説明

吐水装置

【課題】使用者がノズルの方向を任意調整でき、また、中抜けを防げ、少流量で広範囲に散水できる吐水装置を提供する。
【解決手段】外部から供給のチャンバ内洗浄水を、周面設置の入水口から流入させて旋回流を生じさせる旋回室を内部に有し、周面に形成された旋回室と外部とを連通する円孔が、チャンバの開口部から露出状態でチャンバ内に収納され、かつ、開口部から脱落不可状態でチャンバの内周面により回転自在に支持された球状部材と、円孔に挿通される縮径部を有し、縮径部の先端側設置の吐水部が円孔から突出し、縮径部の後端側設置の給水部が旋回室内に自由端状態で収納され、給水部から流入する洗浄水を吐水部から吐出可能とした筒状ノズル備え、球状部材は、チャンバに対して全方位首振り操作可能で、かつ、筒状ノズルは、旋回室内に形成される旋回流で、少なくとも縮径部の一部を円孔の周縁に接触させた状態で、円孔の中心軸の周りを公転するとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水流を広範囲に吐水する吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、給水管などから供給された水流を吐水するための様々な吐水装置が提案されている。
【0003】
このような吐水装置の中には、できるだけ広い範囲に吐水できるよう構成したものが知られており、例えば、吐水装置のノズルの向きを調整可能に構成したものや、ノズルを水流で動かして、吐水方向を経時的に変化させながら散水するようにしたものが知られている。
【0004】
前者の具体例としては、給水管に吐水孔を穿設したノズルをボールジョイントを介して接続し、ノズルの向きを使用者が任意で変更可能とした構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
このボールジョイントを備える吐水装置によれば、使用者がノズルの角度を調整することにより、水流を所望する方向へ向けて吐水させることができる。
【0006】
また、後者の具体例としては、吐水装置内部にて旋回流を発生させ、揺動自在に構成したノズルをこの旋回流で首振り動作させながら吐水することにより、円錐状に広がる螺旋水流を吐出する構成が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
この旋回流で首振り動作させながら吐水する吐水装置によれば、比較的少ない水量で広範囲に亘って散水することができる。
【特許文献1】特開2002−112913号公報
【特許文献2】特開2002−336741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の散水装置では、それぞれ下記のような問題があった。
【0009】
すなわち、ボールジョイントを備える吐水装置では、任意の方向へ向けて吐水することはできるものの、広範囲に吐水させるには、大流量の水が必要となり、水の使用量が増えてしまうという問題がある。
【0010】
また、旋回流で首振り動作させながら吐水する吐水装置では、吐出された水流の大半は、水流の飛跡により形成される仮想円錐の表面に沿って拡散するため、吐水範囲を広げすぎると、同仮想円錐の中心軸近傍を通る水流が少なくなり、中心軸近傍にある対象物には水流が当たりにくい、いわゆる中抜けと呼ばれる現象が生じてしまうという問題がある。
【0011】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、使用者によりノズルの方向を任意に調整可能とし、また、中抜けを防ぐことができ、しかも、できるだけ少ない流量で広範囲に亘り散水することのできる吐水装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記従来の課題を解決するために、本発明に係る吐水装置では、外部から洗浄水が供給されるチャンバと、周面に設けた入水口から前記チャンバ内の洗浄水を流入させて旋回流を生じさせる旋回室を内部に有し、この旋回室と外部とを連通する円孔を前記周面に形成するとともに、この円孔が前記チャンバに形成された開口部から露出する状態で前記チャンバ内に収納され、かつ、前記開口部から脱落不可の状態で当該チャンバの内周面により回転自在に支持された球状部材と、前記円孔に挿通される縮径部を有し、この縮径部の先端側に設けた吐水部が前記円孔から突出し、前記縮径部の後端側に設けた給水部が前記旋回室内に自由端の状態で収納され、前記給水部から流入する洗浄水を前記吐水部から吐出可能とした筒状ノズルと、を備え、前記球状部材は、前記チャンバに対して全方位に首振り操作可能であり、かつ、前記筒状ノズルは、前記旋回室内に形成される旋回流により、少なくとも前記縮径部の一部を前記円孔の周縁に接触させた状態で、前記円孔の中心軸の周りを公転することとした。
【0013】
また、本発明に係る吐水装置では、以下の点にも特徴を有する。
(1)前記筒状ノズルは、前記吐水部に形成した吐水口が当該筒状ノズルのノズル中心軸に対して傾斜しており、当該吐水口から前記洗浄水を吐出することにより、前記ノズル中心軸周りに自転可能としたこと。
(2)前記吐水口を複数個形成し、全ての吐水口を前記ノズル中心軸に対して傾斜させたこと。
(3)前記球状部材を支持する前記チャンバの内周面に、前記球状部材に設けた入水口が対向しても、当該入水口が閉塞されることを防止する連通路を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の吐水装置。
(4)前記連通路は、前記球状部材の周面に沿って形成された座ぐり部からなること。
(5)前記チャンバは、前記開口部と対向する位置に前記外部から供給される洗浄水が流入する給水口を有し、この給水口と前記球状部材との間に、当該球状部材と接触する接触部と、前記洗浄水を前記入水口側に通水する通水部とを有する押さえ部材を設けたこと。
(6)前記押さえ部材を前記球状部材とは別体で形成するとともに、当該押さえ部材を介して前記球状部材を前記チャンバの開口部側に付勢する付勢手段を配設したこと。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の本発明では、外部から洗浄水が供給されるチャンバと、周面に設けた入水口から前記チャンバ内の洗浄水を流入させて旋回流を生じさせる旋回室を内部に有し、この旋回室と外部とを連通する円孔を前記周面に形成するとともに、この円孔が前記チャンバに形成された開口部から露出する状態で前記チャンバ内に収納され、かつ、前記開口部から脱落不可の状態で当該チャンバの内周面により回転自在に支持された球状部材と、前記円孔に挿通される縮径部を有し、この縮径部の先端側に設けた吐水部が前記円孔から突出し、前記縮径部の後端側に設けた給水部が前記旋回室内に自由端の状態で収納され、前記給水部から流入する洗浄水を前記吐水部から吐出可能とした筒状ノズルと、を備え、前記球状部材は、前記チャンバに対して全方位に首振り操作可能であり、かつ、前記筒状ノズルは、前記旋回室内に形成される旋回流により、少なくとも前記縮径部の一部を前記円孔の周縁に接触させた状態で、前記円孔の中心軸の周りを公転することとしたため、使用者によりノズルの方向を任意に調整可能として中抜けを防ぐとともに、できるだけ少ない流量で広範囲に亘り散水可能な吐水装置を提供することができる。
【0015】
また、請求項2に記載の本発明では、前記筒状ノズルは、前記吐水部に形成した吐水口が当該筒状ノズルのノズル中心軸に対して傾斜しており、当該吐水口から前記洗浄水を吐出することにより、前記ノズル中心軸周りに自転可能としたため、吐水範囲をさらに広げることができる。
【0016】
また、請求項3に記載の本発明では、前記吐水口を複数個形成し、全ての吐水口を前記ノズル中心軸に対して傾斜させたため、吐水範囲をさらに広範囲とすることができる。
【0017】
また、請求項4に記載の本発明では、前記球状部材を支持する前記チャンバの内周面に、前記球状部材に設けた入水口が対向しても、当該入水口が閉塞されることを防止する連通路を備えていることとしたため、チャンバ内で球状部材を首振り動作させて角度の調整を行った場合でも、水流の旋回室への流入量を減少させることがなく、筒状ノズルの公転動作を一定に保つことができる。
【0018】
また、請求項5に記載の本発明では、前記連通路は、前記球状部材の周面に沿って形成された座ぐり部からなることとしたため、シンプルな構成でありながら、水流の旋回室への流入量を確実に確保することができる。
【0019】
また、請求項6に記載の本発明では、前記チャンバは、前記開口部と対向する位置に前記外部から供給される洗浄水が流入する給水口を有し、この給水口と前記球状部材との間に、当該球状部材と接触する接触部と、前記洗浄水を前記入水口側に通水する通水部とを有する押さえ部材を設けたため、給水口が前記開口部の背面側に位置することとなり、複数の吐水装置を並設する際の施工性を向上させることができる。
【0020】
また、請求項7に記載の本発明では、前記押さえ部材を前記球状部材とは別体で形成するとともに、当該押さえ部材を介して前記球状部材を前記チャンバの開口部側に付勢する付勢手段を配設したため、球状部材の首振り調整時の操作力を低減することができる。また、付勢手段の付勢力を調整することにより、容易に操作力の設定を調整することができ、しかも、開口部に球状部材を押し当てて容易に水密状態を形成して高精度の寸法管理を不要とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本実施形態に係る吐水装置について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る吐水装置を備えたシャワー室を示した説明図である。図1にも示すように、このシャワー室の壁体Wは、使用者Pの頭部上方に設けられた上部シャワー1と、使用者Pの略胸の高さの位置に設けられたハンドシャワー2と、を有している。
【0023】
また、壁体Wには、コントロールパネル3が配設されており、使用者Pがこのコントロールパネル3を操作することにより、上部シャワー1やハンドシャワー2から水や温水を出したり止めたりすることができるよう構成している。
【0024】
そして、本実施形態に特徴的な構成として、壁体Wには、使用者Pの胸の高さ及び腰の高さの位置に2つずつ吐水装置Aが設けられており、使用者Pがこの吐水装置Aを適宜調整することにより、使用者Pの胸部や腰部など所望する方向へ向けて湯水を噴射可能に構成している。
【0025】
この吐水装置Aもまた、コントロールパネル3により、湯水の吐出や停止、温水の温度調整を行うことができるように構成している。
【0026】
この吐水装置Aは、図2にも示すように、給水口10を備えるチャンバ11と、チャンバ11内に収納した球状部材13と、同球状部材13内に基部を内蔵し、複数の吐水口15を備える自公転ノズル12とで構成しており、給水口10から供給される湯水を、チャンバ11から球状部材13を介して自公転ノズル12に供給し、同自公転ノズル12の先端に形成した複数の吐水口15より吐水可能としている。
【0027】
また、この吐水装置Aの特徴の一つとして、いわゆるボールジョイントの如く、自公転ノズル12を内蔵した球状部材13は、チャンバ11に対して全方位に首振り操作可能としており、使用者Pが予め球状部材13を介して自公転ノズル12の角度を適宜調整することにより、所望の方向へ吐水させることができるようにしている。
【0028】
また、この吐水装置Aの他の特徴として、自公転ノズル12は、球状部材13の内方で自由端の状態で回転自在及び揺動自在に支持されており、給水口10から湯水を供給した際に、この自公転ノズル12が中途の当接係合部分を支点として公転運動及び自転運動を行うことにより、使用者Pに向けて螺旋状の水流を吐水できるようにしている。
【0029】
次いで、本発明の吐水装置Aを図面に基づき詳説する。
【0030】
吐水装置Aは、図3及び図4に示すように、上チャンバ18と下チャンバ19よりなるチャンバ11の内部空間に、球状部材13を収納すると共に、球状部材13の内部に形成した旋回室20には、内部に送水路48を設けた筒状の自公転ノズル12の下半部を収納し、該自公転ノズル12の先端に吐水部21を連設して、同吐水部21に設けた吐水口15より湯水を吐水可能に構成している。
【0031】
しかも、自公転ノズル12は、球状部材13の内部の旋回室20に流入する湯水の流勢により、自公転ノズル12の軸芯を中心に自転しながら、かつ、軸芯を前後左右、及び、周回方向に変位させて、自公転ノズル12の公転も行うことにより、自動的に吐水口15より、仮想円錐形状の周面及びその内部にも密に噴射水を吐水して、広範囲に亘り密な噴射吐水を可能に構成している。
【0032】
チャンバ11は、図2及び図4に示すように、下方開放の筒状の上チャンバ18と、上方開放の筒状の下チャンバ19とよりなり、上下チャンバ18,19は、周壁面で螺合して一体の中空のチャンバ11を形成している。
【0033】
しかも、下チャンバ19の底面には、中央に給水管に連通した給水口を形成すると共に、内底面には、後述する押さえ部材22を保持するための受部23を形成している。
【0034】
下チャンバ19の内底面には、チャンバ11の開口部32側に付勢する付勢手段としてのコイルバネ24を介して環状の押さえ部材22が載置されている。
【0035】
押さえ部材22は、図5に示すように、中央に通水円孔25を有する環状の上端面を曲面にした受け面31を形成し、後述する球状部材13に面当接することにより接触部として機能するように形成しており、その外周には、受け面フランジ26を突設し、しかも、その下方には基部周壁27を垂設している。
【0036】
しかも、受け面フランジ26と基部周壁27には、一定間隔毎に切欠したフランジ切欠部28と、基部切欠部29を形成しており、これらの各切欠部28,29は、下チャンバ19の給水口10より流入する湯水をチャンバ11内に導水するための通水部30を形成している。
【0037】
なお、通水部30は、環状の押さえ部材22の受け面31に、半径方向へ向けて溝を複数形成し、通水円孔25部分の湯水が、前述の溝を通って受け面フランジ26の上方に流れるように構成しても良い。
【0038】
コイルバネ24は、押さえ部材22の受け面フランジ26下面と、下チャンバ19の内底面との間に介在するように、基部周壁27の外周を囲繞するように装着し、押さえ部材22を上方に付勢している。
【0039】
チャンバ11内の空間には、周面球状の球状部材13が揺動自在に収納されており、球状部材13の下半球面は、受け面31に面接触で当接しており、また、球状部材13の上半球面は、上チャンバ18の天井壁に形成した開口部32に遊嵌されている。
【0040】
なお、開口部32には、上チャンバ18の天井壁の中央に、球状部材13の球面と面当接する受け面33を凹状球面に形成している。
【0041】
従って、球状部材13は、コイルバネ24により上方付勢された押さえ部材22の受け面31と、上チャンバ18の開口部32の受け面33との間に遊嵌保持されて旋回室20中に組み込まれた状態となっている。
【0042】
球状部材13の略中央周面には、図6(a)に示すように、下部半球体37の中心点Qを上下方向に挿通する中心軸の軸対称に左右一対の入水口34を、旋回室20と球状部材13の外部とを連通させるように形成しており、入水口34の周辺には、周壁に長方形状で陥没状の座ぐり部35を連通路として形成しており、チャンバ11内部の旋回室20中に給水された流体が入水口34に導水されやすいようにガイドし、かつ、流勢を増大する機能を果たす。
【0043】
しかも、この座ぐり部35は、前述の通水部30と近接することとなり、通水部30を介してチャンバ11内に流入する湯水を効率よく球状部材13内に誘導することができる。
【0044】
この球状部材13の周面に沿って形成された座ぐり部35は、図5に示す押さえ部材22の受け面31の幅Dよりも長く形成しており、使用者Pが球状部材13を回動操作しても、座ぐり部35が通水円孔25や受け面フランジ26の上方から露出して、湯水を入水口34に誘導できるようにしている。
【0045】
なお、球状部材13は、上下半球状の上部半球体36と下部半球体37を螺合して一体の球状に構成している。また、上部半球体36は、チャンバ11内部の上方に配設したOリング53との水密性を保つため金属製としており、具体的にはステンレスで形成している。これにより、正確な球面形成を行うことができ、しかも、長きに亘り可及的正確な球面を保つことができるため、漏水を防ぐことができる。
【0046】
また、球状部材13は、図4、図7、図8に示すように、内部を中空として旋回室20を形成すると共に、旋回室20は、略円柱形状空間とし、その上端は、球状部材13の頂部に形成した上部開口部38に連通しており、旋回室20の上半部には筒状のノズルガイド39を内装し、旋回室20の上半部の内周壁を形成している。
【0047】
ノズルガイド39は滑り性のよい樹脂、具体的にはフッ素系樹脂で成形されたものであり、図8に示すように、天井壁に円孔40を形成し、円孔40の周縁を係合フランジ41とすると共に、ノズルガイド39の下端は開放状とし周縁には基部フランジ42を突設している。
【0048】
基部フランジ42は、球状部材13の旋回室20中途に形成した段部43に載置することにより、ノズルガイド39を旋回室20の上半部に固定することができる。
【0049】
かかる球状部材13の旋回室20中には、送水用の管路となる送水路48を有した自公転ノズル12が自転かつ公転自在に収納されている。
【0050】
すなわち、自公転ノズル12は、下方開放の筒状のノズル本体44と、その上部の径を小さくした縮径部45と、さらにその先端に連設した円盤状の吐水部21とよりなる。
【0051】
縮径部45は金属製、具体的にはステンレスで形成しており、吐水時には自転や公転することによりノズルガイド39と常に接触することとなる比較的肉薄の縮径部45の強度を向上させるようにしている。また、後述するが、いたずら等により自公転ノズル12を押圧された場合であっても、肉薄の縮径部45を保護することができる。なお、前述したノズルガイド39が、仮に金属で形成されているとした場合、この金属製の縮径部45との接触により比較的大きな振動が生じるという問題があるが、ノズルガイド39をフッ素系樹脂で成形して形成しているため、このような問題についても回避することができる。
【0052】
ノズル本体44は、下方を開放して給水部47とすると共に、その中途周面に一定間隔で湯水の流入口46を多数穿設しており、球状部材13の旋回室20中に流入した湯水は、下端の給水部47と周面の流入口46から自公転ノズル12中に流入するように構成している。
【0053】
そして、ノズル本体44は、その上半部がノズルガイド39中に挿入され、かつ、その下半部が旋回室20中に収納された状態となっているため、ノズル本体44の上端に位置する縮径部45は、ノズルガイド39の円孔40に挿嵌突出された状態となっている。
【0054】
しかも、縮径部45は、円孔40周縁の係合フランジ41に一定の間隙を保持して当接係合状態となっているので、ノズル本体44が揺動、すなわち自転公転する際に、この係合フランジ41と縮径部45との当接係合部分を略支点として、先端の吐水部21を公転形態で揺動させる。
【0055】
しかも、ノズル本体44の下半部は、周面が球状部材13の旋回室20における入水口34に対向する位置にあるため、図6に示すように、下部半球体37の一対の入水口34から旋回室20に湯水が流入する際に旋回流を発生し渦流となって、ノズル本体44が内筒状の旋回室20の内筒壁に沿って転動し、同時に自転することになり、かかる入水口34からの湯水流入によるノズル本体44の動きが、自公転ノズル12の自転と公転の動作を生起させる。
【0056】
しかも、自公転ノズル12のノズル本体44に自転、公転の動きを付与した入水口34からの湯水は、ノズル本体44の給水部47とノズル本体44周面の流入口46から流入し、自公転ノズル12の送水路48を通って吐水部21へと流出していく。
【0057】
自公転ノズル12の送水路48の終端は、吐水部21の吐水口15に連通されている。すなわち、吐水部21は、自公転ノズル12上端に螺合連設されており、吐水部21の中空内部には中心から一定間隔で多数の整流板49が放射状に立設されており、この整流板49の間の空間が多数の吐水口15にそれぞれ連通されて、自公転ノズル12の送水路48から送水される流体が、該自公転ノズル12の自公転作動にかかわらず、偏奇しないで可及的に均等に各吐水口15より吐水噴射されるように構成している。
【0058】
すなわち、整流板49は、吐水部21に向けて送水路48中を流れてきた湯水が持つ旋回室20で生じた旋回流の旋回成分を消去する役割を担っている。
【0059】
なお、吐水部21に形成した吐水口15に至る吐水路52は、図9に示すように、円盤状の吐水部21の盤面に対して垂直ではなく、いずれの吐水路52も所定方向に向かった一定傾斜角度αをもって形成しており、かかる傾斜状の吐水口15によって、吐水部21の公転による略円錐状の噴射吐水形態が更に大きく拡開して広範囲の広がりを有する円錐形態の噴射吐水を得ることができる。
【0060】
換言すれば、それぞれの吐水路52は、いずれも同じ方向へ、自公転ノズル12のノズル中心軸に対して一定の傾斜角度αをもって形成することにより、例えるならばサーチライトのように湯水を吐水させて、広範囲に吐水させることができ、しかも、吐水の密度を密にして使用者Pに身体全体で湯水を浴びているという心象を与えることができる。また、吐出する湯水の流束を揃え、反作用を大きくして自転動作を促進する効果も有している。
【0061】
この発明の実施例は上記のように構成されており、その作用について説明すると、まず給水管より湯水が給水口に給水されると、チャンバ11内に流入する。
【0062】
チャンバ11内では、まず、チャンバ11内始端口にある押さえ部材22に干渉させることになるが、図4及び図7に示すように、押さえ部材22の通水部30から通水して、チャンバ11内空間に流入し、この流入圧を利用して球状部材13周面の入水口34に流入する。
【0063】
入水口34は、図6及び図7に示すように、左右一対の軸対称に形成されているため、それぞれの入水口34から流入する湯水の流勢によって球状部材13の旋回室20内に旋回流を発生させる。
【0064】
かかる自公転ノズル12の公転の動きは、この旋回流がノズル本体44の下端部を押すことによって付与され、図6及び図9に示すように、自公転ノズル12は縮径部45付近を中心として、球状部材13の中心軸に対して傾斜した状態で回転する。この時、ノズルガイド39のガイド面55とノズル本体44の接触面56が接触した状態で回転するため、自公転ノズル12の傾斜角度は、ノズルガイド39のガイド面55の傾斜角度に依存し、角度βをなす。従って、自公転ノズル12の傾斜角度は、ノズルガイド39のガイド面55の傾斜角度の設定によって制御することができる。
【0065】
また、自公転ノズル12の自転の動きは、ノズルガイド39のガイド面55とノズル本体44の接触面56が接触する際の摩擦抵抗によって付与される。この際、自公転ノズル12の自転の回転方向は、公転の回転方向とは逆回転となる。
【0066】
自公転ノズル12の自公転の回転速度は、旋回室20内の旋回流の流速に依存するが、旋回流の流速は、入水口34の開口面積の設定を変えることにより制御することができる。
【0067】
かかる自公転ノズル12の動作によって吐水部21も自転、公転しながら吐水口15から噴射吐水が行われる。
【0068】
特に、吐水部21の動きは縮径部45と係合フランジ41との当接係合部を略支点とした公転となるため、吐水範囲は略円錐形状の噴射形態となり、拡開状に吐水がなされ、かつ、吐水部が自転するため略円錐形状の範囲の内側にも密に吐水がなされることになり、吐水範囲内に吐水の疎密がなくなり、吐水シャワーによる人体への洗浄効率や押圧揉み効率を向上することができる。
【0069】
また、吐水の方向を変更する場合には、図10及び図11に示すように、壁体Wより突出した吐水部21を手で把持しながら球状部材13をチャンバ11内で回動させて吐水方向を確定することができるものであり、この場合は、図11に示すように、予め吐水部21を介して球状部材13をコイルバネ24の付勢に抗して押さえ部材22と共に押圧しながら押さえ部材22の基部周壁27下端を下チャンバ19の内底面の受部23に当接させると、球状部材13の上部半球体36の球面と上チャンバ18の開口部32の受け面33との間に間隙が形成されるので容易に球状部材13と共に自公転ノズル12の方向を変位させる操作を行うものである。
【0070】
また、いたずら等により、吐水部21を押圧された場合であっても、自公転ノズル12が球状部材13と共にチャンバ11内へ沈み込むため、縮径部45にかかる荷重を分散させて吐水装置Aを壊れにくくすることができる。
【0071】
上述してきたように、本発明に係る吐水装置によれば、外部から洗浄水が供給されるチャンバと、周面に設けた入水口から前記チャンバ内の洗浄水を流入させて旋回流を生じさせる旋回室を内部に有し、この旋回室と外部とを連通する円孔を前記周面に形成するとともに、この円孔が前記チャンバに形成された開口部から露出する状態で前記チャンバ内に収納され、かつ、前記開口部から脱落不可の状態で当該チャンバの内周面により回転自在に支持された球状部材と、前記円孔に挿通される縮径部を有し、この縮径部の先端側に設けた吐水部が前記円孔から突出し、前記縮径部の後端側に設けた給水部が前記旋回室内に自由端の状態で収納され、前記給水部から流入する洗浄水を前記吐水部から吐出可能とした筒状ノズルと、を備え、前記球状部材は、前記チャンバに対して全方位に首振り操作可能であり、かつ、前記筒状ノズルは、前記旋回室内に形成される旋回流により、少なくとも前記縮径部の一部を前記円孔の周縁に接触させた状態で、前記円孔の中心軸の周りを公転することしたため、使用者によりノズルの方向を任意に調整可能とし、また、中抜けを防ぐことができ、しかも、できるだけ少ない流量で広範囲に亘り散水することのできる吐水装置を提供することができる。
【0072】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることはもちろんである。
【0073】
例えば、本実施形態では、押さえ部材22の受け面フランジ26や基部周壁27を切欠し、フランジ切欠部28や基部切欠部29を形成することにより通水部30を構成することとしているが、これに限定されるものではなく、例えば、受け面フランジ26や基部周壁27を貫通する穴を設けて通水部30を構成するようにしても良い。
【0074】
具体的には、図12に示すように、押さえ部材50は、受け面フランジ26にフランジ切欠部28を形成しないで、小孔を一定間隔で多数穿設してフランジ通水孔51とするものであり、フランジ通水孔51は基部周壁27の基部切欠部29の空間と連通状態となるようにしている。
【0075】
このように構成しても、給水口10より供給された湯水を円滑にチャンバ11内へ流入させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本実施形態に係る吐水装置を備えたシャワー室を示した説明図である。
【図2】本実施形態に係る吐水装置の外観を示した説明図である。
【図3】本実施形態に係る吐水装置の分解斜視図である。
【図4】本実施形態に係る吐水装置の断面説明図である。
【図5】本実施形態に係る吐水装置の押さえ部材を示した斜視説明図である。
【図6】旋回室中におけるノズル本体の動きを示した模式図である。
【図7】自公転ノズル及び球状部材の外観を示した斜視図である。
【図8】自公転ノズル及び球状部材の分解斜視図である。
【図9】自公転ノズル及び球状部材の断面説明図である。
【図10】本実施形態に係る吐水装置の動きを示した断面説明図である。
【図11】本実施形態に係る吐水装置の動きを示した一部拡大説明図である。
【図12】他の実施形態に係る吐水装置の押さえ部材を示した斜視説明図である。
【符号の説明】
【0077】
10 給水口
11 チャンバ
12 自公転ノズル
13 球状部材
15 吐水口
20 旋回室
21 吐水部
22 押さえ部材
24 コイルバネ
28 フランジ切欠部
29 基部切欠部
30 通水部
32 開口部
34 入水口
35 座ぐり部
38 上部開口部
39 ノズルガイド
40 円孔
44 ノズル本体
45 縮径部
46 流入口
50 押さえ部材
α 傾斜角度
β 角度
A 吐水装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から洗浄水が供給されるチャンバと、
周面に設けた入水口から前記チャンバ内の洗浄水を流入させて旋回流を生じさせる旋回室を内部に有し、この旋回室と外部とを連通する円孔を前記周面に形成するとともに、この円孔が前記チャンバに形成された開口部から露出する状態で前記チャンバ内に収納され、かつ、前記開口部から脱落不可の状態で当該チャンバの内周面により回転自在に支持された球状部材と、
前記円孔に挿通される縮径部を有し、この縮径部の先端側に設けた吐水部が前記円孔から突出し、前記縮径部の後端側に設けた給水部が前記旋回室内に自由端の状態で収納され、前記給水部から流入する洗浄水を前記吐水部から吐出可能とした筒状ノズルと、
を備え、
前記球状部材は、
前記チャンバに対して全方位に首振り操作可能であり、かつ、前記筒状ノズルは、前記旋回室内に形成される旋回流により、少なくとも前記縮径部の一部を前記円孔の周縁に接触させた状態で、前記円孔の中心軸の周りを公転することを特徴とする吐水装置。
【請求項2】
前記筒状ノズルは、
前記吐水部に形成した吐水口が当該筒状ノズルのノズル中心軸に対して傾斜しており、当該吐水口から前記洗浄水を吐出することにより、前記ノズル中心軸周りに自転可能としたことを特徴とする請求項1記載の吐水装置。
【請求項3】
前記吐水口を複数個形成し、全ての吐水口を前記ノズル中心軸に対して傾斜させたことを特徴とする請求項2記載の吐水装置。
【請求項4】
前記球状部材を支持する前記チャンバの内周面に、前記球状部材に設けた入水口が対向しても、当該入水口が閉塞されることを防止する連通路を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の吐水装置。
【請求項5】
前記連通路は、前記球状部材の周面に沿って形成された座ぐり部からなることを特徴とする請求項4記載の吐水装置。
【請求項6】
前記チャンバは、前記開口部と対向する位置に前記外部から供給される洗浄水が流入する給水口を有し、この給水口と前記球状部材との間に、当該球状部材と接触する接触部と、前記洗浄水を前記入水口側に通水する通水部とを有する押さえ部材を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の吐水装置。
【請求項7】
前記押さえ部材を前記球状部材とは別体で形成するとともに、当該押さえ部材を介して前記球状部材を前記チャンバの開口部側に付勢する付勢手段を配設したことを特徴とする請求項5記載の吐水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−233192(P2009−233192A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84873(P2008−84873)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】