含フッ素エラストマー組成物

【課題】着香性が充分に低減された搬送用部材を得ることが可能な、含フッ素エラストマー組成物を提供する。
【解決手段】架橋性の含フッ素エラストマーを含む含フッ素エラストマー組成物であって、組成物の架橋物の表面には、ハイドロカーボン系化合物が実質的に漏出しない含フッ素エラストマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素エラストマー組成物に関する。より詳しくは、搬送用部材に好適な含フッ素エラストマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
各種製造プラントにおいて、薬液や水等を移送するための配管は、製造工程又は洗浄等のメンテナンス工程において種々の薬品や高温に晒されることとなる。このため、配管に使用されるガスケットやパッキン等のシール材は、耐薬品性や耐熱性に優れるものであることが求められる。また、食品や飲料製品、化粧品等の製造プラントにおいては、シール材に製品やその原料等の匂い成分が付着し、その後の工程において製造される製品に該シール材を介して匂い成分が移行することにより品質低下を招くおそれがある。このため、そのような分野に用いられるシール材は、耐薬品性や耐熱性に優れることに加え、着香性の低いものであることも求められる。
【0003】
このような、耐薬品性、耐熱性、低着香性等に優れるシール材を形成する材料としては、フッ素樹脂やフッ素ゴムが広く用いられている。
例えば、特許文献1には、エチレンプロピレンゴム(EDPM)等のゴム製の中芯部材の外表面を覆うように、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等からなる多孔質性フッ素樹脂製の外側部材が形成された複合シール材が開示されている。また、特許文献2には、PTFEやテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)樹脂等で構成されるフッ素樹脂外被に、有機繊維、無機繊維、無機粉体及びバインダーを含む環状中芯体が嵌入されたフッ素樹脂包みガスケットが開示されている。また、特許文献3には、PFA等のフッ素樹脂を溶融成形してなるサニタリー配管用ガスケットが開示されている。
【0004】
また、パーフロロゴム(FFKM)は、耐薬品性、耐熱性、低着香性等に優れるものの、非常に高価であることから、性能の向上とコスト削減とを両立させるための検討がなされている。
例えば、着香性が低減されたシール材を得ることを目的としたフッ素ゴム組成物として、フッ化ビニリデン(VdF)系ゴム等のフッ素ゴムにガラス充填剤及び/又は真球状無孔質シリカ(非晶質二酸化ケイ素)充填剤を配合したフッ素ゴム組成物(例えば、特許文献4参照。)、フッ素ゴムに窒化ホウ素充填剤を配合してなるフッ素ゴム組成物(例えば、特許文献5参照。)、フッ素ゴムに表面改質されていてもよい真球状無孔質シリカ(非晶質二酸化ケイ素)充填材と、微粉末フッ素樹脂充填剤、有機過酸化物加硫剤及び共架橋剤とを配合したフッ素ゴム組成物(例えば、特許文献6参照。)等が提案されている。これらのフッ素ゴム組成物であればFFKMよりも低価格で、非着香性、耐熱性及び耐薬品性に優れるシール材が得られると謳われている。
また、このようなシール材よりも更に低着香性を向上させたゴム部材が得られるとして、フッ素ゴム及びフッ素系界面活性剤を含むフッ素ゴム組成物が検討されている(例えば、特許文献7参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−29376号公報
【特許文献2】特開2009−24877号公報
【特許文献3】特開2000−303058号公報
【特許文献4】特開2005−306931号公報
【特許文献5】特開2006−160898号公報
【特許文献6】特開2007−154043号公報
【特許文献7】特開2011−42714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、優れた低着香性が求められる部材は、上述したようなシール材に限定されない。例えば、製品やその原材料をロール、ベルト、ホース等によって搬送する際にも、前工程で搬送した物品の匂い成分が移行することは、品質低下を招くことから望ましくない。このため、品質低下を防止する観点からは、ロール、ベルト、ホース等の部材も、着香性の低い材料を用いて形成されることが好ましい。
このように、従来の技術には、広く搬送用部材に適用可能な、低着香性に優れた材料を開発するための工夫の余地があった。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、着香性が充分に低減された搬送用部材を得ることが可能な、含フッ素エラストマー組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、低着香性に優れる材料について種々検討するうち、含フッ素エラストマー組成物の架橋物を材料に用いる場合には、使用環境において特定の架橋剤や架橋助剤等のハイドロカーボン系化合物が架橋物表面に漏出することが、着香現象が生じる一因となっていることを見いだした。そして、架橋物の表面にハイドロカーボン系化合物が実質的に漏出しないように制御すると、架橋物を搬送用部材に適用した場合にも、着香性を充分に抑制できることを見いだした。また、このような搬送用部材が、含フッ素エラストマー組成物を塗布することにより得られるものであると、簡便に製造することができるため、性能と生産性とを両立させることができることを見いだした。更に、このような搬送用部材が、食品、飲料製品、化粧品、インク、顔料、紙等、種々の物品を搬送するための搬送用部材として、多種多様な分野に好適に適用可能であることも見いだし、上記課題をみごとに解決できることに想到し、本発明に到達したものである。
【0009】
すなわち、本発明は、架橋性の含フッ素エラストマーを含む含フッ素エラストマー組成物であって、上記組成物の架橋物の表面には、ハイドロカーボン系化合物が実質的に漏出しないことを特徴とする含フッ素エラストマー組成物である。
【0010】
本発明はまた、上記含フッ素エラストマー組成物を塗布することにより得られる搬送用部材であって、上記搬送用部材は、少なくとも表面の一部が上記組成物の架橋物からなることを特徴とする搬送用部材でもある。
以下に本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の含フッ素エラストマー組成物(以下、単に組成物ともいう。)は、架橋性の含フッ素エラストマー(以下、単に含フッ素エラストマーともいう。)を含むものであり、該組成物を架橋して得られる架橋物の表面に、ハイドロカーボン系化合物が実質的に漏出しないものである。これにより、上記架橋物が、低着香性に優れたものとなる。
上記組成物は、含フッ素エラストマーを必須成分とする限り、更にその他の成分を含んでもよく、該その他の成分は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0012】
なお、本明細書において「着香」とは、製品や原材料の匂い成分が部材に移行する現象、及び、部材に移行した匂い成分が他の製品や原材料に移行する現象の両方を含むものとする。
【0013】
上記ハイドロカーボン系化合物としては、具体的には、上記組成物の架橋に用いられる架橋剤、架橋促進剤(架橋助剤)等のうち、構造中に炭化水素部位を有する化合物を挙げることができる。
【0014】
なお、本明細書において、「ハイドロカーボン系化合物が実質的に漏出しない」とは、架橋物表面の炭素濃度が、ポリマー組成から計算された炭素濃度(理論炭素濃度)よりも低いことをいう。
架橋物表面の炭素濃度、及び、理論炭素濃度は、後述する実施例において用いた方法により測定又は算出することができる。
【0015】
架橋物の表面への上記ハイドロカーボン系化合物の漏出を抑制する方法としては、例えば、(1)架橋剤、架橋促進剤等の使用量を低減する方法、(2)架橋物表面に漏出しにくいか、又は、実質的に炭化水素部位を含まない架橋剤、架橋促進剤等を選択する方法、(3)上記組成物に充填剤を添加する方法、を挙げることができる。これらの方法は、単独で用いてもよいし、必要に応じて2以上を組み合わせてもよい。
【0016】
上記方法(1)は、架橋物中に残留する架橋剤等の量を低減することにより、漏出量を低減しようとするものであり、比較的漏出(遊離)し易く、かつ架橋性の高い(少量でも充分に架橋できる)架橋剤を用いる場合に特に効果的である。
【0017】
上記方法(2)は、強固な架橋構造を形成可能であるため漏出しにくい架橋剤、又は、構造中に炭化水素部位を含まない(すなわち、上記ハイドロカーボン系化合物に該当しない)ため漏出しても着香現象を生じにくい架橋剤、を用いることにより、着香性を低減しようとするものである。用いる含フッ素エラストマーの種類や用途を考慮し、上記のような特定の架橋剤等を用いることが適切である場合に、特に効果的である。
【0018】
上記方法(3)においては、含フッ素エラストマー組成物に添加したカーボンブラック等の充填剤が、遊離した架橋剤等を吸着することにより、架橋剤等の漏出量を低減することができると考えられる。方法(3)は、比較的漏出(遊離)し易い架橋剤を用いる必要があり、かつその使用量を充分に低減することが困難な場合に、特に効果的である。
【0019】
上記方法(1)〜(3)の少なくとも1つを採用することにより、得られる架橋物の表面にハイドロカーボン系化合物が実質的に漏出しないよう制御することができ、その結果として、該架橋物の着香性を充分に低減することができる。
【0020】
本発明における架橋性の含フッ素エラストマーとしては、特に限定されず、用途に応じて適宜選択することができるが、例えば、フッ素ゴム(a)、熱可塑性フッ素ゴム(含フッ素多元セグメント化ポリマー)(b)、及び、これらのゴムからなるゴム組成物等が挙げられる。なかでも、フッ素ゴム(a)が好適である。
【0021】
フッ素ゴム(a)としては、非パーフルオロフッ素ゴム(a−1)及びパーフルオロフッ素ゴム(a−2)が挙げられる。これらの具体例については、後述する。
【0022】
本発明の含フッ素エラストマー組成物は、架橋剤を含むことが好ましい。これにより、架橋剤を用いた架橋反応によって架橋物を得ることができる。
本発明において採用可能な架橋系としては、例えば、パーオキサイド架橋系、ポリオール架橋系、ポリアミン架橋系、トリアジン架橋系、オキサゾール架橋系、イミダゾール架橋系、チアゾール架橋系を挙げることができる。
【0023】
上記含フッ素エラストマーが非パーフルオロフッ素ゴム(a−1)である場合には、パーオキサイド架橋系、ポリオール架橋系又はポリアミン架橋系を採用することが好ましい。上記含フッ素エラストマーがパーフルオロフッ素ゴム(a−2)である場合には、上述した架橋系のいずれも好ましく採用できるが、なかでもトリアジン架橋系、オキサゾール架橋系、イミダゾール架橋系又はチアゾール架橋系を採用することが好ましい。
【0024】
パーオキサイド架橋は、パーオキサイド架橋可能な含フッ素エラストマー、及び、架橋剤として有機過酸化物を使用することにより行うことができる。
【0025】
また、パーオキサイド架橋系においては架橋促進剤(架橋助剤)を用いてもよい。架橋促進剤としては、パーオキシラジカルとポリマーラジカルに対して反応活性を有する化合物であればよい。
【0026】
パーオキサイド架橋を行う場合の架橋剤の配合量は、含フッ素エラストマー100質量部に対して、0.05〜10質量部であることが好ましく、1〜5質量部であることがより好ましい。架橋剤が、0.05質量部より少ないと、架橋性含フッ素エラストマーが充分架橋されない傾向があり、10質量部を超えると、架橋物表面に架橋剤が漏出しやすくなり、架橋物の着香性を悪化させる傾向がある。
【0027】
また、パーオキサイド架橋における架橋促進剤の配合量は、含フッ素エラストマー100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5.0質量部であることがより好ましい。架橋促進剤が、0.01質量部より少ないと、架橋時間が実用に耐えないほど長くなる傾向があり、10質量部をこえると、架橋時間が速くなり過ぎることに加え、架橋物表面に架橋促進剤が漏出しやすくなり、架橋物の着香性を悪化させる傾向がある。
【0028】
ポリオール架橋は、ポリオール架橋可能な含フッ素エラストマー、及び、架橋剤としてポリヒドロキシ化合物を使用することにより行うことができる。
【0029】
架橋剤がポリヒドロキシ化合物である場合、架橋促進剤を併用することが好ましい。架橋促進剤は、ポリマー主鎖の脱フッ酸反応における分子内二重結合の生成と、生成した二重結合へのポリヒドロキシ化合物の付加を促進する。
【0030】
ポリオール架橋を行う場合の架橋剤の配合量は、含フッ素エラストマー100質量部に対して、0.05〜10質量部であることが好ましく、1〜5質量部であることがより好ましい。架橋剤が、0.05質量部より少ないと、架橋性含フッ素エラストマーが充分架橋されない傾向があり、10質量部を超えると、架橋物表面に架橋剤が漏出しやすくなり、架橋物の着香性を悪化させる傾向がある。
【0031】
また、ポリオール架橋における架橋促進剤の配合量は、含フッ素エラストマー100質量部に対して、0.01〜8質量部であることが好ましく、より好ましくは0.02〜5質量部である。架橋促進剤が、0.01質量部未満であると、含フッ素エラストマーの架橋が充分に進行せず、得られる架橋物の耐熱性等が低下する傾向があり、8質量部を超えると、架橋物表面に架橋促進剤が漏出しやすくなり、架橋物の着香性を悪化させる傾向がある。
【0032】
ポリアミン架橋は、ポリアミン架橋可能な含フッ素エラストマー、及び、架橋剤としてポリアミン化合物を使用することにより行うことができる。
【0033】
ポリアミン架橋を行う場合の架橋剤の配合量は、含フッ素エラストマー100質量部に対して、0.05〜10質量部であることが好ましく、1〜5質量部であることがより好ましい。架橋剤が、0.05質量部より少ないと、架橋性含フッ素エラストマーが充分架橋されない傾向があり、10質量部を超えると、架橋物表面に架橋剤が漏出しやすくなり、架橋物の着香性を悪化させる傾向がある。
【0034】
トリアジン架橋、オキサゾール架橋、イミダゾール架橋、及び、チアゾール架橋は、これらの架橋系により架橋可能な含フッ素エラストマーと、オキサゾール架橋剤、イミダゾール架橋剤、チアゾール架橋剤又はトリアジン架橋剤とを使用することにより行うことができる。
これらの架橋剤は、含フッ素エラストマーと強固な架橋構造を形成するため、架橋物表面に漏出しにくく、架橋物の着香性を抑制することができる。したがって、上記方法(2)によってハイドロカーボン系化合物の漏出を抑制する場合に、特に好適に用いることができる。
また、架橋物の耐熱性も著しく向上させることができる。
【0035】
トリアジン架橋、オキサゾール架橋、イミダゾール架橋、及び、チアゾール架橋における架橋剤の配合量は、含フッ素エラストマー100質量部に対して、0.05〜10質量部であることが好ましく、0.5〜5質量部であることがより好ましい。架橋剤が、0.05質量部より少ないと、架橋性含フッ素エラストマーが充分架橋されない傾向があり、10質量部を超えると、架橋物表面に架橋剤が漏出しやすくなり、架橋物の着香性を悪化させる傾向がある。
【0036】
本発明の含フッ素エラストマー組成物は、必要に応じて充填剤を含んでもよい。例えば上記方法(3)に示したように、上記組成物が充填剤を含むことにより、架橋物の表面へのハイドロカーボン系化合物の漏出を抑制することができる。
特に、上記含フッ素エラストマーがパーフルオロフッ素ゴム(a−2)であり、かつパーオキサイド架橋系を採用する場合には、本発明の含フッ素エラストマー組成物は充填剤を含むことが好ましい。
【0037】
上記充填剤の配合量は、例えば採用する架橋系に応じて決定することができる。
パーオキサイド架橋を採用する場合には、含フッ素エラストマー100質量部に対して、1質量部以上が好ましい。少なすぎるとハイドロカーボン系化合物の吸着機能が充分に発揮できないおそれがあり、また、充填剤としての機能がほとんど発揮できないおそれがある。より好ましい配合量の下限は5質量部である。また、好ましい上限は50質量部であり、これより多くなりすぎると硬度が非常に高くなり、弾性体としての特性が失われることがある。より好ましい配合量の上限は搬送用部材とした場合の硬度が良好な点から15〜20質量部である。
【0038】
ポリオール架橋を採用する場合には、含フッ素エラストマー100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。また、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下が更に好ましい。
ポリアミン架橋を採用する場合には、含フッ素エラストマー100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。また、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下が更に好ましい。
【0039】
トリアジン架橋、オキサゾール架橋、イミダゾール架橋又はチアゾール架橋を採用する場合には、含フッ素エラストマー100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。また、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下が更に好ましい。
【0040】
以下に、本発明において用いることができる含フッ素エラストマー、架橋剤、充填剤等について、具体例を挙げて更に詳述する。
【0041】
上記非パーフルオロフッ素ゴム(a−1)としては、ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン(Pr)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/テトラフルオロエチレン(TFE)系フッ素ゴム、フルオロシリコーン系フッ素ゴム、フルオロホスファゼン系フッ素ゴム等が挙げられ、これらをそれぞれ単独で、又は、本発明の効果を損なわない範囲で任意に組み合わせて用いることができる。なかでも、ビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴムが好ましい。
【0042】
上記ビニリデンフルオライド系フッ素ゴムとは、ビニリデンフルオライド45〜85モル%と、ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他の単量体55〜15モル%とからなる含フッ素弾性状共重合体をいう。好ましくは、ビニリデンフルオライド50〜80モル%と、ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他の単量体50〜20モル%とからなる含フッ素弾性状共重合体をいう。
【0043】
上記ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他の単量体としては、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、フッ化ビニル等の含フッ素単量体、エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテル等の非フッ素単量体が挙げられる。これらをそれぞれ単独で、又は、任意に組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)を用いることが好ましい。
【0044】
この場合のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)としては、例えばパーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)等が挙げられ、これらをそれぞれ単独で、又は、本発明の効果を損なわない範囲で任意に組み合わせて用いることができる。
【0045】
ビニリデンフルオライド系フッ素ゴムの具体例としては、VdF−HFP系ゴム、VdF−HFP−TFE系ゴム、VdF−CTFE系ゴム、VdF−CTFE−TFE系ゴム等が挙げられる。
【0046】
ビニリデンフルオライド系フッ素ゴムは、常法により得ることができる。
【0047】
上記テトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴムとは、テトラフルオロエチレン45〜70モル%、プロピレン55〜30モル%、及び、架橋部位を与える単量体0〜5モル%からなる含フッ素弾性状共重合体をいう。
【0048】
上記架橋部位を与える単量体としては、例えば特公平5−63482号公報、特開平7−316234号公報に記載されているようなパーフルオロ(6,6−ジヒドロ−6−ヨード−3−オキサ−1−ヘキセン)やパーフルオロ(5−ヨード−3−オキサ−1−ペンテン)等のヨウ素含有単量体、特表平4−505341号公報に記載されている臭素含有単量体、特表平4−505345号公報、特表平5−500070号公報に記載されているようなニトリル基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、アルコキシカルボニル基含有単量体等が挙げられる。
【0049】
テトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴムもまた、常法により得ることができる。
【0050】
かかる非パーフルオロフッ素ゴム(a−1)のうち市販のものとしては、例えば、ダイキン工業(株)製のダイエルG−800系、G−900系等が挙げられる。
【0051】
上記パーフルオロフッ素ゴム(a−2)としては、TFEを含むパーフルオロゴム、例えばTFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)/架橋部位を与える単量体からなる含フッ素弾性状共重合体が挙げられる。その組成は、好ましくは、45〜90/10〜50/0〜5(モル%)であり、より好ましくは、45〜80/20〜50/0〜5であり、更に好ましくは、53〜70/30〜45/0〜2である。これらの組成の範囲を外れると、ゴム弾性体としての性質が失われ、樹脂に近い性質となる傾向がある。
【0052】
この場合のPAVEとしては、例えばパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)等が挙げられ、これらをそれぞれ単独で、又は本発明の効果を損なわない範囲で任意に組み合わせて用いることができる。
【0053】
上記架橋部位を与える単量体としては、例えば、一般式(1):
CX=CX−RCHRI (1)
(式中、XはH、F又はCH、Rはフルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロポリオキシアルキレン基又はパーフルオロポリオキシアルキレン基、RはH又はCH)で表されるヨウ素含有単量体、一般式(2):
CF=CFO(CFCF(CF))−O−(CF−Y (2)
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜3の整数、Yはニトリル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基又は臭素原子)で表されるような単量体等が挙げられ、これらをそれぞれ単独で、又は本発明の効果を損なわない範囲で任意に組み合わせて用いることができる。これらのヨウ素原子やニトリル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、臭素原子が、架橋点として機能する。
【0054】
上記パーフルオロフッ素ゴム(a−2)も、常法により製造することができる。
【0055】
かかるパーフルオロフッ素ゴム(a−2)の具体例としては、国際公開第97/24381号パンフレット、特公昭61−57324号公報、特公平4−81608号公報、特公平5−13961号公報等に記載されているフッ素ゴム等が挙げられる。
【0056】
上記熱可塑性フッ素ゴム(b)としては、国際公開第03/051999号パンフレットに記載されているエラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントと非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントとからなり、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメント及び非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントのそれぞれの構成単位の90モル%以上がパーハロオレフィンである含フッ素多元セグメント化ポリマー(b−1)、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントと非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントとからなり、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの構成単位の90モル%以上がパーハロオレフィンであり、かつ非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントが構成単位として90モル%未満のパーハロオレフィンを含む含フッ素多元セグメント化ポリマー(b−2)、及び、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントと非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントとからなり、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントが構成単位として90モル%未満のパーハロオレフィンを含み、かつ非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの構成単位の90モル%以上がパーハロオレフィンであるか又は構成単位として90モル%未満のパーハロオレフィンを含む含フッ素多元セグメント化ポリマー(b−3)が挙げられる。
【0057】
これらの熱可塑性フッ素ゴム(b−1)〜(b−3)の製造法及び入手法は国際公開第03/051999号パンフレット等に記載されているものが本発明においても採用される。
【0058】
本発明における架橋性の含フッ素エラストマーには架橋部位を存在させてもよい。架橋部位としては、主鎖又は側鎖の末端に存在するヨウ素原子(ヨウ素移動重合法等で製造できる)等、過硫酸アンモニウム等の重合開始剤を変性させて得られるカルボキシル基等、上記の架橋部位等を与える単量体を共重合して得られる架橋部位等が挙げられる。
【0059】
このような単量体としては、特公平5−63482号公報、特開平7−316234号公報に記載されているようなパーフルオロ(6,6−ジヒドロ−6−ヨード−3−オキサ−1−ヘキセン)やパーフルオロ(5−ヨード−3−オキサ−1−ペンテン)等のヨウ素含有単量体、特表平4−505341号公報に記載されている臭素含有単量体、特表平4−505345号公報、特表平5−500070号公報に記載されているようなニトリル基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、アルコキシカルボニル基含有単量体等が好適である。
【0060】
本発明における架橋性の含フッ素エラストマーとしては、上述したものの他、フルオロシリコーンゴム等も挙げられる。
【0061】
パーオキサイド架橋において架橋剤として使用可能な有機過酸化物としては、熱や酸化還元系の存在下で容易にパーオキシラジカルを発生し得る有機過酸化物であればよく、具体的には、例えば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等をあげることができる。なかでも、好ましいものは、ジアルキルタイプのものである。更に、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンが特に好ましい。一般に活性−O−O−の量、分解温度等を考慮して有機過酸化物の種類並びに使用量が決定される。
【0062】
また、パーオキサイド架橋系において用いられる架橋促進剤としては、パーオキシラジカルとポリマーラジカルに対して反応活性を有する化合物であればよく、例えばCH=CH−、CH=CHCH−、CF=CF−等の官能基を有する多官能性化合物が挙げられる。具体的には、例えばトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N′−n−フェニレンビスマレイミド、ジプロパルギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド、トリアリルホスフェート、ビスマレイミド、フッ素化トリアリルイソシアヌレート(1,3,5−トリス(2,3,3−トリフルオロ−2−プロペニル)−1,3,5−トリアジン2,4,6−トリオン)、トリス(ジアリルアミン)−S−トリアジン、亜リン酸トリアリル、N,N−ジアリルアクリルアミド、1,6−ジビニルドデカフルオロヘキサン等が挙げられる。
【0063】
上記パーオキサイド架橋可能な含フッ素エラストマーとしては特に限定されず、パーオキサイド架橋可能な部位を有する含フッ素エラストマーであればよい。上記パーオキサイド架橋可能な部位としては特に限定されず、例えば、プロピレン(P)単位を有する部位、ヨウ素原子、臭素原子等を挙げることができる。
【0064】
ポリオール架橋において架橋剤として使用可能なポリヒドロキシ化合物としては、耐熱性に優れる点からポリヒドロキシ芳香族化合物が好適に用いられる。
上記ポリヒドロキシ芳香族化合物としては、特に限定されず、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAという)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン(以下、ビスフェノールAFという)、レゾルシン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、4,4’ −ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシスチルベン、2,6−ジヒドロキシアントラセン、ヒドロキノン、カテコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(以下、ビスフェノールBという)、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テトラフルオロジクロロプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、3,3’,5,5’−テトラクロロビスフェノールA、3,3’,5,5’−テトラブロモビスフェノールA等が挙げられる。これらのポリヒドロキシ芳香族化合物は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等であってもよいが、酸を用いて共重合体を凝析した場合は、上記金属塩は用いないことが好ましい。
【0065】
ポリオール架橋において使用可能な架橋促進剤としては、オニウム化合物が挙げられ、オニウム化合物のなかでも、第4級アンモニウム塩等のアンモニウム化合物、第4級ホスホニウム塩等のホスホニウム化合物、オキソニウム化合物、スルホニウム化合物、環状アミン、及び、1官能性アミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、第4級アンモニウム塩及び第4級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0066】
第4級アンモニウム塩としては特に限定されず、例えば、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムアイオダイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムメチルスルフェート、8−エチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−プロピル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−エイコシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−テトラコシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド(以下、DBU−Bとする)、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−フェネチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−(3−フェニルプロピル)−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド等が挙げられる。これらの中でも、架橋性及び成形品の物性が優れる点から、DBU−Bが好ましい。
【0067】
また、第4級ホスホニウム塩としては特に限定されず、例えば、テトラブチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(以下、BTPPCとする)、ベンジルトリメチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリブチルホスホニウムクロライド、トリブチルアリルホスホニウムクロライド、トリブチル−2−メトキシプロピルホスホニウムクロライド、ベンジルフェニル(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロライド等をあげることができ、これらの中でも、架橋性及び成形品の物性が優れる点から、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(BTPPC)が好ましい。
【0068】
また、架橋促進剤として、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩とビスフェノールAFの固溶体、特開平11−147891号公報に開示されている塩素フリー架橋促進剤を用いることもできる。
【0069】
上記ポリオール架橋可能な含フッ素エラストマーとしては特に限定されず、ポリオール架橋可能な部位を有する含フッ素エラストマーであればよい。上記ポリオール架橋可能な部位としては特に限定されず、例えば、フッ化ビニリデン(VdF)単位を有する部位等を挙げることができる。上記架橋部位を導入する方法としては、含フッ素エラストマーの重合時に架橋部位を与える単量体を共重合する方法等が挙げられる。
【0070】
ポリアミン架橋において架橋剤として使用可能なポリアミン化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ビス(アミノシクロヘキシル)メタンカルバメート等が挙げられる。これらの中でも、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミンが好ましい。
【0071】
上記ポリアミン架橋可能な含フッ素エラストマーとしては特に限定されず、ポリアミン架橋可能な部位を有する含フッ素エラストマーであればよい。上記ポリアミン架橋可能な部位としては特に限定されず、例えば、フッ化ビニリデン(VdF)単位を有する部位等を挙げることができる。上記架橋部位を導入する方法としては、含フッ素エラストマーの重合時に架橋部位を与える単量体を共重合する方法等が挙げられる。
【0072】
トリアジン架橋に用いる架橋剤としては、テトラフェニルスズ、トリフェニルスズ等の有機スズ化合物、及び尿素、アンモニウム塩、窒化珪素等が挙げられる。なかでも、窒化珪素が、構造中に炭化水素部位を含まないことから、ハイドロカーボン系化合物の漏出を際立って抑制できる点で好ましい。
【0073】
オキサゾール架橋系、イミダゾール架橋系、チアゾール架橋系に使用する架橋剤としては、例えば一般式(3):
【0074】
【化1】

【0075】
(式中、Rは−SO−、−O−、−CO−、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜10のパーフルオロアルキレン基又は単結合手であり、R及びRは一方が−NHであり他方が−NH、−OH又は−SH、好ましくはR及びRのいずれも−NHである。)で示されるビスジアミノフェニル系架橋剤、ビスアミノフェノール系架橋剤、ビスアミノチオフェノール系架橋剤、一般式(4):
【0076】
【化2】

【0077】
(式中、Rは上記と同じである。Rは、下記一般式(5):
【0078】
【化3】

【0079】
で表される化合物である。)で示されるビスアミドラゾン系架橋剤やビスアミドキシム系架橋剤、一般式(6):
【0080】
【化4】

【0081】
(式中、R’は炭素数1〜10のパーフルオロアルキレン基である。)、又は、一般式(7):
【0082】
【化5】

【0083】
(式中、nは1〜10の整数である。)で示されるビスアミドラゾン系架橋剤やビスアミドキシム系架橋剤等が挙げられる。これらのビスアミノフェノール系架橋剤、ビスアミノチオフェノール系架橋剤、ビスジアミノフェニル系架橋剤等は従来ニトリル基を架橋点とする架橋系に使用していたものであるが、カルボキシル基及びアルコキシカルボニル基とも反応し、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環を形成し、架橋物を与える。
【0084】
これらの架橋剤のなかで、耐熱性がとくに優れており、架橋反応性が良好であり、更に合成が比較的容易という点で、より好ましい架橋剤としては、一般式(8):
【0085】
【化6】

【0086】
(式中、Rはフッ素原子又は1価の有機基である。)で表わされるビスアミノ架橋性官能基を少なくとも2個有するビスジアミノフェニル系架橋剤である。この架橋性官能基と反応可能な官能基としては、ニトリル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基が挙げられ、反応により、イミダゾール環を形成する。
【0087】
更に、より好ましい架橋剤は、一般式(9):
【0088】
【化7】

【0089】
(式中、Rは水素以外の1価の有機基又はフッ素原子である。Rは−SO−、−O−、−CO−、置換されていてもよいアルキレン基、一般式(10):
【0090】
【化8】

【0091】
で表される基、又は、単結合である。)で示される化合物である。
【0092】
上記Rは、特にN−H結合よりも高い耐酸化性を有するN−R結合を形成する置換基であることが好ましい。ここで「N−H結合よりも高い耐酸化性を有するN−R結合を形成する置換基」とは、イミダゾール環を形成したときに、N−H結合を有する化合物より酸化しにくい化合物に存在するN−R結合を形成する置換基のことをいう。
【0093】
こうしたRとしては、限定的ではないが、置換されていてもよい脂肪族炭化水素基、置換されていてもよいフェニル基又はベンジル基が挙げられる。
【0094】
具体例としては、例えばRの少なくとも1つが−CH、−C、−C等の炭素数1〜10、特に1〜6の低級アルキル基;−CF、−C、−CHF、−CHCF、−CH等の炭素数1〜10、特に1〜6のフッ素原子含有低級アルキル基;フェニル基;ベンジル基;−C、−CH等のフッ素原子で1〜5個の水素原子が置換されたフェニル基又はベンジル基;−C5−n(CF、−CH5−n(CF(nは1〜5の整数)等の−CFで1〜5個の水素原子が置換されたフェニル基又はベンジル基等が挙げられる。
【0095】
これらのうち、耐熱性が特に優れており、架橋反応性が良好であり、更に合成が比較的容易である点から、フェニル基、−CHが好ましい。
【0096】
一般式(9)の化合物において、Rの置換されていてもよいアルキレン基の好ましい具体例としては、限定的ではないが、例えば炭素数1〜6の非置換アルキレン基又は炭素数1〜10のパーフルオロアルキレン基等であり、パーフルオロアルキレン基としては、一般式(11):
【0097】
【化9】

【0098】
で表される基等が挙げられる。なお、これらのRとしては、特公平2−59177号公報、特開平8−120146号公報等でビスジアミノフェニル化合物の例示として知られているものも使用できる。
【0099】
上記Rは左右のベンゼン環のうち、いずれの位置に結合していてもよいが、合成が容易で架橋反応が容易に進行することから、NH基又はNHR基のいずれかがパラ位になるように結合していることが好ましい。
【0100】
特に好ましい架橋剤は、一般式(12):
【0101】
【化10】

【0102】
(式中、Rは同じか又は異なり、いずれも炭素数1〜10のアルキル基、フッ素原子を含有する炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、フッ素原子もしくは−CFで1〜5個の水素原子が置換されたフェニル基又はベンジル基である。)で示される化合物である。
【0103】
上記一般式(12)で表される化合物としては、例えば2,2−ビス−[3−アミノ−4−(N−メチルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス−[3−アミノ−4−(N−エチルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス−[3−アミノ−4−(N−プロピルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス−[3−アミノ−4−(N−フェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス−[3−アミノ−4−(N−パーフルオロフェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス−[3−アミノ−4−(N−ベンジルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(一般名:ビス(アミノフェノール)AF)、2,2−ビス(3−アミノ−4−メルカプトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、テトラアミノベンゼン、ビス−3,4−ジアミノフェニルメタン、ビス−3,4−ジアミノフェニルエーテル、2,2−ビス(3,4−ジアミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
【0104】
トリアジン架橋、オキサゾール架橋、イミダゾール架橋、及び、チアゾール架橋により架橋可能な含フッ素エラストマーとしては、上述した架橋部位を与えるモノマー由来の共重合体単位を含む共重合体からなるフッ素ゴムをあげることができる。
【0105】
本発明の含フッ素エラストマー組成物は、架橋剤等を添加せずに高エネルギー線架橋をすることもできる。架橋源としては、X線、α線、β線、γ線、電子線、陽子線、重陽子線、紫外線等が用いられる。この場合の照射量は、0.1〜50Mradであればよい。また、照射温度は、−20〜100℃であればよい。照射雰囲気は、空気、チッ素、アルゴン、ヘリウムの存在下でも真空下でもよい。
【0106】
上記充填剤としては、上記ハイドロカーボン系化合物を吸着できるものであれば限定されないが、例えば、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリオキシベンゾエート、ポリテトラフルオロエチレン粉末等のエンジニアリングプラスチック製の有機物フィラー;酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化イットリウム、酸化チタン等の金属酸化物フィラー;炭化ケイ素、炭化アルミニウム等の金属炭化物フィラー;窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の金属窒化物フィラー;フッ化アルミニウム、フッ化カーボン、硫酸バリウム、カーボンブラック、シリカ、クレー、タルク等の無機物フィラーが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
なかでも、上記ハイドロカーボン系化合物の吸着力に優れる点で、カーボンブラックを用いることが好ましい。
【0107】
上記カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイト等が挙げられ、具体的には例えば、SAF−HS(NSA:142m/g、DBP:130ml/100g)、SAF(NSA:142m/g、DBP:115ml/100g)、N234(NSA:126m/g、DBP:125ml/100g)、ISAF(NSA:119m/g、DBP:114ml/100g)、ISAF−LS(NSA:106m/g、DBP:75ml/100g)、ISAF−HS(NSA:99m/g、DBP:129ml/100g)、N339(NSA:93m/g、DBP:119ml/100g)、HAF−LS(NSA:84m/g、DBP:75ml/100g)、HAS−HS(NSA:82m/g、DBP:126ml/100g)、HAF(NSA:79m/g、DBP:101ml/100g)、N351(NSA:74m/g、DBP:127ml/100g)、LI−HAF(NSA:74m/g、DBP:101ml/100g)、MAF−HS(NSA:56m/g、DBP:158ml/100g)、MAF(NSA:49m/g、DBP:133ml/100g)、FEF−HS(NSA:42m/g、DBP:160ml/100g)、FEF(NSA:42m/g、DBP:115ml/100g)、SRF−HS(NSA:32m/g、DBP:140ml/100g)、SRF−HS(NSA:29m/g、DBP:152ml/100g)、GPF(NSA:27m/g、DBP:87ml/100g)、SRF(NSA:27m/g、DBP:68ml/100g)、SRF−LS(NSA:23m/g、DBP:51ml/100g)、FT(NSA:19m/g、DBP:42ml/100g)、MT(NSA:8m/g、DBP:43ml/100g)等が挙げられる。これらのカーボンブラックは単独で使用してもよいし、また2種以上を併用してもよい。
【0108】
なかでも、窒素吸着比表面積(NSA)が5〜180m/gであって、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が40〜180ml/100gであるカーボンブラックが好ましい。
【0109】
窒素吸着比表面積(NSA)が5m/gよりも小さくなると、ゴムに配合した場合の機械物性が低下する傾向にあり、この観点から、窒素吸着比表面積(NSA)は10m/g以上が好ましく、20m/g以上がより好ましく、25m/g以上が特に好ましい。上限は、一般的に入手しやすい観点から180m/gが好ましい。
【0110】
ジブチルフタレート(DBP)吸油量が40ml/100gよりも小さくなると、ゴムに配合した場合の機械物性が低下する傾向にあり、この観点から、50ml/100g以上、更には60ml/100g以上、特には80ml/100gが好ましい。上限は一般的に入手しやすい観点から、175ml/100g、更には170ml/100gが好ましい。
【0111】
本発明の含フッ素エラストマー組成物は、必要に応じて含フッ素エラストマー中に配合される通常の配合剤、例えば上記以外の充填剤、加工助剤、可塑剤、着色剤、安定剤、接着助剤、離型剤、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、表面非粘着剤、柔軟性付与剤、耐熱性改善剤、難燃剤等の各種添加剤を配合することができ、これらの添加剤、配合剤は、本発明の効果を損なわない範囲で使用すればよい。
【0112】
本発明の含フッ素エラストマー組成物は、上記の各成分を、通常のエラストマー用加工機械、例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いて混合することにより調製することができる。この他、密閉式混合機を用いる方法やエマルジョン混合から共凝析する方法によっても調製することができる。
【0113】
本発明における架橋物は、本発明の含フッ素エラストマー組成物を架橋反応させることにより、得ることができる。架橋条件は、架橋方法や架橋物の形状等により適宜設定すればよいが、おおむね、100〜200℃で数秒〜180分の範囲である。また、架橋物の物性を安定化させるために二次架橋を行ってもよい。二次架橋条件としては、100〜350℃で30分〜50時間程度である。
【0114】
パーオキサイド架橋を行う場合、通常の架橋性含フッ素エラストマーの架橋条件下で行うことができる。例えば、金型に入れ、加圧下において120〜200℃で1〜60分間保持することによってプレス架橋を行い、続いて120〜250℃の炉中で0〜48時間保持することによってオーブン架橋を行うと、架橋物を得ることができる。
【0115】
ビスアミノフェノール等の架橋剤を用いてオキサゾール架橋を行う場合、通常の架橋性エラストマーの架橋条件下で行うことができる。例えば、金型に入れ、加圧下において120〜250℃で1〜60分間保持することによって、プレス架橋を行い、続いて120〜320℃の炉中で0〜48時間保持することによってオーブン架橋を行うと、架橋物を得ることができる。また、公知の架橋性エラストマーの架橋系、例えば、ポリアミン架橋系やポリオール架橋系、パーオキサイド架橋系の配合にビス(アミノフェノール)AF等を添加して併用架橋することもできる。
【0116】
また、カルボキシル基をビスジアミノフェニル系架橋剤で架橋するイミダゾール架橋は、カルボキシル基を末端以外に有するカルボキシル含有ポリマーに最適であり、比較的低い架橋温度(例えば150〜230℃、好ましくは170〜200℃)で良好な物性をもつ架橋物を与える。
【0117】
上記組成物から予備成形体を得る方法は通常の方法でよく、金型にて加熱圧縮する方法、加熱された金型に圧入する方法、押出機で押出す方法等公知の方法で行うことができる。また、溶剤に溶かしてディップ成形、コーティング等により成形してもよい。
ホースや電線等の押出製品の場合は押出後も形を保持することが可能なので、架橋剤を使用せずに押出した予備成形体をそのまま用いることができる。もちろん架橋剤を使用してスチーム等による加熱架橋を施した予備成形体を用いることも可能である。また、O−リング等の型物製品で未架橋状態では離型後も形を保持することが困難な場合は、架橋剤を使用してあらかじめ架橋した予備成形体を用いることにより実施可能となる。
【0118】
本発明における架橋物から形成される層(架橋物層)と他の材料を含む少なくとも1つの層からなる基材とにより、積層体を構成してもよい。
当該「他の材料」は、要求される特性、予定される用途等に応じて適切なものを選択すればよいが、例えば、鉄、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、真鍮等の金属類;ガラス板、ガラス繊維の織布や不織布等のガラス製品;ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン等の汎用樹脂や耐熱性樹脂の成形品及び被覆物;SBR、ブチルゴム、NBR、EPDM等の汎用ゴムや、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性ゴムの成形品及び被覆物;天然繊維及び合成繊維の織布や不織布等を使用することができる。
【0119】
上記架橋物層と上記基材との間には、接着性を向上させるため、シリコーンゴム等により中間層を形成してもよい。また、必要に応じて、その他の作用を有する層を更に形成してもよい。
【0120】
架橋物層と基材とにより構成される積層体の製造方法としては、特に限定されず、共押出、共射出、押出コーティング等の公知の方法を使用することもできるが、本発明の含フッ素エラストマー組成物を基材に塗布することにより形成することが好ましい。より具体的には、上記組成物を基材に塗布する工程と、塗布された組成物を架橋する工程とを含む製造方法により製造することが好ましい。このような製造方法としては、例えば、(1)剥離可能な基材上に上記組成物を塗布した後、架橋し、得られた架橋物を基材から剥離して、該基材とは異なる他の層に積層(接着)する方法、(2)基材上に、直接又は他の層を介して上記組成物を塗布し、架橋して、該架橋物と該基材とからなる積層体を形成する方法、等が挙げられる。
上記組成物を基材に塗布する方法としては、例えば、従来公知の方法を採用することができる。
【0121】
また、本発明における架橋物から形成される層と基材との間に接着剤層を介在させてもよい。接着剤層を介在させることによって、上記架橋物から形成される層と他の材料を含む基材層とを強固に接合一体化させることができる。接着剤層において使用される接着剤としては、ジエン系重合体の酸無水物変性物;ポリオレフィンの酸無水物変性物;高分子ポリオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール化合物とアジピン酸等の二塩基酸とを重縮合して得られるポリエステルポリオール;酢酸ビニルと塩化ビニルとの共重合体の部分ケン化物等)とポリイソシアネート化合物(例えば、1,6−ヘキサメチレングリコール等のグリコール化合物と2,4−トリレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物とのモル比1対2の反応生成物;トリメチロールプロパン等のトリオール化合物と2,4−トリレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物とのモル比1対3の反応生成物等)との混合物;等を使用することができる。
【0122】
また、本発明における架橋物から形成される層と基材層とを有する積層体を作製する場合、必要に応じて上記架橋物から形成される層に表面処理を行ってもよい。この表面処理としては、接着を可能とする処理方法であれば、その種類は特に制限されるものではなく、例えばプラズマ放電処理やコロナ放電処理等の放電処理、湿式法の金属ナトリウム/ナフタレン液処理等が挙げられる。また、表面処理としてプライマー処理も好適である。プライマー処理は常法に準じて行うことができる。プライマー処理を施す場合、表面処理されていない架橋物から形成される層の表面をプライマー処理することもできるが、プラズマ放電処理、コロナ放電処理、金属ナトリウム/ナフタレン液処理等を予め施した架橋物から形成される層の表面を更にプライマー処理すると、より効果的である。
【0123】
本発明の含フッ素エラストマー組成物を架橋して得られる架橋物は、低着香性に優れるものであるため、様々な用途に好適に用いることができるが、なかでも、物品を搬送するための搬送用部材に適用することが好ましい。より具体的には、上記搬送用部材は、上記含フッ素エラストマー組成物を塗布することにより得られる搬送用部材であって、少なくとも表面の一部が上記組成物の架橋物からなるものであることが好ましく、このような搬送用部材もまた、本発明の1つである。
【0124】
本明細書において、「搬送用部材」とは、種々の物品を搬送するための部材であれば特に限定されず、例えば、搬送用ロール、搬送用ベルト、搬送用ホース等の他、配管等に使用されるパッキンやガスケット等のシール材も含む。
搬送される物品としては、例えば、食品、化粧品、医薬品、印刷に用いられる物品(例えば、インク、顔料、紙など)等が挙げられる。
【0125】
上記搬送用部材は、少なくともその表面の一部が上記組成物の架橋物からなるものであればよい。より具体的には、搬送される物品と接触する表面の一部又は全部が上記組成物の架橋物からなるものであればよい。
例えば、搬送用部材が搬送用ロールである場合には、ロールの最外周に形成される層の表面の一部又は全部が上記架橋物であればよく、搬送用ホースである場合には、最内面の一部又は全部が上記架橋物であればよい。
また、上記搬送用部材は、上記組成物の架橋物単独で構成されていてもよく、架橋物を含む積層体により構成されていてもよい。
【0126】
本発明の搬送用部材が搬送用ロールである場合、基材(芯材)としては、鉄、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、真鍮等の金属類が好ましく、アルミニウムがより好ましい。上記架橋物は、基材(芯材)の外周面に直接接するように形成されてもよく、基材と架橋物との間に設けられたシリコーンゴム等の他の層を介して形成されてもよい。
【0127】
搬送用ロールの製造方法としては、(1)本発明の含フッ素エラストマー組成物を芯材の外周面に塗布し、架橋して架橋物層を形成する方法、(2)押出成形により、芯材の外周面に上記組成物を層状に成形した後、架橋して架橋物層を形成する方法、(3)押出成形により上記組成物をチューブに成形し、該チューブ内に芯材を通し、ついで100〜250℃で加熱してチューブを芯材表面に密着させる方法、等が挙げられる。
なかでも、上記(1)の方法により製造することが好ましい。
【0128】
本発明の搬送用部材が搬送用ベルト、搬送用ホース、シール材等である場合には、本発明の含フッ素エラストマー組成物の架橋物単独で形成してもよく、求められる特性に応じて、他の層を含む積層体で形成してもよい。製造方法としては、塗布法、押出成形法、圧縮成形法、射出成形法等、架橋物の製造方法として上述した方法を採用することができる。なかでも、塗布法により製造することが好ましい。
【発明の効果】
【0129】
本発明の含フッ素エラストマー組成物は、上述の構成よりなるものであるので、架橋物表面へのハイドロカーボン系化合物の漏出が極めて少なく、架橋物の着香性を充分に抑制することができる。
本発明の搬送用部材は、上述の構成よりなるものであるので、搬送される物品から搬送用部材への匂い成分の移行や、搬送用部材から物品への匂い成分の移行を充分に抑制することができ、搬送される物品の品質低下を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0130】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこの実施例により限定されるものではない。
【0131】
各実施例で行った測定は、以下の方法により行った。
(1)ハイドロカーボン系化合物漏出量
X線光電子分光法(ESCA)装置として、島津製作所製ESCA3400を用い、X線源としてMgを使用して表面フッ素濃度と炭素濃度を測定した。ポリマーに酸素を含む場合は酸素濃度も測定した。この表面フッ素濃度とポリマー組成から、表面に存在するはずの理論炭素濃度を計算して、実際の炭素濃度測定値と比較した。ポリマーに酸素を含む場合は酸素濃度も含めて計算して比較した。
(2)着香性試験
果汁ジュースに被験サンプルを室温で24時間浸せきしてからイオン交換水で洗浄し、被験サンプルの香りの度合いを官能評価した。香りが強いものとして比較例1の被験サンプルを×、香りがほとんどないものとしてフッ素樹脂を○、その中間を△として3段階で評価した。
【0132】
実施例1
ヨウ素を架橋基として含有するテトラフルオロエチレン(TFE)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/ビニリデンフルオリド(VdF)からなる含フッ素エラストマー(FKM1: TFE/HFP/VdF=20/30/50(モル%))100重量部に対して、トリアリルイソシアヌレート(TAIC、日本化成(株)製)0.5重量部、およびパーヘキサ25B(日油(株)製)0.5重量部をオープンロールにて混練して架橋可能な含フッ素系エラストマー組成物(1)を得た。
【0133】
得られた含フッ素エラストマー組成物(1)を、160℃で、10分間かけてプレス架橋を行ったのち、更に、180℃のエアオーブン中で4時間かけてオーブン架橋し、架橋物(1)を得た。
【0134】
得られた架橋物(1)について、表面のハイドロカーボン系化合物漏出量測定、及び、着香性試験を行った。結果を表1に示す。
【0135】
実施例2〜3、比較例1〜2
含フッ素エラストマー組成物の成分やその配合量を表1のように変更したこと以外は実施例1と同様にして、架橋物(2)〜(3)、及び、比較架橋物(1)〜(2)を得た。表面のハイドロカーボン系化合物漏出量測定及び着香性試験の結果を表1に示す(なお、表1中、FFKM1:ヨウ素を架橋基として含有するTFE/CF=CFO[CFCF(CF)O]=70/30(モル%)からなる含フッ素エラストマー、FFKM2:CNVE(CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN)を架橋基として含有するテトラフルオロエチレン(TFE)/パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)からなる含フッ素エラストマー(TFE/PMVE=60/40(モル%))、MTカーボンブラック:MTカーボンブラック(CanCarb社製)、AFTA−Ph:2,2−ビス−[3−アミノ−4−(N−フェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンである。)。
【0136】
【表1】

【0137】
実施例1〜3及び比較例1〜2の結果からは、ハイドロカーボン系化合物が実質的に漏出しない実施例1〜3の架橋物は、ハイドロカーボン系化合物漏出量が多い比較例1〜2の架橋物と比較して、低着香性に優れることがわかった。したがって、含フッ素エラストマー組成物を本発明の構成とすることに技術的意義が存在することが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性の含フッ素エラストマーを含む含フッ素エラストマー組成物であって、
前記組成物の架橋物の表面には、ハイドロカーボン系化合物が実質的に漏出しない
ことを特徴とする含フッ素エラストマー組成物。
【請求項2】
請求項1記載の含フッ素エラストマー組成物を塗布することにより得られる搬送用部材であって、
前記搬送用部材は、少なくとも表面の一部が前記組成物の架橋物からなる
ことを特徴とする搬送用部材。

【公開番号】特開2013−14640(P2013−14640A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146317(P2011−146317)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】