説明

含フッ素ポリマー、硬化性樹脂組成物、及び、硬化物

【課題】屈折率が低く、かつ透明性が高く、更には、耐熱性にも優れ、また、高耐熱性、可視光領域での透明性、低誘電率及び可撓性に優れる硬化物を形成でき、更には物理的、化学的安定性にも優れる含フッ素ポリマー、硬化性樹脂組成物、及び、硬化物を提供する。
【解決手段】本発明は、下記式(L):
[化1]


(式中、X及びXは、同一又は異なり、H又はFである。Xは、H、F、CH又はCFである。X及びXは、夫々同一又は異なり、H、F又はCFである。Rfは、炭素数4〜40の含フッ素炭化水素基、又は、炭素数5〜100のエーテル結合を有する含フッ素炭化水素基である。aは0〜3の整数である。b及びcは同一又は異なり、0又は1である。)で表される構造単位を有する含フッ素ポリマーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素ポリマー、硬化性樹脂組成物、及び、該硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CCD素子、CMOS素子、発光ダイオード(LED)、液晶、MEMS等の各種デバイスが広く利用されているが、このようなデバイスは、構造上外部環境に影響されやすく、これを避けるために気密パッケージして使用されている。
【0003】
例えば、携帯電話のカメラモジュール内に採用されているCCD等のイメージセンサでは、センサ素子の表面を、直接封止部材を介してガラス等の透明な蓋で封止することが検討されている。この方法はウェハーレベルで封止部材を介してガラスと積層後、ダイシング等によりデバイスが作製可能となるため、工程数を大幅に削減できる等のメリットがある。
【0004】
このような封止部材の材料としては、光の透過性や光に対する耐久性に優れることから、含フッ素化合物がしばしば用いられる。上述のような構造のCCD素子を製造する場合、封止部材としては、低屈折率であり、かつ透明性が高いものが必要となるが、従来、光学部材用に検討されていた含フッ素化合物では、充分な特性の封止部材が得られていなかった。
【0005】
例えば、特許文献1には、防眩性を維持し、また表面散乱による「白ぼけ」が認められず、かつ密着性に優れた実用的な低反射性を有する積層体として有用な材料として、末端に炭素数1〜50の加水分解性金属アリコキシド部位を少なくとも1個含む官能基を有する特定の構造単位と、末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基が1〜3個結合している特定の構造単位とを有する硬化性含フッ素ポリマーが記載されている。また、特許文献2には、低屈折率でかつ防汚性に優れた反射防止膜形成用の硬化性組成物として、末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する含フッ素アルキル基を有する構造単位を含む硬化性含フッ素ポリマー(A)と、含フッ素表面改質剤(B)、及び、中空シリカ微粒子(C)を含む硬化性組成物が開示されている。
【0006】
また例えば、特許文献3には、反射防止膜を形成するための硬化性含フッ素ポリマーとして、末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基が1〜3個結合している特定の構造の硬化性含フッ素ポリマーに関する組成物が提案されており、特許文献4には、エチレン性炭素−炭素二重結合を有する含フッ素重合体をヒドロシリル化反応により硬化させることも提案されている。
【0007】
特許文献5には、硫黄原子と加水分解性金属アルコキシドとを含む基を2つ以上有する多官能含フッ素化合物が開示され、実施例には、このような化合物を含む組成物から得られる硬化被膜が、外観、塗布性、耐薬品性等に優れる旨が記載されている。
【0008】
また、現在、大型の液晶表示装置等に用いられている薄膜トランジスタ(TFT)は、インバーテッド・コープレーナー(inverted coplanar)型が主流となっているが、このようなTFTにおいて、ゲートとチャンネルの間にあるインシュレータ層は、TEOSや窒化珪素(SiN)を、CVD(Chemical Vapor Deposition)若しくはスパッタリングで製膜することにより形成している。
【0009】
しかしながら、表示装置の大画面化や価格競争の激化により、大面積化、低価格化が要望されていることから、薄膜トランジスタのインシュレータ層を塗布型の製膜法により製造する試みが行われている。
【0010】
塗布型の絶縁膜形成用組成物としては、ポリシロキサンを用いたものが挙げられる。例えば、特許文献6には、可撓性の高い絶縁膜を形成するためのポリシロキサン組成物として、特定の繰返し単位を有するポリシロキサンと加熱により酸及びラジカルの少なくとも一方を発生する化合物とを含有するポリシロキサン組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開2006/027958号パンフレット
【特許文献2】特開2008−40262号公報
【特許文献3】国際公開第02/18457号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2008/153002号パンフレット
【特許文献5】特開2009−242350号公報
【特許文献6】特開平9−188814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、封止部材用途においては、特許文献1に記載された硬化性樹脂組成物は屈折率が高く、CCD素子用の封止部材に用いるには低屈折率化が必要であった。また、特許文献2に記載された硬化性樹脂組成物は、100nm程度の薄膜であれば透明性は問題なかったが、封止部材として必要な厚みである1〜十数μm程度になると中空シリカ微粒子の凝集によってヘイズが高くなり、透明性の観点から充分なものではなかった。更に、特許文献3及び特許文献4に記載されている含フッ素重合体から得られる硬化物は、光透過性や屈折率等の光学的特性や、高温での耐熱性、耐光性、硬化収縮性等の点で、さらなる改善の余地があった。このように、従来の技術には、屈折率が低く、かつ透明性が高く、耐熱性等の各種物性にも優れる部材を形成できるものであって、更には物理的、化学的安定性にも優れる含フッ素化合物について、更に検討する余地があった。
【0013】
また、塗布型の絶縁膜用途においては、特許文献6のように、ポリシロキサンから形成された絶縁膜は、未だ可撓性に乏しく、撓みにより割れたりすることがあり、より可撓性に優れる絶縁膜を形成することができる材料が求められるところであった。また、薄膜トランジスタのゲート絶縁膜とするには、より優れた高耐熱性、可視光領域での透明性、低誘電率が求められるところであった。
【0014】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、屈折率が低く、かつ透明性が高く、更には、耐熱性にも優れ、光学素子用の封止部材に好適な硬化物を形成でき、更には物理的、化学的安定性にも優れる含フッ素ポリマー、硬化性樹脂組成物、及び、硬化物を提供することを目的とする。本発明はまた、高耐熱性、可視光領域での透明性、低誘電率及び可撓性に優れ、薄膜トランジスタの絶縁膜等に好適な硬化物を形成することが可能な含フッ素ポリマー、硬化性樹脂組成物、及び、硬化物を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らが光学素子の封止剤や、薄膜トランジスタの絶縁膜としても好適に用いることができる含フッ素ポリマーについて鋭意検討したところ、特定の構造の変性含フッ素アリルエーテルポリマーであれば、屈折率が充分に低く、物理的、化学的安定性に優れることを見出した。そして、このようなポリマーを用いて得られる硬化性樹脂組成物が、低屈折率で、かつ透明性が高く、更には、耐熱性にも優れる硬化物、又は、高耐熱性、可視光領域での透明性、低誘電率及び可撓性に優れた硬化物を与えることを見出した。更に、これらの硬化物が、光学素子の封止剤や、薄膜トランジスタ等における塗布型の絶縁膜に好適に適用できることも見出し、上記課題をみごとに解決できることに想到し、本発明に到達したものである。
【0016】
すなわち、本発明は、
下記式(L):
【化1】

(式中、X及びXは、同一又は異なり、H又はFである。Xは、H、F、CH又はCFである。X及びXは、夫々同一又は異なり、H、F又はCFである。Rfは、炭素数4〜40の含フッ素炭化水素基、又は、炭素数5〜100のエーテル結合を有する含フッ素炭化水素基である。aは0〜3の整数である。b及びcは同一又は異なり、0又は1である。)で表される構造単位を有する含フッ素ポリマーであって、上記式(L)中のRfは、下記式(Rf):
−(R−O)−R’n’−CH2−x{(CXCRHCRY}OH1−y{(CXCRHCRY} (Rf)
(式中、Rは、同一又は異なり、水素原子の少なくとも1個がフッ素原子で置換されている炭素数1〜5の含フッ素アルキレン基である。R’は、同一又は異なり、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5の含フッ素アルキレン基である。X及びXは、夫々同一又は異なり、H、ハロゲン原子、又は、置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基である。R、R及びRは、夫々同一又は異なり、H、ハロゲン原子、又は、置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基である。Yは、同一又は異なり、炭素数1〜50の加水分解性金属アルコキシド部位である。nは、0〜20の整数であり、n’は、0〜10の整数である。mは、1〜12の整数である。xは、0〜2の整数であり、yは、0又は1である。ただし、xが0のとき、yは1である。)で表される含フッ素炭化水素基であることを特徴とする含フッ素ポリマーである。
【0017】
本発明の含フッ素ポリマーは、上記式(L)で表される構造単位以外のその他の構造単位を更に有することが好ましい。
【0018】
本発明はまた、(A)上記含フッ素ポリマー、及び、(B)有機ケイ素化合物からなることを特徴とする硬化性樹脂組成物でもある。
【0019】
本発明の硬化性樹脂組成物は、含フッ素ポリマー(A)と有機ケイ素化合物(B)との合計質量に対して、有機ケイ素化合物(B)が50質量%以上であることが好ましい。
【0020】
本発明の硬化性樹脂組成物は、有機溶剤を含むものであることが好ましい。
【0021】
本発明の硬化性樹脂組成物は、光学素子封止用であることが好ましい。
【0022】
本発明の硬化性樹脂組成物は、LED封止用であることが好ましい。
【0023】
本発明の硬化性樹脂組成物は、薄膜トランジスタのゲート絶縁膜用であることも好ましい。
【0024】
本発明はまた、上記硬化性樹脂組成物を硬化して得られることを特徴とする硬化物でもある。
【0025】
上記硬化物は、屈折率が1.40以下であることが好ましい。
【0026】
上記硬化物は、光学素子用の封止部材であることが好ましい。
【0027】
上記光学素子は、受光素子であることが好ましい。
【0028】
上記光学素子は、発光素子であることも好ましい。
【0029】
上記光学素子は、LEDであることも好ましい。
【0030】
上記硬化物は、薄膜トランジスタのゲート絶縁膜であることも好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明の含フッ素ポリマーは、屈折率が低く、かつ透明性が高く、更には、耐熱性にも優れ、光学素子用の封止部材に好適な硬化物を形成できる硬化性樹脂組成物を与えることができる。本発明の含フッ素ポリマーはまた、高耐熱性、可視光領域での透明性、低誘電率及び可撓性に優れ、薄膜トランジスタの絶縁膜等に好適な硬化物を形成することが可能な硬化性樹脂組成物を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、CCDモジュールの構造の一例を示す断面模式図である。
【図2】図2(a)〜(f)は、CCDモジュールの製造フローを簡略的に示したフロー図である。
【図3】図3は、インバーテッド・コープレーナー型の薄膜トランジスタの一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の含フッ素ポリマー(以下、含フッ素ポリマー(A)ともいう。)は、下記式(L):
【化2】

(式中、X及びXは、同一又は異なり、H又はFである。Xは、H、F、CH又はCFである。X及びXは、夫々同一又は異なり、H、F又はCFである。Rfは、炭素数4〜40の含フッ素炭化水素基、又は、炭素数5〜100のエーテル結合を有する含フッ素炭化水素基である。aは0〜3の整数である。b及びcは同一又は異なり、0又は1である。)で表される構造単位を有する。
【0034】
また、上記式(L)中のRfは、下記式(Rf):
−(R−O)−R’n’−CH2−x{(CXCRHCRY}OH1−y{(CXCRHCRY} (Rf)
(式中、Rは、同一又は異なり、水素原子の少なくとも1個がフッ素原子で置換されている炭素数1〜5の含フッ素アルキレン基である。R’は、同一又は異なり、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5の含フッ素アルキレン基である。X及びXは、夫々同一又は異なり、H、ハロゲン原子、又は、置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基である。R、R及びRは、夫々同一又は異なり、H、ハロゲン原子、又は、置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基である。Yは、同一又は異なり、炭素数1〜50の加水分解性金属アルコキシド部位である。nは、0〜20の整数であり、n’は、0〜10の整数である。mは、1〜12の整数である。xは、0〜2の整数であり、yは、0又は1である。ただし、xが0のとき、yは1である。)で表される含フッ素炭化水素基である。
【0035】
本明細書において、上記式(L)で表され、かつRfが上記式(Rf)で表される構造単位を、「構造単位L」ともいう。
上記エーテル結合は、−O−で表される2価の基である。
なお、本明細書中で、後述する「炭化水素基」は、炭素及び水素からなる有機基であり、「含フッ素炭化水素基」は、炭化水素基が有する一部又は全部の水素原子がフッ素原子で
置換されたものである。「炭化水素基」としては、例えば、アルキル基、アリル基、環状アルキル基、不飽和アルキル基等が挙げられる。「含フッ素炭化水素基」としては、含フッ素アルキル基、含フッ素アリル基、含フッ素環状アルキル基、含フッ素不飽和アルキル基等が挙げられる。
【0036】
構造単位Lとしては、なかでも式(L1):
【0037】
【化3】

【0038】
(式中、X、X、X、X、X、Rf、a及びcは前記と同じ)で示される構造単位L1が好ましい。
【0039】
この構造単位L1を含む含フッ素ポリマー(A)は、特に屈折率が低く、また、含フッ素ポリマー(A)を含む硬化性樹脂組成物から得られる薄膜の透明性を高くすることができ、更に、種々の基材との密着性がよく、密着耐久性を向上させることができる点で好ましい。また、熱、ラジカルやカチオンの接触による硬化反応性を高くすることができる点でも好ましい。
【0040】
更に構造単位L1のより好ましい具体例の1つは式(L2):
【0041】
【化4】

【0042】
(式中、Rfは前記と同じ)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位L2である。
【0043】
この構造単位L2は屈折率が低く、また、含フッ素ポリマー(A)を含む硬化性樹脂組成物から得られる薄膜の透明性を高くすることができ、種々の基材との密着性がよく耐久性を向上させることができる点で優れているほか、他の含フッ素エチレン系単量体との共重合性が良好であるため好ましい。また、近赤外透明性を高くできるだけでなく屈折率を低くできる点でも好ましい。
【0044】
上記構造単位L2において、Rfが、例えば、−(CF(CF)CF−O)−Ry(Ryは、後述するものと同じである。nは、0、1又は2である。)であることも好ましい形態の一つである。
【0045】
また、構造単位L1の別の好ましい具体例は式(L3):
【0046】
【化5】

【0047】
(式中、Rfは前記と同じ)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位L3である。
【0048】
この構造単位L3は屈折率が低く、また、種々の基材との密着性がよく、密着耐久性を向上させることができる点で優れているほか、他の含フッ素エチレン系単量体との共重合性が良好である点でも好ましい。また、近赤外透明性を高くできるだけでなく屈折率を低くできる点でも好ましい。
【0049】
上記構造単位L、L1、L2及びL3に含まれるRfは、上記のとおり、上記式(Rf)で表される含フッ素炭化水素基である。
上記Rf中で、炭素数1〜50の加水分解性金属アルコキシド部位Yは加水分解・重縮合反応を起こす役割を果たす。これにより、本発明の含フッ素ポリマー(A)と、後述する有機ケイ素化合物(B)とからなる硬化性樹脂組成物を硬化する際に、含フッ素ポリマー(A)と化合物(B)から形成されるSiOとが架橋し、耐熱性、透明性、及び可撓性に優れる硬化物を形成することができる。
【0050】
上記式(Rf)中の−(R−O)−におけるRは、炭素数1〜5の2価の含フッ素アルキレン基であって、少なくとも1個のフッ素原子を有するものであり、それによって、従来のフッ素を含まないアルコキシル基を有するものやアルキレンエーテル単位を有するものに比べて、化合物の粘性を更に低粘性化できる他、耐熱性向上、屈折率の低下、汎用溶剤への溶解性向上等に寄与することができる。
なお、Rで表される含フッ素アルキレン基は、炭素数が1〜5で、かつ少なくとも1個のフッ素原子を有している限り、他のハロゲン原子や、任意の有機基を更に有していてもよい。
【0051】
−(R−O)−として、具体的には、−(CFCFCFO)−、−(CFQCFO)−、−(CFQCHO)−、−(CFQO)−、−(CFCFCFCFO)−、−(CHCFQO)−、−(CQO)−(Q、Qは同じか又は異なり、H、F又はCF;QはCF)等があげられ、−(R−O)−はこれらの1種又は2種以上の繰り返しにより構成される構造部位であることが好ましい。
【0052】
なかでも、−(R−O)−は−(CFQCFO)−、−(CFQCHO)−、−(CFCFCFO)−、−(CHCFCFO)−、−(CFQO)−及び−(CQO)−から選ばれる1種又は2種以上の繰り返しにより構成される構造部位であることが好ましく、特には−(CFQCFO)−、−(CFQCHO)−、−(CFCFCFO)−及び−(CHCFCFO)−から選ばれる1種又は2種以上の繰り返しにより構成される構造部位、更には−(CFQCFO)−、−(CFQCHO)−及び−(CFCFCFO)−から選ばれる1種又は2種以上の繰り返しにより構成される構造部位であることが好ましい。また、構造単位Lが上記構造単位L2である場合、−(R−O)−としては、−(R−O)−が−(CFQCFO)−、−(CFQCHO)−、−(CFCFCFO)−及び−(CHCFCFO)−からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、−(CFQCFO)−、−(CFQCHO)−及び−(CFCFCFO)−からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。上記式中、Qは、H、F又はCFである。Qとしては、CFが好ましい。
【0053】
−(R−O)−におけるnは、−(R−O)−で表される構造単位の繰り返し数であり、0〜20の整数である。nとしては0〜10が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3が更に好ましい。
【0054】
上記式(Rf)中の−R’n’−において、R’は、炭素数1〜5の2価の含フッ素アルキレン基であって、少なくとも1個のフッ素原子を有するものである。R’で表される含フッ素アルキレン基は、炭素数が1〜5で、かつ少なくとも1個のフッ素原子を有している限り、他のハロゲン原子や、任意の有機基を更に有していてもよい。
好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜5の含フッ素アルキレン基である。
【0055】
R’として具体的には、CFQ、CFQCF、CFQCH、CHCFQ、CFCFQ、CFCFCF、CHCFCF、C(CF等を挙げることができ、−R’n’−はこれらの1種又は2種以上の繰り返しにより構成される構造部位であることが好ましい。上記式中、Qは、H、F又はCFである。Qとしては、CFが好ましい。また、上記式中、Qは、H又はCFである。Qとしては、CFが好ましい。
R’としては、上述した中でも、CF(CF)、CF(CF)CF、CFCFCF、C(CFが好ましい。
【0056】
−R’n’−におけるn’は、R’で表される構造単位の繰り返し数であり、0〜10の整数である。n’としては0〜5が好ましく、1〜3がより好ましい。
【0057】
−(R−O)−R’n’−で表される部位の好ましい具体例としては、例えば次のものが挙げられる。
【0058】
【化6】

【0059】
上記式(Rf)中のX及びXは、夫々、H、ハロゲン原子、又は、置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基である。X及びXは、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。中でも、フッ素原子、塩素原子が好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
【0060】
上記置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基としては、特に限定されないが、脂肪族炭化水素基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等が挙げられる。具体的には、例えば、−CH、−C、−C等の炭素数1〜10のアルキル基;−CX’、−CX’、−CHX’、−CHCX’、−CHX’等の炭素数1〜10のハロゲン原子含有アルキル基(X’は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子);フェニル基;ベンジル基;−C、−CH等の、フッ素原子で1〜5個の水素原子が置換されたフェニル基又はベンジル基;−C5−n(CF、−CH5−n(CF(nは1〜5の整数)等の、−CFで1〜5個の水素原子が置換されたフェニル基又はベンジル基等が挙げられる。中でも、−CH、−CFが好ましい。
【0061】
及びXとしては、上述した中でも、Hが特に好ましい。
【0062】
上記式(Rf)中のmは、−(CX)−で表される構造単位の繰り返し数であり、1〜12の整数である。mとしては、1〜5がより好ましく、1〜3が更に好ましい。最も好ましくは、m=1である。
【0063】
上記式(Rf)中のR、R及びRは、H、ハロゲン原子、又は、置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基である。R、R及びRは、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
上記ハロゲン原子及び上記置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基は、X及びXについて例示したものと同様のものを挙げることができる。
【0064】
また、R、及び、R又はRが置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基である場合には、Rと、R又はRとは、それらの基が結合している2つの炭素原子とともに環構造(シクロアルカン構造)を形成していてもよい。このような環構造としては、Rと、R又はRとが有する炭素原子の2〜10個と、上記2つの炭素原子(すなわち、Rが結合している炭素原子、及び、R又はRが結合している炭素原子)とから構成される環構造が好ましい。より好ましくは、Rと、R又はRとが有する炭素原子の2〜4個と、上記2つの炭素原子とから構成される環構造である。
【0065】
としては、上述した中でも、H、F、−CHが好ましく、−CHがより好ましい。
及びRとしては、上述した中でも、H、Fが好ましく、Hがより好ましい。
【0066】
上記式(Rf)中のYは、炭素数1〜50の加水分解性金属アルコキシド部位である。具体的には、Yは、下記式(Y):
−[MO(R29(R30(R31(R32−M(R33(R34(R35(R36(R37 (Y)
(式中、M及びMは同じか又は異なり、2〜6価の金属原子;d、e、f及びgは0又は1であって、かつd+e+f+g+2が金属原子Mの価数に等しい;h、i、j、k及びlは0又は1であって、h+i+j+k+l+1が金属原子Mの価数に等しい;R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36及びR37は同じか又は異なり、式OR38又はR38(式中、R38は水素原子、若しくは水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜10の炭化水素基)で示される有機基であって、かつR29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36及びR37の少なくとも1つがOR38である;p=0〜11の整数)で表される加水分解性金属アルコキシド部位であることが好ましい。
【0067】
Y中の金属M及びMとしては、IB族としてCu;IIA族としてCa、Sr、Ba;IIB族としてZn;IIIA族としてB、Al、Ga;IIIB族としてY;IVA族としてSi、Ge;IVB族としてPb;VA族としてP、Sb;VB族としてV、Ta;VIB族としてW;ランタニドとしてLa、Ndが挙げられる。
【0068】
特にYとしては、IVA族、中でもSiが好ましく、特に−Si(OCH、−Si(OC、−SiCH(OC等が加水分解・重縮合後に、水酸基を有する基材との良好な密着性及び密着耐久性の点で好ましく、また、−[SiO(OCHp1−Si(OCH、−[SiO(OCp1−Si(OC(p1は1〜11の整数)等が加水分解・重縮合後に水酸基を有する基材との良好な密着性及びその耐久性の他、表面硬度の向上の点で好ましい。
【0069】
これらのなかでも、Yとしては、−Si(OCH、−Si(OC、及び−SiCH(OCからなる群より選択される少なくとも1種が特に好ましい。
【0070】
IVA族以外の金属を用いたYの例としては、
IIA族、Ca:−Ca(OR39)、好適な具体例としては−Ca(OCH);
IIB族、Zn:−Zn(OR39)、好適な具体例としては−Zn(OC);
IIIA族、B:−B(OR39、好適な具体例としては−B(OCH
IIIB族、Y(イットリウム):−Y(OR39、好適な具体例としては−Y(OC
IVB族、Pb:−Pb(OR39、好適な具体例としては−Pb(OC
VB族、Ta:−Ta(OR39、好適な具体例としては−Ta(OC
VIB族、W:−W(OR39、好適な具体例としては−W(OC
ランタニド、La:−La(OR39、好適な具体例としては−La(OC
(式中、R39は水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜10の炭化水素基)等が例示できる。
【0071】
これら各種金属は、同一のものに限らず、異種のものを組みあわせてもよい。
【0072】
上記式(Rf)中のxは、0〜2の整数であり、yは、0又は1である。ただし、xが0のとき、yは1である。xとyとの合計は、Rfにおける−(CXCRHCRYで表される基の個数に相当する。すなわち、Rfは、−(CXCRHCRYで表される基をx+y個、具体的には1〜3個有することになる。
【0073】
xとyとの組み合わせにより、Rfは、以下の式(a)〜(e)のいずれかの構造をとる。
【0074】
【化7】

【0075】
上記式(a)〜(e)中、Rfは、Rfにおいて−(R−O)−R’n’−で表される部位を表す。Y’は、−(CXCRHCRYで表される基を表す。
上記式(a)は(x,y)=(0,1)に、(b)は(x,y)=(1,0)に、(c)は(x,y)=(1,1)に、(d)は(x,y)=(2,0)に、(e)は(x,y)=(2,1)に、夫々相当する。
xとyとの組み合わせは、本発明の含フッ素ポリマー(A)の用途や求められる特性に応じて適宜設定すればよい。
【0076】
上述のように、構造単位Lとしては、構造単位L1が好ましく、構造単位L1としては更に構造単位L2又は構造単位L3が好ましい。そこで、上記式(Rf)中の「−(R−O)−」を「−D−」、「−R’n’−CH2−x{(CXCRHCRY}OH1−y{(CXCRHCRY}」を「−Ry」で表すと、構造単位Lは、式(1):
【0077】
【化8】

【0078】
(式中、X、X、X、X、X、D、Ry、a、b及びcは前記と同じ)で示される構造単位であることが、基材との密着耐久性、更に低粘性化や耐熱性が優れる点で好ましい。
【0079】
具体的には、上記式(1)の構造単位Lは、
【0080】
【化9】

【0081】
等が好ましく挙げられ、なかでも上記式(1)の構造単位は、式(1−1):
【0082】
【化10】

【0083】
(式中、X、X、X、X、X、D、Ry、a及びcは前記と同じ)で示される構造単位であることが、耐熱性及び耐薬品性が優れる点で好ましい。
【0084】
上記式(1−1)の構造単位は、より具体的には
【0085】
【化11】

【0086】
等が好ましく挙げられ、なかでも特に、
【0087】
【化12】

【0088】
の構造単位が耐熱性及び耐薬品性においてより好ましい。
【0089】
本発明の含フッ素ポリマー(A)は、例えば、下記式(L’):
【化13】

【0090】
(式中、X、X、X、X、X、a、b及びcは、上記式(L)におけるものと同じである。Rf’は、下記式(Rf’):
−(R−O)−R’n’−CH2−x{(CXCR=CROH1−y{(CXCR=CR (Rf’)
(式中、R、R’、X、X、R、R、R、n、n’、m、x及びyは、上記式(Rf)におけるものと同じである。)で表される含フッ素炭化水素基である。)で表される構造単位L’を有する含フッ素ポリマー(以下、含フッ素ポリマー(A’)ともいう。)の側鎖末端のアルケニル基(−CR=CRで表される基)に、適当な触媒の存在下、ヒドロメタル化反応によって金属ヒドリド(H−M(Mは金属原子を表す。)で表される結合を有する化合物)を付加させた後、金属原子上にアルコキシル基を導入することにより得ることができる。
【0091】
構造単位L’としては、なかでも式(L1’):
【0092】
【化14】

【0093】
(式中、X、X、X、X、X、Rf’、a及びcは前記と同じ)で示される構造単位L1’が好ましく、構造単位L1’としては更に、式(L2’):
【0094】
【化15】

【0095】
(式中、Rf’は前記と同じ)で表される構造単位L2’、又は、式(L3’):
【0096】
【化16】

【0097】
(式中、Rf’は前記と同じ)で表される構造単位L3’が好ましい。
【0098】
上記構造単位L’からRf’を除いた部位の好ましい構造は、構造単位Lについて述べたのと同様である。
【0099】
上記式(Rf’)中の−(R−O)−R’n’−で表される部位の好ましい構造は、上記式(Rf)について述べたのと同様である。
【0100】
上記式(Rf’)中、−CR=CRで表される末端アルケニル基としては、下記式:
−CX=CX
(式中、XはH、F、CH又はCF;X及びXは同じか又は異なり、H又はF)であり、この基はヒドロメタル化反応における反応性が高く、加水分解性金属アルコキシド部位(上記式(Rf)においてYで表される部位)を容易に形成できるため、好ましいものである。
【0101】
末端アルケニル基の好ましい具体例としては、
【0102】
【化17】

【0103】
等が挙げられる。
【0104】
−CR=CRで表される末端アルケニル基としてはまた、R、及び、R又はRが置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基である場合には、Rと、R又はRとは、それらの基が結合している2つの炭素原子とともに環構造(シクロアルケン構造)を形成していてもよい。このような環構造としては、Rと、R又はRとが有する炭素原子の2〜10個と、上記2つの炭素原子(すなわち、Rが結合している炭素原子、及び、R又はRが結合している炭素原子)とから構成される環構造が好ましい。より好ましくは、Rと、R又はRとが有する炭素原子の2〜4個と、上記2つの炭素原子とから構成される環構造である。
【0105】
また、−(CXCR=CRで表される基としては、
−CHCX=CX
(式中、XはH、F、CH又はCF;X及びXは同じか又は異なり、H又はF)が好ましい。この基は特にヒドロメタル化反応における反応性がより高い点で好ましい。
【0106】
−(CXCR=CRで表される基の好ましい具体例としては、
【0107】
【化18】

【0108】
等が挙げられる。
【0109】
構造単位L2’を構成する単量体の好ましい具体例としては、
【0110】
【化19】

【0111】
(以上、nは0〜20の整数;Ry’は、上述した−CH2−x{(CXCR=CROH1−y{(CXCR=CRで表される基を表す。)等が挙げられる。
【0112】
より詳しくは、
【0113】
【化20】

【0114】
(以上、nは0〜20の整数;XはH、CH、F又はCF
等が挙げられる。
【0115】
構造単位L3’を構成する単量体として好ましい具体例としては、
【0116】
【化21】

【0117】
(以上、Ry’は前記と同じ;nは0〜20の整数)等が挙げられる。
【0118】
更に詳しくは、
【0119】
【化22】

【0120】
(以上、nは0〜20の整数;n’は1〜3の整数;XはH、CH、F又はCF)等が挙げられる。
【0121】
これらの構造単位L2’及びL3’以外に、含フッ素ポリマーの構造単位L’を構成する単量体の好ましい具体例としては、例えば、
【0122】
【化23】

【0123】
(以上、Rfは前述の例と同じ)
等が挙げられる。
【0124】
より具体的には、
【0125】
【化24】

【0126】
(以上、Ry’は前記と同じ)等が挙げられる。
【0127】
含フッ素ポリマー(A)は、更に、上述した構造単位L以外の構造単位Aを含んでいてもよい。構造単位Aは式(L)で示される構造単位Lを与える含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位であればよい。構造単位Aは任意成分であり、構造単位Lを与える含フッ素エチレン性単量体と共重合し得る単量体であれば特に限定されず、目的とする含フッ素ポリマーやその硬化物の用途、要求特性等に応じて適宜選択すればよい。
【0128】
構造単位Aとしては、例えば次の構造単位が例示できる。
【0129】
(A1)官能基を有する含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位
この構造単位A1は、含フッ素ポリマー及びその硬化物の基材への密着性や溶剤、特に汎用溶剤への溶解性を付与できる点で好ましく、そのほか架橋性等の機能を付与できる点で好ましい。
【0130】
官能基を有する好ましい含フッ素エチレン性単量体の構造単位A1は、式(A1):
【0131】
【化25】

【0132】
(式中、X11、X12及びX13は同じか又は異なりH又はF;X14はH、F、CF;hは0〜2の整数;iは0又は1;Rfは炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基又は炭素数2〜100のエーテル結合を有する2価の含フッ素アルキレン基;Zは−OH、−CHOH、−COOH、カルボン酸誘導体、−SOH、スルホン酸誘導体、エポキシ基、シアノ基、及び、−CHOSiR11(R11は、同一又は異なって、炭素数1〜10の炭化水素基、アリル基、又は、炭素数1〜10のアルコキシ基を表す。)よりなる群から選ばれる官能基)で示される構造単位であり、なかでも、
CH=CFCFORf−Z
(式中、Rf及びZは前記と同じ)から誘導される式(A1−1):
【0133】
【化26】

【0134】
(式中、Rf及びZは式(A1)と同じ)で示される構造単位が好ましい。
【0135】
より具体的には、
【0136】
【化27】

【0137】
(以上、Zは前記と同じ)等の含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位が好ましく挙げられる。
【0138】
また、
CF=CFORf−Z
(式中、Rf及びZは前記と同じ)から誘導される式(A1−2):
【0139】
【化28】

【0140】
(式中、Rf及びZは式(A1)と同じ)で示される構造単位も好ましく例示できる。
【0141】
より具体的には、
【0142】
【化29】

【0143】
(以上、Zは前記と同じ)等の単量体から誘導される構造単位が挙げられる。
【0144】
その他、官能基含有含フッ素エチレン性単量体としては、
CF=CFCF−O−Rf−Z、CF=CF−Rf−Z
CH=CH−Rf−Z、CH=CHO−Rf−Z
(以上、−Rf−は前記の−Rf−と同じ;Zは前記と同じ)等があげられ、より具体的には、
【0145】
【化30】

【0146】
(以上、Zは前記と同じ)等が挙げられる。
【0147】
(A2)官能基を含まない含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位
この構造単位A2は含フッ素ポリマー又はその硬化物の屈折率を低く維持できる点で、更に低屈折率化することができる点で好ましい。また単量体を選択することでポリマーの機械的特性やガラス転移温度等を調整でき、特に構造単位Lと共重合してガラス転移点を高くすることができ、好ましいものである。
【0148】
この含フッ素エチレン性単量体の構造単位(A2)としては、式(A2):
【0149】
【化31】

【0150】
(式中、X15、X16及びX18は同じか又は異なりH又はF;X17はH、F又はCF;h1、i1及びjは同じか又は異なり0又は1;ZはH、F、Cl又は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状パーフルオロアルキル基;Rfは炭素数1〜20の2価の含フッ素アルキレン基又は炭素数2〜100のエーテル結合を含む2価の含フッ素アルキレン基)で示されるものが好ましい。
【0151】
具体例としては、
【0152】
【化32】

【0153】
等の単量体から誘導される構造単位が好ましく挙げられる。
【0154】
特に、これらは硬化性含フッ素ポリマー又はその硬化物の屈折率を低く維持できる点
から、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン及び
ヘキサフルオロプロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体に由来する構
造単位であることが好ましい。
【0155】
(A3)フッ素を有する脂肪族環状の構造単位
この構造単位A3を導入すると、透明性を高くでき、また、高ガラス転移温度の含フッ素ポリマーが得られ、硬化物にさらなる高硬度化が期待できる点で好ましい。
【0156】
含フッ素脂肪族環状の構造単位A3としては式(A3):
【0157】
【化33】

【0158】
(式中、X19、X20、X23、X24、X25及びX26は同じか又は異なりH又はF;X21及びX22は同じか又は異なりH、F、Cl又はCF;Rfは炭素数1〜10の含フッ素アルキレン基又は炭素数2〜10のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基;n2は0〜3の整数;n1、n3、n4及びn5は同じか又は異なり0又は1の整数)で示されるものが好ましい。
【0159】
例えば、
【0160】
【化34】

【0161】
(式中、Rf、X21及びX22は前記と同じ)で示される構造単位が挙げられる。
【0162】
具体的には、
【0163】
【化35】

【0164】
(式中、X19、X20、X23及びX24は前記と同じ)等が挙げられる。
【0165】
そのほかの含フッ素脂肪族環状構造単位としては、例えば
【0166】
【化36】

【0167】
等が挙げられる。
【0168】
(A4)フッ素を含まないエチレン性単量体から誘導される構造単位
構造単位A4を導入することによって、汎用溶剤への溶解性が向上したり、添加剤、例えば光触媒や必要に応じて添加する硬化剤との相溶性を改善できる。
【0169】
非フッ素系エチレン性単量体の具体例としては、
αオレフィン類:
エチレン、プロピレン、ブテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等
ビニルエーテル系又はビニルエステル系単量体:
CH=CHOR、CH=CHOCOR10(R10:炭素数1〜20の炭化水素基)等
アリル系単量体:
CH=CHCHCl、CH=CHCHOH、CH=CHCHCOOH、CH=CHCHBr等
アリルエーテル系単量体:
CH=CHCHOR10(R10:炭素数1〜20の炭化水素基)、
CH=CHCHOCHCHCOOH、
【0170】
【化37】

【0171】
アクリル系又はメタクリル系単量体:
アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類のほか、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸エステル類等
等が挙げられる。
【0172】
これらの非フッ素系エチレン性単量体の水素原子を重水素原子に一部又は全部置換したものは透明性の点でより好ましい。
【0173】
(A5)脂環式単量体から誘導される構造単位
構造単位Lの共重合成分として、より好ましくは構造単位Lと前述の含フッ素エチレン性単量体又は非フッ素エチレン性単量体(前述のA3、A4)の構造単位に加えて、第3成分として脂環式単量体構造単位A5を導入してもよく、それによって高ガラス転移温度化や高硬度化が図られる。
【0174】
脂環式単量体A5の具体例としては、
【0175】
【化38】

【0176】
(mは0〜3の整数;A、B、C及びDは同じか又は異なり、H、F、Cl、COOH、CHOH又は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基等)で示されるノルボルネン誘導体、
【0177】
【化39】

【0178】
等の脂環式単量体や、これらに置換基を導入した誘導体等が挙げられる。
【0179】
含フッ素ポリマー(A)は、構造単位Lのみからなる重合体であってもよいし、構造単位Lと構造単位Aとからなる共重合体であってもよい。また、構造単位Lとして、構造単位L2のみを含んでもよいし、構造単位L3のみを含んでもよいし、構造単位L2及び構造単位L3の両方を含んでもよい。また、含フッ素ポリマー(A)は、構造単位L2、構造単位L3及び構造単位Aからなる共重合体であってもよい。
【0180】
含フッ素ポリマーが構造単位Lのみからなる場合、基材との密着耐久性を付与する機能、更には被膜の高硬度化を付与できるといった点で有利である。
【0181】
また含フッ素ポリマーが共重合体である場合、構造単位Lは、含フッ素ポリマー(A)を構成する全構造単位に対し0.1モル%以上であればよいが、硬化(架橋)により高硬度で耐摩耗性、耐擦傷性に優れ、耐薬品性、耐溶剤性に優れた硬化物を得るためには、2モル%以上、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上であることが好ましい。
【0182】
特に耐熱性、透明性、低吸水性に優れた硬化物の形成が必要な用途においては、10モル%以上、好ましくは20モル%以上、更には30モル%以上、特には40モル%以上含有することが好ましい。また、構造単位Lは、含フッ素ポリマー(A)を構成する全構造単位に対し100モル%未満であることが好ましい。
【0183】
含フッ素ポリマー(A)の分子量は、例えば数平均分子量において500〜1,000,000の範囲から選択できるが、好ましくは1,000〜500,000、特に2,000〜200,000の範囲から選ばれるものが好ましい。
【0184】
分子量が低すぎると、硬化後であっても機械的物性が不充分となりやすく、特に硬化物が脆く強度不足となりやすい。分子量が高すぎると、溶剤溶解性が悪くなったり、特に薄膜形成時に成膜性やレベリング性が悪くなりやすく、また含フッ素ポリマー(A)の貯蔵安定性も低くなりやすい。最も好ましくは数平均分子量が5,000〜100,000の範囲から選ばれるものである。
数平均分子量は、ポリスチレンに準拠して測定した値である。
【0185】
含フッ素ポリマー(A)は、例えば、構造単位Lからなり、必要に応じて、更に構造単位Aからなり、含フッ素ポリマーを構成する全構造単位に対して、構造単位Lを0.1〜100モル%、及び構造単位Aを0〜99.9モル%含む数平均分子量が500〜1,000,000である含フッ素ポリマーであってもよい。
【0186】
含フッ素ポリマー(A)としてはまた、構造単位Lからなり、必要に応じて、更に、構造単位A1及び構造単位A2からなり、含フッ素ポリマー(A)を構成する全構造単位に対して、構造単位Lが0.1〜90モル%、構造単位A1が0〜99.9モル%及び構造単位A2が0〜99.9モル%であり、かつ構造単位A1と構造単位A2との合計が、10〜99.9モル%であり、数平均分子量が500〜1,000,000であることも好ましい形態の一つである。
【0187】
含フッ素ポリマー(A)における構造単位Lの含有量は、含フッ素ポリマーを構成する全構造単位に対し0.1モル%以上であればよいが、硬化(架橋)により高硬度で耐摩耗性、耐擦傷性に優れ、耐薬品性、耐溶剤性に優れた硬化物を得るためには2モル%以上、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上とすることが好ましい。特に耐熱性、透明性、低吸水性に優れた硬化被膜の形成が必要な用途においては、10モル%以上、好ましくは20モル%以上、更には50モル%以上含有することが好ましい。上限は100モル%未満である。
【0188】
構造単位A1及びA2の含有量はいずれも99.9モル%以下である。また、A1とA2との合計モル%は10〜99.9モル%とする。10モル%未満の場合は屈折率が低く維持できず、更に硬化後の被膜硬度が低くなる傾向となり好ましくない。A1とA2とのより好ましい合計モル%は20モル%以上、更には30モル%以上であり、60モル%以下、更には50モル%以下である。また、90モル%以下であってもよいし、80モル%以下であってもよいし、50モル%以下であってもよい。
【0189】
含フッ素ポリマー(A)において、構造単位L〔構造単位L1、L2及びL3)と、構造単位A(A1及びA2)との組合せや組成比率は、上記の例示から、目的とする用途、物性(特にガラス転移温度、硬度等)、機能(透明性)等によって種々選択すればよい。
【0190】
含フッ素ポリマー(A)の分子量は、例えば数平均分子量において500〜1,00
0,000の範囲から選択できるが、好ましくは1,000〜500,000、特に2,
000〜200,000の範囲から選ばれるものが好ましい。
【0191】
分子量が低すぎると、硬化後であっても機械的物性が不充分となりやすく、特に硬化物や硬化膜が脆く強度不足となりやすい。分子量が高すぎると、溶剤溶解性が悪くなったり、特に薄膜形成時に成膜性やレベリング性が悪くなりやすく、また含フッ素ポリマーの貯蔵安定性も不安定と低くなりやすい。最も好ましくは数平均分子量が5,000から100,000の範囲から選ばれるものである。
【0192】
含フッ素ポリマー(A)は、汎用溶剤に可溶であることが好ましく、例えばケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤、アルコール系溶剤、芳香族系溶剤の少なくとも1種に可溶であるか、又は、汎用溶剤を少なくとも1種含む混合溶剤に可溶であることが好ましい。
【0193】
汎用溶剤に可溶であることは、特に、被膜を形成するプロセスにおいて3μm以下、例えば約0.1μm程度の薄膜形成が必要な際、成膜性、均質性に優れるため好ましく、生産性の面でも有利である。
【0194】
上記含フッ素ポリマー(A)は、
(1)官能基Rfを有する単量体を予め合成し、重合して得る方法
(2)一旦、他の官能基を有する重合体を合成し、その重合体において高分子反応により官能基変換し、官能基Rfを導入する方法
のいずれの方法も採用できる。
【0195】
(1)の方法により含フッ素ポリマー(A)を合成する場合、下記式:
【0196】
【化40】

【0197】
(式中、X及びXは同じか又は異なり、H又はF;XはH、F、CH又はCF;X及びXは夫々同じか又は異なり、H、F又はCF;Rfは上記と同じである。;aは0〜3の整数;b及びcは同じか又は異なり、0又は1)で示される単量体を重合することにより、含フッ素ポリマー(A)を得ることができる。上記の単量体において、X、X、X、X、X、a、b、c、及びRfにおける好ましい形態は上記したものと同じである。
【0198】
重合方法としては、ラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法等が例示でき、加水分解性金属アルコキシド部位を有する重合体を得るために例示した単量体は組成や分子量等の品質のコントロールがしやすい点や工業化しやすい点からラジカル重合法が特に好ましい。
【0199】
(2)の方法は、単量体の重合性を損なうことなく、重合体の側鎖に官能基Rfを導入することができる点で好ましい方法である。
【0200】
(2)の方法によって本発明の含フッ素ポリマー(A)を合成する場合、例えば、下記式:
【0201】
【化41】

【0202】
(式中、X、X、X、X、X、R、R’、a、b、c、n及びn’は、上記式(L)におけるものと同じである。Xは、Cl又はFを表す。)で表される、酸ハライド部位を有する単量体を重合して得られる重合体の側鎖末端の酸ハライド部位を変性することにより、官能基Rfを導入することが好ましい。より具体的には、該酸ハライド部位を変性し、末端に1〜3個のアルケニル基を導入することにより含フッ素ポリマー(A’)を得た後、該アルケニル基をヒドロメタル化することにより含フッ素ポリマー(A)を得ることが好ましい。
上記酸ハライド部位を有する単量体の重合方法としては、(1)の方法で述べた重合方法と同様の方法を採用することができる。
【0203】
以下に、上記酸ハライド部位を変性してアルケニル基を導入することにより上記式(L’)で表される構造単位を有する重合体を得た後、該アルケニル基をヒドロメタル化する方法について詳述する。
【0204】
上記酸ハライド部位を有する単量体に由来する構造単位を(C−0)とすると、下記反応式に示すように、構造単位(C−0)とアルコールROHとの反応により、エステル化物(C−1)が得られる。
【0205】
【化42】

【0206】
ただし、上記式中、L’は、下記式(L’):
【0207】
【化43】

【0208】
(式中、X、X、X、X、X、R、R’、a、b、c、n及びn’は、上記式(L)におけるものと同じである。)で表される構造単位であり、Xは、ハロゲン原子である。Rは、炭素数1〜10の、置換基を有してもよい炭化水素基である。上記ハロゲン原子としては、Cl又はFが好ましい。
【0209】
上記エステル化物(C−1)から、構造単位L’中のRf’におけるx、yの各組み合わせに対応する含フッ素ポリマー(A’)を合成することができる。
【0210】
(x,y)=(0,1)の含フッ素ポリマー(A’)
下記反応式に示すように、上記エステル化物(C−1)の還元反応によりアルコール(C−2)を得た後、有機ハロゲン化物Y”−X(Y”、Xは後述)に対する置換反応により、末端にアルケニル基が1個導入された、(x,y)=(0,1)に対応する含フッ素ポリマー(A’)(ポリマー(a’))が得られる。
【0211】
【化44】

【0212】
ただし、式中、L’及びRは、上述したものと同じである。Y”は、(CXCR=CR(X、X、R、R、R及びmは、上述したものと同じである。)で表される基であり、Xは、ハロゲン原子である。
【0213】
エステル化物(C−1)の還元反応に用いられる還元剤としては、水素化アルミニウムリチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム等を挙げることができ、これらの還元剤を用いる際に通常採用される反応条件下で反応させればよい。
【0214】
上記置換反応は、アルカリ性条件下で、アルコール(C−2)と有機ハロゲン化物Y”−Xとを反応させる。上記ハロゲン原子としては、Cl又はBrが好ましい。
【0215】
(x,y)=(0,1)に対応する含フッ素ポリマー(A’)(ポリマー(a’))を合成する別の方法としては、例えば、次の方法が挙げられる。すなわち、下記一般式:
【0216】
【化45】

【0217】
(式中、X、X、X、X、X、R、R’、a、b、c、n及びn’は、上記式(L)におけるものと同じである。)で表される、水酸基を有する単量体を重合することにより、上記アルコール(C−2)に相当する、水酸基を有する含フッ素ポリマーを得た後、該水酸基を有する含フッ素ポリマーを上記有機ハロゲン化物Y”−Xと反応させる方法が挙げられる。
【0218】
(x,y)=(1,0)、(1,1)の含フッ素ポリマー(A’)
下記反応式に示すように、上記エステル化物(C−1)の還元反応によりアルデヒド(C−3)を得た後、Y”−MgX(Xは後述)を用いたGrignard反応により、Y”基が1個導入された、(x,y)=(1,0)に対応する含フッ素ポリマー(A’)(ポリマー(b’))が得られる。
更に、ポリマー(b’)を有機ハロゲン化物Y”−X(Xは後述)と反応させることにより、Y”基が2個導入された、(x,y)=(1,1)に対応する含フッ素ポリマー(A’)(ポリマー(c’))が得られる。
【0219】
【化46】

【0220】
ただし、式中、L’、R及びY”は、上述したものと同じであり、X及びXは、夫々ハロゲン原子である。
【0221】
上記エステル化物(C−1)からアルデヒド(C−3)を得る還元反応において用いられる還元剤としては、水素化ジイソブチルアルミニウム等が挙げられ、通常採用される反応条件下で反応させることができる。なお、上記反応式では、エステル化物(C−1)から直接アルデヒド(C−3)を得る経路を示したが、例えば、エステル化物(C−1)を一旦アルコールまで還元した後、クロロクロム酸ピリジニウム等を用いた酸化反応によりアルデヒド(C−3)を得てもよい。
上記Grignard反応は、通常採用される反応条件下で行えばよい。Grignard試薬Y”−MgXにおけるXとしては、I、Br及びClが好ましく、I及びBrがより好ましい。
上記置換反応は、アルコール(C−2)と有機ハロゲン化物Y”−Xとの反応と同様にして行うことができる。
【0222】
(x,y)=(2,0)、(2,1)の含フッ素ポリマー(A’)
下記反応式に示すように、上記エステル化物(C−1)1当量に対し、2当量のY”−MgX(Xは後述)を用いたGrignard反応により、Y”基が2個導入された、(x,y)=(2,0)に対応する含フッ素ポリマー(A’)(ポリマー(d’))が得られる。
更に、ポリマー(d’)を有機ハロゲン化物Y”−X(Xは後述)と反応させることにより、Y”基が3個導入された、(x,y)=(2,1)に対応する含フッ素ポリマー(A’)(ポリマー(e’))が得られる。
【0223】
【化47】

【0224】
ただし、式中、L’、R及びY”は、上述したものと同じであり、X及びXは、夫々ハロゲン原子である。
【0225】
Grignard反応、置換反応ともに、上述したのと同様に行うことができる。
【0226】
以上のようにして得られた含フッ素ポリマー(A’)は、更に、下記反応式に示すように、触媒の存在下、ヒドロメタル化反応に供することにより、側鎖末端に加水分解性金属アルコキシド部位を導入することができる。
【0227】
【化48】

【0228】
ただし、式中、L’は、下記式(L’):
【0229】
【化49】

【0230】
(式中、X、X、X、X、X、R、R’、a、b、c、n及びn’は、上記式(L)におけるものと同じである。)で表される構造単位であり、X、X、R、R、R、及びmは、上述したものと同じである。Mは金属原子である。Lは、同一又は異なり、配位子を表す。Rは、炭素数1〜50の、置換基を有してもよい有機基である。x1は、(金属原子Mの価数)−1であり、x2は、1以上、x1以下の整数である。
【0231】
上記触媒としては、例えば、HPtCl(Speier触媒)、HPtClとビニルシロキサンとから調製されるKarstedt触媒、PtCl(COD)等が挙げられる。
上記反応式中のH−MLx1は、金属ヒドリドである。Mとしては、ケイ素が特に好ましい。H−MLx1としては、例えば、トリクロロシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、ジメトキシプロポキシシラン等が好適に用いられる。
アルコールROHとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等が好適である。
なお、配位子Lの1個以上がアルコキシル基である場合には、その後のアルコールROHとの反応は省略することもできる。
【0232】
ヒドロメタル化反応の詳細については、例えば、国際公開第2006/107082号パンフレット、国際公開第2006/107083号パンフレットに開示されている。
【0233】
含フッ素ポリマー(A)は、有機ケイ素化合物(B)とともに硬化性樹脂組成物を構成してもよい。含フッ素ポリマー(A)は、上記構成を有しているため、化合物(B)から形成されるSiOxと好適に架橋することができ、形成される硬化物を可撓性に優れたものとすることができる。また、形成される硬化物は、SiOxからなるものであるため、耐熱性及び透明性に優れる。
有機ケイ素化合物(B)は、炭素とケイ素とを含む化合物である。上記有機ケイ素化合物(B)は、常温(例えば、25℃)で液体であることが好ましい。
【0234】
上記有機ケイ素化合物(B)としては、Si−H結合を有するSi−H化合物;アミノシラン化合物、シラザン、シリルアセトアミド、シリルイミダゾール等のSi−N結合を有するSi−N化合物;モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、シロキサン、シリルエステル、シラノール等のSi−O結合を有するSi−O化合物;モノクロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、テトラクロロシラン等のSi−Cl結合を有するSi−Cl化合物等のハロゲノシラン、Si−(C)化合物、Si−Si結合を有するSi−Si化合物、ビニルシラン、アリルシラン、エチニルシラン等が挙げられる。すなわち、有機ケイ素化合物(B)は、Si−H化合物、Si−N化合物、ハロゲノシラン、Si−(C)化合物、Si−Si化合物、ビニルシラン、アリルシラン、及びエチニルシランからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。上記有機ケイ素化合物としては、Siに、水素、酸素及びハロゲンからなる群より選択される少なくとも1種の原子が結合した化合物がより好ましい。
以下に、上記化合物の具体例を示す。
【0235】
〔Si−H化合物〕
【0236】
【化50】

【0237】
【化51】

【0238】
〔Si−N化合物〕
【0239】
【化52】

【0240】
【化53】

【0241】
【化54】

【0242】
【化55】

【0243】
【化56】

【0244】
〔Si−O化合物〕
【0245】
【化57】

【0246】
【化58】

【0247】
【化59】

【0248】
【化60】

【0249】
【化61】

【0250】
【化62】

【0251】
【化63】

【0252】
【化64】

【0253】
【化65】

【0254】
【化66】

【0255】
【化67】

【0256】
【化68】

【0257】
〔ハロゲノシラン〕
Si−Cl化合物:
【0258】
【化69】

【0259】
【化70】

【0260】
【化71】

【0261】
【化72】

SiCl
【0262】
Si−Cl化合物以外のハロゲノシラン:
【0263】
【化73】

【0264】
〔Si−(C)化合物〕
【0265】
【化74】

【0266】
【化75】

【0267】
【化76】

【0268】
【化77】

【0269】
【化78】

【0270】
【化79】

【0271】
〔Si−Si化合物〕
【0272】
【化80】

【0273】
〔ビニルシラン、アリルシラン、及びエチニルシラン〕
【0274】
【化81】

【0275】
【化82】

【0276】
【化83】

【0277】
上記有機ケイ素化合物(B)は、下記式(2):
{Si(R(R(R(R(R (2)
(式中、R、R、R及びRは、同一又は異なり、水素、ハロゲン、炭素数1〜10のアルコキシル基、炭素数1〜10のアミノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数3〜10のアリル基、又は炭素数3〜10のグリシジル基である。Rは、同一又は異なり、−O−、−NH−、−C≡C−、又は、シラン結合である。s、t、u及びvは、同一又は異なり0又は1であり、wは0〜4の整数であり、nは1〜20である。nが1である場合、s+t+u+vは4であり、wは0である。nが2〜20である場合、s+t+u+vは、同一又は異なり0〜4であり、wは、同一又は異なり0〜4であり、wが1以上の整数である場合、少なくとも2個のSiはRを介して、直鎖、梯子型、環状、又は複環状に結合している。)で表される化合物(B1)であることがより好ましい。R、R、R、及びRは、Siに結合している1価の基である。Rは、2個のSiに結合している2価の基である。
【0278】
式(2)中、R、R、R及びRは、同一又は異なり、少なくとも1つは、水素、ハロゲン、炭素数1〜10のアルコキシ基、又は炭素数1〜10のアミノ基であり、それ以外は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数3〜10のアリル基、又は炭素数3〜10のグリシジル基であることが好ましい。nが2〜20である場合、s+t+u+vは、同一又は異なり、1〜3であり、wは1〜3であることが好ましい。
【0279】
式(2)において、R、R、R及びRは、同一又は異なり、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は、炭素数1〜6のアミノ基であることが好ましく、更に好ましくは、炭素数1〜4のアルコキシ基である。
【0280】
上記R、R、R及びRにおいて、アルキル基の炭素数は、1〜5であることが好ましい。上記アルキル基は鎖状でも、環状でも、分岐していてもよい。また、水素原子がフッ素原子等に置換されていてもよい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられるが、例えば、R、R、R又はRとしては、それぞれ、メチル基、エチル基、プロピル基、又はイソプロピル基であることが好ましい。より好ましくは、メチル基、エチル基である。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、又はジメチルフェニル基であることが好ましい。
ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素が好ましく、特に塩素が好ましい。
【0281】
上記R、R、R及びRにおいて、アルコキシ基の炭素数は、1〜5であることが好ましい。上記アルコキシ基は鎖状でも、環状でも、分岐していてもよい。また、水素原子がフッ素原子等に置換されていてもよい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピロキシ基、又はブトキシ基が好ましく、より好ましくは、メトキシ基、又はエトキシ基である。
【0282】
は、同一又は異なり、−O−、−NH−、−C≡C−、又は、シラン結合である。Rとしては、−O−、−NH−、又は、−C≡C−が好ましい。Rは、2個のSiに結合している2価の基であり、Rによって2以上のケイ素原子がRを介して、直鎖、梯子型、環状、又は複環状に結合することができる。nが2以上の整数である場合、ケイ素原子同士で結合していてもよい。化合物(B1)の具体例としては、上述したSi−H化合物、Si−N化合物、ハロゲノシラン、Si−(C)化合物、Si−Si化合物、ビニルシラン、アリルシラン、エチニルシラン等のSiを1個又は2個以上含む化合物が挙げられる。
【0283】
化合物(B1)としては、中でも、テトラアルコキシシランであることが好ましく、上記式(2)において、nは1であり、R、R、R及びRは、同一又は異なり、炭素数1〜10のアルコキシ基であることがより好ましい。上記アルコキシ基は鎖状でも、環状でも、分岐していてもよい。また、水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい。上記アルコキシ基の炭素数は、1〜8であることがより好ましく、1〜6であることが更に好ましく、1〜4であることが特に好ましい。
【0284】
化合物(B1)としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン等を挙げることができ、これらの中でもテトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランからなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましく、より好ましくは、入手が容易で低価格でありガラスに近い屈折率の点でテトラエトキシシラン(TEOS)である。
【0285】
架橋性を向上させる観点からは、上記化合物(B1)は、炭素数1〜5のアリル基、炭素数1〜5のグリシジル基、アクリル基、又はメタクリル基を有することも好ましい。すなわち、化合物(B1)において、R、R、R及びRの少なくとも1つが、炭素数1〜5のアリル基、炭素数1〜5のグリシジル基、アクリル基、又はメタクリル基であることが好ましい。
【0286】
本発明の硬化性樹脂組成物は、化合物(B)と含フッ素ポリマー(A)との合計質量に対して、化合物(B)が50質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、化合物(B)が60質量%以上であり、更に好ましくは、80質量%以上である。化合物(B)が少なすぎると、耐熱性や透明性に劣るおそれがある。また、化合物(B)と含フッ素ポリマー(A)との合計質量に対して、含フッ素ポリマー(A)は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。含フッ素ポリマー(A)が少なすぎると、誘電率が高くなり可撓性に劣るおそれがある。
【0287】
硬化性樹脂組成物は、化合物(B)及び含フッ素ポリマー(A)以外に、有機溶剤を含むことが好ましい。有機溶剤は、上記含フッ素ポリマー(A)を溶解可能なものであることが好ましい。
【0288】
有機溶剤としては、例えばメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶剤;ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル−2−ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、酢酸ブチル、酢酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル等のエステル系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のプロピレングリコール系溶剤;2−ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルアミノケトン、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類あるいはこれらの2種以上の混合溶剤等が挙げられる。
【0289】
また更に、含フッ素ポリマー(A)の溶解性を向上させるために、必要に応じてフッ素系の溶剤を用いてもよい。
【0290】
フッ素系の溶剤としては、例えばCHCClF(HCFC−141b)、CFCFCHCl/CClFCFCHClF混合物(HCFC−225)、パーフルオロヘキサン、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、メトキシ−ノナフルオロブタン、1,3−ビストリフルオロメチルベンゼン等のほか、
【0291】
【化84】

【0292】
等のフッ素系アルコール類;
ベンゾトリフルオライド、パーフルオロベンゼン、パーフルオロ(トリブチルアミン)、ClCFCFClCFCFCl等が挙げられる。
【0293】
これらフッ素系溶剤は単独でも、またフッ素系溶剤同士、非フッ素系とフッ素系の1種以上との混合溶剤として用いてもよい。
【0294】
これらのなかでも、ケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤、アルコール系溶剤、及び芳香族系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の溶剤が好ましく、より具体的には、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、2−ヘプタノン(MAK)及び乳酸エチルからなる群より選択される少なくとも1種の溶剤が、塗装性、塗布の生産性等の面で好ましい。
【0295】
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、硬化開始剤を含むことが好ましい。
【0296】
本発明の硬化性樹脂組成物における硬化開始剤としては、光ラジカル発生剤、熱ラジカル発生剤等が挙げられる。例えば、活性エネルギー線硬化開始剤のほか、加熱硬化や常温2液硬化系の硬化剤が使用できる。比較的低温で硬化反応が可能である点からは、活性エネルギー線硬化開始剤が好ましい。上記Yの種類(ラジカル反応性か、カチオン(酸)反応性か)、使用する活性エネルギー線の種類(波長域等)と照射強度等によって適宜選択される。
【0297】
活性エネルギー線硬化開始剤は、例えば350nm以下の波長領域の電磁波、つまり紫外線、電子線、X線、γ線等の活性エネルギー線を照射することによって初めてラジカルやカチオン(酸)等を発生し、含フッ素ポリマー(A)の架橋基の硬化(架橋反応)を開始させる触媒として働くものであり、通常、紫外線でラジカルやカチオン(酸)を発生させるもの、特にラジカルを発生するものを使用する。
【0298】
紫外線領域の活性エネルギー線を用いて硬化させる場合、硬化開始剤としては、例えば次のものが例示できる。
【0299】
アセトフェノン系
アセトフェノン、クロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、α−アミノアセトフェノン等
【0300】
ベンゾイン系
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール等
【0301】
ベンゾフェノン系
ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシ−プロピルベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、ミヒラーケトン等
【0302】
チオキサンソン類
チオキサンソン、クロロチオキサンソン、メチルチオキサンソン、ジエチルチオキサンソン、ジメチルチオキサンソン等
【0303】
その他
ベンジル、α−アシルオキシムエステル、アシルホスフィンオキサイド、グリオキシエステル、3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、アンスラキノン等
【0304】
また、必要に応じてアミン類、スルホン類、スルフィン類等の光開始助剤を添加してもよい。
【0305】
また、カチオン(酸)反応性の開始剤(光酸発生剤)としては、次のものが例示できる。
【0306】
オニウム塩
ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩等
【0307】
スルホン化合物
β−ケトエステル、β−スルホニルスルホンとこれらのα−ジアゾ化合物等
【0308】
スルホン酸エステル類
アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネート等
【0309】
その他
スルホンイミド化合物類、ジアゾメタン化合物類等
【0310】
本発明の硬化性樹脂組成物において、硬化開始剤の添加量は、含フッ素ポリマー(A)中の架橋基の含有量、化合物(B)が架橋性基を有する場合には、その架橋性基の含有量、更には用いる硬化開始剤、活性エネルギー線の種類や、照射エネルギー量(強さと時間等)によって適宜選択されるが、例えば、硬化開始剤は、化合物(B)及び含フッ素ポリマー(A)の合計100質量部に対して0.01〜30質量部であることが好ましい。より好ましくは、0.05〜20質量部であり、更に好ましくは、0.1〜10質量部である。
【0311】
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化剤を含むことも好ましい。
【0312】
硬化剤としては、炭素−炭素不飽和結合を1つ以上有しかつラジカル又は酸で重合できるものが好ましく、具体的にはアクリル系モノマー等のラジカル重合性の単量体、ビニルエーテル系モノマー等のカチオン重合性の単量体が挙げられる。これら単量体は、炭素−炭素二重結合を1つ有する単官能であっても炭素−炭素二重結合を2つ以上有する多官能の単量体であってもよい。
【0313】
これらの炭素−炭素不飽和結合を有するいわゆる硬化剤は、本発明の組成物中の活性エネルギー線硬化開始剤と光等の活性エネルギー線との反応で生じるラジカルやカチオンで反応し、架橋することができるものである。
【0314】
単官能のアクリル系単量体としては、アクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸、メタクリル酸エステル類、α−フルオロアクリル酸、α−フルオロアクリル酸エステル類、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸エステル類のほか、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等を有する(メタ)アクリル酸エステル類等が例示される。
なかでも硬化物の屈折率を低く維持するために、フルオロアルキル基を有するアクリレート系単量体が好ましく、例えば一般式:
【0315】
【化85】

(XはH、CH又はF、Rfは炭素数2〜40の含フッ素アルキル基又は炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表わされる化合物が好ましい。
具体的には、
【0316】
【化86】

等が挙げられる。
多官能アクリル系単量体としては、ジオール、トリオール、テトラオール等の多価アルコール類のヒドロキシル基をアクリレート基、メタアクリレート基、α−フルオロアクリレート基に置き換えた化合物が一般的に知られている。
具体的には、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等のそれぞれの多価アルコール類の2個以上のヒドロキシル基がアクリレート基、メタクリレート基、α−フルオロアクリレート基のいずれかに置き換えられた化合物が挙げられる。
また、含フッ素アルキル基、エーテル結合を含む含フッ素アルキル基、含フッ素アルキレン基又はエーテル結合を含む含フッ素アルキレン基を有する多価アルコールの2個以上のヒドロキシル基をアクリレート基、メタアクリレート基、α−フルオロアクリレート基に置き換えた多官能アクリル系単量体も利用でき、特に硬化物の屈折率を低く維持できる点で好ましい。
具体例としては、
【0317】
【化87】

等の一般式で示される含フッ素多価アルコール類の2個以上のヒドロキシル基をアクリレート基、メタアクリレート基又はα−フルオロアクリレート基に置き換えた構造のものが好ましく挙げられる。
また、これら例示の単官能、多官能アクリル系単量体を硬化剤として本発明の組成物に用いる場合、なかでも特にα−フルオロアクリレート化合物が硬化反応性が良好な点で好ましい。
【0318】
本発明の組成物において、活性エネルギー線硬化開始剤の添加量は、含フッ素ポリマー(A)中の炭素−炭素二重結合の含有量、上記硬化剤の使用の有無や硬化剤の使用量によって、更には用いる硬化開始剤、活性エネルギー線の種類や、照射エネルギー量(強さと時間等)によって適宜選択されるが、硬化剤を使用しない場合では、含フッ素ポリマー(A)100重量部に対して0.01〜30重量部、更には0.05〜20重量部、最も好ましくは、0.1〜10重量部である。
詳しくは、含フッ素ポリマー(A)中に含まれる炭素−炭素二重結合の含有量(モル数)に対し、0.05〜50モル%、好ましくは0.1〜20モル%、最も好ましくは、0.5〜10モル%である。
【0319】
硬化剤を使用する場合は、含フッ素ポリマー(A)中に含まれる炭素−炭素二重結合の含有量(モル数)と硬化剤の炭素−炭素不飽和結合のモル数の合計モル数に対して0.05〜50モル%、好ましくは0.1〜20モル%、最も好ましくは0.5〜10モル%である。
【0320】
硬化剤を使用する場合、硬化剤の使用量は目的とする硬度や屈折率、硬化剤の種類、使用する硬化性含フッ素ポリマーの硬化性基の含有量等によって適宜選択され、望ましくは硬化性含フッ素ポリマーに対して、1〜80重量%、好ましくは5〜70重量%、より好ましくは10〜50重量%である。硬化剤の添加量が多すぎると屈折率が高くなる傾向にあり、好ましくない。
【0321】
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、中空微粒子を含んでもよい。本発明の硬化性樹脂組成物が屈折率の低い中空微粒子を含むことによって、屈折率を低下させることができる。
【0322】
上記中空微粒子は、屈折率を低下させるために配合される成分である。上記中空微粒子の屈折率の上限は、例えば、1.48である。中空微粒子は、屈折率が1.45以下であることが好ましく、1.40以下であることがより好ましい。屈折率が高すぎると、CCDモジュールの封止剤等、用途によっては使用が困難となる場合がある。上記範囲であることにより、本発明の硬化性樹脂組成物から得られる薄膜の屈折率を低くすることができる。屈折率の下限は、例えば、1.15である。中空微粒子の屈折率は、特許第3761189号公報や特許第4046921号公報記載の方法で測定することができる。
【0323】
中空微粒子は、気孔率が1〜60%であることが好ましく、2〜40%であることがより好ましい。中空微粒子の気孔率は、上記の方法で求めた屈折率を用いて、例えばシリカの中空微粒子の場合であれば、純粋なSiOの屈折率(1.45)との差から、空気に換算して含まれている空隙を算出して求めることができる。
【0324】
中空微粒子は、本発明の硬化性樹脂組成物から得られる封止部材(保護層)や反射防止膜の光学特性が特に良好な点から、1〜150nm、更には10〜80nmであることが好ましい。
【0325】
中空微粒子としては、中空シリカ微粒子であることが好ましい。中空シリカ微粒子は、特開2002−277604号公報、特開2002−265866号公報等で使用されている公知の材料である。
【0326】
具体的には、特開2004−203683号公報、特開2006−021938号公報等に記載されている中空シリカ微粒子が使用できる。好ましいものとして、日揮触媒化成工業(株)製のスルーリアが例示できる。
【0327】
中空シリカ微粒子は、含フッ素ポリマー(A)100質量部に対し、1〜1000質量部、更には3〜250質量部であることが好ましく、特に5〜150質量部であることが好ましい。この範囲で配合するとき、本発明の硬化性樹脂組成物から得られる薄膜の屈折率を低くすることができ、CCDモジュールの封止剤に好適である。また、耐熱性及び耐薬品性等の特性が特に優れたものになる。
【0328】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上述したものの他に、必要に応じて種々の添加剤を含むものであってもよい。
【0329】
添加剤としては、例えばシランカップリング剤、可塑剤、変色防止剤、酸化防止剤、無機充填剤、レベリング剤、粘度調整剤、光安定剤、水分吸収剤、顔料、染料、補強剤等が挙げられる。
【0330】
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化物の硬度を高め、また屈折率の制御を行う目的で無機化合物の微粒子又は超微粒子を含むものであってもよい。
【0331】
無機化合物微粒子としては特に限定されないが、屈折率が1.5以下の化合物が好ましい。具体的にはフッ化マグネシウム(屈折率1.38)、酸化珪素(屈折率1.46)、フッ化アルミニウム(屈折率1.33〜1.39)、フッ化カルシウム(屈折率1.44)、フッ化リチウム(屈折率1.36〜1.37)、フッ化ナトリウム(屈折率1.32〜1.34)、フッ化トリウム(屈折率1.45〜1.50)等の微粒子が望ましい。微粒子の粒径については、低屈折率材料の透明性を確保するために可視光の波長に比べて充分に小さいことが望ましい。具体的には300nm以下、特に100nm以下が好ましい。
【0332】
無機化合物の微粒子又は超微粒子によって、空隙を形成することが可能である。すなわち、本発明の組成物に無機化合物の微粒子又は超微粒子を配合させた被膜は、この空隙を利用して被膜単体の屈折率よりも更に低屈折率にすることが可能である。
【0333】
無機化合物微粒子を使用する際は、組成物中での分散安定性、低屈折率材料中での密着性等を低下させないために、予め有機分散媒中に分散した有機ゾルの形態で使用するのが望ましい。更に、組成物中において、無機化合物微粒子の分散安定性、低屈折率材料中での密着性等を向上させるために、予め無機微粒子化合物の表面を各種カップリング剤等を用いて修飾することができる。各種カップリング剤としては、例えば有機置換された珪素化合物;アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、アンチモン又はこれらの混合物等の金属アルコキシド;有機酸の塩;配位性化合物と結合した配位化合物等が挙げられる。
【0334】
本発明の硬化性樹脂組成物は、有機溶剤に対して含フッ素ポリマー(A)又は添加物がディスパージョン状のものでも、溶液状のものでもよいが、均一な薄膜を形成する観点からは、比較的低温で成膜が可能となる点で、均一な溶液状であることが好ましい。
【0335】
本発明の硬化性樹脂組成物は、形成された膜が0.1〜5μmとなるために相応の粘度、すなわち1〜10cp程度であることが好ましい。その為に全質量に対して、化合物(B)及び含フッ素ポリマー(A)の質量の合計が、10〜100質量%であることが好ましい。より好ましくは、20〜50質量%である。
また、本発明の硬化性樹脂組成物を光学素子封止用に用いる場合、キャスティング成形やポッティング成形に使用するために相応の粘度、例えば、室温で100〜10000mPa・sであることが好ましい。そのためには、本発明の硬化性樹脂組成物の全質量に対して、化合物(B)及び含フッ素ポリマー(A)の質量の合計が、10〜100質量%であることが好ましい。より好ましくは、20〜50質量%である。
上記粘度は、東海八神(株)製のコーンプレート型粘度計CV−1Eにおいて、CP−100コーンを使用し、100rpmの条件で25℃で測定し、60秒間で安定した値を採用する。
【0336】
本発明の硬化性樹脂組成物は、例えば、液体の化合物(B)に、含フッ素ポリマー(A)、並びに、必要に応じて硬化開始剤、架橋剤、その他の添加剤を添加して、必要に応じて撹拌して混合することにより、製造することができる。
【0337】
本発明の硬化性樹脂組成物は、架橋、例えば熱架橋又は光架橋させることによって、硬化物を形成することが可能である。硬化物は、本発明の硬化性樹脂組成物を基材に塗布し、乾燥し、そののち、焼成することで架橋させてもよいし、紫外線、電子線又は放射線等の活性エネルギー線を照射することによって光硬化させて形成してもよい。本発明は、上記硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物でもある。
【0338】
上記硬化物は、屈折率が1.40以下であることが好ましい。例えば、本発明の硬化性樹脂組成物からは、膜厚が1〜10μmであり、屈折率が1.40以下であり、ヘイズ値が5%以下である薄膜を製造することできる。しかも、このような低い屈折率及びヘイズ値は、125℃で1000時間の耐熱性試験、85℃かつ湿度85%で500時間の耐熱性試験、265℃で10分間の耐熱性試験を実施した後でも変動することがない。更に、1000ルックスに一時間暴露する耐光性試験後でも変動しない。
【0339】
本発明の硬化性樹脂組成物は、得られる硬化物を種々の形態で各種の用途に利用できる。
【0340】
例えば硬化膜を形成して各種用途に利用できる。膜を形成する方法としては用途に応じた適切な公知の方法を採用することができる。例えば上記組成物を基材に塗布し、乾燥し、そののち必要に応じて焼成する方法等が挙げられる。塗布方法として具体的には、例えば、ロールコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、フローコート法、バーコート法、スプレーコート法、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法、スリットコート法などが採用でき、基材の種類、形状、生産性、膜厚のコントロール性などを考慮して選択できる。薄膜トランジスタのゲート絶縁膜を形成する場合、スリットコート法により上記組成物を塗布することが好ましい。
【0341】
本発明の硬化性樹脂組成物は、例えば、各種成形品の成形材料として特に有用である。成形方法としては、押出成形、射出成形、圧縮成形、ブロー成形、トランスファー成形、光造形、ナノインプリント、真空成形等が採用できる。
【0342】
本発明の硬化性樹脂組成物は、光学素子封止用であることが好ましい。すなわち、本発明の硬化性樹脂組成物は、光学素子に使用される封止剤として好適に使用できる。
【0343】
本発明の硬化性樹脂組成物は、封止剤であることが好ましい。例えば、フォトトランジスター、フォトダイオード、CCD等の受光素子、LED、有機EL等の発光素子、EPROM等の半導体素子(光半導体素子)等に用いられる封止剤であることが好ましい。上記封止剤を硬化させて封止部材(硬化物)を得ることができる。本発明の硬化物は、光学素子用の封止部材であることが好ましく、特に、受光素子用又は発光素子用の封止部材であることが好ましい。
【0344】
図1は、CCDモジュールの構造の一例を示す断面模式図である。図1に示す構造のCCDモジュールは、CCD素子部12に到達する光が封止剤層13を通過することになるため、該封止剤層13には、低屈折率であり、透明性が高いことが要求される。本発明の硬化性樹脂組成物は、低屈折率であり、かつ透明性が高い薄膜を形成することができるため、上記CCDモジュールに適用する封止剤形成用の封止材料として好適である。
【0345】
図2(a)〜(f)は、CCDモジュールの製造フローを簡略的に示したフロー図である。以下に、CCDモジュールの製造方法について、図2(a)〜(f)を用いて説明する。まず、図2(a)のように、シリコンウェハー21を準備し、その上に、CCD素子部22を作成する(図2(b))。次に、CCD素子部22上に、スピンコート等の塗布方法を用いて本発明の硬化性樹脂組成物を塗布して封止剤層23を作成する(図2(c))。その後、封止剤層23上にガラス24を積層し(図2(d))、その後、図2(e)に示すように、ダイシングを行い、CCD素子を製造する。
【0346】
その後、RIE等を用いた異方性エッチングによりシリコンウェハー21に穴を形成し、シリコンウェハー21裏面に貫通電極25を形成する。このようにして製造された半導体チップを外部に接続する電極26に接着して、図2(f)に示すCCDモジュールを製造することができる。
【0347】
LED、有機EL等の発光素子の封止部材としては、直接封止するものであってもよい。また、例えば、従来用いられているエポキシ系やシリコーン系の封止部材を用いて素子を封止後、本発明の硬化性樹脂組成物を最表面に積層することで、発光デバイスから空気層に向けて屈折率が段階的に減少していく構造にしてもよい。例えば屈折率1.57のエポキシ封止樹脂で封止した場合、空気界面でのフレネル反射に基づくロスは4.92%と計算される。このエポキシ封止樹脂の最表面に本発明の硬化性樹脂組成物を用いて屈折率1.32の層を形成させたとすると、界面の数は増えるが、トータルのフレネル反射は2.65%と計算され、反射ロスを大きく減少させることが可能になり、その結果、発光素子からの光の取り出し効率を向上させることが可能となる。
【0348】
本発明の硬化性樹脂組成物はまた、基材上に低反射性を付与するする薄膜を有する被覆物品に好適に用いられる。基材としては、例えばガラス、石材、コンクリート、タイル等の無機材料;鉄、アルミ、銅等の金属;木、紙、印刷物、印画紙、絵画等をあげることができる。
【0349】
また上記基材としては、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル系樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フラン樹脂、アミノ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等の合成樹脂基材等もあげることができる。
【0350】
基材の中でも液晶ディスプレイ(LCD)表示用のアンチグレア基材は表面が微細な無機微粒子でコーティングされており好ましく用いられ、効果的に防眩性かつ低反射効果を発揮できる。
【0351】
本発明の硬化性樹脂組成物は、以下のような形態の物品に適用した場合にも効果的である。
プリズム、レンズシート、偏光板、光学フィルター、レンチキュラーレンズ、フレネルレンズ、背面投写型ディスプレイのスクリーン、縮小投影型露光機レンズ、光ファイバーや光カプラー等の光学部品;ショーウインドーのガラス、ショーケースのガラス、広告用カバー、フォトスタンド用のカバー等に代表される透明な保護版;CRT、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、背面投写型ディスプレイ等の保護板;光磁気ディスク、CD・LD・DVD等のリードオンリー型光ディスク、PD等の相転移型光ディスク、ホログラム記録等に代表される光記録媒体;フォトレジスト、フォトマスク、ペリクル、レチクル等の半導体製造時のフォトリソグラフィー関連部材;ハロゲンランプ、蛍光灯、白熱電灯等の発光体の保護カバー;上記物品に貼り付けるためのシート又はフィルム。
【0352】
本発明の硬化性樹脂組成物は、下記のような形態の物品に適用した場合には接着剤としても好適である。
半導体装置のキャリア用テープ・基板、リードフレーム、プリント基板,モジュール基板等の配線基板や配線シート、更にパッケージ用基板の表面層あるいは層間絶縁層表面。
【0353】
また、本発明の硬化性樹脂組成物を用いて、物品の特定部分以外の部分に薄膜を形成し、その特定部分の形状を反射光によって浮かび上がらせることにより、物品の装飾性を向上させることも可能である。
【0354】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上述した以外にも、大面積の絶縁膜を形成する用途、可撓性を必要とする用途に使用する絶縁膜を形成する材料として特に好適である。例えば、本発明の組成物により得られる絶縁膜の用途としては、多層プリント配線基板層間絶縁膜、発光ダイオード素子絶縁膜、多層チップ層間絶縁膜、等が挙げられる。また、半導体素子用の絶縁膜として好適であり、層間絶縁膜、パッシベーション膜、薄膜トランジスタのゲート絶縁膜、等が挙げられる。また、低誘電率で可視光領域の透明性が高いため、薄膜トランジスタのゲート絶縁膜を形成する材料として特に好適である。
【0355】
上記絶縁膜は、本発明の硬化性樹脂組成物を基材に塗布し、乾燥し、そののち、焼成することで架橋させてもよいし、紫外線、電子線または放射線などの活性エネルギー線を照射することによって光硬化させて形成してもよい。
【0356】
本発明の絶縁膜は、上記硬化性樹脂組成物から形成されたものである。上記硬化性樹脂組成物から形成されたものであるため、この絶縁膜は、可撓性に優れる。更に、耐熱性、低誘電率及び透明性にも優れる。
【0357】
本発明の硬化性樹脂組成物は、絶縁膜を形成することができるが、低誘電率及び透明性にも優れるため、特に半導体素子を形成するための絶縁膜形成用組成物として好適である。
【0358】
本発明の硬化性樹脂組成物は、薄膜トランジスタのゲート絶縁膜形成用であることが好ましい。本発明の硬化性樹脂組成物は、高耐熱性、可視光領域の透明性、低誘電率及び可撓性に優れ、また、汎用溶剤可溶性であるため、薄膜トランジスタのゲート絶縁膜を形成した場合にも対応でき、塗布型であるため、低コスト化を図ることができるし、大面積の製膜を容易に行うことができる。
【0359】
本発明の硬化性樹脂組成物から得られるゲート絶縁膜を有する薄膜トランジスタは、半導体層、上記ゲート絶縁膜、及び、ゲート電極層がこの順に積層したものであることが好ましい。このような、半導体層、上記ゲート絶縁膜、及び、ゲート電極層がこの順に積層した薄膜トランジスタもまた、本発明の1つである。該薄膜トランジスタは、上記ゲート絶縁膜を使用したものであるため、可撓性に優れ、更に、耐熱性、及び透明性にも優れる。
【0360】
上記薄膜トランジスタは、例えば、液晶表示装置、有機エレクトロルミネセンス表示装置等の表示装置用の薄膜トランジスタとして好適である。
また、可撓性に優れるものであるため、例えば、フレキシブル基板を用いた表示装置等に用いられる薄膜トランジスタとしても有用である。
【0361】
図3に、インバーテッド・コープレーナー型の薄膜トランジスタの一例を示す。図3に示す薄膜トランジスタ1は、ゲート電極層30上に、ゲート絶縁膜31、半導体層33がこの順に形成されており、更にソース・ドレイン電極34が、酸化膜35を挟んで形成されている。ソース・ドレイン電極34上には、パッシベーション膜32が形成されている。
本発明の薄膜トランジスタは、このようなバックゲート型の薄膜トランジスタに限定されるものではなく、トップゲート型の薄膜トランジスタであってもよい。
【0362】
上記半導体層は、薄膜トランジスタの活性層となる層であり、半導体からなるものである。上記半導体としては、シリコン、ゲルマニウム等のIV族半導体であってもよいし、ガリウムヒ素、ガリウムナイトライド等のIII−V族化合物半導体であってもよいし、酸化亜鉛等のII−VI族化合物半導体等であってよい。またペンタセン、チオフェン等の有機半導体であってもよい。実用的観点からは、シリコンが好ましい。半導体層としては、単結晶、多結晶、非晶質等の各種半導体を使用することができる。
【0363】
ゲート電極層を形成する材料としては特に限定されず、通常のゲート電極層を形成する材料を用いることができる。例えば、銅、アルミ、金等の金属を用いることができる。
【0364】
また本発明の絶縁膜は、透明性が高いため、LED素子中の絶縁膜としても有用である。
【0365】
本発明の硬化性樹脂組成物のより好ましい構成としては、例えば次のものが例示できるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0366】
(例I)
含フッ素ポリマー(A)成分:側鎖にシランカップリング基を持つ構造単位L2からなるホモポリマー
有機ケイ素化合物(B)成分:加水分解縮合性シラン化合物
溶剤:ケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤、アルコール系溶剤、含フッ素アルコール系溶剤、又は芳香族系溶剤
組成割合
(B)成分100質量部(固形分)に対して、(A)成分を1〜50質量部
溶剤:必要に応じて適量
【実施例】
【0367】
次に本発明を合成例、製造例及び実施例等に基づいて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、物性の評価に使用した装置及び測定条件は以下のとおりである。
【0368】
(1)NMR:BRUKER社製
H−NMR測定条件:300MHz(テトラメチルシラン=0ppm)
19F−NMR測定条件:282MHz(トリクロロフルオロメタン=0ppm)
【0369】
(2)IR分析:PERKIN ELMER社製のFT−IR SPECTROMETER 1760X
【0370】
(3)重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mn:
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による。昭和電工(株)製のShodex GPC−104を用い、Shodex社製のカラム(GPC KF−604を1本、GPC KF−603を1本、GPC KF−602を2本直列に接続)を使用し、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.5ml/分で流して測定したデータより算出する。
【0371】
合成例1(OH基を有する含フッ素アリルエーテルのホモポリマーの合成)
攪拌装置および温度計を備えた100mLのガラス製四ツ口フラスコに、下記式:
【0372】
【化88】

【0373】
で表されるパーフルオロ(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール)を20g、[H−(CFCF−COO−]の8.0質量%パーフルオロヘキサン溶液を21.2g入れ、充分に窒素置換を行った後、窒素気流下20℃で24時間攪拌を行ったところ、高粘度の固体が生成した。得られた固体をジエチルエーテルに溶解させたものをパーフルオロヘキサンに注ぎ、分離、真空乾燥させ、重合体17.6gを得た。この重合体を19F−NMR、H−NMR分析、IR分析により分析したところ、上記含フッ素アリルエーテルに由来する構造単位のみからなり側鎖末端にヒドロキシル基を有する含フッ素重合体であった。また、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒に用いるGPC分析により測定した数平均分子量は62000、重量平均分子量は151000であった。
【0374】
合成例2(アリル基を有する含フッ素硬化性ポリマーの合成1)
還流冷却器、温度計、攪拌装置、滴下漏斗を備えた200mLの四ツ口フラスコに、ジメチルホルムアミド(DMF)80mL、合成例1で得たヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテルの単独重合体10.0gと、NaOH1.0gを仕込み60℃で3時間攪拌した。窒素気流下、攪拌を行いながら、更にアリルブロマイドの4.0gを約5分間かけて滴下した。滴下終了後、60℃で4.0時間攪拌を継続した。反応後のDMF溶液を0.1N塩酸水100mlに投入すると固体が析出した。この固体をジイソプロピルエーテル50mlに溶解し分液漏斗に入れ、水洗、2%塩酸水洗浄、5%NaCl水洗浄、更に水洗を繰返したのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ついでエーテル溶液を濾過により分離した。このエーテル溶液をH−NMR分析により調べたところ、水酸基のプロトンが消失した。また、NaCl板に塗布し、室温にてキャスト膜としたものをIR分析したところ、水酸基の吸収(3200cm−1)が消失した。
【0375】
合成例3(アリル基を有する含フッ素硬化性ポリマーの合成2)
合成例2の塩基NaOHの替わりにピリジンを用いた他は同様に反応を行い目的物を得た。
【0376】
合成例4(トリメトキシシリル基を有する含フッ素硬化性ポリマーの合成)
温度計、攪拌装置、滴下漏斗を備えた300mLの四ツ口フラスコに、ジイソプロピルエーテル100mL、合成例2〜3で得たアリル基含有含フッ素アリルエーテルの単独重合体10.0gと、これにトリクロロシラン10.0gを加え60℃で4時間攪拌した。窒素気流下、攪拌を行いながら、塩化白金酸5mgを加え更に0.5時間攪拌を継続した。この混合物にトリメチルオルトホルメート15.0gとメタノール1.0gを加え60℃で14時間反応させた。NaCl板に塗布し、室温にてキャスト膜としたものをIRとH−NMR分析したところ、二重結合の吸収が消失し、反応が完了したことが確認できた。反応物は活性炭素とセライトを通してろ過し、ジイソプロピルエーテルを溜去して非結晶性の固体であるトリメトキシシリル基を有する含フッ素硬化性ポリマーを得た。
【0377】
合成例5(トリエトキシシリル基を有する含フッ素硬化性ポリマーの合成)
トリクロロシランの替わりにトリエトキシシランを用いる点、及び、アルコールによる脱塩化水素反応を行わない点以外は合成例4と同様に反応を行い、非結晶性の固体であるトリエトキシシリル基を有する含フッ素硬化性ポリマーを得た。
【0378】
合成例6(α−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素硬化性ポリマーの合成)
還流冷却器、温度計、攪拌装置、滴下漏斗を備えた200mLの四ツ口フラスコに、ジエチルエーテル80mL、合成例1で得たヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテルの単独重合体5.0gと、ピリジン1.0gを仕込み5℃以下に氷冷した。窒素気流下、攪拌を行いながら、更に、ジエチルエーテル20mLにα−フルオロアクリル酸フルオライド〔CH=CFCOF〕1.2gを溶解したものを、約30分間かけて滴下した。滴下終了後、室温まで温度を上げ更に4.0時間攪拌を継続した。反応後のエーテル溶液を分液漏斗に入れ、水洗、2%塩酸水洗浄、5%NaCl水洗浄、更に水洗を繰返したのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ついでエーテル溶液を濾過により分離した。このエーテル溶液を19F−NMR分析により調べたところ、〔−O−COCF=CH基含有含フッ素アリルエーテル〕/〔OH基含有含フッ素アリルエーテル〕=50/50モル%の共重合体を含んでいた。また、NaCl板に塗布し、室温にてキャスト膜としたものをIR分析したところ、炭素−炭素二重結合の吸収が1661cm−1に、C=O基の吸収が1770cm−1に観測された。得られたα−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素硬化性ポリマー(エーテル溶液)を反応物をn−ヘキサン100ml中に投入し沈殿物を分取。室温減圧下で乾燥することで目的のポリマーを得た。
【0379】
合成例7
攪拌装置、温度計を備えた500mlのガラス製四ツ口フラスコに、メチルメタクリレート(MMA)を80gとヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を20gとアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を1.5g、溶媒として酢酸ブチルを300g入れ、室温でよく攪拌し、窒素気流下で温度を70℃、16時間の条件で重合した。得られたポリマーをn−ヘキサン中に再沈させ、91gのポリマーを得た。その数平均分子量は33000であった。この重合体を19F−NMR、H−NMR分析、IR分析により分析したところ、MMAとHEMAの共重合体であることが確認された。その組成比はNMRより、MMA:HEMA=83:17(モル比)と求められた。
得られたポリマーを10g計量し、予めモレキュラーシーブス4Aで脱水したメチルイソブチルケトン(MIBK)40gに溶解させ、攪拌装置、温度計を備えた100mlのガラス製四ツ口フラスコに仕込んだ。滴下ロートより、アリルイソシアネートを0.74g、室温で滴下し、充分に攪拌して均一化させた。その後、オイルバスにつけ、内温を80±5℃に保ち5時間攪拌した。反応溶液のIRを測定することで、原料のアリルイソシアネートが系内に無いことを確認した。その後、反応溶液をロータリーエバポレーターで濃縮後、キャスト法により溶媒を除去後、析出した固体を少量のアセトンに再度溶解させた。この溶液を充分に多量のn−ヘキサン中に再沈させることによりポリマーの精製を行った。この精製操作を合計3回繰り返し、得られたポリマーを19F−NMR、H−NMR分析、IR分析により分析したところ、下記式:
【0380】
【化89】

【0381】
(式中、m:n:o=10:6:84)で表されるポリマーであった。
【0382】
実施例1(テトラエトキシシラン(TEOS)/合成例3ポリマー=9/1の40wt%MIBK溶液の調製)
合成例4のポリマー4g、TEOS36gをMIBK60gに溶解し充分攪拌して熱加水分解型高耐熱透明膜材料溶液を調製した。
【0383】
実施例2(テトラエトキシシラン(TEOS)/合成例3ポリマー=9/1の20wt%MIBK溶液の調製)
合成例4のポリマー2g、TEOS18gをMIBK80gに溶解し充分攪拌して熱加水分解型高耐熱透明膜材料溶液を調製した。
【0384】
実施例3(テトラエトキシシラン(TEOS)/合成例3ポリマー=4/1の40wt%MIBK溶液の調製)
合成例4のポリマー8g、TEOS32gをMIBK60gに溶解し充分攪拌して熱加水分解型高耐熱透明膜材料溶液を調製した。
【0385】
実施例4(テトラエトキシシラン(TEOS)/合成例3ポリマー=4/1の20wt%MIBK溶液の調製)
合成例4のポリマー4g、TEOS16gをMIBK80gに溶解し充分攪拌して熱加水分解型高耐熱透明膜材料溶液を調製した。
【0386】
実施例5(テトラエトキシシラン(TEOS)/合成例5ポリマー=9/1の40wt%MIBK溶液の調製)
合成例5のポリマー4g、TEOS36gをMIBK60gに溶解し充分攪拌して熱加水分解型高耐熱透明膜材料溶液を調製した。
【0387】
実施例6(テトラエトキシシラン(TEOS)/合成例5ポリマー=9/1の20wt%MIBK溶液の調製)
合成例5のポリマー2g、TEOS18gをMIBK80gに溶解し充分攪拌して熱加水分解型高耐熱透明膜材料溶液を調製した。
【0388】
実施例7(テトラエトキシシラン(TEOS)/合成例5ポリマー=4/1の40wt%MIBK溶液の調製)
合成例5のポリマー8g、TEOS32gをMIBK60gに溶解し充分攪拌して熱加水分解型高耐熱透明膜材料溶液を調製した。
【0389】
実施例8(テトラエトキシシラン(TEOS)/合成例5ポリマー=4/1の20wt%MIBK溶液の調製)
合成例5のポリマー4g、TEOS16gをMIBK80gに溶解し充分攪拌して熱加水分解型高耐熱透明膜材料溶液を調製した。
【0390】
実施例9(合成例4ポリマーの20wt%PGMEA溶液の調製)
合成例5のポリマー20gをMIBK80gに溶解し充分攪拌して熱加水分解型高耐熱透明膜材料溶液を調製した。
【0391】
実施例10(合成例5ポリマーの20wt%PGMEA溶液の調製)
合成例5のポリマー20gをMIBK80gに溶解し充分攪拌して熱加水分解型高耐熱透明膜材料溶液を調製した。
【0392】
比較例1
合成例6で得られたα−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素硬化性ポリマー5.6gと重合開始剤イルガキュア907(チバスペシャリティー社製)0.1gとをMIBK22.4gに溶解し充分攪拌して、合成例6で得られたポリマーが20wt%であるMIBK溶液を得た。
【0393】
実施例11(オキセタン変成シルセスキオキサン/合成例3ポリマー=9/1組成物)
合成例5のポリマー1.0gにOX−SQ−H(東亞合成株式会社製)9.0g、トリエトキシシリルプロピルメタクリレート0.2g、重合開始剤イルガキュア907(チバスペシャリティー社製)0.03gを加え充分攪拌して封止用組成物を調製した。
【0394】
実施例12(オキセタン変性シルセスキオキサン/合成例4ポリマー=4/1組成物)
合成例4のポリマー2.0gにOX−SQ−H(東亞合成株式会社製)8.0g、トリエトキシシリルプロピルメタクリレート0.2g、重合開始剤イルガキュア907(チバスペシャリティー社製)0.03gを加え充分攪拌して封止用組成物を調製した。
【0395】
比較例2(オキセタン変性シルセスキオキサン/合成例7ポリマー=9/1組成物)
合成例7のポリマー1.0gとOX−SQ−H(東亞合成株式会社製)9.0g、重合開始剤イルガキュア907(チバスペシャリティー社製)0.03gを加え充分攪拌して封止用組成物を調製した。
【0396】
試験例1(硬化条件及び硬化物の外観評価)
実施例1〜10及び比較例1で得られた組成物のそれぞれを、スピンコーターを用いて、はじめに300rpmで3秒間、ついで4000rpmで20秒間ウェハーを回転させながら塗布し、乾燥後、1〜2μmの膜厚になるように調整しながら被膜を形成した。
上記方法で得られた被膜を、ホットステージを用いて120℃で1時間の条件で熱硬化させたところ、IRでSi−OHの吸収が確認できたので、更に、200℃、10分の条件で加熱した結果、Si−OHの吸収が消え、透明な硬化膜が得られた。
また、実施例1〜10及び比較例1で得られた組成物を使用した場合、熱硬化後の被膜に高圧水銀灯を用い、室温にて1J/cmの強度で紫外線を照射し光硬化させた。外観を目視で確認した。結果を表1に示す。
目視確認による判定基準を以下に示す。
○:透明
△:一部白濁
×:全体白濁
【0397】
試験例2
試験例1で得られたそれぞれの硬化膜について、ガラス転移温度(Tg)及び熱分解温度(Td)を測定した。結果を表1に示す。
ガラス転移温度(Tg):
示差走査熱量計(SEIKO社製、RTG220)を用いて、30℃から600℃までの温度範囲を10℃/分の条件で昇温−降温−昇温(2回目の昇温をセカンドランと呼ぶ)させて得られるセカンドランにおける吸熱曲線の中間点をTg(℃)とする。
熱分解温度(Td):
島津製作所製TGA−50型熱天秤を用い、10℃/分の昇温速度で1%質量減少の始まる温度を測定する。
【0398】
試験例3
実施例1〜10及び比較例1で得られた組成物(MIBK溶液)を用いて、次の方法により、硬化膜の透過率ならびに屈折率を測定した。結果を表1に示す。
試料の作製:
8インチのシリコンウェハー基板に、実施例1〜10で得られた組成物のそれぞれを、スピンコーターを用いて、はじめに300rpmで3秒間、ついで4000rpmで20秒間ウェハーを回転させながら塗布し、乾燥後、1〜2μmの膜厚になるように調整しながら被膜を形成した。
屈折率の測定:
分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製のVASE ellipsometer)を用いて各波長光における屈折率及び膜厚を測定する。
【0399】
試験例4(ヘイズ値及び全光線透過率の測定)
実施例1〜10又は比較例1で得られた組成物をスピンコーターを用いて500rpm、30秒の条件で、スライドガラス上に塗布した。ホットステージを用いて120℃、1時間、200℃、10分の条件で加熱硬化させ、ヘイズ値、及び全光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
ヘイズ値の測定:
ヘイズメーター(東洋精機社製 ヘイズガードII)を用いてASTM D1003に従い測定した。
全光線透過率の測定:
自記分光光度計((株)日立製作所製のU−3310(商品名))を用いて測定した。
【0400】
【表1】

【0401】
試験例5(耐久性評価)
試験例4で得られた硬化膜のうち、実施例4、7及び9で得られた組成物を使用して作製した硬化膜を、分光光度計 U−4100((株)日立製作所製)を用いて吸収スペクトルを測定した(初期値)。加熱硬化させて得られた塗膜は、可視帯域(400〜650nm)において非常に高い透明性をしめした。
次に、以下の3種類の条件で塗膜の耐久性を評価した。
〔1〕265℃10分間の高温耐熱試験
〔2〕85℃、85%の高温高湿耐久試験(600時間経過後の吸収スペクトルを測定)
〔3〕125℃における乾熱耐久試験(1050時間経過後の吸収スペクトルを測定)
265℃、10分間経過後(高温耐熱試験)、85℃、85%、600時間経過後(高温高湿耐久試験)、及び、125℃、1050時間経過後(乾熱耐久試験)、の着色の有無、屈折率の変化、並びに、450nm及び550nmにおける透過率の変化(初期値を100にしたときの相対値)を表2に示す。ほぼ、初期値を維持しており、高い耐久性が確認できた。
【0402】
【表2】

【0403】
試験例6
実施例11、12、及び、比較例2で得られた封止用組成物について、硬化前の液状組成物の25℃における外観を目視、及び、自記分光光度計U−3310((株)日立製作所製)を用いて550nmにおける光の透過率を測定することにより、下記の基準で評価するとともに、硬化前の液状組成物の25℃における粘度を下記の方法で測定した。結果を表3に示す。
外観の評価基準:
○:透明でかつ均一であり、550nmの光の透過率が80%以上である。
△:一部に白濁(ゲル状物)が認められる。
×:不透明、白濁。
粘度(mPa・s)の測定:
東海八神(株)製のコーンプレート型粘度計CV−1EにおいてCP−100コーンを使用し、100rpmの条件で25℃における粘度を測定し、60秒間で安定した値を採用する。
【0404】
試験例7
ガラス板上に離型用のフッ素樹脂フィルムであるダイキン工業(株)製NF−0100(厚さ100μm)を敷き、実施例11、12、及び、比較例2で得られた封止用組成物を、夫々アプリケーターを用いて膜厚が約100μmとなるように塗布し、更に、離型用のフッ素樹脂フィルムであるダイキン工業(株)製NF−0100(厚み100μm)を上部よりかぶせて、更に厚さ1mmのスライドガラスをのせた後に、100℃で2時間、引き続いて150℃で1時間硬化させた。硬化後、離型用のフッ素樹脂フィルムを剥がして、硬化フィルムとした。
サンプルフィルム(硬化後)のフッ素含有率、屈折率(n)、熱分解温度(Td)、可視光透過率(550nm)(T)を測定した。結果を表3に示す。
フッ素含有率(質量%)の測定方法:
酸素フラスコ燃焼法により試料10mgを燃焼し、分解ガスを脱イオン水20mlに吸収させ、吸収液中のフッ素イオン濃度をフッ素選択電極法(フッ素イオンメーター、オリオン社製 901型)で測定することにより求める。
なお、屈折率(n)、熱分解温度(Td)、可視光透過率(550nm)(T)の測定方法は、上述したとおりである。
【0405】
また、上記硬化フィルムの外観を目視で評価した。結果を表3に示す。評価基準は以下のとおりである。
○:透明でかつ均一である。
△:一部に白濁(にごり)が認められる。
×:不透明、白濁。
【0406】
また、上記硬化フィルムの耐溶剤性の評価を行った。結果を表3に示す。試験方法及び評価基準は以下のとおりである。
試験方法:
10mm×10mm×0.1mmのサンプルを20mLの酢酸ブチルに浸漬して、室温8時間経過後の様子を目視で観察する。
評価基準:
○:目視で膨潤が見られない。
△:目視で膨潤が見られる。
×:溶解する。
【0407】
更に、上記硬化フィルムの耐熱性の評価を行った。結果を表3に示す。試験方法及び評価基準は以下のとおりである。
試験方法:
温度180℃において各サンプルを1時間保持し、外観の変化を目視で観察する。
評価基準:
○:目視で変化が見られない。
△:目視でわずかな変色、濁りがみられる。
×:目視で明らかな変色、白濁、変形等が見られる。
【0408】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0409】
本発明の含フッ素ポリマーは、屈折率が低く、かつ透明性が高く、更には耐熱性に優れる薄膜を形成することができる硬化性樹脂組成物を与えるものであり、また、物理的、化学的安定性にも優れているため、CCDモジュール等の受光素子に用いる封止部材の原料として特に好適である。本発明の含フッ素ポリマーを含む硬化性樹脂組成物から得られる硬化物は、耐熱性に優れ、光透過率が高く、耐光性に優れていることから、特に、LED素子封止用の封止部材を形成する材料として特に好適に利用可能である。本発明の含フッ素ポリマーはまた、塗布型の絶縁膜を形成することができる組成物を構成可能なものであり、種々の用途に適用することができる。特に、大面積の絶縁膜を形成する用途、可撓性を必要とする用途に使用する絶縁膜を形成する材料として好適に利用可能である。また、半導体素子用の絶縁膜として好適であり、薄膜トランジスタのゲート絶縁膜を形成する材料として特に好適である。
【符号の説明】
【0410】
1:薄膜トランジスタ
11、21:シリコンウェハー
12、22:CCD素子部
13、23:封止剤層
14、24:ガラス
15、25:貫通電極
16、26:外部に接続する電極
30:ゲート電極層
31:ゲート絶縁膜
32:パッシベーション膜
33:半導体層
34:ソース・ドレイン電極
35:酸化膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(L):
【化1】

(式中、X及びXは、同一又は異なり、H又はFである。Xは、H、F、CH又はCFである。X及びXは、夫々同一又は異なり、H、F又はCFである。Rfは、炭素数4〜40の含フッ素炭化水素基、又は、炭素数5〜100のエーテル結合を有する含フッ素炭化水素基である。aは0〜3の整数である。b及びcは同一又は異なり、0又は1である。)で表される構造単位を有する含フッ素ポリマーであって、
前記式(L)中のRfは、下記式(Rf):
−(R−O)−R’n’−CH2−x{(CXCRHCRY}OH1−y{(CXCRHCRY} (Rf)
(式中、Rは、同一又は異なり、水素原子の少なくとも1個がフッ素原子で置換されている炭素数1〜5の含フッ素アルキレン基である。R’は、同一又は異なり、水素原子の少なくとも1個がフッ素原子で置換されている炭素数1〜5の含フッ素アルキレン基である。X及びXは、夫々同一又は異なり、H、ハロゲン原子、又は、置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基である。R、R及びRは、夫々同一又は異なり、H、ハロゲン原子、又は、置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基である。Yは、同一又は異なり、炭素数1〜50の加水分解性金属アルコキシド部位である。nは、0〜20の整数であり、n’は、0〜10の整数である。mは、1〜12の整数である。xは、0〜2の整数であり、yは、0又は1である。ただし、xが0のとき、yは1である。)で表される含フッ素炭化水素基であることを特徴とする含フッ素ポリマー。
【請求項2】
前記式(L)で表される構造単位以外のその他の構造単位を更に有することを特徴とする請求項1記載の含フッ素ポリマー。
【請求項3】
請求項1又は2記載の含フッ素ポリマー(A)、及び、有機ケイ素化合物(B)からなることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
含フッ素ポリマー(A)と有機ケイ素化合物(B)との合計質量に対して、有機ケイ素化合物(B)が50質量%以上である
請求項3記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
有機溶剤を含む請求項3又は4記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
光学素子封止用である請求項3、4又は5記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
LED封止用である請求項6記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
薄膜トランジスタのゲート絶縁膜用である請求項3、4又は5記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項3、4、5、6、7又は8記載の硬化性樹脂組成物から形成された硬化物。
【請求項10】
屈折率が1.40以下である請求項9記載の硬化物。
【請求項11】
光学素子用の封止部材である請求項9又は10記載の硬化物。
【請求項12】
光学素子が受光素子である請求項11記載の硬化物。
【請求項13】
光学素子が発光素子である請求項11記載の硬化物。
【請求項14】
光学素子がLEDである請求項13記載の硬化物。
【請求項15】
薄膜トランジスタのゲート絶縁膜である請求項9記載の硬化物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−87162(P2013−87162A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227296(P2011−227296)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】