向精神薬の治療効果を調整するための抗コネキシン剤の使用
本発明は最初に、精神障害および/または神経変性障害に罹っている患者において、同時に、個別に、または時間的に広がって使用するための組合せ製品として少なくとも1つのコネキシン遮断剤と向精神薬とを含有する製品に関する。コネキシン遮断剤は、都合よくは、メクロフェナム酸、18-β-グリシルレチン酸、カルベノキソロン、メフロキン、および2-APBを含む群から選択され、好ましくはメクロフェナム酸からなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、向精神薬分子を用いる治療的な神経学的および神経精神学的処置の改善に関する。より具体的には、本発明により、向精神薬の効果を、本明細書において抗コネキシン剤と呼ばれる一定の分子によって調整および/または増強することができる。
【背景技術】
【0002】
中枢神経系を標的とする治療目的のための分子の開発および使用は、急速に発展しつつある分野である。それにもかかわらず、この発展は、多数の制限に直面している:
− 治療用量で有害作用が出現する可能性があり、そのため治療の便益を低減する可能性がある、
− 薬剤に対する個体の反応は、処置に対する抵抗性、処置に対する不耐性、処置の失敗および追加の現象であり、これらは、向精神薬分子の開発および臨床での使用を特に制限する、
− 投与時間に関連して治療効果が相殺されるという事実は、抗うつ剤処置の状況において十分に報告されている現象であり、投薬を適合させる場合の少なからぬ不確実性の原因である。
【0003】
その上、中枢神経系の病態の処置に関する可能性がある分子の中で、臨床試験において有効であることが確認されて、市販されているのは8%に過ぎない。前臨床試験において、分子の20%が、ヒトでの処置にとって許容できない毒性結果のために拒絶されている(Kola I, Nat Rev Drug Discov. 2004 Aug;3(8):711-5(非特許文献1))。それにもかかわらず、これらの分子は、1つまたは複数の他の分子によってその作用を増強することができれば治療効果を有しうるであろう。
【0004】
この状況において、ゆえに(i)治療上の制限および有害作用を最善に制御するための、ならびに(ii)中枢神経系の病態を処置することが意図される分子の効能を改善するための手段を発見することが重要である。
【0005】
様々な試験が処置の有害作用の調整に既に取り組んでいる。記述されるいくつかの試みは、受容体を標的とする分子またはペプチドに主として関連している:
− 痛覚現象におけるPKR1(Negri L, The Journal of Neuroscience, 2006 June 21;26(25):6716-27(非特許文献2))、
− 慢性的なインスリン処置後の極度の低血糖症の場合における非ステロイド性グルココルチコイド受容体アンタゴニスト(Kale AY 2006, Brain Research Bulletin 2006, July 15 ; 135 (1-2) :l-6(非特許文献3))、
− 骨粗鬆症の処置におけるその効能を損なうことなく、エストラジオール処置の有害作用を部分的に中和するプロゲステロン受容体アゴニストであるトリメゲストン(Winneker RC, Steroids. 2003 Nov;68(10-13):915-20(非特許文献4))
− オピエートの依存効果を減弱させるためのGABAA受容体アゴニストであるジアゼパム(Tejwani GA, Brain Res. 1998 June 29;797(2):305-12(非特許文献5))。
【0006】
一般的に、本発明の時点では、向精神薬の使用に関連する問題を解決することを意図するアプローチは、一般的な制御システムではなくて、代わりに一定の特異的受容体に対する介入を伴う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kola I, Nat Rev Drug Discov. 2004 Aug;3(8):711-5
【非特許文献2】Negri L, The Journal of Neuroscience, 2006 June 21;26(25):6716-27
【非特許文献3】Kale AY 2006, Brain Research Bulletin 2006, July 15 ; 135 (1-2) :l-6
【非特許文献4】Winneker RC, Steroids. 2003 Nov;68(10-13):915-20
【非特許文献5】Tejwani GA, Brain Res. 1998 June 29;797(2):305-12
【発明の概要】
【0008】
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】メクロフェナム酸(MFA、黒四角)または18-β-グリシルレチン酸(βGA、白丸)の髄膜下注射の効果に関する定量的EEGによる前頭前野の電気的活性のスペクトル分析を示す。x-軸は、分析した周波数を示し、y-軸は、FFT分析から得られた相対パワーを示す。スペクトル分析は、1時間目および2時間目の記録の平均値として示される。
【図2】クロザピン単独(0.2 mg/kg、腹腔内)、コネキシン阻害剤単独(メクロフェナム酸、80 ng/kg、髄膜下注射による)、またはその組み合わせ[クロザピンおよびコネキシン阻害剤]の効果に関する定量的EEGによる前頭前野の電気的活性のスペクトル分析を示す。x-軸は、分析した周波数を示し、y-軸は、フーリエ変換分析(FFT)から得られた相対パワーを示す。スペクトル分析は、1時間目(上)と2時間目(下)に関する動物6匹の平均値として示される。
【図3】クロザピン単独(0.2 mg/kg、腹腔内)、コネキシン阻害剤単独(メクロフェナム酸、80 ng/kg、髄膜下注射による)、またはその組み合わせ[クロザピンおよびコネキシン阻害剤]の効果に関する定量的EEGによる8 Hzの平均周波数での前頭前野における分ごとの変化の分析を示す。x-軸は分での時間を示し、y-軸はFFT分析において得られた相対パワーを示す。
【図4】髄膜下注射(メクロフェナム酸、80 ng/kg)、または腹腔内注射(メクロフェナム酸、2.45 mg/kg)によるコネキシン阻害剤の効果に関する定量的EEGによる前頭前野の電気的活性のスペクトル分析を示す。x-軸は分析した周波数を示し、y-軸はFFT分析から得られた相対パワーを示す。スペクトル分析は、1時間目および2時間目に関する動物6匹の記録の平均値として示される。
【図5】腹腔内注射によるコネキシン阻害剤の異なる用量(メクロフェナム酸、2 mg/kg、1 mg/kg、0.5 mg/kg、0.4 mg/kg)の効果に関する定量的EEGによる前頭前野の電気的活性のスペクトル分析を示す。x-軸は、分析した周波数を示し、y-軸はFFT分析から得られた相対パワーを示す。スペクトル分析は、1時間目および2時間目に関する記録の平均値として示される。
【図6】パロキセチン(0.5 mg/kg、腹腔内)単独、コネキシン阻害剤(メクロフェナム酸、0.4 mg/kg、腹腔内注射による)単独、またはパロキセチンとコネキシン阻害剤の組合せの効果に関する定量的EEGによる前頭前野の電気的活性のスペクトル分析を示す。x-軸は、分析した周波数を示し、y-軸は、FFT分析から得られた相対パワーを示す。スペクトル分析は、1時間目および2時間目に関する動物6匹の平均値として示される。
【図7】モダフィニル(125 mg/kgおよび250 mg/kg、腹腔内)単独、コネキシン阻害剤(メクロフェナム酸、0.4 mg/kg、腹腔内注射による)単独、またはモダフィニル(125 mg/kg、腹腔内)とコネキシン阻害剤との組合せの効果に関する定量的EEGによる前頭前野の電気的活性のスペクトル分析を示す。x-軸は、分析した周波数を示し、y-軸はFFT分析から得られた相対パワーを示す。スペクトル分析は、1時間目および2時間目に関する動物6匹の平均値として示される。
【図8】ジアゼパム(1 mg/kg、腹腔内)単独、またはジアゼパム(1 mg/kg、腹腔内)とコネキシン阻害剤(メクロフェナム酸、0.4 mg/kg、腹腔内)の組合せの効果に関する定量的EEGによる前頭前野の電気的活性のスペクトル分析を示す。x-軸は、分析した周波数を示し、y-軸はFFT分析から得られた相対パワーを示す。スペクトル分析は、1時間目および2時間目に関する動物6匹の平均値として示される。
【図9】ベンラファキシン(0.16 mg/kgおよび4 mg/kg、腹腔内)単独、またはベンラファキシン(0.16 mg/kg、腹腔内)とコネキシン阻害剤(メクロフェナム酸、0.4 mg/kg、腹腔内)との組合せの効果に関する定量的EEGによる前頭前野の電気的活性のスペクトル分析を示す。x-軸は、分析した周波数を示し、y-軸はFFT分析から得られた相対パワーを示す。スペクトル分析は、1時間目および2時間目に関する動物6匹の平均値として示される。
【図10】エスシタロプラム(0.8 mg/kgおよび4 mg/kg、腹腔内)単独、またはエスシタロプラム(0.8 mg/kg、腹腔内)とコネキシン阻害剤(メクロフェナム酸、0.4 mg/kg、腹腔内)の組合せの効果に関する定量的EEGによる前頭前野の電気的活性のスペクトル分析を示す。x-軸は、分析した周波数を示し、y-軸はFFT分析から得られた相対パワーを示す。スペクトル分析は、1時間目および2時間目に関する動物6匹の平均値として示される。
【図11】ブプロピオン(0.16 mg/kg、0.8 mg/kgおよび4 mg/kg、腹腔内)単独、またはブプロピオン(0.16 mg/kg、腹腔内)とコネキシン阻害剤(メクロフェナム酸、0.4 mg/kg、腹腔内)の組合せの効果に関する定量的EEGによる前頭前野の電気的活性のスペクトル分析を示す。x-軸は分析した周波数を示し、y-軸はFFT分析から得られた相対パワーを示す。スペクトル分析は、1時間目および2時間目に関する動物6匹の平均値として示される。
【図12】セルトラリン(0.16 mg/kg、0.8 mg/kgおよび4 mg/kg、腹腔内)単独、またはセルトラリン(0.16 mg/kg、腹腔内)とコネキシン阻害剤(メクロフェナム酸、0.4 mg/kg、腹腔内)の組合せの効果に関する定量的EEGによる前頭前野の電気的活性のスペクトル分析を示す。x-軸は、分析した周波数を示し、y-軸はFFT分析から得られた相対パワーを示す。スペクトル分析は、1時間目および2時間目に関する動物6匹の平均値として示される。
【図13】2回の記録時間のあいだに投与された用量に従うセルトラリン(0.16 mg/kg、0.8 mg/kgおよび4 mg/kg、腹腔内)単独、またはセルトラリン(0.16 mg/kg、腹腔内)とコネキシン阻害剤(メクロフェナム酸、0.4 mg/kg、腹腔内)の組合せに関する逆「U」字形のEEG効果の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の説明
細胞間情報伝達は、組織および臓器の恒常性を維持するために重要である。この伝達を確立するために、ギャップ結合部は細胞質を接続して、イオン(Ca+およびK+)、二次伝達物質(AMPc、GMPc、IP3)、いくつかの低分子代謝物(グルコース)の交換を可能にして、細胞間での電気的および代謝的カップリングを確実にする。ギャップ結合部は、形質膜に含有されるタンパク質チャネルによって形成され、かつコネキシン6量体によって形成される選択的透過性を有する結合部である(Meda P, Medecine/Sciences 1996; 12 :909-920)。
【0011】
コネキシンは、動物界の系統発生における多細胞生物の位置によらず、実際にあらゆる細胞タイプによって合成される形質膜の膜貫通タンパク質である。脊椎動物において、コネキシンを産生しないまれな細胞は、成体の横紋筋、精子、および循環中の血球である。多数の膜タンパク質とは異なり、コネキシンは、半減期が短く(3〜6時間)、グリコシル化されず、酵素活性を有しない。現在、少なくとも13個の別個のコネキシンが哺乳動物において同定されており、これらはヒトにおいて21個のイソ型に対応する。実際に、様々なタイプのコネキシンが複数の組織に存在しえて、細胞のほとんどが複数のコネキシンを合成する(Meda P, Medecine/Sciences 1996; 12 : 909-920)。細胞膜に達する前に、コネキシンは、6個の分子の群に集合して、コネキソンと呼ばれる中空の管状構造を形成し、これがゴルジ小胞によって形質膜に連結する。細胞の接触が確立した後、細胞のコネキソンは隣接する細胞のコネキソンと末端同士で整列して、長さが10 nmの連続した親水性のチャネルを形成する。この結合部チャネルは、細胞間空間にわたって接触する2つの細胞の細胞質のあいだの直接の接触を確立する。
【0012】
このように、2つの隣接する形質膜のあいだの六量体二重鎖の形成は、ギャップ結合部を構成する。ヒトでは、異なるコネキシンイソ型をコードする21個の遺伝子が存在し、ギャップ結合部の組成に関係するコネキシン単量体の異なる組み合わせが記述されている。同定されたコネキシンの半分が脳において発現され、より具体的に、コネキシン36(Cx36)は、電気的シナプスとして定義される境界面において、ニューロンによって主に発現されるように思われる。コネキシン36を欠損するマウスは、いかなるニューロン間のカップリングも有しないが、このことは、少なくとも1つのタイプの電気的シナプスにおけるこれらの特定のコネキシンの主たる役割を確認するために役立つ(Wellershaus K, Exp Cell Res. 2008)。
【0013】
電気的シナプスは、化学的シナプスほど速く情報を伝達しないが、相互性という特定の特徴を有する:阻害または興奮のいずれにおいてもそれらは多数の細胞の状態を局所的におよび両側性に同期化させる。ギャップ結合部は低域濾波器として作用して、細胞の状態のこの正常化プロセスは、それが多少長期間の変化を伴うことからより有効である。ニューロン間の電気的カップリングは、その特徴により、新皮質および海馬における振動現象および律動性出力において役割を果たすであろう。
【0014】
最後に、コネキシンは異なる脳の構造のあらゆる場所に存在して、電気的活動の振動に局所的に関係する。
【0015】
しかし、本発明者らは、最近、コネキシンがまた、脳の電気的活性の一般的調節において重要な役割も果たすことを証明した。意外なことに、それらが生理的に存在する場合、実際にこれらのタンパク質は、CNSの電気的活性に対して一般的な脱同期化的役割を有し、バースト現象を弱めておそらく中和する役割を有する。逆に、いわゆる「抗コネキシン」剤によるこれらの分子の阻害によって、測定される電気生理的活性を同期化させて、ゆえに増加させることが可能になる。
【0016】
脳波(EEG)において測定されるCNSの電気的活性の増加が、一定の条件下で向精神薬の治療効果を反映することは公知であることから(Galderisi S, Methods Find Exp Clin Pharmacol, 2002, 24, 85-89)、本発明者らは、向精神薬の投与に関連する治療効果に対するコネキシンの阻害効果を調べることを思いついた。
【0017】
その多数の結果は、抗コネキシン剤の投与に関連する脳の電気的活性の調整によって、それに物質が関連する向精神薬分子の用量便益を得ることができ、この調整に基づいてこの用量便益を評価するための方法を有することができることを明らかに証明している。ゆえに、抗コネキシン剤と向精神薬、たとえば抗うつ剤との組合せによって、(i)向精神薬分子の作用の特異性および治療効果を増加させることができ、および(ii)これらの向精神薬分子の活性量を低減させ、このように間接的な効果(望ましくない効果、機能不全、抵抗性)を低減させることができる。
【0018】
第一の局面に従って、本発明は、精神障害および/または神経変性障害に罹っている患者の処置においてコネキシン遮断剤と組合わされる可能性がある有効な向精神薬同等量を評価するための方法を提唱する。この組合わせは、より強い用量で投与された向精神薬単独の効果と同じ治療効果を得るが、有害作用がより少ないと意図される。
【0019】
本発明の状況において、向精神薬の「有効同等量」は、コネキシン遮断剤と組合せ投与した場合に、活性な薬理学的用量で投与した向精神薬単独の効果と類似または同一の生理的効果または薬理学的特色を誘導する向精神薬の用量を指す。
【0020】
加えて、向精神薬の「薬理学的活性量」は、ラット、マウス、ウサギ等などの実験動物に古典的に投与される向精神薬の用量を指す。そのような用量は、たとえばAnimal models in psychopharmacology. Olivier B, Slangen J, Mos J, eds. Birkhauser Verlag, Basel; 1991において提供される。この用量が公知でない場合、ヒトにおいて古典的に処方される薬理学的活性量を動物に入れ替えることによって向精神薬の薬理学的活性量を決定することが可能であり、"Medicaments psychotropes: consommation et pratiques de prescription en France metropolitaine. I. Donnees nationales, 2000", Lecadet J, Vidal P, Baris B et al.; Revue Medicale de l'Assurance Maladie volume 34 No. 2 / April-June 2003 "を調べることができる。同様に、薬理学的活性量が、有害作用が治療効果より顕著になることなく動物に投与されうる向精神薬の最高用量である実験的試験によって、この薬理学的活性量を決定することが可能である。この場合、薬理学的活性量は、用量を増加させた複数の向精神薬の用量を投与することによって、および各々の時間での薬物によってもたらされた効果を測定することによって累積的に決定されうる。
【0021】
本発明の状況において、「コネキシン遮断」剤は、コネキシンの機能的活性を、およびより一般的に任意のタイプの細胞内結合部を直接および/または間接的に阻害することができる、および/またはコネキシン型タンパク質を伴う任意の細胞活性を直接および/または間接的に機能的に阻害することができる、化学分子、タンパク質、タンパク質断片、または核酸(RNAi)である。そのような物質はまた、「抗コネキシン分子」とも呼ばれうる。
【0022】
向精神薬の有効同等量を評価するための方法は、コネキシンを遮断する物質による向精神薬の効果の増強の定量に基づく。この評価は、いくつかの段階で行われる:向精神薬に対して特異的な効果を特徴付けする段階、および組合せ製品の用量便益を測定する段階。第一段階は、異なる用量(薬理学的活性量および薬理学的活性量から減少させた用量)での、そして異なる用量で向精神薬分子に対して特異的な特色または標準的な特色を有する、向精神薬単独の効果を決定および定量する段階からなる。第二段階は、コネキシン遮断剤と組合せ投与された場合に向精神薬単独と同じ薬理学的特色を有する向精神薬の用量を決定する段階からなる。
【0023】
都合のよいことに、向精神薬と組合せて用いられるコネキシン遮断剤の用量は、実験的試験によって最初に決定される。この用量は実際に、有意な特異的薬理学的効果を生じることなく投与されうるコネキシン遮断剤の最高用量に対応する。この用量は、本発明に従う方法を実行する場合に組合せ効果を最適にするために調節されうる。
【0024】
本発明に従う向精神薬の有効同等量を評価するための方法には、以下の段階が含まれる:
a)試験される実験条件が存在するのと同数の動物群を有する段階、
b)向精神薬の薬理学的活性量を第一の動物群に投与する段階、および薬理学的活性量から減少させた用量を連続する動物群に投与する段階、
c)投与される異なる用量での向精神薬によって生じた効果を、群の動物において特徴付けする段階、
d)b)において用いられた用量で向精神薬と、コネキシン遮断剤とを含有する組合せ製品を新しい動物群に投与する段階、
e)d)において投与された組合せ製品の各々によって生じた効果を、群の動物において特徴付けする段階、
f)向精神薬の用量の有効同等量、すなわち、コネキシン遮断剤と組合せて投与した場合に、薬理学的活性量で投与された向精神薬単独の効果と同じ効果を生じる向精神薬の用量を決定する段階。
【0025】
向精神薬の有効同等量を評価するためのこの方法によってまた、有効同等量の向精神薬とコネキシン遮断剤とを組合せた組合せ製品と、薬理学的活性量で投与された向精神薬とのあいだの用量便益を評価することができる。
【0026】
この応用において、「用量便益」という用語は、向精神薬単独の薬理学的用量と向精神薬の有効同等量とのあいだの比を指す。言い換えれば、用量便益は、抗コネキシン剤と組合せることによって、処方された向精神薬の薬理学的用量がどれほど多く低減されうるかによって説明される。投与された向精神薬の用量(抗コネキシン分子と組合せた場合)のこの低減は、処置の効能に関していかなる結末も有しないが有害作用を低減させるであろう。
【0027】
このように、先に定義された用量便益は、以下のように記述されうる:
【0028】
本発明に従う評価法を行うために、動物群は同じ種の群であると理解される。その上、各々の動物群は、同じ群の動物において、薬物または組合せ製品単独の効果のみを測定するために、向精神薬の用量単独、または一定量の向精神薬と抗コネキシン剤とを含有する組合せ製品のいずれかのみを投与される。好ましくは、動物群は、同じ年齢および同じ性別である。これらの動物は、好ましくは実験動物、たとえばラット、マウス、ウサギ等である。
【0029】
試験される用量の数は、向精神薬または向精神薬とコネキシン遮断剤とを組合せる組合せ製品の薬理学的効果に従って決定されると理解される;一定の用量によって生じる薬理学的効果が存在しないまたは有意でない場合、それより低用量を用いる必要はない。
【0030】
薬物の投与または組合せ製品の投与は、脳内に行われうるが、好ましくは腹腔内で行われる。
【0031】
都合よくは、向精神薬および/または組合せ製品によって生じる効果は、異なるタイプの分析によって、特に電気生理的もしくは行動分析、もしくは血液マーカーもしくはLCRマーカー、または医学的造影によって決定されうる。好ましくは、この効果は、特に動物の脳波活性(EEG)を参照して、所定の刺激に起因する電気生理学的応答を参照することによって決定される。
【0032】
都合よくは、この評価法によって、組合せ製品の2つの要素を投与するために最適な時間スキーム(同時、個別または逐次的投与)を定義することができる。
【0033】
この評価法によってまた、コネキシン遮断剤の性質、向精神薬に対してのみならず、用いられる用量に関して選択することが可能となる。
【0034】
第二の局面に従って、本発明は、少なくとも1つのコネキシン遮断剤と向精神薬とを含有する新規組合せ製品、ならびに精神障害および/または神経変性障害を有する患者におけるその使用に関する。
【0035】
コネキシンによるギャップ結合部の遮断に関して、様々な分子が公知である。
【0036】
それらの中で、フェナメートファミリーには、以下の化合物が含まれる:メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルム酸、およびトルフェナム酸。これらの化合物は全て、非ステロイド性抗炎症活性を有するが、この活性は、そのギャップ結合部の遮断能の原因ではない。実際に、フェナメートが、それよりもコネキシンとの、またはコネキシンのコンフォメーション、およびゆえにその機能的役割に影響を及ぼす可能性があるタンパク質膜境界面との直接相互作用を確立することが示唆されている(Harks EG, The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 2001 Sep, 298(3) :1033- 41)。
【0037】
より一般的にメクロフェナム酸(MFA)として知られる2-[(2,6-ジ-クロロ-3-フェニル)アミノ]安息香酸は、非ステロイド性抗炎症剤であり、ギャップ結合部を可逆的に遮断するために最も有効である水溶性遮断剤として記述されているフェナメートクラスの末梢鎮痛剤、プロスタグランジン阻害剤である。加えて、メクロフェナム酸は、1つのタイプのコネキシンに対して特異的ではなく、ゆえに、多数の脳コネキシンを遮断するために有効である(Pan F, Vis Neurosciences 2007, Jul-Aug; 24(4):609-18)。
【0038】
グリシルレチン酸誘導体は、「エノキソロン」としても知られる18-β-グリシルレチン酸(BGA)、11-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ酵素を阻害することが知られているトリテルペノイドサポニンである18-α-グリシルレチン酸およびカルベノキソロン酸を指す。その上、これらの化合物は、ギャップ結合部を非常に有効に阻害することができる(Pan F, Vis Neurosciences 2007, Jul-Aug; 24(4):609-18)。
【0039】
キニーネファミリーのメフロキン(LARIAM)も同様に、ギャップ結合部に対して強いアンタゴニスト力を有する(Srinivas M, PNAS 2001, 98 : 10942-10947 ; Pan F, Vis Neurosciences 2007, Jul-Aug; 24(4):609-18)。
【0040】
ハロタンおよびイソフルランなどのいくつかの鎮痛剤は、迅速かつ可逆的ギャップ結合部遮断効果を有する(Burt JM, et al, Circ Research. 1989 ; 65 :829-37)。
【0041】
その上、オレイン酸の一級アミドであるオレアミド(シス-9-オクタデセンアミド)もまた、コネキシン分子43および32に対して阻害作用を有する(Guan X. et al, J. Cell Biol 1997; 139 : 1785-92)。
【0042】
加えて、α-D-グルコピラノースの天然の環状オリゴ糖であるシクロデキストリン(α-シクロデキストリン(α-CD)、β-シクロデキストリン(β-CD)、およびγ-シクロデキストリン(γ-CD))は、抗コネキシン特性を有することが証明されている(Locke D. et al, J. Biol Chem 2004; 279: 22883-92)。
【0043】
最後に、2-アミノエチルジフェニルボレート(2-APB)は、ギャップ結合部遮断剤として最近同定された化合物である(Bai D, J Pharmacol Exp Ther, 2006 Dec ; 319(3) :1452-8)。しかし、イノシトール1,4,5-三リン酸受容体のこの調整物質は、コネキシン26、30、36、40、45、および50などの一定のコネキシンをかなり特異的に標的とする(Bai D, J Pharmacol Exp Ther, 2006 Dec ; 319(3) : 1452-8)。
【0044】
同様に、細胞外コネキシンドメイン、すなわちギャップ結合部の機能性にとって重要であるドメインを遮断するために、他の分子が最近提唱されている。これは、特に、細胞外コネキシンドメインに対する特定の抗体(Hofer A et al, Glia 1998 ; 24 : 141-54 ; Meyer RA, J. Cell Biol. 1992 ; 119 : 179-89)、またはコネキシンの細胞外ループE1およびE2によって保存される特異的配列を模倣する低分子ペプチド(Dahl G. et al, Biophys J, 1994 ; 67 : 1816-22)を伴う;特に細胞外配列に対応するペプチドには、E1(Gap26)の保存されたパターンQPGおよびSHVRが含まれ、コネキシンのE2(Gap27)の保存されたパターンSRPTEKは、ギャップ結合部を遮断するためにより有効である(Chaytor AT et al, J. Physiol 1997 ; 503 :99-110)。
【0045】
本発明の状況において、コネキシン遮断剤は都合よくは以下から選ばれる:長鎖アルコール(たとえば、ヘプタノールおよびオクタノール)、フェナメート(たとえば、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルム酸、トルフェナム酸)、アリールアミノ安息香酸塩、アミノスルホン酸塩(たとえば、タウリン)、グリシルレチン酸誘導体(たとえば、18-β-グリシルレチン酸、18-α-グリシルレチン酸およびカルベノキソロン)、オレアミド(たとえば、シス-9-オクタデセンアミド)、またはテトラアルキルアンモニウムイオンおよびポリアミン(スペルミンおよびスペルミジンなどの)、キニーネ誘導体(メフロキンなどの)、2-ABP、麻酔剤(ハロタンまたはイソフルラン)、シクロデキストリン(α-シクロデキストリン(α-CD)、β-シクロデキストリン(β-CD)、およびγ-シクロデキストリン(γ-CD))、コネキシンの細胞外ドメインに対する抗体、またはこの特定のドメイン(特にGap26およびGap27)を模倣する保存されたパターンを有するペプチド。これらの異なる分子は以下の論文に具体的に記述される:Srivinas M, Connexins : a guide, Humana Press 2009, Chapter 8, pages 207-224 ; Srinivas M, Molecular Pharmacology 2003 Jun, 63(6) : 1389-97 ; Harks EG, The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 2001 Sep, 298(3) :1033-41;およびSalameh A, Biochimica et Biophysica Acta 1719 (2005) 36-58。
【0046】
好ましくは、コネキシン遮断剤は、メクロフェナム酸、18-β-グリシルレチン酸、カルベノキソロン、メフロキン、および2-APBが含まれる群に含まれ、より好ましくはメクロフェナム酸、18-β-グリシルレチン酸、およびカルベノキソロンが含まれる群に含まれる。
【0047】
これらの化合物は例として提供され、本発明は、コネキシンまたはギャップ結合部を直接または間接的に機能的に遮断する特性を有する任意の分子に関する。
【0048】
認識された抗コネキシン機能を有するいくつかの分子がまた、その抗炎症効果、その麻酔効果、またはプロスタグランジン恒常性に及ぼす効果についても記述されており、ゆえにそれら自身が中枢神経系に対して効果を有する。しかし、これらの分子が本発明において用いられる用量(非常に低用量)では、抗コネキシン活性以外の活性は、これらの効果に関係していない。加えて、CNSがコネキシンに特に富むことから、低用量を用いることによって、組織のコネキシン組成に応じてよりよい組織特異性が得られる。
【0049】
最後に、抗炎症分子は、プロスタグランジンシンターゼに対するその作用によって、コネキシンの構造改変を間接的に生じることができることに注目すべきである(コネキシン発現レベルまたはそのリン酸化の調節は、特にそれ自身が抗炎症剤の標的であるCox、NOおよびPGシンテターゼの活性レベルに応じて、PI3KおよびPKAによって起こる)。結合部におけるコネキシンの存在の低減という意味でのこの改変は、コネキシンの直接遮断と類似のコネキシンの機能的活性の低減を間接的に引き起こす。その結果、これらの分子の使用は、望ましい効果(コネキシンの遮断)を生じ、低用量での向精神薬との組合せ使用に対する障害とはならない(Yao J, Morioka T & Oite T. : Kidney Int. 2000; 57:1915-26. Yao J, Hiramatsu N, Zhu Y, et al. : J Am Soc Nephrol. 2005;16:58-67 ; Figueroa XF, Alvina K, Martinez AD, et al. : Microvasc Res. 2004;68:247-57 Alldredge BT.: J Clin Pathol. May 12 2008 ; Lai-Cheong JE, Arita K & McGrath JA. : J Invest Dermatol. 2007; 127: 2713-25、およびGiepmans BN.: Cardiovasc Res. 2004 ;62: 233-45)。
【0050】
その上、機能的ギャップ結合部の形成は、コネキシンのリン酸化によって調節されうる。実際に、6量体サブユニットの一定のタンパク質ドメインのリン酸化によって、チャネルを閉じることによってまたは膜での存在を低減させることによって(サブユニットの移動および半減期の改変)、リン酸化部位に従ってギャップ結合部の機能性の阻害が起こる(Scemes E, Glia 2008 Jan 15, 56(2): 145-53 ; Postma FR, J Cell Biol 1998 Mar 9, 140(5): 1199-209 ; Shaw RM, Cell 2007, February 9, 128(3):547-60; Fabrizi GM, Brain 2007 Feb, 130(Pt2):394-403)。
【0051】
このように、分子は、コネキシンのリン酸化レベルにより、間接的なギャップ結合部遮断効果を有しうる。それらは特に、リゾホスファチジン酸、トロンビン、およびエンドセリンなどのニューロペプチドである(Postma FR, J Cell Biol 1998 Mar 9, 140(5): 1199-209)。
【0052】
本発明の好ましい態様において、コネキシン遮断剤はコネキシンおよびギャップ結合部に対して間接的な効果を有し、これは以下からなる群より選ばれる:リゾホスファリジン酸、トロンビン、およびエンドセリンなどのニューロペプチド。
【0053】
本発明の好ましい態様において、コネキシン遮断剤は、麻酔剤でも抗炎症剤でもなく、またはプロスタグランジン合成阻害剤でもない。この好ましい態様に従って、コネキシン遮断剤は、2-アミノエトキシジフェニルボレート(2-APB)である。
【0054】
コネキシン遮断剤は、精神障害および/または神経変性障害に罹っている患者を処置するために、医師によって処方される向精神薬の治療効果を都合よく改善することができる。動物において、この改善は、本発明の第一の目的である有効同等量を評価するための方法によって測定されうる。
【0055】
「向精神薬」とは、一定の脳の生化学的および生理学的プロセスを改変することによって、主に中枢神経系の状態に作用する任意の物質を指す。
【0056】
本発明は、組合せ製品において、コネキシン遮断剤によって生じた治療上の便益が特定の向精神薬の使用に対して特異的ではなく、向精神効果を有する多数の分子に同様に当てはまるという点において先行技術とは異なる。
【0057】
好ましくは、向精神薬は、ドーパミン作動性、GABA作動性、アドレナリン作動性、アセチルコリン作動性、セロトニン作動性、オピオイド作動性、アデノシン作動性、イオンチャネル型、ヒスタミン作動性、IMAO、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ、DOPAデカルボキシラーゼ、およびノルアドレナリン向精神エフェクターから選ばれる。
【0058】
「エフェクター」という用語は、1つまたは複数の神経受容体を活性化または阻害して、ゆえに受容体のアゴニストまたはアンタゴニストでありうる任意の物質を指す。
【0059】
好ましい態様に従って、向精神薬は、ロキサピン、アセプロマジン、メチルフェニデート、アマンタジン、ペルゴリド、リスリド、ブロモクリプチン、ロピニロール、アポモルフィン、アリピプラゾール、スルピリド、アミスルプリド、スルトプリド、チアプリド、ピモジド、リスペリドン、ハロペリドール、ペンフルリドール、ズクロペンチキソール、またはブプロピオンなどのドーパミン作動性エフェクターである。
【0060】
もう1つの特異的態様に従って、向精神薬は、チアガビン、トピラメート、クロラゼペート、ジアゼパム、クロナゼパム、オキサゼパム、ロラゼパム、ブロマゼパム、ロルメタゼパム、ニトラゼパム、クロチアゼパム、アルプロゾラム、エスタゾラム、トリアゾラム、ロプラゾラム、エチフォキシン、メプロバメート、ゾピクロン、ゾルピデム、フェノバルビタール、フェルバメート、またはビガバトリンなどのGABA作動性エフェクターである。
【0061】
もう1つの特異的態様に従って、向精神薬は、ジヒドロエルゴタミン、モダフィニル、アドラフィニル、ミルタザピン、およびオキセトロンなどのアドレナリン作動性エフェクターである。
【0062】
もう1つの特異的態様に従って、向精神薬は、スルブチアミン、トロパテピン、またはトリヘキシルフェニジルなどのアセチルコリン作動性エフェクターである。
【0063】
もう1つの特異的態様に従って、向精神薬は、クロルプロマジン、トリミプラミン、クロザピン、オランザピン、シアメマジン、フルペンチキソール、ネフォパム、フルボキサミン、クロミプラミン、セルトラリン、フルオキセチン、シタロプラム、エスシタロプラム、パロキセチン、アミトリプチリン、デュロキセチン、ベンラファキシン、ブスピロン、カルピプラミン、ゾルミトリプタン、スマトリプタン、ナラトリプタン、インドラミン、エルゴタミン、酒石酸エルゴタミン、ピゾチフェン、ピパンペロン、メチセルジド、ピゾチリン、チアネプチン、ミルナシプラン、アミトリプチリン、トリミプラミン、ビロキサジン、チアネプチン、ヒペリクム、およびリチウムなどのセロトニン作動性エフェクターである。
【0064】
もう1つの特異的態様に従って、向精神薬は、ナルブフィン、ブプレノルフィン、ペチジン、コデイン、トラマドール、モルヒネ、ヒドロモルフォン、オキシコドン、メタドン、デクストロプロポキシフェン、メペリジン、フェンタニル、ナルトレキソン、または塩酸モルヒネなどのオピオイド作動性エフェクターである。
【0065】
もう1つの特異的態様に従って、向精神薬は、カルバマゼピンまたはオクスカルバゼピンなどのアデノシン作動性エフェクターである。
【0066】
もう1つの特異的態様に従って、向精神薬は、フルナリジン、エトスクシミド、レベチラセタム、ラモトリジン、フォスフェニトイン、またはフェニトインなどのイオンチャネル型エフェクターである。
【0067】
もう1つの特異的態様に従って、向精神薬は、ニアプラジン、ヒドロキシジン、またはドキシラミンなどのヒスタミン作動性エフェクターである。
【0068】
もう1つの特異的態様に従って、向精神薬は、モクロベミド、セレジリン、またはイプロニアジドなどのモノアミンオキシダーゼエフェクターである。
【0069】
もう1つの特異的態様に従って、向精神薬は、エンタカポンまたはトルカポンなどのカテコール-O-メチルトランスフェラーゼエフェクターである。
【0070】
もう1つの特異的態様に従って、向精神薬は、ベンセラジドまたはカルビドーパなどのDOPAデカルボキシラーゼエフェクターである。
【0071】
もう1つの特異的態様に従って、向精神薬は、ミアンセリン、デシプラミン、モクロベミド、またはブプロピオンなどのノルアドレナリン作動性エフェクターである。
【0072】
もう1つの特異的態様に従って、向精神薬は、ガバペンチンまたはカプトジアミンなどの辺縁系に作用するエフェクターである。
【0073】
なおより好ましくは、選ばれる向精神薬分子は、クロザピン、ジベンゾジアゼピン誘導体、またはセロトニン作動性エフェクターであるパロキセチン、エスシタロプラム、セルトラリンもしくはベンラファキシン、またはクロルプロマジン、トリミプラミン、オランザピン、シアメマジン、フルペンチキソール、ネフォパム、フルボキサミン、クロミプラミン、フルオキセチン、シタロプラム、アミトリプチリン、デュロキセチン、ブスピロン、カルピプラミン、ゾルミトリプタン、スマトリプタン、ナラトリプタン、インドラミン、酒石酸エルゴタミン、ピゾチフェン、ピパンペロン、メチセルジド、ピゾチリン、もしくはチアネプチンなどの他の任意のセロトニン作動性エフェクターである。
【0074】
なおより好ましくは、選ばれる向精神薬分子は、モダフィニル、アドレナリン作動性エフェクターであるジフェニルメタン誘導体、またはジヒドロエルゴタミン、アドラフィニル、ミルタザピン、もしくはオキセトロンなどの他の任意のアドレナリン作動性向精神性エフェクターである。
【0075】
このように、さらにより好ましくは、向精神薬分子は以下から選ばれる:モダフィニル、クロザピン、パロキセチン、ジアゼパム、ベンラファキシン、エスシタロプラム、ブプロピオン、またはセルトラリン。
【0076】
好ましい態様において、向精神薬分子は、以下から選ばれる抗うつ剤である:モクロベミド(MOCLAMINE)、アミトリプチリン(LAROXYL)、クロミプラミン(ANAFRANIL)、ミルナシプラン(IXEL)、エスシタロプラム(SEROPLEX)、シタロプラム(SEROPRAM)、フルオキセチン(PROZAC)、パロキセチン(DEROXAT)、フルボキサミン(FLOXYFRAL)、セルトラリン(ZOLOFT)、ミトラパジン(NORSET)、デュロキセチン(Cymbalta)、またはベンラファキシン(EFFEXOR)およびブプロピオン(ZYBAN)。
【0077】
さらにより好ましい態様において、向精神薬分子は、以下が含まれる群から選ばれる抗うつ剤である:パロキセチン、ベンラファキシン、エスシタロプラム、ブプロピオン、およびセルトラリン。
【0078】
第三の局面に従って、本発明は、精神障害および/または神経変性障害を有する患者においてこの製品を組合せて、同時に、個別に、または逐次的に用いることにも関する。
【0079】
この処置を必要とする患者は、以下からなる群に含まれる精神障害および/または神経変性障害を有してもよい:うつ、双極性障害、てんかん、統合失調症、全身不安、うつ、ストレス状態、パニック、恐怖症、強迫性障害、行動障害、免疫系抑制、疲労および疼痛に関連する症状、慢性疲労、筋痛症、ならびに自閉症、注意欠陥、多動、過食症などの摂食障害、食欲不振、肥満、感情鈍麻などの心的障害、偏頭痛、疼痛、心血管疾患、神経変性障害、および抑うつ不安に関連する障害(アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病)、薬物依存性および薬物嗜癖などの他の障害。
【0080】
同時に使用する場合、処置の2つの成分は患者に同時投与される。本発明のこの態様に従って、2つの成分は、混合物の形で共に包装されうるか、または個別に包装されて自然に混合された後、患者に共に投与される。より一般的に2つの成分は、同時であるが個別に投与される。特に、2つの成分の投与経路は異なってもよい。投与はまた、異なる部位で行われうる。もう1つの態様において、2つの成分は逐次的に投与されるか、またはたとえば同じ日に時間をあけて、もしくは数時間から数週間の範囲の間隔で、または数ヶ月もの間隔で投与される。
【0081】
第四の局面に従って、本発明は、精神障害および/または神経変性障害に罹っている患者を処置するために、向精神薬の前、同時、または後に投与されることが意図される薬物を調製するための少なくとも1つのコネキシン遮断剤を用いることを伴う。
【0082】
第五の局面に従って、本発明には、精神障害および/または神経変性障害を有する患者における向精神薬の効果を調整および/または増強するために、少なくとも1つのコネキシン遮断剤を用いることが含まれる。
【0083】
この場合の「調整する」という用語は、抗コネキシン剤の前、同時、または後に投与される向精神薬の直接または間接的な効果に対する、特に有害作用に対する増強または拮抗による介入を意味する。
【0084】
この場合の「増強する」という用語は、抗コネキシン剤の前、同時、または後に投与される向精神薬の効果を有意に増加させることを意味する。このように、向精神薬と抗コネキシン剤の組合せによって、向精神薬の用量を低減させることができ、ゆえに向精神薬の有害作用を制限するおよび/または失敗および中止の効果を低減させることができる。
【0085】
ゆえに、本発明は、向精神薬の用量を低減させるためおよび/または向精神薬の有害作用を制限するため、および/または失敗および中止の効果を低減するために、少なくとも1つのコネキシン遮断剤を用いることに関する。
【0086】
最後の局面に従って、本発明は、以下を患者に投与する段階が含まれる、精神障害および/または神経変性障害を有する患者を処置するための方法であって:
a)向精神薬から選択される少なくとも1つの活性物質、および
b)少なくとも1つのコネキシン遮断剤、
ならびに製品a)およびb)が同時に、個別に、または時間的に広がって投与される方法を記述する。
【実施例】
【0087】
脳波による脳の領域の分析は、今日、中枢神経系に対する薬物の効果を特徴付けするために信頼できる非常に感度の高い技術であると考えられている。脳波記録法(EEG)は、しばしば脳波と呼ばれる線の形で表される、頭皮に配置された電極による脳の電気的活性の測定である。心臓の機能を試験することが可能である心電図と同様に、EEGは、診断的神経学的目的のために、または認識的神経科学研究目的のいずれかのために、脳、特に大脳皮質の経時的な神経生理的活性に関する情報を提供する、無痛で非侵襲性の検査である。EEGの基礎での電気シグナルは、各周波数に関して、多数のニューロンによって産生されたシナプス後の同期した活動電位の合計の結果である。
【0088】
各周波数に関連する電気的パワーは、個体の行動または投与された薬物の関数として他の周波数の電気的パワーとは無関係に変化しうることが証明されている(Dimpfel W, Neuropsychobiology. 1986;15(2): 101-8)。薬物の投与後、患者の脳波は変化して、各周波数に関連する電位の分布は、薬物のエレクトロファーマコグラム(electropharmacogram)を構成する。一般的に、エレクトロファーマコグラムは、異なる疾患のために処方された薬物に関して異なり、薬物が同じ病態を処置するために意図される場合には類似である(Dimpfel W, British Journal of Pharmacology 2007, 152, 538-548)。150より多くの薬物に対応するエレクトロファーマコグラムが決定されている(たとえば、鎮痛剤、抗うつ剤、精神遮断剤、刺激剤、精神安定剤、鎮静剤、および麻薬)。今日、これらの多数の試験の後、エレクトロファーマコグラムの決定および分析は、薬物の薬理学的効果を測定するための信頼できる技術であると見なされる。加えて、EEGのパラメータにより、多数の化合物の臨床相において開発に関する定量的情報を得ることが可能となる(Mandema & Danhof, Clin. Pharmacokinet. 1992, 23, 191-215)。EEG電位の測定はまた、投与された薬物の細胞受容体を同定するためにも用いられうる(Parker TJ, British Journal of Pharmacology 2001, 132, 151-158)。EEGは、脳の電気的活性の測定であり、脳波データを表すための異なるモードが存在する。最初のモードは、線の表示および特徴的な波動現象の同定である。この定性的データは、電気的活性の明らかに決定されたエピソードに関する情報を与えるが、電気的活性の定量的局面に関する情報を提供しない。このため、実験者は、フーリエ変換シグナルの分析に基づく定量的EEGを用い、これによって所定の周波数に関する経時的なパワー値を得ることができる。このパワー値は対照値に関連して、これによって所定の周波数に関する経時的なパワーの改変を決定することができる。この値を、実験に従って変動する期間によって平均してもよい。これらのパワーの経時的な変動は、著者らによって、生理的または病理的律動(δ(1〜4 Hz)、θ(4.5〜8 Hz)、α(8.5〜12 Hz)、β(12.5〜24 Hz)およびγ(>24 Hz))に対応する特異的周波数変化に対する平均値の形で、またはヘルツ毎の相対パワーのヒストグラムの形のいずれかで表示される可能性がある。これらの2つの表示様式は、厳密に同等であり、1つは他方から誘導される(EEG : Bases neurophysiologiques, principes d'interpretation et de prescription Jean Vion-Dury, France Blanquet. Editeur: MASSON ; Collection : Abrege Massonを参照されたい)。以下に紹介する実施例では、ヘルツ毎の相対パワーの表現が選ばれている。
【0089】
たとえば非定型的抗精神病薬、特にクロザピンに関して、その投与は、経時的に二相性のエレクトロファーマコグラムを引き起こすことが証明されている:1時間目のあいだ、EEG電位は超低周波数(0.8〜4.5 Hz)(δ律動)および7〜9.5 Hz(α律動I)で非常に高く、4.75〜6.75 Hz(θ律動)および18.5 Hzより高い(β律動)周波数では強度が低く、これは陽性の臨床応答の徴候である(Galderisi S, Methods Find Exp Clin Pharmacol, 2002, 24, 85-89)。2時間目において、EEG電位は8〜15 Hzの範囲の周波数で平均強度であり、これは錐体外路の有害作用を伴いうる。実際に、2時間目における7〜9.5 Hzおよび12.75〜18.50 Hzの周波数に関するEEG電位が平均強度であることは、有害作用が存在するであろうことを意味する(Dimpfel W, British Journal of Pharmacology 2007, 152, 538-548)。
【0090】
プロトコール:
− 電極の予め埋め込み
6匹の意識のあるWistar系ラットの群に6個の双極性の両側性の電極(前頭2個、海馬前方2個、海馬後方2個)を予め埋め込んだ。
【0091】
− 注射
処置毎にラット6匹の円形の組み合わせによって、異なる処置を行った(向精神薬単独、抗コネキシン処置単独、抗コネキシン+向精神薬組合せ処置)。メクロフェナム酸(Sigma)の注射は、異なる用量でのゆっくりとした髄膜下注射(80 mg/kg、4.5 pg/秒)、または腹腔内注射によって行われる。グリシルレチン酸(Sigma)の注射は、髄膜下注射(80 mg/kg)によって行われる。クロザピン(Sigma)の注射は、腹腔内(0.2 mg/kg)によって行われる。パロキセチン(Sigma)の注射は腹腔内(0.5 mg/kg)によって行われる。モダフィニル(Cephalon)の注射は、腹腔内(125 mg/kgおよび250 mg/kg)によって行われる。
【0092】
− EEGの測定
EEG測定は、意識のあるラット(予め埋め込んで慣れさせた)の異なる群について、注射後2時間の記録によって行われた。フーリエ変換(FFT)によって行われるスペクトル分析によって、ヘルツ毎および秒毎の相対パワーを得ることができる。次に、FFTデータを分毎に平均して、厳密に同一の実験条件下で記録する前のその日に得られた溶媒対照に関連させる。次に、左右の前頭前野の相対スペクトルパワーを5分間毎に平均して、5分間の繰り返し12個の群によって平均して時間毎に表示する。
【0093】
− 統計分析:
実施例において表される、個々に投与された異なる薬物(向精神薬単独または抗コネキシン剤単独)の効果に関する相対的定量的EEG分析から得られたデータを、三元配置分散分析(ANOVA)による統計分析に供した:「周波数」(Hz)、「時間」(12個の平均された5分間の繰り返しによる1時間目および2時間目)、および「動物」(各処置に関して異なる6匹の動物)。実施例において紹介した向精神薬および抗コネキシン剤の組合せに関して、第四のANOVA要因を導入した:「抗コネキシン剤の組合せ」。対照(向精神薬の溶媒)に対する向精神薬単独、または単独で投与された向精神薬に対する抗コネキシン剤と組合せた向精神薬(相対パワーの増加または減少のために)に関する所定の周波数の相対パワー改変の有意性閾値はP<0.05の値で選ばれた。
【0094】
実施例1:コネキシン阻害剤の効果
異なる脳構造のEEG活性におけるコネキシンの影響を調べるための一連の実験を行った。このことに関して、脳内のコネキシンは、コネキシン阻害剤であるメクロフェナム酸(MFA)の直接髄膜下へのゆっくりとした注射によって阻害された。同じ実験条件において、もう1つの抗コネキシン剤であるグリシルレチン酸(BGA)の脳内投与の効果を調べた。
【0095】
コネキシン阻害剤(MFA)を脳内に処置したラットにおける脳の電気的活性の分析は、1時間目から2時間目に及ぶ、周波数8〜10 Hzに関するEEG電位の有意な増加、およびゆえに前頭前野の脳活性(140%)の同期化の有意な増加を示す。類似の有意な改変は、もう1つの抗コネキシンクラス(グリシルレチン酸)の脳内注射において観察される(図1)。
【0096】
この同期化は、コネキシンが電気的活性を脱同期化する生理的役割を有することを示している。調べた異なる領域に及ぼすコネキシン阻害剤の全体的な効果および脳においてコネキシンを含む結合部が遍在することを考慮すると、これらの実験結果によって、文献におけるデータを再解釈することができ、および脳の電気生理的活性の標準化におけるコネキシンの報告されていない役割を提唱することができる。この標準化は、電気的活性のバースト現象を制限して、高度に相互接続された系の無秩序な機能不全を調整および減衰させると意図されるであろう。
【0097】
実施例2:コネキシン阻害剤と組合せた非定型的抗精神剤の効果
脳の活性においてコネキシンが一般的な調整的役割を果たすという仮説を調査するために、抗コネキシン分子と組合せた薬理学的処置の電気生理的結果を調べた。
【0098】
この状況において、コネキシン阻害剤であるメクロフェナム酸(MFA)と組合せたクロザピンの効果を調べた。クロザピンは、統合失調症に適応される非定型的抗精神剤であり、典型的な複雑なEEG活性化スペクトルおよび治療用量での有害作用の大きなリスト(体重増加、骨髄の減少および血液中の白血球数の減少)を有するセロトニン作動性およびドーパミン作動性受容体アンタゴニスト、またはアドレナリン作動性、コリン作動性、およびヒスタミン作動性アンタゴニストである(Parker TJ, British Journal of Pharmacology 2001, 132, 151-158)。
【0099】
2.1 クロザピンの効果
第一の相において、実験モデルが公表されたデータと一致することを確認するために、実験モデルの有効性を確認した(Dimpfel W, British Journal of Pharmacology 2007, 152, 538-548, Parker TJ, British Journal of Pharmacology 2001, 132, 151-158)。ゆえに、クロザピン単独の効果の記録を得た。
【0100】
EEGのスペクトル分析は、抗精神剤単独の処置においてEEG電位の有意な増加を示し、ゆえに、8〜10 Hzの周波数に関して前頭前野脳活性の同期化の増加(200%)、および16〜20 Hzの周波数に関してより低い程度の同期化の増加を示し、これは1時間目から2時間目まで続く(図2)。
【0101】
これらの観察は、文献において報告されている非定型的抗精神剤の特徴的な効果と完全に一貫する(Dimpfel W, British Journal of Pharmacology 2007, 152, 538-548, Parker TJ, British Journal of Pharmacology 2001, 132, 151-158)。
【0102】
2.2 クロザピンと抗コネキシン剤の組合せの効果
第二の相において、クロザピンの電気生理的効果に及ぼすコネキシン結合系の影響を調べた。
【0103】
抗精神剤(クロザピン)とコネキシン阻害剤(MFA)とを組合せる処置において、EEGのスペクトル分析は、1時間目に、8〜10 Hzの周波数に関して前頭前野脳活性の同期化の有意な増加(260%)、および16〜20 Hzの周波数に関してより低い程度の同期化を示す。この同期化の有意な増加は、クロザピンのスペクトルに対応して、ゆえに、コネキシン結合系を遮断することによるクロザピンの効果の増強に対応する。抗コネキシン剤によるクロザピンの効果がこのように強化される機序は、経時的に制御される。実際に、2時間目には、抗コネキシン効果のみが持続する(図2)。
【0104】
加えて、有意な周波数(たとえば8 Hzの周波数)に関する分析に焦点を当てることによって、観察されたクロザピンの効果の強化は、振動効果の振幅のかなりの減衰を伴うが(図3)、クロザピン単独による処置は、高振幅の波動を引き起こす(図3)。
【0105】
このように、コネキシン結合系の遮断によって引き起こされる波動の減衰は、コネキシンが、電気生理活性におけるこれらの短い波動の確立において役割を果たす可能性があることを意味している。これらの波動は、クロザピンによって生じ、コネキシンによって制御される迅速な活性キンドリング機序に対応するであろう。
【0106】
最後に、これらの結果は、コネキシン結合系が電気生理的活性の調整的役割(全体的な強度ならびに局所および時間に基づく波動に対する)を果たすという仮説を確認する。その上、これらの知見は、コネキシン阻害剤とのその組合せによる、これまで報告されていない抗精神効果の調整を証明している。この調整は、より短い期間で抗精神効果が有意に増強および安定化されることによって明らかとなる。抗精神剤の効果のこの増強は、クロザピンのより高用量について得られた効果と同一であるが、作用の持続に対して制御するであろう。
【0107】
実施例3:投与経路の比較
MFA阻害剤の中枢対末梢(脳内または腹腔内)の投与経路に従うコネキシンの遮断の電気生理学的結果を比較した。
【0108】
末梢および中枢の投与経路を評価するEEGのスペクトル分析は、1時間目に類似の周波数範囲に関して前頭前野の脳活性の同期化と同等の有意な増加を示す。しかし、同期化の有意な増加は、末梢投与では2時間目にも持続するが、中枢投与の場合には減少する。2時間目でのこの差は、投与経路の薬物動態に関連している(図4)。
【0109】
最後に、これらの予備的な結果は、脳内または末梢であれ、投与経路が、振幅に限って効果を改変することを示している。
【0110】
実施例4:腹腔内に投与された抗コネキシン剤の異なる用量の効果
MFA阻害剤の末梢に投与された用量に従うコネキシンの遮断の電気生理学的結果を比較した(用量効果)。
【0111】
末梢投与された用量を評価するEEGのスペクトル分析は、用量に応じて異なる周波数範囲の同期化に重要な有意な変化を示す。前頭前野の脳活性の同期化に都合がよいこれらの改変は、1時間目に出現して、用量に応じて不定に2時間目まで続く。コネキシンの阻害によるこの同期化は、コネキシンの生理的脱同期化特徴を確認する(図5)。用量に従うこれらの重要な同期化は、コネキシンの定量的表示(中枢神経系のネットワーク、たとえばコリン作動性、ノルアドレナリン作動性、セロトニン作動性等に従う多様なギャップ結合部の数)、および/または定性的表示(所定の用量での阻害剤に関する異なるコネキシンイソ型の親和性)による可能性がある。
【0112】
全体として、これらの予備的な結果は、腹腔内投与された抗コネキシン剤の特異的効果が用量に依存することを示している。このことは、コネキシンによるこの調整系が、たとえコネキシンが脳に汎在するとしても、脳において局所特異性(イソ型または量において)を有することを示しているように思われ、このことは文献と一貫する(Fukuda T., Neuroscientist 2007 ; 13(3)199-207)。このことはまた、向精神薬によって特異的に標的とされる系(コリン作動性、セロトニン作動性、ノルアドレナリン作動性、GABA作動性等)に従って、その構造およびその化学特性に従って、ならびにその薬理学(半減期、代謝、クリアランス)に従って、抗コネキシン剤の用量を明らかに適合させるべきであることを意味している。
【0113】
最後に、この用量効果によって、異なる向精神薬の効果の増強を調査するために適合する最小の実際のEEG効果(1時間目には有意な改変がなく、2時間目でわずかに有意に増加する)を引き起こすMFAの腹腔内投与量を同定することができる。このMFA用量は0.4 mg/kg(抗炎症効果のために用いられる用量より10〜25倍低い用量)であり、実施例5および6において記述される増強例のために用いられる用量であろう。
【0114】
実施例5:コネキシン阻害剤と組合せた1つめの抗うつ剤の効果
脳の活性においてコネキシンが調整的役割を果たすという仮説の評価を継続するために、抗コネキシン分子と組合せた1つめの薬理学的抗うつ剤処置の電気生理的結果を調べた。
【0115】
この状況において、コネキシン阻害剤であるメクロフェナム酸(MFA)と組合せたパロキセチンの効果を調べた。パロキセチンは、急性または慢性のうつ病エピソードに適応される抗うつ剤であり、選択的セロトニン再取り込み阻害剤の群のフェニルピペリジンに由来して、治療用量で有害作用の大きなリスト(感情鈍麻、瞳孔散大、悪心、奇形発生、傾眠、頭痛、体重および食欲の変化、性行動の変化、うつおよび不安感情の増加、ドライマウス、攻撃的行動(特に小児)、先天的奇形の可能性、紅斑、精神運動不安定性、痒み、枯渇(ナトリウム)、発汗、自殺願望、筋虚弱、筋痛、異常な攻撃レベル、セロトニン症候群)を有する。
【0116】
5.1 パロキセチンの効果
第一の相において、意識のあるラットにおけるパロキセチンのEEG効果に関する引用文献のデータが利用できないことから、実験モデルを評価した。しかし、パロキセチンの効果、特に睡眠-覚醒リズムに関する様々な試験が、急性の処置のためのパロキセチンの薬理学的用量を提供しており、これらは一般的に2〜5 mg/kgである(Sanchez C, Pharmacol Biochem Behav. 2007 Mar; 86(3):4 68-76)。
【0117】
ゆえに、パロキセチン単独の効果の記録を、腹腔内に投与された0.5 mg/kg用量(ラットにおける急性の処置において通常用いられる用量より4〜10倍低い)で得た。
【0118】
EEGのスペクトル分析は、抗うつ剤単独の処置において前頭前野における相対パワーの有意な増加を示し、ゆえに1時間目で8〜10 Hzで前頭前野脳活性の同期化の増加(およそ200%)ならびに周波数2〜3 Hzおよび18〜19 Hzでのより低い程度の同期化の増加を示し、2時間目には周波数8〜10 Hzで前頭前野脳活性の同期化の増加(およそ300%)ならびに周波数2〜3 Hzおよび18〜19 Hzでのより低い程度の同期化の増加を示す(図6)。
【0119】
5.2 パロキセチンおよび抗コネキシン剤の組合せ効果
第二の相において、パロキセチンの脳波効果に対するコネキシン結合系の影響を調べた。
【0120】
抗うつ剤(パロキセチン)とコネキシン阻害剤(MFA)とを組合せる処置において、EEGのスペクトル分析は、2時間目に周波数8〜10 Hzで前頭前野脳活性の同期化の有意な増加(600%)、ならびに周波数2〜3 Hzおよび18〜19 Hzでより低い程度の同期化の増加を示す。この同期化の有意な増加は、パロキセチン単独のスペクトルに完全に対応し、ゆえにコネキシン結合系の遮断によるパロキセチンの効果のかなりの増強に対応する。加えて、抗コネキシン剤によってパロキセチンの効果が強化されるこの機序は、パロキセチン単独と同じ時間経過をたどる。実際に、パロキセチン単独または抗コネキシン剤との組合せは、2時間目に増加して、これは投与後数時間で徐々に消失するはずであるEEG効果を引き起こす(図6)。
【0121】
このように、1時間目で最大EEG活性を引き起こすクロザピンとは異なり、パロキセチンは、より長時間持続して、発生までにより時間がかかる効果を生じる。ゆえに、抗コネキシン剤による増強は、調べた向精神薬分子の時間経過特性(異なる化学的性質の、異なる系を標的化する、および非常に異なる適応を有する特性)を保持して、1つの神経伝達系に限定されないコネキシンによる調整システムの考え方を強化する。
【0122】
全体として、これらの結果は、コネキシン結合系が電気生理活性の調整的役割(全体的な強度および時間経過)を果たすという仮説を確認する。
【0123】
最後に、これらの観察は、抗うつ剤とコネキシン阻害剤との組合せによる、これまで報告されていない抗うつ効果の調整を示している。この調整は、薬理学的用量より4〜25倍低い用量で抗うつ剤効果が増強されることによって明らかとなる。ゆえに、抗コネキシン剤によるこの抗うつ効果の増強によって、抗コネキシン剤に対して特異的な効果を最小限にしながら、抗うつ剤の用量を4〜25倍低減させることができるであろう。ゆえに、パロキセチンと抗コネキシン剤の組合せに関して測定された用量便益は、4より大きいであろう。
【0124】
実施例6:コネキシン阻害剤と組合せた精神刺激剤の効果
脳の活性においてコネキシンが全般的な調整的役割を果たすという仮説の評価を継続するために、抗コネキシン分子と組合せた精神刺激剤による薬理学的処置の電気生理学結果を調べた。
【0125】
この状況において、コネキシン阻害剤であるメクロフェナム酸(MFA)と組合せたモダフィニル(provigil)の効果を調べた。モダフィニルは、ナルコレプシーまたは特発性過眠症の処置のために適応される精神刺激剤であり、治療用量で有害作用のリスト(興奮、攻撃性、不眠症、食欲不振、頭痛、悪心、胃痛、アレルギー性皮膚発疹)を有するノルアドレナリン再取り込み阻害剤である。
【0126】
6.1 モダフィニルの効果
第一の相において、実験モデルを、特に一般的に100〜350 mg/kgである、急性の処置におけるモダフィニルの薬理学的用量を提供する公表されたデータによって評価した(Sebban C, British Journal of Pharmacology (1999) 128, 1045-1054, De saint Hilaire Z., Neuroreport. 2001 Nov 16;12(16): 3533-7)。ゆえに、モダフィニル単独の2つの用量(125および250 mg/kg)の効果の記録を得た。
【0127】
EEGのスペクトル分析は、精神刺激剤単独による処置に関して、周波数2〜5 HzでのEEG電位の有意な増加を示し、ゆえに前頭前野の脳活性の同期化の増加(250 mg/kg用量に関して300%および125 mg/kg用量に関して120%)を示し、および周波数10〜25 HzでEEG電位の有意な減少を示し、ゆえに125 mg/kg用量に関して前頭前野の脳活性の脱同期化(10〜30%)を示し、および250 mg/kg用量に関してより低い程度の脱同期化を示し、これは1時間目に起こり、2時間目に増加する(図7)。
【0128】
これらの観察は、文献において報告された特徴的な精神刺激剤の効果と適合性である(Sebban C, British Journal of Pharmacology (1999) 128, 1045-1054, De Saint Hilaire Z., Neuroreport. 2001 Nov 16;12(16):3533-7)。
【0129】
6.2 モダフィニルと抗コネキシン剤の組合せ効果
第二の相において、モダフィニルの低用量(125 mg/kg)での電気生理効果に及ぼすコネキシン結合系の影響を調べた。
【0130】
精神刺激剤(モダフィニル)とコネキシン阻害剤(MFA)とを組合せる処置において、EEGのスペクトル分析は、周波数2〜5 Hzでの前頭前野の脳活性の同期化の有意な増加(300%)、および周波数10〜25 HzでのEEG電位のより低い程度の有意な低減を示し、ゆえに前頭前野の脳活性の脱同期化を示し、これは1時間目に起こり、2時間目に増加する(図7)。これらのEEG改変は、高用量(250 mg/kg)でのモダフィニル単独のスペクトルに完全に対応して、ゆえにコネキシン結合系を遮断することによる、モダフィニルの効果の増強に対応する。加えて、クロザピンおよびパロキセチンと同様に、抗コネキシン剤によるモダフィニルの効果のこの強化機序は、より高用量でのモダフィニル単独と同じ時間経過をたどる。非常に異なるタイプの向精神薬の時間経過特性を保持する抗コネキシン剤によるこの増強は、1つの神経伝達系に限定されないコネキシンによる調整系の考え方を再度確認する。
【0131】
全体として、これらの結果は、コネキシン結合系が電気生理活性の調整的役割(全体的な強度および時間経過に対する)を果たすという仮説を確認する。その上、これらの観察は、コネキシン阻害剤との組合せによるこれまでに報告されていない精神刺激剤効果の調整を示す。この調整は、低用量で精神刺激剤効果が増強されることによって明らかとなり、高用量での効果を完全に模倣する。ゆえに、抗コネキシン剤による精神刺激剤の効果の増強により、抗コネキシン剤に対して特異的ないかなる効果もなく、精神刺激剤の用量を少なくとも2倍低減させることができる。ゆえに、モダフィニルと抗コネキシン剤の組合せに関して測定された用量便益は、少なくとも2であろう。
【0132】
実施例7:コネキシン阻害剤と組合せた抗不安薬の効果
脳の活性に対してコネキシンが全般的な調整的役割を果たすという仮説の評価を継続するために、抗コネキシン分子と組合せた抗不安薬の薬理学的処置の電気生理的結果を調べた。
【0133】
この状況において、コネキシン阻害剤であるメクロフェナム酸(MFA)と組合せたジアゼパムの効果を調べた。ジアゼパムは、過度の不安エピソード、睡眠困難、神経症状態、精神身体症状発現、アルコール解毒、およびてんかんに適応される抗不安薬である。ジアゼパムは、GABA作動神経伝達を容易にするベンゾジアゼピンであり、治療用量で大きな有害作用リスト(傾眠、緊張低下、中毒感覚、集中困難、被刺激性、攻撃性、興奮、混乱、肝炎、アレルギー性皮膚反応、嚥下困難)を有し、処置の様々な相の際に用量の調節を必要とする耐性および依存性を引き起こしうる。
【0134】
7.1 ジアゼパムの効果
第一の相において、意識のあるラットに腹腔内投与したジアゼパムのEEG効果に対する引用文献データと比較するために、実験モデルを評価した(Robledo P., Alcohol Clin Exp Res. 1994 Apr ; 18(2)-363-8)。ゆえに、ジアゼパム単独の効果に関する記録を、1 mg/kg(ラットの急性処置において通常用いられる用量の1.5〜5倍低い量)の腹腔内投与で得た。
【0135】
1時間目でのEEGのスペクトル分析は、ジアゼパムの特徴的な効果、すなわち4〜7 Hz成分のパワーのわずかな減少(およそ25%の減少)および11〜30 Hz成分のパワーの有意な増加(およそ120%)を示す。2時間目には、4〜7 Hzおよび11〜30 Hz成分に対するこれらの効果は持続するが、強度は低減されて、1〜3 Hz成分のパワーの有意な増加が出現する(図8を参照されたい)。
【0136】
7.2 ジアゼパムと抗コネキシン剤の組合せ効果
実験モデルが有効であることが確認された後、ジアゼパムの電気生理学的効果に及ぼすコネキシン結合系の影響を調べた。
【0137】
抗不安薬(ジアゼパム、1 mg/kg、腹腔内)とコネキシン阻害剤(MFA、0.4 mg/kg、腹腔内)とを組合せる処置において、EEGのスペクトル分析は、1時間目に11〜30 Hz成分(およそ150%)および1〜3 Hz成分(およそ120%)のパワーの有意な増加を示す。パワーのこの増加は、2時間目にも続き、11〜30 Hz成分に関してはより高い振幅であった(200%まで)(図8を参照されたい)。
【0138】
1〜3 Hz成分および11〜30 Hz成分のパワーのこの有意な増加は、より高用量(最初の試験において用いられた用量の2〜10倍)でのジアゼパム単独のスペクトルに対応し、ゆえに、コネキシン結合系を遮断することによるジアゼパムの効果のかなりの増強に対応する。加えて、ジアゼパム単独とは異なり、抗コネキシン剤による増強は、2時間目での効果を強化して、抗コネキシン剤の存在下で作用が時間について延長されることを示している。この後者の観察は、ジアゼパム単独の時間経過を正確にたどらないことによって、クロザピン、モダフィニル、およびパロキセチンと組合せた抗コネキシン分子の効果とは異なり、コネキシンによる調整系が神経伝達系が異なれば定量的に異なる可能性があることを示している。このように、ジアゼパムの場合、結合系の遮断は、1時間目より2時間目でより強い影響を有し、化学的神経伝達系における結合系の構築に従って、遮断が異なる定性的および定量的結果を有することを強調する。
【0139】
全体として、GABA作動神経系のこの増強は、コネキシン結合系が電気生理学的活性に対して調整的役割(化学的神経伝達系における構築におそらく定性的および定量的に依存する)を果たすという仮説を確認する。
【0140】
最後に、これらの結果は、薬物とコネキシン阻害剤との組合せによる、これまでに報告されていない抗不安効果の調整を示す。この調整は、抗コネキシン分子と組合せた場合に、薬理学的用量より2〜10倍低い用量で薬理学的用量単独と同じ脳波の効果を得ることができるようになる、抗不安効果の増強によって明らかとなる。ゆえに、抗コネキシン剤による抗不安効果のこの増強によって、抗コネキシン剤に対して特異的な効果を最小限にしながら、抗不安薬の用量を2〜10倍低減させることができるであろう。ゆえに、ジアゼパムと抗コネキシン剤との組合せに関して測定された用量便益は、2より大きいであろう。
【0141】
実施例8:コネキシン阻害剤と組合せた2つめの抗うつ剤の効果
脳の活性に対してコネキシンが全般的な調整的役割を果たすという仮説の評価を継続するために、抗コネキシン分子と組合せた2つめの抗うつ剤薬理学的処置の電気生理学的結果を調べた。
【0142】
この状況において、コネキシン阻害剤であるメクロフェナム酸(MFA)と組合せたベンラファキシンの効果を調べた。ベンラファキシンは、成人における大うつ病エピソード、単極性障害を有する患者における再発性のうつの予防、および成人における少なくとも6ヶ月間の全身不安に適応される抗うつ剤である。ベンラファキシンは、中間のプロファイルを有し、イミプラミンと同等の効能を有するセロトニンおよびノルアドレナリン再取り込み阻害剤であり、治療用量で有害作用の大きなリスト(悪心、傾眠、ドライマウス、不眠症、眩暈、便秘、発汗、低ナトリウム血症、射精困難、下痢、嘔吐、体重増加、頭痛、激昂、振せん、感覚異常、動悸、適応障害、皮膚発疹)を有し、処置が中止されると禁断症状を引き起こしうる。
【0143】
8.1 ベンラファキシンの効果
第一の相において、意識のあるラットにおけるベンラファキシンのEEG効果に関する引用文献データが利用できないことから、ベンラファキシン単独によって実験モデルを評価した;しかし、特に睡眠の改変に及ぼすベンラファキシンの効果に関する様々な試験が、急性の処置におけるベンラファキシンの薬理学的用量を提供しており、これらは一般的に1〜10 mg/kgの腹腔内投与である(Salin-Pascual RJ., Psychopharmacology. 1997 Feb ; 129(3) :295-6)。
【0144】
ベンラファキシン単独の効果の記録は、2つの用量、すなわち0.16 mg/kgと4 mg/kgの腹腔内投与(ラットの急性処置において通常用いられる用量より1〜25倍低い)によって行われた。
【0145】
前頭前野EEGのスペクトル分析は、ベンラファキシンの用量に従って、1時間目に8〜10 Hz成分(0.16 mg/kg用量に関しておよそ120%および4 mg/kg用量に関して200%)および16〜18 Hz成分のパワーの有意な増加、ならびに24〜26 Hz成分のより小さい程度の増加を示し、これらは2時間目に増加して、4 mg/kgでは1〜3 Hz成分のパワーの増加が出現する(図9)。
【0146】
8.2 ベンラファキシンと抗コネキシン剤との組合せ効果
次に、ベンラファキシンの電気生理学的効果に及ぼすコネキシン結合系の影響を調べた。
【0147】
抗うつ剤(ベンラファキシン、0.16 mg/kg、腹腔内)とコネキシン阻害剤(MFA、0.4 mg/kg、腹腔内)とを組合せる処置において、EEGのスペクトル分析は、1時間目に8〜10 Hz成分(およそ350%)、16〜18 Hz成分(およそ200%)および24〜26 Hz成分(およそ180%)のパワーの有意な増加を示す。パワーのこの増加は、2時間目でも継続するが、パワーの有意な増加が観察される1〜3 Hz成分を除き、異なる成分(主に8〜10 Hz成分)に関して振幅は減少する(図9を参照されたい)。
【0148】
この同期化の有意な増加は、ベンラファキシン単独のスペクトルに対応して、ゆえに、コネキシン結合系を遮断することによるベンラファキシンの効果のかなりの増強に対応する。加えて、ベンラファキシン単独とは異なり、抗コネキシン剤による増強は、1時間目で効果を強化して、2時間目で減少し(ベンラファキシン処置単独より高いレベルを維持しながら)、このことは、急速な作用が抗コネキシン剤の存在下で時間的に延長することを示している。この後者の観察は、ジアゼパムと組合せた結果の観察と類似であり、ベンラファキシン単独の時間経過を正確にたどらないことから、クロザピン、モダフィニル、およびパロキセチンと組合せた抗コネキシン分子の効果とは異なり、コネキシンによる調整系が、神経伝達系が異なれば定量的に異なる可能性があることを確認している。このように、ベンラファキシンの場合、結合系の遮断は化学的神経伝達系におけるその構築に従って異なる定性的および定量的結果を有するであろうと確認される。
【0149】
全体として、セロトニン作動性およびノルアドレナリン作動性系のこの増強は、コネキシン結合系が電気生理的活性に対して主な調整的役割を果たすという仮説を確認する。
【0150】
最後に、これらの結果は、抗うつ剤とコネキシン阻害剤との組合せによる、これまで報告されていない抗うつ効果の調整を示す。この調整は、薬理学的用量より25倍低い用量で、抗コネキシン分子と組合せた場合に、抗うつ剤単独(薬理学的用量)と同じ脳波効果を得ることができる、抗うつ効果の増強によって明らかとなる。抗コネキシン剤による抗うつ効果のこの増強は、抗コネキシン剤に対して特異的な効果を最小限にして、抗うつ剤の用量を少なくとも25倍低減させることが可能であろう。ゆえに、ベンラファキシンと抗コネキシン剤との組合せに関して測定された用量便益は、25より大きいであろう。
【0151】
実施例9:コネキシン阻害剤と組合せた3つめの抗うつ剤の効果
脳の活性に対してコネキシンが全般的に調整的役割を果たすという仮説の評価を継続するために、抗コネキシン分子と組合せた3つめの抗うつ剤薬理学的処置の電気生理学的結果を調べた。
【0152】
この状況において、コネキシン阻害剤であるメクロフェナム酸(MFA)と組合せたエスシタロプラムの効果を調べた。エスシタロプラムは、大うつ病状態に、および広場恐怖症を伴うまたは伴わないパニック発作の予防のために適応される抗うつ剤である。エスシタロプラムは、中間のプロファイルを有し、イミプラミンと同等の効能を有するセロトニン再取り込み阻害剤であり、治療用量で大きな有害作用リスト(悪心、頭痛、不眠症、便秘、傾眠、発汗、射精困難、下痢、嘔吐、眩暈、震え、感覚異常、動悸、起立性低血圧、および心因性掻痒症)を有する。
【0153】
9.1 エスシタロプラムの効果
第一の相において、意識のあるラットにおけるエスシタロプラムのEEG効果に関する引用文献データが入手できないことから、実験モデルを評価した;しかし、特に睡眠EEG改変に及ぼすエスシタロプラムの効果に関する様々な試験が、急性の処置におけるエスシタロプラムの薬理学的用量を提供しており、これらは一般的に1〜10 mg/kgの腹腔内投与である(Sanchez C., Pharmacol Biochem Behav. 2007 Mar ; 86(3) :468-76)。
【0154】
エスシタロプラム単独の効果の記録を、腹腔内投与された2つの用量、すなわち0.8 mg/kgおよび4 mg/kg(ラットの急性処置において通常用いられる用量より1〜5倍低い)で行った。
【0155】
前頭前野EEGのスペクトル分析は、エスシタロプラム用量に従って、1時間目に6〜8 Hz成分(0.8 mg/kg用量に関しておよそ150%および4 mg/kg用量に関して200%)および14〜16 Hz成分のパワーの有意な増加を示し、より程度は少ないが22〜24 Hz成分の増加を示し、2時間目に減少する(図10を参照されたい)。
【0156】
9.2 エスシタロプラムと抗コネキシン剤の組合せ効果
第二の相において、エスシタロプラムの電気生理学的効果に及ぼすコネキシン結合系の影響を調べた。
【0157】
抗うつ剤(エスシタロプラム、0.8 mg/kg、腹腔内)およびコネキシン阻害剤(MFA、0.4 mg/kg、腹腔内)を組合せる処置において、EEGのスペクトル分析は、1時間目に6〜8 Hz成分(およそ450%)、14〜16 Hz成分(およそ230%)、および22〜24 Hz成分(およそ14%)に関するパワーの有意な増加を示す。パワーのこの増加は、2時間目でも継続するが、異なる成分(主に8〜10 Hz成分に関して)に関する振幅が低減される(図10を参照されたい)。
【0158】
同期化のこの有意な増加は、エスシタロプラム単独のスペクトルと完全に一致して、ゆえにコネキシン結合系の遮断によるエスシタロプラムの効果のかなりの増強に対応する。加えて、クロザピン、パロキセチン、およびモダフィニルとは異なり、抗コネキシン剤によるエスシタロプラムの効果のこの強化機序は、エスシタロプラム単独と同じ時間経過をたどる。実際に、エスシタロプラム単独または抗コネキシン剤との組合せは、1時間目に最大であるが、2時間目では弱まるEEG効果を生じる。このように、エスシタロプラムの抗コネキシン剤による増強は、時間経過特性を保持して、1つの神経伝達系に限定されないコネキシンによる調整系の考え方を強化する。
【0159】
全体として、セロトニン作動神経のこの増強は、コネキシン結合系が電気生理活性に対して調整的役割を果たすという仮説を確認する。
【0160】
最後に、これらの結果は、抗うつ剤とコネキシン阻害剤との組合せによる抗うつ効果の調整を示す。この調整は、抗コネキシン分子と組合せた場合に、薬理学的用量より5倍低い用量で抗うつ剤単独(薬理学的用量)と同じ脳波効果を生成することができる、抗うつ効果の増強によって明らかとなる。ゆえに、抗コネキシン剤による抗うつ効果のこの増強は、抗コネキシン剤に対して特異的な効果を最小限にしながら、抗うつ剤の用量を少なくとも5倍低減させることが可能であろう。ゆえに、エスシタロプラムと抗コネキシン剤の組合せに関して測定された用量便益は、5より大きいであろう。
【0161】
実施例10:コネキシン阻害剤と組合せた4つめの抗うつ剤の効果
脳の活性に対してコネキシンが全般的な調整的役割を果たすという仮説の評価を継続するために、抗コネキシン分子と組合せた4つめの抗うつ剤薬理学的処置の電気生理学的結果を調べた。
【0162】
この状況において、コネキシン阻害剤であるメクロフェナム酸(MFA)と組合せたブプロピオンの効果を調べた。ブプロピオンは、ニコチン依存被験者における禁煙を助けるために適応される抗うつ剤である。ブプロピオンは、ノルアドレナリンおよびドーパミン再取り込み阻害剤であり、治療用量で大きな有害作用リスト(皮膚発疹、心因性掻痒症、発熱、悪心、頭痛、不眠症、眩暈、便秘、嘔吐、運動失調、耳鳴、精神混乱、視覚障害)を有する。
【0163】
10.1 ブプロピオンの効果
第一の相において、意識のあるラットにおけるブプロピオンのEEG効果に関する引用文献データが入手できないことから、実験モデルを評価した;しかし、特に睡眠EEG改変に及ぼすブプロピオンの効果に関する様々な試験が、急性の処置におけるブプロピオンの薬理学的用量を提供しており、これらは一般的に5〜150 mg/kgの腹腔内投与である(Henshall DC, Neuropsychiatr Dis Trat. 2009; 5 : 189-206)。
【0164】
ブプロピオン単独の効果の記録を、腹腔内投与された3つの用量、すなわち0.16 mg/kg、0.8 mg/kg、および4 mg/kg(ラットの急性処置において通常用いられる用量より10〜150倍低い)で行った。
【0165】
前頭前野EEGのスペクトル分析は、ブプロピオンの用量に従って、1時間目に8〜10 Hzから8〜10 Hz成分(0.16 mg/kg用量に関しておよそ180%、0.8 mg/kg用量に関して450%、および4 mg/kg用量に関して280%)および15〜18 Hz成分のパワーの有意な増加を示し、より程度は低いものの23〜25 Hz成分で増加を示す。2時間目では、1時間目に関する有意な増加が、0.16 mg/kg用量および4 mg/kg用量に関して同じ成分について観察されるが、0.8 mg/kg用量ではその効果は弱まる(図11)。
【0166】
このことは、1時間目でのブプロピオンの逆「U字型」用量効果を示しており(セルトラリンに関して図13において示されるように)、2時間目に古典的な用量効果を示している。
【0167】
用量に従う経時的なこれらの複雑な効果は、ブプロピオン用量に従う異なる神経伝達系またはニューロン群の関与を示唆している。
【0168】
10.2 ブプロピオンと抗コネキシン剤の組合せ効果
第二の相において、ブプロピオンの電気生理学的効果に及ぼすコネキシン結合系の影響を調べた。
【0169】
抗うつ剤(ブプロピオン、0.16 mg/kg、腹腔内)とコネキシン阻害剤(MFA、0.4 mg/kg、腹腔内)とを組合せる処置において、EEGのスペクトル分析は、1時間目に8〜10 Hz成分(およそ400%)、15〜18 Hz成分(およそ230%)、および23〜25 Hz成分(およそ140%)に関するパワーの有意な増加を示す。このパワーの増加は、2時間目でも継続するが、異なる成分に関して振幅が減少する(主に8〜10 Hzおよび15〜18 Hz成分に関して)(図11を参照されたい)。
【0170】
同期化のこの有意な増加は、0.8 mg/kg用量でのブプロピオン単独のスペクトルに対応し、ゆえにコネキシン結合系を遮断することによるブプロピオンの効果のかなりの増強を示している。加えて、抗コネキシン剤によるブプロピオンの効果の強化機序は、先に言及された用量に従うブプロピオンの効果の時間経過の複雑さ(段落10.1)を考慮に入れると、より高用量でのブプロピオン単独と同じ時間経過をたどる。実際に、抗コネキシン剤と組合せた0.8 mg/kg用量またはより低用量(0.16 mg/kg)でのブプロピオン単独は、1時間目で最大であるが2時間目で弱くなるEEG効果を生じる。このように、抗コネキシン剤によるブプロピオンの特定の増強は、1つの神経伝達系に限定されないコネキシンによる調整系の考え方を強化する。
【0171】
全体として、ノルアドレナリンおよびドーパミン作動系のこの増強は、コネキシン結合系が電気生理的活性に対して調整的役割を果たすという仮説を確認する。
【0172】
最後に、これらの結果はまた、コネキシン阻害剤とのその組合せによってブプロピオンなどの抗うつ剤の効果が調整されることを示す。この調整は、薬理学的用量より5倍低い用量で、抗コネキシン分子と組合せ投与した場合に同じ脳波効果を生じる、抗うつ効果の増強によって明らかとなる。ゆえに、抗コネキシン剤による抗うつ効果のこの増強によって、抗コネキシン剤に対して特異的な効果を最小限にしながら、ブプロピオンの用量を少なくとも5倍低減させることができるであろう。ゆえに、ブプロピオンと抗コネキシン剤の組合せに関して測定された用量便益は、5より大きいであろう。
【0173】
実施例11:コネキシン阻害剤と組合せた5つめの抗うつ剤の効果
脳の活性に対してコネキシンが全般的な調整的役割を果たすという仮説の評価を継続するために、抗コネキシン分子と組合せた5つめの抗うつ剤薬理学的処置の電気生理学的結果を調べた。この状況において、コネキシン阻害剤であるメクロフェナム酸(MFA)と組合せたセルトラリンの効果を調べた。
【0174】
セルトラリンは、成人における大うつ病状態、成人および小児における強迫障害、ならびに単極性障害患者における再発性のうつ病の予防に関して適応される抗うつ剤である。セルトラリンは、治療用量で大きな有害作用リスト(皮膚発疹、心因性掻痒症、悪心、頭痛、不眠症、眩暈、嘔吐、錐体外路効果、射精困難、便秘、視覚障害、頻拍)を有する選択的セロトニン再取り込み阻害剤である。
【0175】
11.1 セルトラリンの効果
第一の相において、意識のあるラットにおけるセルトラリンのEEG効果に関する引用文献データが入手できないことから、実験モデルを評価した;しかし、特に睡眠EEG改変に及ぼすセルトラリンの効果に関する様々な試験が、急性の処置におけるセルトラリンの薬理学的用量を提供しており、これらは一般的に4〜40 mg/kgの腹腔内投与である(Freo U., Neurosci Lett. 2008; 436(2) : 148-52)。
【0176】
セルトラリン単独の効果の記録を、腹腔内投与された3つの用量、すなわち0.16 mg/kg、0.8 mg/kg、および4 mg/kg(ラットの急性処置において通常用いられる用量より1〜25倍低い)で行った。
【0177】
前頭前野EEGのスペクトル分析は、セルトラリンの用量に従って、1時間目で7〜9 Hz成分(0.16 mg/kg用量および0.8 mg/kg用量に関しておよそ260%、ならびに4 mg/kg用量に関して200%)および14〜17 Hz成分のパワーの有意な増加を示し、23〜25 Hz成分でより程度は低いものの増加を示す。2時間目には、1時間目に関する有意な増加が、0.8 mg/kg用量(900%)および4 mg/kg用量(450%)に関して同じ成分について観察されたが、0.16 mg/kg用量ではその効果はわずかに弱まる(図12)。
【0178】
このことは、主に2時間目でのセルトラリンの逆「U字型」用量効果を示している(図13において示されるように)。用量に従う経時的なこれらの複雑な効果は、ブプロピオンの場合と同様に、セルトラリン用量に従う異なる神経伝達系またはニューロン群の関与を示唆している。
【0179】
11.2 ブプロピオンと抗コネキシン剤の組合せ効果
第二の相において、セルトラリンの電気生理学的効果に及ぼすコネキシン結合系の影響を調べた。
【0180】
抗うつ剤(セルトラリン、0.16 mg/kg、腹腔内)およびコネキシン阻害剤(MFA、0.4 mg/kg、腹腔内)を組合せる処置において、EEGのスペクトル分析は、1時間目に、7〜9 Hz成分(およそ400%)、14〜17 Hz成分(およそ300%)、および23〜25 Hz成分(およそ160%)に関するパワーの有意な増加を示す。パワーのこの増加は、2時間目にも持続して、異なる成分、主に7〜9 Hz成分(およそ1000%)および14〜17 Hz成分(およそ700%)に関して振幅がかなり増加する(図12)。
【0181】
2時間目でのこの同期化の有意な増加は、0.8 mg/kg用量でセルトラリン単独のスペクトルに対応し、ゆえにコネキシン結合系の遮断によってセルトラリンの効果がかなり増強されることを示す。加えて、抗コネキシン剤によるセルトラリンの効果のこの強化機序は、先に言及した用量に従うセルトラリンの効果の時間経過の複雑さを考慮に入れると、より高用量でのセルトラリン単独と同じ時間経過をたどる(段落11.1)。
【0182】
実際に、0.8 mg/kg用量でのセルトラリン単独または抗コネキシン剤と組合せたそれより低い用量(0.16 mg/kg)は、2時間目に最大であるEEG効果を生じる。このように、抗コネキシン剤によってセルトラリンが特に増強されることは、1つの神経伝達系に限定されない抗コネキシン剤による調整系の考え方を確認および強化する。
【0183】
全体として、セロトニン作動系のこの増強は、コネキシン結合系が電気生理的活性に対して調整的役割を果たすという仮説を確認する。
【0184】
最後に、これらの結果は再び、コネキシン阻害剤とのその組合せによる抗うつ効果(セルトラリン)の調整を示す。この調整は、薬理学的用量より5倍低い用量で抗うつ効果が増強されることによって明らかとなる。よって、抗コネキシン剤による抗うつ効果のこの増強は、抗コネキシン剤に対して特異的な効果を最小限にして、抗うつ剤の用量を少なくとも5倍低減させることができるであろう。ゆえに、セルトラリンと抗コネキシン剤の組合せに関して測定された用量便益は5より大きいであろう。
【0185】
参考書目
【技術分野】
【0001】
本発明は、向精神薬分子を用いる治療的な神経学的および神経精神学的処置の改善に関する。より具体的には、本発明により、向精神薬の効果を、本明細書において抗コネキシン剤と呼ばれる一定の分子によって調整および/または増強することができる。
【背景技術】
【0002】
中枢神経系を標的とする治療目的のための分子の開発および使用は、急速に発展しつつある分野である。それにもかかわらず、この発展は、多数の制限に直面している:
− 治療用量で有害作用が出現する可能性があり、そのため治療の便益を低減する可能性がある、
− 薬剤に対する個体の反応は、処置に対する抵抗性、処置に対する不耐性、処置の失敗および追加の現象であり、これらは、向精神薬分子の開発および臨床での使用を特に制限する、
− 投与時間に関連して治療効果が相殺されるという事実は、抗うつ剤処置の状況において十分に報告されている現象であり、投薬を適合させる場合の少なからぬ不確実性の原因である。
【0003】
その上、中枢神経系の病態の処置に関する可能性がある分子の中で、臨床試験において有効であることが確認されて、市販されているのは8%に過ぎない。前臨床試験において、分子の20%が、ヒトでの処置にとって許容できない毒性結果のために拒絶されている(Kola I, Nat Rev Drug Discov. 2004 Aug;3(8):711-5(非特許文献1))。それにもかかわらず、これらの分子は、1つまたは複数の他の分子によってその作用を増強することができれば治療効果を有しうるであろう。
【0004】
この状況において、ゆえに(i)治療上の制限および有害作用を最善に制御するための、ならびに(ii)中枢神経系の病態を処置することが意図される分子の効能を改善するための手段を発見することが重要である。
【0005】
様々な試験が処置の有害作用の調整に既に取り組んでいる。記述されるいくつかの試みは、受容体を標的とする分子またはペプチドに主として関連している:
− 痛覚現象におけるPKR1(Negri L, The Journal of Neuroscience, 2006 June 21;26(25):6716-27(非特許文献2))、
− 慢性的なインスリン処置後の極度の低血糖症の場合における非ステロイド性グルココルチコイド受容体アンタゴニスト(Kale AY 2006, Brain Research Bulletin 2006, July 15 ; 135 (1-2) :l-6(非特許文献3))、
− 骨粗鬆症の処置におけるその効能を損なうことなく、エストラジオール処置の有害作用を部分的に中和するプロゲステロン受容体アゴニストであるトリメゲストン(Winneker RC, Steroids. 2003 Nov;68(10-13):915-20(非特許文献4))
− オピエートの依存効果を減弱させるためのGABAA受容体アゴニストであるジアゼパム(Tejwani GA, Brain Res. 1998 June 29;797(2):305-12(非特許文献5))。
【0006】
一般的に、本発明の時点では、向精神薬の使用に関連する問題を解決することを意図するアプローチは、一般的な制御システムではなくて、代わりに一定の特異的受容体に対する介入を伴う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kola I, Nat Rev Drug Discov. 2004 Aug;3(8):711-5
【非特許文献2】Negri L, The Journal of Neuroscience, 2006 June 21;26(25):6716-27
【非特許文献3】Kale AY 2006, Brain Research Bulletin 2006, July 15 ; 135 (1-2) :l-6
【非特許文献4】Winneker RC, Steroids. 2003 Nov;68(10-13):915-20
【非特許文献5】Tejwani GA, Brain Res. 1998 June 29;797(2):305-12
【発明の概要】
【0008】
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】メクロフェナム酸(MFA、黒四角)または18-β-グリシルレチン酸(βGA、白丸)の髄膜下注射の効果に関する定量的EEGによる前頭前野の電気的活性のスペクトル分析を示す。x-軸は、分析した周波数を示し、y-軸は、FFT分析から得られた相対パワーを示す。スペクトル分析は、1時間目および2時間目の記録の平均値として示される。
【図2】クロザピン単独(0.2 mg/kg、腹腔内)、コネキシン阻害剤単独(メクロフェナム酸、80 ng/kg、髄膜下注射による)、またはその組み合わせ[クロザピンおよびコネキシン阻害剤]の効果に関する定量的EEGによる前頭前野の電気的活性のスペクトル分析を示す。x-軸は、分析した周波数を示し、y-軸は、フーリエ変換分析(FFT)から得られた相対パワーを示す。スペクトル分析は、1時間目(上)と2時間目(下)に関する動物6匹の平均値として示される。
【図3】クロザピン単独(0.2 mg/kg、腹腔内)、コネキシン阻害剤単独(メクロフェナム酸、80 ng/kg、髄膜下注射による)、またはその組み合わせ[クロザピンおよびコネキシン阻害剤]の効果に関する定量的EEGによる8 Hzの平均周波数での前頭前野における分ごとの変化の分析を示す。x-軸は分での時間を示し、y-軸はFFT分析において得られた相対パワーを示す。
【図4】髄膜下注射(メクロフェナム酸、80 ng/kg)、または腹腔内注射(メクロフェナム酸、2.45 mg/kg)によるコネキシン阻害剤の効果に関する定量的EEGによる前頭前野の電気的活性のスペクトル分析を示す。x-軸は分析した周波数を示し、y-軸はFFT分析から得られた相対パワーを示す。スペクトル分析は、1時間目および2時間目に関する動物6匹の記録の平均値として示される。
【図5】腹腔内注射によるコネキシン阻害剤の異なる用量(メクロフェナム酸、2 mg/kg、1 mg/kg、0.5 mg/kg、0.4 mg/kg)の効果に関する定量的EEGによる前頭前野の電気的活性のスペクトル分析を示す。x-軸は、分析した周波数を示し、y-軸はFFT分析から得られた相対パワーを示す。スペクトル分析は、1時間目および2時間目に関する記録の平均値として示される。
【図6】パロキセチン(0.5 mg/kg、腹腔内)単独、コネキシン阻害剤(メクロフェナム酸、0.4 mg/kg、腹腔内注射による)単独、またはパロキセチンとコネキシン阻害剤の組合せの効果に関する定量的EEGによる前頭前野の電気的活性のスペクトル分析を示す。x-軸は、分析した周波数を示し、y-軸は、FFT分析から得られた相対パワーを示す。スペクトル分析は、1時間目および2時間目に関する動物6匹の平均値として示される。
【図7】モダフィニル(125 mg/kgおよび250 mg/kg、腹腔内)単独、コネキシン阻害剤(メクロフェナム酸、0.4 mg/kg、腹腔内注射による)単独、またはモダフィニル(125 mg/kg、腹腔内)とコネキシン阻害剤との組合せの効果に関する定量的EEGによる前頭前野の電気的活性のスペクトル分析を示す。x-軸は、分析した周波数を示し、y-軸はFFT分析から得られた相対パワーを示す。スペクトル分析は、1時間目および2時間目に関する動物6匹の平均値として示される。
【図8】ジアゼパム(1 mg/kg、腹腔内)単独、またはジアゼパム(1 mg/kg、腹腔内)とコネキシン阻害剤(メクロフェナム酸、0.4 mg/kg、腹腔内)の組合せの効果に関する定量的EEGによる前頭前野の電気的活性のスペクトル分析を示す。x-軸は、分析した周波数を示し、y-軸はFFT分析から得られた相対パワーを示す。スペクトル分析は、1時間目および2時間目に関する動物6匹の平均値として示される。
【図9】ベンラファキシン(0.16 mg/kgおよび4 mg/kg、腹腔内)単独、またはベンラファキシン(0.16 mg/kg、腹腔内)とコネキシン阻害剤(メクロフェナム酸、0.4 mg/kg、腹腔内)との組合せの効果に関する定量的EEGによる前頭前野の電気的活性のスペクトル分析を示す。x-軸は、分析した周波数を示し、y-軸はFFT分析から得られた相対パワーを示す。スペクトル分析は、1時間目および2時間目に関する動物6匹の平均値として示される。
【図10】エスシタロプラム(0.8 mg/kgおよび4 mg/kg、腹腔内)単独、またはエスシタロプラム(0.8 mg/kg、腹腔内)とコネキシン阻害剤(メクロフェナム酸、0.4 mg/kg、腹腔内)の組合せの効果に関する定量的EEGによる前頭前野の電気的活性のスペクトル分析を示す。x-軸は、分析した周波数を示し、y-軸はFFT分析から得られた相対パワーを示す。スペクトル分析は、1時間目および2時間目に関する動物6匹の平均値として示される。
【図11】ブプロピオン(0.16 mg/kg、0.8 mg/kgおよび4 mg/kg、腹腔内)単独、またはブプロピオン(0.16 mg/kg、腹腔内)とコネキシン阻害剤(メクロフェナム酸、0.4 mg/kg、腹腔内)の組合せの効果に関する定量的EEGによる前頭前野の電気的活性のスペクトル分析を示す。x-軸は分析した周波数を示し、y-軸はFFT分析から得られた相対パワーを示す。スペクトル分析は、1時間目および2時間目に関する動物6匹の平均値として示される。
【図12】セルトラリン(0.16 mg/kg、0.8 mg/kgおよび4 mg/kg、腹腔内)単独、またはセルトラリン(0.16 mg/kg、腹腔内)とコネキシン阻害剤(メクロフェナム酸、0.4 mg/kg、腹腔内)の組合せの効果に関する定量的EEGによる前頭前野の電気的活性のスペクトル分析を示す。x-軸は、分析した周波数を示し、y-軸はFFT分析から得られた相対パワーを示す。スペクトル分析は、1時間目および2時間目に関する動物6匹の平均値として示される。
【図13】2回の記録時間のあいだに投与された用量に従うセルトラリン(0.16 mg/kg、0.8 mg/kgおよび4 mg/kg、腹腔内)単独、またはセルトラリン(0.16 mg/kg、腹腔内)とコネキシン阻害剤(メクロフェナム酸、0.4 mg/kg、腹腔内)の組合せに関する逆「U」字形のEEG効果の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の説明
細胞間情報伝達は、組織および臓器の恒常性を維持するために重要である。この伝達を確立するために、ギャップ結合部は細胞質を接続して、イオン(Ca+およびK+)、二次伝達物質(AMPc、GMPc、IP3)、いくつかの低分子代謝物(グルコース)の交換を可能にして、細胞間での電気的および代謝的カップリングを確実にする。ギャップ結合部は、形質膜に含有されるタンパク質チャネルによって形成され、かつコネキシン6量体によって形成される選択的透過性を有する結合部である(Meda P, Medecine/Sciences 1996; 12 :909-920)。
【0011】
コネキシンは、動物界の系統発生における多細胞生物の位置によらず、実際にあらゆる細胞タイプによって合成される形質膜の膜貫通タンパク質である。脊椎動物において、コネキシンを産生しないまれな細胞は、成体の横紋筋、精子、および循環中の血球である。多数の膜タンパク質とは異なり、コネキシンは、半減期が短く(3〜6時間)、グリコシル化されず、酵素活性を有しない。現在、少なくとも13個の別個のコネキシンが哺乳動物において同定されており、これらはヒトにおいて21個のイソ型に対応する。実際に、様々なタイプのコネキシンが複数の組織に存在しえて、細胞のほとんどが複数のコネキシンを合成する(Meda P, Medecine/Sciences 1996; 12 : 909-920)。細胞膜に達する前に、コネキシンは、6個の分子の群に集合して、コネキソンと呼ばれる中空の管状構造を形成し、これがゴルジ小胞によって形質膜に連結する。細胞の接触が確立した後、細胞のコネキソンは隣接する細胞のコネキソンと末端同士で整列して、長さが10 nmの連続した親水性のチャネルを形成する。この結合部チャネルは、細胞間空間にわたって接触する2つの細胞の細胞質のあいだの直接の接触を確立する。
【0012】
このように、2つの隣接する形質膜のあいだの六量体二重鎖の形成は、ギャップ結合部を構成する。ヒトでは、異なるコネキシンイソ型をコードする21個の遺伝子が存在し、ギャップ結合部の組成に関係するコネキシン単量体の異なる組み合わせが記述されている。同定されたコネキシンの半分が脳において発現され、より具体的に、コネキシン36(Cx36)は、電気的シナプスとして定義される境界面において、ニューロンによって主に発現されるように思われる。コネキシン36を欠損するマウスは、いかなるニューロン間のカップリングも有しないが、このことは、少なくとも1つのタイプの電気的シナプスにおけるこれらの特定のコネキシンの主たる役割を確認するために役立つ(Wellershaus K, Exp Cell Res. 2008)。
【0013】
電気的シナプスは、化学的シナプスほど速く情報を伝達しないが、相互性という特定の特徴を有する:阻害または興奮のいずれにおいてもそれらは多数の細胞の状態を局所的におよび両側性に同期化させる。ギャップ結合部は低域濾波器として作用して、細胞の状態のこの正常化プロセスは、それが多少長期間の変化を伴うことからより有効である。ニューロン間の電気的カップリングは、その特徴により、新皮質および海馬における振動現象および律動性出力において役割を果たすであろう。
【0014】
最後に、コネキシンは異なる脳の構造のあらゆる場所に存在して、電気的活動の振動に局所的に関係する。
【0015】
しかし、本発明者らは、最近、コネキシンがまた、脳の電気的活性の一般的調節において重要な役割も果たすことを証明した。意外なことに、それらが生理的に存在する場合、実際にこれらのタンパク質は、CNSの電気的活性に対して一般的な脱同期化的役割を有し、バースト現象を弱めておそらく中和する役割を有する。逆に、いわゆる「抗コネキシン」剤によるこれらの分子の阻害によって、測定される電気生理的活性を同期化させて、ゆえに増加させることが可能になる。
【0016】
脳波(EEG)において測定されるCNSの電気的活性の増加が、一定の条件下で向精神薬の治療効果を反映することは公知であることから(Galderisi S, Methods Find Exp Clin Pharmacol, 2002, 24, 85-89)、本発明者らは、向精神薬の投与に関連する治療効果に対するコネキシンの阻害効果を調べることを思いついた。
【0017】
その多数の結果は、抗コネキシン剤の投与に関連する脳の電気的活性の調整によって、それに物質が関連する向精神薬分子の用量便益を得ることができ、この調整に基づいてこの用量便益を評価するための方法を有することができることを明らかに証明している。ゆえに、抗コネキシン剤と向精神薬、たとえば抗うつ剤との組合せによって、(i)向精神薬分子の作用の特異性および治療効果を増加させることができ、および(ii)これらの向精神薬分子の活性量を低減させ、このように間接的な効果(望ましくない効果、機能不全、抵抗性)を低減させることができる。
【0018】
第一の局面に従って、本発明は、精神障害および/または神経変性障害に罹っている患者の処置においてコネキシン遮断剤と組合わされる可能性がある有効な向精神薬同等量を評価するための方法を提唱する。この組合わせは、より強い用量で投与された向精神薬単独の効果と同じ治療効果を得るが、有害作用がより少ないと意図される。
【0019】
本発明の状況において、向精神薬の「有効同等量」は、コネキシン遮断剤と組合せ投与した場合に、活性な薬理学的用量で投与した向精神薬単独の効果と類似または同一の生理的効果または薬理学的特色を誘導する向精神薬の用量を指す。
【0020】
加えて、向精神薬の「薬理学的活性量」は、ラット、マウス、ウサギ等などの実験動物に古典的に投与される向精神薬の用量を指す。そのような用量は、たとえばAnimal models in psychopharmacology. Olivier B, Slangen J, Mos J, eds. Birkhauser Verlag, Basel; 1991において提供される。この用量が公知でない場合、ヒトにおいて古典的に処方される薬理学的活性量を動物に入れ替えることによって向精神薬の薬理学的活性量を決定することが可能であり、"Medicaments psychotropes: consommation et pratiques de prescription en France metropolitaine. I. Donnees nationales, 2000", Lecadet J, Vidal P, Baris B et al.; Revue Medicale de l'Assurance Maladie volume 34 No. 2 / April-June 2003 "を調べることができる。同様に、薬理学的活性量が、有害作用が治療効果より顕著になることなく動物に投与されうる向精神薬の最高用量である実験的試験によって、この薬理学的活性量を決定することが可能である。この場合、薬理学的活性量は、用量を増加させた複数の向精神薬の用量を投与することによって、および各々の時間での薬物によってもたらされた効果を測定することによって累積的に決定されうる。
【0021】
本発明の状況において、「コネキシン遮断」剤は、コネキシンの機能的活性を、およびより一般的に任意のタイプの細胞内結合部を直接および/または間接的に阻害することができる、および/またはコネキシン型タンパク質を伴う任意の細胞活性を直接および/または間接的に機能的に阻害することができる、化学分子、タンパク質、タンパク質断片、または核酸(RNAi)である。そのような物質はまた、「抗コネキシン分子」とも呼ばれうる。
【0022】
向精神薬の有効同等量を評価するための方法は、コネキシンを遮断する物質による向精神薬の効果の増強の定量に基づく。この評価は、いくつかの段階で行われる:向精神薬に対して特異的な効果を特徴付けする段階、および組合せ製品の用量便益を測定する段階。第一段階は、異なる用量(薬理学的活性量および薬理学的活性量から減少させた用量)での、そして異なる用量で向精神薬分子に対して特異的な特色または標準的な特色を有する、向精神薬単独の効果を決定および定量する段階からなる。第二段階は、コネキシン遮断剤と組合せ投与された場合に向精神薬単独と同じ薬理学的特色を有する向精神薬の用量を決定する段階からなる。
【0023】
都合のよいことに、向精神薬と組合せて用いられるコネキシン遮断剤の用量は、実験的試験によって最初に決定される。この用量は実際に、有意な特異的薬理学的効果を生じることなく投与されうるコネキシン遮断剤の最高用量に対応する。この用量は、本発明に従う方法を実行する場合に組合せ効果を最適にするために調節されうる。
【0024】
本発明に従う向精神薬の有効同等量を評価するための方法には、以下の段階が含まれる:
a)試験される実験条件が存在するのと同数の動物群を有する段階、
b)向精神薬の薬理学的活性量を第一の動物群に投与する段階、および薬理学的活性量から減少させた用量を連続する動物群に投与する段階、
c)投与される異なる用量での向精神薬によって生じた効果を、群の動物において特徴付けする段階、
d)b)において用いられた用量で向精神薬と、コネキシン遮断剤とを含有する組合せ製品を新しい動物群に投与する段階、
e)d)において投与された組合せ製品の各々によって生じた効果を、群の動物において特徴付けする段階、
f)向精神薬の用量の有効同等量、すなわち、コネキシン遮断剤と組合せて投与した場合に、薬理学的活性量で投与された向精神薬単独の効果と同じ効果を生じる向精神薬の用量を決定する段階。
【0025】
向精神薬の有効同等量を評価するためのこの方法によってまた、有効同等量の向精神薬とコネキシン遮断剤とを組合せた組合せ製品と、薬理学的活性量で投与された向精神薬とのあいだの用量便益を評価することができる。
【0026】
この応用において、「用量便益」という用語は、向精神薬単独の薬理学的用量と向精神薬の有効同等量とのあいだの比を指す。言い換えれば、用量便益は、抗コネキシン剤と組合せることによって、処方された向精神薬の薬理学的用量がどれほど多く低減されうるかによって説明される。投与された向精神薬の用量(抗コネキシン分子と組合せた場合)のこの低減は、処置の効能に関していかなる結末も有しないが有害作用を低減させるであろう。
【0027】
このように、先に定義された用量便益は、以下のように記述されうる:
【0028】
本発明に従う評価法を行うために、動物群は同じ種の群であると理解される。その上、各々の動物群は、同じ群の動物において、薬物または組合せ製品単独の効果のみを測定するために、向精神薬の用量単独、または一定量の向精神薬と抗コネキシン剤とを含有する組合せ製品のいずれかのみを投与される。好ましくは、動物群は、同じ年齢および同じ性別である。これらの動物は、好ましくは実験動物、たとえばラット、マウス、ウサギ等である。
【0029】
試験される用量の数は、向精神薬または向精神薬とコネキシン遮断剤とを組合せる組合せ製品の薬理学的効果に従って決定されると理解される;一定の用量によって生じる薬理学的効果が存在しないまたは有意でない場合、それより低用量を用いる必要はない。
【0030】
薬物の投与または組合せ製品の投与は、脳内に行われうるが、好ましくは腹腔内で行われる。
【0031】
都合よくは、向精神薬および/または組合せ製品によって生じる効果は、異なるタイプの分析によって、特に電気生理的もしくは行動分析、もしくは血液マーカーもしくはLCRマーカー、または医学的造影によって決定されうる。好ましくは、この効果は、特に動物の脳波活性(EEG)を参照して、所定の刺激に起因する電気生理学的応答を参照することによって決定される。
【0032】
都合よくは、この評価法によって、組合せ製品の2つの要素を投与するために最適な時間スキーム(同時、個別または逐次的投与)を定義することができる。
【0033】
この評価法によってまた、コネキシン遮断剤の性質、向精神薬に対してのみならず、用いられる用量に関して選択することが可能となる。
【0034】
第二の局面に従って、本発明は、少なくとも1つのコネキシン遮断剤と向精神薬とを含有する新規組合せ製品、ならびに精神障害および/または神経変性障害を有する患者におけるその使用に関する。
【0035】
コネキシンによるギャップ結合部の遮断に関して、様々な分子が公知である。
【0036】
それらの中で、フェナメートファミリーには、以下の化合物が含まれる:メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルム酸、およびトルフェナム酸。これらの化合物は全て、非ステロイド性抗炎症活性を有するが、この活性は、そのギャップ結合部の遮断能の原因ではない。実際に、フェナメートが、それよりもコネキシンとの、またはコネキシンのコンフォメーション、およびゆえにその機能的役割に影響を及ぼす可能性があるタンパク質膜境界面との直接相互作用を確立することが示唆されている(Harks EG, The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 2001 Sep, 298(3) :1033- 41)。
【0037】
より一般的にメクロフェナム酸(MFA)として知られる2-[(2,6-ジ-クロロ-3-フェニル)アミノ]安息香酸は、非ステロイド性抗炎症剤であり、ギャップ結合部を可逆的に遮断するために最も有効である水溶性遮断剤として記述されているフェナメートクラスの末梢鎮痛剤、プロスタグランジン阻害剤である。加えて、メクロフェナム酸は、1つのタイプのコネキシンに対して特異的ではなく、ゆえに、多数の脳コネキシンを遮断するために有効である(Pan F, Vis Neurosciences 2007, Jul-Aug; 24(4):609-18)。
【0038】
グリシルレチン酸誘導体は、「エノキソロン」としても知られる18-β-グリシルレチン酸(BGA)、11-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ酵素を阻害することが知られているトリテルペノイドサポニンである18-α-グリシルレチン酸およびカルベノキソロン酸を指す。その上、これらの化合物は、ギャップ結合部を非常に有効に阻害することができる(Pan F, Vis Neurosciences 2007, Jul-Aug; 24(4):609-18)。
【0039】
キニーネファミリーのメフロキン(LARIAM)も同様に、ギャップ結合部に対して強いアンタゴニスト力を有する(Srinivas M, PNAS 2001, 98 : 10942-10947 ; Pan F, Vis Neurosciences 2007, Jul-Aug; 24(4):609-18)。
【0040】
ハロタンおよびイソフルランなどのいくつかの鎮痛剤は、迅速かつ可逆的ギャップ結合部遮断効果を有する(Burt JM, et al, Circ Research. 1989 ; 65 :829-37)。
【0041】
その上、オレイン酸の一級アミドであるオレアミド(シス-9-オクタデセンアミド)もまた、コネキシン分子43および32に対して阻害作用を有する(Guan X. et al, J. Cell Biol 1997; 139 : 1785-92)。
【0042】
加えて、α-D-グルコピラノースの天然の環状オリゴ糖であるシクロデキストリン(α-シクロデキストリン(α-CD)、β-シクロデキストリン(β-CD)、およびγ-シクロデキストリン(γ-CD))は、抗コネキシン特性を有することが証明されている(Locke D. et al, J. Biol Chem 2004; 279: 22883-92)。
【0043】
最後に、2-アミノエチルジフェニルボレート(2-APB)は、ギャップ結合部遮断剤として最近同定された化合物である(Bai D, J Pharmacol Exp Ther, 2006 Dec ; 319(3) :1452-8)。しかし、イノシトール1,4,5-三リン酸受容体のこの調整物質は、コネキシン26、30、36、40、45、および50などの一定のコネキシンをかなり特異的に標的とする(Bai D, J Pharmacol Exp Ther, 2006 Dec ; 319(3) : 1452-8)。
【0044】
同様に、細胞外コネキシンドメイン、すなわちギャップ結合部の機能性にとって重要であるドメインを遮断するために、他の分子が最近提唱されている。これは、特に、細胞外コネキシンドメインに対する特定の抗体(Hofer A et al, Glia 1998 ; 24 : 141-54 ; Meyer RA, J. Cell Biol. 1992 ; 119 : 179-89)、またはコネキシンの細胞外ループE1およびE2によって保存される特異的配列を模倣する低分子ペプチド(Dahl G. et al, Biophys J, 1994 ; 67 : 1816-22)を伴う;特に細胞外配列に対応するペプチドには、E1(Gap26)の保存されたパターンQPGおよびSHVRが含まれ、コネキシンのE2(Gap27)の保存されたパターンSRPTEKは、ギャップ結合部を遮断するためにより有効である(Chaytor AT et al, J. Physiol 1997 ; 503 :99-110)。
【0045】
本発明の状況において、コネキシン遮断剤は都合よくは以下から選ばれる:長鎖アルコール(たとえば、ヘプタノールおよびオクタノール)、フェナメート(たとえば、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルム酸、トルフェナム酸)、アリールアミノ安息香酸塩、アミノスルホン酸塩(たとえば、タウリン)、グリシルレチン酸誘導体(たとえば、18-β-グリシルレチン酸、18-α-グリシルレチン酸およびカルベノキソロン)、オレアミド(たとえば、シス-9-オクタデセンアミド)、またはテトラアルキルアンモニウムイオンおよびポリアミン(スペルミンおよびスペルミジンなどの)、キニーネ誘導体(メフロキンなどの)、2-ABP、麻酔剤(ハロタンまたはイソフルラン)、シクロデキストリン(α-シクロデキストリン(α-CD)、β-シクロデキストリン(β-CD)、およびγ-シクロデキストリン(γ-CD))、コネキシンの細胞外ドメインに対する抗体、またはこの特定のドメイン(特にGap26およびGap27)を模倣する保存されたパターンを有するペプチド。これらの異なる分子は以下の論文に具体的に記述される:Srivinas M, Connexins : a guide, Humana Press 2009, Chapter 8, pages 207-224 ; Srinivas M, Molecular Pharmacology 2003 Jun, 63(6) : 1389-97 ; Harks EG, The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 2001 Sep, 298(3) :1033-41;およびSalameh A, Biochimica et Biophysica Acta 1719 (2005) 36-58。
【0046】
好ましくは、コネキシン遮断剤は、メクロフェナム酸、18-β-グリシルレチン酸、カルベノキソロン、メフロキン、および2-APBが含まれる群に含まれ、より好ましくはメクロフェナム酸、18-β-グリシルレチン酸、およびカルベノキソロンが含まれる群に含まれる。
【0047】
これらの化合物は例として提供され、本発明は、コネキシンまたはギャップ結合部を直接または間接的に機能的に遮断する特性を有する任意の分子に関する。
【0048】
認識された抗コネキシン機能を有するいくつかの分子がまた、その抗炎症効果、その麻酔効果、またはプロスタグランジン恒常性に及ぼす効果についても記述されており、ゆえにそれら自身が中枢神経系に対して効果を有する。しかし、これらの分子が本発明において用いられる用量(非常に低用量)では、抗コネキシン活性以外の活性は、これらの効果に関係していない。加えて、CNSがコネキシンに特に富むことから、低用量を用いることによって、組織のコネキシン組成に応じてよりよい組織特異性が得られる。
【0049】
最後に、抗炎症分子は、プロスタグランジンシンターゼに対するその作用によって、コネキシンの構造改変を間接的に生じることができることに注目すべきである(コネキシン発現レベルまたはそのリン酸化の調節は、特にそれ自身が抗炎症剤の標的であるCox、NOおよびPGシンテターゼの活性レベルに応じて、PI3KおよびPKAによって起こる)。結合部におけるコネキシンの存在の低減という意味でのこの改変は、コネキシンの直接遮断と類似のコネキシンの機能的活性の低減を間接的に引き起こす。その結果、これらの分子の使用は、望ましい効果(コネキシンの遮断)を生じ、低用量での向精神薬との組合せ使用に対する障害とはならない(Yao J, Morioka T & Oite T. : Kidney Int. 2000; 57:1915-26. Yao J, Hiramatsu N, Zhu Y, et al. : J Am Soc Nephrol. 2005;16:58-67 ; Figueroa XF, Alvina K, Martinez AD, et al. : Microvasc Res. 2004;68:247-57 Alldredge BT.: J Clin Pathol. May 12 2008 ; Lai-Cheong JE, Arita K & McGrath JA. : J Invest Dermatol. 2007; 127: 2713-25、およびGiepmans BN.: Cardiovasc Res. 2004 ;62: 233-45)。
【0050】
その上、機能的ギャップ結合部の形成は、コネキシンのリン酸化によって調節されうる。実際に、6量体サブユニットの一定のタンパク質ドメインのリン酸化によって、チャネルを閉じることによってまたは膜での存在を低減させることによって(サブユニットの移動および半減期の改変)、リン酸化部位に従ってギャップ結合部の機能性の阻害が起こる(Scemes E, Glia 2008 Jan 15, 56(2): 145-53 ; Postma FR, J Cell Biol 1998 Mar 9, 140(5): 1199-209 ; Shaw RM, Cell 2007, February 9, 128(3):547-60; Fabrizi GM, Brain 2007 Feb, 130(Pt2):394-403)。
【0051】
このように、分子は、コネキシンのリン酸化レベルにより、間接的なギャップ結合部遮断効果を有しうる。それらは特に、リゾホスファチジン酸、トロンビン、およびエンドセリンなどのニューロペプチドである(Postma FR, J Cell Biol 1998 Mar 9, 140(5): 1199-209)。
【0052】
本発明の好ましい態様において、コネキシン遮断剤はコネキシンおよびギャップ結合部に対して間接的な効果を有し、これは以下からなる群より選ばれる:リゾホスファリジン酸、トロンビン、およびエンドセリンなどのニューロペプチド。
【0053】
本発明の好ましい態様において、コネキシン遮断剤は、麻酔剤でも抗炎症剤でもなく、またはプロスタグランジン合成阻害剤でもない。この好ましい態様に従って、コネキシン遮断剤は、2-アミノエトキシジフェニルボレート(2-APB)である。
【0054】
コネキシン遮断剤は、精神障害および/または神経変性障害に罹っている患者を処置するために、医師によって処方される向精神薬の治療効果を都合よく改善することができる。動物において、この改善は、本発明の第一の目的である有効同等量を評価するための方法によって測定されうる。
【0055】
「向精神薬」とは、一定の脳の生化学的および生理学的プロセスを改変することによって、主に中枢神経系の状態に作用する任意の物質を指す。
【0056】
本発明は、組合せ製品において、コネキシン遮断剤によって生じた治療上の便益が特定の向精神薬の使用に対して特異的ではなく、向精神効果を有する多数の分子に同様に当てはまるという点において先行技術とは異なる。
【0057】
好ましくは、向精神薬は、ドーパミン作動性、GABA作動性、アドレナリン作動性、アセチルコリン作動性、セロトニン作動性、オピオイド作動性、アデノシン作動性、イオンチャネル型、ヒスタミン作動性、IMAO、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ、DOPAデカルボキシラーゼ、およびノルアドレナリン向精神エフェクターから選ばれる。
【0058】
「エフェクター」という用語は、1つまたは複数の神経受容体を活性化または阻害して、ゆえに受容体のアゴニストまたはアンタゴニストでありうる任意の物質を指す。
【0059】
好ましい態様に従って、向精神薬は、ロキサピン、アセプロマジン、メチルフェニデート、アマンタジン、ペルゴリド、リスリド、ブロモクリプチン、ロピニロール、アポモルフィン、アリピプラゾール、スルピリド、アミスルプリド、スルトプリド、チアプリド、ピモジド、リスペリドン、ハロペリドール、ペンフルリドール、ズクロペンチキソール、またはブプロピオンなどのドーパミン作動性エフェクターである。
【0060】
もう1つの特異的態様に従って、向精神薬は、チアガビン、トピラメート、クロラゼペート、ジアゼパム、クロナゼパム、オキサゼパム、ロラゼパム、ブロマゼパム、ロルメタゼパム、ニトラゼパム、クロチアゼパム、アルプロゾラム、エスタゾラム、トリアゾラム、ロプラゾラム、エチフォキシン、メプロバメート、ゾピクロン、ゾルピデム、フェノバルビタール、フェルバメート、またはビガバトリンなどのGABA作動性エフェクターである。
【0061】
もう1つの特異的態様に従って、向精神薬は、ジヒドロエルゴタミン、モダフィニル、アドラフィニル、ミルタザピン、およびオキセトロンなどのアドレナリン作動性エフェクターである。
【0062】
もう1つの特異的態様に従って、向精神薬は、スルブチアミン、トロパテピン、またはトリヘキシルフェニジルなどのアセチルコリン作動性エフェクターである。
【0063】
もう1つの特異的態様に従って、向精神薬は、クロルプロマジン、トリミプラミン、クロザピン、オランザピン、シアメマジン、フルペンチキソール、ネフォパム、フルボキサミン、クロミプラミン、セルトラリン、フルオキセチン、シタロプラム、エスシタロプラム、パロキセチン、アミトリプチリン、デュロキセチン、ベンラファキシン、ブスピロン、カルピプラミン、ゾルミトリプタン、スマトリプタン、ナラトリプタン、インドラミン、エルゴタミン、酒石酸エルゴタミン、ピゾチフェン、ピパンペロン、メチセルジド、ピゾチリン、チアネプチン、ミルナシプラン、アミトリプチリン、トリミプラミン、ビロキサジン、チアネプチン、ヒペリクム、およびリチウムなどのセロトニン作動性エフェクターである。
【0064】
もう1つの特異的態様に従って、向精神薬は、ナルブフィン、ブプレノルフィン、ペチジン、コデイン、トラマドール、モルヒネ、ヒドロモルフォン、オキシコドン、メタドン、デクストロプロポキシフェン、メペリジン、フェンタニル、ナルトレキソン、または塩酸モルヒネなどのオピオイド作動性エフェクターである。
【0065】
もう1つの特異的態様に従って、向精神薬は、カルバマゼピンまたはオクスカルバゼピンなどのアデノシン作動性エフェクターである。
【0066】
もう1つの特異的態様に従って、向精神薬は、フルナリジン、エトスクシミド、レベチラセタム、ラモトリジン、フォスフェニトイン、またはフェニトインなどのイオンチャネル型エフェクターである。
【0067】
もう1つの特異的態様に従って、向精神薬は、ニアプラジン、ヒドロキシジン、またはドキシラミンなどのヒスタミン作動性エフェクターである。
【0068】
もう1つの特異的態様に従って、向精神薬は、モクロベミド、セレジリン、またはイプロニアジドなどのモノアミンオキシダーゼエフェクターである。
【0069】
もう1つの特異的態様に従って、向精神薬は、エンタカポンまたはトルカポンなどのカテコール-O-メチルトランスフェラーゼエフェクターである。
【0070】
もう1つの特異的態様に従って、向精神薬は、ベンセラジドまたはカルビドーパなどのDOPAデカルボキシラーゼエフェクターである。
【0071】
もう1つの特異的態様に従って、向精神薬は、ミアンセリン、デシプラミン、モクロベミド、またはブプロピオンなどのノルアドレナリン作動性エフェクターである。
【0072】
もう1つの特異的態様に従って、向精神薬は、ガバペンチンまたはカプトジアミンなどの辺縁系に作用するエフェクターである。
【0073】
なおより好ましくは、選ばれる向精神薬分子は、クロザピン、ジベンゾジアゼピン誘導体、またはセロトニン作動性エフェクターであるパロキセチン、エスシタロプラム、セルトラリンもしくはベンラファキシン、またはクロルプロマジン、トリミプラミン、オランザピン、シアメマジン、フルペンチキソール、ネフォパム、フルボキサミン、クロミプラミン、フルオキセチン、シタロプラム、アミトリプチリン、デュロキセチン、ブスピロン、カルピプラミン、ゾルミトリプタン、スマトリプタン、ナラトリプタン、インドラミン、酒石酸エルゴタミン、ピゾチフェン、ピパンペロン、メチセルジド、ピゾチリン、もしくはチアネプチンなどの他の任意のセロトニン作動性エフェクターである。
【0074】
なおより好ましくは、選ばれる向精神薬分子は、モダフィニル、アドレナリン作動性エフェクターであるジフェニルメタン誘導体、またはジヒドロエルゴタミン、アドラフィニル、ミルタザピン、もしくはオキセトロンなどの他の任意のアドレナリン作動性向精神性エフェクターである。
【0075】
このように、さらにより好ましくは、向精神薬分子は以下から選ばれる:モダフィニル、クロザピン、パロキセチン、ジアゼパム、ベンラファキシン、エスシタロプラム、ブプロピオン、またはセルトラリン。
【0076】
好ましい態様において、向精神薬分子は、以下から選ばれる抗うつ剤である:モクロベミド(MOCLAMINE)、アミトリプチリン(LAROXYL)、クロミプラミン(ANAFRANIL)、ミルナシプラン(IXEL)、エスシタロプラム(SEROPLEX)、シタロプラム(SEROPRAM)、フルオキセチン(PROZAC)、パロキセチン(DEROXAT)、フルボキサミン(FLOXYFRAL)、セルトラリン(ZOLOFT)、ミトラパジン(NORSET)、デュロキセチン(Cymbalta)、またはベンラファキシン(EFFEXOR)およびブプロピオン(ZYBAN)。
【0077】
さらにより好ましい態様において、向精神薬分子は、以下が含まれる群から選ばれる抗うつ剤である:パロキセチン、ベンラファキシン、エスシタロプラム、ブプロピオン、およびセルトラリン。
【0078】
第三の局面に従って、本発明は、精神障害および/または神経変性障害を有する患者においてこの製品を組合せて、同時に、個別に、または逐次的に用いることにも関する。
【0079】
この処置を必要とする患者は、以下からなる群に含まれる精神障害および/または神経変性障害を有してもよい:うつ、双極性障害、てんかん、統合失調症、全身不安、うつ、ストレス状態、パニック、恐怖症、強迫性障害、行動障害、免疫系抑制、疲労および疼痛に関連する症状、慢性疲労、筋痛症、ならびに自閉症、注意欠陥、多動、過食症などの摂食障害、食欲不振、肥満、感情鈍麻などの心的障害、偏頭痛、疼痛、心血管疾患、神経変性障害、および抑うつ不安に関連する障害(アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病)、薬物依存性および薬物嗜癖などの他の障害。
【0080】
同時に使用する場合、処置の2つの成分は患者に同時投与される。本発明のこの態様に従って、2つの成分は、混合物の形で共に包装されうるか、または個別に包装されて自然に混合された後、患者に共に投与される。より一般的に2つの成分は、同時であるが個別に投与される。特に、2つの成分の投与経路は異なってもよい。投与はまた、異なる部位で行われうる。もう1つの態様において、2つの成分は逐次的に投与されるか、またはたとえば同じ日に時間をあけて、もしくは数時間から数週間の範囲の間隔で、または数ヶ月もの間隔で投与される。
【0081】
第四の局面に従って、本発明は、精神障害および/または神経変性障害に罹っている患者を処置するために、向精神薬の前、同時、または後に投与されることが意図される薬物を調製するための少なくとも1つのコネキシン遮断剤を用いることを伴う。
【0082】
第五の局面に従って、本発明には、精神障害および/または神経変性障害を有する患者における向精神薬の効果を調整および/または増強するために、少なくとも1つのコネキシン遮断剤を用いることが含まれる。
【0083】
この場合の「調整する」という用語は、抗コネキシン剤の前、同時、または後に投与される向精神薬の直接または間接的な効果に対する、特に有害作用に対する増強または拮抗による介入を意味する。
【0084】
この場合の「増強する」という用語は、抗コネキシン剤の前、同時、または後に投与される向精神薬の効果を有意に増加させることを意味する。このように、向精神薬と抗コネキシン剤の組合せによって、向精神薬の用量を低減させることができ、ゆえに向精神薬の有害作用を制限するおよび/または失敗および中止の効果を低減させることができる。
【0085】
ゆえに、本発明は、向精神薬の用量を低減させるためおよび/または向精神薬の有害作用を制限するため、および/または失敗および中止の効果を低減するために、少なくとも1つのコネキシン遮断剤を用いることに関する。
【0086】
最後の局面に従って、本発明は、以下を患者に投与する段階が含まれる、精神障害および/または神経変性障害を有する患者を処置するための方法であって:
a)向精神薬から選択される少なくとも1つの活性物質、および
b)少なくとも1つのコネキシン遮断剤、
ならびに製品a)およびb)が同時に、個別に、または時間的に広がって投与される方法を記述する。
【実施例】
【0087】
脳波による脳の領域の分析は、今日、中枢神経系に対する薬物の効果を特徴付けするために信頼できる非常に感度の高い技術であると考えられている。脳波記録法(EEG)は、しばしば脳波と呼ばれる線の形で表される、頭皮に配置された電極による脳の電気的活性の測定である。心臓の機能を試験することが可能である心電図と同様に、EEGは、診断的神経学的目的のために、または認識的神経科学研究目的のいずれかのために、脳、特に大脳皮質の経時的な神経生理的活性に関する情報を提供する、無痛で非侵襲性の検査である。EEGの基礎での電気シグナルは、各周波数に関して、多数のニューロンによって産生されたシナプス後の同期した活動電位の合計の結果である。
【0088】
各周波数に関連する電気的パワーは、個体の行動または投与された薬物の関数として他の周波数の電気的パワーとは無関係に変化しうることが証明されている(Dimpfel W, Neuropsychobiology. 1986;15(2): 101-8)。薬物の投与後、患者の脳波は変化して、各周波数に関連する電位の分布は、薬物のエレクトロファーマコグラム(electropharmacogram)を構成する。一般的に、エレクトロファーマコグラムは、異なる疾患のために処方された薬物に関して異なり、薬物が同じ病態を処置するために意図される場合には類似である(Dimpfel W, British Journal of Pharmacology 2007, 152, 538-548)。150より多くの薬物に対応するエレクトロファーマコグラムが決定されている(たとえば、鎮痛剤、抗うつ剤、精神遮断剤、刺激剤、精神安定剤、鎮静剤、および麻薬)。今日、これらの多数の試験の後、エレクトロファーマコグラムの決定および分析は、薬物の薬理学的効果を測定するための信頼できる技術であると見なされる。加えて、EEGのパラメータにより、多数の化合物の臨床相において開発に関する定量的情報を得ることが可能となる(Mandema & Danhof, Clin. Pharmacokinet. 1992, 23, 191-215)。EEG電位の測定はまた、投与された薬物の細胞受容体を同定するためにも用いられうる(Parker TJ, British Journal of Pharmacology 2001, 132, 151-158)。EEGは、脳の電気的活性の測定であり、脳波データを表すための異なるモードが存在する。最初のモードは、線の表示および特徴的な波動現象の同定である。この定性的データは、電気的活性の明らかに決定されたエピソードに関する情報を与えるが、電気的活性の定量的局面に関する情報を提供しない。このため、実験者は、フーリエ変換シグナルの分析に基づく定量的EEGを用い、これによって所定の周波数に関する経時的なパワー値を得ることができる。このパワー値は対照値に関連して、これによって所定の周波数に関する経時的なパワーの改変を決定することができる。この値を、実験に従って変動する期間によって平均してもよい。これらのパワーの経時的な変動は、著者らによって、生理的または病理的律動(δ(1〜4 Hz)、θ(4.5〜8 Hz)、α(8.5〜12 Hz)、β(12.5〜24 Hz)およびγ(>24 Hz))に対応する特異的周波数変化に対する平均値の形で、またはヘルツ毎の相対パワーのヒストグラムの形のいずれかで表示される可能性がある。これらの2つの表示様式は、厳密に同等であり、1つは他方から誘導される(EEG : Bases neurophysiologiques, principes d'interpretation et de prescription Jean Vion-Dury, France Blanquet. Editeur: MASSON ; Collection : Abrege Massonを参照されたい)。以下に紹介する実施例では、ヘルツ毎の相対パワーの表現が選ばれている。
【0089】
たとえば非定型的抗精神病薬、特にクロザピンに関して、その投与は、経時的に二相性のエレクトロファーマコグラムを引き起こすことが証明されている:1時間目のあいだ、EEG電位は超低周波数(0.8〜4.5 Hz)(δ律動)および7〜9.5 Hz(α律動I)で非常に高く、4.75〜6.75 Hz(θ律動)および18.5 Hzより高い(β律動)周波数では強度が低く、これは陽性の臨床応答の徴候である(Galderisi S, Methods Find Exp Clin Pharmacol, 2002, 24, 85-89)。2時間目において、EEG電位は8〜15 Hzの範囲の周波数で平均強度であり、これは錐体外路の有害作用を伴いうる。実際に、2時間目における7〜9.5 Hzおよび12.75〜18.50 Hzの周波数に関するEEG電位が平均強度であることは、有害作用が存在するであろうことを意味する(Dimpfel W, British Journal of Pharmacology 2007, 152, 538-548)。
【0090】
プロトコール:
− 電極の予め埋め込み
6匹の意識のあるWistar系ラットの群に6個の双極性の両側性の電極(前頭2個、海馬前方2個、海馬後方2個)を予め埋め込んだ。
【0091】
− 注射
処置毎にラット6匹の円形の組み合わせによって、異なる処置を行った(向精神薬単独、抗コネキシン処置単独、抗コネキシン+向精神薬組合せ処置)。メクロフェナム酸(Sigma)の注射は、異なる用量でのゆっくりとした髄膜下注射(80 mg/kg、4.5 pg/秒)、または腹腔内注射によって行われる。グリシルレチン酸(Sigma)の注射は、髄膜下注射(80 mg/kg)によって行われる。クロザピン(Sigma)の注射は、腹腔内(0.2 mg/kg)によって行われる。パロキセチン(Sigma)の注射は腹腔内(0.5 mg/kg)によって行われる。モダフィニル(Cephalon)の注射は、腹腔内(125 mg/kgおよび250 mg/kg)によって行われる。
【0092】
− EEGの測定
EEG測定は、意識のあるラット(予め埋め込んで慣れさせた)の異なる群について、注射後2時間の記録によって行われた。フーリエ変換(FFT)によって行われるスペクトル分析によって、ヘルツ毎および秒毎の相対パワーを得ることができる。次に、FFTデータを分毎に平均して、厳密に同一の実験条件下で記録する前のその日に得られた溶媒対照に関連させる。次に、左右の前頭前野の相対スペクトルパワーを5分間毎に平均して、5分間の繰り返し12個の群によって平均して時間毎に表示する。
【0093】
− 統計分析:
実施例において表される、個々に投与された異なる薬物(向精神薬単独または抗コネキシン剤単独)の効果に関する相対的定量的EEG分析から得られたデータを、三元配置分散分析(ANOVA)による統計分析に供した:「周波数」(Hz)、「時間」(12個の平均された5分間の繰り返しによる1時間目および2時間目)、および「動物」(各処置に関して異なる6匹の動物)。実施例において紹介した向精神薬および抗コネキシン剤の組合せに関して、第四のANOVA要因を導入した:「抗コネキシン剤の組合せ」。対照(向精神薬の溶媒)に対する向精神薬単独、または単独で投与された向精神薬に対する抗コネキシン剤と組合せた向精神薬(相対パワーの増加または減少のために)に関する所定の周波数の相対パワー改変の有意性閾値はP<0.05の値で選ばれた。
【0094】
実施例1:コネキシン阻害剤の効果
異なる脳構造のEEG活性におけるコネキシンの影響を調べるための一連の実験を行った。このことに関して、脳内のコネキシンは、コネキシン阻害剤であるメクロフェナム酸(MFA)の直接髄膜下へのゆっくりとした注射によって阻害された。同じ実験条件において、もう1つの抗コネキシン剤であるグリシルレチン酸(BGA)の脳内投与の効果を調べた。
【0095】
コネキシン阻害剤(MFA)を脳内に処置したラットにおける脳の電気的活性の分析は、1時間目から2時間目に及ぶ、周波数8〜10 Hzに関するEEG電位の有意な増加、およびゆえに前頭前野の脳活性(140%)の同期化の有意な増加を示す。類似の有意な改変は、もう1つの抗コネキシンクラス(グリシルレチン酸)の脳内注射において観察される(図1)。
【0096】
この同期化は、コネキシンが電気的活性を脱同期化する生理的役割を有することを示している。調べた異なる領域に及ぼすコネキシン阻害剤の全体的な効果および脳においてコネキシンを含む結合部が遍在することを考慮すると、これらの実験結果によって、文献におけるデータを再解釈することができ、および脳の電気生理的活性の標準化におけるコネキシンの報告されていない役割を提唱することができる。この標準化は、電気的活性のバースト現象を制限して、高度に相互接続された系の無秩序な機能不全を調整および減衰させると意図されるであろう。
【0097】
実施例2:コネキシン阻害剤と組合せた非定型的抗精神剤の効果
脳の活性においてコネキシンが一般的な調整的役割を果たすという仮説を調査するために、抗コネキシン分子と組合せた薬理学的処置の電気生理的結果を調べた。
【0098】
この状況において、コネキシン阻害剤であるメクロフェナム酸(MFA)と組合せたクロザピンの効果を調べた。クロザピンは、統合失調症に適応される非定型的抗精神剤であり、典型的な複雑なEEG活性化スペクトルおよび治療用量での有害作用の大きなリスト(体重増加、骨髄の減少および血液中の白血球数の減少)を有するセロトニン作動性およびドーパミン作動性受容体アンタゴニスト、またはアドレナリン作動性、コリン作動性、およびヒスタミン作動性アンタゴニストである(Parker TJ, British Journal of Pharmacology 2001, 132, 151-158)。
【0099】
2.1 クロザピンの効果
第一の相において、実験モデルが公表されたデータと一致することを確認するために、実験モデルの有効性を確認した(Dimpfel W, British Journal of Pharmacology 2007, 152, 538-548, Parker TJ, British Journal of Pharmacology 2001, 132, 151-158)。ゆえに、クロザピン単独の効果の記録を得た。
【0100】
EEGのスペクトル分析は、抗精神剤単独の処置においてEEG電位の有意な増加を示し、ゆえに、8〜10 Hzの周波数に関して前頭前野脳活性の同期化の増加(200%)、および16〜20 Hzの周波数に関してより低い程度の同期化の増加を示し、これは1時間目から2時間目まで続く(図2)。
【0101】
これらの観察は、文献において報告されている非定型的抗精神剤の特徴的な効果と完全に一貫する(Dimpfel W, British Journal of Pharmacology 2007, 152, 538-548, Parker TJ, British Journal of Pharmacology 2001, 132, 151-158)。
【0102】
2.2 クロザピンと抗コネキシン剤の組合せの効果
第二の相において、クロザピンの電気生理的効果に及ぼすコネキシン結合系の影響を調べた。
【0103】
抗精神剤(クロザピン)とコネキシン阻害剤(MFA)とを組合せる処置において、EEGのスペクトル分析は、1時間目に、8〜10 Hzの周波数に関して前頭前野脳活性の同期化の有意な増加(260%)、および16〜20 Hzの周波数に関してより低い程度の同期化を示す。この同期化の有意な増加は、クロザピンのスペクトルに対応して、ゆえに、コネキシン結合系を遮断することによるクロザピンの効果の増強に対応する。抗コネキシン剤によるクロザピンの効果がこのように強化される機序は、経時的に制御される。実際に、2時間目には、抗コネキシン効果のみが持続する(図2)。
【0104】
加えて、有意な周波数(たとえば8 Hzの周波数)に関する分析に焦点を当てることによって、観察されたクロザピンの効果の強化は、振動効果の振幅のかなりの減衰を伴うが(図3)、クロザピン単独による処置は、高振幅の波動を引き起こす(図3)。
【0105】
このように、コネキシン結合系の遮断によって引き起こされる波動の減衰は、コネキシンが、電気生理活性におけるこれらの短い波動の確立において役割を果たす可能性があることを意味している。これらの波動は、クロザピンによって生じ、コネキシンによって制御される迅速な活性キンドリング機序に対応するであろう。
【0106】
最後に、これらの結果は、コネキシン結合系が電気生理的活性の調整的役割(全体的な強度ならびに局所および時間に基づく波動に対する)を果たすという仮説を確認する。その上、これらの知見は、コネキシン阻害剤とのその組合せによる、これまで報告されていない抗精神効果の調整を証明している。この調整は、より短い期間で抗精神効果が有意に増強および安定化されることによって明らかとなる。抗精神剤の効果のこの増強は、クロザピンのより高用量について得られた効果と同一であるが、作用の持続に対して制御するであろう。
【0107】
実施例3:投与経路の比較
MFA阻害剤の中枢対末梢(脳内または腹腔内)の投与経路に従うコネキシンの遮断の電気生理学的結果を比較した。
【0108】
末梢および中枢の投与経路を評価するEEGのスペクトル分析は、1時間目に類似の周波数範囲に関して前頭前野の脳活性の同期化と同等の有意な増加を示す。しかし、同期化の有意な増加は、末梢投与では2時間目にも持続するが、中枢投与の場合には減少する。2時間目でのこの差は、投与経路の薬物動態に関連している(図4)。
【0109】
最後に、これらの予備的な結果は、脳内または末梢であれ、投与経路が、振幅に限って効果を改変することを示している。
【0110】
実施例4:腹腔内に投与された抗コネキシン剤の異なる用量の効果
MFA阻害剤の末梢に投与された用量に従うコネキシンの遮断の電気生理学的結果を比較した(用量効果)。
【0111】
末梢投与された用量を評価するEEGのスペクトル分析は、用量に応じて異なる周波数範囲の同期化に重要な有意な変化を示す。前頭前野の脳活性の同期化に都合がよいこれらの改変は、1時間目に出現して、用量に応じて不定に2時間目まで続く。コネキシンの阻害によるこの同期化は、コネキシンの生理的脱同期化特徴を確認する(図5)。用量に従うこれらの重要な同期化は、コネキシンの定量的表示(中枢神経系のネットワーク、たとえばコリン作動性、ノルアドレナリン作動性、セロトニン作動性等に従う多様なギャップ結合部の数)、および/または定性的表示(所定の用量での阻害剤に関する異なるコネキシンイソ型の親和性)による可能性がある。
【0112】
全体として、これらの予備的な結果は、腹腔内投与された抗コネキシン剤の特異的効果が用量に依存することを示している。このことは、コネキシンによるこの調整系が、たとえコネキシンが脳に汎在するとしても、脳において局所特異性(イソ型または量において)を有することを示しているように思われ、このことは文献と一貫する(Fukuda T., Neuroscientist 2007 ; 13(3)199-207)。このことはまた、向精神薬によって特異的に標的とされる系(コリン作動性、セロトニン作動性、ノルアドレナリン作動性、GABA作動性等)に従って、その構造およびその化学特性に従って、ならびにその薬理学(半減期、代謝、クリアランス)に従って、抗コネキシン剤の用量を明らかに適合させるべきであることを意味している。
【0113】
最後に、この用量効果によって、異なる向精神薬の効果の増強を調査するために適合する最小の実際のEEG効果(1時間目には有意な改変がなく、2時間目でわずかに有意に増加する)を引き起こすMFAの腹腔内投与量を同定することができる。このMFA用量は0.4 mg/kg(抗炎症効果のために用いられる用量より10〜25倍低い用量)であり、実施例5および6において記述される増強例のために用いられる用量であろう。
【0114】
実施例5:コネキシン阻害剤と組合せた1つめの抗うつ剤の効果
脳の活性においてコネキシンが調整的役割を果たすという仮説の評価を継続するために、抗コネキシン分子と組合せた1つめの薬理学的抗うつ剤処置の電気生理的結果を調べた。
【0115】
この状況において、コネキシン阻害剤であるメクロフェナム酸(MFA)と組合せたパロキセチンの効果を調べた。パロキセチンは、急性または慢性のうつ病エピソードに適応される抗うつ剤であり、選択的セロトニン再取り込み阻害剤の群のフェニルピペリジンに由来して、治療用量で有害作用の大きなリスト(感情鈍麻、瞳孔散大、悪心、奇形発生、傾眠、頭痛、体重および食欲の変化、性行動の変化、うつおよび不安感情の増加、ドライマウス、攻撃的行動(特に小児)、先天的奇形の可能性、紅斑、精神運動不安定性、痒み、枯渇(ナトリウム)、発汗、自殺願望、筋虚弱、筋痛、異常な攻撃レベル、セロトニン症候群)を有する。
【0116】
5.1 パロキセチンの効果
第一の相において、意識のあるラットにおけるパロキセチンのEEG効果に関する引用文献のデータが利用できないことから、実験モデルを評価した。しかし、パロキセチンの効果、特に睡眠-覚醒リズムに関する様々な試験が、急性の処置のためのパロキセチンの薬理学的用量を提供しており、これらは一般的に2〜5 mg/kgである(Sanchez C, Pharmacol Biochem Behav. 2007 Mar; 86(3):4 68-76)。
【0117】
ゆえに、パロキセチン単独の効果の記録を、腹腔内に投与された0.5 mg/kg用量(ラットにおける急性の処置において通常用いられる用量より4〜10倍低い)で得た。
【0118】
EEGのスペクトル分析は、抗うつ剤単独の処置において前頭前野における相対パワーの有意な増加を示し、ゆえに1時間目で8〜10 Hzで前頭前野脳活性の同期化の増加(およそ200%)ならびに周波数2〜3 Hzおよび18〜19 Hzでのより低い程度の同期化の増加を示し、2時間目には周波数8〜10 Hzで前頭前野脳活性の同期化の増加(およそ300%)ならびに周波数2〜3 Hzおよび18〜19 Hzでのより低い程度の同期化の増加を示す(図6)。
【0119】
5.2 パロキセチンおよび抗コネキシン剤の組合せ効果
第二の相において、パロキセチンの脳波効果に対するコネキシン結合系の影響を調べた。
【0120】
抗うつ剤(パロキセチン)とコネキシン阻害剤(MFA)とを組合せる処置において、EEGのスペクトル分析は、2時間目に周波数8〜10 Hzで前頭前野脳活性の同期化の有意な増加(600%)、ならびに周波数2〜3 Hzおよび18〜19 Hzでより低い程度の同期化の増加を示す。この同期化の有意な増加は、パロキセチン単独のスペクトルに完全に対応し、ゆえにコネキシン結合系の遮断によるパロキセチンの効果のかなりの増強に対応する。加えて、抗コネキシン剤によってパロキセチンの効果が強化されるこの機序は、パロキセチン単独と同じ時間経過をたどる。実際に、パロキセチン単独または抗コネキシン剤との組合せは、2時間目に増加して、これは投与後数時間で徐々に消失するはずであるEEG効果を引き起こす(図6)。
【0121】
このように、1時間目で最大EEG活性を引き起こすクロザピンとは異なり、パロキセチンは、より長時間持続して、発生までにより時間がかかる効果を生じる。ゆえに、抗コネキシン剤による増強は、調べた向精神薬分子の時間経過特性(異なる化学的性質の、異なる系を標的化する、および非常に異なる適応を有する特性)を保持して、1つの神経伝達系に限定されないコネキシンによる調整システムの考え方を強化する。
【0122】
全体として、これらの結果は、コネキシン結合系が電気生理活性の調整的役割(全体的な強度および時間経過)を果たすという仮説を確認する。
【0123】
最後に、これらの観察は、抗うつ剤とコネキシン阻害剤との組合せによる、これまで報告されていない抗うつ効果の調整を示している。この調整は、薬理学的用量より4〜25倍低い用量で抗うつ剤効果が増強されることによって明らかとなる。ゆえに、抗コネキシン剤によるこの抗うつ効果の増強によって、抗コネキシン剤に対して特異的な効果を最小限にしながら、抗うつ剤の用量を4〜25倍低減させることができるであろう。ゆえに、パロキセチンと抗コネキシン剤の組合せに関して測定された用量便益は、4より大きいであろう。
【0124】
実施例6:コネキシン阻害剤と組合せた精神刺激剤の効果
脳の活性においてコネキシンが全般的な調整的役割を果たすという仮説の評価を継続するために、抗コネキシン分子と組合せた精神刺激剤による薬理学的処置の電気生理学結果を調べた。
【0125】
この状況において、コネキシン阻害剤であるメクロフェナム酸(MFA)と組合せたモダフィニル(provigil)の効果を調べた。モダフィニルは、ナルコレプシーまたは特発性過眠症の処置のために適応される精神刺激剤であり、治療用量で有害作用のリスト(興奮、攻撃性、不眠症、食欲不振、頭痛、悪心、胃痛、アレルギー性皮膚発疹)を有するノルアドレナリン再取り込み阻害剤である。
【0126】
6.1 モダフィニルの効果
第一の相において、実験モデルを、特に一般的に100〜350 mg/kgである、急性の処置におけるモダフィニルの薬理学的用量を提供する公表されたデータによって評価した(Sebban C, British Journal of Pharmacology (1999) 128, 1045-1054, De saint Hilaire Z., Neuroreport. 2001 Nov 16;12(16): 3533-7)。ゆえに、モダフィニル単独の2つの用量(125および250 mg/kg)の効果の記録を得た。
【0127】
EEGのスペクトル分析は、精神刺激剤単独による処置に関して、周波数2〜5 HzでのEEG電位の有意な増加を示し、ゆえに前頭前野の脳活性の同期化の増加(250 mg/kg用量に関して300%および125 mg/kg用量に関して120%)を示し、および周波数10〜25 HzでEEG電位の有意な減少を示し、ゆえに125 mg/kg用量に関して前頭前野の脳活性の脱同期化(10〜30%)を示し、および250 mg/kg用量に関してより低い程度の脱同期化を示し、これは1時間目に起こり、2時間目に増加する(図7)。
【0128】
これらの観察は、文献において報告された特徴的な精神刺激剤の効果と適合性である(Sebban C, British Journal of Pharmacology (1999) 128, 1045-1054, De Saint Hilaire Z., Neuroreport. 2001 Nov 16;12(16):3533-7)。
【0129】
6.2 モダフィニルと抗コネキシン剤の組合せ効果
第二の相において、モダフィニルの低用量(125 mg/kg)での電気生理効果に及ぼすコネキシン結合系の影響を調べた。
【0130】
精神刺激剤(モダフィニル)とコネキシン阻害剤(MFA)とを組合せる処置において、EEGのスペクトル分析は、周波数2〜5 Hzでの前頭前野の脳活性の同期化の有意な増加(300%)、および周波数10〜25 HzでのEEG電位のより低い程度の有意な低減を示し、ゆえに前頭前野の脳活性の脱同期化を示し、これは1時間目に起こり、2時間目に増加する(図7)。これらのEEG改変は、高用量(250 mg/kg)でのモダフィニル単独のスペクトルに完全に対応して、ゆえにコネキシン結合系を遮断することによる、モダフィニルの効果の増強に対応する。加えて、クロザピンおよびパロキセチンと同様に、抗コネキシン剤によるモダフィニルの効果のこの強化機序は、より高用量でのモダフィニル単独と同じ時間経過をたどる。非常に異なるタイプの向精神薬の時間経過特性を保持する抗コネキシン剤によるこの増強は、1つの神経伝達系に限定されないコネキシンによる調整系の考え方を再度確認する。
【0131】
全体として、これらの結果は、コネキシン結合系が電気生理活性の調整的役割(全体的な強度および時間経過に対する)を果たすという仮説を確認する。その上、これらの観察は、コネキシン阻害剤との組合せによるこれまでに報告されていない精神刺激剤効果の調整を示す。この調整は、低用量で精神刺激剤効果が増強されることによって明らかとなり、高用量での効果を完全に模倣する。ゆえに、抗コネキシン剤による精神刺激剤の効果の増強により、抗コネキシン剤に対して特異的ないかなる効果もなく、精神刺激剤の用量を少なくとも2倍低減させることができる。ゆえに、モダフィニルと抗コネキシン剤の組合せに関して測定された用量便益は、少なくとも2であろう。
【0132】
実施例7:コネキシン阻害剤と組合せた抗不安薬の効果
脳の活性に対してコネキシンが全般的な調整的役割を果たすという仮説の評価を継続するために、抗コネキシン分子と組合せた抗不安薬の薬理学的処置の電気生理的結果を調べた。
【0133】
この状況において、コネキシン阻害剤であるメクロフェナム酸(MFA)と組合せたジアゼパムの効果を調べた。ジアゼパムは、過度の不安エピソード、睡眠困難、神経症状態、精神身体症状発現、アルコール解毒、およびてんかんに適応される抗不安薬である。ジアゼパムは、GABA作動神経伝達を容易にするベンゾジアゼピンであり、治療用量で大きな有害作用リスト(傾眠、緊張低下、中毒感覚、集中困難、被刺激性、攻撃性、興奮、混乱、肝炎、アレルギー性皮膚反応、嚥下困難)を有し、処置の様々な相の際に用量の調節を必要とする耐性および依存性を引き起こしうる。
【0134】
7.1 ジアゼパムの効果
第一の相において、意識のあるラットに腹腔内投与したジアゼパムのEEG効果に対する引用文献データと比較するために、実験モデルを評価した(Robledo P., Alcohol Clin Exp Res. 1994 Apr ; 18(2)-363-8)。ゆえに、ジアゼパム単独の効果に関する記録を、1 mg/kg(ラットの急性処置において通常用いられる用量の1.5〜5倍低い量)の腹腔内投与で得た。
【0135】
1時間目でのEEGのスペクトル分析は、ジアゼパムの特徴的な効果、すなわち4〜7 Hz成分のパワーのわずかな減少(およそ25%の減少)および11〜30 Hz成分のパワーの有意な増加(およそ120%)を示す。2時間目には、4〜7 Hzおよび11〜30 Hz成分に対するこれらの効果は持続するが、強度は低減されて、1〜3 Hz成分のパワーの有意な増加が出現する(図8を参照されたい)。
【0136】
7.2 ジアゼパムと抗コネキシン剤の組合せ効果
実験モデルが有効であることが確認された後、ジアゼパムの電気生理学的効果に及ぼすコネキシン結合系の影響を調べた。
【0137】
抗不安薬(ジアゼパム、1 mg/kg、腹腔内)とコネキシン阻害剤(MFA、0.4 mg/kg、腹腔内)とを組合せる処置において、EEGのスペクトル分析は、1時間目に11〜30 Hz成分(およそ150%)および1〜3 Hz成分(およそ120%)のパワーの有意な増加を示す。パワーのこの増加は、2時間目にも続き、11〜30 Hz成分に関してはより高い振幅であった(200%まで)(図8を参照されたい)。
【0138】
1〜3 Hz成分および11〜30 Hz成分のパワーのこの有意な増加は、より高用量(最初の試験において用いられた用量の2〜10倍)でのジアゼパム単独のスペクトルに対応し、ゆえに、コネキシン結合系を遮断することによるジアゼパムの効果のかなりの増強に対応する。加えて、ジアゼパム単独とは異なり、抗コネキシン剤による増強は、2時間目での効果を強化して、抗コネキシン剤の存在下で作用が時間について延長されることを示している。この後者の観察は、ジアゼパム単独の時間経過を正確にたどらないことによって、クロザピン、モダフィニル、およびパロキセチンと組合せた抗コネキシン分子の効果とは異なり、コネキシンによる調整系が神経伝達系が異なれば定量的に異なる可能性があることを示している。このように、ジアゼパムの場合、結合系の遮断は、1時間目より2時間目でより強い影響を有し、化学的神経伝達系における結合系の構築に従って、遮断が異なる定性的および定量的結果を有することを強調する。
【0139】
全体として、GABA作動神経系のこの増強は、コネキシン結合系が電気生理学的活性に対して調整的役割(化学的神経伝達系における構築におそらく定性的および定量的に依存する)を果たすという仮説を確認する。
【0140】
最後に、これらの結果は、薬物とコネキシン阻害剤との組合せによる、これまでに報告されていない抗不安効果の調整を示す。この調整は、抗コネキシン分子と組合せた場合に、薬理学的用量より2〜10倍低い用量で薬理学的用量単独と同じ脳波の効果を得ることができるようになる、抗不安効果の増強によって明らかとなる。ゆえに、抗コネキシン剤による抗不安効果のこの増強によって、抗コネキシン剤に対して特異的な効果を最小限にしながら、抗不安薬の用量を2〜10倍低減させることができるであろう。ゆえに、ジアゼパムと抗コネキシン剤との組合せに関して測定された用量便益は、2より大きいであろう。
【0141】
実施例8:コネキシン阻害剤と組合せた2つめの抗うつ剤の効果
脳の活性に対してコネキシンが全般的な調整的役割を果たすという仮説の評価を継続するために、抗コネキシン分子と組合せた2つめの抗うつ剤薬理学的処置の電気生理学的結果を調べた。
【0142】
この状況において、コネキシン阻害剤であるメクロフェナム酸(MFA)と組合せたベンラファキシンの効果を調べた。ベンラファキシンは、成人における大うつ病エピソード、単極性障害を有する患者における再発性のうつの予防、および成人における少なくとも6ヶ月間の全身不安に適応される抗うつ剤である。ベンラファキシンは、中間のプロファイルを有し、イミプラミンと同等の効能を有するセロトニンおよびノルアドレナリン再取り込み阻害剤であり、治療用量で有害作用の大きなリスト(悪心、傾眠、ドライマウス、不眠症、眩暈、便秘、発汗、低ナトリウム血症、射精困難、下痢、嘔吐、体重増加、頭痛、激昂、振せん、感覚異常、動悸、適応障害、皮膚発疹)を有し、処置が中止されると禁断症状を引き起こしうる。
【0143】
8.1 ベンラファキシンの効果
第一の相において、意識のあるラットにおけるベンラファキシンのEEG効果に関する引用文献データが利用できないことから、ベンラファキシン単独によって実験モデルを評価した;しかし、特に睡眠の改変に及ぼすベンラファキシンの効果に関する様々な試験が、急性の処置におけるベンラファキシンの薬理学的用量を提供しており、これらは一般的に1〜10 mg/kgの腹腔内投与である(Salin-Pascual RJ., Psychopharmacology. 1997 Feb ; 129(3) :295-6)。
【0144】
ベンラファキシン単独の効果の記録は、2つの用量、すなわち0.16 mg/kgと4 mg/kgの腹腔内投与(ラットの急性処置において通常用いられる用量より1〜25倍低い)によって行われた。
【0145】
前頭前野EEGのスペクトル分析は、ベンラファキシンの用量に従って、1時間目に8〜10 Hz成分(0.16 mg/kg用量に関しておよそ120%および4 mg/kg用量に関して200%)および16〜18 Hz成分のパワーの有意な増加、ならびに24〜26 Hz成分のより小さい程度の増加を示し、これらは2時間目に増加して、4 mg/kgでは1〜3 Hz成分のパワーの増加が出現する(図9)。
【0146】
8.2 ベンラファキシンと抗コネキシン剤との組合せ効果
次に、ベンラファキシンの電気生理学的効果に及ぼすコネキシン結合系の影響を調べた。
【0147】
抗うつ剤(ベンラファキシン、0.16 mg/kg、腹腔内)とコネキシン阻害剤(MFA、0.4 mg/kg、腹腔内)とを組合せる処置において、EEGのスペクトル分析は、1時間目に8〜10 Hz成分(およそ350%)、16〜18 Hz成分(およそ200%)および24〜26 Hz成分(およそ180%)のパワーの有意な増加を示す。パワーのこの増加は、2時間目でも継続するが、パワーの有意な増加が観察される1〜3 Hz成分を除き、異なる成分(主に8〜10 Hz成分)に関して振幅は減少する(図9を参照されたい)。
【0148】
この同期化の有意な増加は、ベンラファキシン単独のスペクトルに対応して、ゆえに、コネキシン結合系を遮断することによるベンラファキシンの効果のかなりの増強に対応する。加えて、ベンラファキシン単独とは異なり、抗コネキシン剤による増強は、1時間目で効果を強化して、2時間目で減少し(ベンラファキシン処置単独より高いレベルを維持しながら)、このことは、急速な作用が抗コネキシン剤の存在下で時間的に延長することを示している。この後者の観察は、ジアゼパムと組合せた結果の観察と類似であり、ベンラファキシン単独の時間経過を正確にたどらないことから、クロザピン、モダフィニル、およびパロキセチンと組合せた抗コネキシン分子の効果とは異なり、コネキシンによる調整系が、神経伝達系が異なれば定量的に異なる可能性があることを確認している。このように、ベンラファキシンの場合、結合系の遮断は化学的神経伝達系におけるその構築に従って異なる定性的および定量的結果を有するであろうと確認される。
【0149】
全体として、セロトニン作動性およびノルアドレナリン作動性系のこの増強は、コネキシン結合系が電気生理的活性に対して主な調整的役割を果たすという仮説を確認する。
【0150】
最後に、これらの結果は、抗うつ剤とコネキシン阻害剤との組合せによる、これまで報告されていない抗うつ効果の調整を示す。この調整は、薬理学的用量より25倍低い用量で、抗コネキシン分子と組合せた場合に、抗うつ剤単独(薬理学的用量)と同じ脳波効果を得ることができる、抗うつ効果の増強によって明らかとなる。抗コネキシン剤による抗うつ効果のこの増強は、抗コネキシン剤に対して特異的な効果を最小限にして、抗うつ剤の用量を少なくとも25倍低減させることが可能であろう。ゆえに、ベンラファキシンと抗コネキシン剤との組合せに関して測定された用量便益は、25より大きいであろう。
【0151】
実施例9:コネキシン阻害剤と組合せた3つめの抗うつ剤の効果
脳の活性に対してコネキシンが全般的に調整的役割を果たすという仮説の評価を継続するために、抗コネキシン分子と組合せた3つめの抗うつ剤薬理学的処置の電気生理学的結果を調べた。
【0152】
この状況において、コネキシン阻害剤であるメクロフェナム酸(MFA)と組合せたエスシタロプラムの効果を調べた。エスシタロプラムは、大うつ病状態に、および広場恐怖症を伴うまたは伴わないパニック発作の予防のために適応される抗うつ剤である。エスシタロプラムは、中間のプロファイルを有し、イミプラミンと同等の効能を有するセロトニン再取り込み阻害剤であり、治療用量で大きな有害作用リスト(悪心、頭痛、不眠症、便秘、傾眠、発汗、射精困難、下痢、嘔吐、眩暈、震え、感覚異常、動悸、起立性低血圧、および心因性掻痒症)を有する。
【0153】
9.1 エスシタロプラムの効果
第一の相において、意識のあるラットにおけるエスシタロプラムのEEG効果に関する引用文献データが入手できないことから、実験モデルを評価した;しかし、特に睡眠EEG改変に及ぼすエスシタロプラムの効果に関する様々な試験が、急性の処置におけるエスシタロプラムの薬理学的用量を提供しており、これらは一般的に1〜10 mg/kgの腹腔内投与である(Sanchez C., Pharmacol Biochem Behav. 2007 Mar ; 86(3) :468-76)。
【0154】
エスシタロプラム単独の効果の記録を、腹腔内投与された2つの用量、すなわち0.8 mg/kgおよび4 mg/kg(ラットの急性処置において通常用いられる用量より1〜5倍低い)で行った。
【0155】
前頭前野EEGのスペクトル分析は、エスシタロプラム用量に従って、1時間目に6〜8 Hz成分(0.8 mg/kg用量に関しておよそ150%および4 mg/kg用量に関して200%)および14〜16 Hz成分のパワーの有意な増加を示し、より程度は少ないが22〜24 Hz成分の増加を示し、2時間目に減少する(図10を参照されたい)。
【0156】
9.2 エスシタロプラムと抗コネキシン剤の組合せ効果
第二の相において、エスシタロプラムの電気生理学的効果に及ぼすコネキシン結合系の影響を調べた。
【0157】
抗うつ剤(エスシタロプラム、0.8 mg/kg、腹腔内)およびコネキシン阻害剤(MFA、0.4 mg/kg、腹腔内)を組合せる処置において、EEGのスペクトル分析は、1時間目に6〜8 Hz成分(およそ450%)、14〜16 Hz成分(およそ230%)、および22〜24 Hz成分(およそ14%)に関するパワーの有意な増加を示す。パワーのこの増加は、2時間目でも継続するが、異なる成分(主に8〜10 Hz成分に関して)に関する振幅が低減される(図10を参照されたい)。
【0158】
同期化のこの有意な増加は、エスシタロプラム単独のスペクトルと完全に一致して、ゆえにコネキシン結合系の遮断によるエスシタロプラムの効果のかなりの増強に対応する。加えて、クロザピン、パロキセチン、およびモダフィニルとは異なり、抗コネキシン剤によるエスシタロプラムの効果のこの強化機序は、エスシタロプラム単独と同じ時間経過をたどる。実際に、エスシタロプラム単独または抗コネキシン剤との組合せは、1時間目に最大であるが、2時間目では弱まるEEG効果を生じる。このように、エスシタロプラムの抗コネキシン剤による増強は、時間経過特性を保持して、1つの神経伝達系に限定されないコネキシンによる調整系の考え方を強化する。
【0159】
全体として、セロトニン作動神経のこの増強は、コネキシン結合系が電気生理活性に対して調整的役割を果たすという仮説を確認する。
【0160】
最後に、これらの結果は、抗うつ剤とコネキシン阻害剤との組合せによる抗うつ効果の調整を示す。この調整は、抗コネキシン分子と組合せた場合に、薬理学的用量より5倍低い用量で抗うつ剤単独(薬理学的用量)と同じ脳波効果を生成することができる、抗うつ効果の増強によって明らかとなる。ゆえに、抗コネキシン剤による抗うつ効果のこの増強は、抗コネキシン剤に対して特異的な効果を最小限にしながら、抗うつ剤の用量を少なくとも5倍低減させることが可能であろう。ゆえに、エスシタロプラムと抗コネキシン剤の組合せに関して測定された用量便益は、5より大きいであろう。
【0161】
実施例10:コネキシン阻害剤と組合せた4つめの抗うつ剤の効果
脳の活性に対してコネキシンが全般的な調整的役割を果たすという仮説の評価を継続するために、抗コネキシン分子と組合せた4つめの抗うつ剤薬理学的処置の電気生理学的結果を調べた。
【0162】
この状況において、コネキシン阻害剤であるメクロフェナム酸(MFA)と組合せたブプロピオンの効果を調べた。ブプロピオンは、ニコチン依存被験者における禁煙を助けるために適応される抗うつ剤である。ブプロピオンは、ノルアドレナリンおよびドーパミン再取り込み阻害剤であり、治療用量で大きな有害作用リスト(皮膚発疹、心因性掻痒症、発熱、悪心、頭痛、不眠症、眩暈、便秘、嘔吐、運動失調、耳鳴、精神混乱、視覚障害)を有する。
【0163】
10.1 ブプロピオンの効果
第一の相において、意識のあるラットにおけるブプロピオンのEEG効果に関する引用文献データが入手できないことから、実験モデルを評価した;しかし、特に睡眠EEG改変に及ぼすブプロピオンの効果に関する様々な試験が、急性の処置におけるブプロピオンの薬理学的用量を提供しており、これらは一般的に5〜150 mg/kgの腹腔内投与である(Henshall DC, Neuropsychiatr Dis Trat. 2009; 5 : 189-206)。
【0164】
ブプロピオン単独の効果の記録を、腹腔内投与された3つの用量、すなわち0.16 mg/kg、0.8 mg/kg、および4 mg/kg(ラットの急性処置において通常用いられる用量より10〜150倍低い)で行った。
【0165】
前頭前野EEGのスペクトル分析は、ブプロピオンの用量に従って、1時間目に8〜10 Hzから8〜10 Hz成分(0.16 mg/kg用量に関しておよそ180%、0.8 mg/kg用量に関して450%、および4 mg/kg用量に関して280%)および15〜18 Hz成分のパワーの有意な増加を示し、より程度は低いものの23〜25 Hz成分で増加を示す。2時間目では、1時間目に関する有意な増加が、0.16 mg/kg用量および4 mg/kg用量に関して同じ成分について観察されるが、0.8 mg/kg用量ではその効果は弱まる(図11)。
【0166】
このことは、1時間目でのブプロピオンの逆「U字型」用量効果を示しており(セルトラリンに関して図13において示されるように)、2時間目に古典的な用量効果を示している。
【0167】
用量に従う経時的なこれらの複雑な効果は、ブプロピオン用量に従う異なる神経伝達系またはニューロン群の関与を示唆している。
【0168】
10.2 ブプロピオンと抗コネキシン剤の組合せ効果
第二の相において、ブプロピオンの電気生理学的効果に及ぼすコネキシン結合系の影響を調べた。
【0169】
抗うつ剤(ブプロピオン、0.16 mg/kg、腹腔内)とコネキシン阻害剤(MFA、0.4 mg/kg、腹腔内)とを組合せる処置において、EEGのスペクトル分析は、1時間目に8〜10 Hz成分(およそ400%)、15〜18 Hz成分(およそ230%)、および23〜25 Hz成分(およそ140%)に関するパワーの有意な増加を示す。このパワーの増加は、2時間目でも継続するが、異なる成分に関して振幅が減少する(主に8〜10 Hzおよび15〜18 Hz成分に関して)(図11を参照されたい)。
【0170】
同期化のこの有意な増加は、0.8 mg/kg用量でのブプロピオン単独のスペクトルに対応し、ゆえにコネキシン結合系を遮断することによるブプロピオンの効果のかなりの増強を示している。加えて、抗コネキシン剤によるブプロピオンの効果の強化機序は、先に言及された用量に従うブプロピオンの効果の時間経過の複雑さ(段落10.1)を考慮に入れると、より高用量でのブプロピオン単独と同じ時間経過をたどる。実際に、抗コネキシン剤と組合せた0.8 mg/kg用量またはより低用量(0.16 mg/kg)でのブプロピオン単独は、1時間目で最大であるが2時間目で弱くなるEEG効果を生じる。このように、抗コネキシン剤によるブプロピオンの特定の増強は、1つの神経伝達系に限定されないコネキシンによる調整系の考え方を強化する。
【0171】
全体として、ノルアドレナリンおよびドーパミン作動系のこの増強は、コネキシン結合系が電気生理的活性に対して調整的役割を果たすという仮説を確認する。
【0172】
最後に、これらの結果はまた、コネキシン阻害剤とのその組合せによってブプロピオンなどの抗うつ剤の効果が調整されることを示す。この調整は、薬理学的用量より5倍低い用量で、抗コネキシン分子と組合せ投与した場合に同じ脳波効果を生じる、抗うつ効果の増強によって明らかとなる。ゆえに、抗コネキシン剤による抗うつ効果のこの増強によって、抗コネキシン剤に対して特異的な効果を最小限にしながら、ブプロピオンの用量を少なくとも5倍低減させることができるであろう。ゆえに、ブプロピオンと抗コネキシン剤の組合せに関して測定された用量便益は、5より大きいであろう。
【0173】
実施例11:コネキシン阻害剤と組合せた5つめの抗うつ剤の効果
脳の活性に対してコネキシンが全般的な調整的役割を果たすという仮説の評価を継続するために、抗コネキシン分子と組合せた5つめの抗うつ剤薬理学的処置の電気生理学的結果を調べた。この状況において、コネキシン阻害剤であるメクロフェナム酸(MFA)と組合せたセルトラリンの効果を調べた。
【0174】
セルトラリンは、成人における大うつ病状態、成人および小児における強迫障害、ならびに単極性障害患者における再発性のうつ病の予防に関して適応される抗うつ剤である。セルトラリンは、治療用量で大きな有害作用リスト(皮膚発疹、心因性掻痒症、悪心、頭痛、不眠症、眩暈、嘔吐、錐体外路効果、射精困難、便秘、視覚障害、頻拍)を有する選択的セロトニン再取り込み阻害剤である。
【0175】
11.1 セルトラリンの効果
第一の相において、意識のあるラットにおけるセルトラリンのEEG効果に関する引用文献データが入手できないことから、実験モデルを評価した;しかし、特に睡眠EEG改変に及ぼすセルトラリンの効果に関する様々な試験が、急性の処置におけるセルトラリンの薬理学的用量を提供しており、これらは一般的に4〜40 mg/kgの腹腔内投与である(Freo U., Neurosci Lett. 2008; 436(2) : 148-52)。
【0176】
セルトラリン単独の効果の記録を、腹腔内投与された3つの用量、すなわち0.16 mg/kg、0.8 mg/kg、および4 mg/kg(ラットの急性処置において通常用いられる用量より1〜25倍低い)で行った。
【0177】
前頭前野EEGのスペクトル分析は、セルトラリンの用量に従って、1時間目で7〜9 Hz成分(0.16 mg/kg用量および0.8 mg/kg用量に関しておよそ260%、ならびに4 mg/kg用量に関して200%)および14〜17 Hz成分のパワーの有意な増加を示し、23〜25 Hz成分でより程度は低いものの増加を示す。2時間目には、1時間目に関する有意な増加が、0.8 mg/kg用量(900%)および4 mg/kg用量(450%)に関して同じ成分について観察されたが、0.16 mg/kg用量ではその効果はわずかに弱まる(図12)。
【0178】
このことは、主に2時間目でのセルトラリンの逆「U字型」用量効果を示している(図13において示されるように)。用量に従う経時的なこれらの複雑な効果は、ブプロピオンの場合と同様に、セルトラリン用量に従う異なる神経伝達系またはニューロン群の関与を示唆している。
【0179】
11.2 ブプロピオンと抗コネキシン剤の組合せ効果
第二の相において、セルトラリンの電気生理学的効果に及ぼすコネキシン結合系の影響を調べた。
【0180】
抗うつ剤(セルトラリン、0.16 mg/kg、腹腔内)およびコネキシン阻害剤(MFA、0.4 mg/kg、腹腔内)を組合せる処置において、EEGのスペクトル分析は、1時間目に、7〜9 Hz成分(およそ400%)、14〜17 Hz成分(およそ300%)、および23〜25 Hz成分(およそ160%)に関するパワーの有意な増加を示す。パワーのこの増加は、2時間目にも持続して、異なる成分、主に7〜9 Hz成分(およそ1000%)および14〜17 Hz成分(およそ700%)に関して振幅がかなり増加する(図12)。
【0181】
2時間目でのこの同期化の有意な増加は、0.8 mg/kg用量でセルトラリン単独のスペクトルに対応し、ゆえにコネキシン結合系の遮断によってセルトラリンの効果がかなり増強されることを示す。加えて、抗コネキシン剤によるセルトラリンの効果のこの強化機序は、先に言及した用量に従うセルトラリンの効果の時間経過の複雑さを考慮に入れると、より高用量でのセルトラリン単独と同じ時間経過をたどる(段落11.1)。
【0182】
実際に、0.8 mg/kg用量でのセルトラリン単独または抗コネキシン剤と組合せたそれより低い用量(0.16 mg/kg)は、2時間目に最大であるEEG効果を生じる。このように、抗コネキシン剤によってセルトラリンが特に増強されることは、1つの神経伝達系に限定されない抗コネキシン剤による調整系の考え方を確認および強化する。
【0183】
全体として、セロトニン作動系のこの増強は、コネキシン結合系が電気生理的活性に対して調整的役割を果たすという仮説を確認する。
【0184】
最後に、これらの結果は再び、コネキシン阻害剤とのその組合せによる抗うつ効果(セルトラリン)の調整を示す。この調整は、薬理学的用量より5倍低い用量で抗うつ効果が増強されることによって明らかとなる。よって、抗コネキシン剤による抗うつ効果のこの増強は、抗コネキシン剤に対して特異的な効果を最小限にして、抗うつ剤の用量を少なくとも5倍低減させることができるであろう。ゆえに、セルトラリンと抗コネキシン剤の組合せに関して測定された用量便益は5より大きいであろう。
【0185】
参考書目
【特許請求の範囲】
【請求項1】
精神障害および/または神経変性障害を有する患者において、時間について同時、個別、または逐次的に使用するための組合せ製品として、少なくとも1つのコネキシン遮断剤と向精神薬とを含有する製品。
【請求項2】
コネキシン遮断剤が、メクロフェナム酸、18-β-グリシルレチン酸、メフロキンおよび2-APBが含まれる群から選ばれ、かつ好ましくはメクロフェナム酸であることを特徴とする、請求項1記載の製品。
【請求項3】
向精神薬が、ドーパミン作動性、GABA作動性、アドレナリン作動性、アセチルコリン作動性、セロトニン作動性、オピオイド作動性、アデノシン作動性、イオンチャネル型、ヒスタミン作動性、IMAO、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ、DOPAデカルボキシラーゼ、またはノルアドレナリン作動性エフェクターであることを特徴とする、請求項1および2記載の製品。
【請求項4】
向精神薬が、ロキサピン、アセプロマジン、メチルフェニデート、アマンタジン、ペルゴリド、リスリド、ブロモクリプチン、ロピニロール、アポモルフィン、アリピプラゾール、スルピリド、アミスルプリド、スルトプリド、チアプリド、ピモジド、リスペリドン、ハロペリドール、ペンフルリドール、ズクロペンチキソール、またはブプロピオンから選ばれるドーパミン作動性エフェクターであることを特徴とする、請求項3記載の製品。
【請求項5】
向精神薬が、チアガビン、トピラメート、クロラゼペート、ジアゼパム、クロナゼパム、オキサゼパム、ロラゼパム、ブロマゼパム、ロルメタゼパム、ニトラゼパム、クロチアゼパム、アルプロゾラム、エスタゾラム、トリアゾラム、ロプラゾラム、エチフォキシン、メプロバメート、ゾピクロン、ゾルピデム、フェノバルビタール、フェルバメート、またはビガバトリンから選ばれるGABA作動性エフェクターであることを特徴とする、請求項3記載の製品。
【請求項6】
向精神薬が、ジヒドロエルゴタミン、モダフィニル、アドラフィニル、ミルタザピン、またはオキセトロンから選ばれるアドレナリン作動性エフェクターであることを特徴とする、請求項3記載の製品。
【請求項7】
向精神薬が、スルブチアミン、トロパテピン、またはトリヘキシフェニジルから選ばれるアセチルコリン作動性エフェクターであることを特徴とする、請求項3記載の製品。
【請求項8】
向精神薬が、クロルプロマジン、トリミプラミン、クロザピン、オランザピン、シアメマジン、フルペンチキソール、ネフォパム、フルボキサミン、クロミプラミン、セルトラリン、フルオキセチン、シタロプラム、エスシタロプラム、パロキセチン、アミトリプチリン、デュロキセチン、ベンラファキシン、ブスピロン、カルピプラミン、ゾルミトリプタン、スマトリプタン、ナラトリプタン、インドラミン、エルゴタミン、酒石酸エルゴタミン、ピゾチフェン、ピパンペロン、メチセルジド、ピゾチリン、チアネプチン、ミルナシプラン、トリミプラミン、ビロキサジン、チアネプチン、ヒペリクム、およびリチウムから選ばれるセロトニン作動性エフェクターであることを特徴とする、請求項3記載の製品。
【請求項9】
向精神薬が、ナルブフィン、ブプレノルフィン、ペチジン、コデイン、トラマドール、モルヒネ、ヒドロモルフォン、オキシコドン、メタドン、デクストロプロポキシフェン、メペリジン、フェンタニル、ナルトレキソン、または塩酸モルヒネから選ばれるオピオイド作動性エフェクターであることを特徴とする、請求項3記載の製品。
【請求項10】
向精神薬が、カルバマゼピンまたはオクスカルバゼピンから選ばれるアデノシン作動性エフェクターであることを特徴とする、請求項3記載の製品。
【請求項11】
向精神薬が、フルナリジン、エトスクシミド、レベチラセタム、ラモトリジン、フォスフェニトイン、またはフェニトインから選ばれるイオンチャネル型エフェクターであることを特徴とする、請求項3記載の製品。
【請求項12】
向精神薬が、ニアプラジン、ヒドロキシジン、またはドキシラミンから選ばれるヒスタミン作動性エフェクターであることを特徴とする、請求項3記載の製品。
【請求項13】
向精神薬が、モクロベミド、セレジリン、またはイプロニアジドから選ばれるモノアミンオキシダーゼエフェクターであることを特徴とする、請求項3記載の製品。
【請求項14】
向精神薬が、エンタカポンまたはトルカポンから選ばれるカテコール-O-メチルトランスフェラーゼエフェクターであることを特徴とする、請求項3記載の製品。
【請求項15】
向精神薬が、ベンセラジドまたはカルビドーパから選ばれるDOPAデカルボキシラーゼエフェクターであることを特徴とする、請求項3記載の製品。
【請求項16】
向精神薬が、ミアンセリン、デシプラミン、モクロベミド、またはブプロピオンなどのノルアドレナリン作動性エフェクターであることを特徴とする、請求項3記載の製品。
【請求項17】
向精神薬が、ガバペンチンまたはカプトジアミンなどの辺縁系に作用するエフェクターであることを特徴とする、請求項3記載の製品。
【請求項18】
向精神薬が、クロザピン、モダフィニル、パロキセチン、ジアゼパム、エスシタロプラム、セルトラリン、ベンラファキシン、およびブプロピオンが含まれる群から選ばれることを特徴とする、請求項3記載の製品。
【請求項19】
精神障害および/または神経変性障害を有する患者を処置するために、特に請求項1〜18のいずれか一項において定義されるように、向精神薬の前、同時、または後に投与されることが意図される薬物を調製するための、少なくとも1つのコネキシン遮断剤の使用。
【請求項20】
精神障害および/または神経変性障害に罹っている患者における向精神薬の効果を増強するための、請求項19記載の少なくとも1つのコネキシン遮断剤の使用。
【請求項21】
向精神薬の用量を低減するため、および/または向精神薬の有害作用を制限するため、および/または失敗および中止の効果を低減するための、請求項19または20記載の少なくとも1つのコネキシン遮断剤の使用。
【請求項1】
精神障害および/または神経変性障害を有する患者において、時間について同時、個別、または逐次的に使用するための組合せ製品として、少なくとも1つのコネキシン遮断剤と向精神薬とを含有する製品。
【請求項2】
コネキシン遮断剤が、メクロフェナム酸、18-β-グリシルレチン酸、メフロキンおよび2-APBが含まれる群から選ばれ、かつ好ましくはメクロフェナム酸であることを特徴とする、請求項1記載の製品。
【請求項3】
向精神薬が、ドーパミン作動性、GABA作動性、アドレナリン作動性、アセチルコリン作動性、セロトニン作動性、オピオイド作動性、アデノシン作動性、イオンチャネル型、ヒスタミン作動性、IMAO、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ、DOPAデカルボキシラーゼ、またはノルアドレナリン作動性エフェクターであることを特徴とする、請求項1および2記載の製品。
【請求項4】
向精神薬が、ロキサピン、アセプロマジン、メチルフェニデート、アマンタジン、ペルゴリド、リスリド、ブロモクリプチン、ロピニロール、アポモルフィン、アリピプラゾール、スルピリド、アミスルプリド、スルトプリド、チアプリド、ピモジド、リスペリドン、ハロペリドール、ペンフルリドール、ズクロペンチキソール、またはブプロピオンから選ばれるドーパミン作動性エフェクターであることを特徴とする、請求項3記載の製品。
【請求項5】
向精神薬が、チアガビン、トピラメート、クロラゼペート、ジアゼパム、クロナゼパム、オキサゼパム、ロラゼパム、ブロマゼパム、ロルメタゼパム、ニトラゼパム、クロチアゼパム、アルプロゾラム、エスタゾラム、トリアゾラム、ロプラゾラム、エチフォキシン、メプロバメート、ゾピクロン、ゾルピデム、フェノバルビタール、フェルバメート、またはビガバトリンから選ばれるGABA作動性エフェクターであることを特徴とする、請求項3記載の製品。
【請求項6】
向精神薬が、ジヒドロエルゴタミン、モダフィニル、アドラフィニル、ミルタザピン、またはオキセトロンから選ばれるアドレナリン作動性エフェクターであることを特徴とする、請求項3記載の製品。
【請求項7】
向精神薬が、スルブチアミン、トロパテピン、またはトリヘキシフェニジルから選ばれるアセチルコリン作動性エフェクターであることを特徴とする、請求項3記載の製品。
【請求項8】
向精神薬が、クロルプロマジン、トリミプラミン、クロザピン、オランザピン、シアメマジン、フルペンチキソール、ネフォパム、フルボキサミン、クロミプラミン、セルトラリン、フルオキセチン、シタロプラム、エスシタロプラム、パロキセチン、アミトリプチリン、デュロキセチン、ベンラファキシン、ブスピロン、カルピプラミン、ゾルミトリプタン、スマトリプタン、ナラトリプタン、インドラミン、エルゴタミン、酒石酸エルゴタミン、ピゾチフェン、ピパンペロン、メチセルジド、ピゾチリン、チアネプチン、ミルナシプラン、トリミプラミン、ビロキサジン、チアネプチン、ヒペリクム、およびリチウムから選ばれるセロトニン作動性エフェクターであることを特徴とする、請求項3記載の製品。
【請求項9】
向精神薬が、ナルブフィン、ブプレノルフィン、ペチジン、コデイン、トラマドール、モルヒネ、ヒドロモルフォン、オキシコドン、メタドン、デクストロプロポキシフェン、メペリジン、フェンタニル、ナルトレキソン、または塩酸モルヒネから選ばれるオピオイド作動性エフェクターであることを特徴とする、請求項3記載の製品。
【請求項10】
向精神薬が、カルバマゼピンまたはオクスカルバゼピンから選ばれるアデノシン作動性エフェクターであることを特徴とする、請求項3記載の製品。
【請求項11】
向精神薬が、フルナリジン、エトスクシミド、レベチラセタム、ラモトリジン、フォスフェニトイン、またはフェニトインから選ばれるイオンチャネル型エフェクターであることを特徴とする、請求項3記載の製品。
【請求項12】
向精神薬が、ニアプラジン、ヒドロキシジン、またはドキシラミンから選ばれるヒスタミン作動性エフェクターであることを特徴とする、請求項3記載の製品。
【請求項13】
向精神薬が、モクロベミド、セレジリン、またはイプロニアジドから選ばれるモノアミンオキシダーゼエフェクターであることを特徴とする、請求項3記載の製品。
【請求項14】
向精神薬が、エンタカポンまたはトルカポンから選ばれるカテコール-O-メチルトランスフェラーゼエフェクターであることを特徴とする、請求項3記載の製品。
【請求項15】
向精神薬が、ベンセラジドまたはカルビドーパから選ばれるDOPAデカルボキシラーゼエフェクターであることを特徴とする、請求項3記載の製品。
【請求項16】
向精神薬が、ミアンセリン、デシプラミン、モクロベミド、またはブプロピオンなどのノルアドレナリン作動性エフェクターであることを特徴とする、請求項3記載の製品。
【請求項17】
向精神薬が、ガバペンチンまたはカプトジアミンなどの辺縁系に作用するエフェクターであることを特徴とする、請求項3記載の製品。
【請求項18】
向精神薬が、クロザピン、モダフィニル、パロキセチン、ジアゼパム、エスシタロプラム、セルトラリン、ベンラファキシン、およびブプロピオンが含まれる群から選ばれることを特徴とする、請求項3記載の製品。
【請求項19】
精神障害および/または神経変性障害を有する患者を処置するために、特に請求項1〜18のいずれか一項において定義されるように、向精神薬の前、同時、または後に投与されることが意図される薬物を調製するための、少なくとも1つのコネキシン遮断剤の使用。
【請求項20】
精神障害および/または神経変性障害に罹っている患者における向精神薬の効果を増強するための、請求項19記載の少なくとも1つのコネキシン遮断剤の使用。
【請求項21】
向精神薬の用量を低減するため、および/または向精神薬の有害作用を制限するため、および/または失敗および中止の効果を低減するための、請求項19または20記載の少なくとも1つのコネキシン遮断剤の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2012−502082(P2012−502082A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526492(P2011−526492)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061765
【国際公開番号】WO2010/029131
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(511063332)
【出願人】(511063343)バイオ モデリング システムズ ウ ベーエムシステムズ (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061765
【国際公開番号】WO2010/029131
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(511063332)
【出願人】(511063343)バイオ モデリング システムズ ウ ベーエムシステムズ (1)
【Fターム(参考)】
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