説明

吐水装置

【課題】少ない使用水量で汚れを落とす力と汚れを洗い流す力をともに高めることができ、今までにない高いレベルの洗浄性能を与えることができる優れた吐水装置を提供する。
【解決手段】水の吐水を行う吐水手段と、前記吐水手段より下流に設けられ、前記水を吐水する吐水孔を備えたノズルと、備えた吐水装置において、前記吐水手段は、第1の吐水と、第2の吐水を行うものであって、前記第1の吐水は、前記吐水孔から吐水される水が、前記ノズルからの吐水時に円錐状に拡張されることがないように構成され、且つ、吐水後に前記第2の吐水よりも大きな吐水断面積となるように構成され、前記第2の吐水は、前記吐水孔から吐水される水が、前記ノズルからの吐水時に円錐状に拡張されることがないように構成され、且つ、吐水後に前記第1の吐水よりも速い速度となるように構成され、更に前記吐水手段は、前記第1の吐水と第2の吐水を異なるタイミングで吐水するように構成されていることを特徴とする吐水装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、吐水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、人体の局部を洗浄する吐水装置や体の汚れを洗い流すシャワー装置、あるいは食器の汚れを洗い落とす食洗機、手を洗う水栓装置、洗濯物を洗う洗濯機など、水の吐水を利用して、被洗浄物の汚れを落とす吐水装置が知られている。
【0003】
被洗浄物に付着した汚れを除去するためには、洗浄水が被洗浄物に着水する際の衝撃力により被洗浄物に付着した汚れを被洗浄物から浮かせることと、その浮いた汚れを洗浄水で洗い流すことが必要であった。
【0004】
洗浄水が被洗浄物に着水する際の衝撃力を高めるためには、洗浄水の着水時の速度を高める必要があり、一方、浮いた汚れを洗浄水で洗い流すためには洗浄水の量を多くする必要があった。
【0005】
速い速度で多量の水を吐水すれば高い汚れの除去性能を確保できるが、一方で一度の洗浄で大量の水を必要とするため、節水の観点で更なる改良が求められている。
例えば、衛生洗浄装置における洗浄水の吐水においては以下のような技術が知られている。
【0006】
ここで、使用水量を少なくしても高い洗浄性能が得られるように、給水源より得られる吐水圧よりも高い圧力が間欠的に発生するような脈動推移を起こさせる圧力発生部を備えた衛生洗浄装置が提案されている(特許文献1を参照)。
この特許文献1に開示がされた衛生洗浄装置によれば、圧力の脈動推移を起こすことにより、速度が増加し、かつ脈動流が繰返し現れるような吐水を行なうことができる。
【0007】
そのため、吐水後に速度の異なる部位が合体した大きな吐水群を被洗浄物に着水させることができる。すなわち、速い速度を持つ部位が、その前に吐水された遅い速度を持つ部位に追いつくことで大きな吐水群が形成され、吐水時は少ない水量であっても被洗浄物に着水する時点では大きな吐水群となっているため少ない水量でも心地良い洗浄性能を与えることができるという優れた技術を開示したものである。
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された技術においては、汚れを落とす力(洗浄水の衝撃力により被洗浄物に付着した汚れを被洗浄物から浮かせる性能)と汚れを洗い流す力(浮いた汚れを洗浄水で洗い流す性能)とがトレードオフの関係になってしまうという問題があった。具体的には、吐水の速度差によって大きな吐水群としていくことで吐水の速度が低下してしまうため汚れを洗い流す力は向上するものの汚れを落とす力が低下し、反対に汚れを落とす力を高めると汚れを洗い流す力が低下するものとなっており、より高い洗浄性能を与えるためには更なる改良が望まれるものであった。本発明者らは、より高い洗浄性能を少ない水量で提供することができないかを鋭意研究開発を行っていたものである。
【0009】
なお、ここで、本発明者らは、汚れを洗い流す力と汚れを落とす力を両立させた高い洗浄性能を実現するために、特許文献2のような技術の検討も行なってきた。
【0010】
特許文献2には、オリフィス部から噴出された水は吐水孔に向かってまっすぐに噴出され、空気吸引部を通過し、吐水孔から吐水される衛生洗浄装置が開示されている(特許文献2の[請求項1]、[0006]〜[0014]段落、図2等を参照)。
【0011】
この特許文献2に開示された衛生洗浄装置によれば、噴流による空気の吸込効果(エジェクタ効果)により吸い込まれた空気によって連続吐水される水の表面が乱され、水に細い部位と太い部位とが形成される。水が太くなった部位は、言い換えると水が密となり、被洗浄物に着水した際に汚れを洗い流す力が大きな吐水となっている。さらに、エジェクタ効果を生じさせるオリフィス部から吐水孔に向けてまっすぐに噴出されるので、水がノズル内壁面に衝突することによるエネルギー損失を低減できる、すなわち水の減速による汚れを落とす力の低下を抑制することができるものである。従来の連続吐水の衛生洗浄装置と比して、汚れを洗い流す力と汚れを落とす力を両立した高い洗浄性能を与えることができる優れた技術である。
【0012】
しかしながら、この特許文献2に開示がされた技術において、連続吐水を行なう構成であるために使用される水量が多く必要であるという問題に加え、エジェクタ効果を生じさせる装置が必要となるために装置の大型化やコストの面で課題があった。また、エジェクタ効果によって水の表面の乱れを生じさせることで汚れを洗い流す力を作り出し、給水圧によって得られる水の速度低下の程度を抑えることで汚れを落とす力を作り出す構成であるため、汚れを洗い流す力と汚れを落とす力のメリハリを高くつけることに限界があり、高いレベルでの洗浄性能を与えるという観点においても改良が望まれるものであった。
【0013】
また、同じく本件出願人により出願された特許文献2には、オリフィス部から洗浄水が吐水孔に向かって噴出され、共振室を通過し、吐水孔から吐水される衛生洗浄装置が開示されている(特許文献2の[請求項8]、[0026][0027]段落、図13等を参照)。
【0014】
この特許文献2に開示された衛生洗浄装置は、オリフィス部から洗浄水が噴出されると共振室内が負圧となることを利用し、洗浄水が共振室の負圧に引っ張られて吐水が円錐状に拡張するように構成したものである。一方で、共振室内が一定以上の負圧になると吐水孔から大気が引き込まれて共振室内が正圧となり、吐水は拡張されることなくオリフィス部から噴出されたままの直線状の吐水となる。この円錐状に拡張された吐水が被洗浄物に着水すると吐水断面積が大きくなるため一定の汚れを洗い流す力を与え、直線状の吐水が被洗浄物に着水すると汚れを落とす力を与えることができるようにしたものである。また、この円錐状に拡張された吐水と直線状の吐水とを交互に繰り返し行なうように構成することで、従来の連続吐水の衛生洗浄装置と比して、少ない水量で汚れを洗い流す力と汚れを落とす力を両立した洗浄性能をある程度提供できる優れた技術と言えるものであった。
【0015】
しかしながら、この特許文献2に開示がされた技術においては、連続吐水を行なう構成であることは変わりが無いため使用される水量が多く必要であるという問題があった。また、共振室の負圧を利用して吐水孔から吐水された時点で吐水を拡張し、洗浄水の断面積を大きくすることで汚れを洗い流す力を作り出す構成となっている。そのため、被洗浄物に着水する時点では大きな断面積になり過ぎて返って不快感を与えたり、負圧量によって拡張量が変化するため吐水断面積が安定しなかったり、また、吐水を大きく拡張させることによって吐水の速度が大きく低下してしまうので、吐水断面積は大きくても速度低下が大きくなりすぎて汚れを洗い流す力を十分に与えることができないという問題もあった。また、給水圧を利用することで洗浄水の速度低下の程度を抑え、これにより汚れを落とす力を作り出す構成となっている。そのため、汚れを洗い流す力と汚れを落とす力のメリハリを高くつけることに限界があり、高いレベルでの洗浄性能を与えるという観点においても改良が望まれるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特許第3264274号公報
【特許文献2】特開2002−155567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、本発明はより一層少ない使用水量で汚れを洗い流す力と汚れを落とす力をともに高めることができ、今までにない高レベルの洗浄性能を与えることができる優れた吐水装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
第1の発明は、水の吐水を行う吐水手段と、前記吐水手段より下流に設けられ、前記水を吐水する吐水孔を備えたノズルとを備えた吐水装置において、前記吐水手段は、第1の吐水と、第2の吐水を行うものであって、前記第1の吐水は、前記吐水孔から吐水される水が、前記ノズルからの吐水時に円錐状に拡張されることがないように構成され、且つ、吐水後に前記第2の吐水よりも大きな吐水断面積となるように構成され、前記第2の吐水は、前記吐水孔から吐水される水が、前記ノズルからの吐水時に円錐状に拡張されることがないように構成され、且つ、吐水後に前記第1の吐水よりも速い速度となるように構成され、更に前記吐水手段は、前記第1の吐水と第2の吐水を異なるタイミングで吐水するように構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
この吐水装置によれば、円錐状に拡張して吐水することなく第2の吐水よりも大きな吐水断面積となるように吐水される第1の吐水と、円錐状に拡張して吐水することなく第1の吐水よりも速い速度で吐水される第2の吐水とを、吐水手段によって交互に吐水させることができる。そのため、少ない使用水量を効率的に使って汚れを落とす力と汚れを洗い流す力をともに高めることができ、高い洗浄力を得ることができる。また、第1の吐水、第2の吐水は、吐水孔から円錐状に拡張されることなく吐水される。そのため、吐水孔からの吐水後に洗浄水が広範に広がることがなく、被洗浄物に集中的に洗浄水を着水させることができる。また、少ない使用水量を効率的に使って被洗浄物の洗浄を行うことができる。また、吐水の速度低下も抑えることができるため吐水断面積の拡大とともに広範囲の汚れを確実に洗い流すことができ、非常に高い洗浄性能を提供することができる。
【0020】
第2の発明は、前記第1の吐水及び第2の吐水が、予め決定された所定位置において重なるように同一の吐水孔から交互に吐水されていることを特徴とするものである。
【0021】
この吐水装置によれば、第1の吐水、第2の吐水は、吐水孔から拡張されることなく吐水され、更に、被洗浄物を洗浄したい予め決定された所定の位置に集中的に洗浄水を着水させることができる。よって極めて少ない使用水量で効率的に洗浄を行うことができる。また、汚れを洗い流す力を高めた吐水と汚れを落とす力を高めた吐水が同一の吐水孔から交互に噴射される構成であるため使用水量を大きく低下させることができるとともに、予め決定された被洗浄物を洗浄したいと考えている位置に確実に吐水を集中させることができることから、汚れを洗い流す力と汚れを落とす力を兼ね備えた吐水で被洗浄物を確実に洗浄することができる。
【0022】
なお、ここで言う、「交互に吐水」とは、第1の吐水と第2の吐水とを、完全に順番に吐水させるものに限定されるものではなく、第1の吐水と第2の吐水との間に、第1の吐水あるいは第2の吐水を挟んで吐水させるものも交互と表現させているものである。
【0023】
第3の発明は、前記吐水手段は、前記第1の吐水が、予め決定された所定位置において前記第2の吐水よりも大きな吐水断面積となるように、吐水孔から前記所定位置までの間において、先に吐水された水に後から吐水された水が追いつく追付き量が、第2の吐水よりも第1の吐水の方が多くなるように、前記第1の吐水が始まる時点での初速が第2の吐水が始まる時点での初速より遅くなるように、且つ、第1の吐水が終わる時点での初速が第2の吐水が終わる時点での初速より遅くなるように構成し、前記第2の吐水は、前記所定位置において前記第1の吐水よりも速い速度となるように吐水孔から前記所定位置までの間において、先に吐水された水に後から吐水された水が追いつく追付き量が、第1の吐水よりも第2の吐水の方が少なくなるように、前記第2の吐水が始まる時点での初速が第1の吐水が始める時点での初速より速くなるように、且つ、第2の吐水が終わる時点での初速が第2の吐水が終わる時点での初速より速くなるように構成されていることを特徴とするものである。
【0024】
この吐水装置によれば、第1の吐水と、第2の吐水とを、吐水時の初速を変えて異なるタイミングで吐水を行うという構成をとることによって、吐水地点から所定位置に吐水が所定位置に到達するまでの時間を変えることができる。そのため、先に吐水された洗浄水に後から吐水された洗浄水が追いついて吐水群となる際の大きさを異ならせることが可能となる。また、簡単な構成で吐水断面積が異なり、かつ着水時における速度も異なる二つの吐水群を生成することが可能となったものである。これにより、吐水断面積が大きくて速度が遅くなる吐水群と、吐水断面積が小さくて、速度の低下が抑えられることで一層速い吐水群と、を用いた洗浄を行うことができる。そのため、簡単な構成で極めて少ない水量で良好な洗浄を行うことができるようになったものである。また、前記したことから大きな速度差を与えることが可能となり、よりメリハリのある吐水を簡単な構成で確実に行うことができる。そのため、この点からも、高い汚れを落とす力と高い汚れを洗い流す力を兼ね備えた吐水が行えることになるので、今までにない高いレベルでの洗浄を行うことができるようになったものである。
【0025】
なお、ここで言う、「初速」とは、第1の吐水あるいは第2の吐水が、それぞれ吐水孔からの吐水を開始した際の速度を表現したものである。
【0026】
第4の発明は、前記吐水手段は、前記第2の吐水を、前記第1の吐水よりも初速の変化の増加率が小さくなるように吐水するよう構成されていることを特徴とするものである。
【0027】
この吐水装置によれば、第2の吐水の速度の変化の増加率を小さくしていることによって、先の吐水に対して後から吐水される吐水の速度が速く成り過ぎるのを抑制することができる。そのため、追いつき量を抑えることができるので、過度に大きな吐水群となって速度が低下することを一層顕著に防止することができる。よって、更に今までにない高いレベルでの洗浄を行うことができるものである。
【0028】
第5の発明は、前記吐水手段は、加圧によって吐水を行うものであるとともに、第1の加圧工程と、前記第1の加圧工程とは異なる吐水がされるように構成された第2の加圧工程を備え、前記第1の吐水は、前記第1の加圧工程によって、予め決定された所定位置において前記第2の吐水よりも大きな吐水断面積となるように加圧され、前記第2の吐水は、前記第2の加圧工程によって、前記所定位置において前記第1の吐水よりも速い速度となるように加圧されるように構成されてなることを特徴とするものである。
【0029】
この吐水装置によれば、2つの異なる吐水を行うために、2つの加圧工程を有し、それぞれの工程において最適Tされた吐水が作られるように構成している。そのため、大きな吐水断面積を持つ第1の吐水と、速い速度を持つ第2の吐水を効率よく、かつ確実に生成することができる。
【0030】
第6の発明は、前記吐水手段は、加圧によって吐水を行うものであるとともに、前記第1の加圧工程を行う第1の加圧部と、前記第2の加圧工程を行う第2の加圧部を備えていることを特徴とするものである。
【0031】
この吐水装置は、更に水を加圧する機構部である第1の加圧部と、第2の加圧部とを分離して設けるようにしたため、一層メリハリのある2つの吐水を行うことが可能となり、一層高い汚れを洗い流す力と汚れを落とす力の双方を簡単に実現させることができる。
【0032】
第7の発明は、前記第2の加圧部は、第1の加圧部よりも吐水の初速が速くなるように加圧量が設定されていることを特徴とするものである。
【0033】
この吐水装置によれば、加圧部による加圧量を変えるという極めて簡単な構成によって吐水される洗浄水の速度を変えることが可能となり、第6の発明が有する効果を確実に奏することができる。
【0034】
第8の発明は、前記第2の加圧部は、第1の加圧部よりも吐水の初速が速くなるように、第2の加圧部下流の流路が、第1の加圧部下流の流路よりも小さくなるように構成したことを特徴とするものである。
【0035】
この吐水装置によれば、加圧部の下流の流路径を例えば流路そのものの径を変えるもしくはオリフィス等を入れて変えるという極めて簡単な構成によって、吐水される洗浄水の速度を変えることが可能となる。そのため、極めて簡単な構成により第6の発明が有する効果を確実に奏することができる。
【0036】
第9の発明は、前記第2の加圧部は、第1の加圧部よりも吐水の初速が速くなるように、第2の加圧部下流の蓄圧量が、第1の加圧部下流の蓄圧量よりも小さくなるように構成したことを特徴とするものである。
【0037】
この吐水装置によれば、例えば蓄圧器を入れるもしくはゴムホース等を介在させることで、加圧部の下流の蓄圧量が変わるように設定するという極めて簡単な構成によって、吐水される洗浄水の速度を変えることが可能となる。そのため、極めて簡単な構成により第6の発明が有する効果を確実に奏することができるものである。
【0038】
第10の発明は、前記吐水手段は、前記水に空気を混入させる空気混入手段を備えていることを特徴とするものである。
【0039】
この吐水装置によれば、空気混入手段により水に空気を混入させることができるようになる。そのため吐水面積を円錐状に拡張することなく、強制的に水の中に混入させた空気により簡単に吐水断面積を拡げることができる。その結果、汚れを洗い流すのに必要な水量をさらに高めることができ、また、広げすぎることなく最適な範囲を確実に洗浄することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明の態様によれば、極めて少ない使用水量で汚れを落とす力と汚れを洗い流す力とを今までにない高い次元で兼ね備えた吐水を行うことが可能となり、極めて高い節水性能を備えた上で極めて高い洗浄性能を提供できる吐水装置を提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】吐水装置を例示するための概略構成図である。
【図2】モータ式レシプロタイプの脈動発生部(吐水手段)を例示するための概略構成断面図である。
【図3】圧力波形を例示するための図である。
【図4】ノズルを例示するための模式図である。
【図5】ピストンのストロークの様子を例示した図である。
【図6】脈動発生部によって生成された速度(初速)の変化の様子を示したタイミングチャートである。
【図7】吐水された洗浄水が脈動流により増幅される過程を例示するための模式図である。
【図8】吐水が被洗浄物に当たるときの荷重の変化を示したタイミングチャートである。
【図9】モータ式レシプロタイプの脈動発生部(吐水手段)を例示するための概略構成断面図である。
【図10】脈動発生部(吐水手段)によって生成された圧力変動の様子を示したタイミングチャートである。
【図11】速度(初速)変化の様子を例示するためのタイミングチャートである。
【図12】モータ式レシプロタイプの脈動発生部(吐水手段)を例示するための概略構成断面図である。
【図13】圧力変動の様子を例示するためのタイミングチャートである。
【図14】ピストンのストロークの様子を例示した図である。
【図15】脈動発生部(吐水手段)によって生成された速度(初速)の変化の様子を示したタイミングチャートである。
【図16】モータ式レシプロタイプの脈動発生部(吐水手段)を例示するための概略構成断面図である。
【図17】脈動発生部(吐水手段)によって生成された圧力変動の様子を示したタイミングチャートである。
【図18】速度(初速)変化の様子を例示するためのタイミングチャートである。
【図19】モータ式レシプロタイプの脈動発生部機器(吐水手段)を例示するための概略構成断面図である。
【図20】モータの回転速度を制御する場合を例示するための模式図である。
【図21】モータ式レシプロタイプの脈動発生部(吐水手段)を例示するための概略構成断面図である。
【図22】圧力波形を例示するための模式図である。
【図23】脈動発生部(吐水手段)の概略構成断面図である。
【図24】洗浄水の圧力変動の様子を例示するための模式図である。
【図25】脈動発生コイルの励磁の様子を例示するための電圧波形の図である。
【図26】洗浄水の速度(初速)を例示するためのタイミングチャートである。
【図27】吐水された洗浄水が増幅される過程を例示するための模式図である。
【図28】速度波形と追付き曲線を示したタイミングチャートである。
【図29】洗浄水の圧力変動の様子を例示するためのグラフ図である。
【図30】電圧印加のタイミング、プランジャの動作、圧力波形、吐水された洗浄水の状態を例示するための模式図である。
【図31】脈動発生部(吐水手段)に印加される電圧波形を例示するための模式図である。
【図32】圧力変動によって生じる吐水の速度(初速)変化を例示するためのタイミングチャートである。
【図33】蓄圧部が設けられている場合を例示するための模式図である。
【図34】空気混入部が設けられた吐水装置を例示するための水路系統図である。
【図35】吐水装置をシャワー装置に応用した構成を例示するための概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1の実施の形態について例示をする。尚、他の実施形態における各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略することにする。
まず、本実施の形態に係る吐水装置を例示する。
図1は、吐水装置を例示するための概略構成図である。
【0043】
図1に示すように、吐水装置1の水路系は、吐水装置のケーシングの外部の供給源(図示せず)から給水される入水側弁ユニット50と熱交換ユニット60と、脈動ユニット70とを備える。すなわち、吐水装置1の水路系には、吐水装置1のケーシングの外部の供給源(図示せず)側から順に、入水側弁ユニット50と、熱交換ユニット60と、脈動ユニット70とが設けられている。
そして、脈動発生ユニット70からノズルユニット80の流量調整兼流路切替弁81を経てノズル82に、脈動発生ユニット70により付与された脈動を保った洗浄水が導かれ、当該ノズル82から吐水される。これらの各ユニットは、吐水装置1のケーシングに収納されている。また、制御部10には、電磁弁53、入水温センサ62a、ヒータ61、出水温センサ62b、フロートスイッチ63、脈動発生部(吐水手段)90、流量調節兼流路切替弁81、ノズル82および制御ボタン(図示せず)が接続されている。なお、本発明の吐水装置を衛生洗浄装置として用いる場合、制御ボタンには、強い汚れを落とす力のある「ハードなおしり洗浄」、「ソフトなおしり洗浄」(以下「やわらか洗浄」と呼ぶ)、「ビデ洗浄」の各洗浄モードを選択する洗浄ボタン、洗浄水の水勢を変化させるための水勢変更ボタン、洗浄水の温度を選択できる温度調整ボタン、洗浄を停止するための停止ボタンが含まれる。
【0044】
これら各ユニットは、脈動発生部90を挟んでそれぞれ給水管路で接続されている。即ち、入水側弁ユニット50と熱交換ユニット60は、給水管路55で接続され、脈動発生部90の下流側には流量調節兼流路切替弁81が給水管路75で接続されている。
【0045】
給水管路55は、給水源(例えば、水道管)から洗浄水(例えば、水道水)を直接給水すべく入水側弁ユニット50に配管されている。この給水管路55に導かれた洗浄水は、入水側弁ユニット50のストレーナ51でゴミなどが捕捉されて、逆止弁52に流れ込む。そして、電磁弁53にて管路が開かれると、洗浄水は調圧弁54に流れ込み、所定の圧力(例えば、給水圧:0.110MPa)に調圧された状態で、瞬間式加熱方式の熱交換ユニット60に流入する。このように調圧を受けて流入する洗浄水の流量は200〜600cc/min程度となるようにされている。なお、給水管路55を便器洗浄用の洗浄水を貯留する洗浄水タンク(図示せず)から分岐して入水側弁ユニット50に配管することもできる。
【0046】
前述した入水側弁ユニット50の下流の熱交換ユニット60は、ヒータ61を内蔵する熱交換部62を備える。この熱交換ユニット60は、熱交換部62へ流入する洗浄水の温度と熱交換部62から流出する洗浄水の温度とを入水温センサ62aと出水温センサ62bで検出しつつ、その検出温度を基にして、洗浄水の設定温度の洗浄水に加熱するようにヒータ61の加熱動作を制御する。すなわち、熱交換ユニット60においては、洗浄水の温度が所定の設定温度となるようにヒータ61による加熱が行われる。この場合、入水温センサ62aからの検出温度と、出水温センサ62bからの検出温度とに基づいて、洗浄水の温度が所定の設定温度となるように、制御部10によりヒータ61の加熱動作が制御される。
【0047】
そして、このようにして温水化された洗浄水は、後述する脈動発生部90に流入し脈動を付加された後、流量調節兼流路切替弁81に流入する。なお、脈動とは、脈動発生部によって生じる圧力変動のことであり、圧力変動を起こす装置類を脈動発生部と呼んでいる。なお、本明細書でいう脈動発生部を、吐水孔から吐水される洗浄水の物理量を制御する吐水手段ということもできる。
【0048】
また、この熱交換ユニット60は、熱交換部62内の水位を検出するフロートスイッチ63を有する。このフロートスイッチ63は、ヒータ61が水没する所定の水位以上になるとその旨の信号を出力するように構成されている。そして、制御部10は、この信号を入力している状況下でヒータ61を通電制御するので、水没していないヒータ61に通電してしまうというような事態、いわゆるヒータ61の空焚きを防止することができる。なお、熱交換ユニット60のヒータ61は、制御器10にてフィードフォワード制御とフィードバック制御を組合せながら最適に制御される。
【0049】
更に、この熱交換ユニット60は、熱交換部62からの洗浄水出口、即ち、熱交換部62下流の管路の熱交換部接続箇所に、バキュームブレーカ64と安全弁65とを備える。バキュームブレーカ64は、負圧となった管路内に大気を導入して、熱交換部下流の管路内の洗浄水を断ち切り、熱交換部下流側から洗浄水の逆流を防止する。すなわち、バキュームブレーカ64は、負圧となった管路内に大気を導入して熱交換部下流の管路内にある洗浄水をノズル82から排出させる。そのため、管路内が負圧となった場合であっても、熱交換部下流側から熱交換部62に洗浄水が逆流することを防止することができる。
また、安全弁65は、給水管路67内の水圧が所定値を超えると開弁し、捨水配管66へ洗浄水を排出することにより、異常時の機器の破損、ホースの外れ等の不具合を防止している。
【0050】
続いて、脈動発生部90の構造について例示をする。
図2は、モータ式レシプロタイプの脈動発生部90を例示するための概略構成断面図である。
脈動発生部90は、第一の脈動発生部91と第二の脈動発生部92とからなる2連構成とされている。第一の脈動発生部91と第二の脈動発生部92には、それぞれ円柱状の空間を有するシリンダ910a、920aが設けられている。シリンダ910a、920a内には、ピストン910b、920bが設けられている。ピストン910b、920bには、Oリング910c、920cが装着されている。ピストン910b、920bとシリンダ910a、920bとで画されたそれぞれの空間が加圧室910d、920dとなる。
【0051】
加圧室910d、920dには、洗浄水入り口910e、920eが給水管67から分岐されて洗浄水が流入するようになっている。すなわち、加圧室910d、920dには、洗浄水入り口910e、920eがそれぞれ設けられている。そして、給水管67から分岐された図示しない管路が洗浄水入り口910e、920eに接続され、給水管67から加圧室910d、920dに洗浄水を流入させることができるようになっている。
その際、アンブレラパッキン910f、920fによって、逆流しないようになっている。すなわち、洗浄水入り口910e、920eが加圧室910d、920dに開口する部分にはアンブレラパッキン910f、920fが設けられ、加圧室910d、920d内に流入した洗浄水が給水管67側へ逆流しないようになっている。
また、洗浄水出口910g、920gがそれぞれ設けられ、途中で合流して、加圧された洗浄水が出水する。すなわち、加圧室910d、920dの天井部分には洗浄水出口910g、920gがそれぞれ設けられている。洗浄水出口910g、920gには配管がそれぞれ接続されており、接続されたそれぞれの配管が分岐部を介して給水管路75と接続されている。そのため、加圧室910d、920dから流出した洗浄水は、途中で合流して、加圧された洗浄水として給水管路75に出水する。
【0052】
モータ911の回転軸にはギア912が取り付けられ、ギア912とギア913とがかみ合っている。また、ギア913には、第一の脈動発生部91のピストン910bを動作させるクランクシャフト914と、第二の脈動発生部92のピストン920bを動作させるクランクシャフト924とが、異なる位置に取り付けられている。また、クランクシャフト914、924は、ピストン保持部915、925を介してピストン910b、920bに取り付けられる。なお、ギア913に取り付けられるクランクシャフトの位置は、ピストン910bとピストン920bのストローク量が異なるように、取り付け半径が異なっており、かつ、90°位相の異なる位置に取り付けられている。また、第二の脈動発生部92のピストン920bのストロークが、第一の脈動発生部91のピストン910bのストロークよりも短くかつ、位相が90°ずれて動作するように設定されている。このように、ギア913とクランクシャフト914、924の取付位置により、あらかじめピストン910b、920bの動作が設定されているので、モータの通電スイッチをON/OFFするだけの簡単な制御で脈動発生部90に所定の動作をさせることができる。
【0053】
使用者により洗浄ボタンが選択、押されると、モータ911に通電され、回転軸が回転するので、ギア912、913、クランクシャフト914、924、ピストン保持部915、925を介して、ピストン910b、920bが上下に往復動する。加圧室内が洗浄水で満たされている際に、ピストン910b(920b)が、下死点(原位置)から上死点に移動すると加圧室の容積が縮小するので、洗浄水が加圧されて、給水管路75に向けて押し流される。
そして、その後、上死点から下死点(原位置)に復帰する際に、加圧室内の圧力が低下するとともに、アンブレラパッキン910f、920fが開き、洗浄水が加圧室内に流入する。その後、次回のピストン移動の際に、洗浄水が再度加圧され、この工程を連続して行うことで、圧力変動すなわち脈動が発生する。
図5は、ピストン910b、920bのストロークの様子を例示した図である。
図5に示すように、ピストン920bのストロークは、ピストン910bのストロークの約半分となり、かつ、90°位相がずれるように設定されている。なお、周期は、同一である。
【0054】
この場合、脈動発生部90には給水管路55を経て、給水圧の洗浄水が給水されている。よって、前述したように、ピストンの原位置復帰の間にアンブレラパッキン910f、920fを経て加圧室910d、920d内に流れ込んだ洗浄水はアンブレラパッキン910f、920fによる圧力損失や下流側の洗浄水の引き込みの影響を受けて給水圧のままではないものの、給水管路75に送られる。すなわち、ピストンが原位置(下死点)に復帰するまでの間にアンブレラパッキン910f、920fを介して加圧室910d、920d内に流れ込んだ洗浄水は、給水管路75に向けて流出する。この場合、給水管路75に流出する洗浄水の圧力は、アンブレラパッキン910f、920fによる圧力損失や下流側の洗浄水の引き込みの影響を受けて、給水圧とは異なるものとなる。
【0055】
この様子を図でもって表す。
図3に示す様に、洗浄水は、脈動発生部90への導入水圧Pin(給水圧)を基準に脈動した圧力で脈動発生部90から給水管路75、ひいてはノズルユニット80に送られ、被洗浄物に向けて吐水される。なお、図3に示す圧力波形は、後述する吐水孔401もしくは吐水孔402、または、これらに連通する洗浄渦室301もしくは302において測定したものである。また、圧力計としては応答性が高いものを用い、高いサンプリング周期で測定するようにした。また、図中のMTは、1つの脈動周期を示している。
脈動発生部90は、あらかじめ設定されたピストンの動作によって、モータをON/OFFするだけの簡単な制御で、図3に示すように、1つの脈動周期において、少なくとも1つの凸状ピークと前後の傾きが正となる変曲点を有するように、周期的な脈動推移を発生させている。すなわち、モータをON/OFFするだけの簡単な制御により、脈動発生部90にあらかじめ設定されたピストンの動作を行わせることができる。その結果、図3に示すように、1つの脈動周期MTにおいて、少なくとも1つの凸状ピークと、前後の傾きが正となる変曲点とを有する周期的な脈動推移を発生させることができる。
【0056】
次に、アキュームレータ73について例示をする。アキュームレータ73は、ハウジング73aと、ハウジング内のダンパ室73bと、このダンパ室に配置されたダンパ73cとを有する。
このような構成を有するアキュームレータ73は、ダンパ73cの作用により脈動発生部90の上流側の給水管路67にかかる水撃を低減する。このため、熱交換部62の洗浄水温度分布に及ぼす水撃の影響を緩和することができ、洗浄水の温度を安定化することができる。この場合、アキュームレータ73は脈動発生部90に近接配置したり脈動発生部90と一体的に配置することが、脈動発生部90で発生された脈動を上流側に伝播することを速やかにかつ効果的に回避できる観点から好ましい。すなわち、アキュームレータ73を脈動発生部90に近接配置したり、アキュームレータ73と脈動発生部90とを一体化したりすることが好ましい。その様にすれば、脈動発生部90において発生した脈動が上流側に伝播することを速やか、かつ効果的に抑制することができる。
【0057】
次に、ノズルユニット80について例示をする。ノズルユニット80に流量調節兼流路切替弁81が配設されており、給水管路86でノズル82に接続される。すなわち、ノズルユニット80には流量調節兼流路切替弁81が配設されている。また、流量調節兼流路切替弁81には、給水管路86を介してノズル82が接続されている。そして、脈動発生ユニット70から送られた脈動流の洗浄水の供給先を、ノズル82の各流路83、84、85(図4を参照)に切替、かつその流路を調節する。すなわち、流量調節兼流路切替弁81は、脈動発生ユニット70から送られてきた脈動を有する洗浄水が、ノズル82に設けられた各流路83、84、85毎に供給されるように流路の切替を行う。また、その際、流路断面積を調節することで流量調節を行う。
【0058】
次に、ノズル82について例示をする。図4(a)、(b)にノズルの構造図を示す。ノズル82内にある複数の洗浄流路83、84、85は、それぞれノズル先端近傍にある「おしり」(被洗浄物)に向って洗浄水を吐出するおしり洗浄用の吐水孔401とビデ洗浄用の吐水孔402に連通する。吐水孔401、402の上流には洗浄流路83、85を通水する洗浄水を旋回させながら旋回流として吐水孔から吐水させるために洗浄水渦室301、302を設けてある。
すなわち、ノズル82の先端近傍には、「おしり」(被洗浄物)に向って洗浄水を吐出するおしり洗浄用の吐水孔401と、ビデ洗浄用の吐水孔402とが設けられている。吐水孔401の上流側には洗浄水渦室301が連通するようにして設けられている。吐水孔402の上流側には洗浄水渦室302が連通するようにして設けられている。
【0059】
洗浄流路83は、円筒状を呈する洗浄水渦室302の接線方向に接続されている。また、洗浄流路85は、円筒状を呈する洗浄水渦室301の接線方向に接続されている。洗浄流路84は、洗浄水渦室301の軸中心に向けて接続されている。接線方向から通水された洗浄水は、洗浄水渦室301、302の内壁を沿うように旋回し、旋回した洗浄水は、旋回流として吐水孔401、402から吐水される。
一方、洗浄流路84は洗浄渦室301の上方に連通し、吐水孔401と連通している。すなわち、洗浄流路83は、洗浄水渦室302の下部に接続されている。また、洗浄流路84は、洗浄渦室301の上部に接続され、洗浄流路85は、洗浄渦室301の下部に接続されている。
【0060】
なお、洗浄水渦室301、302は必ずしも設ける必要はない。
【0061】
ここで、本実施形態における洗浄水の吐水の様子について例示をする。
図6は、脈動発生部90によって生成された速度(初速)の変化の様子を示したタイミングチャートである。図6における速度(初速)の変化は、図5のピストン910b、920bの動作と連動している。図5における「S1」のタイミングでピストン920bが上死点までストロークすると、加圧部920d内の洗浄水は加圧され、洗浄水が吐水孔から吐水された時点での速度(初速)は、図6に示す速度V2まで加速される。その際、前後の傾きが正となる変曲点を有するように速度波形が変化する。その後、ピストン910bが上死点に到達するタイミングで、洗浄水の速度は、一つの凸状のピーク速度V4に到達する。そして、ピストン910b、920bが下降すると共に、洗浄水の速度もV1まで下降する。
【0062】
続いて、前述のようにして作られた速度波形によって得られる洗浄水の状態について例示する。まず、図3と図6の図を用いて、圧力変動と速度変化の関係について例示する。脈動発生部90により圧力の脈動推移が発生すると、速度(初速)Vも同様に変動する。吐水される洗浄水は、圧力変動がPmaxになると、速度も最大速度Vmaxになり、それぞれの時間の圧力に対応し、速度も変動する。よって、図3の脈動流の洗浄水の圧力波形における各部位をP1、P2、P3、P4、P5とすると、速度も図6上のV1、V2、V3、V4、V5がそれぞれの番号同士で対応する。すなわち、洗浄水は、同一の吐水孔から、吐水孔から吐水された時点の速度(初速)をV1、V2、V3、V4、V5と変化させながら、被洗浄物の同じ部位に向けて吐水され、被洗浄物の同じ部位に着水する。
【0063】
この速度変化によって生じる洗浄水の状態を例示する。まず、最初の時点で、V1の速度で洗浄水が吐水されたとする。その後、ある時間間隔をおいて、V2の速度で洗浄水が吐水される。このとき、V2の速度で吐水された洗浄水は、V1の速度で吐水された洗浄水よりも速い速度となっているため、V2の速度で吐水された洗浄水と、V1の速度で吐水された洗浄水の距離は縮まる。すなわち、洗浄水の速度V2は速度V1よりも速いので、速度V1で吐水された洗浄水と、速度V2で吐水された洗浄水との間の距離が縮まることになる。
そして、それぞれの洗浄水が、被洗浄物に着水するまでに、V2の速度で吐水された洗浄水が、V1の速度で吐水された洗浄水に追付くことで、V1の速度で吐水された洗浄水とV2の速度で吐水された洗浄水との間にある洗浄水が一体化し、吐水断面積の大きな吐水群(以下、単に「大きな吐水群」と称する)を形成する。つまり、速度波形において、速度の立ち上がりの勾配が生じたときには、吐水群が形成されることになる。よって、この関係は、V3の速度で吐水された洗浄水と、V4の速度で吐水された洗浄水との間にも成り立つ。このとき、速度V3および速度V4は、速度V1、速度V2に比べ速くなっている。このように、速度が速い場合、吐水されてから被洗浄物に着水するまでの間の時間は短くなる。よって、V3の速度で吐水された洗浄水が被洗浄物に着水するまでの間に、V4の速度で吐水された洗浄水が追付くことができた距離は、僅かとなり、一体化された吐水群はあまり形成されない。そのため、それぞれの速度で吐水された洗浄水が、連続的に被洗浄物に着水することになる。また、速度V1から凸状のピーク速度V4が現れる間に、前後が正の傾きとなる変曲点が現れるように制御すれば、速度V1から速度V2にかけて生成された吐水群と、速度V3から速度V4にかけて生成された吐水群は、一体化せずに独立して被洗浄物に着水することができる。
【0064】
続いて、吐水された洗浄水の状態の変化を、図を用いて例示する。
図7は、脈動流の洗浄水を仮定の吐水孔40から吐水した場合、その吐水された洗浄水が脈動流により増幅される過程を例示するための模式図である。
前述のように、速度波形の立ち上がりの勾配部分においては、速い速度で吐水された洗浄水が、その前に遅い速度で吐水された洗浄水と順次合体することにより、大きな吐水群となって、被洗浄物(洗浄面)に着水することになる。
【0065】
まず、図7の(A)に示すように、V1の速度で洗浄水が吐水され、その後、V2の速度で洗浄水が吐水されると、V2の速度で吐水された洗浄水は、それより先にでた遅い速度で吐水された洗浄水に追付き、一体化し大きな吐水群を形成しながら被洗浄物に向って進行する。
【0066】
そして、図7の(B)に示すように、V2の速度で吐水された洗浄水が、被洗浄物に着水するときには、V1の速度で吐水された洗浄水にも追付き、一体化して、大きな吐水群となる。すなわち、速度V2は速度V1より速度が速いから、速度V1で吐水された洗浄水は速度V2で吐水された洗浄水及びこれらの間にある洗浄水と合体されて、大きな吐水群となる。
【0067】
このようにして形成された吐水群は体積が大きくなるので、被洗浄物被洗浄物に当たる面積が大きくなるため、この吐水群が着水した際には、汚れを洗い流す力が大きく、確実に汚れを洗い流すことができる。
【0068】
一方で、図7の(C)、(D)に示すように、速度V3、および速度V4が含まれる領域側、すなわち速度が速い領域側における速度の立ち上がり勾配部分では、全体的に速度が速い。そのため、被洗浄物に着水するまでの短い時間では、V3の速度で吐水された洗浄水とV4の速度で吐水された洗浄水との間の距離が縮まりにくい。その結果、洗浄水が円錐状に拡張されることなく直線状に吐水されて、被洗浄物に着水する時点では、V4の速度で吐水された洗浄水はV3の速度で吐水された洗浄水にはあまり追付かず、それぞれの速度を持った洗浄水が吐水断面積の小さな吐水群(以下、単に「小さな吐水群」と称する)として、連続的に被洗浄物に着水することになる。よって、この場合における洗浄水は、被洗浄物に当たるときに、面積、質量は小さいものの、速度が速く、その結果、衝突エネルギー(汚れを落とす力)が大きくなっている。
【0069】
ここで、速い速度で吐水された洗浄水は、遅い速度で吐水された洗浄水にあまり追付かないので、速い速度で吐水された洗浄水は、ほとんど減速されずに被洗浄物にまで到達する。そのため、汚れを落とす力が大きく、確実に汚れを落とすことができる。
また、このとき、速度V1から凸状のピーク速度V4が現れるまでの間に、前後が正の傾きとなる変曲点が現れるように制御することで、速度V1から速度V2にかけて生成された吐水群が被洗浄物に着水するタイミングと、速度V3から速度V4にかけて生成された吐水群が被洗浄物に着水するタイミングとの間に時間間隔を生じさせることができる。その結果、それぞれを一体化させずに独立して被洗浄物に着水させることができる。
【0070】
すなわち、速度V2で吐水されることで生成された遅くて大きな吐水群が被洗浄物に着水するときには、吐水群が大きく成長しているため、洗浄水が大きな面積をもって着水することになる。そのため、あたかも大量の水で洗っているかのような汚れを洗い流す力を与えることができる。
【0071】
一方、速度V4で吐水されることで生成された速くて小さな吐水群が被洗浄物に着水するときには、面積はあまり大きくならないものの、速い速度の部分が、先にでた遅い速度にはほとんど追付かず、速い速度を維持したままで着水することになる。そのため、速い速度によって、汚れを落とす力を与えることができる。
【0072】
また、遅くて大きな吐水群と速くて小さな吐水群とがお互いに干渉することなく被洗浄物に異なる速度で独立して着水するので、例えば被洗浄物が人体である場合には、汚れを洗い流す力と汚れを落とす力を連続して体感させることができる。
なお、それぞれの吐水群が被洗浄物に着水する時の時間間隔は、十分短いため、例えば被洗浄物が人体である場合には、それぞれの吐水群がほぼ同時に着水したと感じさせることができる。そのため、汚れを落とす力と汚れを洗い流す力とを両立させた洗浄と感じさせることができる。
【0073】
ここで、図8は、本実施例における吐水が、被洗浄物に当たるときの荷重の変化を示したタイミングチャートである。
図8に示すように、1つの周期(脈動周期MT)のなかに、2つの「山」が生じている。「山」は、後に吐水された洗浄水が追付くことで荷重値が大きくなったことをしめしている。また、2つの「山」は、1つの周期のなかで2つの独立した吐水群が生成されたこと、すなわち、遅くて大きな吐水群と、速くて小さな吐水群が独立して生成されたことを示している。この場合、遅くて大きな吐水群で汚れを洗い流す力を与え、後から出る速くて小さな吐水群で汚れを落とす力を与えることができる。
【0074】
なお、この荷重の変化について、それぞれの「山」を積分した値がM・Vすなわち衝撃力となるが、衝撃力の値を十分大きくすることで、「当たる洗浄力」を得ることができる。また、ある衝撃力を持って被洗浄物に当たるということは、後から吐水された洗浄水が追付いて、大きな衝撃力を有するものとなったことを示している。すなわち、見た目上は「塊(水玉状)」でなくても、衝撃力的には吐水群となっていればよいことを示している。
【0075】
なお、2つの独立した吐水群の間隔は、脈動周期MTの半分程度となる。したがって、より連続感のあり、かつ高い洗浄性能をえることができる。また、それぞれの吐水群は、速度V4で吐水された洗浄水にそれぞれ遅れて吐水された速度V5および速度V1で吐水された洗浄水に繋がれたような状態となる。
【0076】
次に、V2を基点として生成される吐水群がV4を基点として生成される吐水群にくらべ、大きくなることについて説明する。すなわち、速度が遅い領域(速度V1、速度V2が含まれる領域)において生成された吐水群が、速度が速い領域(速度V3、速度V4が含まれる領域)において生成された吐水群にくらべて大きくなることについて説明する。
【0077】
ここで、吐水群が生成される過程について説明する。
吐水群は、洗浄水が吐水孔40から吐水され、被洗浄物に当たるまでの時間において、速い速度で後から吐水された洗浄水が、遅い速度で先に吐水された洗浄水に追いつくことで生成される。
【0078】
このとき、速度が速い領域(速度(初速)V3、速度V4が含まれる領域)で吐水群を生成しようとする場合には、吐水孔から吐水された洗浄水が被洗浄物に到着するまでの時間は短くなる。たとえば、速度が15m/secのときに60mm先の被洗浄物に到達するまでの時間は、4msec(ミリ秒)となる。
【0079】
一方、速度が遅い領域(速度(初速)V1、速度V2が含まれる領域)で吐水群を生成しようとする場合には、吐水孔から吐水された洗浄水が被洗浄物に到着するまでの時間は、速度が速い領域の場合と比べて長くなる。たとえば、速度が7.5m/secの時に60mm先の被洗浄物に到達するまでの時間は、8msecとなる。
【0080】
このときに、同じ量の速度差がある場合には、被洗浄物に到達するまでの時間が長いほうが、追いつける量は多いことになる。すなわち、速度が遅い領域と速度が速い領域において、先に吐水された洗浄水と後から吐水された洗浄水との速度差が同じとなる部分がある場合には、被洗浄物に到達するまでの時間が長いほうが、追いつける量が多くなることになる。そのため、被洗浄物に到達するまでの時間がより長い速度が遅い領域における追付き量の方が多くなるので、より大きな吐水群が生成されることになる。
【0081】
このようにして生成された吐水群は、より大きな吐水群となっているため、吐水群の断面積は通常よりも大きくなる。したがって、使用水量が少ないにもかかわらず、断面積の大きな吐水を当てることができるので、あたかも多い流量で洗浄されているような洗浄性能、すなわち汚れを洗い流す力を得ることができる。
【0082】
一方、速度が速い領域においては、速い速度V4で後から吐水された洗浄水が先に吐水された洗浄水に追いつきにくいので、吐水群が大きくなる前に被洗浄物に着水することになる。そのため、断面積が小さく、汚れを洗い流す力は乏しくなる。しかし、先に吐水された洗浄水に追いつかないということは、先に吐水された遅い速度の洗浄水にエネルギーを吸収されることなく被洗浄物に着水できることになるので、速い速度を維持したまま着水することができる。このときの洗浄の汚れを落とす力(汚れを落とす力)に関わる衝撃力は、速度が速くなるため大きくなる。
【0083】
したがって、遅くて大きな吐水群で汚れを洗い流す力を出し、速くて小さな吐水群で汚れを落とす力をだすことで、汚れを洗い流す力と汚れを落とす力を両立した快適性の高い洗浄を実現することができる。
また、遅くて大きな吐水群および速くて小さな吐水群はそれぞれ十分な衝撃力を持っている。また、前述したように脈動周期MTに対して、約半分の周期で着水させることができる。この場合、それぞれの吐水群が被洗浄物に着水する時間間隔が十分短いため、それぞれの吐水群がほぼ同時に着水したと感じさせることができる。そのため、汚れを落とす力と汚れを洗い流す力を備えた連続感のある洗浄として体感させることができる。
【0084】
続いて第2の実施形態について例示をする。
図9は、モータ式レシプロタイプの脈動発生部(吐水手段)90aを例示するための概略構成断面図である。
脈動発生部90aは、第一の脈動発生部91aと第二の脈動発生部92aとからなる2連構成とされている。第一の脈動発生部91aと第二の脈動発生部92aには、それぞれ円柱状の空間を有するシリンダ910a、920aが設けられている。シリンダ910a、920a内には、ピストン910b、920bが設けられている。ピストン910b、920bには、Oリング910c、920cが装着されている。ピストン910b、920bとシリンダ910a、920aとで画されたそれぞれの空間が加圧室910d、920dとなる。
【0085】
加圧室910d、920dには、洗浄水入り口910e、920eが給水管67から分岐されて洗浄水が流入するようになっている。すなわち、加圧室910d、920dには、洗浄水入り口910e、920eがそれぞれ設けられている。そして、給水管67から分岐された図示しない管路が洗浄水入り口910e、920eに接続され、給水管67から加圧室910d、920dに洗浄水を流入させることができるようになっている。
その際、アンブレラパッキン910f、920fによって、逆流しないようになっている。すなわち、洗浄水入り口910e、920eが加圧室910d、920dに開口する部分にはアンブレラパッキン910f、920fが設けられ、加圧室910d、920d内に流入した洗浄水が給水管67側へ逆流しないようになっている。 また、洗浄水出口910g、920gがそれぞれ設けられ、途中で合流して、加圧された洗浄水が出水する。すなわち、加圧室910d、920dの天井部分には洗浄水出口910g、920gがそれぞれ設けられている。洗浄水出口910g、920gには配管がそれぞれ接続されており、接続されたそれぞれの配管が分岐部を介して給水管路75と接続されている。そのため、加圧室910d、920dから流出した洗浄水は、途中で合流して、加圧された洗浄水として給水管路75に出水する。
【0086】
その際、アンブレラパッキン910h、920hによって、こちらも逆流を防止している。すなわち、洗浄水出口910g、920gにはアンブレラパッキン910h、920hが設けられ、給水管路75側に流出した洗浄水が加圧室910d、920dに逆流しないようになっている。
【0087】
モータ911の回転軸にはギア912が取り付けられ、ギア912とギア913とがかみ合っている。また、ギア913には、第一の脈動発生部91aのピストン910bを動作させるクランクシャフト914と、第二の脈動発生部92aのピストン920bを動作させるクランクシャフト924とが、異なる位置に取り付けられている。また、クランクシャフト914、924は、ピストン保持部915、925を介してピストン910b、920bに取り付けられる。なお、ギア913に取り付けられるクランクシャフトの位置は、ピストン910bとピストン920bのストローク量が異なるように、取り付け半径が異なっており、かつ、90°位相の異なる位置に取り付けられている。また、第二の脈動発生部92aのピストン920bのストロークが、第一の脈動発生部91のピストン910bのストロークよりも短くかつ、位相が90°ずれて動作するように設定されている。このように、ギア913とクランクシャフト914、924の取付位置により、あらかじめピストン910b、920bの動作が設定されているので、モータの通電スイッチをON/OFFするだけの簡単な制御で脈動発生部90aに所定の動作をさせることができる。
【0088】
使用者により洗浄ボタンが選択、押されるとモータ911に通電され、回転軸が回転するので、ギア912、913、クランクシャフト914、ピストン保持部915、925を介して、ピストン910b、920bが上下に往復動する。本実施の形態においても、図2において例示をしたものと同様に、加圧室の容積を変化させることにより圧力変動をさせる。すなわち、脈動を発生させる。このとき、ピストン910b、920bのストロークと位相は、図5に示すようになる。すなわち、ピストン920bのストロークは、ピストン910bのストロークの約半分となり、かつ、90°位相がずれるように設定されている。なお、周期は、同一である。
【0089】
次に、脈動発生部90aによって生成される圧力の変動の様子を図10に基いて説明する。
図10は、脈動発生部90aによって生成された圧力変動の様子を示したタイミングチャートである。
図10において、図5における「S1」のタイミングでピストン920bが上死点までストロークすると、加圧部920d内の洗浄水は加圧され、洗浄水の圧力は、図10に示す圧力Pm1まで加圧される。その後、ピストン920bが下がると同時に脈動発生部91aのピストン910bが上昇し上死点に到達するタイミングで、圧力は、凸状のピーク圧力Pm3に到達する。そして、ピストン910bが下降すると共に、圧力もPm4まで下降する。
【0090】
本実施の形態においても、ピストンの動作を制御することにより、圧力Pm4から凸状のピーク圧力Pm3が現れるまでの間に、前後が正の傾きとなる変曲点が現れる。それによって、圧力Pm4から圧力Pm1にかけて生成された吐水群と、圧力Pm2から圧力Pm3にかけて生成された吐水群は、一体化せずに独立して被洗浄物に着水することができる。そのため、本実施の形態においても前述したものと同様に、汚れを洗い流す力と汚れを落とす力を兼ね備えた高い洗浄性能を実現することができる。
【0091】
このような圧力変動を生じさせることにより、吐水孔40から吐水される洗浄水の速度も同様に変化させることができる。この場合、図10の圧力波形における各部位Pm1、Pm2、Pm3、Pm4と、図11の速度波形における各部位Vm1、Vm2、Vm3、Vm4とがそれぞれ対応関係にある。
そのため、本実施の形態においても、速度変動を生じさせることができる。そのため、速度Vm1で吐水された洗浄水は、それよりも先に吐水された洗浄水に追いつきながら、第一の吐水群(大きな吐水群)を形成することができる。また、速度Vm3で吐水された洗浄水は、それよりも先に吐水された洗浄水に追いつきながら、第二の吐水群(小さな吐水群)を形成する。その際、速度Vm1が形成されるタイミングと、速度Vm3が形成されるタイミングとの間には、十分な時間間隔がある。したがって、第二の吐水群が生成されるときには、第一の吐水群は十分進んだ位置にあるので、被洗浄物に着水する際には、それぞれが独立して着水することができる。よって、速度の異なる吐水群を連続して着水させることができるので、それぞれの吐水群により異なる洗浄力を与えることができる。
【0092】
また、この場合、加圧室の洗浄水出口には下流側からの洗浄水の逆流を防ぐアンブレラパッキン910h、920hが設けられている。そのため、図10に示すとおり、給水圧Pinよりも高い圧力領域、すなわち、圧力変動の最小値が給水圧Pinよりも高い圧力となるような圧力変動を生じさせることができる。これによって、給水源の水圧が低い地域であっても、高い洗浄性能を実現することができる。
【0093】
なお、この場合、シリンダの数を1つとし、加圧室をシリンダの軸方向に2つ設け、それぞれのストロークが異なるように設定してもよい。また、シリンダを対向して設けてもよい。また、シリンダを3つ以上設け、それぞれ位相差をつけることにより、一つの凸状ピークと、前後の傾きが正となる変曲点を2つ有するような速度変動を生じさせてもよい。この場合、2つの凸状ピークと、前後の傾きが正となる偏曲点を1つ有する速度変動を生じさせるようにしてもよい。それによって、3つの洗浄力を持つ吐水を生成でき、さらに多様な洗浄性能を実現することができる。また、複数のシリンダに対し、それぞれにモータを備えるようにしても良い。
【0094】
続いて第3の実施形態について例示をする。
図12は、モータ式レシプロタイプの脈動発生部(吐水手段)90bを例示するための概略構成断面図である。
脈動発生部90bは、第一の脈動発生部91bと第二の脈動発生部92bとからなる2連構成とされている。第一の脈動発生部91bと第二の脈動発生部92bには、それぞれ円柱状の空間を有するシリンダ910a、920aが設けられている。シリンダ910a、920a内には、ピストン910b、920bが設けられている。ピストン910b、920bには、Oリング910c、920cが装着されている。ピストン910b、920bとシリンダ910a、920aとで画されたそれぞれの空間が加圧室910d、920dとなる。
【0095】
加圧室910d、920dには、洗浄水入り口910e、920eが給水管67から分岐されて洗浄水が流入するようになっている。すなわち、加圧室910d、920dには、洗浄水入り口910e、920eがそれぞれ設けられている。そして、給水管67から分岐された図示しない管路が洗浄水入り口910e、920eに接続され、給水管67から加圧室910d、920dに洗浄水を流入させることができるようになっている。
その際、アンブレラパッキン910f、920fによって、逆流しないようになっている。すなわち、洗浄水入り口910e、920eが加圧室910d、920dに開口する部分にはアンブレラパッキン910f、920fが設けられ、加圧室910d、920d内に流入した洗浄水が給水管67側へ逆流しないようになっている。
【0096】
また、洗浄水出口910g、920gがそれぞれ設けられ、途中で合流して、加圧された洗浄水が出水する。すなわち、加圧室910d、920dの天井部分には洗浄水出口910g、920gがそれぞれ設けられている。洗浄水出口910g、920gには配管がそれぞれ接続されており、接続されたそれぞれの配管が分岐部を介して給水管路75と接続されている。そのため、加圧室910d、920dから流出した洗浄水は、途中で合流して、加圧された洗浄水として給水管路75に出水する。なお、洗浄水出口910g、920gと配管の間には、ピストン910b、920bによって加圧された洗浄水の圧力がピーク後に早く減圧されるように、適切な値に設定された圧損部が設けられている。
【0097】
モータ911の回転軸にはギア912が取り付けられ、ギア912とギア913とがかみ合っている。また、ギア913には、第一の脈動発生部91bのピストン910bを動作させるクランクシャフト914と、第二の脈動発生部92bのピストン920bを動作させるクランクシャフト924とが、異なる位置に取り付けられている。また、クランクシャフト914、924は、ピストン保持部915、925を介してピストン910b、920bに取り付けられる。なお、ギア913に取り付けられるクランクシャフトの位置は、ピストン910bとピストン920bのストローク量が異なるように、取り付け半径が異なっており、かつ、180°位相の異なる位置に取り付けられている。また、第二の脈動発生部92bのピストン920bのストロークが、第一の脈動発生部91のピストン910bのストロークよりも短くかつ、位相が180°ずれて動作するように設定されている。このように、ギア913とクランクシャフト914、924の取付位置により、あらかじめピストン910b、920bの動作が設定されているので、モータの通電スイッチをON/OFFするだけの簡単な制御で脈動発生部90bに所定の動作をさせることができる。
【0098】
使用者により洗浄ボタンが選択、押されると、モータ911に通電され、回転軸が回転するので、ギア912、913、クランクシャフト914、924、ピストン保持部915、925を介して、ピストン910b、920bが上下に往復動する。加圧室内が洗浄水で満たされている際に、ピストン910b(920b)が、下死点(原位置)から上死点に移動すると加圧室の容積が縮小するので、洗浄水が加圧されて、給水管路75に向けて押し流される。
【0099】
そして、その後、上死点から下死点(原位置)に復帰する際に、加圧室内の圧力が低下するとともに、アンブレラパッキン910f、920fが開き、洗浄水が加圧室内に流入する。その後、次回のピストン移動の際に、洗浄水が再度加圧され、この工程を連続して行うことで、圧力変動すなわち脈動が発生する。
図14は、ピストン910b、920bのストロークの様子を例示した図である。
図14に示すように、ピストン920bのストロークは、ピストン910bのストロークの約半分となり、かつ、180°位相がずれるように設定されている。なお、周期は、同一である。
【0100】
この場合、脈動発生部90bには給水管路55を経て、給水圧の洗浄水が給水されている。よって、前述したように、ピストンの原位置復帰の間にアンブレラパッキン910f、920fを経て加圧室910d、920d内に流れ込んだ洗浄水はアンブレラパッキン910f、920fによる圧力損失や下流側の洗浄水の引き込みの影響を受けて給水圧のままではないものの、給水管路75に送られる。すなわち、ピストンが原位置(下死点)に復帰するまでの間にアンブレラパッキン910f、920fを介して加圧室910d、920d内に流れ込んだ洗浄水は、給水管路75に向けて流出する。この場合、給水管路75に流出する洗浄水の圧力は、アンブレラパッキン910f、920fによる圧力損失や下流側の洗浄水の引き込みの影響を受けて、給水圧とは異なるものとなる。
【0101】
この様子を図でもって表す。
図13に示す様に、洗浄水は、脈動発生部90への導入水圧Pin(給水圧)を基準に脈動した圧力で脈動発生部90から給水管路75、ひいてはノズルユニット80に送られ、被洗浄物に向けて吐水される。なお、図13に示す圧力波形は、前述した吐水孔401もしくは吐水孔402、または、これらに連通する洗浄渦室301もしくは302において測定したものである。また、圧力計としては応答性が高いものを用い、高いサンプリング周期で測定するようにした。また、図中のMTは、1つの脈動周期を示している。
脈動発生部90bは、あらかじめ設定されたピストンの動作によって、モータをON/OFFするだけの簡単な制御で、図13に示すように、1つの脈動周期において、複数の凸状ピークを異なる圧力で有するように周期的な脈動推移を発生している。
【0102】
すなわち、モータをON/OFFするだけの簡単な制御により、脈動発生部90bにあらかじめ設定されたピストンの動作を行わせることができる。その結果、図13に示すように、1つの脈動周期MTにおいて、異なる圧力値を有する複数の凸状ピークを生じさせる周期的な脈動推移を発生させることができる。
【0103】
ここで、本実施の形態における洗浄水の吐水の様子について例示をする。
図15は、脈動発生部90bによって生成された速度(初速)の変化の様子を示したタイミングチャートである。図15における速度の変化は、図14のピストン910b、920bの動作と連動している。図14における「S11」のタイミングでピストン920bが上死点までストロークすると、加圧部920d内の洗浄水は加圧され、洗浄水の速度は、図15に示す速度V12まで加速される。その際、第一のピーク速度V12が形成される。その後、ピストン920bが下がると、速度も低下し、「S12」のタイミングで、速度は一度下がる。すなわち、速度V12と速度V13との間で速度が低下する。
そしてさらにその後、ピストン910bが上死点に到達するタイミングで、洗浄水の速度は、第二のピーク速度V14に到達する。そして、ピストン910b、920bが下降すると共に、洗浄水の速度もV11まで下降する。
【0104】
続いて、前述のようにして作られた速度波形によって得られる洗浄水の状態について例示する。まず、図13と図15の図を用いて、圧力変動と速度変化の関係について例示する。脈動発生部90bにより圧力の脈動推移が発生すると、速度Vも同様に変動する。吐水される洗浄水は、圧力変動がPmaxになると、速度も最大速度Vmaxになり、それぞれの時間の圧力に対応し、速度も変動する。よって、図13の脈動流の洗浄水の圧力波形における各部位をP11、P12、P13、P14、P15とすると、速度も図15上のV11、V12、V13、V14、V15がそれぞれの番号同士で対応する。
【0105】
続いて、この速度変化によって生じる洗浄水の状態を例示する。まず、最初の時点で、V11の速度で洗浄水が吐水されたとする。その後、ある時間間隔をおいて、V12の速度で洗浄水が吐水される。このとき、V12の速度で吐水された洗浄水は、V11の速度で吐水された洗浄水よりも速い速度となっているため、V12の速度で吐水された洗浄水と、V11の速度で吐水された洗浄水の距離は縮まる。すなわち、洗浄水の速度V12は速度V11よりも速いので、速度V11で吐水された洗浄水と、速度V12で吐水された洗浄水との間の距離が縮まることになる。
そして、それぞれの洗浄水が、被洗浄物に着水するまでに、V12の速度で吐水された洗浄水が、V11の速度で吐水された洗浄水に追付くことで、V11の速度で吐水された洗浄水とV12の速度で吐水された洗浄水との間にある洗浄水が一体化し、大きな吐水群を生成する。つまり、速度波形において、速度の立ち上がりの勾配が生じたときには、吐水群が生成されることになる。よって、この関係は、V13の速度で吐水された洗浄水と、V14の速度で吐水された洗浄水との間にも成り立つ。このとき、速度V13および速度V14は、速度V11、速度V12に比べ速くなっている。このように、速度が速い場合、吐水されてから被洗浄物に着水するまでの間の時間は短くなる。よって、V13の速度で吐水された洗浄水が被洗浄物に着水するまでの間に、V14の速度で吐水された洗浄水が追付くことができた距離は、僅かとなり、一体化された吐水群はあまり生成されない。そのため、それぞれの速度で吐水された洗浄水が、連続的に被洗浄物に着水することになる。
【0106】
続いて第4の実施形態について例示をする。
図16は、モータ式レシプロタイプの脈動発生部(吐水手段)90cを例示するための概略構成断面図である。
脈動発生部90cは、第一の脈動発生部91cと第二の脈動発生部92cとからなる2連構成とされている。第一の脈動発生部91cと第二の脈動発生部92cには、それぞれ円柱状の空間を有するシリンダ910a、920aが設けられている。シリンダ910a、920a内には、ピストン910b、920bが設けられている。ピストン910b、920bには、Oリング910c、920cが装着されている。ピストン910b、920bとシリンダ910a、920aとで画されたそれぞれの空間が加圧室910d、920dとなる。
【0107】
加圧室910d、920dには、洗浄水入り口910e、920eが給水管67から分岐されて洗浄水が流入するようになっている。すなわち、加圧室910d、920dには、洗浄水入り口910e、920eがそれぞれ設けられている。そして、給水管67から分岐された図示しない管路が洗浄水入り口910e、920eに接続され、給水管67から加圧室910d、920dに洗浄水を流入させることができるようになっている。
その際、アンブレラパッキン910f、920fによって、逆流しないようになっている。すなわち、洗浄水入り口910e、920eが加圧室910d、920dに開口する部分にはアンブレラパッキン910f、920fが設けられ、加圧室910d、920d内に流入した洗浄水が給水管67側へ逆流しないようになっている。
【0108】
また、洗浄水出口910g、920gがそれぞれ設けられ、途中で合流して、加圧された洗浄水が出水する。すなわち、加圧室910d、920dの天井部分には洗浄水出口910g、920gがそれぞれ設けられている。洗浄水出口910g、920gには配管がそれぞれ接続されており、接続されたそれぞれの配管が分岐部を介して給水管路75と接続されている。そのため、加圧室910d、920dから流出した洗浄水は、途中で合流して、加圧された洗浄水として給水管路75に出水する。
【0109】
その際、アンブレラパッキン910h、920hによって、こちらも逆流を防止している。すなわち、洗浄水出口910g、920gにはアンブレラパッキン910h、920hが設けられ、給水管路75側に流出した洗浄水が加圧室910d、920dに逆流しないようになっている。
【0110】
モータ911の回転軸にはギア912が取り付けられ、ギア912とギア913とがかみ合っている。また、ギア913には、第一の脈動発生部91cのピストン910bを動作させるクランクシャフト914と、第二の脈動発生部92cのピストン920bを動作させるクランクシャフト924とが、異なる位置に取り付けられている。また、クランクシャフト914、924は、ピストン保持部915、925を介してピストン910b、920bに取り付けられる。なお、ギア913に取り付けられるクランクシャフトの位置は、ピストン910bとピストン920bのストローク量が異なるように、取り付け半径が異なっており、かつ、180°位相の異なる位置に取り付けられている。また、第二の脈動発生部92cのピストン920bのストロークが、第一の脈動発生部91のピストン910bのストロークよりも短くかつ、位相が180°ずれて動作するように設定されている。このように、ギア913とクランクシャフト914、924の取付位置により、あらかじめピストン910b、920bの動作が設定されているので、モータの通電スイッチをON/OFFするだけの簡単な制御で脈動発生部90cに所定の動作をさせることができる。
【0111】
使用者により洗浄ボタンが選択、押されるとモータ911に通電され、回転軸が回転するので、ギア912、913、クランクシャフト914、ピストン保持部915、925を介して、ピストン910b、920bが上下に往復動する。本実施の形態においても、図2において例示をしたものと同様に、加圧室の容積を変化させることにより圧力変動すなわち、脈動を発生させる。このとき、ピストン910b、920bのストロークと位相は、図14に示すようになる。すなわち、ピストン920bのストロークは、ピストン910bのストロークの約半分となり、かつ、180°位相がずれるように設定されている。なお、周期は、同一である。
【0112】
次に、脈動発生部90cによって生成される圧力の変動の様子を図17に基いて説明する。
図17は、脈動発生部90cによって生成された圧力変動の様子を示したタイミングチャートである。
図17において、図14における「S11」のタイミングでピストン920bが上死点までストロークすると、加圧部920d内の洗浄水は加圧され、洗浄水の圧力は、図17に示す圧力Pm11まで加速される。その後、ピストン920bが下がると、圧力も低下し、「S12」のタイミングで、圧力はPm12まで下がる。そしてその後、第一の脈動発生部91cのピストン910bが上死点に到達するタイミングで、圧力は、第二のピーク圧力Pm13に到達する。そして、ピストン910bが下降すると共に、圧力もPm14まで低下する。
【0113】
このような圧力変動を生じさせることにより、吐水孔40から吐水される洗浄水の速度も同様に変化させることができる。この場合、図17の圧力波形における各部位Pm11、Pm12、Pm13、Pm14と、図18の速度波形における各部位Vm11、Vm12、Vm13、Vm14とがそれぞれ対応関係にある。
そのため、本実施の形態においても、速度変動を生じさせることができる。そのため、速度Vm11で吐水された洗浄水は、それよりも先に吐水された洗浄水に追いつきながら、第一の吐水群(大きな吐水群)を生成することができる。また、速度Vm13で吐水された洗浄水は、それよりも先に吐水された洗浄水に追いつきながら、第二の吐水群(小さな吐水群)を生成する。その際、速度Vm11が形成されるタイミングと、速度Vm13が形成されるタイミングとの間には、十分な時間間隔がある。したがって、第二の吐水群が生成されるときには、第一の吐水群は十分進んだ位置にあるので、被洗浄物に着水する際には、それぞれが独立して着水することができる。よって、速度の異なる吐水群を連続して着水させることができるので、それぞれの吐水群により異なる洗浄力を与えることができる。
【0114】
また、この場合、加圧室の洗浄水出口には下流側からの洗浄水の逆流を防ぐアンブレラパッキン910h、920hが設けられている。そのため、図17に示すとおり、給水圧Pinよりも高い圧力領域、すなわち、圧力変動の最小値が給水圧Pinよりも高い圧力となるような圧力変動を生じさせることができる。これによって、給水源の水圧が低い地域であっても、高い洗浄性能を実現することができる。
【0115】
なお、この場合、シリンダの数を1つとし、加圧室をシリンダの軸方向に2つ設け、それぞれのストロークが異なるように設定してもよい。また、シリンダを対向して設けてもよい。また、シリンダを3つ以上設け、それぞれ位相差をつけることにより、3つ以上のピーク速度をもつ速度変動を生じさせるようにしてもよい。それによって、3つの洗浄力を持つ吐水を生成することができるので、さらに多様な洗浄性能を実現することができる。また、複数のシリンダに対し、それぞれにモータを備えるようにしても良い。
【0116】
続いて第5の実施形態について例示する。
図19は、モータ式レシプロタイプの脈動発生部(吐水手段)90dを例示するための概略構成断面図である。
脈動発生部90dには、円柱状の空間を有するシリンダ910が設けられている。シリンダ910内には、ピストン910bが設けられている。ピストン910bには、Oリング910cが装着されている。ピストン910bとシリンダ910とで画された空間が加圧室910dとなる。加圧室910dには、洗浄水入り口910e給水管67から洗浄水が流入するようになっている。すなわち、加圧室910dには、洗浄水入り口910eが設けられている。そして、給水管67が洗浄水入り口910eに接続され、給水管67から加圧室910dに洗浄水を流入させることができるようになっている。
その際、アンブレラパッキン910fによって、逆流しないようになっている。すなわち、洗浄水入り口910eが加圧室910dに開口する部分にはアンブレラパッキン910fが設けられ、加圧室910d内に流入した洗浄水が給水管67側へ逆流しないようになっている。
【0117】
また、洗浄水出口910gが設けられ、加圧された洗浄水が出水する。その際、アンブレラパッキン910hによって、こちらも逆流を防止している。すなわち、加圧室910dには洗浄水出口910gが設けられている。洗浄水出口910gには給水管路75が接続されている。そのため、加圧室910dから流出した洗浄水は、加圧された洗浄水として給水管路75に出水する。その際、洗浄水出口910gに設けられたアンブレラパッキン910hによって、給水管路75側に流出した洗浄水が加圧室910dに逆流しないようになっている。
【0118】
モータ911の回転軸にはギア912が取り付けられ、ギア912とギア913とがかみ合っている。また、ギア913にはクランクシャフト914が取り付けられ、ピストン保持部915を介してピストン910bが取り付けられる。
【0119】
制御部10により与えられる制御信号に基いて、モータ911の回転軸が回転すると、ギア912、913、クランクシャフト914、ピストン保持部915を介して、ピストン910bが往復動する。本実施の形態においても、加圧室910dの容積を変化させることにより圧力変動すなわち、脈動を発生させる。
【0120】
その際、制御部10によりモータ911の回転速度が制御されるが、モータ911の回転速度は、最も速度の速くなる(圧力の高くなる)上死点から、最も速度の遅くなる(圧力の低くなる)下死点までに移行時の速度が高く設定された制御を行なっている。これによって、速い速度側から遅い速度側への変化が速くなり、結果、圧力の低い側の速度変動量が、圧力の高い側の速度変動量より大きくなり、より大きな吐水群を生成することができる。
すなわち、制御部10によりモータ911の回転速度を制御することで、最も速度の速くなる(圧力の高くなる)上死点と、最も速度の遅くなる(圧力の低くなる)下死点との間において所望のピストン速度が得られるようになっている。
また、ピストン910bを上死点から下死点に移行させる時の速度がより速くなるような制御を行っている。これによって、下死点近傍において形成される圧力をより下げることができるので、圧力の低い領域を大きくすることができる。その結果、圧力の低い領域における速度変動量をより大きくすることができるので、より大きな吐水群を生成することができる。
なお、この場合、シリンダ数は1つに限らない。また、1つのシリンダ内に複数の加圧室が設けられていても良い。
【0121】
図20は、モータの回転速度を制御する場合を例示するための模式図である。なお、図20(A)は、前述した「大きな吐水群」と「小さな吐水群」を生成することのできる圧力変動を表している。すなわち、図3に例示をしたような圧力変動を表している。また、図20(B)はこの様な圧力変動を生じさせる際のピストンの位置変化を表し、図20(C)はピストンの位置に対するモータの回転速度比の変化を表している。
【0122】
前述したように、「大きな吐水群」を生成する場合には、追付き量が多くなるように低い圧力で吐水を行う必要がある。また、「小さな吐水群」を生成する場合には、高い圧力で吐水を行う必要がある。そして、「大きな吐水群」と「小さな吐水群」とを独立して被洗浄物に着水させるためには、「大きな吐水群」が生成される圧力領域と「小さな吐水群」が生成される圧力領域との間に時間的な間隔を生じさせる必要がある。
本実施の形態においては、下死点からピストンが上昇し加圧が行われる領域においてピストンの上昇速度を制御することで、すなわち、モータの回転速度を制御することで「大きな吐水群」を生成するようにしている。また、ピストンが上死点に近づき圧力がさらに上昇する領域においてピストンの上昇速度を制御することで、すなわち、モータの回転速度を制御することで「小さな吐水群」を生成するようにしている。そして、これらが生成される領域の間に、モータの回転数比が小さな領域を設けて、「大きな吐水群」が生成される圧力領域と「小さな吐水群」が生成される圧力領域との間に時間的な間隔を生じさせている。
また、ピストンを上死点から下死点に移行させる工程(加圧室内に洗浄水を流入させる工程)におけるモータの回転数比を高く設定することで、加圧室内の圧力を低下させるようにしている。その様にすれば、下死点近傍において形成される圧力をより下げることができるので、圧力の低い領域を大きくすることができる。その結果、圧力の低い領域における速度変動量をより大きくすることができるので、より大きな吐水群を生成することができる。
続いて第6の実施形態について例示する。
図21は、モータ式レシプロタイプの脈動発生部(吐水手段)90eを例示するための概略構成断面図である。
脈動発生部90eは、第一の脈動発生部191と第二の脈動発生部192とからなる2連構成とされている。第一の脈動発生部191と第二の脈動発生部192には、それぞれ円柱状の空間を有するシリンダ191a、192aが設けられている。シリンダ191a、192a内には、ピストン191b、192bが設けられている。ピストン191b、192bには、図示しないOリングが装着されている。ピストン191b、192bとシリンダ191a、192aとで画されたそれぞれの空間が加圧室191d、192dとなる。
【0123】
加圧室191d、192dには、図示しない洗浄水入り口がそれぞれ設けられている。そして、給水管67から分岐された図示しない管路が洗浄水入り口に接続され、給水管67から加圧室191d、192dに洗浄水を流入させることができるようになっている。また、図示しない洗浄水入り口が加圧室191d、192dに開口する部分には図示しないアンブレラパッキンが設けられ、加圧室191d、192d内に流入した洗浄水が給水管67側へ逆流しないようになっている。
また、加圧室191d、192dの天井部分には洗浄水出口191g、192gがそれぞれ設けられている。洗浄水出口191g、192gには配管がそれぞれ接続されており、接続されたそれぞれの配管が分岐部を介して給水管路75と接続されている。そのため、加圧室191d、192dから流出した洗浄水は、途中で合流して、加圧された洗浄水として給水管路75に出水する。
【0124】
モータ911の回転軸にはギア912が取り付けられ、ギア912とギア913aとがかみ合っている。ギア913aには、ピストン191bを動作させるクランクシャフト194のa一端が取り付けられている。クランクシャフト194aの他端はピストン191bに取り付けられている。
また、ギア912とギア913bとがかみ合っている。ギア913bには、ピストン192bを動作させるクランクシャフト194bの一端が取り付けられている。クランクシャフト194bの他端はピストン192bに取り付けられている。
ギア913bのピッチ円直径寸法は、ギア913aのピッチ円直径寸法の2倍となっている。そのため、ピストン192bの移動周期はピストン191bの移動周期の2倍となる。
また、加圧室192dの容積が加圧室191dの容積よりも大きくなるようになっている。すなわち、加圧室192dの直径寸法(断面寸法)が加圧室191dの直径寸法(断面寸法)よりも大きくなっている。また、ピストン192bのストロークがピストン191bのストロークよりも大きくなっている。
【0125】
次に、脈動発生部90eにより形成される圧力変動について例示をする。
図22は、圧力波形を例示するための模式図である。なお、図22(A)は圧力波形が形成される様子を例示するための模式図、図22(B)は吐水群が生成される様子を例示するための模式図である。
図22(A)に示すように、第一の脈動発生部191により形成される圧力波形は図中の「X」のようになる。一方、第二の脈動発生部192により形成される圧力波形は図中の「Y」のようになる。
前述したように、加圧室192dの容積が加圧室191dの容積よりも大きくなっているので、圧力波形「Y」における最大圧力は圧力波形「X」における最大圧力よりも大きくなる。また、圧力波形「Y」の周期は圧力波形「X」の周期の2倍となる。
【0126】
前述したように、第一の脈動発生部191から吐出した洗浄水と、第二の脈動発生部192から吐出した洗浄水とが合流するので、合流後の洗浄水の圧力は両者の圧力を合成したものとなる。すなわち、給水管路75を介してノズル82に吐水される洗浄水の圧力変動は、圧力波形「X」と圧力波形「Y」とを合成した圧力波形「Z」のようになる。
【0127】
ここで、図22(B)に示すように、圧力波形「Z」は、1つの脈動周期MTにおいて、1つの凸状のピークと、前後の傾きが正となる変曲点とを有する周期的な脈動推移となっていることがわかる。
そのため、本実施の形態においても、前述した「大きな吐水群」と「小さな吐水群」とを生成することができる。
【0128】
なお、図22に例示をしたものは、「大きな吐水群」と「小さな吐水群」とが交互に生成されるが、これに限定されるわけではない。
この場合、例えば、圧力波形「X」の周期や振幅、圧力波形「Y」の周期や振幅を適宜変更することで「大きな吐水群」と「小さな吐水群」とが生成される順番などを変更することができる。例えば、「大きな吐水群」の後に「小さな吐水群」が生成され、さらにその後に「小さな吐水群」が生成される様な吐水サイクルが繰り返されるようにすることもできる。
【0129】
続いて第7の実施形態について例示する。
図23は、脈動発生部(吐水手段)90fの概略構成断面図である。なお、ここでいう脈動発生部は、圧力変動を起こす圧力変動部ということもできる。
【0130】
図23に示すように、脈動発生部90fは、給水管路67、75に接続されるシリンダ74bと、シリンダ74bの内部に進退自在に設けられたプランジャ74cと、プランジャ74cの内部に設けられた逆止弁74gと、励磁電圧を制御することでプランジャ74cを進退させる脈動発生コイル74dと、を備えている。そして、プランジャ74cの位置が、ノズルの側(下流側)に変化した場合には洗浄水の圧力が増加し、ノズルとは反対の側(上流側)に変化した場合には洗浄水の圧力が減少するように逆止弁が配設されている。
【0131】
そして、このプランジャ74cを脈動発生コイル74dの励磁を制御することにより上流側・下流側に進退させる。すなわち、洗浄水に脈動を付加する場合(洗浄水に圧力変動を生じさせる場合)には、脈動発生コイル74dに流す励磁電圧を制御することにより、プランジャ74cをシリンダ74bの軸方向(上流方向・下流方向)に進退させる。
【0132】
この場合、プランジャ74cは、脈動発生コイル74dの励磁により図示する原位置(プランジャ原位置)から下流側74hに移動する。そして、コイルの励磁が消えると、復帰スプリング74fの付勢力によって、原位置に復帰する。この際、緩衝スプリング74eによってプランジャ74cの復帰の動作が緩衝される。プランジャ74cは、その内部にダックビル式の逆止弁74gを備え、上流側への逆流を防止している。したがって、プランジャ原位置から下流側へ移動する際には、シリング74b内の洗浄水を加圧して給水管路75に押し流せるようになっている。この際、プランジャ原位置と、下流側に移動した位置とは常に一定であることから、プランジャ74cが動作する際に給水管路75に送られる洗浄水の量は一定となる。
その後、原位置に復帰する際には、逆止弁74gを経てシリンダ74b内に洗浄水が流れ込む。そのため、次回のプランジャ74cの下流側移動の際には、改めて、一定量の洗浄水が給水管路75に送られることになる。
【0133】
この場合、脈動発生部90fには給水管路55を経て、前述した給水圧の洗浄水が給水されている。よって前述したように、プランジャ74cの原位置復帰の間に逆止弁74gを経てシリンダ74b内に流れ込んだ洗浄水は、逆止弁74gによる圧力損失や下流側の洗浄水の引き込みの影響を受けて1次圧のままではないものの、給水管路75に送られる。すなわち、プランジャ74cが原位置に復帰するまでの間に逆止弁74gを介してシリンダ74b内に流れ込んだ洗浄水は、給水管路75に向けて流出する。この場合、給水管路75に流出する洗浄水の圧力は、逆止弁74gによる圧力損失や下流側の洗浄水の引き込みの影響を受けて、1次圧(前記の給水圧)とは異なるものとなる。
【0134】
この様子を図でもって表す。
【0135】
図24は、洗浄水の圧力変動の様子を例示するための模式図である。
図24に示す様に、洗浄水は、脈動発生部90fへの導入水圧Pin(給水圧)を基準に脈動した圧力で脈動発生部90fから給水管路75、ひいてはノズルユニット80に送られ、被洗浄物に向けて吐水される。なお、図24に示す圧力波形は、前述した吐水孔401もしくは吐水孔402、または、これらに連通する洗浄渦室301もしくは302において測定したものである。また、圧力計としては応答性が高いものを用い、高いサンプリング周期で測定するようにした。
【0136】
ここで、本実施形態における洗浄水の吐水の様子について例示をする。
図25は、洗浄水吐水に際して脈動を発生させる脈動発生部90fの脈動発生コイル74dの励磁の様子を示す電圧波形の図(脈動発生コイル74dに印加される電圧波形を例示するための模式図)であり、図26は、脈動発生部90fから流出する洗浄水の速度(初速)を示すタイミングチャートである。
【0137】
制御部10は、脈動発生コイル74dを励磁して脈動発生部90fにおいて脈動を発生させるに当たり、パルス状の信号を出力する。そして、このパルス信号を、脈動発生コイル74dに接続され、これをオンさせるためのスイッチングトランジスタ(図示せず)に出力する。すなわち、脈動発生コイル74dには、回路の開閉を行うスイッチングトランジスタ(図示せず)が接続されている。制御部10から出力されたパルス信号は、スイッチングトランジスタに入力される。
【0138】
よって、脈動発生コイル74dは、パルス信号に従ったスイッチングトランジスタのON・OFFにより繰返し励磁し、前述したようにプランジャ74cを周期的に往復動(進退)させる。すなわち、入力されたパルス信号に基づいてスイッチングトランジスタが開閉動作(ON・OFF動作)することで、脈動発生コイル74dが繰返し励磁される。そして、脈動発生コイル74dを繰返し励磁させることで、プランジャ74cを周期的に往復動(進退)させる。
これにより、脈動発生部90fから吐水孔401には、圧力が周期的に上下変動する脈動流の状態で洗浄水が供給され、この脈動流の洗浄水が各吐水孔から吐水される。
【0139】
なお、脈動発生コイル74dに印加されるパルス状の電圧は、図25に例示をする。また、それによって、脈動発生部90fから流出する洗浄水の速度(初速)のタイミングチャートを図26に例示をする。なお、図26は、図24の圧力値を基に、算出された波形である。
【0140】
図25より、脈動発生部90fの脈動発生コイル74dに印加されるパルス状の電圧は、1周期中において、ON時間の異なる2つの矩形波が組み合わさった電圧波形となっている。この制御によって起る脈動発生部90fから流出する洗浄水の速度変化を、脈動発生部90fのプランジャ74cの動作に基いて例示をする。脈動発生部90fの脈動発生コイル74dには、図25に示す電圧波形の電圧が印加されている。
【0141】
ON時間をT1として、脈動発生部90fの脈動発生コイル74dに電圧を印加すると電流が流れるので、脈動発生コイル74dが励磁されてプランジャ74cが磁化される。そして、プランジャ74cが磁化されると、プランジャ74cは脈動発生コイル74dの側、すなわち下流側へ引き付けられる。
【0142】
この下流側への引き付けによって、復帰スプリング74fが圧縮されて弾性エネルギーを蓄えると同時に、洗浄水を加圧し、最も高い圧力P24に達するその際、吐水孔401から吐水される洗浄水の速度は最も高くなる(V24)。すなわち、プランジャ74cが下流側へ引き付けられると、復帰スプリング74fが圧縮されて弾性エネルギーが蓄えられる。また、同時にプランジャ74cにより洗浄水が加圧される。なお、洗浄水の圧力が最も高い圧力P24(図24を参照)に達した際には、吐水孔401から吐出される洗浄水の速度は最も高くなる(図26におけるV24)。
【0143】
その後、T2において電圧が切れると脈動発生コイル74dの励磁が消えて、復帰スプリング74fの付勢力を受けて、原位置へ復帰する。すなわち、OFF時間をT2として電圧の印加を停止すると、脈動発生コイル74dの励磁が解かれるので復帰スプリング74fの付勢力によりプランジャ74cが原位置へ戻される。
【0144】
同時に圧力は低下し、最低圧力P21(図24を参照)に達する。その際、吐水孔401から吐水される洗浄水の速度も低くなり、最も低い速度域V21まで下降する。
その後、圧力は給水圧Pinまで復帰しようとし、速度も給水圧時の速度Vinまで復帰しようとする。この復帰のタイミングに、T1よりも短いON時間のT3の矩形波を加えることにより、脈動発生コイル74dを励磁させ、プランジャ74cを下流側へ引き付けることで、洗浄水を再度加圧する。すなわち、この復帰のタイミングにおいて、ON時間がT1よりも短いT3の矩形波電圧を脈動発生コイル74dに印加する。そして、脈動発生コイル74dを励磁し、プランジャ74cを下流側へ引き付けることで、洗浄水を再度加圧する。
【0145】
このとき、圧力が復帰途中であることと、T3の時間がT1よりも短いことにより、洗浄水は最高圧P24までは高まらないものの、給水圧よりも高い第2のピーク圧力P22まで達する。したがって、速度も給水圧時の速度よりも速い第2のピーク速度V22が現れることになる。また、第2のピーク速度V22と、再度プランジャが励磁されるタイミングにおける速度V23までの間には、入水圧時の速度Vin付近で吐水される期間が一定時間生じることになる。
【0146】
ここで、脈動発生コイル74dに印加する電圧波形のタイミングは、脈動の周波数50Hzであり、T1を4.8msec、T2を7msec、T3を1msec、T4を7.2msecに設定してある。すなわち、脈動の周波数を50Hz、ON時間T1を4.8msec、OFF時間T2を7msec、ON時間T3を1msec、OFF時間T4を7.2msecとしている。ただし、周波数、T1、T2、T3、T4の時間幅はこの限りではなく、5Hz以上の不感帯周波数域における繰返し周波数であればよく、T1、T2、T3、T4の時間幅もその周期(脈動周期MT)に基いて設定されていてもよい。なお、不感帯周波数とは、人が刺激変化と認識できる周波数よりも高い周波数、すなわち、人が意図的な繰返し吐水と知覚できない周波数である。
【0147】
続いて、上記によって作られた速度波形によって得られる洗浄水の状態について例示をする。
図27は、脈動流の洗浄水を仮定の吐水孔40から吐水した場合に、その吐水された洗浄水が増幅される過程を例示するための模式図である。
ここで、図24と図26の図を用いて、圧力変動と速度変化の関係について例示をする。脈動発生部90fにより圧力が脈動すると、速度Vも同様に変動して脈動する。すなわち、吐水される洗浄水は、圧力変動がPmaxになると、速度も最大速度Vmaxになり、瞬間の速度が時間とともに変動する。また、図24の脈動流の洗浄水の圧力波形における各部位をP21、P22、P23、P24、P25とすると、速度も図26上のV21、V22、V23、V24、V25がそれぞれの番号同士で対応する。
【0148】
よって、吐水直後から図27の(A)〜(D)へと移行するにつれて、速度V22は速度V21より速度が速いから、速度V21で吐水された洗浄水は速度V22で吐水された洗浄水及びこれらの間にある洗浄水に追いつかれて合体され、吐水断面積の大きな吐水群となる(図27(B)を参照)。
【0149】
このように、速度波形の立ち上がりの勾配部分においては、速い速度で吐水された洗浄水がその前の遅い速度で吐水された洗浄水と順次合体することにより、吐水群となって、被洗浄物(洗浄面)に着水することになる。ここで、図27の(A)、(B)に示すように、遅い側の速度域での速度の立ち上がり勾配部分では、全体の速度が遅いので、被洗浄物に着水する前に、V22がV21と合体して吐水断面積の大きな吐水群(大きな吐水群)を生成することができる。
【0150】
すなわち、速度V21と速度V22との間における速度の立ち上がり勾配部分においては、全体の速度が遅い。そのため、速度V21で吐水された洗浄水が被洗浄物に着水する前に、速度V22で吐水された洗浄水が速度V21で吐水された洗浄水に追いつくことができる。その結果、吐水時には、洗浄水が円錐状に拡張されることなく直線状に吐水されるものの、被洗浄物に着水する前に、速度V22で吐水された洗浄水と速度V21で吐水された洗浄水とが合体して吐水断面積の大きな吐水群(大きな吐水群)を生成することができる。
一方で、図27の(C)、(D)に示すように、V23、およびV24の速い側の速度域での速度の立ち上がり勾配では、全体の速度が速いので、被洗浄物に着水するまでの短い時間では、距離が縮まりにくいため、被洗浄物に着水する時点では、V24はV23とほとんど合体せずに速く吐水断面積の小さい吐水群として着水することになる。
すなわち、速度V23と速度V24との間における速度の立ち上がり勾配部分においては、全体の速度が速い。そのため、速度V23で吐水された洗浄水が被洗浄物に着水する前に、速度V24で吐水された洗浄水が速度V23で吐水された洗浄水に追いつきにくい。その結果、洗浄水が円錐状に拡張されることなく直線状に吐水されて、被洗浄物に着水する前に、速度V23で吐水された洗浄水と速度V24で吐水された洗浄水とがほとんど合体せず、吐水断面積の小さな吐水群(小さな吐水群)として着水することになる。この洗浄水(小さな吐水群)は、被洗浄物に当たるときには、衝突エネルギー(汚れを落とす力)における速度成分が大きい状態になっている。
【0151】
また、このとき、V22とV24のタイミングに十分開きがある、言い換えれば、V22とV24にピークが現れるように制御することで、V22によって生成される吐水群と、V24によって生成される吐水群は、V24が吐水された段階で十分な時間の開きが生じる。
すなわち、OFF時間T2を設けることで、速度V24で吐水された洗浄水と速度V22で吐水された洗浄水との間に十分な時間の開きを設けることができる。
その結果、速度V22で吐水されることで生成された吐水断面積が大きく速度V24で吐水されることで生成されたものよりは速度の遅い吐水群(大きな吐水群)と、速度V24で吐水されることで生成された吐水断面積が小さく速度の速い吐水群(小さな吐水群)とは、お互いに干渉することなく、被洗浄物に異なる速度をもって独立して着水することができる。
【0152】
また、速度V24から速度V21に移行するタイミングでは、速度が減速していくため、合体による吐水群は生成されず、洗浄性能には寄与しない領域となる。したがって、この領域を減らすことは、洗浄性能を高めることにも繋がる。
【0153】
なお、本明細書でいう吐水群とは、吐水孔から吐水される洗浄水の進行方向に対し直角に切断したときの断面積が、吐水後に追付くことにより、吐水孔から吐水された直後の断面積よりも大きくなれば、吐水群という。すなわち、吐水群とは、後から吐水された洗浄水が追いつくことにより吐水断面積(洗浄水の進行方向に対し直角に切断したときの断面積)が、吐水直後の吐水断面積よりも大きくなったものをいう。
【0154】
ここで、吐水後に洗浄水が追い付くことにより、吐水断面積が増え、吐水断面積の異なる吐水群が形成されると、被洗浄物に当たるときの荷重は、吐水断面積が増えない(吐水群が形成されない)吐水と比べ、被洗浄物で当たるときの荷重は大きくなる。
本実施の形態においても、図8に例示をしたように、1つの周期(脈動周期MT)において、2つのタイミングで荷重が大きくなる。すなわち、1つの周期において、2つの吐水群が生成され、それが独立して被洗浄物に当たることになる。
【0155】
図8に例示をしたものでは、先に吐水断面積の大きく速度の遅い吐水群(大きな吐水群)があたり、あとから吐水断面積が小さくて速度の速い吐水群(小さな吐水群)が当たる。したがって、被洗浄物は、速度と大きさの異なる2つの吐水群によって洗浄され、この場合、大きくて遅い吐水群(大きな吐水群)で汚れを洗い流す力を与え、小さくて速い吐水群(小さな吐水群)で汚れを落とす力を与えることができる。
【0156】
ここで、脈動流となって吐水された洗浄水は、この場合の速度波形では、速度V22で吐水されることで生成された遅くて大きな吐水群と、速度V24で吐水されることで生成された速くて小さな吐水群とがそれぞれ脈動周期MTごとに現れるので、遅くて大きな吐水群と、速くて小さな吐水群とが交互に現れる。つまり、脈動周期MTの半分の間隔で吐水群が現れることになる。したがって、周期(脈動周期MT)が長くても、より連続感のある快適な洗浄性能をえることができ、断続感がきらいな人にとってもより快適な洗浄を提供できる。しかも、このそれぞれの吐水群は、速度V24で吐水された洗浄水に、それぞれ遅れて速度V25および速度V21で吐水された洗浄水が繋がれたような状態となる。
【0157】
次に、このような吐水の状態により得られる効果について例示をする。ここで、速度の遅い側で吐水断面積の大きな吐水群が生成される過程について例示をする。吐水群は、洗浄水が吐水孔40から吐水され、被洗浄物に当たるまでの時間間隔において、速度の速い吐水による洗浄水が、速度の遅い吐水による洗浄水に追いつくことで生成される。
【0158】
このとき、速度が速い領域で吐水群を生成しようとすると、吐水孔40から被洗浄物に到着するまでの時間は短い。たとえば、速度が15m/secのときに、60mm先の被洗浄物に到達する時間は、4msecである。一方、速度が遅い領域で考えた場合、吐水孔40から被洗浄物に到着するまでの時間は、速度が速い領域の場合と比べ、長くなる。たとえば、速度が7.5m/secの時には、被洗浄物に到達する時間は、8msecである。このときに、同じ量の速度差がある場合には、被洗浄物に到達するまでの時間が長いほうが、追いつける洗浄水の量は多いことになる。すなわち、洗浄水の速度の低い側で吐水群を生成したほうが、効率よくより吐水断面積の大きな吐水群を生成することが可能である。
【0159】
このようにして生成した吐水群は、より吐水断面積の大きな吐水群となっているため、吐水断面積Sは通常よりも大きくなる。したがって、洗浄水量が少ないにもかかわらず、吐水断面積の大きな吐水が当たっており多い流量で洗浄されているような洗浄性能、すなわち汚れを洗い流す力がある。つまり、吐水断面積の大きな吐水群(大きな吐水群)が当たるようにすれば、使用する洗浄水自体の量を少なくした場合であっても多い流量で洗浄されているような洗浄性能、すなわち汚れを洗い流す力を得ることができる。
【0160】
一方で、吐水断面積が小さく速度の速い吐水群(小さな吐水群)は、速い速度V24で先にでた洗浄水になかなか追いつくことができず、吐水断面積の大きい吐水群を形成する前に被洗浄物に着水するため、吐水断面積が小さく、汚れを洗い流す力は乏しくなる。しかし、先にでた洗浄水に追いつかないということは、遅い速度の洗浄水に運動エネルギーを吸収されることなく被洗浄物に着水できるので、汚れを落とす力を維持したまま着水することができる。
【0161】
このときの汚れを落とす力に関わる衝撃力は、速度が大きくなるため、衝撃力も大きくなる。すなわち、汚れを洗い流す力は小さくなるものの汚れを落とす力は高めることができる。したがって、大きくて遅い吐水群(大きな吐水群)で汚れを洗い流す力を出し、小さくて速い吐水群(小さな吐水群)で汚れを落とす力をだすことで、汚れを洗い流す力と汚れを落とす力を両立させた快適性の高い洗浄を実現することができる。
【0162】
なお、大きくて遅い吐水群(大きな吐水群)および小さくて速い吐水群(小さな吐水群)はそれぞれ十分な衝撃力を持っているため、脈動周期MTに対して、約半分の周期の脈動に感じることができ、この感覚は、人間が識別できる感覚にくらべて十分短いため、洗浄の連続感とともに、汚れを落とす力と汚れを洗い流す力とを実感することができる。
【0163】
次に、吐水群生成の現象について例示をする。
図28は、速度波形と、追付き曲線を示したタイミングチャートである。まず、追付き曲線について例示をする。追付き曲線とは、吐水されたタイミングと吐水された速度がそれぞれ異なる洗浄水であっても、この曲線上に載っていれば60mm先の被洗浄物に同時に着水することを示している。すなわち、追付き曲線とは、所定の距離(本実施の形態においては60mmとした)にある着水位置に同時に着水させる際の速度と吐水タイミングとの関係を表すための仮想曲線である。
【0164】
この追付き曲線よりも遅い速度を持つ洗浄水は、後から来る速い速度の洗浄水に追付かれ、合体して同時に被洗浄物に着水することになる。したがって、速度波形において、V22の速度を基点として追付き曲線を重ねると(すなわち、V22の速度を基準に求められた追付き曲線を重ねると)、この追付き曲線よりも遅い速度の領域は、V22の速度を持つ洗浄水に全て追付かれることになり、積分した値が体積となる吐水群が生成され被洗浄物に着水することになる。この場合、吐水群の速度は、12m/secであり、吐水群量は、21μリットルと大きな吐水群となる。
【0165】
一方、V24を基点にひかれた追付き曲線(すなわち、V24の速度を基準に求められた追付き曲線)とその付近の速度波形では、追付き曲線よりも勾配が寝ていて、遅い領域「A」(右側傾斜部)が非常に少なくなっている。この場合、吐水群の量は少ないものの、その分、追付く量が少ないため、遅い速度に速い速度が吸収されて遅くなることがなくなる。すなわち、吐水群の洗浄水量は少なくなるものの、遅い速度の洗浄水に速い速度の洗浄水の運動エネルギーが吸収されることが少なくなる。つまり、吐水断面積は小さいが速い吐水群(小さな吐水群)が生成される。
【0166】
この場合、吐水群の速度は14m/secであり、その洗浄水量は6μリットルである。これらのことより、つまり、汚れを落とす力が減衰せずに被洗浄物に着水することになる。これらのことより、吐水断面積の大きい吐水群(大きな吐水群)では、洗浄水量が多くなるため多い水量で洗っているのと同じ洗浄力を得ることができる。また、吐水断面積が小さく速い速度の吐水群(小さな吐水群)では、減速せずに被洗浄物に着水するために、汚れを落とす力を感じることができる。かつ、この吐水群(小さな吐水群)を速い周波数で被洗浄物に当てることによって、汚れを落とす力と汚れを洗い流す力を同時に感じることができる。また、大きな吐水群と小さな吐水群を、被洗浄物に同時に着水させれば、なおのこと、汚れを落とす力と汚れを洗い流す力を同時に実現することができる。
【0167】
ここで、吐水断面積は、大きな吐水群で、およそ12.6mmとなり、小さな吐水群で3.8mmとなっていて、吐水断面積が異なっている。このように、追付くことにより生成される吐水群の吐水断面積が相対的に異なる吐水群を生成することで、汚れを落とす力と汚れを洗い流す力の異なる吐水群を生成し、個別に当てることで、汚れを落とす力と汚れを洗い流す力とを両立させることができる。
【0168】
なお、洗浄水の追付きにより、およそ吐水孔の径で換算される吐水断面積よりも大きくなれば、吐水群となる。また、追付きによって生成される吐水群の吐水断面積が相対的に異なる吐水群が被洗浄物に着水する地点で生成されれば、異なる吐水群を生成したことになる。すなわち、被洗浄物に着水するまでの間に、吐水断面積が相対的に異なる吐水群が後から吐水された洗浄水の追付きによって生成されれば、異なる吐水群が生成されたことになる。
【0169】
さらに、5Hz以上の不感帯周波数域において、それぞれの吐水群を少なくとも1回着水させることで、汚れを落とす力と汚れを洗い流す力とを同時に感じさせることができる。すなわち、脈動周波数は5Hz以上であればよい。
【0170】
次に、本実施の形態における洗浄性能について説明する。
洗浄性能は、汚れを落とす力と汚れを洗い流す力とからなると考えられ、水の衝撃力M・Vに依存すると考えた。ここで、汚れを落とす力とは、速い吐水が被洗浄物に当たることで、その速度による衝撃により汚れを落とす力のことであり、速度Vに依存する。また、被洗浄物が人体である場合には、速い速度があたることにより、使用者は痛みに近い刺激感を感じることになり、汚れを落とす吐水を受けている感覚と同時に刺激感を感じることになる。一方、汚れを洗い流す力は、吐水断面積S(重さM)の大きな吐水が十分な力をもって当たることで、その面積や水量により汚れを洗い流す力のことであり、吐水断面積S(重さM)に依存する。また、被洗浄物が人体である場合には、吐水断面積S(重さM)の大きな吐水が人体に当たることになるので、使用者はあたかも多い水量で洗われている感覚である量感も同時に感じることになる。このように、洗浄感は、刺激感と量感とで表され、それぞれで、汚れを落としているような感覚と、汚れを洗い流しているような感覚に対応することになると考えることができる。したがって、これらの物理量をすべて満足させることで、快適で洗浄性能の高い洗浄が実現可能である。
【0171】
しかしながら、省エネルギーの観点から、現在主流となっている瞬間式熱交換器による温水生成では、洗浄水量が500ml/min以下になる。そのため、これらの物理量を全て満足させることは困難である。そこで、これらの物理量を全て満足させるため、吐水群の生成を検討した。
【0172】
次に、脈動推移の速度波形と生成される吐水群の形状の一例として、「速い吐水群」、「大きな吐水群」、「分散した吐水群」について説明する。なお、その関係は一例であり、速度域の違いなどで、必ずしもこの関係で生成されるものではない。「速い吐水群」は、速度の立ちあがり勾配を前述した追付き曲線の勾配よりも緩やかに、すなわち、吐水の速度の増加率を小さくすることで、追付く量を少なくした吐水群であり、速度は速いが洗浄水量が少ない。すなわち汚れを落とす力はあるが、汚れを洗い流す力の少ない吐水群が生成される。
【0173】
「大きな吐水群」は、速度の立ち上がり勾配を追付き曲線の勾配に近くすることで、徐々に追付くことでまとまる吐水群、すなわち、吐水断面積の大きい吐水群である。この場合、速度は減速するので、汚れを落とす力はあまりないが、洗浄水量が多く、衝撃力も大きい吐水群が生成される。
【0174】
「分散した吐水群」は、速度の立ち上がり勾配を追付き曲線の勾配よりも急にすることで、遅い速度と速い速度との速度差が大きい状態で追付かせ、速い速度の吐水が先にある遅い速度の吐水を弾き飛ばすように吐水を分散させる吐水群である。この場合、見かけの吐水断面積が大きくなることで汚れを洗い流す力の多い吐水群が生成される。
【0175】
以上のように、異なる脈動流の生成によって、異なる種類で異なる特徴を持った吐水群を生成することができる。
【0176】
すなわち、異なる脈動流によって異なる形状と特徴を有する吐水群を生成することができる。しかしながら、一方で、汚れを落とす力や汚れを洗い流す力にかかわる物理量のいずれかがかけることになっていた。
【0177】
そこで、被洗浄物が人体である場合に、この種類の異なる吐水群を、意図的な繰返し吐水に基く振動に人の知覚が追従できなくなる約5Hz以上の不感帯周波数域内において、少なくとも1回ずつ人体に着水させることで、それぞれの吐水で独立して、それぞれ物理汚れを洗い流す感覚を作りだし、それぞれが吐水群として独立して当たるが、それが不感帯周波数域内で着水するため、全ての物理量を備える、すなわち、汚れを落とす力と汚れを洗い流す力がある吐水を同時に感じさせることができる。
【0178】
つまり、人が意図的な繰返し吐水と知覚できない約5Hz以上の不感帯周波数域内において、異なる吐水群を少なくとも1回ずつ被洗浄物に着水させるようにした。この場合、異なる吐水群は、独自の物理汚れを洗い流す感覚をそれぞれ独立して作り出すが、異なる吐水群は不感帯周波数域内において着水するため、全ての物理量を備える、すなわち、汚れを落とす力と汚れを洗い流す力とを備えた吐水がされていると感じさせることができる。
【0179】
以上のように、吐水群の大きさや、速さ、追付き量を変えることにより、異なる物理量の吐水群を形成して、洗浄力の異なる吐水群を生成する。そして、この様な吐水群を独立させながら、短時間に被洗浄物に着水させることで、複数の洗浄力を備える吐水を実現している。
【0180】
ここで、その組合せの例について説明する。
【0181】
まずは、「大きな吐水群」と、「速い吐水群」とを交互に生成し、独立して被洗浄物に着水させることができる。
【0182】
このような吐水では、まず、吐水の追付く量を多くすることで、「大きな吐水群」が生成される。この場合、速い速度の部分は追付くことで減衰し、速度が遅くなるので、汚れを落とす力は乏しくなる。しかしながら、吐水群の吐水断面積の大きさが大きくなり、ある程度の面積を持ち、かつ衝撃力が大きくなっているので、汚れを洗い流す力を感じさせることができる。
【0183】
また、「速い吐水群」は、あとから追付く量を少なくすることで、吐水群の吐水断面積の大きさは「大きい吐水」より小さいものの、吐水の速度の減速がない分、汚れを落とす力を維持した吐水とすることができる。
【0184】
この2種類の吐水群を不感帯周波数域内(5Hz以上)でそれぞれを少なくとも1回ずつ着水させることで汚れを落とす力と汚れを洗い流す力とを兼ね備えた吐水と感じさせることができる。
【0185】
次に、「分散した吐水群」と、「大きな吐水群」とを交互に生成し、独立して被洗浄物に着水させることができる。この場合、「分散した吐水群」により非常に高い汚れを洗い流す力が得られる。その上、あとから、追付く量の多い「大きな吐水群」が生成されるので、衝撃力を十分もった吐水群を被洗浄物に当てることができる。この場合、「大きな吐水群」は、体積を持ちある程度の速度を持つので、吐水の重さを感じさせることができる。なお、この場合、「大きな吐水群」は、「分散した吐水群」よりも速い速度で被洗浄物に当たるので、「分散した吐水群」よりも汚れを落とす力を与える吐水となる。そのため、「分散した吐水群」と「大きな吐水群」とによっても、汚れを落とす力と汚れを洗い流す力とを兼ね備えた吐水と感じさせることができる。
【0186】
さらに、「分散した吐水群」と「速い吐水群」とを交互に生成させることができる。その様にすれば、「分散した吐水群」で大きな汚れを洗い流す力を得るとともに、「速い吐水群」で汚れを落とす力を感じさせることができる。
【0187】
なお、これらの吐水群は、3つの形態(「速い吐水群」、「大きな吐水群」、「分散した吐水群」)が組み合わさって生成されてもよい。その様にすれば、汚れを洗い流す力を非常に高くし、かつ汚れを落とす力を強くした吐水が実現できる。
【0188】
すなわち、吐水群は、図27において例示をした形態だけではなく、「速い吐水群」、「大きな吐水群」、「分散した吐水群」等の種々の形態が組み合わさって形成されるようにしてもよい。異なる物理量の吐水群を組み合わせるようにすれば、非常に高い汚れを洗い流す力と汚れを落とす力を有する吐水をさせることができる。
【0189】
また、この場合、吐水群が形成される順番は例示をした以外の順番でも良いし、毎回順番が変わっても良い。また、吐水群が被洗浄物に着水するタイミングもかならずしも規則的である必要はなく、その間隔が異なっていてもよい。この場合、例えば、あらかじめ、脈動周期が変化するような周波数のテーブルを用意しておき、不感帯周波数域内において、周波数を規則的に変動させてもよい。また、不感帯周波数域内において周波数をランダムに変動させてもよい。また、散発的に脈動を発生させてもよい。
【0190】
このように、本実施の形態においては、異なる吐水群により異なる洗浄力を生成し、不感帯周波数域内で複数の吐水群を当てて、異なる洗浄力をそれぞれの吐水群で生成することができる。すなわち、異なる物理量の吐水群を形成し、不感帯周波数域内において複数の吐水群を個別的に被洗浄物に当てることで、それぞれの吐水群により異なる洗浄力を与えることができる。
【0191】
なお、これらは、吐水群の一例であり、組合せも一例にすぎない。この場合、異なる吐水群により、異なる洗浄力を作り、足らない洗浄力、物理量を補うことで高い洗浄性能を実現させる点が重要である。すなわち、異なる吐水群により異なる洗浄力を作りだすことで足らない洗浄力や物理量を補って、高い洗浄性能を与えることができればよい。
【0192】
なお、吐水群に関して、図23に例示をした脈動発生部90fの場合を例に挙げたが、他の実施形態に係る脈動発生部の場合も同様である。
【0193】
図29は、洗浄水の圧力変動の様子を例示するためのグラフ図である。
なお、図29(A)は、図24に対応するものであり、圧力波形を実測したものである。この場合、洗浄水の圧力は、吐水孔401もしくは402、または、これらに連通する洗浄渦室301もしくは302において測定した。また、圧力計としては応答性が高いものを用い、高いサンプリング周期で測定するようにした。また、図29(B)は、図25に対応するものであり、脈動発生コイル74dに印加されたパルス状の電圧の波形を表したものである。
図30は、電圧印加のタイミング、プランジャの動作、圧力波形、吐水された洗浄水の状態を例示するための模式図である。なお、「吐水された洗浄水の状態」欄における上段の図は吐水直後の状態を表し、下段の図は被洗浄物に着水する直前の状態を表している。また、図中のa、b、c、d、eは、圧力a、b、c、d、eの場合にそれぞれ吐水された洗浄水を表している。
【0194】
図30[I]に示すように、給水圧近傍からの積極的な加圧により高い圧力の領域を形成し、高い圧力の領域において速度が速く小さな吐水群の生成が行われるようにしている。高い圧力の領域においては速度を速くすることができるので、被洗浄物に到達するまでの時間を短くすることができる。そのため、先に吐水された洗浄水に後から吐水された洗浄水が追い付くことが抑制される。その結果、速度が速く小さな吐水群の生成が容易となる。
【0195】
この場合、ON時間をT1として図示しない脈動発生コイル74dに電圧を印加すると脈動発生コイル74dに電流が流れるので、脈動発生コイル74dが励磁されてプランジャ74cが磁化される。そして、プランジャ74cが磁化されると、プランジャ74cは脈動発生コイル74dの側、すなわち下流側へ引き付けられる。この下流側への引き付けによって洗浄水が加圧され、給水圧(例えば、0.110MPa程度)近傍の圧力aから最も高い圧力bにまで上昇する。
すなわち、図29に示すように、ON時間をT1として脈動発生コイル74dに電圧を印加すると、洗浄水の圧力は給水圧近傍の圧力P23から最も高い圧力P24にまで上昇する。この際、圧力が変動すると速度も対応するようにして変動する。
【0196】
ここで、前述したように、圧力P23(圧力a)に対応する速度V23と、圧力P24(圧力b)に対応する速度V24との間における速度の立ち上がり勾配部分においては、全体の速度が速い。
そのため、図30[I]の「吐水された洗浄水の状態」欄に示すように、先に速度V23で吐水された洗浄水aに、後から速度V24で吐水された洗浄水bが追いつきにくい。その結果、速度V23で吐水された洗浄水aと、速度V24で吐水された洗浄水bとがほとんど合体せず、小さな吐水群として被洗浄物に着水することになる。この場合、速度V23、速度V24が速いので、速度が速く小さな吐水群が生成されることになる。
【0197】
図30[II]に示すように、ON時間T1の後、電圧印加を停止すると、復帰スプリング74fの付勢力によってプランジャ74cが原位置に復帰する。そのため、洗浄水の圧力は、圧力bから圧力cへと低下する。
この場合、圧力bにおいて先に吐水された洗浄水の速度は、圧力cにおいて後から吐水された洗浄水の速度よりも速い。
そのため、図33[II]の「吐水された洗浄水の状態」欄に示すように、後から吐水された洗浄水が追い付くことができず、それぞれが被洗浄物に着水することになる。この場合、図33[I]の場合と比べて洗浄水の速度が遅く、洗浄水の量が少なくなるので、汚れを落とす力と汚れを洗い流す力とを高めることに対する寄与が少なくなる。
【0198】
図30[III]に示すように、給水圧よりも低い圧力の領域にある時に速度が遅く大きな吐水群の生成が開始される。すなわち、圧力cにおいて吐水が開始される。
この場合、図30[II]に例示をしたように、復帰スプリング74fの付勢力によってプランジャ74cが原位置に復帰する際に洗浄水が引き込まれることで、圧力cが給水圧よりも低くなる。そのため、給水圧よりも低い圧力の領域を容易に形成することができる。給水圧よりも低い圧力の領域においては速度を遅くすることができるので、被洗浄物に到達するまでの時間を長くすることができる。そのため、先に吐水された洗浄水に後から吐水された洗浄水が追い付く量を多くすることができるので、速度が遅く大きな吐水群の生成が容易となる。
【0199】
また、図30[IV]に示すように、速度が遅く大きな吐水群の生成が行われる工程の後半において、ON時間をT3として脈動発生コイル74dに電圧を印加する。ON時間をT3として脈動発生コイル74dに電圧を印加した場合においても、プランジャ74cが引き付けられることで洗浄水が加圧され、圧力が上昇する。ただし、圧力が復帰途中であることと、T3の時間がT1よりも短いことにより、圧力は圧力bまでは高まらず、給水圧よりも少し高い第2のピークである圧力dまで上昇する。
すなわち、図29に示すように、ON時間をT3として脈動発生コイル74dに電圧を印加すると、洗浄水の圧力は圧力P24までは高まらず、給水圧よりも少し高い第2のピークである圧力P22まで上昇する。
【0200】
ここで、前述したように、圧力P21(圧力c)に対応する速度V21と、圧力P22(圧力d)に対応する速度V22との間における速度の立ち上がり勾配部分においては、全体の速度が遅い。また、速度V22は速度V21より速度が速い。
そのため、図30[III]、[IV]の「吐水された洗浄水の状態」欄に示すように、先に速度V21で吐水された洗浄水cに、後から速度V22で吐水された洗浄水dが追いつくことができる。その結果、速度V21で吐水された洗浄水cと、速度V22で吐水された洗浄水dとが合体し、大きな吐水群となる。この場合、速度V21、速度V22は、速度V23、速度V24より速度が遅い。そのため、速度が遅く大きな吐水群が生成されることになる。
【0201】
次に、図30[V]に示すように、ON時間T3の後、電圧印加を停止すると、復帰スプリング74fの付勢力によってプランジャ74cが原位置に復帰する。この場合、ON時間T3におけるプランジャ74cの引き付け量が少ないので、復帰スプリング74fの付勢力による移動量も少なくなる。そのため、ほぼ原位置近傍で静止する様な状態となる。 前述したように、圧力dは給水圧よりも少し高い程度であり、圧力eは給水圧程度であるため、この領域の圧力は給水圧近傍に維持されることになる。
【0202】
この場合、圧力dにおいて先に吐水された洗浄水dの速度と、圧力eにおいて後から吐水された洗浄水eの速度とはほぼ同等となる。
そのため、図30[V]の「吐水された洗浄水の状態」欄に示すように、後から吐水された洗浄水eが追い付くことができず、それぞれが被洗浄物に着水することになる。
【0203】
ここで、ON時間T3の終了時からON時間T1の開始時までの間にOFF時間を設けることで、洗浄水c〜洗浄水dと、洗浄水a〜洗浄水bとの間に十分な時間の開きを設けることができる。そのため、洗浄水c〜洗浄水dにより生成された速度が遅く大きな吐水群と、洗浄水a〜洗浄水bにより生成された速度が速く小さな吐水群とを、互いに干渉することなく、被洗浄物に異なる速度をもって独立して着水させることができる。
このことは、1つの周期の中で異なる吐水群を均等なタイミングでつくることに繋がるので、不感帯周波数域よりも低い周波数においても断続感の少ない快適な洗浄を実現することが可能となる。また、それぞれを不感帯周波数域内で着水させるようにすれば、汚れを落とす力と汚れを洗い流す力とを備えた吐水がされていると感じさせることもできる。
【0204】
また、給水圧近傍からの積極的な加圧を行うことで圧力b(圧力P24)をより高めるようにすれば、その後に形成される圧力c(圧力P21)をより低くすることができる。そのため、前述した「給水圧よりも低い圧力の領域」の形成を容易とすることができる
また、圧力が給水圧へと復帰する際に積極的な加圧を行うようにすれば、迅速、かつ安定的に給水圧近傍の圧力を得ることができる。
【0205】
次に、第8の実施形態に係る吐水装置について例示をする。
図31には、脈動発生部90fに印加される電圧波形を、図32には、脈動発生部90fの圧力変動によって生じる吐水の速度変化のタイミングチャートを示す。なお、吐水装置の構成は、第1の実施形態に係るものとほぼ同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0206】
ここで、第1の実施形態に係る吐水装置などにおいては、1つの脈動周期MTにおいて、少なくとも1つの凸状ピークと、前後の傾きが正となる変曲点とを有する周期的な脈動推移を発生させるようにしている。これに対し、本実施の形態においては、追付き曲線を基準として異なる物理量を有する吐水群を生成するようにしている。そして、第1のボトム速度Va1と第2のボトム速度Va3とが略同一となるようにしている。
【0207】
図31に示すように、脈動発生部90fの脈動発生コイル74dには、1周期中にON時間で断続的加える領域Ta1と、その後、一定期間OFFするTa2と、さらにその後ONする領域Ta3の領域を持つパルス波形が加わっている。すなわち、脈動発生コイル74dには、電圧印加が断続的に行われる領域Ta1と、領域Ta1の後に電圧印加が停止される領域Ta2と、領域Ta2の後に電圧印加が行われる領域Ta3と、を有するパルス状の電圧が印加される。このときの全体の周期はMTである。
【0208】
これによって生じる速度(初速)の変動のタイミングチャートが図32である。なお、図32には、前述した60mm地点における追付き曲線(点線)が引かれている。
次に、吐水の様子について図32に基いて例示をする。電圧印加が断続的に行われる領域Ta1においてはON時間が断続的となるため、プランジャ74cは、通常の電圧印加が行われる領域Ta3の場合に比べ、ややゆっくりとした速度で吸引される。その結果、第1のボトム速度Va1から第1のピーク速度Va2までの速度の上昇はややなだらかになる。
【0209】
このとき、速度の立ちあがり勾配は、追付き曲線の勾配よりも緩やかとなる、すなわち、吐水の増加率が小さくなるため、後から吐水された洗浄水はほとんど追付くことがない。しかしながら、前述した追付きによる減速がほとんど起らないため、吐水断面積は小さいが速い吐水群が生成される(第2の吐水群)。
【0210】
一方、一定期間電圧を印加する領域Ta3においてはプランジャ74cが一気に吸引されるため、速度は、第2のボトム速度Va3から、急激に上昇し第2のピーク速度Va4に到達する。このときの速度の立ちあがり勾配は、追付き曲線の勾配と同等もしくは急となるため、後から吐水された洗浄水の追付きが起り吐水断面積の大きな吐水群が生成される(第1の吐水群)。
【0211】
このとき、第1の吐水群は、多くの洗浄水が追付くことによって吐水断面積の大きな吐水群となるが、その時、前述した追付きによる減速が生じる。ここで、速度波形において、第2のピークVa4は、第1のピークVa2よりもやや高くなっているが、速度Va4は前に吐水した洗浄水への追付きによって減速するので、第1の吐水群は第2の吐水群よりも被洗浄物に着水する時点での速度が遅くなる。よって、被洗浄物に着水する時点の速度が異なると共に、吐水断面積の大きさの異なる2種類の吐水群が生成される。
これによって、大きな吐水群と小さな吐水群とが交互に被洗浄物に当たることになる。ここで、第2の吐水群は、速度が速く吐水断面積が小さいため、当たるときには圧が大きくなり、汚れを落とす力を与える。一方、第1の吐水群は、吐水断面積が大きくなるので、圧は分散して弱くなるが吐水断面積が大きいため汚れを洗い流す力を与える。
【0212】
このように、吐水断面積の大きさの異なる吐水群を生成し、不感帯周波数域内において、少なくとも1回被洗浄物に当てることで汚れを落とす力と汚れを洗い流す力を両立させることができる。
【0213】
なお、吐水断面積の大きさの異なる吐水群は、必ずしも交互に規則的に生成する必要はない。5Hz以上の不感帯周波数域内において、少なくともそれぞれ1回被洗浄物に着水させればよい。また、生成される周波数は変動してもよい。
【0214】
次に、第9の実施形態に係る吐水装置について例示をする。
図33は、蓄圧部が設けられている場合を例示するための模式図である。なお、前述したものと同様の構成要素には同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
図33に示すように、脈動発生部90fと流量調節兼流路切替弁81とは蓄圧部75aで接続されている。また、流量調節兼流路切替弁81とノズル82とは蓄圧部86aで接続されている。
【0215】
蓄圧部75a、86aは、水圧を受けると弾性変形するものとすることができる。例えば、樹脂やゴムなどから形成されたチューブなどとすることができる。
水圧を受けて蓄圧部75a、86aに蓄えられた弾性エネルギーは、洗浄水の加圧を補助するために利用することができる。特に、圧力の低い領域においては洗浄水の加圧を効果的に行うことができる。例えば、図33の「B」に示す領域においては洗浄水の加圧を効果的に行うことができる。
【0216】
この場合、蓄圧部75a、86aの加圧作用を利用すれば、「B」に示す領域における電圧印加の時間を「C」に示すように短くすることができる。そのため、消費電力を低減させたり、脈動発生部90fの発熱量を低減させたりすることができる。
なお、図33に例示をしたものは、蓄圧部75aと蓄圧部86aとを設けるようにしたが、少なくともいずれかが設けられるようにすることができる。
また、蓄圧部75a、86aに蓄えられる弾性エネルギーは、材料のバネ定数を適宜選択することで変更することができる。
【0217】
また、変形例として、ノズル82の先端部(図4中の旋回渦室301、302)において空気を混入させるようにすることができる。
図34は、空気混入部が設けられた吐水装置を例示するための水路系統図である。なお、図1において例示をしたものと同様の構成要素には同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
図34に示すように、吐水装置1aの水路系には、供給源側(IN側)から順に、定流量弁105、給水弁106、熱交換ユニット60、アキュームレータ73、脈動発生部90、流量調節兼流路切替弁81、ノズル82が設けられている。また、ノズル82の先端部において空気を混入させる空気供給部107と、制御部10とが設けられている。
【0218】
定流量弁105は、二次側に供給される洗浄水の流量を所定の値に保つ。定流量弁105を設けるものとすれば、一次側に圧力変動が生じても影響されることなく、二次側に所定の流量の洗浄水を流すことができる。また、高水圧環境下に吐水装置1aを設ける場合においては、いわゆるリミッタとしての機能を果たさせることもできる。そのため、定流量弁を設けるようにすることが好ましい。
給水弁106は、流路の開閉を行うことで吐水装置1aへの洗浄水の流入を制御する。 制御部10は、給水弁106、熱交換ユニット60、脈動発生部90、流量調節兼流路切替弁81、空気供給部107の制御を行う。
【0219】
空気供給部107は、例えば、強制的に空気を導入するエアポンプなどから構成されるものとすることができる。
空気供給部107によって加圧された空気は、ノズル82の先端に連結されたチューブ107aを介してノズル82内に供給される。なお、チューブ107bを介して流量調節兼流路切替弁81に供給されるようにすることもできる。ここで、チューブ107aやチューブ107bは、空気供給部107から供給された空気を洗浄水中に混入させる空気混入部ということもできる。
この場合、脈動発生部90によって生じる圧力変動(図3などを参照)に合わせて空気供給部107を制御することによって、加圧された空気が混入されるタイミングを合わせるようにすることができる。
【0220】
例えば、速度の遅い領域の立ちあがり勾配の範囲において空気が混入されるように、脈動発生部90に加わる電圧波形に基づいて、空気供給部107を同期制御するようにすることができる。これによって、大きな吐水群が生成されるタイミングにおいて空気が混入されるので、吐水群を分散させて、広範囲に広げることができる。つまり、空気によって見かけ上の吐水断面積を増大させ、その結果として汚れを洗い流す力を高くすることができる。
【0221】
一方、速度の速い領域においては、空気を混入させないようにすれば、速い速度の洗浄水が分散されることなく吐水され、速い速度を維持したまま被洗浄物に着水させることができる。本実施の形態によれば、より汚れを洗い流す力の高い状態で、汚れを落とす力と汚れを洗い流す力を両立させることができる。なお、空気供給部107からの空気をノズル82の先端に混入させるようにすれば、空気を効率よく混入させることが可能となる。また、速度の速い領域では必要以上に空気が混入しないため、空気のダンパー効果によって汚れを落とす力が減衰することを防ぐこともできる。
【0222】
なお、空気が混入された洗浄水が吐水孔から吐水された場合、吐水時点では洗浄水は円錐状に拡張されずに直線状に吐水されるものの、洗浄水に含まれた空気によって洗浄水はまとまった塊にならずに粒状に分離してしまう場合がある。特に、空気を圧送して洗浄水中に強制的に混入させた場合に、そのような吐水となる。その場合においても、吐水された洗浄水は、前述した実施形態に示した脈動発生部(吐水手段)によって、速度差を持っている。よって、洗浄水が粒状に分離した水粒となっていても、時間的に後から吐水された水粒が前に吐水された水粒に追いつこうとする。吐水時の速度が比較的遅い吐水であれば、時間的に後から吐水された水粒は、前に吐水された水粒に追いついて重なり合うことで比較的大きな水粒に成長する。一方、吐水時の速度が比較的速い吐水であれば、時間的に後から吐水された水粒は、前に吐水された水粒にほとんど追いつくことなく被洗浄物に着水されるので、吐水時の速度をあまり失わずに、小さな水粒の状態で速い速度で被洗浄物に到達する。この比較的大きな水粒が吐水断面積が大きい、大きな吐水群として機能し、被洗浄物への着水により汚れを洗い流す力を与える。そして、比較的小さな水粒が吐水断面積は小さいが速度が速い、小さな吐水群として機能し、被洗浄物への着水によって汚れを落とす力を与える。
【0223】
したがって、洗浄水に空気を混入させた場合においても、汚れを洗い流す力と汚れを落とす力を高める作用が滅殺されることなく、汚れを洗い流す力と汚れを落とす力を両立させた吐水を行うことができる。
【0224】
なお、空気供給部107からの空気の供給位置は、ノズル82の先端に限ったものではなく、ノズル82の上流側の配管などに空気が混入できるようにしてもよい。例えば、前述したように流量調節兼流路切替弁81に空気を供給することもできる。
【0225】
また、空気供給部107は、必ずしも強制混入できるものである必要はなく、自然吸入を用いたものであっても良い。なお、自然吸入を用いる場合には、洗浄水内に気泡として空気を混入させることになる。洗浄水内に気泡として空気を混入させれば、吐水群の体積を増大させることが可能となる。その結果、汚れを洗い流す力をより高めた状態で、汚れを落とす力と汚れを洗い流す力を両立させることが可能となる。
【0226】
以上に例示をした吐水装置の実施形態によれば、以下のいずれかの態様を成している。
【0227】
吐水装置は、水の吐水を行う吐水手段と、前記吐水手段より下流に設けられ、前記水を被洗浄物に向けて吐水する吐水孔を備えたノズルと、を備え、前記吐水手段は、第1の吐水と、第2の吐水を行うものであって、前記第1の吐水は、前記吐水孔から吐水される水が、前記ノズルからの吐水時に円錐状に拡張されることがないように構成され、且つ、被洗浄物の着水位置において前記第2の吐水よりも大きな吐水断面積となるように構成され、前記第2の吐水は、前記吐水孔から吐水される水が、前記ノズルからの吐水時に円錐状に拡張されることがないように構成され、且つ、被洗浄物の着水位置において前記第1の吐水よりも速い速度となるように構成され、更に前記吐水手段は、前記第1の吐水と第2の吐水を異なるタイミングで吐水するように構成されている。
【0228】
前記第1の吐水及び第2の吐水を、被洗浄物の同じ部位に向けて吐水し、同時もしくは交互に同一の前記着水位置に着水するように構成するのが、より好ましい。
【0229】
前記第1の吐水及び第2の吐水が、同一の吐水孔から交互に吐水されることは、汚れを洗い流す力を高めた吐水と汚れを落とす力を高めた吐水が同一の吐水孔から交互に吐水されるという構成となる。そのため、使用水量を大きく低下させることができるとともに、被洗浄物が人体である場合には、人体への着水位置も簡単に同じ位置にできる。その結果、汚れを落とす力と汚れを洗い流す力を兼ね備えた吐水が行われていることを確実に使用者に感じさせる事ができ、高いレベルでの洗浄性能を与えることができる。
【0230】
また、前記吐水手段は、前記第1の吐水が、前記着水位置において前記第2の吐水よりも大きな吐水断面積となるように、吐水孔からの前記着水位置までの間において、先に吐水された洗浄水に後から吐水された洗浄水が追いつく追付き量が、第2の吐水よりも第1の吐水の方が多くなるように吐水時の初速が第2の吐水より遅くなるように構成し、前記第2の吐水は、前記着水位置において前記第1の吐水よりも速い速度となるように吐水孔から前記着水位置までの間において、先に吐水された洗浄水に後から吐水された洗浄水が追いつく追付き量が、第1の吐水よりも第2の吐水の方が少なくなるように、吐水時の初速が第1の吐水より速くなるように構成されている。
【0231】
また、前記吐水手段は、前記第2の吐水の初速が、前記第1の吐水の初速よりも速くなるように吐水する。また、前記第2の吐水の初速の増加率が、前記第1の吐水の初速の増加率よりも小さくなるように吐水する。これによって、先に吐水された洗浄水に対して後から吐水される洗浄水の速度が速く成り過ぎるのを抑制することができる。
【0232】
また、前記吐水手段は、第1の加圧工程と、前記第1の加圧工程とは異なる吐水がされるように構成された第2の加圧工程を備え、前記第1の吐水は、前記第1の加圧工程によって、前記着水位置において前記第2の吐水よりも大きな吐水断面積となるように加圧され、前記第2の吐水は、前記第2の加圧工程によって、前記着水位置において前記第1の吐水よりも速い速度となるように加圧されるように構成されてなる。
【0233】
これによれば、2つの異なる吐水を行うために、2つの加圧工程を有し、それぞれの工程において最適化された吐水がされるように構成している。そのため、大きな吐水断面積を持つ第1の吐水と、速い速度を持つ第2の吐水を効率よく、かつ確実に生成することができる。
【0234】
なお、「第1の加圧工程」、「第2の加圧工程」は、前述した実施形態においては、以下が該当する。たとえば、第1の実施形態においては、図3の圧力波形におけるP1からP2に至るまでの加圧期間が「第1の加圧工程」に相当し、P3からP4に至るまでの加圧期間が「第2の加圧工程」に相当する。また、第8の実施形態においては、図24の圧力波形におけるP21からP22に至るまでの加圧期間が「第1の加圧工程」に相当し、P23からP24に至るまでの加圧期間が「第2の加圧工程」に相当する。
【0235】
この第1の加圧工程、第2の加圧工程を行うにあたっては、吐水手段は、第5、第7の実施形態のように一つの加圧部を動作させてもよいし、第1〜第4、第6の実施形態のように第1の加圧工程を行う第1の加圧部と、第2の加圧工程を行う第2の加圧部を備えて、動作させてもよい。
【0236】
そして、第2の加圧部は、第1の加圧部よりも吐水の初速が速くなるように加圧量が設定されることにより、加圧部による加圧量を変えるという極めて簡単な構成によって吐水される洗浄水の速度を変えることが可能となる。
【0237】
また、第2の加圧部による吐水の初速が、第1の加圧部による吐水の初速よりも速くなるように、第2の加圧部下流の流路が、第1の加圧部下流の流路よりも小さくなっている。例えば、加圧部の下流の流路そのものの径を変えるもしくはオリフィス等を入れて変えるという極めて簡単な構成によって吐水される洗浄水の速度を変えるようにすることができる。
【0238】
さらに、第2の加圧部は、第1の加圧部よりも吐水の初速が速くなるように、第2の加圧部下流の蓄圧量が、第1の加圧部下流の蓄圧量よりも小さくなっている。例えば、加圧部の下流の蓄圧量を蓄圧器を入れるもしくはゴムチューブ等を介在させて、蓄圧量が変わるように設定するという極めて簡単な構成によって吐水される洗浄水の速度を変えるようにすることができる。
【0239】
また、前記第1の加圧部によって加圧された洗浄水を第1の加圧部内に蓄圧する第1の流路開閉部と、前記第2の加圧部によって加圧された洗浄水を第2の加圧部内に蓄圧する第2の流路開閉部と、を備え、第1の流路開閉部により第1の加圧部内に蓄圧する時間を、第2の流路開閉部により第2の加圧部内に蓄圧する時間よりも長くして、前記第1の吐水と、前記第2の吐水と、を行うようにすることができる。
【0240】
また、この吐水装置においては、加圧部によって加圧された洗浄水を加圧部内に蓄圧する流路開閉部(例えば、前述したアンブレラパッキンなど)を設け、流路開閉部により蓄圧される時間が異なるものとなるようにされている。そして、流路開閉部により蓄圧される時間を異なるものとすることで、吐水される洗浄水の速度を変えて第1の吐水による流量の多い洗浄水と第2の吐水による速度の速い洗浄水とを生成するようにしている。
この様にすれば、低流量であっても第1の吐水による流量の多い洗浄水と第2の吐水による速度の速い洗浄水とを生成することができる。そのため、さらに少ない洗浄水量であっても汚れを洗い流す力と汚れを落とす力を両立させた高い洗浄性能を得ることができる。また、この様な低流量であっても効果の高い吐水を、2つの加圧部に設けられた流路開閉部により蓄圧される時間を異なるものとするという簡単な構成で実現させることができる。
なお、流路開閉部(例えば、前述したアンブレラパッキンなど)により蓄圧される時間は、例えば、材料のバネ定数を適宜選択したり、流路を開閉する部分の厚さなどの寸法を適宜変更したりすることで変化させることができる。
【0241】
以上、本発明の実施の形態について例示をした。
【0242】
本発明によれば、限られた水量の中で、多くの水量で洗浄されているような汚れを洗い流す力を実現させ、かつ、汚れを落とす力も両立して実現することができる。そのため、快適性の高い吐水装置を実現させることができる。
【0243】
なお、洗浄水の追付き量を制御することで吐水断面積が相対的に異なる吐水群を生成するようにしたが、吐水の開始時点から流量が多い第1の吐水と、第1の吐水より速度が速い第2の吐水を行うようにすることもできる。
また、前述した実施形態においては、用途別に設けられた1つの吐水孔(例えば、「おしり洗浄」、「ビデ洗浄」など)から吐水を行うようにしているが、「大きな吐水群(吐水断面積が大きく(流量が多く)速度の遅い吐水群)」を生成するための吐水孔と、「小さな吐水群(吐水断面積が小さく(流量が少なく)速度の速い吐水群)」を生成するための吐水孔とを設けるようにすることもできる。また、前述した流量が多い第1の吐水を行うための吐水孔と、第1の吐水より速度が速い第2の吐水を行うための吐水孔とを設けるようにすることもできる。
【0244】
続いて、本発明の吐水装置をシャワー装置に応用した場合について説明する。
図35は、吐水装置をシャワー装置に応用した構成を例示するための概略構成図である。
図35に示すように、シャワー装置600は、シャワーヘッド670と、ホース部660と、圧力変動部650と、流調止水部640と、温度調整部630と、制御装置620と、操作部610と、を備える。制御装置620は、圧力変動部650や流調止水部640や温度調整部630の動作を制御するものであり、操作部610への操作によって制御装置620が作動するようになっている。
【0245】
給水源から供給される水が温度調整部630で温度調整され、温水が給水管を介して圧力変動部650に供給される。制御装置620によって、圧力変動部650が作動すると、供給された湯水に脈動推移が発生する。圧力変動部650によって発生した脈動が、シャワーヘッド670を介して人体に向けて吐水される。このとき、圧力変動部650によって発生した脈動により、シャワーヘッド670のそれぞれの散水孔から断面積の大きい吐水と、速度の速い吐水とが交互に吐水されることになる。そして、速度の速い吐水により汚れを落としやすくなり、断面積の大きい吐水、すなわち、水量の多い吐水により、汚れや、シャンプー、石鹸などの泡を洗い流すことができる。このとき、それぞれを高速に交互に独立して当てることにより、それぞれの性能を両立して高めた洗浄を実現することができる。また、シャワーの浴び心地も、刺激感と量感とからあらわされ、速度の速い吐水により刺激感を感じ、断面積の大きい吐水により量感を感じることができる。このように、刺激感と量感を両立して感じることができ、非常に高い浴び心地のシャワーを実現することができる。なお、ここでいう刺激感は、汚れを落とす感覚ということもでき、その刺激(強さ)により、汚れをこそぎ落とす感覚に近い感覚である。一方、量感は、汚れを流す感覚ということもでき、多い流量で汚れや泡などを洗い流す感覚ということもできる。すなわち、この技術を用いることにより、少ない水量で、シャワーの浴び心地や洗浄性能は、流速Vと吐水断面積S(重さM)を高めることができ、高い浴び心地や、高い洗浄性能を実現することができる。
【0246】
なお、これまでの実施形態は、人体に吐水する洗浄装置を例示したが、この吐水装置は人体以外に適用することもできる。たとえば、食器洗い乾燥機のように、食器の洗浄性能を高めることに用いてもよい。この場合、速度の速い吐水群により、頑固な汚れなどを落とす性能を高めることができ、吐水断面積S(重さM)の大きい吐水群により、汚れや洗剤の洗い流し性能を高めることができる。そして、それぞれの吐水群を短い周期で交互に吐水することで汚れ落とし性能と洗い流し性能を高いレベルで両立した洗浄を実現することができる。
【0247】
また、本吐水装置は、洗濯機に応用してもよい。この場合、回転等の通常の洗濯工程に加え、吐水装置による洗浄を加えることにより、汚れ落とし能力を高めることができる。そして、さらに、速い吐水群と断面積の大きい吐水を交互に吐水することにより、汚れ落とし性能と汚れ流し性能とを高いレベルで両立した洗浄を実現することができる。
なお、これ以外の用途においても、適宜応用可能である。
【符号の説明】
【0248】
1 吐水装置、1a 吐水装置、10 制御部、50 入水側弁ユニット、60 熱交換ユニット、70 脈動ユニット、90 脈動発生部(吐水手段)、90a〜90f 脈動発生部(吐水手段)、91 第一の脈動発生部(吐水手段)、91a〜91c 第一の脈動発生部(吐水手段)、92 第二の脈動発生部(吐水手段)、92a〜92c 第二の脈動発生部(吐水手段)、75a 蓄圧部、80 ノズルユニット、82 ノズル、86a 蓄圧部、107 空気供給部、107a チューブ、107b チューブ、401 吐水孔、402 吐水孔、600 シャワー装置、610 操作部、620 制御装置、630 温度調整部、640 流調止水部、650 圧力変動部、660 ホース部、670 シャワーヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の吐水を行う吐水手段と、
前記吐水手段より下流に設けられ、前記水を吐水する吐水孔を備えたノズルと、
を備えた吐水装置において、
前記吐水手段は、第1の吐水と、第2の吐水を行うものであって、
前記第1の吐水は、前記吐水孔から吐水される水が、前記ノズルからの吐水時に円錐状に拡張されることがないように構成され、且つ、吐水後に前記第2の吐水よりも大きな吐水断面積となるように構成され、
前記第2の吐水は、前記吐水孔から吐水される水が、前記ノズルからの吐水時に円錐状に拡張されることがないように構成され、且つ、吐水後に前記第1の吐水よりも速い速度となるように構成され、
更に前記吐水手段は、前記第1の吐水と第2の吐水を異なるタイミングで吐水するように構成されていることを特徴とする吐水装置。
【請求項2】
前記第1の吐水及び第2の吐水が、予め決定された所定位置において重なるように同一の吐水孔から交互に吐水されていることを特徴とする請求項1記載の吐水装置。
【請求項3】
前記吐水手段は、前記第1の吐水が、予め決定された所定位置において前記第2の吐水よりも大きな吐水断面積となるように、吐水孔から前記所定位置までの間において、先に吐水された水に後から吐水された水が追いつく追付き量が、第2の吐水よりも第1の吐水の方が多くなるように、前記第1の吐水が始まる時点での初速が第2の吐水が始まる時点での初速より遅くなるように、且つ、第1の吐水が終わる時点での初速が第2の吐水が終わる時点での初速より遅くなるように構成し、前記第2の吐水は、前記所定位置において前記第1の吐水よりも速い速度となるように吐水孔から前記所定位置までの間において、先に吐水された水に後から吐水された水が追いつく追付き量が、第1の吐水よりも第2の吐水の方が少なくなるように、前記第2の吐水が始まる時点での初速が第1の吐水が始める時点での初速より速くなるように、且つ、第2の吐水が終わる時点での初速が第2の吐水が終わる時点での初速より速くなるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の吐水装置。
【請求項4】
前記吐水手段は、前記第2の吐水を、前記第1の吐水よりも初速の変化増加率が小さくなるように吐水するよう構成されていることを特徴とする請求項3記載の吐水装置。
【請求項5】
前記吐水手段は、加圧によって吐水を行うものであるとともに、第1の加圧工程と、前記第1の加圧工程とは異なる吐水がされるように構成された第2の加圧工程を備え、
前記第1の吐水は、前記第1の加圧工程によって、予め決定された所定位置において前記第2の吐水よりも大きな吐水断面積となるように加圧され、
前記第2の吐水は、前記第2の加圧工程によって、前記所定位置において前記第1の吐水よりも速い速度となるように加圧されるように構成されてなることを特徴とする請求項1記載の吐水装置。
【請求項6】
前記吐水手段は、加圧によって吐水を行うものであるとともに、前記第1の加圧工程を行う第1の加圧部と、前記第2の加圧工程を行う第2の加圧部を備えていることを特徴とする請求項5記載の吐水装置。
【請求項7】
前記第2の加圧部は、第1の加圧部よりも吐水の初速が速くなるように加圧量が設定されていることを特徴とする請求項6記載の吐水装置。
【請求項8】
前記第2の加圧部は、第1の加圧部よりも吐水の初速が速くなるように、第2の加圧部下流の流路が、第1の加圧部下流の流路よりも小さくなるように構成したことを特徴とする請求項6記載の吐水装置。
【請求項9】
前記第2の加圧部は、第1の加圧部よりも吐水の初速が速くなるように、第2の加圧部下流の蓄圧量が、第1の加圧部下流の蓄圧量よりも小さくなるように構成したことを特徴とする請求項6記載の吐水装置。
【請求項10】
前記吐水手段は、前記水に空気を混入させる空気混入手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の吐水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2010−248880(P2010−248880A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144740(P2009−144740)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】