説明

向上した耐化学薬品性および耐久性を有する耐炎および耐熱性伸縮生地

本発明は、向上した耐久性を有する耐炎および耐熱性伸縮生地に関する。伸縮生地は、架橋ポリオレフィン弾性繊維を含み、該繊維は、固有耐炎性繊維と組み合わせてコアスパンヤーンにし得る。弾性繊維または糸は、周知の技法、例えば、他の耐炎性繊維または糸と共に縦糸または横糸製織によるかまたはコ−ニッティング法によって、好都合に生地に形成し得る。そのような生地は、種々の耐久性または繰返使用の生地用途、例えば、限定するものではないが、衣類(特に防護服)および室内装飾品に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、向上した耐久性を有する耐炎および耐熱性伸縮生地に関する。伸縮生地は、架橋ポリオレフィン弾性繊維を含み、該繊維は、固有耐炎性繊維と組み合わせてコアヤーン(core yarn)にし得る。弾性繊維または糸(yarns)は、周知の技法、例えば、他の耐炎性繊維または糸と共に製織によるかまたはコ−ニッティング(co-knitting)法によって、好都合に、生地に形成することができる。そのような生地は、種々の耐久性または繰返使用の生地用途、例えば、限定するものではないが衣類(特に防護服)および室内装飾品に有用である。
【背景技術】
【0002】
熱および/または炎への暴露のリスクがある職業に就いている作業者、例えば、鋳造工場作業者および化学および製油工業作業者は、重度の火傷または他の身体傷害を最小限にするための防護服を着用する。このような作業者に熱および炎に対する最大保護を与える試みにおいて、先行技術が重きを置いていることは、耐熱および/または耐炎性生地を使用して防護服を形成することである。そのような衣服に使用される耐炎性生地は、重く堅くなる傾向がある固有耐炎性織糸から一般に形成される。従って、それから形成された衣服は、重く、嵩高く、いくぶん非柔軟性になる傾向がある。そのような生地の堅さ(stiffness)および一般的非柔軟性は、そのような生地から製造された衣服を着用中に作業者の動きを制限する傾向がある。
【0003】
極度の熱および炎への暴露に対して保護し、しかも着用者により自由な動きを与え得る柔軟性をも有する衣服を開発する試みが、先行技術においてなされている。1つの方法は、通常の重くていくぶん非柔軟性の耐炎性生地を衣服の大部分に使用し、衣服のある部分は、衣服のつなぎ部分用のより軽くてより低い耐炎および耐熱性の材料で形成する方法である。例えば、米国特許第4,922,552号は、厚い耐炎性生地の層から形成された消防士用衣服を開示し、それにおいて、該層から保護耐炎性材料の外層を切り取って、有意に低い程度の耐炎性および保護特性を有するが、より高い柔軟性およびより低い嵩高さを有する、より軽い材料の層で置き換えている。そのような衣服に関する課題は、衣服の柔軟性が衣服の特定部分に限定され、いくらかの耐炎保護が、この増加した柔軟性を得るために犠牲にされることである。
【0004】
より最近では、米国特許第5,527,597号は、防護服をより柔軟性にするために、弾性繊維、例えばスパンデックスまたはゴムを使用することを推奨している。この文献は、弾性コアヤーンが熱および/または火炎に対して低い耐性を有するので、それらを保護糸、例えば、芳香族ポリアミド/ポリベンズイミダゾール(PBI)ブレンドから製造された繊維でラップする必要があることを開示している。ラップ繊維は、弾性コアヤーンを、それがなければコアヤーンを崩壊させるかまたは溶解させる熱および火炎への直接暴露から保護するように設計されている。しかし、該文献は、保護ラップが弾性繊維(特に、伸張した場合)を、完全には保護しないこと、および弾性糸の破断が最終的に生じ得ることを認めている。これは、衣服が高温への比較的長時間の暴露に付された場合、例えば、衣服の工業洗濯の間に、特に当てはまる。
【0005】
生地を耐炎性にする別の方法は、そうしなければ耐炎性でない生地を、化学的に処理することを含む。固有耐炎性繊維の生地は、より長く持続する保護を与えると一般に考えられるが、化学処理した生地(例えば、耐炎性綿布)は、より短く持続する保護を与えるが、着用者にとってより快適であると考えれらることが多い。さらに、そのような方法に使用される化学処理は、一般に、弾性繊維が耐えるには過酷すぎ、弾性の急速損失またはさらには破断を生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、工業洗濯への繰返暴露に耐久性の、より快適な弾性、耐熱および/または耐炎性の生地が現在も必要とされている。本発明はそのような生地に関する。該生地は、弾性、耐炎および/または耐熱性かつ耐久性であり、これらの用途に特によく適合している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
材料は、バイアス力(biasing force)の適用後に、高パーセントの弾性回復(即ち、低パーセントの永久歪)を有する場合に、一般に弾性であると特徴付けられる。理論的に言えば、弾性材料は、3つの重要な特性、即ち、(i)低パーセント永久歪;(ii)歪における低い応力または荷重;および(iii)低パーセント応力または荷重弛緩の組合せによって特徴付けられる。言い換えれば、(i)材料を伸張させるための低い応力または荷重要求;(ii)いったん材料が伸張された場合の、応力の弛緩または除荷が無いかまたは少ないこと;および(iii)伸張、バイアスまたは歪を停止した後の、元寸法への完全なまたは高い回復が存在すべきである。
【0008】
本発明の弾性、耐久性、耐炎および/または耐熱性の生地において使用するために、生地を構成する繊維は、特に、染色およびヒートセット工程ならびに工業洗濯条件の間に、安定性であるべきである。弾性ポリオレフィン繊維が、染色およびヒートセット条件下に安定性であるために、それを架橋すべきである。これらの繊維は、1またはそれ以上の種々の方法、例えば、e−ビームまたはUV照射、シランまたはアジド処理、パーオキシド等によって架橋することができ、特定組成の繊維に関して、ある方法が他の方法より優れている。例えば、不活性雰囲気下に照射されたポリオレフィン繊維は(空気下の照射に対するものとして)、染色工程の間に高安定性である傾向がある(即ち、繊維が溶融または融着しない)。ヒンダードフェノールおよびヒンダードアミン安定剤の混合物の添加は、高温、例えば、いくつかのヒートセット手順の間に遭遇する高温(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維の場合の200〜210℃)において、そのような繊維をさらに安定化させる。
【0009】
スパンデックス(エラスタンとしても公知)、セグメントポリウレタン弾性材料は、耐炎および耐熱性生地を含む種々の伸縮生地に現在使用されている(米国特許第5,527,597号参照)。しかし、スパンデックスは、いくつかのコンパニオン繊維に使用される一般的な高いヒートセット温度において安定でなく、さらに、スパンデックス生地は、洗濯、乾燥およびアイロン掛けにおいて遭遇するような高い使用温度に付された場合に、その保全性、形状および弾性特性を失う傾向がある。
【0010】
他の耐炎および/または耐熱性生地が耐えられない暴露に耐えることができる弾性、耐炎および/または耐熱性生地を形成し得ることが見出された。特に、本発明の生地は耐久性であり、これは、生地がc)少なくとも65℃の温度における50サイクルの工業洗濯に耐えることを意味し、ここで、「耐える」とは、処理後の生地が、約20%未満、好ましくは約10%未満、より好ましくは約8%未満の伸び(growth)を示すことを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下の用語は、本特許出願に使用される場合に、所定の意味を有する。
「繊維」は、長さ対直径比が約10より大である材料を意味する。繊維は、一般に、その直径によって分類される。フィラメント繊維は、約15デニールより大、一般に約30デニールより大の、個々の繊維の直径を有するものと一般に定義される。微細デニール繊維は、約15デニール未満の直径を有する繊維を一般に意味する。マイクロデニール繊維は、約100ミクロンデニール未満の直径を有する繊維として一般に定義される。
【0012】
「フィラメント繊維」または「モノフィラメント繊維」は、不定の(即ち、予め決められていない)長さの材料の単一連続ストランドを意味し、これは、限定された長さの材料の不連続ストランド(即ち、所定長さのセグメントにカットまたは分割されたストランド)である「ステープルファイバー」に対するものである。
【0013】
生地または物品に関して使用される場合の「耐炎性」という用語は、生地または物品が以下を示すことを意味する。1)DIN EN 531:02.95スタンダードノルム(standard norm)(DIN ISO 15025:02.03標準試験法)によりAグレードに等級付けされる、炎への直接暴露時の火炎伝搬に対する反応;2)DIN EN 531:02.95スタンダードノルム(DIN EN 367:11.92標準試験法)によりB1グレードまたはそれ以上(B2、B3、B4またはB5)に等級付けされる、炎への暴露時の熱伝達性能;3)DIN EN 531:02.95スタンダードノルム(DIN EN 366:05.93標準試験法)によりC1またはそれ以上(C2、C3またはC4)に等級付けされる、放射熱への暴露時の熱伝達。これらの必要条件を満たすことができるかまたはエキサイド(excide)することができる生地または物品は、ISO 2801:1998国際標準「Clothing for protection against heat and flame - General recommendation for selection, care and use of protective clothing」により、少なくとも「低リスクレベル:熱および/または炎への局所的暴露」防護服に好適であると考えられる。
【0014】
生地または物品に関して使用される場合の「耐久性」という用語は、生地または物品が、少なくとも65℃、または少なくとも75℃、85℃またはさらには95℃の温度での工業洗濯の50サイクル後に、縦糸および横糸方向の両方において、20%未満、好ましくは約10%未満、より好ましくは約8%、6%さらには5%未満の伸びを示すことを意味する。
【0015】
「伸び」という用語は、残留伸び、または所与の時間にわたる荷重の適用および回復後に生地が長くなっている量であって、初期生地寸法のパーセントとして示される量を意味する。伸びは、ASTM D3107を使用して測定することができる。
【0016】
「弾性繊維」は、第1引張り後、および第4〜100%歪(長さを2倍にする)後に、その伸張した長さの少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約60%、さらに好ましくは70%を回復する繊維である。この試験を行う1つの好適な方法は、International Bureau for Standardization of Manmade Fibers, BISFA 1998, chapter 7, option Aに見出される方法に基づく。そのような試験において、繊維を、4インチの間隔のグリップの組の間におき、次に、グリップを、1分当たり約20インチの速度で8インチ引き離し、次に、直ぐに回復させる。本発明の弾性織物物品は、バイアス力の適用後に、高いパーセントの弾性回復(即ち、低いパーセントの永久歪)を有するのが好ましい。理論的に言えば、弾性材料は、3つの重要な特性、即ち、(i)歪における低い応力または荷重;(ii)低パーセント応力または荷重弛緩;および(iii)低パーセント永久歪の組合せによって特徴付けられる。言い換えれば、(i)材料を伸張させるための低い応力または荷重要求;(ii)いったん材料が伸張された場合の、ゼロまたは低い、応力の弛緩または除荷;および(iii)伸張、バイアスまたは歪を停止した後の、元寸法への完全なまたは高い回復が存在すべきである。
【0017】
「弾性材料」は、当分野において「エラストマー」および「エラストメリック」とも称される。本発明の解釈上、「弾性物品」は、弾性繊維を含む物品である。
【0018】
「非弾性材料」は、ある材料、例えば、先に定義したような弾性ではない繊維を意味する。
【0019】
「コアスパンヤーン(core spun yarn)」は、繊維を別のフィラメントまたは事前紡績糸であるコアの周りに巻きつけ、それによって少なくとも部分的にコアを隠すことによって、製造された糸を意味する。
【0020】
本発明の1つの態様は、弾性、耐久性、耐炎および/または耐熱性物品、例えば、耐熱性架橋弾性繊維を含む生地またはアセンブル衣服(assembled garment)である。生地は、固有耐炎性材料の組込みによって耐炎および/または耐熱性にすることができ、かつ/または物品を化学処理に付して耐熱および/または耐炎性を付与し得る。
【0021】
1つの実施形態において、物品は、1またはそれ以上の架橋耐熱性オレフィン弾性繊維から製造され処理された耐久性伸縮生地である。生地は、任意の方法、例えば、製織、ニッティングなどによって製造することができ、弾性および非弾性(「硬質」)繊維の組合せを使用してよい。これらの生地は、優れた耐化学薬品性、例えば耐塩素性、および耐久性を示し、例えば、それらは、使用条件、例えば、洗濯、乾燥などへの繰返暴露において、それらの形状および触感(「手触り」)を維持する。生地またはアセンブル衣服は、少なくとも65℃の温度における50サイクルの工業洗濯処理後に、約10%以下の弾性変化を示し、かつ/またはその伸びの約50%以下、より好ましくはその伸びの約20%以下、さらに好ましくはその伸びの約10%以下、最も好ましくはその伸びの約8%以下を維持する。
【0022】
弾性繊維は、好ましくは、架橋耐熱性オレフィン弾性繊維である。そのような繊維は、エチレンポリマー、プロピレンポリマーおよび完全水素化スチレンブロックコポリマーを(触媒改質ポリマー(catalytically modified polymers)としても公知)を含む。エチレンポリマーは、均一分岐および実質的直鎖均一分岐エチレンポリマー、ならびにエチレン−スチレンインターポリマーを含む。架橋均一分岐および実質的直鎖均一分岐エチレンポリマーが最も好ましい。
【0023】
本発明の弾性繊維は、任意の好適な繊維直径、例えば、15、40、70、140またはさらにそれ以上のデニールであってよい。
【0024】
本発明に使用される好適な弾性繊維は、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第6,437,014号に開示されている。その文献に記載されているように、繊維は、当分野において公知の多くの方法によって形成でき、例えば、繊維を溶融させるかまたはスパン結合することができ、より好ましくは溶融紡糸法によって製造できる。同様に、米国特許第6,437,014号に教示のように、繊維を、以下の材料を含む種々の材料から製造することもできる。エチレン−αオレフィンインターポリマー、実質的水素化ブロックポリマー、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックポリマー、スチレン−エチレン/ブテン−スチレンブロックポリマー、エチレン−スチレンインタポリマー、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタンおよびそれらの組合せ。その文献に記載されている架橋均一分岐エチレンポリマー、特に実質的直鎖エチレンポリマーが、本発明の物品の製造における使用に特に好適である。
【0025】
これらの弾性繊維は、正味で(neat)使用してもよく、またはコアスパンヤーンにおけるコアとして好都合に使用し得る。コアスパンヤーンは、いくつかの工業製織機またはニッティング機において、より容易に処理し得る。さらに、固有耐炎性材料を、コアスパンヤーンにおけるラップ繊維として使用するために選択することによって、コアスパンヤーン(およびそのような糸を含む物品)の耐炎および/または耐熱性を増加させることができる。弾性コアをラッピングするのに好適な繊維材料は、以下の繊維材料である。ポリアミド(アラミドを含む)、ポリノシックレーヨン、セルロース(特に、耐炎性セルロース)、ポリエステル(特に、耐炎性ポリエステル)、ポリビニルアルコール、ポリテトラフルオロエチレン、ウール(特に、耐炎性ウール)、ポリビニルクロリド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイニド(polyetherinide)、ポリオレフィン、ポリイミドアミド、ポリベノキサゾール(polybenoxazole)、カーボン、モダクリルアクリル、メラミン、ガラス、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリ(フェニレンスルフィド)PPS繊維、ポリアクリレート、セミカーボン、フェノールまたはノボロイド繊維、モダクリル、クロロファイバー、FRビスコース、ナイロンおよびアクリルならびにそれらの組合せ。アラミド繊維が、それらの耐炎性により特に好ましい。
【0026】
正味の、より好ましくはコアスパンヤーンのコアとしてのこれらの繊維は、本発明の生地を製造するために、他の繊維または糸と共に製織またはニッティング方法に使用するのが好ましい。物品の耐炎性を向上させるために、弾性繊維またはコアスパンヤーンと固有耐性炎繊維とを組み合わせることが有利になり得る。弾性繊維または糸と組み合わせるのに好適な繊維材料は、コアスパンヤーンにおける被覆繊維として使用される前記の繊維材料を含む。アラミド繊維は、それらの固有耐炎性により特に好ましい。一般に、架橋耐熱性オレフィン弾性繊維は、重量ベースで繊維の小部分を占めるが、各繊維の正確なパーセンテージは、任意の特定用途のために最適化し得る。一般に、生地は少なくとも約2wt%の弾性繊維を含有し、織った生地は約15%未満の弾性繊維を有する傾向があり、編んだ生地は約35wt%までの弾性繊維を有し得るが、これらの範囲外の量も可能である。
【0027】
静電気放散繊維、例えば金属繊維または炭素繊維を、生地に含ませるのが望ましい場合もある。そのような静電気放散繊維を含む衣服は、作業者に付加的保護を与える。
【0028】
本発明の生地は、公知の製造法、例えば製織またはニッティングによって製造することができる。ある所与の生地組成に関して、一般に、生地構造が高密度であるほど、生地はより耐炎性になることが当業者に理解される。しかし、それと同時に、生地が高密度になるほど、生地はより重くなり、これは、その生地から製造された衣服をより低い快適性にし得る。
【0029】
本発明の生地を使用して衣服を製造することができる。本発明の生地から好都合に製造できる衣服の例は、制服、特に工業洗濯に付される制服を含む。
【0030】
本発明の生地は、化学薬品、およびこれらの化学薬品により大部分の一般的伸縮生地を分解し得る条件、およびこれらの生地の伸縮繊維成分を分解する条件を使用する強烈かつ過酷な処理を必要とすることが公知である生地を含む。しかし、本発明の生地は、そのような分解に特に耐性である伸縮繊維を含み、従って、これらの繊維を含有する生地は、驚くべき耐久性および耐化学薬品性を示す。
【0031】
本発明の他の実施形態において、弾性生地を化学的に処理して、耐炎性を付与することができる。そのような方法において、繊維または物品を特定の化学物質で処理して、それらに耐炎性を付与する。そのような化学物質は当分野において公知であり、テトラキス−(ヒドロキシメチル)ホスホニウム塩(以後、THP塩と称す)を含み、例えば、THPSはセルロース系材料に耐炎性を付与するのに極めて有効である。そのような化学物質の適用は、アンモニアガスに不溶性のTHP/尿素予備縮合物(precondensate)塩を使用するか、またはTHP/パッド(pad)/乾燥/硬化法を使用するか、またはそれらの両方を使用することによって行うことができる。例示的技法は、米国特許第4,494,951号、第4,078,101号および第5,238,464号に記載されているが、耐炎性を付与する任意の公知の方法を使用し得る。ウール基材生地の熱保護性能を向上させる処理も公知であり、該処理は、沸騰またはそれ未満におけるウール上での消耗(exhausting)によって、ウール繊維にヘキサフルオロチタネートおよびヘキサフルオロジルコネートを添加することに基づいている。そのような処理は、IWSからのZirpro仕上げとして工業的に得られる。
【0032】
一般に、耐炎性を付与するために使用される化学処理は、大部分の弾性繊維を崩壊し得る厳しい環境に繊維を暴露する。しかし、架橋均一分岐エチレンポリマーを含む好ましい溶融紡糸繊維は、これらの方法に一般に見られる厳しい条件下でさえ分解に耐える。その処理は、前記の繊維、生地さらには完成物品にも適用し得ると考えられる。
【0033】
例えば、固有耐炎および/または耐熱性繊維から製造された生地を化学的に処理することによって、耐炎および/または耐熱性の耐久性伸縮生地を形成する方法を組み合わすこともできる。
【0034】
以下の実施例は、本発明を例示するものであり、限定するものではない。比率、部およびパーセンテージは、特に指定しなければ重量による。
【実施例】
【0035】
繊維の説明
コアスパンヤーンをSiro紡糸法によって作製する。コアスパンヤーンは、以下の繊維から成る。91wt%のポリ(アミド−イミド)繊維;1wt%の炭素繊維;および、8wt%の、The Dow Chemical CompanyからDow XLA繊維として入手可能な140デニール架橋エチレン−オクテンコポリマー繊維から製造された繊維。通常のリング精紡機を使用して、均質ブレンドされたポリ(アミド−イミド)繊維および炭素繊維ショート(綿状)ステープルを紡糸し、撚糸工程の間に、5.2:1の比(延伸)でプレ−ドラフト(pre-drafted)した140デニールのエチレン−オクテンコポリマーと合わすことができる。紡糸方法は、Nm 1/26に等しい平均番手のコアヤーンを形成し、該コアヤーンにおいて、5.2X延伸された140デニールのエチレン−オクテンコポリマーがコアを構成し、ポリ(アミド−イミド)繊維および炭素繊維は、外部被覆シース(outer covering sheath)を構成する。被覆繊維内の結束(cohesion)は、1メートル当たり570撚りに等しい撚りレベルを適用することによって付与される。
【0036】
次に、このコアスパンヤーンを横糸成分として使用して生地を織る。99wt%のポリ(アミド−イミド)繊維および1wt%の炭素繊維ショート(綿状)ステープルに基づく同様のNm 1/26番手の糸を、縦糸成分として使用する。織機の設定は以下の通りである。縦糸の総数4867、リード幅(reed width)201cm、2550横糸/m。
【0037】
次に、そのようにして織った生地を、リラックス処理方法でオープン幅(open width)形態に仕上げて、横糸方向の収縮を促進し、所望の伸長性を可能にする。次に、この生地を耐炎性について以下のように試験する。
1)DIN EN 531:02.95スタンダードノルム(DIN ISO 15025:02.03標準試験法)による、炎への直接暴露時の火炎伝搬に対する反応:グレードAを得る;
2)DIN EN 531:02.95スタンダードノルム(DIN EN 367:11.92標準試験法)による、炎への暴露時の熱伝達:グレードB1を得る;
3)DIN EN 531:02.95スタンダードノルム(DIN EN 366:05.93標準試験法)による、放射熱への暴露時の熱伝達:グレードC1を得る。
【0038】
弾性は、TTM074 DuPont法として当分野において公知の方法によって試験し(織布の破断伸び(total elongation));伸びは、TTM077 DuPont法として当分野において公知の方法によって試験する(伸張織物における織物伸びのパーセンテージ)。この実施例における生地の伸び(growth)および伸長(elongation)は、以下の通りである。伸長10%、1分後の伸び4.0%、1時間後の伸び3.2%。
【0039】
これらの生地は、WO 03/078723 A1(参照により、全体として本明細書に組み込まれる)、特に実施例5の「洗濯」に記載されているのと同様の耐久性を示す。
【0040】
本発明を前記の実施形態によってかなり詳しく記載したが、この詳しい記載は例示目的である。特許請求の範囲に記載されている本発明の意図および範囲を逸脱せずに、本発明に多くの変型および変更を加え得る。先に引用した特許および特許出願を含む全ての文献は、参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐久性伸縮耐炎または耐熱性物品の製造法であって、
a)架橋ポリオレフィンを含む弾性繊維を選択する工程;および
b)工程(a)の繊維を、1またはそれ以上の固有耐炎性繊維と組み合わせて、物品を形成する工程
を含む、方法。
【請求項2】
架橋ポリオレフィンが、架橋均一分岐エチレンポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(b)の前に、架橋均一分岐エチレンポリマーをコアスパンヤーンにおけるコアとして使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
コアスパンヤーンの外部被覆が、固有耐炎および/または耐熱性を有する繊維である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
外部被覆が、ポリアミド繊維を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ポリアミド繊維が、アラミド繊維である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程(b)の固有耐炎性繊維が、ポリアミド繊維を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程(b)の固有耐炎性繊維が、アラミド繊維を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程(b)が、静電気放散繊維と組み合わせることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
耐久性弾性耐炎および/または耐熱性物品であって、
架橋ポリオレフィンを含む弾性繊維;および固有耐炎性繊維
を含む、物品。
【請求項11】
架橋ポリオレフィンが、均一分岐エチレンポリマーである、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
少なくとも約65℃の温度における50サイクルの工業洗濯後に、20%未満の伸びを示すことを特徴とする、請求項10に記載の物品。
【請求項13】
伸びが10%未満である、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
伸びが8%未満である、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
物品が、織ったまたは編んだ生地である、請求項10に記載の物品。
【請求項16】
請求項15に記載の生地から製造された衣服。
【請求項17】
固有耐炎性繊維がポリアミド繊維を含む、請求項10に記載の物品。
【請求項18】
静電気放散繊維をさらに含む、請求項10に記載の物品。
【請求項19】
静電気放散繊維が、金属繊維または炭素繊維である、請求項18に記載の物品。
【請求項20】
a)DIN EN 531:02.95スタンダードノルム(standard norm)(DIN ISO 15025:02.03標準試験法)によりAグレードに等級付けされる、炎への直接暴露時の火炎伝搬に対する反応;
b)DIN EN 531:02.95スタンダードノルム(DIN EN 367:11.92標準試験法)によりB1グレードまたはそれ以上(B2、B3、B4またはB5)に等級付けされる、炎への暴露時の熱伝達性能;または
c)DIN EN 531:02.95スタンダードノルム(DIN EN 366:05.93標準試験法)によりC1またはそれ以上(C2、C3またはC4)に等級付けされる、放射熱への暴露時の熱伝達
の試験結果を少なくとも1つ示す、請求項10に記載の物品。
【請求項21】
前記試験の全てに合格する、請求項20に記載の物品。

【公表番号】特表2009−523194(P2009−523194A)
【公表日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540033(P2008−540033)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/040520
【国際公開番号】WO2008/048256
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】