説明

吐水装置

【課題】吐水方向を変化させながら広範囲に吐水を行うことが可能な吐水装置であって、複数の吐水口を有する散水部材の自転及び公転の始動性と安定性とを両立させることが可能な吐水装置を提供すること。
【解決手段】この吐水装置FCは、散水部材40は、第一貯水室422よりも外周側に配置され、小径部21とガイド部材1との隙間を通過した水を受入口501aから受け入れて貯水可能なように構成された第二貯水室として機能する上拡大部501、中間部502、及び下拡大部503を有し、上拡大部501、中間部502、及び下拡大部503への給水速度が第一貯水室422への給水速度よりも小さくなるように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐水方向を変化させながら広範囲に吐水を行うことが可能な吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吐水方向を変化させながら広範囲に吐水を行うことが可能な吐水装置として、ノズルが組み込まれた流入室内に形成される旋回流によって、ノズルを首振り公転させたり自転させたりしながら吐水を行わせる吐水装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、流入室に洗浄水を導くことにより、流入室に流入した洗浄水が流入室の内周壁面に沿って旋回流を起こすと共に、その旋回流に基づいて生じる力をノズルに及ぼして、ノズルを傾斜させた姿勢で旋回流の旋回方向回りに首振り公転させるものである。下記特許文献1に記載されている吐水装置は、ノズルを駆動するための装置を別途設けることなく広範囲に吐水を行うことが可能であって、省エネルギー化やコスト低減に資するものである。
【0003】
下記特許文献1に記載されている吐水装置よりも更に広範囲に吐水を行わせることを意図して、複数の吐水口を有する散水部材をノズルの先端に設け、ノズルの先端側から散水部材内部の貯留室に水を供給し、複数の吐水口から吐水する吐水装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第02/055795号
【特許文献2】特開2009−106930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されている吐水装置も上記特許文献2に記載されている吐水装置も、共に流入室内に形成される旋回流によってノズルを首振り公転させたり自転させたりといった回転運動をさせるものである。尚、首振り公転とは、首振り公転をする回転体(例えばノズル)の中心軸と首振り公転の中心軸(例えば流入室の中心軸)との交点である首振り中心を枢支点として旋回する回転運動であって、首振り公転の中心軸方向から見た場合に、回転体(例えばノズル)の一端と他端とがその中心軸を挟んで反対側に位置する回転運動である。
【0006】
上記特許文献2に記載されている吐水装置は、上記特許文献1に記載されている吐水装置に比較して、ノズルの先端にノズルよりも大径の散水部材を設けていることから、ノズル及び散水部材によって構成される回転体の質量は大きくなり、慣性モーメントも大きくなる傾向にある。従って、上記特許文献1に記載されている吐水装置と上記特許文献2に記載されている吐水装置とにおいて、上述したような同様の回転メカニズムを採用する限り、上記特許文献2に記載されているような散水部材を設けた吐水装置は、特にその始動時において十分な回転始動性を確保することは困難である。
【0007】
一方、回転始動性のみを改善しようとすれば、首振り公転の中心軸周りの慣性モーメントや自転の中心軸周りの慣性モーメントを小さくすることが考えられる。しかしながら、首振り公転の中心軸周りの慣性モーメントや自転の中心軸周りの慣性モーメントを小さくすれば、首振り公転や自転といった回転運動が開始された後には遠心力が大きくならない方向に作用し、回転安定性を阻害する要因となり得る。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、吐水方向を変化させながら広範囲に吐水を行うことが可能な吐水装置であって、複数の吐水口を有する散水部材の自転及び公転の始動性と安定性とを両立させることが可能な吐水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係る吐水装置は、吐水方向を変化させながら広範囲に吐水を行うことが可能な吐水装置であって、水が流入する流入室がその内部に形成され、前記流入室の内部と前記流入室の外部とを連通する開口部を有するガイド部材と、前記開口部より小径な小径部と前記開口部より大径な大径部とを有し、前記小径部の先端は前記開口部から前記ガイド部材の外部に突出させる一方で、少なくとも前記大径部は前記流入室の内部に収容され、前記流入室に流入した水を前記小径部の先端から流出可能なように構成されてなる筒体と、前記ガイド部材の外部に位置するように前記小径部の先端に繋げて設けられ、複数の吐水口が設けられると共に、これら複数の吐水口それぞれに連通する第一貯水室がその内部に形成された散水部材と、を備え、前記筒体は、前記流入室へ流入した水により、少なくとも前記小径部の一部が前記開口部に接触された状態で前記流入室の中心軸に対して傾きながら前記流入室の中心軸回りに首振り公転し、且つ自身の中心軸回りに自転するように構成され、前記散水部材は、その少なくとも一部が前記第一貯水室よりも外周側に配置され、前記小径部と前記ガイド部材との隙間を通過した水を受入口から受け入れて貯水可能なように構成された第二貯水室を有し、前記第二貯水室への給水速度が前記第一貯水室への給水速度よりも小さくなるように構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の吐水装置は、筒体の先端側に散水部材を設けて回転体を構成しているので、筒体単体の構成に比較して質量が増加する傾向にあり、自転及び公転するのにより大きな力を必要とする。また、筒体及び散水部材からなる回転体は流入室に流入した水によって自転及び公転するので、流入室に流れ込む水量が少ない場合には自転及び公転するのに必要な力が不足する場合もある。そこで本発明では、散水部材の内側に第一貯水室を設ける一方で外側に第二貯水室を設け、第二貯水室への給水速度が第一貯水室への給水速度よりも小さくなるように構成している。内側に設けられた第一貯水室は、流入室から供給される水を一時的に貯水して複数の吐水口から吐出するものであり、外側に設けられた第二貯水室は、筒体とガイド部材との隙間を通過した水を受け入れて貯水するものである。
【0011】
従って、始動期においては、内側の第一貯水室に先に水が溜まり、第一貯水室内の水圧が高まることで複数の吐水口から吐水されるので、複数の吐水口から淀みなく吐水させることができる。このように複数の吐水口からの吐水を確保する一方で、第一貯水室は内側に配置されていることから、散水部材の慣性モーメントが比較的小さくなるように抑制することができ、その自転及び公転の始動性を良好に確保することができる。
【0012】
一方、始動期を過ぎると、外側の第二貯水室にも水が溜まるので、散水部材の慣性モーメントを大きくすることができ、その自転及び公転の安定性を確保することができる。従って、始動期においては、散水部材の慣性モーメントを抑制して自転及び公転の始動性を良好に確保しつつ、始動期を過ぎて散水部材が自転及び公転を始めた後においては、散水部材の慣性モーメントを増大させて自転及び公転の安定性を確保することができる。
【0013】
また本発明に係る吐水装置では、前記第二貯水室の少なくとも一部が、前記小径部から前記第一貯水室を通って前記複数の吐水口に至る第一通水路の前記第一貯水室よりも下流側に相当する位置に配置されていることも好ましい。
【0014】
本発明では、筒体の小径部の一部が開口部に接触された状態で流入室の中心軸に対して傾きながら流入室の中心軸回りに首振り公転するように構成されている。そこでこの好ましい態様では、第二貯水室の少なくとも一部を第一通水路の第一貯水室よりも下流側に相当する位置に配置することで、筒体及び散水部材からなる回転体の公転中心と第二貯水室の一部との距離を引き離している。このように構成し第一貯水室への貯水よりも遅く第二貯水室に貯水することで、始動期を過ぎた後の散水部材の慣性モーメントをより増大させ、散水部材の公転安定性を良好に確保することができる。
【0015】
また本発明に係る吐水装置では、前記第一通水路における前記第一貯水室よりも下流側に相当する位置において、前記第二貯水室は、前記中心軸に直交する断面積を拡大させた下拡大部を有することも好ましい。
【0016】
この好ましい態様では、第一通水路の第一貯水室よりも下流側に相当する位置において、第二貯水室の断面積を拡大させた下拡大部を有しているので、公転中心と第二貯水室の一部との距離を引き離したことに加えてその貯水容量を増大させている。このように構成することで、始動期を過ぎた後の散水部材の慣性モーメントをより一層増大させ、散水部材の公転安定性を確保することができる。
【0017】
また本発明に係る吐水装置では、前記第二貯水室の少なくとも一部が、前記小径部から前記第一貯水室を通って前記複数の吐水口に至る第一通水路の前記第一貯水室よりも上流側に相当する位置に配置されていることも好ましい。
【0018】
本発明では、筒体の小径部の一部が開口部に接触された状態で流入室の中心軸に対して傾きながら流入室の中心軸回りに首振り公転するように構成されている。そこでこの好ましい態様では、第二貯水室の少なくとも一部を第一通水路の第一貯水室よりも上流側に相当する位置に配置することで、筒体及び散水部材からなる回転体の公転中心と第二貯水室の一部との距離を近づけている。このように構成し第一貯水室への貯水よりも遅く第二貯水室に貯水することで、始動期においては散水部材の慣性モーメントの増大を抑制することができ、散水部材の公転始動性を良好に確保することができる。
【0019】
また本発明に係る吐水装置では、前記第一通水路における前記第一貯水室よりも上流側に相当する位置において、前記第二貯水室は、前記中心軸に直交する断面積を拡大させた上拡大部を有することも好ましい。
【0020】
この好ましい態様では、第一通水路の第一貯水室よりも上流側に相当する位置において、第二貯水室の断面積を拡大させた上拡大部を有しているので、公転中心と第二貯水室の一部との距離を近づけたことに加えてその貯水容量を増大させている。このように構成することで、始動期においては散水部材の慣性モーメントの増大をより抑制することができ、散水部材の公転始動性を良好に確保することができる。
【0021】
また本発明に係る吐水装置では、前記第一通水路における前記第一貯水室よりも上流側に相当する位置において、前記第二貯水室は、前記中心軸に直交する断面積を拡大させた上拡大部を有する一方で、前記第一通水路における前記第一貯水室よりも下流側に相当する位置において、前記第二貯水室は、前記中心軸に直交する断面積を拡大させた下拡大部を有すると共に、前記第二貯水室は、前記上拡大部と前記下拡大部との間に、前記上拡大部よりも断面積の小さい中間部を有することも好ましい。
【0022】
この好ましい態様では、第一通水路の第一貯水室よりも上流側に相当する位置において、第二貯水室の断面積を拡大させた上拡大部を有しているので、公転中心と第二貯水室の一部との距離を近づけたことに加えてその貯水容量を増大させている。このように構成することで、始動期においては散水部材の慣性モーメントの増大をより抑制することができる。また、第一通水路の第一貯水室よりも下流側に相当する位置において、第二貯水室の断面積を拡大させた下拡大部を有しているので、公転中心と第二貯水室の一部との距離を引き離したことに加えてその貯水容量を増大させている。このように構成することで、始動期を過ぎた後の散水部材の慣性モーメントをより一層増大させている。従って、散水部材の公転始動性と公転安定性とを確実に両立させることができる。
【0023】
また本発明に係る吐水装置では、前記第二貯水室を挟んで前記受入口とは反対側に、前記受入口から受け入れて前記第二貯水室に貯められた水を排出するための排出口が設けられていることも好ましい。
【0024】
この好ましい態様では、第二貯水室を挟んで受入口とは反対側に排出口が設けられているので、受入口から取り入れられた水が第二貯水室を通って排出口から排出される。従って、第二貯水室全体が水で満たされることになり、第二貯水室に貯水することによる散水部材の慣性モーメント増大効果をより高めることができる。このように構成することで、始動期を過ぎた後の散水部材の慣性モーメントをより一層増大させ、散水部材の公転安定性を確保することができる。
【0025】
また本発明に係る吐水装置では、前記受入口から前記第二貯水室を通って前記排出口に至る第二通水路において、流路断面積を絞った狭窄領域が下流側に形成されていることも好ましい。
【0026】
この好ましい態様では、第二通水路の下流側に狭窄領域を形成しているので、第二通水路を構成する第二貯水室に水が溜まりやすくなり、第二貯水室に貯水することによる散水部材の慣性モーメント増大効果をより高めることができる。このように構成することで、始動期を過ぎた後の散水部材の慣性モーメントをより一層増大させ、散水部材の公転安定性を確保することができる。
【0027】
また本発明に係る吐水装置では、前記第二通水路の前記排出口から排出される水が、前記第一通水路の前記複数の吐水口の少なくとも一部から吐出される水と合流するように構成されていることも好ましい。
【0028】
本発明において筒体とガイド部材との隙間を通過する水は、本来の吐水とは異なり散水部材及び筒体の自転又は公転を円滑に行わせるためのものであるから、その水量は本来の吐水の水量と比較すると少量であるように構成される。そのため、排出口から排出される水は遠心力によって飛び散るようになり、吐水の見栄えの観点から改善の余地があるものである。そこでこの好ましい態様では、排出口から排出される水を複数の吐水口の少なくとも一部から吐出される水と合流するように構成しているので、散水部材の公転安定性を確保しつつ吐水の見栄えの良い吐水装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、吐水方向を変化させながら広範囲に吐水を行うことが可能な吐水装置であって、複数の吐水口を有する散水部材の自転及び公転の始動性と安定性とを両立させることが可能な吐水装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係る吐水装置の模式断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1の吐水口近傍を拡大した拡大断面図である。
【図4】図1のB−B断面に相当し、流入室及びこの内部に収容された筒体(大径部)を平面方向から見た模式図である。
【図5】図1に示す吐水装置から吐水されるシャワー流の挙動を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0032】
図1は、本発明の実施形態に係る吐水装置の模式断面図を示す。図1に示されるように、本実施形態に係る吐水装置FCは、主として、本体としてのガイド部材1と、回転体を公正する筒体20及び散水部材40とを備えている。
【0033】
ガイド部材1は、組み合わされることで略球体状となる第一本体部2と第二本体部6とによって構成されている。半球体状の第一本体部2の内部には貫通孔が形成され、第二本体部6にはこの貫通孔に対応する凹部が形成されている。第一本体部2の貫通孔の一部と第二本体部6の凹部によって、直径方向に延びる旋回室としての流入室3が形成されている。
【0034】
流入室3の軸方向の一端部には、流入室3の内部及び外部に通じる開口部4が設けられている。開口部4の内径寸法は流入室3の内径寸法より小さく、開口部4はその中心軸を流入室3の中心軸と一致させている。
【0035】
流入室3の軸方向の他端部側の径外方には流入孔5が形成されている。流入孔5は、流入室3の内部及びガイド部材1の外部に通じている。ガイド部材1の外部から流入孔5に導かれた水は、流入孔5を介して流入室3に対して接線方向から流入し、流入室3の内部には水の旋回流が形成される。開口部4はガイド部材1の外部に対して開放され、流入室3の他端側の開口は第二本体部6によって閉塞されている。
【0036】
筒体20は、小径部21と大径部22とを有する概略ボトル形状に形成されている。大径部22の外径寸法は流入室3の内径寸法より小さく、大径部22は流入室3の内部に収容されている。その大径部22に一体に設けられた小径部21の外径寸法は開口部4の内径寸法より小さく、小径部21は開口部4を貫通して、その先端が第一本体部2の外部に突出している。
【0037】
図1に示すように、筒体20と流入室3とが互いの中心軸を一致させた状態では、小径部21の外周面と開口部4の内壁面との間に隙間が形成され、さらに大径部22の外周面と流入室3の内壁面であるガイド面3aとの間にも隙間が形成される。筒体20は、ガイド部材1に対して固定されておらず、自由に自転したり、揺動を伴う首振り公転したりすることが可能となっている。
【0038】
筒体20の軸方向の両端は開口され、大径部22側の開口24から筒体20内部に流入した水は、筒体20内部を軸方向に流れて、小径部21側の開口25から筒体20の外部に流出可能なように構成されている。また、筒体20の大径部22の周面(側面)には、周方向に等間隔で間欠的に配置された複数の貫通孔23が形成され、流入室3内に流入した水は、それら貫通孔23を介しても筒体20の内部に導かれて小径部21の先端の開口25から流出可能なように構成されている。
【0039】
散水部材40は、ガイド部材1の外部に位置するように筒体20の小径部21の先端に繋げて設けられている。散水部材40は筒体20よりも径方向寸法が大きな扁平状に形成され、その径方向の中心を筒体20の中心軸CLに一致させている。
【0040】
散水部材40は、ケース41と第一通水路部品42とを有する。第一通水路部品42の細管部42cの内部に筒体20の小径部21の先端が嵌合固定されている。これにより、筒体20及び散水部材40は、中心軸CLを共有する両者一体の回転体となって、自由に自転したり、揺動を伴う首振り公転したりすることができる。
【0041】
第一通水路部品42の内部には第一貯水室421が形成され、筒体20の小径部21の先端の開口25は第一貯水室421に臨んでいる。第一貯水室421の径方向寸法は筒体20の径方向寸法より大きく、第一貯水室421には小径部21の先端から流出した水が一時的に貯留可能なように構成されている。
【0042】
第一通水路部品42における第一貯水室421よりも下流側には、複数の吐水口422が形成されている。吐水口422は、第一通水路部品42の表面に形成されたノズル42aに繋がり、ノズル42aの先端から外部に貫通している。従って、第一貯水室421に一時的に貯留された水は、吐水口422から外部に吐出されるように構成されている。このように構成されることで、第一通水路部品42において、細管部42cから第一貯水室421を経由して吐水口422に至る第一通水路が形成されている。
【0043】
ケース41は、第一通水路部品42を覆うように設けられている。ケース41は、第一通水路部品42との間に所定の空間が形成されるように配置されている。ケース41と第一通水路部品42との間には、ガイド部材1側から順に、受入口501aと、上拡大部501(貯留部)と、中間部502と、下拡大部503と、排出口503aとが形成されている。
【0044】
受入口501aは、筒体20の小径部21とガイド部材1の開口部4との隙間を通って漏れ出る水を受け入れること可能なように、開口部4に臨んで設けられている。受入口501aから受け入れられた水は、貯留部として機能する上拡大部501に一時的に貯留される。小径部21と開口部4との隙間を通って漏れ出る水は、その漏れ出る方向に向う勢いが付いている。そのように勢いが付いた状態で上拡大部501に受け入れられた水は、上拡大部501の壁面に当たって貯留されることでその水勢が削がれるように構成されている。
【0045】
上拡大部501は、第一通水路部品42とケース41との間に、中心軸CL回りを囲繞するように形成されている。従って、受入口501aから受け入れられた水は、貯留部として機能する上拡大部501に入り、散水部材40の外周に向けて分散されるように誘導され、中間部502へと流入する。中間部502へと流入した水は、中間部502を経由して下拡大部503へと流入する。下拡大部503へと流入した水は、排出口503aから吐水口422に向って流出する。
【0046】
このように、受入口501aを経由して上拡大部501に貯留された水は中間部502を経由して、下拡大部503へと移動し、排出口503aから吐水口422に向って流出する。従って、受入口501aから上拡大部501を経由し、中間部502及び下拡大部503を経由して排出口503aに至る流路は第二通水路50として機能している。
【0047】
排出口503aから吐水口422に向った水は、吐水口422から吐出される水と合流し、ケース41の先端側に設けられた吐水開口41aから吐水対象に向けて吐水される。ケース41の吐水開口41aを囲むように、ケース41の先端側には折返し部41bが設けられている。この折返し部41bは下拡大部503の一部を構成しているので、下拡大部503から排出口503aに向う水が遠心力によって散水部材40の外周方向に向わないように方向付けする役割を果たしている。
【0048】
複数の吐水口422は、散水部材40の第一通水路部品42における少なくとも外周側部分に周方向に沿って形成されている。吐水口422近傍の状態を詳述するため、図1のA−A断面図を図2に示す。
【0049】
図2に示すように、各吐水口422の間には、一の吐水口422と他の吐水口422との間に位置するように誘導突起42bが設けられている。誘導突起42bは、中間部502から下拡大部503を経由して排出口503aから流出する水が、吐水口422を有するノズル42aの間から突き抜けてしまわないように、その水をノズル42a及び吐水口422に方向付け誘導する役割を果たしている。この誘導突起42bも、第二通水路50の一部として機能している。
【0050】
第二通水路50としては、ノズル42aの外周面もその一部として機能している。ノズル42aの近傍を拡大した拡大断面図を図3に示す。図3に示すように、ノズル42aは、吐水口422を囲繞する先端外周面42aaを有している。先端外周面42aaは、吐水口422に対して外側から内側に向けて吐水方向に沿ってせり上がるように傾斜されている。従って、排出口503aに向う水は、先端外周面42aaに当たり、その先端外周面42aaに沿うように流れる。このように先端外周面42aaによって誘導された水は、吐水口422から吐出される水と合流して吐水開口41aから外部へと吐出される。
【0051】
筒体20と散水部材40とは、組み合わせることで一体的に形成されている。筒体20の小径部21と大径部22とは、一体に形成されている。筒体20と散水部材40とは、別部材で形成され、組み立てて一体的なものとなされている。筒体20の小径部21と大径部22とは、別部材で形成され、組み立てて一体としても良い。筒体20及び散水部材40からなる回転体の重心は、回転体を流入室3に入れた場合に、流入室3の外部に配置される位置とすることが好ましい。
【0052】
その際、散水部材40は筒体20より大径に形成されており、径方向に散水部材40を大きくすることで、筒体20の質量より散水部材40の質量を大きくし、重心位置を流入室3の外部に配置させるようにすることも好ましい。一方、散水部材40を樹脂といった比重の小さい材料で形成し、筒体20を金属といった比重の大きい材料で形成することも好ましい。このように散水部材40と筒体20とを別部材とすることで、それぞれの材質や肉厚を変えることが容易に可能なものとなり、容易に回転体として重心を開口部4の近傍に設定することができる。
【0053】
大径部22は小径部21より軽量とし、重心位置を流入室の外部に配置することも好ましい。この場合には、大径部22を形成する材料は小径部21を形成する材料より密度の低い材料を使用すると良い。例えば、大径部22には樹脂を使用し、小径部21には金属を使用することが好ましい。一体に形成されている場合、筒体20の大径部22の通水路は、小径部21の通水路の断面積より大きくし、大径部22の肉厚を薄くすることで、大径部22の質量を小径部21の質量より軽量とし、重心位置を流入室の外部に配置させてもよい。
【0054】
上述のように構成した本実施形態に係る吐水装置FCでは、筒体20及び散水部材40からなる回転体は、流入室3の中心軸に対して傾きながら首振り公転を行うことができるように構成されている。続いて、筒体20及び散水部材40からなる回転体が公転及び自転をする様子について図4を参照しながら説明する。図4は、図1のB−B断面に相当し、流入室3及びこの内部に収容された筒体20(大径部22)を平面方向から見た模式図である。
【0055】
図示しない配管等から導かれた水は、ガイド部材1に形成された流入孔5を介して、断面形状略円形状の流入室3に対して接線方向からその内部に流入し、これにより、流入室3の中心軸C2(図1における散水部材40及び筒体20の中心軸CLと同じ位置に設定される軸である)のまわりに旋回した洗浄水の流れが流入室3の内部に形成される。
【0056】
流入室3の内部に収容された筒体20(大径部22)は、上記旋回流の力を受けることで、流入室3の中心軸C2に対して傾きながら、例えば図3において矢印Aで示す方向に流入室3の中心軸C2のまわりに首振り公転する。筒体20の小径部21の一部が開口部4に接触し、且つ大径部22の側面(周面)の一部が流入室3のガイド面3aに接触することで、旋回室としての流入室3の中心軸C2に対する筒体20のそれ以上の傾きが規制される。
【0057】
本明細書において、流入室3の中心軸C2に対して筒体20が傾きながら中心軸C2のまわりに公転することを「首振り公転」と称する。すなわち、流入室3の中心軸C2に対して筒体20が傾きながら中心軸C2のまわりに首振り公転すると、筒体20は、小径部21が開口部4と接触する部分近傍を中心にして小径部21の先端が首を振っているように揺動する。このように、首振り公転とは、首振り公転をする回転体(本実施形態の場合は、筒体20及び散水部材40)の中心軸CLと首振り公転の中心軸である流入室3の中心軸C2との交点である首振り中心を枢支点として旋回する回転運動であって、首振り公転の中心軸C2方向から見た場合に、筒体20及び散水部材40からなる回転体の一端(ケース41の中心)と他端(大径部22の中心)とがその中心軸C2を挟んで反対側に位置する回転運動である。
【0058】
筒体20が首振り公転しているとき、小径部21の外周面の一部が開口部4の内壁面に接触し、且つ大径部22の側面(周面)の一部が流入室3のガイド面3aに接触しているため、それら接触部分に生じる動摩擦力が筒体20に作用する。この動摩擦力により、筒体20は開口部4やガイド面3aとの接触部位を変えずにそのまま接触した状態で流入室3内をすべって移動していくのではなく、開口部4の内壁面やガイド面3aを転がりながら首振り公転をする。筒体20が開口部4の内壁面やガイド面3aを転がるということは、筒体20が自身の中心軸CLのまわりに自転するということである。
【0059】
すなわち、筒体20は自身の中心軸CLのまわりに自転しつつ、流入室3の中心軸C2のまわりに首振り公転する。流入室3の中心軸C2のまわりの筒体20の公転方向(図4において矢印A方向)は、流入室3に形成される旋回流の旋回方向と同方向であり、筒体20の自身の中心軸CLのまわりの自転方向(図4において矢印B方向)は公転方向Aとは逆方向である。尚、この自転に関しては、接触面の動摩擦係数や、筒体20の大径部22の材質、形状や、流入孔5からの流入速度や、流入室3と大径部22との隙間、などで自転方向や自転数を制御することができる。
【0060】
続いて、本実施形態に係る吐水装置FCのシャワー流の動き(軌跡)について図5を参照しながら説明する。図5は、図1に示す吐水装置から吐水されるシャワー流の挙動を説明するための模式図である。尚、図5において、吐水装置は、可動部分である筒体20と散水部材40のみを示し、流入室3が形成されたガイド部材1は図示を省略している。
【0061】
流入室3に流入した洗浄水の一部は、筒体20の大径部22側の端部の開口24および側面に形成された貫通孔23から筒体20の内部に流入して、筒体20の軸方向を小径部21の先端に向かって流れる。そして、小径部21の開口25から流出した水は、散水部材40内部の第一貯水室421に流入する。流入室3内の水が筒体20の内部に流入して筒体20の内部を流れるときには、まだ旋回成分を持っている。また、小径部21という比較的狭い流路を流れる際には流速が速くなる。
【0062】
第一貯水室421は、流入室3及び筒体20に比べて径方向寸法が大きな扁平状の空間であるので、小径部21の開口25から流れ込んでくる水の勢いを減少させることができる。すなわち、特別な機構や部品を追加することなく第一貯水室421に水を一時的に貯留することのみで、水の流速を大きく落とすことができ、また旋回成分も失わせることができる。このようにして第一貯水室421で整流された水は、第一貯水室421に連通する複数の吐水口422からシャワー状に外部に吐水される。
【0063】
筒体20及び散水部材40は、前述したように首振り公転と自転とを組み合わせた動きをするため、本実施形態に係る吐水装置FCによって得られるシャワー状のシャワー流の吐水軌跡(例えば人体等に対するシャワー流の衝突部位の人体表面上における移動軌跡)は、自転に起因する軌跡と、首振り公転に起因する軌跡とを組み合わせたものとなる。
【0064】
筒体20及び散水部材40の自らの中心軸CLのまわりの一体となった自転により、その自転方向と同じb方向に、図5において実線で示されるような円状の軌跡を描いて移動するシャワー流が形成される。
【0065】
流入室3内に流入した水は旋回して筒体20を自転及び首振り公転させる役割を担うだけでなく、その水自体が筒体20及び散水部材40を通過して吐水口422から吐水されるシャワー流となる。ここで、その洗浄水が旋回成分を持ったまま吐水口422に至ってしまうと、吐水口422の指向方向以外の方向にも分散して吐水され、面内分布が不均一なまとまり感の感じられないシャワー流になりやすい。
【0066】
そこで、本実施形態では、筒体20と吐水口422との間に第一貯水室421を設け、その第一貯水室421に水を一時的に貯留することで、水の流速を大きく落とすことができ、また旋回成分も失わせることができる。吐水口422を通過する水が旋回成分を失うことで、吐水口422の指向方向に確実に吐水させることができ、シャワー流の分散を抑えて、面内分布が均一でまとまり感のあるシャワー流が得られる。
【0067】
例えば、吐水口422が第一通水路部品42の中心部近傍に形成されていると、筒体20の開口25から流出した洗浄水が第一貯水室421で十分な整流作用を受けずに、旋回成分を持ったまま吐水口422に流れ込んでしまうことが懸念される。したがって、吐水口422は、なるべく第一通水路部品42の外周側部分に形成するのが望ましい。また、第一通水路部品42の外周側部分に吐水口422を形成した場合には、前述した自転及び首振り公転によって生じる遠心力によって、より広範囲にシャワー流を吐水することができる。
【0068】
また、本実施形態では、筒体20及び散水部材40の、流入室3の中心軸C2のまわりの首振り公転により、図5において点線で示すように比較的狭い範囲を移動するシャワー流が形成される。シャワー流は全体として、比較的狭い範囲を図5において矢印a方向に高速に移動しつつ、その移動範囲よりも大きな範囲をa方向とは逆方向のb方向にゆっくりと移動する。
【0069】
首振り公転によって形成されるシャワー流によって、自転によって形成されるシャワー流だけではカバーしきれない、より内側の範囲をカバーすることができ、シャワー流がいわゆる中抜けせずに、むらの無い面状のシャワー流を得ることができる。このように、本実施形態によれば、中抜けなく、より広範囲を面状にカバーするシャワー状のシャワー流を実現できる。このような本実施形態に係る吐水装置を複数個、例えば浴室やシャワーブースの壁に取り付け、それら各吐水装置からのシャワー流を浴びれば、フリーハンドの状態で体の広範囲をむら無く一度に温めることができ、シャワー流及び吐水流だけで十分な入浴感を得ることが可能となる。このようなシャワー浴は、浴槽に浸かっての入浴と異なり、体への水圧の圧迫感(心肺への負担)やおぼれる心配がなく、特に小さな子供や高齢者にとって安心である。
【0070】
本実施形態に係る吐水装置FCは、上述したような構成によって、複数の吐水口422を有する散水部材40を有する回転体と流入室3を有するガイド部材1との隙間から流出する水を、複数の吐水口422の少なくとも一つから吐出される水と確実に合流させることが可能な吐水装置として機能させることができる。一方で、散水部材40及び筒体20からなる回転体の自転及び公転の始動性向上及び安定性向上の観点からも有用なものとして捉えることもできる。
【0071】
筒体20と開口部4との隙間から流出する水を有効利用する観点からは、第二通水路50を、筒体20の小径部21とガイド部材1の開口部4との隙間を通過した水を受け入れて、複数の吐水口422から吐水される水にその受け入れた水を合流させるための通水路として設けていると捉えることができる。その通水路としての第二通水路50は、散水部材40が自転又は公転することによって遠心力が作用する方向、すなわち散水部材40の外周に向う方向とは逆方向に、受け入れた水を誘導して複数の吐水口422の少なくとも一部から吐出される水と合流させるように折返し部41bを有するものである。
【0072】
本実施形態の吐水装置FCは、ガイド部材1内部に形成された流入室3から供給される水を、筒体20に繋がっている散水部材40内部に形成された貯水室としての第一貯水室421に一時的に貯めて、散水部材40及び筒体20を自転及び公転させながら第一貯水室421に一時的に貯められた水を複数の吐水口422から吐水するように構成されている。従って、貯水室421内の水圧が高まることで複数の吐水口422から吐水されるので、複数の吐水口422から淀みなく吐水させることができる。
【0073】
一方、筒体20の小径部21とガイド部材1の開口部4との隙間を通過した水を受け入れて、複数の吐水口422から吐水される水に合流させる通水路としての第二通水路50を設けているので、第一貯水室421内の水圧の影響を受けることなく筒体20の小径部21とガイド部材1の開口部4との隙間を通過した水を吐水口422から吐水される水に合流させることができる。
【0074】
本実施形態の場合、散水部材40が取り付けられている筒体20とガイド部材1との隙間を通る水は、散水部材40及び筒体20がガイド部材1に対して自転又は公転する際の潤滑剤となるものであって、その水量は少なくなるように構成される。そこで第二通水路50に折返し部41bを設け、散水部材40が自転又は公転することによって遠心力が作用する方向とは逆方向に受け入れた水を誘導するように構成することで、少量の水が第二通水路50に供給された場合であっても、遠心力に対抗して確実に吐水口422から吐出される水に合流させることができる。従って、散水部材40内に形成された第一貯水室421を経由させずに、筒体20とガイド部材1との隙間から受け入れた水を確実に吐水口422からの吐水に合流させることで、無駄に飛び散らせることなく吐水対象に確実に吐水させることができる。
【0075】
また本実施形態に係る吐水装置FCでは、第二通水路50に上拡大部501を設けることで、受入口501aを通して受け入れた水を散水部材40の外周に向けて分散させるように誘導している。このように、受け入れた水を散水部材40の外周に向けて分散させるように誘導するので、分散させずに吐水口422からの吐水に合流させるのに比較して作用する遠心力を低減することができ、合流させる際の外側への水の飛散をより確実に低減することができる。
【0076】
また本実施形態に係る吐水装置FCでは、第二通水路50に上拡大部501を設けることで、受け入れた水を一時的に留めるための貯留部として機能させ、貯留部としての上拡大部501は、受け入れた水を一時的に留めた後に、散水部材40の外周に向けて分散させ流出させる。このように、筒体20とガイド部材1との隙間から受け入れた水を貯留部としての上拡大部501に一時的に留めるので、ガイド部材1側から流入する際の水の勢いを緩和し、散水部材40の外周に向けて分散させながら流出する際に加わるエネルギーを低減することができる。従って、分散して流出させることによる遠心力の低減効果と合わせて、吐水口422からの吐水に合流させる際の外側への水の飛散をより確実に低減することができる。
【0077】
また本実施形態に係る吐水装置FCでは、第二通水路50は、複数の吐水口422の少なくとも一部から吐出される水の吐出方向に沿うように受け入れた水を誘導するように構成されている。具体的には、第二通水路50は、吐水口422を囲繞するノズル42aの先端外周面42aaを外側から内側に向けて吐水方向に沿ってせり上がるように傾斜させると共に、先端外周面42aaに受け入れた水を当てて沿わせることで、受け入れた水を誘導して複数の吐水口422の少なくとも一部から吐出される水と合流させるように構成している。
【0078】
このように、吐水口422が形成されたノズル42aの先端外周面42aaを傾斜させ、その傾斜させた先端外周面42aaに受け入れた水を当てるという簡単な構成で、吐水口422からの吐水に合流させる際の外側への水の飛散をより確実に低減することができる。
【0079】
また本実施形態に係る吐水装置FCでは、第二通水路50は、受け入れた水が複数の吐水口422の少なくとも一部に向うように誘導する誘導部としての誘導突起42bを有している。誘導突起42bは、一の吐水口422と他の吐水口422との間に位置するように設けられている。
【0080】
このように、誘導突起42bを設けるという簡単な構成で、吐水口422からの吐水に合流できずに飛散する水を低減させることができ、受け入れた水を吐水口422からの吐水に合流させる際の外側への水の飛散をより確実に低減することができる。
【0081】
続いて、散水部材40及び筒体20からなる回転体の自転及び公転の始動性向上及び安定性向上の観点からは、第二貯水室として機能する上拡大部501、中間部502、及び下拡大部503の少なくとも一部が、第一貯水室421よりも外周側に配置され、小径部21とガイド部材1との隙間を通過した水を受入口501aから受け入れて貯水可能なように構成されているものである。そのような構成において、第二貯水室として機能する上拡大部501、中間部502、及び下拡大部503への給水速度が第一貯水室421への給水速度よりも小さくなるように構成されている。
【0082】
本実施形態の吐水装置FCは、筒体20の先端側に散水部材40を設けて回転体を構成しているので、筒体20単体の構成に比較して質量が増加する傾向にあり、自転及び公転するのにより大きな力を必要とする。また、筒体20及び散水部材40からなる回転体は流入室3に流入した水によって自転及び公転するので、流入室3に流れ込む水量が少ない場合には自転及び公転するのに必要な力が不足する場合もある。そこで本実施形態では、散水部材40の内側に第一貯水室421を設ける一方で外側に第二貯水室として機能する上拡大部501、中間部502、及び下拡大部503を設け、第二貯水室として機能する上拡大部501、中間部502、及び下拡大部503への給水速度が第一貯水室421への給水速度よりも小さくなるように構成している。内側に設けられた第一貯水室421は、流入室3から供給される水を一時的に貯水して複数の吐水口422から吐出するものであり、外側に設けられた第二貯水室としての上拡大部501、中間部502、及び下拡大部503は、筒体20とガイド部材1との隙間を通過した水を受け入れて貯水するものである。
【0083】
従って、始動期においては、内側の第一貯水室421に先に水が溜まり、第一貯水室421内の水圧が高まることで複数の吐水口422から吐水されるので、複数の吐水口422から淀みなく吐水させることができる。このように複数の吐水口422からの吐水を確保する一方で、第一貯水室421は内側に配置されていることから、散水部材40の慣性モーメントが比較的小さくなるように抑制することができ、その自転及び公転の始動性を良好に確保することができる。
【0084】
一方、始動期を過ぎると、外側の第二貯水室に相当する上拡大部501、中間部502、及び下拡大部503にも水が溜まるので、散水部材40の慣性モーメントを大きくすることができ、その自転及び公転の安定性を確保することができる。従って、始動期においては、散水部材40の慣性モーメントを抑制して自転及び公転の始動性を良好に確保しつつ、始動期を過ぎて散水部材40が自転及び公転を始めた後においては、散水部材40の慣性モーメントを増大させて自転及び公転の安定性を確保することができる。
【0085】
本実施形態では、筒体20の小径部21の一部が開口部4に接触された状態で流入室3の中心軸に対して傾きながら流入室3の中心軸回りに首振り公転するように構成されている。そこでこの好ましい態様では、第二貯水室の少なくとも一部として機能する下拡大部503を第一通水路における第一貯水室421よりも下流側に相当する位置に配置することで、筒体20及び散水部材40からなる回転体の公転中心と第二貯水室の一部である下拡大部503との距離を引き離している。このように構成し第一貯水室421への貯水よりも遅く第二貯水室の一部として機能する下拡大部503に貯水することで、始動期を過ぎた後の散水部材40の慣性モーメントをより増大させ、散水部材40の公転安定性を良好に確保することができる。
【0086】
また吐水装置FCでは、第一通水路における第一貯水室421よりも下流側に相当する位置において、第二貯水室の一部として機能する下拡大部503は、中心軸CL(C2)に直交する断面積を拡大させて形成されている。このように構成することで、公転中心(小径部21と開口部4とが当接する部分に相当する)と第二貯水室の一部である下拡大部503との距離を引き離したことに加えてその貯水容量を増大させている。従って、始動期を過ぎた後の散水部材40の慣性モーメントをより一層増大させ、散水部材40の公転安定性を確保することができる。
【0087】
また本実施形態に係る吐水装置FCでは、第二貯水室の少なくとも一部として機能する上拡大部501が、小径部21から第一貯水室421を通って複数の吐水口422に至る第一通水路の第一貯水室421よりも上流側に相当する位置に配置されている。このように配置することで、筒体20及び散水部材40からなる回転体の公転中心と第二貯水室の一部との距離を近づけている。このように構成し第一貯水室421への貯水よりも遅く第二貯水室の一部として機能する上拡大部501に貯水することで、始動期においては散水部材40の慣性モーメントの増大を抑制することができ、散水部材40の公転始動性を良好に確保することができる。
【0088】
また吐水装置FCでは、第一通水路における第一貯水室421よりも上流側に相当する位置において、第二貯水室の一部として機能する上拡大部501は、中心軸CL(C2)に直交する断面積を拡大させて形成されている。このように構成することで、公転中心(小径部21と開口部4とが当接する部分に相当する)と第二貯水室の一部である上拡大部501との距離を近づけたことに加えてその貯水容量を増大させている。従って、始動期においては散水部材40の慣性モーメントの増大をより抑制することができ、散水部材40の公転始動性を良好に確保することができる。
【0089】
また吐水装置FCでは、上述したような上拡大部501及び下拡大部503と、これらを繋ぐ中間部502とを有しているので、始動期においては散水部材40の慣性モーメントの増大をより抑制することができると共に、始動期を過ぎた後の散水部材40の慣性モーメントをより一層増大させている。従って、散水部材40の公転始動性と公転安定性とを確実に両立させることができる。
【0090】
また吐水装置FCでは、第二貯水室として機能する上拡大部501、中間部502、及び下拡大部503を挟んで受入口501aとは反対側に、受入口501aから受け入れて第二貯水室として機能する上拡大部501、中間部502、及び下拡大部503に貯められた水を排出するための排出口503aが設けられている。
【0091】
このように排出口503aが設けられているので、受入口501aから取り入れられた水が第二貯水室としての上拡大部501、中間部502、及び下拡大部503を通って排出口501aから排出される。従って、第二貯水室としての上拡大部501、中間部502、及び下拡大部503全体が水で満たされることになり、第二貯水室としての上拡大部501、中間部502、及び下拡大部503に貯水することによる散水部材40の慣性モーメント増大効果をより高めることができる。
【0092】
また吐水装置FCでは、受入口501aから上拡大部501、中間部502、及び下拡大部503を通って排出口503aに至る第二通水路50において、流路断面積を絞った狭窄領域が下流側に形成されている。具体的には、ノズル42aの先端が突出することで先端外周面42aaが第二通水路50内に突出し、当該領域が流路断面積を絞った狭窄領域として機能している。
【0093】
このように、第二通水路50の下流側に狭窄領域を形成しているので、第二通水路50を構成する第二貯水室としての上拡大部501、中間部502、及び下拡大部503に水が溜まりやすくなり、上拡大部501、中間部502、及び下拡大部503に貯水することによる散水部材40の慣性モーメント増大効果をより高めることができる。このように構成することで、始動期を過ぎた後の散水部材40の慣性モーメントをより一層増大させ、散水部材40の公転安定性を確保することができる。
【0094】
なお、本実施形態の吐水装置は、浴室やシャワーブースにおけるシャワー装置として用いる以外にも、例えば、洗浄機能付き便器などにも用いることが可能である。
【0095】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0096】
FC:吐水装置
CL:中心軸
C2:中心軸
1:ガイド部材
2:第一本体部
3:流入室
3a:ガイド面
4:開口部
5:流入孔
6:第二本体部
20:筒体
21:小径部
22:大径部
23:貫通孔
24:開口
25:開口
40:散水部材
41:ケース
41a:吐水開口
41b:折返し部
42:第一通水路部品
421:第一貯水室
422:吐水口
42a:ノズル
42aa:先端外周面
42b:誘導突起
42c:細管部
50:第二通水路
501a:受入口
501:上拡大部(貯留部)
502:中間部
503:下拡大部
503a:排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水方向を変化させながら広範囲に吐水を行うことが可能な吐水装置であって、
水が流入する流入室がその内部に形成され、前記流入室の内部と前記流入室の外部とを連通する開口部を有するガイド部材と、
前記開口部より小径な小径部と前記開口部より大径な大径部とを有し、前記小径部の先端は前記開口部から前記ガイド部材の外部に突出させる一方で、少なくとも前記大径部は前記流入室の内部に収容され、前記流入室に流入した水を前記小径部の先端から流出可能なように構成されてなる筒体と、
前記ガイド部材の外部に位置するように前記小径部の先端に繋げて設けられ、複数の吐水口が設けられると共に、これら複数の吐水口それぞれに連通する第一貯水室がその内部に形成された散水部材と、を備え、
前記筒体は、前記流入室へ流入した水により、少なくとも前記小径部の一部が前記開口部に接触された状態で前記流入室の中心軸に対して傾きながら前記流入室の中心軸回りに首振り公転し、且つ自身の中心軸回りに自転するように構成され、
前記散水部材は、その少なくとも一部が前記第一貯水室よりも外周側に配置され、前記小径部と前記ガイド部材との隙間を通過した水を受入口から受け入れて貯水可能なように構成された第二貯水室を有し、
前記第二貯水室への給水速度が前記第一貯水室への給水速度よりも小さくなるように構成されていることを特徴とする吐水装置。
【請求項2】
前記第二貯水室の少なくとも一部が、前記小径部から前記第一貯水室を通って前記複数の吐水口に至る第一通水路の前記第一貯水室よりも下流側に相当する位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の吐水装置。
【請求項3】
前記第一通水路における前記第一貯水室よりも下流側に相当する位置において、前記第二貯水室は、前記中心軸に直交する断面積を拡大させた下拡大部を有することを特徴とする請求項2に記載の吐水装置。
【請求項4】
前記第二貯水室の少なくとも一部が、前記小径部から前記第一貯水室を通って前記複数の吐水口に至る第一通水路の前記第一貯水室よりも上流側に相当する位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の吐水装置。
【請求項5】
前記第一通水路における前記第一貯水室よりも上流側に相当する位置において、前記第二貯水室は、前記中心軸に直交する断面積を拡大させた上拡大部を有することを特徴とする請求項4に記載の吐水装置。
【請求項6】
前記第一通水路における前記第一貯水室よりも上流側に相当する位置において、前記第二貯水室は、前記中心軸に直交する断面積を拡大させた上拡大部を有する一方で、
前記第一通水路における前記第一貯水室よりも下流側に相当する位置において、前記第二貯水室は、前記中心軸に直交する断面積を拡大させた下拡大部を有すると共に、
前記第二貯水室は、前記上拡大部と前記下拡大部との間に、前記上拡大部よりも断面積の小さい中間部を有することを特徴とする請求項1に記載の吐水装置。
【請求項7】
前記第二貯水室を挟んで前記受入口とは反対側に、前記受入口から受け入れて前記第二貯水室に貯められた水を排出するための排出口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の吐水装置。
【請求項8】
前記受入口から前記第二貯水室を通って前記排出口に至る第二通水路において、流路断面積を絞った狭窄領域が下流側に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の吐水装置。
【請求項9】
前記第二通水路の前記排出口から排出される水が、前記第一通水路の前記複数の吐水口の少なくとも一部から吐出される水と合流するように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の吐水装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−173081(P2011−173081A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40178(P2010−40178)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】