説明

向上した洗浄配合物

【課題】好適な水準の粘度、発泡性、乳化能力、および洗浄効率を維持しつつ、向上した知覚特性を有する水性洗浄配合物を製造するための水可溶性ポリマーの混合物を提供する。
【解決手段】水可溶性ポリマー混合物は、高分子量ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、親水性のカチオン性セルロース及び親水性の低いカチオン化セルロースを含有する。このポリマー混合物は食器手洗い用配合物、洗濯洗剤及び硬表面洗浄配合物に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好適な水準の粘度、発泡性、乳化能力および洗浄効率を維持しつつ、向上した知覚(sensorial)特性を有する水性洗浄配合物を製造するための水可溶性ポリマーの混合物に関する。水性洗浄配合物は食器手洗い用配合物、並びに洗濯洗剤および硬表面洗浄配合物であることができる。
【背景技術】
【0002】
手作業による食器洗いは消費者によって定期的に行われる作業であり、典型的には数分もしくは数時間さえ必要とする。よって、消費者は食器および食器洗い用配合物と物理的に頻繁に、そして場合によっては長時間、そして1日に2回以上も接触する。
【0003】
食器洗い用配合物は典型的には、洗浄機能を果たすが多くの場合消費者の皮膚に対して過酷でありかつ研磨性である界面活性剤およびディグリーザーのような活性成分を含む。よって、消費者の食器洗い用配合物への定期的かつ繰り返しの曝露は、消費者の皮膚に対して刺激および障害を引き起こす場合があり、かつ多くの場合引き起こす。その結果、消費者は皮膚を刺激しない優れた知覚特性を有する食器洗浄用配合物を求める。
【0004】
しかし、同時に、消費者は食器洗い用配合物の他の重要な特性、例えば、界面活性剤およびディグリーザーによって典型的にもたらされる発泡性、好適な粘度、洗浄効率およびグリース除去を実現することができない製品を使用するつもりはない。食器洗い用配合物においてさらに維持されるべき他の特性には粘度および乳化能力が挙げられる。発泡および洗浄特性を維持もしくは増大させつつ、活性成分の量を低減させ、それにより資源を節約しかつコストを低減させることも明らかに有用である。
【0005】
向上した特性を有する食器手洗い用配合物を生じさせるために、界面活性剤についての変更を伴う様々なアプローチが開発されてきた。例えば、向上した発泡特性を達成するために配合物中の界面活性剤の量を単に増大させることが知られている。洗浄効率の向上をもたらすために配合物の非イオン性界面活性剤含量を増大させることも知られている。
【0006】
さらに、この産業界は、他の特性を維持もしくは向上させつつ、向上した知覚特性を有する食器手洗い用配合物を生じさせる方法を開発したが、これらも配合物中に使用される界面活性剤の量、種類もしくはその双方に付いての変更に基づいている。例えば、良好な発泡特性および/または低刺激性を提供するアルキルポリグリコシド(APG)で典型的なアニオン性界面活性剤が置き換えられうる。また、両性界面活性剤が配合物に添加されることができ、皮膚刺激性を低減させかつ泡安定性を増大させることができる。極端に穏やかな界面活性剤、例えば、アルキルポリサッカライド、スルホベタインおよび界面活性剤の相乗ブレンドは、有用な高濃度の活発なアニオン性界面活性剤と有利に置き換わることができる。しかし、全ての所望の特性(例えば、発泡性、粘度など)を維持するには、より多くの量のより穏やかな界面活性剤が使用されなければならない。
【0007】
例えば、イラン国、テヘランのファルゴル研究グループ(Fargol Research Group)のMalihi,Farrokh B.;Malihi,Golrokh B.によるLABS、アルコールエーテルスルファート、及びアルキルポリグリコシドを含む食器洗い用液体における性能最適化、World Surfactants Congress、第5回、イタリア国フィレンツェ、2000年5月29日〜6月2日(2000)1317〜1324;ベルギー国、ブリュッセルのPubl.Comite Europeen des Agents de Surface et leurs Intermediaires Organiquesにおいて報告されたリサーチは、食器手洗い用配合物のような軽量液体洗剤のためのアニオン性および非イオン性界面活性剤の最適な二元および三元混合物の研究を記載する。調査された界面活性剤には、アルキルベンゼンスルホナート(LABS)、アルコールエーテルスルファート(SLES−2E0)、アルコールエトキシラート(AE−7E0およびAE−9E0)、およびラウリルポリグリコシド(APG)が挙げられる。向上した発泡性および洗浄効率を有する界面活性剤混合物が報告された。
【0008】
界面活性剤を含む食器手洗い用配合物への特定の水可溶性ポリマーの添加は、特定の特性についての向上を提供することがあると知られている。例えば、高分子量ポリエチレングリコール(例えば、600,000〜4,000,000ダルトンの重量平均分子量)は水性界面活性剤配合物の発泡特性を向上させるために有用である。ヒドロキシプロピルメチルセルロースもこのような配合物において発泡特性を強化するのに有用である。ヒドロキシエチルセルロースは水性界面活性剤配合物の粘度を上昇させることが知られている。カチオン性セルロースはこのような配合物において沈着および発泡特性を向上させるのに有用であることが知られている。
【0009】
欧州特許出願公開第0124367号は、親水性置換基を有する多糖(これには、セルロースエステルもしくはエーテルが挙げられる)、キサンタンガム、およびカルボキシル置換基を有する合成ポリマーから選択される水可溶性ポリマー0.5〜5重量%と共に、界面活性剤としてジアルキルスルホスクシナート(LABS)を含む食器手洗い用配合物を記載する。これら配合物は向上した泡安定性および増大した粘度を有すると主張されている。
【0010】
国際公開(PCT)第2006/076065号は、皮膚および髪のような基材上に沈着することが意図される香料、日焼け防止剤、および保湿剤のような、利益をもたらす薬剤を含むパーソナルケア組成物を開示する。この特許公開公報に記載される組成物は低分子量界面活性剤、例えば、アニオン性、カチオン性、両性および非イオン性界面活性剤、並びに水可溶性ポリマー、例えば、多糖、ゼラチン、ポリ(アミノ酸)、ポリ酢酸などを含む。水可溶性ポリマーは好ましくは、多糖、例えば、これに限定されないが、セルロースエーテル(例えば、METHOCEL)を含む。従前の典型的な配合物に使用される界面活性剤の一部分をMETHOCELのような水可溶性ポリマーで置き換えることは利益をもたらす薬剤の沈着を向上させる。このことは、洗浄効率を向上するかもしくは少なくとも変化のないままにしようとされる、食器手洗い用配合物のようなシステムにおける水可溶性ポリマーの使用に反対することを推奨していると思われる、というのは、このことは汚れの沈着の回避であろうからである。
【0011】
特開平02−123193号は、ポリアクリルポリマー(合成)および天然ポリマー(完全に天然)の双方と共に、穏やかな界面活性剤、例えば、アルキルグリコシドを含む、低減された刺激性を有する食器洗い、シャンプーおよび体洗いに有用な穏やかな洗剤配合物を記載する。特に、この特許出願に従う好適なポリマーには、とりわけ、水可溶性キサンタンガム、グルコマンナン、ペクチン、コンドロイチン4−硫酸、コンドロイチン8−硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパラン硫酸、並びに部分架橋ポリアクリル酸および/または塩が挙げられる。配合物中により多量のアルキルグリコシド界面活性剤が使用される場合の配合物の知覚特性の向上が特開平02−123193号に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0124367号明細書
【特許文献2】国際公開第2006/076065号パンフレット
【特許文献3】特開平02−123193号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】イラン国、テヘランのファルゴル研究グループ(Fargol Research Group)のMalihi,Farrokh B.;Malihi,Golrokh B.によるLABS、アルコールエーテルスルファート、及びアルキルポリグリコシドを含む食器洗い用液体における性能最適化、World Surfactants Congress、第5回、イタリア国フィレンツェ、2000年5月29日〜6月2日(2000)1317〜1324;ベルギー国、ブリュッセルのPubl.Comite Europeen des Agents de Surface et leurs Intermediaires Organiques
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、食器手洗い用配合物に使用されるもののような水性界面活性剤配合物に少量で添加される場合に、配合物の知覚特性を向上させ、同時に粘度、発泡性および洗浄効率のような他の特性を維持もしくは向上しさえもする水可溶性ポリマーの相乗混合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、向上した知覚特性を有する洗浄配合物に使用するための水可溶性ポリマーの混合物を提供し、当該混合物は混合物の全重量を基準にして、(a)0.5〜50重量%の高分子量ポリエチレングリコール;(b)0.5〜50重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース;(c)0〜50重量%のヒドロキシエチルセルロース;(d)0〜50重量%の親水性カチオン性セルロース;並びに(e)0〜50重量%の、ポリマー(d)よりも親水性が低いカチオン性セルロースを含む。水可溶性ポリマー(a)は、例えば、600,000〜4,000,000ダルトンの重量平均分子量(MW)を有する。さらに、水可溶性ポリマー(b)は40,000〜250,000ダルトンのMWを有することができ、前記水可溶性ポリマー(c)、(d)および(e)のそれぞれは20,000〜200,000ダルトンのMWを有することができる。水可溶性ポリマーの混合物は、例えば、食器手洗い用洗浄配合物中に存在することができる。
ある実施形態においては、水可溶性ポリマーの混合物はWSP混合物の全重量を基準にして(a)12重量%の高分子量ポリエチレングリコール;(b)48重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース;並びに(c)40重量%のヒドロキシエチルセルロースを含む。
本発明は、上述の本発明に従って、1:6〜1:60の(WSP混合物):(界面活性剤含量低減)の比率で、配合物の全界面活性剤含量の一部分をWSP混合物で置き換えることを含む、1種以上の界面活性剤を含む洗浄配合物の知覚特性を向上させる方法も提供する。
本発明は洗浄配合物の全重量を基準にして(A)0.95〜15重量%の少なくとも1種の界面活性剤を含む活性成分;(B)0.05〜10重量%の本発明に従う水可溶性ポリマーの混合物;並びに(C)75〜99重量%の水を含む洗浄配合物をさらに提供する。例えば、洗浄配合物は(B)本発明に従う水可溶性ポリマーの混合物0.05〜5重量%を含むことができる。
本発明の洗浄配合物のある実施形態においては、少なくとも1種の界面活性剤はアルキルベンゼンスルホナート、アルコールエーテルスルファート、アルコールアルコキシラート、アルキルポリグリコシド、ベタイン、脂肪酸アミドおよびアルコースルファートからなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は実施例において製造された各配合物の洗浄効率の評価の結果を示す。
【図2】図2は実施例において製造された各配合物の知覚特性の評価の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は水性界面活性剤配合物の知覚特性を相乗的に向上させる一方で、粘度、発泡性および洗浄効率のような配合物の他の特性を維持もしくは向上さえもする水可溶性ポリマーの混合物(WSP混合物)を提供する。
本発明のWSP混合物およびその混合物が添加される配合物は、以降、食器手洗い用配合物について好適な配合物に焦点を当てて説明されるものとするが、本発明は食器手洗い用配合物に限定されない。実際に、WSP混合物は、知覚、発泡性および他の特性を向上させるために、他の界面活性剤および洗剤配合物、例えば、洗濯洗剤および硬表面洗浄配合物中に成功裏に使用されることができる。
【0018】
様々な水可溶性ポリマーが、水性界面活性剤配合物の特有の特性を向上させるために個々に知られかつ使用されている一方で、このような配合物中の界面活性剤の一部分を置き換えるようにこのような水可溶性ポリマーの特定の組み合わせが使用されることができ、そして粘度、発泡性および洗浄効率のような配合物の他の重要な特性を維持するかもしくは向上さえさせつつ、配合物の知覚特性を向上させるように相乗的に機能することができることが見いだされた。
【0019】
より具体的には、本発明の水可溶性ポリマーの混合物は
(a)0.5〜50重量%の高分子量ポリエチレングリコール;
(b)0.5〜50重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース;
(c)0〜50重量%のヒドロキシエチルセルロース;
(d)0〜50重量%の親水性カチオン性セルロース;並びに
(e)0〜50重量%の、ポリマー(d)よりも親水性が低いカチオン性セルロースを含み、全ての重量パーセンテージはポリマーの混合物の全重量を基準にする。水可溶性ポリマー(a)〜(e)のそれぞれはこれからより完全に定義される。
【0020】
本明細書において使用される場合、高分子量ポリエチレングリコールとは、エチレンオキシドから生じ、600,000〜4,000,000ダルトンの重量平均分子量(MW)を有する線状ホモポリマーを意味する。本発明のWSP混合物において使用するのに好適な高分子量ポリエチレングリコールは、例えば、限定されないが、米国ミシガン州ミッドランドに本社を置くザダウケミカルカンパニーから商品名POLYOXで商業的に入手可能である。洗浄配合物の全重量を基準にして約0.1〜2重量%の量での、水可溶性ポリマーとしての高分子量ポリエチレングリコールのみの使用は配合物の発泡特性を向上させることが知られている。
【0021】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、本明細書において使用される場合、セルロース、塩化メチルおよびプロピレンオキシドから製造され、40,000〜250,000ダルトンのMWを有するセルロースのメチルエーテルを意味する。本発明のWSP混合物に使用するのに好適なヒドロキシプロピルメチルセルロースは、例えば、限定されないが、ザダウケミカルカンパニーからMETHOCELの商品名で商業的に入手可能である。洗浄配合物の全重量を基準にして約0.2〜2重量%の量での、唯一の水可溶性ポリマーとしてのヒドロキシプロピルメチルセルロースの使用は配合物の発泡特性を向上させることが知られている。
【0022】
本明細書において使用される場合、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)は水可溶性ポリマーであり、セルロースから得られ、そして水性配合物の粘度を増大させるのに有用である。本発明のWSP混合物に使用するのに好適なヒドロキシエチルセルロースは20,000〜200,000ダルトンのMWを有し、例えば、限定されないが、ザダウケミカルカンパニーからCELLOSIZEの商品名で商業的に入手可能である。HECが、洗浄配合物の全重量を基準にして約0.3〜4重量%の量で洗浄配合物に添加される唯一の水可溶性ポリマーである場合には、洗浄配合物の粘度は増大させられるであろう。
【0023】
本明細書において使用される場合、用語「カチオン性セルロース」とは、セルロースから得られ、20,000〜200,000ダルトンのMWを有する直鎖ヒドロキシエチルセルロースポリマーを意味する。これらは周知で抗刺激性であるが、これらは水性配合物中での沈着特性を増大させることも一般的に知られており、このために使用される。関心事である水性界面活性剤配合物の目標は汚れおよびグリースの効果的な除去であるから、すでに記載されたように、本発明のWSP混合物によって向上させられる界面活性剤配合物は、典型的には、促進剤ではなく、沈着阻止剤から利益を受ける。にもかかわらず、少量のカチオン性セルロースポリマーは、上に列挙した他の水可溶性ポリマーと組み合わせると、食器手洗いに使用される場合に、このような配合物中の界面活性剤によって提供される洗浄効率を妨げることなく知覚特性に対する所望の向上を提供する。洗浄配合物の全重量を基準にして約0.1〜0.7重量%の量での、この単独の水可溶性ポリマーとしてのカチオン性セルロースの使用は配合物の発泡性および沈着特性を向上させることが知られている。
【0024】
本発明のWSP混合物において使用するのに好適な「親水性カチオン性セルロース」は、基本的にカチオン性置換基を有するヒドロキシエチルセルロースであり、20,000〜200,000ダルトンのMWを有する。このような好適な親水性カチオン性セルロースは、例えば、限定されないが、ザダウケミカルカンパニーから商品名UCAREで商業的に入手可能である。
【0025】
一方、本明細書において使用される場合、「[上記親水性カチオン性セルロース]よりも親水性が低いカチオン性セルロース」とは、カチオン性および疎水性置換基の双方を有し、20,000〜200,000ダルトンのMWを有するヒドロキシエチルセルロースを意味する。本発明のWSP混合物に使用するのに好適なこの「親水性が低い」カチオン性セルロースは、例えば、限定されないが、ザダウケミカルカンパニーから商品名SOFTCATで商業的に入手可能である。
【0026】
上記水可溶性ポリマーのいずれか1種を配合物へ適用することは上述のような1つの利点をもたらしうる。しかし、単独で使用する場合、これら水可溶性ポリマーのいずれも、本発明の相乗的WSP混合物と同じ水準まで、向上した知覚特性、並びに同じもしくは向上した他の特性(例えば、粘度、発泡性、洗浄効率など)を提供することができない。
【0027】
一形態おいては、例えば、限定されないが、WSP混合物はWSP混合物の全重量を基準にして、(a)20重量%の高分子量ポリエチレングリコール、および(b)80重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むことができる。別の形態においては、WSP混合物はWSP混合物の全重量を基準にして、(a)15重量%の高分子量ポリエチレングリコール、(b)70重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース、および(d)15重量%の親水性カチオン性セルロースを含むことができる。本発明に従うWSP混合物のさらに別の形態は、WSP混合物の全重量を基準にして、(a)12重量%の高分子量ポリエチレングリコール、(b)48重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース、および(c)40重量%のヒドロキシエチルセルロースを含むことができる。
【0028】
本発明のWSP混合物は、少なくとも1種の界面活性剤を配合物の全重量を基準にして0.05〜10重量%の量で含む水性洗浄配合物に添加される場合に典型的には効果的である。例えば、WSP混合物は水性洗浄配合物の全重量を基準にして0.05〜5重量%、またはさらには0.1〜5重量%の量で水性洗浄配合物に添加されることができ、粘度、発泡性および洗浄効率のような他の特性を維持するかまたは増強さえしつつ、配合物の知覚特性の向上を提供することができる。
【0029】
特に、配合物の界面活性剤含量の一部分はWSP混合物で置き換えられることができ、消費者により快適な知覚体験(より低い刺激性)を提供し、洗浄効率並びに洗浄配合物の乳化能力を向上させることができることに留意されたい。例えば、WSP混合物は配合物の活性物含量の一部分を1:6(WSP混合物:活性物含量低減)〜1:60の比率で置き換えることができる。活性成分をWSP混合物とこのように置き換えることは全体的に使用される活性成分の量を低減させるように働き、製造のコストを低減させ、同時に、改良された知覚特性と共に、所望の発泡性および洗浄特性を有する配合生成物を依然として提供する。すでに言及されたように、本発明のWSP混合物の添加から利益を受ける配合物は食器手洗い用洗剤に使用されるものであるが、それらは洗濯洗剤および多目的洗浄配合物に成功裏に適用されることもできる。
【0030】
洗浄配合物中の界面活性剤の種類は特に限定されない。食器手洗い、洗濯洗剤もしくは硬表面洗浄配合物のための洗浄配合物を製造するのに当業者に既知で典型的に使用される界面活性剤のいずれも本発明の洗浄配合物中に含まれるのに好適である。このような界面活性剤には、限定されないが、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(以降、SLESまたはアルコールエーテルスルファートと称される)、アルコールプロポキシラート、線状アルキルベンゼンスルホナート(以降、LABSまたはアルキルベンゼンスルホナートと称される)、アルキルフェノールエトキシラートおよびプロポキシラート、アルコールエトキシラート(AE)、アルキルグリコシド、アルキルポリサッカライド(APG)、エトキシ化およびプロポキシ化脂肪酸アミン、などが挙げられる。本発明の水可溶性ポリマーの混合物は、アルキルベンゼンスルホナート(LABS)、アルコールエーテルスルファート(例えば、SLES−2EO、3EOもしくは4EO)、アルコールアルコキシラート(例えば、5−12EOおよび/または1−4PO)、アルキルポリグリコシド(APG)、ベタイン(例えば、脂肪酸アミドプロピルベタイン)、アミド(脂肪酸アミド)およびアルコールスルファートからなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤を含む食器手洗い用配合物に使用される場合に、知覚および他の特性に対して最も顕著な向上を提供する。この文脈で使用される場合、「EO」は「エチレンオキシド」を意味すると当業者に認識されることに留意されたい。よって、SLES−2EOとは、2モルのエチレンオキシドを伴うラウリルエーテル硫酸ナトリウムを意味する。同様に、当業者は「PO」を「プロピレンオキシド」を意味すると認識する。
【0031】
典型的には、洗浄配合物中に、配合物の全重量を基準にして20重量%以下、またはさらには30重量%以下の量で、1種以上の界面活性剤が含まれる。このような洗浄配合物は、その意図される用途に応じて、ディグリーザーおよび他の成分をさらに含むことができる。配合物の残部、すなわち、75〜99重量%は典型的には水である。
【0032】
配合物を作成する場合に、WSP混合物は界面活性剤添加の前もしくは後のいずれでも添加されうる。一方法においては、界面活性剤は所望の濃度まで、例えば、19重量%まで水に添加(希釈)され、次いで、完全に溶解されるまで攪拌下でWSP混合物が配合物に添加される。別のアプローチにおいては、WSP混合物は、完全に溶解されるまで攪拌下で、所望の濃度まで、例えば、1重量%まで水に添加(希釈)されることができ、次いで、界面活性剤がその所望の濃度まで配合物に添加されうる。
【0033】
本発明は、配合物の全界面活性剤含量の一部分を、上述のように(WSP混合物):(界面活性剤含量低減)1:6〜1:60の比率でWSP混合物で置き換えることを含む、1種以上の界面活性剤を含む洗浄配合物の知覚特性を向上させるための方法をさらに提供する。例えば、洗浄配合物が通常25重量%の界面活性剤を含む場合には、本明細書において上述のように本発明に従って19重量%の界面活性剤(すなわち、界面活性剤6%低下)および1重量%のWSP混合物を含む洗浄配合物が再配合され、生じさせられることができ、より少ない量の界面活性剤を含むが、より良好な知覚特性、並びに低減されていないかまたは向上さえさせられた発泡性、洗浄効率および粘度特性を有する洗浄液を生じさせることができる。別の例として、わずか13重量%の界面活性剤(界面活性剤12%低下)および2重量%のWSP混合物を含む同じ洗浄配合物が有利に再配合され製造されうる。
【0034】
水可溶性ポリマーの重量平均分子量(MW)を測定する方法は、この特性が本明細書において上で論じられ、以下に提供される実施例において論じられる場合には、以下の通りである。
【0035】
全ての化学物質およびプルラン標準物質は、以下に示されるように、ベンダーから購入され、受け取ったまま使用された。
1.使用前に、水(DI水)が0.0002mmのナイロンカートリッジを通してろ過された;
2.ナトリムアジド、99.99+%シグマアルドリッチから購入;
3.プルラン標準物質;
4.トルエン、フィッシャーサイエンティフィックからのHPLCグレード;
5.ウシ血清アルブミン(BSA)、シグマアルドリッチからの〜98%モノマー;並びに
6.試験される水可溶性ポリマー:POLYOX WSR 301、POLYOX WSR N60K、CELLOSIZE QP 100MH、CELLOSIZE QP 30MH、METHOCEL 40−100、METHOCEL 40−101、SOFTCAT SX 1300X、UCARE ポリマーJR30M。
【0036】
移動相
溶離液はDI水中にNaN3を0.05重量%の濃度で溶解することにより調製され、そしてカートリッジを通してろ過された。溶解後、この溶離液の純度を保証するために、このカートリッジ内に5時間まで再循環させた。Wyatt Optilab Rex Dri検出器によって測定して1.3365の屈折率に到達すべきであった。
【0037】
サンプル調製
干渉を最小限にするために、サンプル溶液はあらかじめ冷却された移動相中で製造された。この溶液をフラットベッドシェイカー上で3時間振とうして、このサンプルを溶かし、水和および溶解を完全にするために4℃で一晩冷蔵庫内に置いた。二日目に、溶液は再び2時間振とうされた。インジェクション前に、溶液は0.45μm(ミクロン)ナイロンシリンジフィルターを通してろ過された。
【0038】
使用される目標のサンプル濃度は以下の表に示される。この目標はポリマー鎖のエンタングルメントが最小限にされるのを確実にするために、溶液濃度を、充分にポリマー鎖エンタングルメント濃度(C)未満に維持することであった。Cは1/[n]として定義され、[n]は、K=2.216×10−4dl/g、およびアルファ=0.849を用いた2%ブルックフィールド溶液粘度データに従って推定された−ポリマーについての概算の重量平均分子量に従って計算される。
【0039】
【表1】

【0040】
SEC装置
ポンプ:ウォーターズ2690ポンプは、SEC分別スタディーに従って最適な流速に設定され、インジェクションバルブの前に設置された0.2ミクロンのナイロン膜2層からなるフィルターを備えていた。
インジェクション:ウォーターズ2690ポンプは100マイクロリットルの溶液を注入するようにプログラムされた。
カラム:2本のTSK−Gel GMPWカラム(7.5mmID×30cm、17ミクロンの粒子、名目100〜1000オングストローム孔)がそれぞれ28℃で操作された。
検出器:ワイアット(Wyatt)Optilab rEX Dri検出器に接続されたワイアット Dawn DSP MALLS検出器が使用された。ワイアットDAWN DSPは632.8nmの波長で機能する赤色レーザーを備えており、室温で操作された。ワイアットOptilab rEX DRI検出器は28℃で操作された。
キャリブレーション:ワイアットDAWN MALLSは0.05ミクロンのシリンジフィルターを通してろ過されたHPLC等級のトルエンでキャリブレートされた。個々の光散乱検出器は、BSAのDRIピークでのアイソトロピックピークとしてのモノ分散BSAモノマーを使用して、90°光散乱検出器に正規化された。
【0041】
ソフトウェアおよびデータ処理
MALLSおよびDRI検出器からの信号はASTRA Vソフトウェアを用いて分析された。MwおよびRgは各SEC溶離体積増分で決定された。これらの計量値を得るために、25.8°〜132.2°の角度範囲をカバーするデビープロット(Debye Plots)がジムの方式(Zimm fomalism)に従う一次多項式に最小二乗法適合させられた。ポリマーについてdn/dc 0.140mL/gが適用された。報告される分子量平均および回転半径は、スライスMw ASTRA Vソフトウェアの一次多項式適合に基づくものであった。質量回収率は、インジェクトされた質量に対して、DRIシグナルの積分から検出された質量を比較することにより得られた。
【0042】
分子量式:Mw=[KC/R0]−1
【実施例】
【0043】
WSP混合物製造
様々なポリマーが、乾燥粉体形態で測定され一緒にされて、以下の表1のブレンド(混合物)を生じさせた。測定後、各グループの粉体ポリマーはV字型粉体混合機に入れられ、粉体が完全にブレンドされるのを確実にするために15分間混合された。ブレンドの品質は水中2%で溶解される場合の各ブレンドの粘度を分析することにより評価されることができる。
【0044】
【表2】

【0045】
食器手洗い用配合物への各混合物/ブレンドの添加
それぞれの個々の種類の水可溶性ポリマー、並びにブレンド1、4および5のそれぞれは、15%(活性物質ベース)の線状アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LABSとしても知られている)、および5%(活性物質ベース)のラウリルエーテル(2モルエチレンオキシド)スルホン酸ナトリウム(SLESとしても知られている)を界面活性剤として含む4種の洗浄剤配合物のそれぞれに添加され、また乾燥形態で2%の塩化ナトリウムを添加して、以下の表2に示された配合物を生じさせた。それぞれの場合において、界面活性剤は、表に示されるような所望の濃度まで水に添加され(希釈され)、次いで、ポリマーもしくはブレンドは、完全に溶解するまで攪拌下で配合物に添加された。全ての配合物は54℃で4週間後安定であった。
【0046】
各配合物についての粘度も表2に提供される。配合物Aにおいては、界面活性剤含量は当初配合物(カラム1)における当初の20重量%から15重量%に低減されており、表2には、界面活性剤濃度の低減が全部で20重量%の界面活性剤添加と比較して低減した粘度をもたらしたことが認められうる。表2に報告されるデータからは、より低い界面活性剤含量(カラム3および4、行1〜4)を有する配合物への個々のポリマーの添加は増大した粘度をもたらしたが、個々のポリマーのいずれも、なんらかのポリマーブレンドが可能である(例えば、ポリマーブレンド4もしくは5を含む配合物を参照)のと同じ程度に粘度を回復させることはできないことも明らかである。
【0047】
【表3】

【0048】
食器手洗い用配合物の評価
安定な配合物を得た後で、ベンチマークに対するその性能を評価することが必要とされ、この場合におけるベンチマークは20重量%の界面活性剤を含んでいた当初配合物であった。
第1の評価は乳化能力(すなわち、洗浄効率)であり、消費者の手作業の食器洗いプロセスを模倣し、以下の手順によって評価される:
1.1gのグリース汚れを伴う汚れ標準化20cm直径皿。グリース汚れは1部の動物脂肪および1部の植物油から構成されている。典型的には、300〜400枚の皿が同時に汚される。
2.これら汚された皿が22℃で1日間静置させられる。
3.試験される配合物3gが200gの水中に希釈される(これが試験溶液である)。
4.試験溶液は典型的なウレタンベースのスポンジで開放容器内で手作業で攪拌されて、泡を生じさせる。
5.試験はさらなる泡が得られなくなるまでできるだけ多くの皿を上記泡で洗浄することからなる。
6.洗浄された皿の数が報告される。
【0049】
この方法は各配合物の洗浄効率に関連する情報を提供するようにデザインされる。良好な統計学的結果を得るために、上記方法(1−6)は2人のパネリストによって独立に行われ、各パネリストはこの方法を3回繰り返した。この評価の結果は図1のチャートに提供される。
【0050】
他の重要な評価は、使用者/パネリストによって感じ取られた各配合物の知覚特性である。この主観的試験においては、パネリストには、以下のパラメーターのそれぞれについて、各配合物に対して1〜10の評価を割り当てることが求められた:
知覚スコア:3枚の皿を洗浄した後で、各パネリストはこのプロセスの全体的な知覚品質がどのようであったかについて尋ねられ、より高い評価はより良好なもしくはより快適な知覚を意味する。
泡スコア:3枚の皿を洗浄した後で、各パネリストはこのプロセス中の全体的な発泡品質がどうであったかについて尋ねられ、より高い評価はより良好なもしくはより多くの泡を意味する。
目視外観スコア:標準の洗剤ボトル内での配合物の目視外観を評価し、標準により近ければより高い評価である。
色スコア:各配合物の色を標準と比較して、相対的な濁度および強度の指標を提供する。
【0051】
10人のパネリストがこの評価を行い、結果は図2のチャートに示される。図2に報告された値は、各配合物についての各特徴について、10人のパネリストの平均の値である。
【0052】
図2に認められるように、ポリマーブレンド5を含む配合物は両方とも、何らポリマーを含まない配合物よりも良好でより訴求力がある知覚品質を有することが報告された。各配合物は、他の性質のそれぞれ、すなわち、泡、目視外観および色について同様の高い評価を受けた。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
向上した知覚特性を有する洗浄配合物に使用するための水可溶性ポリマーの混合物であって、
前記混合物の全重量を基準にして、
(a)0.5〜50重量%の高分子量ポリエチレングリコール;
(b)0.5〜50重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース;
(c)0〜50重量%のヒドロキシエチルセルロース;
(d)0〜50重量%の親水性カチオン性セルロース;並びに
(e)0〜50重量%の、ポリマー(d)よりも親水性が低いカチオン性セルロースを含む、水可溶性ポリマーの混合物。
【請求項2】
前記水可溶性ポリマー(a)が600,000〜4,000,000ダルトンの重量平均分子量(MW)を有する、請求項1に記載の水可溶性ポリマーの混合物。
【請求項3】
前記水可溶性ポリマー(b)が40,000〜250,000ダルトンのMWを有し、かつ前記水可溶性ポリマー(c)、(d)および(e)のそれぞれが20,000〜200,000ダルトンのMWを有する、請求項1に記載の水可溶性ポリマーの混合物。
【請求項4】
前記洗浄配合物が食器手洗い用配合物である、請求項1に記載の水可溶性ポリマーの混合物。
【請求項5】
WSP混合物の全重量を基準にして
(a)12重量%の高分子量ポリエチレングリコール;
(b)48重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース;並びに
(c)40重量%のヒドロキシエチルセルロース
を含む、請求項1に記載の水可溶性ポリマーの混合物。
【請求項6】
1:6〜1:60の(WSP混合物):(界面活性剤含量低減)の比率で、配合物の全界面活性剤含量の一部分を請求項1に記載のWSP混合物で置き換えることを含む、1種以上の界面活性剤を含む洗浄配合物の知覚特性を向上させる方法。
【請求項7】
洗浄配合物の全重量を基準にして
(A)0.95〜15重量%の少なくとも1種の界面活性剤を含む活性成分;
(B)0.05〜10重量%の請求項1に記載の水可溶性ポリマーの混合物;並びに
(C)75〜99重量%の水
を含む洗浄配合物。
【請求項8】
(B)0.05〜5重量%の請求項1に記載の水可溶性ポリマーの混合物を含む、請求項7に記載の洗浄配合物。
【請求項9】
前記洗浄配合物が食器手洗い用配合物である、請求項7に記載の洗浄配合物。
【請求項10】
少なくとも1種の界面活性剤がアルキルベンゼンスルホナート、アルコールエーテルスルファート、アルコールアルコキシラート、アルキルポリグリコシド、ベタイン、脂肪酸アミドおよびアルコースルファートからなる群から選択される、請求項9に記載の洗浄配合物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−256385(P2011−256385A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−125202(P2011−125202)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(590000020)ザ ダウ ケミカル カンパニー (24)
【氏名又は名称原語表記】THE DOW CHEMICAL COMPANY
【出願人】(509079695)ダウ ブラジル スデステ インダストリアル エルティデイエイ. (3)
【Fターム(参考)】