説明

向上した透明性および耐湿性を有するヘアスタイリング組成物

【課題】向上した透明性および耐湿性を有するヘアスタイリング組成物の提供。
【解決手段】(a)少なくとも1つの酸官能基を有する1種以上のモノマーを重合単位として含む1重量%〜10重量%の少なくとも1種のポリマー、(b)99重量%〜90重量%の溶媒混合物、並びに(c)中和剤を含むヘアスタイリング組成物であって;前記溶媒混合物(b)は(i)5重量%〜100重量%の少なくとも1種の揮発性有機溶媒、(ii)95重量%〜0重量%の水、および(iii)0重量%〜80重量%の少なくとも1種の噴射剤を含むヘアスタイリング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、向上した透明性を有していると同時に、保持性および輝きのような他の特性も維持しているヘアスプレー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
良好な保持性(すなわち、所定の位置に髪を保持する能力)および良好な輝き(すなわち、髪に輝く外観を与える能力)の双方を提供するヘアスタイリング組成物が望まれる。さらに、適用前のヘアスタイリング組成物の透明性(半透明の外観)は消費者に対して美的に重要である。
【0003】
典型的には、ヘアスタイリング組成物は髪固定剤として機能する1種以上のポリマーを含む。ヘアスタイリング組成物に良好な保持性を提供する多くのポリマーが存在するが、そのいくつかは輝きもしくは透明性のような他の特性に悪影響を及ぼす。
【0004】
ヘアスタイリング組成物は典型的には、水と1種以上の揮発性有機溶媒との混合物である水性溶媒も含む。25℃および1気圧で液体である揮発性有機化合物(VOC)の種類は一般にヘアスプレー組成物における揮発性有機溶媒として有用である。ヘアスタイリング組成物は場合によっては噴霧されるので、組成物中に使用されるポリマーは水性溶媒中に完全に溶解していることが望ましい。さらに、適切な噴霧のために、組成物中に使用されるポリマーの溶液は高すぎない粘度を有するべきであることが望まれる。
【0005】
ヘアスタイリング配合物がエアロゾルスプレーにおいて適用されるものである場合には、溶媒は1種以上の噴射剤も含み、この噴射剤は揮発性の非有機化合物もしくはVOCであることができ、かつ25℃および1気圧で気体である。例えば、限定されないが、二酸化炭素、プロパン、イソブタン、ジメチルエーテルおよびテトラフルオロエタンなどの物質を、このような組成物のためのエアロゾル噴射剤として使用することが知られている。
【0006】
ヘアスタイリング組成物が安定であること(すなわち、配合物が貯蔵されている間にどの成分も沈降しないこと)も望ましい。特定のポリマーを含む配合物の揮発性有機化合物(VOC)含量が増加するにつれて、そのポリマーの水性溶媒からの不溶性および沈殿のせいで組成物に曇りが表れ、増加することが知られている。この曇りは消費者に対して美的に不快な場合がある。
【0007】
よって、ヘアスタイリング組成物のための成分の種類および割合を選択することは非常に重要でありかつ困難な場合がある。良好な保持性を有するが、ヘアスタイリング組成物における輝きおよび透明性の水準に悪影響を及ぼさないポリマーを提供することが望まれる。典型的な高VOC含有髪固定ポリマーは曇りのある組成物を生じさせる場合がある。本発明はこのような組成物におけるポリマー適合性を向上させ、それにより向上した透明性(すなわち、低減した曇り)をもたらすと考えられる。
【0008】
アルコール炭化水素噴射剤システムにおけるカルボキシル化ビニルポリマー系ヘアスプレー樹脂の水溶性を向上させる一つの試みは、米国特許第4,192,861号に記載されるようにアルカリ試薬を用いて、その樹脂の利用可能なカルボキシル官能基の少なくとも一部分を中和することであった。
【0009】
米国特許第4,315,910号は、ポリマー、例えば、スチレン/無水マレイン酸ポリマー、および二酸化炭素もしくは炭化水素−アルコール噴射剤、並びに1〜15重量%の水を含むエアロゾル金属容器内で使用されるエアロゾルヘアスプレー組成物を記載する。米国特許第4,315,910号には、二酸化炭素もしくは炭化水素−アルコールをエアロゾル金属容器内で使用する無水組成物と比較して、この組成物への水の添加が、これら組成物におけるポリマーの溶解性および貯蔵安定性を向上させたことを主張している。
【0010】
有機もしくは無機中和剤もしくはこれらの混合物で中和することにより、シリコーングラフトコポリマーを含む非エアロゾルのゲル型ヘアスタイリング組成物の透明性を向上させることも知られている。英国特許出願公開第2291893A号は、さらに改良された透明性並びに使用時の手触りが非粘着性でありかつ容易なブラシがけ特性を有することが主張されている、選択された有機中和剤とシリコーン含有ポリカルボン酸ポリマーとを含む水性/アルコールへアスタイリングゲルを記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,192,861号明細書
【特許文献2】米国特許第4,315,910号明細書
【特許文献3】英国特許出願公開第2291893A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、ポリマーをヘアスタイリング組成物において使用されるVOCとより適合性にする中和剤を特定することであった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、
(a)ポリマー(a)および溶媒混合物(b)の全重量を基準にして1重量%〜10重量%の少なくとも1種のポリマー、
(b)ポリマー(a)および溶媒混合物(b)の全重量を基準にして99重量%〜90重量%の溶媒混合物、並びに
(c)中和剤
を含むヘアスタイリング組成物であって;
前記少なくとも1種のポリマー(a)は少なくとも1つの酸官能基を有する1種以上のモノマーを重合単位として含み;
前記溶媒混合物(b)は(i)前記溶媒混合物の全重量を基準にして5重量%〜100重量%の少なくとも1種の揮発性有機溶媒、
(ii)前記溶媒混合物の全重量を基準にして95重量%〜0重量%の水、および
(iii)前記溶媒混合物の全重量を基準にして0重量%〜80重量%の少なくとも1種の噴射剤を含み;
前記中和剤(c):前記ポリマー(a)上の酸官能基のモル比が0:1〜1.2:1であり;
前記中和剤(c)が(i)テトラブチルアンモニウムヒドロキシドによるポリマーの酸基の10%〜30%の中和、および
(ii)アミノメチルプロパノールによるポリマーの酸基の90%〜70%の中和を含む;
ヘアスタイリング組成物を提供する。
一実施形態においては、ポリマー(a)は溶液の全重量を基準にして12重量%以下のポリマー固形分の溶液において10NTU以下の濁度を有する。
別の実施形態においては、ヘアスタイリング組成物は0%から30%への相対湿度で50%以下の貯蔵弾性率の低減を有する。あるいは、ヘアスタイリング組成物は0%から60%への相対湿度で75%以下の貯蔵弾性率の低減を有することができる。
本発明のヘアスタイリング組成物のさらに別の実施形態においては、ポリマー(a)は重合単位として、(i)当該ポリマーの重量を基準にして30重量%〜75重量%の、1.490以上の屈折率を有する1種以上のモノマー、(ii)当該ポリマーの重量を基準にして1重量%〜30重量%の、1種以上の酸官能性モノマー、および(iii)当該ポリマーの重量を基準にして5重量%〜69重量%の、1種以上の追加のモノマーを含むことができる。
さらに、モノマー(i)は1種以上のビニル芳香族モノマーを含むことができる。独立して、モノマー(iii)は1種以上のヒドロキシアルキル(メタ)アクリラートを含むことができる。ポリマーはブチルアクリラート/エチルアクリラート/メタクリル酸コポリマー、オクチルアクリルアミド/アクリラート/ブチルアミノエチル−メタクリラートコポリマー、メタクリロイルエチル−ベタイン/メタクリラートコポリマー、メタクリル酸/メタクリルエステルコポリマー、アクリラート/ヒドロキシエステルアクリラートコポリマー、メタクリル酸/アクリル酸エステルコポリマー、酢酸ビニル/クロトン酸コポリマー、酢酸ビニル/クロトン酸/ビニルネオデカノアート、アクリラートコポリマー、メタクリラート/アクリラートコポリマー/アミン塩、アクリラート/メタクリラートポリマー、アクリラート/アクリルアミドコポリマー、アクリラート/スクシナート/ヒドロキシアクリラートコポリマー、アクリラート/t−ブチルアクリルアミドコポリマー、アクリラート/C1−2スクシナート/ヒドロキシアクリラートコポリマー、アクリルアミド/ナトリウムアクリロイルジメチルタウラート/アクリル酸ポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択されうる。
本発明は、髪を所望の配置にセットする工程および髪に上記ヘアスタイリング組成物を適用する工程を含む、髪をスタイリングする方法も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において使用される場合、「ヘアスタイリング組成物」は髪を特定の形状もしくは配置に保持するために髪に使用されうる組成物である。このような組成物は典型的には、組成物にそして最終的に組成物が適用される髪に望ましい特性を付与するように設計された様々なポリマー樹脂、ガム、および/または接着剤を含む。このポリマーは、例えば、髪保持、ボリューム向上、外観向上および望ましい触感特性の付与の1以上をはじめとする様々な目的のために使用される。髪を特定の形状に保持するヘアスタイリング組成物の能力の多くは、組成物に使用される1種以上のポリマーからもたらされる。ヘアスタイリング組成物には、例えば、ヘアスプレー、スタイリングジェル、スプレージェルおよびムースが挙げられる。
【0015】
本明細書において使用され、Textbook of Polymer Science第2版、1971年においてFW Billmeyer,JR.によって定義されるように、「ポリマー」は、より小さな化学繰り返し単位の反応生成物からなる相対的に大きな分子である。
【0016】
ポリマー分子量は標準的な方法、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC、ゲル浸透クロマトグラフィー、すなわちGPCとも称される)などによって測定されることができる。一般に、ポリマーは1,000以上の重量平均分子量(Mw)を有する。いくつかのポリマーは数平均分子量(Mn)によって特徴付けられる。
【0017】
本明細書において使用される場合、「ポリマーの重量」とは、ポリマーの乾燥重量を意味する。
互いに反応してポリマーの繰り返し単位を形成することができる分子は、本明細書において「モノマー」と称される。本発明において有用なモノマーの種類の一例は、例えば、エチレン性不飽和モノマー(すなわち、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有するモノマー)である。典型的なエチレン性不飽和モノマーは500未満の分子量を有する。このようなモノマーの中には、例えば、ビニルモノマーがある。いくつかの好適なビニルモノマーには、例えば、スチレン、置換スチレン、ジエン、エチレン、エチレン誘導体およびこれらの混合物が挙げられる。エチレン誘導体には、例えば、以下のものの非置換もしくは置換体が挙げられる:酢酸ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリラート、(メタ)アクリルアミド、塩化ビニル、ハロゲン化アルケン、およびこれらの混合物。本明細書において使用される場合、「(メタ)アクリル」とはアクリルもしくはメタクリルを意味し、「(メタ)アクリラート」とはアクリラートもしくはメタクリラートを意味し、並びに「(メタ)アクリルアミド」とはアクリルアミドもしくはメタクリルアミドを意味する。「置換」とは、結合されている少なくとも1つの化学基、例えば、アルキル基、アルケニル基、ビニル基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、他の官能基およびこれらの組み合わせなどを有することを意味する。
【0018】
あるモノマーを単独でもしくは他のモノマーと共に重合することにより製造されるポリマーは、本明細書においては、そのモノマーを「重合単位として」含むと称される。
【0019】
本明細書において使用される場合、化合物の「標準沸点」は1気圧での沸点である。本明細書において使用される場合、「揮発性」化合物は250℃以下の標準沸点を有する化合物である。本明細書において使用される場合、「INCI」は化粧品原料国際命名法である。
【0020】
ヘアスタイリング組成物の「耐湿性」はヘアスタイリング組成物の「貯蔵弾性率低減」として測定される。本明細書において使用される場合、「貯蔵弾性率低減」は、0%の相対湿度で始まり特定の相対湿度で終わる場合の、与えられたヘアスタイリング組成物の貯蔵弾性率の低減パーセントを意味する。例えば、30%相対湿度で50%の貯蔵弾性率低減を有するヘアスタイリング組成物とは、0%の相対湿度でのその組成物の貯蔵弾性率が、相対湿度を30%に上昇させた場合に50%低減したことを意味する。
【0021】
ヘアスタイリング組成物に使用される特定のポリマーの「透明性」は以下で詳細に説明されるようなネフェロ濁度単位(Nephelometric Turbidity Units;NTU)の単位でのその濁度によって評価されうる。(溶液の重量を基準にして)12重量%以下のポリマー固形分の溶液において、ポリマーが10NTU以下の濁度を有する場合には、そのポリマーは「向上した透明性」を有すると称されうる。
【0022】
本明細書において使用される場合、「有機」化合物は、無機化合物であると一般的に認められている炭素含有化合物を除く、1以上の炭素原子を含む化合物である。無機化合物であると一般的に認められている炭素含有化合物の例には以下のものが挙げられる:酸化炭素(例えば、二酸化炭素など)、二硫化炭素、金属シアン化物、金属カルボニル、ホスゲン、硫化カルボニル、金属炭酸塩および金属炭酸水素塩。
【0023】
ある実施形態においては、本発明のヘアスタイリング組成物はヘアスプレーとして好適である。このような実施形態のいくつかにおいては、ヘアスタイリング組成物はポンプスプレーとしてもしくはエアロゾルスプレーとして好適である。このような実施形態のいくつかにおいては、ヘアスタイリング組成物はエアロゾルスプレーとして好適である。
【0024】
本発明のヘアスタイリング組成物は、少なくとも1つの酸官能基を有する1種以上のモノマーを重合単位として含む少なくとも1種のポリマーを含む(本明細書においては「ポリマー(a)」と称される)。
【0025】
ある実施形態においては、ポリマー(a)は1種以上のビニルポリマーを含む。ある実施形態においては、ヘアスタイリング組成物中の全てのポリマー(a)はビニルポリマーである。本明細書において使用される場合、ビニルポリマーはビニルモノマーの重合によって製造されるポリマーである。ある実施形態においては、ビニルポリマーはビニルモノマーのフリーラジカル重合によって製造される。
【0026】
ポリマー(a)の組成に関わらず、ある実施形態においては、25,000以上、または50,000以上のMwを有する1種以上のポリマー(a)が使用される。独立して、ある実施形態においては、300,000以下、または150,000以下のMwを有する1種以上のポリマー(a)が使用される。独立して、ある実施形態においては、全てのポリマー(a)は25,000〜300,000のMwを有する。
【0027】
本発明のポリマー(a)は、1.490以上の屈折率を有する1種以上のモノマー(本明細書において「モノマー(i)」と称される)の重合単位を含む。モノマーの屈折率は、例えば、25℃で、ASTM標準 D−1218−02によって測定されうる。ある実施形態においては、モノマー(i)は1.500以上、または1.530以上の屈折率を有する1種以上のモノマーを含む。ある実施形態においては、すべてのモノマー(i)は1.530以上の屈折率を有するモノマーである。
【0028】
ある実施形態においては、モノマー(i)は1種以上のビニルモノマーを含む。ある実施形態においては、モノマー(i)は1種以上のビニル芳香族モノマーを含む。ビニル芳香族モノマーは1以上の炭素−炭素二重結合および1以上の芳香環を含むモノマーである。好適なビニル芳香族モノマーには、例えば、ベンジル基を有するモノマー、フェニル基を有するモノマー、スチレン、スチレンの誘導体(例えば、アルファ−メチルスチレンなど)およびこれらの混合物が挙げられる。ある実施形態においては、すべてのモノマー(i)はビニル芳香族モノマーである。ある実施形態においては、モノマー(i)はスチレン、アルファ−メチルスチレンもしくはこれらの混合物の1種以上を含む。ある実施形態においては、すべてのモノマー(i)はスチレン、アルファ−メチルスチレンおよびこれらの混合物から選択される。
好適なモノマー(i)の混合物も好適である。
【0029】
本発明のポリマー(a)におけるモノマー(i)の重合単位の量は、ポリマー(a)の重量を基準にして30重量%〜75重量%である。ある実施形態においては、モノマー(i)の重合単位の量はポリマーの重量を基準にして35重量%以上、もしくは39重量%以上である。ある実施形態においては、モノマー(i)の重合単位の量はポリマーの重量を基準にして65重量%以下、もしくは55重量%以下である。
【0030】
本発明のポリマー(a)は、少なくとも1つの酸官能基を有する1種以上のモノマー(本明細書においては「モノマー(ii)」と称される)の1以上の重合単位をさらに含む。好適な酸官能基には、例えば、スルホン酸基およびカルボン酸基が挙げられる。この酸官能基は中性形態もしくはイオン形態もしくはその混合でありうる。いくつかの好適なモノマー(ii)には、例えば、少なくとも1つの酸官能基を有するビニルモノマーが挙げられる。独立して、ある実施形態においては、カルボン酸基を有する少なくとも1種のモノマー(ii)が使用される。ある実施形態においては、すべてのモノマー(ii)はカルボン酸基を有する。
【0031】
スルホン酸基を有する好適なモノマー(ii)には、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が挙げられる。好適なモノマー(ii)には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの混合物が挙げられる。
ある実施形態においては、モノマー(ii)は1つだけの酸官能基を有する少なくとも1種のモノマーを含む。
【0032】
ある実施形態においては、本発明のポリマー(a)は無水マレイン酸の重合単位を含まない。ある実施形態においては、本発明のポリマー(a)は無水物基を有するモノマーの重合単位を含まない。ある実施形態においては、本発明のポリマー(a)は1より多いカルボキシル基を有するモノマーの重合単位を含まない。ある実施形態においては、本発明のポリマー(a)は1より多い酸官能基を有するモノマーの重合単位を含まない。
好適なモノマー(ii)の混合物も好適である。
【0033】
ポリマー中でのモノマー(ii)の重合単位の量はポリマーの重量を基準にして1重量%〜30重量%である。ある実施形態においては、ポリマー中でのモノマー(ii)の重合単位の量はポリマーの重量を基準にして2重量%以上、もしくは5重量%以上、もしくは10重量%以上、もしくは12重量%以上、もしくは14重量%以上、もしくは18重量%以上、もしくは20重量%以上、もしくは22重量%以上である。
【0034】
ある実施形態においては、存在するすべてのモノマー(i)は酸官能基を有しないモノマーである。独立して、ある実施形態においては、存在するすべてのモノマー(ii)は1.490未満の屈折率を有するモノマーである。存在するすべてのモノマー(i)が酸官能基を有しないモノマーであり、かつ存在するすべてのモノマー(ii)が1.490未満の屈折率を有するモノマーである実施形態も意図される。
【0035】
1.490以上の屈折率を有し、かつ少なくとも1つの酸官能基も有する1種以上のモノマーが使用される実施形態も意図される。このような実施形態においては、1.490以上の屈折率を有するか、または少なくとも1つの酸官能基を有するか、または1.490の屈折率と少なくとも1つの官能基との双方を有するモノマーの重合単位の全重量を見いだし、各重合単位を一旦計数することにより、ポリマー(a)中でのモノマー(i)および(ii)の重合単位の量を計算することが意図される。その全重量はポリマー(a)の重量を基準にして31重量%〜95重量%であろう。
【0036】
1.490以上の屈折率を有し、かつ少なくとも1つの酸官能基も有する1種以上のモノマーが使用される実施形態の中では、いくつかの好適なこのようなモノマーには、例えば、スチレンスルホン酸および置換スチレンスルホン酸がある。
【0037】
本発明のポリマー(a)は1種以上の追加のモノマー(本明細書においては「モノマー(iii)」と称される)の重合単位をさらに含む。モノマー(iii)として好適なモノマーはモノマー(i)ではなく、かつモノマー(ii)でもないモノマーである。ある実施形態においては、モノマー(iii)には、1種以上のビニルモノマーが挙げられる。ある実施形態においては、すべてのモノマー(iii)はビニルモノマーである。
【0038】
いくつかの好適なモノマー(iii)には、例えば、オレフィン、ジエンおよび(メタ)アクリラートモノマーが挙げられる。本明細書において使用される場合、(メタ)アクリラートモノマーには、アクリル酸およびメタクリル酸の置換および非置換エステルおよびアミドが挙げられる。いくつかの好適なモノマー(iii)には、例えば、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、例えば、アルキル基が1〜20個の炭素原子を有する、線状、分岐、環式もしくはこれらの組み合わせであるものなどが挙げられる。ある実施形態においては、モノマー(iii)には、1種以上のC−C20アルキルアクリラートが挙げられる。ある実施形態においては、モノマー(iii)には、2個以上の炭素原子を有するか、または3個以上の炭素原子を有する1種以上のアルキルアクリラートが挙げられる。独立して、ある実施形態においては、モノマー(iii)には、10個以下の炭素原子を有するか、または8個以下の炭素原子を有する1種以上のアルキルアクリラートが挙げられる。1種以上のアルキルアクリラートが使用されるある実施形態においては、ポリマー中でのアルキルアクリラートモノマーの重合単位の量は、ポリマーの重量を基準にして、5重量%以上、もしくは10重量%以上である。独立して、1種以上のアルキルアクリラートが使用されるある実施形態においては、ポリマー中でのアルキルアクリラートモノマーの重合単位の量は、ポリマーの重量を基準にして、50重量%以下、もしくは40重量%以下である。
【0039】
独立して、ある実施形態においては、モノマー(iii)には1種以上のC−C20アルキルメタクリラートが挙げられる。ある実施形態においては、モノマー(iii)には、6個以下の炭素原子を有するか、もしくは3個以下の炭素原子を有するか、もしくは2個以下の炭素原子を有する1種以上のアルキルメタクリラートが挙げられる。ある実施形態においては、モノマー(iii)は1種以上のアルキルアクリラートを含み、かつ1種以上のアルキルメタクリラートも含む。1種以上のアルキルメタクリラートが使用されるある実施形態においては、ポリマー中でのアルキルメタクリラートモノマーの重合単位の量は、ポリマーの重量を基準にして、3重量%以上、もしくは6重量%以上である。独立して、1種以上のアルキルメタクリラートが使用されるある実施形態においては、ポリマー中でのアルキルメタクリラートモノマーの重合単位の量は、ポリマーの重量を基準にして、25重量%以下、もしくは12重量%以下である。
【0040】
独立して、ある好適なモノマー(iii)には、さらなる例として(メタ)アクリル酸の置換アルキルエステルも挙げられ、このエステルは(メタ)アクリル酸のアルキルエステルの構造を有し、そのエステル基が例えば1以上のヒドロキシル基のような1以上の置換基を有する。ある好適なモノマー(iii)には、例えば、アルキル基が1〜10個の炭素原子を有する(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。ある実施形態においては、モノマー(iii)はアルキル基が6個以下の炭素原子または4個以下の炭素原子を有する、1種以上の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルを含む。ある好適な(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルには、例えば、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリラート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリラート、およびこれらの混合物が挙げられる。1種以上の(メタ)アクリル酸の置換アルキルエステルが使用されるある実施形態においては、ポリマー中での(メタ)アクリル酸の置換アルキルエステルの重合単位の量はポリマーの重量を基準にして、2重量%以上、もしくは5重量%以上である。独立して、1種以上の(メタ)アクリル酸の置換アルキルエステルが使用されるある実施形態においては、ポリマー中での(メタ)アクリル酸の置換アルキルエステルの重合単位の量はポリマーの重量を基準にして、40重量%以下、もしくは20重量%以下である。
【0041】
ある実施形態においては、モノマー(iii) は1種以上のアルキルアクリラート、1種以上のアルキルメタクリラート、および1種以上の置換アルキル(メタ)アクリラートを含む。
【0042】
ある実施形態においては、モノマー(iii)は置換アルキル(メタ)アクリラートを含まない。
【0043】
ある実施形態においては、モノマー(ii)の重合単位の量と(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルの重合単位の量とを足した合計はポリマーの重量を基準にして、10重量%以上、もしくは20重量%以上である。独立して、ある実施形態においては、モノマー(ii)の重合単位の量と(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルの重合単位の量とを足した合計はポリマーの重量を基準にして、50重量%以下、もしくは40重量%以下である。
【0044】
ある実施形態においては、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルの量は、ポリマーの重量を基準にして、5重量%以下、もしくは0重量%であり、かつモノマー(ii)の量は、ポリマーの重量を基準にして、20重量%以上である。
【0045】
モノマー(ii)の組成とは無関係に、本発明のポリマー(a)におけるすべてのモノマー(単一種もしくは複数種)(iii)の重合単位の全量はポリマー(a)の重量を基準にして30重量%〜89重量%である。ある実施形態においては、モノマー(iii)の重合単位の全量は、ポリマー(a)の重量を基準にして、75重量%以下、または60重量%以下である。
好適なモノマー(iii)の混合物も好適である。
【0046】
少なくとも1つの酸官能基を有する少なくとも1種のモノマーを含む好適なポリマーの例としては、限定されないが、ブチルアクリラート/エチルアクリラート/メタクリル酸コポリマー、オクチルアクリルアミド/アクリラート/ブチルアミノエチル−メタクリラートコポリマー、メタクリロイルエチル−ベタイン/メタクリラートコポリマー、メタクリル酸/メタクリルエステルコポリマー、アクリラート/ヒドロキシエステルアクリラートコポリマー、メタクリル酸/アクリル酸エステルコポリマー、酢酸ビニル/クロトン酸コポリマー、酢酸ビニル/クロトン酸/ビニルネオデカノアート、アクリラートコポリマー、メタクリラート/アクリラートコポリマー/アミン塩、AMP−アクリラート/ジアセトン−アクリルアミドコポリマー、アクリラート/メタクリラートポリマー、アクリラート/アクリルアミドコポリマー、アクリラート/スクシナート/ヒドロキシアクリラートコポリマー、アクリラート/t−ブチルアクリルアミドコポリマー、アクリラート/C1−2スクシナート/ヒドロキシアクリラートコポリマー、アクリルアミド/ナトリウムアクリロイルジメチルタウラート/アクリル酸ポリマー、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0047】
ある実施形態においては、1種以上の連鎖移動剤がポリマー(a)の重合に使用される。連鎖移動剤はフリーラジカル重合中の連鎖移動プロセスを促進するのに有効な化合物である。連鎖移動剤は、重合プロセスにより製造されるポリマーの分子量を低減させるように機能することが意図される。いくつかの好適な連鎖移動剤には、例えば、メルカプタン、スルフィドおよびハロゲン化物が挙げられる。いくつかの好適なハロゲン化物には、例えば、ハロゲン化アルキル、例えば、ハロメタン、およびハロゲン化エステル(例えば、ハロゲン化アセタートなど)が挙げられる。好適なスルフィドには、例えば、ジアルキルジスルフィド、ジアリールジスルフィド、ジアロイルジスルフィド、およびキサントゲンが挙げられる。いくつかの好適なメルカプタンには、例えば、非置換アルキルメルカプタンおよび置換アルキルメルカプタンが挙げられる。置換アルキルメルカプタンには、例えば、1以上のチオール基に加えて、分子のアルキル部分に1以上のヒドロキシル基および/または1以上のカルボキシル基が結合している化合物が挙げられる。ある実施形態においては、1種以上の非置換アルキルメルカプタンが使用される。
【0048】
1種以上の連鎖移動剤が使用される実施形態のいくつかにおいては、連鎖移動剤の量は全モノマー100グラムあたり0.5ミリモル以上、または1ミリモル以上、または2ミリモル以上である。独立して、1種以上の連鎖移動剤が使用される実施形態のいくつかにおいては、連鎖移動剤の量は、全モノマー100グラムあたり、20ミリモル以下、または10ミリモル以下、または5ミリモル以下である。
【0049】
ある実施形態においては、本発明のポリマー(a)はビニルラクタムであるモノマーの重合単位を含まない。独立して、ある実施形態においては、本発明のポリマー(a)はアクリル酸のアミドもしくはメタクリル酸のアミドであるモノマーの重合単位を含まない。独立して、ある実施形態においては、本発明のポリマー(a)はアミド化合物であるモノマーの重合単位を含まない。独立して、ある実施形態においては、本発明のポリマー(a)は酢酸ビニルの重合単位を含まない。独立して、ある実施形態においては、本発明のポリマー(a)は500以上の分子量を有するモノマーの重合単位を含まない。
【0050】
独立して、ある実施形態においては、本発明のポリマー(a)における重合単位の全ては、スチレン、アルキル置換スチレン、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、連鎖移動剤およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0051】
ポリマー(a)の中和は有機溶媒、水およびこれらの混合物とのその適合性を向上させ、向上した透明性を有するヘアスタイリング組成物を生じさせる。酸含有ポリマーの中和方法の説明は中和剤の論述と共に以下に提供される。完全な中和の際に、ポリマーは、(溶液の重量を基準にして)12重量%以下のポリマー固形分の溶液において120NTU以下の濁度を有しうる。ある実施形態においては、ポリマー(a)は「向上した透明性」を有し、この「向上した透明性」とは、本明細書においては、(溶液の重量を基準にして)12重量%以下のポリマー固形分の溶液において、それが10NTU以下の濁度を有することを意味する。
【0052】
本発明の組成物は貯蔵安定性である。すなわち、密閉容器内に室温で6ヶ月間貯蔵した後で、目に見える沈殿はなくかつ濁度に変化はない。ある実施形態においては、室温で18か月の貯蔵後に、目に見える沈殿はなくかつ濁度に変化はない。
【0053】
本明細書において使用される場合、ポリマーとヘアスタイリング組成物中の他の成分との適合性は、そのポリマーを含む組成物の濁度(すなわち、透明性)を測定することにより評価されうる。特に、以下の実施例のセクションに記載されるようにポリマーを含む試験溶液が製造され、濁度について試験される。試験溶液の組成は、そのポリマーを含む一般的なヘアスタイリング組成物の組成に相当する。完全な中和の際に、本明細書においては、(溶液の重量を基準にして)12重量%以下のポリマー固形分の試験溶液において、そのポリマーを含む試験溶液が120ネフェロ濁度単位(Nephelometric Turbidity Units;NTU)以下の濁度を有する場合には、ポリマーは適合性であると見なされる。(溶液の重量を基準にして)12重量%のポリマー固形分の試験溶液において、ポリマーが10NTU以下の濁度を有する場合には、向上した透明性を有すると見なされる。よって、ポリマーの「適合性」は、本明細書において意味される場合には、試験溶液中のポリマーの性能に基づいて決定される。試験溶液は典型的なヘアスタイリング組成物に相当する組成を有し、かつ以下に詳細に記載されるように、NTUで測定される安定性について分析され評価される。
【0054】
一般に、あるポリマーが本明細書に記載される濁度(透明性)試験に従って特定の組成物において適合性である場合に、そのポリマーはヘアスタイリング組成物の成分の全てと適合性であるとは限らないことが考えられる。例えば、ポリマーの他の特性、例えば、耐湿性は組成物の他の成分と一緒にされる場合に影響を受けるであろう可能性がある。説明のためには、ポリマー単独では溶液中で透明であり、かつ組成物に含まれるべき1種以上の他の添加剤の溶液も本明細書に記載される濁度試験によって透明である例を考慮することが有用である。しかし、2つの溶液の組み合わせは濁った組成物を生じさせる場合があり、様々な成分間で適合性を欠くことを示す。適切に選択された添加剤のセットはおプリマーを含む透明な溶液を生じさせることができ、このことは良好な適合性を示す。添加剤の濃度および相対的な量も所望の水準の適合性を達成するのに重要である場合がある。
【0055】
さらに、本発明のヘアスタイリング組成物は中和剤を含む。ポリマー(a)が「そのまま」で、またはポリマー(a)に含まれる酸官能基の一部分もしくは全部の中和の際に、ヘアスタイリング組成物に可溶性であることが意図される。酸官能基の中和は典型的には、ヘアスタイリング組成物にポリマー(a)が溶解するのを助ける。さらに、ポリマー(a)がヘアスタイリング組成物に可溶性である場合でさえ、ポリマー(a)に含まれる酸官能基の一部分もしくは全部の中和はポリマー(a)を、本発明のヘアスタイリング組成物中に存在する揮発性有機化合物(VOC)とさらに適合性に、すなわち、さらにより可溶性にすることができる。VOCの説明は組成物セクションに示される。本発明のVOC含有ヘアスタイリング組成物中でのポリマー(a)の増大した溶解度は、ひいては組成物の透明性を増大させる。
【0056】
本発明に従って、中和剤はテトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)およびアミノメチルプロパノール(AMP)を含む。透明性のために好ましいTBAH対AMPの比率は(i)テトラブチルアンモニウムヒドロキシドによるポリマーの酸基の10%〜100%の中和、および(ii)アミノメチルプロパノールによるポリマーの酸基の90%〜0%の中和である。
【0057】
耐湿性のために好ましいTBAH対AMPの比率は(i)テトラブチルアンモニウムヒドロキシドによるポリマーの酸基の0%〜90%の中和、および(ii)アミノメチルプロパノールによるポリマーの酸基の100%〜10%の中和である。
【0058】
透明性および耐湿性の双方のために最適の比率は(i)テトラブチルアンモニウムヒドロキシドによるポリマーの酸基の10%〜30%の中和、および(ii)アミノメチルプロパノールによるポリマーの酸基の90%〜70%の中和である。
【0059】
中和剤は、中和剤:ポリマー(a)上の酸官能基のモル比0:1〜1.2:1で存在する。組成物中のAMPの割合より大きな割合のTBAHの使用は許容できない粘着性のヘアスタイリング組成物を生じさせることに留意されたい。
【0060】
当業者によく知られているように、ヘアスタイリング組成物に使用される中和剤の量はポリマー(a)の酸価を基準にして計算されることができ、ポリマー(a)におけるすべての酸の60%〜120%、例えば、80%〜100%を中和することが推奨される。中和剤のこの量は向上した透明性を提供するであろうし、並びにヘアスタイリング組成物における他の特性の性能の程度を維持するであろう。ある実施形態においては、使用される中和剤の量「x」(中和剤のグラム単位)は次の式を用いて計算されうる:
【数1】

X=必要とされる中和剤のグラム
A=ミリモル酸/グラムポリマー固形分
B=組成物中のポリマー(固形分)のグラム
C=中和剤の分子量
D=所望の中和剤%。
【0061】
ある実施形態においては、中和剤は、場合によっては、上述のTBAHおよびAMPに加えて、他の中和剤化合物を含むことができる。このような他の中和剤化合物は、例えば、アミン、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、水酸化アンモニウムおよびこれらの混合物の1種以上から選択されうる。好適なアミン中和剤には、例えば、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N,N−ジメチル−2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、モノ−イソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、モルホリンおよびこれらの混合物が挙げられる。好適なアルカリもしくはアルカリ土類金属水酸化物には、例えば、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが挙げられる。ある実施形態においては、中和剤は2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N,N−ジメチル−2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、水酸化カリウム、トリエタノールアミンおよびトリイソプロパノールアミンの1種以上から選択される。好適な中和剤化合物の混合物も好適である。
【0062】
本発明は何らかの理論に拘束されず、ある実施形態においては、1種以上の中和剤(もしくは組成物中の他の化合物)はポリマー(a)と他の材料との組み合わせが向上した適合性を有し、この向上した適合性が組成物の向上した透明性を提供するのに充分にポリマー(a)と適合性であろうと考えられる。
【0063】
揮発性有機化合物(VOC)含量によって本発明の組成物を特徴付けるのが有用である。組成物のVOC含量は組成物の全重量を基準にした重量パーセンテージで表される全ての揮発性有機化合物の量である。250℃以下の標準沸点を有する2種以上の有機化合物が組成物中に使用される場合には、それらは組成物に添加される前に一緒に混合されていてもよいし、一緒に混合されていなくてもよいことが意図される。ある実施形態においては、本発明の組成物は30%〜95%のVOC含量を有する。
【0064】
本明細書において、「低VOC」実施形態と称されるある実施形態においては、ヘアスタイリング組成物のVOC含量は30%〜65%である。ある低VOC実施形態においては、VOC含量は45%以上、または50%以上である。独立して、ある低VOC実施形態においては、VOC含量は60%以下である。
【0065】
いくつかの低VOC実施形態はエアロゾルスプレーとして有用であろうし、いくつかの低VOC実施形態はポンプスプレーとして有用であろうことが意図される。
【0066】
本明細書において、「高VOC」実施形態と称されるある実施形態においては、ヘアスタイリング組成物のVOC含量は70%〜95%である。ある高VOC実施形態においては、VOC含量は75%以上である。どくりつして、ある高VOC実施形態においては、VOC含量は90%以下、または85%以下である。
【0067】
いくつかの高VOC実施形態はエアロゾルスプレーとして有用であろうし、いくつかの高VOC実施形態はポンプスプレーとして有用であろうことが意図される。
【0068】
VOC含量が0%〜30%未満である本明細書において「極低VOC」実施形態と称される実施形態も意図される。ある極低VOC実施形態においては、噴射剤は使用されない。ある極低VOC実施形態は、例えば、スプレージェルとして有用であろうことが意図される。あるスプレージェルは1種以上の増粘剤を含む。増粘剤が使用されるあるスプレージェルにおいては、増粘剤の量は増粘剤:ポリマー(a)の重量比0.05:1〜1:1を有する。
【0069】
極低VOC実施形態の中には、VOC含量が0%〜1%である本明細書において「超極低VOC」実施形態と称されるある実施形態が意図される。ある超極低VOC実施形態は、例えば、非エアロゾルムース、ヘアスタイリングジェル、ヘアセッティングローションおよびヘアポマードとして有用であろう。
【0070】
非エアロゾルムースは典型的には、1種以上のベタイン界面活性剤を、場合によっては、ベタイン界面活性剤:ポリマー(a)の重量比0.05:1〜1:1を有する量で含む。ヘアスタイリングジェルは典型的には1種以上の増粘剤(レオロジー調整剤とも称される)を、場合によっては、増粘剤:ポリマー(a)の重量比0.05:1〜0.5:1を有する量で含む。ヘアセッティングローションは典型的には、1種以上の脂肪化合物(すなわち、おそらくはいくつかある化学基の中で特に、8以上の炭素原子の炭化水素鎖を含む化合物)を、場合によっては、脂肪化合物:ポリマー(a)の重量比0.1:1〜2:1を有する量で含む。あるヘアセッティングローションにおいては、脂肪化合物は20℃で液体である。ワックスは20℃で固体の脂肪化合物である。ヘアポマードは場合によっては、1種以上のワックスを、場合によっては、ワックス:ポリマー(a)の重量比0.1:1〜2:1を有する量で含む。
【0071】
ある実施形態においては、組成物は泡を形成する傾向がある。ある状況では、このような泡は望ましくない。例えば、空気の泡の存在は処理された髪の輝きを低下させる場合がある。そのような実施形態の中では、シリコーン脱泡剤が場合によっては組成物に添加されてもよいことが意図される。シリコーン脱泡剤が使用される場合には、シリコン脱泡剤:ポリマー(a)の重量比は、例えば、0.01:1〜0.5:1、または0.05:1〜0.15:1であり得る。
【0072】
ポリマー(a)に加えて、本発明のいくつかの組成物は溶媒混合物(b)を含み、この溶媒混合物(b)は1種以上の揮発性有機溶媒、水、および場合によっては1種以上の噴射剤を含む。溶媒混合物(b)中に含まれる揮発性有機溶媒は本明細書においては「溶媒(sb)」と称される。溶媒(sb)は25℃で液体であり、かつポリマー(a)を溶解させることができる。ある実施形態においては、200℃以下、または150℃以下、または100℃以下の沸点を有する1種以上の溶媒(sb)が使用される。独立して、ある実施形態においては、30℃以上、または45℃以上、または60℃以上の沸点を有する1種以上の溶媒(sb)が使用される。ある実施形態においては、ヘアスタイリング組成物に使用される全ての有機溶媒が溶媒(sb)である。独立して、ある実施形態においては、ヘアスタイリング組成物に使用される全ての有機溶媒は100℃以下の標準沸点を有する。
【0073】
いくつかの好適な溶媒(sb)には、例えば、線状、環式、分岐もしくはその組み合わせであることができる炭化水素;ケトン;エーテル;フラン;完全もしくは部分ハロゲン化炭化水素;アルコール;芳香族化合物;およびこれらの混合物が挙げられる。ある実施形態においては、溶媒(sb)は1種以上のアルコールを含む。好適なアルコールには、例えば、1つのヒドロキシ基を有するC−C炭化水素が挙げられる。ある好適なアルコールはエチルアルコールである。
【0074】
ある実施形態においては、溶媒(sb)は化粧品として許容可能である。すなわち、溶媒(sb)はヘアスプレーおよび/または化粧品における使用(すなわち、人の髪および/または肌との接触を伴う使用)に好適である。
好適な有機溶媒の混合物も好適である。
ある実施形態においては、1種以上のアルコール以外の有機溶媒は溶媒混合物(b)中に使用されない。
【0075】
溶媒混合物(b)中の溶媒(sb)の量は溶媒混合物(b)の重量を基準にして5重量%〜95重量%である。ある実施形態においては、溶媒混合物(b)中の溶媒(sb)の量は溶媒混合物(b)の重量を基準にして5重量%〜90重量%である。
【0076】
溶媒混合物(b)中の水の量は溶媒混合物(b)の重量を基準にして5重量%〜95重量%である。ある実施形態においては、溶媒混合物(b)中の水の量は溶媒混合物(b)の重量を基準にして10重量%〜50重量%である。
ある実施形態においては、噴射剤は溶媒混合物(b)中に使用されない。
【0077】
本発明の組成物がエアロゾルスプレーにおいて使用されることが意図される実施形態のなかでは、好適な噴射剤も使用される。噴射剤は25℃および1気圧で気体である。いくつかの好適な噴射剤は、24℃以下、または0℃以下、または−20℃以下の標準沸点を有する。独立して、いくつかの好適な噴射剤は、−196℃以上、または−100℃以上、または−50℃以上の標準沸点を有する。
【0078】
ある実施形態においては、1種以上の有機噴射剤が使用される。ある実施形態においては、使用される全ての噴射剤が有機物である。
【0079】
1気圧での沸点とは無関係に、「液化噴射剤」と称されるある噴射剤は加圧エアロゾル缶の内側で25℃で液体である。このような液化噴射剤のいくつかは、例えば、ハロカーボン、炭化水素もしくはこれらの混合物である。「圧縮ガス噴射剤」と称されるある噴射剤は加圧エアロゾル缶の内側で25℃で気体のままである。
【0080】
いくつかの好適な噴射剤には、例えば、4個以下の炭素原子を有するアルカン、2個の炭素原子を有するフッ素化炭化水素、ジメチルエーテル、およびこれらの混合物がある。いくつかの好適な噴射剤には、例えば、n−ブタン、イソブタン、プロパン、ジメチルエーテル、1,1−ジフルオロエタン、テトラフルオロエタン、およびこれらの混合物がある。ある実施形態においては、噴射剤はジメチルエーテル、1,1−ジフルオロエタン、テトラフルオロエタン、もしくはこれらの混合物の1種以上を含む。ある実施形態においては、すべての噴射剤は、ジメチルエーテル、1,1−ジフルオロエタン、テトラフルオロエタンおよびこれらの混合物から選択される。
【0081】
ある実施形態においては、水溶性噴射剤(すなわち、25℃で自己(autogenous)圧力で水に可溶性である噴射剤)が使用される。自己圧力は、その材料の揮発によりもたらされる密閉エアロゾル缶の内部での圧力である。ある好適な水溶性噴射剤は、例えば、ジメチルエーテルである。ある実施形態においては、使用されるすべての噴射剤が水溶性である。ある実施形態においては、使用される唯一の噴射剤がジメチルエーテルである。
【0082】
1種以上の噴射剤が使用されるある実施形態においては、噴射剤の量は、溶媒混合物(b)の重量を基準にして25重量%以上、または35重量%以上、またはさらには45重量%以上である。独立して、1種以上の噴射剤が使用されるある実施形態においては、噴射剤の量は、溶媒混合物(b)の重量を基準にして80重量%以下、または60重量%以下、またはさらには55重量%以下である。
【0083】
本発明の様々な実施形態の全てのなかで、いくつかを以下のように例示するが、実施形態を限定することは意図されていない。
1つの実施形態においては、溶媒混合物(b)は、溶媒混合物(b)の重量を基準にして30重量%〜50重量%の水、および50重量%〜70重量%の溶媒(sb)を含み、噴射剤を含まない。
第2の実施形態においては、溶媒混合物(b)は、溶媒混合物(b)の重量を基準にして5重量%〜25重量%の水、および75重量%〜90重量%の溶媒(sb)を含み、噴射剤を含まない。
第3の実施形態においては、溶媒混合物(b)は、溶媒混合物(b)の重量を基準にして45重量%〜55重量%の噴射剤、30重量%〜45重量%の水および0重量%〜25重量%の溶媒(sb)を含む。
第4の実施形態においては、溶媒混合物(b)は、溶媒混合物(b)の重量を基準にして40重量%〜60重量%の噴射剤、5重量%〜25重量%の水および15重量%〜85重量%の溶媒(sb)を含む。
第5の実施形態においては、溶媒混合物(b)は、溶媒混合物(b)の重量を基準にして40重量%〜60重量%の噴射剤、0重量%〜1重量%の水および40重量%〜60重量%の溶媒(sb)を含む。
第6の実施形態においては、溶媒混合物(b)は、溶媒混合物(b)の重量を基準にして0重量%〜1重量%の水および99重量%〜100重量%の溶媒(sb)を含み、噴射剤を含まない。
【0084】
溶媒混合物(b)を使用する実施形態の中では、本発明のヘアスタイリング組成物中に存在するポリマー(a)の量は、ポリマー(a)と溶媒混合物(b)との重量の合計を基準にして1重量%〜10重量%である。ある実施形態においては、ポリマー(a)の量は、ポリマー(a)と溶媒混合物(b)との重量の合計を基準にして2重量%以上、または3重量%以上、または4重量%以上である。ある実施形態においては、ポリマー(a)の量は、ポリマー(a)と溶媒混合物(b)との重量の合計を基準にして使用される適合性ポリマーの量は、組成物の全重量を基準にして8重量%以下、または6重量%以下、または5重量%以下である。
【0085】
1種以上のアジュバント使用される実施形態のなかでは、アジュバントには、例えば、ポリマー(a)以外の1種以上のポリマー、1種以上の防腐剤(例えば、有機酸、イソチアゾロン、ヨードプロピニルブチルカルバマート、ベンジルアルコール、イミダゾリジニルウレアおよびアルキルパラベンの1種以上など);増粘剤;保湿剤(グリセリン、加水分解シルクタンパク質、および加水分解小麦タンパク質など);コンディショニング剤、例えば、パンテノール;コンディショニング剤(好適なコンディショニング剤のさらに一般的なおよび具体的な詳細について米国特許第5,164,177号が参考にされうる);乳化剤;帯電防止剤;抽出物;タンパク質;ビタミン;着色剤;UV保護剤;香料;および防蝕剤が挙げられうる。ある実施形態においては、アジュバントは使用されない。
【0086】
1種以上のアジュバントが使用されるある実施形態においては、アジュバントの全量の重量:ポリマー(a)の重量の比率は0.01以上:1、または0.05以上:1、または0.1以上:1である。独立して、1種以上のアジュバントが使用されるある実施形態においては、アジュバントの全量の重量:ポリマー(a)の重量の比率は1.4以下:1、または1.2以下:1、または1.1以下:1である。
【0087】
ポリマー(a)以外の1種以上のポリマーが本発明の組成物に使用される実施形態のなかでは、ポリマー(a)以外のポリマーは1種以上の髪固定ポリマーであることができ、例えば、ブチルアクリラート/エチルアクリラート/メタクリル酸コポリマー、ポリ(ビニルピロリドン)/酢酸ビニルコポリマー、オクチルアクリルアミド/アクリラート/ブチルアミノエチル−メタクリラートコポリマー、ビニルカプロラクタム/ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチル−メタクリラートコポリマー、メタクリロイルエチル−ベタイン/メタクリラートコポリマー、メタクリル酸/メタクリルエステルコポリマー、アクリラート/ヒドロキシエステルアクリラートコポリマー、メタクリル酸/アクリル酸エステルコポリマー、およびポリエステルなどである。ポリマー(a)とブレンドするのに有用であり得る追加の髪固定ポリマーには、例えば(INCI名で)、PVP/VAコポリマー、PVMのエチルエステル/MAコポリマー、PVMのブチルエステル/MAコポリマー、酢酸ビニル/クロトン酸コポリマー、酢酸ビニル/クロトン酸/ビニルネオデカノアート、VA/ブチルマレアート/イソボルニルアクリラートコポリマー、アクリラートコポリマー、ジグリコール/CHDM/イソフタラート/SIPコポリマー、アクリラート/ヒドロキシエステルアクリラートコポリマー、メタクリラート/アクリラートコポリマー/アミン塩、AMP−アクリラート/ジアセトン−アクリルアミドコポリマー、AMPD−アクリラート/ジアセトン−アクリルアミドコポリマー、アクリラート/メタクリラートポリマー、アクリラート/アクリルアミドコポリマー、PVP/ビニルカプロラクタム/DMAPAアクリラートコポリマー、ポリビニルカプロラクタム、イソブチレン/エチルマレイミド/ヒドロキシエチルマレイミドコポリマー、アクリラート/スクシナート/ヒドロキシアクリラートコポリマー、ポリウレタン−1,オクチルアクリルアミド/アクリラート/ブチルアミノエチルメタクリラートコポリマー、ビニルカプロラクタム/VP/ジメチルアミノエチルメタクリラートコポリマー、アクリラート/t−ブチルアクリルアミドコポリマー、アクリラート/C1−2スクシナート/ヒドロキシアクリラートコポリマー、アクリルアミド/ナトリウムアクリロイルジメチルタウラート/アクリル酸ポリマー、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0088】
ポリマー(a)以外の1種以上のポリマーが本発明の組成物に使用される実施形態のなかでは、ポリマー(a)以外のポリマーは1種以上のレオロジー調整剤ポリマー、例えば、アクリラートステアレス−20メタクリラートコポリマー、アクリラートベヘネス−25メタクリラートコポリマー、アクリラートステアレス−20メタクリラートクロスポリマー、アクリラートコポリマー、アクリラート/ビニルネオデカノアートクロスポリマー、およびこれらの混合物などであることができる。
【0089】
ある実施形態においては、ヘアスタイリング組成物中の全てのポリマーはポリマー(a)である。独立して、ある実施形態においては、1種類のみのポリマー(a)が使用される。1種類のみのポリマー(a)が使用される実施形態においては、ポリマー(a)は、例えば、分子量、ガラス転移温度および粒子サイズなどのような特徴の周りの有用な分布を示すであろうが、ポリマー(a)は別個の特徴を有する2種類以上の異なるポリマーのブレンドではないであろう。
【0090】
本発明の組成物中の水は何らかの方法によって組成物に導入されうる。例えば、水が組成物に直接添加されうることが意図される。例えば、ポリマー(a)が乳化重合によって製造されて、ポリマーラテックスを製造することができ、そしてポリマー(a)および水の双方を含むそのラテックスが組成物に添加されうることも意図される。幾分かの水が組成物に直接添加され、および幾分かの水がポリマーラテックスの部分として添加される実施形態も意図される。
【0091】
ある実施形態においては、本発明のヘアスタイリング組成物はシリコーン化合物を含まない。独立して、ある実施形態においては、本発明のヘアスタイリング組成物は可塑剤を含まない。独立して、ある実施形態においては、本発明のヘアスタイリング組成物は、架橋を生じさせるのに充分な量の二価の金属カチオンを含まない。ある実施形態においては、本発明のヘアスタイリング組成物に二価の金属カチオンは添加されない。ある実施形態においては、本発明のヘアスタイリング組成物中に二価の金属カチオンは存在しない。
【0092】
ある実施形態においては、本発明のヘアスタイリング組成物は光学的に透明である。すなわち、噴射剤(使用されるものがあるとしても)を除くすべての成分が一緒に混合される際に、得られる溶液は以下の実施例に記載されるように濁度について測定され、その濁度の結果は12%以下のポリマー固形分の溶液中で10以下のNTUである。
【0093】
本明細書および特許請求の範囲においては、具体的なケースにおいて他のことが示されない限りは、すべての操作および測定は25℃で行われるものと理解される。
【実施例】
【0094】
以下の実施例においては、次の用語および試験手順が使用される:
BA=ブチルアクリラート
MMA=メチルメタクリラート
HEMA=ヒドロキシエチルメタクリラート
MAA=メタクリル酸
STY=スチレン
BzA=ベンジルアクリラート
EHA=2−エチルヘキシルアクリラート
n−DDM=n−ドデシルメルカプタン
t−DDM=t−ドデシルメルカプタン
3−MBP=3−メルカプト−ブチルプロピオナート
15−S−40=ダウケミカルカンパニーからのテルジトール(Tergitol商標)15−S−40第二級アルコールエトキシラート
FES−61=コグニスカンパニーからのジスポニル(Disponil商標)FES−61脂肪アルコールポリグリコールエーテルスルファートナトリウム塩
FES−77=コグニスカンパニーからのジスポニル商標FES−77脂肪アルコールエーテルスルファートナトリウム塩
AMP−95=アンガス(Angus)ケミカルカンパニーからのアミノメチルプロパノール
DS−4=ステパンカンパニーからのナトリウムドデシルベンゼンスルホナート、ポリステップ(Polystep商標)A−16−22
RS−610=ローディアインコーポレーティドからのロダファク(Rhodafac商標)RS−610−A−25、アンモニウムホスファートエステル
ALS=ステパンカンパニーからのアンモニウムラウリルスルファート、ポリステップ商標B−7
【0095】
分子量
サンプルは2mg固形分ポリマー/mlTHFで、テトラヒドロフラン(THF)中に溶解され、一晩振とうされ、そして0.45マイクロメートルのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターを通して濾過された。分析は、AGILENT商標モデル1100アイソクラチックポンプ、オートサンプラー、デガッサー(すべて、ドイツ国のWaldbronn,Co.から)およびWATERS商標モデル2414示差屈折計(Milford Co.)を含む液体クロマトグラフを40℃で使用する、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって行われた。カラムセットは、直列に接続した3本の(それぞれの孔サイズが100、1,000および10,000オングストローム単位の)PLゲルカラム(5マイクロメートル、300×7.5mm)を含んでいた。インジェクション体積は100マイクロリットルであった。データ記憶および処理は英国のポリマーラボラトリーズからのCirrus商標ソフトウェアバージョン3.0を使用して行われた。モル質量データは2つの市販のあらかじめ分子量測定されたポリスチレン参照混合物の調整物から得られた10点標準曲線から、三次適合を使用して決定された。報告される量はMw(重量平均分子量)およびMw/Mn(Mwを数平均分子量Mnで割ることにより得られる商)である。記号「Mw(k)」は1,000で割ったMwを意味する。
【0096】
12%ポリマー固形分のサンプル溶液の製造
サンプル溶液は以下のように製造された。ラテックスもしくは溶液のサンプルは、ポリマー(a)上の酸基と当量のAMP−95の量を計算すること、またはpH値7.5に滴定することのいずれかによってAMP−95で中和される。中和されたラテックスポリマーの量は6グラムの固形分ポリマーを含むように選択される。その選択された量の中和されたラテックスポリマーは30.0gのエタノールおよび溶液の全重量を50.0gにするのに充分な水と混合される。
【0097】
10%ポリマー固形分のサンプル溶液の製造
中和されたラテックスポリマーの量が5グラムの固形分ポリマーを含むように選択されることを除いて、(上述の)12%でのサンプル製造と同じ。
【0098】
濁度
サンプル溶液は30ml(1オンス)サイズのバイアルに入れられ、そしてHFサイエンティフィックマイクロ100ラボラトリー濁度計を用いて、EPA方法180.1(ネフェロメトリック方法)として米国環境保護局によって発行された明細を用いて測定された。結果はT12(12%ポリマー固形分のサンプル溶液のNTUでの濁度)またはT10(10%ポリマー固形分のサンプル溶液のNTUでの濁度)として、ネフェロ濁度単位(NTU)で報告される。
【0099】
ポリマーが120NTU以下のT12を有するか、またはポリマーが100NTU以下のT10を有する場合には、そのポリマーは許容可能な濁度を有すると見なされる。
可溶性界面活性剤はこの試験による100未満のNTU曇り単位を有し、かつ20分間の静置後に目に見える沈殿を示さないものであるとされる。
【0100】
性能評価はマネキン試験でのハーフヘッド試験によって行われた。スプレー特性、粘着性および乾燥時間の評価のために、マネキンの頭の各側が同様の時間の長さでスプレーされた。次いで、剛性、保持性、輝き、静電気、櫛通り、および残留物についての評価がなされた。各性能特性についての評価を与えるために、3〜6人の経験のあるパネリストが従事した。
【0101】
サンプル組成
エタノール 30〜40%w/w
水 0〜10%w/w
ポリマー 2〜7%w/w固形分
中和剤 (以下の表1〜3に示される中和を達成するのに必要な場合)
ジエチルエーテル 30〜60%w/w
【0102】
ポリマーは以下のポリマー組成の1つから選択される:
【表1】

【0103】
実施例1
TBAHでポリマーを中和することによる組成物透明性の向上
組成物の透明性は、サイエンティフィックインコーポレーティド(フロリダ州、フォートマイヤーズ)によるタービドメーターマイクロ100シリアルナンバー202230によって測定された。6.0未満のNTU読み取り値が望まれ、かつ「透明」組成物と見なされる。より高いNTU値はより曇った組成物を示す。
【0104】
【表2】

【0105】
100%中和を達成するのにTBAHのみを使用すると0.6NTU(これは非常に好ましい)の非常に低い透明性測定値を有するヘアスタイリング組成物を生じさせるが、この組成物はいくつかの望ましくない特性、すなわち、膜を形成する強い傾向、低いガラス転移温度(T)、低減した耐湿性および低減した保持性を発現する。
【0106】
【表3】

【0107】
【表4】

【0108】
100%中和を達成するのにAMPのみを使用すると6.4NTU(これはかろうじて許容可能であり得る)の透明性測定値を有する組成物を提供するが、中和剤へのTBAH野天かは5.6NTUのさらにより良好な透明性測定値を有するヘアスタイリング組成物を生じさせることが上記データから認められうる。
【0109】
【表5】

【0110】
実施例2
中和剤としてすでにAMPを含む組成物へのTBAHの添加は、輝きを向上させつつ、性能に対する負の影響を有しない。
マネキンの頭の上で性能評価が行われた。髪は半分に分けられ、各側は30cmの距離から5秒間スプレーされるヘアスプレー組成物で処理された。最初に、アクリラートコポリマーDを5%固形分量で有する組成物のペアが評価された。一方の配合物は中和剤として100%中和レベルでのAMPを使用していた。他方の組成物は10%中和レベルでのTBAHおよび90%中和レベルでのAMPを中和剤として使用していた。結果は以下の表5に表される。
【0111】
【表6】

【0112】
実施例3
中和剤としてのTBAH:AMPの比率の変更は、動的機械的分析によって測定して、ヘアスタイリング組成物の膜の耐湿性能に可変の影響を有していた。結果(以下の表7に示される)に基づくと、30%の中和レベルのTBAHおよび70%の中和レベルのAMPでの配合の際に、膜の耐湿性能の悪化が始まる。悪化した膜性能は−50℃から25℃での貯蔵弾性率「E’」での変化率パーセントによって特定される。−50℃から25℃でこの弾性率は低下し、よってその変化率パーセントは負である。以下で論じられるように、「貯蔵弾性率低減」は、特定の相対湿度(r.h.)で所定のヘアスタイリング組成物について、0%r.h.での同じ組成物の貯蔵弾性率と比較して測定される。0%から30%r.h.への50%を超える貯蔵弾性率の低減、および0%から60%r.h.への75%を超える貯蔵弾性率の低減は、膜が柔らかくなりすぎて、劣った保持性および劣った高湿度カール保持性もしくは高いタックを生じさせることを示す。表9はTBAH:AMPの様々な比率について、相対湿度の関数としての弾性率の変化を示す。
【0113】
サンプルは、引張膜クランプ固定具を使用する、TAインスツルメンツQ800ダイナミックメカニカルアナライザー(DMA)において試験された。各サンプルは−50℃から約120℃まで、2℃/分の加熱割合で、DMAマルチ−周波数−歪みモード(Multi−Frequency−Strain Mode)において温度勾配/周波数スイープ試験を用いて試験された。適用された周波数は1Hzであった。手順パラメータは次の通りであった:適用された歪み=0.0075%;あらかじめ負荷された力=0.01N;およびフォーストラック(Force Track)=125%。データ蓄積の開始前に5分間の浸漬時間(Soak Time)が使用された。動的貯蔵弾性率および損失弾性率(それぞれE’およびE”)、並びにタンデルタが温度の関数として記録された。タンデルタはE”/E’として定義される。
【0114】
乾燥したストリップは上記プロトコルに従って試験された。残りの乾燥ストリップは、異なる相対湿度に暴露されるサンプルを調製するために使用された。CaCl飽和水溶液が使用されて、室温で約30%の相対湿度(RH)を生じさせた。NHNOの飽和水溶液が使用されて、室温で約60%の相対湿度を生じさせた(参考文献:化学および物理のCRCハンドブック、第61版、CRCプレス、フロリダ州ボカレイトン、1980年、ページE−46)。この飽和塩溶液を入れたペトリ皿が2つのデシケータの瓶内に別々に入れられた。乾燥膜はアルミニウム秤量ボート内に置かれた。このボートは、次いで、デシケータプレートの上に置かれ、デシケータが密封された。上記プロトコルに従って試験する前に、この膜は密閉デシケータ内で約10日間平衡化された。その結果として、3つの異なる状態:真空乾燥;30%RH;および60%RHにおける、各サンプルについての機械的データが得られた。上記手順の結果は以下の表8に提供される。
【0115】
【表7】

【0116】
【表8】

【0117】
【表9】

【0118】
実施例4
ポリマーBの製造
機械式スターラー、熱電対、凝縮器および窒素スパージを備えた5リットル4つ口丸底フラスコに、630グラムの脱イオン水を入れた。この反応器を窒素でパージして90℃に暖めた。モノマープレエマルションが、1077gmの脱イオン水、34.7gmのRhodafac RS610A25、33.5gmの安息香酸粉体、14.5gmのDisponil FES−993、6.9gmのn−ドデシルメルカプタン(n−DDM)、602.1gmのスチレン(STY)、550.5gmのブチルアクリラート(BA)、86.0gmの2−エチルヘキシルアクリラート(2−EHA)、86.0gmのメチルメタクリラート(MMA)および387.0gmの精製(glacial)メタクリル酸(MAA)から調製された。〜90℃の反応器温度で、反応器に、13.9gmのRhodafac RS610A25、15gmの脱イオン水、115.5gmのモノマーエマルション、8.7gmの精製MAAからなる溶液、並びに1.7gmの過硫酸アンモニウムおよび30gmの脱イオン水からなる溶液を入れた。反応器は〜88℃で〜10分間保持された。この時間の後で、モノマーエマルション、並びに1.7gmの過硫酸アンモニウムと226gmの脱イオン水とからなる開始剤溶液を3時間にわたって、それぞれ15.4gm/分および1.3gm/分で供給した。反応器温度は87〜89℃に維持された。これらの添加が完了した後で、モノマーエマルションおよび開始剤供給ラインは66gmおよび20gmの脱イオン水でそれぞれすすがれた。次いで、反応器は88℃で30分間維持された。この保持が完了した後で、ラテックスは、以下の、0.023gmの硫酸第一鉄七水和物および10gmの水からなる溶液、5.4gmのt−ブチルヒドロペルオキシドおよび147gmの脱イオン水からなる溶液、並びに3.4gmのBruggolite FF−6および147gmの脱イオン水からなる溶液で処理された。反応器はこれらの添加中、50℃に冷却された。得られたラテックスは単離され、固形分%、pH、残留モノマー、粒子サイズ、ゲル含量、および粘度を分析した。このラテックスを配合して、その配合物の粘度および透明性を決定することによる追加の試験が行われた。
【0119】
実施例5
ポリマーAおよびCの製造
機械式スターラー、熱電対、凝縮器および窒素スパージを備えた5リットル4つ口丸底フラスコに、645gmの脱イオン水を入れた。この反応器を窒素でパージして90℃に暖めた。モノマープレエマルションが、1038gmの脱イオン水、34.6gmのRhodafac RS610A25、33.4gmの安息香酸粉体、14.4gmのDisponil FES−993、3.5gmのn−ドデシルメルカプタン(n−DDM)、3.5gmの3−MPA、605.4gmのSTY、588.1gmのBA、86.5gmの2−EHA、86.5gmのメトキシポリ(エチルグリコール、Mw〜350)モノメタクリラートおよび388.2gmの精製MAAから調製された。〜90℃の反応器温度で、反応器に、13.8gmのRhodafac RS610A25、10gmの脱イオン水、115.2gmのモノマーエマルション、8.7gmの精製MAAからなる溶液、並びに1.7gmの過硫酸アンモニウムおよび25gmの脱イオン水からなる溶液を入れた。反応器は〜88℃で〜10分間保持された。この時間の後で、モノマーエマルション、並びに1.7gmの過硫酸アンモニウムと225gmの脱イオン水とからなる開始剤溶液を3時間にわたって、それぞれ15.3gm/分および1.2gm/分で供給した。反応器温度は87〜89℃に維持された。これらの添加が完了した後で、モノマーエマルションおよび開始剤供給ラインは100gmおよび60gmの脱イオン水でそれぞれすすがれた。次いで、反応器は88℃で30分間維持された。この保持が完了した後で、ラテックスは、以下の、0.022gmの硫酸第一鉄七水和物および10gmの水からなる溶液、5.4gmのt−ブチルヒドロペルオキシドおよび146gmの脱イオン水からなる溶液、並びに3.4gmのBruggolite FF−6および146gmの脱イオン水からなる溶液で処理された。反応器はこれらの添加中、50℃に冷却された。得られたラテックスは単離され、固形分%、pH、残留モノマー、粒子サイズ、ゲル含量、および粘度を分析した。このラテックスを配合して、その配合物の粘度および透明性を決定することによる追加の試験が行われた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリマー(a)および溶媒混合物(b)の全重量を基準にして1重量%〜10重量%の少なくとも1種のポリマー、
(b)ポリマー(a)および溶媒混合物(b)の全重量を基準にして99重量%〜90重量%の溶媒混合物、並びに
(c)中和剤
を含むヘアスタイリング組成物であって;
前記少なくとも1種のポリマー(a)は少なくとも1つの酸官能基を有する1種以上のモノマーを重合単位として含み;
前記溶媒混合物(b)は
(i)前記溶媒混合物の全重量を基準にして5重量%〜100重量%の少なくとも1種の揮発性有機溶媒、
(ii)前記溶媒混合物の全重量を基準にして95重量%〜0重量%の水、および
(iii)前記溶媒混合物の全重量を基準にして0重量%〜80重量%の少なくとも1種の噴射剤を含み;
前記中和剤(c):前記ポリマー(a)上の酸官能基のモル比が0:1〜1.2:1であり;
前記中和剤(c)が
(i)テトラブチルアンモニウムヒドロキシドによる前記ポリマーの酸基の10%〜30%の中和、および
(ii)アミノメチルプロパノールによる前記ポリマーの酸基の90%〜70%の中和を含む;
ヘアスタイリング組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種のポリマー(a)が、溶液の全重量を基準にして12重量%以下のポリマー固形分の溶液において10NTU以下の濁度を有する、請求項1に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項3】
ヘアスタイリング組成物が0%から30%への相対湿度で50%以下の貯蔵弾性率の低減を有する、請求項1に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項4】
ヘアスタイリング組成物が0%〜60%への相対湿度で75%以下の貯蔵弾性率の低減を有する、請求項1に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種のポリマー(a)が重合単位として、
(i)当該ポリマーの重量を基準にして30重量%〜75重量%の、1.490以上の屈折率を有する1種以上のモノマー、
(ii)当該ポリマーの重量を基準にして1重量%〜30重量%の、1種以上の酸官能性モノマー、および
(iii)当該ポリマーの重量を基準にして5重量%〜69重量%の、1種以上の追加のモノマーを含む、請求項1に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項6】
前記モノマー(i)が1種以上のビニル芳香族モノマーを含む、請求項5に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項7】
前記モノマー(iii)が1種以上のヒドロキシアルキル(メタ)アクリラートを含む、請求項5に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項8】
前記モノマー(iii)が前記ポリマーの重量を基準にして0重量%〜5重量%のヒドロキシアルキル(メタ)アクリラートを含み、かつ前記モノマー(ii)の量が前記ポリマーの重量を基準にして20重量%以上である、請求項5に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種のポリマーがブチルアクリラート/エチルアクリラート/メタクリル酸コポリマー、オクチルアクリルアミド/アクリラート/ブチルアミノエチル−メタクリラートコポリマー、メタクリロイルエチル−ベタイン/メタクリラートコポリマー、メタクリル酸/メタクリルエステルコポリマー、アクリラート/ヒドロキシエステルアクリラートコポリマー、メタクリル酸/アクリル酸エステルコポリマー、酢酸ビニル/クロトン酸コポリマー、酢酸ビニル/クロトン酸/ビニルネオデカノアート、アクリラートコポリマー、メタクリラート/アクリラートコポリマー/アミン塩、アクリラート/メタクリラートポリマー、アクリラート/アクリルアミドコポリマー、アクリラート/スクシナート/ヒドロキシアクリラートコポリマー、アクリラート/t−ブチルアクリルアミドコポリマー、アクリラート/C1−2スクシナート/ヒドロキシアクリラートコポリマー、アクリルアミド/ナトリウムアクリロイルジメチルタウラート/アクリル酸ポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つの酸官能基が、スルホン酸基、カルボン酸基およびこれらの混合からなる群から選択される請求項1に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項11】
前記噴射剤が存在し、かつジメチルエーテルを含む請求項1に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項12】
髪を所望の配置にセットする工程および髪に請求項1に記載の組成物を適用する工程を含む、髪をスタイリングする方法。

【公開番号】特開2012−36185(P2012−36185A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−159549(P2011−159549)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】