説明

向精神性薬物またはGABAアゴニストと有機酸とを含むコンジュゲート、ならびに疼痛および他のCNS障害を治療するためのそれらの使用

向精神性薬物(例えば、抗うつ剤および抗てんかん薬物など)および有機酸(例えば、GABAなど)のコンジュゲートに、疼痛の治療における新規の使用が開示される。疼痛の治療のための新規なGABAコンジュゲートおよびその使用もまた開示される。本発明のGABAとコンジュゲート化された抗うつ薬物および抗てんかん薬物は、疼痛の中枢性知覚および疼痛の第2の末梢段階の両方に対してそれらの元の化合物と比較したとき、相乗的な作用を示したことが実際に見出された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬理学の分野に関連し、より具体的には、疼痛の治療に関連する。
【背景技術】
【0002】
不適切な疼痛管理が広く行われており、これは患者にとって有害である。数多くの研究により、手術後の疼痛および外傷性の疼痛、ガンの疼痛、ならびに、慢性的な非ガン性の疼痛の管理が不十分であることが明らかにされている。従って、高効率の疼痛緩和を、望ましくない影響の可能性を低下させながら提供することができる医薬品が引き続き求められている。
【0003】
疼痛は、2つの大きなカテゴリー、すなわち、急性および慢性に分類することができ、これらは、それらの病因、病理学、診断および治療において異なる。急性の疼痛は本質的には侵害受容性である(すなわち、局所的な組織傷害から直接的に生じる)。急性の疼痛は、手術、外傷または急性の病気に関連する有害な化学的刺激、熱的刺激または機械的刺激に対する正常かつ予測可能な生理学的応答である。急性の疼痛は、その疼痛をもたらす状態が解消するときには、疼痛が消散するように、通常は自己限定的である。慢性の疼痛は、組織が治癒することの予想された時間よりも長く持続する疼痛として定義することができる。傷害または疾患プロセスが慢性の疼痛を誘発することがあるが、そのような誘引事象のほかに他の様々な要因が疼痛を持続させ得る。慢性の疼痛は神経障害性であり得る(すなわち、神経系における最初の病変または機能不全によって開始または引き起こされ得る)か、または、侵害受容性であり得るかのどちらかである。
【0004】
侵害受容性の疼痛は典型的には、抗炎症性または鎮痛性の医薬品により治療され、これに対して、神経障害性の疼痛は通常、神経伝達物質に影響を及ぼす医薬品により治療される。これらには、例えば、抗うつ剤および抗てんかん薬物が含まれる。不応性の神経障害性疼痛を有する患者は典型的には、オピオイドにより治療される。
【0005】
疼痛の根底にある複雑な回路に関与することが知られている1つの神経伝達物質が、阻害性の神経伝達物質、すなわち、ガンマ−アミノ酪酸(GABA)である。GABAは、輸送特性が不良なために、血液脳関門の通過を妨げ、血流から脳内に効率的に輸送されない。その結果、脳の細胞により、脳に見出されるGABAの事実上すべてが(ピリドキサールリン酸を伴うグルタミン酸の脱カルボキシル化によって)合成される。
【0006】
GABAは、ニューロンの興奮性を、特異的な膜タンパク質(すなわち、GABA受容体)への結合(これはイオンチャネルの開放を生じさせる)を介して調節する。イオンチャネルを通る塩化物イオンの進入は受容細胞の過分極を引き起こし、その結果、他の細胞への神経インパルスの伝達を妨げる。
【0007】
不安、筋痙攣およびてんかんの治療のために最も一般に使用されるが、様々なGABAアゴニストが、いくつかの機構を介して疼痛の症状を緩和することが知られている。例えば、疼痛を、GABAの伝達を強化することによって軽減することができる。これは、GABA輸送体、ならびに、GABA関連酵素およびGABA受容体(例えば、GABA−B受容体など)を標的とすることを伴い得る[Frediani F、Neurol Sci、2004(Suppl 3):S161〜6]。加えて、様々なGABAアゴニストが、グルタミン酸媒介の興奮伝達を低下させることによって、および/または、電位活性化型イオンチャネルを阻止することによって疼痛を緩和することができる。後者の作用機構が、神経障害性の疼痛症状の臨床治療において、より新しい世代の抗うつ剤(例えば、ラモトリジンおよびガバペンチンなど)によって例示される[Blackburn−Munro G.他、Curr Pharm Des、2005、11(23):2961〜76]。
【0008】
GABAアゴニストは親水性の官能基(例えば、遊離カルボン酸基および遊離アミノ基)を典型的には有しており、従って、血液脳関門(BBB)を容易に横断しないので、GABAアゴニストの使用は制限される。そのため、侵襲的な送達方法が、GABAアゴニストが治療効果を有するために要求される。しかしながら、脂肪アミノ酸またはペプチドとのそのような化合物の化学的コンジュゲート化が、BBBを横断するそれらの通過をある程度容易にし得ることが見出された[Toth I.、J.Drug Target、1994、2、217〜39]。
【0009】
新しい化合物を開発することにおける相当の進歩にもかかわらず、全身に作用するGABAアゴニスト(例えば、ガバペンチン、プレガバリンおよび様々なベンゾジアゼピン系化合物)の使用は有害な副作用(例えば、鎮静および悪心など)によって制限される。
【0010】
神経伝達物質のノルエピネフリンおよびセロトニンは疼痛の伝達に対して機能的に阻害性である。従って、本明細書中上記で述べたように、モノアミン系のアップレギュレーション剤(例えば、抗うつ剤および抗てんかん剤など)もまた、疼痛の臨床管理において使用される。
【0011】
三環系抗うつ剤は、ノルエピネフリンおよびセロトニン(これらはともに下向性の疼痛経路に影響する)の再取り込みを阻害することによって脊髄における疼痛の伝達に影響を及ぼすと考えられる。加えて、ヒスタミンH1受容体の親和性(これは鎮静と関連する)が抗うつ剤の鎮痛作用と相関し得る。
【0012】
三環系抗うつ剤は第二級アミンまたは第三級アミンとして分類することができる。第二級アミン、例えば、ノルトリプチリン(Pamelor)およびデシプラミン(Norpramine)などは、ノルエピネフリン再取り込みの相対的に選択的な阻害を示す。第三級アミン、例えば、アミトリプチリンおよびイミプラミン(Tofranil)などはノルエピネフリンおよびセロトニンのよりバランスの取れた阻害を示す。しかしながら、これらはまた、より大きな抗コリン作動性の副作用を有する。新規な抗うつ剤であるベンラファキシン(Effexor)およびデュロキセチン(Cymbalta)は、三環系薬剤の典型的な副作用に関わる他の神経受容体の遮断を伴うことなく、セロトニンおよびノルエピネフリンの再取り込みのバランスの取れた阻害を含む。ブプロピオン(Wellbutrin)の作用機構は不明である。しかし、ドーパミン取り込みの遮断を伴う。
【0013】
抗うつ薬物の効力が神経障害性および神経非障害性の疼痛症候群について劇的に変化する。加えて、それぞれの医薬品クラスの中での様々な具体的な薬剤は有効性において変化し得る。
【0014】
例えば、混合受容体活性またはノルアドレナリン作動性活性を有する抗うつ剤は、神経障害性の疼痛を有する患者において最大の治療効果を有するようである。主としてセロトニン作動性の薬物、例えば、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)などは、慢性の疼痛を治療することにおいて効果がない[McQuay HJ他、Pain、1996、68:217〜27]。アミトリプチリンおよびその代謝物(ノルトリプチリン)は、最も良く実証された効力を神経障害性および神経非障害性の疼痛症候群の治療において有する[Bryson HM、Wilde MI、Drugs Aging、1996、8:459〜76]。新規な抗うつ剤であるブプロピオン、ベンラファキシンおよびデュロキセチン[Wernicke J他、J Pain、2004、5(3 suppl 1):S48]は、神経障害性の疼痛を有する患者において効果的であることが証明されている。
【0015】
神経障害性の疼痛の治療における様々な三環系抗うつ剤の効力は、それらの抗うつ作用とは無関係であるようであり、また、疼痛を有するが、うつ病を何ら有しない患者が、これらの薬剤に対して応答する[Max MB他、Neurology、1987、37:589〜96]。疼痛の軽減が、うつ病を治療するために典型的に要求される投薬量よりも低い投薬量において生じるが、治療的用量は依然として、嗜眠、口渇、霧視、便秘、体重増加、起床後低血圧、泌尿器系問題、頭痛、インポテンス、性欲減退、振戦、めまい、激越および不眠症を含めて、多数の副作用を伴う。
【0016】
米国特許出願公開第20040242570号ならびに国際特許出願公開WO03/026563および同WO2005/092392(これらは、全体が本明細書中に示されるかのように参考として組み込まれる)は、向精神性薬物およびGABAのコンジュゲートを、向精神性障害、増殖性障害を治療するために、また、化学感作を高めるために教示する。
【発明の概要】
【0017】
本発明者らは、向精神性薬物(例えば、抗うつ剤および抗てんかん薬物など)および有機酸(例えば、GABAアゴニストなど)のコンジュゲートが、向精神性薬物単独と比較した場合、治療活性を改善し、従って、疼痛の治療において使用できることを想定している。
【0018】
本発明を実施に移しているとき、GABAとコンジュゲート化された抗うつ薬物および抗てんかん薬物は、疼痛の中枢性知覚および疼痛の第2の末梢段階の両方に対してそれらの元の化合物と比較したとき、相乗的な作用を示したことが実際に見出された。加えて、これらのコンジュゲートは、それらの元の化合物と比較したとき、それらの保護的作用の開始を加速し、それらの保護的作用持続期間をより長くした。
【0019】
従って、本発明の1つの局面によれば、第2の化学的成分に共有結合により連結される第1の化学的成分を含む化学的コンジュゲートの治療効果的な量をその必要性のある対象に投与し、それにより、疼痛を治療することを含む、疼痛を治療する方法が提供される。ただし、この場合、第1の化学的成分が、向精神性薬物およびGABAアゴニストからなる群から選択され、さらには、第2の化学的成分が有機酸であり、有機酸は、向精神性薬物がそれ自体で投与されるときの向精神性薬物により誘導される治療効果を高めるように選択される。1つの実施形態によれば、第1の化学的成分が抗うつ剤または抗てんかん薬物であり、第2の化学的成分がGABAまたはR−C(=O)−(式中、Rは、3個〜5個の炭素原子を有するアルキルである)である。
【0020】
本発明の別の局面によれば、疼痛を治療するための医薬品を製造するための、第2の化学的成分に共有結合により連結される第1の化学的成分を含む化学的コンジュゲートの使用が提供される。ただし、この場合、第1の化学的成分が、向精神性薬物およびGABAアゴニストからなる群から選択され、さらには、第2の化学的成分が有機酸であり、有機酸は、向精神性薬物がそれ自体で投与されるときの向精神性薬物により誘導される治療効果を高めるように選択される。1つの実施形態によれば、第1の化学的成分が抗うつ剤または抗てんかん薬物であり、第2の化学的成分がGABAまたはR−C(=O)−(式中、Rは、3個〜5個の炭素原子を有するアルキルである)である。
【0021】
本発明のさらに別の局面によれば、医薬的に許容され得るキャリアと、第2の化学的成分に共有結合により連結される第1の化学的成分を含む化学的コンジュゲートとを含む医薬組成物を、疼痛の治療における使用のために、包装材に詰められ、包装材の中または表面において印刷により特定されて含む製造物が提供される。ただし、この場合、第1の化学的成分が、向精神性薬物およびGABAアゴニストからなる群から選択され、さらには、第2の化学的成分が有機酸であり、有機酸は、向精神性薬物がそれ自体で投与されるときの向精神性薬物により誘導される治療効果を高めるように選択される。1つの実施形態によれば、第1の化学的成分が抗うつ剤または抗てんかん薬物であり、第2の化学的成分がGABAまたはR−C(=O)−(式中、Rは、3個〜5個の炭素原子を有するアルキルである)である。
【0022】
本発明のさらなる局面によれば、第2の化学的成分に共有結合により連結される第1の化学的成分を含む化学的コンジュゲートの治療効果的な量をその必要性のある対象に投与し、それにより、嗜癖障害を治療することを含む、嗜癖障害を治療する方法が提供され、ただし、この場合、第1の化学的成分が、向精神性薬物およびGABAアゴニストからなる群から選択され、さらには、第2の化学的成分が有機酸であり、有機酸は、向精神性薬物がそれ自体で投与されるときの向精神性薬物により誘導される治療効果を高めるように選択される。1つの実施形態によれば、第1の化学的成分が抗うつ剤または抗てんかん薬物であり、第2の化学的成分がGABAまたはR−C(=O)−(式中、Rは、3個〜5個の炭素原子を有するアルキルである)である。
【0023】
本発明のさらなる局面によれば、嗜癖障害を治療するための医薬品を製造するための、第2の化学的成分に共有結合により連結される第1の化学的成分を含む化学的コンジュゲートの使用が提供される。ただし、この場合、第1の化学的成分が、向精神性薬物およびGABAアゴニストからなる群から選択され、さらには、第2の化学的成分が有機酸であり、有機酸は、向精神性薬物がそれ自体で投与されるときの向精神性薬物により誘導される治療効果を高めるように選択される。1つの実施形態によれば、第1の化学的成分が抗うつ剤または抗てんかん薬物であり、第2の化学的成分がGABAまたはR−C(=O)−(式中、Rは、3個〜5個の炭素原子を有するアルキルである)である。
【0024】
本発明のさらなる局面によれば、医薬的に許容され得るキャリアと、第2の化学的成分に共有結合により連結される第1の化学的成分を含む化学的コンジュゲートとを含む医薬組成物を、嗜癖障害の治療における使用のために、包装材に詰められ、包装材の中または表面において印刷により特定されて含む製造物が提供される。ただし、この場合、第1の化学的成分が、向精神性薬物およびGABAアゴニストからなる群から選択され、さらには、第2の化学的成分が有機酸であり、有機酸は、向精神性薬物がそれ自体で投与されるときの向精神性薬物により誘導される治療効果を高めるように選択される。1つの実施形態によれば、第1の化学的成分が抗うつ剤または抗てんかん薬物であり、第2の化学的成分がGABAまたはR−C(=O)−(式中、Rは、3個〜5個の炭素原子を有するアルキルである)である。
【0025】
下記に記載される本発明の実施形態におけるさらなる特徴によれば、第2の成分はさらに、それ自体で投与されるときの向精神性薬物により誘導される有害な副作用を軽減するように選択される。
【0026】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、第2の化学的成分はGABAアゴニストである。
【0027】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、第2の化学的成分は、カルボン酸エステル結合、アルキルオキシカルボン酸エステル結合、アミド結合、イミン結合およびチオエステル結合からなる群から選択される結合により第1の化学的成分に共有結合により連結される。
【0028】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、向精神性薬物は抗うつ剤または抗てんかん薬物である。
【0029】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、抗うつ剤は、三環系抗うつ剤、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤、可逆的モノアミンオキシダーゼ阻害剤およびモノアミンオキシダーゼ阻害剤からなる群から選択される。
【0030】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、三環系抗うつ剤は第二級アミンの三環系抗うつ剤または第三級アミンの三環系抗うつ剤である。
【0031】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、第二級アミンの三環系抗うつ剤は、ノルトリプチリンおよびデシプラミンからなる群から選択される。
【0032】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、第三級アミンの三環系抗うつ剤は、アミトリプチリンおよびイミプラミンからなる群から選択される。
【0033】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、選択的セロトニン再取り込み阻害剤は、フルオキセチン、シタロプラム、パロキセチン、フルボキサミン、エスシタロプラム(レキサプロ)およびセルトラリンからなる群から選択される。
【0034】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤はベンラファキシンである。
【0035】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、可逆的モノアミンオキシダーゼ阻害剤はモクロベミドである。
【0036】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、モノアミンオキシダーゼ阻害剤は、フェネルジンおよびトラニルシプロミンからなる群から選択される。
【0037】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、抗てんかん薬物は、カルバマゼピン、バルプロエート、エトスクシミドおよびフェニトインからなる群から選択される。
【0038】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、抗うつ薬物は、ベンラファキシン、デュロキセチンおよびブプロピオンからなる群から選択される。
【0039】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、向精神性薬物は、ノルトリプチリン、フルオキセチンおよびバルプロ酸からなる群から選択される。
【0040】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、第1の化学的成分はGABAアゴニストである。
【0041】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、第2の化学的成分はGABAアゴニストである。
【0042】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、GABAアゴニストは、(±)−バクロフェン、γ−アミノ酪酸(GABA)、γ−ヒドロキシ酪酸、アミノオキシ酢酸、β−(4−クロロフェニル)−γ−アミノ酪酸、イソニペコチン酸、ピペリジン−4−スルホン酸、3−アミノプロピル亜ホスホン酸、3−アミノプロピルホスフィン酸、(3−アミノプロピル)メチルホスフィン酸、1−(アミノメチル)シクロヘキサン酢酸(ガバペンチン)、y−ビニル−γ−アミノ酪酸(4−アミノヘキサ−5−エン酸、y−ビニルGABA、ビガバトリン)および3−(2−イミダゾリル)−4−アミノブタン酸からなる群から選択される。
【0043】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、有機酸は、下記の一般式:
−R−C(=O)−
(Rは、1個〜20個の炭素原子を有する置換または非置換の炭化水素、1個〜20個の炭素原子と、酸素、窒素およびイオウからなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子とを有する置換または非置換の炭化水素、ならびに、下記の一般式を有する成分であるR
−Z−C(=O)O−CHR−R
(式中、
Zは、単結合、1個〜20個の炭素原子を有する置換または非置換の炭化水素、ならびに、1個〜20個の炭素原子と、酸素、窒素およびイオウからなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子とを有する置換または非置換の炭化水素からなる群から選択される;
は、水素、および、1個〜10個の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択される;および
は、水素、1個〜20個の炭素原子を有する置換または非置換の炭化水素、ならびに、1個〜20個の炭素原子と、酸素、窒素およびイオウからなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子とを有する置換または非置換の炭化水素からなる群から選択される)
からなる群から選択される)
を有する。
【0044】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、Rは、3個〜5個の炭素原子を有する置換されたアルキルまたは非置換のアルキルである。
【0045】
本発明の実施形態による例示的なコンジュゲートには、限定されないが、GABAオキシメチルGABA(これはまた、本明細書中ではAN−214として示される)、GABAオキシメチルバルプロエート(これはまた、本明細書中ではAN−216として示される)、フルオキセチン−GABA(これはまた、本明細書中ではAN−227として示される)、および、ノルトリプチリン−GABA(これはまた、本明細書中ではAN−228として示される)が含まれる。
【0046】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、疼痛は慢性疼痛である。
【0047】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、慢性痛は神経障害性の疼痛または侵害受容性の疼痛である。
【0048】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、疼痛は急性疼痛である。
【0049】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、嗜癖障害はアルコール依存症および/または喫煙である。
【0050】
本発明のさらなる局面によれば、第2の化学的成分に共有結合により連結される第1の化学的成分を含み、これらの化学的成分のそれぞれが独立してGABAアゴニストである化学的コンジュゲートが提供される。
【0051】
本発明のさらなる局面によれば、第2の化学的成分に共有結合により連結される第1の化学的成分を含み、これらの化学的成分のそれぞれが独立してGABAアゴニストである化学的コンジュゲートを有効成分として含み、かつ、医薬的に許容され得るキャリアを含む医薬組成物が提供される。
【0052】
本発明のさらなる局面によれば、第2の化学的成分に共有結合により連結される第1の化学的成分を含み、これらの化学的成分のそれぞれが独立してGABAアゴニストである化学的コンジュゲートの治療効果的な量をその必要性のある対象に投与することを含む、CNS疾患またはCNS障害を治療する方法が提供される。
【0053】
本発明のさらなる局面によれば、第2の化学的成分に共有結合により連結される第1の化学的成分を含み、これらの化学的成分のそれぞれが独立してGABAアゴニストであるコンジュゲートの、医薬品の調製のための使用が提供される。
【0054】
下記に記載される本発明のさらなる実施形態によれば、それらのGABAアゴニストは、カルボン酸エステル結合、アルキルオキシカルボン酸エステル結合、アミド結合、イミン結合およびチオエステル結合からなる群から選択される結合により両者間が共有結合により連結される。
【0055】
結合はアルキルオキシカルボン酸エステル結合である。
【0056】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、GABAアゴニストのそれぞれは、(±)−バクロフェン、γ−アミノ酪酸(GABA)、γ−ヒドロキシ酪酸、アミノオキシ酢酸、β−(4−クロロフェニル)−γ−アミノ酪酸、イソニペコチン酸、ピペリジン−4−スルホン酸、3−アミノプロピル亜ホスホン酸、3−アミノプロピルホスフィン酸、(3−アミノプロピル)メチルホスフィン酸、1−(アミノメチル)シクロヘキサン酢酸(ガバペンチン)、y−ビニル−γ−アミノ酪酸(4−アミノヘキサ−5−エン酸、y−ビニルGABA、ビガバトリン)および3−(2−イミダゾリル)−4−アミノブタン酸からなる群から独立して選択される。
【0057】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、GABAアゴニストのそれぞれがγ−アミノ酪酸(GABA)である。
【0058】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、第2の化学的成分に共有結合により連結される第1の化学的成分を含み、これらの化学的成分のそれぞれが独立してGABAアゴニストである化学的コンジュゲートを有効成分として含み、かつ、医薬的に許容され得るキャリアを含む医薬組成物は、CNS疾患またはCNS障害の治療における使用のために、包装材に詰められ、包装材の中または表面において印刷により特定される。
【0059】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、医薬品は、CNS疾患またはCNS障害を治療するためのものである。
【0060】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、CNS疾患またはCNS障害は、疼痛障害、運動障害、解離性障害、気分障害、情動障害、神経変性疾患または神経変性障害、および、痙攣性障害からなる群から選択される。
【0061】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、CNS疾患またはCNS障害は、パーキンソン病、多発性硬化症、ハンティングトン病、動作時振戦および遅発性ジスキネジア、パニック、不安、うつ病、アルコール依存症、不眠症および躁病的行動、アルツハイマー病およびてんかんからなる群から選択される。
【0062】
従って、本発明は、現在知られている薬物療法と比較した場合、優れた効力および低下した副作用によって特徴づけられる、疼痛を治療するための新規な方法、具体的には、神経障害性の疼痛を治療するための新規な方法を提供する。本発明はさらに、疼痛、ならびに、他のCNS疾患およびCNS障害の治療において使用することができる新規なコンジュゲートを提供する。
【0063】
別途定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が下記に記載される。本願で挙げた刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献はすべて、全体を参照として本明細書に援用するものである。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0064】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0065】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0066】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0067】
本明細書中で使用される用語「約」は±10%を示す。
【0068】
用語「含む(comprising)」は、最終結果に影響しない他の工程および成分が加えられ得ることを意味する。この用語は、用語「からなる(consisting of)」および用語「から本質的になる(consisting essentially of)」を包含する。
【0069】
表現「から本質的になる」は、さらなる成分および/または工程が、主張される組成物または方法の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物または方法がさらなる成分および/または工程を含み得ることを意味する。
【0070】
用語「方法」は、与えられたタスクを達成するための様式、手段、技術および手順を意味し、限定されないが、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の分野の当業者に知られているかまたはその当業者が既知の様式、手段、技術および手順から容易に開発する方式、手段、技術および手順を含んでいる。
【0071】
用語「有効成分」は、その適用後に少なくとも1つの所望の医薬的効果または治療効果を有するいかなる天然または合成の化学物質も含む医薬品を意味する。
【0072】
本明細書では本発明を単に例示し図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の好ましい実施態様を例示考察することだけを目的としており、本発明の原理や概念の側面の最も有用でかつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示していることを強調するものである。この点について、本発明を基本的に理解するのに必要である以上に詳細に本発明の構造の詳細は示さないが、図面について行う説明によって本発明のいくつもの形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】ノルトリプチリンおよび等モル用量のノルトリプチリン−GABAコンジュゲート(AN−228)により経口.処置されたマウスの熱に対する侵害受容反応の潜伏時間を例示する比較用量応答プロットを示す。オスのBalb−cマウス(6匹/群)を、示された用量のノルトリプチリン、それぞれの等モル用量のノルトリプチリン−GABAコンジュゲートまたはビヒクルにより経口.処置した。2時間後、動物をホットプレートの表面に置いた(52±0.2℃)。熱に対する応答(これは、足を振るわせること、または、足をなめること、または、飛び跳ねることによって現れた)を応答潜伏時間の指標として記録した。
【図2】ノルトリプチリンおよびそれぞれの等モル用量のコンジュゲートのノルトリプチリン−GABA(AN−228)により処置されたマウスの熱に対する侵害受容反応の潜伏時間の経時変化を例示するプロットを示す。図2Aでは、オスのBalb−cマウスを、0.25mg/kgのノルトリプチリン、等モル用量のそのGABAコンジュゲート(0.32mg/kg)またはビヒクルにより経口処置した。図2Bでは、オスのBalb−cマウスを、0.5mg/kgのノルトリプチリン、等モル用量のそのGABAコンジュゲート(0.64mg/kg)またはビヒクルにより経口処置した。6匹のマウスをすべての実験群で使用した。熱に対する動物の潜伏応答(秒)を、ホットプレートを52±0.2℃で使用して、示されたような処置の前後で測定した。
【図3a−b】熱に対する侵害受容反応の潜伏時間に対するノルトリプチリン(0.2mg/kg)および等モル用量のそのGABAコンジュゲート(AN−228)の長期投与の影響を例示するグラフを示す。侵害受容反応の潜伏時間を、処置前(図3A)および処置後2時間(図3B)において測定した。
【図3c−d】熱に対する侵害受容反応の潜伏時間に対するノルトリプチリン(0.2mg/kg)および等モル用量のそのGABAコンジュゲート(AN−228)の長期投与の影響を例示するグラフを示す。侵害受容反応の潜伏時間を、処置後3時間(図3C)および処置後4時間(図3D)において測定した。
【図3e】熱に対する侵害受容反応の潜伏時間に対するノルトリプチリン(0.2mg/kg)および等モル用量のそのGABAコンジュゲート(AN−228)の長期投与の影響を例示するグラフを示す。侵害受容反応の潜伏時間を処置後5時間において測定した。
【図4】フルオキセチン、等モルのGABAおよび等モルのフルオキセチン−GABAコンジュゲート(AN−227)の、熱に対する侵害受容反応の潜伏時間に対する影響を例示するグラフを示す。オスのBalb−cマウスをホットプレートの表面に置き、動物設置と、その応答との間における時間を応答潜伏時間の指標として記録した。反応を、ビヒクル(n=18)、フルオキセチン(10mg/kg)(n=11)、等モルのフルオキセチン−GABAコンジュゲート(n=11)および等モルのGABA(n=8)の経口.投与後の−60分、0分、60分、120分、180分、240分、300分で記録した。
【図5a−c】熱に対する侵害受容反応の潜伏時間に対するフルオキセチン(10mg/kg)および等モル用量のそのGABAコンジュゲート(AN−227)の長期投与(経口.)の影響を例示するグラフを示す。オスのBalb−cマウス(n=11/処置群およびn=10のコントロール)を、週に5回、2週間にわたって処置した。侵害受容反応の潜伏時間を、処置前(図5A)、処置後2時間(図5B)および処置後3時間(図5C)において測定した。
【図5d−e】熱に対する侵害受容反応の潜伏時間に対するフルオキセチン(10mg/kg)および等モル用量のそのGABAコンジュゲート(AN−227)の長期投与(経口.)の影響を例示するグラフを示す。オスのBalb−cマウス(n=11/処置群およびn=10のコントロール)を、週に5回、2週間にわたって処置した。侵害受容反応の潜伏時間を、処置後4時間(図5D)および処置後5時間(図5E)において測定した。
【図6】熱感覚の経時変化に対する、GABA−オキシメチルバルプロエート(AN−216)(0.24mg/kg)および等モル用量のGABA(2.39mg/kg)の影響を例示するグラフを示す。熱に対する潜伏応答を、処置後の−60分、0分、60分、120分、180分、240分および300分で記録した。
【図7a−c】熱に対する侵害受容反応の潜伏時間に対する、GABA−オキシメチルGABA(AN−214)(0.2mg/kg)(n=11)および等モル用量のGABA−オキシメチルバルプロエート(AN−216)(n=8)の5日間の処置の影響を例示するグラフを示す。侵害受容反応の潜伏時間を、1日目、3日目および5日目に、処置前(図7A)、処置後2時間(図7B)および処置後3時間(図7C)において測定した。
【図7d−e】熱に対する侵害受容反応の潜伏時間に対する、GABA−オキシメチルGABA(AN−214)(0.2mg/kg)(n=11)および等モル用量のGABA−オキシメチルバルプロエート(AN−216)(n=8)の5日間の処置の影響を例示するグラフを示す。侵害受容反応の潜伏時間を、1日目、3日目および5日目に、処置後4時間(図7D)および処置後5時間(図7E)において測定した。
【図8a−c】熱に対する侵害受容反応の潜伏時間に対するGABAの5日間の処置の影響を例示するグラフを示す。オスのBalb−cマウス(n=8/群)を、示された用量のGABAにより5日間にわたり毎日処置した。侵害受容反応の潜伏時間を、処置前(図8A)、処置後2時間(図8B)および処置後3時間(図8C)において測定した。
【図8d−e】熱に対する侵害受容反応の潜伏時間に対するGABAの5日間の処置の影響を例示するグラフを示す。オスのBalb−cマウス(n=8/群)を、示された用量のGABAにより5日間にわたり毎日処置した。侵害受容反応の潜伏時間を、処置後4時間(図8D)および処置後5時間(図8E)において測定した。
【図9】ホルマリン試験によって測定されたときの疼痛に対する初期の神経因性段階および後期の炎症性末梢段階の両方に対するフルオキセチンおよびフルオキセチン−GABAコンジュゲート(AN−227)の疼痛緩和作用を例示するグラフを示す。Balb/cマウス(5匹/群)を、ビヒクル(DDW)、10mg/kgのフルオキセチン、30mg/kgのフルオキセチン、および、それらのそれぞれの等モル用量のフルオキセチン−GABAコンジュゲートにより処置した。3時間後、1%(20ml)のホルマリンを右後足の足底内に注入した。注入直後、マウスを観察のためにPlexiglasチャンバーに置いた。動物が、注入された足をなめることに費やした時間の量を、侵害受容の定量的目安として記録した。(A)初期の神経因性段階(侵害受容性応答)をホルマリン注入後の0分〜5分の間で測定し、(B)後期段階をホルマリン注入後20分から30分まで記録した(侵害受容体および炎症性の侵害受容性応答)。
【図10a】ホルマリン試験によって測定されたときの疼痛に対する初期の神経因性段階および後期の炎症性末梢段階の両方に対するノルトリプチリンおよびノルトリプチリン−GABAコンジュゲート(AN−228)の疼痛緩和作用を例示するグラフを示す。Balb/cマウス(5匹/群)を、ビヒクル(DDW)、0.5mg/kgのノルトリプチリン、5mg/kgのノルトリプチリン、および、それらのそれぞれの等モル用量のノルトリプチリン−GABAコンジュゲートにより処置した。3時間後、1%(20μl)のホルマリンを右後足の足底内に注入した。注入直後、マウスを観察のためにPlexiglasチャンバーに置いた。動物が、注入された足をなめることに費やした時間の量を、侵害受容の定量的目安として記録した。初期の神経因性段階(侵害受容性応答)をホルマリン注入後の0分〜5分の間で測定した。結果は2つの実験の平均値である。
【図10b】ホルマリン試験によって測定されたときの疼痛に対する初期の神経因性段階および後期の炎症性末梢段階の両方に対するノルトリプチリンおよびノルトリプチリン−GABAコンジュゲート(AN−228)の疼痛緩和作用を例示するグラフを示す。Balb/cマウス(5匹/群)を、ビヒクル(DDW)、0.5mg/kgのノルトリプチリン、5mg/kgのノルトリプチリン、および、それらのそれぞれの等モル用量のノルトリプチリン−GABAコンジュゲートにより処置した。3時間後、1%(20μl)のホルマリンを右後足の足底内に注入した。注入直後、マウスを観察のためにPlexiglasチャンバーに置いた。動物が、注入された足をなめることに費やした時間の量を、侵害受容の定量的目安として記録した。後期段階をホルマリン注入後10分から記録した(侵害受容体および炎症性の侵害受容性応答)。結果は2つの実験の平均値である。
【図11】カラギーナン誘導の足水腫試験によって測定されたときのフルオキセチンおよびフルオキセチン−GABAコンジュゲート(AN−227)の抗炎症作用を例示するグラフを示す。Wistarラット(250g〜350g)を、フルオキセチン(40mg/kg)、等モルのフルオキセチン−GABAコンジュゲート(n=6)およびビヒクル(n=8)により経口処置した。3時間後、ラットに、λ−カラギーナンの1%溶液の100μlを左後足の足底表面に注入した。注入区域で発生した水腫をカリパスにより2時間後および4時間後に測定した。
【図12】注入後2時間〜48時間でノルトリプチリン単独およびガバペンチン(1−(アミノメチル)シクロヘキサン酢酸)と比較されたときの、熱に対する侵害受容反応の潜伏時間に対するノルトリプチリン−GABA(AN−228)による処置の影響を例示するグラフである。
【図13】注入後の特定の時点でノルトリプチリン単独およびコントロールと比較されたとき(図13A)、ならびに、ノルトリプチリン単独、コントロールおよびガバペンチンと比較されたとき(図13B)の、足の高さに対するノルトリプチリン−GABA(AN−228)による処置の影響を例示する棒グラフである。
【図14】INF−γ分泌(図14A)およびTNF−α分泌(図14B)に対する、ノルトリプチリン単独、コントロール、ガバペンチン、ならびに、ノルトリプチリンおよびGABAの混合物と比較されたときの、ノルトリプチリン−GABA(AN−228)による処置の影響を例示する棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0074】
本発明は、疼痛を処置するための、向精神性薬物(具体的には、抗うつ剤および抗てんかん薬物)および有機酸(例えば、GABA)のコンジュゲートの新規な使用に関する。本発明はさらに、CNS疾患およびCNS障害(例えば、疼痛)の治療におけるGABAアゴニストの新規なコンジュゲート、ならびに、その使用に関する。
【0075】
本発明による化学的コンジュゲートの原理および操作は、図面および添付された説明を参照してより良く理解することができる。
【0076】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示されるまたは実施例によって例示される構成要素の配置および構造の細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または実行される。また、本明細書中で用いられる表現および用語は説明のためであり、従って限定として見なされるべきではないことを理解しなければならない。
【0077】
向精神性薬物は、多くの場合、短期および長期の有害な副作用によって妨げられる。GABAアゴニストとのそのコンジュゲート化は、その治療活性の増大、および、誘導される有害な副作用の実質的な軽減をもたらす。従って、本発明者らによる米国特許出願公開第20040242570号ならびに国際特許出願公開WO03/026563および同WO2005/092392は、GABAとコンジュゲート化された向精神性薬物を、向精神性障害、増殖性障害を治療するために、また、化学感作を高めるために教示する。
【0078】
本発明を着想しているとき、有機酸(例えば、GABAなど)ならびに抗うつ剤および抗てんかん剤のコンジュゲートがこれらの薬物のそれぞれの抗うつ治療特性および抗てんかん治療特性を高め得るだけでなく、それらの他の特徴(例えば、それらの疼痛緩和能力など)も改善し得ることが仮定された。従って、実施例2および実施例3において明らかにされるように、GABAとコンジュゲート化された抗うつ薬物および抗てんかん薬物が、疼痛の中枢性知覚および疼痛の第2の末梢段階の両方に対してそれらの元の化合物と比較されたとき、相乗的な作用を予想外にも示した。これらのGABAコンジュゲート化薬物は、それらのGABA非コンジュゲート化対応体と比較されたとき、高まった疼痛緩和作用を示しただけでなく、それらの保護的作用の加速された開始およびそれらの保護的作用のより長い持続期間をも示した。
【0079】
何らかの特定の理論にとらわれることはないが、このようなコンジュゲートの緩和活性の増大は、向精神性薬物および有機酸が脳内の同じ部位において同時に作用し、これにより、相乗的な疼痛緩和をもたらすためであると考えられる。加えて、コンジュゲート化は両方の化学的成分の脳透過性を改善すると考えられる。
【0080】
従って、本発明の1つの局面によれば、化学的コンジュゲートの治療効果的な量をその必要性のある対象に投与することによって達成される、疼痛を治療する方法が提供される。そのような化学的コンジュゲートは、第2の化学的成分に共有結合により連結される第1の化学的成分を含む。第1の化学的成分は向精神性薬物またはGABAアゴニストであり得るし、これに対して、第2の化学的成分は有機酸であり、この場合、有機酸は、それ自体で投与されるときの向精神性薬物の治療効力を高めるように、かつ/または、それ自体で投与されるときの向精神性薬物により誘導される副作用を軽減するように選択される。
【0081】
「それ自体で投与される」によって、コンジュゲート化されていない向精神性薬物(これは、コンジュゲートにおいて第1の成分を構成する同じ向精神性薬物に対応する)が利用されることが意味される。従って、本明細書中に記載されるコンジュゲートは、その治療効力が、対応するコンジュゲート化されていない向精神性薬物の治療効力と比較されたときに高められ、かつ/または、それにより誘導される副作用が、対応するコンジュゲート化されていない向精神性薬物と比較されたときに軽減されるようなものである。
【0082】
本明細書中で使用される用語「疼痛」は、急性疼痛および慢性疼痛の両方を包含する。本明細書中で使用される用語「急性疼痛」は、傷害(例えば、切り傷、挫傷、火傷など)によって、または、化学的刺激作用(例えば、カプサイシン(唐辛子における有効成分など)にさらされたときに経験する刺激作用など)によってもたらされる即時的な、一般には閾値が高い疼痛を意味する。本明細書中で使用される用語「慢性の疼痛(慢性痛)」は急性痛以外の疼痛を意味し、限定されないが、神経障害性の疼痛、内臓痛、線維筋痛症の疼痛、炎症痛、頭痛の疼痛、筋肉痛および関連痛を包含する。慢性の疼痛は多くの場合、持続期間が比較的長く(例えば、数ヶ月または数年)、また、連続的または間欠的であり得ることが理解される。
【0083】
1つの実施形態において、本発明のコンジュゲートは、「神経障害性の疼痛」を治療するために使用され、この場合、「神経障害性の疼痛」は、本明細書中で使用されるように、神経に対する傷害から生じる疼痛を意味する。神経障害性の疼痛は、小さい皮神経、あるいは、筋肉または結合組織における小さい神経を伴う急性の組織傷害によって引き起こされる疼痛である侵害受容性の疼痛とは区別することができる。神経障害性の疼痛とは対照的に、侵害受容性の疼痛は通常の場合、持続期間において組織修復の期間に限定され、また、通常の場合、利用可能な鎮痛性薬剤またはオピオイドによって緩和され得る[Myers、Regional Anesthesia、20:173〜184(1995)]。
【0084】
神経障害性の疼痛は典型的には、長く続くか、または慢性的であり、最初の急性の組織傷害の後、数日または数ヶ月して発症し得る。神経障害性の疼痛は、持続した自発性の疼痛、ならびに、異痛性(これは、通常的には痛くない刺激因子に対する有痛性の応答である)、または、痛覚過敏(通常の場合には取るに足らない有痛性の刺激因子(例えば、針の刺し傷など)に対する増強された応答)を伴い得る。神経障害性の疼痛は一般に、オピオイド治療に対して抵抗性である[Myers(1995)、上掲]。
【0085】
本明細書中で使用される用語「化学的成分」は、化学化合物に由来し、その機能性を保持する成分を示す。
【0086】
本明細書中では全体を通して、化学的成分が記載されるときには常に、化学的成分は、別途示されない限り、コンジュゲートにおける他の化学的成分に連結される化学的成分のそのような部分として理解しなければならない。
【0087】
従って、表現「向精神性薬物」は、コンジュゲートにおける第1の成分に関して使用されるときには常に、この用語が本明細書中上記で定義されるように、別の化学的成分に共有結合により連結される向精神性薬物の主要部を示す。
【0088】
本明細書中上記で記載されるように、表現「向精神性薬物」は、活性を中枢神経系において発揮し、それにより、中枢神経系の様々な疾患または障害の治療において使用することができる任意の薬剤または薬物を包含する。
【0089】
従って、向精神性薬物は、本発明によれば、例えば、抗不安薬物に由来する成分が含まれ、例えば、ベンゾジアゼピン系化合物、フェノチアジン系化合物およびブチロフェノン系化合物、MAO阻害剤、抗うつ剤、抗てんかん薬物、抗痙攣薬物(これは抗痙攣剤とも呼ばれる)、抗パーキンソン病薬物、ならびに、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(これらに限定されない)が含まれる。向精神性薬物は、三環系、二環系または単環系が可能である。
【0090】
好ましい向精神性薬物は、本発明によれば、有機酸またはその反応性誘導体と反応することができるアミン基、チオール基またはヒドロキシル基(これらの用語は本明細書中下記において定義される)を有する向精神性薬物である。そのような基は、遊離官能基として、または、別の官能基(例えば、アミド基およびカルボン酸基など;これらの用語は本明細書中下記において定義される)の一部としてそのいずれかで、コンジュゲートにおけるその取り込みの前に、向精神性薬物において存在することができる。
【0091】
本発明の好ましい実施形態によれば、第1の化学成分が由来する向精神性薬物は、疼痛に対するその治療効果について知られており、例えば、抗うつ薬物または抗てんかん薬物である。抗うつ剤および抗てんかん剤はともに、疼痛の治療において、より具体的には、神経障害性の疼痛の治療において有効であることが示されている。
【0092】
本明細書中で使用される表現「抗うつ薬物」は、その作用機構にかかわらず、うつ病の原因および/または症状を緩和することが知られている任意の薬物を示す。
【0093】
表現「抗てんかん薬物」は、本明細書中およびこの分野では「抗てんかん剤」、「抗痙攣剤」または「抗痙攣薬物」とも呼ばれるが、痙攣の原因および/または症状、具体的には、てんかんによって引き起こされる痙攣の原因および/または症状を緩和することが知られている任意の薬物を表す。
【0094】
下記の実施例の節において例示されるように、様々な向精神性薬物のコンジュゲートが試験されており、これらのコンジュゲートは、それらにより影響される経路、または、それらと相互作用する受容体にかかわらず、それぞれのコンジュゲート化されていない薬物と比較されたとき、治療活性の増大を発揮することが示された。従って、例えば、2つの全く別個の経路に作用する2つの知られている抗うつ剤であるフルオキセチンおよびノルトリプチリン(それぞれ、選択的セロトニン再取り込み阻害剤および選択的ノルエピネフリン再取り込み阻害剤)のコンジュゲートが、インビトロ研究においてマウスでの疼痛緩和を誘導することが示されたことが明らかにされる。
【0095】
加えて、GABA経路に作用する知られている抗てんかん薬物(バルプロ酸)もまた、疼痛の緩和において効果的であることが示された。バルプロ酸は、BBBを横断することができる薬物であるので、バルプロエート−GABAのコンジュゲート(例えば、GABA−オキシメチルバルプロエート)はGABAを脳内に運ぶことができ、そして今度は、GABAにより、バルプロ酸の活性が強化され得ることが示唆される。
【0096】
従って、本発明のこの局面によれば、抗うつ薬物は、三環系抗うつ剤(例えば、第二級アミンの三環系抗うつ剤または第三級アミンの三環系抗うつ剤)、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤、可逆的モノアミンオキシダーゼ阻害剤、および、モノアミンオキシダーゼ阻害剤であり得る。
【0097】
抗うつ剤の限定されない例には、ノルトリプチリン、デシプラミン、アミトリプチリン、イミプラミン、フルオキセチン、シタロプラム、パロキセチン、フルボキサミン、エスシタロプラム(レキサプロ)、セルトラリン、ベンラファキシン、モクロベミド、フェネルジン、デュロキセチンおよびトラニルシプロミンが含まれる。
【0098】
本発明のこの局面の好ましい実施形態によれば、抗うつ剤はノルトリプチリンまたはフルオキセチンである。
【0099】
抗てんかん薬物の例には、カルバマゼピン、バルプロエート(バルプロ酸)、エトスクシミドおよびフェニトインが含まれるが、これらに限定されない。
【0100】
疼痛の緩和を発揮することが知られているさらなる向精神性薬物が、GABAアゴニストである[Blackburn−Munro G.他、Curr Pharm Des、2005、11(23):2961〜76]。従って、第1の化学的成分は、代替では、GABAアゴニストであり得る。GABAアゴニストの様々な例が本明細書中下記に記載される。互いに連結される2つのGABAアゴニストのコンジュゲートはこれまで一度も記載されていない。
【0101】
本明細書中上記で言及したように、向精神性薬物は、本発明によれば、有機酸である第2の化学的成分に共有結合により連結される。
【0102】
表現「有機酸」は、遊離カルボキシル基を含む有機酸に由来する、本明細書中で定義されるような成分を示す。
【0103】
用語「遊離カルボキシル基」には、そのままであるか、または、そのプロトン化状態であるか、または、そのイオン化状態もしくは塩状態であるかのいずれかで、「−C(=O)OH」基が含まれる。
【0104】
本発明に従って記載されるコンジュゲートにおける第2の成分を構成する有機酸は、例えば、−R−C(=O)−の一般式(式中、Rは、例えば、1個〜20個の炭素原子を有する炭化水素であり得る)を有する成分である。
【0105】
本明細書中で使用される用語「炭化水素」は、共有結合的に連結される炭素原子および水素原子の鎖をその基本骨格として含む有機化合物を示す。
【0106】
従って、本発明による炭化水素は、例えば、アルキルまたはシクロアルキルであり得る。
【0107】
本明細書中で使用される用語「アルキル」は、直鎖基および分枝鎖基を含む飽和した脂肪族炭化水素を示す。好ましくは、アルキル基は1個〜20個の炭素原子を有する。
【0108】
数値範囲、例えば「1個〜20個」が本明細書で述べられる場合は常に、それは基(この場合はアルキル基)が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などの20個までの炭素原子を含むということを意味する。さらに好ましくは、アルキルは、1個〜10個の炭素原子を有する中程度のサイズのアルキルである。最も好ましくは、アルキルは3個〜5個の炭素原子を有する。
【0109】
本明細書中で使用される用語「シクロアルキル」は、環の1つまたは複数が完全共役のπ電子系を有しない、すべて炭素からなる単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を含む。シクロアルキル基の非限定な例は、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、シクロヘプタトリエンおよびアダマンタンを含む。
【0110】
本発明によれば、炭化水素は直鎖構造または枝分かれ構造であり得る。炭化水素はさらに飽和または不飽和であり得る。不飽和であるとき、炭化水素はその炭素鎖に二重結合または三重結合を含むことができる。不飽和の炭化水素はアリールをさらに含むことができる。
【0111】
本明細書中で使用されるように、「アリール」基は、完全共役のπ電子系を有する、すべて炭素からなる単環基または縮合多環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を示す。アリール基の非限定的な例は、フェニル、ナフタレニルおよびアントラセニルを含む。
【0112】
炭化水素はさらに、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、シアノ、ハロ、オキソ、アミドおよびアミノであり得る。
【0113】
「ヘテロアリール」基は、例えば、窒素、酸素およびイオウなどの1個または複数個の原子を環(1つまたは複数)に有し、さらには完全共役のπ電子系を有する単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を示す。ヘテロアリール基の非限定的な例には、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリンおよびプリンが含まれる。ヘテロアルキル基は置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えばアルキル、シクロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、シアノ、ハロ、オキソ、アミドおよびアミノであり得る。
【0114】
「複素脂環」基は、例えば、窒素、酸素およびイオウなどの1個または複数個の原子を環(1つまたは複数)に有する単環基または縮合環基を示す。環はまた、1つまたは複数の二重結合を有することができる。しかしながら、環は完全共役のπ電子系を有しない。複素脂環は、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、トリハロメチル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、シアノ、オキソ、アミドおよびアミノであり得る。
【0115】
「ヒドロキシ」基は−OH基を示す。
【0116】
「アルコキシ」基は、本明細書中で定義されるように、−O−アルキル基および−O−シクロアルキル基の両方を示す。
【0117】
「アリールオキシ」基は、本明細書中で定義されるように、−O−アリール基および−O−ヘテロアリール基の両方を示す。
【0118】
「オキソ」基は−C(=O)−R’基を示し、ここでR’は例えば、アルキル、シクロアルキル、またはアリールであり得る。
【0119】
「ハロ」基は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を示す。
【0120】
「トリハロメチル」基は、本明細書中で定義されるように、−CX−基を示し、ここでXはハロ基である。
【0121】
「アミノ」基または「アミン」基は、−NH基を示す。
【0122】
「アミド(“amido”または“amide”)」基は、−C(=O)−NR基を示し、ここでRおよびRは、例えば、水素、アルキル、シクロアルキルおよびアリールであり得る。
【0123】
炭化水素は、本発明によれば、その鎖の内部に点在させた1つまたは複数のヘテロ原子をさらに含むことができる。ヘテロ原子は、例えば、酸素、窒素および/またはイオウであり得る。
【0124】
有機酸はさらに、−Z−C(=O)O−CHR−Rの一般式(式中、Zは、例えば、単結合、あるいは、本明細書中上記で記載されるような置換された炭化水素または非置換の炭化水素であり得る;Rは、例えば、水素、または、1個〜10個の炭素原子を有するアルキルであり得る;および、Rは、例えば、水素、または、本明細書中上記で定義されるような炭化水素であり得る)を有することができる。
【0125】
従って、本発明による有機酸成分が由来し得る有機酸の代表的な例には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、酪酸、4−フェニル酪酸、4−アミノ酪酸(GABA)、吉草酸、プロピオン酸、レチノイン酸、アセチルサリチル酸およびイブプロフェンが含まれる。
【0126】
本発明の別の実施形態によれば、化学的コンジュゲートの第2の化学的成分はGABAアゴニストである。本明細書中上記で述べられたように、GABAアゴニストは単独で、疼痛を緩和することが示されているので、そのような成分を含有するコンジュゲートはGABAアゴニストを脳において放出することができ、従って、GABAアゴニストおよび向精神性薬物の両方から生じる、二重の、好ましくは相乗的な疼痛緩和作用を発揮することができる。
【0127】
本明細書中で使用される表現「GABAアゴニスト」は、脳において直接的にまたは間接的にのいずれかでGABA系を活性化できる化合物(GABA受容体またはGABA系に影響する他の任意の受容体に直接結合する化合物、従って、GABAに薬理学的に関連づけられる化合物を含む)を記載する。用語「GABAアゴニスト」は、GABA自体を包含することが理解される。
【0128】
従って、GABAアゴニストには、本発明によれば、GABA(γ−アミノ酪酸)自体に加えて、向精神薬に対して共有結合的に結合することができる他のGABAアゴニストが含まれる。
【0129】
そのようなGABAアゴニストの例には、(±)バクロフェン、イソニペコチン酸、γ−ヒドロキシ酪酸、アミノオキシ酢酸、β−(4−クロロフェニル)−γ−アミノ酪酸、ピペリジン−4−スルホン酸、3−アミノプロピル亜ホスホン酸、3−アミノプロピルホスフィン酸、(3−アミノプロピル)メチルホスフィン酸、1−(アミノメチル)シクロヘキサン酢酸(ガバペンチン)、4−アミノ−5−ヘキセン酸(y−ビニルGABA、ビガバトリン)および3−(2−イミダゾリル)−4−アミノブタン酸が含まれる。
【0130】
有機酸は、本発明によれば、向精神性薬物により誘導される治療効果を高めるように選択される。加えて、有機酸は、向精神性薬物が単独で投与されたならば、向精神性薬物によって誘導され得る副作用を軽減させるために選択することができる。
【0131】
本明細書中で使用される表現「治療効果を高めるために(ように)」は、それ自体で投与されるときの、コンジュゲートを形成する向精神性薬物および/または有機酸の疼痛緩和活性よりも大きい、本発明のコンジュゲートの疼痛緩和活性の強化を示す。下記の実施例の節において明らかにされるように、そのような高まった治療活性は、典型的には、コンジュゲート化されていない向精神性薬物および/または有機酸の効果的な濃度と比較されたとき、特定の治療活性を達成するために要求される薬物の低下した効果的な濃度によって特徴づけられる。
【0132】
本明細書中で使用される表現「副作用」は、ある種の薬物(具体的には、向精神性薬物)を対象に投与することの結果として発症し得る有害な症状を示す。
【0133】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明の化学的コンジュゲートにおける第2の化学的成分は、例えば、カルボン酸エステル結合、オキシアルキルカルボン酸エステル結合、アミド結合またはチオエステル結合などの結合を介して、第1の化学的成分に共有結合により連結される。
【0134】
本明細書中で使用される表現「カルボン酸エステル結合」には、「−O−C(=O)−」結合が含まれる。
【0135】
本明細書中で使用される表現「オキシアルキルカルボン酸エステル結合」には、「O−R−O−C(=O)−」結合(式中、Rは、本明細書中上記で定義されるようなアルキルである)が含まれる。好ましくは、Rはメチルである。
【0136】
本明細書中で使用される表現「アミド結合」には、「−NH−C(=O)−」結合が含まれる。
【0137】
本明細書中で使用される表現「チオエステル結合」には、「−S−C(=O)−」結合が含まれる。
【0138】
そのような結合は、脳由来の酵素(例えば、エステラーゼおよびアミダーゼなど)によって加水分解可能であることが知られている。従って、本発明の化学的コンジュゲートは、脳において代謝され、かつ、それにより、向精神性薬物および有機酸を同時に放出し、従って、向精神性薬物および有機酸についての好都合な共薬物動態学を提供するプロドラッグとして作用することが推測される。
【0139】
あるいは、本発明の化学的コンジュゲートにおける第2の化学的成分は、イミン結合を介して第1の化学的成分に共有結合により連結される。
【0140】
本明細書中で使用される用語「イミン結合」により、−C=NH−結合が表される。イミン結合はまた、「シッフ塩基」としてこの分野では知られている。
【0141】
本明細書中において、用語「治療する」には、疼痛の進行を阻止するか、または実質的に阻害するか、または遅らせるか、または逆戻りさせること、あるいは、疼痛の開始を実質的に妨げることが含まれる。
【0142】
本明細書中で使用される用語「投与する」は、本発明の化学的コンジュゲートを、疼痛対する効果を有する脳内の区域または部位にもたらすための方法を示す。
【0143】
本発明の化学的コンジュゲートは腹腔内に投与することができる。より好ましくは、本発明の化学的コンジュゲートは経口投与される。
【0144】
用語「対象」は、血液脳関門を有する動物を示し、典型的には、ヒトを含めて、哺乳動物を示す。
【0145】
用語「治療効果的な量」は、疼痛の感覚をある程度緩和する、投与されている化学的コンジュゲートのそのような量を示す。
【0146】
従って、例えば、ノルトリプチリン−GABAの治療効果的な量は0.05mg/kg体重〜20mg/kg体重の間であり、より好ましくは0.1mg/kg体重〜4mg/kg体重の間であり、最も好ましくは0.2mg/kg体重〜1.0mg/kg体重の間である。フルオキセチン−GABAの治療効果的な量は1mg/kg体重〜40mg/kg体重の間であり、より好ましくは5mg/kg体重〜40mg/kg体重の間であり、最も好ましくは10mg/kg体重〜30mg/kg体重の間である。好ましくは、本発明のコンジュゲートの治療効果的な量は、類似する効果を発揮するために、元の化合物によって使用される治療効果的な量よりも低い。
【0147】
本発明のさらなる局面によれば、本発明のコンジュゲートは、嗜癖障害を治療するために使用される。本明細書中で使用される表現「嗜癖障害」は、気分を変化させる物質の摂取に対する病理学的応答によって引き起こされる症状の集まり(すなわち、症候群)によって特徴づけられる障害を示す。そのような症状には、多幸感、切望、抑制の喪失、退薬症候および自制不能が含まれる。嗜癖障害の例には、摂食障害、麻薬中毒、アルコール依存症および喫煙が含まれるが、これらに限定されない。
【0148】
様々な抗うつ剤(例えば、ノロトリプチリン)が、退薬症候に対する影響をほとんど伴うことなく、禁煙率を増大させることにおいて経皮ニコチンとの組合せで効果的であることが示された[Prochazka他、Arch Intern Med、2004、164:2229〜2233]。従って、本発明のGABAコンジュゲートはまた、抗うつ剤のこの固有的な治療特徴を高めることができる。
【0149】
同様に、抗うつ剤および抗痙攣剤はともに、アルコール依存の治療において効果的であることが示されている[Williams S.、American Family Physician、2005年11月1日、第72巻、第9号]。従って、本発明のGABAコンジュゲートはまた、抗うつ剤および抗痙攣剤のこの固有的局面を高めることができる。
【0150】
加えて、本発明のコンジュゲートは、抗うつ剤または抗痙攣剤によって効果的に治療される他の疾患または障害を治療するために使用することができる。例えば、突然死症候群のマウスモデルにおいて、抗うつ剤は、呼吸停止の発生を低下させることが示された[Tupal,S.、Epilepsia、47(1):21〜26、2006、Blackwell Publishing、Inc.、C2006 International League Against Epilepsy]。従って、本明細書中に記載されるような抗うつ剤−GABAコンジュゲートは、てんかんのこの副作用を防止するために使用することができる。
【0151】
本発明の別の局面によれば、第2の化学的成分に共有結合により結合される第1の化学的成分を含み、これらの化学的成分のそれぞれが、独立したGABAアゴニストである化学的コンジュゲートが提供される。本発明のこの局面の1つの実施形態によれば、化学的コンジュゲートは、アルキルオキシカルボン酸エステル結合により連結される2つの独立したγ−アミノ酪酸(GABA)を含む。
【0152】
これらの化学的コンジュゲートは、米国特許出願公開第20040242570号および国際特許出願公開WO2005/092392に記載される一般的手順に従って合成することができる。本発明のこの局面による例示的なコンジュゲートの合成が本明細書中下記において実施例の節の実施例1に記載される。
【0153】
本発明のこの局面によるコンジュゲートは、様々なCNS関連の疾患および障害を治療するために有益に利用することができ、脳におけるGABAのレベルが低いCNS関連の疾患および障害を治療するために特に有益である。これらには、例えば、疼痛障害、運動障害(例えば、パーキンソン病、多発性硬化症、動作時振戦および遅発性ジスキネジアなど)、解離性障害、気分障害(例えば、パニック、不安、うつ病など)、嗜癖障害、躁病的行動、情動障害、神経変性疾患または神経変性障害(アルツハイマー病など)および痙攣性障害(例えば、てんかんなど)が含まれる。
【0154】
従って、本発明の別の局面によれば、本発明のこの関連で記載されるような化学的コンジュゲートの治療効果的な量をその必要性のある対象に投与することによって達成される、CNS疾患またはCNS障害を治療する方法が提供される。
【0155】
従って、これらの化学的コンジュゲートは、医薬品を調製するために使用することができ、従って、そのような医薬品は好ましくは、CNS疾患またはCNS障害を治療するためのものである。
【0156】
本明細書中に記載されるコンジュゲートにより有益に治療することができるCNS疾患またはCNS障害の代表的な例には、疼痛障害、運動障害、解離性障害、気分障害、情動障害、神経変性疾患または神経変性障害、および、痙攣性障害が含まれるが、これらに限定されない。
【0157】
そのような状態のより具体的な例には、パーキンソン病、多発性硬化症、ハンティングトン病、動作時振戦および遅発性ジスキネジア、パニック、不安、うつ病、アルコール依存症、不眠症および躁病的行動、アルツハイマー病およびてんかんが含まれるが、これらに限定されない。
【0158】
本明細書中に記載される方法のいずれかにおいて、化学的コンジュゲートは、そのまま、または、好ましくは、医薬的に許容され得るキャリアをさらに含む医薬組成物の一部として、そのどちらかで投与することができる。
【0159】
本明細書中で使用される「医薬組成物」は、本明細書中に記載される化学的コンジュゲートの1つまたは複数と、他の化学的成分(例えば、医薬的に好適なキャリアおよび賦形剤)との調製物を示す。医薬組成物の目的は、対象に対する化合物の投与を容易にすることである。
【0160】
以降、用語「医薬的に許容され得るキャリア」は、対象に対する著しい刺激を生じさせず、かつ、投与された調合物の生物学的活性および生物学的性質を阻害しないキャリアまたは希釈剤を示す。キャリアの非限定的な例には、プロピレングリコール、生理食塩水、有機溶媒と水の混合物およびエマルジョンがある。
【0161】
本明細書中において、用語「賦形剤」は、化合物の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性な物質を示す。賦形剤の非限定的な例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびタイプのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0162】
本発明の好ましい実施形態によれば、医薬用キャリアは、乳酸の水溶液である。
【0163】
薬物の配合および投与のための様々な技術が「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版)(これは参考として本明細書中に組み込まれる)に見出され得る。
【0164】
好適な投与経路には、例えば、経口送達、直腸送達、経粘膜送達、経皮送達、腸管送達または非経口送達(これには、筋肉内注射、皮下注射および髄内注射、ならびに、クモ膜下注射、直接的な脳室内注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻内注射または眼内注射が含まれる)が含まれ得る。本発明の医薬組成物は、この分野で十分に知られている様々な方法によって、例えば、混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥の従来の方法によって製造することができる。
【0165】
本発明に従って使用するための医薬組成物は、活性な化合物を医薬として使用可能な製剤にする加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む一つ以上の医薬的に許容され得るキャリアを使用して従来のように配合されてもよい。適切な配合は選択された投与経路に依存する。
【0166】
注射の場合、本発明の化学的コンジュゲートは、水溶液において、好ましくは生理学的に適合し得る、緩衝液(例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理学的な食塩水緩衝液など)であって、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールの如き有機溶媒を含むまたは含まない緩衝液において配合することができる。経粘膜投与の場合、浸透剤が配合において使用される。そのような浸透剤はこの分野では一般に知られている。
【0167】
経口投与の場合、化学的コンジュゲートは、活性な化合物を、この分野で十分に知られている医薬的に許容され得るキャリアと組み合わせることによって容易に配合することができる。そのようなキャリアにより、本発明のコンジュゲートは、患者によって経口摂取される錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤、懸濁物などとして配合することが可能になる。経口使用される医薬的調製物は、錠剤または糖衣錠コアを得るために、固体の賦形剤を使用し、得られた混合物を場合により粉砕し、そして所望する場合には好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して作製することができる。好適な賦形剤は、具体的には、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースなど;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容され得るポリマーである。所望する場合には、架橋型ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤を加えることができる。
【0168】
糖衣錠コアには、好適なコーティングが施される。この目的のために、高濃度の糖溶液を使用することができ、この場合、糖溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有し得る。色素または顔料が、活性な化合物の量を明らかにするために、または活性な化合物の量の種々の組合せを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠コーティングに添加され得る。
【0169】
経口使用され得る医薬組成物には、ゼラチンから作製されたプッシュ・フィット型カプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤(グリセロールまたはソルビトールなど)から作製された軟密閉カプセルが含まれる。プッシュ・フィット型カプセルは、充填剤(ラクトースなど)、結合剤(デンプンなど)、滑剤(タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)および場合により安定化剤と混合された有効成分を含有し得る。軟カプセルでは、活性な化合物を好適な液体(脂肪油、流動パラフィンまたは液状のポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁させることができる。さらに、安定化剤を加えることができる。経口投与される配合物はすべて、選ばれた投与経路に好適な投薬形態でなければならない。
【0170】
口内投与の場合、組成物は、従来の様式で配合された錠剤またはトローチの形態を取ることができる。
【0171】
吸入による投与の場合、本発明に従う使用のための化学的コンジュゲートは、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素)の使用により加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示物の形態で都合よく送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投薬量単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。吸入器または吹き入れ器で使用される、例えば、ゼラチン製のカプセルおよびカートリッジで、化合物と好適な粉末基剤(ラクトースまたはデンプンなど)との粉末混合物を含有するカプセルおよびカートリッジを配合することができる。
【0172】
本明細書で記述される化学的コンジュゲートは非経口投与、例えばボーラス注射または連続点滴のために配合されることができる。注射のための配合は、単位用量形態(例えばアンプルまたは多用量コンテナ)で提供されることができ、これらには所望により保存剤が添加されている。組成物は、懸濁物、溶液または油性もしくは水性ビヒクル中のエマルションであることができ、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤の如き配合剤を含むことができる。
【0173】
非経口投与される医薬組成物には、水溶性形態における活性な化合物の水溶液が含まれる。さらに、活性な化合物の懸濁物を、適切なオイル状のまたは水ベースの注射用懸濁物として調製することができる。好適な親油性の溶媒またはビヒクルには、脂肪油(ゴマ油など)、または合成脂肪酸エステル(オレイン酸エチルなど)、トリグリセリドまたはリポソームが含まれる。水性の注射用懸濁物は、懸濁物の粘度を増大させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含有し得る。場合により、懸濁物はまた、高濃度の溶液の調製を可能にするためにコンジュゲートの溶解性を増大させる好適な安定化剤または薬剤を含有し得る。あるいは、有効成分は、使用前に好適なビヒクル(例えば、滅菌されたパイロジェン非含有水)を用いて構成される粉末形態にする。
【0174】
本発明の化学的コンジュゲートはまた、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の座薬基剤を使用して、座薬または停留浣腸剤などの直腸用組成物に配合することができる。
【0175】
本明細書中に記載される医薬組成物はまた、固相またはゲル相の好適なキャリアまたは賦形剤を含むことができる。そのようなキャリアまたは賦形剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチンおよびポリマー(例えば、ポリエチレングリコールなど)が含まれるが、これらに限定されない。
【0176】
本発明に関連した使用のために好適な医薬組成物には、有効成分が、意図された目的を達成するために効果的な量で含有される組成物が含まれる。より具体的には、治療効果がある量は、疼痛を防止、軽減または改善するために効果的な化学的コンジュゲートの量を意味する。
【0177】
治療効果がある量の決定は十分に当業者の範囲内であり、特に本願明細書で与えられる詳細な開示に鑑みればそうである。
【0178】
本発明の方法において使用されるいずれかの化学的コンジュゲートについて、治療効果的な量または用量は、最初に細胞培養および/または動物における活性アッセイから推定することができる。例えば、コンジュゲートの有効性を、L5/L6脊髄神経結紮手術手法を受けているラットでアッセイすることができる。具体的には、左側の傍脊柱筋群を麻酔ラットのL4からS2までのレベルで棘突起から切開し、そのL5脊髄神経およびL6脊髄神経を隔離する。それぞれの脊髄神経を、後根神経節の遠位側で、例えば、4−0絹縫合糸により固く結紮する。脊髄神経を結紮した後、傷を縫合し、皮膚を閉じる。脊髄神経結紮後10日〜14日で、ラットは典型的には、ラットが順応させられる、持ち上げられたワイヤメッシュに置かれた個々のPlexiglasチャンバーに入れられる。順応期間後、ラットを、一連の校正されたvon Freyフィラメントを神経傷害の部位に対して同側の左後足の足底面に当てることによって触覚性異痛性について試験する。平均50%離脱閾値(g)が求められる[Li Y、Dorsi MJ、Meyer RA、Belzberg AJ、Pain、2000、85(3):493〜502]。4gを越える投与前の離脱閾値を示すラットは、異痛性であると一般には見なされず、研究から除外される。投与前の離脱閾値を求めた後、ラットは本発明のコンジュゲートまたはビヒクルのどちらかで治療することができ、触覚性異痛性に対する影響が、後足の離脱閾値を、様々な時間間隔について、例えば、注入後の30分、60分、90分および120分などについて測定することによって経時的に求められる。
【0179】
本発明のコンジュゲートはまた、実施例2、実施例3および実施例5においてそれぞれ下記で記載されるように、ホットプレート試験またはホルマリン試験を使用してラットまたはマウスで試験された。
【0180】
本発明のコンジュゲートはまた、本明細書中下記の実施例6に記載されるように、炎症性サイトカインの分泌を妨げるその能力を分析することによって試験された。
【0181】
例えば、活性アッセイによって測定されるようなIC50を含む循環濃度範囲(例えば増殖活性の半最大阻害を達成する試験化合物の濃度)を達成するために、用量は動物モデルで配合されることができる。かかる情報は人間に有用な用量をより正確に決定するために使用されることができる。
【0182】
本明細書中に記載される化学的コンジュゲートの毒性および治療効力は、実験動物における標準的な薬学的手法によって、例えば対象化合物についてIC50およびLD50(試験された動物の50%の死を生ずる致死量)を測定することによって明らかにすることができる。これらの活性アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトへの使用のための投薬量範囲を定める際に使用することができる。
【0183】
疼痛を緩和することで効果的である用量における本発明のコンジュゲートの副作用を、この分野で知られている標準的なアッセイを使用してアッセイすることができる。例えば、本発明のコンジュゲートの起こり得る非特異的な筋弛緩作用または鎮静作用を調べるために、ラットまたはマウスを本発明のコンジュゲートにより治療し、続いて、運動性についてロータロッドで試験することができる。この装置は、4つの区画に区分された、直径がマウスについては3.5cmであり、ラットについては7cmである棒からなる。棒は0.5回転/分〜22回転/分の一定速度で回転し、動物が、棒から落ちるのに要した時間について評価される。動物は、棒に60秒間留まらない動物を除外することによって24時間前に選択することができる。結果が典型的には、動物がロータロッド棒に留まる時間の長さとして表される。
【0184】
投薬量は、用いられる投薬形態物および利用される投与経路に依存して変化し得る。正確な配合、投与経路および投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選ぶことができる(例えば、Finglら、1975、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」(第1章、1頁)を参照のこと)。
【0185】
投薬量および投薬間隔を、疼痛緩和作用を維持するために十分である活性な成分の血漿中レベル(これは最小有効濃度(MEC)と呼ばれる)を提供するために個々に調節することができる。MECはそれぞれの調製物について変化するが、本明細書中上記に記載されるようにインビトロデータおよび/またはインビボデータから推定することができる。MECを達成するために必要な投薬量は、個々の特性および投与経路に依存する。HPLCアッセイまたはバイオアッセイを使用して、血漿中濃度を求めることができる。
【0186】
投薬間隔もまた、MEC値を使用して決定することができる。調製物は、時間の10%〜90%について、好ましくは30%〜90%の間、最も好ましくは50%〜90%の間、MECを越える血漿中レベルを維持する治療法を使用して投与されなければならない。
【0187】
処置される疼痛の重篤度および応答性に依存して、投薬は上述の徐放性組成物の単回投与であることも可能であり、処置の経過が、数日から数週間まで、あるいは、治癒が達成されるまで、または、疾患状態の縮小が達成されるまで続く。
【0188】
投与される組成物の量は、当然のことではあるが、処置されている対象、疼痛の重篤度、投与様式、主治医の判断などに依存する。
【0189】
本発明の組成物は、所望される場合には、有効成分を含有する1つまたは複数の単位投薬形態物を含有し得るパックまたはディスペンサーデバイス(例えば、FDA承認キットなど)で提供され得る。パックは、例えば、金属箔またはプラスチック箔を含むことができ、例えば、ブリスターパックなどである。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が添付され得る。パックまたはディスペンサーにはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局により定められた形式で容器に付けられた通知が伴うことがあり、この場合、そのような通知は、組成物の形態またはヒトもしくは動物への投与の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物についての米国食品医薬品局により承認されたラベル書きであり得るか、または承認された製品添付文書であり得る。適合し得る医薬用キャリアに配合された本発明の化学的コンジュゲートを含む組成物はまた、疼痛の治療のために、調製され、適切な容器に入れられ、かつ表示され得る。2つのGABAアゴニストのコンジュゲートを含む組成物はまた、他の障害、例えば、運動障害(例えば、パーキンソン病、ハンティングトン病、多発性硬化症、動作時振戦、および遅発性ジスキネジア)、解離性障害、気分障害(例えば、パニック、不安、うつ病、アルコール依存症、不眠症、および躁病的行動)、情動障害、神経変性疾患または神経変性障害(アルツハイマー病)および痙攣性障害(例えば、てんかん)の治療のために表示され得る。
【0190】
従って、本発明の好ましい実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、疼痛を緩和するために、包装材に詰められ、包装材の中または表面において印刷により特定される。
【0191】
本発明のさらなる局面によれば、本明細書中上記で記載されるような医薬組成物を、本明細書中に記載されるように疼痛の治療における使用のために、包装材に詰められ、包装材の中または表面において印刷により特定されて含む製造物が提供される。医薬組成物は、本明細書中に記載されるような医薬的に許容され得るキャリアと、本明細書中に記載される化学的コンジュゲートのいずれかとを含む。
【0192】
本発明のなおさらなる局面によれば、本明細書中上記で記載されるような医薬組成物を、本明細書中に記載されるように嗜癖障害の治療における使用のために、包装材に詰められ、包装材の中または表面において印刷により特定されて含む製造物が提供される。
【0193】
本発明の追加の目的、利点および新規な特徴は、下記実施例を考察すれば、当業技術者には明らかになるであろう。なおこれら実施例は本発明を限定するものではない。さらに、先に詳述されかつ本願の特許請求の範囲の項に特許請求されている本発明の各種実施態様と側面は各々、下記実施例の実験によって支持されている。
【実施例】
【0194】
上記説明とともに、以下の実施例を参照して本発明を例示する。なおこれら実施例によって本発明は限定されない。
【0195】
(実施例1)
抗うつ薬物および抗てんかん薬物のGABAコンジュゲートの調製
2−プロピルペンタン酸(バルプロ酸)4−アミノブチリルオキシメチルエステル塩酸塩(AN−216)の合成:2−プロピルペンタン酸N−t−boc−4−アミノブチリルオキシメチルエステル(AN−217、これは国際特許出願公開WO2005/092392に記載されるように調製された;1.7グラム、4.7mmol)を酢酸エチルに溶解した溶液に、4N HCl/酢酸エチルの溶液を加えた。得られた混合物を室温で4時間撹拌し、その後、溶媒を蒸着し、残渣を高真空下でさらに乾燥した。残渣をエーテルに溶解し、ヘキサンの添加により、所望の生成物AN−216(0.75グラム、62%)を、35℃〜37℃の融点を有する非晶質の固体として沈殿させた。
【0196】

【0197】
N−(3−(4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)−3−フェニルプロピル)−4−アミノ−N−メチルブタンアミド塩酸塩(AN−227)の合成:
tert−ブチル3−(N−(3−(4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)−3−フェニルプロピル)−N−メチルカルバモイル)プロピルカルバメート(AN−229)を、国際特許出願公開WO2005/092392に記載されるように調製した。AN−229(0.5mmol)をHClのEtOAc溶液(35ml)に加え、得られた混合物を3時間撹拌した。その後、溶媒を蒸着し、生成物のAN−227を定量的収率で得た。
【0198】

【0199】
10,11−ジヒドロ−5−(3−メチルアミノプロピリデン)−5H−ジベンゾ[a,d][1,4]シクロヘプテン−4−アミノ−N−ブタンアミド塩酸塩(AN−228)の合成:tert−ブチル 3−(10,11−ジヒドロ−5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イリデン−N−メチル−1−プロパンアミン−3−(メチルカルバモイル)プロピルカルバメート(AN−230)を、国際特許出願公開WO2005/092392に記載されるように調製した。AN−230(0.5mmol)をHClのEtOAc溶液(35ml)に加え、得られた混合物を3時間撹拌した。その後、溶媒を蒸着し、生成物を2つの回転異性体の形態で、定量的収率で得た。
【0200】

【0201】
GABAオキシメチルGABA(AN−214)の合成:
4−tert−ブトキシカルボニルアミノ酪酸の調製:

γ−アミノ酪酸(1当量)をt−BuOH(4ml/グラム)およびHO(3ml/グラム)に溶解した溶液に、NaOH(1当量)、BOCO(1当量)を加え、混合物を室温で24時間撹拌した。その後、溶媒を蒸着し、残渣を、ヘキサンと、水との間で分配した。水層を、pH=2に達するようにKHSO(1N)により酸性化し、その後、CHClにより抽出した。有機層をMgSOで乾燥し、溶媒を蒸着して、所望の生成物を白色の固体として得た(85%の収率)。
【0202】

【0203】
4−tert−ブトキシカルボニルアミノ酪酸クロロメチルエステルの調製:

クロロメチルクロロスルファート(1.1当量)および4−tert−ブトキシカルボニルアミノ酪酸(1当量)の混合物に、水/CHCl(1:1)におけるNaHCO(3.6当量)およびBuNHSO(触媒量)を加えた。混合物を室温で一晩撹拌した。その後、有機相を分離し、水相をCHClにより抽出した(3回)。一緒にした有機層をNaHCOにより(3回)洗浄し、次いでブラインにより(3回)洗浄し、MgSOで乾燥し、ろ過し、蒸着した。
【0204】
生成物を、5:1のヘキサン:EtOAcを溶出液として使用して黄色のオイルとして単離した(64%の収率)。
【0205】

【0206】
4−tert−ブトキシカルボニルアミノ酪酸 4−tert−ブトキシカルボニルアミノブチロールオキシメチルエステルの調製:

乾燥エチルメチルケトン(EMK)における4−tert−ブトキシカルボニルアミノ酪酸(1.2当量)および上記のクロロメチルエステル(1当量)の混合物を、トリエチルアミン(1.2当量)を滴下して加えながら窒素雰囲気下で撹拌し、反応混合物を一晩還流した。その後、形成された白色沈殿物をろ過し、EtOAcにより洗浄し、ろ液を蒸着した。残渣をEtOAcに溶解し、NaHCOにより(3回)洗浄し、次いでブラインにより(3回)洗浄し、MgSOで乾燥し、ろ過し、蒸着した。粗生成物(褐色オイル)を、8:1のヘキサン:EtOAc混合物を溶出液として使用してフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、所望の生成物を黄色のオイルとして得た(38%の収率)。
【0207】

【0208】
4−アミノ酪酸 4−アミノブチリルオキシメチルエステル二塩酸塩(AN−214)の調製:

N−tert−Boc保護の化合物をEtOAcに溶解した溶液に、4N HCl/EtOAcの溶液を加えた。反応混合物を室温で4時間撹拌し、その後、溶媒を蒸着して、粗生成物を得た。粗生成物をMeOH−エーテルの混合物から再結晶し、ろ過し、真空下においてPで乾燥して、純粋な生成物を白色の固体として得た(90%の収率)。
【0209】

【0210】
下記の表1は、本明細書中上記で記載される方法によって合成される化学的コンジュゲートを示す。

【0211】
(実施例2)
ホットプレート試験によって明らかにされるようなGABA−抗うつ薬物コンジュゲートおよびGABA−抗てんかん薬物コンジュゲートの効果
中枢性の疼痛知覚をホットプレートでの鎮痛応答によって評価した。熱に対する応答における潜伏時間を測定するために使用されたホットプレート試験は本質的には、下記の材料および方法を用いて、EddyおよびLeimbach(1953)によって記載される方法に従って行われた。
【0212】
材料および方法
動物:オスのBalb−cマウス(8週齢〜14週齢)をHarlan(イスラエル)から得た。マウスを、12時間照明/12時間消灯のサイクルを伴う制御された温度(23±3℃)および湿度(55±15%)の条件のもとで収容した。すべての実験が国際疼痛学会の倫理ガイドラインおよびテルアビブ大学の実験動物管理使用委員会の倫理ガイドラインに従って行われた。
【0213】
実験手順:ノルトリプチリン(Sigma、Aldrich)、フルオキセチン、GABA(Sigma、イスラエル)、ノロトリプチリン−GABAコンジュゲート(AN−228)、フルオキセチン−GABAコンジュゲート(AN−227)およびバルプロイルオキシメチル−GABAコンジュゲート(AN−216)を生理的食塩水に可溶化し、胃への胃管栄養法によってマウスに投与した。示された期間の後、動物を、52±1℃で維持されたホットプレート(MRC、モデルMH−4、230V/50Hz、750W)に置いた。熱感覚に対する応答の時間を下記の反応の1つまたは複数によって検出した:足を上げること、足をなめること、飛び跳ねること、または、走ること。抗侵害受容反応または痛覚脱失反応を、マウスの足を熱刺激にさらすことにより誘起される離脱までの潜伏時間として測定した。データを下記の時点で集めた:薬物投与後の−60分、0分、120分、180分、240分および300分。
【0214】
統計学的分析:データが平均±SDとして表される。データをスチューデントt検定によって分析した。P<0.05の値を、統計学的に有意であると見なした。
【0215】
実験結果
オスのBalb−cマウス(6匹/群)を、示された用量のノルトリプチリン、それぞれの等モル用量のノルトリプチリン−GABAコンジュゲートまたはビヒクルにより経口.処置した。2時間後、動物をホットプレートの表面に置いた(52±1℃)。熱に対する応答(これは、足を振るわせること、または、足をなめること、または、飛び跳ねることによって現れた)を応答潜伏時間の指標として記録した。
【0216】
図1に例示されるように、0.5mg/kgのノルトリプチリンは、投与後2時間で、等モル用量のそのGABAコンジュゲートよりも有意に効果的でなかった。この用量において、ノルトリプチリンは、ビヒクルのみにより処置されたコントロールマウスとの有意な違いがなかった(p>0.05)。4.5mg/kgの用量において、ノルトリプチリンおよび等モル用量のそのGABAコンジュゲートは、ビヒクルにより処置されたコントロールマウスと比較して、応答における有意な遅れを示した(p<0.05)。これらの結果は、GABA−ノルトリプチリンコンジュゲートがノルトリプチリンよりも低い濃度で抗侵害受容活性をもたらしたことを明らかにし、このことはその利点を明らかにする。0.5mg/kgの等モル用量は4.5mg/kgの等モル用量との有意な違いがなかったので、ノルトリプチリンGABAによる応答における飽和が認められた。
【0217】
ノルトリプチリン(0.25mg/kgおよび0.5mg/kg)および等モル用量のノルトリプチリン−GABA(それぞれ、0.32mg/kgおよび0.64mg/kg)により処置されたマウスによる熱に対する応答の経時変化が図2A〜図2Bに示される。0.25mg/kgの用量において、処置後4時間で、ノルトリプチリンおよびそのGABAコンジュゲートの鎮痛作用は、非処置のマウスと比較して、応答の潜伏時間を有意に増大させた(図2A)。コンジュゲートは、処置後の4時間および6時間で、非処置のマウスと比較して、応答における著しくより大きい遅れを示し、4時間では、その抗侵害受容作用がノルトリプチリンの抗侵害受容作用よりも有意に大きかった。このことは、ノルトリプチリン−GABAが、ノルトリプチリンと比較した場合、より強力な鎮痛性薬物であり、その作用がより長く持続することを示している。0.5mg/kgによる処置の後の2時間で、コンジュゲートは、図2Bに例示されるように、(ノルトリプチリン処置マウスおよびビヒクル処置マウスと比較した場合)著しい抗侵害受容作用を引き起こした。他方で、コンジュゲート化されてないノルトリプチリンは、4時間後のみで、(ビヒクル処置の動物と比較した場合)著しい潜在時間をもたらした。このことは、さらなるGABA成分が抗侵害受容活性を増大させるだけでなく、さらなるGABA成分もまた、保護的作用の開始を加速させることを示している。
【0218】
熱に対する、これらの薬物による反復した経口処置の影響を、ノルトリプチリン(0.2mg/kg)および等モル用量でのそのGABAコンジュゲート(AN−228)についてマウス(6匹/群)において試験した。薬物を15日間にわたって毎日投与し、熱感覚に対する処置の影響を週に2回測定した。図3Aに例示されるように、最初の1週間の期間中、処置前(時間0)の熱感覚に対する動物応答は、違いがなく、処置によって影響を受けなかった。8日目から、持続した潜伏応答が、処置前において、ほとんどがノルトリプチリン−GABAコンジュゲート処置マウスにおいて、また、より小さい程度ではあるが、ノルトリプチリン処置マウスにおいて認められた。処置の3日目から、また、試験の5時間の期間中(図3B〜図3E)、典型的には、コンジュゲートは、非処置の動物またはノルトリプチリンにより処置された動物と比較して、著しくより良好な抗侵害受容作用をもたらした。非処置の動物およびノルトリプチリンにより処置された動物と比較された場合、著しく改善された抗侵害受容作用が、処置の1日目から、毎日の服用により処置後の4時間および5時間で観測された。これらの結果は、ノルトリプチリン−GABAコンンジュゲートがノルトリプチリンよりも効果的な持続した鎮痛応答をもたらしたことを示している。反復した投与は抗侵害受容作用の開始を短縮し、同様にまた、応答の潜伏時間を増大させた。
【0219】
SSRIのフルオキセチンおよびそのGABAコンジュゲート(AN−227)の抗侵害受容作用をホットプレート試験で試験し、比較した。フルオキセチン(10mg/kg)および等モル用量のフルオキセチン−GABAコンジュゲートにより処置されたマウスによる熱に対する応答の経時変化が図4に示される。処置後の2時間、3時間および4時間において、マウスに対するフルオキセチン−GABAコンジュゲートの鎮痛作用は、未処置のマウスあるいは等モル用量のGABAまたはフルオキセチンにより処置されたマウスの鎮痛作用よりも有意に大きかった。この観測結果は、フルオキセチン−GABAが、フルオキセチンと比較して、より強力な鎮痛剤であり、その作用がより長く持続することを示している。
【0220】
熱への応答に対する、フルオキセチンおよびそのGABAコンジュゲートによる処置の影響を試験した。結果が図5A〜図5Eに示される。フルオキセチン(10mg/kg)および等モル用量でのそのコンジュゲートを、11日間、毎日、経口投与により与え、熱感覚に対する処置の影響を、3日目、7日目、9日目および11日目で試験した。フルオキセチン−GABAコンジュゲートを受けるマウスにおける熱感覚に対する遅れた応答が、処置前において、3日目、9日目および11日目で認められた(図5A)。遅れが、ビヒクル処置の動物と比較して、フルオキセチン処置マウスに関しては11日目で認められた。典型的には、11日の処置の期間中、GABA−フルオキセチンコンジュゲートは、フルオキセチンまたは非処置の動物と比較して、著しく改善された抗侵害受容作用を発揮した。フルオキセチン処置の動物はまた、非処置の動物と比較して、著しくより良好な抗侵害受容作用を示した。これらの結果は、フルオキセチン−GABAコンジュゲートがフルオキセチンよりも効果的な持続する鎮痛応答をもたらしたことを示している。
【0221】
バルプロエートおよびGABAおよびそれらのアナログを含む抗てんかん薬物は、効果的な鎮痛剤であることが示されている。バルプロ酸はBBBを横断するので、バルプロエート−GABAコンジュゲートはGABAを脳に運ぶことができ、そして今度は、GABAがバルプロ酸の活性を強化することができる。0.2mgのバルプロイルオキシメチルGABAを経口投与した後の3時間、4時間および5時間において、熱感覚に対する応答における著しい潜伏時間が、非処置のコントロールマウスと比較した場合、図6に例示されるように観測された。同時に、10倍を超える大きい用量(2.39mg/kg)で投与されたGABAは活性を何ら有していなかった。
【0222】
2つの独立したGABAを含むコンジュゲート(AN−214)もまた、その疼痛緩和活性についてアッセイされた。オスのBalb/cマウスを、GABAオキシメチルGABA(n=11)、等モル用量のバルプロイルオキシエチルGABA(n=11)またはビヒクル(n=8)のいずれかにより5日間連続して経口投与により処置した。図7に例示されるように、抗侵害受容活性が、全期間中、検出されなかった。
【0223】
GABAの長期投与は、痛覚脱失に対する蓄積作用を有さず、また、図8に例示されるように、抗侵害受容作用に寄与しなかった。マウスを3つの異なる用量のGABAにより5日間連続して経口投与により処置した。抗侵害受容作用が、全期間中、検出されなかった。
【0224】
(実施例3)
ホルマリン試験によって明らかにされるようなGABA−抗うつ薬物コンジュゲートおよびGABA−抗てんかん薬物コンジュゲートの効果
ホルマリンの足底内注入を、疼痛の第2の末梢段階を評価するために使用した。
【0225】
材料および方法
動物:10週齢および12週齢のBalb−cマウスをHarlan(イスラエル)から得た。マウスを、12時間照明/12時間消灯のサイクルを伴う制御された温度(23±3℃)および湿度(55±15%)の条件のもとで収容した。すべての実験が国際疼痛学会の倫理ガイドラインおよびテルアビブ大学の実験動物管理使用委員会の倫理ガイドラインに従って行われた。
【0226】
実験手順
(A)フルオキセチン:5匹のマウスをそれぞれの群で使用し、フルオキセチン(10mg/kgまたは30mg/kg)または等モル用量のフルオキセチンコンジュゲート(AN−227)のいずれかの経口投与の後3時間で、1%ホルマリン溶液を右後足の背側表面に皮下注入した。
【0227】
(B)ノルトリプチリン:8匹のマウスをそれぞれの群で使用し、ノルトリプチリン(0.5mg/kgまたは5mg/kg)または等モル用量のノルトリプチリンコンジュゲート(AN−228)のいずれかの経口投与の後3時間で、1%ホルマリン溶液を右後足の背側表面に皮下注入した。
【0228】
ホルマリンは、注入された足の典型的な二相的震え行動を誘導した。動物をガラスチャンバーに戻し、動物が、注入された足をなめること、または、注入された足を噛むことに費やした総時間を計測した。疼痛関連行動の頻度を初期段階(注入後の0分〜5分)の期間中および後期段階(注入後の25分〜35分)の期間中に記録した。
【0229】
実験結果
図9A〜図9Bに例示されるように、本発明のフルオキセチンコンジュゲートの両方の用量は、フルオキセチン単独と比較した場合、疼痛に対する初期の神経因性応答を有意に増大させ(p<0.05)、また、より大きい用量のフルオキセチンコンジュゲート(30mg/kgと等価)は後期の炎症性末梢応答を有意に低下させた(p<0.05)。図10A〜図10Bにおいてさらに例示されるように、本発明のノルトリプチリンコンジュゲートの両方の用量(0.5mg/kgおよび5mg/kgと等価)は、ノルトリプチリン単独と比較した場合、疼痛に対する初期の神経因性応答および後期の炎症性末梢応答を有意に低下させた(p<0.05)。
【0230】
(実施例4)
カラギーナン誘導の足水腫試験によって明らかにされるようなGABA−フルオキセチンコンジュゲートの効果
カラギーナンの足底内注入を、GABA−フルオキセチンコンジュゲート(AN−227)の抗炎症作用を評価するために使用した。
【0231】
材料および方法
実験手順:Wistarラット(340g〜400g)に、モニターされることになる足の区域を明確にするために、印をその左後足の足首に永続的なマーカーにより付けた。ラットをフルオキセチン(40mg/kg)(n=8)および等モル濃度のフルオキセチンGABA(n=6)ならびにコントロールビヒクル(n=8)により経口.処置した。3時間後、足の水腫を、λ−カラギーナン(Sigma、米国)の規定生理的食塩水における1%溶液の100μlをラットの左後足の足底表面に注入することによって誘導した。誘導された水腫の面積を、カリパスを使用して2時間後および4時間後に測定した。抗炎症活性を、その長さおよび幅の測定値によって計算される水腫の面積(面積=LXW)として表した。
【0232】
実験結果
本発明のフルオキセチン−GABAコンジュゲートは、コントロールおよびフルオキセチン単独と比較した場合、2時間および4時間の両方で水腫を低下させた(図11)。40mg/kgのフルオキセチンは、炎症面積を低下させることに対する影響を有していなかった一方で、フルオキセチンGABAコンジュゲートは炎症面積を有意に低下させた。この動物モデルでは、高用量のフルオキセチンがラットにおける水腫応答を低下させることが以前に示された(Omar他、Pharmacol.Res.、49(2004)、119〜131)が、本実施例では、相互比較において、フルオキセチンGABAコンジュゲートがより低い用量で作用することが教示される。
【0233】
(実施例5)
カラギーナン誘導の足水腫試験およびホットプレート試験によって明らかにされるような、ガバペンチンおよびノルトリプチリンと比較されるGABA−ノルトリプチリン薬物コンジュゲートの効果
カラギーナンの足底内注入およびホットプレート試験を、ノルトリプチリン単独およびガバペンチン(1−(アミノメチル)シクロヘキサン酢酸)と比較したときの、GABA−ノルトリプチリンの抗炎症作用を評価するために使用した。
【0234】
材料および方法
実験手順:12週齢のWistarラット(250g〜300g;Harlan、イスラエル)を4つの群(n=8〜10)に分け、下記のように処置した
1.コントロール−ビヒクル
2.ノルトリプチリン 5mg/kg、経口、(14mg+2.8ml DDW)
3.ノルトリプチリン−GABA(AN−228)、5mg/kgとモル等価、経口、((14.4mg1.28)18.432mg+2.8ml DDW)
4.ガバペンチン 100mg/kg、経口。
【0235】
Wistarラット(250mg〜300mg)に、モニターされることになる足の区域を明確にするために、印をその左後足の足首に永続的なマーカーにより付けた。ラットを、本明細書中上記で記載されるように処置した。3時間後、足の水腫を、λ−カラギーナン(Sigma、米国)の規定生理的食塩水における1%溶液の100μlをラットの左後足の足底表面に注入することによって誘導した。誘導された水腫の面積を、指定された時点でカリパスを使用して測定した。抗炎症活性を、高さにおける増大を分析することによって測定した。
【0236】
動物はまた、−60分、0分、120分、240分、24時間および48時間においてホットプレートで試験された。
【0237】
実験結果
図12に例示されるように、熱感覚に対する有意に遅れた応答が、注入後4時間で、ノルトリプチリン単独およびガバペンチンと比較した場合、ノルトリプチリン−GABAを受けるラットにおいて認められた。
【0238】
図13Aに例示されるように、足の高さが、水腫誘導後の4時間、24時間および48時間で、ノルトリプチリン単独およびコントロールと比較した場合、ノルトリプチリン−GABAを受けているラットでは著しくより低下していた。図13Bに例示されるように、足の高さが、水腫誘導後の24時間および48時間で、ノルトリプチリン単独、ガバペンチンおよびコントロールと比較した場合、ノルトリプチリン−GABAを受けているラットでは著しくより低下していた。
【0239】
(実施例6)
炎症性サイトカインの分泌によって明らかにされるような、ガバペンチンおよびノルトリプチリンと比較されるGABA−ノルトリプチリンコンジュゲートの効果
サイトカイン分泌を、ノルトリプチリン単独またはガバペンチン(1−(アミノメチル)シクロヘキサン酢酸)と比較したときの、GABA−ノルトリプチリン(AN−228)の抗炎症作用を評価するために使用した。
【0240】
材料および方法
マウスの足皮膚におけるTNF−αおよびINF−γの測定。Balb−cマウスを4つの群に分けた(n=8)。ホルマリン注入の2時間前に、マウスを、0.5mg/kgのノルトリプチリン、等モル用量のAN−228(ノルトリプチリン−GABA)、0.5mg/kgのノルトリプチリンおよび等モル用量のGABAの混合物、ならびに、50mg/kgのガバペンチンにより経口投与により処置した。4時間後、マウスを屠殺し、注入部位からの組織を集め、TNF−αまたはINF−γについて分析した。集めた組織を、0.4mMのNaCl、0.05%のTween20、0.1mMのフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)および0.1mMのプロテアーゼ阻害剤カクテル(Calbiochem、Darmstadt、ドイツ)を含有する氷冷されたPBSの300μlにおいてホモジネートした。ホモジネートを10000gで30分間、4℃で遠心分離した。上清を取り出し、製造者の説明書に従ってマウスTNF−αELISAキット(BD OptEIA、CA、米国)およびマウスINF−γ免疫アッセイ(R&D Systems、Minneapolis、MN、米国)によってアッセイした。結果が、タンパク質1mgあたりのTNF−αまたはIFN−γのngとして表される。
【0241】
実験結果
IFN−γの量(図14A)およびTNF−αの量(図14B)がともに、AN−228(ノルトリプチリン−GABA)により処置されたマウスでは、等モル用量のノルトリプチリンまたは等モル用量のノルトリプチリン+GABAにより処置されたマウスの場合よりも著しくより低下していた。
【0242】
明確にするため別個の実施態様で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施態様に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施態様で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0243】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。本願で挙げた刊行物、特許および特許願はすべて、個々の刊行物、特許および特許願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疼痛を治療する方法であって、第2の化学的成分に共有結合により連結される第1の化学的成分を含む化学的コンジュゲートの治療効果的な量を治療の必要性のある対象に投与することを含み、前記第1の化学的成分が、抗うつ剤、抗てんかん薬物、およびGABAアゴニストからなる群から選択され、さらには、前記第2の化学的成分がGABAおよびR−C(=O)−(式中、Rは、3個〜5個の炭素原子を有するアルキルである)からなる群から選択される、方法。
【請求項2】
疼痛を治療するための医薬品を製造するための、第2の化学的成分に共有結合により連結される第1の化学的成分を含む化学的コンジュゲートの使用であって、前記第1の化学的成分が、抗うつ剤、抗てんかん薬物、およびGABAアゴニストからなる群から選択され、さらには、前記第2の化学的成分がGABAおよびR−C(=O)−(式中、Rは、3個〜5個の炭素原子を有するアルキルである)からなる群から選択される、使用。
【請求項3】
医薬的に許容され得るキャリアと、有効成分として、第2の化学的成分に共有結合により連結される第1の化学的成分を含む化学的コンジュゲートとを含む医薬組成物を、疼痛の治療における使用のために、包装材に詰められ、包装材の中または表面において印刷により特定されて含む製造物であって、前記第1の化学的成分が、抗うつ剤、抗てんかん薬物、およびGABAアゴニストからなる群から選択され、さらには、前記第2の化学的成分がGABAおよびR−C(=O)−(式中、Rは、3個〜5個の炭素原子を有するアルキルである)からなる群から選択される、製造物。
【請求項4】
疼痛を治療する方法であって、第2の化学的成分に共有結合により連結される第1の化学的成分を含む化学的コンジュゲートの治療効果的な量を治療の必要性のある対象に投与することを含み、前記第1の化学的成分が、向精神性薬物およびGABAアゴニストからなる群から選択され、さらには、前記第2の化学的成分が有機酸であり、前記有機酸は、前記向精神性薬物がそれ自体で投与されるときの前記向精神性薬物により誘導される治療効果を高めるように選択され、それにより疼痛を治療する、方法。
【請求項5】
疼痛を治療するための医薬品を製造するための、第2の化学的成分に共有結合により連結される第1の化学的成分を含む化学的コンジュゲートの使用であって、前記第1の化学的成分が、向精神性薬物およびGABAアゴニストからなる群から選択され、さらには、前記第2の化学的成分が有機酸であり、前記有機酸は、前記向精神性薬物がそれ自体で投与されるときの向精神性薬物により誘導される治療効果を高めるように選択される、使用。
【請求項6】
医薬的に許容され得るキャリアと、有効成分として、第2の化学的成分に共有結合により連結される第1の化学的成分を含む化学的コンジュゲートとを含む医薬組成物を、疼痛の治療における使用のために、包装材に詰められ、包装材の中または表面において印刷により特定されて含む製造物であって、前記第1の化学的成分が、向精神性薬物およびGABAアゴニストからなる群から選択され、さらには、前記第2の化学的成分が有機酸であり、前記有機酸は、向精神性薬物がそれ自体で投与されるときの向精神性薬物により誘導される治療効果を高めるように選択される、製造物。
【請求項7】
嗜癖障害を治療する方法であって、第2の化学的成分に共有結合により連結される第1の化学的成分を含む化学的コンジュゲートの治療効果的な量を治療の必要性のある対象に投与することを含み、前記第1の化学的成分が、抗うつ剤、抗てんかん薬物、およびGABAアゴニストからなる群から選択され、さらには、前記第2の化学的成分がGABAおよびR−C(=O)−(式中、Rは、3個〜5個の炭素原子を有するアルキルである)からなる群から選択される、方法。
【請求項8】
嗜癖障害を治療するための医薬品を製造するための、第2の化学的成分に共有結合により連結される第1の化学的成分を含む化学的コンジュゲートの使用であって、前記第1の化学的成分が、抗うつ剤、抗てんかん薬物、およびGABAアゴニストからなる群から選択され、さらには、前記第2の化学的成分がGABAおよびR−C(=O)−(式中、Rは、3個〜5個の炭素原子を有するアルキルである)からなる群から選択される、使用。
【請求項9】
医薬的に許容され得るキャリアと、有効成分として、第2の化学的成分に共有結合により連結される第1の化学的成分を含む化学的コンジュゲートとを含む医薬組成物を、嗜癖障害の治療における使用のために、包装材に詰められ、包装材の中または表面において印刷により特定されて含む製造物であって、前記第1の化学的成分が、抗うつ剤、抗てんかん薬物、およびGABAアゴニストからなる群から選択され、さらには、前記第2の化学的成分がGABAおよびR−C(=O)−(式中、Rは、3個〜5個の炭素原子を有するアルキルである)からなる群から選択される、製造物。
【請求項10】
第2の化学的成分に共有結合により連結される第1の化学的成分を含む化学的コンジュゲートの治療効果的な量を治療の必要性のある対象に投与することを含む、嗜癖障害を治療する方法であって、前記第1の化学的成分が、向精神性薬物およびGABAアゴニストからなる群から選択され、さらには、前記第2の化学的成分が有機酸であり、前記有機酸は、前記向精神性薬物がそれ自体で投与されるときの前記向精神性薬物により誘導される治療効果を高めるように選択され、それにより嗜癖障害を治療する、方法。
【請求項11】
嗜癖障害を治療するための医薬品を製造するための、第2の化学的成分に共有結合により連結される第1の化学的成分を含む化学的コンジュゲートの使用であって、前記第1の化学的成分が、向精神性薬物およびGABAアゴニストからなる群から選択され、さらには、前記第2の化学的成分が有機酸であり、前記有機酸は、前記向精神性薬物がそれ自体で投与されるときの向精神性薬物により誘導される治療効果を高めるように選択される、使用。
【請求項12】
医薬的に許容され得るキャリアと、有効成分として、第2の化学的成分に共有結合により連結される第1の化学的成分を含む化学的コンジュゲートとを含む医薬組成物を、嗜癖障害の治療における使用のために、包装材に詰められ、包装材の中または表面において印刷により特定されて含む製造物であって、前記第1の化学的成分が、向精神性薬物およびGABAアゴニストからなる群から選択され、さらには、前記第2の化学的成分が有機酸であり、前記有機酸は、向精神性薬物がそれ自体で投与されるときの向精神性薬物により誘導される治療効果を高めるように選択される、製造物。
【請求項13】
前記第2の成分はさらに、それ自体で投与されるときの前記向精神性薬物または前記GABAアゴニストにより誘導される有害な副作用を軽減するように選択される、請求項4〜6および10〜12のいずれかに記載の方法、使用または製造物。
【請求項14】
前記第2の化学的成分はGABAアゴニストである、請求項4〜6および10〜12のいずれかに記載の方法、使用または製造物。
【請求項15】
前記第2の化学的成分は、カルボン酸エステル結合、アルキルオキシカルボン酸エステル結合、アミド結合、イミン結合およびチオエステル結合からなる群から選択される結合により前記第1の化学的成分に共有結合により連結される、請求項1〜12のいずれかに記載の方法、使用または製造物。
【請求項16】
前記向精神性薬物は抗うつ剤または抗てんかん薬物である、請求項4〜6および10〜12のいずれかに記載の方法、使用または製造物。
【請求項17】
前記第2の化学的成分はGABAアゴニストである、請求項16に記載の方法、使用または製造物。
【請求項18】
前記抗うつ剤は、三環系抗うつ剤、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤、可逆的モノアミンオキシダーゼ阻害剤およびモノアミンオキシダーゼ阻害剤からなる群から選択される、請求項1〜3、7〜9、16および17のいずれかに記載の方法、使用または製造物。
【請求項19】
前記三環系抗うつ剤は、第二級アミンの三環系抗うつ剤または第三級アミンの三環系抗うつ剤である、請求項18に記載の方法、使用または製造物。
【請求項20】
前記第二級アミンの三環系抗うつ剤は、ノルトリプチリンおよびデシプラミンからなる群から選択される、請求項19に記載の方法、使用または製造物。
【請求項21】
前記第三級アミンの三環系抗うつ剤は、アミトリプチリンおよびイミプラミンからなる群から選択される、請求項19に記載の方法、使用または製造物。
【請求項22】
前記選択的セロトニン再取り込み阻害剤は、フルオキセチン、シタロプラム、パロキセチン、フルボキサミン、エスシタロプラムおよびセルトラリンからなる群から選択される、請求項18に記載の方法、使用または製造物。
【請求項23】
前記セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤はベンラファキシンである、請求項18に記載の方法、使用または製造物。
【請求項24】
前記可逆的モノアミンオキシダーゼ阻害剤はモクロベミドである、請求項18に記載の方法、使用または製造物。
【請求項25】
前記モノアミンオキシダーゼ阻害剤は、フェネルジンおよびトラニルシプロミンからなる群から選択される、請求項18に記載の方法、使用または製造物。
【請求項26】
前記抗てんかん薬物は、カルバマゼピン、バルプロエート、エトスクシミドおよびフェニトインからなる群から選択される、請求項1〜3、7〜9、16および17のいずれかに記載の方法、使用または製造物。
【請求項27】
前記抗うつ薬物は、ベンラファキシン、デュロキセチンおよびブプロピオンからなる群から選択される、請求項1〜3、7〜9、16および17のいずれかに記載の方法、使用または製造物。
【請求項28】
前記向精神性薬物は、ノルトリプチリン、フルオキセチンおよびバルプロ酸からなる群から選択される、請求項1〜12、16および17のいずれかに記載の方法、使用または製造物。
【請求項29】
前記第1の化学的成分はGABAアゴニストである、請求項4〜6および10〜12のいずれかに記載の方法、使用または製造物。
【請求項30】
前記第2の化学的成分はGABAである、請求項28または29に記載の方法、使用または製造物。
【請求項31】
前記化学的コンジュゲートは、GABAオキシメチルGABA、GABAオキシメチルバルプロエート、フルオキセチン−GABA、およびノルトリプチリン−GABAからなる群から選択される、請求項1〜12のいずれかに記載の方法、使用または製造物。
【請求項32】
前記GABAアゴニストは、(±)−バクロフェン、γ−アミノ酪酸(GABA)、γ−ヒドロキシ酪酸、アミノオキシ酢酸、β−(4−クロロフェニル)−γ−アミノ酪酸、イソニペコチン酸、ピペリジン−4−スルホン酸、3−アミノプロピル亜ホスホン酸、3−アミノプロピルホスフィン酸、(3−アミノプロピル)メチルホスフィン酸、1−(アミノメチル)シクロヘキサン酢酸(ガバペンチン)、y−ビニル−γ−アミノ酪酸(4−アミノヘキサ−5−エン酸、y−ビニルGABA、ビガバトリン)および3−(2−イミダゾリル)−4−アミノブタン酸からなる群から選択される、請求項1〜30のいずれかに記載の方法、使用または製造物。
【請求項33】
前記疼痛は慢性疼痛である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法、使用または製造物。
【請求項34】
前記慢性痛は神経障害性の疼痛または侵害受容性の疼痛である、請求項33に記載の方法、使用または製造物。
【請求項35】
前記疼痛は急性疼痛である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法、使用または製造物。
【請求項36】
前記嗜癖障害はアルコール依存症または喫煙である、請求項7〜12のいずれかに記載の方法、使用または製造物。
【請求項37】
第2の化学的成分に共有結合により連結される第1の化学的成分を含み、前記化学的成分のそれぞれが独立してGABAアゴニストである、化学的コンジュゲート。
【請求項38】
前記GABAアゴニストは、カルボン酸エステル結合、アルキルオキシカルボン酸エステル結合、アミド結合、イミン結合およびチオエステル結合からなる群から選択される結合により両者間が共有結合により連結される、請求項37に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項39】
前記結合はアルキルオキシカルボン酸エステル結合である、請求項38に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項40】
前記GABAアゴニストのそれぞれは、(±)−バクロフェン、γ−アミノ酪酸(GABA)、γ−ヒドロキシ酪酸、アミノオキシ酢酸、β−(4−クロロフェニル)−γ−アミノ酪酸、イソニペコチン酸、ピペリジン−4−スルホン酸、3−アミノプロピル亜ホスホン酸、3−アミノプロピルホスフィン酸、3−(アミノプロピル)メチルホスフィン酸、1−(アミノメチル)シクロヘキサン酢酸(ガバペンチン)、y−ビニル−γ−アミノ酪酸(y−ビニルGABA、ビガバトリン)および3−(2−イミダゾリル)−4−アミノブタン酸からなる群から独立して選択される、請求項37に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項41】
前記GABAアゴニストのそれぞれがγ−アミノ酪酸(GABA)である、請求項37に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項42】
請求項37に記載の化学的コンジュゲートを有効成分として含み、かつ、医薬的に許容され得るキャリアを含む医薬組成物。
【請求項43】
CNS疾患またはCNS障害の治療における使用のために、包装材に詰められ、前記包装材の中または表面において印刷により特定される、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項44】
CNS疾患またはCNS障害を治療する方法であって、請求項29に記載の化学的コンジュゲートの治療効果的な量を治療の必要性のある対象に投与することを含み、それによりCNS疾患またはCNS障害を治療する、方法。
【請求項45】
請求項37に記載のコンジュゲートの、医薬品の調製のための使用。
【請求項46】
前記医薬品は、CNS疾患またはCNS障害を治療するためのものである、請求項45に記載の使用。
【請求項47】
前記CNS疾患またはCNS障害は、疼痛障害、運動障害、解離性障害、気分障害、情動障害、神経変性疾患または神経変性障害、嗜癖障害、および痙攣性障害からなる群から選択される、請求項43、44および46のいずれかに記載の医薬組成物、方法または使用。
【請求項48】
前記CNS疾患またはCNS障害は、パーキンソン病、多発性硬化症、ハンティングトン病、動作時振戦および遅発性ジスキネジア、パニック、不安、うつ病、アルコール依存症、不眠症および躁病的行動、アルツハイマー病およびてんかんからなる群から選択される、請求項43、44および46のいずれかに記載の医薬組成物、方法または使用。
【請求項49】
前記疼痛は慢性疼痛である、請求項47に記載の医薬組成物、方法または使用。
【請求項50】
前記慢性痛は神経障害性の疼痛または侵害受容性の疼痛である、請求項49に記載の医薬組成物、方法または使用。
【請求項51】
前記疼痛は急性疼痛である、請求項47に記載の医薬組成物、方法または使用。
【請求項52】
前記嗜癖障害はアルコール依存症または喫煙である、請求項47に記載の医薬組成物、方法または使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3a−b】
image rotate

【図3c−d】
image rotate

【図3e】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5a−c】
image rotate

【図5d−e】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7a−c】
image rotate

【図7d−e】
image rotate

【図8a−c】
image rotate

【図8d−e】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10a】
image rotate

【図10b】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公表番号】特表2009−543858(P2009−543858A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−520129(P2009−520129)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【国際出願番号】PCT/IL2007/000903
【国際公開番号】WO2008/010223
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(501177609)ラモット・アット・テル・アビブ・ユニバーシテイ・リミテッド (14)
【氏名又は名称原語表記】RAMOT AT TEL AVIV UNIVERSITY LTD.
【出願人】(503437093)バル−イラン ユニバーシティ (6)
【Fターム(参考)】