説明

含フッ素化合物、それを用いる生体分子の検出方法

【課題】核磁気共鳴法を利用した生体分子のに用いられる新規な含フッ素化合物の提供。
【解決手段】式(1)で表される構造を有する含フッ素化合物で、該化合物は、例えば下式の反応で得られる化合物である。


(Rlは極性基を有する親水性リガンド、L1は、−NH−(CH2p−NHCO−(pは3以上10以下の整数)等、L2は、単数もしくは複数の−CH2−が独立して、−NH−、−O−、−CO−、−SO2−、アリーレン基で置換されていてもよいアルキレン基であり、Rfは、パーフルオロアルキル基等で置換されているアリール基であり、m、nは0もしくは1である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素化合物に関するものである。また、本発明は、含フッ素化合物の会合体に関する。また、本発明は、含フッ素化合物又はその会合体からなるプローブに関する。さらに本発明は、このプローブを使用した核磁気共鳴法による生体分子の検出あるいは定量方法または核磁気共鳴イメージング方法、疾病の診断方法に関する。さらには、本発明はこのプローブを含む試薬キット及びMRI造影剤に関する。本発明は、特に酵素の検出、定量、あるいはイメージングに用いることができる。
【背景技術】
【0002】
核磁気共鳴(nucleic magnetic resonance,NMR)を利用する分析手段は、生体分子構造や機能を解析できる極めて優れた手段である。この原理に基づいた核磁気共鳴イメージング法(magnetic resonance imaging,MRI)は、生体の病理学的な形態変化を画像化することで、疾患を診断する手法であり、すでに広範に利用されている画像診断技術である。現在のMRIは、生体内水分子の1H(プロトン)由来の磁気共鳴シグナルをイメージングしたものである。通常は、正常部位と異常部位のプロトン緩和時間の差をイメージングしている(例えば非特許文献1を参照)。現在臨床で用いられている常磁性鉄の造影剤は、プロトン由来の磁気共鳴シグナルを低下させることで造影効果を生み出している。
【0003】
近年では、検出核として 1H以外の核種を用いたMRIも試みられている。このような検出核としては、19F,23Na,31P,13C等が挙げられる。これらのうち、フッ素19Fは1Hと同様に天然存在率がほぼ100%のNMR核種であり、検出感度が 1Hの83%と高い。生体内のフッ素量は極めて少ないため、含フッ素化合物を造影剤として用いることにより、19Fを有する分子をプローブとしたイメージングが可能である(例えば特許文献1、2を参照)。フッ素イメージングは、汎用の1H用MRI装置で測定が可能である。19Fを有する分子は、インビボ以外でも、タンパク質の構造変化や相互作用の解析のためのプローブとして用いられているなど、19Fを検出核とするNMR(以下、F−NMRと略すことがある)、MRI(以下、F−MRIと略すことがある)は学術的にも臨床的にも利用価値は高い(例えば非特許文献2を参照)。たとえば、パーフルオロ化合物で標識した移植細胞の検出が生体内で行われている(例えば非特許文献3を参照)。アルツハイマーのアミロイドタンパクイメージング(例えば非特許文献4を参照)や腫瘍イメージングが報告されている(例えば非特許文献5を参照)。
【0004】
しかしながら、臨床で常用されている低磁場MRI装置を用いてイメージングを行うには、これらのフッ素化合物の検出感度は十分ではない。その結果、極めて長いイメージング時間が必要になる。したがって、高磁場MRI装置を用いることなく、F−MRIが臨床利用されるためには、高いシグナル/ノイズ比(S/N比)を有するF−MRI造影剤が必要である。従来報告されているF−MRI造影剤の中には、検出感度を高める目的で、分子中に複数個のフッ素原子を持つものもある。しかし、従来のフッ素を用いた造影剤用の化合物におけるフッ素原子数の増大は、同時に分子の水溶性を低下させる問題を生じさせる。投与量の増加により感度向上を図ることも考えられるが、造影剤の毒性が問題となる。
【0005】
高いシグナル/ノイズ比(S/N比)を有するF−MRI造影剤開発のアプローチとして、抗体などの特定の組織や細胞または特定の分子を特異的に認識する物質をフッ素でラベルすることが考えられる(例えば特許文献3を参照)。このアプローチにより、標的部位への集積が増加(Sが増加)し、結果、検出感度が上がることが期待される。別のアプローチとしては、生体分子、環境変化、あるいは代謝変化によって19Fプローブ化合物の構造や性質が変化し、その結果19Fの周辺の化学環境が変化する化合物が考えられる。例えば、通常は造影剤からのNMRシグナルがオフ状態であり、造影剤が標的部位に到着した時にシグナルがオンになるシステム、即ち、シグナルオフ−オンスイッチング造影剤を用いれば高いS/N比でイメージングすることが可能になると考えられる。近年、このような19Fシグナルのオフ−オンスイッチング機能を搭載したプローブが報告されている。一例として、特定の酵素に感受性を有するプローブ、たとえば、分解酵素(プロテアーゼ)を検出するF−MRIプローブ化合物が報告されている(例えば非特許文献6を参照)。これは、常磁性体であるガドリニウムとF原子をプロテアーゼの基質ペプチド両端に配置した化合物であり、プロテアーゼ非存在下では、ガドリニウムの常磁性効果によりF−NMRシグナルが観察されない。一方、プロテアーゼで切断されると、常磁性効果から開放されたF原子からのNMRシグナルが観測される。このオフ−オンスイッチングプローブは、プローブ化合物が切断されることが特徴であり、分解酵素以外の酵素に適応することは困難である。また、ガドリニウムの毒性も問題となる。この課題を解決するプローブならびに酵素検出手法はこれまでに知られていない。従って、標的分子を認識し、該標的に結合した状態で初めてシグナルがONになる、オフ−オンスイッチング19Fプローブ化合物の出現が要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06−181890号公報
【特許文献2】特表平05−506432号公報
【特許文献3】特開平11−012295号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Soher BJ et al., Magn Reson Imaging Clin N Am., 3, 277-290, 2007
【非特許文献2】Yu JX et al., Curr Med Chem., 12, 819-848, 2005
【非特許文献3】Ahrens ET et al.,Nat Biotechnol., 23, 983-987, 2005
【非特許文献4】Higuchi M et al., Nat Neurosci., 8, 527-533, 2005
【非特許文献5】Mason RP et al., Magnetic Resonance Imaging, 7, 475-485, 1989
【非特許文献6】Mizukami S et al., J Am Chem Soc., 130, 794-795, 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、様々な疾患の研究、診断および治療において、標的生体分子を特異的にインビトロ、インビボで検出できる化合物ならびに該化合物を用いた検出方法を提供することである。具体的には、バックグラウンドとのコントラストを向上させるため、標的分子存在下でのみF核の磁気共鳴シグナルを発する含フッ素化合物からなるF−MRIのスイッチングプローブを提供することにある。
【0009】
そこで、本発明は従来技術の問題点を解決し、生体分子、特に酵素に結合する新規な含フッ素化合物ならびにそれを用いた酵素の核磁気共鳴法による検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、式(1)で表される構造を有する含フッ素化合物である。
【0011】
【化1】

【0012】
(ここで、Rlは極性基を有する親水性リガンドであり、L1は、−NH−(CH2p−NHCO−(pは3以上10以下の整数)もしくは−CH2−O−(CH22−(O−(CH223−O−CH2−であり、L2は、単数もしくは複数の−CH2−が独立して、−NH−、−O−、−CO−、−SO2−、アリーレン基で置換されていてもよいアルキレン基であり、Rfは、1以上の水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基、または水素原子のうち少なくとも一つがフッ素原子Fもしくはパーフルオロアルキル基で置換されているアリール基であり、mは0もしくは1であり、nは0もしくは1である。)
【発明の効果】
【0013】
本発明の含フッ素化合物は、体液などの水系の環境下において容易に会合体を形成する一方、特定の物質の存在下で親水性リガンドRlの働きによって会合が解ける。その結果、化合物からのフッ素原子FのNMRシグナルの変化が誘起される。この変化を測定することにより、親水性リガンドRlと相互作用する物質を特異的に検出もしくは定量することが可能なプローブとなりうる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】リガンドの異なる3種のアミドタイプ含フッ素化合物1,2,3(プローブ1,2,3)の合成スキームを示す図である。
【図2】リンカーの異なる4種のエステルタイプ含フッ素化合物、Amide-type(化合物A)、C2-type(化合物B)、C4-type(化合物C)、C8-type(化合物D)の合成スキームを示す図である。
【図3】(a)酵素hCA Iと含フッ素化合物共存下のF−NMRスペクトルを示す図である。Fのピークが-62.6ppmに現れている。(b) 含フッ素化合物のみのF−NMRスペクトルを示す図である。(c)酵素hCA Iと含フッ素化合物ならびにhCA I阻害剤(Et, Ki = 8 nM)共存下のF−NMRスペクトルを示す図である。
【図4】(a〜e)含フッ素化合物の濃度を一定にし、様々な濃度のhCA Iを添加した際のF−NMRスペクトルを示す図である。(f)F−NMRシグナル(-62.6ppm)のピーク強度とhCA I 濃度の関係を示す図である。
【図5】(a)含フッ素化合物の濃度と600 nmの吸光度の関係を示す図である。(b)hCA I添加前後の含フッ素化合物水溶液の600 nmの吸光度を示す図である。
【図6】(a)動的光散乱測定による含フッ素化合物(SA-type)からなる会合体の粒径分布を示す図である。(b)粒径の濃度依存性を示す図である。
【図7】含フッ素化合物からなる会合体のTEM像を示す図である。(左)スケール500nm(右)スケール 2μm。
【図8】酵素共存下の含フッ素化合物からなる会合体のTEM像を示す図である。スケール500 nm。
【図9】タンパク質擬似夾雑系における、(a)酵素hCA Iと含フッ素化合物共存下のF−NMRスペクトルを示す図である。Fのピークが-62.6ppmに現れている。(b)含フッ素化合物のみのF−NMRスペクトルを示す図である。
【図10】70%FBS中における、(a)酵素hCA Iと含フッ素化合物共存下のF−NMRスペクトルを示す図である。Fのピークが-62.6ppmに現れている。(b)含フッ素化合物のみのF−NMRスペクトルを示す図である。
【図11】赤血球内における、(a)含フッ素化合物のF−NMRスペクトルを示す図である。Fのピークが-62.6ppmに現れている。(b)阻害剤を含む含フッ素化合物のF−NMRスペクトルを示す図である。
【図12】動的光散乱測定による含フッ素化合物2からなる会合体の粒径分布を示す図である。
【図13】様々な塩濃度における含フッ素化合物2のF−NMRスペクトルを示す図である。
【図14】(a〜d)様々なpHならびに塩濃度における含フッ素化合物2のF−NMRスペクトルを示す図である。(e)トリプシン共存下における含フッ素化合物2のF−NMRスペクトルを示す図である。
【図15】(a)酵素hCA Iと含フッ素化合物(C2-type)共存下のF−NMRスペクトルを示す図である。Fのピークが-62.6ppmに現れている。(b)含フッ素化合物(C2-type)のみのF−NMRスペクトルを示す図である。
【図16】(a)酵素hCA Iと含フッ素化合物(C4-type)共存下のF−NMRスペクトルを示す図である。Fのピークが-62.6ppmに現れている。(b)含フッ素化合物(C4-type)のみのF−NMRスペクトルを示す図である。
【図17】(a)酵素hCA Iと含フッ素化合物(C8-type)共存下のF−NMRスペクトルを示す図である。Fのピークが-62.6ppmに現れている。(b)含フッ素化合物(C8-type)のみのF−NMRスペクトルを示す図である。
【図18】(a)酵素hCA Iと含フッ素化合物(Amide-type)共存下のF−NMRスペクトルを示す図である。Fのピークが-62.6ppmに現れている。(b)含フッ素化合物(Amide-type)のみのF−NMRスペクトルを示す図である。
【図19】含フッ素化合物(C4-type)の濃度と600nmの吸光度の関係を示す図である。
【図20】(a,b)動的光散乱測定による含フッ素化合物(C4-type)からなる会合体粒径の濃度依存性を示す図である。(b)含フッ素化合物(C4-type)からなる会合体粒径の濃度依存性を示す図である。(c)酵素hCA IIと含フッ素化合物(C4-type)共存下の粒径分布を示す図である。
【図21】酵素hCA II添加前後の含フッ素化合物(C4-type)溶液の600nmの吸光度を示す図である。
【図22】(a)酵素hCA Iと含フッ素化合物 5共存下のF−NMRスペクトルを示す図である。Fのピークが-62.6ppmに現れている。(b)含フッ素化合物 5のみのF−NMRスペクトルを示す図である。
【図23】酵素hCA共存下、非共存下での含フッ素化合物(プローブ 1)の1H/19FのMRI像を示す図である。
【図24】本発明の含フッ素化合物からなる会合体を用いた酵素のF−NMR検出の実施形態を示す模式図である。
【図25】化合物6(Biotin-type F)のアビジン共存下、非共存下におけるF−NMRスペクトルを示す図である。(a)Biotin-type Fとアビジン(Avidin)、(b)Biotin-type Fのみ、(c)Biotin-type Fとアビジン(Avidin)とビオチン(Biotin)。
【図26】プローブ1が形成する会合体の顕微鏡観察像を示す図である。(a)TEM像、(b)AFM像、(c)SEM像。スケールバー 0.5μm。
【図27】プローブ1によるhCAのF−MRIならびに阻害剤アッセイの結果を示す図である。(a)hCA阻害剤の化学構造式、(b)赤血球中でのF−NMRスペクトル(上:プローブ1のみ、中:EZA5等量共存下、下:SBA5等量共存下)、(c)試験管内H−MRI、(d)試験管内F−MRI、(e)赤血球中F−MRI。
【図28】F-probe 7の合成スキームを示す図である。
【図29】(a)F-probe7の構造式、(b)バッファー水溶液中のF-probe7の19F-NMRスペクトル、(c)70% CD3OD(重エタノール)中のF-probe7の19F-NMRスペクトルを示す図である。
【図30】化合物8(c(RGDyK)-19F2)の合成スキームを示す図である。
【図31】c(RGDyK)ペプチドの合成スキームを示す図である。
【図32】合成したc(RGDyK)ペプチド粗精製物のHPLCチャートを示す図である。
【図33】c(RGDyK)-19F2の合成スキームを示す図である。
【図34】c(RGDyK)ペプチドとフッ素化合物A-3の縮合反応物のMALDI-TOF-MSスペクトルを示す図である。
【図35】縮合反応物のHPLCチャート(a)と、ターゲット化合物の構造式(b)、ならびにメジャーフラクションの分取後のマススペクトル(c)を示す図である。
【図36】化合物8(c(RGDyK)-19F2)のF−NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明につき詳細に説明する。本発明の化合物は、下記の式(1)で表される構造を有する含フッ素化合物である。
【0016】
【化2】

【0017】
式中、Rlは極性基を有する親水性リガンドであり、即ち、検出すべき特定の標的物質(主に、生体分子であるので、以下、生体分子について述べる)に対して特異的な親和性を有する水溶性の物質であることを意味する。なお、特異的な親和性を有する物質とは、検出すべき特定の生体分子に特異的に結合する水溶性の物質も含む概念である。
【0018】
この定義において、特異的な親和性を有する物質とは、例えば抗体、抗体フラグメント、レセプター、酵素、酵素基質、酵素阻害剤や、細胞あるいは生体組織と特異的な結合を形成する部分を有する、ペプチド、タンパク質、ヌクレオチド、リボ核酸、デオキシリボ核酸、リポタンパク質、炭水化物、単糖、オリゴ糖、多糖または脂質、ビタミン、もしくはそれらの誘導体あるいはそれらの複合体のいずれかであれば特に制限はされず、検出すべき分子に対し適時選択することができる。これらの物質は生体由来物質であってもよく、また合成物質であっても良い。高い検出感度という観点からは、前記リガンドは検出すべき特定の生体分子に特異的に結合する物質であることが好ましく、酵素をターゲットにするプローブにおいては、該酵素の阻害剤あるいはその誘導体をリガンドとして用いることが特に好ましい。本発明の含フッ素化合物の特徴は、分子が両親媒性の性質を有していることである。即ち、含フッ素残基は疎水性を示すが、親水性のリガンドを有することにより、水中で安定な会合体を形成する(実施例で後述する)。水溶性であることは、化合物の体内残留性ならびに毒性を低減させることに寄与する。
【0019】
式(1)で表される含フッ素化合物において、リンカーとしてのL1は、−NH−(CH2p−NHCO−(pは3以上10以下の整数)もしくは−CH2−O−(CH22−(O−(CH223−O−CH2−である。また、上記化学式(1)においてmは0もしくは1である。本発明においては、リガンドとフッ素プローブ部位との最適な距離を維持し、酵素などの標的生体分子の活性部位にリガンドを確実に作用させる鎖長を確保する観点から、L1が下記式(2)であることが特に好ましい。
【0020】
【化3】

【0021】
式(1)で表される含フッ素化合物においてL2は、単数もしくは複数の−CH2−が独立して、−NH−、−O−、−CO−、−SO2−、アリーレン基で置換されていてもよいアルキレン基である。アルキレン基の炭素数は、例えば1から20とすることができ、前記官能基による置換率は特に制限されないが、例えば40〜70%とすることができる。前記リンカーL1と同様に、プローブ分子の設計や合成の容易さの観点から、さらにはリガンドとフッ素プローブ部位との最適な距離を維持する観点から、特に下記式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)のいずれかから選ばれることが好ましい。これらのうち、スルホン酸エステルを含むリンカーと比べ、化合物の安定性や合成の容易さから、特に下記式(3)のスルホン酸アミドを有するリンカーを好適に用いることができる。
【0022】
【化4】

【0023】
式(1)で表される含フッ素化合物において、Rfは含フッ素残基を表し、1以上の水素原子がフッ素原子Fで置換されたアルキル基、または水素原子のうち少なくとも一つがフッ素原子Fもしくはパーフルオロアルキル基で置換されているアリール基(Ar)である。ここでアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラニル基、ペリレニル基、ピレニル基などが挙げられる。Rfは分子全体の水溶性を著しく損なわないのであれば、その構造は特に制限されない。しかし、含まれるフッ素の割合が少ないとF−NMRシグナルが弱くなり、多いと水に対する溶解度が低下するため、分子全体として最適な構造を選択することが望ましい。Rf部位の例としては−(CF2qCF3、−Ar−(CF2qCF3、−Ar−(CF3m、−Ar−(F)mである(式中、Arはアリール基、mは1〜5の整数、qは0〜5の整数)。
【0024】
フッ素原子Fの造影剤として用いられる長鎖フルオロアルキル、パーフルオロカーボンなどの複数のフッ素原子を一分子内に有するものでは、それぞれのフッ素原子Fのケミカルシフトが実質的に異なるために、全てのフッ素原子FからのNMRシグナルを有効に取得できず、検出感度を低下させる原因となりうる。即ち、このようなフッ素原子Fそれぞれの磁気的環境が異なるプローブでは、イメージングシグナルとして利用出来るのはその内の一部である場合が多く、ケミカルシフトのばらつきはイメージのアーティファクト出現の原因になる。したがって、フッ素原子FのNMRシグナルを検出するにあたり、該NMRシグナルを有効に取得するためには、複数のフッ素原子はそれぞれのNMRケミカルシフトが実質的に同じであることが好ましい。さらに本発明の含フッ素化合物の特徴である水中における会合体形成に関していえば、含フッ素残基は、水中における会合の駆動力の元になるため、十分に疎水性でなければならない。これらのことから、本発明の含フッ素化合物において好ましい具体例は含フッ素残基Rfが下記式(8)で表される場合であり、特に好ましい具体例は、含フッ素残基Rfが下記式(9)で表される場合である。実施例で後述するように、この含フッ素残基のフッ素原子FのNMRシグナルはきわめて鋭い単一ピークを示す。
【0025】
【化5】

【0026】
(式中、mは1〜5の整数を表す。)
【0027】
【化6】

【0028】
本発明にかかる含フッ素化合物は、実施例で後述するように、水溶液中で複数の含フッ素化合物からなる水溶性の会合体として存在する。これは、含フッ素残基の疎水性相互作用によるものと考えられる。本発明の含フッ素化合物からなる会合体の特徴は、会合状態ではフッ素原子FのNMRシグナルは観測されず、具体的には、著しいピークブロードニングが生じる。この原因は、フッ素原子が会合しているために見かけの分子量の増大で緩和時間が短くなりブロードニングする、あるいはそれぞれの核の磁気的異方性により、ケミカルシフトが複雑に分裂するために見かけ上ブロードニングする、の2つの原因が考えられる。これら2つの原因は共通している点があり、即ち、分子量の増大によって固体状態に近づく、すなわち分子の運動が抑制されるためにピークブロードニングが起こっていると考えられる。一方で、標的生体分子が前記会合体と接触することで、生体分子と該会合体のリガンドとの相互作用により、会合体は不安定化あるいは崩壊し、モノマー分散が起こる。実施例で後述するように、モノマー分散した状態ではフッ素原子FのNMRシグナルは明確に観察される。これは、会合体の状態とは異なり、ケミカルシフトの異方性が平均化されることに起因する。従って、本発明の特徴の一つは、標的生体分子の在否に依存してフッ素原子FのNMRシグナルがオフーオンスイッチングするという点にある。図24に、本発明の含フッ素化合物からなる会合体を用いた生体分子のF−NMR検出システムの模式図を示した。FのNMRシグナルのピーク面積は標的生体分子の量あるいは活性に依存するため、本発明のシステムでは生体分子を定量的に検出可能である。先に報告されているプロテアーゼF−MRIプローブ(Mizukami S et al., J Am Chem Soc., 130, 794-795, 2008)では、分解酵素を対象としたプローブであり、またガドリニウム金属を含有しているため、その毒性が問題となる。一方で、本発明にかかる含フッ素化合物またはその会合体からなる、生体分子を検出するためのプローブは、標的物質である生体分子は制限されず、毒性が懸念される金属を含まない有機分子であるという特徴を有する。
【0029】
本発明の化合物の重要かつ有効なターゲットのひとつとして、酵素がある。酵素の検出ならびにある特定の酵素に対する阻害剤スクリーニング、ある特定の阻害剤に対する酵素スクリーニングに用いることができる。ここで酵素阻害剤とは、酵素と結合することにより、酵素の触媒反応を阻害する化学物質を意味する。
【0030】
酵素の一例として、炭酸脱水酵素(carbonic anhydrase)がある(以下CAと略すことがある)。炭酸脱水酵素は二酸化炭素と水を重炭酸イオンと水素イオンに変換する酵素であり、ほとんどの炭酸脱水酵素は活性中心に亜鉛イオンを有している。生体内では、pH調節や酸塩基平衡の維持、組織からの二酸化炭素の輸送に関わっている。炭酸脱水素酵素阻害薬としてスルホンアミド誘導体であるアセタゾラミドがあり、緑内障の治療薬として用いられている。従って、炭酸脱水酵素に対するリガンド(本発明におけるRl)として、炭酸脱水酵素の阻害剤あるいは該阻害剤の誘導体、より具体的には、アリールスルホンアミド(Arylsulfonamide)などの芳香環式スルホンアミド、複素環式スルホンアミド、などのスルホンアミド誘導体が好ましい。より具体的にはRlが下記式(10)に示される構造のリガンドが好適に用いられる。
【0031】
【化7】

【0032】
ターゲット酵素のひとつとして、セリンプロテアーゼの一種であるトリプシンがある。この酵素はリジンやアルギニンのような塩基性アミノ酸のカルボキシル末端を加水分解するプロテアーゼである。臨床的には、血中のトリプシンを検査し、膵臓の病態や機能評価、経過観察が行われている。この酵素の阻害剤としてアルギニンのグアニジウム基に類似したアミジニウム型の阻害剤が知られている。従って、トリプシンに対するリガンド(本発明におけるRl)として、トリプシンの阻害剤あるいは該阻害剤の誘導体、より具体的には、アミジニウムカチオン含有化合物を用いることができる。より具体的にはRlが下記式(11)に示される構造のリガンドが好適に用いられる。
【0033】
【化8】

【0034】
他のターゲット酵素として、サーモライシンやマトリックスメタロプロテアーゼ(以下、MMPと略すことがある)がある。これらの酵素は共通して亜鉛を有する金属プロテアーゼである。サーモライシンは亜鉛を補酵素に持ち、フェニルアラニンやチロシンなどの疎水性アミノ酸のカルボキシル末端を加水分解する。この酵素の阻害剤として亜鉛の配位子であるヒドロキサム酸型阻害剤が知られている。一方、MMPはコラーゲンなどの細胞間マトリックスを加水分解し、細胞分裂や形態形成、腫瘍の浸潤や転移に深く関与している。活性部位に亜鉛分子を有しているため、亜鉛をキレートできる物質は、サーモライシンやMMPなどの亜鉛金属プロテアーゼの阻害剤として利用できる。従って、サーモライシンやMMPに対するリガンド(本発明におけるRl)として、これらターゲット酵素の阻害剤あるいは該阻害剤の誘導体、より具体的には、ヒドロキサム酸やその誘導体を用いることができる。より具体的にはRlが下記式(12)に示される構造のリガンドが好適に用いられる。このベンジルマロン酸型ヒドロキサム酸は、Ki = 20 μMという結合能を有する。
【0035】
【化9】

【0036】
本発明の化合物の具体例としての、酵素検出のためのプローブの好ましい例は、下記の式(13)〜(20)で表わされるものである。
【0037】
【化10】

【0038】
【化11】

【0039】
これらの化合物はリガンド部によってターゲットを選択的に認識・捕捉する機能を有する。いずれの化合物も、該酵素の阻害剤存在下ではターゲットとなる酵素を認識できないことから、リガンドがターゲットとなる酵素を認識していることが確認される。このようにして、これらの化合物は、水中において特定の酵素を認識し、結合することにより、酵素をF−NMR検出することが可能である。これらのことは、後述の実施例に示すように、F−NMRスペクトルを測定することによって確かめられている。かくして、本発明の例であるこれらの含フッ素化合物は、μMオーダーのきわめて低濃度の酵素の存在下に明瞭なNMRシグナルの変化を示す酵素の高感度検出化合物として機能する(後述の実施例参照)。
【0040】
本発明の含フッ素化合物は、酵素以外にも、様々なリガンド−レセプター相互作用を検出することが可能であることは明らかである。代表的な生体分子間相互作用として、水溶性ビタミンのビオチンと、アビジン(タンパク)あるいはアビジンとしての結合特性を維持しているアビジン誘導体)が挙げられる。これらは高親和性(1013M-1から1015M-1)かつ特異的に非共有結合的に相互作用する。通常の生理的条件下では、本質的に不可逆的相互作用であり、生体分子の分離精製、検出など、様々な医学生物学研究、臨床診断分野で応用されている。本発明において、下記式(21)で表されるビオチンリガンドを有する化合物の具体例は、下記の式(22)で表わされるものであり、アビジンタンパクの存在下で明瞭なNMRシグナルの変化を示す(後述の実施例参照)。したがって、本発明に係る含フッ素化合物において、Rlが下記式(21)であってもよく、本発明の化合物の具体例としての、酵素検出のためのプローブの好ましい例は下記の式(22)で表されるものである。
【0041】
【化12】

【0042】
本発明は、臨床的に有用なターゲット、例えば、疾病関連因子を検出あるいはイメージングするための含フッ素化合物を提供できる。本発明に係る含フッ素化合物によれば、例えば、腫瘍関連因子であるチロシンキナーゼ、例えばEGFRやインテグリンを標的とすることができる。
【0043】
チロシンキナーゼの一例であるEGFRは、細胞膜にあるチロシンキナーゼ型受容体糖タンパク質であり、上皮細胞成長因子(EGF)が結合することによって会合し、キナーゼ活性(チロシンのリン酸化)を発現するシグナル伝達分子である。細胞のがん化におけるEGFRの構造や機能が解明されつつあり、EGFRを標的とした薬剤の開発が行われている。代表的なものとして、ゲフィチニブ(Gefitinib)が知られており、EGFRのチロシンキナーゼ活性を選択的に阻害する化合物として開発されている。従って、チロシンキナーゼに対するリガンド(本発明におけるRl)としてチロシンキナーゼの阻害剤あるいは該阻害剤の誘導体を用いることができる。特に、ゲフィチニブの類似構造である4−アニリノキナゾリンもしくはその誘導体、例えば下記式(23)で表される化合物は、EGFRを選択的に検出、イメージングするための好適なリガンドとして用いる事が出来る。
【0044】
【化13】

【0045】
また、インテグリンは細胞接着分子のひとつであり、細胞間あるいは細胞と細胞間マトリックスの相互作用に関わる分子であり、従って、腫瘍部位の血管新生や腫瘍転移において重要な分子である。従って、本発明におけるRlとしてインテグリンと特異的な結合を形成する化合物を用いることができる。特に、血管新生部位の内皮細胞や腫瘍細胞に高発現していることがわかっているαvβ3インテグリンは、腫瘍の診断やイメージングの好適なターゲット分子である。このαvβ3インテグリンに高い親和性を持つリガンドとして、アルギニン(R)、グリシン(G)、アスパラギン酸(D)の配列からなるペプチド(RGD)が知られており、現在、RGD 配列を有する種々のRGD含有化合物がαvβ3 インテグリン阻害剤として開発されている。本発明におけるRlとしてRGDを用いる場合、下記の式(24)で表わされる化合物を例として挙げることができる。
【0046】
【化14】

【0047】
実施例で後述するように、本発明に係る含フッ素化合物は、リガンドRlを変えることで、様々な生体分子の相互作用を検出することが可能である。リガンド分子のサイズや電荷、親水性、疎水性といった性質から、リンカー分子やフッ素化合物を適切に選択し、会合体形成や解離が可能な含フッ素化合物を設計する。例えば、リガンドRlをRGDペプチド等の親水性の高いリガンドとする場合、Rfとして例えば、下記式(25)に示すような疎水性の高いフッ素化合物を好適に用いることが出来る。一方、4−アニリノキナゾリン誘導体のような疎水性の高いリガンドを用いる場合では、例えば、下記式(26)に示すような親水性のリンカー分子を用いることで、水中における会合体形成のための最適な両親媒性を分子に与える事が可能になる。
【0048】
【化15】

【0049】
本発明に係る生体分子を検出する方法は核磁気共鳴法を利用した検出方法であって、本発明に係るプローブ(本発明にかかる含フッ素化合物またはその会合体からなる、生体分子を検出するためのプローブ)と生体分子とを接触させ、該プローブと生体分子の複合体を形成させ、該複合体の形成をF−NMR検出する。検出は、該複合体の形成により誘発される、接触前後における該プローブが発するNMRシグナル(該プローブに由来するNMRシグナル)の変化を測定することにより行えばよい。より具体的な例として、水中では会合体を安定に形成する一方で、検出すべき生体分子の存在下では会合体が不安定化するあるいは会合体形成が困難となる性質を有する含フッ素化合物あるいはその会合体からなる本発明に係るプローブを用い、該生体分子の存否に依存して19Fを検出核とするNMRシグナルが変化することを利用して生体分子を検出する。なお、以上の生体分子の検出方法を用いて、該生体分子のイメージングを行うこともできる。
【0050】
また、本発明に係るプローブを必須成分として有するMRI用の造影剤を用いることにより、生体内の生体分子をF−MRI検出することができる(後述の実施例参照)。
【0051】
よって、本発明は、生体分子のNMR検出方法であって、本発明にかかる化合物を関心対象の生体分子と接触させる工程と、NMRの測定による化合物のNMRシグナル変化から生体分子の存在あるいは量を検出する工程とを有することを特徴とする、生体分子の検出方法を包含する。また、阻害剤をスクリーニングするためのプローブとしても利用できる。実施形態の一例として、目的分子に対し、様々な候補阻害剤と本発明の化合物の混合溶液を添加する。F−NMRシグナルの減少を指標に生体分子の阻害剤を簡便にスクリーニングできる。
【0052】
本発明の化合物は、上記の原理に基づいて、生体分子、例えば酵素のNMRイメージングに用いることができる。そのため、該化合物、該化合物の会合体、該化合物もしくは該化合物の会合体を含んでなるプローブは、酵素量との相関を有する疾病の検出、診断に用いることができ、好ましくは、疾病に関連した酵素の異常な発現のNMRイメージング方法に用いることもできる。化合物の使用は、培養された細胞や組織を測定試料として疾病の研究を目的として使用することができる。また、当該疾病の患者の状態の診断や健常者における疾病の予防のための診断を目的として、当該化合物を生体、あるいは生体から取得した細胞もしくは組織に導入して酵素のNMRイメージング方法に用いることもできる。
【0053】
本発明に係るプローブ(本発明にかかる含フッ素化合物またはその会合体からなるプローブ)を用いるNMRによる疾病の診断方法は、核磁気共鳴法を利用した疾病の診断方法であって、該疾病に関連する生体分子と本発明に係るプローブとを接触させる工程と、接触の前後での該プローブに由来する19Fを検出核とするNMRシグナルの変化を測定する工程と、前記NMRシグナルの変化から前記疾病の位置と状態をモニタリングする工程と、を少なくとも有する。
【0054】
本発明に係るプローブとして、水中では会合体を安定に形成する一方で、検出すべき生体分子の存在下では会合体が不安定化するあるいは会合体形成が困難となる性質を有する含フッ素化合物あるいはその会合体からなるプローブを用い、該生体分子の存否に依存して19Fを検出核とするNMRシグナルの変化から、該生体分子の検出やイメージングを行うことができる。さらにこの検出方法を用いて該生体分子に関連した疾病の位置と状態をモニタリングすることで疾病を診断することもできる。
【0055】
なお、上記、疾病の診断方法は本発明に係るプローブを培養細胞、生体から採取した細胞もしくは組織、又は生体に導入する工程を有していても良い。
【0056】
本発明はまた、上に定義した研究用あるいは診断用アッセイを実施するために使用できる試薬キットに関する。酵素などの生体分子の存在を検出あるいは定量あるいはイメージングするための試薬キットであって、少なくとも本発明に係るプローブを含んでなる試薬キットが提供される。更に、このような試薬キットは、必要であれば、その測定に使用される試薬、たとえばターゲット精製酵素もしくは該酵素を認識する抗体を含む。この抗体は、モノクローナル抗体やポリクローナル抗体であり、必要であれば検出のために標識されている抗体を含む。また、容器やバッファー類などのアッセイに必要な試薬類、陽性コントロール試薬、陰性コントロール試薬、酵素阻害剤、取扱説明書などを適宜含むことができる。上述したように、疾病に関連した酵素を検出することが出来る本発明はインビボ造影剤として用いることが出来る。本発明の化合物を主成分とする当造影剤は、疾病の診断を高感度に実施することができる非侵襲性の手段を提供する。なお、このような試薬キットは生体分子のイメージングに用いることも可能である。
【0057】
本発明の好適な実施形態にかかる含フッ素化合物は、水中で会合体を形成しており、生体分子などの標的物質と接触する前はFのNMRシグナルは検出されない。前記会合体は標的物質の存在下において、含フッ素化合物のリガンドと標的物質の相互作用の結果、会合が不安定化する。その結果、前記含フッ素化合物のFのNMRシグナルが観測できるようになる性質を有するので、標的物質を高いS/N比で検出することが可能になる。
【0058】
また、本発明の好適な実施形態にかかる含フッ素化合物には、原理的にはいかなる親水性リガンドでも適用できるため、酵素や疾患特異的タンパク質などの種々の生体分子を標的物質として選択的に検出するためのプローブとして用いることが出来る。このプローブは、様々な分子が混同する中、バックグラウンドの影響を受けずに標的物質を検出できるので、標的物質の局在や活性を非侵襲的に高感度でF−NMR検出あるいはF−NMRイメージングすることが可能になり、複雑な生体機能の解明ならびに種々の疾患の予防・診断・治療を行う上で非常に有効である。
【実施例】
【0059】
以下に、本発明の特徴をさらに明らかにするために実施例に沿って本発明を説明するが、本発明はこの実施例によって制限されるものではない。なお、本明細書および図面中の化学構造式においては、慣用的な表現法に従い、炭素原子や水素原子を省略して示していることもある。
(実施例1:含フッ素化合物(プローブ)の合成)
(実施例1―1:アミドタイププローブの合成)
図1に示すスキームに従ってリガンドの異なる3種の含フッ素化合物1,2,3(プローブ1,2,3)について合成を行った。
1. 化合物4 (1〜3の共通骨格)の合成
1-1. 化合物4-1の合成
【0060】
【化16】

【0061】
[実験操作]
50 mL二口ナスフラスコに3-クロロスルホニル-安息香酸クロリド (590 μL, 3.7 mmol, 2.5 eq)、無水塩化メチレン 5 mLを加え、アルゴン雰囲気下、tert-ブトキシカルボニル(Boc)-1.5-ジアミノペンタン (300 mg, 1.5 mmol, 1eq)、ジイソプロピルエチルアミン (390 μL, 2.3 mmol, 1.5eq)の無水塩化メチレン溶液 5 mLを、水浴下でゆっくり加え、さらに室温で2時間攪拌した。TLC (SiO2 / EtOAc : Hexane = 2 : 1)にて反応追跡を行い、目的化合物の生成を確認して反応を終了した。溶媒を真空ポンプにて減圧留去し、カラムクロマトグラフィー (SiO2 / EtOAc : Hexane = 1 : 1 )にて精製を行った。溶媒を減圧留去し、真空乾燥して、透明油状物を得た。同定は1H-NMRにより行った。
[実験結果]
透明油状物
収量 563 mg (収率 90 %)
【0062】
【表1】

【0063】
1-2. 化合物4-2の合成
【0064】
【化17】

【0065】
[実験操作]
100 mL二口ナスフラスコに3,5-ビス(トリフルオロメチル)-安息香酸 (500 mg, 1.94 mmol, 1eq)、水溶性カルボジイミド(WSC・HCl) (589 mg, 2.9 mmol, 1.5eq)、無水ジメチルホルムアミド 5 mLを加えたあと、アルゴン雰囲気下、室温で5分ほど攪拌したあと、Boc-1.5-ジアミノペンタン (510 mg, 2.52 mmol, 1.3 eq)を加え、アルゴン雰囲気下、室温で8時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)にて反応追跡を行い、目的化合物の生成を確認して反応を終了した。溶媒を真空ポンプにて減圧留去し、酢酸エチル (300 mL) を加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 (100 mL, 2回)、飽和食塩水 (100 mL, 2回)で洗浄を行った。有機相を無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、不溶物を濾別後、溶媒を減圧留去し、白色固体を得た。同定は1H-NMRにより行った。
[実験結果]
白色固体
収量 628 mg (収率 79 %)
【0066】
【表2】

【0067】
1-3. 化合物4の合成
【0068】
【化18】

【0069】
[実験操作]
50 mLナスフラスコに化合物4-2 (650 mg, 1.47 mmol, 1eq)、無水塩化メチレン 5 mL、トリフルオロ酢酸(TFA) 1 mLを加え、室温で2時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)にて反応追跡を行い、原料の消失と目的化合物の生成を確認して反応を終了した。溶媒を減圧留去後、トルエンとの共沸を2回行い、真空乾燥して透明油状物を690 mg (定量的) を得た。
【0070】
50 mL二口ナスフラスコに得られた化合物を全量 (690 mg, 2.21 mmol, 1.5eq)、無水塩化メチレン 5 mL、化合物4-1 (893 mg, 2.21 mmol, 1.5eq)、4-ジメチルアミノピリジン (18 mg, 0.15 mmol, 0.1eq)、N, N-ジイソプロピルエチルアミン (512 μL, 2.94 mmol, 2eq)を加え、アルゴン雰囲気下、室温で5時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)にて反応追跡を行い、目的化合物の生成を確認して反応を終了した。溶媒を真空ポンプにて減圧留去し、酢酸エチル (200 mL) を加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100 mL、3回)、飽和食塩水(100 mL、1回)で洗浄を行った。有機相を無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、不溶物を濾別後、溶媒を減圧留去したあと、カラムクロマトグラフィー (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)による精製を行った。溶媒を減圧留去し、白色固体を得た。同定は1H-NMRにより行った。
[実験結果]
白色固体
収量 440 mg (2steps ; 収率 42 %)
【0071】
【表3】

【0072】
2. 化合物1 (スルホンアミド(SA)-type ; hCA) の合成
2-1. 化合物1-1の合成
【0073】
【化19】

【0074】
[実験操作]
100 mL二口ナスフラスコに4-スルファモイル安息香酸 (500 mg, 2.5 mmol, 1 eq)、WSC・HCl (720 mg, 3.8 mmol, 1.5eq)、N, N-ジイソプロピルエチルアミン (1.3 mL, 7.5 mmol, 3eq)、無水ジメチルホルムアミド 20 mLを加えたあと、N-ヒドロキシスクシンイミド (374 mg, 3.3 mmol, 1.3eq)を加え、アルゴン雰囲気下、室温で4時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)にて反応追跡を行い、目的化合物の生成を確認して反応を終了した。溶媒を真空ポンプにて減圧留去し、酢酸エチル (300 mL) を加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 (100 mL, 3回)、蒸留水 (100 mL, 3回)、飽和食塩水 (100 mL, 3回)で洗浄を行った。有機相を無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、不溶物を濾別後、溶媒を減圧留去し、真空乾燥して、白色固体を得た。同定は1H-NMRにより行った。
[実験結果]
白色固体
収量 650 mg (収率 87 %)
【0075】
【表4】

【0076】
2-2. 化合物1の合成
【0077】
【化20】

【0078】
[実験操作]
50 mLナスフラスコに化合物4 (75 mg, 0.11 mmol, 1eq)、無水塩化メチレン 5 mL、TFA 1 mLを加え、室温で2時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)にて反応追跡を行い、原料の消失と目的化合物の生成を確認して反応を終了した。溶媒を減圧留去後、トルエンとの共沸を2回行い、真空乾燥して透明油状物を80 mg (定量的) を得た。
【0079】
50 mL二口ナスフラスコに得られた化合物を全量 (80 mg, 0.073 mmol, 1 eq)、化合物1-1 (47 mg, 0.16 mmol, 1.5eq)、ジイソプロピルエチルアミン (46 μL, 0.26 mmol, 2.5eq)、無水ジメチルホルムアミド 3 mLを加え、アルゴン雰囲気下、室温で5時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)にて反応追跡を行い、目的化合物の生成と、原料の消失を確認して反応を終了した。溶媒を真空ポンプにて減圧留去し、酢酸エチル(100 mL)を加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50 mL, 3回)、飽和食塩水(50 mL, 2回)で洗浄を行った。有機相を無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、不溶物を濾別後、溶媒を減圧留去したあと、カラムクロマトグラフィー (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)による精製を行った。溶媒を減圧留去し、白色固体を得た。同定は1H-NMRにより行った。
[実験結果]
白色固体
収量 62 mg (2steps ; 収率 75 %)
【0080】
【表5】

【0081】
3. 化合物2 (Amidinium-type ; Trypsin)の合成
3-1. 化合物2-1の合成
【0082】
【化21】

【0083】
[実験操作]
100 mL二口ナスフラスコに4-シアノ安息香酸 (500 mg, 2.5 mmol, 1 eq)、WSC・HCl (590 mg, 3.1 mmol, 0.9eq)、N, N-ジイソプロピルエチルアミン (1.1 mL, 6.2 mmol, 1.8eq)、無水ジメチルホルムアミド 20 mLを加えたあと、N-ヒドロキシスクシンイミド (307 mg, 2.7 mmol, 0.8eq)を加え、アルゴン雰囲気下、室温で2時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)にて反応追跡を行い、目的化合物の生成を確認して反応を終了した。溶媒を真空ポンプにて減圧留去し、酢酸エチル (300 mL) を加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 (100 mL, 3回)、蒸留水 (100 mL, 3回)、飽和食塩水 (100 mL, 2回)で洗浄を行った。有機相を無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、不溶物を濾別後、溶媒を減圧留去し、真空乾燥して、白色固体を得た。同定は1H-NMRにより行った。
[実験結果]
白色固体
収量 630 mg (収率 76 %)
【0084】
【表6】

【0085】
3-2. 化合物2-2の合成
【0086】
【化22】

【0087】
[実験操作]
50 mLナスフラスコに化合物4 (75 mg, 0.11 mmol, 1eq)、無水塩化メチレン 5 mL、TFA 1 mLを加え、室温で2時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)にて反応追跡を行い、原料の消失と目的化合物の生成を確認して反応を終了した。溶媒を減圧留去後、トルエンとの共沸を2回行い、真空乾燥して透明油状物を80 mg (定量的) を得た。
【0088】
50 mL二口ナスフラスコに得られた化合物を全量 (80 mg, 0.073 mmol, 1 eq)、化合物2-1 (39 mg, 0.16 mmol, 1.5eq)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン (46 μL, 0.26 mmol, 2.5eq)、無水ジメチルホルムアミド 2.5 mLを加え、アルゴン雰囲気下、室温で5時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)にて反応追跡を行い、目的化合物の生成と、原料の消失を確認して反応を終了した。溶媒を真空ポンプにて減圧留去し、酢酸エチル(100 mL)を加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50 mL, 3回)、飽和食塩水(50 mL, 2回)で洗浄を行った。有機相を無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、不溶物を濾別後、溶媒を減圧留去したあと、カラムクロマトグラフィー (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 20 : 1)による精製を行った。溶媒を減圧留去し、白色固体を得た。同定は1H-NMRにより行った。
[実験結果]
白色固体
収量 62 mg (2steps ; 収率 79 %)
【0089】
【表7】

【0090】
3-3. 化合物2の合成
【0091】
【化23】

【0092】
[実験操作]
50 mLナスフラスコに塩化アンモニウム (8.7 mg, 0.16 mmol, 2eq) の無水トルエン溶液 2 mLを加えた後、2M トリメチルアルミニウム (0.1 mL, 0.2 mmol, 2.4eq)を氷浴下、ゆっくり滴下した。アルゴン雰囲気下、0℃で1時間撹拌後、化合物2-2 (60 mg, 0.081 mmol, 1eq)の無水トルエン と無水テトラヒドロフランの混合溶液 (1 : 1, 2mL) を加え、80℃で20時間、90℃で24時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)にて反応追跡を行い、目的化合物の生成を確認して反応を終了した。反応溶液にシリカ (2.0g) を加え、クロロホルムとメタノールの混合溶液 (CHCl3 : MeOH = 5 : 1) で固液洗浄を行い、吸引濾過後、同溶媒 (20 mL) で固体を洗浄した後、メタノール (10 mL) で洗浄した。メタノールによる洗浄後の濾液を回収し、溶媒を減圧留去した後、アセトンで再沈殿を行い、生じた固体を吸引濾過により濾別し、溶媒を減圧留去して、黄色固体16 mgを得た。
【0093】
得られた固体をジメチルスルホキシド (1 mL)、蒸留水 (1mL) に溶解し、HPLC (ODS-A / CH3CN (0.1% TFA contents) : 蒸留水 (0.1% TFA contents) = 5 : 95 → 75 : 25)による精製を行った。溶媒を減圧留去後、凍結乾燥を行い、白色固体を得た。メタノール (2 mL) に溶解させ、28% 塩酸メタノール (2 mL, 過剰量) を加えて室温で1時間撹拌した。その後溶媒を減圧留去し、凍結乾燥を行い、白色固体を得た。同定は1H-NMRにより行った。
[実験結果]
白色固体
収量 3 mg (2steps ; 収率 5 %)
【0094】
【表8】

【0095】
4. 化合物3 (HA-type ; Thermolysin)の合成
4-1. 化合物3-1の合成
【0096】
【化24】

【0097】
[実験操作]
100 mLナスフラスコに水酸化カリウム (337 mg, 6 mmol, 1eq) のエタノール溶液9 mL、Benzylmalonic acid diethyl ester (1.5 g, 6 mmol, 1eq) を加え、室温で3時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)にて反応追跡を行い、目的化合物の生成を確認して反応を終了した。溶媒を真空ポンプにて減圧留去し、残査を5% 炭酸水素ナトリウム水溶液 (100 mL) に溶解させ、水層を酢酸エチル(100mL,2回)で洗浄した。その後1N 塩酸水溶液でpHを酸性 (pH〜1.0)にし、酢酸エチル(100mL,3回)で抽出を行った。有機層を1N塩酸水溶液 (100 mL、1回) で洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、不溶物を濾別後、溶媒を減圧留去、真空乾燥させ、白色固体を得た。同定は1H-NMRにより行った。
[実験結果]
白色固体
収量 1.28 g (収率 96 %)
【0098】
【表9】

【0099】
4-2. 化合物3-2の合成
【0100】
【化25】

【0101】
[実験操作]
50 mLナスフラスコに化合物4 (25 mg, 0.035 mmol, 1eq)、無水塩化メチレン 2 mL、TFA 1 mLを加え、室温で5時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)にて反応追跡を行い、原料の消失と目的化合物の生成を確認して反応を終了した。溶媒を減圧留去後、トルエンとの共沸を2回行い、真空乾燥して透明油状物を28 mg (定量的) を得た。
【0102】
50 mL二口ナスフラスコに化合物3-1 (20 mg, 0.09 mmol, 2.5eq)、WSC・HCl (17 mg, 0.09 mmol, 2.5eq)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン (46 μL, 0.26 mmol, 2.5eq)、無水ジメチルホルムアミド 2.5 mLを加えた後、脱保護した化合物4 (28 mg, 0.035 mmol, 1 eq) の無水ジメチルホルムアミド溶液 (3 mL) を加え、アルゴン雰囲気下、室温で8時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)にて反応追跡を行い、目的化合物の生成を確認して反応を終了した。溶媒を真空ポンプにて減圧留去し、酢酸エチル (100 mL)を加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 (50 mL, 3回)、飽和食塩水 (50 mL, 1回) で洗浄を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、不溶物を濾別後、溶媒を減圧留去したあと、カラムクロマトグラフィー (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)による精製を行った。溶媒を減圧留去し、白色固体を得た。同定は1H-NMRにより行った。
[実験結果]
白色固体
収量 27 mg (2steps ; 収率 95 %)
【0103】
【表10】

【0104】
4-3. 化合物3の合成
【0105】
【化26】

【0106】
[実験操作]
50 mLナスフラスコにNH2OKの0.5M メタノール溶液 (1.5 mL, 0.78 mmol, 25eq) を加え、氷浴下、化合物3-2 (25 mg, 0.031 mmol, 1eq)のメタノール溶液2 mLをゆっくり加え、室温で6時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 15 : 1)にて反応追跡を行い、原料の消失と目的化合物の生成を確認して反応を終了した。溶媒を減圧留去後、残査を酢酸エチル (50 mL) に溶解させ、有機層を飽和食塩水 (30 mL, 3回) で洗浄を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、不溶物を濾別後、溶媒を減圧留去したあと、カラムクロマトグラフィー (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 25 : 1)による精製を行った。溶媒を減圧留去し、白色固体を得た。同定は1H-NMRにより行った。
[実験結果]
白色固体
収量 13 mg (収率 52 %)
【0107】
【表11】

【0108】
(実施例1−2:エステルタイププローブ(Amide-type 、C2-type、C4-type、C8-type、)の合成)
図2に示すスキームに従って分子構造の異なる4種の含フッ素化合物、Amide-type(化合物A)、C2-type(化合物B)、C4-type(化合物C)、C8-type(化合物D)について合成を行った。
化合物Aの合成
1-1. 化合物A-1の合成
【0109】
【化27】

【0110】
[実験操作]
50 mL二口ナスフラスコに3,5-ビス(トリフルオロメチル)-安息香酸 100 mg (0.40 mmol, 1 eq)、WSC-HCl 110 mg (0.60 mmol, 1.5eq)、HOBt一水和物 89 mg (1.5eq)、ジイソプロピルエチルアミン 202 μL (1.2 mmol, 3eq)、無水ジメチルホルムアミド 5 mL、2-(2-アミノエトキシ)−エタノール 82 mg (0.78 mmol, 2eq)を加え、アルゴン雰囲気下、室温で12時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)にて反応追跡を行い、目的化合物 (Rf値;0.6)の生成を確認して反応を終了した。溶媒を真空ポンプにて減圧留去し、酢酸エチルを約300 mLを加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100 mL、飽和食塩水100 mL、飽和クエン酸水溶液100 mLで各3回洗浄を行った。有機相を無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、不溶物を濾別後、溶媒を減圧留去したあと、カラムクロマトグラフィー(SiO2 / CHCl3 : MeOH = 20 : 1)による精製を行った。溶媒を減圧留去し、透明油状物を得た。同定は1H-NMRにより行った。
[実験結果]
透明油状物
収量 76 mg (収率 57 %)
【0111】
【表12】

【0112】
1-2. 化合物A-2の合成
【0113】
【化28】

【0114】
[実験操作]
50 mL二口ナスフラスコに化合物A-1 76 mg (0.22 mmol, 1 eq)、Boc-C5-SO2Cl 107 mg (0.26 mmol, 1.2eq)、無水塩化メチレン 4 mL、ジイソプロピルエチルアミン 115 μL (0.66 mmol, 3eq)を加え、アルゴン雰囲気下、ジメチルアミノピリジン(DMAP) 13 mg (0.11 mmol, 0.5eq)の無水塩化メチレン溶液 1 mLをゆっくり加えて、室温で6時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)にて反応追跡を行い、目的化合物 (Rf値;0.6)の生成は確認したが反応が終了していなかったので、さらにDMAP 13 mg(計1eq)を加えて、さらに室温で6時間攪拌して反応を終了した。溶媒を真空ポンプにて減圧留去し、カラムクロマトグラフィー (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 25 : 1)により精製を行った。溶媒を減圧留去し、透明油状物を得た。同定は1H-NMRにより行った。
[実験結果]
透明油状物
収量 72 mg (収率 46 %)
【0115】
【表13】

【0116】
1-3. 化合物Aの合成
【0117】
【化29】

【0118】
[実験操作]
50 mLナスフラスコに化合物A-2 72 mg (0.10 mmol, 1eq)、無水塩化メチレン 3 mL、TFA 1 mLを加え、室温で2時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)にて反応追跡を行い、原料 (Rf値;0.4) の消失と目的化合物 (Rf値;0.1)の生成を確認して反応を終了した。溶媒を減圧留去後、トルエンとの共沸を2回行い、真空乾燥して透明油状物を73 mg (収率;100%, 定量的) を得た。50 mL二口ナスフラスコに得られた化合物を全量 73 mg (0.10 mmol, 1 eq)、WSC-HCl 29 mg (0.15 mmol, 1.5eq)、HOBt一水和物 23 mg (1.5eq)、ジイソプロピルエチルアミン 52 μL (0.30 mmol, 3eq)、無水ジメチルホルムアミド 2 mL、4-スルファモイル安息香酸 30 mg (0.15 mmol, 1.5eq)を加え、アルゴン雰囲気下、室温で12時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 7 : 1)にて反応追跡を行い、目的化合物 (Rf値;0.5)の生成を確認して反応を終了した。溶媒を真空ポンプにて減圧留去し、酢酸エチルを約300 mLを加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100 mL、飽和食塩水100 mLで各3回洗浄を行った。有機相を無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、不溶物を濾別後、溶媒を減圧留去したあと、カラムクロマトグラフィー (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 15 : 1→10 : 1)による精製を行った。溶媒を減圧留去し、粘性固体を得た。同定は1H-NMRにより行った。
[実験結果]
白色(粘性)固体
収量 56 mg (2steps ; 収率 71 %)
【0119】
【表14】

【0120】
2. 化合物Bの合成
2-1. 化合物B-1の合成
【0121】
【化30】

【0122】
[実験操作]
100 mL二口ナスフラスコに2, 4-ビス(トリフルオロメチル)フェノール 1.0 g (4.35 mmol, 1 eq)、2-ブロモアルコール 1.09 g (8.7 mmol, 2eq)、炭酸カリウム 2.4 g (17.4 mmol, 4eq, 300oCで2〜3h焼き)、無水ジメチルホルムアミド 20 mLを加えたあと、アルゴン雰囲気下、室温で2時間、40 ℃で6時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 20 : 1)にて反応追跡を行い、目的化合物 (Rf値;0.4)の生成を確認して反応を終了した。溶媒を真空ポンプにて減圧留去し、酢酸エチルを約300 mLを加え、飽和クエン酸水溶液100 mLで3回、飽和食塩水100 mLで1回洗浄を行った。有機相を無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、不溶物を濾別後、溶媒を減圧留去し、真空乾燥して白色固体を得た。精製をカラムクロマトグラフィー(SiO2 / 1回目;CHCl3 : MeOH = 1 : 0→20 :1、2回目;EtOAc : Hexane = 1 : 3)にて2回行い、溶媒を減圧留去、真空乾燥して白色固体を得た。同定は1H-NMRにより行った。
[実験結果]
白色固体
収量 218 mg (収率 27 %)
【0123】
【表15】

【0124】
2-2. 化合物B-2の合成
【0125】
【化31】

【0126】
[実験操作]
50 mL二口ナスフラスコに化合物B-1 50 mg (0.18 mmol, 1 eq)、Boc-C5-SO2Cl 105 mg (0.27 mmol, 1.5eq)、無水塩化メチレン 3 mL、ジイソプロピルエチルアミン 94 μL (0.54 mmol, 3eq)を加え、アルゴン雰囲気下、DMAP 11 mg (0.09 mmol, 0.5eq)の無水塩化メチレン溶液 1 mLをゆっくり加えて、室温で2時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)にて反応追跡を行い、目的化合物 (Rf値;0.6)の生成と原料(SO2Cl, Rf値;0.5)の消失を確認して、反応を終了した。溶媒を真空ポンプにて減圧留去し、カラムクロマトグラフィー (SiO2 / 1回目;CHCl3 : MeOH = 15 : 1、2回目;EtOAc : Hexane = 1 : 3→1 : 1)により精製を行った。溶媒を減圧留去し真空乾燥して、透明油状物を得た。同定は1H-NMRにより行った。
[実験結果]
透明油状物
収量 52 mg (収率 45 %)
【0127】
【表16】

【0128】
4-1-3. 化合物Bの合成
【0129】
【化32】

【0130】
[実験操作]
50 mLナスフラスコに化合物B-2 47 mg (0.073 mmol, 1eq)、無水塩化メチレン 4 mL、TFA 1.5 mLを加え、室温で2時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)にて反応追跡を行い、原料 (Rf値;0.5) の消失と目的化合物 (Rf値;0.1)の生成を確認して反応を終了した。溶媒を減圧留去後、トルエンとの共沸を2回行い、真空乾燥して透明油状物を48 mg (収率;100%, 定量的) を得た。50 mL二口ナスフラスコに得られた化合物を全量 48 mg (0.073 mmol, 1 eq)、SA-OSu 44 mg (0.15 mmol, 2eq)、ジイソプロピルエチルアミン 31 μL (0.19 mmol, 2.5eq)、無水ジメチルホルムアミド 2 mLを加え、アルゴン雰囲気下、室温で2時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)にて反応追跡を行い、目的化合物 (Rf値;0.3)の生成と、原料 (Rf値;0.1) の消失を確認して反応を終了した。溶媒を真空ポンプにて減圧留去し、酢酸エチルを約100 mL加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50 mL、飽和食塩水50 mLで各3回洗浄を行った。有機相を無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、不溶物を濾別後、溶媒を減圧留去したあと、カラムクロマトグラフィー (SiO2 / EtOAc : Hexane = 4 : 3→4 : 1)による精製を行った。溶媒を減圧留去し、白色固体を得た。同定は1H-NMRにより行った。
[実験結果]
白色固体
収量 32 mg (2steps ; 収率 60 %)
【0131】
【表17】

【0132】
3. 化合物Cの合成
3-1. 化合物C-1の合成
【0133】
【化33】

【0134】
[実験操作]
100 mL二口ナスフラスコに2, 4-ビス(トリフルオロメチル)フェノール 1.0 g (4.35 mmol, 1 eq)、エチレングリコール-2-モノ-クロロエチルエーテル 1.08 g (8.7 mmol, 2eq)、炭酸カリウム 2.4 g (17.4 mmol, 4eq, 300℃で2〜3h焼き)、リチウムブロミド 378 mg(4.35 mol, 1eq)、無水ジメチルホルムアミド 20 mLを加えたあと、アルゴン雰囲気下、45 ℃で13時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)にて反応追跡を行い、目的化合物 (Rf値;0.5)の生成を確認して反応を終了した。溶媒を真空ポンプにて減圧留去し、酢酸エチルを約300 mLを加え、飽和クエン酸水溶液100 mLで3回、飽和食塩水100 mLで1回洗浄を行った。有機相を無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、不溶物を濾別後、溶媒を減圧留去し、真空乾燥して白色固体を得た。精製をカラムクロマトグラフィー(SiO2 / 1回目;CHCl3 : MeOH = 30 : 1、2回目;EtOAc : Hexane = 1 : 4→1 : 1→1 : 0、3回目;CHCl3 のみ)にて3回行い、溶媒を減圧留去、真空乾燥して透明油状物を得た。同定は1H-NMRにより行った。
[実験結果]
透明油状物
収量 360 mg (収率 26 %)
【0135】
【表18】

【0136】
3-2. 化合物C-2の合成
【0137】
【化34】

【0138】
[実験操作]
50 mL二口ナスフラスコに化合物C-1 60 mg (0.19 mmol, 1 eq)、Boc-C5-SO2Cl 115 mg (0.29 mmol, 1.5eq)、無水塩化メチレン 1 mL、ジイソプロピルエチルアミン 99 μL (0.57 mmol, 3eq)を加え、アルゴン雰囲気下、DMAP 12 mg (0.1 mmol, 0.5eq)の無水塩化メチレン溶液 1 mLをゆっくり加えて、室温で3時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)にて反応追跡を行い、目的化合物 (Rf値;0.6)の生成と原料(C-1, Rf値;0.5)の消失を確認して、反応を終了した。溶媒を真空ポンプにて減圧留去し、カラムクロマトグラフィー (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 30 : 1)により精製を行った。溶媒を減圧留去し真空乾燥して、透明油状物を得た。同定は1H-NMRにより行った。
[実験結果]
透明油状物
収量 98 mg (収率 75 %)
【0139】
【表19】

【0140】
3-3. 化合物Cの合成
【0141】
【化35】

【0142】
[実験操作]
50 mLナスフラスコに化合物C-2 95 mg (0.14 mmol, 1eq)、無水塩化メチレン 3 mL、TFA 1 mLを加え、室温で1.5時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)にて反応追跡を行い、原料 (Rf値;0.5) の消失と目的化合物 (Rf値;0)の生成を確認して反応を終了した。溶媒を減圧留去後、トルエンとの共沸を2回行い、真空乾燥して透明油状物を106 mg (収率;100%, 定量的) を得た。50 mL二口ナスフラスコに得られた化合物を全量 106 mg (0.14 mmolで計算, 1 eq)、SA-OSu 63 mg (0.21 mmol, 1.5eq)、ジイソプロピルエチルアミン 73 μL (0.42 mmol, 3eq)、無水ジメチルホルムアミド 4 mLを加え、アルゴン雰囲気下、室温で3時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)にて反応追跡を行い、目的化合物 (Rf値;0.4)の生成を確認して反応を終了した。溶媒を真空ポンプにて減圧留去し、酢酸エチルを約100 mL加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50 mL、飽和食塩水50 mLで各3回洗浄を行った。有機相を無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、不溶物を濾別後、溶媒を減圧留去したあと、カラムクロマトグラフィー (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 25 : 1→10 : 1)による精製を行った。溶媒を減圧留去し、白色固体を得た。同定は1H-NMRにより行った。
[実験結果]
白色固体
収量 73 mg (2steps ; 収率 69 %)
【0143】
【表20】

【0144】
4. 化合物Dの合成
4-1. 化合物D-1の合成
【0145】
【化36】

【0146】
[実験操作]
100 mL二口ナスフラスコにテトラエチレングリコール 5 g (25.7 mmol, 5.1 eq)、無水ピリジン 2 mL (25 mmol, 5eq)、無水塩化メチレン 15 mLを加え、アルゴン雰囲気下、滴下漏斗を用いてトシルクロライド 0.96 g (5 mmol, 1eq)の無水塩化メチレン溶液 10 mLを30分かけてゆっくり滴下し、その後室温で3時間撹拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH =10 : 1)にて反応追跡を行い、目的化合物 (Rf値;0.6)の生成と原料(トシルクロライド、Rf値;0.9)の消失を確認して反応を終了した。溶媒を真空ポンプにて減圧留去した。精製をカラムクロマトグラフィー(SiO2 / CHCl3 : MeOH = 1 : 0→20 :1)にて行い、溶媒を減圧留去し、真空乾燥して透明油状物を得た。同定は1H-NMRにて行った。
[実験結果]
透明油状物
収量 1.25 g(収率 72%)
【0147】
【表21】

【0148】
4-2. 化合物D-2の合成
【0149】
【化37】

【0150】
[実験操作]
100 mL二口ナスフラスコに2, 4-ビス(トリフルオロメチル)フェノール 230 mg (1 mmol, 1 eq)、炭酸カリウム 346 mg (2.5 mmol, 2.5eq, 300℃で2〜3h焼き)、無水ジメチルホルムアミド 3 mLを加えたあと、アルゴン雰囲気下、D-1 418 mg (1.2 mmol, 1.2eq)の無水ジメチルホルムアミド 2 mLをゆっくり加え、室温で2時間、50 ℃で13時間攪拌した。TLC (SiO2 / EtOAc : Hexane = 1 : 1)にて反応追跡を行い、目的化合物 (Rf値;0.4)の生成と原料(フェノール、Rf値;0.9)の消失を確認して反応を終了した。溶媒を真空ポンプにて減圧留去し、酢酸エチルを約300 mLを加え、飽和クエン酸水溶液100 mLで3回、飽和食塩水100 mLで2回洗浄を行った。有機相を無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、不溶物を濾別後、溶媒を減圧留去し、真空乾燥して白色固体を得た。精製をカラムクロマトグラフィー (SiO2 /2回目;EtOAc : Hexane = 1 : 1→4 : 1)にて行い、溶媒を減圧留去、真空乾燥して淡黄色油状物を得た。同定は1H-NMRにより行った。
[実験結果]
淡黄色油状物
収量 252 mg (収率 63 %)
【0151】
【表22】

【0152】
4-3. 化合物D-3の合成
【0153】
【化38】

【0154】
[実験操作]
50 mL二口ナスフラスコに化合物D-2 73 mg (0.18 mmol, 1 eq)、Boc-C5-SO2Cl 105 mg (0.27 mmol, 1.5eq)、無水塩化メチレン 3 mL、ジイソプロピルエチルアミン 94 μL (0.54 mmol, 3eq)を加え、アルゴン雰囲気下、DMAP 11 mg (0.09 mmol, 0.5eq)の無水塩化メチレン溶液 1 mLをゆっくり加えて、室温で1.5時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)にて反応追跡を行い、目的化合物 (Rf値;0.6)の生成と原料(SO2Cl, Rf値;0.7)の消失を確認して、反応を終了した。溶媒を真空ポンプにて減圧留去し、カラムクロマトグラフィー (SiO2 / 1回目;EtOAc : Hexane = 1 : 1→4 : 1、2回目;CHCl3 : MeOH = 25 : 1)により精製を行った(化合物3-2と目的化合物とを分離することはできなかったので、混合物として回収)。溶媒を減圧留去し真空乾燥して、透明油状物を得た。同定は1H-NMRにより行った。
[実験結果]
透明油状物(化合物D-2との混合物として)
収量 56 mg (収率、NMRより19%)
【0155】
【表23】

【0156】
4-4. 化合物Dの合成
【0157】
【化39】

【0158】
[実験操作]
50 mLナスフラスコに化合物D-3とD-2の混合物 56 mg (NMRより0.035 mmol, 1eq)、無水塩化メチレン 2.5 mL、TFA 1 mLを加え、室温で1時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)にて反応追跡を行い、原料 (Rf値;0.5) の消失と目的化合物 (Rf値;0.1)の生成を確認して反応を終了した。溶媒を減圧留去後、トルエンとの共沸を2回行い、真空乾燥して透明油状物を58 mg (収率;100%, 定量的) を得た。50 mL二口ナスフラスコに得られた化合物を全量 58 mg (0.035 mmol, 1 eq)、SA-OSu 33 mg (0.11 mmol, 3eq)、ジイソプロピルエチルアミン 21 μL (0.12 mmol, 3.5eq)、無水ジメチルホルムアミド 2 mLを加え、アルゴン雰囲気下、室温で2時間攪拌した。TLC (SiO2 / EtOAc : Hexane = 1 : 1)にて反応追跡を行い、目的化合物 (Rf値;0.2)の生成を確認して反応を終了した。溶媒を真空ポンプにて減圧留去し、酢酸エチルを約100 mL加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50 mL、飽和食塩水50 mLで各3回洗浄を行った。有機相を無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、不溶物を濾別後、溶媒を減圧留去したあと、カラムクロマトグラフィー (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)による精製を行った。溶媒を減圧留去し、さらに残査を酢酸エチル 50 mLに溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム 30 mLで4回、飽和炭酸カリウム水溶液 30 mLで3回、飽和食塩水 30 mLで1回洗浄を行い、SA-OSuを極力除いた。有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥させ、不溶物を濾別後、溶媒を減圧留去し、白色固体を得た。同定は1H-NMRにより行った。
[実験結果]
白色固体
収量 16 mg (2steps ; 収率 53 %)
【0159】
【表24】

【0160】
(実施例2:アミドタイプ含フッ素化合物の評価)
(実施例2−1:タンパク質存在下・非存在下・阻害剤共存下での、SA-type プローブ 1によるF−NMR測定)
タンパク質存在下、非存在下あるいはタンパク質阻害剤共存下での、SA-type プローブ 1(以下プローブ 1)のF−NMR測定を行った。実験条件として プローブ 1濃度は 100 もしくは50 μMとし、ストック溶液50 mM DMSO溶液を1もしくは0.5 μL用いて調製した。図3中(a), (b)は100 μM, (c) は50 μMの結果を示した。酵素hCA I濃度は50 μM とした。阻害剤(Et ; 6-ethoxybenzimidazole sulfonamide(以下、Inhibitor (Et)と略す)の濃度は250 μMとした。この阻害剤は Ki = 8 nMであり、非常に強い阻害剤である。溶媒は500 μLの50 mM HEPES buffer(pH 7.2)で 0.2 mMのTFAを含んでおり、さらに50 μLの重水を添加したものを用いた。NMR測定は400 MHz NMRで行った。積算回数は1,024 回、測定時間約16minであった。以後、F−NMR測定の共通の条件として、外部標準(TFA in CDCl3、-76.5ppm)を測定しreferenceを合わせた後、buffer中に添加しているTFA にて内部標準(TFA in neutral H2O, -75.6 ppm)を決定してからそれぞれのサンプルのChemical shiftを概算した。また、TFAのピーク(0.2 mM)の積分比を1.0とし、これと比較して積分比を評価した。その他の測定パラメータは次のように設定した:OBSET ; 149.50 kHz、OBFIN ; 72.50 Hz、Point ; 16384、FREQU ; 36036.04 Hz、Acquisition time ; 0.4547 sec、PD ; 0.5000 sec、PW1 ; 8.000 μsec、IRNUC ; 1H。結果を図3に示した。タンパク質存在下では非常にシャープなピークが、タンパク質の濃度に応じた積分比で観測された(a)が、タンパク質非存在下(b)、あるいは強力な阻害剤を加えた場合(c)にはこのピークは全く観測されなかった。タンパク質の在否に依存したF−NMRのシグナルスイッチングが観測された。
【0161】
(実施例2−2: プローブ1を用いたF−NMRによるタンパク質濃度の概算)
プローブ濃度を固定し、タンパク質濃度を変えた際のF−NMRピークの積分比を概算した。含フッ素化合物プローブ1濃度は50 μM で固定した。酵素hCA Iの濃度は75, 50, 25, 10, 5 μMとした。溶媒は500 μLの0.2 mMのTFA 含有50 mM HEPES buffer(pH 7.2)を用いた。50 μLの重水を添加し、F−NMR測定を600 MHz NMRで行った。積算回数は酵素濃度75〜25 μM では1,024 回(測定時間16分)、酵素濃度10 〜 5μMでは4,096 回(測定時間1時間)とした。結果を図4に示した。hCAIの量に応じた積分比のピークが、-62.6ppmに観測された。また、hCAI濃度の測定限界は本実験条件下では約5 μM程度であることが明らかとなった。また、hCAIが低濃度の場合は、-62.9 ppmに非常にシャープなピークが観測され始めた。これはモノマー分散している含フッ素化合物プローブ1であると思われる。以上の結果より、プローブ1により、酵素の定量が可能であることが確認できた。
【0162】
(実施例2−3:プローブ1の会合体形成の評価:吸光度法)
600nmの吸光度測定を行った。プローブ1濃度を25, 50, 75, 100 μMに調整した(DMSO 0.6%)。溶媒は0.2mM TFA 含有50mM HEPES buffer(pH 7.2)を用いた。結果を図5に示した。濃度に応じて濁度は上昇した。またhCAを添加すると吸光度はバックグラウンドレベルまで低下することがわかった。これらの結果から、水中における会合体の形成ならびに酵素添加時の会合体消失、モノマー分散が確認された。
【0163】
(実施例2−4:プローブ 1の会合体形成の評価:動的光散乱法 )
動的光散乱(DLS)測定(NICOMP 380zls)にて会合体の大きさを測定した。プローブ 1 濃度は25, 50, 75, 100 μMを調製した(DMSO 0.6%)。溶媒は0.2mM TFA を含む50mM HEPES buffer(pH 7.2)を用いた。結果を図6に示した。いずれの濃度でも、200から300nmの粒径であった。hCAを添加すると光散乱強度が非常に小さくなり、測定できなかった(データ示さず)。酵素依存性の応答挙動は濁度測定でも見られており、本結果も会合体形成−消失を裏付ける結果である。
【0164】
(実施例2−5:プローブ 1の会合体形成の評価:TEM)
会合体の透過型電子顕微鏡(TEM)観察(JEOL, JEM-1025(100kV))を行った。プローブ 1濃度は25 μM (0.6% DMSO)とした。酵素hCA1濃度は25 μMとした。サンプル溶液をグリッドに10μLで2回滴下し、室温で終夜乾燥させた後、観察した。結果を図7に示す。100から200nmの球状会合体と、20から50nmの球状会合体とが見られた。図8には酵素添加サンプルのTEM観察像を示す。会合体の数は酵素なしの像に比べ、有意に低下していることが示された。この結果より水中における会合体の形成が確認された。
【0165】
(実施例2−6:プローブ1によるタンパク夾雑系中hCA Iの検出)
プローブ1濃度は50 μM、酵素hCA1は50 μM、溶媒は0.1mM TFA入り50mM HEPES buffer (pH7.2)を用いた。擬似夾雑系とするため、BSA、ConA、α-Chymotrypsin、Hemoglobin(Hb)それぞれ1.5mg/500 μLになるように測定系に添加した。F−NMR測定は、プローブ添加直後に測定し、積算回数1,024回で行った。結果を図9に示す。hCA存在下でのみ、その濃度に応じたピーク面積比のピークが観測された。特異的にhCAのみに認識されていると考えられる。同様にして、FBS(非働化ウシ胎児血清)を終濃度70%添加した系で測定し、血清存在下でのhCA I検出を試みた。結果を図10に示す。hCA存在下でのみ、その濃度に応じたピーク面積比のピークが観測された。血清には大量のアルブミンが存在するが、これにはほとんど吸着していないものと思われる。
【0166】
(実施例2−7:プローブ1による赤血球内在性hCAの検出)
赤血球には、hCA Iが120 μM, hCAIIが30 μMで内在することが報告されている。どちらも試験管内では、このプローブでは同じケミカルシフトでピークが現れるため、IとII合わせた量がピークとして観測されると考えられる。実験条件は、赤血球細胞(RBC) 2 mLをHBS bufferで洗浄(1,500 rpm×5min×3回)し、プローブを所定量添加した上清(HBS buffer)を加えて、10minインキュベート後、再度遠心により上清を除き、プローブを取り込ませたRBC溶液とした。このRBC溶液にD2O、TFA入りBufferを混ぜて、F−NMRの測定を行った(RBC solution ; 450 μL、D2O ; 100 μL、1mM TFA入り50mM HEPES buffer (pH7.2) 50 μL)。プローブ1 濃度は100 μM、阻害剤濃度は500 μM とした。400MHz F−NMRにより、積算回数2,048回(測定時間32min)で測定を行った。結果を図11に示した。hCAに認識されたプローブ1由来のピークが細胞内においてもシャープに観測された。また、阻害剤共存下では、シグナルが観測されなかったことより、プローブ1は細胞内のhCAを認識し、検出していることが明らかとなった。以上の結果からわかるように、プローブ1は細胞内の酵素を検出できるという特徴を有する。
【0167】
(実施例2−8:トリプシン検出のためのプローブ2の会合体形成とF−NMR)
トリプシンの阻害剤としてアミジニウム型阻害剤をリガンドとした含フッ素化合物プローブ2を合成し、会合体形成とF−NMR測定を行った。まず会合体形成条件を検討した。塩濃度を100, 300, 500, 1000 mMと変化させ、DLS(NICOMP 380zls)により粒径を測定した。プローブ2 濃度は100 μMとした。溶媒は50mM HEPES buffer、pH 7.2(0.2mM TFA)であった。結果を図12に示す。生理塩濃度(100mM NaCl + HEPES 50mM)では散乱強度が小さかったため測定できず、会合体形成は見られなかった。300 mM塩濃度から会合は起こっていることが確認された。これらのサンプルのF−NMRを行った(積算回数1,024)。結果を図13に示す。塩濃度増加に従って、プローブ2のモノマーに由来するピークが減少していくことが明らかとなった。DLS測定の結果と合わせると、塩濃度増加に従って会合しやすくなり、その結果、Fのピークも減少していくと考えられる。ただし、シグナルOffになるには、1000 mMの塩濃度が必要であり、生理条件下から離れている。そこで次に、F−NMRのpH依存性を検討した。アミジニウム基はpH 7.2では2価カチオンがメインであるため、静電反発により会合しにくいと考えられる。そこで、塩基性雰囲気にして会合を促進できるかどうかを検討した。プローブ2濃度は100 μM (0.2% DMSO)、トリプシン濃度は100 μM、 測定溶媒は0.2mM TFA含有50mM Tris-HCl buffer、pH は8.0 もしくは8.5で測定した(400MHz F−NMR、積算回数1,024)。結果を図14に示す。pH 8.5(300 mM NaCl)まで塩基性にすると、pH 7.2(1000mM NaCl)の条件と同等のFシグナルオフ状態になることが明らかとなった。
【0168】
(実施例3:スルホン酸エステル型含フッ素化合物の評価)
合成したスルホン酸エステルタイプの4種の含フッ素化合物について、同様にして酵素hCA存在下、非存在下のF−NMR測定を行った。図15、図16、図17、図18にそれぞれC2-typeプローブ、C4-typeプローブ、C8-typeプローブ、Amide-typeプローブの結果を示した。いずれのプローブにおいても、酵素添加前はシグナルは確認されず、酵素添加直後シグナルが出現することを確認した。
【0169】
(実施例3−1:スルホン酸エステル型含フッ素化合物の会合体形成評価)
吸光度測定のため、C4-typeプローブの濃度 25, 50, 75, 100, 200, 300 μMの溶液(DMSO contents 0.6%)を調製した。溶媒は50 mMリン酸バッファー(pH 7.2)とした。600 nmの吸光度を測定した。結果を図19に示す。濁度は100 μMまで、濃度に比例して増加した。次に、光散乱測定を行った。C4-typeプローブの濃度 50 , 75 , 100 , 200 μM (0.6 % DMSO contents) を調製した。溶媒は0.2mM TFA を含む50 mM HEPES(pH 7.2)とした。酵素hCAII (human Carbonic Anhydrase II)濃度は150 μMとした。サンプル調整後、5分後に測定した。結果を図20に示す。濃度に関係なく400 nm程度の会合体を形成していることが明らかとなった。また、酵素を添加すると会合体の粒径は非常に小さくなった(80 nm)。次に酵素添加前後の溶液の吸光度測定を行った。プローブ濃度C4-typeは75 μM、酵素hCAII (human Carbonic Anhydrase II) 濃度は150 μMとした。結果を図21に示す。酵素添加前に比べ、酵素添加後では吸光度が低下した。以上の結果より、水中では、会合体を形成しており、酵素添加後には会合体が減少あるいは消失していることが示された。
【0170】
(実施例4:リンカー無し含フッ素化合物の合成)
【0171】
【化40】

【0172】
50 mLナスフラスコに化合物4-2 (200 mg, 0.45 mmol, 1eq)、無水塩化メチレン 5 mL、TFA 1 mLを加え、室温で2時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)にて反応追跡を行い、原料の消失と目的化合物の生成を確認して反応を終了した。溶媒を減圧留去後、トルエンとの共沸を2回行い、真空乾燥して透明油状物を205 mg (定量的) を得た。
【0173】
50 mL二口ナスフラスコに得られた化合物を全量 (205 mg, 0.45 mmol, 2 eq)、化合物1-1 (67 mg, 0.23 mmol, 1eq)、ジイソプロピルエチルアミン (151 μL, 0.90 mmol, 4eq)、無水ジメチルホルムアミド 3 mLを加え、アルゴン雰囲気下、室温で5時間攪拌した。TLC (SiO2 / EtOAc : Hexane = 4 : 1)にて反応追跡を行い、目的化合物の生成と、原料の消失を確認して反応を終了した。溶媒を真空ポンプにて減圧留去し、酢酸エチル(200 mL)を加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100 mL, 3回)、飽和食塩水(100 mL, 1回)で洗浄を行った。有機相を無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、不溶物を濾別後、溶媒を減圧留去したあと、カラムクロマトグラフィー (SiO2 / EtOAc : Hexane = 3 : 1)による精製を行った。溶媒を減圧留去し、白色固体5を得た。同定は1H-NMRにより行った。
[実験結果]
白色固体
収量 68 mg (2steps ; 収率 56 %)
【0174】
【表25】

【0175】
(実施例4−1:リンカー無し含フッ素化合物のF−NMR評価)
リガンドと19Fプローブを直接連結した含フッ素化合物 5のF−NMR測定を行った。プローブ濃度100 μM / 500 μL ( 50 mM DMSO stock)とした。溶媒は0.2 mM TFA入り50 mM HEPES buffer(pH 7.2)で、D2O を 50 μL (10%)添加した。酵素hCA 1濃度は50 μM / 500 μLとした。結果を図22に示す。酵素非存在下ではNMR オフ状態であり、酵素存在下ではピークが出現した。
【0176】
(実施例5:含フッ素化合物の1H/19F―MRI評価)
酵素hCA共存下、非共存下での含フッ素化合物(プローブ 1)のF−MRI評価を行った。同時に1H−MRI評価も行った。測定条件は上記のF−NMR測定と同様とし、内部標準としてTFAを0.2 mM含む50 mM HEPES buffer(pH 7.2)にD2O(終濃度10%)
を添加したサンプルを用いた。結果を図23に示す。酵素hCA共存下、非共存下での含フッ素化合物の1HのMRI像と19FのMRI像を示している。1HのMRI像では、どちらの系でも水プロトン由来のシグナルが検出されている。この像からは酵素の在否を確認することはできない。一方、19FのMRI像では、含フッ素化合物のみの系ではシグナルが消失しており、酵素hCA共存下ではシグナルが明確に確認できた。これまでの結果同様に、酵素認識による19FのNMRシグナルのスイッチング挙動を観察することが出来た。この結果より、プローブ1はF−MRIのスイッチングプローブとして機能し、酵素を高いS/N比で検出することが可能であることが示された。
【0177】
(実施例6:化合物6(Biotin-type 6)の合成及びF−NMRの評価)
(実施例6−1:化合物6(Biotin-type 6)の合成)
【0178】
【化41】

【0179】
50 mL ナスフラスコに化合物4 (40 mg, 0.056 mmol, 1eq)、塩化メチレン 3 mL、TFA 1 mL を加え、室温で2 時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)にて反応追跡を行い、原料の消失と目的化合物の生成を確認して反応を終了した。溶媒を減圧留去後、トルエンとの共沸を2回行い、真空乾燥して透明油状物を50 mg (定量的) を得た。
【0180】
50 mL 二口ナスフラスコに得られた化合物を全量 (50 mg, 0.056 mmol, 1 eq)、Biotin-OSu (29 mg, 0.084mmol, 1.5eq)、ジイソプロピルエチルアミン (26 μL, 0.21 mmol, 2.5eq)、無水ジメチルホルムアミド 3 mLを加え、アルゴン雰囲気下、室温で10 時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 5 : 1)にて反応追跡を行い、目的化合物の生成と、原料の消失を確認して反応を終了した。溶媒を真空ポンプにて減圧留去し、酢酸エチル(50 mL)を加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30 mL, 3回)、飽和食塩水(30 mL, 2 回)で洗浄を行った。有機相を無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、不溶物を濾別後、溶媒を減圧留去したあと、カラムクロマトグラフィー (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1)による精製を行った。溶媒を減圧留去し、白色固体の化合物6を得た。同定は1H-NMR、FAB-MS (HR) により行った。
[実験結果]
白色固体
収量 10 mg (2steps ; 収率 21 %)
【0181】
【表26】

【0182】
(実施例6−2:化合物6(Biotin-type 6)のF−NMR評価)
リガンド部をビオチンとする化合物6(以下Biotin-type 6と略すことがある)の機能評価を行った。ビオチンはアビジンに対して非常に高い親和性を有しており、両者を混合すると速やかにビオチン−アビジン複合体が形成される。この相互作用を、Biotin-type 6とアビジンを用いてF−NMR測定により観察することを試みた。実験条件として、Biotin-type 6(濃度100 μM、500 μL (50 mM DMSO stock, 1 μL)とAvidin(濃度100 μM (ε(280nm) = 35,700 cm-1M-1 (モノマー単位) より濃度決定)を用いた。バッファーは50 mM HEPES buffer (pH 7.2, 0.2 mM TFA, 500 mM NaCl)を用い、D2Oを終濃度10%となるように添加した。
【0183】
図25にBiotin-type 6のF−NMRスペクトルを示す。図25(a)にはBiotin-type 6とアビジンの混合系を、図25(b)にはBiotin-type 6のみ、図25(c)にはBiotin-type 6とアビジン、ならびにビオチンの混合系での結果を示す。Biotin-type 6単独では非常に小さなピークしか観測されなかった (図25(b)) が、アビジンを等量加えると大きなピークが若干低磁場に観測された(図25(a))。この積分比は、アビジンの濃度に相当する大きさであった。また、同時にビオチンを加えるとこのピークは消失したこと (図25(c)) から、図25(a)で見られたピークは確かにBiotin-type 6がアビジンに認識されたために出現したピークであることが判明した。以上の結果は、本発明の含フッ素化合物がアビジン−ビオチン相互作用のような生体分子間相互作用をF−NMRで高感度にオフオンスイッチング検出できることを示すものである。
【0184】
(実施例7:プローブ1が形成する会合体の顕微鏡観察)
原子間力顕微鏡(AFM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)により、プローブ1からなる会合体を直接観察した。マイカ基板にプローブ1溶液 [25 μM、溶媒;50 mM HEPES buffer (pH 7.2, 0.2 mM TFA入り)]をスピンコート(1,500 rpm×15 sec)したあと、終夜真空乾燥してからAFM観察を行った(SEIKO SPA-400)。SEM観察では、シリコンウェハー基盤にプローブ1溶液[25 μM、溶媒;50 mM HEPES buffer (pH 7.2, 0.2 mM TFA入り)]をディッピングしたあと終夜真空乾燥し、白金蒸着してから観察した(JEOL JFC-1600)。TEM観察では、カーボン支持膜にプローブ1溶液[25 μM、溶媒;50 mM HEPES buffer (pH 7.2, 0.2 mM TFA入り)]をディッピングしたあと、終夜真空乾燥してから非染色で観察した(JEOL JEM-1025 (100 kV))。図26に結果を示す。図26(a)はTEM像を、図26(b)はAFM像を、図26(c)にはSEM像を示す。スケールバーは0.5 μmである。図からわかるように、200から500 nmの会合体が観察され、溶液中のDLSの結果と一致する。また、立体的な情報が得られるSEM、AFMの観察結果より、この会合体が球状様物体であることが明らかとなった。
【0185】
(実施例8:プローブ1によるhCAのF−MRI(阻害剤のcell-based assay)
プローブ1によるhCAのF−MRIならびに酵素阻害剤のcell-based assayを試みた。実験条件として、精製酵素を用いた系(以下in vitroと略すことがある)では、hCA I 濃度は100 μM / 1 mL、プローブ1濃度は200 μM (50 mM DMSO stockより)、阻害剤濃度は1 mM (プローブ1の5等量)で、測定は0.2mM TFA入り50mM HEPES buffer中で行った。今回、阻害剤として、6-ethoxybenzothiadiazole sulfonamide(EZA)、4-sulfamoylbenzoic acid(SBA)を用いた。赤血球中 ( 以下in RBC と略すことがある)での測定は、RBC (Red Blood Cell) は2.5 mL、プローブ1(濃度300 μM)を上清3mLに添加してピペッティング後に遠心(1,500rpm×5min)して上清除去し、1mM TFA入り50mM HEPES bufferを添加して測定した(TFA終濃度167 μM)。阻害実験では、阻害剤EZA, SBA(濃度1.5 mM (プローブ1の5等量))をプローブ1と共に上清に添加して、前述の方法と同様に上清除去し、1mM TFA入り50mM HEPES bufferを添加して測定した(TFA終濃度167 μM)。測定条件として、Bruker Biospec 70/20 USR (外部磁場;7T)を用い、共鳴周波数はH−MRIでは300 MHz、F−MRIでは282 MHz、F−NMR測定では2000回積算した。F−MRIでは、FOV = 32*8 cm, Matrix = 128*32, スライス選択無し(投影像)とし、精製酵素を用いたin vitroの系では Fast Spin Echo法、1200回積算(30min)、分解能1.25mm×1.25mmで行い、赤血球中 ( in RBC )測定ではGradient Echo法、400回積算(3.5h, F-probe部分) あるいは200回積算(TFA部分)で行った。
【0186】
図27(a)には今回用いたhCAの阻害剤EZA (Ki= 25 nM)とSBA (Ki= 3.4 μM) の化学構造式を示す。図27(b)には 赤血球中でのF−NMR測定の結果を示す。上から、プローブ1のみ、EZA5等量共存下、SBA5等量共存下でのスペクトルを示している。図27(c-e)には プローブ1のMRIを示しており、(c)は試験管内のH−MRIを、(d)は試験管内のF−MRIを、(e)は赤血球中のF−MRIを示す。阻害剤EZA、SBAそれぞれの共存下における結果も示した。
【0187】
図27(d)から明らかなように、阻害剤共存下ではプローブ1由来のシグナルが観測されない結果より、試験管内(in vitro)では阻害剤EZA、SBAいずれにおいても阻害が起こることが確認された。これはEZA、SBAそれぞれの阻害能が十分高いことを意味している(EZA ; Ki = 20 nM, SBA ; Ki = 3.6 μMに対して、hCAの濃度は100 μMと高濃度であるため)。一方で赤血球中では、内在するhCAの量は試験管内とほぼ同等であるが、EZAでは阻害が起こり、SBAでは阻害が起こらないことが、F−NMR、F−MRI測定より明らかとなった(図27(b), (e))。これは、それぞれの阻害剤の膜透過性あるいは親疎水性を反映しているものと考えられ、SBAは赤血球中へ導入されていない結果であると思われる。以上の結果から明らかなように、プローブ1はF−NMRあるいはF−MRIによる細胞内酵素に対する阻害剤アッセイを可能にする。
【0188】
(実施例9:化合物7(HER2-type)の合成及びF−NMRの評価)
(実施例9−1:化合物7(HER2-type)の合成)
図28にF-probe 7の合成スキームを示した。文献(K. M. Shokat et al, Nat. Chem. Biol., 3, 229 (2007) )に従い、化合物7-6を合成した。以下、化合物7-7からF-probe 7の合成について説明する。
1-1. 化合物7-7の合成
【0189】
【化42】

【0190】
[実験操作]
50 mL二口ナスフラスコに化合物7-6 (220 mg, 0.056 mmol, 1eq)、無水塩化メチレン (5 mL)、無水ピリジン (129 μL, 1.6 mmol, 4eq)、p-トルエンスルホ
ニルクロリド (93 mg, 0.49 mmol, 1.2eq) を加え、アルゴン雰囲気下、室温で2.5時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 20 : 1) にて反応追跡を行い、原料の消失と目的化合物の生成を確認して反応を終了した。溶媒を減圧留去後、残査に酢酸エチル (200 mL) を加え、飽和クエン酸水溶液 (80 mL, 2回)、飽和食塩水 (80 mL, 2回)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(80 mL, 2回) で洗浄を行った。有機相を無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、不溶物を濾別後、溶媒を減圧留去したあと、カラムクロマトグラフィー (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 40 : 1) による精製を行った。溶媒を減圧留去し、真空乾燥して黄色発泡性固体を得た。同定は1H-NMRにより行った。
[実験結果]
黄色発泡性固体
収量 214 mg (収率 75 %)
【0191】
【表27】

【0192】
1-2. 化合物7-8の合成
【0193】
【化43】

【0194】
[実験操作]
50 mL二口ナスフラスコに化合物7-7 (100 mg, 0.14 mmol, 1eq)、無水DMF (5 mL)、炭酸カリウム (58 mg, 0.42 mmol, 3eq)、3,5-Bis-trifluoromethyl phenol (64 mg, 0.28 mmol, 2eq) を加え、アルゴン雰囲気下、40℃で10時間攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 20 : 1) にて反応追跡を行い、原料の消失と目的化合物の生成を確認して反応を終了した。溶媒を減圧留去し、残査に酢酸エチル (100 mL) を加え、飽和クエン酸水溶液 (50 mL, 2回)、飽和食塩水 (50 mL, 2回)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50 mL, 2回) で洗浄を行った。有機相を無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、不溶物を濾別後、溶媒を減圧留去したあと、カラムクロマトグラフィー (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 40 : 1) による精製を行った。溶媒を減圧留去し、真空乾燥して黄色固体を得た。同定は1H-NMRにより行った。
[実験結果]
黄色固体
収量 80 mg (収率 76 %)
【0195】
【表28】

【0196】
1-3. 化合物7の合成
【0197】
【化44】

【0198】
[実験操作]
50 mLナスフラスコに化合物7-8 (80 mg, 0.11 mmol, 1eq)、エタノール (1.5 mL)、酢酸 (300 μL)、鉄粒子 (49 mg, 0.88 mmol, 8eq) を加え、80℃で1時間還流撹拌
した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1) にて反応追跡を行い、原料の消失と目的化合物の生成を確認して反応を終了した。溶媒を減圧留去し、残査に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 (50 mL) を加え、酢酸エチル (80 mL、3回) で抽出を行い、有機層を再度飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 (50 mL, 3回) 、飽和食塩水 (50 mL, 1回) で洗浄を行った。有機相を無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、不溶物を濾別後、溶媒を減圧留去したあと、不純物を含む黄緑色油状物 (76 mg) を得た。
【0199】
50 mL二口ナスフラスコに上記の油状物、無水THF (3 mL)、無水ピリジン (10 mg, 1.1 mmol, 1.2eq)、無水酢酸 (13 mg, 1.1 mmol, 1.2eq) を加え、アルゴン雰囲気下、75℃で3時間還流攪拌した。TLC (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 10 : 1) にて反応追跡を行い、原料の消失と目的化合物の生成を確認して反応を終了した。溶媒を減圧留去し、残査をカラムクロマトグラフィー (SiO2 / CHCl3 : MeOH = 20 : 1) により精製した。溶媒を減圧留去し、真空乾燥して黄色固体を得た。同定は1H-NMRにより行った。
[実験結果]
黄色固体
収量 26 mg (2steps ; 収率 33 %)
【0200】
【表29】

【0201】
(実施例9−2:化合物7(HER2-type)のF-NMR測定)
F-probe 7のF-NMR測定を行った。F-probe 7の濃度は100 μM (50 mM DMSO
stockより調製)とした。溶媒として、バッファー水溶液(pH 7.2, 50 mM HEPES, no salt, 10% D2O) あるいは70% CD3OD(重エタノール)の2種類を用いて測定した。
結果を図29に示す。図29(a)にはF-probe 7の構造式を、図29(b)にはバッファー水溶液中のF-probe 7のF-NMRスペクトル、図29(c)には70% CD3OD(重エタノール)中のF-probe 7のF-NMRスペクトルを示す。図29(b)から、水中ではF-probe 7由来のピークは観測されなかった。一方、図29(c)が示すように、70% CD3OD(重エタノール)中ではF-probe 7由来のピークが観測された(-64.04 ppm)。以上の結果より、F-probe 7は水中で会合体を形成し、フッ素のNMRシグナルが消失しているが、会合体の崩壊によりフッ素のNMRシグナルが現れることが示された。
【0202】
(実施例10:化合物8(c(RGDyK)-19F2)の合成及びF−NMRの評価)
(実施例10−1:フッ素化合物A-3(Kiminami type)の合成)
1. A-1合成
【0203】
【化45】

【0204】
1,2-ジブロモエタン60 g (320 mmol, 10eq) をアセトン160ml に溶かした溶液に、 炭酸カリウム26 g (190 mmol, 6.0eq)を加えた。これに対して、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェノール7.1 g (31 mmol, 1.0eq) をアセトン140 mlに溶かした溶液を、2時間かけて室温で滴下した。そして15時間還流させることにより、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェノールの消失を薄層クロマトグラフィーによって確認した。減圧下で溶媒を除去した後、反応混合物を酢酸エチル500 mlに溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液200 ml、 5% クエン酸水溶液200 ml、飽和食塩水を用いて分液した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過、濃縮することにより、A-1 を7.6 g ( 23 mmol, 72%)の黄色油状液体として得た。
【0205】
【表30】

【0206】
A-2'合成
【0207】
【化46】

【0208】
A-1 1.7 g(4.9 mmol, 2.2eq) をDMF 20mlに溶かした溶液に、 3,5-ジヒドロキシ安息香酸メチル0.37 g(2.2 mmol, 1.0eq)と炭酸カリウム2.4 g(18 mmol, 8.0eq) を室温で加えた。これを45℃で12時間攪拌することにより、3,5-ジヒドロキシ安息香酸メチルの消失を薄層クロマトグラフィーによって確認した。減圧下で溶媒を除去した後、反応混合物を酢酸エチル500 mlに溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液200 ml、5% クエン酸水溶液200 ml、飽和食塩水を用いて分液した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過、濃縮することにより、A-2' を1.4 g ( 2.0 mmol, 89%)の白色個体として得た。
【0209】
【表31】

【0210】
3. A-3合成
【0211】
【化47】

【0212】
A-2' 1.3 g (2.0 mmol, 1.0eq) をメタノール150 mlとジクロロメタン75 mlに溶かした溶液に、1規定の水酸化ナトリウム水溶液75 mlを加え、室温で2時間攪拌することにより、A-2'の消失を薄層クロマトグラフィーによって確認した。減圧下で溶媒を除去した後、反応混合物をジクロロメタン500 mlに溶解し、1規定の塩酸200 ml、飽和食塩水を用いて分液した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過、濃縮することにより、A-3 を0.96 g ( 1.5 mmol, 74%)の白色個体として得た。
【0213】
【表32】

【0214】
(実施例10−2:化合物8(c(RGDyK)-19F2)の合成)
図30に化合物8(以下c(RGDyK)-19F2と略す事がある)の合成スキームを示す。まずインテグリンリガンドであるc(RGDyK)ペプチドを通常のペプチド固相合成法に従って合成し、その後フッ素化合物A-3を縮合してc(RGDyK)-19F2を得た。
c(RGDyK)ペプチドの合成スキームを図31に示す。図32には、合成したc(RGDyK)ペプチド粗精製物のHPLCチャートを示す。分取後のMALDI-TOF-MS から20.68 min のピークがターゲットであるc(RGDyK)のピークであることがわかった(収率5.3%)。次に、図33に示すように、c(RGDyK)ペプチドにフッ素化合物A-3を結合してc(RGDyK)-19F2を得た。まず公知の手法に従い、フッ素化合物A-3のカルボキシル基をN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)でエステル化し、フッ素化合物A-3の活性化エステル体を得た。次いで、このフッ素化合物A-3の活性化エステル体(4.5 mM)とc(RGDyK)ペプチド(3 mM)を2%トリエチルアミンを含むDMSO(167μL)中で、室温18時間反応させることで、縮合させた。その後、蒸留水(333μL)を加え反応をクエンチした。反応物のMALDI-TOF-MSスペクトルを図34に示す。反応18時間後の縮合反応物において、ターゲットの質量ピーク(1268.21)が観測され、ターゲット生成を確認できた。また、図34から未反応c(RGDyK)の質量(620.32; [M+H]+)が観測されないことより、縮合反応は18 時間でほぼ終了していることがわかった。
【0215】
図35には、縮合反応物のHPLCチャート(a)と、ターゲット化合物の構造式(b)、ならびにメジャーフラクションの分取後のマススペクトル(c)を示す。図35より、リテンションタイム46.56 分にターゲットのピーク(target mass: [M+H]+ = 1268.40/1268.33 (calcd./found))が観測された。最終的に化合物8(c(RGDyK)-19F2)の精製物を124 nmol (収率25 %) 得た。
【0216】
(実施例10−3:化合物8(c(RGDyK)-19F2)のF−NMRの評価)
化合物8(c(RGDyK)-19F2)のF−NMR測定(室温、積算1024回)を行った。化合物8の濃度は57.8 μM、溶媒はDMSO(88% DMSO, 2% H2O, 10% D2O)、あるいはPBSバッファー(7% DMSO, 83% PBS, 10% D2O)を用いた。内部標準としてTFA(100 μM)を添加した。結果を図36に示す。DMSO中では、化合物8由来のピーク(-63.4 ppm)が観測された。一方、PBS中ではこのピークは見られないことから、化合物8はPBS中で凝集体を形成する結果、F−NMRシグナルがオフになっているものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される構造を有する含フッ素化合物。
【化1】

(ここで、Rlは極性基を有する親水性リガンドであり、L1は、−NH−(CH2p−NHCO−(pは3以上10以下の整数)もしくは−CH2−O−(CH22−(O−(CH223−O−CH2−であり、L2は、単数もしくは複数の−CH2−が独立して、−NH−、−O−、−CO−、−SO2−、アリーレン基で置換されていてもよいアルキレン基であり、Rfは、1以上の水素原子がフッ素原子Fで置換されたアルキル基、または水素原子のうち少なくとも一つがフッ素原子Fもしくはパーフルオロアルキル基で置換されているアリール基であり、mは0もしくは1であり、nは0もしくは1である。)
【請求項2】
前記L1が、下記式(2)、式(26)のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の含フッ素化合物。
【化2】

【請求項3】
前記L2が、下記式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)のいずれかから選ばれることを特徴とする請求項1または2に記載の含フッ素化合物。
【化3】

【請求項4】
前記Rfが、下記式(8)、式(25)のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の含フッ素化合物。
【化4】

(式中、mは1〜5の整数を表す。)
【化5】

【請求項5】
前記Rlが下記式(10)、式(11)、式(12)、式(21)、式(23)、式(24)のいずれかから選ばれることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の含フッ素化合物。
【化6】

【請求項6】
核磁気共鳴法を利用した生体分子の検出方法であって、該生体分子と請求項1乃至5のいずれかに記載の含フッ素化合物とを接触させる工程と、接触の前後での該プローブに由来する19Fを検出核とするNMRシグナルの変化を測定する工程と、を少なくとも有することを特徴とする生体分子の検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図31】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2010−53116(P2010−53116A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58775(P2009−58775)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年3月12日 社団法人日本化学会発行の「日本化学会第88春季年会2008年講演予稿集2」に発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、文部科学省、「先端融合領域イノベーション創出拠点の形成(高次生体イメージング先端テクノハブ)」に係わる委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】