説明

吐水装置

【課題】従来よりも所要部品点数が少なくて済み、構造も簡単で組付けの際やメンテナンスの際等の作業を容易に行い得る吐水装置を提供する。
【解決手段】吐水管12と、吐水管先端部の内側に装着されて吐水管12内の水路の先端の吐水口58を形成する筒状の吐水口部材52と、吐水口58に配置されて水流を通過させ、吐水口58からの吐水の吐出パターンを制御する吐出端部材60とを備えた吐水装置において、吐出端部材60を筒状の吐水口部材52をハウジングとして内部に挿入し、吐出端部材60と吐水口部材52とのそれぞれを、共通の固定部材67にて吐水管12に固定するようになす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は吐水管を備えた吐水装置に関し、詳しくは吐水管の先端部の内側に装着されて吐水管内の水路の先端の吐水口を形成する筒状の吐水口部材と、吐水口から吐出される吐水のパターンを制御する吐出端部材とを備えた吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、センサによる手等の検知に基づいて吐水口から自動吐水する自動水栓の吐水装置は、吐水管と、吐水管内に挿通されて給水を吐水口に導く給水チューブと、給水チューブに接続状態で吐水管の先端部の内側に装着されて吐水管内の水路の先端の吐水口を形成する筒状の吐水口部材と、吐水口に配置されて水流を通過させ、吐水口からの吐水の吐出パターンを制御する吐出端部材とを備えて構成してある。
【0003】
この種吐水装置にあっては、従来、吐出端部材を専用の筒状のハウジング内に収納して、これをハウジングにて吐水の吐出方向に抜止状態に保持し、そしてそのハウジングをねじ結合等の固定手段で吐水口部材に固定した上で、吐水口部材を吐水管に対しビス等の固定具にて固定し、以て吐出端部材,ハウジング,吐水口部材を吐水管に取り付けるようになしていた。
【0004】
下記特許文献1にはこの種形態の吐水装置が開示されている。
図9はその具体例を示している。
図において200は吐水管、202はその内部に挿通された給水チューブ、204は給水チューブ202に接続された吐水口部材で、206は吐水の吐出パターンを制御する吐出端部材である。
【0005】
208は筒状をなす吐出端部材206の専用のハウジングで、このハウジング208内部に吐出端部材206が挿入されて、吐水の吐出方向に抜止状態にハウジング208にて保持されている。
【0006】
図9(B)に示しているようにハウジング208には雌ねじ部210が設けられており、ハウジング208は、この雌ねじ部210において吐水口部材204の雄ねじ部にねじ結合されている。
また吐水口部材204は、固定部材としてのビス212により吐水管200に固定され、取り付けられている。
同様の構成の吐水装置は、下記特許文献2にも開示されている。
【0007】
しかしながらこのような吐水装置にあっては、吐水管の先端部に、吐出端部材206と、ハウジング208と、吐水口部材204との3つの部品が必要で所要部品点数が多く、またそれらを吐水管200に取り付けるに当って、ハウジング208と吐水口部材204との固定と、吐水口部材204と吐水管200との固定とを、少なくとも別々の2個所で行う必要があって、構造が複雑化するとともに組付けに際しても作業工数が多く、また部品を分解してメンテナンス作業する際に、複数個所での固定解除と再固定とが必要で、メンテナンス作業の際に多くの手間がかかる問題がある。
【0008】
以上自動水栓の場合を例として述べたが、こうした問題は吐水管の先端部に吐出端部材と吐水口部材とを備えた吐水装置において共通して生じる問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−275969号公報
【特許文献2】特開2002−70096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は以上のような事情を背景とし、従来よりも所要部品点数が少なくて済み、構造も簡単で組付けの際やメンテナンスの際等の作業を容易に行い得る吐水装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
而して請求項1のものは、(a)吐水管と、(b)該吐水管の先端部の内側に装着されて該吐水管内の水路の先端の吐水口を形成する筒状の吐水口部材と、(c)前記吐水口に配置されて水流を通過させ、該吐水口からの吐水の吐出パターンを制御する吐出端部材と、を備えた吐水装置であって、前記吐出端部材を、前記筒状の吐水口部材をハウジングとして内部に挿入し、該吐出端部材と吐水口部材とのそれぞれを、共通の固定部材にて前記吐水管に固定してあることを特徴とする。
【0012】
請求項2のものは、請求項1において、前記固定部材には嵌入軸部を設ける一方、前記吐水管には管壁を貫通する固定孔を、また前記吐出端部材と吐水口部材とには、該嵌入軸部を嵌入させる嵌入孔を、前記固定孔を通過して前記吐水管の管壁を貫通する方向において互いに重複する状態に設け、該吐水管の外側から前記固定部材の嵌入軸部を前記固定孔を通過して前記吐水口部材と吐出端部材との嵌入孔にそれぞれ嵌入させ、該吐出端部材と吐水口部材とを前記吐水管に固定してあることを特徴とする。
【0013】
請求項3のものは、請求項2において、前記固定孔は、前記吐出端部材及び吐水口部材の前記嵌入孔よりも孔径の大きな孔とされているとともに、前記固定部材には対応する外径の周壁部が設けてあり、該固定部材が該周壁部を前記固定孔に嵌め込む状態に前記吐水管に取り付けてあることを特徴とする。
【0014】
請求項4のものは、請求項3において、前記周壁部には径方向に互いに対向した位置に、前記固定孔の縁部に掛止される爪部が該径方向に突出する形状で設けてあり、一方の爪部は該周壁部に固定状態に、他方の爪部は弾性片の先端に設けてあって、該弾性片と該先端の爪部とで弾性爪を成しており、前記吐水管に対する押込みにより該弾性片の弾性変形を伴って該弾性爪の爪部が前記縁部に掛止するものとなしてあることを特徴とする。
【0015】
請求項5のものは、請求項4において、前記固定部材は、前記一対の爪部が前記吐水管に対する正面視において左右方向に位置する状態に取り付けられるものであることを特徴とする。
【0016】
請求項6のものは、請求項1〜5の何れかにおいて、前記吐水口部材は筒状の差込部を有していて、該差込部を前記吐水管の内部に配置された可撓性の給水チューブに差し込んで該給水チューブに接続されるものであることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0017】
以上のように本発明は、吐出端部材を、筒状の吐水口部材をハウジングとして内部に挿入し、そして吐出端部材と吐水口部材とのそれぞれを、共通の固定部材にて吐水管に固定するようになしたもので、本発明によれば従来必要とされていた、吐出端部材を抜止状態に内部に保持するハウジングを不要となし得て、所要部品点数を少なくし得るとともに、吐出端部材と吐水口部材とのそれぞれを、共通の固定部材にて吐水管に固定するようになしていることから、それらを1個所で吐水管に固定でき、構造を簡素化することができるとともに、組付作業時やメンテナンス作業時の作業性が良好となり、それらの組付け,メンテナンス作業を容易に行い得るようになる。
ここで吐出端部材は吐水口部材に嵌合状態に挿入し内嵌させておくことができる。
【0018】
本発明では、上記固定部材に嵌入軸部を設ける一方、吐水管には管壁を貫通する固定孔を、また吐出端部材と吐水口部材とには、嵌入軸部を嵌入させる嵌入孔を、上記固定孔を通過して吐水管の管壁を貫通する方向において互いに重複する状態にそれぞれ設け、吐水管の外側から固定部材の嵌入軸部を、固定孔を通過して吐水口部材と吐出端部材との嵌入孔に嵌入させ、それらを吐水管に固定するようになしておくことができる(請求項2)。
このようにしておけば、単に固定部材の嵌入軸部を吐水口部材と吐出端部材との各嵌入孔に嵌入させるだけで、それらを共通の固定部材にて吐水管に容易に固定し、取り付けることができる。
【0019】
本発明ではまた、上記固定孔を吐出端部材及び吐水口部材の各嵌入孔よりも孔径の大きな孔となしておくとともに、固定部材には対応する外径の周壁部を設けておき、その周壁部を固定孔に嵌め込むようにして、固定部材を吐水管に取り付けるようになしておくことができる(請求項3)。
このようにすれば、固定部材自体の吐水管に対する固定強度を強くすることができ、ひいては吐出端部材と吐水口部材の吐水管に対する固定強度を高強度となすことができる。
また固定部材を吐水管から突出しないように吐水管に固定することも可能となる。
【0020】
請求項4は、固定部材における周壁部の径方向に互いに対向した位置に、固定孔の縁部に掛止する爪部を径方向に突出する形状で設け、そして一方の爪部を周壁部に固定状態に、他方の爪部を弾性片の先端に設けて、それら弾性片と爪部とで弾性爪を構成し、吐水管に対する押込みにより弾性片の弾性変形を伴って弾性爪の爪部を固定孔の縁部に掛止させるようになしたものである。
【0021】
この請求項4によれば、小さな力で簡単に固定部材を吐水管に固定できる一方、吐水管に対する固定部材の固定力、固定の信頼性を高めることができ、固定部材が吐水管から外れてしまうといった不安を解消することができる。
【0022】
例えば上記と異なって、周壁部の互いに径方向に対向する位置のそれぞれに弾性爪を設けて、各弾性爪を、それぞれの弾性片の弾性変形を伴って固定孔に同時に押し込むようにすると、一対の弾性片による弾性変形の抵抗が大きくなって、押し込むときに強い力が必要となり、吐水管への固定の作業が困難化する。
【0023】
一方、より小さな力で弾性片を弾性変形させながら、弾性爪の爪部を固定孔の縁部に掛止させようとして、各爪部の固定孔の縁部への掛りを小さくしておくと、吐水管に取り付けた固定部材が吐水管から外れ易くなってしまう。
固定部材が吐水管から外れる不安を無くそうとして、各弾性爪における爪部の固定孔縁部への掛りを大きくすると、弾性爪の押込みの際に、それだけ強い力が必要となって、上記の如く押込みの作業性が悪化する。
【0024】
これに対し、請求項4の固定構造によれば固定部材を吐水管に対し弱い力で簡単に固定することができ、且つ固定後においては吐水管からの固定部材の外れを効果高く防止することができる。
この請求項4の固定構造では、固定部材を固定孔に対し斜めに傾けた状態として、先ず固定側の爪部を固定孔の縁部に掛止させ、しかる後これと径方向の対向位置にある弾性爪部を固定孔に押し込むと、弾性爪が弾性変形を伴って固定孔内に押し込まれ、そして押込位置で弾性爪の爪部が固定孔の縁部に掛止した状態となって、固定部材が吐水管に固定され外れ防止される。
この請求項4の固定構造では、固定状態に設けてある一方の爪部を固定孔の縁部に掛止させるに際して、何等強い押込みの力は必要でなく、従って固定孔縁部への爪部の掛り代を大きく確保することができる。
【0025】
一方で弾性爪は径方向の一方の側にだけ設けておくだけで良いため、更には弾性爪における爪部の固定孔縁部への掛り代を小さくしておくことで、弾性爪の押込みを小さな力で簡単に行うことができる。にも拘らずこの請求項4では固定側の爪部と弾性爪の爪部との全体の固定孔縁部への掛り代を大きく確保できるため、固定部材を吐水管に簡単に固定できる一方で、固定部材が吐水管から外れるのを良好に防止することができる。
【0026】
この場合においてその固定部材は、一対の爪部が吐水管に対する正面視において左右方向に位置する状態に取り付けられるものとなしておくことができる(請求項5)。
このようにすることで、吐出端部材及び吐水口部材が吐水管に対して、使用者から見て前後方向(管軸方向)にがたつきを生じるのを良好に防止でき、従ってまた吐出端部材及び吐水口部材の吐水管に対する前後方向の相対的な組付位置を、予め設定してある適正位置に良好に位置決めすることができる。
【0027】
本発明において、上記吐水口部材は、筒状の差込部を吐水管内部に配置された可撓性の給水チューブに差し込んで、給水チューブに接続されるものとなしておくことができる(請求項6)。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態である吐水装置を備えた自働水栓の全体図である。
【図2】同実施形態における吐水管の縦断面図である。
【図3】同実施形態における吐水管の先端部の要部断面図である。
【図4】同実施形態における吐水口ユニットの図である。
【図5】同実施形態における吐出端部材,吐水口部材を吐水管に組付け前の状態で示す斜視図である。
【図6】図5に示す状態を底面側から見た図である。
【図7】同実施形態における固定部材の単品図である。
【図8】同実施形態における固定部材の吐水管への組付手順を示す図である。
【図9】従来の吐水装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は本実施形態の吐水装置を備えた自動水栓で、12はその吐水装置における吐水管である。ここで吐水管12は金属製とされている。
吐水管12は、カウンタ(取付基体)14から起立する形態で設置され、上部が逆U字状のグースネック形状をなしていて、その先端面が使用者に向って前方斜め下向きをなしている。
吐水管12は、図1及び図2に示しているように、その先端面に吐水管12の横断面形状に対応した略楕円形状の開口16が形成されている。
【0030】
図2に示しているように、吐水管12は基端側に着座部18と、この着座部18から下向きに延びる挿通管20とを一体に有している。
挿通管20は、カウンタ14の取付穴22を挿通してカウンタ14の下側まで突き出しており、その外周面に設けられた雄ねじ部24に固定ナット26がねじ込まれている。
吐水管12は、着座部18をカウンタ14の上面に着座させ、その着座部18と固定ナット26とでパッキン28,30を介し、カウンタ14を上下両側から挟み込む状態にカウンタ14に取り付けられている。
【0031】
図1において、32はカウンタ14の下方に配置された本体機能部で、34はその本体機能部32の機能部ボックスであり、その内部に電磁弁36が収容されている。
電磁弁36は、給水元管からの水を後述の吐水口58(図2)に供給する給水路を開閉する弁であって、この電磁弁36に対し、給水チューブ38の下端が継手40を介して接続されている。
【0032】
給水チューブ38は、給水路の一部を形成する部材であって、機能部ボックス34から上向きに延び出し、そして吐水管12の基端(下端)の開口42から吐水管12内部に入り込んでいる。
給水チューブ38は、更にこの吐水管12の内部をその先端部に到るまで延びている。
尚この例において、給水チューブ38は可撓性のもので、ここではポリウレタン樹脂にて形成されている。
尚図1において44は止水栓を表している。
【0033】
機能部ボックス34の内部にはまた、マイコンを主要素として含む制御部46、及びセンサの主要素をなすセンサ本体48が収容されている。
制御部46は電磁弁36を作動制御し、センサによる検知対象の検知に基づいて電磁弁36を開弁させ、またセンサが検知対象を非検知となったところで電磁弁36を閉弁させる。
【0034】
センサ本体48は、光(ここでは赤外光)を発するLED等の発光素子と、フォトダイオード,フォトトランジスタ等の受光素子、及び発光素子による発光を行わせる発光駆動回路,受光素子により受光した光を電気信号に変換し信号処理する光電変換回路を含むセンサ回路を有している。
このセンサ本体48の発光素子からは投光側の光ファイバ80(図4参照)が延び出しており、また受光素子からは受光側の光ファイバ82が延び出している。
【0035】
50は、それら2つの光ファイバ80,82を1本に束ねた光ファイバのコードで、センサ本体48から延び出し、そして図2に示しているように吐水管12の基端の開口42から吐水管12内部に入り込んでいる。
コード50は更に吐水管12内部をその先端部に到るまで延びている。
【0036】
図3に示しているように、吐水管12の先端部の内部には吐水口部材52が納められている。
本例において、この吐水口部材52は樹脂製(ここではPOM樹脂(ポリアセタール樹脂))のもので、全体として吐水管12の先端部の形状に対応した略楕円形状の筒状をなしている。
【0037】
この吐水口部材52は、円筒形状の差込部54を一体に備えており、その差込部54が給水チューブ38に圧入された上、給水チューブ38を外周面から締め付けるバンド状の締付部材56によって給水チューブ38に接続され、固定されている。
【0038】
図4にも示しているように、吐水口部材52の先端の開口は吐水口58をなしており、その吐水口58に、水流を通過させて吐水口58からの吐水の吐出パターンを制御する吐出端部材60が配置されている。
具体的には、この吐出端部材60は横断面形状が偏平な楕円形状をなす筒状をなしていて、この吐出端部材60が、図5に示すように筒状をなす吐水口部材52の内部に内嵌状態に挿入され、吐水口58よりも僅かに奥側の位置において吐水口部材52内に保持されている。
即ちこの実施形態では、吐出端部材60を抜止状態に内部に収容し保持する、吐出端部材60のための専用のハウジングは設けられておらず、吐出端部材60は吐水口部材52をハウジングとしてその内部に収納されている。
【0039】
この実施形態において、吐出端部材60は給水チューブ38を通じて送られて来た水の流れを整流して吐出する。即ち吐水の吐出パターンを1束の整流吐水とするものとなしてある。
但し給水チューブ38を通じて送られて来た水を気泡混じりの泡沫流として、又はシャワー流として吐出するようになしておくことができる。或いはその他様々なパターンで吐水を吐出するものとなしておくことができる。
【0040】
本実施形態において、これら吐出端部材60,吐水口部材52は後述の投光部62及び受光部64とともに吐水口ユニット66を成している。
そしてこの吐水口ユニット66において、吐出端部材60と吐水口部材52とは、図3に示す固定部材67によって、吐水管12に設けられた固定孔68において共通に固定されている。
尚その固定構造については後述する。
【0041】
図4において、80は投光側の光ファイバ,82は受光側の光ファイバで、それら投光側の光ファイバ80,受光側の光ファイバ82の先端部によって上記の投光部62,受光部64が構成されている。
尚、投光部62には投射される光に指向性を持たせるためのレンズ84が備えられている。
またこれら光ファイバ80,82には、これを吐水口部材52に対して軸線方向に位置決状態に固定するための環状の凸部86が一体的に設けられている。
【0042】
この実施形態において、吐水口部材52は本体部88と、その上面を覆うカバー90とを有している。
本体部88には光ファイバ80,82の軸線方向に延びる深い保持溝92A,94Aが設けられており、またカバー90の側にも対応する浅い保持溝92B,94Bが設けられており、それら保持溝92A,92B及び94A,94Bに光ファイバ80,82が嵌め入れられ、そこに保持されている。
【0043】
これら保持溝92A,92B及び94A,94Bには、光ファイバ80,82の凸部86に対応した凹部96A,96B及び98A,98Bが設けられおり、光ファイバ80は凸部86と凹部96A,96Bとの凹凸嵌合により、また光ファイバ82は凸部86と凹部98A,98Bとの凹凸嵌合により、吐水口部材52に対して軸線方向に位置決状態で固定され保持されている。
尚、吐水口部材52には前端にU字切欠状の投光窓100,受光窓102が設けられている。
【0044】
またカバー90には、一対の湾曲した弾性アーム104が一体に形成されており、カバー90は、これら一対の弾性アーム104の先端の爪106を、本体部88の対応する係止突起108に弾性係止させることで、本体部88に組み付けられている。
【0045】
この実施形態では、図1に示すセンサ本体48,これから延び出したコード50及び光ファイバ80,82の先端部にて構成される投光部62,受光部64にてセンサが構成され、そしてそのセンサが検知対象、通常は使用者が差し出した手を検知すると、制御部46による制御の下に電磁弁36が開弁し、図3の吐水口58から自動的に吐水を行う。
また使用者が手を引き込めてセンサによる検知エリアから外れると、センサが手を非検知となり、ここにおいて制御部46の制御の下に電磁弁36が閉弁し、吐水口58からの吐水を停止する。
【0046】
上記固定部材67は、平面形状が円形の押込ボタン式の部材で、図7にも示しているように底部69から立ち上る円形の周壁部70と、この周壁部70の内側において底部69から立ち上る嵌入軸部72とを有している。
嵌入軸部72は、図7(A)に示す平面視において底部69の中心から図中左側に偏心した位置に配置され、基端側の第1の嵌入部74と、これから上向きに突き出した第2の嵌入部76とを有している。
【0047】
第1の嵌入部74は、図7(A)に示すように平面形状が図中上下方向に長い矩形状をなしており、図7(B)に示しているようにコーナー部が湾曲形状をなしている。図7(B)中78はその湾曲部を表している。
第2の嵌入部76は、第1の嵌入部74の幅寸法(図7(A)中左右方向寸法)とほぼ同径の平面円形状をなしており、その上部がテーパ形状に形成されている。
【0048】
この固定部材67の周壁部70には、底部69とは反対側の端部において周方向に180°隔たった位置に、即ち径方向に対向した位置において、後述の固定孔68の縁部に掛止される爪部110と112とが径方向に突出する形状で設けられている。
【0049】
一方の爪部110は周壁部70に固定状態に一体に形成され、また他方の爪部112は、周壁部70の一部にて形成される弾性片114の先端部に一体に形成され、それら弾性片114と爪部112とで径方向に弾性変形能を有する弾性爪116を成している。
【0050】
ここで弾性片114の外面は、周壁部70の他の部分よりも径方向内側に引き込んで位置しており、また爪部112には傾斜形状のカム面118が設けられている。
尚、爪部110は爪部112に対して、固定孔68の縁部に対する掛り代が大きくされている。
図3(B)に示しているように、固定部材67は爪部110,112を吐水管12に対する正面視において左右に位置させる向きで吐水管12に固定される。
尚図7(A)において、122は弾性片114に弾性変形能を与えるために周壁部70に入れられた切込みである。
【0051】
また図7(B)に示しているように、周壁部70の外周面は爪部110と112との間の図中左側の部分が、底部69側から反対側の端部に向って漸次径が減少する部分的なテーパ面120とされている。
尚、周壁部70外周面のテーパ面120とは反対側の、爪部110と112との間の部分は、軸方向にストレート形状をなす面とされている。
【0052】
一方吐水管12に形成された上記の固定孔68は、図6に示しているように平面形状が固定部材67に対応した孔径の円形状とされている。
但しこの固定孔68の内周面の形状は、固定部材67における図7(B)のテーパ面120に対応した部分が、そのテーパ面120と同角度で傾斜した傾斜面124とされており、またこれとは反対側の内周面が、図3(A)にも示しているように傾斜面124と同方向に同角度で傾斜した傾斜面とされている。
【0053】
上記吐水口部材52と、その内部に嵌合状態に挿入された吐出端部材60とには、図3及び図6に示しているように固定部材67の嵌入軸部72における第1の嵌入部74と、第2の嵌入部76とにそれぞれ対応した嵌入孔126,128が設けられている。
【0054】
ここで嵌入孔126は、吐水口部材52の筒壁を貫通する形状で設けられており、また吐出端部材60の側の嵌入孔128は、吐出端部材60の筒壁を非貫通の、底付きの形状で設けられている。
ここで吐水口部材52の嵌入孔126と、吐出端部材60の嵌入孔128とは、それぞれ吐水管12における上記の固定孔68を通ってその管壁を貫通する方向において互いに重複する形状で設けられている。
具体的には、ここでは嵌入孔126及び128は、固定孔68の中心に対し、固定部材67における上記の嵌入軸部72の配置位置に対応して偏心した位置に配置されており、且つ嵌入軸部72と同心状に設けられている。
【0055】
また吐水口部材52側の嵌入孔126は、嵌入軸部72における第1の嵌入部74に対応した大きさで、また吐出端部材60の側の嵌入孔128は、図3(B)の正面視において嵌入孔126よりも小さい形状で第2の嵌入部76に対応した形状で形成されている(但しこれら嵌入孔126と128とは、図3(A)に示しているように前後方向即ち吐水管12の管軸方向においては同じ寸法で形成されている)。
【0056】
この実施形態では、固定部材67を吐水管12の固定孔68に吐水管12の外側且つ下方から押し込むだけで、吐出端部材60及び吐水口部材52を、共通の固定部材67によって、ともに吐水管12に固定することができる。
【0057】
図3において固定部材67を上向きに押し込むと、固定部材67の周壁部70が固定孔68に嵌合し、また固定部材67における嵌入軸部72の第1の嵌入部74が、吐水口部材52の嵌入孔126に嵌入し、また第2の嵌入部76が、吐出端部材60の嵌入孔128に嵌入した状態となって、それらの凹凸嵌合により固定部材67が固定孔68において吐水管12に固定され、また吐水口部材52及び吐出端部材60が、それぞれ吐水管12に固定される。
このとき、図3に示しているように吐水口部材52,吐出端部材60は、吐水管12に対して前後方向即ち管軸方向にも、また左右方向にも固定状態となる。
【0058】
但し嵌入軸部72と嵌入孔126及び128との間の隙間は、図3(A)に示すように管軸方向において小さく、図3(B)に示すように左右方向において大きくなる。そのように嵌入孔126,128の形状が予め定められている。
その理由は後述する。
【0059】
図8は、固定部材67を固定孔68において吐水管12に固定する際の手順を示している。
図8(I)に示しているように、ここでは一対の爪部110,112のうち、固定側の爪部110を上側に位置させるようにして固定部材67を斜め向きとし、爪部110の側から固定孔68に挿入させるようにして、先ずこの爪部110を固定孔68の縁部に掛止させる。
尚このとき、爪部110を固定孔68に挿入して固定孔68の縁部に掛止させるに際して特に抵抗は生じないために、弱い力でこれを簡単に行うことができる。
【0060】
次に、図8(II)に示しているように爪部110とは反対側に位置している弾性爪116を弾性変形させるようにして、これを固定孔68内部に押し込む。
このときには弾性爪116、具体的には弾性片114を弾性変形させるための力が必要となるが、弾性爪116の爪部112は固定孔68の縁部に対する掛り代が小さくしてあるため、その際の抵抗を可及的に小さくすることができる。
また爪部112には弾性爪116を押し込む際のガイド作用をなすカム面118が形成されているため、円滑にこれを固定孔68内に押し込むことができる。
【0061】
このようにして固定部材67を固定孔68内に押し込むと、その押込状態で一対の爪部110,112が固定孔68の縁部に掛止し、また周壁部70が固定孔68に内嵌状態に嵌合することによって、固定部材67が吐水管12に固定される。
【0062】
またこのとき同時に、嵌入軸部72が吐水口部材52の嵌入孔126と吐出端部材60の嵌入孔128とに嵌入した状態となって、吐水口部材52及び吐出端部材60が吐水管12に対して固定された状態となる。
【0063】
図8(I)及び(II)に示しているように、固定部材67を固定孔68に押し込んで固定する際、固定部材67は先に固定孔縁部に掛止した爪部110を中心として、僅かに回動運動しつつ固定孔68内に押し込まれる。
このとき、嵌入軸部72もまた同じく僅かに回動運動するため、嵌入孔126はその回動運動を可能とするように、第1の嵌入部74に対し左右方向の寸法が大きく形成してある。
【0064】
同様に吐出端部材60の嵌入孔128もまた、第2の嵌入部76に対し左右方向寸法が大きくされている。
このため、図3(B)及び図8(III)に示しているように、固定部材67を固定した状態の下で第1の嵌入部74と嵌入孔126との間、及び第2の嵌入部76と嵌入部128との間に、左右方向に一定の隙間が生じた状態となる。
これに対し、図3(A)に示しているように前後方向においては、嵌入軸部72と嵌入孔126及び128との間に殆ど隙間は生じない。
嵌入孔126及び128の寸法が予めそのように定められている。
【0065】
例えば一対の爪部110,112が図3(A)中前後方向に位置するように、固定部材67を吐水管12に取り付け固定するようになした場合、図3(B)に表れている上記の比較的大きな隙間が前後方向に生じることとなり、この場合吐水口部材52及び吐出端部材60が、吐水管12に対して前後方向にがたつきを生じ、またその組付位置が前後方向にばらつくようになり、場合によって吐水口部材52が、吐水管12の先端よりも前方に突出した位置に組み付けられてしまう恐れが生ずる。
そうなると、この吐水口部材52が使用者の視野に入る状態となって、吐水管12の先端部の美観が損なわれてしまう。
【0066】
しかるにこの実施形態では固定部材67を、一対の爪部110,112が左右方向に位置するように吐水管12に固定するようになしているため、そうした不具合を生じず、吐水口部材52及び吐出端部材60を、前後方向にがたつき無く設定した位置に正しく組み付けることができ、吐水管12の先端部の美観を良好となすことができる。
【0067】
尚、固定部材67を吐水管12の固定孔68に嵌め入れる際、固定側の爪部110の側からこれを固定孔68内に挿入すべきところを、誤って反対側の弾性爪116の側の爪部112の側から固定孔68内に挿入してしまうといったことが考えられるため、ここではそういったことができないように、固定部材67の形状及び吐水口部材52,吐出端部材60の各嵌入孔126,128の位置等が定められている。
【0068】
詳しくは、固定部材67の嵌入軸部72が、その中心から偏心した位置に配置され、また嵌入孔126,128がこれに対応した位置に偏心位置に配置されているため、弾性爪116の爪部112の側から固定部材67を固定孔68内に挿入しようとしても、嵌入軸部72が嵌入孔126,128に嵌入できないために、そうしたことを行うことができない。
【0069】
尚固定部材67の押込端は、第2の嵌入部76が吐出端部材60の嵌入孔128の底部に当ることによって、また固定部材67の部分的なテーパ面120が、固定孔68の対応する傾斜面124に当ることによって規定される。
【0070】
以上のような本実施形態によれば、従来必要とされていた、吐出端部材60を抜止状態に内部に保持するための専用のハウジングを不要となし得て、所要部品点数を少なくし得るとともに、吐出端部材60と吐水口部材52とのそれぞれを、共通の固定部材67にて吐水管12に固定するようになしていることから、それらを1個所で吐水管12に固定でき、構造を簡素化することができるとともに、組付作業時やメンテナンス作業時の作業性が良好となり、それらの組付け,メンテナンス作業を容易に行い得るようになる。
【0071】
また本実施形態によれば、単に固定部材67の嵌入軸部72を吐水口部材52と吐出端部材60の各嵌入孔126,128に嵌入させるだけで、それらを共通の固定部材67にて吐水管12に容易に固定し、取り付けることができる。
【0072】
本実施形態では、上記固定孔68を吐出端部材60及び吐水口部材52の各嵌入孔126,128よりも孔径の大きな孔となしておくとともに、固定部材67には対応する外径の周壁部70を設けて、その周壁部70を固定孔68に嵌め込むようになしていることから、固定部材67自体の吐水管12に対する固定強度を強くすることができ、ひいては吐出端部材60と吐水口部材52との吐水管12に対する固定強度を高強度となすことができる。
また固定部材67を吐水管12から突出しないように吐水管12に固定することができる。
【0073】
更にこの実施形態によれば、小さな力で簡単に固定部材67を吐水管12に固定できる一方、吐水管12に対する固定部材67の固定力、固定の信頼性を高めることができ、固定部材67が吐水管12から外れてしまうといった不安を解消することができる。
【0074】
本実施形態では、固定状態に設けてある一方の爪部110を固定孔68の縁部に掛止させるに際して、何等強い押込みの力は必要でなく、従って固定孔68縁部への爪部110の掛り代を大きく確保することができる。
【0075】
一方で弾性爪116は径方向の一方の側にだけ設けてあるため、更には弾性爪114における爪部112の固定孔68縁部への掛り代が小さくしてあるため、弾性片114の押込みを小さな力で簡単に行うことができる。にも拘らずこの実施形態によれば固定側の爪部110と弾性爪116の爪部112との全体の固定孔68縁部への掛り代を大きく確保できるため、固定部材67を吐水管12に簡単に固定できる一方で、固定部材67が吐水管12から外れるのを良好に防止することができる。
【0076】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明は共通の固定具としてビスその他のものを用いることが可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0077】
10 自動水栓
12 吐水管
38 給水チューブ
52 吐水口部材
54 差込部
58 吐水口
60 吐出端部材
67 固定部材
68 固定孔
70 周壁部
72 嵌入軸部
74,76 嵌入部
110,112 爪部
114 弾性片
116 弾性爪
126,128 嵌入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)吐水管と、(b)該吐水管の先端部の内側に装着されて該吐水管内の水路の先端の吐水口を形成する筒状の吐水口部材と、(c)前記吐水口に配置されて水流を通過させ、該吐水口からの吐水の吐出パターンを制御する吐出端部材と、を備えた吐水装置であって、
前記吐出端部材を、前記筒状の吐水口部材をハウジングとして内部に挿入し、該吐出端部材と吐水口部材とのそれぞれを、共通の固定部材にて前記吐水管に固定してあることを特徴とする吐水装置。
【請求項2】
請求項1において、前記固定部材には嵌入軸部を設ける一方、前記吐水管には管壁を貫通する固定孔を、また前記吐出端部材と吐水口部材とには、該嵌入軸部を嵌入させる嵌入孔を、前記固定孔を通過して前記吐水管の管壁を貫通する方向において互いに重複する状態に設け、該吐水管の外側から前記固定部材の嵌入軸部を前記固定孔を通過して前記吐水口部材と吐出端部材との嵌入孔にそれぞれ嵌入させ、該吐出端部材と吐水口部材とを前記吐水管に固定してあることを特徴とする吐水装置。
【請求項3】
請求項2において、前記固定孔は、前記吐出端部材及び吐水口部材の前記嵌入孔よりも孔径の大きな孔とされているとともに、前記固定部材には対応する外径の周壁部が設けてあり、
該固定部材が該周壁部を前記固定孔に嵌め込む状態に前記吐水管に取り付けてあることを特徴とする吐水装置。
【請求項4】
請求項3において、前記周壁部には径方向に互いに対向した位置に、前記固定孔の縁部に掛止される爪部が該径方向に突出する形状で設けてあり、一方の爪部は該周壁部に固定状態に、他方の爪部は弾性片の先端に設けてあって、該弾性片と該先端の爪部とで弾性爪を成しており、前記吐水管に対する押込みにより該弾性片の弾性変形を伴って該弾性爪の爪部が前記縁部に掛止するものとなしてあることを特徴とする吐水装置。
【請求項5】
請求項4において、前記固定部材は、前記一対の爪部が前記吐水管に対する正面視において左右方向に位置する状態に取り付けられるものであることを特徴とする吐水装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかにおいて、前記吐水口部材は筒状の差込部を有していて、該差込部を前記吐水管の内部に配置された可撓性の給水チューブに差し込んで該給水チューブに接続されるものであることを特徴とする吐水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−122357(P2011−122357A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281029(P2009−281029)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】