説明

含フッ素エラストマーラテックス、その製造方法、含フッ素エラストマーおよび含フッ素ゴム成形品

【課題】特定の含フッ素乳化剤により安定化された含フッ素エラストマーラテックス、その製造方法、含フッ素エラストマーおよび含フッ素ゴム成形品を提供する。
【解決手段】水性媒体、水性媒体中に分散された含フッ素エラストマーの10〜60質量%、および一般式(1):CO(CFCFO)CFCOOA(式中、Aは水素原子、アルカリ金属またはNHであり、mは1〜3の整数である)で表される含フッ素乳化剤を含有する含フッ素エラストマーラテックスにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の含フッ素乳化剤により安定化された含フッ素エラストマーラテックス、その製造方法、含フッ素エラストマーラテックスから得られる含フッ素エラストマーおよび含フッ素ゴム成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種の乳化剤を用いて水性媒体中で含フッ素モノマー単独または含フッ素モノマーとその他のモノマーを共重合させる方法が広く用いられおり、各種の乳化剤が提案されてきた(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
これらの特許文献1、特許文献2の乳化剤によって、含フッ素ポリマー(樹脂)を製造する方法は知られているが、ポリマーのガラス転移点が室温以下、特に10℃以下であるようないわゆるエラストマーの製造法については知られていない。
【0003】
また、一般に含フッ素ポリマーの乳化重合に用いられるパーフルオロ乳化剤は、該含フッ素ポリマーラテックスの凝集後に含フッ素ポリマーへの付着量が多く、これを低減させる方法が望まれている。
また、一般に含フッ素ポリマーの乳化重合に用いられるパーフルオロオクタン酸塩乳化剤は、環境に影響を及ぼすことが懸念されており、これとは構造の異なる乳化剤を用いることも望まれている。
【0004】
【特許文献1】米国特許第3271341号公報
【特許文献2】特開2002−317003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、一般に含フッ素ポリマーの乳化重合に用いられるパーフルオロオクタン酸塩乳化剤とは構造の異なる、特定の含フッ素乳化剤を用いた乳化重合により含フッ素エラストマーの分散安定性に優れた含フッ素エラストマーラテックスを得ること、また、含フッ素エラストマーラテックスから凝集によって得た後の、含フッ素エラストマーに付着している乳化剤の含有量を低減させること、また、含フッ素エラストマーを架橋して物性の優れた含フッ素ゴム成形品を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、一般式(1):CO(CFCFO)CFCOOA
(式中、Aは水素原子、アルカリ金属またはNHであり、mは1〜3の整数である)で表される含フッ素乳化剤を含有することを特徴とする含フッ素エラストマーラテックスを提供する。
また、本発明は、上記含フッ素エラストマーラテックスにおいて、含フッ素エラストマーが、四フッ化エチレン(以下、TFEと記す)、フッ化ビニリデン(以下、VdFと記す)、ヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPと記す)、CF=C(OR2−n(式中、Rは炭素数1〜9のパーフルオロアルキル基または1個以上のエーテル結合を含むパーフルオロ(アルキルオキシアルキル)基であり、nは1または2であり、いずれの炭素鎖も直鎖状でも分岐を含んでも、また環状構造を有してもよい)で表されるパーフルオロ(アルキルまたはアルキルオキシアルキルビニルエーテル)(以下、PAVEと記す)、クロロトリフルオロエチレン(以下、CTFEと記す)からなる群より選ばれる少なくとも1種の含フッ素モノマー、必要に応じてCH=CHOR(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基またはエーテル結合を1個以上含むアルキルオキシアルキル基であり、いずれの炭素鎖も直鎖状でも分岐を含んでも、また環状構造を有してもよい)で表されるビニルエーテル、プロピレン(以下、Pと記す)、エチレン(以下、Eと記す)からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭化水素モノマー、および必要に応じて0.001〜10モル%の架橋基含有モノマーとの共重合体である含フッ素エラストマーラテックスを提供する。
【0007】
また、本発明は、上記含フッ素エラストマーラテックスにおいて、含フッ素エラストマーがTFE/P共重合体、TFE/P/VdF共重合体、TFE/HFP共重合体、VdF/HFP共重合体、TFE/VdF/HFP共重合体、TFE/CF=CFOCF共重合体、TFE/CF=CFOC共重合体、TFE/CF=CFOCF/CF=CFOC共重合体、TFE/CF=C(OC共重合体、TFE/メチルビニルエーテル(以下、MVEと記す)共重合体、TFE/エチルビニルエーテル(以下、EVEと記す)共重合体、TFE/ノルマルブチルビニルエーテル(以下、BVEと記す)共重合体、TFE/EVE/BVE共重合体、VdF/CF=CFOC共重合体、E/HFP共重合体、およびこれらの共重合体においてさらに架橋基含有モノマーが共重合されている共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種である含フッ素エラストマーラテックスを提供する。
【0008】
また、本発明は、上記含フッ素エラストマーラテックスにおいて、含フッ素エラストマーがTFE(40〜60モル%)/P(60〜40モル%)共重合体、TFE(20〜79モル%)/P(79〜20モル%)/VdF(1〜50モル%)共重合体、TFE(20〜80モル%)/HFP(80〜20モル%)共重合体、VdF(50〜95モル%)/HFP(5〜50モル%)共重合体、TFE(1〜35モル%)/VdF(45〜90モル%)/HFP(5〜50モル%)共重合体、TFE(40〜70モル%)/CF=CFOCF(60〜30モル%)共重合体、TFE(40〜70モル%)/CF=CFOC(60〜30モル%)共重合体、TFE(40〜70モル%)/CF=C(OC(60〜30モル%)共重合体、TFE(70〜30モル%)/MVE(30〜70モル%)共重合体、TFE(70〜30モル%)/EVE(30〜70モル%)共重合体、TFE(70〜30モル%)/BVE(30〜70モル%)共重合体、TFE(60〜30モル%)/EVE(1〜69モル%)/BVE(1〜69モル%)共重合体、VdF(40〜70モル%)/CF=CFOC(60〜30モル%)共重合体、E(40〜60モル%)/HFP(60〜40モル%)共重合体、およびこれらの共重合体においてさらに架橋基含有モノマーが0.001〜10モル%共重合されている共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種である含フッ素エラストマーラテックスを提供する。
【0009】
また、本発明は、上記含フッ素エラストマーラテックスにおいて、含フッ素乳化剤がCOCFCFOCFCOOA(式中、Aは水素原子、アルカリ金属またはNHである)である含フッ素エラストマーラテックスを提供する。
また、本発明は、一般式(1):CO(CFCFO)CFCOOA(式中、Aは水素原子、アルカリ金属またはNHであり、mは1〜3の整数である)で表される含フッ素乳化剤を0.001〜10.0質量%含有させた水性媒体中で含フッ素モノマーを乳化重合して含フッ素エラストマーラテックスを得ることを特徴とする含フッ素エラストマーラテックスの製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、上記含フッ素エラストマーラテックスの製造方法において、含フッ素モノマーがTFE、VdF、HFP、CF=C(OR2−n(式中、Rは炭素数1〜9のパーフルオロアルキル基または分子内に1個以上のエーテル結合を含むパーフルオロ(アルキルオキシアルキル)基であり、nは1または2であり、いずれの炭素鎖も直鎖状でも分岐を含んでも、また環状構造を有してもよい)で表されるPAVE、CTFEからなる群より選ばれる少なくとも1種の含フッ素モノマーであり、必要に応じてCH=CHOR(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基またはエーテル結合を1個以上含むアルキルオキシアルキル基であり、いずれの炭素鎖も直鎖状でも分岐を含んでも、また環状構造を有してもよい)で表されるビニルエーテル、プロピレン(以下、Pと記す)、エチレン(以下、Eと記す)、からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭化水素モノマー、および必要に応じて0.001〜10モル%の架橋基含有モノマーを共重合させる含フッ素エラストマーラテックスの製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、上記含フッ素エラストマーラテックスの製造方法において、含フッ素乳化剤がCOCFCFOCFCOOA(式中、Aは水素原子、アルカリ金属またはNHである)である含フッ素エラストマーラテックスの製造方法を提供する。
また、本発明は、上記含フッ素エラストマーラテックスの製造方法において、連鎖移動剤として、C2n+2−m(式中、nは1〜16整数であり、mは1以上(2n+1)以下の整数である)の存在下に含フッ素モノマーを乳化重合する含フッ素エラストマーラテックスの製造方法を提供する。
また、本発明は、上記含フッ素エラストマーラテックスを凝集して得られる含フッ素エラストマーを提供する。
また、本発明は、上記含フッ素エラストマーにおいて、JIS K6300に準じて、直径38.1mm、厚さ5.54mmの大ローターを用い、100℃で、予熱時間を1分、ローター回転時間を4分に設定して測定されたムーニー粘度が5〜200である含フッ素エラストマーを提供する。
また、本発明は上記含フッ素エラストマーを架橋してなる含フッ素ゴム成形品を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の含フッ素エラストマーラテックスは、含フッ素エラストマーの分散安定性に優れる。本発明の含フッ素エラストマーラテックスの製造方法によると、ガラス転移点が20℃以下である含フッ素エラストマーを製造することができ、また、凝集後の含フッ素エラストマーに付着するパーフルオロ乳化剤の量が少なく、洗浄回数を少なくすることができるので、含フッ素エラストマーラテックスおよび含フッ素エラストマーの生産性に優れている。本発明の含フッ素エラストマーは、一般式(1)で表される含フッ素乳化剤の含有量が少なく、環境・衛生性に優れる。本発明の含フッ素エラストマーを架橋してなる含フッ素ゴム成形品は、物性が優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の含フッ素エラストマーラテックスは、一般式(1)で表される含フッ素乳化剤を含有した水性媒体中で含フッ素モノマーを乳化重合して製造してもよいし、一般式(1)で表される含フッ素乳化剤以外の乳化剤を含有した水性媒体中で含フッ素モノマーを乳化重合して製造した含フッ素エラストマーラテックスに一般式(1)で表される含フッ素乳化剤を添加して製造することもできる。
乳化重合に供する含フッ素モノマーとしては、TFE、VdF、HFP、PAVE、CTFEから選ばれる少なくとも1種の含フッ素モノマーが挙げられる。この含フッ素モノマーは、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
【0014】
また、上記含フッ素モノマーに、CH=CHOR(Rは炭素数1〜8のアルキル基またはエーテル結合を1個以上含むアルキルオキシアルキル基であり、いずれの炭素鎖も直鎖状でも分岐を含んでも、また環状構造を有してもよい)で表されるビニルエーテル、P、Eからなる群より選ばれる共重合性の炭化水素モノマーの1種または2種以上を共重合させてもよい。
【0015】
また、上記モノマー以外に、他の共重合性モノマーを共重合させてもよい。他の共重合性モノマーとしては、0.001〜10モル%の架橋基含有モノマーが挙げられる。架橋基としては、炭素−炭素二重結合基、ハロゲン原子、酸無水物残基、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、水酸基などが挙げられる。
該架橋基含有モノマーの好適な具体例としては、例えば、1−ブロモ−1,1,2,2−テトラフルオロエチルトリフルオロビニルエーテル(以下、BrVEと記す)、1−ヨード−1,1,2,2−テトラフルオロエチルトリフルオロビニルエーテル、クロトン酸ビニル、メタクリル酸ビニル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸、イタコン酸、ヘプタフルオロ−4−ペンテンニトリルなどが挙げられる。架橋基含有モノマーは、1種または2種以上を使用できる。架橋基含有モノマーの共重合割合の好ましい範囲は、0.001〜5モル%であり、0.01〜3モル%が特に好ましい。
【0016】
製造された含フッ素エラストマーラテックスにおける含フッ素エラストマーの好適な具体例としては、例えば、TFE/P共重合体、TFE/P/VdF共重合体、TFE/HFP共重合体、VdF/HFP共重合体、TFE/VdF/HFP共重合体、TFE/CF=CFOCF共重合体、TFE/CF=CFOC共重合体、TFE/CF=CFOCF/CF=CFOC共重合体、TFE/CF=C(OC共重合体、TFE/MVE共重合体、TFE/EVE共重合体、TFE/BVE共重合体、TFE/EVE/BVE共重合体、VdF/CF=CFOC共重合体、E/HFP共重合体、およびこれらの共重合体においてさらに架橋基含有モノマーが共重合されている共重合体等が挙げられる。
【0017】
特に、TFE/P共重合体、TFE/P/VdF共重合体、TFE/PAVE共重合体、VdF/HFP共重合体、TFE/VdF/HFP共重合体、およびこれらの共重合体においてさらに架橋基含有モノマーが共重合されている共重合体が好適である。
上記共重合体における各モノマーの重合単位のモル比は、特に制限なく、要求される特性に応じて適宜選定すればよい。例えば、TFE/P共重合体におけるTFEの重合単位/Pの重合単位のモル比は、40/60〜70/30が好ましく、50/50〜60/40がより好ましい。
【0018】
また、TFE/PAVE共重合体における、PAVEのパーフルオロアルキル基は、炭素原子数1〜9であり、該パーフルオロアルキル基は直鎖状のものでも、分岐状のものでも、またそれらの混合物でもよい。パーフルオロアルキル基としては、CF基、C基がより好ましい。また、PAVEの1個以上のエーテル結合を含むパーフルオロ(アルキルオキシアルキル)基は、炭素原子数1〜9であり、エーテル結合の数は4個以下が好ましく、2個以下がより好ましく、該パーフルオロ(アルキルオキシアルキル)基は直鎖状のものでも、分岐状のものでも、またそれらの混合物でもよい。該パーフルオロ(アルキルオキシアルキル)基としては、COC基、COC基、COCOC基がより好ましい。
また、TFE/PAVE共重合体におけるTFEの重合単位/PAVEの重合単位のモル比は、85/15〜25/75が好ましく、75/25〜40/60がより好ましい。
【0019】
含フッ素エラストマーの特に好適な具体例としては、例えば、TFE(40〜60モル%)/P(60〜40モル%)共重合体、TFE(20〜79モル%)/P(79〜20モル%)/VdF(1〜50モル%)共重合体、TFE(20〜80モル%)/HFP(80〜20モル%)共重合体、VdF(50〜95モル%)/HFP(5〜50モル%)共重合体、TFE(1〜35モル%)/VdF(45〜90モル%)/HFP(5〜50モル%)共重合体、TFE(40〜70モル%)/CF=CFOCF(60〜30モル%)共重合体、TFE(40〜70モル%)/CF=CFOC(60〜30モル%)共重合体、TFE(40〜70モル%)/CF=C(OC(60〜30モル%)共重合体、TFE(70〜30モル%)/MVE(30〜70モル%)共重合体、TFE(70〜30モル%)/EVE(30〜70モル%)共重合体、TFE(70〜30モル%)/BVE(30〜70モル%)共重合体、TFE(60〜30モル%)/EVE(1〜69モル%)/BVE(1〜69モル%)共重合体、VdF(40〜70モル%)/CF=CFOC(60〜30モル%)共重合体、E(40〜60モル%)/HFP(60〜40モル%)共重合体、およびこれらの共重合体においてさらに架橋基含有モノマーが0.001〜10モル%共重合されている共重合体等が挙げられる。
【0020】
ここで、TFE(40〜60モル%)/P(60〜40モル%)共重合体とは、TFEとPを40〜60モル%:60〜40モル%の割合で共重合させて得られる共重合体を意味しており、他の共重合体も同様の意味である。
また、TFE(40〜60モル%)/P(60〜40モル%)共重合体においてさらに架橋基含有モノマーが0.001〜10モル%共重合されている共重合体とは、TFEとPの2成分の共重合割合を40〜60モル%:60〜40モル%にし、さらに、架橋基含有モノマーの共重合割合をモノマー3成分の合計量に対して0.001〜10モル%にした共重合体を意味しており、他の共重合体も同様の意味である。
本発明の含フッ素エラストマーは、ガラス転移点が20℃以下であることが好ましく、10℃以下であることがより好ましく、5℃以下であることが特に好ましい。
【0021】
本発明の含フッ素エラストマーラテックスは、一般式(1):
O(CFCFO)CFCOOA
(式中、Aは水素原子、アルカリ金属またはNHであり、mは1〜3の整数である)で表される含フッ素乳化剤の1種または2種以上を含有することを特徴とする。
Aにおける前記アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等を例示することができる。Aとしては、特にNH、ナトリウムがより好ましく、NHが最も好ましい。
前記含フッ素乳化剤としては、次のものが例示できる。
【0022】
Aが水素原子の場合の具体例としては、COCFCFOCFCOOH、CO(CFCFO)CFCOOH、CO(CFCFO)CFCOOHを例示することができる。
Aがリチウムの場合の具体例としては、COCFCFOCFCOOLi、CO(CFCFO)CFCOOLi、CO(CFCFO)CFCOOLiを例示することができる。
【0023】
Aがナトリウムの場合の具体例としては、COCFCFOCFCOONa、CO(CFCFO)CFCOONa、CO(CFCFO)CFCOONaを例示することができる。
Aがカリウムの場合の具体例としては、COCFCFOCFCOOK、CO(CFCFO)CFCOOK、CO(CFCFO)CFCOOKを例示することができる。
【0024】
AがNHの場合の具体例としては、COCFCFOCFCOONH、CO(CFCFO)CFCOONH、CO(CFCFO)CFCOONHを例示することができる。
本発明における含フッ素乳化剤としては、COCFCFOCFCOOA(式中、Aは水素原子、アルカリ金属またはNHである)が好ましく、COCFCFOCFCOONH、CO(CFCFO)CFCOONHがより好ましく、とりわけCOCFCFOCFCOONHが特に好ましい。
【0025】
本発明の含フッ素エラストマーラテックスの製造方法においては、一般式(1)で表される含フッ素乳化剤を0.001〜10.0質量%含有させた水性媒体中で含フッ素モノマーを乳化重合して含フッ素エラストマーラテックスを得る。一般式(1)で表される含フッ素乳化剤の水性媒体中の含有量は、好ましくは0.001〜5質量%であり、特に好ましくは0.01〜3質量%である。
水性媒体としては、イオン交換水、純水、超純水等の水などが挙げられる。水性媒体は、水溶性の有機溶剤を含んでもよい。有機溶剤としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エチレングリコール類、プロピレングリコール類などが挙げられる。有機溶剤の含有割合は、水の100質量部に対して1〜50質量部が好ましく、3〜20質量部がより好ましい。なお、含フッ素乳化剤の含有割合の基準となる水の量には、重合開始剤などの他の添加剤の含有量は含まない。
【0026】
本発明に使用する含フッ素乳化剤は既存のパーフルオロオクタン酸アンモニウム等のエーテル性酸素を持たない乳化剤や、パーフルオロアルキル基が分岐した構造をもつ乳化剤と比較して、同濃度の水溶液の動的表面張力が高くなるため、重合時のラテックスの安定性は低くなると考えられたが、本発明に使用する含フッ素乳化剤は重合時のラテックス安定性に優れ、ラテックス凝集後の含フッ素エラストマーへの該含フッ素乳化剤の付着が少ないという特徴を有する。
【0027】
乳化重合で使用される重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤を用いることができ、特に水溶性重合開始剤が好ましい。水溶性重合開始剤の具体例としては、過硫酸アンモニウム塩などの過硫酸類、過酸化水素あるいはこれらと亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなどの還元剤との組合わせからなるレドックス重合開始剤、さらにこれらに少量の鉄、第一鉄塩(例えば、硫酸第一鉄塩など)、硫酸銀などを共存させた系の無機系重合開始剤、またはジコハク酸過酸化物、アゾビスイソブチルアミジン二塩酸塩などの有機系重合開始剤等を例示することができる。
重合開始剤は、乳化重合の最初から添加してもよいし、乳化重合の途中から添加してもよい。
重合開始剤の添加量は、重合に用いるモノマーに対し、0.0001〜3質量%が好ましく、0.001〜1質量%が特に好ましい。
【0028】
レドックス系開始剤を用いる場合は重合媒体中のpHをレドックス反応性を損なわない範囲に調整するため、pH緩衝剤を用いることが望ましい。pH緩衝剤としては、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどの無機塩類を用いることができ、リン酸水素二ナトリウム2水和物、リン酸水素二ナトリウム12水和物が好ましい。
また、レドックス系開始剤を用いる場合の、レドックス反応する金属イオンとしては複数のイオン価をもつ各種の金属を用いることができる。具体例としては、鉄、銅、マンガン、クロムなどの遷移金属が好ましく、特に鉄が好ましい。
【0029】
さらに、レドックス反応する金属を重合媒体中に安定に存在させるために、金属キレート剤を用いることが好ましい。金属キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸類が好ましく、水溶性の観点からエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム2水和物がより好ましい。
レドックス系開始剤を用いる場合のレドックス反応試薬としては、還元性化合物を用いることが好ましい。還元性化合物としては、各種硫酸性硫黄含有化合物を用いることができ、特にロンガリット(化学式:CH(OH)SONa・2HO)が好ましい。還元性化合物は、重合中に適宜連続的に添加することが好ましく、添加の際に重合媒体のpHを乱さないために重合媒体と同じpHに調整しておくことが好ましい。
【0030】
含フッ素モノマーの重合において、分子量を制御する連鎖移動剤を使用できる。
連鎖移動剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン等のクロロフルオロハイドロカーボン、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等のハイドロカーボン、C2n+2−m(式中、nは1〜16整数であり、mは1以上2n以下の整数である)、Rf3IBr(ここで、Rf3は炭素数1〜16の飽和ポリフルオロアルキレン基である。)等が挙げられる。
2n+2−mとしては、Rf2(ここで、Rf2は炭素数1〜16の飽和ポリフルオロアルキレン基である。)が好ましく、1,4−ジヨードパーフルオロブタン、1,6−ジヨードパーフルオロブタン、1,2,4−トリヨードパーフルオロブタンがより好ましい。また、Rf3IBrとしては、1−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブタンが好ましい。連鎖移動剤は、1種または2種以上を用いることができる。
【0031】
連鎖移動剤の添加量は、重合性モノマーに対して0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましい。
本発明の含フッ素エラストマーラテックス製造のための乳化重合条件は、目的とする含フッ素エラストマーの種類や含フッ素モノマーの共重合比率、重合開始剤の分解温度などによって選択される。重合圧力は0MPaG以上20MPaG以下が好ましく、特に0.3MPaG以上10MPaG以下が好ましく、とりわけ0.3MPaG以上5MPaG以下が好ましい。
重合温度は0℃以上100℃以下が好ましく、特に10℃以上80℃以下が好ましい。
【0032】
本発明の含フッ素エラストマーラテックスは、上記のように、一般式(1)で表される含フッ素乳化剤の存在下での乳化重合法により製造することができる。
また、本発明の含フッ素エラストマーラテックスは、パーフルオロオクタン酸アンモニウム、パーフルオロオクタン酸、パーフルオロオクタン酸リチウム、パーフルオロオクタン酸ナトリウム、パーフルオロオクタン酸カリウム、C2p+1O(CFCFO)CFCOOA(式中、Aは水素原子、アルカリ金属またはNHであり、pは3〜10の整数であり、qは0または1〜3の整数である)、Rf4−(OCHCFCF−O−CHs−2CF−Rf5−COOA(式中、Rf4は直鎖または分岐の炭素数1〜20の含フッ素アルキル基、または含フッ素アルキルオキシアルキル基であり、rは0または2〜3の整数であり、sは0、1または2であり、Rf5は炭素数1〜25の含フッ素アルキレン基であり、Aは水素原子、アルカリ金属またはNHである)などの含フッ素乳化剤や、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムなどの炭化水素系乳化剤などの一般式(1)で表される含フッ素乳化剤以外の乳化剤を含有した水性媒体中で含フッ素モノマーを乳化重合して製造した含フッ素エラストマーラテックスに、一般式(1)で表される含フッ素乳化剤を添加して乳化剤を置換して製造することも好ましい。この製造方法において、一般式(1)で表される含フッ素乳化剤以外の乳化剤の水性媒体中の含有量は、含フッ素ポリマーに対して0.03〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましい。
【0033】
上記製造方法のうち、特に一般式(1)で表される含フッ素乳化剤の存在下での乳化重合法により製造することがより好ましい。
本発明の含フッ素エラストマーラテックスにおいて、水性媒体に分散された含フッ素エラストマーの粒子径は、0.01〜10μmが好ましく、0.01〜5μmがより好ましく、0.05〜3μmが最も好ましい。この範囲にあると、含フッ素エラストマーの分散安定性に優れる。
含フッ素エラストマーラテックスにおいては、含フッ素エラストマーの含有割合は10〜60質量%が好ましく、15〜60質量%がより好ましく、15〜50質量%がさらに好ましい。
【0034】
また、含フッ素ポリマーラッテクス中において、一般式(1)で表される含フッ素乳化剤の含有割合は、含フッ素ポリマーの質量を基準にして、0.03〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましい。また、水性媒体の質量を基準にして、0.001〜5質量%が好ましく、0.01〜3質量%がより好ましい。
すなわち、本発明の含フッ素ポリマーラッテクスは、水性媒体、水性媒体中に分散された含フッ素エラストマーの10〜60質量%、該含フッ素ポリマーの質量を基準にして、一般式(1)で表される含フッ素乳化剤の0.03〜10質量%、を含有することが好ましい。また、水性媒体、水性媒体中に分散された含フッ素エラストマーの15〜60質量%、該含フッ素ポリマーを基準にして、一般式(1)で表される含フッ素乳化剤の0.05〜5質量%を含有することがより好ましい。さらに、水性媒体、水性媒体中に分散された含フッ素エラストマーの15〜50質量%、該含フッ素ポリマーを基準にして、一般式(1)で表される含フッ素乳化剤の0.05〜5質量%を含有することが最も好ましい。
【0035】
乳化重合法で製造された含フッ素エラストマーラテックスは、凝集剤を添加して含フッ素エラストマーを凝集させることができる。
凝集剤としては、含フッ素ポリマーラテックスの凝集に通常使用されているものであれば、いずれも使用でき、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムなどの水溶性塩、硝酸、塩酸、硫酸などの酸類、アルコール、アセトンなどの水溶性有機液体類などが挙げられる。凝集剤の添加量は、含フッ素エラストマーラテックス100質量部に対して、0.001〜20質量部が好ましく、0.01〜10質量部が特に好ましい。また、含フッ素エラストマーラテックスを凍結させて凝集させることもできる。
【0036】
凝集された含フッ素エラストマーは、ロ別され、洗浄水で洗浄することが好ましい。洗浄水としては、イオン交換水、純水、超純水などが挙げられる。洗浄水の量は、含フッ素エラストマーの質量の1〜5倍量であっても、1回の洗浄で十分含フッ素エラストマーに付着している乳化剤の量を低減することができる。洗浄回数は、少ないほど作業性の観点からは好ましく、1〜3回がより好ましい。
【0037】
凝集させて得られる本発明の含フッ素エラストマーは、式(1)で表される含フッ素乳化剤の含有量を少なくできる特徴がある。
本発明の含フッ素エラストマーにおいて、該含フッ素エラストマー中の式(1)で表される含フッ素乳化剤の含有量は、1000質量ppm以下が好ましく、500質量ppm以下がより好ましく、300質量ppm以下が最も好ましい。この範囲にあると、架橋成形工程において、該含フッ素乳化剤の気化拡散がほとんどなく、環境・衛生性に優れる。また、気化した含フッ素乳化剤を回収する必要がなく好ましい。
【0038】
本発明の含フッ素エラストマーラテックスを凝集させた廃液中に含まれる、含フッ素乳化剤は公知の方法で回収し、再利用することができる。回収法としては、強塩基性アニオン交換樹脂または弱塩基性アニオン交換樹脂に吸着させる方法、合成吸着剤に吸着させる方法、活性炭に吸着させる方法、層状複水酸化物に内包させる方法、排水を濃縮する方法等を例示することができる。上記の方法により回収した本発明に使用される含フッ素乳化剤は公知の方法で再生することができる。
本発明の含フッ素エラストマーは、JIS K6300に準じ、直径38.1mm、厚さ5.54mmの大ローターを用い、100℃で、予熱時間を1分、ローター回転時間を4分に設定して測定されたムーニー粘度が5〜200が好ましく、10〜200がより好ましい。ムーニー粘度は、含フッ素エラストマーの分子量の指標であり、ムーニー粘度が大きいと含フッ素エラストマーの分子量が大きいことを示す。この範囲にあると混練作業性に優れ、かつ架橋後のゴム物性に優れる。
【0039】
本発明の含フッ素エラストマーは、公知の方法で架橋反応を行うことができる。架橋反応の具体例としてはパーオキシド架橋、ポリオール架橋、アミン架橋、トリアジン架橋等を例示することができ、配合物の生産性、耐熱性、耐薬品性からパーオキシド架橋を好ましく用いることができる。
【0040】
パーオキシド架橋における有機過酸化物は、架橋剤であり、加熱等により過酸化物ラジカルを発生するものが好ましい。具体例としては、ジtert−ブチルパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、α,α−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3等のジアルキルパーオキシド類、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロキシパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシマレイン酸、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等が挙げられる。特に、好ましいものはジアルキルパーオキシド類である。一般に、有機過酸化物の活性、分解温度等から、使用する有機過酸化物の種類及び含フッ素エラストマー組成物中の含有量が選定される。
【0041】
有機過酸化物の含有量は、含フッ素エラストマーの100質量部に対して0.3〜10質量部である。この範囲にあると強度と伸びのバランスのとれた架橋物性が得られる。好ましくは、0.3〜5質量部であり、とりわけ0.5〜3質量部が好ましい。
本発明の含フッ素エラストマーは、架橋助剤を含有することが好ましい。架橋助剤を含有すると、生成したラジカルが架橋助剤と有効に反応し架橋効率が高くなる。架橋助剤としては、過酸化物ラジカル及び含フッ素エラストマーの分子鎖上に生成するラジカルに対して反応活性を有する化合物が挙げられる。
【0042】
架橋助剤の具体例としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートオリゴマー、トリメタリルイソシアヌレート、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N′−m−フェニレンビスマレイミド、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、ジプロパルギルテレフタレート、ジアリルフタレート、N,N′,N′′,N′′′−テトラアリルテレフタールアミド、ポリメチルビニルシロキサン、ポリメチルフェニルビニルシロキサン等のビニル基含有シロキサンオリゴマー等を例示でき、特にトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレートが好ましく、とりわけトリアリルイソシアヌレートが特に好ましい。
【0043】
架橋助剤の含有量は、含フッ素エラストマー100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましい。この範囲にあると強度と伸びのバランスのとれた架橋物性が得られる。
さらに、本発明の含フッ素エラストマーを架橋させる際には、着色させるための顔料、充填剤、補強剤などを配合してもよい。充填剤または補強剤としては、カーボンブラック、酸化チタン、二酸化珪素、クレー、タルク、ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレン、四フッ化エチレン/エチレン共重合体、四フッ化エチレン/フッ化ビニリデン共重合体などのフッ素樹脂などを例示できる。
【0044】
本発明の含フッ素ゴム成形品は、架橋と共に成形を行なうことにより得ることができる。
成形は、架橋と同時に行ってもよいし、架橋の前後に行ってもよい。成形は、特に制限されるものではなく、例えば、加圧成形、圧縮成形、押出し成形、射出成形など種々の成形が挙げられる。
架橋反応は、150〜300℃で行なうことが好ましい。この範囲で架橋させるとゴム物性に優れる含フッ素ゴム成形品が得られる。架橋反応は、通常、比較的低温での一次架橋反応と、比較的高温での二次架橋反応の組合せて行なわれる。一次架橋反応温度は、通常150〜190℃が好ましい。二次架橋反応温度は、通常170〜300℃が好ましい。
【実施例】
【0045】
以下に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。なお、本発明は、これらの例によって、何ら制限されるものではない。
[ポリマー中のパーフルオロ乳化剤残存量]
乾燥後の含フッ素エラストマーの10gをソクスレー抽出器を用いて、100℃で8時間エタノールを溶媒としてエタノール可溶分を抽出させる。得られた抽出液中のパーフルオロ乳化剤の濃度を液体クロマトグラフィ−マススペクトル法で定量し、洗浄後のポリマーへのパーフルオロ乳化剤の残存量を測定する。
【0046】
[ムーニー粘度]
JIS K6300に準じて、直径38.1mm、厚さ5.54mmの大ローターを用い、100℃で、予熱時間を1分、ローター回転時間を4分に設定して測定した。
[架橋ゴムの物性測定]
架橋含フッ素ゴムの引張強さ及び破断伸びはJIS K6251に準じ、厚さ2mmの架橋ゴムシートを3号ダンベルで打ち抜いて得た試料を用いて測定した。また、硬度はJIS K6253に準じて測定した。
【0047】
(実施例1)
撹拌翼を備えた内容積3200ccのステンレス製耐圧容器に1500gのイオン交換水、40gのリン酸水素二ナトリウム12水和物、0.5gの水酸化ナトリウム、198gの第三級ブタノール、8gのCOCFCFOCFCOONH(以下、EEAという)、2.5gの過硫酸アンモニウムを加えた。さらに予め200gのイオン交換水に0.4gのEDTA(エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム塩・2水和物、以下同じ)および0.3gの硫酸第一鉄7水和物を溶解させた水溶液を投入した。これにTFEとPをTFE/Pのモル比が85/15かつ25℃における反応器内圧が2.5MPaGになるように圧入した。撹拌機を300rpmで回転させ、2.5質量%のロンガリット水溶液を添加し、重合反応を開始させた。
【0048】
重合反応の開始に伴い、反応器内圧が0.01MPaG分降下した時点で予め調整しておいた56/44(モル比)のTFE/P混合ガスを圧入し、反応器内圧を2.51MPaGに昇圧させた。これを繰り返し、反応器内圧を2.49〜2.51MPaGになるようにTFE/P混合ガスを逐次添加させ、重合反応を続けた。混合ガスの添加量の総量が800gとなった時点で、ロンガリット水溶液の添加を停止し、反応器内温を10℃に冷却させ、重合反応を停止させた。重合により消費したロンガリット水溶液は30.0gであった。以上の操作によってEEAを含むTFE/P共重合体ラテックスを得た。ラテックスの質量は2650gであった。
【0049】
該ラテックスを4000gの1.5質量%塩化カルシウム水溶液に添加して、塩析によりラテックスを凝集させ、TFE/P共重合体を得た。該共重合体を濾取し、3500gのイオン交換水により洗浄および濾別し、合計3回洗浄した。濾取した共重合体を120℃で12時間乾燥させ、白色の795gのTFE/P共重合体を得た。EEAの残存量は100質量ppmであった。また、該共重合体のガラス転移温度は、−0.5℃であった。ムーニー粘度は180であった。得られた含フッ素エラストマーのフッ素含有量は58.2質量%であり、これを元に計算したTFE/P共重合体の組成は、TFEに基づく重合単位/Pに基づく重合単位=56.3/43.7(モル比)であった。
300℃で熱処理後の該TFE/P共重合体の100質量部、MTカーボンの30質量部、トリアリルイソシアヌレートの5質量部、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(化薬アクゾ社製パーカドックス14)の1質量部、ステアリン酸ナトリウムの1質量部を2本ロールで混練し、含フッ素エラストマー組成物を得た。該組成物を170℃で20分間プレス機を用いて1次架橋させ、続いて200℃、4時間オーブン内で2次架橋させることで厚さ2mmの架橋含フッ素ゴムシートを得た。架橋含フッ素ゴムの物性を表1に示す。
【0050】
(実施例2)
撹拌翼を備えた内容積2100ccのステンレス製耐圧容器に1500gのイオン交換水、17gのEEA、300gのパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(以下、PPVEという)を仕込んだ。アンカー翼を用いて300rpmの速度で撹拌しながら、内温を60℃に昇温させた。内温が60℃になってからTFEを反応器内圧が1.0MPaGになるように圧入した。2.5質量%の過硫酸アンモニウム水溶液を5mL添加し、重合反応を開始させた。重合の進行に伴い、反応器内圧が0.01MPaG分降下した時点でTFEを圧入し、反応器内圧を1.01MPaGに昇圧させた。これを繰り返し、反応器内圧を0.99〜1.01MPaGになるようにTFEガスを逐次添加させ、重合反応を続けた。
【0051】
TFEガスの添加量15gごとに予め調整しておいたPPVE/BrVEの98/2(モル比)混合液の15mLを反応器に圧入した。該混合液の添加はTFE消費量が105gまで続けた。該混合液の添加回数は計7回105mLであった。TFEガス添加量の総量が120gとなった時点で、TFE添加を停止し、反応器内温を10℃に冷却させ、重合反応を停止させた。重合時間は約4.5時間であった。以上の操作によってEEAを含むTFE/PPVE共重合体ラテックスを得た。ラテックスの質量は2130gであった。
【0052】
該ラテックスを3000gの3.6N塩酸水溶液に添加して、pH調整によりラテックスを凝集させ、TFE/PPVE/BrVE共重合体を得た。該共重合体を濾過および超純水により洗浄した。洗浄回数は3回で、1回当たりの洗浄に用いた超純水は1500gであった。120℃で12時間乾燥させ、白色透明の380gのTFE/PPVE/BrVE共重合体を得た。
得られたTFE/PPVE/BrVE共重合体共重合体の組成は、TFEに基づく重合単位/PPVEに基づく重合単位/BrVEに基づく重合単位=54/44/2(モル比)であった。
EEAの残存量は80質量ppmであった。また、該共重合体のガラス転移温度は、0.5℃であった。ムーニー粘度は95であった。
該TFE/PPVE/BrVE共重合体の100質量部、MTカーボンの20質量部、トリアリルイソシアヌレートの5質量部、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(化薬アクゾ社製パーカドックス14)の1質量部、酸化マグネシウムの3質量部を2本ロールで混練し、含フッ素エラストマー組成物を得た。該組成物を170℃で20分間プレス機を用いて1次架橋させ、続いて200℃、4時間オーブン内で2次架橋させることで厚さ2mmの架橋含フッ素ゴムシートを得た。架橋含フッ素ゴムの物性を表1に示す。
【0053】
(実施例3)
撹拌翼を備えた内容積2100ccのステンレス製耐圧容器に708gのイオン交換水、7.08gのEEA、リン酸水素ナトリウム12水和物の0.6g、1,4−ジヨードパーフルオロブタンの1.62g、50gのパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(以下、PMVEという)を仕込んだ。アンカー翼を用いて600rpmの速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。内温が80℃になってからTFEを反応器内圧が0.6MPaGになるように自圧で圧入した。0.5質量%の過硫酸アンモニウム水溶液を10mL添加し、重合反応を開始させた。重合の進行に伴い、反応器内圧が0.01MPaG分降下した時点でTFEを圧入し、反応器内圧を0.61MPaGに昇圧させた。これを繰り返し、反応器内圧を0.59〜0.61MPaGになるようにTFEガスを逐次添加させ、重合反応を続けた。
【0054】
TFEガスの添加量8g以降、16gごとにPMVEの10mLを反応器に窒素圧で圧入した。PMVEの添加はTFE消費量が136gまで続けた。PMVEの添加回数は計9回90mLであった。TFEガスの添加量が50g、100gの時点で0.5質量%の過硫酸アンモニウム水溶液を10mL添加した。TFEガス添加量の総量が140gとなった時点で、TFE添加を停止し、反応器内温を10℃に冷却させ、重合反応を停止させた。重合時間は約17時間であった。以上の操作によってEEAを含むTFE/PMVE共重合体ラテックスを得た。ラテックスの質量は1012gであった。
【0055】
該ラテックスを1500gの3質量%カリミョウバン水溶液に添加して、塩析によりラテックスを凝集させ、TFE/PMVE共重合体を得た。該共重合体を濾過および超純水により洗浄した。洗浄回数は3回で、1回当たりの洗浄に用いた超純水は1200gであった。50℃で24時間真空乾燥させ、白色透明の250gのヨウ素含有TFE/PMVE共重合体を得た。
得られたTFE/PMVE共重合体の組成は、TFEに基づく重合単位/PMVEに基づく重合単位=68/32(モル比)であった。
【0056】
EEAの残存量は50質量ppmであった。また、該共重合体のガラス転移温度は、−4.7℃であった。ムーニー粘度は25であった。
該ヨウ素含有TFE/PMVE共重合体の100質量部とMTカーボンの20質量部、トリアリルイソシアヌレートの5質量部、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン(日本油脂製パーヘキサ25B)の1質量部、o−フェニルフェノールの0.5質量部を2本ロールで混練し、含フッ素エラストマー組成物を得た。該組成物を170℃で20分間プレス機を用いて1次架橋させ、続いて250℃、4時間オーブン内で2次架橋させることで厚さ2mmの架橋含フッ素ゴムシートを得た。架橋含フッ素ゴムの物性を表1に示す。
【0057】
(実施例4)
撹拌翼を備えた内容積2100ccのステンレス鋼製耐圧容器にイオン交換水の840g、EEAの1.68gを仕込み、反応器内を窒素置換後、アンカー翼を用いて600rpmの速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。内温が80℃になってからあらかじめ調整しておいたVdF/HFP=65/35(モル比)の混合ガスを反応器内圧が0.75MPaGになるように仕込んだ。2.0質量%の過硫酸アンモニウム水溶液を10mL添加し、重合反応を開始させた。重合の進行に伴い、反応器内圧が0.01MPaG分降下した時点であらかじめ調整しておいたVdF/HFP=78/22(モル比)の混合ガスを自圧で圧入し、反応器内圧を0.76MPaGに昇圧させた。これを繰り返し、反応器内圧を0.74〜0.76MPaGになるようにVdF/HFP=78/22(モル比)混合ガスを逐次添加させ、重合反応を続けた。
【0058】
VdF/HFP=78/22(モル比)混合ガスの添加量の総量が50gとなった時点で、VdF/HFP混合ガスの供給を停止し、反応器内温を10℃に冷却させ、重合反応を停止させた。重合時間は約3時間であった。以上の操作によってEEAを含むVdF/HFP共重合体ラテックスを得た。ラテックスの質量は895gであった。
該ラテックスの1500gを3質量%カリミョウバン水溶液に添加して、塩析によりラテックスを凝集させ、VdF/HFP共重合体を得た。該共重合体を濾過および超純水により洗浄した。洗浄回数は3回で、1回当たりの洗浄に用いた超純水は1200gであった。120℃で12時間乾燥させ、白色のVdF/HFP共重合体の49gを得た。
【0059】
得られたVdF/HFP共重合体の組成は、VdFに基づく重合単位/HFPに基づく重合単位=78/22(モル比)であった。
該VdF/HFP共重合体中のEEAの残存量は300質量ppmであった。また、該共重合体のガラス転移温度は、−20.5℃であった。ムーニー粘度は30であった。
該VdF/HFP共重合体の100質量部、MTカーボンの20質量部、トリアリルイソシアヌレートの4質量部、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン(日本油脂製パーヘキサ25B)の1.5質量部を2本ロールで混練し、含フッ素エラストマー組成物を得た。該組成物を160℃で10分間プレス機を用いて1次架橋させ、続いて180℃、4時間オーブン内で2次架橋させることで厚さ2mmの架橋含フッ素ゴムシートを得た。物性を表1に示す。
【0060】
(実施例5)
撹拌用アンカー翼を備えた内容積3200mLのステンレス鋼製耐圧反応器を脱気した後、1600gのイオン交換水、40gのリン酸水素二ナトリウム12水和物、0.5gの水酸化ナトリウム、97gのtert−ブタノール、9gのEEA、2.5gの過硫酸アンモニウムを加えた。さらに予め200gのイオン交換水に0.4gのエチレンジアミン四酢酸2ナトリウム塩・2水和物(以下、EDTAという。)及び0.3gの硫酸第一鉄7水和物を溶解させた水溶液を投入した。ついで、40℃で、TFE/P=85/15(モル比)のモノマー混合ガスを、反応器内圧が2.50MPaGになるように圧入した。アンカー翼を300rpmで回転させ、水酸化ナトリウムでpHを10.0に調整したヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム2水和物(以下、ロンガリットともいう。)の2.5質量%水溶液(以下、ロンガリット2.5質量%水溶液という。)を添加し、重合反応を開始させた。以降、高圧ポンプを用いて、ロンガリット2.5質量%水溶液を連続的に添加した。
【0061】
重合の進行に伴い圧力が低下するので、反応器内圧が2.49MPaGに降下した時点で、TFE/P=56/44(モル比)の混合ガスを自圧で圧入し、反応器内圧を2.51MPaGまで昇圧させた。これを繰り返し、反応器内圧を2.49〜2.51MPaGに保持し、重合反応を続けた。TFE/P混合ガスの添加量が10gになった時点で、あらかじめ調製しておいたクロトン酸ビニル(以下、VCRという。)/tert−ブタノール=5/95(質量比)溶液の2mLを反応器内に窒素背圧で圧入した。以降、TFE/P混合ガスの添加量が790gまで、10g毎に該VCRのtert−ブタノール溶液の2mLを添加し、合計158mL圧入した。TFE/P混合ガスの添加量の総量が800gとなった時点で、ロンガリット2.5質量%水溶液の添加を停止し、反応器内温を10℃に冷却し、重合反応を停止し、TFE/P/VCR共重合体ラテックスを得た。ロンガリット2.5質量%水溶液の使用量は45gであった。
【0062】
該ラテックスを塩化カルシウムの5質量%水溶液に添加して、塩析によりラテックスを凝集させ、TFE/P/VCR共重合体を析出させた。該共重合体を濾取し、イオン交換水により洗浄し、120℃のオーブンで12時間乾燥させ、白色のTFE/P/VCR共重合体の798gを得た。赤外吸収スペクトル法および13C−NMRによる分析の結果、該共重合体の組成はTFEに基づく重合単位/Pに基づく重合単位/VCRに基づく重合単位=55.8/44.2/0.2(モル比)であった。また、ムーニー粘度は120、ガラス転移温度は−0.5℃、EEA残存量は90質量ppm、であった。
該TFE/P/VCR共重合体の100質量部、MTカーボンの30質量部、トリアリルイソシアヌレートの5質量部、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(化薬アクゾ社製パーカドックス14)の1質量部、酸化マグネシウムの1質量部を2本ロールで混練し、含フッ素エラストマー組成物を得た。該組成物を170℃で20分間プレス機を用いて1次架橋させ、続いて200℃、4時間オーブン内で2次架橋させることで厚さ2mmの架橋含フッ素ゴムシートを得た。架橋含フッ素ゴムの物性を表1に示す。
【0063】
(比較例1)
実施例1において、乳化剤としてパーフルオロオクタン酸アンモニウム(以下、APFOという)を用いた以外は同様の方法でTFE/P共重合体ラテックスを得た。該ラテックスを実施例1と同様の方法で凝集・洗浄・乾燥させ、786gのTFE/P共重合体を得た。共重合体のフッ素含有量は57.9質量%であり、これを元に計算したTFE/P共重合体の組成は、TFEに基づく重合単位/Pに基づく重合単位=55.8/44.2(モル比)であった。
APFO残存量は2300質量ppmであった。また、該共重合体のガラス転移温度は、−0.3℃であった。ムーニー粘度は178であった。実施例1と同様の方法で得た架橋含フッ素ゴムシートの物性を表1に示す。
【0064】
(比較例2)
実施例2において、EEAの代わりに乳化剤としてAPFOを用いた以外は同様の操作によって369gのTFE/PPVE/BrVE共重合体を得た。重合時間は約5.5時間であった。19F−NMRによる分析の結果、共重合体の組成は、TFEに基づく重合単位/PPVEに基づく重合単位/BrVEに基づく重合単位=59/39/2(モル比)であった。APFO残存量は1300ppmであった。また、該共重合体のガラス転移温度は、0.1℃であった。ムーニー粘度は90であった。実施例2と同様の方法で得た架橋含フッ素ゴムシートの物性を表1に示す。
【0065】
(比較例3)
実施例3において、EEAの代わりに乳化剤としてAPFOを用いた以外は同様の操作によって220gのヨウ素含有TFE/PMVE共重合体を得た。19F−NMRによる分析の結果、共重合体の組成は、TFEに基づく重合単位/PPVEに基づく重合単位=67/33(モル比)であった。APFO残存量は1200ppmであった。また、該共重合体のガラス転移温度は、−4.8℃であった。ムーニー粘度は23であった。実施例3と同様の方法で得た含フッ素架橋ゴムシートの物性を表1に示す。
【0066】
(比較例4)
実施例4において、EEAの代わりに乳化剤としてAPFOを用いた以外は同様の操作によって48gのVdF/HFP共重合体を得た。19F−NMRによる分析の結果、共重合体の組成は、VdFに基づく重合単位/HFPに基づく重合単位=77/23(モル比)であった。APFO残存量は3000ppmであった。また、該共重合体のガラス転移温度は、−20.0℃であった。ムーニー粘度は32であった。実施例4と同様の方法で得た架橋含フッ素ゴムシートの物性を表1に示す。
【0067】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の含フッ素エラストマーラテックスは、含フッ素エラストマーの製造に利用できる。本発明の含フッ素エラストマーは、耐熱性、耐油性、耐薬品性、耐溶剤性、非粘着性、電気特性、衛生性等に優れることから、シール材、Oリング、チューブ、ホース、ダイヤフラム、ベルト、電線被覆材、ライニング材などとして、半導体製造産業、化学工業、食品工業、石油製造、電気、機械、自動車工業等で広く用いられる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):CO(CFCFO)CFCOOA
(式中、Aは水素原子、アルカリ金属またはNHであり、mは1〜3の整数である)で表される含フッ素乳化剤を含有することを特徴とする含フッ素エラストマーラテックス。
【請求項2】
含フッ素エラストマーが四フッ化エチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、CF=C(OR2−n(式中、Rは炭素数1〜9のパーフルオロアルキル基または1個以上のエーテル結合を含むパーフルオロ(アルキルオキシアルキル)基であり、nは1または2であり、いずれの炭素鎖も直鎖状でも分岐を含んでも、また環状構造を有してもよい)で表されるパーフルオロ(アルキルまたはアルキルオキシアルキルビニルエーテル)、クロロトリフルオロエチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の含フッ素モノマー、必要に応じてCH=CHOR(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基またはエーテル結合を1個以上含むアルキルオキシアルキル基であり、いずれの炭素鎖も直鎖状でも分岐を含んでも、また環状構造を有してもよい)で表されるビニルエーテル、プロピレン、エチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の炭化水素モノマー、および必要に応じて0.001〜10モル%の架橋基含有モノマーとの重合体である請求項1に記載の含フッ素エラストマーラテックス。
【請求項3】
含フッ素エラストマーが、四フッ化エチレン/プロピレン共重合体、四フッ化エチレン/プロピレン/フッ化ビニリデン共重合体、四フッ化エチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、四フッ化エチレン/フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、四フッ化エチレン/CF=CFOCF共重合体、四フッ化エチレン/CF=CFOC共重合体、四フッ化エチレン/CF=CFOCF/CF=CFOC共重合体、四フッ化エチレン/CF=C(OC共重合体、四フッ化エチレン/メチルビニルエーテル共重合体、四フッ化エチレン/エチルビニルエーテル共重合体、四フッ化エチレン/ノルマルブチルビニルエーテル共重合体、四フッ化エチレン/エチルビニルエーテル/ノルマルブチルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン/CF=CFOC共重合体、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、およびこれらの共重合体においてさらに架橋基含有モノマーが共重合されている共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載の含フッ素エラストマーラテックス。
【請求項4】
含フッ素エラストマーが、四フッ化エチレン(40〜60モル%)/プロピレン(60〜40モル%)共重合体、四フッ化エチレン(20〜79モル%)/プロピレン(79〜20モル%)/フッ化ビニリデン(1〜50モル%)共重合体、四フッ化エチレン(20〜80モル%)/ヘキサフルオロプロピレン(80〜20モル%)共重合体、フッ化ビニリデン(50〜95モル%)/ヘキサフルオロプロピレン(5〜50モル%)共重合体、四フッ化エチレン(1〜35モル%)/フッ化ビニリデン(45〜90モル%)/ヘキサフルオロプロピレン(5〜50モル%)共重合体、四フッ化エチレン(40〜70モル%)/CF=CFOCF(60〜30モル%)共重合体、四フッ化エチレン(40〜70モル%)/CF=CFOC(60〜30モル%)共重合体、四フッ化エチレン(40〜70モル%)/CF=C(OC(60〜30モル%)共重合体、四フッ化エチレン(70〜30モル%)/メチルビニルエーテル(30〜70モル%)共重合体、四フッ化エチレン(70〜30モル%)/エチルビニルエーテル(30〜70モル%)共重合体、四フッ化エチレン(70〜30モル%)/ノルマルブチルビニルエーテル(30〜70モル%)共重合体、四フッ化エチレン(60〜30モル%)/エチルビニルエーテル(1〜69モル%)/ノルマルブチルビニルエーテル(1〜69モル%)共重合体、フッ化ビニリデン(40〜70モル%)/CF=CFOC(60〜30モル%)共重合体、エチレン(40〜60モル%)/ヘキサフルオロプロピレン(60〜40モル%)共重合体、およびこれらの共重合体においてさらに架橋基含有モノマーが0.001〜10モル%共重合されている共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載の含フッ素エラストマーラテックス。
【請求項5】
含フッ素乳化剤がCOCFCFOCFCOOA(式中、Aは水素原子、アルカリ金属またはNHである)である請求項1〜4のいずれかに記載の含フッ素エラストマーラテックス。
【請求項6】
一般式(1):CO(CFCFO)CFCOOA
(式中、Aは水素原子、アルカリ金属またはNHであり、mは1〜3の整数である)で表される含フッ素乳化剤を0.001〜10.0質量%含有させた水性媒体中で含フッ素モノマーを乳化重合して含フッ素エラストマーラテックスを得ることを特徴とする含フッ素エラストマーラテックスの製造方法。
【請求項7】
含フッ素モノマーが四フッ化エチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、CF=C(OR2−n(式中、Rは炭素数1〜9のパーフルオロアルキル基または分子内に1個以上のエーテル結合を含むパーフルオロ(アルキルオキシアルキル)基であり、nは1または2であり、いずれの炭素鎖も直鎖状でも分岐を含んでも、また環状構造を有してもよい)で表されるパーフルオロ(アルキルまたはアルキルオキシアルキルビニルエーテル)、クロロトリフルオロエチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の含フッ素モノマーであり、必要に応じてCH=CHOR(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基またはエーテル結合を1個以上含むアルキルオキシアルキル基であり、いずれの炭素鎖も直鎖状でも分岐を含んでも、また環状構造を有してもよい)で表されるビニルエーテル、プロピレン、エチレン、からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭化水素モノマー、および必要に応じて0.001〜10モル%の架橋基含有モノマーを共重合させる請求項6に記載の含フッ素エラストマーラテックスの製造方法。
【請求項8】
含フッ素乳化剤がCOCFCFOCFCOOA(式中、Aは水素原子、アルカリ金属またはNHである)である請求項6または7に記載の含フッ素エラストマーラテックスの製造方法。
【請求項9】
連鎖移動剤として、C2n+2−m(式中、nは1〜16整数であり、mは1以上(2n+1)以下の整数である)の存在下に含フッ素モノマーを乳化重合する請求項6〜8のいずれかに記載の含フッ素エラストマーラテックスの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれかに記載の含フッ素エラストマーラテックスを凝集して得られる含フッ素エラストマー。
【請求項11】
JIS K6300に準じて、直径38.1mm、厚さ5.54mmの大ローターを用い、100℃で、予熱時間を1分、ローター回転時間を4分に設定して測定されたムーニー粘度が5〜200である請求項10に記載の含フッ素エラストマー。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の含フッ素エラストマーを架橋してなる含フッ素ゴム成形品。

【公開番号】特開2006−274237(P2006−274237A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−291572(P2005−291572)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】