説明

含フッ素エステル型単量体及びその製造方法、含フッ素エステル型高分子化合物並びにジフルオロヒドロキシカルボン酸化合物

【課題】波長200nm以下の放射線に対して優れた透明性を有し、適切なアルカリ加水分解性を有すると共に、構造の選択により撥水性、滑水性、表面偏在性など各種性能の調整が可能で、例えばフォトレジスト用添加剤又は保護膜材料等の水液浸ArFレーザー露光リソグラフィー材料を構成する高分子化合物を提供する。
【解決手段】特定の含フッ素エステル型単量体及び該含フッ素エステル型単量体繰り返し単位を有する高分子化合物、及び該高分子化合物が可視光から波長200nm以下までの幅広い波長領域において優れた透明性を有し、また適切なアルカリ加水分解性を有することから、光機能性材料、コーティング材料等の原料として有用で、更に、フォトレジスト用添加剤又は保護膜材料等の水液浸ArFレーザー露光リソグラフィー材料を構成するポリマーとして特に有用となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素エステル構造を有する新規な単量体に関する。本発明の含フッ素エステル型単量体は、その重合体が可視光から波長200nm以下までの幅広い波長領域において優れた透明性を有し、また適切なアルカリ加水分解性を有することから、光機能性材料、コーティング材料等の原料として有用である。
更に、上記単量体は、その重合体が構造の選択により撥水性、滑水性、表面偏在性など各種性能の調整が可能であることから、例えばフォトレジスト用添加剤又は保護膜材料等の水液浸ArFレーザー露光リソグラフィー材料を構成するポリマーの原料単量体として特に有用である。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が急速に進んでいる。その背景には露光光源の短波長化があり、例えば水銀灯のi線(365nm)からKrFエキシマレーザー(248nm)への短波長化により64Mビット(加工寸法が0.25μm以下)のDRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)の量産が可能になった。更に集積度256M及び1G以上のDRAM製造を実現するため、ArFエキシマレーザー(193nm)を用いたリソグラフィーが本格的に検討され、高NAのレンズ(NA≧0.9)と組み合わせることにより65nmノードのデバイスの量産が可能となった。その次の45nmノードのデバイス製作には波長157nmのF2レーザーの利用が候補に挙げられたが、コスト面でのデメリットに加え、レジストの性能不足等に代表される多くの問題により適用が先送りされた。そして、F2リソグラフィーの代替として提案されたのがArF液浸リソグラフィーであり、現在、集中的に開発が行われている(非特許文献1:Proc.SPIE.Vol.4690、xxix(2002))。
【0003】
ArF液浸リソグラフィーでは投影レンズとウエハーの間に水を含浸させ、水を介してArFエキシマレーザーを照射する。193nmにおける水の屈折率は1.44であるため、NAが1.0以上のレンズを使ってもパターン形成が可能になり、理論上はNAを1.44にまで上げることができる。NAの向上分だけ解像力が向上し、NAが1.2以上のレンズと強い超解像技術の組み合わせで45nmノードの可能性が示唆されている(非特許文献2:Proc.SPIE.Vol.5040、p724(2003))。
【0004】
しかし、レジスト膜上に水が存在した状態で露光を行うと、レジスト膜内で発生した酸やレジスト材料に添加されている塩基性化合物の一部が水層に溶出し、その結果としてパターンの形状変化やパターン倒れが発生する可能性がある。また、レジスト膜上に残った微量の水滴がレジスト膜中に染み込むことにより欠陥が発生する可能性も指摘されている。これらの欠点を改善するため、ArF液浸リソグラフィーではレジスト膜と水の間に含フッ素材料を用いた保護膜を設けることが提案された(非特許文献3:2nd Immersion Workshop:Resist and Cover Material Investigation for Immersion Lithography(2003))。
【0005】
含フッ素保護膜材料のうち、パーフルオロアルキル化合物からなる保護膜は、塗布膜厚制御のための溶媒及び露光後の保護膜の剥離にフロンが用いられている。周知の通り、フロンは環境保全の観点からその使用が問題となっている上、保護膜の塗布と剥離に専用のユニットを増設しなければならないことなどを考えると実用面での問題が大きい。
【0006】
上記保護膜の実用面での欠点を軽減する手段として、アルカリ現像液可溶型の保護膜が提案された(特許文献1:特開2005−264131号公報)。アルカリ可溶型保護膜は、フォトレジスト膜の現像時に同時に保護膜の剥離ができるため、専用の剥離ユニットを必要としない点では画期的である。しかし、保護膜材料の塗布用溶媒はフォトレジスト層を溶解するものは選択できないうえ、保護膜の塗布専用のユニットが必要となるなど、実用面での改善の余地は依然として残っている。
【0007】
レジスト膜内への水の浸透を抑制する方法としては、疎水性含フッ素化合物をレジスト材料に添加する手法が提案されている(特許文献2:特開2006−48029号公報)。この方法はレジスト保護膜の利用に比べ保護膜の成膜と除去にかかる工程が不要である点で有利である。しかし、これらの疎水性含フッ素化合物をレジスト材料に添加すると、レジスト膜表面の接触角、特に現像後の接触角が増大し、ブロブ欠陥と呼ばれる欠陥が発生し易くなる。そこで水のバリアー性は高く保ちながら、現像後のレジスト表面の接触角を低くできるようなレジスト添加剤の開発が望まれ、また更なる性能向上のため、これらの設計思想を反映し、かつ望ましくは要求される種々の性能に応じて構造の調整が可能な新規単量体の開発が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−264131号公報
【特許文献2】特開2006−48029号公報
【特許文献3】特開2006−152255号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Proc.SPIE.Vol.4690、xxix(2002)
【非特許文献2】Proc.SPIE.Vol.5040、p724(2003)
【非特許文献3】2nd Immersion Workshop:Resist and Cover Material Investigation for Immersion Lithography(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、光機能性材料、コーティング材料等の原料として有用なものであって、その重合体が波長200nm以下の放射線に対して優れた透明性を有し、また適切なアルカリ加水分解性を有すると共に、構造の選択により撥水性、滑水性、表面偏在性など各種性能の調整が可能であり、例えばフォトレジスト用添加剤又は保護膜材料等の水液浸ArFレーザー露光リソグラフィー材料を構成するポリマー単量体として特に有用で、かつ入手容易な取り扱いし易い原料から製造可能な新規単量体及びその製造方法、これから得られる高分子化合物、更にその中間体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、後述の方法により、下記一般式(1)で表される含フッ素エステル型単量体が高収率かつ簡便に得られ、更にこれらの含フッ素単量体を重合して得られる重合体が適切なアルカリ加水分解性を有すると共に、構造の選択により種々の性能調整が可能であることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0012】
即ち、本発明は、下記に示す含フッ素エステル型単量体及びその製造方法、含フッ素エステル型高分子化合物並びにジフルオロヒドロキシカルボン酸化合物を提供する。
請求項1:
下記一般式(1)で表される含フッ素エステル型単量体。
【化1】


(式中、R1は水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表す。R2、R3はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基を表し、又は、R2とR3は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜20の炭化水素環を形成する二価の基を表す。R4は水素原子の一部がフッ素原子で置換されていてもよく、又は、メチレン基の一部が酸素原子又はカルボニル基で置換されていてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の一級又は二級の一価炭化水素基を表す。kは0又は1を示す。)
請求項2:
一般式(1)において、R4が炭素数1〜5の一級アルキル基である請求項1記載の含フッ素エステル型単量体。
請求項3:
一般式(1)において、R4が炭素数2〜8の含フッ素アルキル基である請求項1記載の含フッ素エステル型単量体。
請求項4:
一般式(1)において、R4がMeO(CH2CH2O)nCH2CH2−又はEtO(CH2CH2O)nCH2CH2−(Meはメチル基、Etはエチル基を示す。nは0、1又は2である。)で表されるアルキルオキシアルキル基である請求項1記載の含フッ素エステル型単量体。
請求項5:
一般式(1)において、R4が下記一般式(A)で表される請求項1記載の含フッ素エステル型単量体。
【化2】


(式中、R2、R3は上記と同様であり、R4aは炭素数1〜5の一級アルキル基、炭素数2〜8の含フッ素アルキル基、又はMeO(CH2CH2O)nCH2CH2−又はEtO(CH2CH2O)nCH2CH2−(Meはメチル基、Etはエチル基を示し、nは0、1又は2である。)を示し、点線は結合手を示す。)
請求項6:
下記一般式(1a)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物。
【化3】


(式中、R1は水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表す。R2、R3はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基を表し、又は、R2とR3は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜20の炭化水素環を形成する二価の基を表す。R4は水素原子の一部がフッ素原子で置換されていてもよく、又は、メチレン基の一部が酸素原子又はカルボニル基で置換されていてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の一級又は二級の一価炭化水素基を表す。kは0又は1を示す。)
請求項7:
下記一般式(2)で表されるペンタフルオロヒドロキシケトン化合物を塩基処理することによって得られる下記一般式(3)で表されるジフルオロヒドロキシカルボン酸化合物。
【化4】


(式中、R2、R3はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基を表し、又は、R2とR3は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜20の炭化水素環を形成する二価の基を表す。)
請求項8:
一般式(3)で表されるジフルオロヒドロキシカルボン酸化合物のカルボキシル基をエステル化し、ジフルオロヒドロキシエステル化合物を得、その水酸基をアシル化することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の含フッ素エステル型単量体の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明は、光機能性材料、コーティング材料等の原料として有用な新規な含フッ素エステル型単量体を提供する。また、本発明は、該単量体を原料単量体として用いることにより得られ、波長200nm以下の放射線に対して優れた透明性を有し、また適切なアルカリ加水分解性を有すると共に、構造の選択により撥水性、滑水性、表面偏在性など各種性能の調整が可能で、例えばフォトレジスト用添加剤又は保護膜材料等の水液浸ArFレーザー露光リソグラフィー材料を構成する高分子化合物を提供する。更に、本発明は該単量体の製造において有用な合成中間体を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の含フッ素エステル型単量体は、下記一般式(1)で表されるものである。
【化5】


(式中、R1は水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表す。R2、R3はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基を表し、又は、R2とR3は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜20の炭化水素環を形成する二価の基を表す。R4は水素原子の一部がフッ素原子で置換されていてもよく、又は、メチレン基の一部が酸素原子又はカルボニル基で置換されていてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の一級又は二級の一価炭化水素基を表す。kは0又は1を示す。)
【0015】
2、R3の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、メチルシクロヘキシルメチル基、エチルシクロヘキシルメチル基、エチルシクロヘキシルエチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルエチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルブチル基、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基、エチルビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基、エチルビシクロ[2.2.1]ヘプチルエチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチルメチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチルエチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチルブチル基、メチルビシクロ[2.2.2]オクチルメチル基、エチルビシクロ[2.2.2]オクチルメチル基、エチルビシクロ[2.2.2]オクチルエチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルメチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルエチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルブチル基、メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デシルメチル基、エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デシルメチル基、エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デシルエチル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基、アダマンチルエチル基、アダマンチルブチル基、メチルアダマンチルメチル基、エチルアダマンチルメチル基、エチルアダマンチルエチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルメチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルエチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルブチル基、メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルメチル基、エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルメチル基、エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルエチル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アリール基等の一価炭化水素基を例示できる。また、これらの基中に脂肪族不飽和結合を含んでもよく、従ってアルケニル基、アルキニル基でもよい。
【0016】
2、R3が互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜20の炭化水素環を形成してもよく、この場合の形成される炭化水素環として、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、アダマンタン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン等の炭素数3〜20の脂環式炭化水素が例示でき、これらを含む縮合環でもよく、これらの脂環式炭化水素の水素原子の一部が直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の一価炭化水素基に置換されていてもよく、また、これらの基中に不飽和結合を含んでもよい。
【0017】
4は水素原子の一部がフッ素原子で置換されていてもよく、又は、メチレン基の一部が酸素原子又はカルボニル基で置換されていてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の一級又は二級の一価炭化水素基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、シクロヘキシルペンチル基、シクロヘキシルへキシル基、シクロヘキシルヘプチル基、シクロヘキシルオクチル基、シクロヘキシルノニル基、シクロヘキシルデシル基、メチルシクロヘキシルメチル基、エチルシクロヘキシルメチル基、エチルシクロヘキシルエチル基、ブチルシクロへキシルブチル基、ペンチルシクロヘキシルペンチル基、ヘキシルシクロヘキシルヘキシル基、ヘプチルシクロヘキシルヘプチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルエチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルブチル基、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基、エチルビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基、エチルビシクロ[2.2.1]ヘプチルエチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチルメチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチルエチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチルブチル基、メチルビシクロ[2.2.2]オクチルメチル基、エチルビシクロ[2.2.2]オクチルメチル基、エチルビシクロ[2.2.2]オクチルエチル基、8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルメチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルエチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルブチル基、メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デシルメチル基、エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デシルメチル基、エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デシルエチル基、アダマンチルメチル基、アダマンチルエチル基、アダマンチルブチル基、メチルアダマンチルメチル基、エチルアダマンチルメチル基、エチルアダマンチルエチル基、3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルメチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルエチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルブチル基、メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルメチル基、エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルメチル基、エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルエチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロ−1−プロピル基、3,3,3−トリフルオロ−2−プロピル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル基、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプチル基、2−(パーフルオロブチル)エチル基、2−(パーフルオロヘキシル)エチル基、2−(パーフルオロオクチル)エチル基、2−(パーフルオロデシル)エチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基、メトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、メトキシエトキシエトキシエチル基、エトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基などが例示できる。
【0018】
この場合、R4としては、炭素数1〜5の一級アルキル基、炭素数2〜8の含フッ素アルキル基、MeO(CH2CH2O)nCH2CH2−、EtO(CH2CH2O)nCH2CH2−(Meはメチル基、Etはエチル基、nは0、1又は2)、又は下記一般式(A)で表されるものが好ましい。
【化6】


(式中、R2、R3は上記と同様であり、R4aは炭素数1〜5の一級アルキル基、炭素数2〜8の含フッ素アルキル基、又はMeO(CH2CH2O)nCH2CH2−又はEtO(CH2CH2O)nCH2CH2−(Meはメチル基、Etはエチル基を示し、nは0、1又は2である。)を示し、点線は結合手を示す。)
【0019】
これら置換基R2、R3、R4の構造を選択することにより、本発明の単量体を原料として製造される高分子化合物のアルカリ加水分解性、撥水性、滑水性、表面偏在性など各種性能を調整することができる。この点、本発明の単量体は非常に分子設計の自由度が高い。本発明の単量体の設計思想(Design concept)と共にこれらの置換基R2、R3、R4の好ましい例について述べる。
【0020】
フォトレジスト用添加剤又は保護膜材料等の水液浸ArFレーザー露光リソグラフィー材料を構成する高分子化合物において、〈1〉水の透過を防止するバリアー機能のために撥水性は本質的に必要な性能であり、これは含フッ素炭化水素基(フルオロアルキル基=フルオロカーボン)の存在が好ましい。〈2〉フォトレジスト用添加剤にあっては、予めレジスト材料に混合してレジスト製膜時に表面エネルギーの差異を利用して表面に偏在させることができ、保護膜として機能させる。フルオロアルキル基の導入はこの表面偏在の手段の一つである。また、〈3〉露光時にこれらの保護膜とレンズとの間に存在する水が液滴を残すことなく滑らかに動くことが必要で、保護膜表面の水との接触角、特に後退接触角を高くすることで滑水性が実現する。この目的のためにフルオロアルキル基(フルオロカーボン)と共に疎水性を有する炭化水素基(ハイドロカーボン)、特に分岐状のアルキル基が存在することが好ましい。更に、〈4〉これらの保護膜はレジスト膜の現像に用いられる現像液、通常アルカリ性水溶液によって現像と同時に除去され、また、除去後のレジスト膜表面の水との接触角を低く抑えることがブロブ等の欠陥の低減のために望ましい。本発明の単量体はアルカリ加水分解性のエステル官能基を有し、これが加水分解後にアルカリ可溶になるこれらの機能をもたらす。このアルカリ加水分解性は本発明の単量体の機能の中心をなすものである。
【0021】
これらの機能は、高分子化合物(ポリマー)の製造において本発明の単量体と共に共重合されるコモノマーにも機能を分担させ、ポリマー全体として必要な機能を実現させることができる。共重合に用いられるコモノマーについては後述する。
【0022】
撥水性や滑水性のためのフルオロアルキル基の導入位置としては、R2、R3を選択してもよいが、後述する製造方法による場合、原料の入手のし易さやその価格等を考慮すると、R4へのフルオロアルキル基の導入が好ましい。
【0023】
本発明は、下記一般式(1a)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物(ポリマー)乃至重合体を提供する。
【化7】


(式中、R1は水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表す。R2、R3はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基を表し、又は、R2とR3は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜20の炭化水素環を形成する二価の基を表す。R4は水素原子の一部がフッ素原子で置換されていてもよく、又は、メチレン基の一部が酸素原子又はカルボニル基で置換されていてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の一級又は二級の一価炭化水素基を表す。kは0又は1を示す。また、aは0<a≦1.0である。)
【0024】
本発明の上記一般式(1a)で示される含フッ素高分子化合物について、まずはk=0の場合について説明する。下記反応式(スキームA,B)に示したように加水分解される箇所が分子中に二箇所ある。どちらか一方が加水分解されても、両方が加水分解されても可溶化する機能としては構わない。
【0025】
【化8】

【0026】
このうちスキームAから生じるジフルオロカルボン酸は酸性が強くアルカリ可溶性が大きい。特にR4としては短鎖アルキル基、フルオロアルキル基、アルキルオキシアルキル基を選択するとスキームAによる加水分解をより受け易くなり好ましいと考えられる。
【0027】
次に、本発明の上記一般式(1a)で示される含フッ素高分子化合物についてk=1の場合について説明する。下記反応式(スキームC,D,E)に示したように加水分解される箇所が分子中に三箇所ある。どこか一箇所が加水分解されても、二箇所、又は三箇所が加水分解されても可溶化する機能としては構わない。
【0028】
【化9】

【0029】
実施例において後述するが、本発明の上記一般式(1a)で示される含フッ素高分子化合物についてk=0とk=1を比べると、k=1のときの方がよりアルカリ可溶性が高くなることが知見された。その理由としては、〈1〉加水分解される箇所が二箇所から三箇所に増えたこと、〈2〉スキームDにおける加水分解がスキームBにおける加水分解よりも容易に起こること、〈3〉スキームCではスキームA同様R4に上記記載の選択を用いることで加水分解性が高められるが、更に加水分解される箇所がポリマー主鎖から離れたことにより加水分解性が向上したことなどが考えられる。
【0030】
アルカリ性条件下の加水分解性の観点から、R4としては上記加水分解が容易に起こり得る置換基が望まれ、立体障害が小さく比較的親水性が高く加水分解を受け易い短鎖アルキル基、加水分解後のアルコールの水酸基の酸性度が高く加水分解を受け易いフルオロアルキル基、親水性が高く水との混和能が大きいため加水分解を受け易いアルキルオキシアルキル基等を好ましく例示できる。
【0031】
4として特に好ましい短鎖アルキル基の具体的な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等が挙げられる。R4として特に好ましいフルオロアルキル基としては2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基等が挙げられる。R4として特に好ましいアルキルオキシアルキル基としてはメトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、メトキシエトキシエトキシエチル基、エトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基等が挙げられる。
【0032】
4aとして具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基、メトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、メトキシエトキシエトキシエチル基、エトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基等が挙げられる。
【0033】
本発明の単量体は、上述のようにアルカリ加水分解性が機能の中心をなしており、特開2009−19199号公報に述べられた本発明のR4に対応する部分が酸不安定性保護基(酸性条件下、酸触媒脱離反応が進行してカルボキシル基を生じるような三級アルキル基に代表される置換基)で置換された単量体とは本質的な機能の差を有する。
【0034】
滑水性付与のための疎水性を有する一価の炭化水素基は、R2、R3への導入が好ましい。一価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基等の直鎖状炭化水素基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、3−メチルブチル基、2−メチルブチル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、2−ヘキシル基、3−エチルペンチル基、2−エチルペンチル基、ネオペンチル基等の分岐状炭化水素基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状炭化水素基が好ましく、基中に不飽和結合を含んでもよい。
【0035】
2、R3が同時に炭化水素基である場合には、それぞれ独立にメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。R2、R3の一方が水素原子で一方が炭化水素基である場合にはその炭化水素基がn−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基等の炭素数4以上の直鎖状アルキル基、又は、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、3−メチルブチル基、2−メチルブチル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、2−ヘキシル基、3−エチルペンチル基、2−エチルペンチル基、ネオペンチル基等の分岐状アルキル基が好ましい。実施例において述べるが、特に分岐状アルキル基は滑水性の実現の点で好ましい。
【0036】
以下、本発明の含フッ素エステル型単量体の製造方法について述べるが、本発明の含フッ素エステル型単量体の製造方法はこれに限定されない。
本発明の含フッ素エステル型単量体は、下記一般式(3)で表されるヒドロキシカルボン酸化合物が合成できて、このものを合成中間体として用いることができれば、二回のエステル化反応によりR1、R4の異なる種々の誘導体が共通の中間体から合成できると考えられた。鋭意検討の結果、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールからn−ブチルリチウムの作用によって生じるリチウムエノラートとカルボニル化合物との反応によって合成される下記一般式(2)で表されるペンタフルオロヒドロキシケトン化合物を塩基性条件で処理するとハロホルム反応様の変換(減炭反応)が起こり、ジフルオロヒドロキシカルボン酸化合物(3)を高収率で与えることが知見された。以下、各工程について詳述する。
【0037】
【化10】

【0038】
ステップ(C)は、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールからn−ブチルリチウムの作用によって生じるリチウムエノラートとカルボニル化合物との反応によりペンタフルオロヒドロキシケトン化合物(2)に導く工程である。1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールの使用量はカルボニル化合物1モルに対し、0.5〜2.0モル、特に1.0〜1.2モルが望ましい。n−ブチルリチウムの使用量は1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール1モルに対し、1.0〜2.5モル、特に1.8〜2.0モルとすることが望ましい。
【0039】
反応は無溶媒、又は溶媒中で行うことができる。溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジグリム、トリグリム等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、テトラメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルプロピレンウレア、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン極性溶媒類、アセトニトリル等のニトリル類、ピリジン、トリエチルアミン等のアミン類の中から反応条件により選択して単独又は混合して用いることができる。
【0040】
反応温度は反応速度に応じて−40℃から溶媒の還流温度までの範囲で選択する。反応時間はガスクロマトグラフィー(GC)や薄層クロマトグラフィー(TLC)により反応を追跡して反応を完結させることが収率の点で望ましいが、通常0.1〜20時間程度である。反応混合物から通常の水系後処理(aqueous work−up)により目的のペンタフルオロヒドロキシケトン化合物(2)を得る。必要があれば化合物(2)は蒸留、クロマトグラフィー、再結晶等の常法により精製することができる。
【0041】
ステップ(D)はペンタフルオロヒドロキシケトン化合物(2)をNaOH水溶液で処理し、ハロホルム反応様の変換が起こり、ジフルオロヒドロキシカルボン酸化合物(3)に導く工程である。NaOHの使用量は化合物(2)に対し、0.5〜2.0モル、特に1.0〜1.2モルとすることが望ましい。反応は無溶媒で行うことができる。反応温度は反応速度に応じて0℃〜100℃の範囲で選択する。反応時間はガスクロマトグラフィー(GC)や薄層クロマトグラフィー(TLC)により反応を追跡して反応を完結させることが収率の点で望ましいが、通常0.1〜20時間程度である。反応混合物から通常の水系後処理(aqueous work−up)により目的のジフルオロヒドロキシカルボン酸化合物(3)を得る。必要があれば化合物(3)は蒸留、クロマトグラフィー、再結晶等の常法により精製することができる。
【0042】
ステップ(E)は、ジフルオロヒドロキシカルボン酸化合物(3)のカルボキシル基とアルコール化合物R4OHとのエステル化反応により合成できる。
【0043】
カルボン酸化合物(3)とアルコール化合物R4OHとのエステル化反応は、無溶媒で行うことができるが、溶媒を補助的に使用することも可能である。この場合溶媒として、トルエン、ヘキサン等の溶媒中、アルコール化合物R4OHとカルボン酸化合物(3)を酸触媒の存在下加熱し、必要に応じて生じる水を系外に除くなどして行うのがよい。用いる酸触媒としては例えば、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸などの無機酸類、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸等が挙げられる。触媒の使用量は、カルボン酸化合物(3)に対し、0.001〜5.0モル、特に0.001〜0.1モルの使用が好ましい。反応温度は、反応条件により異なるが、50〜200℃が好ましい。反応時間はガスクロマトグラフィー(GC)やシリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)で反応を追跡して反応を完結させることが収率の点で望ましいが、通常0.5〜20時間程度である。反応混合物から通常の水系後処理(aqueous work−up)によりジフルオロヒドロキシエステル化合物(6)を得ることができ、必要があれば蒸留、クロマトグラフィー等の常法に従って精製することができる。またエステル化反応は、カルボン酸と無機ハロゲン化合物より反応系内でカルボン酸塩化合物を調製してアルコール化合物R4OHと反応させてもよい。この場合、無機ハロゲン化合物としては塩化ホスホリル、塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リン、塩化オキサリルなどが挙げられる。これらの溶媒としてはベンゼン、トルエンなどが挙げられる。反応は触媒を使わないでも進行するが、使用する場合は、塩化亜鉛、ピリジン、ヨウ素、トリエチルアミンなどが使われる。ここでできたカルボン酸塩化物を塩基存在下、アルコール化合物R4OHと反応させることでジフルオロヒドロキシエステル化合物を得ることができる。ここでいう塩基としてはピリジン、ジメチルアニリン、テトラメチル尿素、トリエチルアミン、あるいは金属マグネシウムなどが利用される。これらの溶媒としてはアセトニトリル、ジエチルエーテルなどが挙げられる。
【0044】
ステップ(F)は、ジフルオロヒドロキシエステル化合物(6)の水酸基のアシル化反応である。
k=0の場合、ジフルオロヒドロキシエステル化合物(6)へのアクリロイル化、メタクリロイル化、又はα−トリフルオロメチルアクリロイル化反応により、含フッ素エステル型単量体(1)へ導く工程である。
【0045】
反応は公知の方法により容易に進行するが、アシル化剤としては、塩化アクリロイル、塩化メタクリロイル、塩化α−トリフルオロメチルアクリロイル、アクリル酸、メタクリル酸、α−トリフルオロメチルアクリル酸、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、又はα−トリフルオロメチルアクリル酸無水物が好ましい。塩化アクリロイル、塩化メタクリロイル、又は塩化α−トリフルオロメチルアクリロイルを用いる場合は、無溶媒あるいは塩化メチレン、アセトニトリル、トルエン、ヘキサン等の溶媒中、ジフルオロヒドロキシエステル化合物と塩化アクリロイル、塩化メタクリロイル又は塩化α−トリフルオロメチルアクリロイルとトリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基を順次又は同時に加え、必要に応じ、冷却あるいは加熱するなどして行うのがよい。また、アクリル酸、メタクリル酸、又はα−トリフルオロメチルアクリル酸を用いる場合は、トルエン、ヘキサン等の溶媒中、ジフルオロヒドロキシエステル化合物とアクリル酸、メタクリル酸又はα−トリフルオロメチルアクリル酸を酸触媒の存在下加熱し、必要に応じて生じる水を系外に除くなどして行うのがよい。用いる酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸などの無機酸類、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸等が挙げられる。また、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、又はα−トリフルオロメチルアクリル酸無水物を用いる場合は、トルエン等の溶媒中、ジフルオロヒドロキシエステル化合物とアクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、又はα−トリフルオロメチルアクリル酸無水物とトリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基を順次又は同時に加え、必要に応じ、冷却あるいは加熱するなどして行うのがよい。
【0046】
k=1の場合、ジフルオロヒドロキシエステル化合物(6)へのアクリロイルオキシアセチル化、メタクリロイルオキシアセチル化、又はα−トリフルオロメチルアクリロイルオキシアセチル化により、含フッ素エステル型単量体(1)へ導く工程である。
【0047】
反応は公知の方法により容易に進行するが、アシル化剤としては、塩化アクリロイルオキシアセチル、塩化メタクリロイルオキシアセチル、塩化α−トリフルオロメチルアクリロイルオキシアセチル、アクリロイルオキシ酢酸、メタクリロイルオキシ酢酸、又はα−トリフルオロメチルアクリロイルオキシ酢酸が好ましい。塩化アクリロイルオキシアセチル、塩化メタクリロイルオキシアセチル、又は塩化α−トリフルオロメチルアクリロイルオキシアセチルを用いる場合は、無溶媒あるいは塩化メチレン、アセトニトリル、トルエン、ヘキサン等の溶媒中、ジフルオロヒドロキシエステル化合物と塩化アクリロイルオキシアセチル、塩化メタクリロイルオキシアセチル又は塩化α−トリフルオロメチルアクリロイルオキシアセチル等の対応するアシル化剤、トリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基を順次又は同時に加え、必要に応じ、冷却あるいは加熱するなどして行うのがよい。また、アクリロイルオキシ酢酸、メタクリロイルオキシ酢酸、又はα−トリフルオロメチルアクリロイルオキシ酢酸を用いる場合は、トルエン、ヘキサン等の溶媒中、ジフルオロヒドロキシエステル化合物(6)とアクリロイルオキシ酢酸、メタクリロイルオキシ酢酸又はα−トリフルオロメチルアクリロイルオキシ酢酸を酸触媒の存在下加熱し、必要に応じて生じる水を系外に除くなどして行うのがよい。用いる酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸などの無機酸類、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸等が挙げられる。
【0048】
以上述べたように、本発明のジフルオロヒドロキシカルボン酸化合物(3)は、工業的に入手容易な1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールとカルボニル化合物を原料として容易に製造でき、かつ、カルボキシル基のエステル化と水酸基のアシル化によって種々の含フッ素単量体を合成できるため汎用性に優れ非常に有用なものである。特開2009−19199号公報に述べられたブロモジフルオロ酢酸エステル化合物を用いたReformatsky反応を用いた製造方法では、初めから本発明のR4に対応する部分が、試薬として用いるハロジフルオロ酢酸エステル化合物に含まれているために、種々の単量体を合成する場合にはそれぞれに対応するハロジフルオロ酢酸エステル化合物を用いる必要があり、その汎用性は大きく限定されると考えられる。
【0049】
この場合、本発明の高分子化合物(重合体)は、本発明の単量体のみを用いて得たものでもよく、また、本発明の単量体と他の単量体とを共重合させたものでもよいが、他の単量体から得られる繰り返し単位としては、下記式(i)又は(ii)が好ましい。
【化11】


(式中、R1、R2、R3は上記の通り。Aは炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基等の二価炭化水素基を示す。bは0≦b<1.0である。)
【0050】
ここで、本発明の高分子化合物(重合体)は、式(1a)の繰り返し単位と式(i)又は(ii)の繰り返し単位とを有することが好ましい。その割合は、0<a≦1.0、0≦b<1.0であるが、本発明の効果をより有効に発揮させるためには、0<a≦0.8、0≦b≦0.9、特に0<a≦0.6、0≦b≦0.8であることが好ましい。
この場合、0.1≦a+b≦1.0、特に0.3≦a+b≦1.0であることが好ましく、a+b<1.0の場合、他の繰り返し単位としては、下記一般式(10a)〜(10i)で表される繰り返し単位のいずれかの1種又は2種以上を含むことができる。
【0051】
【化12】


(式中、R1は上記と同様である。R5a及びR5bは水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基であり、R5aとR5bは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜8の非芳香環を形成することもできる。R6aは水素原子、炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基又はフッ素化一価炭化水素基、又は酸不安定基を示し、一価炭化水素基の場合、構成する−CH2−が−O−又は−C(=O)−に置換されていてもよい。R7a、R7b、R7cは水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基であり、R7aとR7b、R7aとR7c、R7bとR7cは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜8の非芳香環を形成することもできる。R8aは水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基である。R8bは炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基であり、R8aとR8bは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜8の非芳香環を形成することもできる。R9aは炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のフッ素化一価炭化水素基である。R10aは炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基又はフッ素化一価炭化水素基である。R11aは炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のフッ素化一価炭化水素基である。R12aは水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基を示し、一価炭化水素基の場合、構成する−CH2−が−O−又は−C(=O)−に置換されていてもよい。Aは、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の(k2+1)価の炭化水素基又はフッ素化炭化水素基である。k2は1、2又は3を示し、k1は0又は1を示す。)
【0052】
また、本発明の高分子化合物(重合体)は、溶媒としてテトラヒドロフランを用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量が3,000〜200,000、特に3,000〜20,000であることが好ましい。重量平均分子量が小さすぎるとレジスト材料とのミキシングや水への溶解が起こり易くなる。また重量平均分子量が大きすぎるとスピンコート後の成膜性に問題が生じたり、アルカリ溶解性が低下したりすることがある。
【0053】
上述のようにして得られた本発明の含フッ素エステル型単量体(1)は、例えばラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等の常法によりホモポリマー、あるいは他の1種以上の重合性モノマーを共重合させて本発明の高分子化合物(重合体)を製造することができる。この場合の製造条件等は重合性不飽和結合、特に重合性二重結合を重合する公知の方法、条件を採用することができる。
【0054】
本発明の含フッ素エステル型単量体は、特に、液浸リソグラフィー用レジスト材料に対する添加剤として、また液浸リソグラフィー用レジスト材料のレジスト膜上に形成するレジスト保護膜用材料として使用される重合体を製造するための単量体として好適である。
ここで、液浸リソグラフィーは、投影レンズとレジスト膜との間に水、アルカン等の屈折率が1以上の高屈折率液体を介在させて露光を行う方法を採用するものである。
【0055】
本発明の含フッ素エステル型単量体から得られた重合体を液浸リソグラフィー用レジスト材料に添加したレジスト材料を用いて形成したフォトレジスト膜は、水に対する良好なバリアー性能を有し、フォトレジスト材料の水への溶出を抑制するため、液浸リソグラフィーにおいて保護膜を必要とせず、保護膜の形成等に要するコストを削減できる。また、上記フォトレジスト膜は、水に対して高い後退接触角を有するため、液浸露光の走査後にフォトレジスト膜の表面に液滴が残りにくく、膜表面に残存する液滴が誘発するパターン形成不良を低減することができる。
【0056】
また、上記重合体は、液浸リソグラフィー用レジスト材料のレジスト膜を液浸時に保護する保護膜を形成する材料としても有効で、レジスト保護膜用材料として上記重合体を用いることにより、後退接触角が高いためにレジスト成分の溶出と水の浸透が抑えられる上、現像欠陥が少なく、現像後のレジストパターン形状が良好な液浸リソグラフィーを実現することができる。
【0057】
なお、本発明の単量体から重合体を得る方法としては、常法が採用し得る。即ち、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと略記)等の開始剤を用いるラジカル重合、アルキルリチウム等を用いるイオン重合(アニオン重合)等の一般的重合手法を用いることが可能であり、これらの重合はその常法に従って実施することができる。このうち、ラジカル重合により製造を行うことが好ましい。この場合、重合条件は開始剤の種類と添加量、温度、圧力、濃度、溶媒、添加物等によって支配される。
【0058】
ラジカル重合開始剤としては特に限定されるものではないが、例としてAIBN、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等のアゾ系化合物、tert−ブチルパーオキシピバレート、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレート等の過酸化物系化合物、過硫酸カリウムのような水溶性重合開始剤、更には過硫酸カリウムや過酸化水素等の過酸化物と亜硫酸ナトリウムのような還元剤の組み合わせからなるレドックス系開始剤等が例示される。重合開始剤の使用量は種類や重合条件等に応じて適宜変更可能であるが、通常は重合させるべき単量体全量に対して0.001〜10モル%、特に0.01〜6モル%が採用される。
【0059】
重合を行う際には、必要に応じて溶媒を用いてもよい。重合溶媒としては重合反応を阻害しないものが好ましく、代表的なものとしては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の脂肪族又は芳香族炭化水素類、イソプロピルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒が使用できる。これらの溶媒は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。重合溶媒の使用量は、目標となる重合度(分子量)、開始剤の添加量、重合温度等の重合条件に応じて適宜変更可能であり、通常は重合させる単量体の濃度が0.1〜95質量%、特に5〜90質量%になるように溶媒を添加する。
【0060】
重合反応の反応温度は、重合開始剤の種類あるいは溶媒の沸点により適宜変更されるが、通常は20〜200℃が好ましく、特に50〜140℃が好ましい。かかる重合反応に用いる反応容器は特に限定されない。
【0061】
このようにして得られた重合体の溶液又は分散液から、媒質である有機溶媒又は水を除去する方法としては、公知の方法のいずれも利用できるが、例を挙げれば再沈澱濾過又は減圧下での加熱留出等の方法がある。
【0062】
このようにして得られた重合体をレジスト材料に配合する場合、レジスト材料としては公知の組成のものが使用できるが、上記重合体を下記ベース樹脂と混合して用いると、両者はスピンコート時に層分離を起こし、重合体はレジスト膜の上層に局在化する。その結果、レジスト表面の撥水性と滑水性能が向上すると共に、レジスト材料中の水溶性化合物のリーチングを抑制することができる。
【0063】
ここで、レジスト材料は、ラクトン環及び/又は水酸基を有する繰り返し単位、及び/又は無水マレイン酸由来の骨格を有する繰り返し単位を持ち、酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる高分子化合物(ベース樹脂)を含む。ベース樹脂を構成する高分子化合物としては、(メタ)アクリル酸エステル系、(α−トリフルオロメチル)アクリル酸エステルと無水マレイン酸との共重合系、シクロオレフィンと無水マレイン酸との交互共重合系、ポリノルボルネン系、シクロオレフィン開環メタセシス重合系、シクロオレフィン開環メタセシス重合体の水素添加系ポリマー等が用いられ、その具体例は特開2008−111103号公報の段落[0072]〜[0120]に記載されている。なお、上記ベース樹脂を構成する高分子化合物は1種に限らず、2種以上を添加することができる。複数種の高分子化合物を用いることにより、レジスト材料の性能を調整することができる。
【0064】
上記レジスト材料は化学増幅ポジ型レジスト材料として機能するため、高エネルギー線の露光により酸を発生する化合物(光酸発生剤)を含んでもよい。光酸発生剤の成分としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでも構わないが、好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等が挙げられ、その具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0123]〜[0138]に記載されている。光酸発生剤の添加量は、レジスト材料中のベース樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部である。光酸発生剤が20質量部以下であれば、フォトレジスト膜の透過率が十分大きく、解像性能の劣化が起こるおそれが少ない。上記光酸発生剤は、単独でも2種以上混合して用いることもできる。更に露光波長における透過率が低い光酸発生剤を用い、その添加量でレジスト膜中の透過率を制御することもできる。
【0065】
本発明のレジスト材料は、更に、有機溶媒、塩基性化合物、溶解制御剤、界面活性剤、アセチレンアルコール類のいずれか1つ以上を含有することができる。
【0066】
なお、上記重合体のレジスト材料への添加量は、上記ベース樹脂100質量部に対して0.1〜50質量部とすることができる。
また、上記レジスト材料を用いた液浸リソグラフィーも公知の方法を採用することができる。
上記重合体をレジスト保護膜材料として使用する場合、レジスト材料の構成、液浸リソグラフィーは上記と同様であり、またレジスト保護膜材料の使用態様も公知の態様、方法が採用し得る。
【実施例】
【0067】
以下、実施例及び比較例を示して、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、下記例中Meはメチル基、Etはエチル基を示す。
【0068】
[実施例1]2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−5−メチルヘキサン酸(Intermediate−1)の合成
【化13】


窒素雰囲気下、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール111gとテトラヒドロフラン700mlの混合物を−40℃以下に冷却しながら撹拌し、ここに2.64Mのn−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液500mlを滴下した。この温度で30分間撹拌した後、冷却バスを氷冷に変えて5℃まで昇温し、イソバレロアルデヒド50gとテトラヒドロフラン50mlの混合物を滴下した。反応混合物を撹拌しながら室温に上げて5時間撹拌した。反応混合物を希塩酸にあけ、エーテルで抽出した。エーテル溶液を洗浄、乾燥、濃縮して、粗1,1,1,3,3−ペンタフルオロ−4−ヒドロキシ−2−ヘプタノンを得た。この粗生成物と水50gの混合物に室温で25質量%水酸化ナトリウム水溶液100gを加え、室温で終夜撹拌した。次いで撹拌しながら徐々に90℃まで加熱した。冷却後、反応混合物をn−ヘキサンで抽出し、ヘキサン層を廃棄した。水層に20質量%塩酸を加えて酸性にし、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル溶液を乾燥、濃縮して目的物2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−5−メチルヘキサン酸107g(定量的収率)を得た。この粗生成物は中間体として十分な純度を有しており、このまま次の工程に用いた。
【0069】
2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−5−メチルヘキサン酸
淡黄色固体
IR(D−ATR):ν=3311,2966,1725,1472,1404,1276,1211,1131,1117,1074,979,919cm-1
1H−NMR(600MHz,DMSO−d6):δ=0.84(3H,d,J=6.4Hz),0.90(3H,d,J=6.4Hz),1.17(1H,br.t様,J=12Hz),1.41−1.47(1H,m),1.72−1.81(1H,m),3.84−3.92(1H,m),5.10−6.10(1H,br.,O),13.4−15.0(1H,COO)ppm。
13C−NMR(150MHz,DMSO−d6):δ=21.02,23.41,23.57,37.62(d,J=3Hz),68.00(dd,J=25,26Hz),115.6(dd,J=251,256Hz),165.0(dd,J=30,32Hz)ppm。
19F−NMR[564MHz,DMSO−d6,トリフルオロ酢酸標準(以下、同様)]:δ=−122.53(1F,dd,J=16,250Hz),−116.04(1F,dd,J=8.7,250Hz)ppm。
【0070】
[実施例2]2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸(Intermediate−2)の合成
【化14】


[実施例1]のイソバレロアルデヒドの代わりにイソブチルアルデヒドを用いた以外は[実施例1]に準じた方法により、目的物2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸(収率93%)を得た。この粗生成物は中間体として十分な純度を有しており、このまま次の工程に用いた。
【0071】
2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸
淡黄色固体
IR(D−ATR):ν=3311,2966,1732,1474,1401,1296,1208,1125,1053,933,916cm-1
1H−NMR(600MHz,DMSO−d6):δ=0.87(3H,d,J=7.3Hz),0.90(3H,d,J=6.4Hz),1.79−1.90(1H,m),3.58−3.67(1H,m),5.10−6.20(1H,br.,O),13.4−15.0(1H,COO)ppm。
13C−NMR(150MHz,DMSO−d6):δ=17.50,19.74,28.28,73.52(dd,J=22,25Hz),116.3(dd,J=253,257Hz),165.2(t様,J=31Hz)ppm。
19F−NMR(564MHz,DMSO−d6):δ=−122.55(1F,dd,J=18,253Hz),−112.53(1F,dd,J=9.0,253Hz)ppm。
【0072】
[実施例3]2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸(Intermediate−3)の合成
【化15】


[実施例1]のイソバレロアルデヒドの代わりにアセトンを用いた以外は[実施例1]に準じた方法により、目的物2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸(収率78%)を得た。この粗生成物は中間体として十分な純度を有しており、このまま次の工程に用いた。
【0073】
2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸
淡黄色固体
IR(D−ATR):ν=3367,3194,2995,2664,2548,1739,1460,1378,1300,1206,1137,1110,1064,975cm-1
1H−NMR(600MHz,DMSO−d6):δ=1.22(3H,s),4.50−5.60(1H,br.,O),11.5−15.5(1H,COO)ppm。
13C−NMR(150MHz,DMSO−d6):δ=23.56(2C,t,J=2.9Hz),71.00(t,J=24.5Hz),116.66(t,J=256Hz),164.88(t,J=31Hz)ppm。
19F−NMR(564MHz,DMSO−d6):δ=−117.80(2F,s)ppm。
【0074】
[実施例4]2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシヘキサン酸(Intermediate−4)の合成
【化16】


[実施例1]のイソバレロアルデヒドの代わりにブチルアルデヒドを用いた以外は[実施例1]に準じた方法により、目的物2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシヘキサン酸(収率75%)を得た。この粗生成物は中間体として十分な純度を有しており、このまま次の工程に用いた。
【0075】
2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシヘキサン酸
淡黄色固体
IR(D−ATR):ν=3341,2966,2690,2550,1739,1464,1308,1274,1259,1210,1113,1081,1061cm-1
1H−NMR(600MHz,DMSO−d6):δ=0.87(3H,t,J=7.2Hz),1.26−1.37(1H,m),1.39−1.45(2H,m),1.45−1.54(1H,m),3.77−3.88(1H,m),4.70−6.30(1H,br.,O),12.5−15.6(1H,COO)ppm。
13C−NMR(150MHz,DMSO−d6):δ=13.66,18.05,30.93(d,J=3Hz),69.43(dd,J=24,27Hz),115.61(dd,J=251,256Hz),165.01(t,J=31Hz)ppm。
19F−NMR(564MHz,DMSO−d6):δ=−122.53(1F,dd,J=16,250Hz),−115.68(1F,J=8.6,250Hz)ppm。
【0076】
[実施例5]2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−5−メチルヘキサン酸メチル(Monomer−1)の合成
【化17】

【0077】
[5−1]2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−5−メチルヘキサン酸メチルの合成
[実施例1]の方法で合成したIntermediate−1 28.11gとメタノール280gの混合物にp−トルエンスルホン酸一水和物0.6gを加え、窒素雰囲気下、撹拌しながら、8時間加熱還流した。冷却後、反応混合物を約200mlまで濃縮し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液にあけ、エーテルで抽出した。エーテル溶液を洗浄、乾燥、濃縮して、2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−5−メチルヘキサン酸メチル21.8g(収率72%)を得た。この粗生成物は中間体として十分な純度を有しており、このまま次の工程に用いた。
【0078】
2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−5−メチルヘキサン酸メチル
黄色液体
IR(D−ATR):ν=3461,2961,2874,1763,1470,1443,1317,1273,1214,1128,1070cm-1
1H−NMR(600MHz,DMSO−d6):δ=0.85(3H,d,J=6.4Hz),0.91(3H,d,J=6.4Hz),1.20(1H,br.t様,J=12Hz),1.41−1.47(1H,m),1.72−1.81(1H,m),3.82(3H,s),3.82−3.95(1H,m),5.79(1H,br.,O)ppm。
【0079】
[5−2]2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−5−メチルヘキサン酸メチル(Monomer−1)の合成
窒素雰囲気下室温で撹拌しながら、粗2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−5−メチルヘキサン酸メチル18.4gと塩化メタクリロイル13.0gとアセトニトリル150mlの混合物にトリエチルアミン13.0gを滴下した。反応混合物を室温で終夜撹拌した後、水15ml、トリエチルアミン10ml、触媒量の4−ジメチルアミノピリジンを順次加え、更に室温で2時間撹拌した。反応混合物を水にあけ、ヘキサン−エーテルの混合物で抽出した。洗浄、乾燥、濃縮した残渣を減圧蒸留して、目的物2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−5−メチルヘキサン酸メチル(Monomer−1)13.6g(収率62%)を得た。
【0080】
2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−5−メチルヘキサン酸メチル(Monomer−1)
無色液体
沸点 57℃/20Pa
IR(D−ATR):ν=2962,1771,1732,1440,1316,1294,1154,1127,1080,975cm-1
1H−NMR(600MHz,DMSO−d6):δ=0.87(3H,d,J=6.4Hz),0.90(3H,d,J=6.9Hz),1.45−1.51(1H,m),1.52−1.60(1H,m),1.65−1.71(1H,m),1.89(3H,br.s),3.84(3H,s),5.39−5.47(1H,m),5.79(1H,q様,J=1.5Hz),6.07(1H,t様,J=1.2Hz)ppm。
13C−NMR(150MHz,DMSO−d6):δ=17.69,20.99,22.81,23.61,35.39,54.01,69.38(t様,J=25Hz),113.37(t,J=255Hz),127.54,134.59,162.35(t,J=31Hz),165.29ppm。
19F−NMR(564MHz,DMSO−d6):δ=−117.50(1F,ddd,J=4,12,258Hz),−115.76(1F,dd,J=11,258Hz)ppm。
【0081】
[実施例6]2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−5−メチルヘキサン酸エチル(Monomer−2)の合成
【化18】

【0082】
[6−1]2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−5−メチルヘキサン酸エチルの合成
[実施例1]の方法で合成したIntermediate−1 25.0g、エタノール20gとベンゼン200gの混合物にp−トルエンスルホン酸一水和物0.15gを加え、窒素雰囲気下加熱して、生じる水を系外に除去しつつ20時間撹拌した。冷却後、反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液にあけ、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル溶液を洗浄、乾燥、濃縮して、粗2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−5−メチルヘキサン酸エチル24.5g(収率85%)を得た。この粗生成物は中間体として十分な純度を有しており、このまま次の工程に用いた。
【0083】
2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−5−メチルヘキサン酸エチル
淡黄色液体
IR(D−ATR):ν=3466,2961,2874,1760,1470,1373,1314,1272,1214,1129,1069cm-1
1H−NMR(600MHz,DMSO−d6):δ=0.85(3H,d,J=6.3Hz),0.91(3H,d,J=6.8Hz),1.16−1.22(1H、m),1.25(3H,t,J=7.1Hz),1.41−1.47(1H,m),1.73−1.82(1H,m),3.85−3.94(1H,m),4.22−4.33(1H,m),5.77(1H,br.,O)ppm。
19F−NMR(564MHz,DMSO−d6):δ=−122.65(1F,dd,J=16.3,252Hz),−114.98(1F,dd,J=8.7,251Hz)ppm。
【0084】
[6−2]2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−5−メチルヘキサン酸エチル(Monomer−2)の合成
窒素雰囲気下室温で撹拌しながら、粗2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−5−メチルヘキサン酸エチル27.1gと塩化メタクリロイル20.5gとアセトニトリル200mlの混合物にトリエチルアミン20.5gを滴下した。反応混合物を室温で終夜撹拌した後、水15ml、トリエチルアミン10ml、触媒量の4−ジメチルアミノピリジンを順次加え、更に室温で2時間撹拌した。反応混合物に水を加え、ヘキサン−エーテルの混合物で抽出した。洗浄、乾燥、濃縮した残渣を減圧蒸留して、目的物2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−5−メチルヘキサン酸エチル(Monomer−2)30.5g(収率85%)を得た。
【0085】
2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−5−メチルヘキサン酸エチル(Monomer−2)
無色液体
沸点 67−68℃/60Pa
IR(D−ATR):ν=2963,1773,1732,1313,1221,1154,1127,1079cm-1
1H−NMR(600MHz,DMSO−d6):δ=0.88(3H,d,J=6.4Hz),0.90(3H,d,J=6.4Hz),1.22(3H,t,J=7.1Hz),1.45−1.50(1H,m),1.51−1.59(1H,m),1.65−1.71(1H,m),1.88(3H,br.s),4.28(2H,q様,J=6.8Hz),5.40−5.48(1H,m),5.79(1H,q様,J=1.5Hz),6.08(1H,br.s)ppm。
13C−NMR(150MHz,DMSO−d6):δ=13.53,17.67,21.02,22.84,23.59,35.46,63.46,69.35(dd,J=25,29Hz),113.30(t,J=255Hz),127.57,134.60,161.79(t,J=32Hz),165.23ppm。
19F−NMR(564MHz,DMSO−d6):δ=−118.04(1F,dd,J=12,258Hz),−115.33(1F,dd,J=11,258Hz)ppm。
【0086】
[実施例7]2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−5−メチルヘキサン酸(2−メトキシエチル)(Monomer−3)の合成
【化19】

【0087】
[7−1]2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−5−メチルヘキサン酸(2−メトキシエチル)の合成
[実施例1]の方法で合成したIntermediate−1 25.0g、2−メトキシエタノール25gとベンゼン200gの混合物にp−トルエンスルホン酸一水和物0.15gを加え、窒素雰囲気下加熱して、生じる水を系外に除去しつつ8時間撹拌した。冷却後、反応混合物を氷水にあけ、エーテルで抽出した。エーテル溶液を洗浄、乾燥、濃縮して、粗2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−5−メチルヘキサン酸(2−メトキシエチル)23.9g(収率73%)を得た。この粗生成物は中間体として十分な純度を有しており、このまま次の工程に用いた。
【0088】
2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−5−メチルヘキサン酸(2−メトキシエチル)
淡黄色液体
IR(D−ATR):ν=3424,2960,2874,1771,1470,1372,1310,1204,1129,1085,1068cm-1
1H−NMR(600MHz,DMSO−d6):δ=0.85(3H,d,J=6.4Hz),0.91(3H,d,J=6.8Hz),1.15−1.22(1H、m),1.41−1.48(1H,m),1.73−1.82(1H,m),3.26(3H,s),3.53−3.61(2H,m),3.85−3.95(1H,m),4.29−4.43(2H,m),5.77(1H,br.,O)ppm。
13C−NMR(150MHz,DMSO−d6):δ=20.92,23.37,23.48,37.41,58.04,65.39,68.17(t,J=25Hz),69.22,115.69(dd,J=253,256Hz),163.36(t,J=32Hz)ppm。
19F−NMR(564MHz,DMSO−d6):δ=−121.44(1F,dd,J=15.2,253Hz),−115.89(1F,dd,J=9.7,253Hz)ppm。
【0089】
[7−2]2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−5−メチルヘキサン酸(2−メトキシエチル)(Monomer−3)の合成
窒素雰囲気下室温で撹拌しながら、粗2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−5−メチルヘキサン酸(2−メトキシエチル)23.7gと塩化メタクリロイル18.5gとアセトニトリル200mlの混合物にトリエチルアミン18.5gを滴下した。反応混合物を室温で終夜撹拌した後、水15ml、トリエチルアミン10ml、触媒量の4−ジメチルアミノピリジンを順次加え、更に室温で2時間撹拌した。反応混合物を水にあけ、ヘキサン−エーテルの混合物で抽出した。洗浄、乾燥、濃縮した残渣を減圧蒸留して、目的物2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−5−メチルヘキサン酸(2−メトキシエチル)(Monomer−3)23.2g(収率76%)を得た。
【0090】
2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−5−メチルヘキサン酸(2−メトキシエチル)(Monomer−3)
黄色液体
沸点 102℃/80Pa
IR(D−ATR):ν=2962,1774,1731,1312,1293,1155,1129,1079cm-1
1H−NMR(600MHz,DMSO−d6):δ=0.88(3H,d,J=6.4Hz),0.90(3H,d,J=6.8Hz),1.43−1.50(1H,m),1.51−1.59(1H,m),1.65−1.71(1H,m),1.88(3H,br.s),3.24(3H,s),3.52−3.59(2H,m),4.35−4.44(2H,m),5.40−5.48(1H,m),5.79(1H,t様,J=1.5Hz),6.09(1H,br.s)ppm。
13C−NMR(150MHz,DMSO−d6):δ=17.69,20.95,22.85,23.58,35.55,57.91,65.95,69.05,69.33(t,J=25Hz),113.45(t,J=255Hz),127.50,134.63,161.76(t,J=31Hz),165.26ppm。
19F−NMR(564MHz,DMSO−d6):δ=−116.71(1F,dd,J=11,258Hz),−116.07(1F,dd,J=11,258Hz)ppm。
【0091】
[実施例8]2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−5−メチルヘキサン酸(Monomer−4)の合成
【化20】


[実施例5]の方法で合成したMonomer−1 15.6g、ジグライム(Diglyme)50mlの混合物を氷冷下撹拌しながら、5質量%水酸化ナトリウム水溶液50.0gを15℃以下で滴下した。30分間撹拌後、反応混合物をn−ヘキサンで抽出し、ヘキサン層を廃棄した。水層に20質量%塩酸20gを加えて酸性にし、ジイソプロピルエーテルで抽出した。ジイソプロピルエーテル溶液を洗浄、乾燥、濃縮、減圧蒸留して、目的物2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−5−メチルヘキサン酸(Monomer−4)14.6g(収率99%)を得た。
【0092】
2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−5−メチルヘキサン酸(Monomer−4)
黄色液体
沸点 118℃/80Pa
IR(D−ATR):ν=3512,2963,1760,1732,1314,1296,1158,1128,1080cm-1
1H−NMR(600MHz,DMSO−d6):δ=0.87(3H,d,J=6.3Hz),0.89(3H,d,J=6.3Hz),1.41−1.47(1H,m),1.49−1.59(1H,m),1.65−1.70(1H,m),1.88(3H,br.s),5.40−5.48(1H,m),5.77(1H,t様,J=1.8Hz),6.07(1H,br.s)ppm。
13C−NMR(150MHz,DMSO−d6):δ=17.71,21.11,22.94,23.64,35.82,69.41(t,J=26Hz),113.55(t,J=254Hz),127.34,134.81,163.57(t,J=30Hz),165.38ppm。
19F−NMR(564MHz,DMSO−d6):δ=−117.66(1F,dd,J=12,256Hz),−116.73(1F,dd,J=12,256Hz)ppm。
【0093】
[実施例9]2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−4−メチルペンタン酸メチル(Monomer−5)の合成
【化21】


[9−1]2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸メチルの合成
[実施例2]の方法で合成したIntermediate−2 50gとメタノール200gとベンゼン250gの混合物にp−トルエンスルホン酸一水和物0.3gを加え、窒素雰囲気下、撹拌しながら、20時間加熱還流した。冷却後、反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液にあけ、ヘキサンで抽出した。ヘキサン溶液を洗浄、乾燥、濃縮して、2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸メチル45.78g(収率85%)を得た。この粗生成物は中間体として十分な純度を有しており、このまま次の工程に用いた。
【0094】
2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸メチル
黄色液体
IR(D−ATR):ν=3480,2966,2882,1764,1443,1325,1214,1109,1058cm-1
1H−NMR(600MHz,DMSO−d6):δ=0.91(3H,d,J=6.9Hz),0.93(3H,dd,J=1.4,6.9Hz),1.81−1.90(1H,m),3.58−3.68(1H,m),3.81(3H,s),5.83(1H,br.,O)ppm。
13C−NMR(150MHz,DMSO−d6):δ=17.57,19.46,28.19,53.28,73.65(dd,J=23,26Hz),116.42(dd,J=252,259Hz),164.05(dd,J=31,33Hz)ppm。
19F−NMR(564MHz,DMSO−d6):δ=−121.65(1F,dd,J=20,254Hz),−110.46(1F,dd,J=8,254Hz)ppm。
【0095】
[9−2]2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−4−メチルペンタン酸メチル(Monomer−5)の合成
窒素雰囲気下室温で撹拌しながら、2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸メチル29.24gと塩化メタクリロイル28.4gとアセトニトリル300mlの混合物にトリエチルアミン28.4gを滴下した。反応混合物を室温で終夜撹拌した後、水30ml、トリエチルアミン20ml、触媒量の4−ジメチルアミノピリジンを順次加え、更に室温で1時間撹拌した。反応混合物を水にあけ、ヘキサン−エーテルの混合物で抽出した。洗浄、乾燥、濃縮した残渣を減圧蒸留して、目的物2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−4−メチルペンタン酸メチル(Monomer−5)54.8g(収率81%)を得た。
【0096】
2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−4−メチルペンタン酸メチル(Monomer−5)
無色液体
沸点 55℃/25Pa
IR(D−ATR):ν=2972,1771,1732,1441,1319,1220,1154,1116,1084,1062cm-1
1H−NMR(600MHz,DMSO−d6):δ=0.92(3H,d,J=6.9Hz),0.95(3H,d,J=6.9Hz),1.90(3H,br.s),2.10−2.19(1H,m),3.82(3H,s),5.18−5.25(1H,m),5.78−5.82(1H,m),6.09(1H,br.s)ppm。
13C−NMR(150MHz,DMSO−d6):δ=17.02,17.73,19.11,27.28,53.99,74.18(dd,J=23,28Hz),113.83(t,J=256Hz),127.48,134.63,162.60(t,J=31Hz),165.22ppm。
19F−NMR(564MHz,DMSO−d6):δ=−115.03(1F,dd,J=15,260Hz),−112.86(1F,dd,J=11,260Hz)ppm。
【0097】
[実施例10]2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−4−メチルペンタン酸(Monomer−6)の合成
【化22】


[実施例8]のMonomer−1の代わりに[実施例9]の方法で合成したMonomer−5を用いた以外は[実施例8]に準じた方法により、目的物2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−4−メチルペンタン酸(収率75%)を得た。
【0098】
2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−4−メチルペンタン酸(Monomer−6)
黄色液体
沸点 94℃/30Pa
IR(D−ATR):ν=3198,2974,1770,1733,1705,1304,1159,1059cm-1
1H−NMR(600MHz,DMSO−d6):δ=0.92(3H,d,J=6.9Hz),0.95(3H,d,J=6.9Hz),1.89(3H,t様,J=1.5Hz),2.08−2.17(1H,m),5.18−5.26(1H,m),5.77(1H,quint様,J=1.2Hz),6.09(1H,br.s),12.5−15.5(1H,br.,O)ppm。
13C−NMR(150MHz,DMSO−d6):δ=17.16,17.80,19.27,27.45,74.26(t様,J=26Hz),113.99(t,J=255Hz),127.24,134.86,163.83(t,J=30Hz),165.32ppm。
19F−NMR(564MHz,DMSO−d6):δ=−114.89(1F,dd,J=14,257Hz),−113.86(1F,dd,J=12,257Hz)ppm。
【0099】
[実施例11]2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−4−メチルペンタン酸(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)(Monomer−7)の合成
【化23】


[11−1]2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)と2,2−ジフルオロ−3−(2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタノイルオキシ)−4−メチルペンタン酸メチルの合成
[実施例9][9−1]の方法で合成した2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸メチル46.8gと2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンタノール200gの混合物に触媒量のカリウムt−ブトキシドを加え、窒素雰囲気下、撹拌しながら、100−115℃以下の留分を系外に抜き出しつつ48時間加熱還流した。冷却後、反応混合物をシリカゲル濾過し、減圧蒸留した。2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンタノール、次いで、原料の2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸メチルを部分回収した後、更に蒸留を続けて、2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)32.2g(収率33%、原料回収を考慮して消費された原料からの収率42%)を得、更に2,2−ジフルオロ−3−(2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタノイルオキシ)−4−メチルペンタン酸メチル5.22g(収率8%)を得た。
【0100】
2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)
無色液体
沸点 72℃/15Pa
IR(D−ATR):ν=3486,2975,2887,1785,1402,1286,1205,1175,1131,1061cm-1
1H−NMR(600MHz,DMSO−d6):δ=0.93(3H,d,J=6.9Hz),0.94(3H,dd様,J=0.9,6.9Hz),1.81−1.90(1H,m),3.58−3.72(1H,m),5.01(1H,q様,J=13.8Hz),5.10(1H,q様,J=13.8Hz),5.95(1H,d,J=7.4Hz,O),7.06(1H,tt,J=5.5,50Hz)ppm。
13C−NMR(150MHz,DMSO−d6):δ=17.50,19.33,28.22,60.63(t,J=27Hz),73.73(dd,J=22,25Hz),107.90(tt,J=30,251Hz),108.1−112.4(2C,m),114.36(tt,J=32,256Hz),116.40(dd,J=255,259Hz),162.30(dd,J=32,35Hz)ppm。
19F−NMR(564MHz,DMSO−d6):δ=−139.82(2F,d,J=49Hz),−130.91(2F,s),−125.92(2F,s),−121.08(1F,dd,J=19,255Hz),−120.28(2F,s),−110.42(1F,dd,J=8,255Hz)ppm。
【0101】
2,2−ジフルオロ−3−(2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタノイルオキシ)−4−メチルペンタン酸メチル
本品は分子内に不斉炭素が二個存在し、ジアステレオマー(Diastereomer)混合物である。
無色液体
沸点 140℃/20Pa
1H−NMR(600MHz,DMSO−d6):δ=0.90−1.20(12H,m),1.84−1.92(1H,m),2.14−2.22(1H,m),3.58−3.68(1H,m),3.85(3H,s),5.30−5.41(1H,m),5.90(1H,br.s,O),ppm。
【0102】
[11−2]2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)の別法合成
[実施例9][9−1]の方法で合成した2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸メチル60.0gと2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンタノール300gの混合物に触媒量のアンバーリストを加え、窒素雰囲気下撹拌しながら、65−90℃以下の留分を系外に抜き出しつつ42時間加熱還流した。冷却後反応混合物を濾過し、減圧蒸留した。2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンタノール、次いで、原料の2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸メチルを部分回収した後、更に蒸留を続けて、2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)74.4g(収率66%、原料回収を考慮して消費された原料からの収率80%)を得た。なお、この化合物の物性及びスペクトルは[11−1]と一致した。
【0103】
[11−3]2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−4−メチルペンタン酸(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)(Monomer−7)の合成
窒素雰囲気下室温で撹拌しながら、2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)20.45gとメタクリル酸無水物10.4gとトルエン100gの混合物にメタンスルホン酸を触媒量滴下した。反応混合物を70℃で3日間撹拌した。冷却後、反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液にあけ、エーテルで抽出した。洗浄、乾燥、濃縮した残渣を減圧蒸留して、目的物2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−4−メチルペンタン酸(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)(Monomer−7)20.9g(収率87%)を得た。
【0104】
2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−4−メチルペンタン酸(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)(Monomer−7)
無色液体
沸点 77−79℃/20Pa
IR(D−ATR):ν=2976,1789,1732,1317,1172,1135,1068cm-1
1H−NMR(600MHz,DMSO−d6):δ=0.93(3H,d,J=6.9Hz),0.96(3H,d,J=6.9Hz),1.89(3H,br.s),2.12−2.20(1H,m),5.09(1H,t,J=14.2Hz),5.22−5.28(1H,m),5.80(1H,s様),6.10(1H,t,J=1.0Hz),7.06(1H,tt,J=5.5,50Hz)ppm。
13C−NMR(150MHz,DMSO−d6):δ=16.91,17.61,19.10,27.35,61.33(t,J=26Hz),73.94(dd,J=23,26Hz),107.86(tt,J=30,251Hz),113.79(t,J=257Hz),107.70−116.20(4C,m),127.53,134.52,160.84(t様,J=32Hz),165.11ppm。
19F−NMR(564MHz,DMSO−d6):δ=−139.84(2F,d,J=49Hz),−130.86(2F,s),−125.90(2F,s),−120.40(2F,q様,J=12Hz),−114.28(1F,dd,J=14,263Hz),−112.10(1F,dd,J=11,263Hz)ppm。
【0105】
[実施例12]2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−4−メチルペンタン酸(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロへキシル)(Monomer−8)の合成
【化24】

【0106】
[12−1]2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロへキシル)の合成
[実施例11][11−1]の2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンタノールの代わりに3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロへキサノールを用いた以外は[実施例11]の方法に準じた方法により、目的物2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロへキシル)(収率87%)を得た。
【0107】
2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロへキシル)
無色液体
沸点 84℃/40Pa
IR(D−ATR):ν=3498,2974,2885,1770,1474,1222,1135,1060cm-1
1H−NMR(600MHz,DMSO−d6):δ=0.91(3H,d,J=6.4Hz),0.93(3H,dd様,J=1.4,6.9Hz),1.80−1.89(1H,m),2.67−2.82(2H,m),3.58−3.66(1H,m),4.48−4.58(1H,m),5.84(1H,d,J=7.3Hz,O)ppm。
13C−NMR(150MHz,DMSO−d6):δ=17.41,19.39(d,J=2.9Hz),28.14,29.16(t,J=21Hz),58.36,73.60(dd様、J=22,25Hz),106.00−120.20(4C,m),116.24(dd,J=254,259Hz),163.19(dd,J=31,34Hz)ppm。
19F−NMR(564MHz,DMSO−d6):δ=−127.14(2F,dd,J=9.7,14Hz),−125.53(2F,s),−114.50−−114.30(2F,m),−121.39(1F,dd,J=19,254Hz),−111.48(1F,dd,J=8.7,254Hz),−82.07(3F,t様,J=9Hz)ppm。
【0108】
[12−2]
[実施例11][11−3]の2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)の代わりに2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロへキシル)を用いた以外は[実施例11]の方法に準じた方法により、目的物2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−4−メチルペンタン酸(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロへキシル)(Monomer−8)(収率44%)を得た。
【0109】
2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−4−メチルペンタン酸(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロへキシル)(Monomer−8)
無色液体
沸点 93℃/40Pa
IR(D−ATR):ν=2976,2887,1778,1732,1299,1222,1157,1135,1064cm-1
1H−NMR(600MHz,DMSO−d6):δ=0.92(3H,d,J=6.9Hz),0.94(3H,d,J=6.9Hz),1.88(3H,br.s),2.11−2.19(1H,m),2.68−2.79(2H,m),4.50−4.59(2H,m),5.19−5.26(1H,m),5.78(1H,s様),6.09(1H,s様)ppm。
13C−NMR(150MHz,DMSO−d6):δ=16.82,17.59,19.10,27.26,29.02(t,J=22Hz),59.21,74.01(dd,J=23,26Hz),113.70(t様,J=256Hz),106.00−120.20(4C,m),127.38,134.62,161.74(t様,J=32Hz),165.20ppm。
19F−NMR(564MHz,DMSO−d6):δ=−127.13(2F,dd,J様=10,14Hz),−125.70−−125.40(2F,m),−114.84(1F,dd,J=14,261Hz),−114.55−−114.35(2F,m),−113.18(1F,dd,J=11,261Hz),−82.03(3F,t様,J=9Hz),ppm。
【0110】
[実施例13]2,2−ジフルオロ−3−(2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−4−メチルペンタノイルオキシ)−4−メチルペンタン酸メチル(Monomer−9)の合成
【化25】


[実施例11][11−3]の2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)の代わりに[実施例11][11−1]で得た2,2−ジフルオロ−3−(2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタノイルオキシ)−4−メチルペンタン酸メチルを用いた以外は[実施例11]の方法に準じた方法により反応を実施した後、減圧蒸留の代わりにシリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製して、目的物2,2−ジフルオロ−3−(2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−4−メチルペンタノイルオキシ)−4−メチルペンタン酸メチル(収率49%)を得た。
2,2−ジフルオロ−3−(2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−4−メチルペンタノイルオキシ)−4−メチルペンタン酸メチル(Monomer−9)
本品は分子内に不斉炭素が二個存在し、ジアステレオマー(Diastereomer)混合物である。
【0111】
無色液体
IR(D−ATR):ν=2974,2888,1780,1733,1317,1294,1224,1154,1059cm-1
1H−NMR(600MHz,DMSO−d6):δ=0.89−1.00(12H,m),1.88(3H,br.s),2.11−2.22(2H,m),3.86(3H,s),5.24−5.33(1H,m),5.36−5.44(1H,m),5.77−5.82(1H,m),6.09(1H,s様)ppm。
13C−NMR(150MHz,DMSO−d6):δ=16.43,16.47,16.98,17.08,17.64,18.68,18.73,19.14,27.18,27.53,54.25,73.50−74.00(m),76.60−77.36(m),112.88(t様,J=256Hz),112.98(t様,J=256Hz),113.98(dd,J=256,257Hz),113.98(dd,J=254,259Hz),114.30(dd,J=254,259Hz),127.46,127.66,134.54,134.57,161.24(t様,J=32Hz),161.35(t様,J=32Hz),161.98(t様,J=32Hz),164.93,165.09ppm。部分的にジアステレオマーのピークが別々に観測されているため、ピーク数と平面式から計算される炭素数とは一致していない。
【0112】
[実施例14]2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシヘキサン酸メチル(Monomer−10)の合成
【化26】

【0113】
[14−1]2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシヘキサン酸メチルの合成
[実施例4]の方法で合成したIntermediate−4 75.5gとメタノール200gの混合物に触媒量のp−トルエンスルホン酸一水和物を加え、窒素雰囲気下、撹拌しながら、10時間加熱還流した。冷却後、反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液にあけ、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル溶液を洗浄、乾燥、濃縮して、2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシヘキサン酸メチル63.0g(収率58%)を得た。この粗生成物は中間体として十分な純度を有しており、このまま次の工程に用いた。
【0114】
2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシヘキサン酸メチル
黄色液体
IR(D−ATR):ν=3472,2964,2878,1763,1443,1319,1213,1114,1080,1061cm-1
1H−NMR(600MHz,DMSO−d6):δ=0.88(3H,t,J=7.1Hz),1.28−1.54(4H,m),3.82(3H,s),3.81−3.89(1H,m),5.80(1H,br.,O)ppm。
13C−NMR(150MHz,DMSO−d6):δ=13.57,17.94,30.65(d,J=3Hz),53.34,69.54(dd,J=24,27Hz),115.66(dd,J=252,256Hz),163.87(t様,J=32Hz)ppm。
19F−NMR(564MHz,DMSO−d6):δ=−121.74(1F,dd,J=17,253Hz),−112.76(1F,dd,J=8,253Hz)ppm。
【0115】
[14−2]2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシヘキサン酸メチル(Monomer−10)の合成
窒素雰囲気下室温で撹拌しながら、2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシヘキサン酸メチル30.06gと塩化メタクリロイル28.4gとアセトニトリル300mlの混合物にトリエチルアミン28.4gを滴下した。反応混合物を室温で終夜撹拌した後、水30ml、トリエチルアミン20mlを加え、更に室温で1時間撹拌した。反応混合物を水にあけ、酢酸エチルで抽出した。洗浄、乾燥、濃縮した残渣を減圧蒸留して、目的物2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシヘキサン酸メチル(Monomer−10)21.54g(収率52%)を得た。
【0116】
2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシヘキサン酸メチル(Monomer−10)
無色液体
沸点 62−63℃/80Pa
IR(D−ATR):ν=2965,2937,2878,1771,1731,1441,1316,1153,1110,1059cm-1
1H−NMR(600MHz,DMSO−d6):δ=0.88(3H,t,J=7.3Hz),1.21−1.38(2H,m),1.62−1.73(2H,m),1.88(3H,br.s),5.34−5.42(1H,m),5.78(1H,t様,J=1.4Hz),6.07(1H,br.s)ppm。
13C−NMR(150MHz,DMSO−d6):δ=13.25,17.58,17.70,28.78,53.99,70.62(dd,J=25,27Hz),113.37(t,J=255Hz),127.42,134.63,162.40(t,J=31Hz),165.27ppm。
19F−NMR(564MHz,DMSO−d6):δ=−117.75(1F,dd,J=13,259Hz),−115.35(1F,dd,J=10,259Hz)ppm。
【0117】
[実施例15]2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−3−メチルブタン酸メチル(Monomer−11)の合成
【化27】

【0118】
[15−1]2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチルの合成
[実施例3]の方法で合成したIntermediate−3 73.3gとメタノール300gの混合物に触媒量のp−トルエンスルホン酸一水和物を加え、窒素雰囲気下、撹拌しながら、12時間加熱還流した。冷却後、反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液にあけ、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル溶液を洗浄、乾燥、濃縮した残渣を減圧蒸留して、2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル52.0g(収率65%)を得た。
【0119】
2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル
黄色液体
IR(D−ATR):ν=3502,2995,2961,1766,1442,1315,1195,1116,1062cm-1
【0120】
1H−NMR(600MHz,DMSO−d6):δ=1.22(6H,s),3.80(3H,s),5.57(1H,s,O)ppm。
13C−NMR(150MHz,DMSO−d6):δ=23.28(2C),53.21,71.12(t,J=25Hz),116.81(t,J=258Hz),163.73(t,J=33Hz)ppm。
19F−NMR(564MHz,DMSO−d6):δ=−117.38(2F)ppm。
【0121】
[15−2]2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−3−メチルブタン酸メチル(Monomer−11)の合成
窒素雰囲気下室温で撹拌しながら、2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル30.0gと塩化メタクリロイル30.0gとアセトニトリル250mlの混合物にトリエチルアミン72.6gを滴下した。反応混合物を室温で終夜撹拌した後、水30mlと触媒量の4−ジメチルアミノピリジンを加え、更に室温で1時間撹拌した。反応混合物を水にあけ、酢酸エチルで抽出した。洗浄、乾燥、濃縮した残渣を減圧蒸留して、目的物2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−3−メチルブタン酸メチル(Monomer−11)36.72g(収率88%)を得た。
【0122】
2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−3−メチルブタン酸メチル(Monomer−11)
無色液体
沸点 42℃/27Pa
IR(D−ATR):ν=3000,2960,1769,1727,1440,1318,1303,1159,1135,1064cm-1
1H−NMR(600MHz,DMSO−d6):δ=1.63(6H,s),1.81(3H,s),3.87(3H,s),5.68−5.72(1H,m),5.96(1H,s様)ppm。
13C−NMR(150MHz,DMSO−d6):δ=17.61(2C),19.24,53.81,81.21(t,J=26Hz),114.31(t,J=258Hz),126.58,136.08,162.48(t,J=32Hz),164.47ppm。
19F−NMR(564MHz,DMSO−d6):δ=−118.39(2F)ppm。
【0123】
[実施例16]2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−5−メチルヘキサン酸(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)(Monomer−12)の合成
【化28】

【0124】
[16−1]2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−5−メチルヘキサン酸(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)の合成
[実施例5][5−1]の方法で合成した2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−5−メチルヘキサン酸メチル55.86gと2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンタノール75gの混合物に触媒量のカリウムt−ブトキシドを加え、窒素雰囲気下、撹拌しながら、100−115℃以下の留分を系外に抜き出しつつ48時間加熱還流した。冷却後、反応混合物を減圧蒸留した。2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンタノール、次いで、原料の2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−5−メチルヘキサン酸メチルを部分回収した後、更に蒸留を続けて、目的物2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−5−メチルヘキサン酸(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)31.15g(収率28%、原料回収を考慮して消費された原料からの収率36%)を得た。
【0125】
2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−5−メチルヘキサン酸(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)
黄色液体
沸点 96℃/150Pa
IR(D−ATR):ν=3449,2965,2877,1784,1311,1291,1174,1132,1076cm-1
1H−NMR(600MHz,DMSO−d6):δ=0.85(3H,d,J=6.4Hz),0.91(3H,d,J=6.9Hz),1.17−1.24(1H,m),1.43−1.51(1H,m),1.74−1.83(1H,m),3.87−4.01(1H,m),4.99−5.17(2H,m),5.92(1H,br.d,J=6Hz,O),7.06(1H,tt,J=6,50Hz)ppm。
13C−NMR(150MHz,DMSO−d6):δ=20.81,23.32,23.39,37.23,60.69(t,J=27Hz),68.23(t,J=25Hz),106.00−117.50(5C,m),162.08(t,J=34Hz)ppm。
19F−NMR(564MHz,DMSO−d6):δ=−139.83(2F,d,J=50Hz),−131.00−−130.80(2F,m),−125.90(2F,t,J=8Hz),−121.83(1F,dd,J=16,254Hz),−120.35−−120.10(2F,m),−115.15(1F,dd,J=9,254Hz)ppm。
【0126】
[16−2]2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−5−メチルヘキサン酸(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)(Monomer−12)の合成
窒素雰囲気下室温で撹拌しながら、2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ5−メチルヘキサン酸(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)21.83gとメタクリル酸無水物11.7gとトルエン100mlの混合物にメタンスルホン酸を触媒量滴下した。反応混合物を70℃で2日間撹拌した。冷却後、反応混合物をエーテルで希釈して飽和炭酸水素ナトリウム水溶液にあけ、触媒量の4−ジメチルアミノピリジンを加えて室温で終夜撹拌した。有機層を洗浄、乾燥、濃縮した残渣を減圧蒸留して、目的物2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−5−メチルヘキサン酸(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)(Monomer−12)25.3g(収率99%)を得た。
【0127】
2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシ−5−メチルヘキサン酸(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)(Monomer−12)
無色液体
沸点 82℃/11Pa
IR(D−ATR):ν=2966,1790,1732,1313,1294,1173,1157,1131cm-1
1H−NMR(600MHz,DMSO−d6):δ=0.87(3H,d,J=6.9Hz),0.89(3H,d,J=6.4Hz),1.45−1.52(1H,m),1.52−1.61(1H,m),1.65−1.73(1H,m),1.87(3H,br.s),5.04−5.16(1Hm),5.44−5.52(1H,m),5.78(1H,t様,J=2Hz),6.08(1H,s様),7.04(1H,tt,J=5.5,50Hz)ppm。
13C−NMR(150MHz,DMSO−d6):δ=17.56,20.56,22.74,23.59,61.32(t,J=26Hz),69.23(t,J=25Hz),107.89(tt,J=31,251Hz),110.27(tt,J=31,264Hz),110.48(tt,J=31,265Hz),113.37(t,J=256Hz),114.24(tt,J=31,257Hz),127.53,134.53,160.59(t,J=32Hz),165.20ppm。
19F−NMR(564MHz,DMSO−d6):δ=−139.93(2F,d,J=50Hz),−130.94(2F,d,J=4.4Hz),−125.99(2F,t,J=7.6Hz),−120.46(2F,q様,J=12Hz),−116.57(1F,dd,J=11,261Hz),−115.51(1F,dd,J=11,261Hz)ppm。
【0128】
[実施例17]2,2−ジフルオロ−3−(メタクリロイルオキシアセトキシ)−4−メチルペンタン酸メチル(Monomer−13)の合成
【化29】


窒素雰囲気下室温で撹拌しながら塩化メタクリロイルオキシアセチル22.6gとトルエン100mlの混合物に[実施例9][9−1]で合成した2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸メチル18.86g、次いで、ピリジン13.8gを滴下した。反応混合物を室温で終夜撹拌した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液にあけ、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル溶液を洗浄、乾燥、濃縮した残渣を減圧蒸留して、目的物2,2−ジフルオロ−3−(メタクリロイルオキシアセトキシ)−4−メチルペンタン酸メチル(Monomer−13)29.80g(収率93%)を得た。
【0129】
2,2−ジフルオロ−3−(メタクリロイルオキシアセトキシ)−4−メチルペンタン酸メチル(Monomer−13)
無色液体
沸点 99℃/20Pa
IR(D−ATR):ν=2971,1778,1731,1441,1322,1203,1150,1062cm-1
1H−NMR(600MHz,DMSO−d6):δ=0.91(3H,d,J=6.9Hz),0.95(3H,d,J=6.9Hz),1.91(3H,s),2.06−2.15(1H,m),3.86(3H,s),4.84(1H,d,J=16Hz),4.90(1H,d,J=16Hz),5.20−5.27(1H,m),5.77−5.81(1H,m),6.12(1H,br.s)ppm。
13C−NMR(150MHz,DMSO−d6):δ=16.83,17.74,18.99,27.23,54.13,60.52,74.39(dd,J=23,27Hz),113.53(t,J=256Hz),127.10,134.86,162.37(t,J=31Hz),165.99,166.91ppm。
19F−NMR(564MHz,DMSO−d6):δ=−115.00(1F,dd,J=15,262Hz),−112.88(1F,dd,J=12,262Hz)ppm。
【0130】
[実施例18]2,2−ジフルオロ−3−(メタクリロイルオキシアセトキシ)−5−メチルヘキサン酸メチル(Monomer−14)の合成
【化30】


[実施例17]の2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸メチルの代わりに[実施例5][5−1]で得た2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−5−メチルヘキサン酸メチルを用いた以外は[実施例17]の方法に準じた方法により目的物2,2−ジフルオロ−3−(メタクリロイルオキシアセトキシ)−5−メチルヘキサン酸メチル(Monomer−14)(収率53%)を得た。
【0131】
2,2−ジフルオロ−3−(メタクリロイルオキシアセトキシ)−5−メチルヘキサン酸メチル(Monomer−14)
無色液体
沸点 101℃/13Pa
IR(D−ATR):ν=2962,1778,1731,1441,1320,1202,1150,1068cm-1
1H−NMR(600MHz,DMSO−d6):δ=0.86(3H,d,J=6.9Hz),0.90(3H,d,J=6.4Hz),1.40−1.47(1H,m),1.56−1.47(1H,m),1.90(3H,t),3.86(3H,s),4.81(1H,d,J=16Hz),4.87(1H,d,J=16Hz),5.38−5.47(1H,m),5.78−5.80(1H,m),6.11(1H,t,J=1Hz)ppm。
13C−NMR(150MHz,DMSO−d6):δ=17.76,20.82,22.93,23.17,35.34,54.16,60.54,69.57(dd,J=24,28Hz),113.03(t,J=255Hz),127.09,134.84,162.10(t,J=32Hz),165.94,166.93ppm。
19F−NMR(564MHz,DMSO−d6):δ=−117.69(1F,dd,J=13,261Hz),−115.62(1F,dd,J=11,261Hz)ppm。
【0132】
[実施例19]
本発明の高分子化合物を以下に示す処方で合成した。なお、実施例中における“GPC”はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーのことであり、得られた高分子化合物の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)はGPCによりポリスチレン換算値(溶媒;テトラヒドロフラン)として測定した。
【0133】
[実施例19−1]ポリマー1の合成
窒素雰囲気下のフラスコに8.96gのモノマー1、6.41gのメタクリル酸4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシ−2−メチル−3−トリフルオロメチルブタン−2−イル、0.63gの2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、15gのメチルエチルケトンを投入して単量体溶液を調製し、溶液温度を20〜25℃とした。窒素雰囲気下の別のフラスコに7.5gのメチルエチルケトンを投入し、還流条件下撹拌しているところに上記単量体溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液を還流条件に保ったまま2時間撹拌を続け、熟成終了後に室温まで冷却した。重合液を150gのヘキサン中に滴下した。析出した共重合体を濾別後、90gのヘキサンで洗浄し、白色固体を分離した。白色固体を50℃で20時間真空乾燥して、下記式ポリマー1で示される白色粉末固体状の高分子化合物が得られた。収量は10.3g、収率は64%であった。
【0134】
【化31】

【0135】
[実施例19−2〜12]ポリマー2〜12の合成
各単量体の種類、配合比を変えた以外は、上記[実施例19−1]と同様の手順により、下に示した樹脂を製造した。なお、導入比はモル比である。
【0136】
【化32】

【0137】
【化33】

【0138】
【化34】

【0139】
【化35】

【0140】
[実施例20−1〜11、比較例1−1,2]レジスト評価
下記Resist Polymerを5g、上記ポリマー1〜12を0.25g、PAG1を0.25g、Quencher1を0.05g用い、これらを75gのプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させ、0.2μmサイズのポリプロピレンフィルターで濾過し、レジスト溶液を作製した。また、比較例1−2として、上記ポリマー1〜12を添加しないレジスト溶液も調製した。
【0141】
【化36】

【0142】
シリコン基板上に反射防止膜ARC−29A(日産化学工業(株)製)を成膜後(膜厚:87nm)、その上に上記レジスト溶液を塗布し、90℃で60秒間ベークして膜厚90nmのレジスト膜を作製した。
上記方法でレジスト膜を形成したウエハーを水平に保ち、その上に50μLの純水を滴下して水玉を形成後、傾斜法接触角計Drop Master 500(協和界面科学(株)製)を用いてウエハーを徐々に傾斜させ、水玉が転落し始めるウエハーの角度(転落角)と後退接触角を求めた。その結果を表1に示す。
【0143】
更に、上記方法でレジスト膜を形成したウエハーをArFスキャナーS305B((株)ニコン製)を用いてオープンフレームにて50mJ/cm2のエネルギーを照射した。次いで、このレジスト膜上に内径10cmの真円状のテフロン(登録商標)リングを置き、その中に10mlの純水を注意深く注いで、室温にて60秒間レジスト膜と純水を接触させた。その後、純水を回収し、純水中の光酸発生剤(PAG1)の陰イオン成分濃度をLC−MS分析装置(アジレント・テクノロジー(株)製)にて測定した。その結果を表1に示す。
【0144】
次に、上記方法でレジスト膜を形成したウエハーをArFスキャナーS307E((株)ニコン製、NA0.85、σ0.93、4/5輪帯照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光を行い、純水をかけながら5分間リンスを行い、110℃で60秒間ポスト・エクスポジュアー・ベーク(PEB)を行い、2.38質量%のTMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)水溶液で60秒間現像を行った。得られたウエハーを割断し、75nmライン・アンド・スペースのパターン形状、感度を比較した。その結果を表1に示す。
【0145】
【表1】

【0146】
表1において転落角が低いほどレジスト膜上の水は流動し易く、後退接触角が高いほど高速スキャン露光でも液滴が残りにくい。そのためより低い転落角、より高い後退接触角が望ましい。本発明の高分子化合物を配合したレジスト溶液から形成されたレジスト膜は、配合しないレジスト膜と比較して後退接触角を飛躍的に向上させることができ、かつ転落角は悪化させないことが確認できた。
【0147】
また、表1の結果から、実施例20−1,20−7,20−8を比較すると分岐状アルキル基をもったポリマー1,ポリマー8を用いたレジストの方がより転落角が低く、後退接触角が高いことがわかる。また、フルオロアルキル基を有し、かつ分岐状アルキル基を含むポリマー5,ポリマー6,ポリマー9を用いたレジストは飛躍的に後退接触角が高くなることがわかった。
【0148】
更に、表1の結果から、レジスト膜内で発生した酸やレジスト材料に添加されている塩基性化合物の一部が水層に溶出すると、その結果としてパターンの形状変化やパターン倒れが発生する可能性がある。表1から明らかなように、本発明による高分子化合物を配合したレジスト溶液から形成されたレジスト膜では、レジスト膜から水への光酸発生剤成分の溶出を抑制する効果が認められた。
【0149】
表1の結果から、露光後に純水リンスを行った場合、本発明の高分子化合物を配合しないレジスト溶液ではパターン形状がT−トップ形状になった。これに対し、本発明の高分子化合物を配合したレジスト溶液を使った場合は矩形形状になることがわかった。
【0150】
現像後水接触角が高いと、ブロブ欠陥と呼ばれる欠陥が発生し易くなる。またアルカリ加水分解性が向上すると、現像後水接触角が低くなるのでブロブ欠陥は発生しにくくなる。表1の結果において、実施例20−1と20−11、20−4と20−10を比較すると上記一般式(1a)でk=1のポリマー11,ポリマー10の方が、k=0のポリマー1,ポリマー4に比べて現像後水接触角が下がっていることがわかる。このことから、k=1のように加水分解箇所が増えたポリマーはアルカリ溶解性が向上し、ブロブ欠陥を抑える可能性があるといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される含フッ素エステル型単量体。
【化1】


(式中、R1は水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表す。R2、R3はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基を表し、又は、R2とR3は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜20の炭化水素環を形成する二価の基を表す。R4は水素原子の一部がフッ素原子で置換されていてもよく、又は、メチレン基の一部が酸素原子又はカルボニル基で置換されていてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の一級又は二級の一価炭化水素基を表す。kは0又は1を示す。)
【請求項2】
一般式(1)において、R4が炭素数1〜5の一級アルキル基である請求項1記載の含フッ素エステル型単量体。
【請求項3】
一般式(1)において、R4が炭素数2〜8の含フッ素アルキル基である請求項1記載の含フッ素エステル型単量体。
【請求項4】
一般式(1)において、R4がMeO(CH2CH2O)nCH2CH2−又はEtO(CH2CH2O)nCH2CH2−(Meはメチル基、Etはエチル基を示す。nは0、1又は2である。)で表されるアルキルオキシアルキル基である請求項1記載の含フッ素エステル型単量体。
【請求項5】
一般式(1)において、R4が下記一般式(A)で表される請求項1記載の含フッ素エステル型単量体。
【化2】


(式中、R2、R3は上記と同様であり、R4aは炭素数1〜5の一級アルキル基、炭素数2〜8の含フッ素アルキル基、又はMeO(CH2CH2O)nCH2CH2−又はEtO(CH2CH2O)nCH2CH2−(Meはメチル基、Etはエチル基を示し、nは0、1又は2である。)を示し、点線は結合手を示す。)
【請求項6】
下記一般式(1a)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物。
【化3】


(式中、R1は水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表す。R2、R3はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基を表し、又は、R2とR3は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜20の炭化水素環を形成する二価の基を表す。R4は水素原子の一部がフッ素原子で置換されていてもよく、又は、メチレン基の一部が酸素原子又はカルボニル基で置換されていてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の一級又は二級の一価炭化水素基を表す。kは0又は1を示す。)
【請求項7】
下記一般式(2)で表されるペンタフルオロヒドロキシケトン化合物を塩基処理することによって得られる下記一般式(3)で表されるジフルオロヒドロキシカルボン酸化合物。
【化4】


(式中、R2、R3はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基を表し、又は、R2とR3は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜20の炭化水素環を形成する二価の基を表す。)
【請求項8】
一般式(3)で表されるジフルオロヒドロキシカルボン酸化合物のカルボキシル基をエステル化し、ジフルオロヒドロキシエステル化合物を得、その水酸基をアシル化することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の含フッ素エステル型単量体の製造方法。

【公開番号】特開2012−97256(P2012−97256A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204395(P2011−204395)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】