説明

向上された生体利用効率を備えるプランルカスト固体分散体組成物およびその固体分散体の製造方法

開示されたことは、改善されたプランルカスト固体分散体組成物およびその製造方法である。特に、本発明はプランルカストと、ポリビニルピロリドンビニルアセテート共重合体、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールとからなる群から選択された少なくとも1つの水溶性高分子とを含む組成物を使用し、熱溶融処理により製造されるプランルカスト固体分散体を提供し、従来の噴射乾燥方式により調製されたそれらに比べて著しく改善された溶解率および生体利用効率を有し、少量の薬で同等の薬の効果を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は向上された生体利用効率だけでなく、溶解度および溶解率を備えた新規のプランルカスト固体分散体組成物、それらの製造方法およびこれらの組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
4−オキソ−8−(4−(4−フェニルブトキシ)ベンゾイル−アミノ)−2−(テトラゾール−5−イル)−4H−1−ベンゾピラン半水化物であるプランルカストは、ロイコトリエンC4(LTC4)およびロイコトリエンD4(LTD4)に対して強い拮抗作用を有する化合物であり、従って、気管支喘息およびアレルギー性鼻炎を治療するための治療薬として使用されている。しかしながら、プランルカストは水に難溶で、経口投与時、相対的に低い生体利用効率を有するので、多量に投与されており、従って非経済的である。それ故に、前記問題を解決できる新規の製剤および製薬技術を開発することが、長年にわたる切実な要求である。
【0003】
実際には、多様な研究が、治療薬としての有用性を考慮して、数十年間プランルカストに対して実施されている。例えば、国際公開第1996/41628号(大韓民国特許番号10−389606号)は、プランルカストを含有する顆粒物、その顆粒物の生産工程およびプランルカストの凝集性を低下する方法を開示する。プランルカストの凝集性を低下するときには、糖類、水溶性高分子および界面活性剤を精製水に溶解する工程、プランルカストを懸濁する工程、噴霧乾燥法により顆粒物を製造する工程、その結果、プランルカストの凝集性を改良する工程を含む剤形化し易い処理を提供する。
【0004】
別の例として、日本特開平8−73353号は、プランルカストおよびポリビニルピロリドンまたはβ−シクロデキストリンとを含む製剤に関する処理を開示する。
【0005】
さらに別の例として、国際公開第1999/04790号は、ベンゾピランを含有する水溶性薬剤組成物の製造方法を開示する。
【0006】
表面修飾により改善された吸入効率を備えたエアロゾル(Pharmaceutical Reserch 1998、15、1748-1752)。
【0007】
しかしながら、大韓民国特許番号10−389606号は、表面の物理的性質の改良により製剤方法のみを提供し、プランルカスト粉末は、懸濁された後、噴霧乾燥された。従って、X線回折解析で確認できるように、プランルカストの結晶化度が維持された方法にさらに限界があり、そして、その溶解度も改良されなかった。
【0008】
日本特開平8−73353号は、ポリビニルピロリドンまたはβ−シクロデキストリンを溶解補助剤として使用する液状製剤、例えば点眼剤、点鼻剤または注射剤などに関する。
【0009】
国際公開第1999/04790号は、液状製剤、例えば界面活性剤を含有する水溶性のプランルカスト水溶液、または水溶性高分子を含有するプランルカスト懸濁液などに関する。しかしながら、これらの製剤は、非常に低い濃度のプランルカストを有し、従って、数百mlの製剤が、通常の適正な投与量として各々一服ごとに必要である。さらに、pHを調節することにより上昇した溶解度を備える製剤は、経口投与するとき胃酸の存在によって非常に凝結しやすい。さらに、日本特開平8−73353号および国際公開第1999/04790号において、大韓民国特許第10−389606号にあるように、プランルカストの結晶化度が維持されたので、溶解または生体利用効率はあまり高くなかった。
【0010】
プランカルストのような水に溶けない薬に対する経口吸収率を向上する一つの方法は、固体分散体を調製することである。固体分散体は、固体高分子または不活性担体に少なくとも一つの有効成分が均一に分散されている混合物を意味し、また経口吸収率は試験管内だけでなく生体内における薬の溶解特性を改善することにより増加させ得る。
【0011】
固体分散体を調製する多様な方法があり、共沈、同時蒸着、凍結乾燥、噴霧乾燥、共同練磨(cogrinding)などである[J.PHARM.Sci.1993、82、32-38]。
【0012】
大韓民国特許番号10−0381834号は、プランルカストをジクロロメタンとメタノールの混合溶液に溶解し、続いて乾燥することにより調整されたプランルカスト固体分散体を製造ことにより、溶解特性と経口吸収率を改善する方法を開示する。これはプランルカスト固体分散体を製造する最初の方法および比較的高い溶解率を可能にする点において注目すべき技術であった。しかしながら、基本的に有機溶媒の使用を必要とする噴霧乾燥方式を用い、それ故に溶媒が残存する危険性があり、有機溶媒の使用による環境汚染の危険性もあった。さらに、結果として得られる噴霧乾燥物は非常に大きいためカプセルの形状に剤形化することができず、従って錠剤として調製された。錠剤として剤形化する場合、プランルカストの溶解率を上昇させるために使用されたヒドロキシプロピルメチルセルロースは、徐放性錠を製造する際に基質(matrix)として一般的に使用される高分子であり、投与された薬の約1.5倍が加えられる場合に、その溶解率は鈍くなり、従って多量の崩解剤の使用が必要とされる。それ故に、錠剤を製造するときに崩壊剤が多量に加えられる場合、患者に処方する際、防湿コーティングおよび防湿包装などの付加的な処理が必要であり、その結果、製造コストが上昇する。さらに、最初は大韓民国薬事法による品目承認を得て、カプセルの形態に製剤され、その承認に基づいてその後錠剤として開発された。しかし、錠剤を製造するために上記品目承認を得るためには、かなりの時間を要し、また、代替品として認定されても、多くの商業利益を期待できなかった。
【0013】
本発明区分のこの背景技術で開示された情報は、本発明の背景技術の理解向上のためだけであり、承認またはこの情報が当業者に既に知られている先行技術を形成する提案形態として解釈すべきでない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の発明者は多くの努力をし、従来の方法の欠点を解決し、そして、結果として、彼等はプランルカストと、ポリビニルピロリドンビニルアセテート共重合体、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールとからなる群から選択された少なくとも1つの水溶性高分子を含む組成物を使用し熱溶融処理によって、非結晶質のプランルカスト固体分散体を製造することに成功し、従来の噴霧乾燥方式により調製されたそれらと比較して溶解率と生体利用効率が著しく改善され、従って少量の薬で同等な薬の効果を得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
それ故に、一つの形態において、本発明は(a)プランルカストと、(b)ポリビニルピロリドンビニルアセテート共重合体(プラスドン(登録商標))、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールとからなる群から選択された少なくとも1つの水溶性高分子とを含むプランルカスト固体分散体組成物を提供する。
【0016】
他の形態において、本発明は、上記のプランルカスト固体分散体組成物を使用し、プランルカスト固体分散体を熱溶融処理方式によりプランルカスト固体分散体の製造方法を提供する。
【0017】
本発明の実施形態において、改善されたプランルカスト固体分散体組成物およびその固体分散体の製造方法を提供する。
【0018】
詳細には、本発明は、(a)プランルカスト、および(b)ポリビニルピロリドンビニルアセテート共重合体、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールとからなる群から選択された少なくとも1つの水溶性高分子を含む組成物を使用し熱溶融処理により製造されたプランルカスト固体分散体に関し、従来の噴霧乾燥方式により調整されたそれらと比較して溶解率と生体利用効率が著しく改善され、従って少量の薬で同等な薬の効果を得ることができる。
【0019】
本発明の他の実施形態において、剤形化のし易さによって、単純化された製造工程を提供する。
【0020】
本発明のさらなる他の実施形態において、本発明の製造工程において有機溶媒が使用されないため、有機溶媒が残存しない最終医薬品を提供する。これは環境汚染の可能性に関する公衆の不安を排除することができる。
【0021】
本発明のさらなる実施形態において、生体利用効率が改善されたプランルカスト固体分散体組成物を提供する。
【0022】
本発明のさらなる実施形態において、生体利用効率が改善されたプランルカスト固体分散体組成物を使用してプランルカスト固体分散体の製造方法を提供する。
【0023】
本発明はさらに下記に記述される。
【0024】
本発明は、プランルカストおよびガラス転移温度が100〜200℃である高分子の熱溶融によりプランルカスト固体分散体の製造方法に関する。
【0025】
固体分散体を製造することによりプランルカストのような不水溶性の薬の溶解および生体利用効率を増加させるために、薬の吸収領域で相対的に高い溶解率を維持することのできる担体の種類と含有量比を決定することが重要である。この点において、本発明は熱溶融処理により固体分散体を設計し、プランルカストと、ガラス転移温度が100〜200℃である高分子とが熱溶融され、プランルカストが腸管の薬吸収領域で多量に溶解され得る。
【0026】
本発明により好ましい薬の効果を達成するために、製薬用高分子を使用することが好ましく、より好ましくは水溶性高分子である。本発明で使用される水溶性高分子は、ポリビニルピロリドンビニルアセテート共重合体(プラスドン(登録商標))、ポリビニルピロリドン(ポビドン()およびポリビニルアルコールとからなる群から選択された1つ以上が好ましく、固体分散体を製造するために熱溶融させることができる。
【0027】
分解温度と溶融温度が互いに近接しているので、プランルカストは、熱溶融処理により固体分散体を製造する過程で、分解することなしに安定して溶解させることができないという不都合を有する。しかしながら、プランルカストが本発明の水溶性高分子と混合した後に溶解される場合、融解温度が低くなり共融(comelted)し、従って薬の融解温度である約230℃まで温度を上昇する必要がない。
【0028】
本発明で使用される製薬用高分子は200℃以下の温度で充分な可塑性を寄与し、また加えられる熱により炭化されない。
【0029】
従来のセルロース系高分子、例えばヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどがプランルカストに適用される場合、融解温度で有効成分の分解が起こり、従って薬の効果を維持しながら溶融処理を遂行することは困難である。即ち、可塑性が不足して薬の溶融温度で炭化され、本発明の固体分散体を製造することができない。
【0030】
高分子の可塑性はガラス転移温度(Tg)と密接に関係している。固体分散体を製造するための熱溶融処理に適している本発明の製薬用高分子は、200℃で炭化されてはならない。さらに、製剤および製造工程における単純化などの作業性向上のために、Tgが50℃以上でなければならず、そのため100〜200℃の作業温度で必要な可塑性が得られる。さらに、作業性だけでなく溶解度の改善のために、Tgが100℃以上であることが好ましく、上記の要件を満たす水溶性高分子は次のとおりである。
【0031】
水溶性高分子の例はポリビニルピロリドン類(ポビドン(登録商標)、ISP社およびBASF社、Tg=155℃)、ポリビニルピロリドンビニルアセテート共重合体類(プラスドン(登録商標)、ISP社、コリドン(VA64(、BASF社、Tg=105℃)、ポリビニルアルコール類(Tg=180〜190℃)、ポリアクリル酸共重合体(カーボポル(、グッドリッチ、Tg=100〜105℃)などを含む。
【0032】
プランルカストと製薬用高分子の含有量は、プランルカストに関して製薬用高分子の重量比(being a weight ratio of the pharmaceutical polymer with reference to that of pranlukast)が0.1:1から10:1の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5:1〜5:1である。重量比が0.1未満の場合、生体利用効率の改善がない。一方、重量比が10を超える場合、1日の服用量が増加し、製剤で問題を提起する。
【0033】
本発明のプランルカスト固体分散体は、上記必須成分に加え、他の従来の有効成分、例えば界面活性剤、保存剤、着剤、電解質および他の有効成分などを含み得る。プランルカストと共に使用される他の有効成分の例は、ステロイド剤、気管支拡張剤、鎮咳剤および去痰薬などである。
【0034】
熱溶融処理によるプランルカスト固体分散体の製造は特定の処理に限定されず、以下は製造処理の1つの代表的な例である。
【0035】
プランルカスト(10g)とプランスドン(登録商標)S−630(15g)は正確に称量し、PEバッグに入れて混合した。プランルカストと高分子の混合物5gは、150〜200℃に予め設定されたメルトフローインデクサー(Melt-Flow-Indexer)(CSI127C、CSI社)中に、漏斗を通じて導入される。3分経過後、1kgの錘を使用することにより溶融混合物を強制的にメルトフローインデクサーから排出させる。得られた溶融物は冷たい場所に置かれ、乳鉢と乳棒を使用し粉砕して薬−高分子の熱溶融固体分散体を得る。
【0036】
固体分散体組成物を熱溶融処理により製造する方法は、噴霧乾燥方式に比べて下記のような利点がある。
【0037】
第1に、噴霧乾燥方式において、有機溶媒および高圧の使用は必須であり、作業者に有害であり、環境汚染の問題を提起し、また有機溶媒が最終製品に残存し得る。第2に、噴霧乾燥方式により調製された噴霧乾燥製品は、剤形化するには大きいため、錠剤の付加的な処理が必要となる。
【0038】
一方、本発明の熱溶融処理は有機溶媒を使用せず、結果として得られる固体分散体の製品は、残留有機溶媒および有機溶媒の存在により提起される上記問題点を含まない。さらに、結果として得られる固体分散体の製品の容積は比較的小さく、扱いやすい。さらに、溶融組成物はカプセル内に瞬時に充填することにより、打錠工程および防湿コーティング工程のような処理を経ることなく最終製品にされる。
【0039】
本発明のプランルカスト固体分散体組成物は、治療に効果的な量(therapeutically effective amount)を含有する薬学的な投薬量の形態(pharmaceutical dosage form)に剤形化されることができる。例えば、それらは、錠剤、カプセル、顆粒および乾燥顆粒のような経口製剤、および点眼、鼻腔噴霧または吸入製剤のような薬学的に投与可能な製剤(pharmaceutically administerable preparations)の形態に剤形化されることができる。利便性と商品性は認定/許可を重視し、カプセルにより調整された製剤が最も好ましく、これらのカプセル製剤はカプセルに適した賦形剤を使用する従来の製造方法を使用することにより剤形化されることができる。
【0040】
錠剤に剤形化された経口投与製剤に関して、それらは従来の成分または賦形剤を使用する従来の打錠技術を使用することにより製造され得る。これらの賦形剤の例は、希釈剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、流動促進剤、甘味料、香味料または着色剤を含む。一方、錠剤は安定性、香味、服用の利便性、外観などを改善するために被覆され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
上記の本発明の形態および他の特徴は、以下の詳細な説明において説明され、添付図面とともに解釈される。
【0042】
最良の形態
本発明は以下の実施例を参照して詳細に記述されているが、本発明の範囲に限定して解釈されるべきでない。
【0043】
実施例1〜3:多種の高分子に対する固体分散体の製造
プランルカスト6gは下記表1における各々高分子9gと混合し、固体分散体はメルトフローインデクサーを使用することにより200℃で製造された。
【0044】
【表1】

【0045】
比較例1〜6:多種の高分子に対する固体分散体の製造
固体分散体は下記表2に示される高分子を除いて実施例1〜3と同様に製造された。
【0046】
【表2】

【0047】
実施例4〜15:高分子の異なる含有量による固体分散体の製造
プランルカスト1gと下記表3の高分子を混合した後、固体分散体は実施例1〜3と同様に製造された。
【0048】
【表3】

【0049】
実験例1:多種の高分子で製造された固体分散体に対する溶解度の測定
実施例1〜3と比較例1〜6で製造された固体分散体各々50mgは、30分間超音波を使用することにより水30mlに溶解され、遠心分離機で分離され、0.45μmフィルターを使用して濾過され、その後、溶液に含まれるプランルカストの量が測定された。その結果は下記表4に示される。
【0050】
【表4】

【0051】
実験例2:多種の高分子で製造された固体分散体に対する溶解度の測定
実施例4〜15で製造された溶液に含まれるプランルカストの量は、実験例1と同様に測定された。その結果を下記表5に示される。
【0052】
【表5】

【0053】
上記表5で示されるように、プランルカストの溶解度は本発明による範囲内で優れていた。
【0054】
実験例3:噴霧乾燥方式と本発明により製造された固体分散体との溶解度の比較
固体分散体は、大韓民国特許番号10−0381834号(噴霧乾燥製品)で開示されたように噴霧乾燥方式により製造された。4:1の比率の塩化メチレンとメタノールからなる混合溶媒10Lにプランルカスト100gとヒドロキシプロピルセルロース150gを添加した。混合物は40℃で攪拌することにより溶解された。噴霧乾燥は70ml/minの速度で遂行された。吸気の温度は100℃であり、排気の温度を45℃であり、噴射空気圧力は5気圧であった。
【0055】
【表6】

【0056】
表6に示すように、実施例1で製造された固体分散体は、プランルカスト原末および噴霧乾燥製品の溶解度に比べて著しい溶解度の増加を示した。すなわち、それは、プランルカスト原末の溶解度と比較して250倍以上の増加、また噴霧乾燥製品の溶解度と比較して10倍以上を示した。
【0057】
実験例4:噴霧乾燥製品およびオノン(粉末と本発明の固体分散体との比較
本発明の固体分散体は、大韓民国特許番号10−0381834号に開示された噴霧乾燥方式により製造された固体分散体(以下、噴霧乾燥製品という)およびオノン(粉末、市販されていると比較された。
【0058】
(1)ラットにおける生体利用効率の比較
吸収実験はラット(群あたり4匹のラット)を使用して実施され、プランルカスト原末と噴霧乾燥製品とに対する熱溶融固体分散体の生体利用効率を調査した。
【0059】
表7に示すように、各々の粉末は0.5%カルボキシメチルセルロースおよびTween80を加えることにより水に懸濁された。その後、プランルカストは20mg/kgの濃度で実験用のラットに経口投与させた。上記投与後15分、30分、60分、2時間、4時間、6時間、8時間で、各々血液がラットから採取された。血清は遠心分離後採取され、血中のプランルカストの量が、HPLC−MASSを使用することにより検査された。
【0060】
表8に示すように、実施例1で製造された固体分散体は、同一容量を投与した際、プラオノン(登録商標)粉末および噴霧乾燥製品の生体利用効率に比べて著しい生体利用効率の増加を示した。すなわち、それは、オノン(登録商標)粉末の生体利用効率と比較して2.9倍の増加、また噴霧乾燥製品の生体利用効率と比較して1.7倍の増加を示した。すなわち、実施例で製造された固体分散体は、オリジナルの製造業者の投与量のたった3分の1の投与であるのに同等な薬の効果を示すことができ、製品原価を大幅に削減することが期待される。
【0061】
【表7】

【0062】
【表8】

【0063】
(2)剤形化可能なタイプの比較
表9に示すように、本発明の固体分散体は、比較的高いバルク密度を有し、従って、オノン(登録商標)粉末を使用することにより製造された製品と同一な剤形タイプ(第3号カプセル)に調整され得た。しかしながら、従来技術を使用することにより調整された噴霧乾燥製品は、大きさが約6倍である充填粉末の大きい容積を有し、従って、それは同じ剤形タイプ(第3号カプセル)に調製され得ない。これは噴霧乾燥製品がうまく崩壊されず、従って多量の崩壊剤が含まれるからである。
【0064】
【表9】

【0065】
(3)最終製品の溶解率の比較
製品の溶解率は、人工腸液(PH6.8)の存在下において、37℃、100rpmの速度で比較され、その結果は下記の表10と図2に示される。
【0066】
【表10】

【0067】
実験例5:XRD(X線回折)測定
プランルカスト原末と熱溶融処理方式によるプランルカスト固体分散体に対してX線回折パターンが測定された(M18XHF22、Mac Science、日本)。
【0068】
図3および図4から、図4における結晶質のプランルカスト原末が、図3におけるプランルカストと高分子間に結晶質のピークのない非結晶質のプランルカスト固体分散体に変化することが明らかである。
【0069】
剤形例:カプセルの製剤
本発明の組成物は錠剤、散剤、カプセル剤およびシロップ剤などの一般的な剤形タイプで使用され得る。カプセルの場合、詳細には、市販のオノン(登録商標)として形成する同じ投与量であるそれらは、従来の方法を使用することにより以下の表11に示される組成物に基づく本発明の組成物を使用することにより製造され得る。
【0070】
【表11】

【産業上の利用可能性】
【0071】
上記のように、本発明は、改善された生体利用効率を備えるプランルカスト固体分散体組成物および(a)プランルカストと(b)ポリビニルピロリドンビニルアセテート共重合体、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールとからなる群から選択された少なくとも1つの水溶性高分子を含む組成物を使用し熱溶融処理により固体分散体の製造方法を提供し、その結果、従来の方法により製造されたそれらに比べて著しく改善された溶解率と生体利用効率を提供し、そのため、少ない薬の投与量でも同等な薬の効力を有する。さらに、本発明は、相対的な剤形化の容易さによって、製造方法を単純化することができる。さらに、本発明の個体分散体は、製造処理の間、有機溶媒を使用しないで調整され、従って、有機溶媒が最終製品に含有されないだけでなく、環境汚染の可能性に関する公衆の不安を排除することができる。
【0072】
ここで言及されている全ての書類は、それらの全体を参照することによりここに組み込まれる。
本発明は、前述の実施形態を参照して詳細に説明されるが、本発明の範囲を限定するものではない。多様な変化や変更が当業者により本発明の基本概念から逸脱することなくなされることは、前述から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1は熱溶融処理により製造された固体分散体、大韓民国特許番号10−0381834号に開示された噴霧乾燥方式により製造された固体分散体および市販のオノン(登録商標)粉末の溶解度を比較したグラフを示す。
【図2】図2は熱溶融処理により製造されたカプセル、大韓民国特許番号10−0381834号に開示された噴霧乾燥方式により製造された噴霧乾燥錠剤および市販のオノン(登録商標)カプセルの溶出速度を比較したグラフを示す。
【図3】図3は熱溶融固体分散体およびプランルカスト原末に対するX線回折の結果を示す。
【図4】図4は熱溶融固体分散体およびプランルカスト原末に対するX線回折の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プランルカストおよび水溶性高分子の熱溶解により調製された、
プランルカスト固体分散体。
【請求項2】
プランルカスト、およびガラス転移温度が100〜200℃である水溶性高分子を含む、
プランルカスト固体分散体組成物。
【請求項3】
前記高分子はポリビニルピロリドンビニルアセテート共重合体、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールとからなる群から選択される、
請求項2に記載のプランルカスト固体分散体組成物。
【請求項4】
プランルカストに対する高分子の重量比が0.1:1から10:1の範囲である、
請求項2または3記載のプランルカスト固体分散体組成物。
【請求項5】
プランルカスト、およびガラス転移温度が100〜200℃である高分子の熱溶解によるプランルカスト固体分散体の調製方法。
【請求項6】
前記方法は、
(a)プランルカスト、および熱溶解によるガラス転移温度が100〜200℃である水溶性高分子を混合する工程、および
(b)溶解された混合物を冷却および粉砕することにより固体分散体を得る工程
をさらに含む、
請求項5記載のプランルカスト固体分散体の調製方法。
【請求項7】
プランルカストに対する高分子の重量比が0.1:1〜10:1の範囲である、
請求項5または6記載のプランルカスト固体分散体の製造方法。
【請求項8】
溶解温度が100〜200℃の範囲である、
請求項5または6記載のプランルカスト固体分散体の調製方法。
【請求項9】
前記高分子はポリビニルピロリドンビニルアセテート共重合体、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールとからなる群から選択される、
請求項5または6記載のプランルカスト固体分散体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−519067(P2008−519067A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540251(P2007−540251)
【出願日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【国際出願番号】PCT/KR2005/003686
【国際公開番号】WO2006/049433
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(504160323)エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】