説明

含ハロゲン飽和ポリオレフィンの製造方法

【課題】従来の方法では水素化が困難であった含ハロゲン不飽和ポリオレフィン類を水素化して工業用部品などの原料に好適な含ハロゲン飽和ポリオレフィンを効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】有機溶媒、ヒドラジン及び酸素の存在下、フラビン系化合物を水素化触媒として用い、含ハロゲン不飽和ポリオレフィンの水素化することにより、各種工業部品などの原材料として有用な含ハロゲン飽和ポリオレフィンを製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含ハロゲン飽和ポリオレフィンの製造方法に関するものであり、特に有機溶媒、ヒドラジン及び酸素の存在下、フラビン系化合物を用い含ハロゲン不飽和ポリオレフィンを水素化することにより、各種工業部品など原材料として有用な含ハロゲン飽和ポリオレフィンを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
含ハロゲン不飽和ポリオレフィンの水素化は、ルテニウムやロジウムの錯体を触媒に用い水素でクロロプレンを水素化する方法が報告されている(例えば特許文献1、非特許文献1参照。)。
【0003】
一方、近年、フラビンを触媒に用い、酸素とヒドラジンで温和な条件下、オレフィンを水素化する方法が報告されている(例えば非特許文献2。)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−128822号公報
【非特許文献1】Macromolecules,vol.27,p.6985〜6987(1994)
【非特許文献2】Journal of American Chemical Society Vol.127,No.42,p.14544〜14545(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や非特許文献1に開示された方法では、高い水素圧で反応を行なっているため、高価な反応器を必要とし、工業的にはまだ課題を有するうえに、非特許文献1には、水素化反応中に脱ハロゲン化反応が起こることが述べられており、装置の腐食が課題となる。このように、水素を用いた含ハロゲン不飽和ポリオレフィンの水素化には、工業的に多くの課題を有している。
【0006】
一方、非特許文献2に開示された方法は、温和な条件でオレフィンを水素化できる点で工業的に好ましい方法であるが、還元剤であるヒドラジンと混和しやすい水性溶媒と純酸素を使用して低分子量のオレフィン化合物を水素化しており、不飽和ポリオレフィンのごとく水性媒体への溶解が困難なポリマー、とりわけ水素化が困難とされているハロゲン元素を含有する不飽和ポリオレフィンの水素化については全く知見が得られていないのが現状である。
【0007】
そこで、本発明は、含ハロゲン不飽和ポリオレフィンを効率的に水素化し、各種工業部品として有用な含ハロゲン飽和ポリオレフィンを製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、フラビン系化合物を水素化触媒として用い含ハロゲン不飽和ポリオレフィンを水素化する方法、特に有機溶媒、ヒドラジン、酸素の存在下、特定のフラビン系化合物を水素化触媒として用い、特定の含ハロゲン不飽和ポリオレフィンの水素化を行うことにより、効率よく優れた含ハロゲン飽和ポリオレフィンを製造することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、有機溶媒、ヒドラジン及び酸素の存在下、下記の一般式(1)で表わされるフラビン系化合物を水素化触媒として用い、含ハロゲン不飽和ポリオレフィンを水素化することを特徴とする含ハロゲン飽和ポリオレフィンの製造方法に関するものである。
【0010】
【化1】

【0011】
(1)
(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜12のフェニルアルキル基を表し、R,Rは、各々独立して水素原子、炭素数1〜10のアルキル基,アルコキシ基を表し、Rは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基,シクロアルキル基、2,4:3,5−ジ−o−メチレンリビチル基、フェニル基を表し、Rは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜12のフェニルアルキル基を表す。)
以下に本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の含ハロゲン飽和ポリオレフィンの製造方法は、上記の一般式(1)で表わされるフラビン系化合物を水素化触媒として用い含ハロゲン不飽和ポリオレフィンの水素化を行い、含ハロゲン飽和ポリオレフィンを製造する際に、有機溶媒、ヒドラジン及び酸素の存在下で水素化反応を行うものである。
【0013】
本発明における水素化触媒としては、上記の一般式(1)で表されるフラビン系化合物であり、該範疇に属するものであれば如何なる構造を有するフラビン系化合物も用いることができる。ここで、Rは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜12のフェニルアルキル基であり、より具体的には、例えば水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基などを挙げることができる。R,Rは、各々独立して水素原子、炭素数1〜10のアルキル基,アルコキシ基であり、より具体的には、例えば水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などを挙げることができる。Rは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基,シクロアルキル基、2,4:3,5−ジ−o−メチレンリビチル基、フェニル基であり、より具体的には、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、5−フェニルペンチル基、6−フェニルヘキシル基、2,4:3,5−ジ−o−メチレンリビチル基等を例示することができる。Rは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜12のフェニルアルキル基であり、より具体的には、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、5−フェニルペンチル基、6−フェニルヘキシル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基などを例示することができる。
【0014】
該フラビン系化合物としては、具体的には、例えば5−エチル−3,7,8,10−テトラメチルイソアロキサジニウムパークロレート、5−エチル−7,8,10−トリメチルイソアロキサジニウムパークロレート、5−エチル−3−メチル−10−フェニルイソアロキサジニウムパークロレート、5−エチル−3,10−ジメチルイソアロキサジニウムパークロレート、5−エチル−3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジニウムパークロレートなどを例示することができ、その中でも特に含ハロゲン不飽和ポリオレフィンの水素化効率に優れることから、5−エチル−3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジニウムパークロレート及び/又は5−エチル−3,7,8,10−テトラメチルイソアロキサジニウムパークロレートであることが好ましい。
【0015】
該フラビン系化合物は、本発明の目的が達成できる限りどのような方法で入手・製造してもよく、例えばAngew.Chem.Int.Ed.,44巻,1704〜1706頁(2005年)に記載の方法にしたがって製造することができる。
【0016】
本発明におけるフラビン系化合物の使用量としては、含ハロゲン不飽和ポリオレフィンの水素化が可能である限りにおいて如何なる量を用いてもよく、その中でも効率よく含ハロゲン不飽和ポリオレフィンの水素化が可能となることから、含ハロゲン不飽和ポリオレフィン1モルに対して0.0001モル%〜30モル%、特に0.01モル%〜5モル%の範囲であることが好ましい。
【0017】
本発明において用いられる含ハロゲン不飽和ポリオレフィンとは、ポリマー構造内にハロゲン元素と不飽和結合を有するものであれば、如何なる構造を有する含ハロゲン不飽和ポリオレフィンも用いることができる。
【0018】
このような含ハロゲン不飽和ポリオレフィンとしては、例えば5−ノルボルネン−2,3−ビスクロロメチル等のハロゲン元素を含有するオレフィンのメタセシス重合体;クロロプレンゴムやクロロプレン−ブタジエン共重合体等のハロゲン元素を含有する共役ジエンの重合体を例示することが出来る。
【0019】
該含ハロゲン不飽和ポリオレフィンは、得られる含ハロゲン飽和ポリオレフィンが成形加工性、機械的物性に特に優れるものとなることから、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用い標準ポリスチレン換算として測定した重量平均分子量が1×10〜1×10の範囲のものであることが好ましく、特に1×10〜5×10の範囲のものであることが好ましい。
【0020】
本発明で用いる溶媒としては、有機溶媒であり該範疇に属するものであれば如何なる制限を受けることなく用いることが可能であり、その中でも、含ハロゲン不飽和ポリオレフィンを溶解するものが好ましく、その中でも特に効率良く含ハロゲン不飽和ポリオレフィンの水素化が可能となることから、ジクロロメタン、クロロホルム、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒やトルエン、キシレン等の芳香族系溶媒が好ましい。
【0021】
本発明で用いるヒドラジンとしては、ヒドラジンであれば如何なる形態のものを用いても良く、通常は一水和物として使用されるが、無水物のほか溶媒や水で任意に希釈した後に用いることもできる。また、ヒドラジンの使用量としては、含ハロゲン不飽和ポリオレフィンの水素化が可能である限りにおいて如何なる量を用いてもよく、含ハロゲン不飽和ポリオレフィン中のオレフィン1モルに対して、0.1モル〜20モルの範囲であることが好ましく、特に0.5モル〜10モルの範囲であることが好ましい。
【0022】
また、ヒドラジンの添加方法としては、含ハロゲン不飽和ポリオレフィンと有機溶媒からなる溶液に所定量を一度に添加する方法;必要に応じて滴下する逐次的添加方法、更に必要に応じて反応途中に追加する方法、等の如何なる方法であってもよい。なお、一般的には、ヒドラジンと有機溶媒は溶解しない場合が多く、本発明の製造方法においても、ヒドラジンの添加により反応系が不均一となり、不均一系の水素化反応が進行するケースが多く見られる。
【0023】
本発明で用いる酸素とは、その酸素源として純酸素はもとより、空気、空気と純酸素の混合気体、純酸素と窒素,ヘリウム,アルゴンなどの不活性ガスからなる任意の混合気体を用いることができ、その中でも空気を酸素源とすることが好ましい。
【0024】
本発明の製造方法は、大気圧下でも実施する事が可能ではあるが、その水素化反応効率が優れることから加圧条件で行うことが好ましく、加圧する際の圧力としては、0.01MPa〜0.99MPaの範囲が好ましく、特に0.1MPa〜0.6MPaの範囲であることが好ましい。また、反応温度としては、水素化反応が可能であれば如何なる温度条件でも良く、特に水素化反応効率に優れることから20〜200℃の範囲であることが好ましく、特に50〜150℃の範囲であることが好ましい。
【0025】
本発明の製造方法により得られる含ハロゲン飽和ポリオレフィンは、反応終了後の溶液を貧溶媒中に投入し、再沈殿により回収することができる。ここで、貧溶媒としては、含ハロゲン飽和ポリオレフィンが再沈殿可能であれば特に制限なく用いることが可能であり、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、等を挙げることができ、含ハロゲン飽和ポリオレフィンの回収率に特に優れることからメタノールが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の方法により、従来の方法では水素化が困難であった含ハロゲン不飽和ポリオレフィン類を水素化することにより、各種工業部品の原材料として有用な含ハロゲン飽和ポリオレフィンを効率よく製造することが可能となる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明を説明するが、本実施例は何ら本発明を制限するものではない。
【0028】
<分析・測定>
〜数平均分子量・重量平均分子量の測定〜
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製、商品名HLC8020GPC)を用い、クロロホルムを溶媒として40℃で測定した溶出曲線より標準ポリスチレン換算値として数平均分子量・重量平均分子量を測定した。
【0029】
〜NMRスペクトルの測定〜
核磁気共鳴スペクトル測定装置(日本電子製、商品名GSX270WB)を用い、重溶媒に重クロロホルムを用い測定した。
【0030】
〜IRの測定〜
赤外分光光度計(日立製作所製、商品名270−30形赤外分光光度計)を用い測定を行った。
【0031】
〜UV−Visの測定〜
紫外可視分光光度計(日本分光製、製品名UVIDEC−650)を用い測定を行った。
【0032】
合成例1(5−エチル−3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジニウムパークロレートの合成)
<7,8−ジメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジンの合成>
磁気回転子を付した200mlのフラスコにリボフラビン(東京化成製)9.4gを採り、濃塩酸15mlと37%ホルマリン溶液23mlを加えた。この混合液を窒素雰囲気下、60℃で48時間加熱撹拌した。反応後の濃い茶色の溶液をエバポレーターにて減圧下で濃縮後、1mmHgの減圧下で2時間真空乾燥し、15.6gの黒褐色粉体を得た。
【0033】
この黒褐色粉体をメタノールを溶離液として中性アルミナ(メルク社製)400gによりカラム精製を行い、メタノールを減圧除去して4.4gの黄色粉体を得た。
【0034】
得られた黄色粉体は、H−NMRスペクトル分析より、7,8−ジメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジンであることを確認した。
【0035】
270MHz H−NMRの測定結果;δ(CDCl): 2.44(3H)、2.55(3H)、3.54〜3.61(3H)、4.17〜4.30(2H)、4.62〜4.69(2H)、4.91〜5.10(4H)、7.56(1H)、8.06(1H)。
【0036】
<3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジンの合成>
磁気回転子を付した1リットルの四つ口フラスコに炭酸カリウム15.2g(和光純薬製)、ジメチルホルムアミド(和光純薬製)1000mlを加えた。このスラリー溶液に合成した7,8−ジメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジン4.4g(10.9mmol)を溶解させた後、ヨウ化メチル(関東化学製)6.9ml(0.11mol)をシリンジで加えた。ヨウ化メチルを加えた後、室温で24時間撹拌した。反応終了後、吸引濾過により余剰の炭酸カリウムを濾別し、得られたジメチルホルムアミド溶液からエバポレーターにてジメチルホルムアミドを減圧除去し、5.2gの褐色液体を得た。得られた褐色液体を、クロロホルムを溶離液として中性アルミナ(メルク社製)200gによりカラム精製を行い、1.65gの黄色粉体を得た。
【0037】
得られた黄色粉体は、H−NMRスペクトル分析より、3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジンであることを確認した。
【0038】
270MHz H−NMRの測定結果;δ(DMSO−d6):2.44(3H)、2.55(3H)、3.52(3H)、3.54〜3.61(3H)、4.17〜4.30(2H)、4.62〜4.69(2H)、4.91〜5.10(4H)、7.56(1H)、8.06(1H)。
【0039】
<5−エチル−3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジニウムパークロレートの合成>
磁気回転子を付した300ml四つ口フラスコに、シアノトリヒドロほう酸ナトリウム(和光純薬製)3.36g(0.05mol)を採り、四つ口フラスコ内を窒素パージした後、窒素雰囲気とした。ジメチルホルムアミド80mlを用いて2.1gの3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジンを溶解させ、四つ口フラスコに移した。更に40mlのジメチルホルムアミドを加えた後、更に酢酸(和光純薬製)1.5mlをシリンジで加えた。最後に90%アセトアルデヒド(和光純薬製)溶液25g(0.5mol)を一度に加え、オイルバスを用いて内部温度を60℃とした。そのままの温度で2時間撹拌し、黄色スラリーを得た。この反応液を室温まで放冷した後、水300ml、クロロホルム600mlを加え抽出をした。クロロホルム溶液は、更に飽和食塩水300mlを用いて洗浄した。得られたクロロホルム溶液からクロロホルム及びジメチルホルムアミドを減圧下で留去した。得られた残渣をエタノールに溶解させ、更に10%アンモニア水溶液を加えた後、この混合液を0℃まで冷却した。0℃で該混合液に4モル/リットル過塩素酸水溶液60ml、亜硝酸ナトリウム1.4g及び過塩素酸ナトリウム3.1gを加えた。得られた紫色のスラリー液を室温まで戻して2時間撹拌した後、濾過して5−エチル−3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジニウムパークロレートを紫色粉体として1.1g得た。
融点測定結果:206〜208℃
UV測定結果:(CHCN)λmax418nm、559nm
IR測定結果:(KBr)1710、1650、1600、1560、1460、1440、1360、1180、1120、1100(cm−1)。
【0040】
合成例2(5−エチル−3,7,8,10−テトラメチルイソアロキサジニウムパークロレートの合成)
リービッヒ アナーレン デール ケミー,p.1388〜1415(1973)記載の方法に従い合成し、赤紫粉体として5−エチル−3,7,8,10−テトラメチルイソアロキサジニウムパークロレート0.35gを得た。
融点測定結果:220〜225℃
UV測定結果:(CHCN)λmax412nm、555nm
IR測定結果:(KBr)1700、1650、1100(cm−1)。
【0041】
合成例3
撹拌機、温度計、窒素導入管を取り付けた2リットルのSUS製オートクレーブに、1,4−ジクロロ−2−ブテンを800gとジシクロペンタジエンを212g仕込み、窒素で系内を十分に置換した後、反応温度170℃で4時間ディールズアルダー反応を行なった。
【0042】
得られた反応液は、0.4kPaの減圧下で蒸留し80℃〜93℃の留分を280g得た。
【0043】
この留分は、淡黄色の液体で、H−NMRスペクトル及びGC−MSより5−ノルボルネン−2,3−ビスクロロメチルであることを確認した。
【0044】
次に、磁気回転子が入った100mlシュレンク管を減圧下にヒートガンで乾燥し、窒素で十分置換した。ここに、下記の一般式(2)で示されるルテニウム錯体21mg(25μmol)を入れた。このシュレンク管に乾燥クロロホルム46mlとフェニルビニルスルフィド34mg(0.25mmol)をシリンジで秤入れ、メタセシス重合触媒溶液を調製した。次に、先に合成した5−ノルボルネン−2,3−ビスクロロメチル3.8g(25mmol)を仕込み、60℃に調整したオイルバスに浸け、5時間重合を行なった。
【0045】
その後、重合溶液を2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエンを0.1%含んだメタノール150mlに流し込みポリマーを析出させた。ろ過後、回収したポリマーは真空乾燥機中、室温で8時間乾燥し、3.5gのポリマーを得た。
【0046】
得られたポリマーは、H−NMRスペクトル分析より、5−ノルボルネン−2,3−ビスクロロメチルの開環メタセシス重合体であることを確認した。
【0047】
270MHz H−NMRの測定結果;δ(CDCl):1.4〜3.6(10H)、5.2〜5.6(2H)
このポリマーの重量平均分子量(Mw)は20000であった。
【0048】
【化2】

【0049】
(2)
実施例1
磁気回転子が入った50mlステンレスオートクレーブに、合成例3で得た5−ノルボルネン−2,3−ビスクロロメチルの開環メタセシス重合体0.5g(2.6mmol)と1,1,2−トリクロロエタン10mlを仕込み室温で撹拌溶解した。この溶液に、ヒドラジン一水和物0.62g(12.5mmol)及び合成例1で合成した5−エチル−3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジニウムパークロレート(3.4mg/6.6μmol)を入れ、空気を0.2MPaGまで加圧し、120℃に加温したオイルバスに浸けて4時間撹拌した。尚、反応2時間目に空気の入れ替えを1回行った。反応終了後、反応液は室温まで冷却し、反応液をメタノール100mlに投入してポリマーを析出させた。ろ過後、回収したポリマーは真空乾燥機中、40℃で4時間乾燥し、0.49gのポリマーを得た(回収率98%)。
【0050】
得られたポリマーのH−NMRスペクトル分析より水素化率を求めた。結果を表1に示す。
【0051】
実施例2
ヒドラジン一水和物0.62g(12.5mmol)の代わりに、ヒドラジン一水和物1.24g(25mmol)を使用した以外は、実施例1と同様に反応してポリマーを回収した。得られたポリマーのH−NMRスペクトル分析より水素化率を求めた。結果を表1に示す。
【0052】
実施例3
触媒として5−エチル−3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジニウムパークロレート(3.4mg/6.6μmol)の代わりに、合成例2で得た5−エチル−3,7,8,10−テトラメチルイソアロキサジニウムパークロレート(2.6mg/6.6μmol)を用いた以外は、実施例1と同様に反応してポリマーを回収した。得られたポリマーのH−NMRスペクトル分析より水素化率を求めた。結果を表1に示す。
【0053】
実施例4
含ハロゲン不飽和ポリオレフィンとして5−ノルボルネン−2,3−ビスクロロメチルの開環メタセシス重合体0.5g(2.6mmol)の代わりに、クロロプレンゴム(東ソー(株)製、商品名スカイプレン)0.23g(2.6mmol)を用いた以外は、実施例1と同様に反応を行ないポリマーを回収した。得られたポリマーのH−NMRスペクトル分析より水素化率を求めた。結果を表1に示す。
【0054】
実施例5
含ハロゲン不飽和ポリオレフィンとして5−ノルボルネン−2,3−ビスクロロメチルの開環メタセシス重合体0.5g(2.6mmol)の代わりに、ポリクロロプレンラテックス0.77g(2.6mmol)を用いた以外は、実施例1と同様に反応を行ないポリマーを回収した。得られたポリマーのH−NMRスペクトル分析より水素化率を求めた。結果を表1に示す。
【0055】
比較例1
磁気回転子が入った50mlオートクレーブに、合成例3で得た5−ノルボルネン−2,3−ビスクロロメチルの開環メタセシス重合体を0.5g(2.6mmol)、o−ジクロロベンゼンを25ml、触媒として5%Pd/活性炭を0.1g仕込み、水素圧1MPaG、150℃で4時間撹拌した。反応終了後、反応液は室温まで冷却した後、触媒をろ過した。得られたろ液からエバポレーターでo−ジクロロベンゼンを除去し粗製ポリマーを得た。粗製ポリマーはクロロホルム10gに溶解し、メタノール50gに添加して再沈精製した。析出したポリマーはろ過した後、真空乾燥機中、40℃で5時間乾燥した。得られたポリマーのH−NMRスペクトル分析より水素化率を求めたが水素化反応は進行しなかった。結果を表1に示す。
【0056】
比較例2
5%Pd/活性炭の代わりに、5%Pd/シリカを用いた以外は、比較例1と同様に反応を行ない、ポリマーを回収した。得られたポリマーのH−NMRスペクトル分析より水素化率を求めたが水素化反応は進行しなかった。結果を表1に示す。
【0057】
比較例3
5%Pd/活性炭の代わりに、5%Pd/アルミナを用いた以外は、比較例1と同様に反応を行ない水素化反応を試みたが、その際に脱塩化水素反応が進行した。結果を表1に示す。
【0058】
比較例4
5%Pd/活性炭の代わりに、5%Ru/アルミナを用いた以外は、比較例1と同様に反応を行ない水素化反応を試みたが、その際に脱塩化水素反応が進行した。結果を表1に示す。
【0059】
比較例5
合成例3で得た5−ノルボルネン−2,3−ビスクロロメチルの開環メタセシス重合体0.5g(2.6mmol)の代わりに、クロロプレンゴム(東ソー(株)製、商品名スカイプレン)0.23g(2.6mmol)を用いた以外は、比較例1と同様に反応を行ない、ポリマーを回収した。得られたポリマーのH−NMRスペクトル分析より水素化率を求めたが水素化反応は進行しなかった。結果を表1に示す。
【0060】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒、ヒドラジン及び酸素の存在下、下記の一般式(1)で表わされるフラビン系化合物を水素化触媒として用い、含ハロゲン不飽和ポリオレフィンを水素化することを特徴とする含ハロゲン飽和ポリオレフィンの製造方法。
【化1】

(1)
(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜12のフェニルアルキル基を表し、R,Rは、各々独立して水素原子、炭素数1〜10のアルキル基,アルコキシ基を表し、Rは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基,シクロアルキル基、2,4:3,5−ジ−o−メチレンリビチル基、フェニル基を表し、Rは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜12のフェニルアルキル基を表す。)
【請求項2】
フラビン系化合物が、5−エチル−3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジニウムパークロレート及び/又は5−エチル−3,7,8,10−テトラメチルイソアロキサジニウムパークロレートであることを特徴とする請求項1に記載の含ハロゲン飽和ポリオレフィンの製造方法。
【請求項3】
含ハロゲン不飽和ポリオレフィンが、5−ノルボルネン−2,3−ビスクロロメチル開環メタセシス重合体及び/又はポリクロロプレンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の含ハロゲン飽和ポリオレフィンの製造方法。

【公開番号】特開2008−150504(P2008−150504A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−340258(P2006−340258)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】