説明

吐水装置

【課題】吐水体を回転させることなく任意の方向に吐水が可能な吐水装置を提供する。さらに、瞬間流量変動手段を用いても任意の方向に吐水が可能な吐水装置を提供する。
【解決手段】ノズルを備え、給水された洗浄水を前記ノズルから吐出する吐水装置であって、前記ノズルは、洗浄水が流入する旋回室と、前記旋回室に洗浄水を供給する第一給水部と、前記旋回室の上端に設けられた吐水孔部と、一端部が前記吐水孔部側に配置され、しかも内部には前記旋回室に供給された洗浄水を前記一端部側から吐水可能とする吐水流路が形成された吐水体と、前記吐水体を把持する可撓性の把持体と、前記第一給水部とは別の前記旋回室に洗浄水を供給する第二給水部とを備え、前記第一給水部からの洗浄水は前記吐水体の側面部に向かって供給され、第二給水部からの洗浄水は前記吐水体の他端部側に向かって洗浄水を供給されることを特徴とする吐水装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水された洗浄水をノズルから吐水する吐水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の吐水装置たとえば人体の局部を洗浄する人体衛生洗浄装置は、人体局部に対して吐水口から人体に吐水し、洗浄水で汚れを落とす。洗浄水の水勢は調整可能となっており、使用者は水勢を上げて、汚れをすばやく落としたり、刺激のある強い洗浄感の吐水によて洗浄を行うことができる。また、水勢を下げて、やわらかい感触の吐水で洗浄を行うこともでき、このように水勢を変えることによって好みの吐水を選択することができる。
【0003】
さらに、より強い水流で洗浄しようとした場合、大量の洗浄水を吐水したり、より広い範囲を洗浄する目的および人体洗浄の場合の洗浄感を向上させるためには、洗浄ノズルからの吐水を広範囲から大量に吐水する必要があった。
その効果を、より少ない吐水量で達成する技術として、特開2001−081837のように、吐水変動手段を設けて、吐水後の瞬間流量を変動させるものがある。
また、より多様な洗浄感を得られるようにするための技術として、特開2008−008084のように、公転周波数と洗浄水流量を独立して制御するものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−081837号公報
【特許文献2】特開2008−008084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2の構成においては、直線的な吐水を実現しようとしても、旋回室側面及び接線方向からの流入となり、回転体が旋回室中心軸上に保持されず、意図しない方向に吐水してしまう問題がある。
また、多様な洗浄感を実現するためには、特許文献2のように洗浄面積可変手段と刺激を任意に可変できる手段を選択できる事が望ましい。
よって、特許文献2のような回転する吐水体を備えた吐水装置に、特許文献1のような瞬間流量を変動させる手段備えた構成が考えられる。
しかし、この構成においても回転体が旋回室中心軸に保持されず、瞬間流量変動に伴い回転体が動いてしまい、吐水方向がまばらとなってしまう。
もちろん、吐水穴を回転吐水用とスポット洗浄用に分ければ実現可能だが、吐水口及び流路がそれぞれに必要となり、吐水装置の複雑化、巨大化に繋がる。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するものであり、吐水体を回転させることなく任意の方向に吐水が可能な吐水装置を提供する。さらに、瞬間流量変動手段を用いても任意の方向に吐水が可能な吐水装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、ノズルを備え、給水された洗浄水を前記ノズルから吐出する吐水装置であって、
前記ノズルは、洗浄水が流入する旋回室と、前記旋回室に洗浄水を供給する第一給水部と、前記旋回室の上端に設けられた吐水孔部と、一端部が前記吐水孔部側に配置され、しかも内部には前記旋回室に供給された洗浄水を前記一端部側から吐水可能とする吐水流路が形成された吐水体と、前記吐水体を把持する可撓性の把持体と、前記第一給水部とは別の前記旋回室に洗浄水を供給する第二給水部とを備え、
前記第一給水部からの洗浄水は前記吐水体の側面部に向かって供給され、第二給水部からの洗浄水は前記吐水体の他端部側に向かって洗浄水を供給されることを特徴とする吐水装置である。
【0008】
本発明により、第一給水部から洗浄水が供給されることによって、吐水体が回転することにより広範囲の洗浄が可能であり、かつ第二給水部から洗浄水が供給されることによって、吐水体が回転することなく任意の方向へ吐水することが可能となる。
【0009】
第2の発明は、前記第二給水部の上流側に脈動発生手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の吐水装置である。
【0010】
本発明により、請求項1の吐水装置であって、脈動発生手段を設けた場合でも任意の方向へ吐水することが可能となる。
【0011】
第3の発明は、前記吐水体の他端部は、前記第二給水部と前記旋回室とを連結する第二給水孔を、前記第二給水部から前記旋回室側へ見た投影面積内にあることを特徴とする請求項1の吐水装置である。
【0012】
本発明により、請求項1の吐水装置において、第二給水部から洗浄水が供給された場合に、吐水体が任意の方向に安定することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、吐水体を回転させることなく任意の方向に吐水が可能な吐水装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の吐水装置を備えた人体衛生洗浄装置300 を便器に設置した際の斜視図である。
【図2】本実施例の局部洗浄装置300の概略構成を表すブロック図である。
【図3】本実施例の洗浄ノズル308の概略構成を表す断面図である。
【図4】本実施例の電磁ポンプ305の概略構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に本発明に係る吐水装置、人体衛生洗浄装置の実施形態を実施例に基づき説明する。図1は、本発明の吐水装置を備えた人体衛生洗浄装置300 を便器に設置した際の斜視図を示す。使用者は洗浄ノズルから吐水された洗浄水で洗浄を行い、その際図中に示すリモコン操作部7 にて人体洗浄装置300の操作を行う。図2は本実施例の局部洗浄装置300の概略構成を表すブロック図である。
【0016】
図2 に示すように、局部洗浄装置300は、外部の給水源側から順に、給水ユニット302と熱交換ユニット304と電磁ポンプ305と流調弁306と洗浄ノズル308を設ける。洗浄ノズル308は、ノズル駆動モータ310により、装置本体内の待機位置とお尻又はビデの各洗浄位置との間を進退するよう構成されている。
【0017】
流調弁306は洗浄ノズル308の後端部に接続されている。洗浄ノズル308の後端部内には流路切替機構71が組み込まれている。流路切替機構71はノズル端部と一体として装着されている。また、洗浄ノズル308の先端部にはノズルヘッド200が装着されており、このはノズルヘッド200にはお尻洗浄用吐水孔31、ビデ洗浄用吐水孔33が形成されている。
【0018】
局部洗浄装置300 は、流調弁306で流量調整された洗浄水を、流路切替機構71を介して洗浄ノズル308に送り込み、お尻洗浄用吐水孔31やビデ洗浄用吐水孔33から吐水する。
【0019】
図2 に示すように、局部洗浄装置300は電子制御装置312を備える。電子制御装置312は、リモコン操作部7 に設けたお尻洗浄ボタン9 1 やビデ洗浄ボタン93 、流量比調整ボタン( 図2 におけるリモコン7 の上側の△ 、▽ )、人体洗浄装置の洗浄流量を調整する水勢ボタン( 図2 におけるリモコン7 の下側の△ 、▽ ) 、給水ユニット302 、熱交換ユニット304 、流調弁306 、洗浄ノズル308、ノズル駆動モータ310のそれぞれと、電気信号の送受信が可能に接続されている。
【0020】
電子制御装置312は、上記の各操作ボタンの操作に応じて、洗浄ノズル308の進退駆動、洗浄水の給水並びに止水、洗浄水の温水化、洗浄水の水勢調整、洗浄強さを調整する流量切替調整等の制御を行う。
【0021】
次に洗浄ノズル308の構成について図3を用いて説明する。図3は非通水時のノズルヘッド200の断面図である。
【0022】
洗浄ノズル308に洗浄水が供給されると、ノズルヘッド200内の通水路62、旋回室流入路63、旋回室64の順に通過する。
【0023】
旋回室流入路63は通水路62より通水断面積が小さく構成されており、かつ旋回室64の中心に対して偏芯して洗浄水が供給されるように構成している。
【0024】
又、洗浄ノズル308に組み込まれている流路切替機構71により、ノズルヘッド200内、上記通水路62とは異なる洗浄水流路82へ流路切替が可能となっている。
【0025】
ノズルヘッド200内の通水路82においては、供給された洗浄水を旋回室64の中心軸上に旋回室流入路83を構成しており、旋回室64に対して軸方向へ洗浄水が供給される。
【0026】
なお、ここで、洗浄水流路62が「第一給水部」に、洗浄水流路82が「第二給水部」に該当する。
【0027】
旋回室64内部には吐水体70が設けられており、この吐水体70は洗浄水が給水される給水口74 と連通して洗浄水を噴射吐水する吐水孔73、旋回室64中の洗浄水より流れのエネルギーを受ける受力部75より構成されている。吐水体70の側面に開設された給水口74と、吐水体70の上面に開設された吐水孔73とは、吐水流路で連通している。
【0028】
中央に貫通孔76a を有する抜止部材76を旋回室64の上部に設け、抜止部材76は吐水体70の受力部75が旋回室64内の中心軸に対して傾斜公転可能になる様に把持体72によって吐水体70の上方を支持している。
【0029】
従って、旋回室流入路63から旋回室64内部に洗浄水が供給されて洗浄水が旋回室6 4内部で旋回することで発生する遠心力と洗浄水の運動エネルギーを吐水体70の受力部75が受け、吐水体70が旋回室64中心軸に対して傾斜して公転運動( 首振り運動)する構成になっている。
【0030】
前記の構成により、旋回室流入路63から旋回室64に洗浄水が供給された場合は、吐水体70の側面に開設された給水口74から吐水体70の内部に洗浄水が流入する。給水口74から吐水体70の内部に流入した洗浄水は、吐水体70の内部と連通した吐水孔73から洗浄水が噴射吐水される。つまり、吐水体70が、旋回室64中心軸まわりの公転運動をおこないながら、洗浄水を噴射吐水することで、吐水された洗浄水の軌跡は螺旋を描きながら円錐状に拡大吐水される。
【0031】
また、旋回室流入路83から旋回室64へ洗浄水が供給された場合は、旋回室流入路83が旋回室64の中心軸上に設けられており、吐水体70の受力部75全周に洗浄水が通水されるため、吐水体70の受力部75全体で均一な供給圧力となるため、旋回室64内で洗浄水は旋回せず、吐水体70は旋回室64の中心軸上に回転することなく、状態を保持する構成となっている。
【0032】
よって、洗浄水流路82、旋回室流入路83から旋回室64へ洗浄水が供給された場合は、吐水体70の側面に開設された給水口74から吐水体70の内部に洗浄水が流入する。給水口74から吐水体70の内部に流入した洗浄水は、吐水体70の内部と連通した吐水孔73から洗浄水が噴射吐水される。つまり、吐水体70が公転運動を行わないため、直線状に吐水される。
【0033】
前述した旋回室流入路83を、旋回室64の軸上に配置することで吐水体70を公転運動させずに旋回室64の中心軸上に保持する構成となっているが、大量の生産を行った場合に発生する、旋回室流入路83中心軸と旋回室64中心軸の軸ずれ、および洗浄水の水量が大量にあった場合においては、旋回室64に流入する流速が増すことで旋回室64内水圧バランスが不均一となる可能性もある。
【0034】
よって、旋回室流入路83の洗浄水が流れる方向に見たとき、旋回室流入路83流入開口投影面積内に吐水体70が配置されていることで、吐水体70の受力部75全周に旋回室軸方向の水流が発生し、吐水体が旋回室64の中心軸上に、より保持されやすくなる。
【0035】
次に脈動発生手段として備えている電磁ポンプ305に関して、その構成を説明する。図4はその一部断面を示す縦断面図である。
【0036】
ボビン33に捲装した電磁コイル34の軸心孔に挿嵌してこれに囲繞された管柱シリンダ39内を、その上流側端部に嵌合する本体20の要部と、その下流側端部位に嵌合する磁気ヘッド35との間に、それぞれ保持ばね40と戻しばね36との間に挟持圧設されて摺動往復自在で、逆止弁55を備えた電磁プランジャ38は、前記電磁コイル34へパルス状断続電流を付勢すると、そこに発生する断続した磁力と前記戻しばね36の反発力とによって往復作動するように構成されている。
【0037】
電磁プランジャ38が往復運動することにより、洗浄水を加圧して波状衝撃的脈動を付与して、吐出側から噴流吐出させる構成である。
【0038】
この波状衝撃脈動を付与した洗浄水が洗浄ノズル308に供給され、ノズルヘッド200内の洗浄水流路82、旋回室流入路83、旋回室64の順に通過した場合においても、旋回室流入路83を旋回室軸上に備えているため、変動する圧力を吐水体70が受けた場合においても中心軸上に回転することなく状態を保持できる。
【0039】
吐水体70が保持されることにより、前途したように、吐水体70が公転運動を行わないため、直線状かつ波状衝撃脈動の吐水となることで、洗浄効果を高めることができる。
【符号の説明】
【0040】
308 洗浄ノズル
62 第一給水部
64 旋回室
70 吐水体
71 流路・流量切替機構(流量調整部)
72 把持体
73 吐水孔
74 給水口
82 第二給水部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルを備え、給水された洗浄水を前記ノズルから吐出する吐水装置であって、
前記ノズルは、洗浄水が流入する旋回室と、前記旋回室に洗浄水を供給する第一給水部と、前記旋回室の上端に設けられた吐水孔部と、一端部が前記吐水孔部側に配置され、しかも内部には前記旋回室に供給された洗浄水を前記一端部側から吐水可能とする吐水流路が形成された吐水体と、前記吐水体を把持する可撓性の把持体と、前記第一給水部とは別の前記旋回室に洗浄水を供給する第二給水部とを備え、
前記第一給水部からの洗浄水は前記吐水体の側面部に向かって供給され、第二給水部からの洗浄水は前記吐水体の他端部側に向かって洗浄水を供給されることを特徴とする吐水装置。
【請求項2】
前記第二給水部の上流側に脈動発生手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の吐水装置。
【請求項3】
前記吐水体の他端部は、前記第二給水部と前記旋回室とを連結する第二給水孔を、前記第二給水部から前記旋回室側へ見た投影面積内にあることを特徴とする請求項1または2に記載の吐水装置。


【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−207496(P2012−207496A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75692(P2011−75692)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】