれか一方を選択的に作用させることにより前記制御手段を作動させて、前記第1及び第2の導入口の開度の大小関係を逆転させる位置を可変とする制御磁石を有することを特徴とする請求項1または2に記載の吐水装置。
【請求項5】
前記第1の導入口を閉じ前記第2の導入口を開けた状態で前記第1及び第2の入水口に流体を供給すると、前記中子は、前記第2の圧力室に向けて回動し、
前記第2の導入口を閉じ前記第1の導入口を開けた状態で前記第1及び第2の入水口に流体を供給すると、前記中子は、前記第1の圧力室に向けて回動することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の吐水装置。
【請求項6】
前記中子の回動方向と前記弁体の可動方向とが略同一であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の吐水装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記第1の導入口の開度よりも前記第2の導入口の開度が大なる第1の状態と、前記第2の導入口の開度よりも前記第1の導入口の開度が大なる第2の状態と、を択一的に保持可能としたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の吐水装置。
【請求項8】
前記制御手段は、
前記弁体の移動ストロークよりも長いストロークで動作可能であり前記弁体を移動させるスライドバーと、
前記スライドバーをそのストロークの一端または他端に付勢する板ばねと、
を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の吐水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−229690(P2007−229690A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−58229(P2006−58229)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】