説明

含フッ素アクリレート

【課題】フッ素化合物の優れた特性を有すると共に、非フッ素系有機化合物との相溶性にも優れた光硬化可能なフッ素化合物の提供。
【解決手段】環状シロキサン構造を備えた含フッ素アクリレートもしくは含フッ素α置換アクリレートであって、例えば、下記式で表される化合物である。


(Rfは下記式(4)で表されるパーフルオロポリエーテル残基であり、


式(4)中、j、k、l及びmはRfの分子量が200〜6000となる範囲において、0〜50の整数であり、XはFもしくはトリフルオロメチル基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化可能な含フッ素アクリレートに関し、詳細には環状シロキサン構造を備え、非フッ素系溶媒との相溶性に優れる含フッ素アクリレートもしくは含フッ素α置換アクリレート(以下、まとめて「含フッ素アクリレート」という)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線などの光照射により硬化可能なフッ素化合物としては、側鎖にパーフルオロアルキル基を有する重合性モノマー、例えば、アクリル酸含フッ素アルキルエステルやメタクリル酸含フッ素アルキルエステルから得られる重合体が広く知られている。代表的なものとして、下記の構造のものが基材表面に撥水撥油性、防汚性、耐摩耗性、耐擦傷性等を付与する目的で多く用いられてきた。


【0003】
ところが近年、環境負荷の懸念から炭素数8以上の長鎖パーフルオロアルキル基を含有する化合物の利用を制限する動きが強まっている。しかし、炭素数8未満のパーフルオロアルキル基を含有するアクリル化合物から得られる被膜は、炭素数8以上の長鎖パーフルオロアルキル基を持つものに比べ、その表面特性が顕著に悪いことが知られている(非特許文献1)。
【0004】
一方、炭素数が3以下のパーフルオロアルキル基とエーテル結合性酸素原子からなるパーフルオロポリエーテル類を導入した光硬化可能なフッ素化合物が知られている。たとえば下記の、ヘキサフルオロプロピレンオキシドオリゴマーから誘導されるアクリル化合物が示されている(特許文献1)。

【0005】
また、フッ素含有ポリエーテルジオールと2−イソシアネートエチルメタクリレートとの反応物からなるウレタンアクリレートが知られている(特許文献2)。該ウレタンアクリレートは、フッ素含有化合物の撥水撥油特性から、光重合開始剤、非フッ素化アクリレート及び非フッ素化有機溶剤との相溶性が低く、添加可能な対象及び用途が限られていた。
【非特許文献1】高分子諭文集Vol.64,No.4,pp.181−190(Apr. 2007)
【特許文献1】特開平5−194322号公報
【特許文献2】特開平11−349650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、フッ素化合物の優れた特性を有すると共に、非フッ素系有機化合物との相溶性に優れ、且つ、光硬化可能なフッ素化合物を提供することを目的として、研究を重ねている(特願2008−195417号、特願2008−315203号)。本発明は、その一環として為されたものであり、所定のオキシアルキレン基を備えることによって、非フッ素系有機化合物との相溶性がより優れた含フッ素アクリレートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、下記式(1)で表される、含フッ素アクリレートもしくは含フッ素α置換アクリレートである。


[式(1)中、aは1〜4の整数、bは1〜4の整数、但しa+bは3、4又は5であり、
は下記式(2)で表される基であり、



(式(2)中、d、e、f、gはRの分子量が30〜300となる範囲において、それぞれ独立に0〜4の整数であり、各繰り返し単位の配列はランダムであってよい)
2は下記式(3)で表される炭素数4〜20のアクリル基もしくはα置換アクリル基含有基であり、



(式(3)中、R3は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基であり、
は炭素数1〜18の、エーテル結合及び/又はエステル結合を含んでいて良い2価もしくは3価の連結基であり、
nは1又は2である)
Rfは下記式(4)で表されるパーフルオロポリエーテル残基であり、



(式(4)中、j、k、l及びmはRfの分子量が200〜6000となる範囲において、それぞれ独立に0〜50の整数であり、Xはフッ素原子もしくはトリフルオロメチル基であり、各繰り返し単位の配列はランダムであってよい)
Zは2価の有機基であり、cは0または1である。]
【発明の効果】
【0008】
本発明の含フッ素アクリレートは、非フッ素化有機化合物との相溶性に優れるだけでなく、光で硬化して撥水撥油性の硬化物を形成することができ、フッ素系だけでなく非フッ素系ハードコート用の添加剤としても有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明における含フッ素アクリレートは下記式(1)で示される。


式(1)において、式(1)中、aは1〜4の整数、bは1〜4の整数、但しa+bは3、4又は5である。好ましくは、aが1、bが3または4である。後述するように、上記アクリレートはSiに結合された水素原子と、側鎖を形成する化合物中の不飽和基を反応させて調製されるので、該化合物を用いる割合に応じて側鎖の構成比を代えることができる。例えばa=b=2のアクリレート、a=1、b=3であるアクリレートを作ることができる。また、これらの混合物も作ることができ、例えばa=b=2である物と、a=b=1である物を50モル%ずつ含み、全体として、a=b=1.5である物を作ることができる。
【0010】
は下記式(2)で表される基であり、


式(2)中、d、e、f、gはRの分子量が30〜300、好ましくは30〜90となる範囲において、それぞれ独立に0〜4の整数である。なお、各繰り返し単位の配列はランダムであってよい。
【0011】
このような構造のうち特に好ましいものとして下記の三つを挙げることができる

ここで、d、e、fは、それぞれ1または2であり、プロピレン基及びブチレン基は分岐があってもよい。
【0012】
は下記一般式(3)で表される、少なくとも一つのアクリル基、またはα置換アクリル基のいずれかを有する炭素数1〜20の一価の有機基である。

式中R3は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基のいずれかであり、特に好ましくは水素原子及びメチル基であり、Rは炭素数1〜18の2価もしくは3価の連結基であり、エーテル結合性酸素やエステル構造、アクリル基構造、メタクリル基構造を含んでいても良く、好ましくは下記式Rにおいて含まれる基、特にエチレン基である。
【0013】
として特に好ましい例としては下記に示すものが挙げられる。

【0014】
Rfは以下の一般式(4)で表されるパーフルオロポリエーテル残基であり、

式(3)中、j、k、l及びmは、Rfの分子量が200〜6000、好ましくは400〜2000となる範囲において、それぞれ独立に0〜50、好ましくは2〜15の整数である。また、各繰り返し単位の配列はランダムであってよい。Xはフッ素原子もしくはトリフルオロメチル基である。特に好ましいRfとしては下記の基が挙げられる。

ここでp、t、uはそれぞれ1〜30、好ましくは2〜15、特に好ましくは3〜10の整数である。また-OCF2CF2-基と-OCF2-基の配列はランダムであってよい。
【0015】
式(1)において、Zは2価の有機基である。Rfをエチレン基に連結する基ことができればよく、アクリル基の重合を阻害するようなものでなければ、その構造は特に制限されない。たとえば以下のような例が挙げられる。


これらの中でも特に下記のものが好ましい。


【0016】
本発明の含フッ素アクリレートは、以下の方法で合成することができる。
先ず、下記式に示されるような、環状ハイドロジェンシロキサン(5)と、


(式(5)において、sは3、4又は5)
下記含フッ素オレフィン化合物(6)と、


(X,j、k、l、mについては上記のとおりである)
アリル末端アルキルアルコール化合物(7)を、



(d、e、f、g、hについては上記のとおりである)

公知の白金族金属触媒の存在下で付加反応に付して、下記(8)に示されるような化合物を合成することができる。


【0017】
上記(8)のOH基と、下記化合物(9)



を反応させることで、上記式(1)の構造を有する化合物が得られる。
【0018】
化合物(5)、(6)、及び(7)の付加反応は、特にその反応順序は限定されないが、(7)の水酸基と(5)のSiH基による縮合を避けるため、(7)の付加反応は、(5)と(6)の付加反応を行った後に、残存したSiH基に対して、過剰の(7)を反応させるのが好適である。或いは、はじめに大過剰量の化合物(5)に対する(6)の付加反応を行った後に未反応の(5)を除去精製し、あるいはカラムクロマトグラフィー等の分離手段により、(5)と(6)の付加率を目的に一致するように調整してから、(7)の付加を行うことでより厳密に各成分の平均付加率を制御することもできる。
【0019】
化合物(8)と(9)の反応は、0〜70℃の温和な条件下で両者を混合することで進行させることができる。反応の速度は、適切な触媒系、例えば酢酸第1錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクタン酸第1錫のようなスズ誘導体、鉄アセチルアセトネートのような鉄誘導体、チタンテトライソプロピレートのようなチタンアルコレート、トリエチルアミンのような第三級アミン、またはN−メチルモリホリンを、反応物総重量に対して0.001〜2重量%、好ましくは0.001〜0.5重量%で加えることによって増加させることができる。また必要に応じて各種溶媒で希釈して、反応を行っても良い。
【0020】
好ましくは、該ハードコート組成物の主剤がウレタンアクリレートであるものが使用される。該ウレタンアクリレートとしては、ポリイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られるもの、ポリイソシアネートと末端ジオールのポリエステルに水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られるもの、ポリオールに過剰のジイソシアネートと反応させて得られるポリイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られるものが挙げられ、中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、及びペンタエリスリトートリアクリレートから選ばれる水酸基を有する(メタ)アクリレートと、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、及びジフェニルメタンジイソシアネートから選ばれるポリイソシアネートを反応させたウレタンアクリレート類を含むものへの配合が好適である。
【0021】
また本発明の化合物を配合するのに好適な他のハードコート組成物としては、その主剤が、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、フタル酸水素−(2,2,2−トリ−(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチル、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート等の2〜6官能の(メタ)アクリル化合物、これらの(メタ)アクリル化合物をエチレンオキシド、プロピレンオキシド、エピクロルヒドリン、脂肪酸、アルキル、ウレタン変性品、エポキシ樹脂にアクリル酸を付加させて得られるエポキシアクリレート類、アクリル酸エステル共重合体の側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入した共重合体等を含むものが挙げられる。
【0022】
その他、紫外線や電子線など活性エネルギー線で硬化可能なハードコート材は各社からさまざまなものが市販されている。例えば、荒川化学工業(株)「ビームセット」、大橋化学工業(株)「ユービック」、オリジン電気(株)「UVコート」、カシュー(株)「カシューUV」、JSR(株)「デソライト」、大日精化工業(株)「セイカビーム」、日本合成化学(株)「紫光」、藤倉化成(株)「フジハード」、三菱レイヨン(株)「ダイヤビーム」、武蔵塗料(株)「ウルトラバイン」等などの商品名が挙げられる。また、本発明の化合物を、フッ素系のハードコード組成物に配合することによって、撥水性、撥油性等をさらに増強することができる。
【0023】
本発明の化合物を配合してハードコート組成物を硬化させることで、コーティングに防汚、撥水、撥油性、耐指紋性を付与しあるいは向上させることが出来、指紋、皮脂、汗などの人脂、化粧品等により汚れ難くなり、汚れが付着した場合であっても拭き取り性に優れる。このため、本発明の化合物は、人体が触れて人脂、化粧品等により汚される可能性のある表面、例えば、光磁気ディスク、CD・LD・DVD・ブルーレイディスクなどの光ディスク、ホログラム記録などに代表される光記録媒体;メガネレンズ、プリズム、レンズシート、ペリクル膜、偏光板、光学フィルター、レンチキュラーレンズ、フレネルレンズ、反射防止膜、光ファイバーや光カプラーなどの光学部品・光デバイス;CRT、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、背面投写型ディスプレイ、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッシプロジェクションディスプレイ、トナー系ディスプレイ等の各種画面表示機器、特にPC、携帯電話、携帯情報端末、ゲーム機、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、自動現金引出し預け入れ装置、現金自動支払機、自動販売機自動車用等のナビゲーション装置、セキュリティーシステム端末等の画像表示装置、及びその操作も行うタッチパネル(タッチセンサー、タッチスクリーン)式画像表示入力装置;携帯電話、携帯情報端末、携帯音楽プレイヤー、携帯ゲーム機、リモートコントローラ、コントローラ、キーボード等、車載装置用パネルスイッチなどの入力装置;携帯電話、携帯情報端末、カメラ、携帯音楽プレイヤー、携帯ゲーム機などの筐体表面;自動車の外装、ピアノ、高級家具、大理石などの塗装及び表面;美術品展示用保護ガラス、ショーウインドー、ショーケース、広告用カバー、フォトスタンド用のカバー、腕時計、自動車用フロントガラス、列車、航空機等の窓ガラス、自動車ヘッドライト、テールランプなどの透明なガラス製または透明なプラスチック製(アクリル、ポリカーボネートなど)部材、各種ミラー部材等に、上に施与される、塗装膜もしくは保護膜を形成するために使用される硬化性組成物の添加剤として有用である。添加量は、ハードコート組成物の固形分100部に対して、0.1部〜10部の範囲内で、所望する撥油性、組成物の溶解性、硬化条件に応じて、適宜調整される。
【実施例】
【0024】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
実施例
乾燥窒素雰囲気下で、還流装置と攪拌装置を備えた100ml三口フラスコに下記(10)式で示される含フッ素環状シロキサン30.0gと、



(式中、但し、Rfは下記の基であり、繰返し単位の数に分布があり、その平均値が5.2である。)



トルエン20.0gを仕込み、攪拌しながら90℃まで加熱した。ここにエチレングリコールモノアリルエーテル10.3gとビニルシロキサン変性塩化白金酸のトルエン溶液0.010g(白金換算で2.49×10-8mol)の混合溶液を30分かけて滴下し、90℃で12時間攪拌した。反応の進行状態はH−NMRで4.8ppmに現れる化合物(10)のSi−H基の減少により確認した。反応溶液は100℃、1Torrで2時間処理し、未反応のエチレングリコールモノアリルエーテルを除去した。
得られた化合物32gに対して乾燥空気雰囲気下で2−イソシアナトエチルアクリレート8.20g、ジオクチル錫ラウレート0.01gを混合し、25℃で12時間攪拌し下記のような平均組成を有する化合物を得た。該化合物のH−NMR、19F−NMRスペクトルのケミカルシフトを以下に示す。



(Rfは上記のとおり)
【0025】
H−NMRスペクトルのケミカルシフト
(測定装置:日本電子製 JMN−LA300W、溶媒CDCl

【0026】

19F−NMRのケミカルシフト

【0027】
比較例
乾燥空気存在下で、還流装置とメカニカルスターラーを備えた200ml三口フラスコ中に2−イソシアネートエチルメタクリレート15.5gとジオクチル錫ラウレート0.005gを仕込み、パーフルオロポリエーテルジオール(ソルベイ・ソレクシス社製、商品名、FOMBLIN D2000、平均分子量2000)100gを50℃で1時間かけて滴下した。滴下了後50℃で5時間攪拌した。反応物のIRスペクトルからは2300cm−1に現れる−N=C=O基由来のピークが消失しており、両末端にメタクリル基を有するパーフルオロポリエーテルジオールが得られた。
実施例及び比較例の化合物各0.5gを、下記の各種溶媒10gと混合しその溶解性を目視にて調べた結果を表1に示す。表1において、○は透明な溶液になったことを、×はそれ以外であったことを示す。
【0028】
【表1】


*アサヒクリン AK-225、旭硝子(株)製
【0029】
表1に示すように、実施例の化合物は、従来の含フッ素アクリレートに比べて、多くの非フッ素系溶媒に溶解する。
【0030】
ハードコート組成物における評価1
実施例で調製した化合物をそれぞれ以下の組成で配合した溶液を調製した。なお、ブランクとして、何も添加剤を含まない溶液も調製した。

【0031】
各溶液をガラス板上にスピンコートし、コンベア型紫外線照射装置において1.6J/cmの紫外線を照射して硬化膜を形成し、その外観を目視により評価した。また、接触角計(協和界面科学社製)を用いて、水接触角、オレイン酸接触角を測定した。なお、比較例の化合物は、溶解性が悪く溶液にならなかったため、ハードコートを作ることができなかった。
【0032】
表2に、それぞれのハードコート処理表面の特性を示す。マジックはじき性は、ゼブラ株式会社製油性マーカー、ハイマッキーで、表面に線を引いた場合の、インキのはじかれ具合を目視で評価した。指紋拭取り性は、表面に人差し指を押し当てて指紋を付着させた後にティッシュペーパーで拭きその拭きとり性を目視で評価した。
【0033】
【表2】

【0034】
ハードコート組成物における評価2
実施例の化合物を以下の組成で配合した溶液を調製した。なお、ブランクとして、添加剤を含まない溶液も調製した。


各溶液をガラス板上にスピンコートし、コンベア型紫外線照射装置において窒素雰囲気中で1.6J/cmの紫外線を照射して、硬化膜を形成し、その外観を目視により評価した。また、接触角計(協和界面科学社製)を用いて、水接触角、オレイン酸接触角を測定した。なお、比較例の化合物は、溶解性が悪く溶液にならなかった。
【0035】
下表に、それぞれのハードコート処理表面を評価1と同様の方法で評価した結果を示す。
【0036】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0037】
以上示したように、本発明の化合物は、非フッ素化有機化合物との相溶性にも優れるため、ガラス、樹脂、フィルム、紙、金属、陶器、木材などへの表面ハードコート用組成物、印刷物表面の保護膜用組成物、塗装用組成物などへの配合物として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される、含フッ素アクリレートもしくは含フッ素α置換アクリレート。


[式(1)中、aは1〜4の整数、bは1〜4の整数、但しa+bは3、4又は5であり、
は下記式(2)で表される基であり、



(式(2)中、d、e、f、gはRの分子量が30〜300となる範囲において、それぞれ独立に0〜4の整数であり、各繰り返し単位の配列はランダムであってよい)
2は下記式(3)で表される炭素数4〜20のアクリル基もしくはα置換アクリル基含有基であり、



(式(3)中、R3は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基であり、
は炭素数1〜18の、エーテル結合及び/又はエステル結合を含んでいて良い2価もしくは3価の連結基であり、
nは1又は2である)
Rfは下記式(4)で表されるパーフルオロポリエーテル残基であり、



(式(4)中、j、k、l及びmはRfの分子量が200〜6000となる範囲において、それぞれ独立に0〜50の整数であり、Xはフッ素原子もしくはトリフルオロメチル基であり、各繰り返し単位の配列はランダムであってよい)
Zは2価の有機基であり、cは0または1である。]
【請求項2】
式(1)において、Rが下記式のいずれかで表される基である、請求項1記載の含フッ素アクリレートもしくは含フッ素α置換アクリレート。



(d、e、fは、それぞれ1または2である)
【請求項3】
式(1)において、Rが下記式のいずれかで表される基である、請求項1または2記載の含フッ素アクリレート。


【請求項4】
式(1)において、Rfが下記式で表される基である、請求項1〜3のいずれか1項記載のフッ素アクリレートもしくは含フッ素α置換アクリレート。

(pは1〜30の整数である)
【請求項5】
式(1)において、cが1であり、Zが下記式で表される基である、請求項1〜4のいずれか1項記載の含フッ素アクリレートもしくは含フッ素α置換アクリレート。

【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の含フッ素アクリレートもしくは含フッ素α置換アクリレートを含有するハードコート組成物。
【請求項7】
主剤としてウレタンアクリレートを含有する請求項6記載のハードコート組成物。

【公開番号】特開2010−138112(P2010−138112A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316050(P2008−316050)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】