説明

含フッ素不飽和カルボン酸オニウム塩類

【課題】酸不安定性基を有しポジ型レジストとして機能する樹脂、酸発生剤および溶剤などからなるレジスト組成物において、解像度に優れ、焦点深度余裕(DOF)が広く、ラインエッジラフネス(LER)が小さく、さらには感度が高いことから優れたパターン形状を形成できるたレジスト組成物を調製するための光酸発生剤およびそれを調製するための重合性単量体を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表わされる含フッ素不飽和カルボン酸オニウム塩。
【化】


(式中、Rは、重合性二重結合含有基、Rは、フッ素原子または含フッ素アルキル基、Wは、二価の有機基、Qは、スルホニウムカチオン、またはヨードニウムカチオンを示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性アニオンを有する新規含フッ素カルボン酸オニウム塩類に関する。特に、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、Fエキシマレーザーなどのエキシマーレーザーやシンクロトロン放射で発生する近紫外線、遠紫外線、極端紫外線(EUV)、電子線などの荷電粒子線、軟X線、X線、γ線などの高エネルギー線を使用する微細加工に有用な化学増幅ポジ型レジストとして好適に使用できるレジスト組成物、およびその組成物に使用できる新規含フッ素樹脂の合成に使用される新規含フッ素カルボン酸オニウム塩類に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が急速に進んでいる。その背景には露光光源の短波長化があり、例えば水銀灯のi線(365nm)からKrFエキシマレーザー(248nm)への短波長化により64Mビット(加工寸法が0.25μm以下)のDRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)の量産が可能になった。更に集積度256M及び1G以上のDRAM製造を実現するため、ArFエキシマレーザー(193nm)を用いたArFリソグラフィーが本格的に検討されており、高NAのレンズ(NA≧0.9)と組み合わせることにより65nmノードのデバイスの検討が行われている。その次の世代に当たる45nmノードのデバイス製作にはArF液浸リソグラフィーが開発され、現在導入されつつある。また、45nm以下のデザインルールでは、ArFリソグラフィー技術を応用した二重露光/ダブルパターニング技術や、極端紫外線(EUV)リソグラフィーなどが有望視されている。
【0003】
このような短波長の露光に適したレジストとして、「化学増幅型レジスト組成物」が注目されている。これは、高エネルギー線の照射(「露光」と称する)により酸が発生する酸発生剤(「光酸発生剤」と称する)を含有し、発生した酸を触媒とする反応によりレジスト膜の露光された部分の現像液に対する溶解性を変化させて露光部または非露光部のレジスト膜を選択的に溶解させ、フォトマスク形状通りのレジストパターンを形成させるための材料である。
【0004】
ところで、化学増幅型レジスト材料における光酸発生剤に求められる特性として、高エネルギー線に対する透明性に優れ、かつ酸発生における量子収率が高いこと、発生する酸が十分強いこと、発生する酸の沸点が十分高いこと、発生する酸のレジスト被膜中での拡散距離(「拡散長」と称する)が適切であることなどが挙げられる。
【0005】
これらのうち、酸の強さ、沸点及び拡散長に関しては、イオン性の光酸発生剤ではアニオン部分の構造が重要であり、また通常のスルホニル構造やスルホン酸エステル構造を有するノニオン性の光酸発生剤ではスルホニル部分の構造が重要となる。例えば、トリフルオロメタンスルホニル構造を有する光酸発生剤の場合、発生する酸は十分強い酸となり、フォトレジストとしての解像性能は十分高くなるが、酸の沸点が低く、また酸の拡散長が長いため、フォトレジストとしてフォトマスク依存性が大きくなるという欠点がある。また、例えば10−カンファースルホニル構造のような大きな有機基に結合したスルホニル構造を有する光酸発生剤の場合は、発生する酸の沸点は十分高く、酸の拡散長が十分短いため、マスク依存性は小さくなるが、酸の強度が十分ではないために、フォトレジストとしての解像性能が十分ではない。
【0006】
このため、ArFエキシマーレーザ対応化学増幅型レジスト組成物の光酸発生剤としては、酸強度の高いパーフルオロアルカンスルホン酸を発生するものが一般的に使われているが、パーフルオロオクタンスルホン酸あるいはその誘導体は、C−F結合に由来する安定性(非分解性)や疎水性、親油性に由来する生態濃縮性、蓄積性が問題となっている。更に炭素数5以上のパーフルオロアルカンスルホン酸あるいはその誘導体も上記問題が提起され始めている。米国の環境保護庁(ENVIRONMENTAL PROTECTION AGENCY)による報告においては、これらの使用を規制する提案がなされている。
【0007】
このような背景の下、十分な酸性度をもち、かつ酸の沸点や拡散長が適当であり、しかも環境への負荷が少ないという特徴を有する、部分的にまたは完全にフッ素化された炭素数の少ないアルカンスルホン酸を発生する酸発生剤の開発が進められ、トリフェニルスルホニウム メトキシカルボニルジフルオロメタンスルホナート(特許文献1)、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニル t−ブトキシカルボニルジフルオロメタンスルホナート(特許文献2)あるいはトリフェニルスルホニウム (アダマンタン−1−イルメチル)オキシカルボニルジフルオロメタンスルホナート(特許文献3)などのアルコキシカルボニルフルオロアルカンスルホン酸オニウム塩が酸発生剤として開発されてきた。
【0008】
しかしながら最近では、パーフルオロアルカンスルホン酸(その頭文字をとりPFASとして知られている)に対する規制も厳しくなりつつあり、フッ素の数が少ないとはいえ、こうしたフッ素化された炭素数の少ないアルカンスルホン酸を発生する酸発生剤の環境に対する影響も懸念されている。
【0009】
また、より高い集積度が求められるようになると、光酸発生剤への要求だけでなく、レジスト組成物である感光性樹脂組成物に対してもより優れた解像度が要求されるようになってきた。より微細化が進むにつれて、焦点深度余裕(以下、「DOF」という。)を広くするとともに、パターンのラインエッジラフネス(以下、「LER」という。)を低減する要求もますます強められてきた。半導体産業における微細化の進行につれ、このような解像度に優れ、DOFが広く、LERが小さく、さらには感度、基板密着性、エッチング耐性に優れるという条件を満たすレジスト組成物の開発が急務になっている。
【0010】
このような中で、感度向上を目的としてアクロイルオキシフェニルジフェニルスルホニウム塩を共重合成分として有する樹脂(特許文献4)や、ポリヒドロキシスチレン系樹脂でのLERの改善を目的として前記単量体を共重合成分として組み込んだベース樹脂が報告されている(特許文献5)。しかしながら、これらはカチオン側がベース樹脂に結合されているので高エネルギー線照射により生じたスルホン酸は従来の光酸発生剤から生じたスルホン酸と同一のものであり、上記の課題に対し満足できるものではない。また、感度向上、LERの改善を目的とし、ポリスチレンスルホン酸などのアニオン側をポリマーに組み込んだスルホニウム塩が開示されている(特許文献6)が、発生する酸はいずれもアレーンスルホン酸、アルキルスルホン酸誘導体であり、発生酸の酸強度が低いため、酸不安定基、特にArFレーザー光を使用する化学増幅型レジストの酸不安定基を切断するには不充分である。
【0011】
また、液浸露光においては、レジストウエハー上に塗布・形成されたフォトレジスト膜と投影露光装置のレンズはそれぞれ水などの液浸媒体と接触する。そのため、フォトレジスト膜に液浸媒体が浸透し、フォトレジストの解像度が低下することがある。また、フォトレジストの構成成分が液浸媒体へ溶出することによるレンズ表面への汚染などの問題がある。
【0012】
更に、ArFリソグラフィー以降の露光技術としては、極端紫外線(EUV)等の極遠紫外線、電子線等の荷電粒子線のような各種の高エネルギー線を使用する微細加工技術が有望視されているが、真空下(減圧下)での露光を行わなければならないことから露光中に光酸発生剤から発生したスルホン酸成分が揮発し、良好なパターン形状が得られないなどの問題や揮発したスルホン酸が露光装置へダメージを与える可能性がある。
【0013】
上記各種のリソグラフィ技術上の問題を解決すべく、部分的にまたは完全にフッ素化された炭素数の少ないアルカンスルホン酸を側鎖に発生させ、発生したスルホン酸成分が揮発せず、拡散長を制御しうるという特徴を有するポリマーが開発されている(特許文献7〜10)が、上述したとおり環境に対する影響が懸念されるため、代替品の開発が進められている。
【0014】
一方、カルボン酸を側鎖にもつアクリル酸樹脂はレジストのベース樹脂としてよく用いられており、フルオロカルボン酸を有する樹脂も知られている(特許文献11)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2004−117959号公報
【特許文献2】特開2002−214774号公報
【特許文献3】特開2004−4561号公報
【特許文献4】特開平4−230645号公報
【特許文献5】特開2005−84365号公報
【特許文献6】特許第3613491号公報
【特許文献7】国際公開2006/309446号パンフレット
【特許文献8】特開2006−178317号公報
【特許文献9】特開2007−197718号公報
【特許文献10】特開2008−133448号公報
【特許文献11】特開2009−29802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前記したような環境への影響の懸念される物質を含まず、解像度に優れ、焦点深度余裕(DOF)が広く、ラインエッジラフネス(LER)が小さく、さらには感度が高いことから優れたパターン形状を形成できるレジスト組成物を調製するために使用する、光酸発生剤としての機能を有する樹脂を合成することができる重合性単量体(モノマー)を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、特定の含フッ素カルボン酸塩構造を側鎖に有する樹脂を光酸発生剤として用いることで、ポジ型レジスト組成物が解像度に優れ、焦点深度余裕(DOF)が広く、ラインエッジラフネス(LER)が小さく、さらには高感度なレジスト組成物を調製し得ることを見出した。
【0018】
すなわち、一般式(1)で表される含フッ素含フッ素カルボン酸オニウム塩を単独重合または共重合して得られた樹脂を含むレジスト組成物は、光酸発生剤として機能するカルボン酸オニウム塩のカルボン酸がα位に二つのフッ素原子を有するため、高エネルギー線照射により酸を発生した場合に非常に強いカルボン酸を生じることから化学増幅型ポジ型レジスト組成物に含まれるベース樹脂の酸不安定基を効率よく切断することができるため高エネルギー線に対して高感度なものとなった。
【0019】
また、ポリマー型の光酸発生剤は、化学増幅型の光酸発生剤として機能する部位がポリマー鎖の側鎖に固定されていることから、実質的に酸の拡散距離が制限されているのでDOFが広く、LERが小さいという特徴を示すが、従来未だ十分にポリマー型の利点を十分示すまでに至っていなかったところ、本発明者らは、酸部位と主鎖とを隔てる連結基の化学構造と側鎖の長さを特定することで拡散の容易さと拡散距離を調節することができることを見出し本発明を完成させた。
【0020】
すなわち、本発明は次の通りである。
【0021】
[発明1]
下記一般式(1)で表わされる含フッ素不飽和カルボン酸オニウム塩。
【0022】
【化1】

【0023】
(式中、Rは、下記式で表される重合性二重結合含有基の何れかを表し、
【0024】
【化2】

【0025】
は、フッ素原子または含フッ素アルキル基を表し、
は、二価の有機基を表し、
は、下記一般式(a)もしくは下記一般式(b)で示されるスルホニウムカチオン、または下記一般式(c)で示されるヨードニウムカチオンを示す。
【0026】
【化3】

【0027】
前記一般式(a)において、R、R及びRは相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。
【0028】
【化4】

【0029】
前記一般式(b)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0(零)又は1を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子を含んでいてもよい。
【0030】
【化5】

【0031】
前記一般式(c)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0(零)又は1を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子を含んでいても良い。)
[発明2]
がフッ素原子である発明1の含フッ素不飽和カルボン酸オニウム塩。
【0032】
[発明3]
が一般式(a)で示されるスルホニウムカチオンである発明1または2の含フッ素不飽和カルボン酸オニウム塩。
【0033】
【化6】

【0034】
前記一般式(a)において、R、R及びRは相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。
【0035】
[発明4]
下式で表される、2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシペンタン酸トリフェニルスルホニウム。
【0036】
【化7】

【発明の効果】
【0037】
本発明の含フッ素不飽和カルボン酸オニウム塩を重合または共重合させることによって製造される含フッ素カルボン酸オニウム塩を側鎖に有する樹脂は、それ自身で酸不安定性基を持ちポジ型レジストとして機能する樹脂として、または酸不安定性基を持ちポジ型レジストとして機能する樹脂と共に用いてレジスト組成物を調製した場合、解像度に優れ、焦点深度余裕(DOF)が広く、ラインエッジラフネス(LER)が小さく、さらには高感度のレジスト組成物を調製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0039】
<含フッ素不飽和カルボン酸オニウム塩>
一般式(1)で表される含フッ素不飽和カルボン酸オニウム塩
【0040】
【化8】

【0041】
において、Rは、フッ素原子または含フッ素アルキル基である。このような含フッ素アルキル基としては、特に限定されないが、炭素数1〜12のものであり、炭素数1〜3のものが好ましく、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、n−ヘプタフルオロプロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基などを挙げることができる。Rは、フッ素原子またはトリフルオロメチル基がさらに好ましい。
【0042】
は重合性二重結合を有する基であればよいが、下記式で表される重合性二重結合含有基の何れかであるのが好ましい。
【0043】
【化9】

【0044】
これらのうち、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、トリフルオロメタクリロイルオキシ基、アリルオキシ基であるのより好ましい。
【0045】
連結基Wは、単結合または二価の有機基を表す。二価の有機基は、非置換または置換メチレン基、非置換または置換の二価の脂環式炭化水素基、二価の芳香族基、非置換または置換の二価のヘテロ環基などの連結基、または、これらの連結基とエーテル結合性酸素原子、エーテル結合性硫黄原子、カルボニル基、エステル基、オキシカルボニル基、アミド基、スルホンアミド基、ウレタン基、ウレア基などの連結基からなる群から選ばれた1種または2種以上が相互に結合してなる二価の連結基であって、この二価の連結基内の炭素原子に結合する任意の数の水素原子はフッ素原子で置換していてもよく、連結基内で各炭素原子は置換基を含めて環を形成してもよい。
【0046】
主骨格の要素である置換メチレン基は、次の一般式(2)で表される。
【0047】
【化10】

【0048】
ここで、置換メチレン基のR、R で表される一価の基は、特に限定されないが、水素原子、ハロゲン原子もしくはヒドロキシル基または置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換の脂環式炭化水素基、アルコキシル基、置換もしくは非置換のアリール基および置換もしくは非置換の縮合多環式芳香族基から選ばれた炭素数1〜30の一価の基であって、これらの一価の基はフッ素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、炭素―炭素二重結合を有することができる。R、Rは同一でも異なっていてもよい。また、R、Rは、分子内の原子とともに組み合わされて環を形成してもよく、この環は脂環式炭化水素構造であることが好ましい。R、Rで表される一価の有機基として次のものが挙げられる。
【0049】
、Rにおける非環式のアルキル基としては、炭素数1〜30のものであり、炭素数1〜12のものが好ましい。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1−メチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、i−ヘキシル基、n−オクチル基、i−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基等を挙げることができ、低級アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基などが特に好ましいものとして挙げることができる。本明細書において、「低級」とは、炭素数1〜4をいい、環状化合物の場合、炭素数3〜7であることをいう。
【0050】
、Rにおける非環式の置換アルキル基としては、アルキル基が有する水素原子の1個または2個以上を炭素数1〜4個のアルコキシル基、ハロゲン原子、アシル基、アシロキシ基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基等により置換されたものが挙げられ、フッ素原子で置換されたフルオロアルキル基が好ましく、具体的には、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、n−ヘプタフルオロプロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基などの低級フルオロアルキル基を挙げることができる。
【0051】
、Rにおける脂環式炭化水素基あるいはそれらが結合する炭素原子を含めて形成する脂環式炭化水素基としては、単環式でも、多環式でもよい。具体的には、炭素数3以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を有する基を挙げることができる。その炭素数は3〜30個が好ましく、特に炭素数3〜25個が好ましい。これらの脂環式炭化水素基は置換基を有していてもよい。
【0052】
単環式基としては環炭素数3〜12のものが好ましく、環炭素数3〜7のものがさらに好ましい。例えば、好ましいものとしてシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基を挙げることができる。また、多環式基としては、環炭素数7〜15のアダマンチル基、ノルアダマンチル基、デカリン残基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、ノルボルニル基、セドロール基等を挙げることができる。脂環式炭化水素基はスピロ環であってもよく、炭素数3〜6のスピロ環が好ましい。好ましくは、アダマンチル基、デカリン残基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基、トリシクロデカニル基などである。これらの有機基の環炭素または連結基の水素原子の1個または2個以上がそれぞれ独立に前記の炭素数1〜30のアルキル基もしくは置換アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基またはそれらに含まれる1個または2個以上の水素原子がフッ素原子もしくはトリフルオロメチル基で置換した単環式基を挙げることができる。
【0053】
ここで、炭素数1〜30のアルキル基としては、低級アルキル基が好ましく、さらに好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基およびイソプロピル基よりなる群から選択されたアルキル基である。また、置換アルキル基の置換基としては、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、アルコキシル基を挙げることができる。アルコキシル基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4個のものを挙げることができる。アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基を挙げることができる。
【0054】
、Rにおけるアルコキシル基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4個のものを挙げることができる。
【0055】
、Rにおける置換もしくは非置換のアリール基としては、炭素数1〜30のものである。単環式基としては環炭素数3〜12のものが好ましく、環炭素数3〜6のものがさらに好ましい。例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−ヒドロキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、メシチル基、o−クメニル基、2,3−キシリル基、2,4−キシリル基、2,5−キシリル基、2,6−キシリル基、3,4−キシリル基、3,5−キシリル基、o−フルオロフェニル基、m−フルオロフェニル基、p−フルオロフェニル基、o−トリフルオロメチルフェニル基、m−トリフルオロメチルフェニル基、p−トリフルオロメチルフェニル基、2,3−ビストリフルオロメチルフェニル基、2,4−ビストリフルオロメチルフェニル基、2,5−ビストリフルオロメチルフェニル基、2,6−ビストリフルオロメチルフェニル基、3,4−ビストリフルオロメチルフェニル基、3,5−ビストリフルオロメチルフェニル基、p−クロロフェニル基、p−ブロモフェニル基、p−ヨードフェニル基等を挙げることができる。
【0056】
置換もしくは非置換の炭素数1〜30の縮合多環式芳香族基としては、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、ビフェニレン、インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランセン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン、テトラフェニレン、ヘキサフェン、ヘキサセン、ルビセン、コロネン、トリナフチレン、ヘプタフェン、ヘプタセン、ピラントレン、オヴァレン等から一個の水素原子が除いて得られる一価の有機基を挙げることができ、これらの1個または2個以上の水素原子がフッ素原子、炭素数1〜4のアルキル基または含フッ素アルキル基で置換したものを好ましいものとして挙げることができる。
【0057】
環原子数3〜25の単環式または多環式のヘテロ環基としては、例えば、ピリジル基、フリル基、チエニル基、ピラニル基、ピロリル基、チアントレニル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、テトラヒドロチオフラニル基、3−テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド基等およびこれらの環を構成する原子の1個または2個以上の水素原子がアルキル基、脂環式炭化水素基、アリール基、ヘテロ環基で置換したヘテロ環基を挙げることができる。また、単環式または多環式のエーテル環、ラクトン環を有するものが好ましく、次に例示する。
【0058】
【化11】

【0059】
式中、R、Rは各々独立に、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基を表す。nは、2〜4の整数を表す。
【0060】
連結基Wの主骨格を構成する二価の脂環式炭化水素基としては、単環式でも、多環式でもよい。具体的には、炭素数3以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を有する基を挙げることができる。その炭素数は3〜30個が好ましく、特に炭素数3〜25個が好ましい。これらの脂環式炭化水素基は置換基を有していてもよい。
【0061】
単環式基としては環炭素数3〜12のものが好ましく、環炭素数3〜7のものがさらに好ましい。例えば、好ましいものとしてシクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロデカニレン基、シクロドデカニレン基、4−tert−ブチルシクロヘキシレン基を挙げることができる。また、多環式基としては、環炭素数7〜15のアダマンチレン基、ノルアダマンチレン基、デカリンの二価の残基、トリシクロデカニレン基、テトラシクロドデカニレン基、ノルボルニレン基、セドロールの二価の残基を挙げることができる。脂環式炭化水素基はスピロ環であってもよく、その際、炭素数3〜6のスピロ環が好ましい。また、環炭素または連結基の水素原子の1個または2個以上がそれぞれ独立に、炭素数1〜30のアルキル基もしくは置換アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基で置換したものを挙げることができる。
【0062】
ここで、炭素数1〜30のアルキル基としては低級アルキル基が好ましく、さらに好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基およびイソプロピル基よりなる群から選択されたアルキル基である。置換アルキル基の置換基としては、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、アルコキシル基を挙げることができる。アルコキシル基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4個のものを挙げることができる。アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基を挙げることができる。
【0063】
連結基Wの主骨格を構成する二価の芳香族炭化水素基としては、炭素数1〜30の単環式基または縮合多環式芳香族基のものがある。単環式基としては環炭素数3〜12のものが好ましく、環炭素数3〜6のものがさらに好ましい。例えば、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、トルエン、フェノール、アニソール、メシチレン、クメン、2,3−キシリレン、2,4−キシレン、2,5−キシレン、2,6−キシレン、3,4−キシレン、3,5−キシレン、フルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、o−ビストリフルオロメチルベンゼン、m−ビストリフルオロメチルベンゼン、p−ビストリフルオロメチルベンゼン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン等から二個の水素原子を除いて得られる二価の基を挙げることができる。
【0064】
縮合多環式芳香族基としては、置換もしくは非置換であることができ、炭素数1〜30が好ましく、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、ビフェニレン、インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランセン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン、テトラフェニレン、ヘキサフェン、ヘキサセン、ルビセン、コロネン、トリナフチレン、ヘプタフェン、ヘプタセン、ピラントレン、オヴァレン等から二個の水素原子を除いて得られる二価の有機基を挙げることができ、これらの1個または2個以上の水素原子がフッ素原子、炭素数1〜4のアルキル基または含フッ素アルキル基で置換したものであることができる。
【0065】
の主骨格を構成する環原子数3〜25の単環式または多環式のヘテロ環基としては、芳香環であっても非芳香環であってもよく、例えば、ピリジン、フラン、チエニン、ピラニン、ピロリン、チアントレン、ピラゾン、イソチアゾン、イソオキサゾン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、テトラヒドロピラニン、テトラヒドロフラニン、テトラヒドロチオピラニン、テトラヒドロチオフラン等から二個の水素原子を除いて得られる二価の有機基およびこれらの環を構成する原子の1個または2個以上の水素原子がアルキル基(低級アルキル基が好ましい。)、脂環式炭化水素基、アリール基、ヘテロ環基で置換したヘテロ環基を挙げることができる。これらのうち、単環式または多環式のエーテル環が好ましく、それらを次に例示する。式中、開放末端の線分は未結合手を示す。
【0066】
【化12】

【0067】
連結基Wとしては、前記した通り、上に一般式で説明しまたは具体的に例示した二価の基を組み合わせた二価の基であってもよい。
【0068】
また、前記した連結基と、エーテル結合性酸素原子、エーテル結合性硫黄原子、カルボニル基、エステル基、オキシカルボニル基、アミド貴、スルホンアミド基、ウレタン基、ウレア基などの連結基からなる群から選ばれた1種または2種以上が相互に結合してなる二価の連結基であってもよく、以下の構造が例示できる。式中、O、Cをもってそれぞれ置換メチレン基に隣接する酸素原子および炭素原子を表示する。
【0069】
【化13】

【0070】
連結基Wとしては、前記した一般式(2)で表される置換メチレン基が最も好ましい。一般式(2)で表される置換メチレン基として、好ましい具体例を次に示す。式中、O、Cをもってそれぞれ置換メチレン基に隣接する酸素原子および炭素原子を表示する。
【0071】
【化14】

【0072】
【化15】

【0073】
【化16】

【0074】
【化17】

【0075】
は、下記一般式(a)もしくは下記一般式(b)で示されるスルホニウムカチオン、または下記一般式(c)で示されるヨードニウムカチオンを示す。
【0076】
【化18】

【0077】
前記一般式(a)において、R、R及びRは相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成しても良い。
【0078】
【化19】

【0079】
前記一般式(b)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0(零)又は1を示す。
【0080】
【化20】

【0081】
前記一般式(c)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0(零)又は1を示す。)
以下に一般式(a)および一般式(b)で示されるスルホニウムカチオン、一般式(c)および一般式(d)で示されるヨードニウムカチオンについて詳述する。
【0082】
[一般式(a)で示されるスルホニウムカチオン]
一般式(a)におけるR、R及びRとしては具体的に以下のものが挙げられる。アルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、n−オクチル基、n−デシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプテン−2−イル基、1−アダマンタンメチル基、2−アダマンタンメチル基等が挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。オキソアルキル基としては、2−オキソシクロペンチル基、2−オキソシクロヘキシル基、2−オキソプロピル基、2−オキソエチル基、2−シクロペンチル−2−オキソエチル基、2−シクロヘキシル−2−オキソエチル基、2−(4−メチルシクロヘキシル)−2−オキソエチル基等を挙げることができる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、チエニル基等やp−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、o−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、p−tert−ブトキシフェニル基、m−tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、エチルフェニル基等のアルキルフェニル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基等のアルキルナフチル基、ジエチルナフチル基等のジアルキルナフチル基、2−メトキシ−1−ナフチル基、4−メトキシ−1−ナフチル基、2−エトキシ−1−ナフチル基、4−エトキシ−1−ナフチル基、2−ブトキシ−1−ナフチル基、4−ブトキシ−1−ナフチル基などのモノアルコキシナフチル基、ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等のジアルコキシナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基等が挙げられる。アリールオキソアルキル基としては、2−フェニル−2−オキソエチル基、2−(1−ナフチル)−2−オキソエチル基、2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル基等の2−アリール−2−オキソエチル基等が挙げられる。また、R、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して硫黄原子を介して環状構造を形成する場合には、1,4−ブチレン、3−オキサ−1,5−ペンチレン等が挙げられ、更には下記構造の環状構造を挙げることができる。(下記式中、破線で表す結合手にはR、RまたはRの何れかの置換基が結合する。)
【0083】
【化21】

【0084】
更には置換基としてアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等の重合可能な置換基を有するアリール基が挙げられ、具体的には4−(アクリロイルオキシ)フェニル基、4−(メタクリロイルオキシ)フェニル基、4−ビニルオキシフェニル基、4−ビニルフェニル基等が挙げられる。
【0085】
より具体的に好ましい一般式(a)で示されるスルホニウムカチオンを示すと、トリフェニルスルホニウム、(4−tert−ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウム、(3−tert−ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3−tert−ブチルフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3−tert−ブチルフェニル)スルホニウム、(3,4−ジtert−ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3,4−ジtert−ブチルフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3,4−ジtert−ブチルフェニル)スルホニウム、ビス(4−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、(3−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、(3,4−ジtert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3,4−ジtert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3,4−ジtert−ブトキシフェニル)スルホニウム、ジフェニル(4−チオフェノキシフェニル)スルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)スルホニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)ビス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、2−ナフチルジフェニルスルホニウム、ジメチル(2−ナフチル)スルホニウム、(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルスルホニウム、(4−メトキシフェニル)ジメチルスルホニウム、トリメチルスルホニウム、(2−オキソシクロヘキシル)シクロヘキシルメチルスルホニウム、トリナフチルスルホニウム、トリベンジルスルホニウム、ジフェニルメチルスルホニウム、ジメチルフェニルスルホニウム、2−オキソ−2−フェニルエチルチアシクロペンタニウム、ジフェニル 2−チエニルスルホニウム、4−n−ブトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、2−n−ブトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、4−メトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、2−メトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、5−フェニルジベンゾチオフェニウム、5−(4−ヒドロキシフェニル)ジベンゾチオフェニウム、5−(4−メチルフェニル)ジベンゾチオフェニウム、5−(4−t−ブチルフェニル)ジベンゾチオフェニウム、10−フェニルフェノキサチイニウム、10−(4−ヒドロキシフェニル)フェノキサチイニウム、10−(4−tert−ブトキシフェニル)フェノキサチイニウム、下記構造のスルホニウムカチオン等が挙げられる。
【0086】
【化22】

【0087】
より好ましくはトリフェニルスルホニウム、(4−tert−ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウム、(4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウム等が挙げられる。
【0088】
更には、4−(メタクリロイルオキシ)フェニルジフェニルスルホニウム、4−(アクリロイルオキシ)フェニルジフェニルスルホニウム、4−(メタクリロイルオキシ)フェニルジメチルスルホニウム、4−(アクリロイルオキシ)フェニルジメチルスルホニウム等が挙げられる。これら重合可能なスルホニウムカチオンに関しては、特開平4−230645号公報、特開2005−84365号公報等を参考にすることができる。
【0089】
[一般式(b)で示されるスルホニウムカチオン]
一般式(b)におけるR−(O)−基の置換位置は特に限定されるものではないが、フェニル基の4位あるいは3位が好ましい。より好ましくは4位である。ここでnは0(零)又は1である。Rとしては、具体的に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、sec−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプテン−2−イル基、フェニル基、4−メトキシフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、10−アントラニル基、2−フラニル基、更にn=1の場合に、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基が挙げられる。
【0090】
具体的なスルホニウムカチオンとしては、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−エチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−シクロヘキシルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−n−ヘキシルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−n−オクチル)フェニルジフェニルスルホニウム、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−エトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−シクロヘキシルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−トリフルオロメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−トリフルオロメチルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウム等が挙げられる。
【0091】
[一般式(c)で示されるヨードニウムカチオン]
一般式(c)におけるR−(O)−基の置換位置は特に限定されるものではないが、フェニル基の4位あるいは3位が好ましい。より好ましくは4位である。ここでnは0(零)又は1である。Rの具体例は上述した一般式(b)におけるRと同じものを再び挙げることができる。
【0092】
具体的なヨードニウムカチオンとしては、ビス(4−メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−エチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−(1,1−ジメチルプロピル)フェニル)ヨードニウム、(4−メトキシフェニル)フェニルヨードニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)フェニルヨードニウム、4−(アクリロイルオキシ)フェニルフェニルヨードニウム、4−(メタクリロイルオキシ)フェニルフェニルヨードニウム等が挙げられるが、中でもビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムが好ましく用いられる。
【0093】
<含フッ素不飽和カルボン酸オニウム塩の製造方法>
次いで上述した、一般式(1)で表わされる含フッ素不飽和カルボン酸オニウム塩の製造方法について述べる。
【0094】
一般式(1)で表わされる含フッ素不飽和カルボン酸オニウム塩は、一般式(4)で示される含フッ素不飽和カルボン酸
【0095】
【化23】

【0096】
(式中、R、R、W、Qは、一般式(1)におけるR、R、W、Qと同義である。)を出発原料にして合成することが可能である。
【0097】
このような含フッ素不飽和カルボン酸は特開2009−29802号公報に記載されるように、次の反応式[1]から反応式[3]に示す方法を用いて製造することができる。
【0098】
【化24】

【0099】
式中、RおよびRは、一般式(1)におけるRおよびRと同義である。R、RおよびRはそれぞれ独立に一価の有機基を表し、Rは水素原子であるのが特に好ましい。R、Rは、一般式(2)のRまたはRに対応し、具体的な説明は前記の通りである。一価の有機基としてはアルキル基等が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1−(トリフルオロメチル)エチル基および3,3,3−トリフルオロプロピル基、並びにRまたはRが互いに結合して形成したシクロペンチル基、シクロヘキシル基またはシクロヘプチル基が挙げられる。ここで、置換メチレン基(−CR−)が(−CR−)として好ましいとして挙げた具体例が好ましいものとして挙げられる。Yはハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、トリフルオロメタンスルホネート基、炭素数1〜4のアルキルスルホネート基、アリールスルホネート基などを表す。Wは二価の連結基を表し、W−O−CRは一般式(1)におけるWの一態様に相当する。
【0100】
ここで、α位に活性ハロゲンフッ素原子を有する含ハロゲンカルボン酸エステル(i)とカルボニル化合物(ii)を亜鉛の存在下無水の状態で反応させる(Reformatsky反応)ことでヒドロキシカルボン酸エステル(iii)を得る(反応式[1])。次いで得られたヒドロキシカルボン酸エステル(iii)と重合性二重結合を有するハロゲン化合物(iv)を塩基の存在下溶媒中で反応させて不飽和カルボン酸エステル(v)とする(反応式[2])。次に得られたエステル(v)を加水分解させることでα位にフッ素原子を有する不飽和カルボン酸(vi)を得る(反応式[3])。一般式(vi)において、W−O−CRはWに含まれ、一般式(vi)は一般式(1)の1つの態様を示す例である。
【0101】
一般式(1)で表わされる含フッ素不飽和カルボン酸オニウム塩は、一般式(4)で示される含フッ素不飽和カルボン酸と対応するオニウム塩を混合することで得ることが可能である。また、一般式(4)で示される含フッ素不飽和カルボン酸と無機塩基を反応させて一度無機塩とし(第1工程)、得られた無機塩を対応するオニウム塩と作用させてオニウム塩交換する(第2工程)のが効率の良い方法である。無機塩基に特に制限は無く価数に関係なく使用できるが、アルカリ金属塩を使用するのが好ましい(スキーム1)。
【0102】
【化25】

【0103】
(式中、R、R、W、Qは、一般式(1)におけるR、R、W、Qと同義である。BとXはそれぞれ1価のアニオンを示し、Mは1価のアルカリ金属カチオンを示す。)
まず第1工程について述べる。一般式(4)で示される含フッ素不飽和カルボン酸に対する無機塩基のモル比は、無機塩基が1価の場合、通常、0.9〜3.0、好ましくは1.0〜1.5であり、さらに好ましくは1.0〜1.2である。1.0以下のモル比でも目的とする無機塩は得られるが、収率が下がるので好ましくない。従って、1.0以上のモル比の無機塩基を使用するのが好ましい。また、1.5以上のモル比の無機塩基を使用することも可能であるが、第2工程のオニウム塩交換の効率が下がるので好ましくない。無機塩基が2価の場合には、上述した1価の場合の2分の1の量を用いるのが好ましい。
【0104】
無機塩基は上述した通り、特に制限は無く価数に関係なく使用できるが、アルカリ金属塩を使用するのが好ましい。アルカリ金属塩としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩などがあげられ、好適には、アルカリ金属水酸化物が挙げられる。
【0105】
この反応は、通常、無機塩基の水溶液を使用する。水溶液の濃度に特に制限はないが、あまり薄い濃度では効率が悪いため、5%〜48%の濃度が好ましい。
【0106】
反応は、一般式(4)で示される含フッ素不飽和カルボン酸と無機塩基水溶液とを混合することによって進行させることができる。
【0107】
また必要に応じて、水と有機溶媒とを併用することができる。併用する有機溶媒に特に制限は無い。一般式(5)で示される含フッ素不飽和カルボン酸無機塩を水層から抽出できる有機溶媒、例えば、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化アルキル類等の、水と混合しない有機溶剤が好ましい。
【0108】
反応温度は、通常、0〜100℃、好ましくは5〜80℃であり、反応時間は、通常、10分〜16時間、好ましくは30分〜6時間であるが、薄層クロマトグラフィー(TLC)や核磁気共鳴装置(NMR)などの分析機器を使用し,原料である一般式(4)で示される含フッ素不飽和カルボン酸が消費された時点を反応の終点とすることが好ましい。
【0109】
このようにして得られた一般式(5)で示される含フッ素不飽和カルボン酸無機塩は、必要に応じて、有機溶剤で抽出したり、再結晶で精製したりすることもできる。
【0110】
しかしながら、一般式(5)で示される含フッ素不飽和カルボン酸無機塩を水層から抽出できる、水と混合しない有機溶剤を使用し、必要量の無機塩基水溶液を添加するのみで、目的とする含フッ素不飽和カルボン酸無機塩を単離することなく次の第2工程に進むのが効率のよい方法である。有機溶媒としては、ハロゲン化アルキル類等が使用でき、例えば、塩化メチレン、クロロホルム等を例示することができる。
【0111】
次いで第2工程について述べる。第2工程は、第1工程で得られた一般式(5)で示される含フッ素不飽和カルボン酸無機塩を、一般式(6)で示される一価のオニウム塩
【0112】
【化26】

【0113】
(式中、Qは、一般式(1)におけるQと同義である。Xは1価のアニオンを示す。)を用いてオニウム塩交換し、一般式(1)で表わされる含フッ素不飽和カルボン酸オニウム塩を得る工程(オニウム塩交換工程)である。
【0114】
ここで使用されるQとしては、前述したQを再び例示できる。
【0115】
一般式(6)におけるXの1価のアニオンとしては、例えば、F、Cl、Br、I、ClO、HSO、HPO、BF、PF、SbF、脂肪族スルホン酸アニオン、芳香族スルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、脂肪族カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン、フルオロカルボン酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン等を挙げることができ、好ましくは、Cl、Br、HSO、BF、脂肪族スルホン酸イオン等であり、さらに好ましくは、Cl、Br、HSOである。
【0116】
一般式(6)で示される一価のオニウム塩の、一般式(5)で示される含フッ素不飽和カルボン酸無機塩に対するモル比は、通常、0.5〜10.0、好ましくは0.8〜2.0であり、さらに好ましくは0.9〜1.2である。
【0117】
この反応は、通常、反応溶媒中で行われる。前記反応溶媒としては、水や、例えば、低級アルコール類、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、クロロホルム等の有機溶媒が好ましく、さらに好ましくは、水、メタノール、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム等であり、特に好ましくは水、ジクロロメタン、クロロホルムである。
反応温度は、通常、0〜80℃、好ましくは5〜30℃であり、反応時間は、通常、10分〜16時間、好ましくは30分〜6時間であるが、薄層クロマトグラフィー(TLC)や核磁気共鳴装置(NMR)などの分析機器を使用し,原料である一般式(5)で示される含フッ素不飽和カルボン酸無機塩が消費された時点を反応の終点とすることが好ましい。
【0118】
このようにして得られた一般式(1)で表わされる含フッ素不飽和カルボン酸オニウム塩は、必要に応じて、反応液を濃縮したり、有機溶剤で抽出した後に溶媒を留去したりして取り出すことができ、固体として取り出すこともできる。ここで抽出に使用される有機溶剤は、水と混合しない有機溶剤であり、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;ジエチルエーテル等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化アルキル類等が挙げられる。
【0119】
取り出した固体は再結晶等の方法で精製することもできる。こうして目的とする一般式(1)で表わされる含フッ素不飽和カルボン酸オニウム塩を得ることができる。
【0120】
<含フッ素カルボン酸オニウム塩を含む樹脂>
本発明の一般式(1)で表される含フッ素不飽和カルボン酸オニウム塩を単独重合または共重合させることによって、含フッ素カルボン酸オニウム塩を含む樹脂を製造することができる。
【0121】
この樹脂を、高エネルギー線で露光することによって、Qが脱離し、その後の繰り返し単位の末端はジフルオロカルボン酸に変換される。ここで高エネルギー線は特に限定されないが、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザーなどのエキシマーレーザーやシンクロトロン放射で発生する近紫外線、遠紫外線、極端紫外線(EUV)、電子線などの荷電粒子線、軟X線、X線、γ線などの高エネルギー線が例示でき、特に微細加工を行なおうとする場合には、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザーなどのエキシマーレーザーやシンクロトロン放射で発生する近紫外線、遠紫外線、極端紫外線(EUV)などの波長300nm以下の高エネルギー線が有効である。
【0122】
の脱離した後の繰り返し単位の末端はジフルオロカルボン酸であり、非常に強い酸性を示し、化学増幅型レジスト組成物用の光酸発生剤として機能する。従って、本発明の一般式(1)で表される含フッ素不飽和カルボン酸オニウム塩を単独重合または共重合させることによって得られる含フッ素カルボン酸オニウム塩を含む樹脂は、光酸発生剤として機能し、この樹脂が感光溶解性変化機能を有する場合は単独で、この樹脂が感光溶解性変化機能を有しない場合は感光溶解性変化機能を有する樹脂とを少なくとも組み合わせ、さらに溶剤を少なくとも含む組成物は、レジスト組成物として使用できる。
【0123】
含フッ素カルボン酸オニウム塩を含む樹脂としては、その使用目的により一般式(1)で表される構造を有する含フッ素カルボン酸オニウム塩から形成される繰り返し単位からなる樹脂、または酸不安定性基を有する繰り返し単位と含フッ素カルボン酸オニウム塩から形成される繰り返し単位からなるカルボン酸塩樹脂とすることができ、これらの何れにもその他の繰り返し単位(本明細書において「従繰り返し単位」という。)を含むことができる。従繰り返し単位とは、含フッ素カルボン酸オニウム塩から形成される繰り返し単位、酸不安定性基を有する繰り返し単位の何れにも該当しない繰り返し単位をいう。また、従単量体とは、二重結合が開裂して従繰り返し単位を形成する単量体をいう。
【0124】
したがって、含フッ素カルボン酸オニウム塩を含む樹脂は一般式(1)で表される構造を有する含フッ素カルボン酸オニウム塩を単独重合して得られる、含フッ素カルボン酸オニウム塩から形成される繰り返し単位のみからなる単独重合体であってもよく、従繰り返し単位を含むものであってもよい。これらはそれ自身ポジ型のレジストとしては使用できないが、ベース樹脂とともに光酸発生剤としてレジスト組成物を構成できる。
【0125】
<酸不安定性基>
本発明の感光溶解性変化機能を有する含フッ素カルボン酸オニウム塩を含む樹脂における酸不安定性基は、光の作用により酸発生剤等の酸発生剤機能を有する部位から発生した酸により解離する基であり、公知のものを使用することができる。化学増幅型であることが好ましく、例えば、1,1−ジメチルプロピル基が例示できる。
【0126】
<ベース樹脂>
本明細書において、ベース樹脂とは、酸不安定性基を有しポジ型のレジスト機能を有する樹脂をいう。前記感光溶解性変化機能を有する含フッ素カルボン酸オニウム塩を含む樹脂もベース樹脂の一形態である。
【0127】
化学増幅用レジスト組成物は、一般に、ベース樹脂、光酸発生剤、溶剤を含有しているが、これら以外に、必要に応じて、塩基性化合物、溶解阻止剤等の添加剤を加えることもできる。
【0128】
ポジ型レジスト組成物に用いるベース樹脂は、側鎖に酸不安定性基で保護されたカルボキシル基、ヒドロキシフェニル基などに含まれるヒドロキシル基を脱離部位として有する樹脂である。主鎖は重合性二重結合が開裂して形成される繰り返し単位から構成されている。
【0129】
ベース樹脂はレジストの特性を調節するため共重合体であることが多く各種の樹脂が提案されている。
【0130】
これらのベース樹脂は、前記含フッ素カルボン酸オニウム塩を含む樹脂の繰り返し単位を含むことができる。このベース樹脂は、含フッ素カルボン酸オニウム塩を含む樹脂が有する光酸発生剤としての機能を併せ有することとなり、酸不安定性基を有するベース樹脂と溶剤のみからポジ型レジスト組成物を調製することもできる。これらのレジスト組成物は、また、公知の光酸発生剤を併せて使用することも可能である。さらに、レジスト組成物の分野で通常使用されるその他の添加成分を併せて使用することも可能である。
【0131】
<塩基性化合物>
また、本発明の重合性単量体にかかるレジスト組成物には、クエンチャーとして、またはレジストパターン形状、引き置き経時安定性などを向上させるために、さらに任意の成分として、塩基性化合物を配合させることが好ましい。
【0132】
この塩基性化合物成分は、公知のもの、例えば、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド誘導体などを使用でき、そのうち、第2級脂肪族アミンや第3級脂肪族アミン、芳香族アミン類、複素環アミン類が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0133】
<溶媒>
含フッ素高分子化合物を薄膜に成膜する方法としては、例えば有機溶媒に溶解させて塗布、乾燥によって成膜する方法を用いることが可能である。使用する有機溶媒としては、含フッ素高分子化合物が可溶であれば特に制限されない。溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0134】
<酸発生剤>
本発明の重合性単量体にかかるレジスト組成物には、含フッ素カルボン酸オニウム塩を含む樹脂と併せて公知の光酸発生剤を使用することができる。光酸発生剤としては、化学増幅型レジストの酸発生剤として用いられるものの中から、任意のものを選択して使用することができる。光酸発生剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0135】
<パターン形成方法>
本発明の重合性単量体にかかるレジスト組成物の使用方法は、従来のフォトレジスト技術のレジストパターン形成方法を用いることができる。すなわち、まずシリコンウエーハやクロム薄膜をコートしたガラス板などのような基板に、レジスト組成物の溶液をスピンナーなどを用いて塗布し、乾燥することによって感光層を形成し、これに露光装置などにより高エネルギー線又は電子線を所望のマスクパターンを介して照射し、加熱する。次いでこれを現像液、例えば0.1〜10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液などのアルカリ性水溶液などを用いて現像処理する。この形成方法でマスクパターンに忠実なパターンを得ることができる。さらに、所望によってレジスト組成物に混和性のある添加物、例えば付加的樹脂、クエンチャー、可塑剤、安定剤、着色剤、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤、相溶化剤、密着剤、酸化防止剤などの種々添加剤を含有させることができる。
【0136】
本発明の重合性単量体にかかるレジスト材料で用いる高エネルギー線は特に限定されないが、特に微細加工を行なう場合にはArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザーなどの近紫外線(波長380〜200nm)もしくは真空紫外線(遠紫外線、VUV,波長200〜10nm)、シンクロトロン放射光などの極端紫外線(EUV、波長10nm以下)、軟エックス線、X線またはγ線などで300nm以下のものや電子線が有効である。本発明のパターン形成方法では、このような300nm以下の短波長の高エネルギー線や電子線の発生源を備えた露光装置を用いることが有効である。また、光路の一部に水やフッ素系の溶媒など、使用する高エネルギー線の吸収が少ない媒質を用い、同一の開口数や有効波長においてより効率的な微細加工を可能とする液浸露光装置を使用することが有効であり、本発明の重合性単量体にかかるレジスト組成物は、このような装置に用いる場合にも好適である。
【実施例】
【0137】
以下、実施例、参考例例および参考比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例中、Meはメチル基を示す。また、共重合組成比はモル比であり、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量を示す。
【0138】
[実施例1]
2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシペンタン酸トリフェニルスルホニウムの合成
【0139】
【化27】

【0140】
滴下ロートを備えた1Lのガラスのフラスコにメタクリル酸1−ヒドロキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル108g(0.486mol)とクロロホルム108gを加え、0℃に冷却し撹拌した。その後10質量%水酸化ナトリウム水溶液224g(0.560mol/1.15当量)を滴下し、室温で1時間撹拌した。その後、トリフェニルスルホニウムブロミド169g(0.492mol/1.01当量)をクロロホルム432gに溶解させた溶液を加え、さらに室温で1時間撹拌した。H NMRにより反応終了を確認した後、分液し有機層を水300gにより3回洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮し、2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシペンタン酸トリフェニルスルホニウム238g(収率81%、純度80%)を得た。
【0141】
[2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシペンタン酸トリフェニルスルホニウムの物性]
H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ=7.67(m,15H;Ph基)、6.10(s,1H;=CH)、5.53(m,1H;CH−O)、5.47(s,1H;=CH)、1.86(s,3H;CH−C)、1.84(m,1H;CH−CHCHのCH)、1.71(m,1H;CH−CHCHのCH)、0.83(t、J=7.6 Hz,3H;CH−CHCHのCH).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ=−111.52(d,J=244Hz,1F)、−118.07(d,J=244Hz,1F)。
【0142】
[参考例1]ポリマー合成例1
窒素雰囲気下、200mLの滴下シリンダーに4−ヒドロキノンモノメタクリレート13.74g、アセナフチレン3.00g、4−アミロキシスチレン12.47g、参考例1で調整した2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシペンタン酸トリフェニルスルホニウム0.79g、ジメチル−2,2’−アゾビス−(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業社製、商品名V601)を3.02g、溶媒としてメチルエチルケトンを42g加えた溶液を調製した。さらに窒素雰囲気下とした別の200mL重合用フラスコに、メチルエチルケトンを28g加え、80℃に加温した状態で、先に調製した溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合温度を80℃に維持しながら4時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を600gのヘキサンに滴下し、析出した共重合体を濾別した。濾別した共重合体をヘキサン150gで二回洗浄した後、メチルエチルケトン70gに溶解して調製した溶液を、0.02μmのナイロンフィルターに通した後ヘキサン600gに滴下し、析出した共重合体を濾別した。濾別した共重合体をヘキサン150gで二回洗浄し、乾燥して白色の共重合体(ポリマー1、P−01)を28g得た。分子量Mw=3530(Mw/Mn=1.40))。
【0143】
【化28】

【0144】
[参考例2]比較用ポリマーの合成
既知の方法で下記構造のポリマー−M(P−M)を調製した。分子量Mw=3940(Mw/Mn=1.45)。
【0145】
【化29】

【0146】
[参考例3〜4、参考比較例1]ポジ型レジスト材料の調製
上記で合成したポリマー1および比較用ポリマー−M、下記式で示される酸発生剤(PAG−A)、塩基性化合物(Base−1)を表1に示す組成で有機溶剤中に溶解してレジスト材料を調合し、更に0.02μmサイズのナイロンまたはUPEフィルターで濾過することにより、ポジ型レジスト材料の溶液をそれぞれ調製した。
【0147】
【化30】

【0148】
表1中の有機溶剤は、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、EL(乳酸エチル)、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)である。
【0149】
また、各溶液には、界面活性剤として3−メチル−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシメチル)オキセタン・テトラヒドロフラン・2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール共重合物(オムノバ社製)(構造式を以下に示す。)をポリマー100質量部に対して0.1質量部添加した。
【0150】
【化31】

【0151】
【表1】

【0152】
[参考例5]電子ビーム描画評価
上記調製したポジ型レジスト材料(参考例1〜2、参考比較例1)をACT−M(東京エレクトロン(株)製)152mm角の最表面が酸化窒化クロム膜であるマスクブランク上にスピンコーティングし、ホットプレート上で110℃で600秒間プリベークして60nmのレジスト膜を作製した。得られたレジスト膜の膜厚測定は、光学式測定器ナノスペック(ナノメトリックス社製)を用いて行った。測定はブランク外周から10mm内側までの外縁部分を除くブランク基板の面内81ヶ所で行い、膜厚平均値と膜厚範囲を算出した。更に、電子線露光装置((株)ニューフレアテクノロジー製、EBM−5000plus、加速電圧50keV)を用いて露光し、110℃で600秒間ベーク(PEB:post exposure bake)を施し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で現像を行うと、ポジ型のパターンを得ることができた。更に得られたレジストパターンを次のように評価した。
【0153】
作製したパターン付きウエハーを上空SEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、200nmの1:1のラインアンドスペース(LS)を1:1で解像する露光量を最適露光量(uC/cm)とし、200nmのラインアンドスペースを1:1で解像する露光量における最小寸法を限界解像度とし、100nmLSのエッジラフネス(LER)をSEMで測定した。パターン形状については、断面の形状が矩形か否かを目視にて判定した。EB描画における本発明のモノマーに係るレジスト材料及び比較用のレジスト材料の評価結果を表2に示す。
【0154】
【表2】

【0155】
上記表2に示す通り、本発明のモノマーに係るレジスト材料は、参考比較例1に挙げられたレジスト材料と比較して、解像性、ラインエッジラフネスに優れていることが示された。このことから、本発明のモノマーを用いることで、特に超LSI製造用の電子線リソグラフィーによる微細パターン形成材料、マスクパターン形成材料として好適な化学増幅型レジスト材料を調製するための共重合体を合成できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0156】
超LSI製造用の高エネルギー線リソグラフィーによる微細パターン形成材料、マスクパターン形成材料として好適な化学増幅型レジスト材料を調製するための光酸発生剤機能を有する共重合体を合成するモノマーとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表わされる含フッ素不飽和カルボン酸オニウム塩。
【化1】

(式中、Rは、下記式で表される重合性二重結合含有基の何れかを表し、
【化2】

は、フッ素原子または含フッ素アルキル基を表し、
は、二価の有機基を表し、
は、下記一般式(a)もしくは下記一般式(b)で示されるスルホニウムカチオン、または下記一般式(c)で示されるヨードニウムカチオンを示す。
【化3】

前記一般式(a)において、R、R及びRは相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。
【化4】

前記一般式(b)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0(零)又は1を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子を含んでいてもよい。
【化5】

前記一般式(c)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0(零)又は1を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子を含んでいても良い。)
【請求項2】
がフッ素原子である請求項1に記載の含フッ素不飽和カルボン酸オニウム塩。
【請求項3】
が下記一般式(a)で示されるスルホニウムカチオンである請求項1または2に記載の含フッ素不飽和カルボン酸オニウム塩。
【化6】

前記一般式(a)において、R、R及びRは相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。
【請求項4】
下式で表される、2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシペンタン酸トリフェニルスルホニウム。
【化7】


【公開番号】特開2011−173855(P2011−173855A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41165(P2010−41165)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】