説明

向上した接着性を有するポリマー積層複合材料

【課題】ポリマー積層複合材料を含む電気機械変換器に関する。伸長性電気導電性材料として、適用するため、誘電エラストマーとしてポリウレタンを使用し、その両側に電極が付与される。その電極として、ポリスチレンスルホネート(PSS)およびポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)のポリマーブレンドは、電気導電性ポリマーとして用いられることが多いが、ポリウレタンとの接着性が乏しく、PSS:PEDOT層とポリウレタン層との層間接着性向上を目的とする。
【解決手段】特定のポリウレタンポリマーを含む第1層、および特定のポリマーチオフェンおよびポリスチレンスルホネートを含む第2層を含んでなるポリマー積層複合材料によって得られたフィルムは、伸長度に対する比電気抵抗が、低く、接着性が向上している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1層と、第1層と少なくとも部分的に接触する第2層とを含み、第1層はポリウレタンポリマーを含み、第2層はチオフェンポリマーおよびポリスチレンスルホネートを含むポリマー積層複合材料に関する。本発明は、上記の積層複合材料および該積層複合材料を含む電気機械変換器の製造方法にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
誘電エラストマー作動装置を製造するために、絶縁体である誘電エラストマーのフィルムは、従来法によりその両側に電極が付与される。例えば、誘電エラストマーは、ポリウレタンであってよい。この場合、電極を、エラストマーへ被覆物の形態で適用することが有利である。このことは、電気伝導性を失うことなく、電極材料の特定の特性、特に適切な弾性を必要とし、および該電極を層として適用できる可能性を必要とする。
【0003】
ポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)およびポリウレタンエラストマーに基づく伸張性電気導電性材料は、例えばN.B.LARSEN等による出版物Adv.Funct.Mater.2007年、第17巻、第3069〜3073頁に記載されている。しかしながら、そこでは、PEDOT:p−トシレートおよび脂肪族ポリウレタンエラストマーのポリマーブレンドが用いられる。そして、該組成物は、基材に適用され、該溶媒は蒸着される。特にコストの観点から、該方法の欠点は、ポリウレタンポリマーを母材として用いなければならないことである。さらに、溶媒、この場合テトラヒドロフランが必要であり、溶媒は、全ての基材表面に適合することができない。
【0004】
WO2008/064878A1に提案される方法は、ヒドロキシメチル置換EDOTまたはヒドロキシプロピレンジオキシチオフェンに基づくエレクトロクロミック材料の製造方法に関する。そこでは、基材への接着性が強化される。しかしながら、広範な下位への化学的性質が、適当な表面を所望の材料で被覆するために必要である。
【0005】
ポリスチレンスルホネート(PSS)およびPEDOTのポリマーブレンドは、電気導電性ポリマーとして用いられることが多い。しかしながら、その実際の使用への最も大きな障害の1つは、多くの基材への接着性が乏しいことである。誘電エラストマーとの接触について、このことは、エラストマーが歪んだ場合、特にPSS:PEDOT層のエラストマー層の層間剥離に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2008/064878号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】N.B.LARSEN、「Adv.Funct.Mater.」、2007年、第17巻、第3069〜3073頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この結果として、PSS:PEDOT層のポリウレタン基材への接着性を向上させる可能性が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1層と、第1層と少なくとも部分的に接触する第2層とを含むポリマー積層複合材料に関する。第1層は、ポリイソシアネートA)および/またはポリイソシアネートプレポリマーB)と、少なくとも2官能性イソシアネート基反応性化合物C)およびモノマー単官能性芳香族アルコールとの反応性生物であるポリウレタンポリマーを含む。第2層は、第3位および/または第4位で置換された、式(I):
【化1】

で示されるポリマーチオフェンおよびポリスチレンスルホネートを含む。
【0010】
本発明の上記および他の優位性および恩恵は、以下に記載の本発明の詳細な説明から明らかとなる。
【0011】
本発明は、制限のためではなく、例示のために図と併せて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、引張試験機のクランプ間の電極の抵抗から算出した電気比抵抗率ρのプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を、制限のためではなく、例示のために説明する。実施例を除いて、または他に示さない限り、量、百分率、OH価、官能価などを示す全ての数は、本明細書中において、いずれの場合も、用語「約」によって修飾されていると理解すべきである。本明細書中にダルトン(Da)で示される当量および分子量は、特記のない限り、それぞれ数平均当量および数平均分子量である。
【0014】
本発明は、第1層と、第1層と少なくとも部分的に接触する第2層とを含むポリマー積層複合材料を提供し、第1層は、ポリイソシアネートA)および/またはポリイソシアネートプレポリマーB)と、少なくとも2官能性イソシアネート基反応性化合物C)およびモノマー単官能性芳香族アルコールとの反応性生物であるポリウレタンポリマーを含み、第2層は、第3位および/または第4位で置換された、式(I):
【化2】

〔式中、R1およびR2は、互いに独立して、水素、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシであるか、またはR1およびR2は共に非置換または置換アルキレンジオキシ基を形成する〕
で示されるポリマーチオフェンおよびポリスチレンスルホネートを含む。
【0015】
モノマー単官能性芳香族アルコールをポリウレタン製造中にイソシアネート基と反応させ、従ってポリマー中へ共有結合させることが考えられる。このことは、第2層の向上した接着性を生じさせることを見出した。ある理論に限定されることなく、本発明者は、上記成分のπ−電子系間の引力相互作用がこのことに関与すると考えている。該方法はまた、用語「π−πスタッキング」としても知られている。より大きい伸張範囲内で操作することができる伸張性電極を設計することができる。
【0016】
適当なモノマー単官能性芳香族アルコールとしては、炭素環式芳香族化合物またはヘテロ環式芳香族化合物、例えばベンジルアルコール、および/またはモノヒドロキシ−またはモノヒドロキシアルキル−置換チオフェン、フランおよび/またはピロールが挙げられる。OH基は好ましくは、芳香族環に1個、2個、3個、4個またはそれ以上のメチレン基により2位または3位に結合する。これにより、芳香族環を所望のπ−πスタッキングのために整列させることがより容易になる。
【0017】
ポリスチレンスルホネートの適当な形態は、特にナトリウムポリスチレンスルホネートである。
【0018】
本発明では、用語「アルキル」とは、n−アルキル、例えばメチル、エチルまたはプロピル等、分枝アルキルおよび/またはシクロアルキルを含む基からの置換基を包含することを意味する。本発明では、用語「アリール」とは、単環式カルボアニール置換基または単環式ヘテロアニール置換基、例えばフェニル等、および/または多環式カルボアニール置換基または多環式ヘテロアニール置換基を含む基からの置換基を包含することを意味する。同じことが、用語「アルコキシ」および「アリールオキシ」に当てはまる。
【0019】
非置換アルキレンジオキシ基−O−[CH−O−の例としては、メチレンジオキシ(−O−[CH]−O−)、エチレンジオキシ(−O−[CH−O−)、プロピレンジオキシ(−O−[CH−O−)、およびブチレンジオキシ(−O−[CH−O−)が挙げられる。置換アルキレンジオキシ基には、[CH基でのさらなる置換基が存在する。例えば、エチレンジオキシ基の各炭素原子は、メチル基置換 (−O−[CH(CH−O−)を有し得る。アルキレンジオキシについてのさらなる置換基は、とりわけヒドロキシル基およびヒドロキシメチル基であってよい。
【0020】
例えば1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートおよび/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、異性体ビス(4,4’−イソシアナトシクロヘキシル)メタンまたはそれらの任意の異性体含量の混合物、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4−イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート(ノナントリイソシアネート)、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートおよび/または2,6−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび/または2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−ビス(2−イソシアナトプロプ−2−イル)ベンゼンおよび/または1,4−ビス(2−イソシアナトプロプ−2−イル)ベンゼン(TMXDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(XDI)、および1〜8個の炭素原子を有するアルキル基を含有するアルキル 2,6−ジイソシアナトヘキサノエート(リジンジイソシアネート)およびこれらの混合物がポリイソシアネートおよび成分A)として適当である。さらに、ウレトジオン、イソシアヌレート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンまたはオキサジアジントリオン構造を含有し、かつ上記のジイソシアネートに基づく化合物は、適当な成分A)の構造単位である。
【0021】
本発明のある実施態様では、成分A)は、もっぱら脂肪族的または脂環式的に結合したイソシアネート基を有し、2〜4の平均NCO官能価を有するポリイソシアネートまたはポリイソシアネート混合物であり得る。これらは好ましくは、ウレトジオン、イソシアヌレート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンまたはオキサジアジントリオン構造ならびにこれらの混合物、および2〜4、好ましくは2〜2.6、特に好ましくは2〜2.4の混合物の平均NCO官能価を有する、前記した種類のポリイソシアネートまたはポリイソシアネート混合物である。
【0022】
ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートまたは異性体ビス(4,4’−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、および前記ジイソシアネートの混合物に基づくポリイソシアネートは、成分A)として特に好ましい。
【0023】
ポリイソシアネートプレポリマーは、成分B)として用いることができ、1以上のジイソシアネートと1以上のヒドロキシ官能性ポリオール、特にポリマーポリオールとを、触媒ならびに補助物質および添加剤の添加により反応させることにより得られる。さらに、鎖延長のための成分、例えば第1級および/または第2級アミノ基(NHおよび/またはNH官能性成分)を有する成分等を、ポリイソシアネートプレポリマーの形成のためにさらに用い得る。
【0024】
成分B)として、ポリイソシアネートプレポリマーは好ましくは、ポリマーポリオールおよび脂肪族ジイソシアネートの反応から得られる。ポリオールとしてのポリプロピレングリコールおよび脂肪族ジイソシアネートとしてのヘキサメチレンジイソシアネートに基づくポリイソシアネートは、本発明において成分B)として好ましい。
【0025】
ポリイソシアネートプレポリマーB)を形成する反応のためのヒドロキシ官能性ポリマーポリオールはまた、例えばポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリエステルポリオール、ポリウレタンポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリカーボネートポリオールおよび/またはポリエステルポリカーボネートポリオールであり得る。
【0026】
これらは、単独でまたは互いに任意の混合物の状態で用いてポリイソシアネートプレポリマーを製造し得る。適当なポリエステルポリオールは、ジオールおよび任意にトリオールおよびテトラオール、およびジカルボン酸および任意にトリカルボン酸およびテトラカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸またはラクトンの重縮合物である。遊離ポリカルボン酸の代わりに、対応するポリカルボン酸無水物、または対応する低級アルコールのポリカルボン酸エステルも、ポリエステルの製造に用い得る。
【0027】
適当なジオールの例としては、エチレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール等、および1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ブタンジオール(1,3)、ブタンジオール(1,4)、ヘキサンジオール(1,6)および異性体、ネオペンチルグリコールまたはヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルまたはこれらの混合物が挙げられ、ヘキサンジオール(1,6)および異性体、ブタンジオール(1,4)、ネオペンチルグリコールおよびヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルが好ましい。さらに、ポリオール、例えばトリメチロールプロパン、グリセロール、エリトリトール、ペンタエリトリトール、トリメチロールベンゼンまたはトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートまたはこれらの混合物のようなポリオールを用いることもできる。
【0028】
ジカルボン酸として、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グルタル酸、テトラクロロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マロン酸、スベリン酸、2−メチルコバク酸、3,3−ジエチルグルタル酸および/または2,2−ジメチルコハク酸を本発明においてジカルボン酸として使用し得る。対応する無水物を、酸源として用いることもできる。
【0029】
エステル化されるポリオールの平均官能価が≧2である場合、モノカルボン酸、例えば安息香酸およびヘキサンカルボン酸をさらに用いることもできる。
【0030】
好ましい酸は、好ましい酸としては、前記の種類の脂肪族酸または芳香族酸が挙げられる。アジピン酸、イソフタル酸およびフタル酸は、特に好ましい。
【0031】
反応物として末端ヒドロキシ基を有するポリエステルポリオールの製造にさらに用い得るヒドロキシカルボン酸としては、例えばヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシデカン酸またはヒドロキシステアリン酸またはこれらの混合物が挙げられる。適当なラクトンは、カプロラクトン、ブチロラクトンおよび同族体またはこれらの混合物である。カプロラクトンが本発明において好ましい。
【0032】
同様に、ヒドロキシ基を有するポリカーボネート、例えばポリカーボネートポリオール、好ましくはポリカーボネートジオールを、ポリイソシアネートプレポリマーB)を製造するのに用い得る。これらは、例えば400〜8000g/mol、好ましくは600〜3000g/molの数平均分子量Mnを有する。これらは、カルボン酸誘導体、例えばジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはホスゲンと、ポリオール、好ましくはジオールとの反応によって得られる。
【0033】
この目的に適したジオールの例としては、エチレングリコール、1,2−および1,3−プロパンジオール、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ビスフェノールA、または前記の種類のラクトン変性ジオールまたはこれらの混合物が挙げられる。
【0034】
好適には、ジオール成分は、40〜100重量%のヘキサンジオール、好ましくは1,6−ヘキサンジオールおよび/またはヘキサンジオール誘導体を含有する。そのようなヘキサンジオール誘導体は、ヘキサンジオールに基づき、末端OH基に加えてエステル基またはエーテル基を含有してよい。そのような誘導体は、ヘキサンジオールと過剰カプロラクトンとの反応によって、或いはジへキシレングリコールまたはトリへキシレングリコールを形成するヘキサンジオール同士のエーテル化によって得られる。本発明では、これらと他の成分との量は、既知の方法により、合計が100重量%を超えないように、特に100重量%となるように選択する。
【0035】
ヒドロキシル基含有ポリカーボネート、特にポリカーボネートポリオールは、好ましくは直鎖構造を有する。
【0036】
ポリエーテルポリオールは、プレポリマーB)を製造するのに用い得る。例えば、ポリテトラメチレングリコールポリエーテルそれ自体は、カチオン開環によるテトラヒドロフランの重合により得られる。同様に適当なポリエーテルポリオールは、スチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよび/またはエピクロロヒドリンの2官能性または多官能性スターター分子への付加生成物であり得る。例えば水、ブチルジグリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、エチレンジアミン、トリエタノールアミン または1,4−ブタンジオールは適当なスターター分子であり得る。
【0037】
ポリイソシアネートプレポリマーB) を製造するのに好ましい成分としては、プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールポリエーテルおよびポリカーボネートポリオールまたはこれらの混合物が挙げられ、プロピレングリコールはとりわけ好ましい。
【0038】
好ましくは400〜8000g/mol、より好ましくは400〜6000g/mol、特に好ましくは600〜3000g/molの数平均分子量を有するポリマーポリオールは、本発明に用い得る。これらは、好ましくは1.5〜6、より好ましくは1.8〜3、特に好ましくは1.9〜2.1のOH官能価を有する。
【0039】
上記のポリマーポリオールに加えて、短鎖ポリオールもまた、ポリイソシアネートプレポリマーB)の製造に有用であり得る。例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキノンジヒドロキシエチルエーテル、ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)、水素化ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセロールまたはペンタエリスリトールまたはこれらの混合物を用い得る。
【0040】
好ましい分子量範囲を有するエステルジオール、例えばα−ヒドロキシブチル−ε−ヒドロキシヘキサン酸エステル、ω−ヒドロキシヘキシル−γ−ヒドロキシ酪酸エステル、アジピン酸−(β−ヒドロキシエチル)エステルまたはテレフタル酸ビス−(β−ヒドロキシエチル)エステルも適当であり得る。
【0041】
単官能性イソシアネート反応性ヒドロキシル基含有化合物も、ポリイソシアネートプレポリマーB)を製造するのに用い得る。そのような単官能性化合物の例としては、エタノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、2−エチルヘキサノール、1−オクタノール、1−ドデカノール、1−ヘキサデカノールまたはこれらの混合物が挙げられる。
【0042】
ポリイソシアネートプレポリマーB)を製造するために、好ましくは、ジイソシアネートを、ポリオールと、2:1〜20:1のイソシアネート基とヒドロキシル基の比(NCO/OH比)、例えば8:1で反応させ得る。ウレタンおよび/またはアトファネート構造は、この方法で形成させることができる。次いで、未反応ポリイソシアネートの一部を分離させ得る。次いで、未反応ポリイソシアネートの一部は、分離し得る。例えば、好ましくは≦1重量%、より好ましくは≦0.5重量%、さらに好ましくは≦0.1重量%の残留モノマー含量を有する低残留モノマー生成物が得られる膜蒸留法をこのために用い得る。反応温度は、好ましくは20℃〜120℃、より好ましくは60℃〜100℃であり得る。安定剤、例えば塩化ベンゾイル、塩化イソフタロイル、ジブチルホスフェート、3−クロロプロピオン酸またはメチルトシレート等を必要に応じて、製造中に添加し得る。
【0043】
さらに、NH−および/またはNH−官能性成分を、ポリイソシアネートプレポリマーB)の製造中に鎖延長のために含ませ得る。
【0044】
鎖延長に適した成分としては、 有機ジアミンまたはポリアミンが挙げられる。例えばエチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、イソホロンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンおよび2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの異性体混合物、2−メチルペンタメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタンまたはジメチルエチレンジアミンまたはこれらの混合物を用い得る。
【0045】
更に、第1級アミノ基の他に第2級アミノ基も含有するか、或いはアミノ基(第1級または第2級)の他にOH基も含有する化合物をポリイソシアネートプレポリマーB)を製造するために用い得る。その例としては、第1級/第2級アミン、例えばジエタノールアミン、3−アミノ−1−メチルアミノプロパン、3−アミノ−1−エチルアミノプロパン、3−アミノ−1−シクロヘキシルアミノプロパン、3−アミノ−1−メチルアミノブタン、アルカノールアミン、例えばN−アミノエチルエタノールアミン、エタノールアミン、3−アミノプロパノール、ネオペンタノールアミンが挙げられる。イソシアネート反応性基を有するアミン、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、イソノニルオキシプロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン、ジエチル(メチル)アミノプロピルアミン、モルホリン、ピペリジン、またはそれらの適当な置換誘導体、第1級アミンおよびモノカルボン酸のアミドアミン、第1級アミンのモノケチム、第1級/第3級アミン、例えばN,N−ジメチルアミノプロピルアミンを連鎖停止に用い得る。
【0046】
成分B)として用いるポリイソシアネートプレポリマーまたはその混合物は、好ましくは1.8〜5、より好ましくは2〜3.5、さらに好ましくは2〜2.5の平均NCO官能価を有する。
【0047】
成分C)は、少なくとも2つのイソシアネート反応性官能基を有する。例えば成分C)は、少なくとも2つのイソシアネート反応性ヒドロキシル基を有するポリアミンまたはポリオールであり得る。
【0048】
ヒドロキシル官能性ポリオール、好ましくはヒドロキシル官能性ポリマーポリオール、例えばポリエーテルポリオールを、成分C)として用い得る。カチオン開環によるテトラヒドロフランの重合により得られるようなポリテトラメチレングリコールポリエーテルは、適当であり得る。同様に適当なポリエーテルポリオールは、スチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよび/またはエピクロロヒドリンの2官能性または多官能性スターター分子への付加生成物であり得る。例えば水、ブチルジグリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、プロピレングリコール、ソルビトール、エチレンジアミン、トリエタノールアミンまたは1,4−ブタンジオールまたはこれらの混合物は適当なスターター分子であり得る。
【0049】
成分C)が、1分子あたり2〜4個のヒドロキシル基を有するポリマー、より好ましくは1分子あたり2〜3個のヒドロキシル基を有するポリプロピレングリコールであることが好ましい。
【0050】
本発明によれば、C)からのポリマーポリオールは、特に狭い分子量分布、言い換えれば1.0〜1.5の多分散性(PD=Mw/Mn)および/または1.9を超えるOH官能価を有する。好ましいポリエーテルポリオールは、好ましくは1.0〜1.5の多分散性、および好ましくは1.9を超えるOH官能価、より好ましくは1.95以上のOH官能価を有する。
【0051】
このようなポリエーテルポリオールは、特に複金属シアン化物触媒(DMC触媒)を用いる、適当なスターター分子のアルコキシル化によって、当業者に既知の方法により調製され得る。これは例えば、米国特許第5158922号および欧州特許出願公開第0654302A1号に記載されている。
【0052】
ポリウレタンのための反応混合物は、成分A)、B)およびC)を混合することにより得られる。イソシアネート反応性ヒドロキシル基と遊離イソシアネート基との比は、好ましくは1:1.5〜1.5:1、より好ましくは1:1.02〜1:0.95である。成分A)、B)またはC)の少なくとも1つは、好ましくは≧2.0、より好ましくは≧2.5、さらに好ましくは≧3.0の官能価を有し、分枝または架橋をポリマー要素中に導入する。用語「官能価」とは、成分A)およびB)においては、1分子あたりのNCO基の平均数であり、成分C)においては、1分子あたりのOH基の平均数である。分枝または架橋は、より良好な機械特性およびより良好な特性、特により良好な伸長特性をもたらす。
【0053】
ポリウレタンは、有利には、良好な機械強度および高弾性を有し得る。特に、ポリウレタンは、好ましくは≧0.2MPa、より好ましくは0.4MPa〜50MPaの最大応力、および好ましくは≧250%、より好ましくは≧350%の最大伸長を有する。50%〜200%の作業伸長範囲では、ポリウレタンは、0.1MPa〜1MPa、より好ましくは0.1MPaから0.8MPa、さらに好ましくは0.1MPa〜0.3MPaの応力(DIN53504に従って決定)をさらに有し得る。さらに、ポリウレタンは、好ましくは0.1MPa〜10MPa、さらに好ましくは0.2MPa〜5MPaの100%伸び(DIN EN 150 672 1−1に従って決定)での弾性率を有し得る。
【0054】
さらに、ポリウレタンは、有利には、良好な電気特性を有し得、これは、破壊強度についてはASTM D 149に従って、誘電率測定についてはASTM D 150に従って決定した。
【0055】
成分A)、B)およびC)の他に、当業者に既知の反応混合物は、補助物質および添加剤をさらに含み得る。このような補助物質の例としては、架橋剤、増粘剤、共溶媒、揺変剤、安定剤、抗酸化剤、光安定剤、乳化剤、界面活性剤、接着剤、可塑剤、疎水性化剤、顔料、充填剤および流れ調整剤が挙げられる。
【0056】
例えば、充填剤は、ポリマー要素の誘電率を調節することができる。反応混合物としては、好ましくは、誘電率を上昇させる充填剤、例えば高誘電率を有する充填剤等が挙げられる。その例としては、セラミック充填剤、特にチタン酸バリウム、二酸化チタンおよび圧電セラミック、例えば水晶またはチタン酸ジルコン酸鉛等、ならびに有機充填剤、特に高電気極性容量を有する有機充填剤、例えばフタロシアニン等が挙げられる。
【0057】
また、 高誘電率は、浸透限界未満の電気導電性充填剤の導入により得られる。その例としては、カーボンブラック、グラファイト、単一壁カーボンナノチューブまたは多壁カーボンナノチューブ、電気導電性ポリマー、例えばポリチオフェン、ポリアニリンまたはポリピロール、またはこれらの混合物が挙げられる。表面安定化を示し、浸透限界未満の誘電率を低濃度で増加させ、ポリマーの伝導性を増加させないカーボンブラックの種類は、本発明では特に重要である。
【0058】
用語「1つ(a)」または「1つ(an)」は、本発明では、特に成分A)、B)およびC)では、数表示としてではなく、特記のない限り、不定冠詞として用いられる。
【0059】
本発明のポリマー積層複合材料の実施態様では、モノマー単官能性芳香族アルコールは、第3位および/または第4位で置換されている式(II):
【化3】

〔式中、R3およびR4は、互いに独立して、水素、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシであるか、またはR3およびR4は共に非置換または置換アルキレンジオキシ基を形成する〕
で示される2−ヒドロキシメチルエチルチオフェンである。
【0060】
非置換アルキレンジオキシ基−O−[CH−O−の例としては、メチレンジオキシ(−O−[CH]−O−)、エチレンジオキシ(−O−[CH−O−)、プロピレンジオキシ(−O−[CH−O−)、およびブチレンジオキシ(−O−[CH−O−)が挙げられる。置換アルキレンジオキシ基には、[CH基でさらなる置換基が存在する。例えば、エチレンジオキシ基の各炭素原子は、メチル基置換 (−O−[CH(CH−O−)を有し得る。アルキレンジオキシについてのさらなる置換基は、とりわけヒドロキシル基およびヒドロキシメチル基であってよい。
【0061】
本発明のポリマー積層複合材料のさらなる実施態様では、RおよびRは共にエチレンジオキシ基を形成する。この場合、モノマー単官能性芳香族アルコールは、式(IIa):
【化4】

で示される置換チオフェン(II)、すなわち2−ヒドロキシメチル−3,4−エチレンジオキシチオフェンである。
【0062】
本発明のポリマー積層複合材料の他の実施態様では、第2層は、ポリスチレンスルホネートおよびポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を含む。該混合物は、名称「PSS:PEDOT」で市販されている。
【0063】
本発明のポリマー積層複合材料のさらなる実施態様では、2官能性イソシアネート基反応性化合物C)とモノマー単官能性アルコールとの間のモル比は、好ましくは≧50:100〜≦100:50の範囲、より好ましくは≧70:100〜100:70の範囲である。好ましくは、僅かにモル過剰のモノマーアルコールが存在する。該比は、≧100:80〜≦100:90の範囲であり得る。
【0064】
本発明の積層複合材料のさらなる実施態様では、第1層は、反対側で第2層に相当する層といずれの場合にも接触する。こうして、両側上で電極と接触するエラストマー層が得られる。
【0065】
本発明は、以下の工程を含む、本発明のポリマー積層複合材料の製造方法にさらに関する:
ポリイソシアネートA)および/またはポリイソシアネートプレポリマーB)と、少なくとも2官能性イソシアネート基反応性化合物C)およびモノマー単官能性芳香族アルコールとの反応から得られるポリウレタンポリマーを供給する工程、および
該ポリウレタンポリマーを、第3位および/または第4位で置換されている式(III):
【化5】

〔式中、R5およびR6は、互いに独立して、水素、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシであるか、またはR5およびR6は共に非置換または置換アルキレンジオキシ基を形成する〕
で示されるポリマーチオフェンおよびポリスチレンスルホネートを含む混合物と少なくとも部分的に接触させる工程。
【0066】
本発明の方法のある実施態様では、モノマー単官能性芳香族アルコールは、第3位および/または第4位で置換された、式(IV):
【化6】

〔式中、R7およびR8は、互いに独立して、水素、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシであるか、またはR7およびR8は共に非置換または置換アルキレンジオキシ基を形成する〕
で示される2−ヒドロキシメチルエチルチオフェンである。
【0067】
本発明に用い得るモノマー単官能性芳香族アルコールのさらなる例としては、3−ヒドロキシメチルチオフェンおよび2位および4位において置換されているその誘導体、2−ヒドロキシメチルフランおよび3位および4位において置換されているその誘導体、3−ヒドロキシメチルフランおよび2位および4位において置換されているその誘導体、2−ヒドロキシメチルピロールおよび3位および4位において置換されているその誘導体、3−ヒドロキシメチルピロールおよび2位および4位において置換されているその誘導体、4−メトキシベンジルアルコール;2−メトキシベンジルアルコール;3−メトキシベンジルアルコール;フルフリルアルコール;第3級アミン官能化エチレン、ジオキシチオフェン誘導体が挙げられる。
【0068】
本発明の方法では、R7およびR8は好ましくは、共にエチレンジオキシ基を形成し、2−ヒドロキシメチル−3,4−エチレンジオキシチオフェンを、置換チオフェン(IV)として用いる。同様に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)は、ポリマーチオフェン(III)について好ましい。ポリスチレンスルホネートとこれらの混合物は、名称「PSS:PEDOT」で市販されている。
【0069】
本発明の方法のさらなる実施態様では、ポリスチレンスルホネートおよび3位および/または4位で置換されている式(III)で示されるポリマーチオフェンを含有する混合物は、水性分散体の形態で存在する。
【0070】
本発明はまた、本発明の積層複合材料から作られた伸長性電極を提供する。このような伸長性電共は、例えば電気機械変換器に用途を見出し得る。好ましくは、該伸長性電極は、ポリウレタンポリマーを含有する第1層が、両側上で上記の第2層に相当する層と少なくとも部分的に接触するように構成され得、これらの層は、互いに電気的に接続していない。
【0071】
実施態様を含むポリマー積層複合材料の詳細は、既に上に記した。不要な繰り返しを避けるために、その使用についてここに引用する。
【0072】
本発明は、本発明のポリマー積層複合材料を含む電気機械変換器にさらに関する。好ましくは、ポリマー積層複合材料は、電気機械変換器において、ポリウレタンポリマーを含有する第1層が、両側上で上記の第2層に相当する層と少なくとも部分的に接触するように構成され得、これらは、互いに電気的に接続していない。この場合、本発明の積層複合材料は、両側上で接触して誘電エラストマーとして働き得る。
【0073】
機械的荷重が、このような変換器に適用される場合、変換器は、その厚みおよびその表面に沿って変形し、例えば強い電気信号を電極で検出し得る。機械エネルギーは、このようにして電気エネルギーに変換し得る。このようにして、本発明の変換器は、発生器としておよびセンサーとして用い得る。
【0074】
逆の作用の使用、すなわち電気エネルギーの機械エネルギーの変換により、本発明の変換器は同様に、互いに作動装置として働き得る。
【0075】
上記の電気機械変換器の可能性のある使用としては、電気機械分野および電気音響分野における、特に機械振動からのエネルギー回復(エネルギー収穫として既知)の分野、音響学、超音波、医療診断、超音波顕微鏡法、機械センサーにおける分野、特に圧力、力センサーおよび/または歪みセンサー、ロボット工学および/またはコミュニケーションテクノロジーにおける多くの種々の用途が挙げられる。典型例としては、センサー、電子音響変換器、顕微鏡、拡声器、振動変換器、光偏向器、膜、ガラス繊維光学用モジュレータ、焦電気性検出器、コンデンサおよび制御システムおよび「知的」床、並びに波エネルギー、特に潮汐エネルギーを電気エネルギーに変換するための系が挙げられる。
【0076】
本発明における誘電性エラストマーは、電場の適用によりその形状を変化させることができるエラストマーである。エラストマーフィルムの場合には、その厚みが現象し、同時に、フィルムの長さを平面方向に増加し得る。
【0077】
誘電エラストマー層の厚みは、好ましくは≧1μm〜≦500μm、より好ましくは≧10μm〜≦100μmである。1片または複数片から構成することができる。例えば多片層は、個々の層の積層により互いに重ねて得られる。
【0078】
本発明により提供されるポリウレタンポリマーに加えて、誘電エラストマーはまた、さらなる成分を含有し得る。このような成分としては、例えば架橋剤、増粘剤、共溶媒、揺変剤、安定剤、抗酸化剤、光安定剤、乳化剤、界面活性剤、接着剤、可塑剤、疎水性化剤、顔料、充填剤および流れ調整剤が挙げられる。
【0079】
例えば、エラストマーにおける充填剤は、ポリマーの誘電率を調節することができる。その例としては、セラミック充填剤、特にチタン酸バリウム、二酸化チタンおよび圧電セラミック、例えば水晶またはチタン酸ジルコン酸鉛等、ならびに有機充填剤、特に高電気極性容量を有する有機充填剤、例えばフタロシアニン等が挙げられる。
【0080】
高誘電率は、浸透限界未満の電気導電性充填剤の導入により得られる。その例としては、カーボンブラック、グラファイト、単一壁カーボンナノチューブまたは多壁カーボンナノチューブ、電気導電性ポリマー、例えばポリチオフェン、ポリアニリンまたはポリピロール、またはこれらの混合物が挙げられる。表面安定化を示し、浸透限界未満の誘電率を低濃度で増加させ、ポリマーの伝導性を増加させないカーボンブラックの種類は、本発明では特に重要である。
【0081】
実施態様を含むポリマー積層複合材料の詳細は、既に上に記した。不要な繰り返しを避けるために、電気機械変換器におけるその使用についてここに引用する。
【実施例】
【0082】
本発明を、より詳細に、図1と共に以下の実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0083】
従来法による乾燥剤により乾燥し、再蒸留した溶媒は、Merck、Fluka、Lancaster and Aldrichから得た。3,4−エチレンジオキシチオフェンは、Clevios GmbHから得た。オキシ塩化リン(99%)は、ACROS Organicsから得た。
【0084】
2−ヒドロキシメチル−3,4−エチレンジオキシチオフェンの合成は、相当するアルデヒド(2−ホルミル−3,4−エチレンジオキシチオフェン)を水酸化ホウ素ナトリウムにより還元することにより行った。
【0085】
実施例1:2−ホルミル−3,4−エチレンジオキシチオフェンの合成
10.00g(70.35mmol)の3,4−エチレンジオキシチオフェンおよび0.68g(77.76mmol、1.1当量)のN,N−ジメチルホルムアミドを、15mLの乾燥ジクロロメタン中に、100mL3口フラスコ中で、保護ガス下で溶解させた。11.92g(77.76mmol、1.1当量)の塩化ホスホリルを0℃で滴下して添加し、該混合物を10分間さらに撹拌した。次いで、反応混合物を2時間還流した。反応の過程にわたり、反応混合物は、赤色にゆっくり変わった。反応の完了により、反応混合物を、400mLの氷冷水中に注ぎ、1時間撹拌した。水性相および有機相を、分離漏斗により分離した。数時間後、無色乃至桃色の針状結晶が水性相の外に析出した。ジクロロメタンからの再結晶化により、無色固体として、10.93g(63.48mmol、90%)の2−ホルミル−3,4−エチレンジオキシチオフェンが得られた。
【0086】
【化7】

融点:146.0℃
【0087】
IR (cm〜1):ν=3108(w)(ν=C−H);2842(w)(νC−H,脂肪族);1646(s)(νC=O, CHO);1487(m)1438(s)(νC=C チオフェン);1383(s)、1364(s)(δC−H);1259(m)、1237(m)、1174(m)、1135(m)(δC−H チオフェン);1063(m)、1010(m)(νC−O−C);961(m)、908(m)、847(w)、762(s)(δC−H チオフェン
【0088】
H−NMR(250.13 MHz、d−CHCl):δ[ppm]=9.88(s,1H,H−8)、6.78(s,1H,H−5)、4.374.24(m,4H,H−6,H−7)
【0089】
13C−NMR(62.90 MHz,d−CHCl):δ[ppm]=180.2(C−8)、148.6(C−4)、141.9(C−3)、118.6(C−2)、110.8(C−5)、65.4、64.5(C−6,C−7)
S(170.19gmol−1) 元素分析:算出:C 49.40、H 3.55、S 18.84;検出:C 49.43、H 3.59、S 19.20
【0090】
実施例2:2−ヒドロキシメチル−3,4−エチレンジオキシチオフェンの合成
11.60g(68.18mmol)の3,4−エチレンジオキシチオフェンを、200mLの乾燥ジクロロメタン中に、1000mL3口フラスコ中で、保護ガス下で溶解させ、0℃に冷却した。7.74g(204.5mmol、3.0当量)のNaBH4を、200mLの乾燥メタノール中に溶解し、反応混合物へ滴下漏斗によりゆっくり滴下して添加した。該反応溶液を室温で終夜撹拌した。次いで、800mLのNaOH溶液で加水分解し、さらに1時間撹拌した。有機相を、蒸留水で洗浄し、乾燥するまで回転式蒸発器中で蒸発させた。数時間後、結晶化した桃色油を得た。ジクロロメタンからの再結晶化により、無色固体として、10.93g(63.48mmol、92%)の2−ヒドロキシメチル−3,4−エチレンジオキシチオフェンを、淡桃色固体として得た。
【0091】
【化8】

融点:68.6℃
【0092】
IR (cm〜1):ν=3368(m)、3296(m) (νO−H);3126(w)(νC−H 芳香族);2920(w)、2867(w)(νC−H, 脂肪族);1494(s) 1441(s)(νC=C チオフェン);1370(m)、1339(m)(δC−H 脂肪族);1243(m)、1212(m)、1160(m)、(δC−H チオフェン);1083(m)、1040(s)(νC−O−C);972(m)、930(m)、892(m)(δC−H チオフェン
【0093】
H−NMR (250.13 MHz、d−CHCl):δ[ppm]=6.28(s, 1H, H−5)、4.67(d, 2H, H−8)、4.244.18(m, 4H, H−6, H−7);1.74(t, 1H, H−9)
【0094】
13C−NMR (62.90MHz、d−CHCl):δ[ppm]=141.5(C−4)、138.9(C−3)、116.2(C−2)、98.5(C−5)、64.8、64.6(C−6, C−7)、55.97(C−8)
【0095】
S (172.19gmol−1) 元素分析:算出:C 48.82、H 4.68、S 18.62;検出:C 48.83、H 4.63、S 18.95
【0096】
実施例3
2.134gの2−ヒドロキシメチル−3,4−エチレンジオキシチオフェン(Mw:172.17g/mol)を、42.68gのDMC触媒作用により製造した4000の分子量、2の官能価および15%のエチレンオキシドの含有量を有するポリエーテルポリオール中に溶解させた。これは、チオフェンとポリオールとのモル比が100:86に対応する。次いで、0.256gの触媒ジブチル錫ジラウレート(DBTL)を撹拌しながら添加した。第2ポリウレタン成分、14gのHDIトリマー(DESMODUR N 3300, Bayer MaterialScience AG)を添加し、該混合物をSpeedMixerで撹拌した。成分を均質に混合した後、これをPET基材にナイフで塗布した。湿潤フィルム厚みは、500μmであった。次いで、被覆基材を20分間貯蔵し、100℃に予備加熱し、冷却して室温にした。市販のPSS:PEDOT懸濁液(AGFA ORGACON 6010)をナイフで500μmの湿潤フィルム厚みで適用し、炉中において80℃で10分間乾燥した。
【0097】
図1は、実施例3に従って得られた積層複合材料について(曲線1)、実施例からのチオフェンを有さないがPSS:PEDOTで被覆された実施例3の積層複合材料に類似するポリウレタンフィルムについて(曲線2)、および2−ヒドロキシメチル−3,4−エチレンジオキシチオフェンを用いずに製造し、PSS:PEDOTで被覆されていない実施例3の積層複合材料に類似するポリウレタンフィルムについて(曲線3)、引張試験機のクランプおよび30mmの長さ、10mmの幅および4.14μmの厚みを有する電極の表面間の伸びDに対する抵抗から算出した電気比抵抗率ρのプロットを示す(DIN 53504)。比抵抗は、PSS:PEDOT層を適用した場合、PSS:PEDOT層から算出した。
【0098】
処理されたフィルムは、曲線3において、フィルムの伸長度に拘わらず、極めて高い比電気抵抗を有することが認められる。曲線1および2の比較は、本発明の積層複合材料(曲線1)は、低い比抵抗を、2−ヒドロキシメチル−3,4−エチレンジオキシチオフェンをポリウレタンの製造において用いなかった積層複合材料(曲線2)より著しく大きい伸長まで保持した。これは、本発明の積層複合材料におけるPPSS:PEDOT層の向上した接着性と一致する。
【0099】
本発明の上記の実施例は、本発明を制限する目的ではなく、例示の目的で提供される。本明細書に記載された実施態様は、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、種々の方法で変形または修正され得ることは当業者には明らかである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって判定すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネートA)および/またはポリイソシアネートプレポリマーB)と、少なくとも2官能性のイソシアネート基反応性化合物C)およびモノマー単官能性芳香族アルコールとの反応性生物であるポリウレタンポリマーを含む第1層、および
第3位および/または第4位で置換された、式(I):
【化1】

〔式中、R1およびR2は、互いに独立して、水素、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシであるか、またはR1およびR2は共に、非置換または置換アルキレンジオキシ基を形成する〕
で示されるポリマーチオフェンおよびポリスチレンスルホネートを含む第2層を含んでなるポリマー積層複合材料。
【請求項2】
モノマー単官能性芳香族アルコールは、第3位および/または第4位で置換された、式(II):
【化2】

〔式中、R3およびR4は、互いに独立して、水素、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシであるか、またはR3およびR4は共に、非置換または置換アルキレンジオキシ基を形成する〕
で示される2−ヒドロキシメチルエチルチオフェンを含む、請求項1に記載のポリマー積層複合材料。
【請求項3】
R3およびR4は共に、エチレンジオキシ基を形成する、請求項2に記載のポリマー積層複合材料。
【請求項4】
第2層は、ポリスチレンスルホネートおよびポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を含む、請求項1に記載のポリマー積層複合材料。
【請求項5】
2官能性イソシアネート基反応性化合物C)およびモノマー単官能性アルコールの間のモル比は、約≧50:100〜約≦100:50の範囲である、請求項1に記載のポリマー積層複合材料。
【請求項6】
第1層は、各反対側で第2層に相当する1以上の層と接触する、請求項1に記載のポリマー積層複合材料。
【請求項7】
請求項1に記載のポリマー積層複合材料の製造方法であって、以下の工程:
ポリイソシアネートA)および/またはポリイソシアネートプレポリマーB)と、少なくとも2官能性のイソシアネート基反応性化合物C)およびモノマー単官能性芳香族アルコールとの反応生成物を含むポリウレタンポリマーを供給する工程、および
該ポリウレタンポリマーの少なくとも1部を、第3位および/または第4位で置換された、式(III):
【化3】

〔式中、R5およびR6は、互いに独立して、水素、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシであるか、またはR5およびR6は共に、非置換または置換アルキレンジオキシ基を形成する〕
で示されるポリマーチオフェンおよびポリスチレンスルホネートを含む混合物と接触させる工程
を含む方法。
【請求項8】
モノマー単官能性芳香族アルコールは、第3位および/または第4位で置換された、式(IV):
【化4】

〔式中、R7およびR8は、互いに独立して、水素、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシであるか、またはR7およびR8は共に、非置換または置換アルキレンジオキシ基を形成する〕
で示される2−ヒドロキシメチルエチルチオフェンを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ポリスチレンスルホネート、および第3位および/または第4位で置換された、式(III)で示されるポリマーチオフェンを含む混合物は、水性分散体の形態である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
2官能性イソシアネート基反応性化合物C)およびモノマー単官能性アルコールの間のモル比は、約≧50:100〜約≦100:50の範囲である、請求項8に記載のポリマー積層複合材料。
【請求項11】
請求項1に記載のポリマー積層複合材料を含む伸長性電極。
【請求項12】
請求項1に記載のポリマー積層複合材料を含む電気機械変換器。

【図1】
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【公開番号】特開2011−224980(P2011−224980A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−67589(P2011−67589)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】